説明

便座装置

【課題】省エネルギー性に富み、使い勝手の良い便座装置を提供すること。
【解決手段】便座10を暖める複数の熱源11と、人体検知手段12と、複数の熱源11a、11b、11c及び人体検知手段12とを制御する制御手段14と便座装置に印加されている電源電圧値を検出する電源電圧検出手段13を備え、制御手段14は、人体検知手段12と電源電圧検出手段13の電源電圧値を基に、便座10を温める複数の熱源11a、11b、11cへの電力供給タイミングや複数の通電量を調整して、便座温度が着座可能温度に達するように制御することにより、大きな突入電流を抑え、省エネルギー性に富み、使い勝手の良い便座装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置の便座を加熱する熱源の通電制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座装置では、図7に示すように内部に空洞部101を持つ便座102の着座部103を透明ポリプロピレン樹脂で構成し、着座部103の表面に輻射熱吸収層104を設置し、空洞部101にはランプヒータ105を設置していた。ランプヒータ105からの輻射熱は透明ポリプロピレン樹脂製の着座部103を透過し、表面の輻射熱吸収層104で熱に変換され、着座部103を昇温させるというものであった。臀部が接触する輻射熱吸収層104で熱の発生が行われるので、便座102の内部からコードヒータなどを用いて熱伝導で加熱される方式と比較すると短時間で臀部の暖房が可能となる。また、温度制御はランプヒータ105の近傍に置かれたサーモスタット106で行い、温度ヒューズ107で異常加熱の危険性を防ぐようにしていたものであった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−14598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、一本の高出力のランプヒータは電力変換効率が良いために直ぐ温まる速暖性能がよく、短時間で温度を上昇することができる反面、ランプヒータの抵抗値はフィラメントが冷めている(トイレ室内の温度相当の温度となっている)時には、定格電力消費時の1/10以下と小さいため、通電初期には大きな突入電流が流れる。もちろん、フィラメントの抵抗値は短時間に定格抵抗に達して突入電流はすぐに抑制されるのであるが、便座装置に使用するためには、トイレ室内に装備されている他の製品(特にヒータ)と同時に通電された場合に更に大電流が流れることになる。
【0004】
一般的にトイレ室内への屋内電力配線は大電流配線ではなく、また、単一電力配線であるため、大電流を想定した漏電遮断器、及び過電流遮断器は配置されていないことが多い。また、トイレ室内の照明器具へも同一電力配線から取られている場合も多く、ランプヒータとトイレ室内に装備されている他の製品(例えば、人体局部を洗う洗浄水を加熱する温水ヒータなど)のヒータが同時に通電された場合には、過電流で遮断器が落ちてしまったり、また、屋内電力配線の抵抗成分により電圧降下が発生して、便座装置、トイレ室内に装備されている他の製品、及びトイレ室内照明への供給電圧が低下し、便座装置やトイレ室内に装備されている他の製品の製品性能が低下したり、室内照明の輝度が低下するという課題を有していた。
【0005】
また、従来の構成では、一本の高出力のランプヒータであるため、ランプヒータが故障した場合、便座暖房ができなくなるというという課題も有していた。
【0006】
上記従来の課題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、省エネルギー性に富み、使い勝手の良い便座装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、制御手段において人体検知手段にて人体を検知すると、便座を温める複数の熱源の電力供給タイミングを変えながら複数の通電量で一定時間電力を供給した後、複数の通電量よりも高い一定の通電量で便座温度が所定時間内に着座可能温度に達するように制御を行う。
【0008】
本構成によって、省エネルギー性に富み、使い勝手の良い便座装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の便座装置は、速暖性能を有し、かつ使い勝手の良い省エネルギー性に富んだ便座装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、略馬蹄形状の着座面を有する便座と、前記着座面を加熱する複数の熱源と、便座を使用する人を検出する人体検知手段と、便座装置に印加されている電源電圧値を検出する電源電圧検出手段と、前記複数の熱源及び人体検知手段とを制御する制御手段とを備え、前記複数の熱源はそれぞれが少なくとも前記着座面の略全周に亘る範囲を加熱可能な形状とし、前記制御手段は人体検知を行うと、前記電源電圧検出手段の電源電圧値を基に、前記複数の熱源への電力供給タイミングや、複数の熱源に供給する時間や通電量を調整して、便座温度が着座可能温度に達するように制御することにより、便座の着座面の全周を均等に加熱することができ、大きな突入電流を抑え、過電流で遮断機が落ちてしまったり、屋内電力配線の抵抗成分により電圧降下が発生して、便座装置、トイレ室内に装備されている他の製品、及びトイレ室内の照明への供給電圧が低下し、便座装置やトイレ室内に装備されている他の製品の性能が低下したり、室内照明の輝度が低下することなく、省エネルギー性に富み、使い勝手の良い便座装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明における制御手段は、複数の熱源を個別に制御することで、熱源の出力パターンを細分化させることができ、便座の着座面に温度ムラがなく使い勝手の良い便座装置を提供することができる。また、不必要に熱源を出力することがないため省エネルギー性に富んだ便座装置となる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、制御手段は、複数の通電量を段階的に出力を変化して便座を加熱することで、必要最低限の時間で便座の温度が着座可能温度に到達させることができ、使い勝手の良い便座装置を提供することができる。また、不必要に熱源を出力することがないため省エネルギー性に富んだ便座装置となる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1または第2の発明において、複数の熱源の通電量を連続的に出力を変化して便座を加熱することで、必要最低限の時間で便座の温度が着座可能温度に到達させることができ、使い勝手の良い便座装置を提供することができる。また、不必要に熱源を出力することがないため省エネルギー性に富んだ便座装置となる。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明において、室温検出手段を有し、制御手段は所定時間や通電量は室温に応じて決定することにより、必要最低限の時間で便座の温度が着座可能温度に到達させることができ、使い勝手の良い便座装置を提供することができる。また、不必要に熱源を出力することがないため省エネルギー性に富んだ便座装置となる。
【0015】
第6の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明において、便座の温度を検出する便座温度検出手段を有し、制御手段は所定時間や通電量は便座温度に応じて決定することにより、必要最低限の時間で便座の温度が着座可能温度に到達させることができ、使い勝手の良い便座装置を提供することができる。また、不必要に熱源を出力することがないため省エネルギー性に富んだ便座装置となる。
【0016】
第7の発明は、特に、第6の発明の便座温度検出手段は、便座内部の温度を検出するこ
とにより、必要最低限の時間で便座の温度が着座可能温度に到達させることができ、使い勝手の良い便座装置を提供することができる。また、不必要に熱源を出力することがないため省エネルギー性に富んだ便座装置となる。
【0017】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明において、所定時間経過後、設定温度に便座温度を維持する保温の通電量にて電力を供給することにより、不必要に熱源を出力することがないため省エネルギー性に富んだ便座装置となる。
【0018】
第9の発明は、特に、第6〜8のいずれか1つの発明において、人体検知手段が人体検知した時の便座温度検出手段が検出した温度と、複数の熱源に一定時間電力を供給した後の便座温度検出手段が検出した温度とを比較して、便座の温度が特定の温度に達していない時、複数の熱源のいずれかが故障していることを判定する故障判定手段を備えることで、安全な便座装置となる。
【0019】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における便座装置のブロック図を示すものであり、図2は本発明の実施の形態1における複数の熱源への電力の供給タイミングと通電量を表したグラフである。
【0021】
図1に示すとおり、便座10を温める複数の熱源11a、11b、11cと人体を検知する人体検知手段12を制御する制御手段14と交流電源電圧のゼロ点を検出するゼロクロス検出回路13と交流電源電圧の電圧を検出する電源電圧検出手段13から構成されている。
【0022】
便座10は略楕円枠状の形状をしており、用便中の使用者は便座の上面に着座し、着座状態の使用者の臀部および脚部が接触する可能性のある略馬蹄形状の範囲が着座面10aを構成しており、少なくとも着座面10aが加熱可能なように複数の熱源11a、11b、11cは便座10の内部に配設されており、複数の熱源11a、11b、11cの発熱によって便座10が温められる。熱源11a、11b、11cはそれぞれが着座面10aの略全周に亘って加熱可能なように、本実施の形態においては略楕円形状としている。
【0023】
人体検知手段12はトイレ室内に使用者が在室しているか否かを検出し、制御手段14に対して在室の有無を信号として出力する。電源電圧検出手段13は、便座装置に交流電源が印加されている間、電源電圧値を検出し、制御手段14に対して電源電圧値を出力する。制御手段14はマイクロコンピュータ及び周辺回路にて構成されており、人体検知手段12の出力信号をもとに、電源電圧検出手段13からの電源電圧値を監視しながら、複数の熱源11a、11b、11cへの電力供給の制御を行う。
【0024】
本実施の形態においては熱源11a、11b、11cとしては3本のランプヒータを採用しており、ランプヒータは、石英ガラス製のガラス管の内部にタングステンからなるフィラメントおよびアルゴンなどの不活性ガスに微量のハロゲンガスを封入して構成されており、フィラメントの発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、フィラメントの消耗を防止するよう作用している。この作用により熱容量の非常に小さいフィラメントを熱源とすることができ、輻射エネルギーの極めて急峻な立ち上がりを行わせることができる。
【0025】
つまり、ランプヒータは、使用者がトイレ室に入室し、衣服を下ろし、お尻を便座10
の着座面10aに着座するまでの、数秒間に便座10の着座部10aを適温まで高速に昇温させることができる輻射型発熱体である。
【0026】
ガラス管は3500nm以上の波長はほとんど吸収してしまうので、輻射エネルギーで効果的に着座面10aを加熱する為に、近赤外線から中赤外線を発するものであり、発光波長の分光分布のピークが少なくとも3500nm以下であるランプヒータを用いている。これを実現するために、ランプヒータのフィラメントの色温度が800K以上となるように設定している。なお、ランプヒータは、要求される特性の度合いにより必ずしもハロゲンランプヒータである必要はない。
【0027】
ランプヒータのガラス管は成形加工を容易にするために曲線部と直線部を組み合わせ略環状に成形し、互いに重合する両端部の給電接続部を着座面10a後部に配置してある。両端部の給電接続部は着座面10aの後部で前後に重合するように配置してある。給電接続部はガラス管を封口処理し外側にシリコンカバーを被せてあり、この部分からは輻射エネルギーが放出されないが、着座面10aの後部は身体の密着度合い低いため快適性への影響はほとんどない。
【0028】
フィラメントは螺旋のコイル状で長さが900〜1000mmの長さであり、その略中央部となる便座前部中央付近で2本のフィラメントを接続した構成である、フィラメントの巻きピッチは場所により変えてありランプヒータからの輻射エネルギーの放射量を座面の広さや座面までの距離や人体の密着状態などに応じて設定してある。本実施の形態においては、着座面10aの前方に対応する箇所を祖とし、側方と後方に対応する箇所を密としている。これにより着座状態でほとんど脚があたらない前方の加熱量を抑制し、脚が密着する側方と便座10の空洞部の容量が大きい後方の加熱量を高めることにより、快適な暖房を実現している。
【0029】
便座前部中央付近に対応するフィラメントの接続部はフィラメントの巻きピッチをフィラメントの線径の略2倍とし、ピッチの隙間に相互のフィラメントを嵌合し、螺旋の中央に接合ピンを挿入しフィラメントと接合ピンをスポット溶接して接続している。
【0030】
本実施の形態においては上記ランプヒータを採用したが、熱源11a、11b、11cとしてはランプヒータに限るものではなく、例えばエナメル線を主体とする線状ヒータを使用することも可能である。
【0031】
線状ヒータは、断面円形の発熱線と発熱線の外周に設けたエナメル層および絶縁被覆層により構成される。断面円形の発熱線の外周面がエナメル層および絶縁被覆層で順に被覆される。
【0032】
発熱線は、例えば0.16〜0.25mmの直径を有し、銅または銅合金からなる。例えば、発熱線として、直径0.176mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。抵抗値は0.833Ω/mである。
【0033】
エナメル層は、例えば180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、20μm以下であり、例えば12〜13μmである。このようなエナメル線は、エナメル層の膜厚が極薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0034】
絶縁被覆層は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフロロアルコキシ混合物(以下P
FAと称する)等のフッ素樹脂からなる。絶縁被覆層の厚みは、例えば0.1〜0.15mmである。PFAからなる絶縁被覆層の形成は、押出し加工により行うことができる。この場合、絶縁被覆層の厚みが0.05〜0.1mmと薄くても、雷サージにも耐える電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
【0035】
なお、絶縁被覆層の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0036】
線状ヒータの外径は、例えば0.46〜0.50mmである。線状ヒータの電力密度は、例えば0.95W/cmである。
【0037】
線状ヒータは、便座10の着座面10aの裏面に直接配設してもよいが、好ましくは粘着層を介して、例えばアルミニウムからなる金属箔に配設して便座ヒータを構成し、前記便座ヒータを便座10の着座面10aの裏面に設置するのが好適である。金属箔の膜厚は、例えば50μmである。
【0038】
このように、単一のエナメル線上に絶縁被覆層を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
【0039】
また、絶縁被覆層は比較的薄くても十分な絶縁性が得られる。したがって、絶縁被覆層の厚さを薄くすることができる。上記の例では、線状ヒータの樹脂層(エナメル層および絶縁被覆層)の厚さは、0.12mm程度であり、極めて薄い。この場合、発熱線から金属箔および便座10の着座面10aへの熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。
【0040】
なお、上記ランプヒータ、線状ヒータ以外に、導電体を印刷した面状ヒータや、自己温度制御特性を有するPTCヒータ等のヒータを使用することも可能である。
【0041】
以上のように構成された便座装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0042】
図2に示すとおり、制御手段14は、人体検知手段12にて人体を検知すると便座10を温める複数の熱源11a、11b、11cに供給する電力を、段階的に複数の通電量で上昇させるように複数の熱源11a、11b、11cへ電力供給タイミングを変えながら一定時間電力の供給を行う。
【0043】
その一定時間後、複数の通電量よりも高い一定の通電量にて便座10の温度が所定時間内に着座可能温度に到達するように制御手段14において電力供給を行う。熱源11a、11b、11cへの通電開始後から所定時間経過後は、設定温度に便座10温度を維持する保温の通電量にて電力供給を行う。
【0044】
但し、熱源11a、11b、11cへの通電中に、電源電圧検出手段13からの電源電圧値が所定の電圧値より高かった場合、熱源11a、11b、11cに流れる電流量が多くなり、熱源11a、11b、11cから出力されるエネルギー量も多くなる。そうなると通電開始後から所定時間経過後の便座10の温度が設定温度以上になるので、制御手段14は、熱源11a、11b、11cへの通電時間を短くし、便座10の温度が設定温度以上にならないように制御する。
【0045】
また、熱源11a、11b、11cへの通電中に、電源電圧検出手段13からの電源電圧値が所定の電圧値より低かった場合、熱源11a、11b、11cに流れる電流量が少なくなり、熱源11a、11b、11cから出力されるエネルギー量も少なくなる。そうなると通電開始後から所定時間経過後の便座10の温度が設定温度未満になるので、制御
手段14は、熱源11a、11b、11cへの通電時間を長くし、便座10の温度が設定温度未満にならないように制御する。
【0046】
もし、熱源11a、11b、11cへの通電中に、電源電圧検出手段13からの電源電圧値が所定の電圧値より著しく低くなり、トイレ室内への屋内電力配線の電圧が著しく電圧降下している場合、制御手段14は、熱源11a、11b、11cへの同時通電を変更して、電源電圧降下による他の電化製品の誤動作を防ぐ制御をする。それにより熱源11a、11b、11cから出力されるエネルギー量は少なくなるので、通電開始後から所定時間経過後の便座10の通電時間を長くし、便座10の温度が設定温度以上にならないように制御する。
【0047】
尚、着座可能温度とは、使用者が便座10に着座した際に不快を感じない最低温度である。
【0048】
通常は、便座10の温度をできるだけ早く着座可能温度に到達させるために、通電開始初期から熱源11a、11b、11cへ同時に高い一定の通電量にて通電を行うことが考えられる。しかし、前述の課題にも記載したとおり、熱源11a、11b、11cの抵抗値は熱源11a、11b、11cが冷めている(トイレ室内の温度相当の温度)時には、定格電力消費時の1/10以下程度と非常に小さいため、通電開始初期において大きな突入電流が流れる可能性がある。
【0049】
また、トイレ室内で他の製品(特にヒータを搭載した製品)を同時に使用していた場合には更に大きな電流が流れることが想定される。この場合に、一般的にトイレ室内への屋内電力配線は大電流配線ではなく、また、単一電力配線であるため、大電流を想定した漏電遮断器、及び過電流遮断器は配置されていないことが多い。
【0050】
また、トイレ室内の照明器具へも同一電力配線から取られている物も多く、熱源11a、11b、11cとトイレ室内に装備されている他の製品(例えば、人体局部を洗う洗浄水を加熱する温水ヒータなど)のヒータが同時に通電された場合には、過電流で遮断器が落ちてしまったり、また、屋内電力配線の抵抗成分により電圧降下が発生して、便座装置、トイレ室内に装備されている他の製品、及びトイレ室内照明への供給電圧が低下し、便座装置やトイレ室内に装備されている他の製品の性能が低下したり、室内照明の輝度が低下してしまう。
【0051】
一般的に熱源11a、11b、11cの抵抗値は短時間に定格抵抗に達して突入電流はすぐに抑制されるので、通電開始時には複数の通電量になるように複数の熱源11a、11b、11cへ電力供給タイミングを変えながら電力を供給し、その後、複数の通電量よりも高い一定の通電量にて制御することで、大きな突入電流を抑え、過電流で遮断機が遮断されたり、屋内電力配線の抵抗成分により電圧降下が発生して、便座装置、トイレ室内に装備されている他の製品、及びトイレ室内の照明への供給電圧が低下し、便座装置やトイレ室内に装備されている他の製品の性能が低下したり、室内照明の輝度が低下することなく、省エネルギー性に富み、使い勝手の良い便座装置を提供することができる。
【0052】
また、便座の温度を着座可能な温度に維持するために必要な最低限の電力である保温の通電量に切り替えることで不必要に熱源に通電することがないため、より省エネルギー性に富んだ便座装置となる。
【0053】
なお、本実施の形態においては、通電量を段階的に上昇させて複数の熱源へ電力供給タイミングを変えながら通電する制御を行ったが、これに限るものではなく、上昇途中で一旦通電量を下げたり、また一定の通電量での通電時間を長くすることも可能であり、また
通電量を連続的に変化せるために熱源への電力供給を位相制御で行うことも可能であり、このような制御を行うことにより、便座の温度が過剰に上昇することを防ぐことができる。
【0054】
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における便座装置のブロック図を示すものであり、図4は本発明の実施の形態2における便座温度の変化を表したグラフである。
【0055】
図3に示すとおり、室温を検出する室温検出手段16を有し、制御手段14は、室温検出手段16において検出した室温と、電源電圧検出手段13において検出した便座装置に印加されている交流電源の電源電圧値に応じて複数の熱源11a、11b、11cへ通電する所定時間を決定する。
【0056】
図4に示すように、室温が低い時と高い時とでは、人体を検知して複数の熱源11a、11b、11cに電力供給を開始する直前の便座10の温度が異なる。また、電源電圧値が低い時と高い時とでは、複数の熱源11a、11b、11cから出力されるエネルギー量が異なる。このため、複数の熱源11a、11b、11cに電力供給を開始してから便座10が着座可能温度に到達するまでの時間が室温や電源電圧値の組み合わせによって異なる。
【0057】
例えば、室温が低い時には便座10温度も低く、便座10の温度が上昇する速度も遅いため便座10を着座可能温度に到達させようとすると長い時間複数の熱源11a、11b、11cに電力供給する必要がある。この時電源電圧が所定の電圧より高い場合、低い場合に応じて複数の熱源11a、11b、11cに電力供給する時間を補正する必要がある。
【0058】
逆に、室温が高い時には便座10の温度も高く、便座10の温度が上昇する速度も速いため便座10を着座可能温度に到達させようとすると短い時間複数の熱源11a、11b、11cに電力供給する必要がある。この時も電源電圧が所定の電圧より高い場合、低い場合に応じて複数の熱源11a、11b、11cに電力供給する時間を補正必要がある。
【0059】
そこで、制御手段14において、室温に応じて複数の熱源11a、11b、11cに通電する所定時間を決定し、便座装置に印加されている電源電圧値によって通電する所定時間を補正することで、必要最低限の時間で便座10の温度が着座可能温度に到達させることができ、使い勝手の良い便座装置を提供することができる。また、不必要に複数の熱源11a、11b、11cに通電することがないため省エネルギー性に富んだ便座装置となる。
【0060】
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3における便座装置のブロック図を示すものである。
【0061】
図5に示すとおり、本実施の形態が実施の形態1と異なる点は、便座10の温度を検出する便座温度検出手段15と、複数の熱源11a、11b、11cいずれかの故障を判定する故障判定手段17と、熱源の故障を報知する報知手段18を有し、本実施の形態における制御手段14は、便座温度検出手段15において検出した便座の温度と、電源電圧検出手段13が便座装置に交流電源が印加されている電源電圧値に応じて複数の熱源11a、11b、11cに電源供給する所定時間を決定するとともに、故障判定手段17の信号により、複数の熱源11a、11b、11cに電源供給を遮断する機能を備えている。
【0062】
以上のように構成された便座装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0063】
人体検知手段12にて人体を検知すると便座10を温める複数の熱源11a、11b、11cに電力の供給を開始するが、そのとき便座温度検出手段15が検出した便座の温度と、電源電圧検出手段13が検出した電源電圧値にて、制御手段14は便座10の温度に応じて所定時間電源供給する。
【0064】
通常、一旦便座10を複数の熱源11a、11b、11cで温めると、使用者が使用後に複数の熱源11a、11b、11cへの電力供給を止めた場合、便座10の温度が下がるまである程度の時間を要する。
【0065】
実使用上において便座装置が使用される間隔は設置環境・使用環境・時間帯等において様々である。例えば、4人家族の朝の時間帯では、通勤や通学のため同一時間帯に連続的に便座装置が使用される。また、頻繁に人の出入りがある公共施設などに便座装置が設置されている場合にも連続的に便座装置が使用される。これらの場合は、便座装置が使用される間隔が非常に短いため便座10の温度が十分高い状態で複数の熱源11a、11b、11cに電源供給を開始することになる。この場合においても複数の熱源11a、11b、11cへ電源供給する所定時間を同一の時間としていた場合には必要以上に電源供給を行い、無駄に電力を消費してしまうことになる。
【0066】
そこで、制御手段14において、便座10の温度や電源電圧に応じて複数の熱源11a、11b、11cに電源供給する所定時間を、タイミングを変えながら決定することで必要最低限の時間で便座10の温度が着座可能温度に到達させることができ、使い勝手の良い便座装置を提供することができる。また、不必要に複数の熱源11a、11b、11cに電源供給することがないため省エネルギー性に富んだ便座装置となる。
【0067】
また、故障判定手段17は、制御手段14が電力供給を開始してから一定時間経過後に、便座温度検出手段15が検出した温度と複数の熱源11a、11b、11cに電源供給する前の温度を比較して、便座の温度上昇が故障判定手段17に予め保存してある判定のための特定の温度に達していない時は、複数の熱源のいずれかが故障していると判定する。
【0068】
故障と判定した場合、故障判定手段17の信号により、制御手段は複数の熱源11a、11b、11cへ電源供給を遮断するとともに、報知手段18は故障であることを報知する。
【0069】
なお、本実施の形態においては、便座温度検出手段15は便座内部設置したが、これに限るものではなく、便座の表面部等便座の表面温度と相関性の高い位置であれば同様の効果を得ることができる。
【0070】
また、本実施の形態においては、故障と判定した場合、電力供給の遮断と故障の報知を行ったが、この両方の作用に限るものではなく、どちらか一方の作用あるいは別の作用を行ってもよい。
【0071】
以上のように、本実施の形態における便座装置は、便座温度検出手段15と故障判定手段を備えることにより、不必要に熱源に電源供給することがないため省エネルギー性に富むとともに、通常は外観では判明しにくい熱源の故障を検知し、報知手段で報知するとともに電源供給を遮断することにより、使用者が冷たい便座に着座して不快を感じることがなく、また熱源の故障による二次的な災害を防止することができ、使い勝手の良く、安全性の高い便座装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかる便座装置は、省エネルギー性に富んだ熱源の制御が可能となるので、他の暖房器具等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における熱源への電源供給タイミングと通電量を表したグラフ
【図3】本発明の実施の形態2における便座装置のブロック図
【図4】本発明の実施の形態2における便座温度の変化を表したグラフ
【図5】本発明の実施の形態3における便座装置のブロック図
【図6】従来の便座装置の要部断面図
【符号の説明】
【0074】
10 便座
10a 着座面
11a 熱源
11b 熱源
11c 熱源
12 人体検知手段
13 電源電圧検出手段
14 制御手段
15 便座温度検出手段
16 室温検出手段
17 故障判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略馬蹄形状の着座面を有する便座と、前記着座面を加熱する複数の熱源と、便座を使用する人を検出する人体検知手段と、便座装置に印加されている電源電圧値を検出する電源電圧検出手段と、前記複数の熱源及び人体検知手段とを制御する制御手段とを備え、前記複数の熱源はそれぞれが少なくとも前記着座面の略全周に亘る範囲を加熱可能な形状とし、前記制御手段は人体検知を行うと、前記電源電圧検出手段の電源電圧値を基に、前記複数の熱源への電力供給タイミングや、複数の熱源に供給する時間や通電量を調整して、便座温度が着座可能温度に達するように制御する便座装置。
【請求項2】
制御手段は、複数の熱源を個別に制御する請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
複数の熱源の通電量は段階的に出力を変化して、便座を加熱する請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
複数の熱源の通電量は連続的に出力を変化して、便座を加熱する請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項5】
室温検出手段を有し、制御手段は室温に応じて通電時間や通電量を決定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項6】
便座の温度を検出する便座温度検出手段を有し、制御手段は便座温度に応じて通電時間や通電量を決定する請求項1〜4のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項7】
便座温度検出手段は、便座内部の温度を検出する請求項6に記載の便座装置。
【請求項8】
所定時間経過後、設定温度に便座温度を維持する保温の通電量にて電力を供給する請求項1〜7のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項9】
人体検知手段が人体検知した時の便座温度検出手段が検出した温度と、複数の熱源に一定時間電力を供給した後の便座温度検出手段が検出した温度とを比較して、便座の温度が特定の温度に達していない時、複数の熱源のいずれかが故障していることを判定する故障判定手段を備えた請求項6〜8のいずれか1項に記載の便座装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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