説明

使用準備の整ったカテーテルを備えた尿カテーテル組立体

【課題】尿道への直接の挿入の準備が整った消毒状態のカテーテル組立体を提供する。
【解決手段】尿カテーテル組立体は、その表面の少なくとも一部に、カテーテルの使用に先立つ液体膨潤媒体での処理によってカテーテルの低摩擦表面特性をもたらすことを意図された親水性表面層6を有する尿カテーテル1と、カテーテル1の収容のための空胴11を有するカテーテルパッケージ7を備えている。パッケージ7は、低摩擦表面特性の長時間の維持及び使用準備の整ったカテーテル組立体の提供のために、液体膨潤媒体で前処理されたカテーテルの収容のため気体不浸透性材料の壁で作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面の少なくとも一部に、カテーテルの使用に先立つ液体膨潤媒体での処理によって、カテーテルの低摩擦表面特性をもたらすことを意図された親水性表面層を有する尿カテーテルと、カテーテルの収容のための空胴を有するカテーテルパッケージと、を備えた尿カテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明が関連するタイプの尿カテーテルは、特には、欧州特許出願公開第0217771号(EP−A−0217771)、欧州特許出願公開第0586324号(EP−A−0586324)、国際特許出願公開第94/16747号(WO 94/16747)から知られている。カテーテルパッケージの種々のタイプは、米国特許第3035691号(US−A−3035691)、米国特許第3648704号(US−A−3648704)、米国特許第3967728号(US−A−3967728)、米国特許第4204527号(US−A−4204527)、米国特許第4379506号(US−A−4379506)、米国特許第5226530号(US−A−5226530)、米国特許第5454798号(US−A−5454798)、英国特許出願公開第2284764号(GB−A−2284764)、欧州特許出願公開第0677299号(EP−A−0677299)及びデンマーク国意匠登録第09321986号から知られている。
【0003】
米国特許第3648704号、米国特許第3967728号、英国特許出願公開第2284764号及び欧州特許出願公開第0677299号は、カテーテルの尿道への挿入に先立ってカテーテルの先端がゲル状の潤滑剤でなめらかにされ得るタイプのカテーテルと、そのような潤滑剤が、カテーテルの先端近傍に接続されるかまたはパッケージ自体の内部に設けられた破裂可能な小袋内に収容されるか、あるいは、カテーテルの使用に先立ってそれとの接続のためにカテーテルパッケージと共に供給されるようなパッケージと、を備えた従来の尿カテーテル組立体を開示している。
【0004】
米国特許第5226530号は、予め潤滑されたカテーテル及びパッケージ組立体を開示している。そこでは、従来の潤滑剤で予め潤滑された尿カテーテルがパッケージ内に収容されている。そのパッケージは、カテーテルをしまい込むための第1容器と、第1容器の内側の、先端に潤滑剤が塗られたカテーテルの突出する、あるいは末端の端部を受容するための第2容器と、を有している。2つの容器は、外側囲み容器内に包まれており、その内容物は好適な態様で消毒され得る。
【0005】
カテーテルの使用の前にすっかり開放されなければならないひと続きの3つの容器の使用は、その作業を、四肢麻痺や硬化症の患者のような身体不自由な使用者にとって過度に困難にしている。
【0006】
自制のできない失禁の使用者の膀胱の間欠的なカテーテル挿入のために用いられる尿カテーテルの重要な特徴は、尿道壁を損傷の危険に曝すことなく容易に尿道内に滑り込むというカテーテルの能力である。本発明が関連するタイプのカテーテルは、少なくとも尿道内に実際に導入されるカテーテルの表面部分に極度な低摩擦特性を与えることによって、この要求を満たすべく開発されている。低摩擦表面特性は、カテーテルの適切な部分に、少なくとも親水性表面層を、典型的にはコーティングの形態で組み込んで、この層またはコーティングを使用の直前に液体膨潤媒体と接触するように曝すことによって得られる。
【0007】
尿道内のカテーテルの位置決め及びその後のそこからの引抜きの間に低摩擦表面特性を維持して刺すような痛みを減少させるために、それはさらに親水性コーティングにおいて、NaClのような重量モル濃度促進剤を組込れることが知られている。
【0008】
このタイプのカテーテルが、病院や診療所といった医療環境の外側の末端使用者、例えばしばしば極めて手先の不器用な四肢麻痺の患者によって直接に使用されて、そのために大変に簡単な挿入手順を必要とする場合、使用の直前にカテーテルの準備のために使われる最も通常の液体膨潤媒体は、通常の水道水であった。
膀胱の間欠的なカテーテル挿入の実施に伴う感染の危険を低減するために、実際の使用される膨潤媒体及びカテーテル挿入が実施される環境は、いずれも、できる限り清潔で消毒されている必要がある。明らかに、多くの日常の生活状況においてこの要求を満たすことは大変に困難であり得る。なぜなら、使用者の通常の日常環境の外でカテーテル挿入が実施されなければならない場所、例えば公衆トイレでは、水の供給も一般的な清潔さの状態も、十分に高い水準にあると期待することはできないからである。さらに、多くの身体不自由な使用者は、狭い通路や階段などのような単純な物理的障壁のために、利用できるトイレルームに入る際に厳しい困難を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような背景に基いて、本発明の目的は、パッケージから引抜き可能で尿道への直接の挿入の準備が整った実質的に消毒状態のカテーテルを有し、間欠的なカテーテル挿入の利用者の生活の全体の質を顕著に改良する使用準備の整った尿カテーテル組立体を提供することで、いかなるタイプの環境においても間欠的な尿道カテーテル挿入の実施を改良すると共に容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のこの目的及び他の目的を満たすために、以下に述べるように、本発明 による尿道カテーテルは、そのパッケージが、前記低摩擦表面特性の長時間の維持及び使用準備の整ったカテーテル組立体の提供のために、前記液体膨潤媒体で前処理されたカテーテルの収容のために気体不浸透性材料の壁で作られていることを特徴とする。
【0011】
「気体不浸透性」材料とは、本明細書においては、5年にまで達し得る、典型的には36か月に達し得るカテーテル組立体の推薦された貯蔵寿命を超える期間の間、実際の液体膨潤媒体の蒸発による拡散に対して実質的に緊密であるあらゆる材料を意味するものと理解されるべきである。
【0012】
これにより、使用に先立っての液体膨潤媒体でのカテーテルの準備が回避され、カテーテルは、容易な開放及びカテーテルの引抜きのために設計され得るパッケージからの引抜き時にただちに、尿道への挿入のための準備が整った状態となる。
このため、パッケージの2枚のシート状フィルム材料の間の結合は、有利には、準備されたカテーテルの引抜きのためパッケージの容易な開放を許容するように形成され得る溶接結合であり得る。
【0013】
そのような溶接結合は、前記カテーテルのパッケージからの引抜きのため、前記シートを互いから分離することを許容する剥離可能結合部として設けられた部分を有し得る。
【0014】
カテーテルの親水性表面コーティングの活性化のために求められる液体膨潤媒体の量を低減するために、当該カテーテルは有利には、前記媒体が前記親水性層が設けられた表面部分に適用される活性化期間において、前記膨潤媒体が前記親水性層が設けられていないカテーテルの内部または外部表面部分と接触することを防止する手段を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、それぞれ、本発明による尿道カテーテル組立体の一実施の形態の上方平面図と断面図である。
【図2】図2は、それぞれ、本発明による尿道カテーテル組立体の一実施の形態の上方平面図と断面図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示されたカテーテルパッケージの開口状態を示している。
【図4】図4は、親水性表面コーティングの活性化のために求められる液体膨潤媒体の量を低減するための手段が設けられたカテーテルの一部を示している。
【図5】図5は、別の実施の形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明は、添付の図面に示された実施の形態により、詳細に説明される。
【0017】
図1及び図2は、それぞれ、本発明による尿道カテーテル組立体の一実施の形態の上方平面図と断面図である。
【0018】
図3は、図1及び図2に示されたカテーテルパッケージの開口状態を示している。
【0019】
図4は、親水性表面コーティングの活性化のために求められる液体膨潤媒体の量を低減するための手段が設けられたカテーテルの一部を示している。
【0020】
図5は、別の実施の形態を示している。
【0021】
図1及び図2に示す実施の形態において、本発明の尿道カテーテル組立体は、使用者の膀胱の間欠的なカテーテル挿入を意図しており、カテーテルの尿道を通る導入にとって好適な断面及び長手方向寸法のカテーテル管2を有する尿道カテーテル1を備えている。
【0022】
カテーテル管2は、末端の入口端3から延びている。入口端3には、尿入口開口4が、基部側の端に向かって設けられている。カテーテル管2は、当該基部側の端において、膀胱から取出された尿の尿収集袋(図示せず)への輸送のためのホース部材(図示せず)とカテーテルとの接続のために設計された出口部材5に、接続されている。
【0023】
末端からのその長さの実質的な部分において、図示の実施の形態では、カテーテル管は、それ自体は公知の種類の親水性表面コーティング6で、その外部表面を被覆されている。そのコーティング6は、カテーテルの使用に先立つ液体膨潤媒体での準備によって、カテーテル表面の極度な低摩擦特性を提供し、カテーテルが尿道の壁を損傷の危険に曝すことなく尿道を通って極めて容易に摺動することを可能にする。親水性表面層は、しかし、他の手段によって提供され得るし、尿道内に位置付けられる活動部分が全体に親水性材料で作られたカテーテル管を含み得る。
【0024】
カテーテル1は、その全体が、例えばアルミナを有する多層フィルム材料のような気体不浸透性熱可塑性フィルム材料の2つのシート8、9によって形成されたパッケージ7内に収容されている。それらのシートは、カテーテル管2の周囲に狭い空胴11と、出口部材または接続部材5の外形寸法に適合する過渡的部分13を介して空胴11に結合する幅広端部12と、を規定する結合部からなる溶接結合線10に沿って、共に溶接されている。
【0025】
本発明によれば、カテーテル1の親水性表面コーティング6は、カテーテル1のパッケージ7内への配置に先立って、あるいは、前記配置の直後であってパッケージを閉塞する前に、液体膨潤媒体での処理によってその低摩擦特性を活性化するように準備される。溶接結合線10はカテーテル管2の周囲に狭い空胴11を与えるように配置されているので、親水性コーティング6の準備のために必要な膨潤液体の量は、低く維持され得る。複数の実験は、空胴の好適な設計によって、膨潤液体の量が2から50mlの体積、好ましくは女性用カテーテルでは2から15ml、男性用カテーテルでは5から30mlの体積に低減され得ることを示した。
【0026】
準備されているカテーテル1をパッケージ7から引抜くことを容易にするために、図3に示すように、溶接結合は、カテーテル管の末端の近傍において、可塑性フィルムシート8及び9の容易な分離を許容する剥離結合部を提供する部分10aを有している。これにより、パッケージ7自体は、使用者により把持され得るアプリケータとして機能して、汚すことなくカテーテル管の導入を許容する。 パッケージ7の気体不浸透性のために、膨潤媒体は、溶接の完了に先立っての組立作業中のパッケージ内に導入され得て、これにより直ちに親水性コーティングが準備される。パッケージは、それ自体、コーティングが乾燥することを防止し、表面コーティングの低摩擦特性を維持して、常にカテーテルを使用準備の整った状態に維持する。このことは、さらなる準備工程が使用前に必要とされないで、作業は、要求される準備期間に起因する遅れなしで、カテーテルの即時の取出しのためのパッケージ7の開放にまで減らされる。
【0027】
膨潤液体の量を制限するという要望のために、カテーテルは、その低摩擦特性を活性化するための親水性コーティングの準備のために必要な期間中に、膨潤液体が親水性コーティング6が設けられていないカテーテル1の内部または外部表面部分と接触することを防止する手段を、有し得る。そのような手段は、単純な態様では、前記内部または外部表面部分に、活性膨潤媒体によって溶解可能な材料のフィルム層55を適用すること、を含み得る。
【0028】
図4に示すように、これは、最も単純な態様で、カテーテル入口開口4の上位にそのようなフィルム層55を適用することによってなされ得る。これにより、膨潤媒体の実質的な全量は、効果的に、親水性表面コーティングの準備のために用いられる。
【0029】
図5には、カテーテルパッケージ51が尿収集袋52と一体に形成された別の実施の形態が図示されている。前述のように利用できるトイレルームに入る際に厳しい困難を有する四肢麻痺のような身体不自由な使用者にとって、そのような尿収集袋のカテーテルパッケージとの一体化は、カテーテルの使用を完全にトイレルームの利用性から独立させるという重要な実際上の利点である。カテーテル1は、収集袋52に結合する相対的に狭い先細部53内に位置付けられている。この場合、カテーテル1は、使用中に、パッケージ51から完全に取外されるわけではない。その代わりに、先細部53の末端部が、パッケージ51を構成する2枚の可塑性フィルムシートの剥離による分離によって、開放され得る。これにより、カテーテル1は、図3の実施の形態のために前述されたような作業によって導入され得る。
【0030】
本発明によるカテーテル組立体は、ある短い期間存続する十分な気体不浸透性を有する個別のパッケージ内に包装された複数のカテーテルを含み得る。前記個別のパッケージは、所定の長期間の気体不浸透性を提供する共通パッケージ内に配置される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面の少なくとも一部に、カテーテルの使用に先立つ液体膨潤媒体での処理によってカテーテルの低摩擦表面特性をもたらすことを意図された親水性表面層(6)を有する少なくとも1つの尿カテーテル(1)と、カテーテル (1)の収容のための空胴(11)を有するカテーテルパッケージ(7)と、を備えた尿カテーテル組立体であって、
パッケージ(7)が、前記低摩擦表面特性の長時間の維持及び使用準備の整ったカテーテル組立体の提供のために、前記液体膨潤媒体で前処理されたカテーテルの収容のため気体不浸透性材料の壁で作られていることを特徴とする尿カテーテル組立体。
【請求項2】
カテーテルパッケージ(7)は、カテーテル(1)を収容する空洞(11)を規定する気体不浸透性結合部(10)によって互いに接続された気体不浸透性フィルム材料の2つのシート(8、9)から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の尿カテーテル組立体。
【請求項3】
カテーテルパッケージ(7)は、全体に細長形状であり、前記結合部 (10)が略直線方向にカテーテル(1)を収容するように前記空洞(11)を規定するよう設けられていることを特徴とする請求項2に記載の尿カテーテル組立体。
【請求項4】
前記結合部(10)は、断面がカテーテル(1)を狭く取り囲むように前記空洞(11)を規定するように設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の尿カテーテル組立体。
【請求項5】
前記結合部(10)は、溶接接合部であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の尿カテーテル組立体。
【請求項6】
前記溶接接合部(10)は、前記カテーテル(1)をパッケージ(7)から引抜くために、前記シート(8、9)をお互いから分離する剥離結合部を提供する、区画(12)から離れたパッケージの端の部分(10a)を有することを特徴とする請求項5に記載の尿カテーテル組立体。
【請求項7】
カテーテル(1)は、前記媒体が前記親水性コーティング(6)が設けられた表面部分に適用される活性期間の間に、前記膨潤媒体が前記親水性コーティング(6)が設けられていないカテーテルの内部または外部表面部分と接触することを防止する手段を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の尿カテーテル組立体。
【請求項8】
前記手段は、前記親水性コーティングが設けられていない前記部分に適用される前記膨潤媒体によって溶解可能な材料のフィルム層(55)を有していることを特徴とする請求項7に記載の尿カテーテル組立体。
【請求項9】
前記パッケージは、尿の収集のためにカテーテル(1)に接続された袋(52)を含んでいることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の尿カテーテル組立体。
【請求項10】
前記液体膨潤媒体は、水溶性溶剤、等張性水溶液、塩化ナトリウムと無菌水の等張性水溶液、を有する群から選択されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の尿カテーテル組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−213902(P2009−213902A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116405(P2009−116405)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【分割の表示】特願2007−260980(P2007−260980)の分割
【原出願日】平成9年9月18日(1997.9.18)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】