説明

便座昇降装置

【課題】昇降操作のスイッチを操作性およびレイアウト的に最適な位置に配置することができ、便座への着座・起立動作を支援するばかりでなく、着座・起立動作時に手を突いて身体を支えることができ、しかも衛生面に優れた便座昇降装置を提供する。
【解決手段】便器1上に設置され便座2を支持すると共に、駆動機構30によって便座2を昇降させるようにした便座昇降装置10であり、便器1を支持して昇降する装置本体10aと、駆動機構30を作動させるための操作スイッチ50とを有し、装置本体10aの両側端に、使用者が手を突いて支えとするグリップ部40を設け、一方のグリップ部40に操作スイッチ50を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器上に設置され便座を支持すると共に、駆動機構によって前記便座を昇降させるようにした便座昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器の使用を補助する装置として、便座を昇降させる便座昇降装置が知られている。この便座昇降装置は、筋力の弱った高齢者やリウマチ患者、あるいは車椅子使用者等が着座・起立動作を行う時に便座を昇降させて、腰や脚部への負担を軽減するように使用者の動作を補助するものである。具体的な便座昇降装置の例として、電動で便座を昇降させるものが既に本出願人により提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、便座の左右両側に突出部を一体に設けて、この突出部に両手を突いて臀部を浮かせることにより、便座に着座した後でも臀部の位置を移動しやすくした技術も知られている(例えば、特許文献2参照。)。なお、トイレ内に手すりや肘掛等の設備を施工する例もあるが、装置は大型で高価なものであり、スペース上の制約で手すりや肘掛等の付帯設備が施工できない場合もあった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−344631号公報
【特許文献2】特開2003−275136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1に記載の技術は、電動で昇降するために非常に使い勝手の良いものであったが、操作を行うスイッチの取り付け位置に関しては、その操作性の問題や他の部品との干渉を避ける観点から、よりいっそうの改善が望まれていた。また、着座・起立動作中は手すりや肘掛を持つ、あるいは便座に手を添え身体を支える等の行為が必ず存在することになるが、手すりや肘掛等の設備を施工する場合、装置が大型で高価なものとなり、スペース上の制約で施工できない場合もあった。
【0006】
ここで手すりや肘掛等の設備がない場合、便座面に手を添えるしかなく、衛生面において大きな不安があった。また、着座時において、手を添える場所が着座位置であるから、脚を狭める、深めに座る等、身体に負担のかかる姿勢をとらなければならなかった。さらに、起立時においては、臀部もしくは脚部の下に手を差し入れてから起立動作を始める必要がある他、両手の間隔が狭いために身体を支えにくいという問題もあった。
【0007】
また、前述した特許文献2に記載の技術では、便座の左右両側に設けた突出部に両手を突いて身体を支えることができるが、手を突く部位があくまで便座自体であるため、衛生面において大きな不安があった。さらに、便座の上面位置を高くするような機能は全く考慮されておらず、しかも、便座自体が特別な仕様であるため、既存の便座を一切流用することができず、便座自体を新たに交換しなければ利用できなかった。
【0008】
本発明は、以上のような従来技術が有する問題点に着目してなされたものであり、昇降操作のスイッチを操作性およびレイアウト的に最適な位置に配置することで、着座・起立動作をよりいっそうと支援することができると共に、着座・起立動作時に手を突いて身体を支えることができ、しかも、便座とは異なる部位に手を突くことで衛生面にも優れた便座昇降装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]便器(1)上に設置されて便座(2)を支持すると共に、駆動機構(30)によって前記便座(2)を昇降させるようにした便座昇降装置(10)において、
前記便座(2)を支持して昇降する装置本体(10a)と、前記駆動機構(30)を作動させるための操作スイッチ(50)とを有し、
前記装置本体(10a)の両側端のうち少なくとも一方に、使用者が手を突いて支えとするグリップ部(40)を設け、
前記グリップ部(40)に、前記操作スイッチ(50)を配置したことを特徴とする便座昇降装置(10)。
【0010】
[2]便器(1)上に設置されて便座(2)を支持すると共に、駆動機構(30)によって前記便座(2)を昇降させるようにした便座昇降装置(10)において、
前記便座(2)を支持して昇降する装置本体(10a)と、前記駆動機構(30)を作動させるための操作スイッチ(50)とを有し、
前記装置本体(10a)の両側端のうち少なくとも一方に、使用者が肘を掛けるための肘掛部材(70)を取り付け、
前記肘掛部材(70)の前端側に、使用者が手を突いて支えとするグリップ部(40)を設け、
前記グリップ部(40)に、前記操作スイッチ(50)を配置したことを特徴とする便座昇降装置(10)。
【0011】
[3]前記グリップ部(40)において手の平が接する上面部(42)を避けた位置に、前記操作スイッチ(50)を配置したことを特徴とする[1]または[2]に記載の便座昇降装置(10)。
【0012】
[4]前記グリップ部(40)における前記上面部(42)の周囲で指が接する位置に、前記操作スイッチ(50)の操作部分を配置したことを特徴とする[3]に記載の便座昇降装置(10)。
【0013】
[5]前記操作スイッチ(50)は、グリップ部(40)に対して上下方向に操作可能に装着された操作杆(53)を前記操作部分として有することを特徴とする[4]に記載の便座昇降装置(10)。
【0014】
[6]前記操作杆(53)を、前記駆動機構(30)を停止させる初期位置に対して、上方に変位させた際に前記駆動機構(30)により便座(2)を上昇させる一方、下方に変位させた際に前記駆動機構(30)により便座(2)を下降させるように設定したことを特徴とする[5]に記載の便座昇降装置(10)。
【0015】
[7]前記グリップ部(40)は、前記操作スイッチ(50)を配置しない場合に、該操作スイッチ(50)を配置するために予め設けてある取付用開口(43,44)を塞ぐためのリテーナ(60)を、前記操作スイッチ(50)の代わりに有して成ることを特徴とする[5]または[6]に記載の便座昇降装置(10)。
【0016】
前記本発明は次のように作用する。
前記[1]に記載の便座昇降装置(10)によれば、駆動機構(30)によって、便座(2)を支持する装置本体(10a)を昇降させることにより、便座(2)に対する着座・起立動作時の身体への負担を軽減することができる。さらに、着座・起立動作時には、装置本体(10a)に設けてある専用のグリップ部(40)に手を突いて身体を支えながら動作を行うことができ、使用者は無理な姿勢をとることなく、より十分に身体への負担を軽減させることができる。
【0017】
特に、前記グリップ部(40)は便座(2)とは異なる部位となるから、便座(2)の座面を触ることにはならず、使用者は衛生面でも安心することができる。また、着座・起立動作時ばかりでなく、排泄中の姿勢においても、グリップ部(40)に手を突いて身体を支えることができるから、無理な姿勢を伴うことなく身体を支え続けることが可能となる。
【0018】
しかも、装置本体(10a)にグリップ部(40)を設けた構造であるため、グリップ部(40)の設置に対する制約は非常に少なくて済み、また、部品の共用化によりコンパクトに配置させることが可能となる。また、既存の便座(2)は何ら改造する必要がなく、そのまま流用することができるため、設置コストも極力抑えることができる。
【0019】
さらに、前記グリップ部(40)に、前記駆動機構(30)を作動させるための操作スイッチ(50)を配置したことにより、該操作スイッチ(50)を使用者が最も無理なく容易に操作することが可能となり、限られたスペースである便器(1)周辺における操作スイッチ(50)の設置場所を特別に設けるような必要もなくなる。また、グリップ部(40)と操作スイッチ(50)の部品を共用化することもできる。
【0020】
また、前記[2]に記載の便座昇降装置(10)のように、前記グリップ部(40)の代わりに肘掛部材(70)を前記装置本体(10a)に取り付けて、該肘掛部材(70)の前端側に前記グリップ部(40)を設けるようにしても良い。このように、装置本体(10a)に肘掛部材(70)を取り付けた構造により、肘掛部材(70)の設置に対する制約は非常に少なくて済み、装置本体(10a)を肘掛部材(70)の支持部位として有効に活用することができる。
【0021】
さらに、肘掛部材(70)の前端側にグリップ部(40)を設けると共に、該グリップ部(40)に、前記駆動機構(30)を作動させるための操作スイッチ(50)を配置したことにより、前記[1]の場合と同様に、該操作スイッチ(50)を使用者が最も無理なく容易に操作することができることになり、限られたスペースである便器(1)周辺において操作スイッチ(50)の設置場所を特別に設けるような必要もなくなる。
【0022】
また、前記[3]に記載の便座昇降装置(10)のように、前記グリップ部(40)において手の平が接する上面部(42)を避けた位置に、前記操作スイッチ(50)を配置すると良い。これにより、グリップ部(40)に手を突いた際、不用意に操作スイッチ(50)を操作してしまうような誤動作を未然に防止することができる。
【0023】
また、前記[4]に記載の便座昇降装置(10)のように、前記グリップ部(40)における上面部(42)の周囲で指が接する位置に、前記操作スイッチ(50)の操作部分を配置すると良い。これにより、グリップ部(40)に手を突いたままの状態で、手を大きく動かすことなく、操作スイッチ(50)を容易に操作することができる。
【0024】
ここで、前記操作スイッチ(50)の操作部分としては、具体的には例えば、前記[5]に記載したように、前記グリップ部(40)に対して上下方向に操作可能に装着された操作杆(53)とすれば、簡易な指先の動作だけで確実かつ容易に操作を行うことができる。
【0025】
また、前記[6]に記載の便座昇降装置(10)のように、前記操作杆(53)を、駆動機構(30)を停止させる初期位置に対して、上方に変位させた際に駆動機構(30)により便座(2)を上昇させる一方、下方に変位させた際に駆動機構(30)により便座(2)を下降させるように設定すると良い。これにより、操作杆(53)の操作方向と便座(2)の昇降動作の方向性が一致することになり、感覚的にもより分かりやすく確実に昇降操作を行うことができることになる。
【0026】
さらにまた、前記[7]に記載の便座昇降装置(10)のように、前記グリップ部(40)に操作スイッチ(50)を配置しないような場合には、グリップ部(40)に操作スイッチ(50)を配置するために予め設けてある取付用開口(43,44)を塞ぐためのリテーナ(60)を、操作スイッチ(50)の代わりに有することで、操作スイッチ(50)の配置の有無に関わらず、グリップ部(40)の主要部の構成を共通化させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る便座昇降装置によれば、駆動機構によって、便座を支持する装置本体を昇降させることにより、便座に対する着座・起立動作時に、装置本体自体または装置本体に支持した肘掛部材に設けたグリップ部に手を突いて、身体を支えながら動作を行うことができ、使用者は無理な姿勢をとることなく、より十分に身体への負担を軽減させることができる。
【0028】
特に、便座とは異なる部位であるグリップ部に手を突くことになり、衛生面に優れ、しかも、前記駆動機構を作動させる操作スイッチを、その操作性およびレイアウト的に最適な位置であるグリップ部に配置することにより、着座・起立動作をいっそうと支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面に基づき、本発明を代表する各種実施の形態を説明する。
図1〜図5は、本発明の第1実施の形態を示している。
図1は、本発明の第1実施の形態に係る便座昇降装置10を洋式の便器1に設置した状態を示す斜視図であり、図2は、装置本体10aにグリップ部40を取り付ける状態を示す分解斜視図である。図3は、グリップ部40に操作スイッチ50を組み込む状態を示す分解斜視図であり、図4は、グリップ部40に操作スイッチ50の代わりにリテーナ60を組み込む状態を示す分解斜視図である。また、図5は、便座昇降装置10による昇降動作を示す説明図である。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態に係る便座昇降装置10は、洋式の便器1に設置されて便座2を支持すると共に、該便座2を昇降させることができる装置である。便座昇降装置10は、便器1を支持して昇降する装置本体10aと、便器1の両側に一対配されて、装置本体10aおよび便座2を昇降させるための駆動機構30と、該駆動機構30を作動させるための操作スイッチ50等を有している。
【0031】
装置本体10aは、便器1の上端部に沿って略O字形状に形成されており、該装置本体10aに取り付ける便座2の開口部に合致した開口部11と、該開口部11の両側より下方にカバー状に垂下する両側部12とを有している。装置本体10aの後端側に、便座2が開閉可能に取り付けられている。装置本体10aおよび便座2は、駆動機構30によって便器1上に昇降可能に支持される。
【0032】
図2に示すように、装置本体10aの両側端には、それぞれ使用者が手を突いて支えとするグリップ部40が設けられている。グリップ部40は、前記便座2の両側端縁より側方に延出し、かつ前記便座2の上面位置より高い位置に、使用者の手の平が接する上面部42が形成されている。上面部42には、滑り止め加工が施されている。ここで滑り止め加工としては、図示したように円形の凸部を等間隔に並べたエンボス加工の他、摩擦係数が高いゴム材シートを貼り付けること等が考えられる。
【0033】
また、前記グリップ部40に、前記操作スイッチ50が配置されている。グリップ部40において手の平が接する上面部42を避けた位置に、操作スイッチ50は配置されている。さらに、グリップ部40における上面部42の周囲で指が接する位置に、操作スイッチ50の操作部分である操作杆53が配置されている。
【0034】
図3に示すように、グリップ部40は、ベース部41と、該ベース部41の上側に固定する上面部42とから成る。ベース部41と上面部42とは、それぞれ例えば合成樹脂により成形すると良い。上面部42は矩形状に形成されており、その上面側に前述したように円形の凸部を等間隔に並べたエンボス加工が施されている。
【0035】
ベース部41の一端側には、前記装置本体10aの側部12の前方上端に予め形成された取付凹部13にボルト止めする取付部41aが一体に設けられている。ベース部41と上面部42を合わせた内部には、操作スイッチ50のレバー51が支持されているスイッチ本体52を収納する中空部が形成されるようになっている。
【0036】
グリップ部40の前端には、前記レバー51が上下に移動可能に挿通するガイド孔43が形成され、グリップ部40の両端には、前記レバー51に押し引き可能に連結される操作杆53の両端部54,54を枢支する一対の軸受孔44,44が形成されている。前記ガイド孔43および各軸受孔44は、それぞれ前記ベース部41と上面部42とに略半分ずつ形成されている。
【0037】
操作杆53は、その両端部54,54が前記一対の軸受孔44,44に枢支されることにより、グリップ部40に対して上下方向に操作可能に装着される。ここで操作杆53は、その上下方向への操作に伴い前記レバー51を同方向へ変位させるものであり、駆動機構30を停止させる略水平な初期位置に対して、上方に変位させた際に駆動機構30により便座2を上昇させる一方、下方に変位させた際に駆動機構30により便座2を下降させるように設定されている。なお、操作杆53は、初期位置に自動的に戻るように付勢されている。
【0038】
また、図4に示すように、グリップ部40に操作スイッチ50を配置しない場合には、該操作スイッチ50の代わりにリテーナ60を備える。リテーナ60は、グリップ部40に操作スイッチ50を配置するために予め設けてある取付用開口である前記ガイド孔43および各軸受孔44を塞ぐための部品であり、ガイド孔43を塞ぐ第1蓋部61と、各軸受孔44を塞ぐ一対の第2蓋部62,62とが、それぞれ連結杆60aにより所定配置に連結されて成る。リテーナ60も例えば合成樹脂により一体成型すると良い。
【0039】
本実施の形態では、図1に示すように、装置本体10aの両側端に設けた一対のグリップ部40のうち一方に操作スイッチ50を装着し、他方に操作スイッチ50の代わりにリテーナ60を備えるようにしているが、どちらの側のグリップ部40に操作スイッチ50を設けるかは、自由に選択することができる設計事項である。もちろん、両方のグリップ部40に、それぞれ操作スイッチ50を装着するように構成してもかまわない。
【0040】
図1に示すように、駆動機構30は、便器1の両側に一対配されており、それぞれケース体30aに収納され、前記装置本体10aの両側部12が被さるように装着されている。各ケース体30a内では、図示省略したが2つのリンク部材と、これらを互いに枢支する連結軸とにより、X字状リンクが構成されており、電動モータの動力によって、連結軸を中心に2つのリンク部材を回動して折畳状態と展開状態とに変動させることで、装置本体10aおよび便座2を昇降できるようになっている。なお、一方のケース体30aの下方には、電動モータ等を収納する動力収納部31が一体形成されている。
【0041】
このような駆動機構30としては、具体的には例えば、本出願人が既に提案している特開2004−344631号公報に記載された発明を利用すると良い。すなわち、2つのリンク部材を枢支する連結軸の枢支位置を切り換える構成により、便座2を通常の着座姿勢(図5(a)参照)と、その着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢(図5(b)参照)とに昇降させる動作と、便座2を通常の着座姿勢(図5(a)参照)と、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢(図5(c)参照)とに昇降させる動作とを、任意に選択することができるようになる。
【0042】
次に、本実施の形態に係る便座昇降装置10の作用を説明する。
図1に示すように、便座昇降装置10によれば、駆動機構30によって、便座2を支持する装置本体10aを昇降させることにより、便座2に対する着座・起立動作時の身体への負担を軽減することができる。しかも、着座・起立動作時には、装置本体10aに設けてあるグリップ部40に手を突いて身体を支えながら動作を行うことができ、使用者は無理な姿勢をとることなく、より十分に身体への負担を軽減させることができる。
【0043】
特に、グリップ部40は便座2とは異なる部位となるから、便座2の座面を触ることにはならず、使用者は衛生面でも安心することができる。また、着座・起立動作時ばかりでなく、排泄中の姿勢においても、グリップ部40に手を突いて身体を支えることができるから、無理な姿勢を伴うことなく身体を支え続けることが可能となる。
【0044】
また、装置本体10aにグリップ部40を設けた構造であるため、グリップ部40の設置に対する制約は非常に少なくて済み、また、部品の共用化によりコンパクトに配置させることが可能となる。また、既存の便座2は何ら改造する必要がなく、そのまま流用することができるため、設置コストも極力抑えることができる。また、使用に伴い開閉する便座2の重量増加を招く虞もない。
【0045】
さらに、グリップ部40に、駆動機構30を作動させるための操作スイッチ50を配置したことにより、該操作スイッチ50を使用者が最も無理なく容易に操作することが可能となり、限られたスペースである便器1周辺において操作スイッチ50の設置場所を特別に設けるような必要もなくなる。また、グリップ部40と操作スイッチ50の部品を共用化することもできる。
【0046】
図1に示すように、操作スイッチ50は、グリップ部40において手の平が接する上面部42を避けた位置に配置、すなわち、上面部42ではなく、その一段下方にて側方に延出する位置に配置される。これにより、グリップ部40に手を突いた際、不用意に操作スイッチ50を操作してしまうような誤動作を未然に防止することができる。
【0047】
また、操作スイッチ50の操作部分である操作杆53は、グリップ部40における上面部42の周囲で指が接する位置に配置されているので、グリップ部40に手を突いたままの状態で、手を大きく動かすことなく、操作スイッチ50を容易に操作することができる。ここで操作杆53は、グリップ部40に対して上下方向に操作可能に装着されており、簡易な指先の動作だけで確実かつ容易に操作することができる。
【0048】
操作スイッチ50により作動させる駆動機構30は、前述したように、2つのリンク部材を枢支する連結軸の枢支位置を切り換えることにより、便座2を通常の着座姿勢(図5(a)参照)と、その着座姿勢とほぼ同じ姿勢である水平待機姿勢(図5(b)参照)とに昇降させる動作と、便座2を通常の着座姿勢(図5(a)参照)と、その着座姿勢に対して前方に傾いた前傾待機姿勢(図5(c)参照)とに昇降させる動作とを、任意に選択することができる。
【0049】
ここで前者の動作を選択して便座昇降装置10を設置した場合、操作スイッチ50の操作杆53を、駆動機構30を停止させる初期位置に対して、上方に変位させると、駆動機構30の作動によって、便座2は図5(a)に示す通常の着座姿勢から図5(b)に示す水平待機姿勢へと上昇する。一方、操作杆53を下方に変位させると、駆動機構30の逆向きの作動によって、便座2は図5(b)に示す水平待機姿勢から図5(a)に示す通常の着座姿勢へと下降する。
【0050】
それにより、操作杆53の操作方向と便座2の昇降動作の方向性とが一致することになり、感覚的にもより分かりやすく確実に操作を行うことができる。なお、使用者は着座する際に、便座2を図5(b)に示す水平待機姿勢に上昇させれば、膝や腰を大きく曲げることなく、便座2に着座することができ、使用時には図5(a)に示す通常の着座姿勢に下降させ、また起立する際に、再び便座2を図5(b)に示す水平待機姿勢に上昇させることで、身体への負担を軽減させることができる。
【0051】
また、前述した後者の動作を選択して便座昇降装置10を設置した場合、操作スイッチ50の操作杆53を、駆動機構30を停止させる初期位置に対して、上方に変位させると、駆動機構30の作動によって、便座2は図5(a)に示す通常の着座姿勢から図5(c)に示す前傾待機姿勢へと上昇する。一方、操作杆53を下方に変位させると、駆動機構30の逆向きの作動によって、便座2は図5(c)に示す前傾待機姿勢から図5(a)に示す通常の着座姿勢へと下降する。使用者は自分の使い勝手の良さに応じて、このような前傾待機姿勢への動作になるように予め選択することができる。
【0052】
さらに、装置本体10aの両側に一対あるグリップ部40のそれぞれに操作スイッチ50を設ける必要はなく、何れか一方のグリップ部40にだけ操作スイッチ50を設ければ足りる。ここで、グリップ部40に操作スイッチ50を配置しない場合、図4に示すように、グリップ部40に操作スイッチ50を配置するために予め設けてあるガイド孔43,軸受孔44を塞ぐためのリテーナ60を、操作スイッチ50の代わりに備えることで、操作スイッチ50の配置の有無に関わらず、グリップ部40の主要部の構成を共通化させることができ、製造コストを低減することができる。
【0053】
次に、図6〜図10に基づいて、本発明の第2実施の形態に係る便座昇降装置10を説明する。第2実施の形態は、前記装置本体10aの両側端に、それぞれ使用者が肘を掛けるための肘掛部材70を取り付けて、該肘掛部材70の前端側に前記グリップ部40を設け、該グリップ部40に前記操作スイッチ50を配置したものである。ここで肘掛部材70は、便座昇降装置10にオプションとして取り付けることができるものである。なお、第1実施の形態と同種の部位には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0054】
図6は、第2実施の形態に係る肘掛部材70を備えた便座昇降装置10を洋式の便器1に設置した状態を示す斜視図であり、図7は、装置本体10aに肘掛部材70のアーム部材71を取り付ける状態を示す分解斜視図である。図8は、肘掛部材70のアーム部材71にフレーム部材74を連結する状態を示す分解斜視図である。図9は、肘掛部材70のベース板76の前端にグリップ部40を装着する状態を示す分解斜視図である。図10は、肘掛部材70のベース板76に上部カバー77を装着する状態を示す分解斜視図である。
【0055】
図6に示すように、肘掛部材70は、前記装置本体10aの取付凹部13に、前記グリップ部40の代わりに支持するアーム部材71と、該アーム部材71に取り付けるフレーム部材74とを有して成る。フレーム部材74は、下方へ垂下する脚部75と、該脚部75の上端に水平に延びる状態に固設されるベース板76と、該ベース板76の上面側に装着する上部カバー77とから成り、前記グリップ部40や前記操作スイッチ50が装着されている。なお、肘掛部材70の各々の部品は、例えば合成樹脂により成形すれば良い。
【0056】
図7に示すように、アーム部材71は、その下端側が前記取付凹部13に合致する取付部72となっており、該取付部72を前記取付凹部13にボルト止めすることにより、肘掛部材70は装置本体10aに支持される。本第2実施の形態では、装置本体10aの両側端に、それぞれ肘掛部材70を支持したが、何れか一方のみに肘掛部材70を支持するように構成しても良い。肘掛部材70を両側に設けるか、何れか一方の片側だけに設けるかは、自由に選択することができるようになっている。
【0057】
前記アーム部材71の取付部72より上方に立ち上がる垂直部73には、上下方向に4個のネジ孔73aが設けられ、該垂直部73に外嵌させるフレーム部材74の脚部75には、上下方向に2個のネジ孔75aが設けられている。図8に示すように、2個のネジ孔75aを前記ネジ孔73aに合致させてネジ止めする位置を選択することで、ベース板76の高さ位置を適宜調整することができるようになっている。
【0058】
図9に示すように、フレーム部材74のベース板76における前端側には、前記操作スイッチ50を装着したグリップ部40がネジ止めされる。また、上部カバー77は、その前端側がグリップ部40の取付部41aを隠蔽するように覆う状態で、ベース板76の上面側に一体にネジ止めされる。ただし、図6に示すように、前記操作スイッチ50を装着したグリップ部40を設けるのは、一対の肘掛部材70のうち何れか一方のみで足り、他方の肘掛部材70には、前記リテーナ60を備えるグリップ部40を設けると良い。もちろん、左右の何れかに操作スイッチ50を配するのかは、適宜選択できる事項である。
【0059】
このような第2実施の形態のように、前記グリップ部40の代わりに肘掛部材70を装置本体10aに支持して、該肘掛部材70の前端側にグリップ部40を設けることにより、肘掛部材70の設置に対する制約は非常に少なくて済み、装置本体10aを肘掛部材70の取付部位として有効に活用することができる。また、肘掛部材70自体を十分に活用することができる。
【0060】
さらに、肘掛部材70の前端側にグリップ部40を設けると共に、該グリップ部40に、駆動機構30を作動させるための操作スイッチ50を配置したことにより、前記第1実施の形態の場合と同様に、該操作スイッチ50を使用者が最も無理なく容易に操作することができることになり、限られたスペースである便器1周辺において操作スイッチ50の設置場所を特別に設けるような必要もなくなる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、前記実施の形態では、前記装置本体10aの両側端にそれぞれグリップ部40や肘掛部材70を設けたが、両側端のうち何れか一方の片側だけにグリップ部40や肘掛部材70を設けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る便座昇降装置を洋式の便器に設置した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施の形態に係る便座昇降装置の装置本体にグリップ部を取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施の形態に係る便座昇降装置のグリップ部に操作スイッチを組み込む状態を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施の形態に係る便座昇降装置のグリップ部に、操作スイッチの代わりにリテーナを組み込む状態を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第1実施の形態に係る便座昇降装置による昇降動作を示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施の形態に係る肘掛部材を備えた便座昇降装置を洋式の便器に設置した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施の形態に係る便座昇降装置における装置本体に肘掛部材のアーム部材を取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図8】本発明の第2実施の形態に係る便座昇降装置における肘掛部材のアーム部材にフレーム部材を取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の第2実施の形態に係る便座昇降装置における肘掛部材のベース部材にグリップ部を取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【図10】本発明の第2実施の形態に係る便座昇降装置における肘掛部材のベース部材に上部カバーを取り付ける状態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1…便器
2…便座
10…便座昇降装置
10a…装置本体
11…開口部
12…側部
13…取付凹部
30…駆動機構
30a…ケース体
31…動力収納部
40…グリップ部
41…ベース部
41a…取付部
42…上面部
43…ガイド孔
44…軸受孔
50…操作スイッチ
51…レバー
52…スイッチ本体
53…操作杆
60…リテーナ
60a…連結杆
61…第1蓋部
62…第2蓋部
70…肘掛部材
71…アーム部材
72…取付部
73…垂直部
73a…ネジ孔
74…フレーム部材
75…脚部
75a…ネジ孔
76…ベース板
77…上部カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に設置されて便座を支持すると共に、駆動機構によって前記便座を昇降させるようにした便座昇降装置において、
前記便座を支持して昇降する装置本体と、前記駆動機構を作動させるための操作スイッチとを有し、
前記装置本体の両側端のうち少なくとも一方に、使用者が手を突いて支えとするグリップ部を設け、
前記グリップ部に、前記操作スイッチを配置したことを特徴とする便座昇降装置。
【請求項2】
便器上に設置されて便座を支持すると共に、駆動機構によって前記便座を昇降させるようにした便座昇降装置において、
前記便座を支持して昇降する装置本体と、前記駆動機構を作動させるための操作スイッチとを有し、
前記装置本体の両側端のうち少なくとも一方に、使用者が肘を掛けるための肘掛部材を取り付け、
前記肘掛部材の前端側に、使用者が手を突いて支えとするグリップ部を設け、
前記グリップ部に、前記操作スイッチを配置したことを特徴とする便座昇降装置。
【請求項3】
前記グリップ部において手の平が接する上面部を避けた位置に、前記操作スイッチを配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の便座昇降装置。
【請求項4】
前記グリップ部における前記上面部の周囲で指が接する位置に、前記操作スイッチの操作部分を配置したことを特徴とする請求項3に記載の便座昇降装置。
【請求項5】
前記操作スイッチは、グリップ部に対して上下方向に操作可能に装着された操作杆を前記操作部分として有することを特徴とする請求項4に記載の便座昇降装置。
【請求項6】
前記操作杆を、前記駆動機構を停止させる初期位置に対して、上方に変位させた際に前記駆動機構により便座を上昇させる一方、下方に変位させた際に前記駆動機構により便座を下降させるように設定したことを特徴とする請求項5に記載の便座昇降装置。
【請求項7】
前記グリップ部は、前記操作スイッチを配置しない場合に、該操作スイッチを配置するために予め設けてある取付用開口を塞ぐためのリテーナを、前記操作スイッチの代わりに有して成ることを特徴とする請求項5または6に記載の便座昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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