説明

保冷箱

【課題】蓋の係止機構をサイド部にも有しつつ、手提げハンドルをスマートに設けた保冷箱を提供する。
【解決手段】容器本体10の所定の対向側壁間には、該側壁同士S1,S2の対向方向枢軸30Jを中心として回動可能ハンドル30が装着されており、他の対向側壁の側壁S3と蓋20との間には係止機構20K1が設けられており、前記の側壁S2と蓋との間には、ロック部材70を有するロック機構が設けられており、ロック部材は枢軸80を介して容器本体に枢着されており、蓋をロックしたロック位置からロック部材が最も離隔したロック解除位置において該ロック部材を解除可能に保持できる保持機構60A,90を具備し、ロック部材がロック解除位置にある状態においてハンドルは回動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りやレジャーに使用できるクーラーボックス等の保冷箱(保温箱を含む)に関する。
【背景技術】
【0002】
保冷箱は、下記特許文献1の図1に図示されているように、その運搬のために手提げハンドルが設けられていることが一般的であり、その他、矩形状の蓋の一辺縁部に対応して開閉操作部10Kが設けられている。また、下記特許文献2に開示されているように、蓋の隣接する直交二辺の各縁部を係止するための係止具10,10aが、対応する容器本体位置に設けられている。後者は、保冷箱が大型化すると、保冷箱の長手方向側壁部、即ち、正面部に係止具を設けただけでは蓋の係止が不十分であるためにサイド部にも設けたものである。更には、下記特許文献3にも、正面部と共にサイド部にも係止具を設けた保冷箱が開示されている。
【特許文献1】特開2007−195494号公報
【特許文献2】特許第3090595号公報
【特許文献3】実開昭64−5071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、上記後者2つの公報では、サイド部の係止具は大きく外方向に倒れる。従って、このままの係止構造でサイド部に手提げハンドルを装着する場合、ハンドルと係止具とが干渉しないためには、ハンドルの装着部付近を大きく外方に膨出させる必要がある。これでは美観が損なわれ、保冷箱の商品価値が損なわれる。
依って解決しようとする課題は、蓋の係止機構をサイド部にも有しつつ、手提げハンドルをスマートに設けた保冷箱の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題解決のために第1の発明は、容器本体と蓋とを具備する直方体形状の保冷箱であって、前記容器本体の所定の対向側壁間には、該所定対向側壁の側壁同士が対向する方向に延伸した枢軸を中心として回動可能なブリッジ状の手提げハンドルが装着されており、容器本体の他の対向側壁の少なくとも一方の側壁と蓋との間には、該一方の側壁に対応する蓋縁部を解放可能に保持できる係止機構が設けられており、前記所定対向側壁の一の側壁と蓋との間には、該一の側壁に対応する蓋縁部を保持可能なロック部材を有するロック機構が設けられており、前記ロック部材は前記他の対向側壁の側壁対向方向に延伸した枢軸を介して容器本体に枢着されており、蓋をロックしたロック部材のロック位置から該ロック部材が最も離隔したロック解除位置において該ロック部材を解除可能に保持される保持機構を具備し、前記ロック部材が前記ロック解除位置にある状態において前記ハンドルはその回動が可能であることを特徴とする保冷箱を提供する。
ロック部材は、その先部が上方に位置しつつ該ロック部材が概ね上下方向となるロック位置からロックを解除した状態での可動範囲は45度以下、好ましくは35度以下、更に好ましくは25度以下に規制されるとよい。
【0005】
第2の発明は、蓋を開放した状態において、前記ロック部材は容器本体の所定部に当接することでそのロック方向回動が規制され、該ロック部材がこのロック方向回動規制位置にあって蓋を閉めた際に、前記ロック機構の一部を構成して蓋に設けられている蓋側係止部が上方から当接して該ロック部材をロック解除位置の方向に押しやることのできる傾斜部をロック材が具備している。
第3の発明は、第1や第2の前記ロック機構に、ロック部材を常時ロック方向に付勢する弾力性部材を設けている。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明では、ロック部材はロック解除位置において保持機構によってその位置を保持できるため、両手が自由になり、蓋の開放操作や、その後の容器本体への獲物の出し入れに両手が使用でき、容易になる。また、ロック部材を保持機構によってロック解除位置に保持して蓋を開放させ、容器本体に獲物の出し入れをしている最中等に誤って手提げハンドルを回動させてしまっても、該ハンドルはロック部材とは干渉せず、両部材の損傷が防止できる。更には、ロック解除位置とロック位置のロック部材先部の移動は小さく、蓋を閉めてサイド部(所定対向側壁の一の側壁側)をロックする場合、手で横方向から押すだけの直線的な一動作で済み、非常に簡便である。
ロック部材の先部が上方に位置し、概ね上下方向に指向したロック位置から45度以下の角度範囲のロック解除位置にあると、ロック部材は、その先部がロック位置から外方に少しの距離(45度以下の可動角度の正弦分)しか移動しないため、実質水平移動する。
【0007】
第2の発明では、仮に不用意にロック部材がロック解除位置の保持から外れ、最もロック方向に回動した位置であるロック方向回動規制位置に位置し、ロック部材がこの位置にある場合に蓋を誤って閉めたとしても、蓋側の蓋側係止部がこのロック部材に設けた傾斜部に当接してロック部材をロック解除位置方向に押し戻すことができるため、ロック部材を損傷させることが防止できる。
【0008】
第3の発明では、ロック部材を常時ロック方向に付勢しているため、蓋を閉めた後、ロック解除位置に保持されているロック部材の保持を解除すれば、自律的にロック位置にくるよう回動する。弾力性部材の付勢力を十分大きくすれば自律的にロック可能となる。また、第2の発明に依存する場合に関しては、蓋を閉める前にロック部材のロック解除位置の保持が解除されていても、蓋の蓋側係止部によって押し戻されたロック部材は、蓋が閉まると自律的にロック位置に戻る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を添付図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る保冷箱の正面図、図2は図1の矢視B方向視によるハンドルの異なる状態の側面図、図3は図1の矢視C方向視によるハンドルの異なる状態であって、蓋の開放された状態を略示した側面図である。保冷箱の各部はネジを除いて合成樹脂材で成形できる。容器本体10と蓋20とを有する直方体形状の保冷箱には、この例では容器本体の長手方向に対向する所定対向側壁S1,S2の間に亘って、手提げ状態において、蓋20の上方に長手部30Lが位置するように、ブリッジ状の手提げハンドル30が装着されている。前記所定対向側壁の一方の側壁S1の外側に設けた引手収納カバー50に対し、引手40が出し入れ可能に構成されている。また、他方の側壁S2の上部外側にはハンドル装着部60が装着されている。更には、側壁S2の下部位置には、転動体としての車輪Rが設けられている。
【0010】
ハンドル30の一端部には、軸心を一点鎖線で示すように両側壁S1,S2の対向方向(長手方向)に延伸した枢軸30Jが引手収納カバー50の外側壁に装着されている。一方、ハンドルの他端部に、軸心を一点鎖線で示すように両側壁S1,S2の対向方向に延伸した枢軸30J’がハンドル装着部60の外側壁に装着されている。こうしてハンドル30は、他の対向側壁の一方S3と他方S4の間に亘って、蓋20の上方を通って回動(往復動)できる。
【0011】
蓋20は、前記他の対向側壁の一方(正面側側壁)S3との間で、解放可能に蓋縁部を保持できる係止機構20K1が設けられている。また、本実施形態例では、他方側壁S4と蓋との間でも同様な係止機構20K2が設けられている。従って、本形態例では図3に2点鎖線20’で示すように、蓋20は、係止機構20K1を操作して側壁S4側の蓋縁部が軸支された状態で開放できたり、また、他の2点鎖線20”で示すように、他の係止機構20K2を操作して側壁S3側の蓋縁部が軸支された状態で開放できたり、或いは両方の係止機構を操作して蓋を容器本体から完全に取り外すこともできる。しかし、一方の係止機構のみであってもよい。図3における記号20K2’は、2点鎖線20”状態の蓋における、係止機構20K2の蓋側構造部を示す。また、記号20K1’は、2点鎖線20’状態の蓋における、係止機構20K1の蓋側構造部を示す。
【0012】
本願の保冷箱は、引手収納カバー50から上方に引き出して幾分回転させた引手40を引っ張って車輪Rを地面上に転がしつつ運搬できる。このような必要性も考えられる大きさの保冷箱であるため、蓋の閉鎖をより確実化させるため、少なくとも一方のサイド部(側壁S1又はS2)にも係止機構としてのロック機構を設ける。この場合は、側壁S1側には引手40を設けているため、その対向側である側壁S2側に設けている。このように運搬には、手提げハンドル使用や、引手と車輪を使った傾斜状運搬の他にも、図示しないが、ベルトを装着使用してもよい。また、引手と車輪使用時において、ベルトを肩に掛けて一緒に使用してもよい。ベルトの一端は、ハンドル装着部60の外壁下部に装着させ、上下方向に貫通したハンドル装着部の貫通孔を挿通させて設けることができる。ロック部材70をロックさせると、図4に示すように、ロック部材全体が蓋20の外周面の内側と下記機構箱15の中に収まり、下記の蓋部分の開口部の幅をベルトの幅よりも細くすれば、ベルトを肩に掛けた場合のように張力の作用したベルトがハンドル装着部から上方に出た部分は蓋の外周面に当接してロック部材とは干渉しないで済む。
【0013】
そのロック機構を、図4と図5を主体に説明する。図4は図1の左側上方部の拡大断面図、図5は図2の要部部分破断の拡大図である。側壁S2の上端部は所定の窪みが形成されており、その窪みには、上部が開口された機構箱15がほぼ収容されて装着されている。また、この機構箱の上方に位置する蓋部分にも開口部が形成されており、この蓋の開口部から機構箱15の中10Aに亘ってロック部材70が上下方向に配設されている。このロック部材は、その適宜な位置に、ロック部材がロックする回動方向に突出した凸部を有しており、この凸部の下面がロック部材側係止部70Kとなる。また、ロック部材の前記凸部の上方部分は指掛部70Yであり、ロック状態において、蓋に設けた前記開口部を介して指掛部に指を引っ掛けることができる。
【0014】
一方、蓋20の適宜な位置には蓋側係止部20Kが設けられており、蓋が閉められた状態においてロックを行うと、ロック部材70は概ね上下方向に延伸し、該ロック部材は機構箱と蓋の前記開口部との空間に納まったロック位置となる。また、ロック部材には、ロック部材側係止部70Kを構成する上記凸部と同様な方向に突出し、蓋が開放されていると、概ね上記ロック位置を過ぎた該ロック位置に近い位置状態において、機構箱15の容器本体10の内部寄りの壁に当接できる回動規制凸部70Tが形成されている。ロック部材は、このロック位置状態やその付近において表現すれば、上記凸部の上面は容器本体の外方向に立ち上がった傾斜の傾斜部70Sに形成されている。
【0015】
従って、仮に、蓋が開放された状態において、ロック部材70が、その回動規制凸部70Tが機構箱の前記壁に当接した位置にあっても、例えば不用意に蓋20が閉じる際、該ロック部材の傾斜部70Sがロック部材側係止部70Kによって押され、ロック部材が外方向(ロック解除位置の方向)に退避できる。
【0016】
ロック部材の下端部付近であって、2つの側壁S3,S4の対向方向(図1の紙面に垂直な方向)に延伸して機構箱15に取り付けられている枢軸80に対し、ロック部材が軸支されている。従って、枢軸80の周りに回動(遥動、往復動)できる。一方、機構箱15の外側壁上端60Aによってロック部材の外方向への回動は規制され、この規制位置であって本願のロック解除位置である図4に図示の2点鎖線との間を回動できる。ロック位置との間の回動角度範囲は45度以下であり、この例では20度である。従って、ロック解除位置においても、側壁S2に沿った機構箱15の外壁15Gの内側上端60Aに当接して枢軸80に対する回動が規制されているため、側壁S2の(基本となる大部分の)外面に対してロック部材70の上部は少ししか外方向に突出しないで済み、ハンドル30と干渉しないのみならず、ハンドル30は、側壁S2又はハンドル装着部60に対して大きく外方に突出させることなくスマートに装着できる。更には、ロック部材70(の上部)は、ロック解除位置にあってもハンドル装着部60の外壁よりも内側にある。また、ロック部材の当接する機構箱15の外壁15Gは保冷箱の側壁S2と一体形成されていてもよい。
【0017】
更には、ロック部材70を、蓋側係止部20Kとのロックを解除して上記ロック解除位置に回動させる直前位置には、該ロック部材70の左右両縁部と弾力的に当接する保持機構としての半球状凸部90を機構箱15に設けている。従って、ロック部材をロック解除位置に回動させると、その回動操作の最後近くで節度感を有して半球状凸部90を乗り越え、前記機構箱15の外側壁上端60Aとの間にロック部材が保持される。
【0018】
従って、ロック部材をこのロック解除位置に保持させていれば、このロック部材から手を離した状態で蓋の開閉操作等が可能となる。また、この実施形態例では、前記枢軸80を挿通させたコイル状の捩りばね85によって、ロック部材70には常時ロック方向に付勢力が作用している。従って、蓋20を閉じた位置状態で、ロック部材を所定以上の力でロック解除位置の保持状態からロック方向に開放させると、ロック部材のロック部材側係止部70Kを有する凸部は自律的にロック部材側係止部70Kに当接し、捩りばねの付勢力が十分な大きさであれば、そのままロック状態となる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、魚釣りやレジャーに使用するクーラーボックス等の保冷箱(や保温箱)に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明に係る保冷箱の正面図である。
【図2】図2は図1の矢視B方向視によるハンドルの異なる状態の側面図である。
【図3】図3は図1の矢視C方向視によるハンドルの異なる状態であって、蓋の開放された状態を略示した側面図である。
【図4】図4は図1の左側上方部の拡大断面図である。
【図5】図5は図2の要部部分破断の拡大図である。
【符号の説明】
【0021】
10 容器本体
20 蓋
20K 蓋側係止部
20K1,20K2 係止機構
30 ハンドル
30J,30J’ ハンドルの枢軸
70 ロック部材
70K ロック部材側係止部
70S 傾斜部
70T 回動規制凸部
70Y 指掛部(先部)
80 枢軸
85 捩りばね
90 保持機構としての半球状凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体(10)と蓋(20)とを具備する直方体形状の保冷箱であって、前記容器本体の所定の対向側壁間には、該所定対向側壁の側壁同士(S1,S2)が対向する方向に延伸した枢軸(30J,30J’)を中心として回動可能なブリッジ状の手提げハンドル(30)が装着されており、
容器本体の他の対向側壁の少なくとも一方の側壁(S3)と蓋との間には、該一方の側壁に対応する蓋縁部を解放可能に保持できる係止機構(20K1)が設けられており、前記所定対向側壁の一の側壁(S2)と蓋との間には、該一の側壁に対応する蓋縁部を保持可能なロック部材(70)を有するロック機構が設けられており、
前記ロック部材は前記他の対向側壁(S3,S4)の側壁対向方向に延伸した枢軸(80)を介して容器本体に枢着されており、蓋をロックしたロック部材のロック位置から該ロック部材が最も離隔したロック解除位置において該ロック部材を解除可能に保持できる保持機構(60A,90)を具備し、
前記ロック部材が前記ロック解除位置にある状態において前記ハンドルはその回動が可能である
ことを特徴とする保冷箱。
【請求項2】
蓋を開放した状態において、前記ロック部材は容器本体の所定部(15)に当接することでそのロック方向回動が規制され、該ロック部材がこのロック方向回動規制位置にあって蓋を閉めた際に、前記ロック機構の一部を構成して蓋に設けられている蓋側係止部(20K)が上方から当接して該ロック部材をロック解除位置の方向に押しやることのできる傾斜部(70S)をロック材が具備している請求項1記載の保冷箱。
【請求項3】
前記ロック機構に、ロック部材を常時ロック方向に付勢する弾力性部材を設けている請求項1又は2記載の保冷箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−173662(P2010−173662A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15990(P2009−15990)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【出願人】(591025082)日泉化学株式会社 (19)
【Fターム(参考)】