説明

便座

【課題】使用者着座時に発生する荷重の集中を緩和し、かつ安定感のある座り心地を有する便座を提供する。
【解決手段】便座基材と、前記便座基材の上に設けられ、前記便座基材よりも軟質の材料からなる弾性体と、を備え、前記便座基材は、底面は、ほぼ平面形状であり、上面は、使用者着座時におしり及び腿からの荷重がかかりやすい部分が凹形状に窪んだ曲面に形成され、前記弾性体は、前記便座基材の前記凹形状に窪んだ曲面の上における厚みは、前記凹形状に窪んだ曲面が設けられていない部分の上における厚みよりも大きいことを特徴とする便座が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の腰掛式便器の便座は、木、アルミニウム、ABS(Acrylonitrile-butadiene-styrene)及びPP(Polypropylene)等の合成樹脂材料などを使用して成形されている。しかし、これらの材料を使用した便座は硬いため、長時間着座していると臀部或いは脚部が痛くなったりしびれたりすることもあり得る。
これらの不具合を解消するものとして、便座を発泡ウレタンで成形する技術が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。しかし、この場合、発泡体のみで便座を成形する為、剛性強度が低く、着座時に所定の形状を維持できず、変形が生じて座り心地が悪くなってしまう可能性があった。
【0003】
これらの不具合を解消するものとして便座を便座基材上にこれと対応した形状の弾性体を着脱自在に載置支承することが開示されている(例えば、特許文献3参照)。また、着座面が内方に傾斜した便座本体基材の上に弾性体を載置し、軟質合成樹脂のシートで被覆することが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
しかし、使用者が着座した際、着座部弾性体が厚くやわらかい為、安定感が無かったり、便座本体基材が単に内方へ傾斜している為、落込み感を与えるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭56−111892号公報
【特許文献2】実開昭56−111893号公報
【特許文献3】特開平5−176859号公報
【特許文献4】特開2002−200008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、使用者の着座時に発生する荷重の集中を緩和し、かつ安定感のある座り心地を有する便座を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、便座基材と、前記便座基材の上に設けられ、前記便座基材よりも軟質の材料からなる弾性体と、を備え、前記便座基材の上面は、使用者の着座時におしり及び腿からの荷重がかかりやすい部分が凹形状に窪んだ曲面に形成され、前記便座基材の前記凹形状に窪んだ曲面の上における前記弾性体の厚みは、前記凹形状に窪んだ曲面が設けられていない部分の上における前記弾性体の厚みよりも大きいことを特徴とする便座である。
【0007】
上記構成によれば、使用者着座時に発生する荷重の集中を抑制し、かつ安定感のある座り心地を提供することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記弾性体は、表面側に設けられた第1の層と、前記便座基材側に設けられた第2の層と、を有し、前記第1の層は、前記第2の層よりも高弾性であることを特徴とする。
上記構成によれば、第1の層と第2の層との弾性を適度に選択すれば、弾性体の表面に小さな荷重がかかっても弾性体は変形しにくく、一方、弾性体に大きな荷重がかかると弾性体が変形して便座基材に沿った形状となるため、安定感のある座り心地を提供することができ、弾性体が変形しない状態で便座の拭き掃除を行うことができ、清掃性を向上することができる。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、前記弾性体の上に設けられた表皮材をさらに備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、耐久性、清掃性、意匠性を向上することができる。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、前記表皮材は、前記弾性体への水分の侵入を防ぐ機能を有することを特徴とする。
上記構成によれば、耐久性、清掃性を向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、使用者着座時に発生する荷重の集中を緩和し、かつ安定感のある座り心地を有する便座が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る便座の構成を例示する模式的斜視図である。
【図2】図1に表した便座のA−A線模式的断面図である。
【図3】図1に表した便座のB−B線模式的断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る便座の構成を例示する模式的斜視図である。
【図5】図4に表した便座のC−C線模式的断面図である。
【図6】他の便座のC−C線模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る便座の構成を例示する模式的斜視図である。
図1に表した便座1は、洋式の腰掛け式の便器(図示せず)に付設して使用するものである。なお、図1においては、便蓋2を有する場合を例示しているが、便蓋2はなくてもよい。また、便座1は、下部に脚(図示せず)を設けてもよい。
【0015】
図2は、図1に表した便座のA−A線模式的断面図である。すなわち、図2(a)は使用者が座る前の断面、図2(b)は使用者10が座った状態の断面を表す。
図3は、図1に表した便座のB−B線模式的断面図である。すなわち、図3(a)は使用者が座る前の断面、図3(b)は使用者10が座った状態の断面を表す。
図2及び図3に表したように、便座1は、便座基材5の上に弾性体4を積層した多層構造を有する。
【0016】
便座基材5は、便座1の骨格を構成する。便座基材5の底面は、ほぼ平面形状であり、上面は、使用者着座時におしり及び腿からの荷重がかかりやすい部分が凹形状に窪んだ曲面59に形成されている。すなわち、便座基材5の底面は、一部を除いて平面形状であり、一部に腰掛け式の便器に付設して使用できるように突部または脚などを設けた、ほぼ平面形状に形成されている。
これに対して、便座基材5の上面は、便座1に座る使用者10のおしりや腿の形状にあわせて凹状に窪んだ曲面を有する。
便座基材5には、木、アルミニウム、合成樹脂材料(ABS、PPなど)などの硬質の材料を用いることができる。
【0017】
弾性体4は、便座基材5よりも軟質の材料で便座基材5の上に形成される。また、便座基材5の凹形状に窪んだ曲面59の上における厚みは、前記凹形状に窪んだ曲面59が設けられていない部分の上における厚みよりも大きく形成される。
すなわち、弾性体4は、使用者が着座すると変形する軟質の材料により形成されている。一方、便座基材5は、弾性体4よりも硬質の材料により形成されている。
【0018】
これにより、本実施例の便座1は、使用者の着座時に、便座基材5は変形せず弾性体4が変形するため、凹状に窪んだ曲面59におしりや腿がフィットする。その結果として、座った状態においてホールド感が高まり、安定性を向上させることができる。また、おしりや腿の下面のみでなく、側面方向においても使用者を支えることができるので、荷重の集中を緩和して広い面積で体重を分散させて支えることができる。その結果として、座り心地がよく、長時間の使用に際してもおしりや腿が痛くならない。
【0019】
また、弾性体4は、便座基材5の凹形状に窪んだ曲面59の上における厚みは、前記凹形状に窪んだ曲面59が設けられていない部分の上における厚みよりも大きく形成されるため、便座基材5の凹形状に窪んだ曲面59は便座1の表面に露出せず、見栄えが悪化しない。
【0020】
弾性体4には、例えば発泡ポリエチレンを使用することができる。発泡ポリエチレンは、内部の気泡がつながっていない独立発泡構造を有し、空気によるクッション性を持たせることができる。ただし、適度なクッション性を有するものであれば連続気泡構造のものでもよい。
【0021】
また、表皮材3、弾性体4は、それぞれ多層構造とすることもできる。
図4は、本発明の他の実施の形態に係る便座の構成を例示する模式的斜視図である。
図5は、図4に表した便座1aのC−C線模式的断面図である。
【0022】
図5に表したように、便座1aは、便座基材5の上に弾性体4を、さらにその上に表皮材3を積層した構造を有する。また、ヒータ6が便座基材5に内蔵されている。なお、本実施例においては、ヒータ6を有する場合を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ヒータ6を設けない構成も可能である。
【0023】
便座基材5は、便座底板基材52と便座本体基材51とを有し、便座1aの骨格を構成する。
便座底板基材52は、底面は、一部を除いて平面形状であり、一部に腰掛け式の便器に付設して使用できるように突部または脚などを設けた、ほぼ平面形状に形成されている。
【0024】
便座本体基材51は、便座底板基材52の上に、ヒータ6を挟んで設けられている。便座本体基材51及び便座底板基材52からなる便座基材5は、底面は、ほぼ平面形状であり、上面は、使用者着座時におしり及び腿からの荷重がかかりやすい部分が凹形状に窪んだ曲面59に形成される。
【0025】
なお、本実施例においては、便座基材5は、2つの部材、便座底板基材52と便座本体基材51とを有する場合を例示している。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、2以上の部材で構成することもできる。
【0026】
便座底板基材52、便座本体基材51には、木、アルミニウム、合成樹脂材料(ABS、PPなど)などの硬質の材料を用いることができる。
弾性体4は、便座本体基材51よりも軟質の材料で便座本体基材51の上に形成される。
また、便座基材5の凹形状に窪んだ曲面59の上における厚みは、前記凹形状に窪んだ曲面59が設けられていない部分の上における厚みよりも大きく形成される。
すなわち、弾性体4は、使用者が着座すると変形する軟質の材料により形成されている。一方、便座基材5は、弾性体4よりも硬質の材料により形成されている。
【0027】
これにより、本実施例の便座1aは、使用者の着座時に、便座基材5は変形せず弾性体4が変形するため、凹状に窪んだ曲面59におしりや腿がフィットする。その結果として、座った状態においてホールド感が高まり、安定性を向上させることができる。また、おしりや腿の下面のみでなく、側面方向においても使用者を支えることができるので、荷重の集中を緩和して広い面積で体重を分散させて支えることができる。
【0028】
また、弾性体4は、便座基材5の凹形状に窪んだ曲面59の上における厚みは、前記凹形状に窪んだ曲面59が設けられていない部分の上における厚みよりも大きく形成されるため、便座基材5の凹形状に窪んだ曲面59は便座1の表面に露出せず、見栄えが悪化しない。
弾性体4には、例えば発泡ポリエチレンを使用することができる。発泡ポリエチレンは、内部の気泡がつながっていない独立発泡構造を有し、空気によるクッション性を持たせることができる。ただし、適度なクッション性を有するものであれば連続気泡構造のものでもよい。
【0029】
図5においては、弾性体4が、2層構造の場合を例示している。各層の性質としては、未使用時の便座表面の形状を維持する為、最も表皮材側の第1の層41は、便座基材5側の第2の層42より、高弾性のものとすることができる。
【0030】
なお、便座基材5の凹形状に窪んだ曲面59が設けられていない部分の上における弾性体4の厚みは、便座基材5の凹形状に窪んだ曲面59の上における弾性体4の厚みよりも小となっている。このように、弾性体4の厚みを均一にせず、小さい部分を設けることで、ヒータ6からの熱が便座1の上面へ伝わりやすくなる効果が得られる。
【0031】
表皮材3は、使用者の皮膚と接触する面であり、軟質で弾性体4の変形に追従し、かつ、弾性体4の表面を保護する機能を有し、耐久性、清掃性、意匠性を向上することができる。また、表皮材3は、汚れなどがつきにくいような平滑な表面を有するものであるとよい。さらに、弾性体4への水の浸入を防ぐ機能を有するものでもよい。
表皮材3には、高分子フィルムや塗料などを使用することができる。
【0032】
本実施例においては、表皮材側の第1の層41を、第2の層42より高弾性のものとしたので、弾性体4の表面に小さな荷重がかかっても弾性体4は変形しにくく、また、弾性体4に大きな荷重がかかると弾性体4が変形して便座基材5に沿った形状となる。よって、使用者が便座1aに座ると弾性体4が圧縮変形して便座基材5の凹形状に窪んだ曲面59に沿った形状となるので、前述したように、おしりや腿が曲面59にフィットして安定感のある座り心地を提供することができる。一方、便座の拭き掃除などを行う場合には、弾性体4に大きな荷重がかからないので、弾性体4はほぼ変形することがなく、便座形状が維持されるので、清掃性を向上することができる。
【0033】
なお、本実施例においては、表皮材3を有する場合を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、表皮材3を設けない構成も可能である。
また、表皮材3を多層構造とすることもできる。
【0034】
図6は、他の便座のC−C線(図4参照)模式的斜視図である。
図6に表したように、他の実施例の便座1bにおいては、表皮材3を、防汚層31と意匠層32との多層構造としている。このように多層構造とすることにより、表皮材の機能の多様化が図れ、耐久性、清掃性、意匠性をさらに向上することができる。これ以外の点については、便座1aと同様なので説明を省略する。
【0035】
最表にある防汚層31には、弾性体4への水の浸入を防ぐ為、高分子フィルムや塗料などを使用することができる。ただし、弾性体4の変形に追従しながら、弾性体4への水の浸入を防ぐ機能を有し、所定の耐薬品性を有するものであれば他の材料でもよい。
一方、内層にある意匠層32には、例えばウレタン合皮を使用することができるが、調色可能で、弾性体4の変形に追従するものであれば他の材質によるものでもかまわない。
【0036】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、便座を構成する各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0037】
その他、本発明の実施形態として上述した便座を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての便座も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0038】
1 便座、 2 便蓋、 3 表皮材、 31 防汚層、 32 意匠層、 4 弾性体、 41 第1の層、 42 第2の層、 5 便座基材、 51 便座本体基材、 52 便座底板基材、 6 ヒータ、 10 使用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座基材と、
前記便座基材の上に設けられ、前記便座基材よりも軟質の材料からなる弾性体と、
を備え、
前記便座基材の上面は、使用者の着座時におしり及び腿からの荷重がかかりやすい部分が凹形状に窪んだ曲面に形成され、
前記便座基材の前記凹形状に窪んだ曲面の上における前記弾性体の厚みは、前記凹形状に窪んだ曲面が設けられていない部分の上における前記弾性体の厚みよりも大きいことを特徴とする便座。
【請求項2】
前記弾性体は、表面側に設けられた第1の層と、前記便座基材側に設けられた第2の層と、を有し、
前記第1の層は、前記第2の層よりも高弾性であることを特徴とする請求項1記載の便座。
【請求項3】
前記弾性体の上に設けられた表皮材をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の便座。
【請求項4】
前記表皮材は、前記弾性体への水分の侵入を防ぐ機能を有することを特徴とする請求項3記載の便座。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−200899(P2010−200899A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48286(P2009−48286)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】