説明

保存庫

【課題】玄米や籾等の物品の乾燥に要する時間を短縮化し、利便性の向上を図ることを可能とする保存庫を提供する。
【解決手段】貯蔵室2内において玄米や籾を乾燥した後、保冷する機能を有する保存庫Rにおいて、圧縮機15から吐出された高温冷媒が流通されて貯蔵室2を加熱する第1の熱交換器5と、圧縮機15から吐出され、凝縮した後、減圧された冷媒が流通されて冷却作用を発揮し、貯蔵室2内を冷却する冷却器4と、熱交換器5及び冷却器4への冷媒の流通を制御する制御装置15とを備え、制御装置15は、熱交換器15による加熱作用を発揮させて貯蔵室2内の空気を加熱する加熱モードを実行し、該加熱モードの終了後、冷却器4による冷却作用を発揮させて貯蔵室2内の空気を冷却し、熱交換器5による加熱作用を発揮させて当該空気を加熱する除湿乾燥モードを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば玄米又は籾などの穀物を長期保存するため、貯蔵室内において乾燥した後、保存に適した温度にて保冷する機能を有する保存庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
玄米又は籾などの穀物は、収穫後、長期間の保存を可能とするため、収穫後に含有される水分を適切な値にまで乾燥処理する。一般に、玄米の場合は、収穫直後は20数%程度の水分が含有されているが、これを適切に15%程度にまで乾燥することによって、品質を低下させることなく、また、カビの発生を抑制することが可能となる。
【0003】
乾燥方法としては、収穫された玄米又は籾を日当たりの良いところに広げて所定の含水率となるまで自然乾燥させる方法や、バーナーやヒータなどの加熱手段によって加熱された熱風に晒すことによって、強制的に乾燥させる方法がある。
【0004】
しかしながら、自然乾燥では、乾燥条件が天候に左右されやすく、乾燥に適した天候でなければ、適切な状態にまで乾燥させることが困難であるという問題がある。また、玄米又は籾を日光に晒す作業は、煩雑であると共に、乾燥に適した場所を所定面積以上、確保しなければならないという問題がある。他方、バーナーなどの加熱手段による乾燥方法では、燃料を必要とし、ランニングコストの高騰を招くと共に、収穫時期にしか使用されない設備であるため、不使用時の収納場所の確保や、経済面において問題があった。
【0005】
そこで、係る技術的課題を解決するため、乾燥機能付きの保存庫が開発されている(特許文献1参照)。係る保存庫は、冷却器で冷却された冷気を加熱する熱交換器を備えたドライ回路を有する冷却装置を備えたものであり、収納部に収納された玄米や籾に、冷気ではなく、冷却器にて冷却された後、更に放熱される熱交換器によって加熱された相対湿度の低い温風を供給することによって玄米や籾を乾燥させるものである。また、この保存庫は、玄米や籾を乾燥させる乾燥制御の他に、玄米や籾を所定の温度に冷却する冷却制御を可能とするものであり、収納部に収納された玄米や籾を乾燥させた後、所定温度に保冷することを可能としている。
【特許文献1】特開2002−98420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した如き保存庫では、玄米又は籾の乾燥時において、冷却器によって、収納部内の空気を冷却し、相対湿度を下げることによって空気中の水分を凝縮し、除去した後、当該冷却器と同一の冷媒回路を構成する熱交換器の放熱作用によって加熱されることにより、玄米又は籾の乾燥処理を行う。そのため、収納部内の空気温度を乾燥に適した温度、例えば+35℃に上昇させるのに、時間がかかるため、結果として、玄米や籾の乾燥に要する時間が長くなるという問題があった。収納部に収納可能とされる玄米や籾の量には限りがあるため、収納量を上回る量の玄米や籾を乾燥処理するためには、多くの時間を要するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、玄米又は籾等の物品の乾燥に要する時間を短縮化し、利便性の向上を図ることを可能とする保存庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保存庫は、貯蔵室内において物品を乾燥した後、保冷する機能を有するものであって、圧縮機から吐出された高温冷媒が流通されて加熱作用を発揮すると共に、貯蔵室内の空気と熱交換可能に配設された第1の熱交換器と、圧縮機から吐出され、凝縮した後、減圧された冷媒が流通されて冷却作用を発揮すると共に、貯蔵室内の空気と熱交換可能に配設された第2の熱交換器と、これら熱交換器への冷媒の流通を制御する制御装置とを備え、該制御装置は、第1の熱交換器による加熱作用を発揮させて貯蔵室内の空気を加熱する加熱モードを実行すると共に、該加熱モードの終了後、第2の熱交換器による冷却作用を発揮させて貯蔵室内の空気を冷却し、且つ、第1の熱交換器による加熱作用を発揮させて当該空気を加熱する除湿乾燥モードを実行するものである。
【0009】
請求項2の発明の保存庫は、上記発明において、第1の熱交換器による加熱能力を変更可能としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、貯蔵室内において物品を乾燥した後、保冷する機能を有する保存庫において、圧縮機から吐出された高温冷媒が流通されて加熱作用を発揮すると共に、貯蔵室内の空気と熱交換可能に配設された第1の熱交換器と、圧縮機から吐出され、凝縮した後、減圧された冷媒が流通されて冷却作用を発揮すると共に、貯蔵室内の空気と熱交換可能に配設された第2の熱交換器と、これら熱交換器への冷媒の流通を制御する制御装置とを備え、該制御装置は、第1の熱交換器による加熱作用を発揮させて貯蔵室内の空気を加熱する加熱モードを実行すると共に、該加熱モードの終了後、第2の熱交換器による冷却作用を発揮させて貯蔵室内の空気を冷却し、且つ、第1の熱交換器による加熱作用を発揮させて当該空気を加熱する除湿乾燥モードを実行するので、加熱モードにおいて第1の熱交換器により加熱作用によって物品自体の温度を上昇させることができ、これによって、当該物品に含有される水分の蒸発を促進させることができる。
【0011】
そして、加熱モードの終了後に、除湿乾燥モードにおいて、第2の熱交換器による冷却作用により貯蔵室内の空気の除湿を行うことができると共に、第1の熱交換器による加熱作用によって貯蔵室内の空気温度を維持することが可能となる。
【0012】
これにより、一旦、加熱モードにおいて物品自体に含まれる水分を蒸発させた後、除湿乾燥モードにおいて、温度を維持しつつ除湿を行うことが可能となるため、除湿乾燥効率を向上させることができ、当該除湿・乾燥に要する時間を著しく短縮することが可能となる。
【0013】
また、本発明によれば、圧縮機から吐出された冷媒による加熱作用を用いるものであるため、ヒータ等と比してランニングコストに対する発熱量が大きく、加熱能力が大きいため、高効率にて物品の除湿乾燥を実現することができると共に、火災の危険性が少なく安全性の面においても有利である。
【0014】
そして、除湿乾燥モードの終了後は、貯蔵室内を冷却することにより、物品を所定温度に保冷することが可能であり、特に、玄米や籾などの穀物の乾燥・保存に有効である。
【0015】
請求項2の発明によれば、上記発明に加えて、第1の熱交換器による加熱能力を変更可能としたので、貯蔵室内に収納される物品の種類に応じて加熱温度や加熱速度を変更することが可能となり、当該物品に適した除湿・乾燥を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態を詳述する。図1は本発明の保存庫Rの内部透視正面図、図2は図1の保存庫Rの縦断側面図を示している。本実施例の保存庫Rは、例えば農家の納屋などに設置され、収納袋に収容された米や籾などの穀物、若しくは、大豆等を乾燥した後、所定温度に貯蔵可能とする穀物貯蔵用の縦型低温貯蔵庫である。
【0017】
保存庫Rは前面に開口1Aを有する本体としての断熱箱体1により構成され、当該断熱箱体1内には、貯蔵室2が形成されている。そして、この断熱箱体1の前面開口1Aは、当該開口1Aの一側を中心として回動自在に枢支される断熱扉10により開閉自在に閉塞されている。
【0018】
この貯蔵室2の底面には、簀の子20が配置され、この簀の子20上には、収納袋、例えば玄米袋内に収容された米や籾などの被貯蔵物(物品)Fが複数段、積載される。尚、本実施例では奥部に一段、全部に一段ずつ積載される。通常、米の収穫時期などに、貯蔵室2内に多くの被貯蔵物Fが貯蔵され、詳細は後述する如き冷却・乾燥装置3によって、適切な含水率となるまで乾燥された後、適切な温度環境で保管可能とされている。
【0019】
また、この貯蔵室2の左右側面を構成する壁面には、貯蔵室2の底部から上部に渡り、上下方向の支柱21が左右それぞれの壁面に複数、本実施例では2本ずつ設けられる。この支柱21の貯蔵室2側の側面には、棚装置22を架設するための係合孔23が上下に渡って所定間隔を存して複数、形成されている。
【0020】
棚装置22は、枠部材と当該枠部材の前後に渡って形成される線条などから構成されており、当該棚装置22の上面に被貯蔵物Fを載置可能とすると共に、貯蔵室2内の空気を通過可能としている。尚、この棚装置22は、貯蔵室2内に貯蔵される被貯蔵物Fの収納量に応じて容易に棚装置22を架設することができるようにされている。そのため、貯蔵室2内に貯蔵される被貯蔵物Fの収納量が少なくなった場合に、貯蔵室2上部に形成される空間に棚装置22を架設することにより、当該棚装置22上に野菜などを載置することが可能となる。
【0021】
一方、この貯蔵室2内上部には、冷却・乾燥装置3の冷却器(第2の熱交換器)4と、熱交換器(第1の熱交換器)5が配設されている。これら冷却器4と、熱交換器5の近傍、本実施例では冷却器4の前方には庫内循環用送風機6が取り付けられている。また、これら冷却器4、熱交換器5及び庫内循環用送風機6の下方には、冷却器4と熱交換器5が配設されている温度調節室7と貯蔵室2とを区画するための仕切板8が設けられている。この仕切板8は、後方が開口されていると共に、送風機6に対応する位置に吸込口9が形成されている。
【0022】
この仕切板8は、後部に向かって少許低く傾斜して形成されており、開口が形成される後端には、ドレン排水用のホース24の一端が接続されている。このドレン排水用のホース24は、断熱箱体1の内壁に沿って引き出されると共に、当該他端は、断熱箱体1の下部より外部に引き出されている。これにより、冷却器4の冷却作用によって凝縮された貯蔵室2内の空気中の水分は、ドレン水としてドレン排水用のホース24を介して外部に排出可能とされている。
【0023】
他方、断熱箱体1の天面には、前面パネル12及び両側面及び後面を構成するパネル13によって機械室14が画成されており、この機械室14内には、冷却・乾燥装置3を構成する圧縮機15や熱交換器(第3の熱交換器)16などが設置される。そして、熱交換器16の近傍には、熱交換器用送風機17が配設されている。そのため、前面パネル12には、機械室14内に外気を導入可能とするための複数の吸込口12Aが形成されていると共に、本実施例では、側面13に圧縮機15の後方に位置して複数の排気口13Aが形成されている。
【0024】
ここで、図3の冷媒回路図を参照して上記乾燥・冷却装置3について詳述する。本実施例における乾燥・冷却装置3は、圧縮機15と、第3の熱交換器16と、減圧手段としてのキャピラリーチューブ18と、冷却器4と、電磁開閉弁40とが環状に配管接続され、内部に所定量の冷媒が充填された冷凍サイクルの冷媒回路により構成される。
【0025】
第3の熱交換器16とキャピラリーチューブ18とを接続する冷媒配管には、第3の熱交換器16からキャピラリーチューブ18に向かう方向を順方向とする逆止弁27が設けられていると共に、当該逆止弁27をバイパスするかたちで、バイパス配管28が設けられている。このバイパス配管28には、キャピラリーチューブ18から第3の熱交換器16に向かう方向を順方向とする逆止弁29が設けられていると共に、当該逆止弁29の下流側には、それぞれ電磁開閉弁30、31が介設されるキャピラリーチューブ32、33が並列に接続されている。これらキャピラリーチューブ32、33は、抵抗が異なるものであり、本実施例においてキャピラリーチューブ32の抵抗値は、キャピラリーチューブ33よりも小さいものとする。そのため、電磁開閉弁30、31を詳細は後述する如く制御装置(制御手段)41によって開閉制御することにより、キャピラリーチューブ32かキャピラリーチューブ33に択一的に冷媒を流すことが可能であると共に、双方を閉じて流路を完全に閉鎖する若しくは、双方を開放することも可能である。
【0026】
そして、圧縮機15の吐出側配管15Aと第3の熱交換器16とを接続する冷媒配管16Aには、電磁開閉弁35が介設された分岐配管34が接続されており、当該分岐配管34の他端は、圧縮機15の吸込側配管15Bに接続されている。
【0027】
更に、圧縮機15の吐出側配管15Aと、前記冷媒配管16Aとが接続される分配管36には、分岐配管19、26が接続されている。分岐配管19の他端は、上記第1の熱交換器5を介して第3の熱交換器16とキャピラリーチューブ18との間に接続される。分岐配管26の他端は、キャピラリーチューブ18と冷却器4との間に接続される。
【0028】
そして、分岐配管19には、圧縮機15から吐出側配管15Aを介して吐出された冷媒を第1の熱交換器5に流入させるか否かを制御する電磁開閉弁37が設けられている。分岐配管26には、圧縮機15から吐出側配管15Aを介して吐出された冷媒を冷却器4に流入させるか否かを制御する電磁開閉弁38が設けられている。更に、前記冷媒配管16Aには、圧縮機15から吐出側配管15Aを介して吐出された冷媒を第3の熱交換器16に流入させるか否かを制御する電磁開閉弁39が設けられている。
【0029】
次に、図4を参照して、本実施例の制御装置41について説明する。制御装置41は、汎用のマイクロコンピュータにより構成されており、その入力には、貯蔵室2内の温度を検出する庫内温度センサ42と、機械室14の前面パネル12に配設されるコントロールパネル43が接続されている。また、出力には、圧縮機15と、庫内循環用送風機6と、熱交換器用送風機17と、各電磁開閉弁30、31、35、37、38、39、40が接続されている。
【0030】
以上の構成で次に本実施例の保存庫Rの動作を説明する。先ず、袋に収容された収穫直後の玄米や籾など(被貯蔵物F)を貯蔵室2内に収納し、当該玄米や籾を長期保存に適した含水率とするため、当該玄米や籾の乾燥運転を実行する。
【0031】
本実施例における保存庫Rの乾燥運転は、加熱モードと、除湿乾燥モードとからなる。コントロールパネル43を操作することにより、保存庫Rの乾燥運転を開始する。制御装置41は、先ず、加熱モードを実行し、次いで、除湿乾燥モードを実行する。
【0032】
加熱モードでは、制御装置41は、電磁開閉弁35、37を開放し、電磁開閉弁38、39、40を閉鎖し、電磁開閉弁30、31の何れか一方、本実施例では電磁開閉弁30を開放する。係る状態で、制御装置41は、圧縮機15、庫内循環用送風機6、熱交換器用送風機17を運転制御する。尚、図8には、当該加熱モード以外にも後述する除湿乾燥モード、冷却運転及びデフロスト運転時における電磁開閉弁の開閉動作を示す。
【0033】
これにより、圧縮機15が運転されると、図3において太線にて示されるように、圧縮機15の冷媒吐出配管15Aから吐出された高温高圧のガス冷媒は、第1の熱交換器5に流入して放熱し、凝縮液化される。このとき、第1の熱交換器5の加熱作用を発揮することにより、第1の熱交換器5は、貯蔵室2内から温度調節室7内に流入した空気と熱交換され、放熱されると共に、加熱された温度調節室7内の空気(暖気)は、庫内循環用送風機6の運転によって後方の開口より貯蔵室2内に吐出される。
【0034】
貯蔵室2内に吐出された暖気は、貯蔵室2内を循環し、当該貯蔵室2内に収納される被貯蔵物Fを加熱した後、再び仕切板8に形成される吸込口9を介して温度調節室7に帰還する。これにより、貯蔵室2内に収容される玄米や籾などの被貯蔵物Fは、所定の温度、例えば+38℃などに加熱され、当該玄米や籾に含有される水分の蒸発が促される。そして、玄米や籾等から蒸発された水分は、貯蔵室2内の空気中に放出される。
【0035】
そして、第1の熱交換器5をでた冷媒は、逆止弁29を経て、本実施例では、電磁開閉弁30を介してキャピラリーチューブ32内に流入する。これにより、第1の熱交換器5にて凝縮液化された冷媒はキャピラリーチューブ32で減圧された後、第3の熱交換器16にて蒸発し、ガス冷媒となった後、電磁開閉弁35を介して圧縮機15に帰還する。
【0036】
このとき、制御装置41は、庫内温度センサ42の出力、及び/又はコントロールパネル43による設定操作に基づき減圧するキャピラリーチューブを択一的に用いることが可能である。例えば、貯蔵室2内に収納される被貯蔵物Fの種類に応じて、当該被貯蔵物Fの含水率が高い場合には、蒸発効率を高めるため、第1の熱交換器5における放熱能力を増大させる必要がある。そのため、抵抗の小さい方のキャピラリーチューブ32(本実施例では、キャピラリーチューブ32と33では、32の方が小さい)を用いて冷媒を減圧するため、制御装置41は、キャピラリーチューブ32への冷媒の流入を許容する電磁開閉弁30を開放し、キャピラリーチューブ33への冷媒の流入を許容する電磁開閉弁31を閉鎖する。これによって、より大きな放熱能力にて貯蔵室2内を加熱することが可能となる。
【0037】
他方、被貯蔵物Fが高温にて品質の劣化を招く場合には、第1の熱交換器5における放熱能力を下げる必要がある。そのため、抵抗の大きい方のキャピラリーチューブ33(本実施例では、キャピラリーチューブ32と33では、33の方が大きい)を用いて冷媒を減圧するため、制御装置41は、キャピラリーチューブ32への冷媒の流入を許容する電磁開閉弁30を閉鎖し、キャピラリーチューブ33への冷媒の流入を許容する電磁開閉弁31を開放する。これによって、より小さな放熱能力にて貯蔵室2内を加熱することが可能となる。
【0038】
そして、当該加熱モードを所定時間実行し、被貯蔵物Fの含水率が所定の含水率となった場合には、制御装置41は、除湿乾燥モードを実行する。尚、本実施例では、加熱モードは、所定時間実行し、玄米や籾等に含有される水分の蒸発を促進しているが、これに限定されるものではなく、例えば、貯蔵室2内の湿度を検出する湿度センサを設け、検出された湿度が所定の値を超えた時点で除湿乾燥モードに移行しても良いものとする。
【0039】
除湿乾燥モードでは、制御装置41は、電磁開閉弁37、40を開放し、電磁開閉弁30、31、35、38、39を閉鎖する。係る状態で、制御装置41は、圧縮機15、庫内循環用送風機6、熱交換器用送風機17を運転制御する。
【0040】
これにより、圧縮機15が運転されると、図5において太線にて示されるように、圧縮機15の冷媒吐出配管15Aから吐出された高温高圧のガス冷媒は、第1の熱交換器5に流入して放熱し、凝縮液化される。そして、第1の熱交換器5をでた冷媒は、キャピラリーチューブ18内に流入する。これにより、第1の熱交換器5にて凝縮液化された冷媒はキャピラリーチューブ18で減圧された後、冷却器4で冷却能力を発揮し、ガス冷媒となった後、電磁開閉弁40を介して圧縮機15に帰還する。
【0041】
このとき、庫内循環用送風機6の運転によって、仕切板8に形成された吸込口9を介して温度調節室7内に流入した貯蔵室2内の水分を多く含んだ空気は、冷却器4の冷却作用によって冷却される。ここで、空気中に含まれた水分は、凝縮されるため、除湿され冷却された空気は、後段の第1の熱交換器5において加熱された後、後方の開口より貯蔵室2内に吐出される。
【0042】
そして、貯蔵室2内に吐出された除湿され乾燥された暖気は、貯蔵室2内を循環し、当該貯蔵室2内に収納される被貯蔵物Fを乾燥・加熱した後、再び仕切板8に形成される吸込口9を介して温度調節室7に帰還する。これにより、貯蔵室2内に収容される玄米や籾などの被貯蔵物Fは、所定の温度、即ち、加熱モードにおける貯蔵室2内の温度を維持したまま、貯蔵室2内の空気の除湿・乾燥を実現することが可能となる。これにより、効率的に除湿が行われる。
【0043】
尚、冷却器4において凝縮された水分は、ドレン水として仕切板8、若しくは、仕切板8に設けられるドレン皿に受容された後、ドレン排水用ホース24を介して円滑に外部に排出される。
【0044】
そして、制御装置41は、当該除湿乾燥モードを所定時間実行した後、当該乾燥運転を終了する。
【0045】
このように、本実施例における乾燥運転では、先ず初めに、加熱モードにおいて貯蔵室2内の温度を上昇させ、被貯蔵物F、即ち、本実施例では玄米や籾自体の温度を上昇させることができる。これにより、玄米や籾に含まれる水分の蒸発を促した後、除湿乾燥モードにおいて冷却器4の冷却作用により、貯蔵室2内の空気の除湿を実行することが可能となる。また、このとき、冷却器4の冷却作用によって冷却された空気は、後段において、第2の熱交換器5の放熱作用により加熱されるため、貯蔵室2内の温度を維持しつつ、除湿乾燥を実行することが可能となる。
【0046】
これにより、一旦、加熱モードにおいて被貯蔵物F(玄米や籾など)自体に含まれる水分を蒸発させた後、除湿乾燥モードにおいて、温度を維持しつつ除湿を行うことが可能となるため、除湿乾燥効率を向上させることができ、当該除湿・乾燥に要する時間を著しく短縮することが可能となる。
【0047】
また、本発明によれば、圧縮機15から吐出された冷媒による加熱作用を用いるものであるため、ヒータ等と比してランニングコストに対する発熱量が大きく、加熱能力が大きいため、高効率にて物品の除湿乾燥を実現することができると共に、火災の危険性が少なく安全性の面においても有利である。
【0048】
更に、本実施例では、当該乾燥運転における加熱モードにおいて、抵抗の異なるキャピラリーチューブ32、33を択一的に減圧手段として用いることにより、第1の熱交換器5における加熱能力を変更可能とすることができ、貯蔵室2内に収納される物品の種類に応じて加熱温度や加熱速度を変更することが可能となる。従って、当該被貯蔵物Fに適した除湿・乾燥を実現することが可能となる。
【0049】
尚、本実施例では、第1の熱交換器5における加熱能力を変更する手段として抵抗の異なるキャピラリーチューブ32、33を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、電子膨張弁などによって、第1の熱交換器5における加熱能力を可変としても良く、これ以外にも、圧縮機15をインバータ制御し、当該圧縮機15の周波数を変更することによっても、第1の熱交換器5における加熱能力を可変としても良いものとする。
【0050】
上述した如き乾燥運転が終了した後、コントロールパネル43の操作によって、継続して冷却運転を実行することが可能である。即ち、制御装置41は、上記乾燥運転が終了した後、貯蔵室2内において乾燥された被貯蔵物Fを長期保存に適した温度環境において保存する冷却運転を実行する。
【0051】
この冷却運転では、制御装置41は、電磁開閉弁39、40を開放し、電磁開閉弁30、31、35、37、38を閉鎖する。係る状態で、制御装置41は、圧縮機15、庫内循環用送風機6、熱交換器用送風機17を運転制御する。
【0052】
これにより、圧縮機15が運転されると、図6において太線にて示されるように、圧縮機15の冷媒吐出配管15Aから吐出された高温高圧のガス冷媒は、電磁開閉弁39を介して第3の熱交換器16に流入して放熱し、凝縮液化される。そして、第3の熱交換器16をでた冷媒は、逆止弁27を介してキャピラリーチューブ18内に流入する。これにより、第3の熱交換器16にて凝縮液化された冷媒はキャピラリーチューブ18で減圧された後、冷却器4で冷却能力を発揮し、ガス冷媒となった後、電磁開閉弁40を介して圧縮機15に帰還する。
【0053】
従って、庫内循環用送風機6の運転によって、仕切板8に形成された吸込口9を介して温度調節室7内に流入した貯蔵室2内の空気は、冷却器4の冷却作用によって所定温度に冷却された後、後方の開口より貯蔵室2内に吐出される。そして、貯蔵室2内に吐出された冷気は、貯蔵室2内を循環し、当該貯蔵室2内に収納される被貯蔵物Fを冷却した後、再び仕切板8に形成される吸込口9を介して温度調節室7に帰還する。これにより、貯蔵室2内に収容される玄米や籾などの被貯蔵物Fは、所定の温度、例えば、+10℃乃至+15℃、所定の湿度、例えば、60%の保存条件に維持される。これによって、一年を通じて貯蔵室2内で穀物に適した環境で良好に貯蔵することが可能となる。
【0054】
このように、乾燥運転の終了後は、貯蔵室2内を冷却することが可能であるため、被貯蔵物Fを所定温度に保冷することが可能であり、特に、玄米や籾など長期保存のため、乾燥が必要となる穀物の乾燥・保存に有効となる。
【0055】
尚、上記冷却運転において、冷却器4に着霜が生じる場合がある。そのため、制御装置41は、所定時間の経過ごとに、デフロスト運転を実行することが好ましい。
【0056】
デフロスト運転において、制御装置41は、電磁開閉弁38、40を開放し、電磁開閉弁30、31、35、37、39を閉鎖する。係る状態で、制御装置41は、圧縮機15、庫内循環用送風機6、熱交換器用送風機17を運転制御する。
【0057】
これにより、圧縮機15が運転されると、図7において太線にて示されるように、圧縮機15の冷媒吐出配管15Aから吐出された高温高圧のガス冷媒は、電磁開閉弁38を介して冷却器4内に流入し、当該冷却器4に生じた着霜を融解する。そして、冷却器4をでた高温ガス冷媒は、電磁開閉弁40を介して圧縮機15に帰還する。
【0058】
当該デフロスト運転を実行することにより、冷却器4に生じた着霜は、融解した後、ドレン排水用のホース24を介して外部に排出するため、貯蔵室2内の水分を低減することが可能となり、より一層、乾燥した長期保存に適した環境にて玄米や籾又は大豆等などの被貯蔵物Fを保存することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の保存庫の内部透視正面図である。
【図2】図1の保存庫の縦断側面図である。
【図3】図1の保存庫の冷媒回路図である(加熱モード)。
【図4】図1の制御装置の電気ブロック図である。
【図5】図1の保存庫の冷媒回路図である(除湿乾燥モード)。
【図6】図1の保存庫の冷媒回路図である(冷却運転)。
【図7】図1の保存庫の冷媒回路図である(デフロスト運転)。
【図8】各電磁開閉弁の動作を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
R 保存庫
1 断熱箱体
2 貯蔵室
3 冷却・乾燥装置
4 冷却器(第2の熱交換器)
5 熱交換器(第1の熱交換器)
6 庫内循環用送風機
7 温度調節室
8 仕切板
9 吸込口
14 機械室
15 圧縮機
16 熱交換器(第3の熱交換器)
17 熱交換器用送風機
18、32、33 キャピラリーチューブ(減圧手段)
19、26、34 分岐配管
24 ドレン排水用ホース
27、29 逆止弁
28 バイパス配管
30、31、35、37、38、39、40 電磁開閉弁
41 制御装置
42 庫内温度センサ
43 コントロールパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室内において物品を乾燥した後、保冷する機能を有する保存庫において、
圧縮機から吐出された高温冷媒が流通されて加熱作用を発揮すると共に、前記貯蔵室内の空気と熱交換可能に配設された第1の熱交換器と、
前記圧縮機から吐出され、凝縮した後、減圧された冷媒が流通されて冷却作用を発揮すると共に、前記貯蔵室内の空気と熱交換可能に配設された第2の熱交換器と、
これら熱交換器への冷媒の流通を制御する制御装置とを備え、
該制御装置は、前記第1の熱交換器による加熱作用を発揮させて前記貯蔵室内の空気を加熱する加熱モードを実行すると共に、該加熱モードの終了後、前記第2の熱交換器による冷却作用を発揮させて前記貯蔵室内の空気を冷却し、且つ、前記第1の熱交換器による加熱作用を発揮させて当該空気を加熱する除湿乾燥モードを実行することを特徴とする保存庫。
【請求項2】
前記第1の熱交換器による加熱能力を変更可能としたことを特徴とする請求項1に記載の保存庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−48637(P2008−48637A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226294(P2006−226294)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(502041336)三洋昭和パネルシステム株式会社 (13)
【Fターム(参考)】