説明

保冷容器

【課題】上部が下部より拡がった形の野菜を立てて収納する保冷容器において、詰め始めの際の転倒を効果的に防止でき、形状や大きさ等に対する自由度もあり、収納時の作業性を向上できるようにする。
【解決手段】上方に開口する平面矩形の容器本体10と、蓋体20とからなる発泡樹脂製の保冷容器において、容器本体10内の底部11に、コーナー部12を介して隣接する2辺の側壁13,14に沿って平面L形に連続して突出状をなす支持壁15を、詰め始めの際の野菜を立て姿勢に保持できるように2辺の側壁13,14の内側面13a、14aから野菜上部の拡がりに対応した距離の位置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にブロッコリー等の野菜の輸送、保管等の物流に使用される発泡樹脂製の保冷容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブロッコリー等の野菜その他の農産物の輸送、保管等の物流のための保冷容器として、上方に開口した平面矩形の容器本体と、その開口端部に嵌合被着される蓋体とからなる発泡スチロール等の発泡樹脂製の容器が使用されている。
【0003】
例えば、ブロッコリー等の野菜の場合、収穫された野菜を容器本体に収納し、収納状態のままで所定の予冷(真空予冷や差圧予冷)を行った後、収納した野菜の上に氷(砕氷)を入れて氷詰めにし、この状態で蓋体を被着して、輸送等の物流に供する。容器内の氷は経時的に溶解して水になり、容器内の底部上に溜まることになるが、収納されている野菜が水に接触したままになると、水との接触部分から傷みが生じ易くなる。特に、上部の花蕾部分や葉の部分は、下部の茎部よりも傷み易いものであり、収納する野菜は、少なくとも上部の花蕾部分や葉部分が底部に溜まる水に接触しないようにするのが望ましい。そのため、容器内の底部上に野菜を立てて収納することが行われている。
【0004】
この際、収納する野菜を、容器本体の一つのコーナー部の内側から側壁内面に沿わせて立て姿勢を保持するように順次並べて詰め入れるが、ブロッコリーのように花蕾部分よりなる上部b1が茎部等の下部b2に比して大きく拡がった形の野菜Bの場合には、図7に略示するように、詰め始めの際に野菜Bを容器側壁の内面に沿わせて立てようとすると、茎部等の下部b2が側壁内面に寄せられることになって花蕾部分よりなる拡がり形態の上部b1が内側に傾いて転倒し易いものであり、作業性に問題がある。
【0005】
このような問題を解消するために、例えばブロッコリー等に使用する容器として、容器本体内の底部上面に、例えばブロッコリー等の茎部を側面より支える突起部を所要間隔に突設しておいて、ブロッコリー等の茎部を突起部間に挿入して立てた状態に保持するようにしたもの(特許文献1)が提案されている。
【0006】
しかしながら、前記の容器の場合、前記突起部間の部分にブロッコリー等の野菜の下部の茎部を挿入することになるため、不定形で大小のあるブロッコリー等に対する自由度が低く、形状や大きさ、茎部の太さ等をある程度選別して収納する必要がある上、前記突起部がかえって詰め入れの際の邪魔になる場合もある。しかも、仮に茎部を突起部間に無理やり押し込んだりすると、発泡樹脂よりなる突起部が折損したり破損することがあり、この結果、発泡樹脂の屑粉(発泡スチロール粉)がブロッコリー等の野菜に付着する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平4−23644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解消するためになしたものであり、主としてブロッコリー等の野菜の輸送、保管等の物流に使用する発泡樹脂製の保冷容器として、上部が下部より拡がった形の野菜を立てて収納する場合において、上部が下部より大きい野菜の形態に拘わらず詰め始めの際の転倒を効果的に防止でき、しかも形状や大きさ及び茎部の太さ等に対する自由度もあり、収納時の作業性を向上でき、また発泡樹脂の破損等の虞もなく、良好に使用できる保冷容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明の保冷容器は、上方に開口する平面矩形の容器本体と、該容器本体に対し被着自在な蓋体とからなる発泡樹脂製の保冷容器であって、容器本体内の底部には、コーナー部を介して隣接する2辺の側壁に沿って平面L形に連続して突出状をなす支持壁が設けられてなることを特徴とする。
【0010】
特には、上部が下部より拡がった形の野菜を収納する保冷容器であって、前記支持壁が、詰め始めの際の野菜を立て姿勢に保持できるように、前記2辺の側壁の内側面から前記野菜上部の拡がりに対応した距離の位置に設けられてなるものとする。
【0011】
前記の保冷容器によれば、上部が下部より拡がった形のブロッコリー等の野菜を立てて収納する際、容器本体の一つのコーナー部の内側から前記支持壁に沿わせて順次並べて詰め入れるが、詰め始めの際は、野菜の下部が側壁内面側へ寄せられるのを前記支持壁により規制できて、野菜の拡がり形態の上部が支持壁を越えて側壁内面に寄り掛った状態に保持されることになり、そのため、野菜の上部が内方に傾いて転倒することなく立て姿勢に保持される。こうして、順次立て姿勢に保持した野菜に凭れさせ寄り掛けるようにして位置決め等の必要なく詰め入れることがてき、形状や大きさを選択する必要なく作業性よく最後まで容易に詰め入れることができる。
【0012】
前記の保冷容器において、前記支持壁の内方側の側面が、前記2辺の側壁の内側面から20〜50mmの距離の範囲にあるものとする。
【0013】
前記保冷容器において、前記支持壁の両端が、前記2辺の側壁に隣接する側壁の内側面との間に間隔を保有するように形成されてなるものとするのが好ましい。この場合、前記支持壁の端部が位置するコーナー部で野菜を詰め入れる際に、前記支持壁が邪魔になる虞がない。
【0014】
前記の保冷容器の前記支持壁が側壁内面から間隔をおいて底部上面に突設されてなるものが、使用樹脂量を少なくして前記の同様の効果を奏するものとなる。
【0015】
前記保冷容器としては、収納対象の野菜が、上部の花蕾部分が下部の茎部に比して大きく拡がった形のブロッコリーを収納する保冷容器であるものにおいて好適に実施できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の保冷容器によれば、主としてブロッコリー等の野菜の輸送、保管等の物流に使用する発泡樹脂製の保冷容器として、花蕾部分等の上部が茎部等の下部に比して大きく拡がった形のブロッコリー等の野菜を立てて収納する場合において、詰め始めの際の野菜の転倒を防止できて、しかも、野菜の形状や大きさ、下部の茎部の太さ等に対する自由度があって選択の必要がなく、収納時の作業性を向上できる。また、従来のようにブロッコリー等を無理やり押し込むことによる突起部の破損等の虞がなく、発泡樹脂の屑粉が野菜に付着するおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の保冷容器の実施例を示す容器本体と蓋体の分離した斜視図である。
【図2】容器本体の平面図である。
【図3】蓋体の裏返して底面を示す平面図である。
【図4】図2のA−A線での容器本体と蓋体の断面図である。
【図5】蓋体の下面側の一部の拡大斜視図である。
【図6】同上の容器の野菜の詰め始め時の断面説明図である。
【図7】従来の容器の野菜の詰め始め時の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0019】
この実施例の容器は、発泡ポリスチレン等の発泡樹脂を素材として成形された保冷容器であって、上方に開口する平面矩形の容器本体10と、該容器本体10に対し被着自在な蓋体20とよりなり、ブロッコリー等の野菜を立て姿勢に保持して収納できる深さに形成されている。
【0020】
前記容器本体10の底部11には、一つのコーナー部12を介して隣接する長辺と短辺の2辺の側壁13,14に沿って平面L形に連続して突出状をなす支持壁15が設けられている。特に、この支持壁15は、上部b1が下部b2より拡がった形の野菜、例えば花蕾部分よりなる上部b1が茎部よりなる下部b2に比して大きく拡がった形のブロッコリー等の野菜Bを収納する場合において、詰め始めの際に該野菜Bを立て姿勢に保持できるように、2辺の側壁13,14の内側面13a,14aから前記野菜Bの上部b1の拡がりに対応した距離の位置に設けられている。
【0021】
前記支持壁15は、前記側壁13,14の内側面13a,14aと、底部11の上面11aとの双方に連続して段状をなすように突設しておくものであってもよいが、実施上は、図のように側壁13,14の内側面13a,14aとの間に間隔をあけて、やや内方の底部上面11aに突設しておくのが、支持壁15自体がある程度の弾性変形を許容できることになり、また使用樹脂量も少なくて済み好ましい。この場合、前記支持壁15の厚みは10〜30mmとする。この厚みが薄くなりすぎると折損しやすく、厚くなりすぎると使用樹脂量が多くコスト高になる。
【0022】
いずれにしても、前記2辺の側壁13,14の内側面13a,14aから前記支持壁15の内側面15aまでの距離L1は、収納対象の野菜Bの上部b1の拡がり形態に応じて適宜設定できるが、通常、野菜Bの下部b2に対する上部b1の拡がり量よりやや大きくなるように設定する。例えば、ブロッコリーの輸送に使用する保冷容器の場合、前記距離L1は20〜50mmの範囲に設定する。
【0023】
また、前記支持壁15の高さHは、収納対象の野菜Bの拡がり形態の上部b1の下端位置までの高さに応じて、該上部b1より下方位置の範囲で、茎部等の下部b2が側壁内面側に寄せられるのを規制できるように適宜設定できるが、実施上は、前記上部b1の高さよりやや低く、例えば5〜10mm程度低く設定して、立て姿勢の野菜Bの上部b1を係止できるように形成しておくのが好ましい。
【0024】
前記支持壁15は、平面L形の両辺部分の両端15bが、前記2辺の側壁13,14に隣接する短辺側の側壁14及び長辺側の側壁13の内面に連続しているものであってもよいが、実施上は、図のように前記2辺の側壁13,14に隣接する側壁14,13の内面との間に間隔を保有するように形成しておくのが、前記最小のコーナー部以外のコーナー部におけるブロッコリー等の野菜の詰め入れの際に邪魔になる突起部を有さないことになり、作業性をさらに向上でき好ましい。
【0025】
図示する実施例の保冷容器において、容器本体10の側壁上端部による開口端部10aに対する前記蓋体20の嵌合による被着構造として、容器本体10の開口端部10aと蓋体20の周縁部21の下面とに、全周にわたって連続して互いに嵌合する凸条縁16と凹条溝22による嵌合構造が設けられている。
【0026】
図の場合、前記容器本体10の開口端部10aは、各辺の長さ方向中央部が落とし込み形成されるとともに、該落とし込み部17を含む全周に渡って外側の約半部が切欠されることにより切欠段部18が形成され、該切欠段部18より内側の約半部が前記凸状縁16として形成されている。一方、前記蓋体20はの周縁部21の下面には、蓋体被着状態において前記開口端部10aの落とし込み部17に対応する中央部分26を含む全周によたり前記凸条縁16の外側の切欠段部18に嵌合する外側壁部23を有する凹条溝22が設けられている。この凹条溝22の内側壁部24は、前記落とし込み部17に対応する部分26で凹条溝22の底面と同一面をなし、他の部分でのみ凸状縁16の内側に嵌合するように形成されているが、該内側壁部24を落とし込み部17の部分でも凸状縁16の内側に嵌合するように形成しておくことができる。
【0027】
なお、容器本体10に蓋体20を被着した状態での通気性を確保するために、前記蓋体20の各コーナー部の凹条溝22の部分に、内側壁部24の下端から凹条溝22の内面を経て外側壁部23の下端外面に通じる通気用溝25が形成されている。
【0028】
前記容器本体10及び蓋体20の構成材である発泡樹脂としては、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂の発泡体を用いることができる。中でも、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体による成形体が好適に用いられる。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を含浸重合させて得られるものであり、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂の中でも、スチレン改質ポリエチレン樹脂が好ましく、例えば、スチレン成分の割合は40〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、さらに好ましくは55〜75重量%のものが用いられる。また、前記発泡体の発泡倍率は10〜70倍が好ましい。
【0029】
スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体の成形品は、同じ発泡倍率のポリプロピレン系樹脂ビーズの成形品に比べて強度があり、また、深さが500mmを越える容器を成形した場合の収縮率が低く寸法精度もよい。さらに、スチレン系樹脂ビーズの発泡成形品に比べて擦れによる粉が出難い長所もある。
【0030】
上記のように構成された本発明の保冷容器を、ブロッコリー等の野菜の輸送、保管等の物流に使用する場合において、容器本体10内に上部が下部より拡がった形の収納対象ブロッコリー等の野菜Bを立てて収納する際、通常、容器本体10の一つのコーナー部12の内側から隣接する長短2辺の側壁13,14に沿わせるように順次並べて詰め入れるが、該側壁13,14の内側に沿って平面L形の前記支持壁15が設けられているので、図6のように前記野菜Bの下部(茎部)b2を該支持壁15に沿わせるようにすることにより、詰め始めの際に野菜Bの下部b2が側壁内面側へ寄せられるのを前記支持壁15により規制でき、野菜の拡がり形態の上部が支持壁を越えて側壁内面に寄り掛った状態に保持されることになり、そのため、野菜の上部が内方に傾いて転倒することなく立て姿勢に保持される。こうして、順次立て姿勢に保持した野菜に凭れさせるようにして位置決め等の必要なく詰め入れることができ、形状や大きさを選択する必要なく作業性よく最後まで容易に詰め入れることができる。また、詰め入れ作業が容易で余分突起部を有さないため発泡樹脂の破損等の虞もなく、良好に使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の発泡樹脂製の容器は、上部が下部に比して拡がった形のブロッコリー等の野菜の輸送、保管等の物流に好適に使用できるほか、各種の農産物の輸送用のコンテナとして使用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
10…容器本体、10a…開口端部、11…底部、11a…上面、12…コーナー部、13…長辺側の側壁、14…短辺側の側壁、13a,14a…内側面、15…支持壁、15a…内側面、15b…両端、16…凸状縁、17…落とし込み部、18…切欠段部、20…蓋体、21…周縁部、22…凹条溝、23…外側壁部、24…内側壁部、25…通気用溝、B…野菜、b1…上部、b2…下部、H…支持壁の高さ、L1…側壁の内側面から支持壁の内側面までの距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する平面矩形の容器本体と、該容器本体に対し被着自在な蓋体とからなる発泡樹脂製の保冷容器であって、
容器本体内の底部には、コーナー部を介して隣接する2辺の側壁に沿って平面L形に連続して突出状をなす支持壁が設けられてなることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
上部が下部より拡がった形の野菜を収納する保冷容器であって、前記支持壁が、詰め始めの際の野菜を立て姿勢に保持できるように、2辺の側壁の内面から前記野菜上部の拡がりに対応した距離の位置に設けられてなる請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
前記支持壁の内方側の側面が、前記2辺の側壁内面から20〜50mmの距離の範囲にある請求項1又は2に記載の保冷容器。
【請求項4】
前記支持壁の両端が、前記2辺の側壁に隣接する側壁の内面との間に間隔を保有するように形成されてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の保冷容器。
【請求項5】
前記支持壁が側壁内面から間隔をおいて底部上面に突設されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の保冷容器。
【請求項6】
収納対象の野菜が、上部の花蕾部分が下部の茎部に比して大きく拡がった形のブロッコリーを収納する保冷容器である請求項1〜5のいずれか1項に記載の保冷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−31940(P2011−31940A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179593(P2009−179593)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】