便座装置
【課題】便座個々のバラツキや使用環境の違いによる報知時期の誤差を補正することにより、快適な便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】発熱体450を備えた便座400と、便座400の温度が所定温度に達したことを報知する報知手段280と、制御手段90とを有し、便座温度検知手段401aと電圧検知手段900と電流検知手段901と室温検知手段620のうち少なくとも1つの検知手段とを備え、前記検知手段の少なくとも1つの検知データに基づいて報知手段280の報知時期を補正することにより、報知時期における便座400の温度を一定にすることが可能となり、快適な便座装置110を提供することができる。
【解決手段】発熱体450を備えた便座400と、便座400の温度が所定温度に達したことを報知する報知手段280と、制御手段90とを有し、便座温度検知手段401aと電圧検知手段900と電流検知手段901と室温検知手段620のうち少なくとも1つの検知手段とを備え、前記検知手段の少なくとも1つの検知データに基づいて報知手段280の報知時期を補正することにより、報知時期における便座400の温度を一定にすることが可能となり、快適な便座装置110を提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置の分野においては、人体に不快感を与えないようにするために、例えば、洗浄に用いる洗浄水を適切な温度に調整する加熱装置や人体との接触部の温度を適切な温度に調整する便座装置等様々な機能を有する装置が案出されている。一方、近年地球環境に対する関心が高まっており、不必要にエネルギーが消費されることのない製品が求められている。衛生洗浄装置においては使用する時間は1日の内のごくわずかであるにも関わらず、使用する時間が想定できないことから、常時適温に保持するものが多かったが、非使用時には適温保持のための通電を停止する、もしくは適温から数度下げた温度で保持し、使用時のみ適温とする製品が増えてきている。この場合、タイマもしくは使用者がトイレを使用することを検出して、通電停止状態もしくは数度低い温度での保持状態から適温へ温度を上昇させることになる。この時、適温へ到達する前に使用者が衛生洗浄装置を使用した場合には、適温より低い温度状態となっているため、使用者は冷たく不快な思いをすることになる。
【0003】
特許文献1記載の衛生洗浄装置においては、これを防止するために設定温度に達したことを使用者に報知する手段を設け、使用者が設定温度まで加熱されていないと知らずに使用し不快に思うことが衛生洗浄装置である。
【特許文献1】特開2000−257136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような報知手段では、通常検知手段がある固定の温度に達した場合に報知を行っている。昇温スピードが緩やかで実際の温度をサーミスタ等の検知手段が遅れることなく追従できる場合は、正確に報知する事が可能である。しかしながら、通電を停止、もしくは適温から数度下げた温度で保持した状態から適温へ温度を上昇させる昇温スピードが速い場合には、サーミスタ等の検知手段の応答が遅れてしまい、検知温度と実際の温度との誤差が生じ、報知が適切なタイミングで出来ないという課題を有していた。この誤差は、便座の部品の固有の状態や、設置状況による電力条件、季節、室温などの環境条件によるものである。
【0005】
本発明の目的は、この誤差の生じる原因となる使用時の状態および使用環境を予め検知して報知時期を補正をすることで、実際の便座表面温度が設定した温度に到達した時点に、適切に報知を行うことにより使用者により快適な瞬間暖房便座装置を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、着座面を有し内部に発熱体を備えた便座と、便座の温度が所定温度に達したことを報知する報知手段と、便座を制御する制御手段とを有し、便座の便座温度を検知する便座温度検知手段と発熱体に印加する電圧を検知する電圧検知手段と発熱体に流れる電流を検知する電流検知手段と室温を検知する室温検知手段のうち少なくとも1つの検知手段とを備え、前記検知手段の少なくとも1つの検知データに基づいて報知手段の報知時期を補正するものである。
【0007】
これにより、便座個々のバラツキや経年変化あるいは使用環境の違いによる便座の温度
上昇への影響を、検知データと基準値との差に基づいて制御手段が報知手段の報知時期を補正することにより、報知時期における便座の温度を一定にすることが可能となり、快適な便座装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、便座表面温度を正確に把握し、使用者に着座が可能な状態を適切な時期に報知することにより、快適な便座装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、着座面を有し内部に発熱体を備えた便座と、前記便座の温度が所定温度に達したことを報知する報知手段と、前記便座を制御する制御手段とを有し、前記便座の便座温度を検知する便座温度検知手段と前記発熱体に印加する電圧を検知する電圧検知手段と前記発熱体に流れる電流を検知する電流検知手段と室温を検知する室温検知手段のうち少なくとも1つの検知手段とを備え、前記検知手段の少なくとも1つの検知データに基づいて前記報知手段の報知時期を補正するものである。
【0010】
これにより、便座個々のバラツキや経年変化あるいは便座使用時の便座自体の温度等の現状と基準値との差や、室温等の使用環境の違いによる便座の温度上昇への影響を、便座の使用時の現状および使用環境を検知手段で検知し、検知データと基準値との差に基づいて制御手段が報知手段の報知時期を補正することにより、報知時期における便座の温度を一定にすることが可能となり、快適な便座装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明において、便座温度検知手段が検知した検知データによる便座の昇温速度に基づき、報知時期を補正するものである。
【0012】
これにより、発熱体の個々のバラツキによる抵抗値の違い、発熱体の経年変化による抵抗値の違い、発熱体に印加する電圧の違い、あるいは使用時の室温の違い等により発生する便座の昇温速度の違いを便座温度検知手段で検知した検知データにより制御手段が便座の昇温速度を算出し、算出した昇温速度と基準値との差に基づいて制御手段が報知手段の報知時期を補正することにより、報知時期における便座の温度を一定にすることが可能となり、快適な便座装置を提供することができる。
【0013】
第3の発明は、特に第1の発明において、電圧検知手段が検知した電圧に基づき、報知時期を補正するものである。
【0014】
これにより、発熱体の温度上昇に最も影響の大きい因子である電圧の検知データと基準値との差を正確に把握し、報知時期を補正することにより、最適な便座温度の時期にすることが可能となる。
【0015】
第4の発明は、特に第1の発明において、発熱体への通電開始時における、便座温度検知手段が検知した便座温度と、電圧検知手段が検知した電圧と、電流検知手段が検知した電流とに基づき、報知時期を補正するものである。
【0016】
これにより、便座装置を設置した環境条件の電圧だけでなく、便座の現状の個体条件である、電圧と電流の検知データから算出される発熱体の抵抗値と、通電開始時の便座の温度を把握することができ、これらの検知データに基づき報知手段の報知時期をより正確に補正する事が可能となる。
【0017】
第5の発明は、特に第1〜第4のいずれか1つの発明において、室温検知手段が検知した室温に基づき、報知時期を補正するものである。
【0018】
これにより、便座の温度上昇に影響を与える因子のうち、特に便座からの放熱に影響を与える環境条件である室温の検知データにより報知手段の報知時期を補正することにより、より的確な時期に報知が可能となる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
<1> 便座装置、衛生洗浄装置およびトイレ装置の外観
図1は本発明の第1の実施の形態に係る便座装置およびそれを備えた衛生洗浄装置を示す外観斜視図である。衛生洗浄装置はトイレットルーム内に設置される。
【0021】
衛生洗浄装置100は便器700の上面に取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。
【0022】
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、図示しない洗浄装置と洗浄水供給機構が設けられるとともに、後述の制御部90が内蔵される。
【0023】
図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610が示されている。この着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより、使用者が便座部400に着座しようとして接近した時点より便座部400より立ち上がるまで使用者の存在を検知する。
【0024】
また、本体部の上面にお知らせLED280が設けられている。このお知らせLED280は便座部400の昇温状態を報知する報知手段であり、便座部の昇温開始直後から点滅を開始し、便座部400に着座しても冷たくない温度以上に昇温した場合は連続して点灯し、使用者に便座部400の昇温の状態を報知する。また、便座ヒータ450やサーミスタ401aの断線などの異常時にも使用者に対して報知を行う。
【0025】
また、本体部の側面にはトイレットルームの室温を検知する室温検知センサ620が設置してある。
【0026】
さらに、図1では、本体部200の正面下部に設けられる洗浄装置の便器ノズル40が便器700の内側に突出している状態が示されている。この便器ノズル40は、上述の洗浄水供給機構に接続されている。
【0027】
衛生洗浄装置100の各構成要素のから、上記便器ノズルとノズル部および洗浄水供給機構などの洗浄装置を除いた要素が便座装置110を構成する。
【0028】
洗浄水供給機構は、図示しない水道配管に接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水を便器ノズル40に供給する。それにより、便器ノズル40から便器700の内面の広い範囲に洗浄水が噴出される(便器プレ洗浄)。または、便器ノズル40から便器700の内面の背面側に洗浄水が噴出される(便器後部洗浄)。詳細は後述する。
【0029】
また、洗浄水供給機構は、図示しない洗浄装置のお尻洗浄ノズルと、ビデ洗浄ノズルと、ノズル洗浄噴出口に切替弁を介して接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水を加熱手段で温水にし、各ノズルに供給する。それにより
、お尻洗浄ノズルと、ビデ洗浄ノズルから噴出した温水で使用者の局部を洗浄する。また、ノズル洗浄噴出口から洗浄水を噴出させてお尻洗浄ノズルとビデ洗浄ノズルをセルフクリーニングする。
【0030】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0031】
入室検知センサ600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0032】
本体部200の制御部90は、遠隔操作装置300、入室検知センサ600および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0033】
<2>便座装置
(3−1)便座装置の構成
図2は、便座装置110の構成を示す模式図である。上述のように、便座装置110は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および入室検知センサ600を備える。 図2に示すように、本体部200は、制御部90、温度測定部401、ヒータ駆動部402、お知らせLED280、着座センサ610および室温検知センサ620を含む。
【0034】
また、便座部400は便座ヒータ450およびサーミスタ401aを備える。
【0035】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータからなり、便座ヒータ450に印加する電圧を検知する電圧検知部900、便座ヒータ450に流れる電流を検知する電流検知部901、使用者の入室および便座部400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、検知したデータと基準値を比較する演算部、ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
【0036】
本体部200の温度測定部401は、本体部200に設置した室温検知センサ620と便座部400のサーミスタ401aとに接続されている。これにより、温度測定部401は、室温検知センサ620とサーミスタ401aから出力される信号に基づいて室温と便座部400の温度を測定する。以下、室温検知センサ620とサーミスタ401aを通じて温度測定部401により測定される室温と便座部400の温度を測定温度値と称する。
【0037】
また、本体部200のヒータ駆動部402は、便座部400の便座ヒータ450に接続されている。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動する。
【0038】
本実施の形態において、便座装置110は次のように動作する。初期設定時では、制御部90がヒータ駆動部402を制御することにより、便座部400が例えば約18℃となるように温度調整される。このときの温度を待機温度と称する。
【0039】
ここで、使用者が遠隔操作装置300の便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座設定温度が制御部90に送信される。制御部90は、遠隔操作装置300から受信した便座設定温度を記憶部に記憶する。
【0040】
使用者がトイレットルームに入室すると、入室検知センサ600が使用者の入室を検知
する。それにより、使用者の入室検知信号が制御部90に送信される。
【0041】
次に、通常の使用時の動作について説明する。制御部90の判定部は、入室検知センサ600からの入室検知信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知する。そこで、判定部は、便座部400の測定温度値、および記憶部に記憶された便座設定温度に基づいて便座ヒータ450の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0042】
通電率切替回路は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部402の動作を制御する。
【0043】
それにより、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され、便座部400の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
【0044】
お知らせLED280は、便座ヒータの駆動が開始されると点滅を開始し、便座部400の温度が着座しても冷たくない温度以上に昇温したら連続して点灯し、使用者に便座部400の昇温の状態を報知する。
【0045】
(3−2)便座部の構成
図3は、便座部400の分解斜視図である。図5(a)は、便座部400の便座ヒータ450の平面図、図5(b)は、図5(a)の領域C72の拡大図である。図5は、便座部400の平面図である。図6は、図5の便座部400のC73−C73断面図である。
【0046】
図3に示すように、便座部400は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の上部便座ケーシング410、略馬蹄形状の便座ヒータ450および合成樹脂により形成された略楕円形状の下部便座ケーシング420を備える。
【0047】
以下、着座した使用者から見て前方側を便座部400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座部400の後部とする。
【0048】
図4(a)および図5に示すように、便座ヒータ450は、前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成される。なお、便座ヒータ450は、略楕円形状を有してもよい。便座ヒータ450は、例えばアルミニウムからなる金属箔451,453および線状ヒータ460を含む。
【0049】
線状ヒータ460は、シート中央部SE3からシート一方端部SE1までの領域およびシート中央部SE3からシート他方端部SE2までの領域において上部便座ケーシング410の形状に合わせて蛇行形状に配設される。
【0050】
具体的には、線状ヒータ460は、左右6列程度のU字状部を有するように形成される。これらのU字状部は、着座した使用者の大腿部の方向にほぼ沿って並行に配置される。各U字状部における線状ヒータ460の間隔は5mm程度である。
【0051】
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
【0052】
さらに、図4(b)に示すように、蛇行形状の線状ヒータ460の経路中に熱応力緩衝部となる複数の折曲部CUが設けられる。
【0053】
図6に示すように、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1における線状ヒータ460の間隔ds1および内側の側辺に沿った領域G3における線状ヒータ4
60の間隔ds3は、上部便座ケーシング410の中央部の領域G2における線状ヒータ460の間隔ds2よりも小さく設定される。それにより、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1および内側の側辺に沿った領域G3では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。
【0054】
(3−3)便座ヒータの構造
図6は、上部便座ケーシング410に取り付けられる便座ヒータ450の構造を示す断面図である。
【0055】
図6に示すように、上部便座ケーシング410は、例えば厚さ1mmのアルミニウム板413により形成される。アルミニウム板413の上面には、アルマイト層412および表面化粧層411が形成される。表面化粧層411の上面が着座面410Uとなる。また、アルミニウム板413の下面には、塗装膜414が形成される。塗装膜414は、例えば膜厚40μmおよび150℃の耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜である。
【0056】
なお、アルミニウム板413の代わりに、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板および亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちいずれかまたは複数を用いてもよい。
【0057】
塗装膜414の下面に粘着層452aを介して例えばアルミニウムからなる金属箔451が貼着される。金属箔451の膜厚は、例えば50μmである。
【0058】
線状ヒータ460は、断面円形の発熱線463a、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462により構成される。断面円形の発熱線463aの外周面がエナメル層463bおよび絶縁被覆層462で順に被覆される。発熱線463aおよびエナメル層463bによりエナメル線463が構成される。
【0059】
発熱線463aは、例えば0.16〜0.25mmの直径を有し、銅または銅合金からなる。本実施の形態では、発熱線463aとして、直径0.176mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。抵抗値は0.833Ω/mである。
【0060】
エナメル層463bは、例えば180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、20μm以下であり、本実施の形態では12〜13μmである。このようなエナメル線463は、エナメル層463bの膜厚が極薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層463bの材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0061】
絶縁被覆層462は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフロロアルコキシ混合物(以下PFAと称する)等のフッ素樹脂からなる。絶縁被覆層462の厚みは、例えば0.1〜0.15mmである。PFAからなる絶縁被覆層462の形成は、押出し加工により行うことができる。この場合、絶縁被覆層462の厚みが0.05〜0.1mmと薄くても、雷サージにも耐える電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
【0062】
なお、絶縁被覆層462の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0063】
線状ヒータ460の外径は、例えば0.46〜0.50mmである。線状ヒータ460の電力密度は、例えば0.95W/cm2である。
【0064】
線状ヒータ460は、粘着層452bおよび例えばアルミニウムからなる金属箔453
で覆うように金属箔451に取り付けられる。金属箔453の膜厚は、例えば50μmである。
【0065】
このように、単一のエナメル線463上に絶縁被覆層462を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
【0066】
また、絶縁被覆層462は比較的薄くても十分な絶縁性が得られる。したがって、絶縁被覆層462の厚さを薄くすることができる。本実施の形態では、線状ヒータ460の樹脂層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の厚さは、0.12mm程度であり、極めて薄い。この場合、発熱線463aから金属箔451および便座ケーシング410への熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。
【0067】
ちなみに従来の便座装置においては、線状ヒータのシリコーンゴムまたは塩化ビニール等からなる被覆チューブの厚さは、本実施の形態の約10倍の1mm程度ある。このような被覆チューブの熱伝導速度は桁違いに遅く、便座の昇温速度を速くすることはできなかった。
【0068】
従来の便座装置において便座の昇温速度を無理やり速くするためにヒータ線に大きい電力を供給した場合、断熱状態でヒータ線の温度を高くした場合と同様に、被覆チューブが溶融および焼損する。そのため、このような方法による便座の昇温は実用できなかった。
【0069】
一方、本実施の形態のように耐熱性能に優れたエナメル線463をヒータ線として使用した場合、十分短時間で便座を昇温でき、かつ電気絶縁性および安全性を確保できる。したがって、本実施の形態の構造は、種々の便座装置に有効に実用することができる。
【0070】
また、本実施の形態の構造では、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462等からなる樹脂層を0.1〜0.4mm程度の薄い厚さで形成できる。それにより、発熱線463aおよび樹脂層の絶対温度が低い温度に維持された状態で、便座を急速に昇温させることができる。その結果、高価な耐熱絶縁材料でなく比較的安価な絶縁材料を用いることができる。
【0071】
また、本実施の形態においては、線状ヒータ460の熱を便座ケーシング410に効率よく伝達するために、線状ヒータ460をアルミ箔451,452で挟んでいる。ここで、本実施の形態の線状ヒータ460においては、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462を薄くできるので、線状ヒータ460の外径を細く(約φ0.2〜φ0.4)できる。この場合、アルミ箔451とアルミ箔452とを貼り合わせる際に、アルミ箔451とアルミ箔452との間の空気層を小さくすることができるとともに、アルミ箔451,452のしわを少なくすることができる。それにより、エナメル線463の局所高熱が抑制され、エナメル線463の断線および電気絶縁層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の損傷が防止される。その結果、便座装置110の長寿命化が可能になる。
【0072】
また、エナメル線463を細くできるので、便座ヒータ450の重量を低減でき、便座開閉トルクを小さくすることができる。それにより、便座開閉用の電動開閉ユニットを小型化でき、便座装置110の小型化が可能となる。
【0073】
(3−4)便座ヒータの動作
次に、便座ヒータ450の動作について説明する。便座ヒータ450のヒータ始端部460aとヒータ終端部460bとの間に一定の電圧が印加されると、内部の発熱線463aを電流が流れ、この発熱線463aが発熱する。このとき、発生した熱は、発熱線463aからエナメル層463bおよび金属箔451,453を通って上部便座ケーシング4
10の着座面410Uに伝導する。
【0074】
線状ヒータ460は、絶縁被覆層462が260℃程度の耐熱性を有するPFAにより形成されるため、絶縁被覆層462の厚みが例えば0.1〜0.15mmと薄くても、発熱線463aの100〜150℃への急速昇温時にもエナメル層463bが破壊されることが防止される。したがって、線状ヒータ460から着座面410Uへの熱伝導を迅速に進行させることにより、着座面410Uを急速に昇温させることができる。
【0075】
この場合、線状ヒータ460への通電開始から所定の最適温度に到達するのは5〜6秒と短時間であり、例えば、使用者がトイレットルームに入室して着座面410Uに着座するまでに要する7〜8秒より短時間である。したがって、使用者がトイレットルームに入室したことを入室検知センサ600により検知されると同時に線状ヒータ460に通電を開始しても、使用者が着座するまでには着座面410Uを十分に最適温度に到達させることができる。
【0076】
さらに、図6の着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1は、中央部の領域G2に比べて放熱性が高い。本実施の形態では、内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。したがって、使用者が着座面410Uに着座した瞬間に温度むらおよび冷感を感じることがない。
【0077】
一方、線状ヒータ460は、全長10m程度と長く、発熱線463aの急速昇温に伴って急速な膨張が発生し、結果として長さ方向に伸張する。また、通電が停止された場合は、発熱線463aの温度が低下し、収縮により元の長さに戻る。つまり、発熱線463aには熱膨張および熱収縮による熱応力歪が反復して形成される。
【0078】
線状ヒータ460と金属箔451,453との密着が弱く、または線状ヒータ460と着座面410Uとの間に隙間が形成された場合、熱応力歪全体がそれらのうちの最も動きやすい箇所に集中する。その結果、線状ヒータ460に比較的強い屈伸運動が発生し、その応力疲労の蓄積により発熱線463aの破断といった線状ヒータ460の破損が発生する。
【0079】
本実施の形態では、線状ヒータ460に熱応力緩衝部として複数の折曲部が形成されるので、これらの折曲部が全体の熱応力歪を細かく分散させるとともに、折曲部が熱応力歪を吸収する作用をも果たす。したがって、折曲部での熱応力は極めて小さく、結果として微小な屈伸の発生に留まる。その結果、発熱線463aの破断という事態には至らず、線状ヒータ460の長寿命化および耐久性が向上する。
【0080】
なお、比較的放熱の多い着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460の間隔を大きくし、折曲部の数を少なくてもよい。
【0081】
上記のように、線状ヒータ460の全長はほぼ10mと長く、かつ線状ヒータ460には折曲部が形成される。そのため、着座面410Uへの線状ヒータ460の装着時に、これらの線状ヒータ460の配列を維持および固定化する必要がある。線状ヒータ460を金属箔451,453で挟持した状態で線状ヒータ460を金属箔451,453に密着させることによりユニット化された便座ヒータ450が構成される。したがって、線状ヒータ460の配列を強固に維持した状態で線状ヒータ460を着座面410Uに接着することができる。
【0082】
また、金属箔451,453により線状ヒータ460が挟持されるように構成されるの
で、金属箔451,453により均等に熱分散が行われる。それにより、線状ヒータ460が高温化することを防止することができる。また、着座面410Uが均熱化されるとともに、便座ヒータ450の破損が防止される。
【0083】
(3−5)便座装置の通電シーケンス
便座ヒータ450の駆動の制御は、便座ヒータ450を駆動する電力を大きく3つに変化させることにより行う。
【0084】
例えば、便座部400を第1の温度勾配で昇温させる場合、図2のヒータ駆動部402は約1200Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(1200W駆動)。
【0085】
前述のように、便座ヒータ450の抵抗値は0.833Ω/mであり、全長10mである。したがって、便座ヒータ450の抵抗値は8.33Ωとなる。この抵抗値を有する便座ヒータ450に交流100Vが印加されると、(100V×100V)÷8.33Ω=1200Wの電力が発生する。すなわち、便座ヒータ450に交流電源の全周期に渡って電流を流すことにより、1200Wの電力が発生する。
【0086】
また、便座部400を第1の温度勾配よりもやや緩やかな第2の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部402は約600Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(600W駆動)。さらに、便座部400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部402は約50Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(低電力駆動)。なお、低電力駆動とは、1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、0W〜50Wの範囲内の電力)により便座ヒータ450を駆動することをいう。
【0087】
1200W駆動、600W駆動および低電力駆動の切替えは、制御部90の通電率切替回路が、ヒータ駆動部402から便座ヒータ450への通電を制御することにより行われる。
【0088】
ヒータ駆動部402には図示しない電源回路から交流電流が供給されている。そこで、ヒータ駆動部402は、通電率切替回路から与えられる通電制御信号に基づいて供給された交流電流を便座ヒータ450に流す。
【0089】
図8は、便座ヒータ450の駆動例および便座部400の表面温度の変化を示す図である。
【0090】
図8においては、便座部400の表面温度と時間との関係を示すグラフと、便座ヒータ450を駆動する際の通電率と時間との関係を示すグラフとが示されている。これら2つのグラフの横軸は共通の時間軸である。
【0091】
本実施の形態では、使用者が予め暖房機能をオンし、便座設定温度を高く(38℃)設定した場合を想定する。
【0092】
冬季等室温が待機温度である18℃よりも低い場合、制御部90は、便座部400の温度を18℃となるように温度調整する。このように、制御部90は、入室検知センサ600により使用者の入室が検知されるまでの待機期間D1の間、便座部400の表面温度が18℃で一定となるように、便座ヒータ450の低電力駆動を行う。
【0093】
制御部90は、時刻t1で入室検知センサ600により使用者の入室が検知された場合、突入電流低減期間D2の間、600W駆動を行う。なお、この600W駆動は、突入電流を十分に低減するために行う。この場合、便座部400の表面温度はやや緩やかな第2
の温度勾配で上昇される。
【0094】
その後、制御部90は、突入電流低減期間D2の経過後の時刻t2で、便座ヒータ450の1200W駆動を開始し、第1の昇温期間D3の間便座ヒータ450の1200W駆動を継続する。この場合、便座部400の表面温度は上述の第1の温度勾配で上昇される。
【0095】
ここで、便座部400の表面温度は急激に上昇される。便座ヒータ450の1200W駆動は、便座部400の表面温度が所定温度(例えば30℃)に達するまで行われる。もちろん、この所定温度は暖房温度として設定された温度であってもよいが、この所定温度は暖房温度にまで十分に上昇した温度でなく、それよりも低くても、使用者が着座した際に冷たいという不快感情を生じない最低限界の温度(限界温度)であればよい。この限界温度は、発明者らの実施した被験者実験により約29℃であることがわかっている。
【0096】
このように、第1の昇温期間D3においては、便座部400の表面温度が1200W駆動により迅速に所定温度まで上昇される。それにより、使用者は便座部400を冷たいと感じることなく便座部400に着座することができる。
【0097】
また、上述のように、便座部400の表面温度を急激に上昇させると、その温度変化にオーバーシュートが生じる。しかしながら、本実施の形態では、便座部400の表面温度が所定温度に達したときに便座ヒータ450の1200W駆動を600W駆動に切替える。したがって、便座部400の表面温度の変化がオーバーシュートした場合でも、その表面温度は便座設定温度を超えない。その結果、使用者が着座時に便座部400を熱いと感じることが防止される。
【0098】
続いて、制御部90は、第1の昇温期間D3の経過後の時刻t3で、便座ヒータ450の600W駆動を開始し、第2の昇温期間D4の間便座ヒータ450の600W駆動を継続する。この場合、便座部400の表面温度は上述の第2の温度勾配で上昇される。
【0099】
便座ヒータ450の600W駆動は、便座部400の表面温度が便座設定温度(38℃)に達するまで行われる。
【0100】
第2の温度勾配は第1の温度勾配よりも緩やかである。これにより、便座部400の表面温度の変化に大きなオーバーシュートが生じることが防止される。
【0101】
制御部90は、第2の昇温期間D4の経過後の時刻t4で、便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、第1の維持期間D5の間便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。それにより、便座部400の表面温度が便座設定温度で一定となる。
【0102】
制御部90は、時刻t5で着座センサ290により使用者の便座部400への着座が検知された場合、低電力駆動の通電率を低下させ、第1の着座期間D6の間便座部400の表面温度が便座設定温度を維持するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本実施の形態では、第1の着座期間D6は約10分に設定される。
【0103】
また、制御部90は、第1の着座期間D6の経過後の時刻t6で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の着座期間D7の間便座部400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)に低下するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本実施の形態では、第2の着座期間D7は約2分に設定される。
【0104】
制御部90は、第2の着座期間D7の経過後の時刻t7で、低電力駆動の通電率をさら
に低下させ、第2の維持期間D8の間便座部400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)で一定となるように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。以下の説明では、第2の維持期間D8において一定に維持される期間便座部400の表面温度、すなわち便座設定温度よりもやや低い温度を維持温度と称する。
【0105】
このように、本実施の形態では、使用者が便座部400に着座した後、制御部90が徐々に便座部400の表面温度を低下させる。それにより、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0106】
制御部90は、時刻t8で着座センサ290により使用者が便座部400から離れたことを検知すると、停止期間D9の間便座ヒータ450の駆動を停止する。それにより、便座部400の表面温度が低下する。
【0107】
制御部90は、便座部400の表面温度が18℃に達した時刻t9で、再び便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、便座部400の表面温度が18℃で一定となるように待機期間D10の間便座ヒータ450の低電力駆動を維持する。
【0108】
このように温度勾配が徐々に緩やかになる場合、便座部400の温度変化により生じるオーバーシュートを十分に小さくすることができる。
【0109】
本実施の形態では、使用者の便座部400への着座後、便座ヒータ450の駆動に用いる電力を調整することにより便座部400の表面温度を徐々に低下させているが、便座ヒータ450の駆動は使用者の便座部400への着座時に停止してもよい。この場合においても、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0110】
上記のように、本実施の形態では、時刻t8に使用者が便座部400から離れたことが検知されることにより便座ヒータ450の駆動が停止される旨を説明したが、便座ヒータ450の駆動の停止は、使用者が便座部400から離れたことが検知された時刻t8から一定時間(例えば1分間)経過後に行われてもよい。この場合、一度使用者が便座部400から離れた後に再度便意をもよおし、再度便座部400に着座する際にも、便座部400の表面温度が低下しない。これにより、使用者は快適に便座部400に着座することができる。
【0111】
1200W駆動時、600W駆動時および低電力駆動時における便座ヒータ450への通電状態を通電率切替回路の通電制御信号とともに説明する。
【0112】
以下の説明において、通電率とは交流電流の1周期に対して便座ヒータ450に交流電流を流す時間の割合をいう。
【0113】
図9(a)は1200W駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図9(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0114】
図9(b)に示すように、1200W駆動時における通電制御信号は常に論理「1」となる。ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図9(a)太線部)。それにより、全周期の期間に渡って交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約1200Wの電力で駆動される。
【0115】
図10(a)は600W駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図10(b
)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0116】
図10(b)に示すように、600W駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%に設定される。
【0117】
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図10(a)太線部)。それにより、半周期の期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約600Wの電力で駆動される。
【0118】
図11(a)は低電力駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図11(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0119】
図11(b)に示すように、低電力駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%よりも小さく(例えば数%程度)に設定される。
【0120】
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図11(a)太線部)。各周期においては、パルス幅に相当する期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が例えば約50Wの電力で駆動する。
【0121】
上記の他、便座部400の温度を低くする場合、または便座装置110の暖房機能をオフしている場合等には、通電率切替回路はヒータ駆動部402に通電制御信号を与えない(通電制御信号を論理「0」に設定する)。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動しない。
【0122】
ここで、一般に、電子機器に供給される電流が高調波成分を有する場合、ノイズが発生する。本実施の形態では、上述のように便座ヒータ450の1200W駆動または600W駆動を行う場合には、便座ヒータ450に供給される電流がサインカーブを描くように変化するので、電流の大きさが大きくなってもノイズの発生が十分に低減される。
【0123】
また、便座ヒータ450の低電力駆動を行う場合、便座ヒータ450に供給される電流は高調波成分を有するが、電流の大きさが1200W駆動時および600W駆動時に比べて非常に小さいので、ノイズの発生が十分に低減される。
【0124】
上記のように、本実施の形態では、便座ヒータ450を1200W、600Wおよび約50Wの電力で駆動するとしているが、他の大きさの電力で便座ヒータ450を駆動してもよい。
【0125】
例えば、便座ヒータ450に半周期の期間交流電流を流す場合には、交流電流を流すタイミングを2周期または3周期等所定の周期の間隔で設定する。それにより、1200W、600Wおよび約50Wとは異なる大きさの電力で、ノイズの発生を十分に防止しつつ便座ヒータ450を駆動することができる。
【0126】
なお、本実施の形態では、制御部90は通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450に電流を供給し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450への電流の
供給を停止しているが、通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450への電流の供給を停止し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450に電流を供給してもよい。
【0127】
なお、便座ヒータ450のオンおよびオフは時間により制御されるため、時間の計測がずれると便座部400の温度が所定値を超えたり、所定値に達しない。そこで、時間の計測がずれないように、制御部90では、2つの計測源にて便座部400のオンの時間を計測する。1つの計測源として、制御部90のプログラムの実効速度を規定する発振子により便座ヒータ450のオンの時間を計測し、もう1つの計測源して、交流電圧の周期を基準として便座ヒータ450のオンの時間を計測する。これらの計測値の少なくとも一方が規定時間を超過すると、次の通電パターンに移行する。
【0128】
特に、便座に1200W通電される時間が正確に計測されることにより過昇温が確実に防止される。これにより、さらに機器の安全性が向上する。ここでは、計測源を複数設けることにより計測の精度を向上させる方法について記載したが、便座ヒータ450がフル通電される時間を計測し、強制的にヒータへの通電を遮断もしくは制限する方法であっても、同様の効果を得ることができる。
【0129】
(3−6)お知らせLEDの動作
本体部200の上面には報知手段であるお知らせLED280が設けられている。お知らせLED280は便座ヒータ450への通電開始時に点滅を開始し、便座部400の温度が前述の限界温度(29℃)に達したときに点灯する。また、便座ヒータ450やサーミスタ401aの断線などの異常時にも使用者に対して報知を行う。
【0130】
お知らせLED280は限界温度よりも検出温度(サーミスタ401a測定温度)が低い場合は第1の報知形態である点滅を、検出温度が高い場合は第2の報知形態である点灯を行い、使用者に着座部410Tが冷たいと感じるか否かをお知らせLED280を見ることで判別することができ、便座部400に着座することができる。
【0131】
また、入室検出センサ600によるトイレットルームの人体の有無を検出する機能により、使用者がトイレットルームから退出してから一定時間(例えば1分間)経過すると、便座ヒータ450の通電を停止し、お知らせLED280は点滅、点灯の状態によらず消灯する。さらに、一定時間が経過しなくても便ふたが閉じると消灯する。
【0132】
また、便座ヒータ450の断線やサーミスタ401aの故障等が発生した場合は、お知らせLED280を第3の報知形態で報知することにより使用者に異常を報知する。この第3の報知形態である異常報知は、正常時の点滅(例えば0.3秒ON、0.3秒OFFなど)とは異なり、周期の早い点滅(例えば0.1秒ON、0.1秒OFFなど)を行うことで使用者に正常時とは異なった状態であることを報知する。
【0133】
お知らせLED280の報知が第1の報知形態から第2の報知形態に変わる時期は、前述の通り便座部400の着座面410Uの温度が限界温度29℃に達したときである。
【0134】
図6に示すように便座部400の着座面410Uの温度とサーミスタ401aの測定温度値とでは測定面が異なるため差異が生じる。サーミスタ401aの取り付け面としては着座面410Uと対面にあたる金属箔453面となり、さらに絶縁確保のためサーミスタ401aには絶縁被覆があるため瞬間的に昇温する便座では温度応答が遅くなり、正確に着座面410Uの温度を検知できない。したがって、サーミスタ401aの測定温度値で第2の報知形態であるお知らせLED280を点灯させる場合、便座部400の温度上昇値とサーミスタ401aの測定温度値との相関をあらかじめ測定し、温度応答の誤差を予
測する必要がある。
【0135】
図12に便座部400の着座面410Uの温度とサーミスタ401aの測定温度値の関係を示す。
【0136】
例えば、便座部400の着座面410Uの昇温に対し、サーミスタ401aの昇温が10%低下している場合、着座面410Uの温度が18℃から29℃まで11deg上昇する間に、サーミスタ401aの昇温は9.9degである。したがって、サーミスタ401aが27.9℃を検知した際にお知らせLED280を点滅から点灯に切替えればよい。
【0137】
また、通電開始前のサーミスタ401a検知温度から限界温度までの到達時間との相関をあらかじめ測定し、通電開始時の温度で報知変更までの時間を決定してもよい。例えば通電前の温度t0が18℃であれば29℃までの昇温到達時間t1が5.5秒、20℃であればt1は4.5秒といった具合に相関を出しておき、初期温度のみで報知を変更する。サーミスタ401aの検知の遅れが大きい場合には有効である。
【0138】
しかしながら、サーミスタ401aの測定温度値と便座部400の着座面410Uの温度の相関や通電開始時の温度と到達時間の相関は電圧、室温等の設置環境や便座ヒータ450の抵抗値のバラツキ等による個体バラツキをあらかじめ加味することは困難である。この場合、使用者に適切な時期に報知できなくなるため、使用環境や個体差の補正が必要となる。
【0139】
ここで補正が必要なバラツキについて説明する。便座部400の昇温性能は電圧の依存が大きい。通常一般家庭の電圧は100V±10%であり、消費電力の場合は電圧の2乗で変化するため、電圧が振れると約20%変動することになる。よって昇温性能も20%変動する。
【0140】
また、ヒータの抵抗値は量産製造上、5%程度のバラツキがある。電力量Wと電圧Vとヒータ線抵抗RはW=V×V/Rの関係であるため抵抗値Rが5%振れると昇温性能も5%変動する。
【0141】
また、設置場所の環境温度によっても昇温性能は変化する。前述の電圧や抵抗値より影響は少ないが環境温度によって便座部400からの放熱量が異なるため、昇温性能に影響する。
【0142】
以下、上記昇温性能の変化に対する補正の方法について説明する。
【0143】
第1の補正の方法は、通電直後のサーミスタ401aの測定温度値の変化により昇温速度を算出し、それにより到達時間を補正する方法である。この方法は昇温性能の変化を直接昇温速度に基づいて補正するため電圧、便座ヒータ400の抵抗値のバラツキを同時に補正できる。
【0144】
図13に昇温性能の差によるサーミスタの測定温度値と便座部の表面温度と報知時期の関係を示す。例えば1秒あたりの昇温値が10%高い場合は誤差も10%程度増加する。前述のように昇温値が10%高い場合、通常の温度誤差は1.1degであるので1.1deg×110%で1.21degの差が生じる。よってこの場合はサーミスタ401aが27.79℃を検知した際に報知を変更すればよい。
【0145】
また、固定時間を採用する場合もサーミスタ401aの昇温性能により固定時間を変更
させればよい。
【0146】
第2の補正の方法は、制御部90の電圧検知部900で電圧を検知し報知時期を補正する方法である。図14に電圧が変動した場合の便座部表面温度と報知時期の関係を示す。
【0147】
前述の通り、昇温性能のバラツキは使用環境の電圧に大きく依存する。この電圧を正確に把握することでより確実な補正が可能となる。前述と同様に電圧の変動の2乗に比例して昇温値が変動するため、誤差も電圧変動の2乗であるとして算出すればよい。この時、電圧は1200W通電中に検知するのが良い。これは通電時のヒータ容量により電圧が降下するためであり、通電中に検知することで正確な電圧がわかる。
【0148】
前述の時間固定を採用している場合はサーミスタの測定温度値による報知よりも誤差は大きくなる。この時、電圧による補正をすることでより正確に便座表面が冷感限界に達したことを報知することができる。
【0149】
昇温速度で補正する場合は電圧と便座ヒータ450の抵抗値のバラツキを補正可能であるが、短時間でのサーミスタ401aの測定温度値による昇温速度を把握する必要があり、サーミスタ401aのバラツキやサーミスタ401aの取り付けバラツキも考慮すると複雑な制御が必要であるが、電圧検知手段900を備える場合は部品数が多くなるもののバラツキの一番大きな要素となる電圧を正確に把握できるため制度が向上する。
【0150】
第3の補正の方法は、通電開始時の便座部400の着座面410Uの温度と、電圧検知部900で検地する電圧と、電流検知部901で検知する電流により、限界温度まで到達するのに必要な電力量を算出し、算出した規定の電力量を通電した時点で報知を行う方法である。
【0151】
例えば、通電開始時の便座部400の着座面410Uの測定温度値が18℃の場合、便座を18℃から29℃まで昇温させるのに5400W必要であると仮定する。検知した電圧と電流でワットを算出し、それを積算させて5400Wに達した時に報知を行う。この場合、設置場所の電圧の補正に加えて、電流値からヒータの抵抗値の把握が可能となり、ヒータの固体バラツキまでも加味した補正が可能となり、サーミスタ401aの昇温値による補正に比べ精度が上がる。
【0152】
第4の補正の方法は、本体部200に設置した室温検知センサ620により検出した室温に基づき、予め制御部90の記憶部に記憶させた室温ごとに設定した放熱量による補正値により、放置時期の補正を行うものである。図15に室温が変動した場合のサーミスタの測定温度値と便座部の表面温度および報知時期の関係を示す。
【0153】
例えば室温が15℃で便座部400を18℃に保温している場合、誤差が10%であればサーミスタ401a検知温度を27.9℃で報知を変更する。これが室温が5℃の場合には便座部400の放熱が大きく誤差が少なくなる。例えば誤差が8%であった場合には、誤差は0.88degであり28.12℃で報知を変更すればよい。
【0154】
以上の本実施の形態においては報知時期が限界温度である場合について説明したが、これは設定温度やそれに準ずる温度でも構わない。
【0155】
また、補正の方法は上記第1の補正の方法〜第4の補正の方法の複数を組み合わせると、より精度が向上する。
【0156】
本発明は報知時期の補正について述べたが、通常の温度制御、例えば設定温度への到達
温度を正確に把握する手段としても活用が可能である。つまり報知時期の変更ではなく通電変更時期として使用しても良い。通電制御は1200Wから600Wや約50Wの位相制御へと便座表面温度によって変更するが、その変更時期の補正にも使用できる。補正をすることで便座表面温度が38℃に到達したことを正確に把握できるため快適性が増す。
【0157】
前述の通り便座表面温度の昇温速度が速く、検知手段であるサーミスタ401aに応答遅れが生じるため、便座表面温度が設定温度に到達しても、検知手段は設定温度よりも低い温度を検知している。この誤差は、報知時期と同様に設置環境による電圧や室温および便座ヒータの抵抗値のバラツキによって変わってくる。よって報知時期と同様の補正することで到達温度を正確に把握することができ、より快適な便座とすることができる。
【0158】
特に設定温度では、応答遅れが予め想定していた遅れより大きい場合には、便座表面温度は設定温度より高い温度に到達してしまう。この場合は補正を行うことで快適性と安全性をより向上することができる。
【0159】
また、昇温性能が高い場合には通電時間を短くても性能が満足できるため、電圧が高い場合やヒータの抵抗値が低い場合には製品としての通電時間を抑えることができる。つまり補正を行うことで、ヒータの線温度が高温となる場合には通電を短く、ヒータの線温度が低温となる場合には通電が長くなるような制御を正確にできるため信頼性のバラツキが低減される。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の便座装置は、瞬間的に昇温させる便座昇温状態を適切に報知することができるので、瞬間的に昇温させる他の暖房装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置およびそれを備える衛生洗浄装置を示す外観斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における便座装置の構成を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態1における便座部の分解斜視図
【図4】(a)は便座部の便座ヒータの平面図、(b)は(a)の領域の拡大平面図
【図5】本発明の実施の形態1における便座部の平面図
【図6】図5の便座部のC73−C73断面図
【図7】上部便座ケーシングに取り付けられる便座ヒータの構造を示す断面図
【図8】便座ヒータの駆動および便座部の表面温度の変化を示すタイムチャート
【図9】(a)は1200W駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図、(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図10】(a)は600W駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図、(b)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図11】(a)は低電力駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図、(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図12】便座部の表面温度とサーミスタの測定温度値の関係を示すグラフ
【図13】昇温性能の差によるサーミスタの測定温度値と便座部の表面温度と報知時期の関係を示すグラフ
【図14】電圧が変動した場合の便座部表面温度と報知時期の関係を示すグラフ
【図15】室温が変動した場合のサーミスタの測定温度値と便座部の表面温度および報知時期の関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0162】
90 制御部(制御手段)
110 便座装置
280 お知らせLED(報知手段)
400 便座部(便座)
401a サーミスタ(便座温度検知手段)
410U 着座面
450 便座ヒータ(発熱体)
620 室温検知手段
900 電圧検知手段
901 電流検知手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置の分野においては、人体に不快感を与えないようにするために、例えば、洗浄に用いる洗浄水を適切な温度に調整する加熱装置や人体との接触部の温度を適切な温度に調整する便座装置等様々な機能を有する装置が案出されている。一方、近年地球環境に対する関心が高まっており、不必要にエネルギーが消費されることのない製品が求められている。衛生洗浄装置においては使用する時間は1日の内のごくわずかであるにも関わらず、使用する時間が想定できないことから、常時適温に保持するものが多かったが、非使用時には適温保持のための通電を停止する、もしくは適温から数度下げた温度で保持し、使用時のみ適温とする製品が増えてきている。この場合、タイマもしくは使用者がトイレを使用することを検出して、通電停止状態もしくは数度低い温度での保持状態から適温へ温度を上昇させることになる。この時、適温へ到達する前に使用者が衛生洗浄装置を使用した場合には、適温より低い温度状態となっているため、使用者は冷たく不快な思いをすることになる。
【0003】
特許文献1記載の衛生洗浄装置においては、これを防止するために設定温度に達したことを使用者に報知する手段を設け、使用者が設定温度まで加熱されていないと知らずに使用し不快に思うことが衛生洗浄装置である。
【特許文献1】特開2000−257136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような報知手段では、通常検知手段がある固定の温度に達した場合に報知を行っている。昇温スピードが緩やかで実際の温度をサーミスタ等の検知手段が遅れることなく追従できる場合は、正確に報知する事が可能である。しかしながら、通電を停止、もしくは適温から数度下げた温度で保持した状態から適温へ温度を上昇させる昇温スピードが速い場合には、サーミスタ等の検知手段の応答が遅れてしまい、検知温度と実際の温度との誤差が生じ、報知が適切なタイミングで出来ないという課題を有していた。この誤差は、便座の部品の固有の状態や、設置状況による電力条件、季節、室温などの環境条件によるものである。
【0005】
本発明の目的は、この誤差の生じる原因となる使用時の状態および使用環境を予め検知して報知時期を補正をすることで、実際の便座表面温度が設定した温度に到達した時点に、適切に報知を行うことにより使用者により快適な瞬間暖房便座装置を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、着座面を有し内部に発熱体を備えた便座と、便座の温度が所定温度に達したことを報知する報知手段と、便座を制御する制御手段とを有し、便座の便座温度を検知する便座温度検知手段と発熱体に印加する電圧を検知する電圧検知手段と発熱体に流れる電流を検知する電流検知手段と室温を検知する室温検知手段のうち少なくとも1つの検知手段とを備え、前記検知手段の少なくとも1つの検知データに基づいて報知手段の報知時期を補正するものである。
【0007】
これにより、便座個々のバラツキや経年変化あるいは使用環境の違いによる便座の温度
上昇への影響を、検知データと基準値との差に基づいて制御手段が報知手段の報知時期を補正することにより、報知時期における便座の温度を一定にすることが可能となり、快適な便座装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、便座表面温度を正確に把握し、使用者に着座が可能な状態を適切な時期に報知することにより、快適な便座装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、着座面を有し内部に発熱体を備えた便座と、前記便座の温度が所定温度に達したことを報知する報知手段と、前記便座を制御する制御手段とを有し、前記便座の便座温度を検知する便座温度検知手段と前記発熱体に印加する電圧を検知する電圧検知手段と前記発熱体に流れる電流を検知する電流検知手段と室温を検知する室温検知手段のうち少なくとも1つの検知手段とを備え、前記検知手段の少なくとも1つの検知データに基づいて前記報知手段の報知時期を補正するものである。
【0010】
これにより、便座個々のバラツキや経年変化あるいは便座使用時の便座自体の温度等の現状と基準値との差や、室温等の使用環境の違いによる便座の温度上昇への影響を、便座の使用時の現状および使用環境を検知手段で検知し、検知データと基準値との差に基づいて制御手段が報知手段の報知時期を補正することにより、報知時期における便座の温度を一定にすることが可能となり、快適な便座装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明は、特に第1の発明において、便座温度検知手段が検知した検知データによる便座の昇温速度に基づき、報知時期を補正するものである。
【0012】
これにより、発熱体の個々のバラツキによる抵抗値の違い、発熱体の経年変化による抵抗値の違い、発熱体に印加する電圧の違い、あるいは使用時の室温の違い等により発生する便座の昇温速度の違いを便座温度検知手段で検知した検知データにより制御手段が便座の昇温速度を算出し、算出した昇温速度と基準値との差に基づいて制御手段が報知手段の報知時期を補正することにより、報知時期における便座の温度を一定にすることが可能となり、快適な便座装置を提供することができる。
【0013】
第3の発明は、特に第1の発明において、電圧検知手段が検知した電圧に基づき、報知時期を補正するものである。
【0014】
これにより、発熱体の温度上昇に最も影響の大きい因子である電圧の検知データと基準値との差を正確に把握し、報知時期を補正することにより、最適な便座温度の時期にすることが可能となる。
【0015】
第4の発明は、特に第1の発明において、発熱体への通電開始時における、便座温度検知手段が検知した便座温度と、電圧検知手段が検知した電圧と、電流検知手段が検知した電流とに基づき、報知時期を補正するものである。
【0016】
これにより、便座装置を設置した環境条件の電圧だけでなく、便座の現状の個体条件である、電圧と電流の検知データから算出される発熱体の抵抗値と、通電開始時の便座の温度を把握することができ、これらの検知データに基づき報知手段の報知時期をより正確に補正する事が可能となる。
【0017】
第5の発明は、特に第1〜第4のいずれか1つの発明において、室温検知手段が検知した室温に基づき、報知時期を補正するものである。
【0018】
これにより、便座の温度上昇に影響を与える因子のうち、特に便座からの放熱に影響を与える環境条件である室温の検知データにより報知手段の報知時期を補正することにより、より的確な時期に報知が可能となる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
<1> 便座装置、衛生洗浄装置およびトイレ装置の外観
図1は本発明の第1の実施の形態に係る便座装置およびそれを備えた衛生洗浄装置を示す外観斜視図である。衛生洗浄装置はトイレットルーム内に設置される。
【0021】
衛生洗浄装置100は便器700の上面に取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。
【0022】
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、図示しない洗浄装置と洗浄水供給機構が設けられるとともに、後述の制御部90が内蔵される。
【0023】
図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610が示されている。この着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより、使用者が便座部400に着座しようとして接近した時点より便座部400より立ち上がるまで使用者の存在を検知する。
【0024】
また、本体部の上面にお知らせLED280が設けられている。このお知らせLED280は便座部400の昇温状態を報知する報知手段であり、便座部の昇温開始直後から点滅を開始し、便座部400に着座しても冷たくない温度以上に昇温した場合は連続して点灯し、使用者に便座部400の昇温の状態を報知する。また、便座ヒータ450やサーミスタ401aの断線などの異常時にも使用者に対して報知を行う。
【0025】
また、本体部の側面にはトイレットルームの室温を検知する室温検知センサ620が設置してある。
【0026】
さらに、図1では、本体部200の正面下部に設けられる洗浄装置の便器ノズル40が便器700の内側に突出している状態が示されている。この便器ノズル40は、上述の洗浄水供給機構に接続されている。
【0027】
衛生洗浄装置100の各構成要素のから、上記便器ノズルとノズル部および洗浄水供給機構などの洗浄装置を除いた要素が便座装置110を構成する。
【0028】
洗浄水供給機構は、図示しない水道配管に接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水を便器ノズル40に供給する。それにより、便器ノズル40から便器700の内面の広い範囲に洗浄水が噴出される(便器プレ洗浄)。または、便器ノズル40から便器700の内面の背面側に洗浄水が噴出される(便器後部洗浄)。詳細は後述する。
【0029】
また、洗浄水供給機構は、図示しない洗浄装置のお尻洗浄ノズルと、ビデ洗浄ノズルと、ノズル洗浄噴出口に切替弁を介して接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水を加熱手段で温水にし、各ノズルに供給する。それにより
、お尻洗浄ノズルと、ビデ洗浄ノズルから噴出した温水で使用者の局部を洗浄する。また、ノズル洗浄噴出口から洗浄水を噴出させてお尻洗浄ノズルとビデ洗浄ノズルをセルフクリーニングする。
【0030】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0031】
入室検知センサ600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0032】
本体部200の制御部90は、遠隔操作装置300、入室検知センサ600および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0033】
<2>便座装置
(3−1)便座装置の構成
図2は、便座装置110の構成を示す模式図である。上述のように、便座装置110は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および入室検知センサ600を備える。 図2に示すように、本体部200は、制御部90、温度測定部401、ヒータ駆動部402、お知らせLED280、着座センサ610および室温検知センサ620を含む。
【0034】
また、便座部400は便座ヒータ450およびサーミスタ401aを備える。
【0035】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータからなり、便座ヒータ450に印加する電圧を検知する電圧検知部900、便座ヒータ450に流れる電流を検知する電流検知部901、使用者の入室および便座部400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、検知したデータと基準値を比較する演算部、ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
【0036】
本体部200の温度測定部401は、本体部200に設置した室温検知センサ620と便座部400のサーミスタ401aとに接続されている。これにより、温度測定部401は、室温検知センサ620とサーミスタ401aから出力される信号に基づいて室温と便座部400の温度を測定する。以下、室温検知センサ620とサーミスタ401aを通じて温度測定部401により測定される室温と便座部400の温度を測定温度値と称する。
【0037】
また、本体部200のヒータ駆動部402は、便座部400の便座ヒータ450に接続されている。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動する。
【0038】
本実施の形態において、便座装置110は次のように動作する。初期設定時では、制御部90がヒータ駆動部402を制御することにより、便座部400が例えば約18℃となるように温度調整される。このときの温度を待機温度と称する。
【0039】
ここで、使用者が遠隔操作装置300の便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座設定温度が制御部90に送信される。制御部90は、遠隔操作装置300から受信した便座設定温度を記憶部に記憶する。
【0040】
使用者がトイレットルームに入室すると、入室検知センサ600が使用者の入室を検知
する。それにより、使用者の入室検知信号が制御部90に送信される。
【0041】
次に、通常の使用時の動作について説明する。制御部90の判定部は、入室検知センサ600からの入室検知信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知する。そこで、判定部は、便座部400の測定温度値、および記憶部に記憶された便座設定温度に基づいて便座ヒータ450の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0042】
通電率切替回路は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部402の動作を制御する。
【0043】
それにより、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され、便座部400の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
【0044】
お知らせLED280は、便座ヒータの駆動が開始されると点滅を開始し、便座部400の温度が着座しても冷たくない温度以上に昇温したら連続して点灯し、使用者に便座部400の昇温の状態を報知する。
【0045】
(3−2)便座部の構成
図3は、便座部400の分解斜視図である。図5(a)は、便座部400の便座ヒータ450の平面図、図5(b)は、図5(a)の領域C72の拡大図である。図5は、便座部400の平面図である。図6は、図5の便座部400のC73−C73断面図である。
【0046】
図3に示すように、便座部400は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の上部便座ケーシング410、略馬蹄形状の便座ヒータ450および合成樹脂により形成された略楕円形状の下部便座ケーシング420を備える。
【0047】
以下、着座した使用者から見て前方側を便座部400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座部400の後部とする。
【0048】
図4(a)および図5に示すように、便座ヒータ450は、前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成される。なお、便座ヒータ450は、略楕円形状を有してもよい。便座ヒータ450は、例えばアルミニウムからなる金属箔451,453および線状ヒータ460を含む。
【0049】
線状ヒータ460は、シート中央部SE3からシート一方端部SE1までの領域およびシート中央部SE3からシート他方端部SE2までの領域において上部便座ケーシング410の形状に合わせて蛇行形状に配設される。
【0050】
具体的には、線状ヒータ460は、左右6列程度のU字状部を有するように形成される。これらのU字状部は、着座した使用者の大腿部の方向にほぼ沿って並行に配置される。各U字状部における線状ヒータ460の間隔は5mm程度である。
【0051】
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
【0052】
さらに、図4(b)に示すように、蛇行形状の線状ヒータ460の経路中に熱応力緩衝部となる複数の折曲部CUが設けられる。
【0053】
図6に示すように、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1における線状ヒータ460の間隔ds1および内側の側辺に沿った領域G3における線状ヒータ4
60の間隔ds3は、上部便座ケーシング410の中央部の領域G2における線状ヒータ460の間隔ds2よりも小さく設定される。それにより、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1および内側の側辺に沿った領域G3では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。
【0054】
(3−3)便座ヒータの構造
図6は、上部便座ケーシング410に取り付けられる便座ヒータ450の構造を示す断面図である。
【0055】
図6に示すように、上部便座ケーシング410は、例えば厚さ1mmのアルミニウム板413により形成される。アルミニウム板413の上面には、アルマイト層412および表面化粧層411が形成される。表面化粧層411の上面が着座面410Uとなる。また、アルミニウム板413の下面には、塗装膜414が形成される。塗装膜414は、例えば膜厚40μmおよび150℃の耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜である。
【0056】
なお、アルミニウム板413の代わりに、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板および亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちいずれかまたは複数を用いてもよい。
【0057】
塗装膜414の下面に粘着層452aを介して例えばアルミニウムからなる金属箔451が貼着される。金属箔451の膜厚は、例えば50μmである。
【0058】
線状ヒータ460は、断面円形の発熱線463a、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462により構成される。断面円形の発熱線463aの外周面がエナメル層463bおよび絶縁被覆層462で順に被覆される。発熱線463aおよびエナメル層463bによりエナメル線463が構成される。
【0059】
発熱線463aは、例えば0.16〜0.25mmの直径を有し、銅または銅合金からなる。本実施の形態では、発熱線463aとして、直径0.176mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。抵抗値は0.833Ω/mである。
【0060】
エナメル層463bは、例えば180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、20μm以下であり、本実施の形態では12〜13μmである。このようなエナメル線463は、エナメル層463bの膜厚が極薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層463bの材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0061】
絶縁被覆層462は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフロロアルコキシ混合物(以下PFAと称する)等のフッ素樹脂からなる。絶縁被覆層462の厚みは、例えば0.1〜0.15mmである。PFAからなる絶縁被覆層462の形成は、押出し加工により行うことができる。この場合、絶縁被覆層462の厚みが0.05〜0.1mmと薄くても、雷サージにも耐える電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
【0062】
なお、絶縁被覆層462の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
【0063】
線状ヒータ460の外径は、例えば0.46〜0.50mmである。線状ヒータ460の電力密度は、例えば0.95W/cm2である。
【0064】
線状ヒータ460は、粘着層452bおよび例えばアルミニウムからなる金属箔453
で覆うように金属箔451に取り付けられる。金属箔453の膜厚は、例えば50μmである。
【0065】
このように、単一のエナメル線463上に絶縁被覆層462を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
【0066】
また、絶縁被覆層462は比較的薄くても十分な絶縁性が得られる。したがって、絶縁被覆層462の厚さを薄くすることができる。本実施の形態では、線状ヒータ460の樹脂層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の厚さは、0.12mm程度であり、極めて薄い。この場合、発熱線463aから金属箔451および便座ケーシング410への熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。
【0067】
ちなみに従来の便座装置においては、線状ヒータのシリコーンゴムまたは塩化ビニール等からなる被覆チューブの厚さは、本実施の形態の約10倍の1mm程度ある。このような被覆チューブの熱伝導速度は桁違いに遅く、便座の昇温速度を速くすることはできなかった。
【0068】
従来の便座装置において便座の昇温速度を無理やり速くするためにヒータ線に大きい電力を供給した場合、断熱状態でヒータ線の温度を高くした場合と同様に、被覆チューブが溶融および焼損する。そのため、このような方法による便座の昇温は実用できなかった。
【0069】
一方、本実施の形態のように耐熱性能に優れたエナメル線463をヒータ線として使用した場合、十分短時間で便座を昇温でき、かつ電気絶縁性および安全性を確保できる。したがって、本実施の形態の構造は、種々の便座装置に有効に実用することができる。
【0070】
また、本実施の形態の構造では、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462等からなる樹脂層を0.1〜0.4mm程度の薄い厚さで形成できる。それにより、発熱線463aおよび樹脂層の絶対温度が低い温度に維持された状態で、便座を急速に昇温させることができる。その結果、高価な耐熱絶縁材料でなく比較的安価な絶縁材料を用いることができる。
【0071】
また、本実施の形態においては、線状ヒータ460の熱を便座ケーシング410に効率よく伝達するために、線状ヒータ460をアルミ箔451,452で挟んでいる。ここで、本実施の形態の線状ヒータ460においては、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462を薄くできるので、線状ヒータ460の外径を細く(約φ0.2〜φ0.4)できる。この場合、アルミ箔451とアルミ箔452とを貼り合わせる際に、アルミ箔451とアルミ箔452との間の空気層を小さくすることができるとともに、アルミ箔451,452のしわを少なくすることができる。それにより、エナメル線463の局所高熱が抑制され、エナメル線463の断線および電気絶縁層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の損傷が防止される。その結果、便座装置110の長寿命化が可能になる。
【0072】
また、エナメル線463を細くできるので、便座ヒータ450の重量を低減でき、便座開閉トルクを小さくすることができる。それにより、便座開閉用の電動開閉ユニットを小型化でき、便座装置110の小型化が可能となる。
【0073】
(3−4)便座ヒータの動作
次に、便座ヒータ450の動作について説明する。便座ヒータ450のヒータ始端部460aとヒータ終端部460bとの間に一定の電圧が印加されると、内部の発熱線463aを電流が流れ、この発熱線463aが発熱する。このとき、発生した熱は、発熱線463aからエナメル層463bおよび金属箔451,453を通って上部便座ケーシング4
10の着座面410Uに伝導する。
【0074】
線状ヒータ460は、絶縁被覆層462が260℃程度の耐熱性を有するPFAにより形成されるため、絶縁被覆層462の厚みが例えば0.1〜0.15mmと薄くても、発熱線463aの100〜150℃への急速昇温時にもエナメル層463bが破壊されることが防止される。したがって、線状ヒータ460から着座面410Uへの熱伝導を迅速に進行させることにより、着座面410Uを急速に昇温させることができる。
【0075】
この場合、線状ヒータ460への通電開始から所定の最適温度に到達するのは5〜6秒と短時間であり、例えば、使用者がトイレットルームに入室して着座面410Uに着座するまでに要する7〜8秒より短時間である。したがって、使用者がトイレットルームに入室したことを入室検知センサ600により検知されると同時に線状ヒータ460に通電を開始しても、使用者が着座するまでには着座面410Uを十分に最適温度に到達させることができる。
【0076】
さらに、図6の着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1は、中央部の領域G2に比べて放熱性が高い。本実施の形態では、内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。したがって、使用者が着座面410Uに着座した瞬間に温度むらおよび冷感を感じることがない。
【0077】
一方、線状ヒータ460は、全長10m程度と長く、発熱線463aの急速昇温に伴って急速な膨張が発生し、結果として長さ方向に伸張する。また、通電が停止された場合は、発熱線463aの温度が低下し、収縮により元の長さに戻る。つまり、発熱線463aには熱膨張および熱収縮による熱応力歪が反復して形成される。
【0078】
線状ヒータ460と金属箔451,453との密着が弱く、または線状ヒータ460と着座面410Uとの間に隙間が形成された場合、熱応力歪全体がそれらのうちの最も動きやすい箇所に集中する。その結果、線状ヒータ460に比較的強い屈伸運動が発生し、その応力疲労の蓄積により発熱線463aの破断といった線状ヒータ460の破損が発生する。
【0079】
本実施の形態では、線状ヒータ460に熱応力緩衝部として複数の折曲部が形成されるので、これらの折曲部が全体の熱応力歪を細かく分散させるとともに、折曲部が熱応力歪を吸収する作用をも果たす。したがって、折曲部での熱応力は極めて小さく、結果として微小な屈伸の発生に留まる。その結果、発熱線463aの破断という事態には至らず、線状ヒータ460の長寿命化および耐久性が向上する。
【0080】
なお、比較的放熱の多い着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460の間隔を大きくし、折曲部の数を少なくてもよい。
【0081】
上記のように、線状ヒータ460の全長はほぼ10mと長く、かつ線状ヒータ460には折曲部が形成される。そのため、着座面410Uへの線状ヒータ460の装着時に、これらの線状ヒータ460の配列を維持および固定化する必要がある。線状ヒータ460を金属箔451,453で挟持した状態で線状ヒータ460を金属箔451,453に密着させることによりユニット化された便座ヒータ450が構成される。したがって、線状ヒータ460の配列を強固に維持した状態で線状ヒータ460を着座面410Uに接着することができる。
【0082】
また、金属箔451,453により線状ヒータ460が挟持されるように構成されるの
で、金属箔451,453により均等に熱分散が行われる。それにより、線状ヒータ460が高温化することを防止することができる。また、着座面410Uが均熱化されるとともに、便座ヒータ450の破損が防止される。
【0083】
(3−5)便座装置の通電シーケンス
便座ヒータ450の駆動の制御は、便座ヒータ450を駆動する電力を大きく3つに変化させることにより行う。
【0084】
例えば、便座部400を第1の温度勾配で昇温させる場合、図2のヒータ駆動部402は約1200Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(1200W駆動)。
【0085】
前述のように、便座ヒータ450の抵抗値は0.833Ω/mであり、全長10mである。したがって、便座ヒータ450の抵抗値は8.33Ωとなる。この抵抗値を有する便座ヒータ450に交流100Vが印加されると、(100V×100V)÷8.33Ω=1200Wの電力が発生する。すなわち、便座ヒータ450に交流電源の全周期に渡って電流を流すことにより、1200Wの電力が発生する。
【0086】
また、便座部400を第1の温度勾配よりもやや緩やかな第2の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部402は約600Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(600W駆動)。さらに、便座部400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部402は約50Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(低電力駆動)。なお、低電力駆動とは、1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、0W〜50Wの範囲内の電力)により便座ヒータ450を駆動することをいう。
【0087】
1200W駆動、600W駆動および低電力駆動の切替えは、制御部90の通電率切替回路が、ヒータ駆動部402から便座ヒータ450への通電を制御することにより行われる。
【0088】
ヒータ駆動部402には図示しない電源回路から交流電流が供給されている。そこで、ヒータ駆動部402は、通電率切替回路から与えられる通電制御信号に基づいて供給された交流電流を便座ヒータ450に流す。
【0089】
図8は、便座ヒータ450の駆動例および便座部400の表面温度の変化を示す図である。
【0090】
図8においては、便座部400の表面温度と時間との関係を示すグラフと、便座ヒータ450を駆動する際の通電率と時間との関係を示すグラフとが示されている。これら2つのグラフの横軸は共通の時間軸である。
【0091】
本実施の形態では、使用者が予め暖房機能をオンし、便座設定温度を高く(38℃)設定した場合を想定する。
【0092】
冬季等室温が待機温度である18℃よりも低い場合、制御部90は、便座部400の温度を18℃となるように温度調整する。このように、制御部90は、入室検知センサ600により使用者の入室が検知されるまでの待機期間D1の間、便座部400の表面温度が18℃で一定となるように、便座ヒータ450の低電力駆動を行う。
【0093】
制御部90は、時刻t1で入室検知センサ600により使用者の入室が検知された場合、突入電流低減期間D2の間、600W駆動を行う。なお、この600W駆動は、突入電流を十分に低減するために行う。この場合、便座部400の表面温度はやや緩やかな第2
の温度勾配で上昇される。
【0094】
その後、制御部90は、突入電流低減期間D2の経過後の時刻t2で、便座ヒータ450の1200W駆動を開始し、第1の昇温期間D3の間便座ヒータ450の1200W駆動を継続する。この場合、便座部400の表面温度は上述の第1の温度勾配で上昇される。
【0095】
ここで、便座部400の表面温度は急激に上昇される。便座ヒータ450の1200W駆動は、便座部400の表面温度が所定温度(例えば30℃)に達するまで行われる。もちろん、この所定温度は暖房温度として設定された温度であってもよいが、この所定温度は暖房温度にまで十分に上昇した温度でなく、それよりも低くても、使用者が着座した際に冷たいという不快感情を生じない最低限界の温度(限界温度)であればよい。この限界温度は、発明者らの実施した被験者実験により約29℃であることがわかっている。
【0096】
このように、第1の昇温期間D3においては、便座部400の表面温度が1200W駆動により迅速に所定温度まで上昇される。それにより、使用者は便座部400を冷たいと感じることなく便座部400に着座することができる。
【0097】
また、上述のように、便座部400の表面温度を急激に上昇させると、その温度変化にオーバーシュートが生じる。しかしながら、本実施の形態では、便座部400の表面温度が所定温度に達したときに便座ヒータ450の1200W駆動を600W駆動に切替える。したがって、便座部400の表面温度の変化がオーバーシュートした場合でも、その表面温度は便座設定温度を超えない。その結果、使用者が着座時に便座部400を熱いと感じることが防止される。
【0098】
続いて、制御部90は、第1の昇温期間D3の経過後の時刻t3で、便座ヒータ450の600W駆動を開始し、第2の昇温期間D4の間便座ヒータ450の600W駆動を継続する。この場合、便座部400の表面温度は上述の第2の温度勾配で上昇される。
【0099】
便座ヒータ450の600W駆動は、便座部400の表面温度が便座設定温度(38℃)に達するまで行われる。
【0100】
第2の温度勾配は第1の温度勾配よりも緩やかである。これにより、便座部400の表面温度の変化に大きなオーバーシュートが生じることが防止される。
【0101】
制御部90は、第2の昇温期間D4の経過後の時刻t4で、便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、第1の維持期間D5の間便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。それにより、便座部400の表面温度が便座設定温度で一定となる。
【0102】
制御部90は、時刻t5で着座センサ290により使用者の便座部400への着座が検知された場合、低電力駆動の通電率を低下させ、第1の着座期間D6の間便座部400の表面温度が便座設定温度を維持するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本実施の形態では、第1の着座期間D6は約10分に設定される。
【0103】
また、制御部90は、第1の着座期間D6の経過後の時刻t6で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の着座期間D7の間便座部400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)に低下するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本実施の形態では、第2の着座期間D7は約2分に設定される。
【0104】
制御部90は、第2の着座期間D7の経過後の時刻t7で、低電力駆動の通電率をさら
に低下させ、第2の維持期間D8の間便座部400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)で一定となるように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。以下の説明では、第2の維持期間D8において一定に維持される期間便座部400の表面温度、すなわち便座設定温度よりもやや低い温度を維持温度と称する。
【0105】
このように、本実施の形態では、使用者が便座部400に着座した後、制御部90が徐々に便座部400の表面温度を低下させる。それにより、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0106】
制御部90は、時刻t8で着座センサ290により使用者が便座部400から離れたことを検知すると、停止期間D9の間便座ヒータ450の駆動を停止する。それにより、便座部400の表面温度が低下する。
【0107】
制御部90は、便座部400の表面温度が18℃に達した時刻t9で、再び便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、便座部400の表面温度が18℃で一定となるように待機期間D10の間便座ヒータ450の低電力駆動を維持する。
【0108】
このように温度勾配が徐々に緩やかになる場合、便座部400の温度変化により生じるオーバーシュートを十分に小さくすることができる。
【0109】
本実施の形態では、使用者の便座部400への着座後、便座ヒータ450の駆動に用いる電力を調整することにより便座部400の表面温度を徐々に低下させているが、便座ヒータ450の駆動は使用者の便座部400への着座時に停止してもよい。この場合においても、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0110】
上記のように、本実施の形態では、時刻t8に使用者が便座部400から離れたことが検知されることにより便座ヒータ450の駆動が停止される旨を説明したが、便座ヒータ450の駆動の停止は、使用者が便座部400から離れたことが検知された時刻t8から一定時間(例えば1分間)経過後に行われてもよい。この場合、一度使用者が便座部400から離れた後に再度便意をもよおし、再度便座部400に着座する際にも、便座部400の表面温度が低下しない。これにより、使用者は快適に便座部400に着座することができる。
【0111】
1200W駆動時、600W駆動時および低電力駆動時における便座ヒータ450への通電状態を通電率切替回路の通電制御信号とともに説明する。
【0112】
以下の説明において、通電率とは交流電流の1周期に対して便座ヒータ450に交流電流を流す時間の割合をいう。
【0113】
図9(a)は1200W駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図9(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0114】
図9(b)に示すように、1200W駆動時における通電制御信号は常に論理「1」となる。ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図9(a)太線部)。それにより、全周期の期間に渡って交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約1200Wの電力で駆動される。
【0115】
図10(a)は600W駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図10(b
)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0116】
図10(b)に示すように、600W駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%に設定される。
【0117】
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図10(a)太線部)。それにより、半周期の期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約600Wの電力で駆動される。
【0118】
図11(a)は低電力駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図11(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
【0119】
図11(b)に示すように、低電力駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%よりも小さく(例えば数%程度)に設定される。
【0120】
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図11(a)太線部)。各周期においては、パルス幅に相当する期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が例えば約50Wの電力で駆動する。
【0121】
上記の他、便座部400の温度を低くする場合、または便座装置110の暖房機能をオフしている場合等には、通電率切替回路はヒータ駆動部402に通電制御信号を与えない(通電制御信号を論理「0」に設定する)。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動しない。
【0122】
ここで、一般に、電子機器に供給される電流が高調波成分を有する場合、ノイズが発生する。本実施の形態では、上述のように便座ヒータ450の1200W駆動または600W駆動を行う場合には、便座ヒータ450に供給される電流がサインカーブを描くように変化するので、電流の大きさが大きくなってもノイズの発生が十分に低減される。
【0123】
また、便座ヒータ450の低電力駆動を行う場合、便座ヒータ450に供給される電流は高調波成分を有するが、電流の大きさが1200W駆動時および600W駆動時に比べて非常に小さいので、ノイズの発生が十分に低減される。
【0124】
上記のように、本実施の形態では、便座ヒータ450を1200W、600Wおよび約50Wの電力で駆動するとしているが、他の大きさの電力で便座ヒータ450を駆動してもよい。
【0125】
例えば、便座ヒータ450に半周期の期間交流電流を流す場合には、交流電流を流すタイミングを2周期または3周期等所定の周期の間隔で設定する。それにより、1200W、600Wおよび約50Wとは異なる大きさの電力で、ノイズの発生を十分に防止しつつ便座ヒータ450を駆動することができる。
【0126】
なお、本実施の形態では、制御部90は通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450に電流を供給し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450への電流の
供給を停止しているが、通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450への電流の供給を停止し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450に電流を供給してもよい。
【0127】
なお、便座ヒータ450のオンおよびオフは時間により制御されるため、時間の計測がずれると便座部400の温度が所定値を超えたり、所定値に達しない。そこで、時間の計測がずれないように、制御部90では、2つの計測源にて便座部400のオンの時間を計測する。1つの計測源として、制御部90のプログラムの実効速度を規定する発振子により便座ヒータ450のオンの時間を計測し、もう1つの計測源して、交流電圧の周期を基準として便座ヒータ450のオンの時間を計測する。これらの計測値の少なくとも一方が規定時間を超過すると、次の通電パターンに移行する。
【0128】
特に、便座に1200W通電される時間が正確に計測されることにより過昇温が確実に防止される。これにより、さらに機器の安全性が向上する。ここでは、計測源を複数設けることにより計測の精度を向上させる方法について記載したが、便座ヒータ450がフル通電される時間を計測し、強制的にヒータへの通電を遮断もしくは制限する方法であっても、同様の効果を得ることができる。
【0129】
(3−6)お知らせLEDの動作
本体部200の上面には報知手段であるお知らせLED280が設けられている。お知らせLED280は便座ヒータ450への通電開始時に点滅を開始し、便座部400の温度が前述の限界温度(29℃)に達したときに点灯する。また、便座ヒータ450やサーミスタ401aの断線などの異常時にも使用者に対して報知を行う。
【0130】
お知らせLED280は限界温度よりも検出温度(サーミスタ401a測定温度)が低い場合は第1の報知形態である点滅を、検出温度が高い場合は第2の報知形態である点灯を行い、使用者に着座部410Tが冷たいと感じるか否かをお知らせLED280を見ることで判別することができ、便座部400に着座することができる。
【0131】
また、入室検出センサ600によるトイレットルームの人体の有無を検出する機能により、使用者がトイレットルームから退出してから一定時間(例えば1分間)経過すると、便座ヒータ450の通電を停止し、お知らせLED280は点滅、点灯の状態によらず消灯する。さらに、一定時間が経過しなくても便ふたが閉じると消灯する。
【0132】
また、便座ヒータ450の断線やサーミスタ401aの故障等が発生した場合は、お知らせLED280を第3の報知形態で報知することにより使用者に異常を報知する。この第3の報知形態である異常報知は、正常時の点滅(例えば0.3秒ON、0.3秒OFFなど)とは異なり、周期の早い点滅(例えば0.1秒ON、0.1秒OFFなど)を行うことで使用者に正常時とは異なった状態であることを報知する。
【0133】
お知らせLED280の報知が第1の報知形態から第2の報知形態に変わる時期は、前述の通り便座部400の着座面410Uの温度が限界温度29℃に達したときである。
【0134】
図6に示すように便座部400の着座面410Uの温度とサーミスタ401aの測定温度値とでは測定面が異なるため差異が生じる。サーミスタ401aの取り付け面としては着座面410Uと対面にあたる金属箔453面となり、さらに絶縁確保のためサーミスタ401aには絶縁被覆があるため瞬間的に昇温する便座では温度応答が遅くなり、正確に着座面410Uの温度を検知できない。したがって、サーミスタ401aの測定温度値で第2の報知形態であるお知らせLED280を点灯させる場合、便座部400の温度上昇値とサーミスタ401aの測定温度値との相関をあらかじめ測定し、温度応答の誤差を予
測する必要がある。
【0135】
図12に便座部400の着座面410Uの温度とサーミスタ401aの測定温度値の関係を示す。
【0136】
例えば、便座部400の着座面410Uの昇温に対し、サーミスタ401aの昇温が10%低下している場合、着座面410Uの温度が18℃から29℃まで11deg上昇する間に、サーミスタ401aの昇温は9.9degである。したがって、サーミスタ401aが27.9℃を検知した際にお知らせLED280を点滅から点灯に切替えればよい。
【0137】
また、通電開始前のサーミスタ401a検知温度から限界温度までの到達時間との相関をあらかじめ測定し、通電開始時の温度で報知変更までの時間を決定してもよい。例えば通電前の温度t0が18℃であれば29℃までの昇温到達時間t1が5.5秒、20℃であればt1は4.5秒といった具合に相関を出しておき、初期温度のみで報知を変更する。サーミスタ401aの検知の遅れが大きい場合には有効である。
【0138】
しかしながら、サーミスタ401aの測定温度値と便座部400の着座面410Uの温度の相関や通電開始時の温度と到達時間の相関は電圧、室温等の設置環境や便座ヒータ450の抵抗値のバラツキ等による個体バラツキをあらかじめ加味することは困難である。この場合、使用者に適切な時期に報知できなくなるため、使用環境や個体差の補正が必要となる。
【0139】
ここで補正が必要なバラツキについて説明する。便座部400の昇温性能は電圧の依存が大きい。通常一般家庭の電圧は100V±10%であり、消費電力の場合は電圧の2乗で変化するため、電圧が振れると約20%変動することになる。よって昇温性能も20%変動する。
【0140】
また、ヒータの抵抗値は量産製造上、5%程度のバラツキがある。電力量Wと電圧Vとヒータ線抵抗RはW=V×V/Rの関係であるため抵抗値Rが5%振れると昇温性能も5%変動する。
【0141】
また、設置場所の環境温度によっても昇温性能は変化する。前述の電圧や抵抗値より影響は少ないが環境温度によって便座部400からの放熱量が異なるため、昇温性能に影響する。
【0142】
以下、上記昇温性能の変化に対する補正の方法について説明する。
【0143】
第1の補正の方法は、通電直後のサーミスタ401aの測定温度値の変化により昇温速度を算出し、それにより到達時間を補正する方法である。この方法は昇温性能の変化を直接昇温速度に基づいて補正するため電圧、便座ヒータ400の抵抗値のバラツキを同時に補正できる。
【0144】
図13に昇温性能の差によるサーミスタの測定温度値と便座部の表面温度と報知時期の関係を示す。例えば1秒あたりの昇温値が10%高い場合は誤差も10%程度増加する。前述のように昇温値が10%高い場合、通常の温度誤差は1.1degであるので1.1deg×110%で1.21degの差が生じる。よってこの場合はサーミスタ401aが27.79℃を検知した際に報知を変更すればよい。
【0145】
また、固定時間を採用する場合もサーミスタ401aの昇温性能により固定時間を変更
させればよい。
【0146】
第2の補正の方法は、制御部90の電圧検知部900で電圧を検知し報知時期を補正する方法である。図14に電圧が変動した場合の便座部表面温度と報知時期の関係を示す。
【0147】
前述の通り、昇温性能のバラツキは使用環境の電圧に大きく依存する。この電圧を正確に把握することでより確実な補正が可能となる。前述と同様に電圧の変動の2乗に比例して昇温値が変動するため、誤差も電圧変動の2乗であるとして算出すればよい。この時、電圧は1200W通電中に検知するのが良い。これは通電時のヒータ容量により電圧が降下するためであり、通電中に検知することで正確な電圧がわかる。
【0148】
前述の時間固定を採用している場合はサーミスタの測定温度値による報知よりも誤差は大きくなる。この時、電圧による補正をすることでより正確に便座表面が冷感限界に達したことを報知することができる。
【0149】
昇温速度で補正する場合は電圧と便座ヒータ450の抵抗値のバラツキを補正可能であるが、短時間でのサーミスタ401aの測定温度値による昇温速度を把握する必要があり、サーミスタ401aのバラツキやサーミスタ401aの取り付けバラツキも考慮すると複雑な制御が必要であるが、電圧検知手段900を備える場合は部品数が多くなるもののバラツキの一番大きな要素となる電圧を正確に把握できるため制度が向上する。
【0150】
第3の補正の方法は、通電開始時の便座部400の着座面410Uの温度と、電圧検知部900で検地する電圧と、電流検知部901で検知する電流により、限界温度まで到達するのに必要な電力量を算出し、算出した規定の電力量を通電した時点で報知を行う方法である。
【0151】
例えば、通電開始時の便座部400の着座面410Uの測定温度値が18℃の場合、便座を18℃から29℃まで昇温させるのに5400W必要であると仮定する。検知した電圧と電流でワットを算出し、それを積算させて5400Wに達した時に報知を行う。この場合、設置場所の電圧の補正に加えて、電流値からヒータの抵抗値の把握が可能となり、ヒータの固体バラツキまでも加味した補正が可能となり、サーミスタ401aの昇温値による補正に比べ精度が上がる。
【0152】
第4の補正の方法は、本体部200に設置した室温検知センサ620により検出した室温に基づき、予め制御部90の記憶部に記憶させた室温ごとに設定した放熱量による補正値により、放置時期の補正を行うものである。図15に室温が変動した場合のサーミスタの測定温度値と便座部の表面温度および報知時期の関係を示す。
【0153】
例えば室温が15℃で便座部400を18℃に保温している場合、誤差が10%であればサーミスタ401a検知温度を27.9℃で報知を変更する。これが室温が5℃の場合には便座部400の放熱が大きく誤差が少なくなる。例えば誤差が8%であった場合には、誤差は0.88degであり28.12℃で報知を変更すればよい。
【0154】
以上の本実施の形態においては報知時期が限界温度である場合について説明したが、これは設定温度やそれに準ずる温度でも構わない。
【0155】
また、補正の方法は上記第1の補正の方法〜第4の補正の方法の複数を組み合わせると、より精度が向上する。
【0156】
本発明は報知時期の補正について述べたが、通常の温度制御、例えば設定温度への到達
温度を正確に把握する手段としても活用が可能である。つまり報知時期の変更ではなく通電変更時期として使用しても良い。通電制御は1200Wから600Wや約50Wの位相制御へと便座表面温度によって変更するが、その変更時期の補正にも使用できる。補正をすることで便座表面温度が38℃に到達したことを正確に把握できるため快適性が増す。
【0157】
前述の通り便座表面温度の昇温速度が速く、検知手段であるサーミスタ401aに応答遅れが生じるため、便座表面温度が設定温度に到達しても、検知手段は設定温度よりも低い温度を検知している。この誤差は、報知時期と同様に設置環境による電圧や室温および便座ヒータの抵抗値のバラツキによって変わってくる。よって報知時期と同様の補正することで到達温度を正確に把握することができ、より快適な便座とすることができる。
【0158】
特に設定温度では、応答遅れが予め想定していた遅れより大きい場合には、便座表面温度は設定温度より高い温度に到達してしまう。この場合は補正を行うことで快適性と安全性をより向上することができる。
【0159】
また、昇温性能が高い場合には通電時間を短くても性能が満足できるため、電圧が高い場合やヒータの抵抗値が低い場合には製品としての通電時間を抑えることができる。つまり補正を行うことで、ヒータの線温度が高温となる場合には通電を短く、ヒータの線温度が低温となる場合には通電が長くなるような制御を正確にできるため信頼性のバラツキが低減される。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の便座装置は、瞬間的に昇温させる便座昇温状態を適切に報知することができるので、瞬間的に昇温させる他の暖房装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置およびそれを備える衛生洗浄装置を示す外観斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における便座装置の構成を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態1における便座部の分解斜視図
【図4】(a)は便座部の便座ヒータの平面図、(b)は(a)の領域の拡大平面図
【図5】本発明の実施の形態1における便座部の平面図
【図6】図5の便座部のC73−C73断面図
【図7】上部便座ケーシングに取り付けられる便座ヒータの構造を示す断面図
【図8】便座ヒータの駆動および便座部の表面温度の変化を示すタイムチャート
【図9】(a)は1200W駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図、(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図10】(a)は600W駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図、(b)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図11】(a)は低電力駆動時に便座ヒータを流れる電流の波形図、(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部に与えられる通電制御信号の波形図
【図12】便座部の表面温度とサーミスタの測定温度値の関係を示すグラフ
【図13】昇温性能の差によるサーミスタの測定温度値と便座部の表面温度と報知時期の関係を示すグラフ
【図14】電圧が変動した場合の便座部表面温度と報知時期の関係を示すグラフ
【図15】室温が変動した場合のサーミスタの測定温度値と便座部の表面温度および報知時期の関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0162】
90 制御部(制御手段)
110 便座装置
280 お知らせLED(報知手段)
400 便座部(便座)
401a サーミスタ(便座温度検知手段)
410U 着座面
450 便座ヒータ(発熱体)
620 室温検知手段
900 電圧検知手段
901 電流検知手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座面を有し内部に発熱体を備えた便座と、前記便座の温度が所定温度に達したことを報知する報知手段と、前記便座を制御する制御手段とを有し、前記便座の便座温度を検知する便座温度検知手段と発熱体に印加する電圧を検知する電圧検知手段と発熱体に流れる電流を検知する電流検知手段と室温を検知する室温検知手段のうち少なくとも1つの検知手段とを備え、前記検知手段の少なくとも1つの検知データに基づいて前記報知手段の報知時期を補正する便座装置。
【請求項2】
便座温度検知手段が検知した検知データによる便座の昇温速度に基づき、報知時期を補正する請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
電圧検知手段が検知した電圧に基づき、報知時期を補正する請求項1に記載の便座装置。
【請求項4】
発熱体への通電開始時における、便座温度検知手段が検知した便座温度と、電圧検知手段が検知した電圧と、電流検知手段が検知した電流とに基づき、報知時期を補正する請求項1に記載の便座装置。
【請求項5】
室温検知手段が検知した室温に基づき、報知時期を補正する請求項1から4のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項1】
着座面を有し内部に発熱体を備えた便座と、前記便座の温度が所定温度に達したことを報知する報知手段と、前記便座を制御する制御手段とを有し、前記便座の便座温度を検知する便座温度検知手段と発熱体に印加する電圧を検知する電圧検知手段と発熱体に流れる電流を検知する電流検知手段と室温を検知する室温検知手段のうち少なくとも1つの検知手段とを備え、前記検知手段の少なくとも1つの検知データに基づいて前記報知手段の報知時期を補正する便座装置。
【請求項2】
便座温度検知手段が検知した検知データによる便座の昇温速度に基づき、報知時期を補正する請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
電圧検知手段が検知した電圧に基づき、報知時期を補正する請求項1に記載の便座装置。
【請求項4】
発熱体への通電開始時における、便座温度検知手段が検知した便座温度と、電圧検知手段が検知した電圧と、電流検知手段が検知した電流とに基づき、報知時期を補正する請求項1に記載の便座装置。
【請求項5】
室温検知手段が検知した室温に基づき、報知時期を補正する請求項1から4のいずれか1項に記載の便座装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−136478(P2009−136478A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315622(P2007−315622)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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