便座装置
【課題】便座の外側に着座面の周囲温度を検知するための専用の温度検知装置が不要であると共に、着座面の周囲温度の変動に対して着座面を所望温度に維持し得る便座装置を提供する。
【解決手段】便座装置は、着座面3aを有する便座3と、発熱体6と、温度検知装置7と、着座面温度設定手段5aと、着座面3aの裏面3b側の温度Tbの狙い値Tbaを設定する狙い値設定手段(CPU8内)と、温度検知装置7で検知された温度Tbが狙い値Tbaとなるように発熱体6に供給される電力Pを制御する制御手段9と、温度Tbが狙い値Tbaになった後に、発熱体6に供給される平均電力Paを算出する平均電力算出手段(CPU8内)と、着座面3aの周囲温度To、所望温度Tsa及び狙い値Tbaとの相関がある平均電力Paに基づいて、着座面3aが所望温度Tsaを維持するように狙い値Tbaを変更する狙い値変更手段(CPU8内)とを備えている。
【解決手段】便座装置は、着座面3aを有する便座3と、発熱体6と、温度検知装置7と、着座面温度設定手段5aと、着座面3aの裏面3b側の温度Tbの狙い値Tbaを設定する狙い値設定手段(CPU8内)と、温度検知装置7で検知された温度Tbが狙い値Tbaとなるように発熱体6に供給される電力Pを制御する制御手段9と、温度Tbが狙い値Tbaになった後に、発熱体6に供給される平均電力Paを算出する平均電力算出手段(CPU8内)と、着座面3aの周囲温度To、所望温度Tsa及び狙い値Tbaとの相関がある平均電力Paに基づいて、着座面3aが所望温度Tsaを維持するように狙い値Tbaを変更する狙い値変更手段(CPU8内)とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座面の温度制御が可能な便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座装置においては、人体に不快感を与えないようにするために、人体が直接接触する箇所の温度を適切な温度に調整する様々な機能を有する装置が案出されている。例えば、特許文献1には、使用者が冬場等気温が低い場合においても不快に感じることなく便座に着座することができる便座装置が開示されている。
【0003】
図15(a)に特許文献1に記載の便座装置の外観斜視図、図15(b)に特許文献1に記載の便座装置の構成図を示す。図15(a)に示すように、便器70の上面に便座装置50の本体51が取り付けられており、この本体51には便座52および便蓋60が回動自在に設けられている。
【0004】
図15(b)に示すように、便座装置50は、着座面52a及び空洞部52cを有する中空構造の便座52と、着座面52aの裏面52b側に設けられ着座面52aを昇温する発熱体53(ランプヒータ)と、着座面52aの裏面52b側の温度を検知する温度検知装置54(サーミスタ)と、トイレ空間の室温を検知する室温検知センサ55と、トイレ空間への人の入室を検知する人体検知部56と、便座52への着座を検知する着座検知手段57と、便座52の回動状態を検知する便座位置検知手段58とを備えている。
【0005】
そして、温度検知装置54、室温検知センサ55、人体検知部56、着座検知手段57及び便座位置検知手段58からの信号は、それぞれ制御部59に伝達され、これらの信号に基づいて採暖面である便座52の着座面52aの温度が所定の温度になるよう、発熱体53への通電が制御されるようになっている。
【0006】
例えば、温度検知装置54によって検知した着座面52aの裏面52b側の温度に対して、室温検知センサ55によって検知したトイレ室内温度が相対的に高い場合には、発熱体53に供給される電力を低減させるように制御する一方、トイレ室内温度が相対的に低い場合には、発熱体53に供給される電力を増大させるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−110623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した便座装置50は、便座52の温度を検知する第1の温度検知手段である温度検知装置54に加えて、トイレ室内の温度(着座面52aの周囲温度)を検知する第2の温度検知手段である室温検知センサ55を備えている。したがって、2つの温度検知手段を備えていることによりコストがかかるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、便座の外側に着座面の周囲温度を検知するための専用の温度検知装置が不要であると共に、着座面の周囲温度の変動に対して着座面を所望温度に維持し得る便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る便座装置の構成上の特徴は、着座面を有する便座と、前記着座面の裏面側に設けられ該着座面を昇温する発熱体と、前記着座面の裏面側の温度を検知する温度検知装置と、前記着座面の所望温度を設定する着座面温度設定手段と、前記着座面の裏面側の温度の狙い値を設定する狙い値設定手段と、前記温度検知装置で検知された前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値となるように前記発熱体に供給される電力を制御する制御手段と、前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後に、前記発熱体に供給される平均電力を算出する平均電力算出手段と、前記着座面の周囲温度、前記所望温度及び前記狙い値との相関がある前記平均電力に基づいて、該着座面が該所望温度を維持するように該狙い値を変更する狙い値変更手段と、を備えていることである。
【0011】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載の便座装置において、前記平均電力算出手段は、前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後、所定期間の前記発熱体の通電回数に基づいて該発熱体に供給される前記平均電力を算出することである。
【0012】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載の便座装置において、前記平均電力算出手段は、前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後、所定期間の前記発熱体の合計の通電時間に基づいて該発熱体に供給される前記平均電力を算出することである。
【0013】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3のうちのいずれか一つに記載の便座装置において、前記着座面の前記周囲温度の変動に対して該着座面を前記所望温度に維持し得る前記発熱体に供給される前記平均電力と前記狙い値との相関を示すマップを備え、前記狙い値変更手段は、前記平均電力算出手段により算出された前記平均電力を前記マップの前記相関に当てはめることにより新たな前記狙い値を設定し、このステップを該狙い値と該平均電力とが該マップの該相関に一致するまで繰り返すことである。
【0014】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4のうちのいずれか一つに記載の便座装置において、前記発熱体に供給される前記平均電力の推移が所定範囲内でかつ所定日数以上継続したことに基づいて四季を判定する四季判定手段と、前記四季判定手段により判定した前記四季に応じて前記着座面の前記所望温度を該四季毎に人が快適に感じる温度に補正する着座面温度補正手段と、を備えていることである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、発熱体に供給される平均電力は、便座の着座面の周囲温度、着座面の所望温度、及び着座面の裏面側の温度の狙い値と相関があり、この平均電力に基づいて狙い値を変更しつつ、着座面が所望温度を維持するように発熱体へ電力を供給する。
【0016】
着座面の周囲温度によって着座面からの放熱量(着座面の表裏温度差)が異なることから、着座面の周囲温度の変化に応じて発熱体に供給される平均電力が変化する。本発明の発明者は、発熱体に供給される平均電力に応じて着座面の裏面側の温度の狙い値を前記相関に基づいて変更することによって着座面を所望温度に維持することが可能であると考え、従来の便座装置50において必要としていた着座面の周囲温度を検知するための専用の温度検知装置(室温検知センサ55)を不要とした。これにより、着座面の周囲温度の変動に対して着座面を所望温度に維持し得る便座装置を、従来よりも安価に提供することが可能となる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、着座面の裏面側の温度が狙い値になった後、所定期間の発熱体の通電回数に基づいて発熱体に供給される平均電力を算出する。着座面の裏面側の温度が狙い値となるように発熱体への通電をON/OFF制御する場合、着座面の裏面側の温度が狙い値よりも所定量低い温度となったときに通電をON、狙い値よりも所定量高い温度となったときに通電をOFFとしている。
【0018】
この場合、着座面の周囲温度が急激に変化しない限り、通電がONとなってからOFFとなるまでの通電時間(ON時間)はほぼ一定の時間となる。そして、周囲温度が低い場合には、所定期間の発熱体への通電回数(ON回数)が多くなり、周囲温度が高い場合には、所定期間の発熱体への通電回数が少なくなる。よって、所定期間の発熱体の通電回数を計測することにより、発熱体に供給される平均電力を算出することができる。
【0019】
なお、所定期間の通電回数と所定期間の平均電力とは一対一の関係であることから、たとえ平均電力を算出しない場合であっても、所定期間の通電回数を計測すること自体が平均電力を算出することと等価であると見なすことができる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、着座面の裏面側の温度が狙い値になった後、所定期間の発熱体の合計の通電時間に基づいて発熱体に供給される平均電力を算出する。本発明の構成によれば、上述のように発熱体への通電をON/OFF制御する場合に、たとえ一回毎の通電時間にばらつきが生じる場合であっても、発熱体に供給される平均電力を算出することができる。すなわち、発熱体に供給される平均電力は、所定期間の発熱体の合計の通電時間を算出して、発熱体への通電がONとなっているときの定格電力に(合計の通電時間)/(所定期間)を掛け合わせることによって算出することができる。
【0021】
なお、所定期間の合計の通電時間と所定期間の平均電力とは一対一の関係であることから、たとえ平均電力を算出しない場合であっても、所定期間の合計の通電時間を計測すること自体が平均電力を算出することと等価であると見なすことができる。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、着座面の周囲温度の変動に対して着座面を所望温度に維持し得る発熱体に供給される平均電力と狙い値との相関を示すマップを備え、狙い値変更手段は、平均電力算出手段により算出された平均電力をマップの相関に当てはめることにより新たな狙い値を設定し、このステップを狙い値と平均電力とがマップの相関に一致するまで繰り返す。本発明によれば、着座面の周囲温度を算出する必要はなく、狙い値と平均電力とがマップの相関に一致したときには、着座面が所望温度に維持された状態となっている。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、発熱体に供給される平均電力の推移が所定範囲内でかつ所定日数以上継続したことに基づいて四季を判定し、この四季に応じて着座面の所望温度を四季毎に人が快適に感じる温度に補正する。例えば、着座面の所望温度を、夏は若干高めの温度、冬は若干低めの温度に設定すると、使用者は着座面の温度を快適に感じる。本発明によれば、使用者がある季節に着座面の所望温度を快適と感じる温度に設定しておけば、その後、季節が変わったことに応じて、着座面の所望温度が使用者が快適と感じる温度に自動的に補正される。よって、本発明の便座装置は快適性に優れている。
【0024】
以上のように、本発明によれば、便座の外側に着座面の周囲温度を検知するための専用の温度検知装置が不要であると共に、着座面の周囲温度の変動に対して着座面を所望温度に維持し得る便座装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態の便座装置の外観斜視図である。
【図2】第1実施形態の便座装置の構成図及び図1におけるA−A線で切断した断面図を示している。
【図3】第1実施形態の便座装置の着座面の周囲温度Toと着座面の表裏温度差Qとの関係を示すグラフである。
【図4】第1及び第2実施形態の便座装置の構成を説明するブロック図である。
【図5】第1実施形態の便座装置における発熱体への供給電力P、着座面の裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示すグラフであって、(a)は周囲温度Toが低い場合、(b)は周囲温度Toが高い場合を示している。
【図6】第1実施形態の便座装置において着座面を所望温度Tsaに維持し得る発熱体のヒータON回数(平均電力)と狙い値ステージ(狙い値)との相関を示すマップであって、(a)は所望温度Tsa=40℃のマップ、(b)は所望温度Tsa=36℃のマップを示している。
【図7】第1実施形態の便座装置において着座面を所望温度Tsaに維持するためのフローチャートである。
【図8】第2実施形態の便座装置における発熱体への供給電力P、着座面の裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示すグラフであって、(a)は周囲温度Toが低い場合、(b)は周囲温度Toが高い場合を示している。
【図9】第2実施形態の便座装置において着座面を所望温度Tsa=40℃に維持し得る発熱体に供給される平均電力Paと狙い値Tbaとの相関を示すマップである。
【図10】第2実施形態の便座装置において着座面を所望温度Tsaに維持するためのフローチャートである。
【図11】第3実施形態の便座装置の構成を説明するブロック図である。
【図12】第3実施形態の便座装置における発熱体への供給電流I、発熱体への供給電力P、着座面の裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示すグラフである。
【図13】第3実施形態の便座装置における四季毎の着座面補正温度Tsa’算定表である。
【図14】第3実施形態の便座装置において着座面の所望温度Tsaを四季毎に人が快適に感じる温度Tsa’に補正するためのフローチャートである。
【図15】従来の便座装置の説明図であって、(a)は便座装置の外観斜視図、(b)は便座装置の構成図をしている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の便座装置の実施形態について図面を参照しつつ詳しく説明する。
<第1実施形態>
(1)便座装置1の構成
図1に示すように、便器10の上面に便座装置1の本体2が取り付けられており、この本体2には便座3および便蓋4が回動自在に設けられている。また、便座3に向かって左側の便座3の脇には、本体2に固定されたスイッチ部5が設けられている。
【0027】
図2に示すように、便座装置1は、着座面3a及び空洞部3cを有する中空構造の便座3と、スイッチ部5に設けられ着座面3aの所望温度Tsaを設定する着座面温度設定スイッチ5aと、着座面3aの裏面3b側に設けられ着座面3aを昇温するヒータ6(発熱体)と、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを検知する温度検知装置7(サーミスタ)と、ヒータ6に供給される電力Pを制御するCPU8と、CPU8からの命令によってAC電源からヒータ6に供給される電力PのON/OFFを行うスイッチング回路9とを備えている。
【0028】
便座3は樹脂製であり、上方に湾曲した板部材である上部部材と平坦な板部材である下部部材とを、各部材の端部で上下に接合した中空構造を呈している。
【0029】
着座面温度設定スイッチ5aは、低温、中温及び高温に区分された温度設定レベルLから一つの温度設定レベルLを選択することによって、着座面3aの所望温度Tsa(℃)を設定するスイッチである。
【0030】
ヒータ6は、着座面3aの裏面3bの湾曲形状に沿って裏面3bに接触するように配置された複数本のニクロム線よりなる。ニクロム線に電流が流れることにより発熱する。
【0031】
温度検知装置7には、温度変化に対して電気抵抗が大きく変化する抵抗体であるサーミスタを用いている。温度検知装置7は、ヒータ6を構成するニクロム線同士の間に着座面3aの裏面3bに接触するように配置されている。
【0032】
スイッチング回路9には、ベースに電流を流したときにスイッチONとなり、ベースに電流を流さないときにスイッチOFFとなるトランジスタを用いる。なお、CPU8の内部構成については後述する。
【0033】
ここで、図2に示すように、着座面3aの周囲温度をTo、着座面3aの温度をTs、着座面3aの裏面3b側の温度をTbとした場合、図3に示すように、周囲温度Toと着座面3aからの放熱量である表裏温度差Q(Q=Ts−Tb)との関係は、直線的な比例関係となる。図3に示すように、周囲温度Toが0℃から40℃まで上昇するとき、表裏温度差QはQ0からQ40まで低下する。
【0034】
このように着座面3aの周囲温度Toによって着座面3aからの放熱量が異なることから、冬場のように周囲温度Toが低いときには、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを高くする必要があり、AC電源からヒータ6に多くの電力Pが供給される。一方、夏場のように周囲温度Toが高いときには、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを低くする必要があり、AC電源からヒータ6に供給される電力Pは小さい。
【0035】
図4に示すように、CPU8は、着座面温度設定部8aと、マップ選択部8bと、マップMと狙い値設定部8cと、制御部8dと、平均電力算出部8eと、狙い値変更部8fと、マップMとを備えている。
【0036】
着座面温度設定部8aは、着座面温度設定スイッチ5aによって選択された温度設定レベルLに基づいて、着座面3aの所望温度Tsa(℃)を設定する部分である。本実施形態においては、着座面温度設定スイッチ5a及び着座面温度設定部8aが着座面温度設定手段に相当する。
【0037】
マップ選択部8bは、所望温度Tsa毎に作成されCPU8に記憶された複数のマップMの中から着座面温度設定部8aにより設定された所望温度Tsaに対応したマップMを選択する部分である。
【0038】
狙い値設定部8cは、マップ選択部8bで選択されたマップMに基づいて、着座面3aの裏面3b側の温度Tbの初期の狙い値Tba(℃)を設定する部分である。例えば、低い所望温度Tsaに対応したマップMが用いられている場合には、初期の狙い値Tbaを低く設定し、高い所望温度Tsaに対応したマップMが用いられている場合には、初期の狙い値Tbaを高く設定する。本実施形態においては、マップ選択部8b、マップM及び狙い値設定部8cが狙い値設定手段に相当する。
【0039】
なお、初期の狙い値Tbaを、マップMを介することなく着座面3aの所望温度Tsaに基づいて設定することもできる。この場合、図4において、着座面温度設定部8aから狙い値設定部8cに向かう矢印が描かれることとなる。
【0040】
制御部8dは、温度検知装置7で検知された着座面3aの裏面3b側の温度Tb(℃)が狙い値Tbaとなるように、スイッチング回路9に電力PのON/OFFの命令を送って、ヒータ6に供給される電力Pを制御する部分である。本実施形態においては、制御部8d及びスイッチング回路9が制御手段に相当する。
【0041】
平均電力算出部8eは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaになった後、所定期間のヒータ6の通電回数N(ヒータON回数)に基づいて、ヒータ6に供給される平均電力Paを算出する部分である。ただし、本実施形態においては、以下に述べるように、所定期間のヒータ6の通電回数Nとヒータ6に供給される平均電力Paとが一対一の関係にあることに基づいて、平均電力Paを算出することなく、所定期間のヒータ6の通電回数Nを、ヒータ6に供給される平均電力Paの代わりに用いることとした。平均電力算出部8eは平均電力算出手段に相当する。
【0042】
図5にヒータ6(発熱体)への供給電力P、着座面3aの裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示す。ここで図5(a)は着座面3aの周囲温度Toが低い場合、図5(b)は着座面3aの周囲温度Toが高い場合を示している。上述した制御部8d及びスイッチング回路9によって、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaよりも所定量低い温度となったときにヒータ6への通電をON、狙い値Tbaよりも所定量高い温度となったときに通電をOFFとしている。
【0043】
図5に示すように、着座面3aの周囲温度Toが急激に変化しない限り、通電がONとなってからOFFとなるまでの通電時間(ON時間)はほぼ一定の時間Δtとなる。そして、図5(a)に示すように、周囲温度Toが低い場合には、所定期間のヒータ6への通電回数N(ヒータON回数)が多くなり、図5(b)に示すように、周囲温度Toが高い場合には、所定期間のヒータ6への通電回数Nが少なくなる。よって、所定期間のヒータ6の通電回数Nは、ヒータ6に供給される平均電力Paと比例関係にあることがわかる。
【0044】
図5(a)において、ヒータ6への通電がONとなりヒータ6に定格電力P0が供給されると、時間tの経過に伴い着座面3aの裏面3b側の温度Tb及び着座面3aの温度Tsが上昇する。そして、温度Tbが狙い値Tbaに到達したときヒータ6への通電がOFFとされる。このときの時間をt0として時間がt1になるまでの間の通電回数Nは6回(N1〜N6)となっている。一方、図5(b)においては、時間t0から時間t1までの間の通電回数Nは4回(N1〜N4)となっている。
【0045】
このとき、図5(a)における平均電力Paは、定格電力P0に6回/{(t1−t0)/Δt)}を掛け合わせることにより算出され、図5(b)における平均電力Paは、定格電力P0に4回/{(t1−t0)/Δt)}を掛け合わせることにより算出される。したがって、所定期間のヒータ6の通電回数Nとヒータ6に供給される平均電力Paとは一対一の関係にあり、所定期間の通電回数Nを計測すること自体が平均電力Paを算出することと等価であると見なすことができる。
【0046】
狙い値変更部8fは、着座面3aの周囲温度To、着座面3aの所望温度Tsa、及び着座面3aの裏面3b側の温度Tbの狙い値Tbaとの相関がある平均電力Pa(本実施形態においては、所定期間のヒータ6の通電回数N)に基づいて、着座面3aが所望温度Tsaを維持するように狙い値Tbaを狙い値Tba’に変更する部分である。狙い値Tbaから狙い値Tba’への変更にはマップMを用いる。新たな狙い値Tba’は、初期の狙い値Tbaと同様に制御部8dに送られる。詳細については後述する。本実施形態においては、マップM及び狙い値変更部8fが狙い値変更手段に相当する。
【0047】
マップMは、着座面3aの周囲温度Toの変動に対して着座面3aを所望温度Tsaに維持し得るヒータ6に供給される平均電力Pa(本実施形態においては、所定期間のヒータ6の通電回数N)と狙い値Tbaとの相関を示す関係図である。本実施形態におけるマップMは、図6に示すようにステージ方式であり、着座面3aの所望温度Tsa毎に一枚ずつのマップMが作成され全てのマップMの情報がCPU8に記憶されている。複数のマップMのうち、図6(a)に所望温度Tsa=40℃のマップM、図6(b)に所望温度Tsa=36℃のマップMを示す。
【0048】
図6(a)に示す所望温度Tsa=40℃のマップMは、横軸を平均電力Paに対応する1時間当りのヒータON回数N(ヒータ6への通電ON回数)、縦軸を狙い値Tbaに対応する狙い値ステージStとしている。また、狙い値ステージStは、St=1〜5の5段階となっており、図中の右端に示しているように、狙い値ステージStの各段階に対応した狙い値Tbaが定められている。
【0049】
図6(a)に示すマップMは、例えば、次に述べるように実験的に作成される。まず、実験室内の温度を一定に保ち、着座面3aの周囲温度Toを一定の温度とする。そして、着座面3aの温度Tsを実測しながら、着座面3aが所望温度Tsa=40℃を1時間維持するようにヒータ6への通電のON/OFFを制御する。このときの1時間当りのヒータ6への通電ON回数をヒータON回数Nとする共に、この期間の着座面3aの裏面3b側の温度Tbの平均値を狙い値Tbaとして記録する。この作業を、着座面3aの周囲温度Toを変化させながら複数回繰り返すことによって、着座面3aが所望温度Tsa=40℃を維持するときのヒータON回数Nと狙い値Tbaとの組み合わせが複数個求まる。
【0050】
この複数個のヒータON回数Nと狙い値Tbaとの組み合わせに基づいて、適宜データ補完及び値の四捨五入等の処理を行うと、狙い値Tba=41〜45℃の範囲の1℃刻みに、5つの狙い値ステージStと狙い値Tbaに対応するヒータON回数Nが求まる。このヒータON回数Nが図中で「適切」と示されている。そして、狙い値ステージStとヒータON回数Nとが図中の「適切」を満足しているときには、着座面3aの周囲温度Toや着座面3aの温度Tsを実測することなく、着座面3aが所望温度Tsa=40℃に維持されている。
【0051】
ここで、ある狙い値ステージStに対応した狙い値Tbaにおいて、ヒータON回数Nが図中の「周囲暑」となった場合には、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを狙い値Tbaに維持するためのヒータON回数Nが「適切」よりも少ない。ヒータON回数Nが「適切」よりも少なくなる理由は、この狙い値ステージStが適用されるべき周囲温度Toよりも実際の周囲温度Toが高かったことによるものであり、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを狙い値Tbaに維持している状態において、着座面3aの温度Tsは所望温度Tsa=40℃よりも高くなっている。したがって、ヒータON回数Nが図中の「周囲暑」となった場合には、狙い値ステージStを下げて、狙い値Tbaを下げる必要がある。
【0052】
一方、ある狙い値ステージStに対応した狙い値Tbaにおいて、ヒータON回数Nが図中の「周囲寒」となった場合には、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを狙い値Tbaに維持するためのヒータON回数Nが「適切」よりも多い。この場合、着座面3aの温度Tsは所望温度Tsa=40℃よりも低くなっているため、狙い値ステージStを上げて、狙い値Tbaを上げる必要がある。
【0053】
図6(b)に示す所望温度Tsa=36℃のマップMについても、上述の所望温度Tsa=40℃のマップMと同様に実験的に作成される。所望温度Tsa=36℃のマップMの各狙い値ステージStに対応した狙い値Tbaは、所望温度Tsa=40℃のマップMの各狙い値ステージStに対応した狙い値Tbaよりも低い。また、所望温度Tsa=36℃のマップMの各狙い値ステージStに対応した「適切」となるヒータON回数Nは、所望温度Tsa=40℃のマップMの各狙い値ステージStに対応した「適切」となるヒータON回数Nよりも少ない。
【0054】
(2)便座装置1の作動ステップ
本実施形態の便座装置1において着座面3aを所望温度Tsaに維持するためのフローチャートを図7に示す。以降、主に図6(a)及び図7に基づいて説明する。
STARTにおいて、図6(a)のマップMの基本位置である狙い値ステージSt=3が設定されている。STARTは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値ステージSt=3に対応した初期の狙い値Tba=43℃となり、ヒータ6の通電がOFFになった時点である。この時点は、図5(a)及び(b)の時間t0に相当している。
【0055】
ステップS1において、CPU8の内臓時計の時間をリセットしてt=0とすると共に、ヒータON回数NとしてN=1を設定する。ステップS2において、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaから温度ΔTを引いた温度以下となったか否かの判定を行う。ここで、ΔT=0.2〜0.5℃程度とするとよい。Tb≦Tba−ΔTの場合にはステップS3に進み、Tb>Tba−ΔTの場合にはステップS2の判定を継続する。ステップS2の判定が継続されている間に温度Tbが徐々に低下して、やがてTb≦Tba−ΔTとなりステップS3に進む。
【0056】
ステップS3において、ヒータ6の通電をONにする。ステップS4において、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaに温度ΔTを加えた温度以上となったか否かの判定を行う。Tb≧Tba+ΔTの場合にはステップS5に進み、Tb<Tba+ΔTの場合にはステップS4の判定を継続する。ステップS4の判定が継続されている間に温度Tbが徐々に上昇して、やがてTb≧Tba+ΔTとなりステップS5に進む。
【0057】
ステップS5において、ヒータ6の通電をOFFにする。ステップS6において、時間tが所定期間taだけ経過したか否かの判定を行う。ここで、ta=1時間とする。t≧taの場合にはステップS8に進む。t<taの場合にはステップS7に進んで、ヒータON回数Nに1を加えてN=N+1とした後、ステップS2に戻る。
【0058】
ステップS8に進むときのヒータON回数Nは、1時間当りのヒータ6への通電ON回数となっている。ステップS8において、ヒータON回数Nが、図6(a)の狙い値ステージSt=3における「適切」なヒータON回数N=21又は22回となっているか否かの判定を行う。ヒータON回数Nが「適切」である場合には、着座面3aが所望温度Tsa=40℃に維持されているため、狙い値ステージSt=3を変更する必要はなく、ステップS1に戻って再び次の所定期間taのフローチャートを実行する。ヒータON回数Nが「適切」ではない場合にはステップS9に進む。
【0059】
ステップS9において、ヒータON回数Nが「適切」よりも多いか否かの判定を行う。図6(a)の狙い値ステージSt=3において、ヒータON回数Nが「適切」よりも少ない、すなわち、ヒータON回数Nが「周囲暑」以下となっている場合にはステップS10に進む。また、ヒータON回数Nが「適切」よりも多い、すなわち、ヒータON回数Nが「周囲寒」以上となっている場合にはステップS11に進む。
【0060】
ステップS10に進んだ場合には、狙い値ステージStを一つ下げてSt=2とした後、ステップS12に進む。また、ステップS11に進んだ場合には、狙い値ステージStを一つ上げてSt=4とした後、ステップS12に進む。ステップS12において、狙い値ステージStに対応した狙い値Tbaを抽出する。この抽出した狙い値Tbaが図4に示した新たな狙い値Tba’となる。その後、ステップS13に進み、新たな狙い値Tba’を初期の狙い値Tbaに変換(Tba=Tba’)した後、ステップS1に戻って再び次の所定期間taのフローチャートを実行する。
【0061】
以上のステップS1〜S13を繰り返し実行することによって、たとえ着座面3aの周囲温度Toが変動したとしても、着座面3aを所望温度Tsa=40℃に維持することが可能となっている。なお、図7のフローチャートにはENDが示されていないが、便座装置1の主電源をOFFにした時点でENDとなる。
【0062】
(3)便座装置1の効果
このような本実施形態の便座装置1によれば、ヒータ6に供給される平均電力Paの代用となる1時間当りのヒータON回数Nは、便座3の着座面3aの周囲温度To、着座面3aの所望温度Tsa、及び着座面3aの裏面3b側の温度Tbの狙い値Tbaと相関があり、この1時間当りのヒータON回数Nに基づいて狙い値Tbaを変更しつつ、着座面3aが所望温度Tsaを維持するようにヒータ6へ電力Pを供給する。
【0063】
着座面3aの周囲温度Toによって着座面3aからの放熱量(着座面3aの表裏温度差Q=Ts−Tb)が異なることから、着座面3aの周囲温度Toの変化に応じてヒータ6に供給される平均電力Paが変化する。よって、1時間当りのヒータON回数Nも平均電力Paと一対一の関係で変化する。
【0064】
したがって、本実施形態の便座装置1によれば、1時間当りのヒータON回数Nによって着座面3aの周囲温度Toを推定することが可能であり、従来の便座装置50において必要としていた専用の温度検知装置(室温検知センサ55)が不要となる。これにより、着座面3aの周囲温度Toの変動に対して着座面3aを所望温度Tsaに維持し得る便座装置を、従来よりも安価に提供することが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態においては、着座面3aの周囲温度Toを推定することを必須としてはいないが、1時間当りのヒータON回数Nに基づいて周囲温度Toを推定することも可能である。
【0066】
<第2実施形態>
(1)便座装置の構成
図4に示すように、本実施形態は、第1実施形態におけるCPU8をCPU28に変更した実施形態である。詳しくは、CPU28内において、第1実施形態における平均電力算出部8eが平均電力算出部28eに、第1実施形態における狙い値変更部8fが狙い値変更部28fに、マップMがマップMMに変更されている。これ以外の部分(部品)については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0067】
平均電力算出部28eは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaになった後、所定期間のヒータ6の合計の通電時間ΣΔtに基づいて、ヒータ6(発熱体)に供給される平均電力Paを算出する部分である。平均電力算出部28eは平均電力算出手段に相当する。なお、合計の通電時間ΣΔtに基づいて平均電力Paを算出できるということは、当然ながら、合計の非通電時間(OFF時間)に基づいて平均電力Paを算出することもできる。
【0068】
図8にヒータ6への供給電力P、着座面3aの裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示す。ここで図8(a)は着座面3aの周囲温度Toが低い場合、図8(b)は着座面3aの周囲温度Toが高い場合を示している。第1実施形態と同様に、制御部8d及びスイッチング回路9によって、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaよりも所定量低い温度となったときにヒータ6への通電をON、狙い値Tbaよりも所定量高い温度となったときに通電をOFFとしている。
【0069】
図8に示すように、着座面3aの周囲温度Toの変化や、使用者の便座3への着座等によって、通電がONとなってからOFFとなるまでの通電時間(ON時間)にばらつきが生じる場合がある。図8(a)において、時間t0から時間t1までの間の通電回数Nは6回、通電時間はΔt1〜Δt6となっている。一方、図8(b)においては、時間t0から時間t1までの間の通電回数Nは4回、通電時間はΔt1〜Δt4となっている。
【0070】
このとき、ヒータ6に供給される平均電力Paは、ヒータ6への通電がONとなっているときの定格電力P0に(合計の通電時間ΣΔt)/(所定期間t1−t0)を掛け合わせることによって算出することができる。
【0071】
狙い値変更部28fは、着座面3aの周囲温度To、着座面3aの所望温度Tsa、及び着座面3aの裏面3b側の温度Tbの狙い値Tbaとの相関がある平均電力Paに基づいて、着座面3aが所望温度Tsaを維持するように狙い値Tbaを狙い値Tba’に変更する部分である。狙い値Tbaから狙い値Tba’への変更にはマップMMを用いる。新たな狙い値Tba’は、初期の狙い値Tbaと同様に制御部8dに送られる。詳細については後述する。本実施形態においては、マップMM及び狙い値変更部28fが狙い値変更手段に相当する。
【0072】
マップMMは、着座面3aの周囲温度Toの変動に対して着座面3aを所望温度Tsaに維持し得るヒータ6に供給される平均電力Paと狙い値Tbaとの相関Rを示す関係図である。本実施形態におけるマップMMは、図9に示すようにグラフ方式であり、着座面3aの所望温度Tsa毎に一枚ずつのマップMMが作成され全てのマップMMの情報がCPU28に記憶されている。複数のマップMMのうち、図9に所望温度Tsa=40℃のマップMMを示す。
【0073】
図9に示す所望温度Tsa=40℃のマップMMは、横軸を平均電力Pa、縦軸を狙い値Tbaとしている。マップMMは、第1実施形態におけるマップMとほぼ同様の手順により実験的に作成されるため、説明を省略する。
【0074】
マップMMにおいて、狙い値Tbaと平均電力PaとがマップMMの相関Rに一致しているときには、着座面3aの周囲温度Toや着座面3aの温度Tsを実測することなく、着座面3aが所望温度Tsa=40℃に維持されている。
【0075】
マップMMにおいて、図9に示すように、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを初期の狙い値Tba1=43℃に維持するための平均電力PaがPa1であったとする。そして、狙い値Tba1と平均電力Pa1とが図9の点Kにプロットされたとする。このとき点Kは、相関Rよりも右側に位置している。これは、第1実施形態で示したマップMにおいてヒータON回数Nが「周囲寒」となった状態と同様の状態である。すなわち、狙い値Tba1=43℃が適用されるべき周囲温度Toよりも実際の周囲温度Toが低かったことを意味している。この場合、着座面3aの温度Tsは所望温度Tsa=40℃よりも低くなっているため、狙い値TbaをTba1よりも上げる必要がある。
【0076】
図9に示すように、狙い値Tba1よりも温度が高い狙い値Tba2を設定するには、
平均電力Pa1をマップMMの相関Rに当てはめることにより新たな狙い値Tba2を設定する。そして、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを新たな狙い値Tba2に維持するための平均電力Pa2を算出し、この手順を狙い値Tbaと平均電力Paとが相関Rに一致するまで繰り返すとよい。ただし、この制御は、使用者によって動作中(使用者が便座装置1を使用中)にキャンセルされてもよい。
【0077】
(2)便座装置の作動ステップ
本実施形態の便座装置において着座面3aを所望温度Tsaに維持するためのフローチャートを図10に示す。以降、主に図9及び図10に基づいて説明する。
STARTは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが初期の狙い値Tbaとなり、ヒータ6の通電がOFFになった時点である。この時点は、図8(a)及び(b)の時間t0に相当している。ここで、初期の狙い値TbaをマップMMの縦軸の狙い値Tba範囲の中間温度(図9においては43℃)とするとよい。
【0078】
ステップSS1において、CPU28の内臓時計の時間をリセットしてt=0とすると共に、通電時間計測回数j=1を設定する。ステップSS2において、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaから温度ΔTを引いた温度以下となったか否かの判定を行う。Tb≦Tba−ΔTの場合にはステップSS3に進み、Tb>Tba−ΔTの場合にはステップSS2の判定を継続する。ステップSS2の判定が継続されている間に温度Tbが徐々に低下して、やがてTb≦Tba−ΔTとなりステップSS3に進む。
【0079】
ステップSS3において、ヒータ6の通電をONにする。ステップSS4において、CPU28に内臓されたタイマTMをONにする。ステップSS5において、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaに温度ΔTを加えた温度以上となったか否かの判定を行う。Tb≧Tba+ΔTの場合にはステップSS6に進み、Tb<Tba+ΔTの場合にはステップSS5の判定を継続する。ステップSS5の判定が継続されている間に温度Tbが徐々に上昇して、やがてTb≧Tba+ΔTとなりステップSS6に進む。
【0080】
ステップSS6において、ヒータ6の通電をOFFにする。ステップSS7において、タイマTMをOFFにして、通電時間計測回数j=1における通電時間ΔtjをCPU28内に記憶する。ステップSS8において、時間tが所定期間taだけ経過したか否かの判定を行う。例えば、ta=1時間とする。t≧taの場合にはステップSS10に進む。t<taの場合にはステップSS9に進んで、通電時間計測回数jに1を加えてj=j+1とした後、ステップSS2に戻る。
【0081】
ステップSS10において、所定期間taのヒータ6の合計の通電時間ΣΔtjを算出する。ステップSS11において、ヒータ6に供給される平均電力Paを、Pa=P0ΣΔtj/taとして算出する。
【0082】
ステップSS12において、狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にあるか否かの判定を行う。狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にある場合には、着座面3aが所望温度Tsa=40℃に維持されているため、ステップSS1に戻って再び次の所定期間taのフローチャートを実行する。狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にない場合にはステップSS13に進む。
【0083】
ステップSS13において、マップMMの相関R上の平均電力Paに対応した狙い値Tbaを抽出する。この抽出した狙い値Tbaが図4に示した新たな狙い値Tba’となる。その後、ステップSS14に進み、新たな狙い値Tba’を初期の狙い値Tbaに変換(Tba=Tba’)した後、ステップSS1に戻って再び次の所定期間taのフローチャートを実行する。
【0084】
以上のステップSS1〜SS14を繰り返し実行することによって、たとえ着座面3aの周囲温度Toが変動したとしても、着座面3aを所望温度Tsa=40℃に維持することが可能となっている。なお、図10のフローチャートにはENDが示されていないが、便座装置の主電源をOFFにした時点でENDとなる。
【0085】
(3)便座装置の効果
このような本実施形態の便座装置によれば、ヒータ6に供給される平均電力Paは、便座3の着座面3aの周囲温度To、着座面3aの所望温度Tsa、及び着座面3aの裏面3b側の温度Tbの狙い値Tbaと相関があり、この平均電力Paに基づいて狙い値Tbaを変更しつつ、着座面3aが所望温度Tsaを維持するようにヒータ6へ電力Pを供給する。
【0086】
したがって、本実施形態の便座装置によれば、平均電力Paによって着座面3aの周囲温度Toを推定することが可能であり、従来の便座装置50において必要としていた専用の温度検知装置(室温検知センサ55)が不要となる。これにより、第1実施形態と同様に、着座面3aの周囲温度Toの変動に対して着座面3aを所望温度Tsaに維持し得る便座装置を、従来よりも安価に提供することが可能となる。
【0087】
なお、本実施形態においては、第1実施形態と同様に、着座面3aの周囲温度Toを推定することを必須としてはいないが、平均電力Paに基づいて周囲温度Toを推定することも可能である。
【0088】
<第3実施形態>
(1)便座装置の構成
図11に示すように、本実施形態は、第2実施形態におけるCPU28をCPU38に変更すると共に、第2実施形態におけるスイッチング回路9をPWM39に変更した実施形態である。詳しくは、CPU38内において、第2実施形態における制御部8dが制御部38dに、第2実施形態における平均電力算出部28eが平均電力算出部38eに変更されていると共に、新たに四季判定部38g及び着座面温度補正部38hが追加されている。これ以外の部分(部品)については、第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0089】
PWM39(Pulse Width Modulation)は、CPU38内の制御部38dからの命令に従って高速でトランジスタスイッチのON/OFFを繰り返すことによって、AC電源からヒータ6(発熱体)に電力Pを平均電力Paとして供給するスイッチング回路である。PWM39は、AC電源から供給される電流の一周期内でスイッチをONにしている時間とOFFにしている時間との割合(デューティー比)を変化させることによって、平均電力Paの大きさを調整している。
【0090】
制御部38dは、PID制御部380と電流演算部381とからなる。PID制御は、フィードバック制御の一種であり、入力値の制御を出力値と目標値との差(偏差)、その積分、および微分の3つの要素によって行う方法のことである。PID制御部380は、入力値である着座面3aの裏面3b側の温度Tbと、目標値である狙い値Tbaとの差に応じて、最終的に温度Tbが滑らかに狙い値Tbaにすりつくように、ヒータ6の上昇温度を決定し、ヒータ6に供給する電流Iの量(定格電流の何%にするか)を決定する。電流演算部381は、PID制御部380により決定された電流Iの量に基づいてデューティー比を決定し、PWM39へON/OFF制御の命令を送る。
【0091】
本実施形態においては、制御部38d及びPWM39が制御手段に相当する。以上で述べたPWM39、PID制御部380及び電流演算部381は、温度制御をはじめとした各種制御に一般的に用いられている公知の制御技術である。
【0092】
平均電力算出部38eは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaになった後、所定期間のヒータ6に供給される平均電力Paを算出する部分である。平均電力算出部38eは平均電力算出手段に相当する。
【0093】
図12にヒータ6への供給電流I、ヒータ6への供給電力P、着座面3aの裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示す。図12に示すように、PWM39によって、供給電流Iのデューティー比が、100%、80%、60%、50%、40%と段階的に小さくなり、同様に、ヒータ6に供給される電力Pが、定格電力P0の100%、80%、60%、50%、40%と段階的に小さくなっている。なお、図12は、イメージ図であるため、供給電流I及び供給電力Pを段階的に低減しているが、実際の制御においては、供給電流I及び供給電力Pを滑らかに低減している。
【0094】
時間tの経過に伴い着座面3aの裏面3b側の温度Tb及び着座面3aの温度Tsが上昇する。そして、温度Tbが狙い値Tbaに許容値範囲内で到達したときにヒータ6へ供給されている電力Pが平均電力Paであり、平均電力Paは、定格電力P0の40%となっている。その後、時間がt1になるまでの間、平均電力Paが維持されている。このように、平均電力算出部38eにより、電流演算部381で決定したデューティー比から直接平均電力Paを算出することができる。
【0095】
なお、デューティー比が一定期間安定していることを確認した後、この一定期間内のデューティー比の平均値から平均電力Paを算出することによって、平均電力Paの算出精度を高めることができる。
【0096】
四季判定部38gは、ヒータ6に供給される平均電力Paの推移が所定範囲内でかつ所定日数以上継続したことに基づいて四季Sを判定する部分である。四季判定部38gには、平均電力算出部38eで算出した平均電力Pa、及びCPU38の内臓時計の時間tに関する情報が送られる。詳細については後述する。四季判定部38gは四季判定手段に相当する。
【0097】
着座面温度補正部38hは、四季判定部38gにより判定した四季Sに応じて着座面3aの所望温度Tsaを四季S毎に人が快適に感じる温度Tsa’に補正する部分である。着座面温度補正部38hは着座面温度補正手段に相当する。
【0098】
例えば、着座面3aの所望温度Tsaを、夏は若干高めの温度、冬は若干低めの温度に設定すると、使用者は着座面3aの温度Tsを快適に感じる。そこで、図13の四季S毎の着座面補正温度Tsa’算定表に示すように、各温度設定レベルL(低温、中温、高温)と、各四季S(冬、春秋、夏)とに対応した9個の着座面補正温度Tsa’を設定し、この情報をCPU38に記憶されておく。そして、着座面温度補正部38hは、着座面補正温度Tsa’算定表に基づいて着座面補正温度Tsa’を設定する。
【0099】
(2)便座装置の作動ステップ
本実施形態の便座装置において着座面3aの所望温度Tsaを四季S毎に人が快適に感じる温度Tsa’に補正するためのフローチャートを図14に示す。以降、主に図9及び図14に基づいて説明する。
【0100】
STARTは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが初期の狙い値Tbaとなり、ヒータ6へ供給される平均電力Paが安定した時点である。この時点は、図12の時間t0に相当している。ここで、初期の狙い値TbaをマップMMの縦軸の狙い値Tba範囲の中間温度(図9においては43℃)とするとよい。
【0101】
ステップST1において、CPU28の内臓時計の時間をリセットしてt=0とする。ステップST2において、狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にあるか否かの判定を行う。狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にある場合には、着座面3aが所望温度Tsa=40℃に維持されており、ステップST5に進む。狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にない場合にはステップST3に進む。
【0102】
ステップST3及びST4は、第2実施形態におけるステップSS13及びSS14と同一であるため説明を省略する。ステップST3及びST4を経由した後、ステップST1に戻って再びフローチャートを実行する。
【0103】
本実施形態において、以降で説明するステップST5〜ST13が、ヒータ6に供給される平均電力Paの推移が所定範囲内でかつ所定日数以上継続したことに基づいて四季Sを判定するフローチャートである。ここで、所定範囲を定めるための電力P1〜P6は、P1<P2<P3<P4<P5<P6の大小関係にあるとする。
【0104】
ステップST5において、平均電力Paが電力P1以上かつ電力P2以下の所定範囲に入っているか否かの判定を行う。平均電力Paが所定範囲に入っている場合には、ステップST6に進み、平均電力Paが所定範囲に入っていない場合には、ステップST8に進む。
【0105】
同様に、ステップST8において、平均電力Paが電力P3以上かつ電力P4以下の所定範囲に入っているか否かの判定を行う。平均電力Paが所定範囲に入っている場合には、ステップST9に進み、平均電力Paが所定範囲に入っていない場合には、ステップST11に進む。
【0106】
同様に、ステップST11において、平均電力Paが電力P5以上かつ電力P6以下の所定範囲に入っているか否かの判定を行う。平均電力Paが所定範囲に入っている場合には、ステップST12に進み、平均電力Paが所定範囲に入っていない場合には、ステップST1に戻って再びフローチャートを実行する。
【0107】
ステップST6において、平均電力Paが電力P1以上かつ電力P2以下の所定範囲に入っている状態で、時間tが所定期間tbだけ経過したか否かの判定を行う。例えば、tb=10日とする。t≧tbの場合にはステップST7に進み、四季S=「冬」と判定する。t<tbの場合にはステップST2に戻って、時間tをリセットすることなく再びフローチャートを実行する。
【0108】
同様に、ステップST9において、t≧tbの場合にはステップST10に進み、四季S=「春秋」と判定する。t<tbの場合にはステップST2に戻って再びフローチャートを実行する。
【0109】
同様に、ステップST12において、t≧tbの場合にはステップST10に進み、四季S=「夏」と判定する。t<tbの場合にはステップST2に戻って再びフローチャートを実行する。
【0110】
こうして、ステップST7、ST10及びST13のうちのいずれかを経由して、四季Sが定まった後、ステップST14において、図13に示す四季S毎の着座面補正温度Tsa’算定表に基づいて着座面補正温度Tsa’を設定する。
【0111】
ステップST15において、着座面補正温度Tsa’を着座面温度設定部8aに入力する新たな所望温度Tsaとして変換(Tsa=Tsa’)する。ステップST16において、マップ選択部8bにより複数のマップMMの中から新たな所望温度Tsaに対応したマップMMを選択する。ステップST17において、狙い値設定部8cにより、マップMMに基づいて新たな狙い値Tbaを設定する。その後、STARTに戻って再びフローチャートを実行する。
【0112】
以上のステップST1〜ST4を繰り返し実行することによって、たとえ着座面3aの周囲温度Toが変動したとしても、着座面3aを所望温度Tsa=40℃に維持することが可能となっている。また、ステップST5〜ST13を繰り返し実行することによって、四季Sを判定することが可能となっている。なお、図14のフローチャートにはENDが示されていないが、便座装置の主電源をOFFにした時点でENDとなる。
【0113】
(3)便座装置の効果
このような本実施形態の便座装置によれば、使用者がある季節に着座面3aの所望温度Tsaを快適と感じる温度設定レベルLに設定しておけば、その後、季節が変わったことに応じて、四季判定部38g及び着座面温度補正部38hによって、着座面3aの所望温度Tsaが使用者が快適と感じる温度に自動的に補正される。よって、本実施形態の便座装置は快適性に優れている。
本実施形態における他の効果については、第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0114】
<その他の実施形態>
本発明の便座装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができることは言うまでもない。
【0115】
例えば、第1及び第2実施形態においては、着座面3aの周囲温度Toを推定していないが、所定期間のヒータON回数N又は平均電力Paに基づいて周囲温度Toを推定することも可能である。そして、推定した周囲温度Toを、シャワートイレの温水や温風の快適な温度を設定するのに活用することもできる。
【0116】
また、第3実施形態においては、PID制御により着座面3aの裏面3b側の温度Tbのフィードバック制御を行っているが、PID制御に代えて、P制御(比例制御)、I制御(積分制御)、D制御(微分制御)又はこれらのうちの2つを組み合わせた制御とすることもできる。
【0117】
また、第3実施形態においては、着座面3aの所望温度Tsaを四季S毎に人が快適に感じる温度Tsa’に補正している。すなわち、着座面3aの所望温度Tsaの設定に「季節係数」を導入している。これをさらに発展させて、着座面3aの所望温度Tsaの設定に「日変動係数」を導入することもできる。「日変動係数」の導入により、例えば、一日の中で起床時及び就寝時の時間帯においては、所望温度Tsaを若干高い温度に設定して、便座装置の快適性をさらに向上させることができる。
【0118】
また、第1〜第3実施形態においては、便座装置1の便蓋4の開閉状況や、便座3への便座カバーの取付状況について言及していない。しかし、着座面3aの温度Tsは、便蓋4の開閉状況や便座カバーの取付状況に若干影響される。したがって、便座装置に便蓋4の開閉状況や便座カバーの取付状況を検知する検知装置を備える構成として、この検知結果をマップM及びMMに反映させてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 … 便座装置 3 … 便座
3a … 着座面 3b … 裏面
5a … 着座面温度設定スイッチ(着座面温度設定手段)
6 … ヒータ(発熱体) 7 … 温度検知装置
8a … 着座面温度設定部(着座面温度設定手段)
8c … 狙い値設定部(狙い値設定手段)
8d,38d… 制御部(制御手段)
8e,28e,38e… 平均電力算出部(平均電力算出手段)
8f,28f… 狙い値変更部(狙い値変更手段)
38g… 四季判定部(四季判定手段)
38h… 着座面温度補正部(着座面温度補正手段)
9 … スイッチング回路(制御手段) 39 … PWM(制御手段)
N … 通電回数(ON回数) M,MM… マップ
P … 電力 Pa … 平均電力
R … 相関 S … 四季
Tb … 裏面側温度 Tba,Tba’… 狙い値
Ts … 着座面温度 Tsa… 所望温度
Tsa’… 着座面補正温度 To … 周囲温度
t … 時間 ta,tb… 所定期間
Δt … 通電時間
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座面の温度制御が可能な便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座装置においては、人体に不快感を与えないようにするために、人体が直接接触する箇所の温度を適切な温度に調整する様々な機能を有する装置が案出されている。例えば、特許文献1には、使用者が冬場等気温が低い場合においても不快に感じることなく便座に着座することができる便座装置が開示されている。
【0003】
図15(a)に特許文献1に記載の便座装置の外観斜視図、図15(b)に特許文献1に記載の便座装置の構成図を示す。図15(a)に示すように、便器70の上面に便座装置50の本体51が取り付けられており、この本体51には便座52および便蓋60が回動自在に設けられている。
【0004】
図15(b)に示すように、便座装置50は、着座面52a及び空洞部52cを有する中空構造の便座52と、着座面52aの裏面52b側に設けられ着座面52aを昇温する発熱体53(ランプヒータ)と、着座面52aの裏面52b側の温度を検知する温度検知装置54(サーミスタ)と、トイレ空間の室温を検知する室温検知センサ55と、トイレ空間への人の入室を検知する人体検知部56と、便座52への着座を検知する着座検知手段57と、便座52の回動状態を検知する便座位置検知手段58とを備えている。
【0005】
そして、温度検知装置54、室温検知センサ55、人体検知部56、着座検知手段57及び便座位置検知手段58からの信号は、それぞれ制御部59に伝達され、これらの信号に基づいて採暖面である便座52の着座面52aの温度が所定の温度になるよう、発熱体53への通電が制御されるようになっている。
【0006】
例えば、温度検知装置54によって検知した着座面52aの裏面52b側の温度に対して、室温検知センサ55によって検知したトイレ室内温度が相対的に高い場合には、発熱体53に供給される電力を低減させるように制御する一方、トイレ室内温度が相対的に低い場合には、発熱体53に供給される電力を増大させるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−110623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した便座装置50は、便座52の温度を検知する第1の温度検知手段である温度検知装置54に加えて、トイレ室内の温度(着座面52aの周囲温度)を検知する第2の温度検知手段である室温検知センサ55を備えている。したがって、2つの温度検知手段を備えていることによりコストがかかるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、便座の外側に着座面の周囲温度を検知するための専用の温度検知装置が不要であると共に、着座面の周囲温度の変動に対して着座面を所望温度に維持し得る便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る便座装置の構成上の特徴は、着座面を有する便座と、前記着座面の裏面側に設けられ該着座面を昇温する発熱体と、前記着座面の裏面側の温度を検知する温度検知装置と、前記着座面の所望温度を設定する着座面温度設定手段と、前記着座面の裏面側の温度の狙い値を設定する狙い値設定手段と、前記温度検知装置で検知された前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値となるように前記発熱体に供給される電力を制御する制御手段と、前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後に、前記発熱体に供給される平均電力を算出する平均電力算出手段と、前記着座面の周囲温度、前記所望温度及び前記狙い値との相関がある前記平均電力に基づいて、該着座面が該所望温度を維持するように該狙い値を変更する狙い値変更手段と、を備えていることである。
【0011】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載の便座装置において、前記平均電力算出手段は、前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後、所定期間の前記発熱体の通電回数に基づいて該発熱体に供給される前記平均電力を算出することである。
【0012】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載の便座装置において、前記平均電力算出手段は、前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後、所定期間の前記発熱体の合計の通電時間に基づいて該発熱体に供給される前記平均電力を算出することである。
【0013】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜3のうちのいずれか一つに記載の便座装置において、前記着座面の前記周囲温度の変動に対して該着座面を前記所望温度に維持し得る前記発熱体に供給される前記平均電力と前記狙い値との相関を示すマップを備え、前記狙い値変更手段は、前記平均電力算出手段により算出された前記平均電力を前記マップの前記相関に当てはめることにより新たな前記狙い値を設定し、このステップを該狙い値と該平均電力とが該マップの該相関に一致するまで繰り返すことである。
【0014】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4のうちのいずれか一つに記載の便座装置において、前記発熱体に供給される前記平均電力の推移が所定範囲内でかつ所定日数以上継続したことに基づいて四季を判定する四季判定手段と、前記四季判定手段により判定した前記四季に応じて前記着座面の前記所望温度を該四季毎に人が快適に感じる温度に補正する着座面温度補正手段と、を備えていることである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、発熱体に供給される平均電力は、便座の着座面の周囲温度、着座面の所望温度、及び着座面の裏面側の温度の狙い値と相関があり、この平均電力に基づいて狙い値を変更しつつ、着座面が所望温度を維持するように発熱体へ電力を供給する。
【0016】
着座面の周囲温度によって着座面からの放熱量(着座面の表裏温度差)が異なることから、着座面の周囲温度の変化に応じて発熱体に供給される平均電力が変化する。本発明の発明者は、発熱体に供給される平均電力に応じて着座面の裏面側の温度の狙い値を前記相関に基づいて変更することによって着座面を所望温度に維持することが可能であると考え、従来の便座装置50において必要としていた着座面の周囲温度を検知するための専用の温度検知装置(室温検知センサ55)を不要とした。これにより、着座面の周囲温度の変動に対して着座面を所望温度に維持し得る便座装置を、従来よりも安価に提供することが可能となる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、着座面の裏面側の温度が狙い値になった後、所定期間の発熱体の通電回数に基づいて発熱体に供給される平均電力を算出する。着座面の裏面側の温度が狙い値となるように発熱体への通電をON/OFF制御する場合、着座面の裏面側の温度が狙い値よりも所定量低い温度となったときに通電をON、狙い値よりも所定量高い温度となったときに通電をOFFとしている。
【0018】
この場合、着座面の周囲温度が急激に変化しない限り、通電がONとなってからOFFとなるまでの通電時間(ON時間)はほぼ一定の時間となる。そして、周囲温度が低い場合には、所定期間の発熱体への通電回数(ON回数)が多くなり、周囲温度が高い場合には、所定期間の発熱体への通電回数が少なくなる。よって、所定期間の発熱体の通電回数を計測することにより、発熱体に供給される平均電力を算出することができる。
【0019】
なお、所定期間の通電回数と所定期間の平均電力とは一対一の関係であることから、たとえ平均電力を算出しない場合であっても、所定期間の通電回数を計測すること自体が平均電力を算出することと等価であると見なすことができる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、着座面の裏面側の温度が狙い値になった後、所定期間の発熱体の合計の通電時間に基づいて発熱体に供給される平均電力を算出する。本発明の構成によれば、上述のように発熱体への通電をON/OFF制御する場合に、たとえ一回毎の通電時間にばらつきが生じる場合であっても、発熱体に供給される平均電力を算出することができる。すなわち、発熱体に供給される平均電力は、所定期間の発熱体の合計の通電時間を算出して、発熱体への通電がONとなっているときの定格電力に(合計の通電時間)/(所定期間)を掛け合わせることによって算出することができる。
【0021】
なお、所定期間の合計の通電時間と所定期間の平均電力とは一対一の関係であることから、たとえ平均電力を算出しない場合であっても、所定期間の合計の通電時間を計測すること自体が平均電力を算出することと等価であると見なすことができる。
【0022】
請求項4に係る発明によれば、着座面の周囲温度の変動に対して着座面を所望温度に維持し得る発熱体に供給される平均電力と狙い値との相関を示すマップを備え、狙い値変更手段は、平均電力算出手段により算出された平均電力をマップの相関に当てはめることにより新たな狙い値を設定し、このステップを狙い値と平均電力とがマップの相関に一致するまで繰り返す。本発明によれば、着座面の周囲温度を算出する必要はなく、狙い値と平均電力とがマップの相関に一致したときには、着座面が所望温度に維持された状態となっている。
【0023】
請求項5に係る発明によれば、発熱体に供給される平均電力の推移が所定範囲内でかつ所定日数以上継続したことに基づいて四季を判定し、この四季に応じて着座面の所望温度を四季毎に人が快適に感じる温度に補正する。例えば、着座面の所望温度を、夏は若干高めの温度、冬は若干低めの温度に設定すると、使用者は着座面の温度を快適に感じる。本発明によれば、使用者がある季節に着座面の所望温度を快適と感じる温度に設定しておけば、その後、季節が変わったことに応じて、着座面の所望温度が使用者が快適と感じる温度に自動的に補正される。よって、本発明の便座装置は快適性に優れている。
【0024】
以上のように、本発明によれば、便座の外側に着座面の周囲温度を検知するための専用の温度検知装置が不要であると共に、着座面の周囲温度の変動に対して着座面を所望温度に維持し得る便座装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態の便座装置の外観斜視図である。
【図2】第1実施形態の便座装置の構成図及び図1におけるA−A線で切断した断面図を示している。
【図3】第1実施形態の便座装置の着座面の周囲温度Toと着座面の表裏温度差Qとの関係を示すグラフである。
【図4】第1及び第2実施形態の便座装置の構成を説明するブロック図である。
【図5】第1実施形態の便座装置における発熱体への供給電力P、着座面の裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示すグラフであって、(a)は周囲温度Toが低い場合、(b)は周囲温度Toが高い場合を示している。
【図6】第1実施形態の便座装置において着座面を所望温度Tsaに維持し得る発熱体のヒータON回数(平均電力)と狙い値ステージ(狙い値)との相関を示すマップであって、(a)は所望温度Tsa=40℃のマップ、(b)は所望温度Tsa=36℃のマップを示している。
【図7】第1実施形態の便座装置において着座面を所望温度Tsaに維持するためのフローチャートである。
【図8】第2実施形態の便座装置における発熱体への供給電力P、着座面の裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示すグラフであって、(a)は周囲温度Toが低い場合、(b)は周囲温度Toが高い場合を示している。
【図9】第2実施形態の便座装置において着座面を所望温度Tsa=40℃に維持し得る発熱体に供給される平均電力Paと狙い値Tbaとの相関を示すマップである。
【図10】第2実施形態の便座装置において着座面を所望温度Tsaに維持するためのフローチャートである。
【図11】第3実施形態の便座装置の構成を説明するブロック図である。
【図12】第3実施形態の便座装置における発熱体への供給電流I、発熱体への供給電力P、着座面の裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示すグラフである。
【図13】第3実施形態の便座装置における四季毎の着座面補正温度Tsa’算定表である。
【図14】第3実施形態の便座装置において着座面の所望温度Tsaを四季毎に人が快適に感じる温度Tsa’に補正するためのフローチャートである。
【図15】従来の便座装置の説明図であって、(a)は便座装置の外観斜視図、(b)は便座装置の構成図をしている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の便座装置の実施形態について図面を参照しつつ詳しく説明する。
<第1実施形態>
(1)便座装置1の構成
図1に示すように、便器10の上面に便座装置1の本体2が取り付けられており、この本体2には便座3および便蓋4が回動自在に設けられている。また、便座3に向かって左側の便座3の脇には、本体2に固定されたスイッチ部5が設けられている。
【0027】
図2に示すように、便座装置1は、着座面3a及び空洞部3cを有する中空構造の便座3と、スイッチ部5に設けられ着座面3aの所望温度Tsaを設定する着座面温度設定スイッチ5aと、着座面3aの裏面3b側に設けられ着座面3aを昇温するヒータ6(発熱体)と、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを検知する温度検知装置7(サーミスタ)と、ヒータ6に供給される電力Pを制御するCPU8と、CPU8からの命令によってAC電源からヒータ6に供給される電力PのON/OFFを行うスイッチング回路9とを備えている。
【0028】
便座3は樹脂製であり、上方に湾曲した板部材である上部部材と平坦な板部材である下部部材とを、各部材の端部で上下に接合した中空構造を呈している。
【0029】
着座面温度設定スイッチ5aは、低温、中温及び高温に区分された温度設定レベルLから一つの温度設定レベルLを選択することによって、着座面3aの所望温度Tsa(℃)を設定するスイッチである。
【0030】
ヒータ6は、着座面3aの裏面3bの湾曲形状に沿って裏面3bに接触するように配置された複数本のニクロム線よりなる。ニクロム線に電流が流れることにより発熱する。
【0031】
温度検知装置7には、温度変化に対して電気抵抗が大きく変化する抵抗体であるサーミスタを用いている。温度検知装置7は、ヒータ6を構成するニクロム線同士の間に着座面3aの裏面3bに接触するように配置されている。
【0032】
スイッチング回路9には、ベースに電流を流したときにスイッチONとなり、ベースに電流を流さないときにスイッチOFFとなるトランジスタを用いる。なお、CPU8の内部構成については後述する。
【0033】
ここで、図2に示すように、着座面3aの周囲温度をTo、着座面3aの温度をTs、着座面3aの裏面3b側の温度をTbとした場合、図3に示すように、周囲温度Toと着座面3aからの放熱量である表裏温度差Q(Q=Ts−Tb)との関係は、直線的な比例関係となる。図3に示すように、周囲温度Toが0℃から40℃まで上昇するとき、表裏温度差QはQ0からQ40まで低下する。
【0034】
このように着座面3aの周囲温度Toによって着座面3aからの放熱量が異なることから、冬場のように周囲温度Toが低いときには、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを高くする必要があり、AC電源からヒータ6に多くの電力Pが供給される。一方、夏場のように周囲温度Toが高いときには、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを低くする必要があり、AC電源からヒータ6に供給される電力Pは小さい。
【0035】
図4に示すように、CPU8は、着座面温度設定部8aと、マップ選択部8bと、マップMと狙い値設定部8cと、制御部8dと、平均電力算出部8eと、狙い値変更部8fと、マップMとを備えている。
【0036】
着座面温度設定部8aは、着座面温度設定スイッチ5aによって選択された温度設定レベルLに基づいて、着座面3aの所望温度Tsa(℃)を設定する部分である。本実施形態においては、着座面温度設定スイッチ5a及び着座面温度設定部8aが着座面温度設定手段に相当する。
【0037】
マップ選択部8bは、所望温度Tsa毎に作成されCPU8に記憶された複数のマップMの中から着座面温度設定部8aにより設定された所望温度Tsaに対応したマップMを選択する部分である。
【0038】
狙い値設定部8cは、マップ選択部8bで選択されたマップMに基づいて、着座面3aの裏面3b側の温度Tbの初期の狙い値Tba(℃)を設定する部分である。例えば、低い所望温度Tsaに対応したマップMが用いられている場合には、初期の狙い値Tbaを低く設定し、高い所望温度Tsaに対応したマップMが用いられている場合には、初期の狙い値Tbaを高く設定する。本実施形態においては、マップ選択部8b、マップM及び狙い値設定部8cが狙い値設定手段に相当する。
【0039】
なお、初期の狙い値Tbaを、マップMを介することなく着座面3aの所望温度Tsaに基づいて設定することもできる。この場合、図4において、着座面温度設定部8aから狙い値設定部8cに向かう矢印が描かれることとなる。
【0040】
制御部8dは、温度検知装置7で検知された着座面3aの裏面3b側の温度Tb(℃)が狙い値Tbaとなるように、スイッチング回路9に電力PのON/OFFの命令を送って、ヒータ6に供給される電力Pを制御する部分である。本実施形態においては、制御部8d及びスイッチング回路9が制御手段に相当する。
【0041】
平均電力算出部8eは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaになった後、所定期間のヒータ6の通電回数N(ヒータON回数)に基づいて、ヒータ6に供給される平均電力Paを算出する部分である。ただし、本実施形態においては、以下に述べるように、所定期間のヒータ6の通電回数Nとヒータ6に供給される平均電力Paとが一対一の関係にあることに基づいて、平均電力Paを算出することなく、所定期間のヒータ6の通電回数Nを、ヒータ6に供給される平均電力Paの代わりに用いることとした。平均電力算出部8eは平均電力算出手段に相当する。
【0042】
図5にヒータ6(発熱体)への供給電力P、着座面3aの裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示す。ここで図5(a)は着座面3aの周囲温度Toが低い場合、図5(b)は着座面3aの周囲温度Toが高い場合を示している。上述した制御部8d及びスイッチング回路9によって、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaよりも所定量低い温度となったときにヒータ6への通電をON、狙い値Tbaよりも所定量高い温度となったときに通電をOFFとしている。
【0043】
図5に示すように、着座面3aの周囲温度Toが急激に変化しない限り、通電がONとなってからOFFとなるまでの通電時間(ON時間)はほぼ一定の時間Δtとなる。そして、図5(a)に示すように、周囲温度Toが低い場合には、所定期間のヒータ6への通電回数N(ヒータON回数)が多くなり、図5(b)に示すように、周囲温度Toが高い場合には、所定期間のヒータ6への通電回数Nが少なくなる。よって、所定期間のヒータ6の通電回数Nは、ヒータ6に供給される平均電力Paと比例関係にあることがわかる。
【0044】
図5(a)において、ヒータ6への通電がONとなりヒータ6に定格電力P0が供給されると、時間tの経過に伴い着座面3aの裏面3b側の温度Tb及び着座面3aの温度Tsが上昇する。そして、温度Tbが狙い値Tbaに到達したときヒータ6への通電がOFFとされる。このときの時間をt0として時間がt1になるまでの間の通電回数Nは6回(N1〜N6)となっている。一方、図5(b)においては、時間t0から時間t1までの間の通電回数Nは4回(N1〜N4)となっている。
【0045】
このとき、図5(a)における平均電力Paは、定格電力P0に6回/{(t1−t0)/Δt)}を掛け合わせることにより算出され、図5(b)における平均電力Paは、定格電力P0に4回/{(t1−t0)/Δt)}を掛け合わせることにより算出される。したがって、所定期間のヒータ6の通電回数Nとヒータ6に供給される平均電力Paとは一対一の関係にあり、所定期間の通電回数Nを計測すること自体が平均電力Paを算出することと等価であると見なすことができる。
【0046】
狙い値変更部8fは、着座面3aの周囲温度To、着座面3aの所望温度Tsa、及び着座面3aの裏面3b側の温度Tbの狙い値Tbaとの相関がある平均電力Pa(本実施形態においては、所定期間のヒータ6の通電回数N)に基づいて、着座面3aが所望温度Tsaを維持するように狙い値Tbaを狙い値Tba’に変更する部分である。狙い値Tbaから狙い値Tba’への変更にはマップMを用いる。新たな狙い値Tba’は、初期の狙い値Tbaと同様に制御部8dに送られる。詳細については後述する。本実施形態においては、マップM及び狙い値変更部8fが狙い値変更手段に相当する。
【0047】
マップMは、着座面3aの周囲温度Toの変動に対して着座面3aを所望温度Tsaに維持し得るヒータ6に供給される平均電力Pa(本実施形態においては、所定期間のヒータ6の通電回数N)と狙い値Tbaとの相関を示す関係図である。本実施形態におけるマップMは、図6に示すようにステージ方式であり、着座面3aの所望温度Tsa毎に一枚ずつのマップMが作成され全てのマップMの情報がCPU8に記憶されている。複数のマップMのうち、図6(a)に所望温度Tsa=40℃のマップM、図6(b)に所望温度Tsa=36℃のマップMを示す。
【0048】
図6(a)に示す所望温度Tsa=40℃のマップMは、横軸を平均電力Paに対応する1時間当りのヒータON回数N(ヒータ6への通電ON回数)、縦軸を狙い値Tbaに対応する狙い値ステージStとしている。また、狙い値ステージStは、St=1〜5の5段階となっており、図中の右端に示しているように、狙い値ステージStの各段階に対応した狙い値Tbaが定められている。
【0049】
図6(a)に示すマップMは、例えば、次に述べるように実験的に作成される。まず、実験室内の温度を一定に保ち、着座面3aの周囲温度Toを一定の温度とする。そして、着座面3aの温度Tsを実測しながら、着座面3aが所望温度Tsa=40℃を1時間維持するようにヒータ6への通電のON/OFFを制御する。このときの1時間当りのヒータ6への通電ON回数をヒータON回数Nとする共に、この期間の着座面3aの裏面3b側の温度Tbの平均値を狙い値Tbaとして記録する。この作業を、着座面3aの周囲温度Toを変化させながら複数回繰り返すことによって、着座面3aが所望温度Tsa=40℃を維持するときのヒータON回数Nと狙い値Tbaとの組み合わせが複数個求まる。
【0050】
この複数個のヒータON回数Nと狙い値Tbaとの組み合わせに基づいて、適宜データ補完及び値の四捨五入等の処理を行うと、狙い値Tba=41〜45℃の範囲の1℃刻みに、5つの狙い値ステージStと狙い値Tbaに対応するヒータON回数Nが求まる。このヒータON回数Nが図中で「適切」と示されている。そして、狙い値ステージStとヒータON回数Nとが図中の「適切」を満足しているときには、着座面3aの周囲温度Toや着座面3aの温度Tsを実測することなく、着座面3aが所望温度Tsa=40℃に維持されている。
【0051】
ここで、ある狙い値ステージStに対応した狙い値Tbaにおいて、ヒータON回数Nが図中の「周囲暑」となった場合には、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを狙い値Tbaに維持するためのヒータON回数Nが「適切」よりも少ない。ヒータON回数Nが「適切」よりも少なくなる理由は、この狙い値ステージStが適用されるべき周囲温度Toよりも実際の周囲温度Toが高かったことによるものであり、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを狙い値Tbaに維持している状態において、着座面3aの温度Tsは所望温度Tsa=40℃よりも高くなっている。したがって、ヒータON回数Nが図中の「周囲暑」となった場合には、狙い値ステージStを下げて、狙い値Tbaを下げる必要がある。
【0052】
一方、ある狙い値ステージStに対応した狙い値Tbaにおいて、ヒータON回数Nが図中の「周囲寒」となった場合には、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを狙い値Tbaに維持するためのヒータON回数Nが「適切」よりも多い。この場合、着座面3aの温度Tsは所望温度Tsa=40℃よりも低くなっているため、狙い値ステージStを上げて、狙い値Tbaを上げる必要がある。
【0053】
図6(b)に示す所望温度Tsa=36℃のマップMについても、上述の所望温度Tsa=40℃のマップMと同様に実験的に作成される。所望温度Tsa=36℃のマップMの各狙い値ステージStに対応した狙い値Tbaは、所望温度Tsa=40℃のマップMの各狙い値ステージStに対応した狙い値Tbaよりも低い。また、所望温度Tsa=36℃のマップMの各狙い値ステージStに対応した「適切」となるヒータON回数Nは、所望温度Tsa=40℃のマップMの各狙い値ステージStに対応した「適切」となるヒータON回数Nよりも少ない。
【0054】
(2)便座装置1の作動ステップ
本実施形態の便座装置1において着座面3aを所望温度Tsaに維持するためのフローチャートを図7に示す。以降、主に図6(a)及び図7に基づいて説明する。
STARTにおいて、図6(a)のマップMの基本位置である狙い値ステージSt=3が設定されている。STARTは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値ステージSt=3に対応した初期の狙い値Tba=43℃となり、ヒータ6の通電がOFFになった時点である。この時点は、図5(a)及び(b)の時間t0に相当している。
【0055】
ステップS1において、CPU8の内臓時計の時間をリセットしてt=0とすると共に、ヒータON回数NとしてN=1を設定する。ステップS2において、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaから温度ΔTを引いた温度以下となったか否かの判定を行う。ここで、ΔT=0.2〜0.5℃程度とするとよい。Tb≦Tba−ΔTの場合にはステップS3に進み、Tb>Tba−ΔTの場合にはステップS2の判定を継続する。ステップS2の判定が継続されている間に温度Tbが徐々に低下して、やがてTb≦Tba−ΔTとなりステップS3に進む。
【0056】
ステップS3において、ヒータ6の通電をONにする。ステップS4において、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaに温度ΔTを加えた温度以上となったか否かの判定を行う。Tb≧Tba+ΔTの場合にはステップS5に進み、Tb<Tba+ΔTの場合にはステップS4の判定を継続する。ステップS4の判定が継続されている間に温度Tbが徐々に上昇して、やがてTb≧Tba+ΔTとなりステップS5に進む。
【0057】
ステップS5において、ヒータ6の通電をOFFにする。ステップS6において、時間tが所定期間taだけ経過したか否かの判定を行う。ここで、ta=1時間とする。t≧taの場合にはステップS8に進む。t<taの場合にはステップS7に進んで、ヒータON回数Nに1を加えてN=N+1とした後、ステップS2に戻る。
【0058】
ステップS8に進むときのヒータON回数Nは、1時間当りのヒータ6への通電ON回数となっている。ステップS8において、ヒータON回数Nが、図6(a)の狙い値ステージSt=3における「適切」なヒータON回数N=21又は22回となっているか否かの判定を行う。ヒータON回数Nが「適切」である場合には、着座面3aが所望温度Tsa=40℃に維持されているため、狙い値ステージSt=3を変更する必要はなく、ステップS1に戻って再び次の所定期間taのフローチャートを実行する。ヒータON回数Nが「適切」ではない場合にはステップS9に進む。
【0059】
ステップS9において、ヒータON回数Nが「適切」よりも多いか否かの判定を行う。図6(a)の狙い値ステージSt=3において、ヒータON回数Nが「適切」よりも少ない、すなわち、ヒータON回数Nが「周囲暑」以下となっている場合にはステップS10に進む。また、ヒータON回数Nが「適切」よりも多い、すなわち、ヒータON回数Nが「周囲寒」以上となっている場合にはステップS11に進む。
【0060】
ステップS10に進んだ場合には、狙い値ステージStを一つ下げてSt=2とした後、ステップS12に進む。また、ステップS11に進んだ場合には、狙い値ステージStを一つ上げてSt=4とした後、ステップS12に進む。ステップS12において、狙い値ステージStに対応した狙い値Tbaを抽出する。この抽出した狙い値Tbaが図4に示した新たな狙い値Tba’となる。その後、ステップS13に進み、新たな狙い値Tba’を初期の狙い値Tbaに変換(Tba=Tba’)した後、ステップS1に戻って再び次の所定期間taのフローチャートを実行する。
【0061】
以上のステップS1〜S13を繰り返し実行することによって、たとえ着座面3aの周囲温度Toが変動したとしても、着座面3aを所望温度Tsa=40℃に維持することが可能となっている。なお、図7のフローチャートにはENDが示されていないが、便座装置1の主電源をOFFにした時点でENDとなる。
【0062】
(3)便座装置1の効果
このような本実施形態の便座装置1によれば、ヒータ6に供給される平均電力Paの代用となる1時間当りのヒータON回数Nは、便座3の着座面3aの周囲温度To、着座面3aの所望温度Tsa、及び着座面3aの裏面3b側の温度Tbの狙い値Tbaと相関があり、この1時間当りのヒータON回数Nに基づいて狙い値Tbaを変更しつつ、着座面3aが所望温度Tsaを維持するようにヒータ6へ電力Pを供給する。
【0063】
着座面3aの周囲温度Toによって着座面3aからの放熱量(着座面3aの表裏温度差Q=Ts−Tb)が異なることから、着座面3aの周囲温度Toの変化に応じてヒータ6に供給される平均電力Paが変化する。よって、1時間当りのヒータON回数Nも平均電力Paと一対一の関係で変化する。
【0064】
したがって、本実施形態の便座装置1によれば、1時間当りのヒータON回数Nによって着座面3aの周囲温度Toを推定することが可能であり、従来の便座装置50において必要としていた専用の温度検知装置(室温検知センサ55)が不要となる。これにより、着座面3aの周囲温度Toの変動に対して着座面3aを所望温度Tsaに維持し得る便座装置を、従来よりも安価に提供することが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態においては、着座面3aの周囲温度Toを推定することを必須としてはいないが、1時間当りのヒータON回数Nに基づいて周囲温度Toを推定することも可能である。
【0066】
<第2実施形態>
(1)便座装置の構成
図4に示すように、本実施形態は、第1実施形態におけるCPU8をCPU28に変更した実施形態である。詳しくは、CPU28内において、第1実施形態における平均電力算出部8eが平均電力算出部28eに、第1実施形態における狙い値変更部8fが狙い値変更部28fに、マップMがマップMMに変更されている。これ以外の部分(部品)については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0067】
平均電力算出部28eは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaになった後、所定期間のヒータ6の合計の通電時間ΣΔtに基づいて、ヒータ6(発熱体)に供給される平均電力Paを算出する部分である。平均電力算出部28eは平均電力算出手段に相当する。なお、合計の通電時間ΣΔtに基づいて平均電力Paを算出できるということは、当然ながら、合計の非通電時間(OFF時間)に基づいて平均電力Paを算出することもできる。
【0068】
図8にヒータ6への供給電力P、着座面3aの裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示す。ここで図8(a)は着座面3aの周囲温度Toが低い場合、図8(b)は着座面3aの周囲温度Toが高い場合を示している。第1実施形態と同様に、制御部8d及びスイッチング回路9によって、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaよりも所定量低い温度となったときにヒータ6への通電をON、狙い値Tbaよりも所定量高い温度となったときに通電をOFFとしている。
【0069】
図8に示すように、着座面3aの周囲温度Toの変化や、使用者の便座3への着座等によって、通電がONとなってからOFFとなるまでの通電時間(ON時間)にばらつきが生じる場合がある。図8(a)において、時間t0から時間t1までの間の通電回数Nは6回、通電時間はΔt1〜Δt6となっている。一方、図8(b)においては、時間t0から時間t1までの間の通電回数Nは4回、通電時間はΔt1〜Δt4となっている。
【0070】
このとき、ヒータ6に供給される平均電力Paは、ヒータ6への通電がONとなっているときの定格電力P0に(合計の通電時間ΣΔt)/(所定期間t1−t0)を掛け合わせることによって算出することができる。
【0071】
狙い値変更部28fは、着座面3aの周囲温度To、着座面3aの所望温度Tsa、及び着座面3aの裏面3b側の温度Tbの狙い値Tbaとの相関がある平均電力Paに基づいて、着座面3aが所望温度Tsaを維持するように狙い値Tbaを狙い値Tba’に変更する部分である。狙い値Tbaから狙い値Tba’への変更にはマップMMを用いる。新たな狙い値Tba’は、初期の狙い値Tbaと同様に制御部8dに送られる。詳細については後述する。本実施形態においては、マップMM及び狙い値変更部28fが狙い値変更手段に相当する。
【0072】
マップMMは、着座面3aの周囲温度Toの変動に対して着座面3aを所望温度Tsaに維持し得るヒータ6に供給される平均電力Paと狙い値Tbaとの相関Rを示す関係図である。本実施形態におけるマップMMは、図9に示すようにグラフ方式であり、着座面3aの所望温度Tsa毎に一枚ずつのマップMMが作成され全てのマップMMの情報がCPU28に記憶されている。複数のマップMMのうち、図9に所望温度Tsa=40℃のマップMMを示す。
【0073】
図9に示す所望温度Tsa=40℃のマップMMは、横軸を平均電力Pa、縦軸を狙い値Tbaとしている。マップMMは、第1実施形態におけるマップMとほぼ同様の手順により実験的に作成されるため、説明を省略する。
【0074】
マップMMにおいて、狙い値Tbaと平均電力PaとがマップMMの相関Rに一致しているときには、着座面3aの周囲温度Toや着座面3aの温度Tsを実測することなく、着座面3aが所望温度Tsa=40℃に維持されている。
【0075】
マップMMにおいて、図9に示すように、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを初期の狙い値Tba1=43℃に維持するための平均電力PaがPa1であったとする。そして、狙い値Tba1と平均電力Pa1とが図9の点Kにプロットされたとする。このとき点Kは、相関Rよりも右側に位置している。これは、第1実施形態で示したマップMにおいてヒータON回数Nが「周囲寒」となった状態と同様の状態である。すなわち、狙い値Tba1=43℃が適用されるべき周囲温度Toよりも実際の周囲温度Toが低かったことを意味している。この場合、着座面3aの温度Tsは所望温度Tsa=40℃よりも低くなっているため、狙い値TbaをTba1よりも上げる必要がある。
【0076】
図9に示すように、狙い値Tba1よりも温度が高い狙い値Tba2を設定するには、
平均電力Pa1をマップMMの相関Rに当てはめることにより新たな狙い値Tba2を設定する。そして、着座面3aの裏面3b側の温度Tbを新たな狙い値Tba2に維持するための平均電力Pa2を算出し、この手順を狙い値Tbaと平均電力Paとが相関Rに一致するまで繰り返すとよい。ただし、この制御は、使用者によって動作中(使用者が便座装置1を使用中)にキャンセルされてもよい。
【0077】
(2)便座装置の作動ステップ
本実施形態の便座装置において着座面3aを所望温度Tsaに維持するためのフローチャートを図10に示す。以降、主に図9及び図10に基づいて説明する。
STARTは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが初期の狙い値Tbaとなり、ヒータ6の通電がOFFになった時点である。この時点は、図8(a)及び(b)の時間t0に相当している。ここで、初期の狙い値TbaをマップMMの縦軸の狙い値Tba範囲の中間温度(図9においては43℃)とするとよい。
【0078】
ステップSS1において、CPU28の内臓時計の時間をリセットしてt=0とすると共に、通電時間計測回数j=1を設定する。ステップSS2において、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaから温度ΔTを引いた温度以下となったか否かの判定を行う。Tb≦Tba−ΔTの場合にはステップSS3に進み、Tb>Tba−ΔTの場合にはステップSS2の判定を継続する。ステップSS2の判定が継続されている間に温度Tbが徐々に低下して、やがてTb≦Tba−ΔTとなりステップSS3に進む。
【0079】
ステップSS3において、ヒータ6の通電をONにする。ステップSS4において、CPU28に内臓されたタイマTMをONにする。ステップSS5において、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaに温度ΔTを加えた温度以上となったか否かの判定を行う。Tb≧Tba+ΔTの場合にはステップSS6に進み、Tb<Tba+ΔTの場合にはステップSS5の判定を継続する。ステップSS5の判定が継続されている間に温度Tbが徐々に上昇して、やがてTb≧Tba+ΔTとなりステップSS6に進む。
【0080】
ステップSS6において、ヒータ6の通電をOFFにする。ステップSS7において、タイマTMをOFFにして、通電時間計測回数j=1における通電時間ΔtjをCPU28内に記憶する。ステップSS8において、時間tが所定期間taだけ経過したか否かの判定を行う。例えば、ta=1時間とする。t≧taの場合にはステップSS10に進む。t<taの場合にはステップSS9に進んで、通電時間計測回数jに1を加えてj=j+1とした後、ステップSS2に戻る。
【0081】
ステップSS10において、所定期間taのヒータ6の合計の通電時間ΣΔtjを算出する。ステップSS11において、ヒータ6に供給される平均電力Paを、Pa=P0ΣΔtj/taとして算出する。
【0082】
ステップSS12において、狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にあるか否かの判定を行う。狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にある場合には、着座面3aが所望温度Tsa=40℃に維持されているため、ステップSS1に戻って再び次の所定期間taのフローチャートを実行する。狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にない場合にはステップSS13に進む。
【0083】
ステップSS13において、マップMMの相関R上の平均電力Paに対応した狙い値Tbaを抽出する。この抽出した狙い値Tbaが図4に示した新たな狙い値Tba’となる。その後、ステップSS14に進み、新たな狙い値Tba’を初期の狙い値Tbaに変換(Tba=Tba’)した後、ステップSS1に戻って再び次の所定期間taのフローチャートを実行する。
【0084】
以上のステップSS1〜SS14を繰り返し実行することによって、たとえ着座面3aの周囲温度Toが変動したとしても、着座面3aを所望温度Tsa=40℃に維持することが可能となっている。なお、図10のフローチャートにはENDが示されていないが、便座装置の主電源をOFFにした時点でENDとなる。
【0085】
(3)便座装置の効果
このような本実施形態の便座装置によれば、ヒータ6に供給される平均電力Paは、便座3の着座面3aの周囲温度To、着座面3aの所望温度Tsa、及び着座面3aの裏面3b側の温度Tbの狙い値Tbaと相関があり、この平均電力Paに基づいて狙い値Tbaを変更しつつ、着座面3aが所望温度Tsaを維持するようにヒータ6へ電力Pを供給する。
【0086】
したがって、本実施形態の便座装置によれば、平均電力Paによって着座面3aの周囲温度Toを推定することが可能であり、従来の便座装置50において必要としていた専用の温度検知装置(室温検知センサ55)が不要となる。これにより、第1実施形態と同様に、着座面3aの周囲温度Toの変動に対して着座面3aを所望温度Tsaに維持し得る便座装置を、従来よりも安価に提供することが可能となる。
【0087】
なお、本実施形態においては、第1実施形態と同様に、着座面3aの周囲温度Toを推定することを必須としてはいないが、平均電力Paに基づいて周囲温度Toを推定することも可能である。
【0088】
<第3実施形態>
(1)便座装置の構成
図11に示すように、本実施形態は、第2実施形態におけるCPU28をCPU38に変更すると共に、第2実施形態におけるスイッチング回路9をPWM39に変更した実施形態である。詳しくは、CPU38内において、第2実施形態における制御部8dが制御部38dに、第2実施形態における平均電力算出部28eが平均電力算出部38eに変更されていると共に、新たに四季判定部38g及び着座面温度補正部38hが追加されている。これ以外の部分(部品)については、第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0089】
PWM39(Pulse Width Modulation)は、CPU38内の制御部38dからの命令に従って高速でトランジスタスイッチのON/OFFを繰り返すことによって、AC電源からヒータ6(発熱体)に電力Pを平均電力Paとして供給するスイッチング回路である。PWM39は、AC電源から供給される電流の一周期内でスイッチをONにしている時間とOFFにしている時間との割合(デューティー比)を変化させることによって、平均電力Paの大きさを調整している。
【0090】
制御部38dは、PID制御部380と電流演算部381とからなる。PID制御は、フィードバック制御の一種であり、入力値の制御を出力値と目標値との差(偏差)、その積分、および微分の3つの要素によって行う方法のことである。PID制御部380は、入力値である着座面3aの裏面3b側の温度Tbと、目標値である狙い値Tbaとの差に応じて、最終的に温度Tbが滑らかに狙い値Tbaにすりつくように、ヒータ6の上昇温度を決定し、ヒータ6に供給する電流Iの量(定格電流の何%にするか)を決定する。電流演算部381は、PID制御部380により決定された電流Iの量に基づいてデューティー比を決定し、PWM39へON/OFF制御の命令を送る。
【0091】
本実施形態においては、制御部38d及びPWM39が制御手段に相当する。以上で述べたPWM39、PID制御部380及び電流演算部381は、温度制御をはじめとした各種制御に一般的に用いられている公知の制御技術である。
【0092】
平均電力算出部38eは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが狙い値Tbaになった後、所定期間のヒータ6に供給される平均電力Paを算出する部分である。平均電力算出部38eは平均電力算出手段に相当する。
【0093】
図12にヒータ6への供給電流I、ヒータ6への供給電力P、着座面3aの裏面側温度Tb及び着座面温度Tsの経時変化を示す。図12に示すように、PWM39によって、供給電流Iのデューティー比が、100%、80%、60%、50%、40%と段階的に小さくなり、同様に、ヒータ6に供給される電力Pが、定格電力P0の100%、80%、60%、50%、40%と段階的に小さくなっている。なお、図12は、イメージ図であるため、供給電流I及び供給電力Pを段階的に低減しているが、実際の制御においては、供給電流I及び供給電力Pを滑らかに低減している。
【0094】
時間tの経過に伴い着座面3aの裏面3b側の温度Tb及び着座面3aの温度Tsが上昇する。そして、温度Tbが狙い値Tbaに許容値範囲内で到達したときにヒータ6へ供給されている電力Pが平均電力Paであり、平均電力Paは、定格電力P0の40%となっている。その後、時間がt1になるまでの間、平均電力Paが維持されている。このように、平均電力算出部38eにより、電流演算部381で決定したデューティー比から直接平均電力Paを算出することができる。
【0095】
なお、デューティー比が一定期間安定していることを確認した後、この一定期間内のデューティー比の平均値から平均電力Paを算出することによって、平均電力Paの算出精度を高めることができる。
【0096】
四季判定部38gは、ヒータ6に供給される平均電力Paの推移が所定範囲内でかつ所定日数以上継続したことに基づいて四季Sを判定する部分である。四季判定部38gには、平均電力算出部38eで算出した平均電力Pa、及びCPU38の内臓時計の時間tに関する情報が送られる。詳細については後述する。四季判定部38gは四季判定手段に相当する。
【0097】
着座面温度補正部38hは、四季判定部38gにより判定した四季Sに応じて着座面3aの所望温度Tsaを四季S毎に人が快適に感じる温度Tsa’に補正する部分である。着座面温度補正部38hは着座面温度補正手段に相当する。
【0098】
例えば、着座面3aの所望温度Tsaを、夏は若干高めの温度、冬は若干低めの温度に設定すると、使用者は着座面3aの温度Tsを快適に感じる。そこで、図13の四季S毎の着座面補正温度Tsa’算定表に示すように、各温度設定レベルL(低温、中温、高温)と、各四季S(冬、春秋、夏)とに対応した9個の着座面補正温度Tsa’を設定し、この情報をCPU38に記憶されておく。そして、着座面温度補正部38hは、着座面補正温度Tsa’算定表に基づいて着座面補正温度Tsa’を設定する。
【0099】
(2)便座装置の作動ステップ
本実施形態の便座装置において着座面3aの所望温度Tsaを四季S毎に人が快適に感じる温度Tsa’に補正するためのフローチャートを図14に示す。以降、主に図9及び図14に基づいて説明する。
【0100】
STARTは、着座面3aの裏面3b側の温度Tbが初期の狙い値Tbaとなり、ヒータ6へ供給される平均電力Paが安定した時点である。この時点は、図12の時間t0に相当している。ここで、初期の狙い値TbaをマップMMの縦軸の狙い値Tba範囲の中間温度(図9においては43℃)とするとよい。
【0101】
ステップST1において、CPU28の内臓時計の時間をリセットしてt=0とする。ステップST2において、狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にあるか否かの判定を行う。狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にある場合には、着座面3aが所望温度Tsa=40℃に維持されており、ステップST5に進む。狙い値Tba及び平均電力Paが相関R上にない場合にはステップST3に進む。
【0102】
ステップST3及びST4は、第2実施形態におけるステップSS13及びSS14と同一であるため説明を省略する。ステップST3及びST4を経由した後、ステップST1に戻って再びフローチャートを実行する。
【0103】
本実施形態において、以降で説明するステップST5〜ST13が、ヒータ6に供給される平均電力Paの推移が所定範囲内でかつ所定日数以上継続したことに基づいて四季Sを判定するフローチャートである。ここで、所定範囲を定めるための電力P1〜P6は、P1<P2<P3<P4<P5<P6の大小関係にあるとする。
【0104】
ステップST5において、平均電力Paが電力P1以上かつ電力P2以下の所定範囲に入っているか否かの判定を行う。平均電力Paが所定範囲に入っている場合には、ステップST6に進み、平均電力Paが所定範囲に入っていない場合には、ステップST8に進む。
【0105】
同様に、ステップST8において、平均電力Paが電力P3以上かつ電力P4以下の所定範囲に入っているか否かの判定を行う。平均電力Paが所定範囲に入っている場合には、ステップST9に進み、平均電力Paが所定範囲に入っていない場合には、ステップST11に進む。
【0106】
同様に、ステップST11において、平均電力Paが電力P5以上かつ電力P6以下の所定範囲に入っているか否かの判定を行う。平均電力Paが所定範囲に入っている場合には、ステップST12に進み、平均電力Paが所定範囲に入っていない場合には、ステップST1に戻って再びフローチャートを実行する。
【0107】
ステップST6において、平均電力Paが電力P1以上かつ電力P2以下の所定範囲に入っている状態で、時間tが所定期間tbだけ経過したか否かの判定を行う。例えば、tb=10日とする。t≧tbの場合にはステップST7に進み、四季S=「冬」と判定する。t<tbの場合にはステップST2に戻って、時間tをリセットすることなく再びフローチャートを実行する。
【0108】
同様に、ステップST9において、t≧tbの場合にはステップST10に進み、四季S=「春秋」と判定する。t<tbの場合にはステップST2に戻って再びフローチャートを実行する。
【0109】
同様に、ステップST12において、t≧tbの場合にはステップST10に進み、四季S=「夏」と判定する。t<tbの場合にはステップST2に戻って再びフローチャートを実行する。
【0110】
こうして、ステップST7、ST10及びST13のうちのいずれかを経由して、四季Sが定まった後、ステップST14において、図13に示す四季S毎の着座面補正温度Tsa’算定表に基づいて着座面補正温度Tsa’を設定する。
【0111】
ステップST15において、着座面補正温度Tsa’を着座面温度設定部8aに入力する新たな所望温度Tsaとして変換(Tsa=Tsa’)する。ステップST16において、マップ選択部8bにより複数のマップMMの中から新たな所望温度Tsaに対応したマップMMを選択する。ステップST17において、狙い値設定部8cにより、マップMMに基づいて新たな狙い値Tbaを設定する。その後、STARTに戻って再びフローチャートを実行する。
【0112】
以上のステップST1〜ST4を繰り返し実行することによって、たとえ着座面3aの周囲温度Toが変動したとしても、着座面3aを所望温度Tsa=40℃に維持することが可能となっている。また、ステップST5〜ST13を繰り返し実行することによって、四季Sを判定することが可能となっている。なお、図14のフローチャートにはENDが示されていないが、便座装置の主電源をOFFにした時点でENDとなる。
【0113】
(3)便座装置の効果
このような本実施形態の便座装置によれば、使用者がある季節に着座面3aの所望温度Tsaを快適と感じる温度設定レベルLに設定しておけば、その後、季節が変わったことに応じて、四季判定部38g及び着座面温度補正部38hによって、着座面3aの所望温度Tsaが使用者が快適と感じる温度に自動的に補正される。よって、本実施形態の便座装置は快適性に優れている。
本実施形態における他の効果については、第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0114】
<その他の実施形態>
本発明の便座装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができることは言うまでもない。
【0115】
例えば、第1及び第2実施形態においては、着座面3aの周囲温度Toを推定していないが、所定期間のヒータON回数N又は平均電力Paに基づいて周囲温度Toを推定することも可能である。そして、推定した周囲温度Toを、シャワートイレの温水や温風の快適な温度を設定するのに活用することもできる。
【0116】
また、第3実施形態においては、PID制御により着座面3aの裏面3b側の温度Tbのフィードバック制御を行っているが、PID制御に代えて、P制御(比例制御)、I制御(積分制御)、D制御(微分制御)又はこれらのうちの2つを組み合わせた制御とすることもできる。
【0117】
また、第3実施形態においては、着座面3aの所望温度Tsaを四季S毎に人が快適に感じる温度Tsa’に補正している。すなわち、着座面3aの所望温度Tsaの設定に「季節係数」を導入している。これをさらに発展させて、着座面3aの所望温度Tsaの設定に「日変動係数」を導入することもできる。「日変動係数」の導入により、例えば、一日の中で起床時及び就寝時の時間帯においては、所望温度Tsaを若干高い温度に設定して、便座装置の快適性をさらに向上させることができる。
【0118】
また、第1〜第3実施形態においては、便座装置1の便蓋4の開閉状況や、便座3への便座カバーの取付状況について言及していない。しかし、着座面3aの温度Tsは、便蓋4の開閉状況や便座カバーの取付状況に若干影響される。したがって、便座装置に便蓋4の開閉状況や便座カバーの取付状況を検知する検知装置を備える構成として、この検知結果をマップM及びMMに反映させてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 … 便座装置 3 … 便座
3a … 着座面 3b … 裏面
5a … 着座面温度設定スイッチ(着座面温度設定手段)
6 … ヒータ(発熱体) 7 … 温度検知装置
8a … 着座面温度設定部(着座面温度設定手段)
8c … 狙い値設定部(狙い値設定手段)
8d,38d… 制御部(制御手段)
8e,28e,38e… 平均電力算出部(平均電力算出手段)
8f,28f… 狙い値変更部(狙い値変更手段)
38g… 四季判定部(四季判定手段)
38h… 着座面温度補正部(着座面温度補正手段)
9 … スイッチング回路(制御手段) 39 … PWM(制御手段)
N … 通電回数(ON回数) M,MM… マップ
P … 電力 Pa … 平均電力
R … 相関 S … 四季
Tb … 裏面側温度 Tba,Tba’… 狙い値
Ts … 着座面温度 Tsa… 所望温度
Tsa’… 着座面補正温度 To … 周囲温度
t … 時間 ta,tb… 所定期間
Δt … 通電時間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座面を有する便座と、
前記着座面の裏面側に設けられ該着座面を昇温する発熱体と、
前記着座面の裏面側の温度を検知する温度検知装置と、
前記着座面の所望温度を設定する着座面温度設定手段と、
前記着座面の裏面側の温度の狙い値を設定する狙い値設定手段と、
前記温度検知装置で検知された前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値となるように前記発熱体に供給される電力を制御する制御手段と、
前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後に、前記発熱体に供給される平均電力を算出する平均電力算出手段と、
前記着座面の周囲温度、前記所望温度及び前記狙い値との相関がある前記平均電力に基づいて、該着座面が該所望温度を維持するように該狙い値を変更する狙い値変更手段と、
を備えていることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記平均電力算出手段は、前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後、所定期間の前記発熱体の通電回数に基づいて該発熱体に供給される前記平均電力を算出することを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記平均電力算出手段は、前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後、所定期間の前記発熱体の合計の通電時間に基づいて該発熱体に供給される前記平均電力を算出することを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項4】
前記着座面の前記周囲温度の変動に対して該着座面を前記所望温度に維持し得る前記発熱体に供給される前記平均電力と前記狙い値との相関を示すマップを備え、
前記狙い値変更手段は、前記平均電力算出手段により算出された前記平均電力を前記マップの前記相関に当てはめることにより新たな前記狙い値を設定し、このステップを該狙い値と該平均電力とが該マップの該相関に一致するまで繰り返すことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一つに記載の便座装置。
【請求項5】
前記発熱体に供給される前記平均電力の推移が所定範囲内でかつ所定日数以上継続したことに基づいて四季を判定する四季判定手段と、
前記四季判定手段により判定した前記四季に応じて前記着座面の前記所望温度を該四季毎に人が快適に感じる温度に補正する着座面温度補正手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一つに記載の便座装置。
【請求項1】
着座面を有する便座と、
前記着座面の裏面側に設けられ該着座面を昇温する発熱体と、
前記着座面の裏面側の温度を検知する温度検知装置と、
前記着座面の所望温度を設定する着座面温度設定手段と、
前記着座面の裏面側の温度の狙い値を設定する狙い値設定手段と、
前記温度検知装置で検知された前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値となるように前記発熱体に供給される電力を制御する制御手段と、
前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後に、前記発熱体に供給される平均電力を算出する平均電力算出手段と、
前記着座面の周囲温度、前記所望温度及び前記狙い値との相関がある前記平均電力に基づいて、該着座面が該所望温度を維持するように該狙い値を変更する狙い値変更手段と、
を備えていることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記平均電力算出手段は、前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後、所定期間の前記発熱体の通電回数に基づいて該発熱体に供給される前記平均電力を算出することを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記平均電力算出手段は、前記着座面の裏面側の温度が前記狙い値になった後、所定期間の前記発熱体の合計の通電時間に基づいて該発熱体に供給される前記平均電力を算出することを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項4】
前記着座面の前記周囲温度の変動に対して該着座面を前記所望温度に維持し得る前記発熱体に供給される前記平均電力と前記狙い値との相関を示すマップを備え、
前記狙い値変更手段は、前記平均電力算出手段により算出された前記平均電力を前記マップの前記相関に当てはめることにより新たな前記狙い値を設定し、このステップを該狙い値と該平均電力とが該マップの該相関に一致するまで繰り返すことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一つに記載の便座装置。
【請求項5】
前記発熱体に供給される前記平均電力の推移が所定範囲内でかつ所定日数以上継続したことに基づいて四季を判定する四季判定手段と、
前記四季判定手段により判定した前記四季に応じて前記着座面の前記所望温度を該四季毎に人が快適に感じる温度に補正する着座面温度補正手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一つに記載の便座装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−196310(P2012−196310A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62190(P2011−62190)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]