説明

侵入物体検出装置

【課題】監視画像上の、熱変化に基づいて侵入物体を検知する検知エリアを表す領域を高精度に特定して、侵入物体の検出精度を向上できる侵入物体検出装置を提供する。
【解決手段】侵入物体検出装置1は、検知エリアからの熱線に応じた検知レベルを出力するセンサ部20と、監視画像を取得する撮像部10と、変化領域を抽出する変化領域抽出手段71と、検知レベルが所定値になったときの監視画像から抽出された変化領域の位置を人像位置として抽出する人像位置抽出手段73と、所定期間に抽出された複数の人像位置に基づいて、人の移動範囲の端部を監視画像上で検出し、その端部に基づいてセンサ領域を特定するエリア特定手段74と、変化領域がセンサ領域またはセンサ領域外のいずれに存在するかに応じて異なる異常判定処理を実行する異常監視手段75を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知エリア内の熱変化とその検知エリアを含む監視領域を撮影した画像に基づいて侵入物体を検出する侵入物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、監視領域に侵入する侵入物体を高精度に検出するために、異なる種類のセンサを用いて侵入物体を検出する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、侵入物体を監視するセンサとして、焦電型赤外線センサ(PIRセンサ;Passive InfraRed Sensor)と画像センサとを併用した複合型監視装置が開示されている。特許文献1に開示された複合型監視装置は、二種類のセンサによる検出結果を統合的に判断して侵入物体の有無を判定する。
【0003】
特許文献1に開示された複合型監視装置は、PIRセンサが侵入物体を検知する検知エリアと画像センサが撮像する撮影範囲とを等しくすることを前提としている。しかしながら、このような複合型監視装置では、監視目的、設置環境等に応じてPIRセンサの検知エリアと画像センサの撮影範囲を変更することが好ましい場合もある。
例えば、画像センサの撮影範囲をPIRセンサの検知エリアより広く設定することにより、監視者は、侵入物体が検出されたとき、画像センサが撮像した監視画像を閲覧して発報要因及び周囲の状況を容易に把握することができる。また複合型監視装置は、監視領域内にPIRセンサが侵入物体を誤検出する要因(その温度が頻繁に変化するような物体等)が含まれる場合、その要因がPIRセンサの検知エリアに含まれないように、画像センサの撮影範囲に対してPIRセンサの検知エリアを狭くしておく必要がある。また監視領域のうち重点的に監視すべき部分のみをPIRセンサの検知エリアとすることが好ましい場合もある。
【0004】
このように画像センサの撮影範囲とPIRセンサの検知エリアが異なる場合、複合型監視装置は、画像センサによる検出結果とPIRセンサによる検出結果を対応付けるために、画像センサの撮影範囲とPIRセンサの検知エリアの関係を認識する必要がある。そのため、例えば検知エリアが撮影範囲の一部となる場合、複合型監視装置は、監視画像上の検知エリアの位置(範囲)を特定する必要がある。しかし、特に画像センサのカメラの向きとPIRセンサの向きとを任意に変更できる場合、監視画像上の検知エリアの範囲はカメラの向きとPIRセンサの向きの相対的な関係に応じて変化するため、監視画像上の検知エリアの範囲を特定するのは困難である。
【0005】
これに対して、特許文献2には、監視画像上のPIRセンサの検知エリアの範囲を特定するための技術が開示されている。特許文献2に開示された監視用画像処理装置は、操作者によってウォークテストが実施された際に撮影した監視画像上の移動物体(操作者)の位置をモーションデテクションの画像処理により抽出し、PIRセンサが物体を検出したときの監視画像上の移動物体の位置の集合を検知エリアとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−331252号公報
【特許文献2】特開2006−178515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、PIRセンサを用いる場合、一又は複数の検知ゾーンで構成された検知エリアが設定され、PIRセンサは、焦電素子を用いて各検知ゾーンにおける熱エネルギーの変化を検出する。このような特性上、PIRセンサは、熱エネルギーの変化を検出するためには人体の移動に伴うある程度の時間が必要なため、PIRセンサが熱エネルギーの変化を検出したときの人体の位置と、実際に人体が存在していた検知エリア(検知ゾーン)とにずれが生じる場合もある。
従って、特許文献2に記載の技術では、監視画像上のPIRセンサの検知エリアの範囲を正しく特定できない場合があった。そのため、画像センサとPIRセンサを併用した複合型監視装置に特許文献2に記載の技術を適用しても、画像センサの撮像範囲とPIRセンサの検知エリアの関係を正しく認識することができない場合がある。この場合、複合型監視装置は、画像センサによる検出結果とPIRセンサによる検出結果を対応付けることができず、侵入物体の検出精度を十分に向上させることができない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、検知エリア内の熱変化とその検知エリアを含む監視領域を撮影した監視画像に基づいて侵入物体を検出する侵入物体検出装置において、監視画像上の検知エリアを表す領域を高精度に特定して、侵入物体の検出精度を向上することができる侵入物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するための本発明は、人の移動を制限する制限物の近傍を検知エリアとし、検知エリアから放射される熱線に応じた検知レベルを出力するセンサ部と、制限物及び検知エリアを含む監視領域を撮影した監視画像を所定周期で取得する撮像部と、を有する侵入物体検出装置を提供する。かかる侵入物体検出装置は、監視画像における変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、監視画像上における検知エリアを示すセンサ領域を特定する登録処理を実行するエリア設定手段と、検知レベル及び監視画像に基づき監視領域内の侵入物体を検出する異常判定処理を実行する異常監視手段と、を備え、エリア設定手段は、センサ部によって出力された検知レベルが検知エリアに人が存在することを示す値になったときに撮像部により取得された監視画像から抽出された変化領域の位置を人像位置として抽出する人像位置抽出手段と、所定期間の間に人像位置抽出手段によって抽出された複数の人像位置に基づいて、制限物によって制限される人の移動範囲の端部を監視画像上で検出し、当該移動範囲の端部に基づいてセンサ領域の制限物側の端部である第1の端部を定めてセンサ領域を特定するエリア特定手段と、を有し、異常監視手段は、変化領域がセンサ領域またはセンサ領域外のいずれに存在するかに応じて異なる異常判定処理を実行する。
【0010】
また、本発明に係る侵入物体検出装置において、監視画像上の各位置について、所定期間の間に抽出された人像位置の出現頻度を求め、隣接する位置に対して出現頻度が急減する位置を移動範囲の端部とすることが好ましい。
【0011】
あるいは、本発明に係る侵入物体検出装置において、人像位置抽出手段は、検知レベルが検知エリアに人が存在することを示す値になったときの人像位置と検知レベルとを関連付けて記憶し、エリア特定手段は、監視画像上において人像位置と関連付けて記憶された検知レベルが隣接する位置に対して急減する位置を移動範囲の端部とすることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る侵入物体検出装置において、異常監視手段は、新たに抽出された変化領域がセンサ領域の第1の端部の近傍に存在する場合は、当該変化領域が侵入物体によるものではないと判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る検知エリア内の熱変化とその検知エリアを含む監視領域を撮影した監視画像に基づいて侵入物体を検出する侵入物体検出装置は、監視画像上の検知エリアを表す領域を高精度に特定して、侵入物体の検出精度を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した警備システムの全体システム構成を示す概略構成図である。
【図2】(a)は、撮像部の撮影範囲とセンサ部の検知エリアとを斜め方向からみた図であり、(b)は撮像部の撮影範囲とセンサ部の検知エリアとを鉛直方向からみた図であり、(c)は、撮像部の監視画像とセンサ部の検知エリアとを表す図である。
【図3】人像位置の出現頻度分布の一例を示すである。
【図4】エリア設定手段による登録モード時の処理を示すフローチャートである。
【図5】変化領域抽出手段及び異常監視手段による警戒モード時の処理を示すフローチャートである。
【図6】検知レベルのピーク分布の一例を示すである。
【図7】エリア設定手段による登録モード時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態である侵入物体検出装置について図を参照しつつ説明する。
この侵入物体検出装置は、検知エリア内の熱変化に基づいて侵入物体を検知するとともに、その検知エリアを含む監視領域を撮影した監視画像を取得する。検知エリアは、人の移動を制限する物体(建物の壁などの構造物など)に隣接する領域とし、監視画像には、その制限物体の一部又は全部が含まれるものとする。特に、この侵入物体検出装置では、作業者が監視領域内を歩くことにより監視画像上における検知エリアの位置を確認するウォークテスト(テスト歩行)が実施される。このとき侵入物体検出装置は、検知エリア内の熱変化により人体が存在すると判別したときに取得した監視画像から人体の位置を抽出する。そして侵入物体検出装置は、人体の位置の出現頻度の分布に基づいて監視画像上の検知エリアの境界を特定する。さらに侵入物体検出装置は、監視画像上の検知エリアを表す領域とそれ以外の領域とで異なる判定処理により侵入物体の有無を判定する。これにより、侵入物体検出装置は、監視画像上の検知エリアを表す領域とそれ以外の領域とを高精度に区別し、各領域において適切な判定処理により侵入物体の有無を判定することができるので、侵入物体の検出精度を向上することができる。
【0016】
図1は、本発明を適用した警備システムの全体システム構成を示す図である。図1に示すように、警備システム100は、侵入物体検出装置1、2と、警備装置3と、操作表示器4と、監視センタ装置5とを有する。そして侵入物体検出装置1、2と警備装置3と操作表示器4は、監視領域またはその近傍に設置され、無線または有線のローカルエリアネットワーク6により接続される。一方、監視センタ装置5は、遠隔地にある警備センタに設置され、公衆電話回線などの広域通信ネットワーク7を介して警備装置3と接続される。
【0017】
そして侵入物体検出装置1及び2は、監視領域内に侵入した侵入物体を検知すると、侵入物体を検知したことを示す侵入物体検知信号並びにそのとき監視領域を撮影した監視画像を、ローカルエリアネットワーク6を通じて警備装置3へ送信する。警備装置3は、侵入物体検出装置1または2から侵入物体検知信号及び監視画像を受信すると、侵入物体検知信号、監視画像及び侵入物体が検知された監視領域を特定する識別コードなどの情報を監視センタ装置5へ送信する。なお、侵入物体が検知された監視領域を特定する識別コードは、例えば、侵入物体検出装置1、2、警備装置3または対応する監視領域の識別コードなどとすることができる。
【0018】
また侵入物体検出装置1及び2は監視画像を定期的に操作表示器4へ送信してもよい。操作表示器4は、例えば、タッチパネルディスプレイを有し、利用者が操作コマンドを入力するための操作ボタンを表示する。そして利用者が表示された操作ボタンの何れかを押下すると、操作表示器4は、その操作ボタンに応じた操作コマンドに従って侵入物体検出装置1または2から受信した監視画像の表示等を行う。なお、操作表示器4は、タッチパネルディスプレイではなく、情報を表示するためのディスプレイ装置と、キーパッドまたはトラックボールなど、利用者が入力操作を行うための入力装置とを別個に有していてもよい。
【0019】
なお、監視領域は、屋外でもよいし、屋内でもよいが、本実施形態では、監視領域として家屋の庭を監視する場合を例に説明する。
また侵入物体検出装置1、2及び操作表示器4は、それぞれ信号線により警備装置3と接続され、警備装置3を介して各装置間の通信を行う構成にしてもよい。
また警備装置3は、侵入物体検出装置1または2から侵入物体検知信号を受信したとき、侵入異常の有無を判定してから、侵入物体検知信号、監視画像及び識別コードなどの情報を監視センタ装置5へ送信するようにしてもよい。その場合、例えば警備装置3に警備システムの利用者が携帯するICタグを検知するリーダを別途設けておく。そして警備装置3は、そのリーダが監視領域においてICタグを検知していないときに侵入物体検出装置1または2から侵入物体検知信号及び監視画像を受信した場合のみ侵入異常と判定する。
【0020】
以下、侵入物体検出装置1及び2の構成及び動作について説明する。なお、侵入物体検出装置1及び2の構成及び動作は同じであるため、以下では代表して侵入物体検出装置1について説明する。
【0021】
侵入物体検出装置1は、例えば家屋の屋外側の壁面等に設置され、窓または扉を備える壁際および周辺の空間を、放射される熱線と撮影した画像により監視する。すなわち、侵入物体検出装置1は、保護すべき対象である家屋内部への侵入行為を屋外側で事前に検出するものであり、そのために家屋内部との境界を成す壁(制限物体)に沿った、壁際の空間を監視する。また侵入物体検出装置1は、監視領域等を設定する登録モードと、窓または扉からの侵入を企てる侵入者を監視する警戒モードの二つの動作モードの何れかにより動作する。そのために、侵入物体検出装置1は、撮像部10と、センサ部20と、記憶部30と、操作部40と、表示部50と、通信部60と、監視処理部70とを有する。
【0022】
撮像部10は、センサ部20が侵入物体を検知する検知エリアを含む監視領域を撮影した監視画像を取得する。そのために、撮像部10は、CCD、C−MOSセンサなどの光電変換器で構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に監視領域の像を結像する結像光学系と、2次元検出器から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換する電気回路などで構成される。また撮像部10は、NTSCタイプのカメラでもよく、あるいはハイビジョン対応などの高解像度タイプのデジタルカメラでもよい。本実施形態の撮像部10のレンズの画角は90°〜180°であり、撮像部10は窓または扉を備える壁面、及び検知エリアである壁際の空間を撮影可能なように設置される。そして撮像部10は、一定の時間間隔(例えば1/5秒)ごとに撮影を行って監視画像を取得し、その監視画像を監視処理部70へ送信する。
監視画像は、例えば、横340画素×縦240画素を持ち、各画素が0〜255の画素値を有するデジタル画像データとして表現される。なお、撮像部10は、監視画像をカラー画像として作成してもよい。
【0023】
センサ部20は、焦電素子および光学系を用いた焦電型赤外線センサ(PIRセンサ;Passive InfraRed Sensor)を備える。PIRセンサが侵入物体を検知する検知エリアは、一又は複数の検知ゾーンによって構成される。各検知ゾーンは一対のゾーンからなり、それぞれ侵入物体を検知すべき領域内に定められる。
PIRセンサは、例えば逆極性で接続された一対の焦電素子を備える。そしてPIRセンサは、各検知ゾーンの一対のゾーンのうち、一方のゾーンからの赤外線(熱線)を光学系により集光して一方の焦電素子で受光して正電圧に変換する。またPIRセンサは、各検知ゾーンの他方のゾーンからの赤外線(熱線)を光学系により集光して他方の焦電素子で受光して負電圧に変換する。そのため、一対のゾーンを横切る方向に侵入物体が通過すると、PIRセンサにおいて正電圧から負電圧(または負電圧から正電圧)への電圧変化が発生する。
そこで、センサ部20は、この電圧変化の大きさに基づいて検知エリアに侵入物体が存在する確かさの度合いを表す検知レベルPを求める。なお、検知レベルPは、電圧変化が大きくなるほど大きい値となるものであり、例えば電圧変化の大きさ自体を検知レベルPとしてもよい。そしてセンサ部20は、検知レベルPを示す検知レベル情報を監視処理部70へ送信する。
【0024】
侵入物体検出装置1は、画像により家屋の庭(屋外)を監視する場合、ゴミ袋等の飛来物、植栽等を侵入物体として誤って検出するおそれがあるため、侵入物体の検出基準をある程度厳しくする必要がある。一方、侵入物体検出装置1は、家屋の壁際に接近している侵入者については確実に検出する必要がある。そこで、本実施形態の侵入物体検出装置1は、監視画像に基づいて屋外の広い範囲について侵入物体を監視しつつ、侵入の危険性の高い窓または扉のある壁際の領域についてはPIRセンサを併用して重点的に侵入物体を監視する。
つまり本実施形態では、家屋の壁際の空間がセンサ部20の検知エリアとして設定され、その検知エリアを含む領域が撮像部10の撮像する監視領域として設定される。そのためセンサ部20の視野角は撮像部10の画角より狭くてもよく、例えば20°程度でよい。
【0025】
図2(a)は、撮像部10の撮影範囲とセンサ部20の検知エリアとを斜め方向からみた図である。図2(a)において、画角201は、撮像部10の画角であり、撮像部10が撮影範囲200を撮影するように設定される。また視野角211は、センサ部20の視野角であり、センサ部20が検知エリア210の領域の侵入物体を検知するように設定される。図2(a)に示すように、本実施形態では監視画像に基づいて侵入物体を監視する領域のうち重点的に監視すべき領域をPIRセンサにより監視するように、センサ部20の検知エリア210は、撮像部10の撮影範囲200の一部となるように設定される。
【0026】
図2(b)は、撮像部10の撮影範囲とセンサ部20の検知エリアとを鉛直方向からみた図である。図2(b)において、画角212は、撮像部10の画角であり、撮像部10が撮影範囲202を撮影するように設定される。また視野角213は、センサ部20の視野角であり、センサ部20が検知エリア203の領域の侵入物体を検知するように設定される。図2(b)に示すように、侵入物体検出装置1は、家屋に侵入しようとする侵入物体を検知し撮影できるように、家屋の壁220(縦線部分)に据え付けられる。そして撮像部10の撮影範囲202とセンサ部20の検知エリア203がそれぞれ壁際を含むように設定され、撮影部10の撮影範囲202が壁220の壁面を含むように設定される。
【0027】
図2(c)は、撮像部10の監視画像とセンサ部20の検知エリアとを表す図である。図2(c)において、画像204は、撮像部10が撮像した監視画像であり、監視画像204内の領域214(ハッチング部分)は、センサ部20の検知エリアを表し、領域221(縦線部分)は、家屋の壁220が撮像された領域を表す。図2(c)に示すように、撮像部10は家屋の壁220に沿った空間を撮像し、センサ部20は監視画像204内の家屋の壁220に沿った領域214を検知エリアとしている。そして監視画像204は、検知エリア214を含むように設定される。
【0028】
このように本実施形態の侵入物体検出装置1では、撮像部10の撮影範囲は、センサ部20の検知エリアを含むように設定されるので、検知エリアが家屋の壁際に設定される場合、監視画像には左右いずれかの端側にその壁面が撮像される。そしてこの壁面からセンサ部20の視野角及び撮像部10の画角の大きさによって定まる所定の大きさの領域が、監視画像上のPIRセンサの検知エリアを表す領域(以降、センサ領域と称する)となる。
【0029】
また本実施形態では、センサ部20は、パン機能を備え、撮像部10の視軸に対して水平(左右)方向に回動可能なものとする。つまりセンサ領域の位置は、垂直(縦)方向には固定であり、水平(横)方向には変動する。なおセンサ部20および撮像部10の水平方向の向きは、侵入物体検出装置1の設置環境等に応じて、設置者の手動により調整されるが、少なくとも撮像部10の撮影範囲がセンサ部20の検知エリアを含むように設定される。また撮像部10も、パン機能を備え、視軸を侵入物体検出装置1に対して水平方向に回動可能なものとしてもよい。またセンサ部20及び撮像部10は、さらにチルト機能を備え、それぞれの視軸を侵入物体検出装置1に対して垂直方向にも回動可能なものとしてもよい。
【0030】
記憶部30は、フラッシュメモリ(登録商標)などの不揮発性半導体メモリ、揮発性半導体メモリ、磁気ディスク(HDD)、またはCD−ROM、DVD−RAMなどの光ディスクドライブおよびその記録媒体で構成される。そして記憶部30は、監視処理部70上で実行されるプログラム、そのプログラムにより使用される各種設定パラメータ、各種処理の結果あるいは途中結果として得られた計算値または画像などを記憶する。そして記憶部30は、監視処理部70からの制御信号にしたがって、上記の計算値または画像などを記憶し、あるいは記憶している各種の情報を監視処理部70へ出力する。
【0031】
操作部40は、キーボード、マウス等の入力デバイスで構成され、操作者から登録モードと警戒モードの切換操作または登録モード時の各種操作を受け付け、それらの操作に対応する信号を監視処理部70へ出力する。
【0032】
表示部50は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成され、監視処理部70から受け取った各種情報などを表示して、操作者へ報知する。
【0033】
なお各種操作の入力及び各種情報の表示は、PDA(Personal Digital Assistants)等の侵入物体検出装置1とは別の端末により実現してもよい。その場合、操作部40及び表示部50は、通信部60を介してPDA等の端末と通信することにより、各種操作の入力及び各種情報の表示を実施する。
【0034】
通信部60は、侵入物体検出装置1と警備装置3との間でローカルエリアネットワーク6などの通信ネットワークを介して各種の設定信号及び制御信号などを送受信する入出力インタフェースであり、イーサネット(登録商標)などの各種の通信インタフェース回路及びそれらを駆動するドライバソフトウェアなどで構成される。
【0035】
監視処理部70は、組み込み型のマイクロプロセッサユニットとその周辺回路を有し、侵入物体検出装置1全体を制御する。また監視処理部70は、登録モードでは、撮像部10から受け取った監視画像上のセンサ領域を特定し、監視モードでは、撮像部10から受け取った監視画像とセンサ部20から受け取った検知レベル情報に基づいて監視領域内の侵入物体を検出して警報を発する。そのために、監視処理部70は、変化領域抽出手段71と、エリア設定手段72と、異常監視手段76を有する。監視処理部70が有するこれらの各部は、例えば、マイクロプロセッサユニット上で動作するプログラムの機能モジュールとして実装される。
【0036】
変化領域抽出手段71は、撮像部10が監視画像を取得する度に、監視画像から移動物体が写された領域を抽出する。例えば変化領域抽出手段71は、撮像部10によって連続して取得される複数の監視画像から、フレーム間差分処理または背景差分処理を利用して、輝度値の時間的な変化のある変化領域を抽出する。そして変化領域抽出手段71は、抽出した変化領域を記憶部30に記憶する。変化領域は、輝度変化が所定以上生じた画素がある程度まとまっている領域であり、ノイズレベルの変化や極小領域のみの変化は除去される。
【0037】
エリア設定手段72は、登録モードにおいて、作業者がウォークテストを実施しているとき、センサ部20から取得した検知レベル情報および撮像部10から取得した監視画像に基づいてセンサ領域を特定する。そのために、エリア設定手段72は、人像位置抽出手段73と、エリア特定手段74と、エリア登録手段75とを有する。
【0038】
なお、エリア設定手段72は、ウォークテストが実施されているか否かを、操作部40からウォークテストの開始操作、終了操作がされたことを示す信号を受信することにより判別する。あるいは、ウォークテストの開始操作を示す信号を受信してから所定期間経過後に自動的にウォークテストを終了してもよい。
【0039】
人像位置抽出手段73は、ウォークテストの実施中、すなわち作業者が監視領域内を歩行しているときに、センサ部20から検知レベル情報を受け取り、検知レベルPが所定の基準値Z1以上であるか否かを判定する。そして人像位置抽出手段73は、検知レベルPが基準値Z1以上である場合、そのとき変化領域抽出手段71によって抽出された変化領域の重心位置を人像位置として抽出し、記憶部30に記憶する。
なお、基準値Z1は、検知レベルPが検知エリアに人が存在することを示す値に設定される。またウォークテストにおいて、短時間に多くのサンプルを取得できるように、警戒モード中よりも人を検出しやすくすることが好ましく、そのために基準値Z1は、警戒モードにおいて侵入物体を判定するための閾値以下の値とすることが好ましい。
【0040】
また侵入物体装置1において、センサ部20と撮像部10はそれぞれ独立したタイミングで動作するため、センサ部20が検知レベル情報を監視処理部70へ出力するタイミングと撮像部10が監視画像を取得するタイミングは、必ずしも一致しない。従って人像位置抽出手段73が検知レベルを判定するタイミングと、変化領域抽出手段71が変化領域を抽出する画像が取得されたタイミングも、必ずしも一致しない。そのため人像位置抽出手段73は、検知レベルPが基準値Z1以上であると判定した直前の監視画像の変化領域から人像位置を抽出する。あるいは人像位置抽出手段73は、検知レベルPが基準値Z1以上であると判定した直後の監視画像の変化領域から人像位置を抽出する。
【0041】
エリア特定手段74は、ウォークテストの終了後、ウォークテスト中に記憶部30に記憶された人像位置を解析して、人の移動を制限する制限物によって制限される人の移動範囲の端部を監視画像上で検出する。そしてエリア特定手段74は、検出した人の移動範囲の端部から監視画像上の制限物の位置を特定する。本実施形態では、制限物として家屋の壁を想定し、エリア特定手段74は、制限物の位置として、壁面が写された位置である壁面位置を特定する。図2(b)、(c)に示した通り、本実施形態では、撮像部10は家屋の壁220を横方向から撮像し、かつ監視領域を水平方向から撮像するように設置される。そのため監視画像上の壁面が撮像される水平位置は、撮像部10の近傍(監視画像上の下側)と遠方(監視画像上の上側)とで大きく異ならない。そこでエリア特定手段74は、壁面位置を監視画像上の水平位置により特定する。
図2(b)、(c)に示すように、壁際を監視する場合、人の移動範囲はその一端で壁面により制限され、他端では制限されない。従って、撮影範囲内をテスト歩行した場合、センサ部20で人を検出したときの人像位置は、壁側では実際の人の位置とのずれは生じ難く、逆側では移動が妨げられないためずれが生じ易い。そこで、エリア特定手段74は、ウォークテスト時の人の移動範囲について、水平方向のいずれの端部が壁側であるかを検出する。
【0042】
本実施形態では、エリア特定手段74は、まず、記憶部30に記憶された人像位置について監視画像上の各水平位置における出現頻度分布を作成する。このとき、測定誤差の影響を緩和するために、エリア特定手段74は、ある程度の範囲毎に人像位置の出現回数を求めることが好ましい。例えば、エリア特定手段74は、監視画像を水平方向に所定幅を持つ複数の領域に分割し、分割した領域毎に人像位置が記録された回数を求める。あるいは、エリア特定手段74は、監視画像上の水平位置毎に、その水平位置を中央とする所定幅の領域において人像位置が記録された回数を求め、各水平位置に対応する出現回数としてもよい。
【0043】
図3に、人像位置の出現頻度分布の一例を示す。図3において、グラフ300は、監視画像上の人像位置の出現頻度分布を表し、横軸は監視画像上の水平位置を、縦軸は各位置における人像位置の出現回数を表す。グラフ300では、人像位置の出現回数は、座標X1より左側の一定範囲では一定以上の値をもつが、座標X1で急激に減少し、座標X1より右側の範囲では0となっている。つまり、この場合、座標X1より右側の位置に相当する場所には作業者は移動していず、その近傍に壁面位置X2が存在すると推定できる。
【0044】
そこで、エリア特定手段74は、作成した人像位置の出現頻度分布について、出現回数が急激に減少する位置(以降、エッジ位置と称する)を求める。例えば、エリア特定手段74は、人像位置の出現回数が所定数以下であり、且つ、その隣接する位置における人像位置の出現回数に対して所定閾値以上減少する位置をエッジ位置とする。さらには、以降の水平位置での出現回数が0又は所定数以下で継続していることを条件とするのが好ましい。あるいは、エリア特定手段74は、最小2乗法等を用いて人像位置の出現回数の近似曲線を生成し、各水平位置における近似曲線による値が所定値以下であり、その隣接する位置における近似曲線による値に対して所定閾値以上減少する位置をエッジ位置としてもよい。また、出現頻度が急減した位置より以後の水平位置において、出現頻度が0又は所定以下で継続していることをエッジ位置判定の条件に加えてもよい。なお、これらの減少幅に関する所定閾値は、例えば実験によりウォークテストを実施し、人像位置の出現回数を計測することにより適切な値を決定できる。また、本例では、減少幅だけでなく、その水平位置での絶対数(値)が所定以下であることをエッジ位置の条件とする。これは、壁により移動が制限される側では、出現頻度が0若しくは極めて0に近い数(値)になるためである。
なお、図2(b)、(c)に示すように、監視者が画像によって周囲の状況をより詳しく把握できるように、一般に、撮像部10は家屋の壁220と反対側の領域をより広範囲に撮像するように設置される。つまり右方向に壁面が撮像される場合、その壁面は監視画像上の中心位置より右側に撮像され、左方向に壁面が撮像される場合、その壁面は監視画像上の中心位置より左側に撮像される。従って、エリア特定手段74は、監視画像上の中心位置より右側の領域では、左側に隣接する位置に対する人像位置の出現回数の減少量に基づいてエッジ位置を抽出し、監視画像上の中心位置より左側の領域では、右側に隣接する位置に対する人像位置の出現回数の減少量に基づいてエッジ位置を抽出するようにしてもよい。
【0045】
そしてエリア特定手段74は、求めたエッジ位置を壁面位置であると推定する。なお、作業者が壁面に接する位置まで移動しないことを考慮して、エリア特定手段74は、求めたエッジ位置に対して人像位置の出現回数の少ない側、すなわち人の移動範囲の逆側(図3に示した例では右側)に所定量ずらした位置を壁面位置であると推定してもよい。なお、この所定量も、例えば実験によりウォークテストを実施し、エッジ位置と壁面位置の差を計測することにより適切な値を決定できる。
【0046】
そしてエリア特定手段74は、推定した壁面位置をセンサ領域の制限物側の端部とし、その壁面位置から人像位置の出現回数の多い側、すなわち人の移動範囲側(図3に示した例では左側)の、センサ部20の視野角、撮像部10の画角等に基づいて定められる大きさの領域をセンサ領域として特定する。図3に示した例では、斜線部分301がセンサ領域として特定される。
【0047】
またウォークテストの実施後にエッジ位置を検出できなかった場合、センサ部20の検知エリアは、壁面に沿った領域を含むように設定されていない可能性が高い。そこで、エリア特定手段74は、エッジ位置を検出できなかった場合、センサ部20の検知エリアが正しく設定できていない旨を表示部50に表示させて作業者に報知する。これにより、侵入物体検出装置1は、PIRセンサの向きについての人為的な設定の誤りを防止することができ、侵入監視に対する信頼性を向上することができる。
【0048】
エリア登録手段75は、エリア特定手段74によって特定されたセンサ領域の位置を示すセンサ領域情報と、センサ領域以外の領域の位置を示すセンサ領域外情報を生成し、記憶部30に登録する。
【0049】
以下に図4に示したフローチャートを参照しつつ、エリア設定手段72によって制御される登録モード時の処理について説明する。なお、以下に説明する処理は、作業者が操作部40を用いて、警戒モードから登録モードへの切換操作と、ウォークテストの開始操作を行い、エリア設定手段72がそれらの操作に対応する信号を操作部40から受け取ったタイミングで実行される。
【0050】
作業者は、操作部40を用いてウォークテストの開始操作を実施した後、監視領域全体にわたって移動する。このとき、人像位置抽出手段73は、センサ部20から検知レベル情報を受け取り、検知レベルPが基準値Z1以上であるか否かを判定する(ステップS1)。そして人像位置抽出手段73は、検知レベルPが基準値Z1未満の場合、制御をステップS1へ戻し、新たにセンサ部20から検知レベル情報を受け取るまで待機する。
【0051】
一方、人像位置抽出手段73は、検知レベルPが基準値Z1以上になると、そのとき変化領域抽出手段71によって抽出された変化領域の重心位置を人像位置として抽出し、記憶部30に記憶する(ステップS2)。その後、人像位置抽出手段73は、作業者からウォークテストの終了操作がされたか否かを判定する(ステップS3)。人像位置抽出手段73は、ウォークテストの終了操作に対応する信号を操作部40から受け取っていない場合、制御をステップS1へ戻し、ステップS1〜S3の処理を繰り返す。
【0052】
一方、人像位置抽出手段73がウォークテストの終了操作に対応する信号を操作部40から受け取った場合、エリア特定手段74は、記憶部30に記憶された人像位置の出現頻度分布を作成する(ステップS4)。エリア特定手段74は、人像位置の出現頻度分布を作成すると、作成した人像位置の出現頻度分布について、出現回数が急激に減少するエッジ位置を求める(ステップS5)。そしてエリア特定手段74は、エッジ位置を検出したか否かを判定する(ステップS6)。エリア特定手段74は、エッジ位置を検出した場合、そのエッジ位置またはそのエッジ位置に対して人像位置の出現回数の少ない側に所定量ずらした位置を壁面位置であると推定する。そしてエリア特定手段74は、推定した壁面位置から人像位置の出現回数の多い側の、センサ部20の視野角、撮像部10の画角等に基づいて定められる大きさの領域をセンサ部20の検知エリアに相当する領域(センサ領域)として特定する(ステップS7)。
【0053】
エリア特定手段74がセンサ領域を特定すると、エリア登録手段75は、センサ領域の位置を示すセンサ領域情報と、センサ領域以外の領域の位置を示すセンサ領域外情報を生成し、記憶部30に登録する(ステップS8)。
【0054】
一方、ステップS6において、エッジ位置を検出できなかった場合、エリア特定手段74は、センサ部20の検知エリアが正しく設定できていない旨を表示部50に表示させて作業者に報知する(ステップS9)。
【0055】
図1に戻って、異常監視手段76は、警戒モードにおいて、撮像部10から受け取った監視画像とセンサ部20から受け取った検知レベル情報に基づいて監視領域内に侵入した侵入物体を検知する。そして異常監視手段76は、侵入物体を検知すると侵入物体検知信号並びにそのとき撮像部10が撮影した監視画像を、通信部60を介して警備装置3へ送信する。
本実施形態では、センサ領域を監視画像とPIRセンサによる検知レベルの両方に基づいて侵入物体を検出する領域(以降、併用エリアと称する)とし、さらにセンサ領域以外の領域を監視画像のみに基づいて侵入物体を検出する領域(以降、画像単独エリアと称する)とする例について説明する。
【0056】
以下に図5に示したフローチャートを参照しつつ、変化領域抽出手段71及び異常監視手段76によって制御される警戒モード時の処理について説明する。なお、以下に説明する処理は、変化領域抽出手段71が撮像部10から監視画像を受け取ったタイミングで実行される。また警戒モード時、センサ部20は、検知レベル情報を定期的に異常監視手段76へ送信しているものとする。また以下では、異常監視手段76が侵入物体として侵入者(人物)を検出する場合を例に説明する。
【0057】
変化領域抽出手段71は、撮像部10によって時間的に連続して取得された複数の監視画像から、フレーム間差分処理または背景差分処理を利用して、輝度値の時間的な変化のある変化領域を抽出する。そして変化領域抽出手段71は、所定の大きさ以上の変化領域が抽出されたか否かを判定する(ステップS11)。なお、例えば、この所定の大きさは、人と、猫、ねずみ、虫などの小動物とを区別できるように、監視領域内の人を実際に撮像する実験により定められた、人が写っている変化領域の最小の大きさに設定される。
【0058】
異常監視手段76は、変化領域抽出手段71で所定の大きさ以上の変化領域が抽出されると、その変化領域について人である確かさの度合いを示す評価値Eを算出する(ステップS12)。本実施形態では、評価値Eは、変化領域の大きさを表す特徴量f1及び変化領域の縦横比を表す特徴量f2に基づいて算出される。特徴量f1は、変化領域に含まれる画素数であり、特徴量f2は、変化領域の外接矩形の幅と高さの比率である。異常監視手段76は、特徴量f1及びf2を算出すると、各特徴量が人の身長及び体格に基づいて定められる値に近いほど1に近くなり、その値から離れるほど0に近くなるように各特徴量を正規化した正規化値F1及びF2を求める。そして異常監視手段76は、正規化値F1及びF2を乗算した値を評価値Eとする。
【0059】
さらに異常監視手段76は、撮像部10により連続的に取得された複数の監視画像にわたって抽出された変化領域について、公知のトラッキング処理を利用して、同一物体が写っているものとして対応付けられる変化領域を検出し、対応付けられた変化領域の移動方向、移動速度等の情報も用いて評価値Eを算出してもよい。その場合、例えば、異常監視手段76は、最新の監視画像から抽出された変化領域のうち、着目する変化領域について、その着目変化領域の重心位置と、1フレーム前に取得された監視画像から抽出された全ての変化領域の重心位置との距離を求める。そして異常監視手段76は、最も重心位置間の距離の短い変化領域を、着目変化領域に写っている物体と同一物体が写っている変化領域とする。さらに異常監視手段76は、最新の監視画像における着目変化領域と、対応する1フレーム前の監視画像における変化領域の重心位置の差を計算することにより、着目変化領域の移動方向及び移動速度を求める。そして異常監視手段76は、求めた移動方向がその着目変化領域に写っている物体について過去に求めた移動方向に近いほど(つまり、移動方向が直進的であるほど)1に近くなり、過去に求めた移動方向から離れるほど0に近くなる正規化値F3を求める。また異常監視手段76は、求めた移動速度が人の歩行速度に近いほど1に近くなり、人の歩行速度から離れるほど0に近くなる正規化値F4を求める。そして異常監視手段76は、正規化値F1〜F4を乗算した値を評価値Eとする。
なお、これらの例に限らず、異常監視手段76は、画像上の所定の領域について人である確かさの度合いを示す評価値を算出するための様々な公知の方法で算出した評価値を評価値Eとして利用してもよい。
【0060】
異常監視手段76は、変化領域について評価値Eを算出すると、その変化領域が画像単独エリア内に存在するか否かを判定する(ステップS13)。そして異常監視手段76は、変化領域が画像単独エリア内に存在すると判定した場合、評価値Eが基準値E0以上であるか否かを判定する(ステップS14)。この場合、変化領域に写っている物体はセンサ部20の検知エリア内に存在しないため、センサ部20が求めた検知レベルPを参考にして変化領域が侵入者によるものか否かを判定することは好ましくない。そこで異常監視手段76は、変化領域が侵入者によるものか否かを監視画像のみに基づいて判定する。そのため基準値E0は、例えば、監視画像に基づいて実際に侵入者を検知する実験により定められた、変化領域が侵入者によるものであることを示す値の下限値に設定される。
【0061】
そして異常監視手段76は、評価値Eが基準値E0未満である場合、変化領域が侵入者によるものでないと判定し、制御をステップS11へ戻す。一方、異常監視手段76は、評価値Eが基準値E0以上である場合、変化領域は侵入者によるものである、すなわち侵入異常が発生したと判定する(ステップS15)。異常監視手段76は、侵入異常が発生したと判定すると、撮像部10が撮影した最新の監視画像(以降、異常監視手段76が侵入異常と判定したときの最新の監視画像を異常画像と称する)に対して、センサ部20の検知エリアを表示した画像(以降、合成画像と称する)を生成する。例えば異常監視手段76は、記憶部30からセンサ領域情報を読み出し、併用エリアすなわち検知エリアの範囲を表す枠を異常画像に合成して合成画像とする。そして異常監視手段76は、侵入物体検知信号及び合成画像を、通信部60を介して警備装置3へ送信する(ステップS16)。
【0062】
一方、異常監視手段76は、変化領域が併用エリア内に存在する場合、センサ部20から最も新しく受け取っていた検知レベルPが所定の閾値Th以上であるか否かを判定する(ステップS17)。なお、閾値Thは、実験または経験的に、検知レベルPが検知エリアに侵入物体が存在することを示す値に設定される。つまり検知レベルPが閾値Th以上である場合、検知エリアから放射される熱線に基づいて検知エリア内に侵入者が存在する可能性が高いと判断できる。
【0063】
そこで異常監視手段76は、検知レベルPが閾値Th以上である場合、評価値Eが基準値E1以上であるか否かを判定する(ステップS18)。この場合、変化領域は侵入者によるものである可能性が高いため、基準値E1は、基準値E0より低い値に設定される。つまり異常監視手段76は、変化領域が併用エリア外にある場合より、その変化領域が侵入者によるものであると判定しやすくなり、侵入者をより確実に検出できる。
そして異常監視手段76は、評価値Eが基準値E1未満である場合、変化領域が侵入者によるものでないと判定し、制御をステップS11へ戻す。一方、異常監視手段76は、評価値Eが基準値E1以上である場合、変化領域は侵入者によるものである、すなわち侵入異常が発生したものと判定し(ステップS15)、合成画像を生成して侵入物体検知信号及び合成画像を、通信部60を介して警備装置3へ送信する(ステップS16)。
【0064】
一方、異常監視手段76は、検知レベルPが閾値Th未満であると判定した場合、評価値Eが基準値E2以上であるか否かを判定する(ステップS19)。この場合、変化領域は侵入者によるものである可能性が低いため、基準値E2は、基準値E0より高い値に設定される。つまり異常監視手段76は、変化領域が併用エリア外にある場合より、その変化領域が侵入者によるものであると判定し難くなり、侵入者以外の物体を侵入者として誤検出することを抑制できる。これは、画像単独エリアではPIRセンサによって人の存在が否定されているわけではないためである。
そして異常監視手段76は、評価値Eが基準値E2未満である場合、変化領域が侵入者によるものでないと判定し、制御をステップS11へ戻す。一方、異常監視手段76は、評価値Eが基準値E2以上である場合、変化領域は侵入者によるものである、すなわち侵入異常が発生したものと判定し(ステップS15)、合成画像を生成して侵入物体検知信号及び合成画像を、通信部60を介して警備装置3へ送信する(ステップS16)。
【0065】
上述のステップS13における変化領域がいずれの領域に属するかの判定は、変化領域の全部又は大部分(例えば7割以上)が併用エリアに含まれる場合に限って併用エリアに属すると判定するのが好ましい。これは、PIRセンサの検知原理上、検知エリアに人体の一部のみが入ったとしても閾値Th以上の検知レベルPが得られる可能性が低いためである。従って、変化領域が併用エリアに部分的に含まれている場合であっても、画像単独エリアの基準に則って侵入判定を行う。
【0066】
なお、異常監視手段76は、センサ部20から検知レベル情報を受信したタイミングで検知レベルPが閾値Th以上であるか否かを判定し、検知レベルPが閾値Th以上である場合にもステップS11〜S19の処理を実施するようにしてもよい。その場合、既に変化領域抽出手段71は最新の監視画像について変化領域を抽出していると考えられるため、ステップS11における変化領域の抽出処理を省略し、異常監視手段76は抽出済みの変化領域について再度ステップS11〜S19の処理を実施する。これにより、侵入物体検出装置1は、より早く侵入者を検出することができ、より早く警備装置3に侵入異常を通報することができる。
【0067】
また異常監視手段76は、異常画像に対して併用エリアを表す枠を合成せず、侵入物体検知信号または障害物検知信号とともに、異常画像及びセンサ領域情報を、通信部60を介して警備装置3へ送信してもよい。その場合、警備装置3が異常画像及びセンサ領域情報から合成画像を生成し、監視センタ装置5に送信する。あるいは、警備装置3は異常画像及びセンサ領域情報を転送し、監視センタ装置5で合成、表示する。
【0068】
また警備装置3は、侵入物体検知信号及び合成画像を受信すると、受信した合成画像を操作表示器4に転送し、操作表示器4に合成画像を表示させるようにしてもよい。
【0069】
また異常監視手段76は、警備装置3または操作表示器4からの要求に応じて、撮像部10が撮影した最新の監視画像に対して併用エリアを表す枠を合成した画像を生成し、警備装置3または操作表示器4に送信してもよい。これにより、警備装置3は、監視センタ装置6からの要求に応じて併用エリアを表した画像を監視センタ装置6に送信でき、操作表示器4は、利用者の操作に応じて併用エリアを表した画像を表示できる。
【0070】
なお、センサ領域とセンサ領域以外の領域とで区別して実施する処理は、上述した評価値Eと比較するための基準値を変更するものに限らず、侵入物体を検出する用途、目的等に応じて適宜定めてよい。例えば異常監視手段76は、評価値E及び検知レベルPを侵入物体らしくないほど0に近くなり、侵入物体らしいほど1に近くなるように、0から1の範囲でそれぞれ正規化し、さらに検知レベルPを正規化した範囲において閾値Thに対応する閾値Th'を求めておく。そして異常監視手段76は、併用エリアでは評価値Eを正規化した値と検知レベルPを正規化した値を加算し、画像単独エリアでは評価値Eを正規化した値と閾値Th'を加算して、それぞれ同一の基準値と比較することによりその変化領域が侵入者によるものであるか否かを判定してもよい。
【0071】
また、異常監視手段76は、センサ部20の検知エリア(併用エリア)を重点監視するために、基準値E0を基準値E1及び基準値E2と比較して十分に大きい値にして(つまり、この場合、E1<E2<<E0という関係が成立する)、画像単独エリアでは併用エリアよりも侵入異常と判定し難くなるようにしてもよい。これにより、侵入物体検出装置1は、重点監視する領域において侵入者の検出漏れを抑制するとともに、それ以外の監視領域において植栽、小動物等による誤検出を抑制することができる。
【0072】
あるいは、異常監視手段76は、変化領域がセンサ領域にある場合にはセンサ部20からの検知レベルPのみに基づいてその変化領域が侵入物体によるものか否かを判定し、変化領域がセンサ領域以外の領域にある場合には監視画像のみに基づいてその変化領域が侵入物体によるものか否かを判定するようにしてもよい。その場合、異常監視手段76は、図4に示したステップS17において、検知レベルPが閾値Th以上であると判定した場合、侵入異常が発生したと判定し、検知レベルPが閾値Th未満であると判定した場合、侵入異常が発生していないと判定する。これにより侵入物体検出装置1は、監視画像に基づく侵入者検出の検出精度を低減させる植栽等が検知エリア内に存在する場合にその検知エリアでの侵入者の誤検出を抑制することができる。
【0073】
あるいは、異常監視手段76は、センサ部20の検知エリアのみ侵入者の有無を監視し、それ以外の領域では監視者が確認を行うためにのみ画像を用いるようにしてもよい。その場合、異常監視手段76は、変化領域がセンサ領域にある場合にはセンサ部20からの検知レベルP及び監視画像に基づいてその変化領域が侵入物体によるものか否かを判定し、変化領域がセンサ領域以外の領域にある場合には変化領域が侵入物体によるものか否かを判定しない。この場合、異常監視手段76は、センサ領域以外の領域について変化領域を抽出しないようにしてもよいし、図4に示したステップS14において、評価値Eが基準値E0以上であるか否かによらず、常に制御をステップS11へ戻すようにしてもよい。
【0074】
以上説明してきたように、本発明の一実施形態による侵入物体検出装置では、人像位置抽出手段がセンサ部から取得した検知レベル情報に基づいて侵入物体の有無を判別し、侵入物体が存在すると判別したときの監視画像上の変化領域に基づいて人像位置を抽出する。そしてエリア特定手段は、人像位置の出現頻度分布に基づいて、監視画像上の人の移動範囲のうち壁側の端部を検出し、画像上のPIRセンサの検知エリアを特定する。また異常監視手段は、変化領域が検知エリア外に存在する場合、監視画像のみに基づいて変化領域が侵入物体によるものか否かを判定し、変化領域が検知エリア内に存在する場合、少なくとも検知レベルに基づいて変化領域が侵入物体によるものか否かを判定する。これにより、侵入物体検出装置は、画像上の検知エリアに相当する領域を他の領域と高精度に区別することができ、各領域において適切な処理により侵入物体の有無を判定することができるので、侵入物体の検出精度を向上することができる。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、人像位置抽出手段が、撮像部から監視画像を取得する度に、検知レベルPの値によらず人像位置を抽出して記憶部に記憶しておき、エリア特定手段は、エッジ位置を検出した後も、検出したエッジ位置よりさらに壁面側に人像位置が存在するか否かを判定するようにしてもよい。そしてエリア特定手段は、検出したエッジ位置よりさらに壁面側に人像位置が存在する場合、センサ部の検知エリアが正しく設定できていないと判定してその旨を表示部に表示させて作業者に報知する。これにより、侵入物体検出装置は、PIRセンサの向きについての人為的な設定の誤りを防止することができ、侵入監視に対する信頼性を向上することができる。
【0076】
また本実施形態では、画像上の水平方向における検知エリアの位置を求める例について説明したが、垂直方向、斜方向など、撮像方向、制限物である壁、検知エリアの位置関係に応じて所定の方向に置き換えて実現することができる。また、一方向に限らず、二方向を用いてもよい。
【0077】
また異常監視手段は、センサ領域内に発生した変化領域の移動経路または発生位置に応じて、その変化領域が侵入物体であるか否かの判定基準を変更するようにしてもよい。本実施形態の侵入物体検出装置では、画像上のセンサ領域を基準にしていずれの側に家屋が存在するか識別できる。このため例えば、家屋から人が出てきた場合、または家屋の窓から人が顔を出している場合、その人はその家屋の住人であり、侵入者でない可能性が高く、警備装置に侵入異常を通報しないよう構成することができる。
その場合、異常監視手段は、撮像部により連続的に取得された複数の監視画像にわたって抽出された変化領域について、トラッキング処理を利用して、同一物体が写っているものとして対応付けられる変化領域を検出する。なお、本実施形態においては、図5のステップS12で説明した処理により変化領域を対応付けてもよいし、その他の公知のトラッキング処理を利用して変化領域を対応付けてもよい。
【0078】
そして異常監視手段は、物体が監視領域内の壁際(壁付近)の位置に突然現れた場合、すなわち新たに抽出した変化領域が制限物体である壁側の検知エリア境界に存在する場合、屋内から出てきた人物によるものと認識し、その変化領域は侵入者によるものではないと判定する。なお、異常監視手段は、侵入者によるものではないと判定した変化領域に対応する、以降のフレームの監視画像における変化領域についても、侵入者によるものではないと判定する。また異常監視手段は、侵入者によるものではないと判定した変化領域に対応する、以降のフレームの監視画像における変化領域について、例えば所定期間が経過した後は通常の変化領域と同様に侵入者によるものか否かを判定するようにしてもよい。
また異常監視手段は、物体が壁側から検知エリアに移動してきた場合、または物体が検知エリアの壁側の境界付近に突然現れた場合、それ以外の場合よりその物体に対応する変化領域の評価値Eの値を小さくして、その変化領域が侵入物体によるものと判定し難くなるようにしてもよい。さらに異常監視手段は、物体が検知エリアの壁側の境界付近に突然現れた場合、その物体に対応する変化領域が現れた位置が壁面位置に近いほど評価値Eの値を小さくするようにしてもよい。
【0079】
これにより、侵入物体検出装置は、変化領域の移動経路または発生位置と壁面位置との関係に基づいて侵入物体の有無を判定することができ、より侵入物体の検出精度を向上することができる。
【0080】
また、他の実施形態では、エリア特定手段74は、人の移動範囲の端部を人像位置の出現頻度分布ではなく、検知レベルのピーク分布を用いて推定してもよい。この場合の侵入物体検出装置の全体構成は図1に示した構成と同じであり、上記の実施形態に係る侵入物体検出装置と比較して、人像位置抽出手段73及びエリア特定手段74により実現される機能のみが異なる。そこで、以下では、上記の実施形態に係る侵入物体検出装置と異なる点についてのみ説明する。人像位置抽出手段73は、ウォークテストの実施中に、センサ部20から受け取った検知レベルPが所定の基準値Z2以上であるか否かを判定する。そして人像位置抽出手段73は、検知レベルPが基準値Z2以上である場合、そのとき変化領域抽出手段71によって抽出された変化領域の重心位置を人像位置として抽出し、そのときの検知レベルPと関連付けて記憶部30に記憶する。
なお、基準値Z2は、基準値Z1と同様に、検知レベルPが検知エリアに人が存在することを示す値に設定される。また、各位置での検知レベルPの変化を観察できるように、基準値Z2は、警戒モードにおける侵入物体を判定するための閾値Thより低い値とすることが好ましい。
【0081】
この実施形態では、エリア特定手段74は、ウォークテストの終了後、記憶部30に記憶された人像位置と検知レベルPに基づいて、監視画像上の各水平位置における検知レベルのピーク分布を作成する。例えば、エリア特定手段74は、監視画像を水平方向に所定幅を持つ複数の領域に分割し、分割した領域毎にその領域内の位置を示す人像位置と関連付けられた検知レベルPのうち最も高い値を抽出してピーク値とする。あるいは、エリア特定手段74は、監視画像上の水平位置毎に、その水平位置を中央とする所定幅の領域において記録された人像位置と関連付けられた検知レベルPのうち最も高い値を抽出し、各水平位置に対応するピーク値としてもよい。
【0082】
図6に、検知レベルのピーク分布の一例を示す。図6において、グラフ600は、監視画像上の検知レベルのピーク分布を表し、横軸は監視画像上の水平位置を、縦軸は各位置における検知レベルのピーク値を表す。グラフ600では、実線で示された範囲、すなわち閾値Z2以上の値をとる範囲が実際にピーク値を抽出した領域を示している。そしてグラフ600では、検知レベルのピーク値は、座標X3より左側の一定範囲では一定以上の値をもつが、座標X3で急激に減少し、座標X3より右側の範囲では0となっている。つまり、この場合、座標X3より右側の位置に相当する場所には作業者は移動していず、座標X3の近傍に壁面位置X4が存在すると推定できる。
【0083】
そこで、エリア特定手段74は、作成した検知レベルのピーク分布について、ピーク値が急激に減少するエッジ位置を求める。例えば、エリア特定手段74は、各水平位置における検知レベルのピーク値がその隣接する位置における検知レベルのピーク値に対して所定閾値以上減少する位置をエッジ位置とする。あるいは、エリア特定手段74は、最小2乗法等を用いて検知レベルのピーク値の近似曲線を生成し、各水平位置における近似曲線による値が、その隣接する位置における近似曲線による値に対して所定閾値以上減少する位置をエッジ位置としてもよい。また、ピーク値が急減した位置より以後の水平位置において、ピーク値が0又は所定以下で継続することをエッジ位置判定の条件に加えてもよい。なお、これらの所定閾値は、例えば実験によりウォークテストを実施し、検知レベルのピーク値を計測することにより適切な値を決定できる。
また、エリア特定手段74は、監視画像上の中心位置より右側の領域では、左側に隣接する位置に対する検知レベルのピーク値の減少量に基づいてエッジ位置を抽出し、監視画像上の中心位置より左側の領域では、右側に隣接する位置に対する検知レベルのピーク値の減少量に基づいてエッジ位置を抽出するようにしてもよい。
【0084】
そしてエリア特定手段74は、求めたエッジ位置、またはエッジ位置に対して検知レベルのピーク値の小さい側、すなわち人の移動範囲の逆側に所定量ずらした位置を壁面位置であると推定する。そしてエリア特定手段74は、推定した壁面位置から検知レベルのピーク値の大きい側、すなわち人の移動範囲側の所定の大きさの領域をPIRセンサの検知エリアを表す領域(センサ領域)として特定する。図6に示した例では、斜線部分601がセンサ領域として特定される。
【0085】
エリア設定手段72が検知レベルのピーク分布を用いてセンサ領域を特定する場合のフローチャートを図7に示す。
【0086】
図7に示すフローチャートのステップS21では、人像位置抽出手段73は、図4に示したステップS1と同様に、センサ部20から検知レベル情報を受け取り、検知レベルPが基準値Z2以上であるか否かを判定する(ステップS21)。そして人像位置抽出手段73は、検知レベルPが基準値Z2以上になると、そのとき変化領域抽出手段71によって抽出された変化領域の重心位置を人像位置として抽出し、記憶部30に記憶する(ステップS22)。その後、人像位置抽出手段73は、作業者からウォークテストの終了操作がされたか否かを判定する(ステップS23)。
【0087】
そして、人像位置抽出手段73がウォークテストの終了操作に対応する信号を操作部40から受け取った場合、エリア特定手段74は、記憶部30に記憶された人像位置と検知レベルPに基づいて、検知レベルのピーク分布を作成する(ステップS24)。エリア特定手段74は、検知レベルのピーク分布を作成すると、作成した検知レベルのピーク分布について、ピーク値が急激に減少するエッジ位置を求める(ステップS25)。
ステップS26〜S29の処理は、図4に示したステップS6〜S9の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0088】
この実施形態では、エリア特定手段は、撮影画像上の各位置における、センサ部が検知した検知レベルのピーク値に基づいて、撮影画像上の人の移動範囲の端部を検出し、さらにセンサ領域を特定する。侵入物体検出装置は、撮影画像上の各位置における、検知レベルのピーク値を求めることにより、検知エリア内の熱変化の測定誤差の影響を低減することができ、撮影画像上の検知エリアの範囲を精度よく特定することができる。これにより、侵入物体検出装置は、画像上のPIRセンサの検知エリアに相当する領域と他の領域とを区別して侵入物体の有無を判定する場合に、侵入物体の検出精度を向上することができる。
【0089】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0090】
1、2 侵入物体検出装置
3 警備装置
4 操作表示器
5 監視センタ
6 ローカルエリアネットワーク
7 広域通信ネットワーク
10 撮像部
20 センサ部
30 記憶部
40 操作部
50 表示部
60 通信部
70 監視処理部
71 エリア設定手段
72 変化領域抽出手段
73 人像位置抽出手段
74 エリア特定手段
75 エリア登録手段
76 異常監視手段
100 警備システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の移動を制限する制限物の近傍を検知エリアとし、該検知エリアから放射される熱線に応じた検知レベルを出力するセンサ部と、前記制限物及び前記検知エリアを含む監視領域を撮影した監視画像を所定周期で取得する撮像部と、を有する侵入物体検出装置であって、
前記監視画像における変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、
前記監視画像上における前記検知エリアを示すセンサ領域を特定する登録処理を実行するエリア設定手段と、
前記検知レベル及び前記監視画像に基づき前記監視領域内の侵入物体を検出する異常判定処理を実行する異常監視手段と、を備え、
前記エリア設定手段は、
前記センサ部によって出力された前記検知レベルが前記検知エリアに人が存在することを示す値になったときに前記撮像部により取得された前記監視画像から抽出された前記変化領域の位置を人像位置として抽出する人像位置抽出手段と、
所定期間の間に前記人像位置抽出手段によって抽出された複数の前記人像位置に基づいて、前記制限物によって制限される人の移動範囲の端部を前記監視画像上で検出し、当該移動範囲の端部に基づいて前記センサ領域の前記制限物側の端部である第1の端部を定めて前記センサ領域を特定するエリア特定手段と、を有し、
前記異常監視手段は、前記変化領域が前記センサ領域または前記センサ領域外のいずれに存在するかに応じて異なる異常判定処理を実行することを特徴とする侵入物体検出装置。
【請求項2】
前記エリア特定手段は、前記監視画像上の各位置について、前記所定期間の間に抽出された前記人像位置の出現頻度を求め、隣接する位置に対して前記出現頻度が急減する位置を前記移動範囲の端部とする、請求項1に記載の侵入物体検出装置。
【請求項3】
前記人像位置抽出手段は、前記検知レベルが前記検知エリアに人が存在することを示す値になったときの前記人像位置と該検知レベルとを関連付けて記憶し、
前記エリア特定手段は、前記監視画像上において前記人像位置と関連付けて記憶された前記検知レベルが隣接する位置に対して急減する位置を前記移動範囲の端部とする、請求項1に記載の侵入物体検出装置。
【請求項4】
前記異常監視手段は、新たに抽出された前記変化領域が前記センサ領域の前記第1の端部の近傍に存在する場合は、当該変化領域が侵入物体によるものではないと判定する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の侵入物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−103901(P2012−103901A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251803(P2010−251803)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】