説明

便座装置

【課題】便座装置において、余分な放熱が少なく耐久性が高い暖房便座を有し、便器本体の上端と暖房便座の下面の間の隙間からの汚水の飛散を確実に防止してトイレ内を清潔に保つこと。
【解決手段】便座付便器1の便座2のヒータ12に通電されると発生した熱が被覆材10Bを伝わって外部被覆カバー材5を適度に温めるため、着座した時に心地良い暖かさを感じる便座2となり、外部被覆カバー材5が便座筐体10よりも軟質であるためクッション性も良く、断熱性を備えていることから便座2の上面及び側面からの放熱が抑えられて省エネルギ化を図ることができ、外部被覆カバー材5の下端には便座筐体10の内周に沿って、便座筐体10と便器本体3との間に生ずる隙間の下端に届く長さを有する下方突出部5aが設けられていることから、当該隙間から温水洗浄装置7による洗浄水が局部から跳ね返って飛び出す事態を確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に取り付けられ、トイレ内を衛生的に保つことができる便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に冬季において、便座に着座したときの不快な冷感を解消するために、特許文献1乃至特許文献3に示されるように、様々な工夫が施された暖房便座が開発されている。
特許文献1においては、便座と便座の上部に載置される便座蓋とで閉空間を形成するように構成し、便座の上面には保温層と保護層を設けて、人が入ってきたことを検知すると前記閉空間に加熱空気を供給して便座を加熱することによって、トイレに人が入ってきてから便座に着座するまでの短時間で便座を暖めることができ、不使用時には暖房のための電力を不要として省エネルギ化を図る便座装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2においては、無数の気孔を有するゴム等の表皮材と下部材とから中空状に形成された便座筐体と、便座筐体内に配置されたヒータと、ヒータの着座面(上面)側に配設された蓄熱材と、ヒータの下面側に配設された断熱材とからなる放熱体とを有し、着座時には放熱体と表皮材とが接触する暖房便座が開示されている。これによって、着座時のみ便座を暖めることができ、非使用時の放熱が少なくなり省エネルギ化を図ることができるとしている。
【0004】
更に、特許文献3においては、便座を合成樹脂製の基板と基板上に載置されるコルク製の上板から構成し、基板上部に形成した凹部内にヒータを配設した暖房便座が開示されている。これによって、コルクの断熱性により着座時に冷たい感触がなく、真冬の極寒期を除いて暖房が不要となり、また暖房を行う際にもコルク自体に保温性があるため必要電力が低減されるとしている。
【特許文献1】特開平11−342095号公報
【特許文献2】特開2003−245225号公報
【特許文献3】特開2004−180929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの発明においては、着座面からの放熱や便座筐体内部への放熱が大きく、熱効率が悪いために確実に省エネルギ化を図ることができない。特に、特許文献1に記載された便座装置においては、便座本体側面からの放熱が大きいという問題点がある。また、特許文献2に記載された暖房便座においては、着座時に表皮材が放熱体と直接接触するため、耐久性が低くなるという問題点がある。
更に、便座の材質を種々選択することはできても、便器本体は陶器製であることには変わりがなく、暖房便座の裏側には便器本体に被せる際の衝撃を和らげるために複数個の樹脂またはゴム製の足部材が付いている。このため、便器本体の上端と暖房便座の下面の間には、この足部材の高さ分だけの隙間(通常、5mm〜10mm程度)が生じている。この隙間から、近年普及している温水洗浄便座における洗浄水が局部から跳ね返ったものが飛び出すことによって、便器外への汚水の飛散が発生していた。また、男性が着座状態で排尿する際にも、この隙間から尿の一部が外部へ飛び出したり、便器の上面を汚す事態も生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、便座と便器との隙間への汚水の飛散を防止し、トイレ内を清潔に保つことができる便座装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明にかかる便座装置は、便座筐体の外側を覆うように取付けられ、前記便座筐体よりも軟質材料からなり、前記便座筐体に対して着脱可能に配設されてなる外部被覆カバー材を具備し、前記便座筐体と便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さを有する下方突出部が前記便座の内周に沿って前記外部被覆カバー材の下端に設けられているものである。
ここで、上記外部被覆カバー材は、前記便座筐体の外側で前記便座筐体の上部を覆うものであればよく、その面積及び意匠性を問うものではない。また、前記便座筐体と前記便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さとは、前記便器本体の上面に完全に当接して密閉することを意味するものではなく、前記便座筐体と前記便器本体との間に生ずる隙間を少なくするものであればよい。好ましくは、前記便座筐体と前記便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さとは、前記便器本体の上面に当接しないで、1〜3mm程度の隙間が発生するものであればよい。即ち、前記便器本体の寸法精度から、前記便器本体の上面に当接しない程度のものが望ましい。
【0008】
請求項2の発明にかかる便座装置は、内部に空洞を有する便座筐体と、前記便座筐体の内部に直接的または間接的に取付けられたヒータと、前記便座筐体の外側において、少なくとも着座面及び側面を覆うように取付けられ、前記便座筐体よりも軟質で断熱性を備えた前記便座筐体に対して着脱可能な外部被覆カバー材を具備し、前記外部被覆カバー材によって、前記便座筐体と便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さを有する下方突出部が前記便座筐体の内周に沿って前記外部被覆カバー材の下端に設けられている。
ここで、上記外部被覆カバー材は、前記便座筐体の外側で、前記便座筐体の上部を覆うものであればよく、その面積及び意匠性を問うものではない。また、前記便座筐体と前記便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さとは、前記便器本体の上面に完全に当接して密閉することを意味するものではなく、前記便座筐体と前記便器本体との間に生ずる隙間を少なくするものであればよい。好ましくは、前記便座筐体と前記便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さとは、前記便器本体の上面に当接しないで、1〜3mm程度の隙間が発生するものであればよい。即ち、前記便器本体の寸法精度から、前記便器本体の上面に当接しない程度のものが望ましい。
そして、上記便座筐体の内部に直接的または間接的に取付けられたヒータとは、上記便座筐体の内部に直接埋設したり、他の部材を埋設することによって取付けたり、接合したりすることを意味する。
【0009】
請求項3の発明にかかる便座装置は、請求項1または請求項2の構成において、前記下方突出部は、その内側が前記便座筐体の側面から下面にかけて回り込んで密着している。
ここで、下方突出部の内側が前記便座筐体の側面から下面にかけて回り込んで密着しているとは、下方突出部自体またはその内側が、前記便座筐体の側面から下面にかけて回り込んで密着していることを意味する。
【0010】
請求項4の発明にかかる便座装置は、請求項2または請求項3の構成において、前記便座筐体の内部の空洞下部に断熱材が配設され、前記空洞全体を埋めたものである。
ここで、前記便座筐体の空洞下部の断熱材は、下面に対して全体を埋め尽くしておればよく、上面までを必ずしも埋設することを意味するものではない。前記便座筐体の内部に直接的または間接的に取付けられたヒータとの間に空気層を形成することができる。
【0011】
請求項5の発明にかかる便座装置は、請求項2または請求項3の構成において、前記断熱材は前記便座筐体の内部上面に取付けられ、前記空洞の一部を埋めるプレート形状であるものである。
ここで、前記空洞の一部を埋めるプレート形状の断熱材は、前記便座筐体の内部に直接的または間接的に取付けられたヒータの熱エネルギが下方向に放射され難くするものであればよい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明にかかる便座装置は、便座筐体の外側を覆うように取付けられ、前記便座筐体よりも軟質材料からなり、前記便座筐体に対して着脱可能に配設されてなる外部被覆カバー材を具備し、前記便座筐体と便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さを有する下方突出部が前記便座の内周に沿って前記外部被覆カバー材の下端に設けられている。
これによって、前記外部被覆カバー材の下端には便座の内周に沿って、便座筐体と便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さを有する下方突出部が設けられていることから、従来問題となっていた当該隙間から温水洗浄装置等による洗浄水が跳ね返ったものが飛び出し、便器外へ汚水を飛散させたり、便器上面を汚したり、便座の中に入り込んだりすることを、確実に防止することができる。そして、外部被覆カバー材は便座筐体に対して着脱可能であるから、下方突出部に汚水が付着した場合には、外部被覆カバー材を取外して洗浄すれば、暖房便座を清潔に保つことができる。故に、外部被覆カバー材が便座筐体の外側を覆うように取付けられているため、それを外して洗浄することができ、また、便座筐体に直接的または間接的に取付けられたヒータを内蔵しているものでは、暖房便座の上面及び側面からの放熱が抑えられて省エネルギ化を図ることができる。
したがって、便器本体の上端と便座の下面の間の隙間からの汚水の飛散を確実に防止して、トイレ内を清潔に保つことができる便座装置となる。
【0013】
請求項2の発明にかかる便座装置は、内部に空洞を有する便座筐体と、前記便座筐体の内部に直接的または間接的に取付けられたヒータと、前記便座筐体の外側において、少なくとも着座面及び側面を覆うように取付けられ、前記便座筐体よりも軟質で断熱性を備えた前記便座筐体に対して着脱可能な外部被覆カバー材を具備し、前記外部被覆カバー材によって、前記便座筐体と便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さを有する下方突出部が前記便座筐体の内周に沿って前記外部被覆カバー材の下端に設けられている。
このように、外部被覆カバー材の下端には便座筐体の内周に沿って、便座筐体と便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さを有する下方突出部が設けられていることから、従来問題となっていた当該隙間から温水洗浄装置等による洗浄水が跳ね返ったものが飛び出し、便器外へ汚水を飛散させたり、便器上面を汚したり、便座の中に入り込んだりすることを、確実に防止することができる。そして、外部被覆カバー材は便座筐体に対して着脱可能であるから、下方突出部に汚水が付着した場合には、外部被覆カバー材を取外して洗浄すれば、暖房便座を清潔に保つことができる。故に、外部被覆カバー材が便座筐体の外側を覆うように取付けられているため、それを外して洗浄することができ、また、便座筐体に直接的または間接的に取付けられたヒータを内蔵しているから、便座筐体に取付けられたヒータにより発生した熱が外部被覆カバー材に伝達されて、着座した時に冷感を感じることなく心地良い暖かさを感じる暖房便座となり、外部被覆カバー材が便座筐体よりも軟質であるため着座した時のクッション性も良く、また断熱性を備えた外部被覆カバー材が便座筐体の少なくとも着座面及びヒータに対向する側面を覆うように取付けられているため、暖房便座の上面及び側面からの放熱が抑えられて省エネルギ化を図ることができる。
このようにして、余分な放熱が少なく耐久性が高い暖房便座を有するとともに、便器本体の上端と暖房便座の下面の間の隙間からの汚水の飛散を確実に防止して、トイレ内を清潔に保つことができる便座装置となる。
【0014】
請求項3の発明にかかる便座装置は、下方突出部はその内面が便座筐体の側面から下面にかけて回り込んで密着しているから、請求項1または請求項2の効果に加えて、下方突出部は本来の便座筐体と便器本体との間に生ずる隙間から、温水洗浄装置による洗浄水が局部から跳ね返ったものが飛び出す等による便器外への汚水の飛散の発生を確実に防止する機能を果たすとともに、外部被覆カバー材を便座筐体により強固に一体化させることができ、外部被覆カバー材のずれも一層起き難くなる。したがって、洗浄のために取り外しても、外部被覆カバー材の安定した取付け状態となる。
【0015】
請求項4の発明にかかる便座装置の前記便座筐体の内部の空洞には、その空洞内部下部に断熱材が配設され、前記空洞全体を埋めたこと断熱材が便座筐体の内部下面に取付けられ、空洞全体を埋めたものであるから、請求項2または請求項3の効果に加えて、ヒータは外部被覆カバー材と断熱材とによって挟まれた構造を有しているため、断熱材が便座筐体の空洞全体を埋めることによって、便座筐体の下部へのヒータの熱の放散が著しく低減されて、省エネルギに貢献する。
【0016】
請求項5の発明にかかる便座装置の断熱材は、前記便座筐体の内部上面に取付けられ、空洞の一部を埋めるプレート形状である。これによって、便座筐体の下部へのヒータの熱の放散を低減するための断熱材の使用量を低減することができ、暖房便座のコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の便座装置について、図面を参照しながら説明する。
[実施の形態1]
【0018】
まず、本発明の実施の形態1にかかる便座装置について、図1乃至図3を参照して説明する。
図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる便座装置を便座付便器として使用した便座蓋を開けた状態を示す側面図、(b)は平面図である。図2は図1(b)のA−A断面を示す図であり、本発明の実施の形態1にかかる便座装置の暖房便座の断面を示す縦断面図である。図3は図2の縦断面図において外部被覆カバー材を外した状態を示す図である。
【0019】
図1に示されるように、本実施の形態1にかかる便座装置は、温水洗浄装置7を備えるとともに、図2に示されるように、内部にヒータ12が配設された暖房機能を有する便座2を有する。図1において、便蓋6を開け、便座2を下ろした状態を示しているが、便座2の下面には陶器製の便器本体3の上に便座2を下ろす際の衝撃を緩和するために、硬質ゴム製の足部材4が複数個取付けられている。
【0020】
その結果、図1(a)に示されるように、便器本体3の上に便座2を下ろした状態において、複数の足部材4の高さ分だけ、便器本体3の上端と便座2の下面の間に隙間(5mm〜10mm程度)が生ずる。本実施の形態1にかかる便座装置を利用した便座付便器1においては、この隙間を塞ぐことによってこの隙間から温水洗浄装置7による洗浄水が局部から跳ね返ったものが飛び出し等による便器外への汚水の飛散を防止するために、便座2を構成する外部被覆カバー材5の内側に下方突出部5aを設けている。
【0021】
本実施の形態1にかかる便座装置を利用した便座付便器1における便座2の構造及び下方突出部5aの構成について、図1(b)のA−A断面である図2及び図3を参照して説明する。
図2に示されるように、本実施の形態1の便座2は、硬質なプラスチック材料(例えば、ポリプロピレン,ABS樹脂等)からなる便座筐体10と、便座筐体10の外側に着座面を覆うように着脱可能に被せられ、便座筐体10よりも軟質で断熱性に富む材料からなる外部被覆カバー材5を有している。
【0022】
便座筐体10は、基材10Aと被覆材10Bとを組み合わせて内部に空洞が形成されるように構成されており、基材10Aの底面には硬質ゴム製の足部材4が複数個取付けられており、被覆材10Bの内面(便座筐体10の内部上面)には、前記空洞の一部を埋めるプレート形状の断熱材11が取付けられている。そして、この断熱材11と被覆材10Bとの間には、反射板及び取付部材としてのアルミ箔13に固着したチュービングヒータからなるヒータ12が配設されている。
【0023】
したがって、このヒータ12に通電されることによって、ヒータ12から発生した熱が被覆材10Bを伝わって外部被覆カバー材5を適度に温めるため、使用者が着座した時に冷感を感じることなく心地良い暖かさを感じる便座2となり、外部被覆カバー材5が便座筐体10よりも軟質であるため着座した時のクッション性も良く、また断熱性を備えた外部被覆カバー材5が便座筐体10の着座面及び側面を覆うように取付けられていることから、便座2の上面及び側面からの放熱が抑えられて省エネルギ化を図ることができる。
【0024】
更に、外部被覆カバー材5の下端には便座筐体10の内周に沿って、便座筐体10と便器本体3との間に生ずる隙間の下端に届く長さを有する下方突出部5aが設けられていることから、従来問題となっていた当該隙間から温水洗浄装置7による洗浄水が局部から跳ね返ったものが飛び出し等による便器本体3外へ汚水を飛散させたり、便器本体3上面を汚したり、便座2の中に入り込んだりすることを、確実に防止することができる。そして、外部被覆カバー材5は便座筐体10に対して着脱可能であるから、下方突出部5aに汚水が付着した場合には、外部被覆カバー材5を取外して洗浄すれば、便座2を清潔に保つことができる。
【0025】
ここで、図3に示されるように、外部被覆カバー材5の内周縁を基準とした開口両端の内側縁までの寸法L1は、外部被覆カバー材5が被せられる便座筐体10の被覆材10Bの内周縁を基準とした被覆材10Bの外周縁までの寸法L2よりも同一または若干(3mm〜6mm程度)小さい寸法となっている。この寸法差によって、外部被覆カバー材5を便座筐体10の被覆材10Bに被せる際に、適度な緊迫力を得て弾接することができ、図2に示されるように一体化した状態において、使用者が着座した状態で臀部をずらせたりしても、外部被覆カバー材5が被覆材10Bからずれる事態を防止することができる。
【0026】
このようにして、本実施の形態1にかかる便座装置を利用した便座付便器1においては、余分な放熱が少なく耐久性が高い便座2を有するとともに、便器本体3の上端と便座2の下面の間の隙間から温水洗浄装置等による洗浄水が跳ね返ったものが飛び出し、便器外へ汚水を飛散させたり、便器上面を汚したり、便座の中に入り込んだりすることを、確実に防止することができる。
[実施の形態2]
【0027】
次に、本発明の実施の形態2にかかる便座装置を利用した便座付便器について、図4を参照して説明する。図4は本発明の実施の形態2にかかる便座装置を利用した便座付便器で図1の便座部分のA−A断面に相当する断面を示す縦断面図である。
本実施の形態2にかかる便座装置を利用した便座付便器1の全体の構成は、図1乃至図3に示される上記実施の形態1にかかる便座付便器1とほぼ同様である。即ち、温水洗浄装置7を備えるとともに、図4に示されるように、内部にヒータ12が配設された便座22を有する。便座22の下面には陶器製の便器本体3の上に便座22を下ろす際の衝撃を緩和するために、硬質ゴム製の足部材4が複数個取付けられている。
【0028】
その結果、図1(a)に示されるように、便器本体3の上に便座22を下ろした状態において、複数の足部材4の高さ分だけ、便器本体3の上端と便座22の下面の間に隙間(5mm〜10mm程度)が生ずる。本実施の形態2にかかる便座装置においては、この隙間を塞いだり、その面積を少なくすることによって、この隙間から温水洗浄装置7による洗浄水が局部から跳ね返ったものが飛び出す等による便器外への汚水の飛散を防止するために、便座22を構成する外部被覆カバー材25の内側に下方突出部25aを設けている。
【0029】
本実施の形態2にかかる便座22においては、図4に示されるように、この外部被覆カバー材25の内側に設けられた下方突出部25aの断面形状が、実施の形態1の下方突出部5aと異なっている。即ち、下方突出部25aはその内面が便座筐体10の側面から下面にかけて回り込んで密着している。
これによって、下方突出部25aは本来の、便座筐体10と便器本体3との間に生ずる隙間から温水洗浄装置7による洗浄水が局部から跳ね返ったものが飛び出し等により、便器外へ汚水を飛散させたり、便器上面を汚したり、便座の中に入り込んだりすることを、確実に防止することができ、かつ、外部被覆カバー材25と便座筐体10とをより強固に一体化することができる。
【0030】
このようにして、本実施の形態2にかかる便座装置においては、余分な放熱が少なく耐久性が高い便座22を有するとともに、便器本体3の上端と便座22の下面の間の隙間からの汚水の飛散を確実に防止して、トイレ内を清潔に保つことができる。
[実施の形態3]
【0031】
次に、本発明の実施の形態3にかかる便座装置を利用した便座付便器について、図5を参照して説明する。図5は本発明の実施の形態3にかかる便座装置の図1の便座部分のA−A断面に相当する断面を示す縦断面図である。
本実施の形態3にかかる便座装置の全体の構成は、図1に示される上記実施の形態1にかかる便座付便器1とほぼ同様である。即ち、本実施の形態3にかかる便座装置は、温水洗浄装置7を備えるとともに、内部にヒータが配設された便座27を有する。便座27の下面には陶器製の便器本体3の上に便座27を下ろす際の衝撃を緩和するために、硬質ゴム製の足部材4が複数個取付けられている。
【0032】
この便座27の構成について、図5を参照して説明する。図5に示されるように、本実施の形態3にかかる便座27は、上記実施の形態1,2と同様に、硬質なプラスチック材料(例えば、ポリプロピレン,ABS樹脂等)からなる便座筐体10と、便座筐体10の外側に着座面を覆うように着脱可能に被せられ、便座筐体10よりも軟質で断熱性に富む材料からなる外部被覆カバー材28とを有している。
【0033】
便座筐体10は、基材10Aと被覆材10Bとを組み合わせて内部に空洞が形成されるように構成されており、基材10Aの底面には硬質ゴム製の足部材4が複数個取付けられており、基材10Aの上面(便座筐体10の内部)には、前記空洞の全体を埋める断熱材21が取付けられている。そして、この断熱材21と被覆材10Bとの間には、アルミ箔13に固着したチュービングヒータからなるヒータ12が配設されている。
【0034】
したがって、このヒータ12に通電されることによって、ヒータ12から発生した熱が被覆材10Bを伝わって外部被覆カバー材28を適度に温めるため、使用者が着座した時に冷感を感じることなく心地良い暖かさを感じる便座27となり、外部被覆カバー材28が便座筐体10よりも軟質であるため着座した時のクッション性も良く、また断熱性を備えた外部被覆カバー材28が便座筐体10の着座面及び側面を覆うように取付けられていることから、便座27の上面及び側面からの放熱が抑えられて省エネルギ化を図ることができる。
【0035】
更に、本実施の形態3にかかる便座27においては、断熱材21によって便座筐体10内部の空洞の全体を埋めているため、便座筐体10の下部へのヒータ12の熱の放散が著しく低減されて、一層の省エネルギ化に貢献することになる。
【0036】
そして、外部被覆カバー材28の下端には便座筐体10の内周に沿って、便座筐体10と便器本体3との間に生ずる隙間から、温水洗浄装置等による洗浄水が跳ね返ったものが飛び出し、便器外へ汚水を飛散させたり、便器上面を汚したりすることを、確実に防止することができる。そして、外部被覆カバー材28は便座筐体10に対して着脱可能であるから、下方突出部28aに汚水が付着した場合には、外部被覆カバー材28を取外して洗浄すれば、便座27を清潔に保つことができる。
【0037】
このようにして、本実施の形態3にかかる便座装置においては、更に余分な放熱を少なくできて耐久性が高い便座27を有するとともに、便器本体3の上端と便座27の下面の間の隙間からの汚水の飛散を確実に防止して、トイレ内を清潔に保つことができる。
本発明を実施するに際しては、便座装置のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等については、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる便座装置を便座付便器として使用した便座蓋を開けた状態を示す側面図、(b)は平面図である。
【図2】図2は図1(b)のA−A断面を示す図であり、本発明の実施の形態1にかかる便座装置の暖房便座の断面を示す縦断面図である。
【図3】図3は図2の縦断面図において外部被覆カバー材を外した状態を示す図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態2にかかる便座装置を利用した便座付便器で図1の便座部分のA−A断面に相当する断面を示す縦断面図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態3にかかる便座装置を利用した便座付便器で図1の便座部分のA−A断面に相当する断面を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 便座付便器
2,22,27 便座
3 便器本体
4 足部材
5,25,28 外部被覆カバー材
5a,25a,28a 下方突出部
10 便座筐体
11,21 断熱材
12 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座筐体の外側を覆うように取付けられ、前記便座筐体よりも軟質材料からなり、前記便座筐体に対して着脱可能に配設されてなる外部被覆カバー材を具備し、
前記便座筐体と便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さを有する下方突出部が前記便座の内周に沿って前記外部被覆カバー材の下端に設けられていることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
内部に空洞を有する便座筐体と、前記便座筐体の内部に直接的または間接的に取付けられたヒータと、前記便座筐体の外側において、少なくとも着座面及び側面を覆うように取付けられ、前記便座筐体よりも軟質で断熱性を備えた前記便座筐体に対して着脱可能な外部被覆カバー材を具備し、
前記外部被覆カバー材によって、前記便座筐体と便器本体との間に生ずる隙間を略閉じる長さを有する下方突出部が、前記便座筐体の内周に沿って前記外部被覆カバー材の下端に設けられていることを特徴とする便座装置。
【請求項3】
前記下方突出部は、その内側が前記便座筐体の側面から下面にかけて回り込んで密着していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記便座筐体の内部の空洞には、その空洞内部下部に断熱材が配設され、前記空洞全体を埋めたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の便座装置。
【請求項5】
前記断熱材は、前記便座筐体の内部上面に取付けられ、前記空洞の一部を埋めるプレート形状であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の便座装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate