説明

便座装置

【課題】便座装置と便器の上面に隙間をあけて容易に清掃することができる使い勝手のよい便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便器700上に固定する支持部710と、支持部710と本体部200を摺動可能に結合する摺動結合部800を備え、摺動結合部800は支持部710に設けた摺動ガイド801と本体部200に設けた係合片831、832を備え、摺動ガイド801に設けた傾斜部803により、本体部200を前方に移動すると本体部200の前部が持ち上がるように傾動する構成としたものである。これによって、便座装置110の本体部200を前方に移動するだけの操作で、便座装置110の本体部200下面と便器700上面との間に隙間が開くこととなり、通常は隠蔽されている本体下面と便器上面を清掃することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便座装置の清掃を目的とした移動手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座装置は、便器に固定した支持板の両側部に、前部に上方に開口する開口部を有し、後方部が前方部より下方に傾斜する長溝を設け、便座装置の底面に設置した固定板にはスライドピンを設け、スライドピンを前記の開口部より長溝に挿入嵌合し、長溝内を便器の前後方向にスライド可能とするとともに、長溝の任意の位置で回動可能とし、かつ前記開口部よりスライドピンを着脱することにより、便座装置を着脱自在としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図11(a)は、特許文献1に記載された従来の便座装置を便器の前方に移動した状態を示し、(b)は便座装置を回動させて状態を示すものである。図11(a)、(b)に示すように、便器1上面に設置した便座装置2の底面には固定板3が取り付けてあり、固定板3の両サイドの先端部にはスライドピン4が設置してある。便器1の上面に固定した支持板5の両側面には前後方向に長溝6が設けてあり、長溝6の前端は上方に開口した開口部7が設けた構成となっている。
【特許文献1】特開平10−23995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、便座装置の下面およびそれに対応する便器の上面を清掃するために、便座装置を固定した便器上面を開放しようとすると、便座装置と便座装置の後方に配置したロータンクとの干渉を回避するため、便座装置を前方に移動させた後、便座装置を回動させて便器上面を開放することとなるので、移動操作は前方向の摺動と回動の2段階が必要であり操作に手間がかかるとともに、特に重量の重たい便座装置を回動するためには相当の力を要するとともに、回動して起立させた状態の便座装置は不安定となり安全性の面でも課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、便座装置を容易に移動させることにより、便座装置と便器の上面に隙間をあけて、便座装置下面と便器の上面を容易に清掃することができる使い勝手のよい便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、便器上に固定する支持部と、本体部と、支持部と本体部を摺動可能に結合する摺動結合部を備え、摺動結合部は支持部に設けた摺動ガイドと摺動ガイドと係合する係合片を前記本体部に備え、摺動ガイドは傾斜部を有し、本体部を前方に移動すると、本体部の前部が持ち上がるように傾動する構成としたものである。
【0007】
これによって、便座装置の本体を前方に移動するだけの操作で、本体の前部が上方に持ち上がることにより、便座装置の本体下面と便器上面との間に隙間が開くこととなり、この隙間から通常は隠蔽されて清掃ができない本体下面と便器上面を清掃することが可能となり、簡単な操作で清掃ができる使い勝手のよい便座装置であるとともに、便座装置の前部が持ち上がるのみの移動であるため安定した安全性の高い便座装置となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の便座装置は、隠蔽部分の清掃がしやすく、かつ安全性の高い便座装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、便器上に載置して固定する支持部と、少なくとも便座と便蓋を回動自在に枢支した本体部と、前記支持部と本体部を摺動可能に結合する摺動結合部を備え、前記摺動結合部は前記支持部に前後方向に向けて設けた摺動ガイドと前記摺動ガイドと摺動自在に係合する係合片を前記本体部に備え、前記摺動ガイドは少なくとも一部に前方に向かってに上方に傾斜する傾斜部を有し、前記本体部を前方に移動すると、前記本体部の少なくとも前部が持ち上がるように傾動することを特徴とするとすることにより、便座装置の本体を前方に移動するだけのシンプルかつあまり力を要しない操作で、本体の前部が上方に持ち上がることにより、便座装置の本体下面と便器上面との間に隙間が開くこととなり、この隙間から通常は隠蔽されて清掃ができない本体下面と便器上面を清掃することが可能となり、簡単な操作で隠蔽部が清掃ができる使い勝手のよい便座装置であるとともに、便座装置の前部が持ち上がるのみの移動であるため、安定した安全性の高い便座装置を提供することができる。
【0010】
第2の発明は、特に、第1の発明の便座装置において、摺動ガイドは左右に間隔を開けて2本設け、係合片は前後の異なる位置に各2個を備えた構成のとすることにより、便座装置の前後の移動は2本の摺動ガイドで摺動されることにより安定して移動させることができるとともに、前後2個の係合片が摺動ガイドに係合することにより本体が前後方向に不用意に傾くことが防止でき安全性を向上することができる。
【0011】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の便座装置において、本体部は、係合片が摺動ガイドの後端部に位置する定置位置と、係合片が摺動ガイドの前端部に位置する上昇位置との間を摺動可能とし、前記定置状態において前記本体部の移動を規制する移動規制手段を設けたことにより、便座装置を通常使用する定置位置で本体部の移動を規制することができるので、通常の使用時に便座装置が不用意に移動して、使用者が負傷したり不快を感じることがない。
【0012】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の便座装置において、本体部を前後に移動する駆動部と、駆動部を制御する制御部と、制御部を操作する操作部を備えたことにより、本体の移動は使用者が操作手段を操作することにより行われることとなり、移動に要する力が不要となり力の弱い子供や高齢者でも容易に本体を移動して隠蔽部を清掃することが可能となり、より使い勝手のよい前座装置を提供することができる。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
<1>衛生洗浄装置およびそれを備えるトイレ装置の外観
図1は本発明の実施形態1に係る衛生洗浄装置およびそれを備えるトイレ装置を示す外観斜視図である。トイレ装置1000はトイレットルーム内に設置される。
【0015】
トイレ装置1000において、便器700には衛生洗浄装置100が取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。衛生洗浄装置100の各構成要素のうち洗浄水供給機構(図示せず)とノズル部40を除いた要素が便座装置110を構成する。
【0016】
本体部200には、便座部400および蓋部500が便座便蓋回動機構(図示せず)を
介して電動で開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、図示しない洗浄水供給機構、制御部、乾燥ユニット等が内蔵される。
【0017】
図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ610が示されている。この着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部400上に使用者が存在することを検知する。
【0018】
また、洗浄水供給機構は、ノズル部40に接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水をノズル部40に供給する。それにより、ノズル部40から使用者の局部に洗浄水が噴出される。
【0019】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0020】
入室検知センサ600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0021】
本体部200の制御部は、遠隔操作装置300、入室検知センサ600および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0022】
<2> 遠隔操作装置の構成
図2は、図1の遠隔操作装置300の正面図である。遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の下部にコントローラ蓋部302が開閉自在に設けられた構造を有する。 図2(a)に示すように、コントローラ蓋部302が閉じられた状態で、コントローラ本体部301の上部には乾燥スイッチ320、強さ調整スイッチ322、323および位置調整スイッチ325、326が設けられ、コントローラ蓋部302には停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313が設けられている。また、コントローラ本体部301の上部便座開閉スイッチ441と便蓋開閉スイッチ442が設けられている。
【0023】
使用者により、上記各スイッチが操作される。これにより、遠隔操作装置300から図1の本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。本体部200の制御部は、受信した信号に基づいて本体部200および便座部400の各構成部の動作を制御する。
【0024】
例えば、便座開閉スイッチ441および便蓋開閉スイッチ442を操作することにより、便座部400および蓋部500を開閉することができ、男子小用で使用する場合等は、便座開閉スイッチを操作することにより便座部400を起立させることができる。
【0025】
使用者がおしりスイッチ312またはビデスイッチ313を操作することにより、ノズル部40から使用者の局部に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ311を操作することにより、ノズル部40から使用者の局部への洗浄水の噴出が停止される。
【0026】
使用者が乾燥スイッチ320を操作することにより、使用者の局部に乾燥ユニット(図示せず)から温風が噴出される。また、使用者が強さ調整スイッチ322、323を操作することにより、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力等が調整される。
【0027】
さらに、使用者が位置調整スイッチ325、326を操作することにより、おしりノズル(図示せず)またはビデノズル(図示せず)の位置が調整される。それにより、使用者の局部への洗浄水の噴出位置が調整される。
【0028】
図2(b)に、コントローラ蓋部302が開かれた状態の遠隔操作装置300の正面図が示されている。図2(b)に示すように、コントローラ蓋部302により覆われるコントローラ本体部301の下部には、上述の停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313に加えて、自動開閉スイッチ331、水温調整スイッチ332、便座温度調整スイッチ333、便座リフトアップスイッチ334が設けられている。
【0029】
これらのスイッチが操作される場合にも、遠隔操作装置300から本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。これにより、本体部200の制御部90は、受信した信号に基づいて本体部200および便座部400の各構成部の動作を制御する。
【0030】
自動開閉スイッチ331はつまみにより構成されており、使用者が自動開閉スイッチ331のつまみを操作することにより、蓋部500の開閉動作が設定される。すなわち、自動開閉スイッチ331のつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて蓋部500が開閉される。また、自動開閉スイッチ331の設定にかかわらず便蓋開閉スイッチ442により任意に便蓋の開閉が可能である。
【0031】
使用者が水温調整スイッチ332を操作することにより、ノズル部20から使用者の局部に噴出される洗浄水の温度が調整される。使用者が便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座部400の温度が調整される。
【0032】
便座リフトアップスイッチ334を操作すると、便座部300と蓋部500がともに開放状態となるとともに、他の操作ができなくなり、便座部のリフトアップ動作に伴う安全性を確保する。
【0033】
<3>第1の摺動結合部の構成
図3は便器700に衛生洗浄装置100を設置する設置過程の状態の分解斜視図示し、図4は設置過程の状態の摺動結合部の斜視図を示し、図5は摺動結合部の上昇位置における結合状態の斜視図を示し、図6は摺動結合部の定置位置における結合状態の斜視図を示すものである。
【0034】
図3に示すように、摺動結合部800は便器700にボルトおよびナットを介して固定した支持部710と本体部200の底板210にそれぞれの構成要素が配設してあり、それらの構成要素を係合することにより、摺動結合部800の機能を発揮するものである。なお、本実施の形態においては衛生洗浄装置100の本体部200側を後方とし、便座部側400を前方として記述する。
【0035】
支持部710は樹脂材料で形成した平面形状が略コ字型で、その両側面には側方に開放面を備えた溝状の摺動ガイド801がそれぞれ設けてある。摺動ガイド801は、後部は略水平の平坦部802であり前部は上方に傾斜した傾斜部803を備えており、平坦部802と傾斜部803は曲線で滑らかに接続されている。また摺動ガイド801の後端は閉塞しており、前端は上方に開放した開口部804を備えている。
【0036】
支持部710の内方には連結片805が支持部710と一体で形成してあり、連結片805の略中央には略U字形状の貫通孔806が設けてある。貫通孔806に挿脱自在の連結ピン807が左右に移動可能な操作杆808に支持されており、支持部710の後面に
臨む操作杆808の後端部809を左右に移動させることにより、連結ピン807を貫通孔806に挿脱する構成となっている。
【0037】
本体部200の底板210の略中央部には支持部710を抱囲し、上方に凹陥した凹陥部830が一体に形成されている。凹陥部830は後方が開放で、その両側面には後係合片831と前係合片832が間隔を開けて設けてある。後係合片831は略半円柱状で凹陥部830の後端に配設してあり、前係合片832は略円柱状で後係合片831と略水平位置に配設してある。
【0038】
凹陥部830の天面部には後端が解放の連結溝833が形成されている。連結溝833の前端部に対応する位置には連結受具834が凹陥部830の上面に設置してある。連結受具834は下方が開放の略門型の形状でその下部は連結溝833より下方に突出しており、突出した部分に横方向に貫通した貫通孔835が設けてある。貫通孔335は前記連結ピン807が挿通可能な寸法となっている。
【0039】
衛生洗浄装置100を便器700に設置するときは、本体部200の後部を支持部701の前部配置し、後係合片831および前係合片832を摺動ガイド801の開口部404から挿入しながら本体部200を後方に押し込む。図5は設置過程の摺動結合部800の結合状態を示すものであり、この状態では本体部200の前部は上方に持ち上がった状態となっている。
【0040】
図6は本体部を後方に完全に押し込んだ状態の摺動結合部800の結合状態を示すものであり、この状態では本体部200の底面は略水平となり便器700の上面に密接する。
【0041】
本体部200を後方に押し込む過程で、図5および図6に示すように、操作杆808の後端部809を矢印Aの方向に移動し連結ピン807を開放状態とし、本体部200を最後部に押し込んだ状態で連結ピン807を矢印Bの方向に戻すことにより、連結ピン807は連結片805の貫通孔806と連結受具834の貫通孔835と挿入され、連結片と805と連結受具834連結され摺動結合部800の移動が規制される。これによって本体部200は便器700の所定位置に固定することができる。
【0042】
図7は摺動ガイド801と後係合片831および前係合片832との各状態を示す模式図であり、図7(a)は本体部200を最後部の定置位置まで押し込み固定されている状態を示し、図7(b)は本体部を前方に移動した状態であるが後係合片831および前係合片832がともに平坦部802上にあり、本体部は水平状態で前方に位置する。図7(c)は本体部を前方の上昇位置に移動した状態であり、後係合片831は平坦部802上にあり、前係合片832は傾斜部803上に位置するため、本体部200は持ち上がった状態となる。
【0043】
<4>第1の摺動結合部の動作、作用
図8(a)は本体部200が定置位置にある状態の衛生洗浄装置100の側面図を示し、図8(b)は本体部200が上昇位置にある状態の衛生洗浄装置100の側面図を示すものである。
【0044】
本体部200が図8(a)に示す定置位置にある状態で、操作手段である便座リフトアップスイッチ334を操作すると、遠隔操作装置300から本体部200に内蔵する制御部に信号が送られ、制御部はまず便座便蓋回動機構を制御し、便座部400と蓋部500が回動して開放状態となる。また遠隔操作装置300他の操作ができなくなり、本体部200のリフトアップ動作に伴う安全性を確保する。
【0045】
操作杆808の後端部809を矢印Aの方向に移動して連結ピン807を開放することにより、本体部200の前方への移動が可能となる。本体部200を前方に移動を開始すると、後係合片831および前係合片832は摺動ガイド801の平坦部802を移動する。すなわち図7(a)の状態から図7(b)の状態まで移動することとなり、本体部200は前方へ平行移動する。それによって本体部200の後部と便器700の後部に設置されたロータンク720との間に間隙が形成される。
【0046】
本体部200をより前方に移動させると、後係合片831は引き続き摺動ガイド801の平坦部802を移動するが前係合片832は摺動ガイド801の傾斜部803を移動する。すなわちすなわち図7(b)の状態から図7(c)の状態まで移動することとなり、本体部200の前部が持ち上がるように傾動して上昇位置まで移動する。この状態で図8(b)に示すように本体部200の底板210と便器700の上面間に間隙が発生する。この時本体部200の後部の特に上端部は後方に傾くが、最初に本体部200が前方に移動したために、本体部200とロータンク720との干渉を防ぐことができる。
【0047】
この状態で、本体部200の底板210と便器700の上面の清掃を容易に行うことができる。
【0048】
清掃が終了した時点で本体部200を後方の定置位置まで移動し、操作杆808の後端部809を矢印Bの方向に戻すことにより、本体部は定置位置に固定される。
【0049】
この状態で、便座リフトアップスイッチ334を再度操作すると、便座部300と蓋部500がともに閉じた状態になり、衛生洗浄装置の操作が可能となる。
【0050】
以上のように、本実施の形態においては、本体部の移動は、移動規制手段を開放して本体部を前方に移動させるのみの動作で、自動的に本体部の前方が持ち上がり間隙が形成されるので、使用者は簡単な操作で便座装置の隠蔽部を容易に清掃することができ、トイレ装置を常に快適に使用することができる。
【0051】
しかも本体部の持ち上がりは本体部が前方に所定距離移動した状態でなされるため、蓋部とロータンクの干渉を防ぐことができるので、蓋部やロータンクに傷が付くことがない。
【0052】
なお、本実施の形態においては、前座リフトアップスイッチを操作することにより、便座部と蓋部がともに開放状態となるとともに、他の操作ができなる構成としたが、これに限るものではなく、便座部と蓋部の開放は手動で行ってもよく、操作できなくなる機能の範囲を限定しても良い。
【0053】
また、本実施の形態においては、摺動ガイドは溝状に、係合片は略円柱状および略半円柱状としたが、これらの形状に限るものではなく、例えば摺動ガイドは板状とし、係合片は略コ字状で摺動ガイドを抱持する構成等が考えられる。
【0054】
また、本実施の形態においては、摺動ガイドの平坦部は略水平としたが、これに限るもの下はなく、平坦部を傾斜部より緩やかな傾斜を備えた構成としても良い。平坦部に緩やかな傾斜を備えることにより、上昇位置において本体部の後部も僅かに上昇することとなり、本体部の後部と便器上面との間に間隙が生ずるため、後部まで清掃ができるという効果を奏する。
【0055】
(実施の形態2)
<1>第2の摺動結合部の構成
図9は実施の形態2における摺動結合部の分解状態の斜視図を示し、図10は摺動結合部の結合状態の斜視図を示すものである。
【0056】
本実施の形態が実施の形態1と異なる点は、実施の形態1においては、本体部200の前後方向の移動は人力により行っていたが、本実施の形態においては摺動結合部840が駆動部860を備え、使用者がスイッチを操作することにより自動的に本体部200を移動させることができることであり、図1に示すトイレ装置1000、衛生洗浄装置100、便座装置110、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400、蓋部500、入室検知センサ600等の外観は実施の形態1と同様である。
【0057】
図9および図10に示すように底板210の凹陥部850の上面に駆動部860が設けてある。駆動部860は駆動モータとしてDCモータ861が設置してあり、DCモータ861の回転軸にはウォーム862が直結されている。ウォーム862と咬合するウォーム歯車863により伝達される回転は複数の減速歯車864を介して最終的に雄ねじ状のねじ軸865に伝達される構成となっている。ねじ軸865の軸方向は摺動ガイド801と平行となる前後方向に配設されている。これらの駆動部860の各要素は駆動支持部866により支持されている。
【0058】
ねじ軸865には雌ねじ状のねじ受867が羅合されており、ねじ軸865が回転することによりねじ受867が前後方向に移動可能な構成となっている。ねじ受867には連結受具868が結合してあり、ねじ受867と連動して前後に移動する。連結受具868は下方が開放の略門型の形状でその下部には横方向に貫通した貫通孔869が形成されている。連結受具868は凹陥部850に設けた連結溝853より一部が下方に突出しており、突出した部分に前記貫通孔869が配置されている。
【0059】
また、凹陥部850の下面には連結受具868の移動範囲の前端および後端にそれぞれマイクロスイッチ(図示せず)が設置してあり、連結受具868が当接することによりマイクロスイッチが作動する構成となっている。
【0060】
なお、凹陥部850の両側面には実施の形態1と同様に後係合片831と前係合片832(図示せず)が間隔を開けて設けてある。後係合片831は略半円柱状で凹陥部850の後端に配設してあり、前係合片832は略円柱状で後係合片831と略水平位置に配設してある。
【0061】
図9に示す支持部710は実施の形態1と同じ構成であり、樹脂材料で形成した平面形状が略コ字型で、その両側面には側方に開放面を備えた溝状の摺動ガイド801がそれぞれ設けてある。摺動ガイド801は、後部は略水平の平坦部802であり前部は上方に傾斜した傾斜部803を備えており、平坦部802と傾斜部803は曲線で滑らかに接続されている。また摺動ガイド801の後端は閉塞しており、前端は上方に開放した開口部804を備えている。
【0062】
また、支持部710の内方には連結片805が一体で形成してあり、連結片805の略中央には略U字形状の貫通孔806が設けてある。貫通孔806に挿脱自在の連結ピン807が左右に移動可能な操作杆808に支持されており、支持部710の後面に臨む操作杆808の後端部809を左右に移動させることにより、連結ピン807を貫通孔806に挿脱する構成となっている。
【0063】
図10に示すように、本体部200と支持部710を結合させる場合は、実施の形態1と同様に、後係合片831および前係合片832を摺動ガイド801の開口部404から挿入しながら本体部200を後方に押し込む。操作杆808の後端部809を矢印Aの方
向に移動し連結ピン807を開放した状態で本体部200の連結受具867と支持部710の連結片805の位置が一致するまで押し込み、操作杆808の後端部809を矢印Bの方向に戻すことにより、連結ピン807は連結片805の貫通孔806と連結受具867の貫通孔868と挿入され、連結片と805と連結受具868に連結されることにより、摺動結合部800が結合される。
【0064】
摺動結合部800が結合された状態では、駆動部860にウォーム862とウォーム歯車863を採用したことにより、ウォームギアシステムの自己停止性により駆動部860はウォーム860に直結したDCモータ861が回転しない限り動くことがなく、本体部200に外力を加えて前後に移動させようとしてもが移動が規制される。すなわちウォーム862とウォーム歯車863が移動規制手段を兼ねた構成となっている。
【0065】
<2>第2の摺動結合部の動作、作用
本体部200が図8(a)に示す定置位置にある状態で、操作手段である便座リフトアップスイッチ334を操作すると、遠隔操作装置300から本体部200に内蔵する制御部に信号が送られ、制御部はまず便座便蓋回動機構の制御を開始し、便座部400と蓋部500がともに回動して開放状態となる。この動作は本体部の移動動作の負荷を軽減するために行うものであり、特に本体部200の前部を持ち上げる動作の負荷の軽減に効果がある。またこれと同時に遠隔操作装置300他の操作ができなくなり、本体部200のリフトアップ動作に伴う安全性を確保する。
【0066】
便座部400と蓋部500が開放状態になると、制御部は駆動部860の制御を開始し、DCモータ861が駆動を開始し、本体部200が前方への移動を開始する。
【0067】
実施の形態1と同様に本体部200は最初前方へ平行移動し、本体部200の後部と便器700の後部に設置されたロータンク720との間に間隙が形成される。引き続き本体部200は前方に移動しながら前部が持ち上がるように傾動し、図8(b)に示すように所定の上昇位置に到達すると連結受具868がマイクロスイッチに当接することによりDCモータ861が停止し前部が持ち上がった図8(b)状態を維持する。この状態で本体部200の底板210と便器700の上面間に間隙が発生し、本体部200の底板210と便器700の上面の清掃を容易に行うことができる。また、この時本体部200の後部の特に上端部は後方に傾くが、最初に本体部200が前方に移動したために、本体部200とロータンク720との干渉を防ぐことができる。
【0068】
清掃が終了した時点で便座リフトアップスイッチ334を再度操作すると、DCモータ861は逆回転を開始し、本体部200は前部を下ろしながら後方へ移動する、本体部200が所定の定置位置まで移動すると、連結受具868がマイクロスイッチに当接することによりDCモータ861が停止し、本体部は定置位置に固定されるとともに、便座部300と蓋部500がともに閉じた状態になり、衛生洗浄装置の他の操作が可能となる。
【0069】
以上のように、本実施の形態においては、本体部の移動は駆動装置によって自動的に行われるため、移動に要する力が不要となり力の弱い子供や高齢者でも容易に本体を移動して隠蔽部を清掃することが可能である。
【0070】
また、駆動部自体が移動規制手段を備えており、使用者が移動規制手段の操作を行う必要がなく、使い勝手が良いとともに高い安全性を確保することができる。
【0071】
なお、本実施の形態においては上記のように駆動部にウォームギアシステムの採用により、駆動部自体が移動規制手段を備えた構成としたが、これに限るものではなく、一般的な歯車の組み合わせやベルト駆動の構成が考えられる。この場合移動規制手段は別に設け
る必要があるが、駆動モータ等の駆動装置が故障した場合本体部を人力で移動し、定置位置に戻すことが可能となり、便座装置の使用に支障をきたさない利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかる便座装置は、隠蔽部の清掃を容易にすることが可能となるので、設置して使用する設備機器等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置およびそれを備えるトイレ装置の外観斜視図
【図2】(a)は図1の遠隔操作装置のコントローラ蓋部を閉じた状態の正面図(b)はコントローラ蓋部を開いた状態の正面図
【図3】衛生洗浄装置を便器に設置する設置過程の状態を示す分解斜視図
【図4】衛生洗浄装置を便器に設置する設置過程の摺動結合部の斜視図
【図5】摺動結合部の上昇位置における結合状態を示す斜視図
【図6】摺動結合部の定置位置における結合状態を示す斜視図
【図7】(a)定置位置にある摺動ガイドと後係合片および前係合片を示す模式図(b)前方に移動した状態の摺動ガイドと後係合片および前係合片を示す模式図(c)上昇位置にある摺動ガイドと後係合片および前係合片を示す模式図
【図8】(a)は定置位置にある衛生洗浄装置の側面図(b)上昇位置にある衛生洗浄装置の側面図
【図9】本発明の実施の形態2における摺動結合部の分解状態の斜視図
【図10】本発明の実施の形態2における摺動結合部の結合状態の斜視図
【図11】(a)は従来の便座装置の前方移動状態を示す側面図(b)回動状態を示す側面図
【符号の説明】
【0074】
110 便座装置
200 本体部
334 便座リフトアップスイッチ(操作部)
400 便座部(便座)
500 便蓋(蓋部)
700 便器
710 支持部
800、840 摺動結合部
801 摺動ガイド
803 傾斜部
805 連結片(移動規制手段)
807 連結ピン(移動規制手段)
808 操作杆(移動規制手段)
831 後係合片(係合片)
832 前係合片(係合片)
834 連結受具(移動規制手段)
860 駆動部
862 ウォーム(移動規制手段)
863 ウォーム歯車(移動規制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に載置して固定する支持部と、少なくとも便座と便蓋を回動自在に枢支した本体部と、前記支持部と本体部を摺動可能に結合する摺動結合部を備え、前記摺動結合部は前記支持部に前後方向に向けて設けた摺動ガイドと前記摺動ガイドと摺動自在に係合する係合片を前記本体部に備え、前記摺動ガイドは少なくとも一部に前方に向かってに上方に傾斜する傾斜部を有し、前記本体部を前方に移動すると、前記本体部の少なくとも前部が持ち上がるように傾動することを特徴とする便座装置。
【請求項2】
摺動ガイドは左右に間隔を開けて2本設け、係合片は前後の異なる位置に各2個を備えた構成の請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
本体部は、係合片が摺動ガイドの後端部に位置する定置位置と、係合片が摺動ガイドの前端部に位置する上昇位置との間を摺動可能とし、前記定置状態において前記本体部の移動を規制する移動規制手段を設けた請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
本体部を前後に移動する駆動部と、駆動部を制御する制御部と、制御部を操作する操作部を備えた請求項1〜3のいずれか1項に記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−39260(P2009−39260A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206552(P2007−206552)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】