説明

便器洗浄装置

【課題】操作ハンドルと回転規制部材を交換することなくそのまま利用し、操作ハンドルと回転規制部材との嵌合状態を変更するだけで、操作ハンドルの耐え得るトルクの限界値を簡易に変更することができる便器洗浄装置を提供する。
【解決手段】本発明の便器洗浄装置6は、貯水タンク4の外側に設けられ排水弁20,22を開閉する際に回転操作される操作ハンドル8と、この操作ハンドル8の手動操作により回転軸32aが駆動される手動操作用回転軸ユニット32又はモータ10bにより回転軸10aが駆動される自動操作用回転軸ユニット10のいずれか一方が設置可能である回転軸ユニットと、回転軸の回転に連動して排水弁20,22をそれぞれ開閉させる排水レバー14,16と、操作ハンドルの回転範囲を規制する回転規制部材18と、を有し、操作ハンドル8と回転規制部材18との嵌合状態を変更することにより、操作ハンドル8が耐え得るトルクの限界値を変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄装置に係り、特に、貯水タンクの洗浄水を排水弁を介して便器に供給して洗浄する便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯水タンクの洗浄水を排水弁により便器に供給して洗浄する便器洗浄装置としては、貯水タンクの排水弁を操作する操作ハンドルに所定以上のトルク(例えば500Ncm以上)がかかると、操作ハンドルと回転軸を結合している回転規制部材のリブが破壊されるようになっている。その後、操作ハンドルが回転規制部材に対して空転し、回転軸に力が伝わらないようにすることにより、回転軸を自動操作する自動操作ユニットを保護するようになっているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−23714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の便器洗浄装置の自動操作ユニットについて、使用者のニーズに応じて、回転軸を手動操作する手動操作用回転軸ユニットに取り替えた場合、操作ハンドルには、足で蹴られる等の悪戯を考慮して所定以上のより大きなトルク(例えば700Ncm以上)に耐えることができるようにする必要がある。このため、自動から手動への操作ユニットの交換に伴って操作ハンドルや回転規制部材もそれぞれ取り替える必要があるという問題がある。また、手動から自動へ操作ユニットを交換する場合も同様の問題がある。
また、操作ハンドルや回転規制部材の取り替えに応じて、操作ハンドルや回転規制部材の成形型を新たに起こして作り直す必要があり、生産コストや環境負荷がかかるという問題がある。
さらに、既設便器の貯水タンクがそのまま維持された状態で操作ハンドルや回転規制部材を新品のものに交換した場合には、既設便器と操作ハンドルのデザイン上の調和が損なわれてしまうという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、操作ハンドルと回転規制部材を交換することなくそのまま利用し、操作ハンドルと回転規制部材との嵌合状態を変更するだけで、操作ハンドルの耐え得るトルクの限界値を簡易に変更することができる便器洗浄装置を提供することを目的としている。
また、本発明は、生産コストや環境負荷を低減することができる便器洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、貯水タンクの洗浄水を排水弁を介して便器に供給して洗浄する便器洗浄装置であって、貯水タンクの外側に設けられ、排水弁を開閉するために使用者により回転操作される操作ハンドルと、上記操作ハンドルと共に回転する回転軸を備えた回転軸ユニットであって、この回転軸ユニットとして、上記操作ハンドルの手動操作により上記回転軸を駆動させて上記排水弁を開閉させる手動操作用回転軸ユニット、若しくは、上記操作ハンドルの手動操作により上記回転軸を駆動させて上記排水弁を開閉させる又はモータを駆動させて上記排水弁を開閉させる自動操作用回転軸ユニットのいずれか一方が設置可能である上記回転軸ユニットと、上記操作ハンドルと上記回転軸との間に介在して設けられ、上記操作ハンドルの回転範囲を規制する回転規制部材と、を有し、上記操作ハンドルと上記回転規制部材は、それらの嵌合状態を変更することにより上記操作ハンドルが耐え得るトルクの限界値を変更することができるように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、操作ハンドルと回転規制部材を変更することなく、操作ハンドルと回転規制部材との嵌合状態を変更するだけで、操作ハンドルの耐え得るトルクの限界値を簡易に変更することができる。すなわち、手動操作用回転軸ユニット又は自動操作用回転軸ユニットのいずれかの回転軸ユニットが設置される場合にかかわらず、操作ハンドルと回転規制部材を設計変更することなく同一形態の操作ハンドルと回転規制部材をそのまま利用し、互いの嵌合状態のみを変更するだけで操作ハンドルの耐え得るトルクの限界値を簡易に変更することができる。また、既設の水洗便器の回転軸ユニットについて、手動操作用回転軸ユニットから自動操作用回転軸ユニットに、或いは自動操作用回転軸ユニットから手動操作用回転軸ユニットに交換したりする場合でも、その交換前後で共通する操作ハンドルと回転規制部材を使用することができるため、操作ハンドルと回転規制部材の成形型を新たに起こして作り直す必要がなく、生産コストや環境負荷を抑えることができる。さらに、既設の水洗便器と操作ハンドルのデザイン上の調和が損なわれることを防ぐこともできる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記操作ハンドルに対して上記回転規制部材を所定角度回転させた状態で嵌合させると、上記操作ハンドルが耐え得るトルクの限界値は、上記回転軸ユニットが手動操作用回転軸ユニットのときよりも自動操作用回転軸ユニットのときの方が小さな値に設定される。
このように構成された本発明においては、自動操作用回転軸ユニットが設置されている場合、操作ハンドルを誤って手動で操作して過剰なトルクが操作ハンドルに掛かってしまっても、操作ハンドルと回転規制部材の嵌合が外れて操作ハンドルが回転規制部材に対して空転するような値に設定することができる。それゆえ、モータを含む自動操作用回転軸ユニットを保護することができる。また、手動操作用回転軸ユニットが設置されている場合には、足で蹴られる等の悪戯に備えて操作ハンドルのトルクの限界値について、自動操作用回転軸ユニットを使用した場合よりもより大きなトルクの限界値に設定することができる。さらに、操作ハンドルに対して回転規制部材を所定角度回転させた状態で嵌合させるだけで操作ハンドルの耐え得るトルクの限界値を、回転軸ユニットが手動操作用回転軸ユニットのときより自動操作用回転軸ユニットのときを小さな値に変更することができるので、回転軸ユニット取り替えの際、容易にトルクの限界値を変更することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記操作ハンドル又は上記回転規制部材のいずれか一方は凸状部を有し、他方は上記凸状部に嵌合可能な凹状部を有する。
このように構成された本発明においては、凸状部と凹状部とを嵌合させることにより、操作ハンドルを回転規制部材に容易に装着することができ、交換も容易となる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記凸状部は上記回転軸に対してほぼ平行なリブにより構成され、上記凹状部は上記回転軸に対してほぼ平行な溝により構成される。
このように構成された本発明においては、操作ハンドルを回転規制部材に容易に装着することができる。さらに、操作ハンドルに所定以上の過剰なトルクが与えられると、リブが弾性変形あるいは塑性変形して嵌合が外れることにより、操作ハンドルが回転規制部材に対して空回りして操作ハンドルの耐え得ることができるトルクの限界値を超えることがない。それゆえ、操作ハンドルのトルクの限界値を所定値に留めて安定化させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記リブ又は上記溝は、上記回転規制部材の外周面に沿ってほぼ均等な間隔で配置されている。
このように構成された本発明においては、操作ハンドルと回転規制部材を嵌合させた際の嵌め合い力を一部のリブに集中させることなく、ほぼ均等な間隔で分散させることにより、リブの大きさを最小限にすることができる。それゆえ、操作ハンドルや回転規制部材の厚みを薄くして、コンパクトにすることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記溝は、上記リブの周方向の幅よりも大きい周方向の幅を有する長溝を少なくとも一つ含み、上記操作ハンドルに対して上記回転規制部材を所定角度回転させた状態で嵌合させると、上記長溝に上記リブの少なくとも一つが嵌合する。
このように構成された本発明においては、操作ハンドルに対して回転規制部材を所定角度回転させた状態で嵌合させるだけで、操作ハンドルと回転規制部材の嵌合状態でリブの少なくとも一つが長溝に嵌り、リブと長溝との隙間により操作ハンドルと回転規制部材の嵌合に関与しなくなるため、操作ハンドルの耐え得るトルクの値を簡易に変更することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記リブの幅又は高さを変更することにより、操作ハンドルの耐え得るトルクの限界値が変更される。
このように構成された本発明においては、リブの幅又は高さを変更するだけで、操作ハンドルの耐え得るトルクの限界値を容易に変更することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の便器洗浄装置によれば、操作ハンドルと回転規制部材を交換することなくそのまま利用し、操作ハンドルと回転規制部材との嵌合状態を変更するだけで、操作ハンドルの耐え得るトルクの限界値を簡易に変更することができる。また、生産コストや環境負荷を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面により、本発明の実施形態の第1対応による便器洗浄装置を説明する。
まず、図1は本発明の便器洗浄装置が適用される水洗便器の斜視図である。図1に示すように、符号1は水洗便器を示し、この水洗便器1の上部の前方側には、ボウル部2が形成されており、ボウル部2の後方側の上部には、洗浄水を貯留する貯水タンク4が設けられている。
また、貯水タンク4には便器洗浄装置6が設けられており、この便器洗浄装置6を操作することにより、貯水タンク4内の洗浄水による水洗便器1の洗浄が行われるようになっている。より具体的には、ボウル部2の上縁部にはリム吐水口(図示せず)が形成されており、貯水タンク4内の洗浄水は、ボウル部2と貯水タンク4との間の内部に形成されるリム用導水路(図示せず)を経てリム吐水口(図示せず)により旋回しながら下降してボウル部2を洗浄するようになっている。さらに、ボウル部2の中心下部にはジェット吐水口(図示せず)が形成されており、貯水タンク4内の洗浄水は、ボウル部2と貯水タンク4との間の内部に形成されるジェット用導水路(図示せず)を経てジェット吐水口(図示せず)から排水トラップ管路(図示せず)に向けて吐水され、サイホンを短時間で発生されるようになっている。
【0015】
つぎに、図2は本実施形態の便器洗浄装置を斜め上方から見た分解斜視図である。図2に示すように、便器洗浄装置6は、操作ハンドル8、回転軸ユニット10、リム用排水レバー14、ジェット用排水レバー16、回転規制部材18、リム用排水弁20、ジェット用排水弁22により構成されている。
操作ハンドル8は、貯水タンク4の外側に設けられている。この操作ハンドル8は、リム用排水弁20が水洗便器1のリム用導水路(図示せず)に連通する貯水タンク4のリム用排水口20aを開閉する際、及びジェット用排水弁22が水洗便器1のジェット用導水路(図示せず)に連通する貯水タンク4のジェット用排水口22aを開閉する際に使用者により回転操作されるようになっている。
【0016】
回転軸ユニット10は、操作ハンドル8と共に回転する回転軸10aと、この回転軸10aを駆動するモータ10bとを備えている。モータ10bは、水洗便器1の一部に設けられた人体検知センサ(図示せず)が検知した信号に基づいて作動するようになっている。すなわち、回転軸ユニット10は、回転軸10aに入力される駆動力が、人体検知センサ(図示せず)が検知した信号に基づいたモータ10bの駆動による自動操作によって与えられる自動操作用回転軸ユニットとして機能し、水洗便器1の自動洗浄が行われるようになっている。
なお、上述した自動操作用回転軸ユニット10の代わりに、後述する本実施形態の第2対応による便器洗浄装置30の操作ハンドル8の手動操作により回転軸32aが駆動される手動操作用回転軸ユニット32に交換して設置可能である。
また、自動操作用回転軸ユニット10の操作ハンドル8側の端部は、貯水タンク4の側壁面4aをワッシャー10c,10dで挟み込むようにしてナット10eで締結されている。これらのワッシャー10c,10dは、貯水タンク4の側壁面4aと自動操作用回転軸ユニット10との抜き勾配をなくすために機能している。
【0017】
リム用排水レバー14は、自動操作用回転軸ユニット10の回転軸10aの回転に連動してリム用排水弁20を開閉させるものであり、玉鎖14aによってリム用排水弁20に接続されている。リム用排水弁20を開弁する際には、リム用排水レバー14が玉鎖14aと共にリム用排水弁20を引き上げるように回転軸10aと共に回転するようになっている。
同様に、ジェット用排水レバー16は、自動操作用回転軸ユニット10の回転軸10aの回転に連動してジェット用排水弁22を開閉させるものであり、玉鎖16aによってジェット用排水弁22に接続されている。ジェット用排水弁22を開弁する際には、ジェット用排水レバー16が玉鎖16aと共にジェット用排水弁22を引き上げるように回転軸10aと共に回転するようになっている。
ここで、自動操作用回転軸ユニット10においては、操作ハンドル8の手動操作により回転軸10aを駆動させて排水弁20,22を開閉させることも可能である。
また、上述したように、本実施形態では、両排水レバー14,16が回転軸10aと共に回転することにより両排水弁20,22が開閉するような形態について説明しているが、両排水レバー14,16や両玉鎖14a,16aについては、他のモータ等の駆動手段による駆動力を利用することにより、操作ハンドル8や回転軸10aとは独立に作動させて両排水弁20,22を開閉するようにしてもよい。
【0018】
回転規制部材18は、操作ハンドル8と自動操作用回転軸ユニット10の回転軸10aとの間に介在して設けられ、操作ハンドル8の回転範囲を規制するものである。また、操作ハンドル8と回転規制部材18は、詳細は後述するように軸方向に嵌め合い可能となっており、両者8,18の嵌合状態を変更することにより、操作ハンドル8が耐え得るトルクの限界値を変更することができるようになっている。
【0019】
図3は、図2に示す本実施形態の第1対応による便器洗浄装置の部分を一部拡大した拡大斜視図である。また、図4は、本実施形態の第1対応による便器洗浄装置における操作ハンドルと回転規制部材を斜め裏側から見た分解斜視図である。さらに、図5は、本実施形態の第1対応による便器洗浄装置の嵌合状態における操作ハンドルと回転規制部材を示す背面図である。
図3〜図5に示すように、自動操作用回転軸ユニット10の回転軸10aの端部は角柱形の部材となっており、回転規制部材18の裏側中央部に形成された角穴18aに嵌め込まれるようになっている。自動操作用回転軸ユニット10の回転軸10aの端部に嵌め込まれた回転規制部材18は、ビス18bによって回転軸10aの端部に固定され、回転軸10aの回転と共に所定の回転範囲で回転するようになっている。
また、自動操作用回転軸ユニット10の回転軸10aの端部に隣接して設けられて軸方向に突出するストッパー10fが回転軸10aと共に回転することなく固定して設けられている。回転規制部材18が回転軸10aと共に所定の回転範囲まで回転すると、回転規制部材18の裏側に設けられた当たり面18cがストッパー10fに当接して回転が規制され、回転軸10a及びモータ10bに過剰なトルクがかからないようになっている。
【0020】
つぎに、図4及び図5を参照して操作ハンドル8と回転規制部材18の嵌め合いについて説明する。
操作ハンドル8の裏側には、ほぼ円筒状の凹部8aが形成されている。この凹部8aは、その最大直径が回転規制部材18の最大直径にほぼ等しく、回転規制部材18を軸方向に受け入れ可能となっている。
また、操作ハンドル8の凹部8aの内周面8bには、その中心方向に突起する凸状部を形成し且つ軸方向に細長く延びて回転軸10aに対してほぼ平行になっている2つの第1リブ8cと2つの第2リブ8dが設けられている。第2リブ8dは、第1リブ8cの周方向の幅よりもわずかに大きい周方向の幅を有し、第1リブ8cと第2リブ8dとは互いに凹部8aの内周面8bに沿ってほぼ均等な間隔で配置されている。
【0021】
一方、回転規制部材18の外周面には、軸方向に延びる凹状部を形成して回転軸10aに対してほぼ平行になっており且つ第1リブ8cに嵌合可能な複数の溝18dと第2リブ8dに嵌合可能な複数の長溝18eとが設けられている。
特に、図5に示すように、操作ハンドル8と回転規制部材18が嵌合状態においては、2つの第1リブ8cに対応する2つの溝18dが隙間なく嵌合し、2つの第2リブ8dに対応する2つの長溝18eは隙間を有している。すなわち、操作ハンドル8の2つの第1リブ8cとこれらに対応する回転規制部材18の2つの溝18dの2つ箇所で両部材8,18が嵌合されており、操作ハンドル8が耐え得るトルクの限界値が設定されている。
なお、操作ハンドル8の第1リブ8c及び第2リブ8dの寸法(幅や高さ)、個数、配置や、回転規制部材18の溝18d及び長溝18eの寸法(幅や深さ)、個数、配置については、上述した本実施形態で説明した形態に限定されず、目標とする操作ハンドル8の耐え得るトルクの限界値に応じて、適宜変更してもよい。
【0022】
つぎに、本発明の実施形態の第1対応による便器洗浄装置の動作(作用)を説明する。
便器使用者が水洗便器1を使用後、便器使用者を検知した人体検知センサ(図示せず)からの情報に基づいて自動操作用回転軸ユニット10のモータ10bが作動して回転軸10aが回転する。この回転軸10aの回転に伴ってリム用排水レバー14とジェット用排水レバー16が連動し、各排水レバー14,16によりリム用排水弁20とジェット用排水弁22のそれぞれが所定時間引き上げられる。これにより、リム用排水口20aとジェット用排水口22aが所定時間開放され、貯水タンク4内の洗浄水がリム用導水路(図示せず)及びジェット用導水路(図示せず)を経て水洗便器1のリム吐水口(図示せず)とジェット吐水口(図示せず)に供給されて水洗便器1の自動洗浄が行われる。
【0023】
また、回転軸10aが回転すると、回転規制部材18は、その当たり面18cがストッパー10fに当接する所定の回転範囲まで回転する。さらに、操作ハンドル8の第1リブ8cと回転規制部材18の溝18dが隙間なく嵌合していることにより、操作ハンドル8も回転規制部材18と一体的に所定の回転範囲まで回転する。
さらに、回転範囲の限界まで回転している状態の回転規制部材18に嵌合する操作ハンドル8において、便器使用者が自動洗浄にかかわらず操作ハンドル8を誤って手動操作したり悪戯をしたりして、回転規制部材18のさらなる回転を与えようとする過剰なトルクが付与されると、操作ハンドル8が耐え得るトルクの限界値に達する前に回転規制部材18の溝18dと隙間なく嵌合している操作ハンドル8の第1リブ8cが弾性変形するか、又は塑性変形して破損し、回転規制部材18の溝18dとの嵌合が外れる。その後、操作ハンドル8は、その第2リブ8dと回転規制部材18の長溝18eの隙間分だけ回転規制部材18に対して空転し、操作ハンドル8の第2リブ8dが回転規制部材18の長溝18eの片側壁面に当接して保持される。
【0024】
上述した本発明の実施形態の第1対応による便器洗浄装置6によれば、操作ハンドル8の第1リブ8cと回転規制部材18の溝18dとを嵌合させることにより、操作ハンドル8を回転規制部材18に容易に装着することができ、交換も容易となる。
また、本実施形態の第1対応による便器洗浄装置6によれば、操作ハンドル8の第1リブ8cと第2リブ8d、及び、回転規制部材18の溝18dと長溝18eは回転軸10aに対してほぼ平行であるため、操作ハンドル8を回転規制部材18に容易に装着することができる。さらに、操作ハンドル8に所定以上の過剰なトルクが与えられると、操作ハンドル8が耐え得るトルクの限界値に達すると同時に第1リブ8cが先に弾性変形あるいは塑性変形して溝18dとの嵌合が外れるため、自動操作用回転軸ユニット10の回転軸10aやモータ10bに過剰なトルクが伝わらず保護することができる。また、操作ハンドル8のトルクの限界値を所定値に留めて安定化させることができる。
さらに、本実施形態の第1対応による便器洗浄装置6によれば、操作ハンドル8の第1リブ8cと第2リブ8dは、操作ハンドル8の凹部8aの内周面8bに沿ってほぼ均等な間隔で配置されており、これらの第1リブ8cと第2リブ8dに対応して嵌合する回転規制部材18の溝18dと長溝18eについても回転規制部材18の外周面に沿ってほぼ均等な間隔で配置されている、操作ハンドル8と回転規制部材18を嵌合させた際の嵌め合い力を一部の第1リブ8c又は第2リブ8dや溝18d又は長溝18eに集中させることなく、均一に分散させることができる。それゆえ、第1リブ8cや第2リブ8d、及び、溝18dや長溝18eの大きさを最小限にすることができ、操作ハンドル8や回転規制部材18の厚みを薄くして、コンパクトにすることができる。
【0025】
また、本実施形態の第1対応による便器洗浄装置6によれば、操作ハンドル8の第2リブ8dの周方向の幅よりも大きい周方向の幅を有する回転規制部材18の長溝18eに操作ハンドル8の第2リブ8dを対応させるように操作ハンドル8に対して回転規制部材18を所定角度回転させた状態で両部材8,18を嵌合させるだけで、第2リブ8dと長溝18eに隙間が生じる。それゆえ、これらの隙間部分が両部材8,18の嵌合に関与しなくなるため、操作ハンドル8の耐え得るトルクの値を簡易に変更することができる。
さらに、本実施形態の第1対応による便器洗浄装置6によれば、操作ハンドル8の第1リブ8cや第2リブ8dの幅又は高さを変更することにより、操作ハンドル8の耐え得るトルクの限界値が変更されるため、操作ハンドル8の耐え得るトルクの限界値を容易に変更することができる。
【0026】
なお、上述した本実施形態の第1対応による便器洗浄装置6においては、操作ハンドル8に第1リブ8c及び第2リブ8dを設け、回転規制部材18に溝18d及び長溝18eを設けた形態について説明したが、このような形態に限定されず、例えば、第1リブ8c及び第2リブ8dを回転規制部材18に設けて、これらに対応する溝18d及び長溝18eを操作ハンドル8に設けてもよいし、操作ハンドル8と回転規制部材18の双方に、第1リブ8c及び第2リブ8dとこれらに対応する溝18d及び長溝18eとを設けてもよい。
【0027】
つぎに、本発明の実施形態の第2対応による便器洗浄装置について説明する。
図6は、本発明の実施形態の第2対応による便器洗浄装置を斜め上方から見た分解斜視図である。ここで、図6において図2に示す本実施形態の第1対応の部分と同一の部分については同一の符号を付し、これらの説明は省略する。また、図7は、本発明の実施形態の第2対応による便器洗浄装置の嵌合状態における操作ハンドルと回転規制部材を示す背面図である。
図6及び図7に示すように、本実施形態の第2対応による便器洗浄装置30においては、回転軸ユニット32の回転軸32aに入力される駆動力が操作ハンドル8の手動操作により与えられる手動操作用回転軸ユニットとして機能する回転軸ユニット32を備えている点で本実施形態の第1対応による便器洗浄装置6と異なっている。
【0028】
また、本実施形態の第2対応による便器洗浄装置30においては、操作ハンドル8と回転規制部材18は本実施形態の第1対応で使用されている形態と同一形態のものが使用されている。しかしながら、図7に示すように、本実施形態の第2対応における操作ハンドル8と回転規制部材18の嵌合状態においては、本実施形態の第1対応によるにおける嵌合状態の回転規制部材18をほぼ180°回転させた状態で操作ハンドル8が嵌合されている。より詳細には、操作ハンドル8の2つの第1リブ8cと2つの第2リブ8dがこれらに対応する回転規制部材18の4つの溝18dに隙間なく嵌合するようになっている。また、両部材8,18は4つの箇所で嵌合されているため、操作ハンドル8が耐え得るトルクの限界値は、両部材8,18が2つの箇所で嵌合されている本実施形態の第1対応の場合よりも大きく設定されている。
【0029】
上述した本実施形態の第1対応による便器洗浄装置6及び第2対応による便器洗浄装置30を踏まえ、本実施形態の便器洗浄装置によれば、操作ハンドル8と回転規制部材18を変更することなく、操作ハンドル8と回転規制部材18との嵌合状態のみを変更するだけで、操作ハンドル8の耐え得るトルクの限界値を簡易に変更することができる。すなわち、自動操作用回転軸ユニット10又は手動操作用回転軸ユニット32を使用する場合にかかわらず、操作ハンドル8と回転規制部材18を設計変更することなく同一形態の操作ハンドル8と回転規制部材18をそのまま利用し、互いの嵌合状態のみを変更するだけで操作ハンドル8の耐え得るトルクの限界値を簡易に変更することができる。
また、既設の水洗便器1の回転軸ユニットについて、手動操作用回転軸ユニット10から自動操作用回転軸ユニット32に、或いは自動操作用回転軸ユニット10から手動操作用回転軸ユニット32に交換したりする場合でも、その交換前後で共通する操作ハンドル8と回転規制部材18を使用することができるため、操作ハンドル8や回転規制部材18の成形型を新たに起こして作り直す必要がなく、生産コストや環境負荷を抑えることができる。
さらに、既設の水洗便器1の回転軸ユニットについて、手動操作用回転軸ユニット10から自動操作用回転軸ユニット32に、或いは自動操作用回転軸ユニット10から手動操作用回転軸ユニット32に交換したりする場合でも、その交換前後で共通する操作ハンドル8と回転規制部材18を使用することができるため、既設の水洗便器1と操作ハンドル8のデザイン上の調和が損なわれることを防ぐこともできる。
【0030】
また、本発明の便器洗浄装置によれば、操作ハンドル8が耐え得るトルクの限界値は、回転軸ユニットが手動操作用回転軸ユニット32のときよりも自動操作用回転軸ユニット10のときの方が小さな値に設定されているため、自動操作用回転軸10ユニットが設置されている場合には、操作ハンドル8を誤って手動で操作して操作ハンドル8に過剰なトルクが掛かってしまっても、操作ハンドル8と回転規制部材18の嵌合が外れて操作ハンドル8が回転規制部材18に対して空転するような値に設定することができる。それゆえ、モータ10bを含む自動操作用回転軸ユニット10を保護することができる。一方、手動操作用回転軸ユニット32が設定されている場合には、足で蹴られる等の悪戯に備えて操作ハンドル8のトルクの限界値について、自動操作用回転軸ユニット10を使用した場合よりもより大きなトルクの限界値に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態の第1対応による便器洗浄装置が適用される水洗便器の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の第1対応による便器洗浄装置を斜め上方から見た分解斜視図である。
【図3】図2に示す本発明の実施形態の第1対応による便器洗浄装置の部分を一部拡大した拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の第1対応による便器洗浄装置における操作ハンドルと回転規制部材を斜め裏側から見た分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態の第1対応による便器洗浄装置の嵌合状態における操作ハンドルと回転規制部材を示す背面図である。
【図6】本発明の実施形態の第2対応による便器洗浄装置を斜め上方から見た分解斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の第2対応による便器洗浄装置の嵌合状態における操作ハンドルと回転規制部材を示す背面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 水洗便器
2 ボウル部
4 貯水タンク
6,30 便器洗浄装置
8 操作ハンドル
8a 凹部
8b 内周面
8c 第1リブ
8d 第2リブ
10 自動操作用回転軸ユニット
10a 回転軸
10b モータ
10c,10d ワッシャー
10e ナット
10f ストッパー
14 リム用排水レバー
14a 玉鎖
16 ジェット用排水レバー
16a 玉鎖
18 回転規制部材
18a 角穴
18b ビス
18c 当たり面
18d 溝
18e 長溝
20 リム用排水弁
20a リム用排水口
22 ジェット用排水弁
22a ジェット用排水口
32 手動操作用回転軸ユニット
32a 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水タンクの洗浄水を排水弁を介して便器に供給して洗浄する便器洗浄装置であって、
貯水タンクの外側に設けられ、排水弁を開閉するために使用者により回転操作される操作ハンドルと、
上記操作ハンドルと共に回転する回転軸を備えた回転軸ユニットであって、この回転軸ユニットとして、上記操作ハンドルの手動操作により上記回転軸を駆動させて上記排水弁を開閉させる手動操作用回転軸ユニット、若しくは、上記操作ハンドルの手動操作により上記回転軸を駆動させて上記排水弁を開閉させる又はモータを駆動させて上記排水弁を開閉させる自動操作用回転軸ユニットのいずれか一方が設置可能である上記回転軸ユニットと、
上記操作ハンドルと上記回転軸との間に介在して設けられ、上記操作ハンドルの回転範囲を規制する回転規制部材と、を有し、
上記操作ハンドルと上記回転規制部材は、それらの嵌合状態を変更することにより上記操作ハンドルが耐え得るトルクの限界値を変更することができるように構成されていることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
上記操作ハンドルに対して上記回転規制部材を所定角度回転させた状態で嵌合させると、上記操作ハンドルが耐え得るトルクの限界値は、上記回転軸ユニットが手動操作用回転軸ユニットのときよりも自動操作用回転軸ユニットのときの方が小さな値に設定される請求項1記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
上記操作ハンドル又は上記回転規制部材のいずれか一方は凸状部を有し、他方は上記凸状部に嵌合可能な凹状部を有する請求項1又は請求項2に記載の便器洗浄装置。
【請求項4】
上記凸状部は上記回転軸に対してほぼ平行なリブにより構成され、上記凹状部は上記回転軸に対してほぼ平行な溝により構成される請求項3記載の便器洗浄装置。
【請求項5】
上記リブ又は上記溝は、上記回転規制部材の外周面に沿ってほぼ均等な間隔で配置されている請求項4に記載の便器洗浄装置。
【請求項6】
上記溝は、上記リブの周方向の幅よりも大きい周方向の幅を有する長溝を少なくとも一つ含み、上記操作ハンドルに対して上記回転規制部材を所定角度回転させた状態で嵌合させると、上記長溝に上記リブの少なくとも一つが嵌合する請求項4又は請求項5に記載の便器洗浄装置。
【請求項7】
上記リブの幅又は高さを変更することにより、操作ハンドルの耐え得るトルクの限界値が変更される請求項4乃至6の何れか1項に記載の便器洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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