説明

便座装置およびそれを備える衛生洗浄装置

【課題】便座内への液体の浸入を十分かつ確実に防止できる便座装置およびそれを備える衛生洗浄装置を提供する。
【解決手段】便座400においては、内側シール部材430aおよび外側シール部材430bを挟み込むように上部ケーシング410の内側接合部410aおよび外側接合部410bが下部ケーシング420の内側接合部420aおよび外側接合部420b上に接合される。内側シール部材430aおよび外側シール部材430bは、50kg/m以上200kg/m以下の見掛け密度を有する独立発泡体により構成される。内側シール部材430aおよび外側シール部材430bは、上部ケーシング410と下部ケーシング420とが接合された状態で上部ケーシング410および下部ケーシング420により10%以上50%以下の圧縮率で圧縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置およびそれを備える衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使用者が冷え切った便座に着座する際の不快感を防止するために暖房機能を備えた便座装置がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の便座装置は、合成樹脂からなる上ケースと下ケースとを備える。上ケースと下ケースとは互いに接合された状態で便座を構成する。便座の内部には、輻射反射板、ランプヒータ、サーモスタット、温度ヒューズおよびサーミスタ等が設けられる。
【0003】
この便座装置においては、赤外線センサが使用者のトイレットルームへの入室を検知すると、赤外線センサの検知信号に基づいてランプヒータが駆動される。それにより、ランプヒータからの輻射エネルギーが直接的にまたは輻射反射板を介して間接的に上ケースに与えられ、上ケースが発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−14598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、上ケースおよび下ケースからなる便座を有する便座装置においては、男子小用時に便座の上ケースと下ケースとの接合部に小便が付着する場合がある。例えば、上ケースと下ケースとの接合部に誤って小便が噴射される場合がある。この場合、付着した小便が上ケースと下ケースとの接合部から便座の内部に浸入すると、異臭の発生原因となる。
【0006】
一般に、上ケースと下ケースとの接合部には、小便等の液体が便座の内部に浸入することを防止するためにシール材が設けられる。しかしながら、単に上ケースと下ケースとの接合部にシール材を設けるだけでは、十分に液体の浸入を防止できるとはいえない。
【0007】
本発明の目的は、便座内への液体の浸入を十分かつ確実に防止できる便座装置およびそれを備える衛生洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の従来技術の課題を解決するために、本発明の第1の発明に係る便座装置は、便器上に取り付け可能な便座を備え、便座は、着座面を有する上部ケーシングと、下部ケーシングと、上部ケーシングと下部ケーシングとの間に配置されるシール部材と、を少なくとも備えており、上部ケーシングと下部ケーシングとの間にシール部材が挟み込まれた状態で上部ケーシングと下部ケーシングとが接合されることにより、上部ケーシングおよび下部ケーシングにより囲まれた内部空間が形成されるように構成されており、シール部材は、50kg/m以上200kg/m以下の見掛け密度を有しかつ弾性を有する独立発泡体を含んでおり、上部ケーシングおよび下部ケーシングにより10%以上50%以下の圧縮率で圧縮された状態とされている(請求項1)。
【0009】
この便座装置は、上部ケーシング、下部ケーシングおよびシール部材を含む便座を備える。この便座においては、上部ケーシングと下部ケーシングとの間にシール部材が挟み込まれた状態で上部ケーシングと下部ケーシングとが接合される。シール部材は、50kg/m以上200kg/m以下の見掛け密度を有しかつ弾性を有する独立発泡体により構成され、10%以上50%以下の圧縮率で上部ケーシングと下部ケーシングとの間に保持される。
【0010】
これにより、上部ケーシングおよび下部ケーシングにより囲まれた内部空間の密閉状態がシール部材により十分かつ確実に保持される。その結果、上部ケーシングと下部ケーシングとの接合部に液体が付着した場合でも、便座の内部空間への液体の浸入が十分かつ確実に防止される。
【0011】
ここで、本発明において、シール部材の見掛け密度が50kg/m未満であると、当該シール部材の内部を液体(尿、水など)が通過し便座の内部空間への液体の浸入が十分かつ確実に防止できなくなる。
【0012】
また、シール部材の見掛け密度が200kg/mを超えると、シール部材表面の単位面積当たりに形成される独立発泡の細孔の数が少なくなり、シール部材表面の接触抵抗が増大する。これにより、上部ケーシングと下部ケーシングとの間の接合部にシール部材を組み込む作業が非常に困難になる。
【0013】
さらに、シール部材が上部ケーシングおよび下部ケーシングにより圧縮される際の当該シール部材の圧縮率が10%未満であると、便座の内部空間への液体の浸入が十分かつ確実に防止できなくなる。
【0014】
また、上記のシール部材の圧縮率が50%を超えると、シール部材の反発力が増大するので、上部ケーシングと下部ケーシングとの接合部のうちシール部材が配置された部分において、上部ケーシングと下部ケーシングとの間に隙間が極めて生じやすくなる。この隙間に液体(尿、水など)が浸入すると異臭の原因となる。
【0015】
また、本発明においては、便座は内周面および外周面を有し、上部ケーシングと下部ケーシングとの接合部は、内周面に沿った内側接合部と外周面に沿った外側接合部とを含み、シール部材は、内側接合部および外側接合部のうちの少なくとも一部に設けられていてもよい(請求項2)。
【0016】
この場合、便座の内側接合部および外側接合部のシール部材が設けられた部分に液体が付着した場合でも、その部分から便座の内部空間への液体の浸入が十分かつ確実に防止される。
【0017】
さらに、本発明においては、シール部材は、内側接合部のうちの少なくとも一部に設けられる第1のシール部材を含んでいてもよい(請求項3)。
【0018】
この場合、便座の内側接合部の第1のシール部材が設けられた部分に液体が付着した場合でも、その部分から便座の内部空間への液体の浸入が十分かつ確実に防止される。
【0019】
また、本発明においては、シール部材は、外側接合部のうちの少なくとも一部に設けられる第2のシール部材を含んでいてもよい(請求項4)。
【0020】
この場合、便座の外側接合部の第2のシール部材が設けられた部分に液体が付着した場合でも、その部分から便座の内部空間への液体の浸入が十分かつ確実に防止される。
【0021】
さらに、本発明においては、第1のシール部材は、内側接合部の前部領域および後部領域に設けられていてもよい(請求項5)。
【0022】
この場合、便座の内側接合部の前部領域および後部領域に液体が付着した場合でも、その部分から便座の内部空間への液体の浸入が十分かつ確実に防止される。
【0023】
また、本発明においては、第1のシール部材は、内周面の全体に沿って設けられていてもよい(請求項6)。
【0024】
この場合、便座の内周面から便座の内部空間への液体の浸入が十分かつ確実に防止される。
【0025】
さらに、本発明の便座装置は、内部空間に設けられ、着座面を所定の温度に加熱する便座ヒータがさらに備えられていてもよい(請求項7)。
【0026】
この場合、便座ヒータが作動することにより、便座の着座面が加熱される。これにより、使用者が冷え切った便座に着座する際に不快感を有することが防止される。
【0027】
また、シール部材により便座の内部空間の密閉状態が十分かつ確実に保持されるので、液体が付着することによる便座ヒータの短寿命化、および便座ヒータの発熱時における異臭の発生が防止される。
【0028】
本発明の第2の発明に係る衛生洗浄装置は、給水源から供給される洗浄水を人体に噴出する衛生洗浄装置であって、第1の発明に係る便座装置と、便座装置の便座を便器の上面上で開閉可能に支持する本体部と、本体部に設けられ、給水源から供給される洗浄水を人体に噴出するノズル装置と、を少なくとも備えるものである(請求項8)。
【0029】
この衛生洗浄装置においては、給水源から供給される洗浄水がノズル装置により人体に噴出される。
【0030】
この衛生洗浄装置は、第1の発明に係る便座装置を備える。それにより、上部ケーシングおよび下部ケーシングにより囲まれた内部空間の密閉状態がシール部材により十分かつ確実に保持される。その結果、ノズル装置から人体に噴出され、人体により跳ね返った洗浄水が便座の上部ケーシングと下部ケーシングとの接合部に付着する場合でも、便座の内部空間への液体の浸入が十分かつ確実に防止される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、使用者の使用形態によらず液体の浸入を十分かつ確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態に係る便座装置およびそれを備える衛生洗浄装置を示す外観斜視図。
【図2】図1の遠隔操作装置の正面図。
【図3】図1の衛生洗浄装置の基本構成を説明するための模式図である。
【図4】図1の便座の分解斜視図。
【図5】図1の便座の平面図。
【図6】図5のT−T線における便座の一部拡大断面図。
【図7】本発明の変形例に係る便座の平面図。
【図8】液体浸入試験の詳細を説明するための模式図。
【図9】液体浸入試験の詳細を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施の形態に係る便座装置およびそれを備える衛生洗浄装置について図面を参照しつつ説明する。
【0034】
(1)衛生洗浄装置の外観
図1は本発明の一実施の形態に係る便座装置およびそれを備える衛生洗浄装置を示す外観斜視図である。
【0035】
図1に示すように、衛生洗浄装置100は、主として本体部200、遠隔操作装置300、便座400、蓋部410Cおよび入室検知センサ600により構成される。この衛生洗浄装置100の便座400はトイレットルーム内で便器700の上面上に取り付けられる。
【0036】
本体部200には、便座400および蓋部410Cが開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、後述する洗浄水供給系(以下、給水系と呼ぶ。)およびノズル装置500が設けられるとともに、後述の制御部90(図3)が内蔵されている。
【0037】
図1に示すように、本体部200の正面下部にノズル装置500の一部である人体洗浄ノズル540が露出している。人体洗浄ノズル540は、給水系を介して水道配管に接続されている。人体の局部の洗浄時には、人体洗浄ノズル540が便器700内に突出し、人体の局部に洗浄水を噴出する。
【0038】
本体部200の正面上部には、着座センサ610が設けられる。着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検知することにより便座400上に使用者が存在することを検出する。
【0039】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0040】
入室検知センサ600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検知することによりトイレットルーム内に使用者が入室したことを検出する。
【0041】
本体部200の制御部90(図3)は、遠隔操作装置300から送信される信号ならびに入室検知センサ600および着座センサ610から出力される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0042】
(2)遠隔操作装置の構成
図1の遠隔操作装置300により操作可能な衛生洗浄装置100の主な機能について図2を参照しつつ説明する。図2は、図1の遠隔操作装置300の正面図である。遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の前面の下部にコントローラ蓋部302が開閉自在に設けられた構造を有する(図2(a)太矢印参照)。
【0043】
図2(a)に示すように、コントローラ蓋部302が閉じられた状態で、コントローラ本体部301の前面の上部には、強さ調整スイッチ322,323および位置調整スイッチ324,325が設けられる。コントローラ蓋部302には、停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313が設けられる。
【0044】
使用者により、上記スイッチ311〜313,322〜325が操作される。これにより、遠隔操作装置300から図1の本体部200に各スイッチ311〜313,322〜325に応じた信号が無線送信される。本体部200の制御部90(図3)は、受信した信号に基づいて本体部200(図1)および便座400(図1)の各構成要素の動作を制御する。
【0045】
例えば、使用者がおしりスイッチ312またはビデスイッチ313を操作することにより、後述する人体洗浄ノズル540(図3)から使用者の局部に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ311を操作することにより、人体洗浄ノズル540からの洗浄水の噴出が停止される。
【0046】
使用者が強さ調整スイッチ322,323を操作することにより、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力等が調整される。また、使用者が位置調整スイッチ324,325を操作することにより、人体洗浄ノズル540(図3)の位置が調整される。これにより、使用者の局部への洗浄水の噴出位置が調整される。
【0047】
図2(b)に、コントローラ蓋部302が開かれた状態の遠隔操作装置300の正面図が示されている。図2(b)に示すように、コントローラ蓋部302により覆われるコントローラ本体部301の前面の下部には、上述の停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313に加えて、自動開閉スイッチ331および便座温度調整スイッチ333が設けられる。
【0048】
これらのスイッチ311〜313,331,333が操作される場合にも、遠隔操作装置300から本体部200に各スイッチ311〜313,331,333に応じた信号が無線送信される。これにより、本体部200の制御部90は、受信した信号に基づいて本体部200および便座400の各構成要素の動作を制御する。
【0049】
自動開閉スイッチ331がオン状態のときに、トイレットルームへの使用者の入室に応じて蓋部410Cが開閉される。使用者が便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座400の温度が調整される。
【0050】
(3)衛生洗浄装置の基本構成
図3は、図1の衛生洗浄装置100の基本構成を説明するための模式図である。
【0051】
(3−a)本体部の給水系
初めに、衛生洗浄装置100の基本構成の一部として、本体部200の給水系を説明する。図3に示すように、本体部200は、衛生洗浄装置100の給水系として、分岐水栓2、ストレーナ4、逆止弁5、定流量弁6、止水電磁弁7、流量センサ8、熱交換器9、水ポンプ11、バッファタンク12、ノズル装置500、バキュームブレーカ31,61、サーミスタS1,S2および制御部90を含む。
【0052】
水道配管1に分岐水栓2が介挿される。分岐水栓2と熱交換器9との間に接続される配管3には、上流から下流に向かってストレーナ4、逆止弁5、定流量弁6、止水電磁弁7、サーミスタS1および流量センサ8がこの順で介挿される。熱交換器9とノズル装置500との間に接続される配管10には、上流から下流に向かってサーミスタS2、水ポンプ11およびバッファタンク12がこの順で介挿される。
【0053】
ノズル装置500は、切替弁13、人体洗浄ノズル540およびノズル洗浄ノズル520を含む。人体洗浄ノズル540には、直線流路551、旋回流路552およびビデ流路553が形成されている。切替弁13には切替弁モータ13mが接続される。
【0054】
切替弁13は複数のポートを含む。切替弁13の複数のポートに人体洗浄ノズル540の複数の流路551,552,553およびノズル洗浄ノズル520がそれぞれ接続されている。
【0055】
バキュームブレーカ31は、止水電磁弁7と流量センサ8との間の配管3の部分から延びる分岐配管30に接続される。バキュームブレーカ31には、分岐配管32の一端が接続される。バキュームブレーカ61はバッファタンク12に設けられる。
【0056】
本体部200の給水系においては、止水電磁弁7が開状態となることにより、水道配管1を流れる浄水が洗浄水として分岐水栓2によりストレーナ4に供給される。そして、ストレーナ4から流れ出る洗浄水が、逆止弁5、定流量弁6および止水電磁弁7を通して熱交換器9に供給される。
【0057】
このとき、サーミスタS1は、配管3内を流れる洗浄水の温度を測定し、制御部90に測定温度値を与える。流量センサ8は、配管3内を流れる洗浄水の流量を測定し、制御部90に測定流量値を与える。熱交換器9は、配管3を通して供給される洗浄水を設定された温度に加熱する。
【0058】
続いて、水ポンプ11が、熱交換器9により加熱された洗浄水を加圧しつつバッファタンク12を通してノズル装置500の切替弁13に供給する。サーミスタS2は、配管10内を流れる洗浄水の温度を測定し、制御装置90に測定温度値を与える。
【0059】
熱交換器9および水ポンプ11の動作は、流量センサ8から与えられる測定流量値およびサーミスタS1,S2から与えられる測定温度値に基づいて制御部90により制御される。
【0060】
上述のように、人体洗浄ノズル540は、使用者の局部の洗浄を行うために用いられる。ノズル洗浄ノズル520は、人体洗浄ノズル540における洗浄水の噴出部分を洗浄するために用いられる。
【0061】
ノズル装置500の切替弁13は、切替弁モータ13mが動作することにより、水ポンプ11から供給された洗浄水を上記の複数のポートのいずれかに選択的に供給する。これにより、人体洗浄ノズル540の複数の流路551,552,553およびノズル洗浄ノズル520のいずれかに洗浄水が選択的に供給される。
【0062】
直線流路551に洗浄水が供給される場合には、人体洗浄ノズル540から人体の局部に直線状の洗浄水が噴出される。旋回流路552に洗浄水が供給される場合には、人体洗浄ノズル540から人体の局部に所定の広がり角度で分散されるように洗浄水が噴出される。ビデ流路553に洗浄水が供給される場合には、ビデ洗浄として人体洗浄ノズル540から洗浄水が噴出される。ノズル洗浄ノズル520に洗浄水が供給される場合には、ノズル洗浄ノズル520から人体洗浄ノズル540に向かって洗浄水が噴出される。
【0063】
(3−b)便座装置の構成
さらに、衛生洗浄装置100の基本構成の一部として、便座装置110を説明する。便座装置110は、本体部200の一部の構成要素、遠隔操作装置300、便座400および入室検知センサ600を含む。図3に示すように、本体部200は、便座装置110の構成要素として制御部90、便座温度測定部401およびヒータ駆動部402を備える。また、便座400はその内部に便座ヒータ450およびサーミスタ401aを備える。
【0064】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
【0065】
本体部200の温度測定部401は、便座400のサーミスタ401aに接続されている。これにより、温度測定部401は、サーミスタ401aから出力される信号に基づいて便座400の温度を測定する。また、本体部200のヒータ駆動部402は、便座400の便座ヒータ450に接続されている。
【0066】
この便座装置110においては、予め使用者が図2の遠隔操作装置300の便座温度調整スイッチ333を操作することにより、制御部90が内蔵するメモリに便座400の温度が便座設定温度として記憶される。
【0067】
制御部90は、入室検知センサ600から出力される信号に基づいてトイレットルーム内に使用者が入室したことを検出した場合に、予め記憶された便座設定温度、および温度測定部401により測定される便座400の温度に基づいてヒータ駆動部402を制御する。これにより、トイレットルーム内に使用者が入室すると、便座400の温度が便座設定温度となるように調整される。
【0068】
(4)便座の構造
図4は図1の便座400の分解斜視図であり、図5は図1の便座400の平面図である。なお、図4および図5において、図3のサーミスタ401aの図示は省略する。以下の説明では、着座した使用者から見て前方側を便座400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座400の後部とする。
【0069】
図4に示すように、便座400は、上部ケーシング410、便座ヒータ450および下部ケーシング420を備える。上部ケーシング410は、主としてアルミニウムにより形成され、略楕円形状を有する。便座ヒータ450は、略馬蹄形状のシート部材である。下部ケーシング420は、主として合成樹脂により形成され、略楕円形状を有する。
【0070】
図4および図5に一点鎖線で示すように、上部ケーシング410の上面の一部が、便座400への着座時に使用者の大腿部および臀部の一部が接触する着座部410Tとなる。このように、着座部410Tは、便座400の前後方向における略中央部で中央部開口400H(図5)を挟んで左右対称に位置する。
【0071】
より具体的には、上部ケーシング410は、下部が開口した略逆U字型の断面が略楕円形状に延びるように形成された構造を有する。上部ケーシング410の下端部には、その内周縁部に沿うように略楕円形状の内側接合部410aが形成されるとともに、その外周縁部に沿うように外側接合部410bが形成されている。
【0072】
図4に示すように、下部ケーシング420は、上部が開口した略U字型の断面が略楕円形状に延びるように形成された構造を有する。下部ケーシング420の上端部には、その内周縁部に沿うように略楕円形状の内側接合部420aが形成されるとともに、その外周縁部に沿うように外側接合部420bが形成されている。
【0073】
下部ケーシング420の下端面には、図1の便器700の上面上で便座400を所定の高さに支持するための4つの足部421a,421b,421c,421dが形成されている。
【0074】
図5に示すように、4つの足部421a〜421dのうち、便座400の前部側の2つの足部421a,421bが、それぞれ着座部410Tの前端部分に対応する箇所に配置される。また、便座400の後部側の2つの足部421c,421dが、それぞれ着座部410Tの後端部分に対応する箇所に配置される。
【0075】
便座400の組み立て時には、まず上部ケーシング410の下面にシート状の便座ヒータ450が貼り付けられ、図3のサーミスタ401aが取り付けられる。なお、便座ヒータ450は、例えばアルミニウムからなる2枚の金属箔の間に線状ヒータが蛇行形状に配設された構成を有する。線状ヒータは、例えば発熱線が巻回された芯線を絶縁性の被覆チューブで覆うことにより作製される。
【0076】
次に、図4の一点鎖線の矢印で示すように、内側シール部材430aおよび外側シール部材430bを挟み込むように上部ケーシング410の内側接合部410aおよび外側接合部410bが下部ケーシング420の内側接合部420aおよび外側接合部420b上に接合される。
【0077】
これにより、上部ケーシング410と下部ケーシング420との接合部において、便座400の内部空間と外部空間とが内側シール部材430aおよび外側シール部材430bにより遮断される。それにより、便座400の内部空間が密閉状態となる。
【0078】
上部ケーシング410および下部ケーシング420の接合状態の詳細を説明する。図6は図5のT−T線における便座400の一部拡大断面図である。図6(a)に接合前の上部ケーシング410および下部ケーシング420の一部拡大断面図を示し、図6(b)に接合後の上部ケーシング410および下部ケーシング420の一部拡大断面図を示す。
【0079】
図6(a)に示すように、上部ケーシング410は、その内周縁部全体に渡って上面部410w、側面部410xおよび底面部410yを有する。側面部410xが便座400の中央部開口400H(図5)の内周面を形成する。
【0080】
底面部410yには、上部ケーシング410の内周縁部に沿うように所定の間隔で所定長さの複数の貫通孔410hが形成されている。本実施の形態においては、複数の貫通孔410hを有する上部ケーシング410の底面部410yの下面410zが、上部ケーシング410の内側接合部410aを構成する。
【0081】
一方、図6(a)に示すように、下部ケーシング420は、その内周縁部全体に渡って上面420zを有する。上面420zには、下部ケーシング420の内周縁部に沿うように溝部420gが形成されている。
【0082】
さらに、下部ケーシング420の上面420zの内側には、上部ケーシング410の複数の貫通孔410hに対応するように複数の固定用突起片420pが一体形成されている。固定用突起片420pは、例えば可撓性を有する樹脂材料により構成され、上端部が折り曲げ加工された逆V字形の断面を有する。本実施の形態においては、複数の固定用突起片420pを有する下部ケーシング420の上面420zが、下部ケーシング420の内側接合部420aを構成する。
【0083】
上部ケーシング410と下部ケーシング420との接合時には、図6(b)に示すように、下部ケーシング420の溝部420gに内側シール部材430aが嵌め込まれた状態で、上部ケーシング410の各貫通孔410hに下部ケーシング420の固定用突起片420pが差し込まれる。これにより、下部ケーシング420の固定用突起片420pの先端部が上部ケーシング410の底面部410yの上面に当接した状態で上部ケーシング410と下部ケーシング420とが固定される。
【0084】
このとき、内側シール部材430aが上部ケーシング410の内側接合部410aと下部ケーシング420の内側接合部420aとにより挟み込まれた状態で保持される。このとき、内側シール部材430aは、後述する所定の圧縮率で圧縮された状態で保持される。
【0085】
ここで、本実施の形態において、内側シール部材430aは、50kg/m以上200kg/m以下の見掛け密度を有する独立発泡体により構成される。なお、見掛け密度は、「JIS(日本工業規格) Z 7222」の見掛け密度の測定方法に基づいて測定される値である。また、本実施の形態において、独立発泡体とは、独立した泡状の微細な空洞を分散状態で含む樹脂成形品である。
【0086】
内側シール部材430aを構成する独立発泡体の材料としては、例えばポリエチレンまたはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(以下、EPDMと略記する。)を用いることができる。
【0087】
本実施の形態では、便座400の組み立て後の内側シール部材430aの圧縮率が10%以上50%以下に維持されるように、予め下部ケーシング420の上面420zに形成される溝部420gの幅wおよび深さdが設定される。
【0088】
これにより、内側シール部材430aは、上部ケーシング410と下部ケーシング420とが接合された状態で上部ケーシング410および下部ケーシング420により10%以上50%以下の圧縮率で圧縮される。なお、圧縮率は、荷重等の負荷が与えられる前の試験体の体積に対する負荷が与えられたときの試験体の体積の比率であり、本実施の形態では、便座400の組み立て前の内側シール部材430aの体積に対する便座400の組み立て後の内側シール部材430aの体積の比率である。ここでは、内側シール部材430aの圧縮率を百分率で表す。
【0089】
上記のように、50kg/m以上200kg/m以下の見掛け密度を有しかつ弾性を有する独立発泡体により構成される内側シール部材430aが10%以上50%以下の圧縮率で上部ケーシング410と下部ケーシング420との間に保持される。これにより、組み立て後の便座400の接合部において、内側シール部材430aにより便座400の内部空間の密閉状態が十分かつ確実に保持される。
【0090】
したがって、小便または洗浄水等の液体が内側(便座400の内周縁部側)で露出する上部ケーシング410と下部ケーシング420との接合部に付着した場合でも、その液体が当該接合部を通して便座400の内部に浸入することが十分かつ確実に防止される。その結果、便座400の内部に液体が浸入することに起因する便座ヒータ450の剥離、または便座ヒータ450の発熱時の異臭の発生等の不具合が十分かつ確実に防止される。
【0091】
なお、内側シール部材430aの圧縮率を10%以上とすることにより便座400の内部空間の密閉状態を確実に保持することができる。また、内側シール部材430aの圧縮率を15%以下とすることにより、上部ケーシング410と下部ケーシング420との接合時に大きな荷重が必要とならない。それにより、便座400を容易に組み立てることが可能となる。また、上部ケーシング410および下部ケーシング420の経時的な変形が防止される。それにより、便座400の長寿命化が可能となる。したがって、内側シール部材430aの圧縮率は、10%以上15%以下であることが好ましい。
【0092】
上記では、上部ケーシング410および下部ケーシング420の内側接合部410a,420aならびに内側シール部材430aの詳細について説明したが、上部ケーシング410および下部ケーシング420の外側接合部410b,420bならびに外側シール部材430bも、上記と同様の構成を有する。
【0093】
したがって、小便または洗浄水等の液体が外側(便座400の外周縁部側)で露出する上部ケーシング410と下部ケーシング420との接合部に付着した場合でも、その液体が当該接合部を通して便座400の内部に浸入することが十分かつ確実に防止される。
【0094】
(5)変形例
図7は、本発明の変形例に係る便座400の平面図である。変形例に係る便座400について、図4および図5の便座400と異なる点を説明する。
【0095】
ここで、便座400においては、主として中央部開口400Hを形成する内周面の前方部分および後方部分に小便または洗浄水等の液体が付着しやすいと考えられる。
【0096】
そこで、本例では、上部ケーシング410と下部ケーシング420との接合部の前部領域FRに内側シール部材430cが局部的に設けられる。ここで、前部領域FRとは、便座400の内周面前端部FPから内側に所定幅を有する帯状範囲FBに含まれる内周面の領域をいう。帯状範囲FBは、内周面前端部FPでの内周面の接線L1と、内周面前端部FPから便座400の前後方向において距離LR1離れた位置P1を通りかつ接線L1に平行な直線L2との間の範囲である。
【0097】
ここで、便座400の内部空間への液体の浸入をより十分かつより確実に防止する観点から、上記の距離LR1は、中央部開口400Hの前後方向における最大長さMの22%以上であることが好ましい。
【0098】
また、本例では、上部ケーシング410と下部ケーシング420との接合部の後部領域BRに内側シール部材430dが局部的に設けられる。ここで、後部領域BRとは、便座400の内周面後端部BPから内側に所定幅を有する帯状範囲BBに含まれる内周面の領域をいう。帯状範囲BBは、内周面後端部BPでの内周面の接線L3と、内周面後端部BPから便座400の前後方向において距離LR2離れた位置P2を通りかつ接線L3に平行な直線L4との間の範囲である。
【0099】
ここで、便座400の内部空間への液体の浸入をより十分かつより確実に防止する観点から、上記の距離LR2は、中央部開口400Hの前後方向における最大長さMの18%以上であることが好ましい。
【0100】
なお、図7に示すように、本例では、前部側の2つの足部421a,421bが、直線L2上に配置されている。また、後部側の2つの足部421c,421dが、直線L4上に配置されている。
【0101】
上記のように、予め液体の浸入が想定される前部領域FRおよび後部領域BRに内側シール部材430c,430dを設けることにより、上部ケーシング410と下部ケーシング420との接合に必要な荷重が低減される。それにより、便座400を容易に組み立てることが可能となる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0103】
(6)実施例および比較例の便座の作製
以下の説明では、図4の内側シール部材430aおよび外側シール部材430bをシール部材と総称する。
【0104】
上記のように、本実施の形態に係る便座400においては、上部ケーシング410と下部ケーシング420との接合部に設けられるシール部材は、50kg/m以上200kg/m以下の見掛け密度を有する独立発泡体により構成され、便座400の組み立て完了後の圧縮率が10%以上50%以下に保持される。これにより、シール部材により便座400内部への液体の侵入が十分かつ確実に防止される。
【0105】
ここで、シール部材に用いられる材料の選択、見掛け密度の範囲、および圧縮率の範囲は、本発明者が後述の液体浸入試験を行うことにより見出したものである。
【0106】
本発明者は、後述する液体浸入試験のために以下に示す実施例1〜6に係る便座400Aおよび比較例1,2に係る便座1000を作製した。
【0107】
ここで、実施例1〜6の便座400Aおよび比較例1,2の便座1000は、図4および図5で示した便座400に比較して、シール部材の材料、見掛け密度および圧縮率が、下記の表1に示すようにそれぞれ異なる以外は、同様の構成を有するように構成した。
【0108】
表1は、実施例1〜6の便座400Aおよび比較例1,2の便座1000に用いられるシール部材の材料、見掛け密度および圧縮率を示す一覧表である。
【0109】
【表1】

【0110】
表1に示すように、比較例1の便座1000は、シール部材をポリエチレンからなる独立発泡体により構成し、その見掛け密度を30kg/mとし、組み立て完了後の圧縮率を8%とした。
【0111】
実施例1の便座400Aは、シール部材をポリエチレンからなる独立発泡体により構成し、その見掛け密度を100kg/mとし、組み立て完了後の圧縮率を10%とした。
【0112】
実施例2の便座400Aは、シール部材をEPDMからなる独立発泡体により構成し、その見掛け密度を100kg/mとし、組み立て完了後の圧縮率を10%とした。
【0113】
実施例3の便座400Aは、シール部材をポリエチレンからなる独立発泡体により構成し、その見掛け密度を100kg/mとし、組み立て完了後の圧縮率を15%とした。
【0114】
実施例4の便座400Aは、シール部材をポリエチレンからなる独立発泡体により構成し、その見掛け密度を150kg/mとし、組み立て完了後の圧縮率を10%とした。
【0115】
実施例5の便座400Aは、シール部材をポリエチレンからなる独立発泡体により構成し、その見掛け密度を150kg/mとし、組み立て完了後の圧縮率を15%とした。
【0116】
実施例6の便座400Aは、シール部材をEPDMからなる独立発泡体により構成し、その見掛け密度を150kg/mとし、組み立て完了後の圧縮率を15%とした。
【0117】
比較例2の便座1000は、シール部材をポリエチレンからなる独立発泡体により構成し、その見掛け密度を150kg/mとし、組み立て完了後の圧縮率を60%とした。
【0118】
(7)液体浸入試験
続いて、本発明者は作製した実施例1〜6の便座400Aおよび比較例1,2の便座1000について液体浸入試験を行った。
【0119】
液体浸入試験の詳細について図8および図9を参照しつつ説明する。図8および図9は、液体浸入試験の詳細を説明するための模式図である。
【0120】
(7−a)準備
まず、液体供給装置900を用意した。液体供給装置900は、図示しない貯留槽およびポンプを備えるものを用意した。そして、用意した液体供給装置900の貯留槽に、界面活性剤を含む液体を貯留した。
【0121】
本例では、界面活性剤を含む液体として、水道水100Lとトイレマジックリン(花王株式会社製;登録商標)10Lとの混合液を用いた。
【0122】
次に、貯留された液体を化学染料等を用いて着色した。本例では、上記の混合液に赤色のスタンプインキS−3(シャチハタ株式会社製)を0.5%の容積比で混入することにより、混合液を赤色に着色した。以下、この混合液を赤色混合液と呼ぶ。
【0123】
続いて、実施例1の便座400Aを備える衛生洗浄装置100を用意した。そして、図8に示すように、水平レベルが±3°の範囲内に維持された便器700の上面上に実施例1の便座400Aを衛生洗浄装置100の本体部200とともに取り付けた。この状態で、衛生洗浄装置100を取り囲む雰囲気の温度を5℃以上35℃以下の範囲内に調整するとともに、湿度を35%以上85%以下の範囲内に調整した。
【0124】
(7−b)試験
上記の準備の完了後、図8に示すように、実施例1の便座400Aを蓋部410Cとともに開状態にした。そして、液体供給装置900から延びるように設けられた内径3mmのホース910を用いて1L/分で上記貯留槽に貯留された赤色混合液を便座400Aの後部領域BR(図7参照)に噴射した。なお、赤色混合液の噴射流量は、液体供給装置900が備える図示しないポンプを制御することにより調整した。
【0125】
また、図8の矢印で示すように、赤色混合液の噴射時には、ホース910の先端部と便座400Aの接合部との間の距離を約10mmに保持しつつ、30秒間に渡ってホース910の先端部を中央部開口400Hの後部領域BRで10往復させた。これにより、便座400Aの中央部開口400Hの後部領域BRに均一に赤色混合液を噴射した。
【0126】
次に、図9に示すように、実施例1の便座400Aを閉状態にし、便座400A上にシリコン製の尻型800を載置し、さらに尻型800上に100kgの重量を有するおもり810を載置した。この状態で、上記と同様に、中央部開口400Hの前部領域FR(図7参照)にホース910から赤色混合液を噴射した。
【0127】
具体的には、液体供給装置900から延びるように設けられた内径3mmのホース910を用いて1L/分で上記貯留槽に貯留された赤色混合液を便座400Aの前部領域FR(図7参照)に噴射した。また、図9の矢印で示すように、赤色混合液の噴射時には、ホース910の先端部と便座400Aの接合部との間の距離が10mm以下となるように保持しつつ、30秒間に渡ってホース910の先端部を中央部開口400Hの前部領域FRで10往復させた。これにより、便座400Aの中央部開口400Hの前部領域FRに均一に赤色混合液を噴射した。
【0128】
その後、便座400A上のおもり810および尻型800を取り除き、30分間放置した。図8および図9で示される一連の作業を1サイクルとし、同様にして一連の作業を合計5サイクル繰り返した。
【0129】
5サイクルの一連の作業終了後、衛生洗浄装置100から実施例1の便座400Aを取り外し、その便座400Aを40℃の恒温槽内に6時間保持することにより乾燥させた。乾燥後、便座400Aを分解し、上部ケーシング410および下部ケーシング420の内面に赤色混合液の浸入を示す赤色の着色痕が存在するか否かを判定した。
【0130】
なお、本例では、図8および図9で示される一連の作業を5サイクル繰り返した後で便座400Aの内部への赤色混合液の浸入の有無を判定した。
【0131】
なお、この実験においては、一連の作業の繰り返し回数は5サイクルとしたが、この液体浸入試験における一連の作業の繰り返し回数は複数サイクルであればよく、2サイクルであってもよいし、3サイクルであってもよい。
【0132】
上記の一連の準備および試験を、実施例2〜6の便座400Aおよび比較例1,2の便座1000についても同様に行った。液体浸入試験の結果を表2に示す。
【0133】
【表2】

【0134】
表2に示すように、比較例1,2の便座400Aを除いて、全ての実施例1〜6の便座400において、赤色混合液の浸入は認められなかった。
【0135】
(8)評価
(8−a)シール部材に用いられる材料
表2の結果から、シール部材に用いられる材料のみが互いに異なる実施例1,2の便座400Aはともに赤色混合液の浸入が防止されていることが確認された。また、シール部材に用いられる材料のみが互いに異なる実施例5,6の便座400Aについても、ともに赤色混合液の浸入が防止されていることが確認された。
【0136】
これらより、シール部材に用いる材料は、弾性を有する独立発泡体であれば液体の浸入が防止されることが明らかとなった。したがって、見掛け密度および圧縮率が後述する範囲に設定されることにより、シール部材に用いる材料がポリエチレンおよびEPDMのいずれであるかによらず、便座400Aの内部空間の密閉状態が十分かつ確実に保持されることが確認された。
【0137】
(8−b)見掛け密度の範囲
表2の結果から明らかなように、液体の浸入が確認された比較例1の便座1000のシール部材は、見掛け密度が30kg/mであった。一方、液体の浸入が防止された実施例1〜6の便座400Aのシール部材の見掛け密度は100kg/m以上150kg/m以下の範囲内にあった。
【0138】
本発明者は、これらの試験結果から検討を重ねた結果、便座400Aの内部空間の密閉状態を十分かつ確実に保持するために必要な見かけ密度は、50kg/m以上200kg/m以下であることを見出した。
【0139】
(8−c)圧縮率の範囲
表2の結果から明らかなように、液体の浸入が確認された比較例1の便座1000に用いられるシール部材は圧縮率が8%であり、比較例2の便座1000に用いられるシール部材は圧縮率が60%であった。
【0140】
特に、比較例2の便座1000においては、組み立て時に高い圧縮率(60%)でシール材を圧縮した結果、便座1000の組み立て完了時には、既に上部ケーシングと下部ケーシングとの接合部に歪が発生していた。
【0141】
このように、圧縮率を60%以上に設定した場合には便座400が破損する場合があることが確認された。
【0142】
一方、液体の浸入が防止された実施例1〜6の便座400Aに用いられるシール部材の圧縮率は10%以上15%以下の範囲内にあることが確認された。
【0143】
本発明者は、これらの試験結果から検討を重ねた結果、便座400Aの内部空間の密閉状態を十分かつ確実に保持するために必要な圧縮率は10%以上50%以下であり、好ましくは10%以上15%以下であることを見出した。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0145】
1 水道配管
2 分岐水栓
3 配管
4 ストレーナ
5 逆止弁
6 定流量弁
7 止水電磁弁
8 流量センサ
9 熱交換器
10 配管
11 水ポンプ
12 バッファタンク
13 切替弁
13m 切替弁モータ
31,61 バキュームブレーカ
S1,S2 サーミスタ
32 分岐配管
90 制御部
100 衛生洗浄装置
110 便座装置
200 本体部
300 遠隔操作装置
301 コントローラ本体部
302 コントローラ蓋部
311 停止スイッチ
312 おしりスイッチ
313 ビデスイッチ
322,323 強さ調整スイッチ
324,325 位置調整スイッチ
331 自動開閉スイッチ
333 便座温度調整スイッチ
400 便座
401 便座温度測定部
401a サーミスタ
402 ヒータ駆動部
400H 中央部開口
410 上部ケーシング
410a 内側接合部
410b 外側接合部
410h 貫通孔
410w 上面部
410x 側面部
410y 底面部
410C 蓋部
410T 着座部
420 下部ケーシング
420a 内側接合部
420b 外側接合部
420g 溝部
420p 固定用突起片
420z 上面
421a,421b,421c,421d 足部
430a,430c,430d 内側シール部材
430b 外側シール部材
450 便座ヒータ
500 ノズル装置
520 ノズル洗浄ノズル
540 人体洗浄ノズル
551,552,553 流路
600 入室検知センサ
610 着座センサ
700 便器
800 尻型
810 おもり
900 液体供給装置
910 ホース
BR 後部領域
BP 内周面後端部
FB,BB 帯状範囲
FP 内周面前端部
FR 前部領域
L1,L3 接線
L2,L4 直線
LR1 距離
P1,P2 位置
M 最大長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に取り付け可能な便座を備え、
前記便座は、
着座面を有する上部ケーシングと、
下部ケーシングと、
前記上部ケーシングと前記下部ケーシングとの間に配置されるシール部材と、を少なくとも備えており、
前記上部ケーシングと前記下部ケーシングとの間に前記シール部材が挟み込まれた状態で上部ケーシングと前記下部ケーシングとが接合されることにより、前記上部ケーシングおよび前記下部ケーシングにより囲まれた内部空間が形成されるように構成されており、
前記シール部材は、50kg/m以上200kg/m以下の見掛け密度を有しかつ弾性を有する独立発泡体を含んでおり、前記上部ケーシングおよび前記下部ケーシングにより10%以上50%以下の圧縮率で圧縮された状態とされている、
便座装置。
【請求項2】
前記便座は内周面および外周面を有し、
前記上部ケーシングと前記下部ケーシングとの接合部は、前記内周面に沿った内側接合部と前記外周面に沿った外側接合部とを含み、
前記シール部材は、前記内側接合部および前記外側接合部のうちの少なくとも一部に設けられている、
請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記シール部材は、前記内側接合部のうちの少なくとも一部に設けられる第1のシール部材を含んでいる、
請求項2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記シール部材は、前記外側接合部のうちの少なくとも一部に設けられる第2のシール部材を含んでいる、
請求項2または3に記載の便座装置。
【請求項5】
前記第1のシール部材は、前記内側接合部の前部領域および後部領域に設けられている、
請求項3に記載の便座装置。
【請求項6】
前記第1のシール部材は、前記内周面の全体に沿って設けられている、
請求項3に記載の便座装置。
【請求項7】
前記内部空間内に設けられ、前記着座面を所定の温度に加熱する便座ヒータがさらに備えられている、
請求項1〜6のいずれかに記載の便座装置。
【請求項8】
給水源から供給される洗浄水を人体に噴出する衛生洗浄装置であって、
請求項1〜7のうちのいずれかに記載の便座装置と、
前記便座装置の前記便座を前記便器の上面上で開閉可能に支持する本体部と、
前記本体部に設けられ、給水源から供給される洗浄水を人体に噴出するノズル装置と、
を少なくとも備える、
衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−56027(P2011−56027A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208648(P2009−208648)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】