説明

便器用排水ポンプ

【課題】便器のボール内に溜まった水を容易に排水すること。
【解決手段】便器20のボール部22に溜まった水を排水するための便器用排水ポンプであって、手動で水を汲み上げるポンプ部12と、該ポンプ部12に連結された吸水管14及び可撓性を有する排水管16と、該排水管16を挿入し、排水管16の形状を維持するガイド管18を備える。前記ガイド管18は水抜き溝又は孔19を備え、前記ボール部22の底に配置したときに、排水管16の先端部17を便器前壁又は後壁の裏側に配置された排水口24内に配置できるように、上向きに湾曲した形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプとくに便器用排水ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水道の整備により水洗式のトイレが普及してきている。
図1は、いわゆる洋式便器(以下、単に便器という)を概略的に示す断面図である。
この断面図に示すように、便器20のボール部22面には常に水が溜まった状態であり、掃除を怠ると、便器20の喫水面近傍やボール内面に汚れが付着し、不衛生になるとともに見た目も悪くなる。また、それだけではなく悪臭を放つようになる。
そのため、便器20の汚れを取り除き衛生的な状態を保つため頻繁に清掃を行うことが必要である。
【0003】
清掃は汚れをブラシで擦り落としたり高圧水で流して行うが、毎日行うには手間がかかり煩雑である。とくに便器のボール面は常に水が溜まっているため掃除がし難いという問題がある。また、ボール部に清掃用の薬剤をいれても溜まった水で希釈され清掃効果が低減し、大量の薬剤が必要であるなどの問題がある。そこで、溜まった水を除去することも考えられるが、実際に除去するには、例えば、雑巾などを用いて水を吸い取らせるが、便器に溜まった水の中に手を入れるのは抵抗感がありかつ排水に手間が掛かるという問題がある。
【0004】
そこで便器の掃除の手間を少なくするため、便器についた汚れを効率よく容易に除去するため、便器に付着した汚れに超音波を照射して除去するものが知られている(特許文献1)。
これは、便器に液体を張って超音波で液体に振動を付与するか、空中で汚染部に超音波を照射するか、或いは、汚染部に直接超音波振動子を作用させるものである。
この装置は便器の汚れを超音波で除去するものであるが、これとは別に、便器のボール部分に溜まっている水の中の微生物に着目して、超音波で微生物の繁殖を抑え或いは殺菌して、微生物の繁殖に伴う汚れ付着を長期に渡って抑制し、便器のボール部の清掃を頻繁に行わなくとも衛生的な状態が保てるようにした水洗便所も提案されている(特許文献2)。
しかしながら、一般家庭でこれらの装置を備えるにはコストが掛かり手軽に利用できないという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−15510号公報
【特許文献2】特開平11−29375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の便器清掃における上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来の便器の清掃において問題となる、便器内に溜まった水を容易に排水できるポンプを提供することであり、コストを掛けずに、したがってどの家庭でも容易に入手でき、取り扱いが簡便な便器用排水ポンプを提供して、便器の清掃をより簡単かつ完全に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、手動で水を汲み上げるポンプ部と、該ポンプ部に連結された吸水管及び可撓性を有する排水管と、該排水管を挿入する剛性ガイド管とを備えた、便器のボール部に溜まった水を排水するための便器用排水ポンプであって、前記ガイド管は、前記ボールの底に配置したときに、排水管の先端部をその先端部が便器の前壁又は後壁の裏側に配置された排水口内に配置可能な上向き湾曲形状に形成されていることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された便器用排水ポンプにおいて、前記ガイド管は、少なくとも前記ボール部の底に接触する部分に排水孔又は溝が形成されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1に記載された便器用排水ポンプにおいて、前記ガイド管は、剛性を有する網状管体で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
従来の例えば家庭用の給油ポンプを用いて容易に製造でき、しかも便器のボール内の水を容易に排水することができるため、便器の清掃をより簡単かつ完全に行うことができる。また、そのコストは極めて低廉である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る便器用排水ポンプの側面図で便器内に設置した使用状態を示す図面であり、図1A及び1Bは、便器内の排水口の位置により異なる位置に設置した状態を示している。
本実施形態に係る便器用排水ポンプ10は、従来の例えば家庭用の給油ポンプと同様の構成である。即ち、伸縮操作により内部容積を変更してポンプ作用をする樽形の柔軟な手動式のポンプ部12と、該ポンプ部12から直線状に延び、便器20のボール部22に溜まった水を吸い上げる吸水管14、及び、第1の吸水管14と直交状に交わり、ポンプ部12で吸い上げた水を便器の排水口24に送り出す柔軟な、つまり可撓性のある排水管16を備えている。
【0010】
吸水管14は、剛性のある合成樹脂製のパイプで形成され、先端(又は下端)に吸込口15を有している。排水管16の先端は、便器20のボール部22内に溜まった水中に突入させる部分と、柔軟性のあるひだ付き管とからなっている。ポンプ部12の内部には、吸水管14側からポンプ部12を経由して排水管16側への水の送り出しのみを許容する図示しない逆止弁が設けられている。また、ポンプ部12の上部には、該ポンプ部3内を外気と連通させる空気抜きつまみ30が設けられる。
なお、前記ポンプ10は、従来の手動式の家庭用の給油ポンプと同様にポリエチレン等の合成樹脂でできている。
【0011】
ところで、前記ポンプ10を用いて便器20のボール部22の底に溜まった水を排水するためには、前記ポンプ10の排水管16を便器20の排水口24内に挿入する必要があるが、前記排水管16は、柔軟に構成されているからその先端部を、便器20の前壁(図1B)又は後壁(図1A)の裏側に設けられ、実際には外から隠れた排水口24中に挿入することは容易ではない。
とくに、便器20の清掃は頻繁に行われることから、従来の給油ポンプを用いて、その排水管の先端部を隠れた排水口24に差し込んで、便器20のボール部22内の水を排水することはまず不可能である。
【0012】
そこで、本実施形態では、この排水管16の形状を安定させかつその先端部の部分17(図2参照)を排水口24内に配置するためのガイド管18を用いている。即ち、排水管16をガイド管18中に挿入し、その状態でガイド管18の湾曲形状を利用して便器20の前壁又は後壁の裏側から挿入する。排水管16からの排水は排水用管路26を通って図示しない下水に流れる。
図2は、前記ポンプ10とガイド管18の分解斜視図である。図示のようにガイド管18は直線部分18aとこの直線状部分18aに続く湾曲部分18bとからなっている。排水管16をガイド管18に通した状態で、ガイド管18と排水管16を便器の前壁又は後壁の裏側から挿入する。ガイド管18の湾曲部分18bは、排水管16の先端部17を排水口24内に容易に導くことができるよう、図示のように、実際の便器20の構造に合わせて下から上に向かって湾曲した形状に形成されている。
【0013】
なお、ガイド管18の湾曲部18bを、便器の前壁又は後壁の裏側から挿入するのみで排水管16の先端部17が排水口24内に届く長さに構成すると、ガイド管18の湾曲部18bが長くなり過ぎて便器の前壁又は後壁の裏側から挿入できなくなる。そのため、ガイド管18の湾曲部18bを若干短く形成し、湾曲部18bの一部を前記便器の前壁又は後壁の裏側に差し込んだ状態で、排水管16をガイド管18に沿って排水口24に向かって押し出すようにする。
このようにすることにより、配水管を排水口24にスムーズに配置することができる。
【0014】
図3は、前記ポンプ10の排水管16にガイド管18を装着した本願発明の実施形態に係る便器用排水ポンプの斜視図である。
この図から明らかなように、前記ポンプ10の吸水管14先端を便器20のボール部22の底に当て、かつ排水管16の先端部17を排水口24内に配置したときに、少なくともガイド管18の湾曲部18bが前記ボール部22の底面に接触する部分にはガイド管18の水抜き溝又は孔19が形成されている。
【0015】
この水抜き溝又は孔19は、ガイド管18を前記ボール部22内に溜まった水中に入れたときに、その内部に侵入した水を排水するためのものである。この水抜き溝又は孔19の形状は自由であるが、ガイド管18に排水管16を挿入するときに、排水管16の先端部17が水抜き溝又は孔19の縁に当たって挿入時の抵抗とならないように、例えば排水管16の径に比して十分小さな径の小穴とする、或いは細い溝に形成することができる。勿論小穴(形状は任意である)を並べて複数個を形成しても、あるいは細い溝を並行に或いは非並行に複数条設けてもよい。
また、水抜き溝又は孔19を設ける代わりに、ガイド管18の形状が維持できるものであれば、全体が網状の管体で形成してもよい。ガイド管18をこのように形成することにより、水はガイド管18の内外を自由に出入りすることができる。いずれにしても、ガイド管18内に侵入した水は全てこの便器用排水ポンプ10で完全に排水することができる。
【0016】
以上のように、本実施形態に係る便器用排水ポンプ10を用いるときは、剛性のあるガイド管18の湾曲形状を利用して、ガイド管18を便器の前壁又は後壁の下端部からスムーズにその裏側に挿入することができる。それによって、ガイド管18の内部に挿通した排水管16の端部を排水口24内に容易に配置することができる。
また、排水管16は剛性のあるガイド管18によってその形状が維持されるから、排水中に誤ってポンプを動かしても、排水管16が排水口24から妄りに外れることがない。
【0017】
このように、例えば従来の家庭用給油ポンプを用いて、単にその排出側の管にガイド管18を嵌めることでこれを便器用排水ポンプに作り替えることができ、極めて低コストで便器のボールの底に溜まった水を排水することができる。
便器の排水を行った後、洗浄用化学薬品、界面活性剤又は研磨剤等を用いて便器内面及び底面をブラシ掛けするか又は水で洗浄することで便器の汚れを完全に落とし、しかも溜まった水の中の微生物も完全に除去することができるため、便器の美観だけではなくその衛生状態も長く良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1実施形態に係る便器用排水ポンプの使用状態を示す側面図である。
【図2】便器用排水ポンプの分解斜視図である。
【図3】便器用排水ポンプの斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
10・・・便器用排水ポンプ、12・・・ポンプ部、14・・・吸水管、16・・・排水管、18・・・ガイド管、19・・・水抜き溝又は孔、20・・・便器、22・・・ボール部、24・・・排水口、26・・・排水用管路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動で水を汲み上げるポンプ部と、該ポンプ部に連結された吸水管及び可撓性を有する排水管と、該排水管を挿入する剛性ガイド管とを備えた、便器のボール部に溜まった水を排水するための便器用排水ポンプであって、
前記ガイド管は、前記ボールの底に配置したときに、排水管の先端部をその先端部が便器の前壁又は後壁の裏側に配置された排水口内に配置可能な上向き湾曲形状に形成されていることを特徴とする便器用排水ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載された便器用排水ポンプにおいて、
前記ガイド管は、少なくとも前記ボール部の底に接触する部分に排水孔又は溝が形成されていることを特徴とする便器用排水ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載された便器用排水ポンプにおいて、
前記ガイド管は、剛性を有する網状管体で形成されていることを特徴とする便器用排水ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−6082(P2008−6082A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179790(P2006−179790)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(591250374)
【Fターム(参考)】