説明

便器装置

【課題】便座装置を交換した場合であっても便座装置を昇降させる昇降機構を引き続き使用できるようにする。
【解決手段】便座装置2に設けられた取付部7を着脱可能に支持して当該便座装置2を昇降可能に支持する昇降機構12を、便器装置1の便器本体11に設けた。したがって、便座装置2を交換した場合であっても昇降機構12を引き続き使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置が取り付けられる便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器装置の上側に配置される便座装置を昇降機構によって昇降可能とした構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような構成では、昇降機構によって便座装置を上昇させることで便座装置を便器装置から離間させることができるので、便器装置の上面や便座装置の下面を容易に掃除することができるとされている。
【特許文献1】特開2003−166271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の昇降機構は、便座装置側に設けられているため、例えば、消費者が便座装置を新しいものに買い換えるときには、昇降機構自体は使用可能である場合であっても昇降機構も同時に交換されてしまうので、資源の無駄使いになってしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、便座装置を交換した場合であっても便座装置を昇降させる昇降機構を引き続き使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明の便器装置は、便器本体と、前記便器本体の上側に配置される便座装置に設けられた取付部を着脱可能に支持して当該便座装置を昇降可能に支持する、前記便器本体に設けられた昇降機構と、を備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の便器装置において、前記昇降機構は、前記便器本体に前記便座装置が当接する使用位置に前記便座装置を固定するロック機構と、前記ロック機構による固定が解除されたときに付勢力によって前記便座装置を上昇させる付勢部材と、を備える。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の便器装置において、前記取付部は、左右一対設けられている一方、前記昇降機構は、ボルト,ナットによって前記取付部が固定される単一の昇降部材と、前記昇降部材を昇降可能に支持する支持部と、を備え、前記付勢部材は、前記昇降部材を上方へ付勢している。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の便器装置において、前記取付部は、左右一対設けられている一方、前記昇降機構は、前記取付部毎に設けられ、ボルト,ナットによって前記取付部が固定される昇降部材と、前記昇降部材を昇降可能に支持する支持部と、を備え、前記付勢部材は、前記昇降部材を上方へ付勢している。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、便座装置を昇降させる昇降機構が便器装置の便器本体に設けられているので、便座装置を交換した場合であっても昇降機構を引き続き使用することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ロック機構による固定を解除することにより付勢部材の付勢力によって自動的に便座装置が上昇するので、便利である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、便座装置の左右一対の取付部が単一の昇降部材に固定されるので、便座装置の昇降を安定して行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、便座装置の左右一対の取付部毎に昇降部材が設けられているので、単一の昇降部材にそれらの取付部を固定する場合に比べて、昇降機構を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1の実施形態を図1ないし図7に基づいて説明する。図1は、本実施形態の便座装置が取り付けられた便器装置を概略的に示す側面図、図2は、便座装置を上昇させた状態の便器装置を概略的に示す側面図、図3は、便器装置を便座装置と共に概略的に示す斜視図、図4は、便座装置を下方から見て示す斜視図、図5は、便座装置を使用位置に固定した状態の昇降機構を示す縦断側面図、図6は、便座装置を上昇させた状態の昇降機構を示す縦断側面図、図7は、ロック機構を示す縦断側面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、便器装置1は、その上側に配置された便座装置2を昇降機構12によって昇降可能及び着脱可能に支持する。この便器装置1は、ボルト3を用いて便座4が取り付けられるようになっている。本実施形態のボルト3は、矩形状の頭部を有するT字状のボルトである。
【0016】
昇降対象である便座装置2を説明する。便座装置2は、便座4と、便蓋5と、これら便座4及び便蓋5を回動可能に支持する本体部6とから構成されている。本体部6には、例えば人体の局部を洗浄する局部洗浄装置(図示せず)が設けられている。
【0017】
本体部6の下部には、図3及び図4に示すように、左右一対の取付部7が設けられている。これらの取付部7には、ボルト3の頭部に着脱可能に係合する係合部8が設けられている。この係合部8は、その下面及び後面に開口が形成されており、後方からボルト3の挿入が可能となっていると共に、挿入されたボルト3の軸部が本体部6の下面から突出するようになっている。
【0018】
次に、便器装置1を詳細に説明する。図1ないし図3に示すように、便器装置1は、排泄物を受け入れる例えば樹脂製の便器本体11と、この便器本体11の後部における上部に設けられた昇降機構12とを備えている。
【0019】
昇降機構12は、便座装置2の取付部7を着脱可能に支持すると共に当該便座装置2を昇降可能に支持するものである。この昇降機構12は、図5及び図6に示すように、便器本体11に固定された筐体13と、便座装置2が固定される単一の昇降部材であるプレート部材14と、このプレート部材14を昇降可能に支持する支持部15と、便器本体11に便座装置2が当接する使用位置に便座装置2を固定するロック機構16と、ロック機構16による固定が解除されたときに付勢力によって便座装置2を上昇させる付勢部材であるコイルバネ17とを備えている。
【0020】
プレート部材14は、平面視矩形状に形成されており、その左部及び右部には、プレート部材14を厚さ方向に貫通した貫通孔(図示せず)が形成されている。そして、その貫通孔に軸部が挿通されると共に頭部が便座装置2の係合部8に係合した状態のボルト3と、このボルト3に螺合するナット18とによって、プレート部材14に便座装置2の取付部7が着脱可能に固定される。
【0021】
このプレート部材14の下面には、前述の貫通孔の前後に位置させた計4つの軸部材19が立設されている一方、筐体13には、この軸部材19毎に設けられ軸部材19を上下動可能に支持する支持孔20が設けられている。これら軸部材19と支持孔20とは、プレート部材14を昇降可能に支持する支持部15を構成している。
【0022】
軸部材19には、コイルバネ17が外挿されており、このコイルバネ17は、プレート部材14を上方に向けて付勢する圧縮バネとして機能する。
【0023】
ロック機構16は、図7に示すように、ピン21を用いて便座装置2を使用位置に固定するものである。プレート部材14の後部における横幅方向の略中央部には、下方に突出する凸部が設けられており、この凸部には、ピン21が挿脱可能な係止孔22が形成されている。また、便器本体11及び筐体13には、プレート部材14の係止孔22に連通する係止孔23,24が設けられている。
【0024】
このロック機構16は、係止孔22,23,24に挿入されたピン21によってプレート部材14の上昇を阻止して、便座装置2を使用位置に固定する(図2)。一方、ピン21が係止孔22から外されたときには、プレート部材14の上昇の阻止が解除される。これにより、コイルバネ17の付勢力によって、プレート部材14が上昇し、便座装置2が上昇する。そして、図6に示すように、軸部材19のうちボルト3の後方に位置する軸部材19の側部には、凸部25が設けられており、この凸部25が、筐体13に形成されたストッパ部26に係止されることで、プレート部材14の規定高さ以上の上昇が阻止されて、便座装置2が、便器本体11から規定距離だけ離間した位置である離間位置に保持される(図1,図6)。
【0025】
このよう構成において、例えば、便器本体11の上面や便座装置2の下面を掃除する際には、ピン21を外してロック機構16による使用位置での便座装置2の固定を解除することで、コイルバネ17の付勢力によって自動的に便座装置2が上昇して離間位置に保持されるので(図2)、容易に便器本体11と便座装置2とを掃除することができる。また、掃除が終了した際には、便座装置2を使用位置へ押し下げて、ピン21によって使用位置に便座装置2を固定することで、便座装置2が使用可能状態となる(図1)。
【0026】
また、便座装置2を交換するには、ナット18を緩めて便座装置2を昇降機構12から取り外し、次に、新規の便座装置2をボルト3に係合させてナット18を締めて新規の便座装置2を昇降機構12に固定する。
【0027】
以上説明したように、本実施形態では、便座装置2を昇降させる昇降機構12が便器装置1の便器本体11に設けられているので、便座装置2を交換した場合であっても昇降機構12を引き続き使用することができる。これにより、資源の無駄使いを抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態では、昇降機構12に便座装置2を固定するボルト3がT字状のボルトであるので、このT字状のボルト用の取付部7を有する様々な種類の便座装置2を改造することなくそのまま昇降機構12に固定することができる。
【0029】
また、本実施形態では、ロック機構16による固定を解除することによりコイルバネ17の付勢力によって自動的に便座装置2が上昇するので、便利である。
【0030】
また、本実施形態では、便座装置2の左右一対の取付部7が単一の昇降部材であるプレート部材14に固定されるので、便座装置2の昇降を安定して行うことができる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態を図8ないし図11に基づいて説明する。前述した実施形態と同じ部分は、同一符号で示し説明も省略する。図8は、本実施形態の便器装置を便座装置と共に概略的に示す斜視図、図9は、本実施形態の便座装置を上昇させた状態の便器装置を概略的に示す側面図、図10は、便座装置を使用位置に固定した状態の昇降機構を示す縦断側面図、図11は、便座装置を上昇させた状態の昇降機構を示す縦断側面図である。
【0032】
本実施形態は、図8及び図9に示すように、便器装置1Aにおける昇降機構12Aが第1の実施形態に対して異なる。本実施形態の昇降機構12Aは、便座装置2の取付部7毎に、独立した機構部31を有している。
【0033】
図10及び図11に示すように、機構部31には、昇降部材として円柱状のキャッチャ14Aが設けられている。このキャッチャ14Aの上部には、ボルト3が螺合され、このボルト3とナット18とによって便座装置2の取付部7がキャッチャ14Aに固定されるようになっている。
【0034】
キャッチャ14Aは、筐体13Aに設けられた支持部15Aによって昇降可能に支持されていると共に、コイルバネ17によって上方に付勢されている。具体的には、支持部15には、上下方向に延在する支軸32が設けられている一方、キャッチャ14A及びボルト3には、この支軸32が挿入された孔(図示せず)が形成されており、この構造によって、キャッチャ14Aが支軸32に沿って上下動可能となっている。また、この支軸32には、コイルバネ17が外挿されており、このコイルバネ17は、キャッチャ14Aを上方に向けて付勢している。
【0035】
また、本実施形態では、ロック機構16Aが各機構部31毎に設けられている。具体的には、キャッチャ14Aの後部には、ピン21が挿脱可能な係止孔22Aが形成されている。また、便器本体11A及び筐体13Aには、キャッチャ14Aの係止孔22Aに連通する係止孔23A,24Aが設けられている。
【0036】
このロック機構16は、係止孔22A,23A,24Aに挿入されたピン21によってキャッチャ14Aの上昇を阻止して、便座装置2を使用位置に固定する。一方、ピン21が係止孔22Aから外されたときには、キャッチャ14Aの上昇の阻止が解除される。これにより、コイルバネ17によって、キャッチャ14Aが上昇され、便座装置2が上昇される。そして、図11に示すように、キャッチャ14Aの前面に設けられた凸部33が、筐体13に形成されたストッパ部34に係止されることで、キャッチャ14Aの規定高さ以上の上昇が阻止されて、便座装置2が、離間位置に保持される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、便座装置2の左右一対の取付部7毎に昇降部材であるキャッチャ14Aが設けられているので、単一の昇降部材にそれらの取付部7を固定する場合に比べて、昇降機構12Aを小型化することができる。
【0038】
なお、本発明は、本実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態の便座装置が取り付けられた便器装置を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の便座装置を上昇させた状態の便器装置を概略的に示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の便器装置を便座装置と共に概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の便座装置を下方から見て示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の便座装置を使用位置に固定した状態の昇降機構を示す縦断側面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の便座装置を上昇させた状態の昇降機構を示す縦断側面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態のロック機構を示す縦断側面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の便器装置を便座装置と共に概略的に示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の便座装置を上昇させた状態の便器装置を概略的に示す側面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の便座装置を使用位置に固定した状態の昇降機構を示す縦断側面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の便座装置を上昇させた状態の昇降機構を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 便器装置
1A 便器装置
2 便座装置
3 ボルト
7 取付部
11 便器本体
11A 便器本体
12 昇降機構
12A 昇降機構
14 プレート部材(昇降部材)
14A キャッチャ(昇降部材)
15 支持部
15A 支持部
16 ロック機構
16A ロック機構
17 コイルバネ(付勢部材)
18 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、
前記便器本体の上側に配置される便座装置に設けられた取付部を着脱可能に支持して当該便座装置を昇降可能に支持する、前記便器本体に設けられた昇降機構と、
を備える便器装置。
【請求項2】
前記昇降機構は、
前記便器本体に前記便座装置が当接する使用位置に前記便座装置を固定するロック機構と、
前記ロック機構による固定が解除されたときに付勢力によって前記便座装置を上昇させる付勢部材と、
を備える請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記取付部は、左右一対設けられている一方、
前記昇降機構は、
ボルト,ナットによって前記取付部が固定される単一の昇降部材と、
前記昇降部材を昇降可能に支持する支持部と、
を備え、
前記付勢部材は、前記昇降部材を上方へ付勢している請求項2に記載の便器装置。
【請求項4】
前記取付部は、左右一対設けられている一方、
前記昇降機構は、
前記取付部毎に設けられ、ボルト,ナットによって前記取付部が固定される昇降部材と、
前記昇降部材を昇降可能に支持する支持部と、
を備え、
前記付勢部材は、前記昇降部材を上方へ付勢している請求項2に記載の便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−260143(P2007−260143A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89114(P2006−89114)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】