説明

保存安定性に優れた樹脂溶液

【課題】 透明性、強度に優れるフィルムを提供するに適した保存安定性に優れるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体の樹脂溶液を提供する。
【解決手段】 特定の構造を有するオレフィン残基単位40〜35モル%及び特定の構造を有するN−置換マレイミド残基単位60〜65モル%からなるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体及び有機溶媒よりなり、ポリマー濃度が15〜30重量%である樹脂溶液、及び、オレフィン/N−置換マレイミド=0.75〜2(モル比)の範囲で仕込みラジカル重合反応により得られた重合溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液状態での保存安定性に優れたN−置換マレイミド・オレフィン共重合体の樹脂溶液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
N−置換マレイミド・オレフィン共重合体は、透明性、低複屈折性、耐熱性、表面硬度及び機械的強度に優れた光学材料として知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体は、N−置換マレイミド単量体とオレフィン単量体を共重合することにより製造することができ、重合方法としては、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合などを用いることができる。そして、溶液重合にてN−置換マレイミド・オレフィン共重合体を製造する方法が開示されている(例えば特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−117334号公報
【特許文献2】特開昭62−100544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に提案されている溶液重合法によりN−置換マレイミド・オレフィン共重合体を製造した場合、重合反応直後のポリマー溶液は透明均一のものとして得られるが、時間の経過に従い樹脂溶液が増粘し、反応器からの抜出が困難となり樹脂溶液の保存安定性という点では課題があるものであった。また、このような保存安定性に課題を有する共重合体を回収し、成形加工に供する際に再度樹脂溶液とした場合、共重合体の析出により白濁するという課題が発生し、白濁した樹脂溶液を用いて流延法によりフィルムを成膜した場合、透明性、強度が低いフィルムしか得られないという課題も発生した。
【0006】
そこで、本発明は、透明性、強度に優れるフィルムを提供するに適した保存安定性に優れるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体の樹脂溶液を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に関し鋭意検討を重ねた結果、特定のN−置換マレイミド残基単位の含有量を有するN−置換マレイミド・オレフィン共重合体の樹脂溶液が、保存安定性に優れ、透明性、強度に優れるフィルムを提供するに適することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の式(I)で示されるオレフィン残基単位40〜35モル%及び下記の式(II)で表されるN−置換マレイミド残基単位60〜65モル%からなるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体及び有機溶媒よりなり、ポリマー濃度が15〜30重量%であることを特徴とする樹脂溶液に関するものである。
【0009】
【化1】

(ここで、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。)
【0010】
【化2】

(ここで、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜24の芳香族基,アルキル基置換芳香族基を示す。)
以下に本発明に関し詳細に説明する。
【0011】
本発明の樹脂溶液は、上記の式(I)で示されるオレフィン残基単位40〜35モル%及び上記の式(II)で表されるN−置換マレイミド残基単位60〜65モル%からなるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体及び有機溶媒よりなるものであり、特に長期の保存安定性に優れる樹脂溶液となることから、上記の式(I)で示されるオレフィン残基単位39〜36モル%及び上記の式(II)で表されるN−置換マレイミド残基単位61〜64モル%からなるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体及び有機溶媒よりなるものであることが好ましい。ここで、該N−置換マレイミド残基単位が60モル%未満である場合、得られる樹脂溶液は、白濁したり増粘したりするために保存安定性に劣るものとなる。一方、該N−置換マレイミド残基単位が65モル%を越える場合、製造時に高分子量を有するN−置換マレイミド・オレフィン共重合体を得ることが困難となり、実用的な機械強度を有するN−置換マレイミド・オレフィン共重合体を得ることが難しくなる。また、本発明の樹脂溶液におけるポリマー濃度は15〜30重量%である樹脂溶液であり、特に取り扱いが容易、かつ、長期の保存安定性に優れる樹脂溶液となることから20〜25重量%であることが好ましい。ここで、ポリマー濃度が15重量%未満の樹脂溶液である場合、流延法により得られるフィルムの強度が低くなる。一方、ポリマー濃度が30重量%を越える樹脂溶液の場合、ポリマーの析出により溶液は白濁したり増粘したりするために保存安定性に劣るものとなる。
【0012】
本発明を構成するN−置換マレイミド・オレフィン共重合体としては、上記の式(I)で示されるオレフィン残基単位40〜35モル%及び上記の式(II)で表されるN−置換マレイミド残基単位60〜65モル%からなるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体である。ここで、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜6のシクロアルキル基であり、該炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基等を挙げることができ、該炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。また、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜24の芳香族基,アルキル基置換芳香族基であり、該炭素数1〜20アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基等を挙げることができ、該炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、該炭素数6〜24の芳香族基、アルキル基置換芳香族基としては、例えばフェニル基、o−メチルフェニル基、o−エチルフェニル基、o−プロピルフェニル基、m−メチルフェニル基、m−エチルフェニル基、m−プロピルフェニル基、p−メチルフェニル基、p−エチルフェニル基、p−プロピルフェニル基、o,p−ジメチルフェニル基、o,p−ジエチルフェニル基、o,p−ジプロピルフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0013】
該式(I)で示されるオレフィン残基単位としては、例えばエチレン残基単位、プロピレン残基単位、1−ブテン残基単位、1−ヘキセン残基単位、イソブテン残基単位、2−メチル−1−ブテン残基単位、2−メチル−1−ペンテン残基単位、2−メチル−1−ヘキセン残基単位、2−メチル−1−ヘプテン残基単位、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン残基単位、2−メチル−1−オクテン残基単位、2−エチル−1−ペンテン残基単位、2−メチル−2−ブテン残基単位、2−メチル−2−ヘキセン残基単位等が挙げられ、その中でも特に耐熱性、機械的特性に優れたN−置換マレイミド・オレフィン共重合体となることからイソブテン残基単位であることが好ましい。
【0014】
該式(II)で示されるN−置換マレイミド残基単位としては、例えばN−メチルマレイミド残基単位、N−エチルマレイミド残基単位、N−n−プロピルマレイミド残基単位、N−i−プロピルマレイミド残基単位、N−n−ブチルマレイミド残基単位、N−i−ブチルマレイミド残基単位、N−s−ブチルマレイミド残基単位、N−t−ブチルマレイミド残基単位、N−n−ヘキシルマレイミド残基単位、N−シクロプロピルマレイミド残基単位、N−シクロブチルマレイミド残基単位、N−シクロヘキシルマレイミド残基単位、N−フェニルマレイミド残基単位等が挙げられ、その中でも特に耐熱性、機械特性に優れたN−置換マレイミド・オレフィン共重合体となることからN−シクロヘキシルマレイミド残基単位、N−フェニルマレイミド残基単位、N−メチルマレイミド残基単位が好ましい。
【0015】
本発明を構成するN−置換マレイミド・オレフィン共重合体としては、例えばN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・イソブテン共重合体、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体、N−フェニルマレイミド・エチレン共重合体、N−フェニルマレイミド・2−メチル−1−ブテン共重合体、N−(2−メチルフェニル)マレイミド・イソブテン共重合体、N−(2−メチルフェニル)マレイミド・エチレン共重合体、N−(2−メチルフェニル)マレイミド・2−メチル−1−ブテン共重合体、N−(2−エチルフェニル)マレイミド・2−メチル−1−ブテン共重合体等が例示でき、その中でも特に耐熱性、透明性、力学特性の点から、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・イソブテン共重合体、N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体が好ましい。
【0016】
本発明の樹脂溶液を構成する有機溶媒としては、該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体を溶解する有機溶媒であれば如何なるものを用いることも可能であり、その中でも、ケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ハロゲン系有機溶媒が好適に用いられる。該ケトン系有機溶媒としては、例えばアセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が例示され、該エーテル系有機溶媒としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が例示され、ハロゲン系有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム等が例示され、その中でも特に保存安定性に優れる樹脂溶液となることから、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の有機溶媒であることが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂溶液とは、該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体を有機溶媒に溶解した樹脂溶液のみならず、該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体を製造する際の重合溶液をも包含するものである
以下に本発明に用いられるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法の例示を示す。なお、ここで、得られる重合溶液も本発明の樹脂溶液の1態様である。
【0018】
該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体は、下記の式(III)で示されるオレフィン及び下記の式(IV)で表されるN−置換マレイミドを公知のラジカル重合法を利用することにより得ることができ、該重合法としては、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などを挙げることができる。
【0019】
【化3】

(ここで、R4、R5はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。)
【0020】
【化4】

(ここで、R6は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜24の芳香族基,アルキル基置換芳香族基を示す。)
ここで、R4、R5それぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜6のシクロアルキル基を示し、その例示としては上記したR1、R2と同様のものを挙げることができる。また、R6は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜24の芳香族基,アルキル基置換芳香族基を示し、その例示としてはR3と同様のものを挙げることができる。
【0021】
そして、該式(III)で示されるオレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2−メチル−1−オクテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−2−ヘキセン等が挙げられ、該式(IV)で示されるN−置換マレイミドとしては、例えばN−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0022】
ラジカル重合反応を行う際の重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシピバレート、パーブチルネオデカノエート等の有機化酸化物;2,2’−アゾビス−(2,2−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤が挙げられ、重合温度は該重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、一般的には40℃〜120℃の範囲で行うことが好ましい。
【0023】
重合溶媒としては、該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体の重合が可能であれば如何なるものも用いることが可能であり、その中でも重合溶液を本発明の樹脂溶液とすることが可能となることからケトン系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ハロゲン系有機溶媒が好適に用いられる。該ケトン系有機溶媒としては、例えばアセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が例示され、該エーテル系有機溶媒としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が例示され、ハロゲン系有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム等が例示され、その中でも特に保存安定性に優れる重合溶液となることから、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の有機溶媒であることが好ましい。
【0024】
また、本発明に用いられるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体を製造する際、又は得られる重合溶液を本発明の樹脂溶液とする際には、効率よく式(I)で示されるオレフィン残基単位40〜35モル%及び下記の式(II)で表されるN−置換マレイミド残基単位60〜65モル%からなるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体がえられることから、式(III)で示されるオレフィン/式(IV)で表されるN−置換マレイミド=0.75〜2(モル比)の範囲、特に0.78〜1.8の範囲で仕込みラジカル重合反応を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば溶液状態で保存安定性に優れたN−置換マレイミド・オレフィン共重合体の樹脂溶液が得られる。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0027】
以下に実施例で用いた各物性値の測定方法を示す。
【0028】
〜重量平均分子量及び数平均分子量の測定〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、商品名HLC−802A)を用い測定した溶出曲線により、標準ポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びその比である分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
【0029】
〜共重合組成の測定〜
プロトン核磁気共鳴分光装置(日本電子社製、商品名GSX−270W)を用いて得られた共重合体の共重合組成を測定した。
【0030】
実施例1
撹拌機、圧力計、温度計、窒素導入管、オレフィン導入管及び脱気管の付いた1リットルオートクレーブにN−フェニルマレイミド119.5g(0.69mol)、t−ブチルパーオキシピバレート0.69g(2.8mmol)及びメチルエチルケトン192gを仕込み、窒素で数回パージした後、液化イソブテン60.7ミリリットル(0.69mol)を仕込み、60℃で5時間反応させてポリマー濃度25重量%のN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体(重量平均分子量(Mw)=188000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=1.90)樹脂溶液を得た。
【0031】
H−NMR測定よりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の共重合組成比はN−フェニルマレイミド残基単位:イソブテン残基単位=60モル%:40モル%であった。
【0032】
該樹脂溶液を25℃で1ヶ月放置し、保存安定性を確認したところ、溶液の白濁、増粘は観察されず、保存安定性に優れるものであった。
【0033】
実施例2
撹拌機、圧力計、温度計、窒素導入管、オレフィン導入管及び脱気管の付いた1リットルオートクレーブにN−フェニルマレイミド132.8g(0.77mol)、t−ブチルパーオキシピバレート2.06g(8.4mmol)及びメチルエチルケトン575.7gを仕込み、窒素で数回パージした後、液化イソブテンを60.4ミリリットル(0.61mol)を仕込み、60℃で5時間反応させてポリマー濃度25重量%のN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体(重量平均分子量(Mw)=180000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=1.80)樹脂溶液を得た。
【0034】
H−NMR測定よりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の共重合組成比はN−フェニルマレイミド残基単位:イソブテン残基単位=63モル%:37モル%であった。
【0035】
該樹脂溶液を25℃で1ヶ月放置し、保存安定性を確認したところ、溶液の白濁、増粘は観察されず、保存安定性に優れるものであった。
【0036】
比較例1
撹拌機、圧力計、温度計、窒素導入管、オレフィン導入管及び脱気管の付いた1リットルオートクレーブにN−フェニルマレイミド43.1g(0.25mol)、t−ブチルパーオキシピバレート0.29g(1.2mmol)及びメチルエチルケトン750gを仕込み、窒素で数回パージした後、液化イソブテンを249ミリリットル(2.50mol)を仕込み、60℃で5時間反応させてポリマー濃度25重量%のN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体(重量平均分子量(Mw)=185000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=1.90)溶液を得た。
【0037】
共重合組成比はN−フェニルマレイミド残基単位:イソブテン残基単位=57モル%:モル43%であった。
【0038】
該溶液を25℃で放置したところ、6時間で溶液が白濁、増粘し、保存安定性に劣るものであった。
【0039】
比較例2
撹拌機、圧力計、温度計、窒素導入管、オレフィン導入管及び脱気管の付いた1リットルオートクレーブにN−フェニルマレイミド154.9g(0.89mol)、t−ブチルパーオキシピバレート0.92g(3.7mmol)及びメチルエチルケトン450gを仕込み、窒素で数回パージした後、液化イソブテンを58.6ミリリットル(0.63mol)を仕込み、60℃で8時間反応させてポリマー濃度25重量%のN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体(重量平均分子量(Mw)=74000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=1.85)溶液を得た。
【0040】
共重合組成比はN−フェニルマレイミド残基:イソブテン残基=66モル%:34モル%であった。
【0041】
この溶液を25℃で1ヶ月放置を行い、保存安定性を確認したところ、溶液の白濁は観察されなかったが、流延法により成膜しフィルムを得たところ該フィルムは強度がなく、脆くて実用的強度を有していなかった。
【0042】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)で示されるオレフィン残基単位40〜35モル%及び下記の式(II)で表されるN−置換マレイミド残基単位60〜65モル%からなるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体及び有機溶媒よりなり、ポリマー濃度が15〜30重量%であることを特徴とする樹脂溶液。
【化1】

(ここで、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。)
【化2】

(ここで、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜24の芳香族基,アルキル基置換芳香族基を示す。)
【請求項2】
有機溶媒がメチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、塩化メチレン、クロロホルムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の有機溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂溶液。
【請求項3】
N−置換マレイミド・オレフィン共重合体がN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の樹脂溶液。
【請求項4】
下記の式(III)で示されるオレフィン/下記の式(IV)で表されるN−置換マレイミド=0.75〜2(モル比)の範囲で仕込みラジカル重合反応により得られた重合溶液であることを特徴とする請求項1〜3に記載の樹脂溶液。
【化3】

(ここで、R4、R5はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。)
【化4】

(ここで、R6は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜24の芳香族基,アルキル基置換芳香族基を示す。)

【公開番号】特開2006−28369(P2006−28369A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210184(P2004−210184)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】