説明

便座装置

【課題】温度検知手段の取付誤差を削減することにより、温度検知精度の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】便器700上に戴置した本体200と、便座400と、便座ヒータ450と、温度検知手段401aと、温度検知手段401aを拘持する拘持手段440と、制御手段90とを含み、便座400は上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420とで接合し、上部便座ケーシング410の裏面に便座ヒータ450を固着し、温度検知手段401aは金属箔453の裏面の線状ヒータ460と重合しない位置に配置し、拘持手段440は上部便座ケーシング410の内周縁410cと外周縁410aに両端部を支持し、温度検知手段401aを押止することにより、温度検知手段401aは取付状態を目視確認が可能となるため、取り付け誤差を削減することができ、温度検知手段の検知精度を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置の便座の温度検知手段の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座装置の便座は、金属製の上部体と樹脂製の下部体を上下に接合し、内部の空洞部に反射板を設け、反射板の上方にランプヒータを設置し、ランプヒータの輻射熱で上部体を加熱する構成とし、上部体の裏面には上部体の温度を検知するサーミスタが粘着剤を付帯した被覆体で仮止めされており、上部体と下部体を接合した状態においては、下部体に固定した弾力性を備えた挟持体により被覆体を挟持する構成とすることにより、サーミスタを上部体に密着させる構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図25は、特許文献1に記載された従来の便座装置における便座の断面図を示すものである。図に示すように、金属製の上部体1と樹脂性の下部体2は、それぞれの内周縁と外周縁を接合し、内部に空洞部3を形成している。空洞部3にはアルミ板で形成した反射板4を設置し、反射板4の上方にランプヒータ5が設置されている。
【0004】
上部体1の裏面にはサーミスタ6が裏面に粘着剤を付帯したアルミ箔からなる被覆体7で仮止めされている。また、反射板4上面には、弾力性を備えた金属の線材で形成した挟持体8がねじ9を介して固定されている。図に示すように、上部体1と下部体2を接合した状態では、挟持体8の先端部は被覆体7の周辺部を上部体1の裏面に押し付ける構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−222379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の便座装置は、組み立ての過程において、サーミスタは便座の一方の主要構成部材である上部体に仮止めされており、それに対し、挟持体は他方の主要構成部である材下部体に反射板を介して固定されており、最後の組み立て段階である上部体と下部体を接合することにより、挟持体と被覆体を組み付ける構成である。
【0007】
そのため、最終的な組み付け状態を目視で確認することができず、サーミスタ、挟持体、被覆体、反射板等の各部品の寸法誤差や取り付け誤差により生ずることが推察される挟持体と被覆体の組み付け状態のバラツキにより、温度検知性能の誤差が発生することが推察され、この点において改良の余地があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、温度感知手段であるサーミスタの取り付け誤差を抑制し、温度検知精度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、便器上に戴置した本体と、便座と、金属箔に線状ヒータを配設した便座ヒータと、温度検知手段と、温度検知手段を拘持する拘持手段と、制御手段とを含み、便座は着座面を有する上部便座ケーシングと下部便座ケーシングとを内周縁および外周縁で接合し、上部便座ケーシングの裏面に便座ヒータを固着し、温度検知手段は金属箔の裏面の線状ヒータと重合しない位置に配置し、拘持
手段は上部便座ケーシングの内周縁と外周縁に両端部を支持し、温度検知手段を金属箔に押止する構成としたものである。
【0010】
これにより、温度検知手段は上部便座ケーシングにのみ支持される拘持手段により拘持されるため、組み立て過程において、上部便座ケーシング単体の段階での取り付けおよび取り付け状態の目視確認が可能となり、取り付け誤差を削減することができ、結果的に温度検知手段の温度検知精度を向上することができるとともに、温度検知手段の取り付け状態の目視確認を容易に行うことができるため、生産性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の便座装置は、温度検知手段の温度検知精度の向上と、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置を便器上に設置した状態の外観を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1おける便座の外観を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態1おける便座の分解斜視図
【図4】図2に示す便座のAA断面図
【図5】本発明の実施の形態1におけるラミネートフィルムの構成の断面を示す模式図
【図6】本発明の実施の形態1におけるラミネートフィルムの第2の構成の断面を示す模式図
【図7】本発明の実施の形態1における便座装置に使用者が着座した状態を示す模式図
【図8】本発明の実施の形態1における着座状態における詳細を示す模式図
【図9】本発明の実施の形態1における第2の構成のラミネートフィルムを使用した便座の上面図
【図10】本発明の実施の形態1における第3の構成のラミネートフィルムを使用した便座の上面図
【図11】本発明の実施の形態1における第4の構成のラミネートフィルムを使用した便座の上面図
【図12】本発明の実施の形態1における便座のラミネートフィルムの取付方法を示す模式図
【図13】本発明の実施の形態1における別の構成の便座の断面図
【図14】本発明の実施の形態1における別の構成の便座の断面図
【図15】本発明の実施の形態1おける便座の上部便座ケーシングに便座ヒータを取り付けた状態を示す下面図
【図16】本発明の実施の形態1おける便座ヒータの平面図
【図17】図15に示B部の詳細を示す下面図
【図18】図17に示すEE断面図
【図19】図17に示すFF断面図
【図20】図15に示C部の詳細を示す下面図
【図21】図17に示すGG断面図
【図22】図17に示すHH断面図
【図23】本発明の実施の形態1における便座装置の構成を示す模式図
【図24】本発明の実施の形態1における便座ヒータの駆動例および便座の表面温度の変化を示すグラフ
【図25】従来の便座装置の便座の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、便器上に戴置した本体と、前記本体に回動自在に枢支した便座と、金属箔に線状ヒータを蛇行して配設した便座ヒータと、前記便座の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段を拘持する拘持手段と、前記便座ヒータを制御する制御手段とを含み、前記便座は、着座面を有する略環状の上部便座ケーシングと、略環状の下部便座ケーシングとを内周縁および外周縁で接合し、前記上部便座ケーシングの裏面に、前記便座ヒータを固着し、前記温度検知手段は、前記金属箔の裏面の前記線状ヒータと重合しない位置に配置し、前記拘持手段は、前記上部便座ケーシングの前記内周縁と前記外周縁に両端部を支持し、前記温度検知手段を前記金属箔に押止する構成としたものである。
【0014】
これにより、温度検知手段は上部便座ケーシングにのみ支持される拘持手段により拘持されるため、組み立て過程において、上部便座ケーシング単体の段階での取り付けおよび取り付け状態の目視確認が可能となるため、取り付け誤差を減少することができ、温度検知手段の検知精度を向上することができるとともに、目視確認を容易に行うことができることにより、生産性の向上を図ることもできる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記温度検知手段は第1の温度検知手段と第2の温度手段の2個を設け、前記第1の温度検知手段を拘持する第1の拘持手段は、前記第1の温度検知手段を押止するとともに、前記温度検知手段の近傍に配設した前記線状ヒータを前記金属箔を介して押止し、前記第2の温度検出手段を拘持する第2の拘持手段は、前記第2の温度検知手段のみを押止する構成としたものである。
【0016】
これにより、第1の温度検知手段に加えられる熱は、便座の着座面の熱に加え便座ヒータの熱を付加するとなり、短時間に便座の温度を急激に昇温する状態においては、温度検知手段の応答の遅れを補正することが可能となる。また、第2の温度検知手段は、便座の着座面のみの温度を検知するため、着座面の温度が安定した状態における温度を正確に検知することが可能となるため、目的により最適な温度検知手段を選択することにより、より正確な温度制御が可能となる。
【0017】
第3の発明は、特に、第2の発明において、前記制御手段は、前記便座の昇温動作持は、前記第1の温度検知手段の検知情報を使用し、前記便座の保温および待機動作時は、前記第2の温度検知手段の検知情報を使用するものである。
【0018】
これにより、便座の着座面の温度を急激に昇温する昇温動作時は、温度検知手段の応答の遅れを補正することができ、昇温時のオーバーシュート抑制することができるとともに、着座面の温度が安定する保温および待機動作時は、より安定した温度を得ることができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態における便座装置を便器上に設置した状態の外観の斜視図を示すものである。
【0021】
<1>便座装置の構成
図1に示すように、便座装置100は、本体200、便蓋300、便座400、リモートコントローラ500、人体検知センサ600により構成され、本体200、便蓋300、便座400は一体で構成され便器700の上面に設置される。
【0022】
本体200には、便蓋300および便座400が便座便蓋回動機構(図示せず)を介して電動で開閉可能に取り付けられている。図1に示すように便蓋300を開放した状態においては、便蓋300は便座装置100の最後部に位置するように起立する。また、便蓋300を閉成すると便座400の上面を隠蔽する。
【0023】
また、本体200には、洗浄水供給機構(図示せず)、熱交換器(図示せず)、洗浄ノズル201等からなる洗浄機構と、乾燥ユニット(図示せず)と、制御部90等が内蔵される。
【0024】
本体200の前面コーナー部には着座センサ202が設置してある。この着座センサ202は反射型の赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出することにより便座400上に使用者が存在することを検知する。また、本体200の側部には操作部203が設けてあり便座装置の主要な機能の操作が可能である。
【0025】
また、洗浄水供給機構と熱交換器は洗浄ノズル201に接続されており、水道配管から供給される洗浄水を熱交換器で加熱した温水を洗浄ノズルに供給し、洗浄ノズルから使用者の局部に向けて洗浄水を噴出し、使用者の局部を洗浄するものである。洗浄ノズル201はお尻を洗浄するお尻洗浄ノズル部と女性の局部を洗浄するビデノズル部を備えている。
【0026】
また、乾燥ユニットは洗浄水により濡れた局部に向けて温風を噴出し、局部を乾燥することができる。
【0027】
なお、洗浄機構と乾燥ユニットは便座装置の必須構成要素ではなく、これらの構成要素を具備しない便座装置でもよい。
【0028】
リモートコントローラ500には、複数の操作スイッチが設けられている。リモートコントローラ500は便座400上に着座した使用者が操作可能なトイレ室の壁面等の場所に取り付けられ、便座装置100の各機能の操作を行う。
【0029】
人体検知センサ600はトイレ室の壁面等に取り付けられる。人体検知センサ600は、反射型の赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出してトイレ室内に使用者が入室したことを検知する。
【0030】
本体200の制御部は、リモートコントローラ500、人体検知センサ600および着座センサ202から送信される信号に基づいて、便座装置100の各部の動作を制御する。
【0031】
本発明の便座装置100はトイレ室に使用者が存在しない場合は、便座ヒータへの通電を停止、もしくは20℃程度の低温に保温している。トイレ室に使用者が入室すると、人体検知センサ600からの信号を受け、便座ヒータに通電を行う。便座ヒータは800W程度の非常に高出力のヒータであり、使用者がトイレ室に入室してから便座に着座するまでの6秒から10秒程度の間に、便座着座面を40℃程度の適温に温める。便座が適温に達した後は、便座ヒータへの通電を50W程度の低ワットに下げ、適温を保つ。使用者がトイレ室内から出ると、便座ヒータへの通電を停止、もしくは20度程度の低温保温となる。つまり、トイレルームに使用者がいないときの電力を大幅に削減した便座装置である。
【0032】
<2>便座400の構成
図2は便座400の組立状態の斜視図を示し、図3は便座400の分解斜視図を示すも
のである。図4は図2のAA断面図を示すものである。
【0033】
図2および図3に示すように、便座400は、主としてアルミニウム合金により形成された略楕円形状の環状の上部便座ケーシング410と、上部便座ケーシング410の裏面に粘着した略馬蹄形状の便座ヒータ450と、主としてPP樹脂により形成された略楕円形状の環状の下部便座ケーシング420と、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420の一部を覆う外装部材として合成樹脂フィルムからなるラミネートフィルム430を主構成部品として構成されている。
【0034】
以下、着座した使用者から見て前方側を便座400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座400の後部とする。
【0035】
上部便座ケーシング410は、厚さ約1mmのアルミニウム合金板をプレス加工等により成形し、裏面には絶縁性を有するPETフィルム490が接着されている。
【0036】
上部便座ケーシング410は略楕円形の環状の着座面411の後部に起曲部412が連続して形成されている。着座面411は内周部より外周部が高い傾斜を有する上方に凸の曲面を成している。
【0037】
下部便座ケーシング420は主としてPP樹脂を使用した成型品であり、平面形状が上部便座ケーシング410と略同形状の本体部421と、本体部421の両側後方に斜め上方に突出した腕部422で構成されている。
【0038】
上部便座ケーシング410の絶縁処理を施した裏面には便座ヒータ450を粘着し、下部便座ケーシング420を結合した便座400は、図2に示すように後部に腕部422を備えており、腕部422を本体200の便座便蓋回動機構(図示せず)に結合することにより、回動自在に枢支されている。
【0039】
図4に示すように、上部便座ケーシング410の外周縁410aを折り曲げて形成した接合縁410bは、下部便座ケーシング420の外周縁420aに形成した爪420bに係止し、上部便座ケーシング410の内周縁410cを折り曲げて形成した接合縁410dは、下部便座ケーシング420の内周縁420cに形成した爪420dに係止することにより、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420が結合され、外周部には接合部400a、内周部には接合部400bがそれぞれ形成される。
【0040】
そして、環状の着座面411および、その後部の起曲部412を含む上部便座ケーシング410全体と、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420が結合される外周接合部400aおよび内周接合部400bが、外装部材として一体で形成されたラミネートフィルム430により完全に覆われている。
【0041】
<3>ラミネートフィルムの構成
図5はラミネートフィルム430の構成を断面図で表したものである。ラミネートフィルム430はフィルム基材としてPETを使用して3層構造で形成している。第1の層である接着層430aは、材質としてはアクリル系接着剤を用い、厚みが2μm〜30μmである。接着層430aに積層される第2の層であるフィルム基材430bは、材質としてPETを用い、厚みが100μm〜150μmである。第2の層のフィルム基材430bの上に積層される表面層430cは、材質としてはPETを用い、厚み20μm〜500μmである。
【0042】
接着剤層430aとフィルム基材430bは接着剤層430aの接着力で固定され、フ
ィルム基材430bと表面層430cは、熱を加えることによりそれぞれを軟化させ固着させている。
【0043】
ラミネートフィルム430は、第1の層である接着層430aにより上部便座ケーシング410へ接着され、第2の層であるフィルム基材430bは、意匠性を持たせる層であり、単色或いは複数色の印刷や様々な柄を施すことが可能である。第3の層である表面層430cは、フィルム基材430bへの傷つき防止やトイレで使用される洗剤により印刷部の劣化を防止のための保護層であるとともに、透明材料を用いることにより、意匠に深みを与えより一層意匠性を向上させることができる。
【0044】
これにより、上部便座ケーシング410の着座面411およびその後部の起曲部412は一体で形成されているラミネートフィルム430で覆われているために表面に化粧処理を施す必要がなく、また、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420の外周接合部400aおよび内周接合部400bもラミネートフィルム430で覆われるため、別途防水処理を施す必要がなくなり、上部便座ケーシング410の加工工程を削減することができるとともに、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420との組み立て工程も削減することができる。
【0045】
また、上部便座ケーシング410を主としてアルミニウム合金により形成することで、着座面411およびその後部の起曲部412の熱伝導性が向上することができ、裏面に絶縁処理を施した上部便座ケーシング410の裏面に粘着された便座ヒータ450の熱を、短時間のうちに着座面411およびその後部の起曲部412の温度を昇温させることが可能となる。
【0046】
<3−1>ラミネートフィルムの他の構成
ラミネートフィルム430はフィルム基材430bと表面層430cをPET樹脂フィルムで形成している為に、その表面は図5に示すようにフラットに成型出来ることは当然であるが、表面に凹凸ある形状に成型することが可能であり、表面に凹凸を形成することにより、便座400の着座機能を向上することができる。
【0047】
図6はラミネートフィルの別の構成である第2の構成の断面を示す模式図であり、ラミネートフィルム430の第3の層である表面層430cに凸部431と凹部432を成型した例である。この凹凸形状は、凸部431の高さは20μm〜50μmで幅は0.5mm〜1mmで、凹部432の幅は0.5mm〜1mmに成型したものである。凹凸形状は図9に示すように着座面411に上部便座ケーシング410の内周縁410cと略相似形状で環状に形成されており、凹部432は内外の凸部431により環囲される形状となっている。
【0048】
図7は凹凸形状を形成した着座面11に使用者が着座した状態の模式図を示し、図8は使用者の臀部とラミネートフィルム430の詳細な模式図を示すものである。
【0049】
図8に示すように、便座400に使用者が着座した場合、使用者の臀部がラミネートフィルム430の表面層430cの凸部431には当接するが、凹部432には当接しない。
【0050】
このようにラミネートフィルム430の表面に凹凸形状を成型することで、便座400と使用者の臀部との接触面積が減少することになり、使用者が便座400に着座した場合のベトツキ感を抑制することができ、快適性の向上が可能となり、特に汗を掻く夏季には高い効果を発揮することができる。
【0051】
また、上部便座ケーシング410の裏面に粘着固定された便座ヒータ450からの熱を、使用者の臀部へ吸収されることを抑制し、使用者の臀部への熱伝達を減少することが可能となり省エネルギー効果が向上するとともに、長時間の着座状態で懸念される低温火傷に対しても有効であり、安全性が向上する。
【0052】
特に、図9に示すように凹凸形状を環状に形成し、凹部432は内外の凸部431により環囲される形状にしたことにより、使用者が着座した場合、凹部432の空間は使用者の臀部により密閉状態となるため、内部の空気が外部に移動することがなく、熱の放出を抑制することができ省エネルギー効果を一層向上することができる。
【0053】
また、図10はラミネートフィルの別の構成である第3の構成を示す平面図であり、ラミネートフィルム430表面層430cの略全面に直径約0.5mmで深さ50μmの円形の凹部432を形成し他の部分を凸部431としたものである。
【0054】
この場合も、凹部432は凸部431によりそれぞれ独立して環囲されており、図9に示す凹凸形状の例と同様の作用、効果を得ることができ、特に凹部432が独立して環囲されていることにより、着座位置がずれた場合や、子供等の臀部の小さい使用者が着座した場合でも、確実に省エネルギー効果を発揮することができる。
【0055】
また、図11はラミネートフィルの別の構成である第4の構成を示す平面図であり、
図に示すように、ラミネートフィルム430表面層430cの略全面の前後方向に、凸部431の高さは20μm〜50μmで幅は0.5mm〜1mmで、凹部432の幅は0.5mm〜1mmの凹凸形状を成型したものである。
【0056】
この場合も、上記2つの凹凸形状の例と同様の作用、効果を得ることができ、凹凸形状を前後方向に略直線状に形成したことにより、使用者が着座中に着座位置がズレルことを低減することができるので、より快適に使用できるとともに、省エネルギー性と安全性をさらに向上することができる。
【0057】
<4>ラミネートフィルムの固定方法
ラミネートフィルムは主にPET樹脂フィルムで形成されており、熱を加えることで容易に伸縮変形しやすくなる。ラミネートフィルム430を便座400の形状に沿い密着固定する方法としては、成型装置(図示せず)の中に図12に示すように上部便座ケーシング410の着座面411およびその後部の起曲部412と、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420との外周接合部400aおよび内周接合部400bを完全に覆う大きさのフラットなラミネートフィルム430を接着層430aが下面となるように配置する。ラミネートフィルム430の下方に上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420が結合された状態の便座400を配置する。
【0058】
ラミネートフィルム430に熱を加え容易に伸縮変形する状態にし、ラミネートフィルム430に、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420が結合された状態の便座400を、接着層430aを下面としたラミネートフィルム430の下方よりラミネートフィルム430に押し当てる。
【0059】
これにより、ラミネートフィルム430は便座400の形状に沿い、伸び変形し、上部便座ケーシング410の着座面411およびその後部の起曲部412と、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420との外周接合部400aおよび内周接合部400bはラミネート430に完全に覆われる。この状態で、成形装置(図示せず)の内部を真空状態にすることで、便座400の形状に沿ったラミネートフィルム430は、便座400に密着固定する。
【0060】
ラミネートフィルム430の密着固定後、ラミネートシート430の外周部端部430dおよび内周部端部430eは不要な部分を切断して所定の形状に仕上げる。
【0061】
これにより、外装部材であるラミネートフィルム430単独で成型する手間が省けるとともに、ラミネートフィルム430は上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420に密着した外装部材となり、着座面411とその後部の起曲部412の化粧処理を行うことができるとともに、外周接合部400a及び内周接合部400bの防水処理を行うことができる。
【0062】
さらに、ラミネートフィルム430の接着剤層430aにより、ラミネートフィルム430の上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420への密着性は確実なものとなり、着座面411と起曲部412の熱伝達性能を確保することができる。
【0063】
なお、本実施例でのラミネートフィルムの熱の印加は、下部便座ケーシング420および、上部便座ケーシング410がラミネートフィルム430に接触した時に、主にPP樹脂で成型された下部便座ケーシング420の耐熱温度以下、且つ主にアルミニウム合金板により成型された上部便座ケーシング410の裏面に配置されている温度過昇防止装置である温度ヒューズ450Rに伝達する温度が温度ヒューズ450Rの動作温度以下に設定する必要がある。
【0064】
<4−1>ラミネートフィルムの別の固定方法
ラミネートフィルム430を密着固定した後に、ラミネートフィルム430の外周部端部430dおよび内周部端部430eを切断処理することが本実施の形態においては必須であるが、この処理をより容易に行い、かつ意匠性の高い外観を得ることができる別の方法を下記に記載する。
【0065】
図13および図14に示すように、便座400の外周接合部400aおよび内周接合部400bの下方にラミネートフィルム430の外周部端部430dおよび内周部端部430eを収容する溝状の凹状部を形成したものである。
【0066】
図13はラミネートフィルム430の厚み分を考慮して、下部便座ケーシング420の外周縁420aには段差部420e、内周縁420cには段差部420fがそれぞれ成型されており、上部便座ケーシングの接合縁410bおよび410dと段差部420eおよび420fにより外周接合部400a及び内周接合部400bに全周に亘り溝状の凹状部が形成される。
【0067】
熱を加えることで、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420の形状に沿い成型され密着固定されたラミネートフィルム430の外周部端部430dは、上部便座ケーシングの接合縁410aと下部便座ケーシングの段差部420eとで形成された凹上部の内部で切断処理し、ラミネートフィルム430の内周部端部430eは、上部便座ケーシングの接合縁410bと下部便座ケーシングの段差部420fとで形成された凹状部の内部で切断処理する。
【0068】
また、図14は別の方法で溝状の凹状部を形成するものであり、下部便座ケーシング420の外周縁420aにV字形状の溝部420gを、下部便座ケーシング420の内周縁420cにV字形状の溝部420hをそれぞれ成型されている。
【0069】
ラミネートフィルム430の外周部端部430dは、下部便座ケーシングの外周縁420aに成型された溝部420gの内部で切断処理し、ラミネートフィルム430の内周部
端部430eについては、下部便座ケーシングの内周縁420bに成型された溝部420hの内部で切断処理を行う。
【0070】
これにより図13、図14に示すいずれの場合においても、ラミネートフィル430の端部である外周端部430dおよび内周端部430eの切断部は凹状部の内部に収容されるため意匠性を向上させることができ、ラミネートフィルム430の端部である外周端部430dおよび内周端部430eが、下部便座ケーシング420の外周縁420aおよび内周縁420cより出っ張ることがなくなるために、使用者が便座400を清掃する際に、手を引っ掛けて、ラミネートフィルム430が下部便座ケーシング420からの剥がれや、破れ等を防ぐことができる。また、ラミネートフィルム430の上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420への密着性の向上が図れることができ、ラミネートフィルム430自体の耐久性、および便座400の防水性能の向上を図ることができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、上部便座ケーシング410はアルミニウム合金板を用いているが、銅合金板やステンレス合金板等の板材あるいはマグネシウム合金の成型品等の熱伝導の良い金属を使用してもよい。
【0072】
また、上部便座ケーシング410の裏面の絶縁性能を確保する手段としてPET樹脂フィルムを用いているが、PP樹脂フィルムあるいはポリエステル樹脂フィルムを貼り付けてもよいし、ポリエステル粉体塗装等の絶縁性を有する塗料を塗装してもよい。
【0073】
また、ラミネートフィルム430は接着層430aとフィルム基材430b及び表面層430cから成り、フィルム基材430bに意匠性を持たせているが、表面層430cに意匠性を持たせてもよく、フィルム基材430bと表面層430cを統合し1つの層としてもよい。また、接着層430aにはアクリル系接着剤を用いているが、ウレタン系接着剤を用いてもよい、接着剤の代わりに粘着剤を用いてもよい。
【0074】
また、本実施の形態においては便座の外装部材としては、シート状のラミネートフィルムを加熱することにより伸縮変形させて接着する構成としたが、これに限るものではなく、あらかじめ所定の形状に成型した樹脂成型品を上部便座ケーシングおよび下部便座ケーシングに接着剤または粘着剤を介して固定してもよい。また、ゴム等の弾性を有する材料で外装部材を成型し、上部便座ケーシングおよび下部便座ケーシングに被せ、外装部材の弾性を利用して固定する構成でも実施可能であり、この場合外装部材を容易に着脱することができるので、汚染や劣化した場合の交換や、意匠の変更等を容易に行うことができる。
【0075】
<5>便座ヒータの構成
図15は便座ヒータを上部便座ケーシングに貼着した状態の下面図を示し、図16は便座ヒータの平面図を示すものである。
【0076】
図15に示すように、上部便座ケーシング410の裏面のほぼ全面に便座ヒータ450が粘着固定されており、便座ヒータ450の後部表面には温度過昇防止装置として、サーモスタット450Qと、温度ヒューズ450Rが設置してある。また側部表面には、便座ヒータ450を便座400の着座面411の温度に基づいてフィードバック制御するための便座温度検知用の第1のサーミスタ401aおよび第2のサーミスタ401bは金属箔453の表面側に貼り付けてある。
【0077】
上部便座ケーシング410の外周部には安全性を確保するアース線480が接続してある。
【0078】
図16に示すように、便座ヒータ450は、前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成される。便座ヒータ450の基本構成は、アルミニウムからなる2枚の金属箔451、453の間に線状ヒータ460を蛇行形状に配設したものである。
【0079】
図16に示すように、線状ヒータ460は、金属箔の中央部SE3から金属箔一方端部SE1までの領域および金属箔の中央部SE3から金属箔の他方端部SE2までの領域において上部便座ケーシング410の形状に合わせて左右方向に蛇行する蛇行形状に配設される。線状ヒータ460は、蛇行形状の曲げ部が上部便座ケーシング410の外側の側辺および内側の側辺の近傍に位置するように配置される。
【0080】
具体的には、線状ヒータ460が便座ヒータ450の後部の一方側から金属箔451、453の一方端部SE1の近傍まで左右に蛇行しながら延びることにより第1系列L1の蛇行形状が形成される。また、線状ヒータ460が金属箔451、453の一方端部SE1の近傍から左右に蛇行しながら金属箔451、453の中央部SE3の近傍を経由して金属箔451、453の他方端部SE2の近傍まで延びることにより第2系列L2の蛇行形状が形成される。さらに、線状ヒータ460が金属箔451、453の他方端部SE2の近傍から金属箔451、453の中央部SE3の近傍を経由して便座ヒータ450の後部の一方側まで延びることにより第1系列L1の蛇行形状が形成される。
【0081】
図16に示すように第1系列L1の蛇行形状の線状ヒータ460と第2系列L2の蛇行形状の線状ヒータ460とはほぼ平行に配列される。第1系列L1および第2系列L2の蛇行形状の線状ヒータ460はヒータ始端部460aからヒータ終端部460bまで連続している。
【0082】
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、接続端子を介して便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
【0083】
本例では、線状ヒータ460は、便座ヒータ450の内側の側辺の近傍および外側の側辺の近傍に曲げ部が位置する蛇行形状を有する。それにより、曲げ部間の間隔が短い。したがって、熱膨張および熱収縮に起因する長さ変化が小さくなるので、たとえ線状ヒータ460が伸縮しても曲げ部で伸縮による歪が吸収および緩衝される。その結果、線状ヒータ460の熱膨張および熱収縮に起因するストレスが小さくなり、長期間の使用での破損を抑制することができる。
【0084】
また、線状ヒータ460の熱的伸縮が小さいので、金属箔451、453に対する密着性を長期間良好に維持することができる。それにより、便座ヒータ450の加温を効率的にかつ確実に行うことができる。
【0085】
また、曲げ部の長さおよび曲げ部間の間隔は、任意に調整することができる。それにより、便座ヒータ450の加熱分布を調整することができる。
【0086】
例えば、便座ヒータ450の外側および内側の側辺近傍の加熱密度が便座ヒータ450の中央部の加熱密度よりも高くなるように、曲げ部の長さおよび曲げ部間の間隔を調整する。それにより、便座ヒータ450の全領域において均等な暖房温度を維持することができる。
【0087】
また、第1系列L1の蛇行形状の線状ヒータ460での電流の向きが第2系列L2の蛇行形状の線状ヒータ460での電流の向きと逆になる。それにより、線状ヒータ460から発生する電磁波が互いに打ち消される。その結果、ノイズの発生が防止される。
【0088】
また、便座ヒータ450の後部には線状ヒータ460が高い密度で蛇行する検温部が形成され、検温部には温度過昇防止のためのバイメタルを用いた復帰型のサーモスタット450Qが設けられる。便座ヒータ450が想定外の異常温度になると、復帰型のサーモスタット450Qが開くことにより、一時的に通電が停止される。
【0089】
また、便座ヒータ450の後部には、サーモスタット450Qのバックアップ機能として温度シューズ450Rが設置してある。
【0090】
温度ヒューズ450Rは防水と絶縁のためにチューブで密閉して便座ヒータ450の後部に粘着テープで仮固定しておく。一方、ばね材で形成した温度ヒューズ固定具を便座400の下部便座ケーシング420に設けておき、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420を組み付けることにより、温度ヒューズ固定具の弾性で温度ヒューズ450Rを便座ヒータ450に密着し、温度を正確に検知することができる。
【0091】
便座ヒータ450が想定外の異常温度になると、復帰型のサーモスタット450Qが開くことにより、一時的に通電が停止される。また、復帰型のサーモスタット450Qが故障等を起こすことにより、便座ヒータ450が危険温度に達しようとすると、非復帰型の温度ヒューズ450Qが溶断することにより、電力の供給が完全に遮断される。
【0092】
<6>サーミスタの取り付け構造
図17は図15のB部の詳細を示したものである。図18は図17のEE断面図を示し、図19は図17のFF断面図を示したものである。
【0093】
上部便座ケーシング410の裏面には絶縁性を有するPETフィルム490が貼り付けてある。その上にアルミニウムからなる2枚の金属箔451、453の間に蛇行形状に配設された線状ヒータ460を挟んだ構成からなる便座450が粘着固定されている。
【0094】
そして、蛇行形状に配設された線状ヒータ460の間に線状ヒータ460に重合しない位置に、便座ヒータ450を便座400の着座面411の温度に基づいてフィードバック制御するための便座温度検知用の第1のサーミスタ401aが配置され、第1の拘持部材440を介して金属箔453の表面に押止されている。
【0095】
第1の拘持部材440は、0.2mm〜0.4mmのバネ性を有するステンレス板材で形成されており、図17、図18および図19に示すように、その両側部で第1のサーミスタ401aの両側に配設されている線状ヒータ460を金属箔453を介して押止するとともに、その中央部に形成した凹形状部440aで第1のサーミスタ401aの素子部を拘持し金属箔453に押止している。
【0096】
第1の拘持部材440の両端部には、下部便座ケーシング420との接合の為に挿入凸部440bが形成され、上部便座ケーシング410の外周部の接合縁410bに設けた挿入穴410eと内周部の接合縁410dに設けた挿入穴410eに挿入して固定されている。
【0097】
上記構成により、第1のサーミスタ401aと第1のサーミスタ401aの両側に配設された線状ヒータ460は、第1の拘持部材440により所定の位置に拘持固定され、しかも第1の拘持部材440はサーミスタ401aの素子部と線状ヒータ460を連架しているため、第1のサーミスタ401aに加えられる熱は、便座400の着座面411の熱に加えて線状便座ヒータ460の熱を付加することになり、短時間に着座面411の温度を急激に昇温する状態においては、第1のサーミスタ401aの応答の遅れを補正するこ
とが可能となる。
【0098】
図20は図15のC部の詳細を示したものである。図21は図20のGG断面を示し、図22は図20のHH断面を示したものである。
【0099】
蛇行形状に配設された線状ヒータ460の線状ヒータ460に重合しない位置に、便座ヒータ450を便座400の着座面411の温度に基づいてフィードバック制御するための便座温度検知用の第2のサーミスタ401bが配置され、第2の拘持部材440を介し金属箔453の表面に押止されている。
【0100】
第2の拘持部材440は、0.2mm〜0.4mmのバネ性を有するステンレス板材で形成されており、図20、図21および図22に示すように、第2のサーミスタ401bの両側に金属箔453を介し配設されている線状ヒータ460に接触干渉しない形状とし、第2の拘持部材440の中央部に形成した凹形状部441aで第2のサーミスタ401bの素子部を押止している。
【0101】
第2の拘持部材440の両端部には、下部便座ケーシング420との接合の為に挿入凸部441b形成され、上部便座ケーシング410の外周部の接合縁410bに設けた挿入穴410gと内周部の接合縁410dに設けた挿入穴410hに挿入して固定されている。
【0102】
上記構成により、第2のサーミスタ401bは、両側に配設された線状ヒータ460に接触干渉されにくい位置に、第2の拘持部材440により拘持固定されているため、第2のサーミスタ401bは、便座400の着座面411のみの温度を検知することとなり、着座面411の温度が安定した状態における温度を正確に検知することが可能となる。
【0103】
以上のように、本実施の形態におけるサーミスタの取り付け構造を採用することにより、便座温度検知用の第1のサーミスタ401aは第1の拘持部材440に、第2のサーミスタ401bは第2の拘持部材440に、それぞれ上部便座ケーシング410にのみに拘持されるため、組み立て過程において上部便座ケーシングの単体での取り付け及び、取り付け状態の目視確認が可能となるため、第1のサーミスタ401aおよび第2のサーミスタ401bの取り付け誤差を減少することができ、温度検知手段の検知精度を向上することができるとともに、目視確認を用意に行うことができることにより、生産性の向上も図ることもできる。
【0104】
また、第1のサーミスタ401aに加えられる熱は、便座400の着座面411の熱に加えて線状便座ヒータ460の熱を付加することになり、短時間に着座面411の温度を急激に昇温する状態においては、第1のサーミスタ401aの応答の遅れを補正することが可能となる。また、第2のサーミスタ401bは、便座400の着座面411のみの温度を検知するため、着座面411の温度が安定した状態における温度を正確に検知することが可能となるため、目的により、第1サーミスタ401aと第2のサーミスタ401bを選択することにより、より正確な温度制御が可能となる。
【0105】
尚、本実施の形態では便座温度検知用の第1のサーミスタ401aおよび第2のサーミスタ401bの拘持手段としてステンレス板材により形成した拘持部材を用いているが、第1のサーミスタ401aは、両側に金属箔453を介し配設されている線状ヒータ460に跨るように、熱伝導率の高いアルミニウムの金属箔で粘着固定し、この金属箔を介して第1の拘持部材440で押止してもよく、第1の拘持部材440は針金等の金属線材で成型したものを用いてもよい。また、第2のサーミスタ401bを押止する第2の拘持部材440は、第2の拘持部材440及び第2のサーミスタ401bが、両側に金属箔45
3を介し配設されている線状ヒータ460に接触干渉しない形状で、針金等の金属線材で成型したものを用いてもよい。
【0106】
<7>便座ヒータの駆動系の構成
図23は、便座ヒータ450の駆動系の構成を示す模式図である。図に示すように、本体200は、制御部90、温度測定部401、ヒータ駆動部402、便座温調ランプRA1および着座センサ610を含む。また、便座400は便座ヒータ450と第1のサーミスタ401aおよび第2のサーミスタ401bを備える。制御部は、マイクロコンピュータを主構成部品とし、使用者の入室および便座部400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部403、種々の情報を記憶する記憶部404、便座ヒータ450の使用経過状況を判定する状況検知部405ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替回路406等を含む。
【0107】
本体200の温度測定部401は、便座400の着座面411に設置した第1のサーミスタ401aおよび第2のサーミスタ401bに接続されている。これにより、温度測定部401は、第1のサーミスタ401aおよび第2のサーミスタ401bから出力される信号に基づいて便座400の温度を測定する。以下、第1のサーミスタ401aおよび第2のサーミスタ401bを通じて温度測定部401により測定される便座400の温度を測定温度値と称する。
【0108】
また、本体200のヒータ駆動部402は、便座400の便座ヒータ450に接続されている。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動する。
【0109】
本実施の形態において、便座装置100は次のように動作する。初期設定時では、制御部90がヒータ駆動部402を制御することにより、便座400が例えば約18℃となるように温度調整される。このときの便座の温度は、第2のサーミスタ401bの測定値によるものである。このときの温度を待機温度と称する。
【0110】
ここで、使用者がリモートコントローラ500の便座温度調整スイッチを操作することにより、便座設定温度が制御部90に送信される。制御部90は、リモートコントローラ500から受信した便座設定温度を記憶部404に記憶する。
【0111】
使用者がトイレ室に入室すると、入室検知センサ600が使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室検知信号が制御部90に送信される。
【0112】
次に、通常の使用時の動作について説明する。制御部90の判定部620は、入室検知センサ600からの入室検知信号により使用者のトイレ室への入室を検知する。そこで、判定部620は、便座部400の測定温度値、および記憶部404に記憶された便座設定温度に基づいて便座ヒータ450の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0113】
通電率切替回路406は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部403により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部402の動作を制御する。
【0114】
それにより、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され、便座部400の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇される。
【0115】
また、便座ヒータ450の使用経過状況は、状況検知部405で検知される。
【0116】
<8>便座ヒータの通電パターン
便座ヒータ450の駆動の制御は、便座ヒータ450を駆動する電力を大きく3つに変
化させることにより行う。
【0117】
例えば、便座400を第1の温度勾配で昇温させる場合、図23のヒータ駆動部402は約1200Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(1200W駆動)。
【0118】
便座ヒータ450の抵抗値は0.833Ω/mであり、全長10mである。したがって、便座ヒータ450の抵抗値は8.33Ωとなる。この抵抗値を有する便座ヒータ450に交流100Vが印加されると、(100V×100V)÷8.33Ω=1200Wの電力が発生する。すなわち、便座ヒータ450に交流電源の全周期に渡って電流を流すことにより、1200Wの電力が発生する。
【0119】
また、便座400を第1の温度勾配よりもやや緩やかな第2の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部402は約600Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(600W駆動)。
【0120】
さらに、便座400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部402は約50Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(低電力駆動)。なお、低電力駆動とは、1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、0W〜50Wの範囲内の電力)により便座ヒータ450を駆動することをいう。
【0121】
1200W駆動、600W駆動および低電力駆動の切替えは、制御部90の通電率切替回路406が、ヒータ駆動部402から便座ヒータ450への通電を制御する位相制御により行われる。
【0122】
ヒータ駆動部402には図示しない電源回路から交流電流が供給されている。そこで、ヒータ駆動部402は、通電率切替回路406から与えられる通電制御信号に基づいて供給された交流電流を便座ヒータ450に流す。
【0123】
図24は、便座ヒータ450の駆動例および便座部400の表面温度の変化を示す図である。
【0124】
図24においては、便座400の表面温度と時間との関係を示すグラフと、便座ヒータ450を駆動する際の通電率と時間との関係を示すグラフとが示されている。これら2つのグラフの横軸は共通の時間軸である。
【0125】
本例では、使用者が予め暖房機能をオンし、便座設定温度を高く(38℃)設定した場合を想定する。
【0126】
冬季等室温が待機温度である18℃よりも低い場合、制御部90は、便座部400の温度を18℃となるように温度調整する。このように、制御部90は、入室検知センサ600により使用者の入室が検知されるまでの待機期間D1の間、便座部400の表面温度が18℃で一定となるように、便座ヒータ450の低電力駆動を行う。このときの便座の温度は、第2のサーミスタ401bの測定値によるものである。
【0127】
制御部90は、時刻t1で入室検知センサ600により使用者の入室が検知された場合、あらかじめ設定した突入電流低減期間D2の間、600W駆動を行う。なお、この600W駆動は、突入電流を十分に低減するために行う。この場合、便座部400の表面温度はやや緩やかな第2の温度勾配で上昇される。
【0128】
その後、制御部90は、突入電流低減期間D2の経過後の時刻t2で、便座ヒータ45
0の1200W駆動を開始し、あらかじめ設定した第1の昇温期間D3の間便座ヒータ450の1200W駆動を継続する。この場合、便座部400の表面温度は上述の第1の温度勾配で上昇される。
【0129】
ここで、便座400の着座面411の表面温度は急激に上昇される。便座ヒータ450の1200W駆動は、便座部400の着座面411の表面温度が所定温度(例えば30℃)に達するまで行われる。この所定温度は暖房温度にまで十分に上昇した温度でなく、それよりも低くても、使用者が着座した際に冷たいという不快感情を生じない最低限界の温度(この温度を限界温度と称する)であればよい。この限界温度は、発明者らの実施した被験者実験により約29℃であることがわかっている。
【0130】
このように、第1の昇温期間D3においては、便座400の表面温度が1200W駆動により迅速に所定温度まで上昇される。それにより、使用者は便座400を冷たいと感じることなく便座400に着座することができる。
【0131】
また、便座400の表面温度を急激に上昇させると、その温度変化にオーバーシュートが生じる。しかしながら、本実施に形態では、便座400の着座面411の表面温度が所定温度に達したときに便座ヒータ450の1200W駆動を600W駆動に切替える。したがって、便座400の着座面411の表面温度の変化がオーバーシュートした場合でも、その表面温度は便座設定温度を超えない。その結果、使用者が着座時に便座400を熱いと感じることが防止される。
【0132】
そのため、制御部90は、第1の昇温期間D3の経過後の時刻t3で、便座ヒータ450の600W駆動を開始し、第2の昇温期間D4の間便座ヒータ450の600W駆動を継続する。この場合、便座400の着座面411の表面温度は上述の第2の温度勾配で上昇される。
【0133】
便座ヒータ450の600W駆動は、便座部400の着座面411の表面温度が便座設定温度(38℃)に達するまで行われ、第1のサーミスタ401aの測定値が便座設定温度に到達すると、600W駆動を停止し次の駆動に切替える。この昇温期間D2から昇温期間D4の便座の温度は第1のサーミスタ401aの測定値によるものであり、それ以降の便座温度は第2のサーミスタ401bの測定値による。
【0134】
第2の温度勾配は第1の温度勾配よりも緩やかである。これにより、便座400の着座面411の表面温度の変化に大きなオーバーシュートが生じることが防止される。
【0135】
制御部90は、第2の昇温期間D4の経過後の時刻t4で、便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、第1の維持期間D5の間便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。それにより、便座部400の着座面411の表面温度が便座設定温度で一定となる。
【0136】
制御部90は、時刻t5で着座センサ290により使用者の便座部400への着座が検知された場合、低電力駆動の通電率を低下させ、第1の着座期間D6の間便座部400の表面温度が便座設定温度を維持するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本実施に形態では、第1の着座期間D6は約10分に設定される。
【0137】
また、制御部90は、第1の着座期間D6の経過後の時刻t6で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の着座期間D7の間便座400の着座面411の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)に低下するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本実施の形態では、第2の着座期間D7は約2分に設定される。
【0138】
制御部90は、第2の着座期間D7の経過後の時刻t7で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の維持期間D8の間便座部400の着座面411の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)で一定となるように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。以下の説明では、第2の維持期間D8において一定に維持される期間便座400の着座面411の表面温度、すなわち便座設定温度よりもやや低い温度を維持温度と称する。
【0139】
このように、本例では、使用者が便座400に着座した後、制御部90が徐々に便座部400の表面温度を低下させる。それにより、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0140】
制御部90は、時刻t8で着座センサ290により使用者が便座400から離れたことを検知すると、停止期間D9の間便座ヒータ450の駆動を停止する。それにより、便座400の着座面411の表面温度が低下する。
【0141】
制御部90は、便座400の表面温度が18℃に達した時刻t9で、再び便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、便座400の表面温度が18℃で一定となるように待機期間D10の間便座ヒータ450の低電力駆動を維持する。
【0142】
このように温度勾配が徐々に緩やかになる場合、便座400の温度変化により生じるオーバーシュートを十分に小さくすることができる。
【0143】
また、便座400の着座面411の昇温動作時には第1のサーミスタ401aの測定値を使用し、保温時および待機時には第2のサーミスタ401bの測定値を使用することで、便座400の着座面411の温度を急激に昇温させる昇温動作時には、第1のサーミスタ401aの応答の遅れを補正することができ、昇温時のオーバーシュート抑制することができるとともに、着座面411の温度が安定する保温および待機動作時は、より安定した温度測定値を得ることができる。
【0144】
本実施の形態では、使用者の便座400への着座後、便座ヒータ450の駆動に用いる電力を調整することにより便座400の表面温度を徐々に低下させているが、便座ヒータ450の駆動は使用者の便座400への着座時に停止してもよい。この場合においても、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0145】
上記のように、本例では、時刻t8に使用者が便座400から離れたことが検知されることにより便座ヒータ450の駆動が停止される旨を説明したが、便座ヒータ450の駆動の停止は、使用者が便座部400から離れたことが検知された時刻t8から一定時間(例えば1分間)経過後に行われてもよい。この場合、一度使用者が便座400から離れた後に再度便意をもよおし、再度便座400に着座する際にも、便座400の表面温度が低下しない。これにより、使用者は快適に便座400に着座することができる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
以上のように、本発明にかかる便座装置は、温度検知手段の検知精度を向上することが可能となるので、他の加熱機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0147】
90 制御部(制御手段)
100 便座装置
200 本体
400 便座
401a 第1のサーミスタ(第1の温度検知手段、温度検知手段)
401b 第2のサーミスタ(第2の温度検知手段、温度検知手段)
410 上部便座ケーシング
410a 外周縁
410c 内周縁
411 着座面
420 下部便座ケーシング
420a 外周縁
420c 内周縁
440 第1の拘持部材(第1の拘持手段、拘持手段)
441 第2の拘持部材(第2の拘持手段、拘持手段)
450 便座ヒータ
451 金属箔
453 金属箔
460 線状ヒータ
700 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に戴置した本体と、前記本体に回動自在に枢支した便座と、金属箔に線状ヒータを蛇行して配設した便座ヒータと、前記便座の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段を拘持する拘持手段と、前記便座ヒータを制御する制御手段とを含み、
前記便座は、着座面を有する略環状の上部便座ケーシングと、略環状の下部便座ケーシングとを内周縁および外周縁で接合し、
前記上部便座ケーシングの裏面に、前記便座ヒータを固着し、
前記温度検知手段は、前記金属箔の裏面の前記線状ヒータと重合しない位置に配置し、
前記拘持手段は、前記上部便座ケーシングの前記内周縁と前記外周縁に両端部を支持し、前記温度検知手段を前記金属箔に押止する構成の便座装置。
【請求項2】
前記温度検知手段は第1の温度検知手段と第2の温度手段の2個を設け、
前記第1の温度検知手段を拘持する第1の拘持手段は、前記第1の温度検知手段を押止するとともに、前記温度検知手段の近傍に配設した前記線状ヒータを前記金属箔を介して押止し、前記第2の温度検出手段を拘持する第2の拘持手段は、前記第2の温度検知手段のみを押止する構成の請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記便座の昇温動作持は、前記第1の温度検知手段の検知情報を使用し、前記便座の保温および待機動作時は、前記第2の温度検知手段の検知情報を使用する請求項2に記載の便座装置。


【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図11】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図19】
image rotate

【図22】
image rotate