説明

保持器のずれ防止機構を備えた有限直動案内ユニット

【課題】 この有限直動案内ユニットは,ずれ防止機構のピニオンを一対のホルダ部材によって確実に高精度に保持して保持器に固定し,保持器のずれを防止する。
【解決手段】 ずれ防止機構20は,保持器3に取り付けられたホルダ10,軌道台1,2の壁面17,18に設けられたラック5,6,及びラック5,6に噛み合う歯部41を備え且つホルダ10に回転自在に装着されたピニオン4を有する。ホルダ10は,嵌着孔30の領域で保持器3の一側面42に位置するホルダ部材11と他側面42に位置するホルダ部材12から成る。ホルダ10は,ホルダ部材11,12の袖部38によって嵌着孔30の保持板9の縁面29を両側から狭着して保持器3に固設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,一対の長尺な軌道台を保持器で保持された転動体を介して互いに相対移動させる保持器のずれ防止機構を備えた有限直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,半導体製造装置等の各種の機械装置では,高加減速化,高速化,コンパクト化,高精度化,低摺動抵抗化等の各種の性能が求められており,これらの機械装置には,有限直動案内ユニットが多く使用されるようになった。また,従来の保持器のずれ防止機構を備えた有限直動案内ユニットは,小型のものであったが,近年,更に大きな型番へ適用される大型のものが要望される状況になっている。
【0003】
従来,有限直動案内ユニットとして,本出願人に係る特許出願のものが知られている。該有限直動案内ユニットは,軌道台間に配置されているローラを保持する保持器に形成された嵌着孔に,ホルダ自身を変形させながら挿入し,ホルダの変形を戻して嵌着孔に嵌合して保持器に固着し,その後に,ホルダの軸支持孔にピニオンの軸部を押し込んで嵌め込み,ピニオンを回転自在に支持するように構成されている。即ち,上記有限直動案内ユニットは,軌道台間に小形のずれ防止機構を配設し,転動体を保持する保持器のずれを防止しており,保持器の嵌着孔に1枚のホルダをスナップフィットさせて嵌着している。ホルダは,端面から突出して嵌着孔の一側の縁面に当接するフランジ部,及び端面から突出して嵌着孔の他側の縁面に係止する係止爪部を備えているものであった(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,従来の有限直動案内ユニットとして,本出願人に係るものが先に特許出願されている。該有限直動案内ユニットは,軌道台間にラックとピニオンとを設けることによって転動体の保持機能を持つ保持器の脱落を防止するものであり,保持器に形成された嵌着孔に嵌着されたホルダは,そのフランジ部に設けた複数のピンを保持器に形成したピン孔に嵌入した後に,ピンの端部をカシメ加工し,保持器に固着されている。ピニオンは,ホルダ部のホルダ孔部にピニオンの軸部を押し込むことによってホルダに回転自在に保持されている(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
更に,本出願人に係る有限直動案内ユニットとして,有限直動用転がり軸受が知られている。該有限直動用転がり軸受は,軌道部材の移動を確実にコントロールするため,軌道溝が対向するように軌道部材を平行に配置し,軌道溝に形成された研削逃げ溝内にラックを配置し,軌道溝間に円筒ころ及びラックと噛み合うピニオンを組み込んだものである。該有限直動用転がり軸受は,断面三角形状の上部ギヤホルダと断面三角形状の下部ギヤホルダとでピニオンを回転自在に挟んで支持し,上部ギヤホルダの頂端部を保持器に形成された保持孔の係止爪のV字溝に嵌め込み,下部ギヤホルダの頂端部を保持孔のV字溝に係止爪を弾性変形させながら嵌装して保持器に組み付けたものである(例えば,特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−197850号公報
【特許文献2】特開2003−28157号公報
【特許文献3】特開平7−91445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,上記の特許文献1に開示された有限直動案内ユニットは,小形に適したものであり,大形のものでは,ホルダが大きくなり,ホルダ自身を変形させることが困難になり,また,ピニオンに負荷されるずれ防止の力も大きくなり,ピニオンをホルダにしっかりと支持する必要があるものについては,解決される課題があった。
【0007】
また,上記の特許文献2に開示された有限直動案内ユニットは,ホルダを保持器に複数のピンで固着しなければならないので,面倒な組み立てになり,それぞれの部材の加工も面倒なものになっている。また,上記有限直動案内ユニットを大形の機械装置に適用する場合には,ピニオンに負荷されるずれ防止の力も大きくなり,ピニオンをホルダにしっかりと支持する必要があるものについては,解決されるべき課題があった。
【0008】
また,上記有限直動用転がり軸受は,それぞれのギヤホルダが保持器の係止爪で係止しているだけであるので,大形の機械装置に適用する場合には,ギヤホルダをしっかりと保持器に固着する必要があり,同時に,ピニオンに負荷されるずれ防止の力も大きくなり,ピニオンをホルダにしっかりと支持する必要があるものでは,解決すべき課題があった。
【0009】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,従来よりも大形な機械装置に適用可能な保持器のずれ防止機構を備えており,ピニオンを回転自在に収納するホルダを一対のホルダ部材で構成し,大形に適用可能なホルダであっても,一対のホルダ部材をスナップフィット結合で固定してホルダを堅牢に構成し,ホルダを構成する部品点数が少なく,シンプルな構造になり,ホルダ部材を同一形状にして安価に作製でき,ホルダ部材の組み立てが容易であり,コンパクトで応用自在等の特性を発揮でき,保持器を板状に構成して任意の場所に嵌着孔を形成可能にし,該嵌着孔にホルダを取り付けられるものであり,軌道溝が対向していない場所でも適用できる保持器のずれ防止機構を備えた有限直動案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は,長手方向に延びる壁面に軌道溝がそれぞれ形成された互いに相対移動する軌道台,前記軌道溝の間に形成された軌道路に配設されている複数の転動体を保持する前記長手方向に延びた保持板で形成される保持器,及び前記保持器が前記軌道台間でずれるのを防止するずれ防止機溝を備えた有限直動案内ユニットにおいて,
前記ずれ防止機構は,前記保持板に形成された嵌着孔に配設されるホルダ,前記軌道台にそれぞれ設けられたラック,及び前記ラックにそれぞれ噛み合う歯部を備えて前記ホルダに回転自在に装着されたピニオンを有し,前記ホルダは,前記保持板を挟んでそれぞれ対向した第1ホルダ部材と第2ホルダ部材から成り,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材との長手方向の両側の袖部によって,前記保持板の前記嵌着孔の縁面を両側から狭着して前記保持板に固設されることを特徴とする有限直動案内ユニットに関する。
【0011】
また,前記ラックは,前記軌道台の前記壁面にそれぞれ設けられ,前記第1ホルダは前記保持板の一側面に且つ前記第2ホルダ部材は前記保持板の他側面に位置している。
【0012】
また,前記ホルダは,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材とが互いに対向した状態でスナップフィット結合により係止固着して構成されている。更に,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材との前記スナップフィット結合は,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材とにそれぞれ設けた舌片状に延びる爪部と係止段部とが互いに掛止することによって構成されている。また,前記ホルダは,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材とが同一の形状に形成され,前記保持板の長手方向に逆向きに配設されるものである。
【0013】
この有限直動案内ユニットは,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材には,前記ピニオンを嵌挿する窓がそれぞれ略矩形形状に形成されている。
【0014】
また,前記ピニオンに設けた軸部は,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材とに形成された凹状の軸受部によって回転自在に保持される。
【0015】
この有限直動案内ユニットは,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材には,前記保持器の前記嵌着孔に嵌合する凸部がそれぞれ設けられている。
【0016】
また,この有限直動案内ユニットは,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材には,いずれか一方に位置決めピンがそれぞれ設けられ,他方に前記位置決めピンが嵌入するピン孔がそれぞれ形成されている。
【発明の効果】
【0017】
この直動案内ユニットは,上記のように構成されているので,ホルダを保持器に無理な変形を与えることなく簡単に組み込んで保持器に強固に安定して固定でき,ホルダを構成する一対のホルダ部材によってピニオンの軸部を挟持して堅固にホルダに回転自在に取り付けられ,ホルダが保持器の保持板にホルダ部材で強固に挟持して固定される。ホルダを構成する一対のホルダ部材をスナップフィット結合(スナップフィットファスナ)にて保持器に組み込むことによって,専用工具を使用することなく組立性や分解性が向上し,結合のための工程数が少なく,組み立ての際の柔軟性があり,スナップフィット結合を所望な位置に設けることができ,その結合が堅固であるので,ホルダの保持器からの分離を防止できる。一対のホルダ部材に位置決めピンとピン孔を設けたので,ホルダ部材同士を高精度にスナップフィット結合を達成することができる。ホルダ部材間に保持器の保持板を挟持することによってホルダ部材の爪部と係止段部との係止に締め代を与えることができ,ホルダ部材の分離を防止できる。ホルダ部材同士の対向面に凸部を設けた合わせ面を段違いに構成することによって,ホルダに摺動方向の外力が加わってもホルダ部材が分離し難いものになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明による有限直動案内ユニットは,ラック&ピニオンによる保持器のずれ防止機構を備えたものであり,本出願人に係る特開2004−197850号公報に開示された有限直動案内ユニットよりも大きな製品に適用されるずれ防止機構に適したものである。この発明による有限直動案内ユニットは,大型の形番に適用するために,ピニオンの支持構成を堅固に構成したことを特徴としている。
【0019】
以下,図面を参照して,この有限直動案内ユニットの実施例について説明する。まず,図1〜図3に示すように,この有限直動案内ユニットは,一対の軌道台1,2間に位置する転動体のローラ13を保持する保持器3に,軌道台1,2に設けたラック5,6に噛み合うピニオン4を有したラック&ピニオンによる保持器3のずれ防止機構20を備えたものである。この有限直動案内ユニットは,軌道台1と軌道台2とがローラ13を介して互いに相対移動するように構成されているものである。この有限直動案内ユニットにおいて,軌道溝43間のローラ13を保持する保持器3は,互いに相対移動する軌道台1,2のストローク長さに対して半分のストローク長さで相対移動するものに構成されている。そこで,この有限直動案内ユニットは,負荷変動,軌道溝43に形成された軌道面7,8の加工精度,立て軸仕様,高速高加減速等の諸条件により軌道台1,2の位置が僅かずつ位置ずれするが,それを防止するため,ピニオン4とラック5,6から成るずれ防止機構20を保持器3に組み込んで,軌道台1,2の位置ずれが防止できるように構成されている。軌道台1,2の両端面59には,ストローク規制,保持器3の飛ぴ出し規制等を行うため,ストッパとなる端部ねじ14がそれぞれ取り付けられている。
【0020】
軌道台1,2は,実施例では断面略矩形状に形成され,一つの壁面17,18の長手方向に沿って軌道溝43がそれぞれ形成されている。軌道溝43は,V字状の形状に形成されており,長手方向両側に一対の軌道面7,8が位置しており,軌道面7,8間には逃げ溝19が形成されている。保持器3は,軌道台1と軌道台2との間に配設され,転動体である複数のローラ13をそれぞれ所定間隔に回転自在に保持するため,長手方向に沿って隔置した多数の保持孔50が形成された保持板9から構成されている。ローラ13は,保持器3の保持板9の側面42即ち平面に対して45°傾斜して保持板9に組み込まれ,隣接するローラ13同士が交互に交差して,言い換えれば,隣り合うローラ13の軸心が直交して保持板9に形成された保持爪28によって保持板9に保持されている。
【0021】
軌道台1,2には,ベース等の相手部材にボルト(図示せず)によって軌道台1,2をそれぞれ取り付けるため,軌道溝43が形成された対向面の壁面17,18と直交する上下面の壁面44に所定間隔で取付け用孔15がそれぞれ形成されている。取付け用孔15は,ボルトの頭が隠れるようにザグリ孔16と,ベース側からボルトを螺着できるようにねじ孔46とで形成されている。また,ラック5,6は,軌道台1,2の軌道溝43に沿って延びる逃げ溝19内にそれぞれ配設され,逃げ溝19の長手方向の両側面60に形成された嵌挿溝22,23に配設固着されている。ラック5,6は,軌道台1,2の全長に渡って設けてもよいが,軌道台1,2の少なくとも作動範囲を含んだ必要部分の長さにあれば十分である。また,ラック5,6は,軌道台1,2の端面59に開口する嵌挿溝22,23から挿通して配設することができる。ずれ防止機構20を構成するピニオン4は,保持器3に嵌着したホルダ10内に回転自在に配設され,一対のラック5,6に噛み合っている。また,ピニオン4は,実施例では,保持器3の中央位置に一つ配設されている。ずれ防止機構20を構成するピニオン4が配置された保持器3の中央位置は,負荷バランス,ストローク長さの確保等を考慮して好ましい位置であるが,場合によっては,ピニオン4の配設位置は,保持器3の任意の位置でもよく,複数のピニオン4を配設するように構成することも可能である。
【0022】
図4〜図12に示すように,この有限直動案内ユニットは,従来の有限直動案内ユニットに比較して,特に,ホルダ10の構成に特徴を有するものである。この有限直動案内ユニットにおいて,ずれ防止機構20は,保持器3である板状の保持板9に形成された嵌着孔30に取り付けられたホルダ10,軌道台1,2との壁面17,18にそれぞれ設けられたラック5,6,及びホルダ10に回転自在に装着され且つラック5,6に噛み合う歯部41を備えたピニオン4を有している。ホルダ10は,特に,嵌着孔30において保持板9の一側面42に位置するホルダ部材11(第1ホルダ部材)とホルダ部材11に対向して保持板9の他側面42に位置するホルダ部材12(第2ホルダ部材)とから成る。ホルダ部材11,12は,長手方向の両側にそれぞれ延びる袖部38によって嵌着孔30の周りの保持板10の縁面29を両側から狭着して保持板9に固設される。従って,ホルダ10は,ピニオン4を回転自在に支持し,ピニオン4との遊びを極力小さくし,しかもピニオン4をしっかりと保持できるものになっている。また,ホルダ10は,一対のホルダ部材11,12が保持板9をしっかりと挟持して保持板9に固着される構造になっている。ホルダ部材11,12は,互いに対向するホルダ部材11,12のそれぞれの係合面40が相補性状態に配置される同一形状に形成されている。ホルダ部材11,12には,外周に歯部41が形成された円板状でなるピニオン4を嵌挿するため,細長い矩形状の窓35が中央に形成された略矩形板状で形成されている。ホルダ部材11,12は,ピニオン4を窓35に嵌挿させて組み込んだ状態で,保持器3である保持板9に形成された嵌着孔30に嵌合させて互いに対向させると共に,ホルダ部材11,12を互いに対向した状態でスナップフィット結合により係止固定することによって保持板9に固着できる。
【0023】
ホルダ部材11,12は,それぞれ形成された窓35の面である側面39がピニオン4の側面47をしっかりと規制するため,窓35の長手方向全長にわたって十分な壁面を持つように,側面39を形成する部分が山形状の凸部66に形成されている。また,ホルダ部材11,12に設けた凸部31,32は,それらの外面が保持板9の嵌着孔30に嵌合する形状に形成されている。保持板9に対向するホルダ部材11,12の内面の対向面は,それらの周面が袖部38になる係合面40を構成し,対向する係合面40が保持板9の嵌着孔30の周囲の縁面29と当接して保持板9を挟み込むことになる。即ち,保持板9の嵌着孔35に対向する係合面40間の部分は,保持板9の嵌着孔35にしっくりと嵌合するため,係合面40より突出して嵌合部となる凸部31,32に形成されている。また,凸部31,32は,嵌着孔35の深さの丁度半分のサイズにそれぞれ形成され,ホルダ部材11,12の長手方向の一方側に形成されている。更に,ホルダ部材11,12は,一方のホルダ部材11又はホルダ部材12の凸部31又は凸部32の突出量が保持板9の板厚よりも僅かに小さいものになっており,他方のホルダ部材12又はホルダ部材11の袖部38の面と同一面即ち凸部が無い面に対向するように互いに配設されている。
【0024】
また,ホルダ部材11,12の対向面である係合面40には,ピニオン4の軸部21をホルダ部材11,12でしっかりと回転自在に保持するために,軸部21を包み込むように凹部となる軸受部36がホルダ部材11,12の窓部35の中央の両側に形成されている。また,ホルダ部材11,12は,互いにぴったりと高精度に合体するために,一方の対角線上に軸受部36を挟んで2つの位置決めピン33が突出してそれぞれ形成され,他方の対角線上になる180°点対称の位置に位置決めピン33を嵌入するピン孔34がそれぞれ形成されている。また,ホルダ部材11,12の長手方向の一方の端部には,保持板9の対向面42から垂下して延びる舌片状の爪部24,25がそれぞれ形成され,それらの他方の端部には,爪部25又は24を挿通するため凹部になる挿入溝37がそれぞれ形成されている。ホルダ部材11,12にそれぞれ設けた舌片状の爪部24,25は,先端部がフック49にそれぞれ形成されている。ホルダ部材11,12の挿入溝37に続く外面の窓部35の側面39には,爪部24,25のフック49がそれぞれ係止する平面状の係止段部26,27がそれぞれ形成されている。
【0025】
ホルダ10は,同一形状のホルダ部材11,12を合体すると,それぞれの係合面40の凸部31,32になる嵌合部が合わさって保持板9の嵌着孔30に一致して嵌合することになる。保持板9の嵌着孔30は,図7に示すように,ローラ13の保持孔50の二つ分の大きさになる矩形状の窓即ち嵌着孔30に形成されている。保持板9の全長にわたって保持孔50が形成された素材から,その中央部分に位置する保持孔50間の部分を打ち抜いて嵌着孔30を形成したものであり,保持孔50の一部が嵌着孔30の側部に残存しているものになっている。
【0026】
この有限直動案内ユニットは,上記のように構成されているので,保持器3にホルダ10をしっかりと固定でき,ピニオン4がホルダ10を構成するホルダ部材11,12にしっかりと回転自在に保持されるので,ピニオン4は保持器3即ち保持板9に対してしっかりと回転自在に保持されることになる。ここで「しっかりと」は,両者間においてガタもなく,大きな負荷にも耐えられように剛性があることをいうものとする。ホルダ10は,同一構成のホルダ部材11,12を合体させてスナップフィット結合即ちスナップフィットファスナで固着されているので,ホルダ10自体が従来品に比較して部品点数が少なくなり,シンプルな構造,安価に形成でき,ずれ防止機構20の組立が容易であり,コンパクトで,応用自在等の効果を発揮できるものになっている。
【0027】
この有限直動案内ユニットは,上記実施例では,ラック&ピニオンが軌道路内に配設されたものになっているが,ホルダ10は,保持器3に嵌着孔30が形成できる所であれば,保持器3の任意位置に取付け可能であって,軌道台1,2の軌道路の他に配設するようにしてもよいものである。また,上記実施例では,一対の軌道台1,2は,同一構成になっているが,長さを異にするものでもよく,他の形式になる有限直動案内ユニットにも適用できることは勿論である。また,実施例では,転動体がローラ13であるが,ローラ13に限ることなく,ボールに適用できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明による有限直動案内ユニットは,半導体製造装置,精密測定器,検査機,組立器,工作機械,各種ロボット等の各種機械装置に使用して好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明による有限直動案内ユニットの実施例を断面部分を含んで示す斜視図である。
【図2】図1の有限直動案内ユニットを示す正面図である。
【図3】図2の有限直動案内ユニットにおけるA−A断面を示す断面図である。
【図4】図1の有限直動案内ユニットにおける保持器を示す平面図である。
【図5】図4の保持器を示す正面図である。
【図6】図4の保持器におけるB−B断面を示す断面図である。
【図7】図4の保持器からホルダを外した状態を示す平面図である。
【図8】図1の有限直動案内ユニットにおける保持器に設けられたずれ防止機構を示す分解斜視図である。
【図9】図8のずれ防止機構における一方のホルダ部材を示す正面図である。
【図10】図9のホルダ部材を示す平面図である。
【図11】図9のホルダ部材を示す下面図である。
【図12】図9のホルダ部材を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1,2 軌道台
3 保持器
4 ピニオン
5,6 ラック
7,8 軌道面
9 保持板
10 ホルダ
11 ホルダ部材(第1ホルダ部材)
12 ホルダ部材(第2ホルダ部材)
13 ローラ(転動体)
17,18 壁面
20 ずれ防止機構
21 軸部
24,25 爪部
26,27 係止段部
29 縁面
30 嵌着孔
31,32 凸部
33 位置決めピン
34 ピン孔
35 窓
36 軸受部
38 袖部
41 歯部
42 側面
45 軌道路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる壁面に軌道溝がそれぞれ形成された互いに相対移動する軌道台,前記軌道溝の間に形成された軌道路に配設されている複数の転動体を保持する前記長手方向に延びた保持板で形成される保持器,及び前記保持器が前記軌道台間でずれるのを防止するずれ防止機溝を備えた有限直動案内ユニットにおいて,
前記ずれ防止機構は,前記保持板に形成された嵌着孔に配設されるホルダ,前記軌道台にそれぞれ設けられたラック,及び前記ラックにそれぞれ噛み合う歯部を備えて前記ホルダに回転自在に装着されたピニオンを有し,前記ホルダは,前記保持板を挟んでそれぞれ対向した第1ホルダ部材と第2ホルダ部材から成り,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材との長手方向の両側の袖部によって,前記保持板の前記嵌着孔の縁面を両側から狭着して前記保持板に固設されることを特徴とする有限直動案内ユニット。
【請求項2】
前記ラックは,前記軌道台の前記壁面にそれぞれ設けられ,前記第1ホルダは前記保持板の一側面に且つ前記第2ホルダ部材は前記保持板の他側面に位置していることを特徴とする請求項1に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項3】
前記ホルダは,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材とが互いに対向した状態でスナップフィット結合により係止固着して構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項4】
前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材との前記スナップフィット結合は,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材とにそれぞれ設けた舌片状に延びる爪部と係止段部とが互いに掛止することによって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項5】
前記ホルダは,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材とが同一の形状に形成され,前記保持板の長手方向に逆向きに配設されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項6】
前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材には,前記ピニオンを嵌挿する窓がそれぞれ略矩形形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項7】
前記ピニオンに設けた軸部は,前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材とに形成された凹状の軸受部によって回転自在に保持されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項8】
前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材には,前記保持器の前記嵌着孔に嵌合する凸部がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有限直動案内ユニット。
【請求項9】
前記第1ホルダ部材と前記第2ホルダ部材とは,いずれか一方に位置決めピンがそれぞれ設けられ,他方に前記位置決めピンが嵌入するピン孔がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有限直動案内ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−232061(P2007−232061A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53403(P2006−53403)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】