保持装置および超音波診断装置
【課題】折骨の癒合診断等、離間した複数点の位置測定が必要な超音波診断の信頼性をより向上する。
【解決手段】離間した二点を測定するための二つのプローブ12は、単一の保持具16により保持されている。保持具16は、複数のプローブ12を被検体の体表に近接対向させて保持するもので、複数の収容部34と当該収容部34を連結する連結部とを備える。収容部34は、超音波の送受波面を外部に露出させた状態でプローブ12を収容するとともに、保持具16に対するプローブ12の位置を規制する。具体的には、収容部34は、保持具16の底面に形成された凹部である。連結手段は、複数の収容部34を互いに連結して、その相対位置関係を維持するもので、具体的には、保持具16の本体部32である。この保持具16を両面粘着テープ36で体表に貼着することで、複数のプローブ12がその相対位置関係を維持しつつ体表に近接対向させられる。
【解決手段】離間した二点を測定するための二つのプローブ12は、単一の保持具16により保持されている。保持具16は、複数のプローブ12を被検体の体表に近接対向させて保持するもので、複数の収容部34と当該収容部34を連結する連結部とを備える。収容部34は、超音波の送受波面を外部に露出させた状態でプローブ12を収容するとともに、保持具16に対するプローブ12の位置を規制する。具体的には、収容部34は、保持具16の底面に形成された凹部である。連結手段は、複数の収容部34を互いに連結して、その相対位置関係を維持するもので、具体的には、保持具16の本体部32である。この保持具16を両面粘着テープ36で体表に貼着することで、複数のプローブ12がその相対位置関係を維持しつつ体表に近接対向させられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の超音波探触子を体表に近接対向させて保持する保持装置および複数の超音波探触子を備えた超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検体の内部にある診断対象部位に対して超音波を送信し、その際、得られるエコー信号に基づいて、診断対象部位の状態を取得する超音波診断装置が広く知られている。この超音波診断装置では、超音波を送受波する超音波探触子を診断対象部位近傍の体表に当接または近接させて診断を行う。
【0003】
ここで、適切な診断を行うためには、診断対象部位の一時的な状態だけでなく、その経時変化や、被検体に何らかの負荷を加えた前後での診断対象部位の変化状態を取得することが望ましい場合がある。かかる場合には、超音波探触子の位置を固定した状態で保持する必要がある。しかし、人の手で超音波探触子を所定位置で保持することは極めて困難であった。そのため、従来から、超音波探触子と診断対象部位との相対位置関係を保持する装置が多数提案されている(例えば、下記特許文献1,2など)。これらの技術によれば、超音波探触子を所定位置で保持することが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2003−79622号公報
【特許文献2】特開2000−70264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、複数の超音波探触子を用いて、診断対象部位の離間した複数個所の状態を同時に取得したいという要望がある。例えば、骨折した骨、すなわち、折骨に荷重を掛け、その際の折骨の傾斜角度や変位量を取得し、この傾斜角度または変位量等に基づいて折骨の癒合(接合)度合いを判断することがある。この傾斜角度等を取得するためには、折骨上の二点の位置情報を取得する必要がある。折骨上の二点の位置情報を取得するためには、二つの超音波探触子を折骨(診断対象部位)に対して位置固定で保持する必要がある。
【0006】
しかし、従来の保持装置では、単一の超音波探触子しか保持できないため、離間した複数箇所の状態を同時に取得することは困難であった。もちろん、従来の保持装置を複数用いて、複数の超音波探触子を同時に保持することも考えられる。しかし、その場合は複数の超音波探触子同士の位置関係の調整が煩雑であった。また、傾斜角度等の算出に際しては、正確な超音波探触子間距離が必要になるが、複数の超音波探触子がそれぞれ別個の保持装置で保持されている状態では、正確な超音波探触子間距離を取得することは困難であった。そして、その結果、超音波診断の精度が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、超音波診断の精度をより向上でき得る保持装置および超音波診断装置を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、複数の超音波探触子をその位置関係を維持したまま体表に近接対向して保持でき得る保持装置および超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保持装置は、複数の超音波探触子を被検体の体表に近接対向させて保持する保持装置であって、超音波の送受波面を外部に露出させた状態で前記超音波探触子を収容するとともに、前記保持装置に対する超音波探触子の位置を規制する複数の収容手段と、前記複数の収容手段を互いに連結して、その相対位置関係を維持する連結手段と、を備え、収容手段または連結手段を粘着性部材で体表に貼着することで、前記複数の超音波探触子をその相対位置関係を維持しつつ前記体表に近接対向させることを特徴とする。
【0009】
好適な態様では、前記連結手段は、前記体表に当接される当接面を備えたブロック体であり、前記収容手段は、前記ブロック体の当接面に形成された凹部である。
【0010】
他の好適な態様では、前記連結手段は、前記収容手段に対して着脱自在である。前記連結手段は、前記複数の収容手段同士の相対距離が調整可能であることが望ましい。また、前記連結手段は、前記複数の収容手段同士の相対角度が調整可能であることが望ましい。例えば、前記収容手段または前記連結手段のいずれか一方は、軸部材を備え、前記収容手段または前記連結手段の他方は、前記軸部材を挟持するとともに、その挟持力が可変の挟持部材を備えることが望ましい。
【0011】
他の好適な態様では、前記収容手段は、前記超音波探触子を収容する本体部と、前記本体部の下端から外側に延びる鍔部材と、を有し、前記鍔部材を粘着性部材で体表に貼着する。他の好適な態様では、前記連結手段は、体表に当接される当接部材を備え、前記当接部材を粘着性部材で体表に貼着する。
【0012】
他の好適な態様では、前記超音波探触子と前記体表との間に、超音波に対する透過性と弾性とを備えた音響整合部材が配される場合に、前記収容部材の収容空間の断面積は、無負荷状態における前記音響整合部材の断面積より大きく、前記収容部材の収容空間の深さは、無負荷状態における前記音響整合部材と前記超音波探触子の厚みの和より小さい。
【0013】
他の本発明である超音波診断装置は、被検体の内部の診断部位に対して超音波を送受波する複数の超音波探触子と、前記複数の超音波探触子を被検体に近接対向して保持する保持装置と、を有し、前記保持装置は、超音波の送受波面を外部に露出させた状態で前記超音波探触子を収容するとともに、前記保持装置に対する超音波探触子の位置を規制する複数の収容手段と、前記複数の収容手段を互いに連結して、その位置関係を維持する連結手段と、を備え、収容手段または連結手段を粘着性部材で体表に貼着することで、前記複数の超音波探触子をその相対位置関係を維持しつつ前記体表に近接対向させて超音波を送受波することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波探触子同士の位置関係が、収容手段および連結手段によって維持される。また、超音波探触子同士の距離等も容易に取得することができる。その結果、超音波診断の精度をより向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第一実施形態である超音波診断装置10の構成を示すブロック図である。この超音波診断装置10は、骨折した骨の癒合診断に特に好適な構成となっている。ただし、適宜、プローブ12の数や、保持具16の形状等を変更することにより、他の用途にも適用でき得る。
【0016】
この超音波診断装置10は、二つのプローブ12を備えている。この二つのプローブ12は、後に詳説するように、診断対象部位である折骨上の二点に対して同時に超音波の送受波を行うために設けられている。各プローブ12は、超音波を送受波する超音波探触子であり、九つの単振動子が3×3のアレイ状に配されている。各単振動子は、後述する送受信部20からの指示に応じて超音波を送信するとともに、その反射波を受信する。受信された反射波は、プローブ12と装置本体部18とを接続するプローブケーブル13を介して、エコー信号として送受信部20へと出力される。
【0017】
ここで、本実施形態におけるプローブ12は、通常のプローブに比べ、振動子数が非常に少ない構成となっているが、これは、プローブ12を小型、軽量化するためである。すなわち、骨の癒合診断の際には、プローブ12を被検体の体表に貼着した状態で、骨折部位に負荷がかかるように被検体に運動させる。その際、プローブ12が被検体の運動を阻害しないように、また、自重によるプローブ12の位置ずれを防止するために、本実施形態では、振動子の数を低減して、プローブ12を小型、軽量化している。
【0018】
各プローブ12は、スタンドオフ14を介して体表に対向配置される。スタンドオフ14は、音響整合部材として機能するもので、超音波が透過可能であって、その音響インピーダンスが生体に近い材料からなる。本実施形態のスタンドオフ14は、適宜、その形状変形が可能な程度の弾性を備えた固体である。このスタンドオフ14が、体表およびプローブ12の形状に応じて変形することにより、プローブ12および体表との間に存在する隙間が埋められる。これにより、プローブ12と体表との間にある空気による超音波の減衰や反射を防止し、より効率の良い超音波送受信を行うことが可能となる。
【0019】
二組のプローブ12およびスタンドオフ14は、単一の保持具16により保持される。保持具16は、二つのプローブ12を、その位置関係を維持したまま保持する。この保持具16は、後に詳説するが、二つの収容部と、当該二つの収容部を連結する連結部と、を備えている。各収容部には、既述のプローブ12およびスタンドオフ14が収容され、保持される。そして、この保持具16は、プローブ12およびスタンドオフ14を保持した状態で、両面粘着テープにより被検体の体表に貼着される。これにより、二つのプローブ12は、その位置関係を維持したまま、被検体の体表に近接対向することができ、診断対象部位に対して超音波の送受波が可能となる。
【0020】
装置本体部18は、送受信部20や信号処理部22、制御部28、表示器30などがユニット化されて構成されている。送受信部20は、制御部28からの指示に応じて、プローブ12の単振動子に超音波の送信を指示する送信信号を供給する。また、プローブ12から出力されるエコー信号を受信し、これに整相加算や、ゲイン調整、ダイナミックレンジ調整等の信号処理を施す。
【0021】
信号処理部22は、受信信号に対して必要な処理を実行する回路であり、表示モードに応じてBモード形成用の信号処理、Mモード形成用の信号処理などが実行される。また、この信号処理部22は、得られたエコー信号から骨表面部を抽出してトラッキングをする、いわゆるエコートラッキング処理を行う。具体的には、骨の特定ポイント、いわゆる、トラッキングポイントに対して超音波を送信して得られたエコー信号の振幅から、当該トラッキングポイントの位置を検出する。このエコートラッキング処理には、周知の技術、例えば、特開2004−298205号公報に詳述される技術などが利用できる。本実施形態では、二つのプローブ12を用いて、二つのトラッキングポイントの位置を検出している。
【0022】
出力処理部24は、エコー信号に対して送受波座標系から表示座標系への座標変換や補間処理などを実行し、超音波画像データを形成する。形成された超音波画像データは、表示器30に出力される。また、出力処理部24は、得られた二つのトラッキングポイントの位置に基づいて、骨の角度変化量や、二点のトラッキングポイントの相対位置変化量などを算出し、数値やグラフに変換して表示器に出力する。医師等の診断者は、この角度変化量や相対位置変化量に基づき、折骨の癒合度合いを診断する。制御部28は、装置本体部18全体を制御するものである。この制御部28には、操作部26を介してユーザからの指示が入力される。制御部28は、このユーザからの指示に応じて装置本体部18を構成する各部に制御信号を出力し、制御する。
【0023】
次に、二つのプローブ12を保持する保持具16について説明する。図2は保持具16に二つのプローブ12をセットした際の斜視図であり、図3はその分解斜視図である。また、図4は、保持具16を違う角度から見た斜視図である。
【0024】
保持具16は、略直方体のブロック体で、その底面(体表との対向面)の両端部にはプローブ12およびスタンドオフ14を収容する収容部34が形成されている。つまり、この保持具16は、二組のプローブ12およびスタンドオフ14が収容可能となっている。収容部34は、具体的には、保持具16の底面に形成された凹部である。この収容部34は、体表側の一面が開口されており、超音波の送受波面を外部に露出させつつ体表面に対向させた状態でプローブ12を収容可能となっている。また、長尺方向の一側面も開口されており、プローブ12の一側面から引き出されているプローブケーブル13を外部に引き出すことが可能となっている。この収容部34に収容されるプローブ12は、両面粘着テープ36により保持具16に貼着される。
【0025】
この二つの収容部34は、保持具16の本体部32によって、その位置関係を維持したまま連結されていることになる。したがって、保持具の本体部32は、二つの収容部34を連結する連結手段として機能する。二つの収容部34が、その位置関係を維持したまま連結されることにより、プローブ12同士の位置関係が保持される。その結果、折骨の癒合診断時に、二つのプローブ12からの受信信号に基づき抽出される二点のトラッキングポイントの相対位置関係が保持され、結果として、骨癒合診断の信頼性をより向上できる。また、プローブ間距離は、保持具16を体表に貼着する前、または、後からでも計測できる。その結果、容易に正確なプローブ間距離を計測することができ、折骨のより正確な傾斜角度等を得ることができる。
【0026】
収容部34を除く保持具16の底面には、両面粘着テープ38が貼着される。そして、この両面粘着テープ38により保持具16が体表に貼着される。この貼着により、保持具16と折骨(診断対象部位)との相対位置関係が保持され、ひいては、保持具16に保持されたプローブ12と折骨との相対位置関係が保持される。
【0027】
ところで、本実施形態では、この保持具16を二層構造、すなわち、平板状の基板42と、当該基板42に固着される位置決板40と、の積層構造としている。基板42は、カーボンファイバなどの軽量かつ高剛性の材料からなる。また、位置決板40は、アクリルなどの良好な加工性を有し、かつ、軽量な材料からなる。位置決板40の両端部には切り欠きが形成されており、この切り欠きが基板42と協働して収容部34を形成する。このように二層構造とするのは、保持具16全体の剛性を向上させるためである。すなわち、保持具16全体を、カーボンファイバなどの高剛性材料で構成すれば、保持具16全体の剛性を向上できる。しかし、その場合は、収容部34等を形成するための加工が困難になるという問題がある。逆に、保持具16全体をアクリル等の加工性に優れた材料で形成すれば、収容部34等の加工は容易になるが、保持具16全体の剛性は低下するという問題がある。そこで、本実施形態では、一部を高剛性の材料で形成し、加工が必要な部位のみを加工性に優れた材料で形成している。これにより、収容部34等を高精度で加工できるとともに、保持具16全体の剛性を向上している。ただし、当然ながら、二層構造とせず、単一材料のみで構成してもよい。また、複数層構造、単層構造のいずれの場合であっても、軽量材料を用いることが望ましい。これは、自重による保持具16の位置ずれを防止するためである。
【0028】
次に収容部34の形状について詳説する。図5は、収容部34にプローブ12およびスタンドオフ14を収容した際の概略断面図である。図5(A)は無負荷状態を、図5(B)は保持具16を体表側へ押圧した際の状態を示している。
【0029】
収容部34は、プローブ12を収容する第一空間44と、スタンドオフ14を収容する第二空間46に大別される。第一空間44は、プローブ12とほぼ同じサイズ、すなわち、幅、奥行き、高さがプローブ12と同じ大きさとなっている。したがって、プローブ12と収容部34の側面との間には隙間が殆ど生じず、第一空間44の内部でプローブ12は殆ど移動しない。そのため、プローブ12を第一空間44に収容すれば、プローブ12は保持具16に対して自動的に位置決めされることになる。その結果、二つのプローブ12の相対位置関係も保持されることになる。
【0030】
スタンドオフ14が収容される第二空間46の幅および奥行きは無負荷状態におけるスタンドオフ14のそれより僅かに大きく、第二空間46の高さはスタンドオフ14のそれより僅かに小さくなっている。つまり、無負荷状態において、スタンドオフ14と収容部34の側面との間には隙間が生じていることになる。この隙間は、保持具16を体表50側に押圧した際のスタンドオフ14の形状変形を許容するために設けられている。そして、このスタンドオフ14の形状変形によりプローブ12とスタンドオフ14、スタンドオフ14と体表50との間の空気が除去され、より効率的な超音波の送受波が可能となる。
【0031】
すなわち、通常、体表50は平坦面ではなく、凹凸や弧などがある。また、スタンドオフ14も、無負荷状態では、略平坦面であるが、多少の凹凸や弧が存在する。かかる凹凸や円弧があるスタンドオフ14や体表50との間には隙間が生じやすい。また、平坦面のプローブ12と凹凸や円弧があるスタンドオフ14との間にも隙間が生じやすい。超音波診断時には、保持具16を体表50側に押圧してスタンドオフ14を形状変形させ、この隙間を除去している。このスタンドオフ14の形状変形を許容するために、本実施形態では、第二空間46をスタンドオフ14より若干大きめに形成している。
【0032】
次に、この保持具16を用いて折骨、特に、下腿52の折骨の癒合診断の流れについて簡単に説明する。図6は、下腿52の折骨の癒合診断の様子を示す図である。また、図7は、図6におけるA−A概略断面図である。骨の癒合診断を行う際には、まず、二組のプローブ12およびスタンドオフ14を保持具16に装着する。すなわち、プローブ12の天面に両面粘着テープ36を貼着し、その状態でプローブ12を収容部34の第一空間44に収容する。このとき、プローブ12の端面を収容部34の端面に当接させることで、プローブ12が保持具16に対して容易に位置決めされる。そして、両面粘着テープ36によりプローブ12が保持具16に貼着されることにより、プローブ12の保持具16に対する相対位置が維持される。
【0033】
続いて、二つの第二空間46にスタンドオフ14を収容する。このとき、スタンドオフ14は無負荷状態であるため、スタンドオフ14と収容部34の側面との間に僅かな間隙が形成され、保持具16の底面からはスタンドオフ14が僅かに突出した状態となっている。
【0034】
この状態で、二組のプローブ12およびスタンドオフ14を収容した保持具16を診断対象部位近傍の体表に貼着する。具体的には、保持具16の底面に両面粘着テープ38を貼着し、さらに、この両面粘着テープ38を体表50に貼着する。本実施形態では、折骨56の癒合診断を目的としているため、二つのプローブ12が折骨56の真上に位置するように保持具16を貼着する。この貼着により、保持具16が体表50上に保持され、当該保持具16により保持されたプローブ12が体表50に近接対向される。さらに、プローブ12から引き出されているプローブケーブル13を体表50の適当な位置に粘着テープ48等で貼着する。これは、プローブケーブル13の自重によりプローブ12等の位置がずれることを防止するためである。
【0035】
保持具16の貼着がなされれば、続いて、折骨56に対する超音波の送受波を開始する。この超音波の送受波は、まず、折骨56に対して負荷を与えない状態で行われる。このとき、各プローブ12からの超音波ビームを受ける折骨上の点がトラッキングポイント58として抽出される。本実施形態では、二つのプローブ12で超音波を送受波しているため、二点のトラッキングポイント58が抽出される。折骨56に対して送信された超音波は、骨表面で反射され、プローブ12で受信される。プローブ12で受信された反射波は、エコー信号として装置本体部18に送信される。装置本体部18では、整相加算等の信号処理を施した後、二点のトラッキングポイント58を抽出し、その位置情報を算出する。そして、得られた二点の位置情報に基づき、二点の相対位置関係および折骨56の傾斜角度を算出する。この傾斜角度等の算出には、プローブ間距離が必要となる。本実施形態では、保持具16により保持されたプローブ間距離は一定であるため、正確なプローブ間距離を容易に取得することができる。
【0036】
無負荷状態での折骨56の位置情報および傾斜角度が得られれば、続いて、折骨56に負荷を加え、その状態での位置情報および傾斜角度を取得する。具体的には、折骨56に負荷がかかるように被検体に運動、例えば、歩行などをさせる。歩行を行えば、被検体の体重相当の荷重が折骨56に付加されることになる。そして、その状態で超音波を送受波し、再度、二点のトラッキングポイント58の位置情報等を算出し、二点の相対位置関係および折骨56の傾斜角度を算出する。
【0037】
無負荷状態および負荷状態で、二点(トラッキングポイント58)の相対位置関係、および、折骨56の傾斜角度が得られれば、これらの情報に基づき荷重負荷による傾斜の増加量や二点の位置変化量を算出する。そして、この傾斜の増加量および位置変化量に基づき折骨の癒合診断を行う。すなわち、折骨56の癒合度合いが高いほど、傾斜の増加量および位置変化量は少なくなる。そのため、傾斜の増加量および位置変化量が所定の基準値より小さい場合には、折骨が充分に癒合されていると診断できるのである。
【0038】
ここで、正確な癒合診断のためには、無負荷状態および負荷状態におけるトラッキングポイント58(超音波の送波点)の位置がずれないことが重要となる。そして、トラッキングポイント58の位置ずれを防止するためには、二つのプローブ12同士の相対位置関係、および、プローブ12と折骨56との相対位置関係が保持されていることが必要となる。本実施形態では、既述の保持具16を用いることにより、二つのプローブ12同士の相対位置関係、および、プローブ12と折骨56との相対位置関係が保持される。その結果、荷重の負荷前後でのトラッキングポイント58の位置ずれが防止でき、結果として、信頼性のより高い癒合診断が可能となる。
【0039】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態は、保持具16の構成以外は、上記の第一実施形態とほぼ同様の構成である。したがって、ここでは、第二実施形態の保持具16についてのみ説明する。図8は第二実施形態における保持具16にプローブ12等を装着したときの斜視図であり、図9はその分解斜視図である。
【0040】
この保持具16は、二つの収容部材60と、当該二つの収容部材60を連結する連結部材62と、を備えている。各収容部材60は、プローブ12等が収容される略箱状の本体部64と、当該本体部64の下端から外側水平方向に延びる鍔部66と、当該鍔部66の上面に固着された挟持部材68と、を備えている。本体部64および鍔部66は、金属等の剛性材料によって一体成形されており、挟持部材68は、ボルト等により鍔部66上面に固着されている。
【0041】
本体部64は、下面が開口した略箱状であり、この箱状の内部にプローブ12およびスタンドオフ14が収容される。本体部64の幅および奥行は、プローブ12のそれとほぼ同じである。したがって、この本体部64に収容されることにより、プローブ12は、収容部材60に対する位置が規制される。一方、スタンドオフ14の幅および奥行は、本体部64のそれに比べ、若干小さくなっている。代わりに、スタンドオフ14およびプローブ12の厚みの和は、本体部64の深さより若干大きくなっている。つまり、スタンドオフ14の側面と本体部64の内側面との間には隙間が生じている。この隙間は、スタンドオフ14の形状変形を許容するために設けられている。そして、スタンドオフ14がプローブ12および体表の形状に応じて、変形することにより、プローブ12から体表までの間に介在する空気が除去され、より効率的な超音波の送受波が可能となる。なお、この本体部64の一側面には、プローブケーブルを引き出すための切り欠き64aが形成されている。
【0042】
本体部64の下端からは、外側水平方向に延びる鍔部66が形成されている。この鍔部66の底面が体表との当接面になり、この底面に両面粘着テープ74が貼着される。そして、この両面粘着テープが体表に貼着されることにより、折骨に対する保持具16の相対位置が保持される。
【0043】
鍔部66の上面には、挟持部材68が固着されている。この挟持部材68は、後述する連結部材62、具体的には、軸部材63を挟持する部材である。この挟持部材68には、軸部材63の挿通を受け入れる貫通孔69が形成されている。また、挟持部材68の上端から貫通孔69にかけて切り込み70が形成されており、この切り込み70の幅を可変することにより、貫通孔69の内径を変えることができる。切り込み70の幅は、当該切り込み70に対して垂直に貫通されたボルト72aおよびナット72bの締め込み量を可変することにより変えることができる。
【0044】
ボルト72aおよびナット72bの締め込み量を大きくし、貫通孔69の内径を小さくすることで、軸部材63を強固に挟持でき、軸部材63に対する収容部材60の距離関係および角度関係を保持できる。その結果、プローブ同士の位置関係を維持することができ、超音波診断の信頼性をより向上できる。一方、締め込み量を小さくし、貫通孔69の内径を大きくすることで、軸部材63の取り外しや、軸部材63の挿通量、および、収容部材60に対する軸部材63の角度等を変えることができる。そして、軸部材63の挿通量で二つの収容部材60の距離関係を、軸部材63の角度で二つの収容部材60の角度関係を調整することができる。また、軸部材63を取り外し、異なる長さの別の軸部材と交換することで、両収容部材60の距離関係をより柔軟に可変することができる。なお、両収容部材60の相対位置関係を変更した場合でも、保持具16を体表から取り外してから計測することで、両収容部材60の相対位置関係を容易に計測することが可能である。あるいは、軸部材63にプローブ間距離が認識でき得るような目盛りを付してもよい。
【0045】
連結部材62は、記述したように、挟持部材68の貫通孔69に挿通される軸部材63である。この軸部材63の両端が、二つの収容部材60の挟持部材68に挟持されることにより、二つの収容部材60が連結される。そして、二つの収容部材60の距離関係および角度関係が維持される。
【0046】
この保持具16を用いて癒合診断を行う流れは、第一実施形態の場合とほぼ同様である。すなわち、各収容部材60にプローブ12およびスタンドオフ14をセットした上で、保持具16を体表に貼着し、超音波の送受波を開始する。ただし、本実施形態では、保持具16を貼着する体表の形状等に応じて、二つの収容部材60の距離および角度関係を調整することができる。すなわち、被検体の体表は平坦でなく、湾曲や傾斜が生じている。かかる湾曲や傾斜により、スタンドオフ14の底面が体表に密着できなかったり、鍔部66の底面に貼着された両面粘着テープ74が体表に当接できなかったり、という問題が生じる場合がある。かかる場合に、本実施形態では、挟持部材68の挟持力を緩めて軸部材63の挿通量や挿通角度を変え、収容部材60が好適な位置および角度に配されるように調整することができる。その結果、プローブ12と体表との空気をより確実に除去できるため、より好適な超音波の送受波が可能となる。また、両面粘着テープ74と体表との接触面積を広げることができ、より高い貼着力を得ることができる。
【0047】
二つの収容部材60を好適な位置に調整できれば、挟持部材68のボルト72aおよびナット72bを締めて、両収容部材60の位置関係を固定する。これにより、プローブ12同士の位置関係が保持される。また、プローブ12と折骨との相対位置関係も保持される。その結果、折骨への荷重負荷の前後での、トラッキングポイントの位置ずれが防止され、より良好な超音波診断が可能となる。
【0048】
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態も、保持具16の構成以外は、第一実施形態とほぼ同様である。したがって、以下では、第三実施形態における保持具16の構成を中心に説明する。図10は第三実施形態における保持具16にプローブ12等を収納した際の斜視図であり、図11はその分解斜視図である。
【0049】
この保持具16は、二つの収容部材60と、当該収容部材60を連結する連結部材62に大別される。各収容部材60は、プローブ12およびスタンドオフ14を収容する略箱状であり、その一側面にはプローブケーブル13を引き出すための切り欠き62aが形成されている。また、異なる一側面には、連結用軸82が突出形成されている。この連結用軸82は、後述する連結部材62に設けられた挟持部材68により挟持される。
【0050】
この収容部材60の内寸は、第二実施形態の収容部材60とほぼ同様である。すなわち、幅および奥行は、プローブ12のそれとほぼ同じであり、スタンドオフ14のそれより若干大きい。代わりに深さは、プローブ12およびスタンドオフ14の厚みの和より若干小さくなっている。かかる内寸とすることで、収容部材60に対するプローブ12の相対位置を規制することができる。また、スタンドオフ14の形状変形を許容することができ、プローブ12と体表との間に介在する空気を除去できる。その結果、効率的な超音波の送受波が可能となる。
【0051】
連結部材62は、基板80と、当該基板80上に固着された二つの挟持部材68と、からなる。基板80は、剛性材料からなる平板であり、その底面には両面粘着テープ74が貼着される。また、挟持部材68は、既述の収容部材60の連結用軸82を挟持する。この挟持部材68は、基板80の両端にそれぞれ一つずつ、計二つ設けられている。各挟持部材68は、連結用軸82の挿通を受け入れる貫通孔69が形成されており、この貫通孔69の上部には挟持部材68の上端まで延びる切込み70が形成されている。そして、この切り込み70に対して垂直に挿通されたボルト72aと当該ボルト72aに螺合されたナット72bとの締め込み量を調整することにより、貫通孔69の内径を可変、換言すれば、連結用軸82の矜持力を可変できる。例えば、ボルト72aおよびナット72bの締め込み量を大きくすれば、貫通孔69に挿通されている連結用軸82を強固に挟持することができ、連結部材62に対する収容部材60の位置関係を保持することができる。ひいては、二つの収容部材60に収容される二つのプローブ12の相対位置関係を維持することができる。一方、ボルト72aおよびナット72bの締め込み量を小さくして貫通孔69の内径を広げれば、収容部材60の取り外しや、連結用軸82の挿通量および挿通角度を調整することができる。換言すれば、締め込み量を小さくすることで、連結部材62に対する収容部材60の相対位置関係、ひいては、収容部材60同士の相対位置関係を調整することができる。つまり、本実施形態でも、被検体体表の形状に応じて、収容部材60同士の相対位置関係が調整可能であり、収容部材60を適宜、所望の位置に配することが可能となる。これにより、プローブ12と体表との空気をより確実に除去でき、より好適な超音波の送受波が可能となる。また、両面粘着テープ74と体表との接触面積を広げることができ、より高い貼着力を得ることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、連結部材62の基板80を平板としているが、被検体の体表形状に応じて湾曲等した板材としてもよい。基板80を被検体の体表に応じた形状とすることで、両面粘着テープ74と体表との接触面積を増加することができ、折骨に対するプローブ12の位置をより確実に維持することができる。
【0053】
また、上記の第一から第三実施形態における保持具16は、いずれも、二つのプローブ12を保持する構成となっているが、収容部34または収容部材60の数を増やして、より多数のプローブ12を保持するようにしてもよい。また、収容部34または収容部材60の形状等はプローブ12や被検体形状に応じて適宜、変更可能である。さらに、本実施形態では、両面粘着テープを用いて保持具16を体表に貼着しているが、他の貼着手段を用いて貼着してもよい。例えば、片面粘着テープを保持具16の上側から貼着するようにしてもよいし、バンド状部材で保持具16を体表側に圧着させてもよい。また、以上の実施形態の超音波診断装置は、いずれも、折骨の癒合診断を目的としているが、プローブの数や保持具の形状等を変更することにより、当然、他の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第一実施形態である超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】プローブ等をセットした状態の保持具の斜視図である。
【図3】図2の保持具の分解斜視図である。
【図4】図2の保持具を別の角度から見た斜視図である。
【図5】プローブ等をセットした状態の保持具の概略断面図であり、(A)は無負荷状態の様子を、(B)は保持具を体表側に押圧した際の様子を示す。
【図6】折骨の癒合診断の様子を示す図である。
【図7】図6におけるA−A概略断面図である。
【図8】第二実施形態の保持具にプローブ等をセットした様子を示す斜視図である。
【図9】図8の保持具の分解斜視図である。
【図10】第三実施形態の保持具にプローブ等をセットした様子を示す斜視図である。
【図11】図10の保持具の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
10 超音波診断装置、12 プローブ、14 スタンドオフ、16 保持具、18 装置本体部、20 送受信部、22 信号処理部、24 出力処理部、26 操作部、28 制御部、30 表示器、34 収容部、36,38,74 両面粘着テープ、50 体表、56 折骨、58 トラッキングポイント、60 収容部材、62 連結部材、63 軸部材、64 本体部、66 鍔部、68 挟持部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の超音波探触子を体表に近接対向させて保持する保持装置および複数の超音波探触子を備えた超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検体の内部にある診断対象部位に対して超音波を送信し、その際、得られるエコー信号に基づいて、診断対象部位の状態を取得する超音波診断装置が広く知られている。この超音波診断装置では、超音波を送受波する超音波探触子を診断対象部位近傍の体表に当接または近接させて診断を行う。
【0003】
ここで、適切な診断を行うためには、診断対象部位の一時的な状態だけでなく、その経時変化や、被検体に何らかの負荷を加えた前後での診断対象部位の変化状態を取得することが望ましい場合がある。かかる場合には、超音波探触子の位置を固定した状態で保持する必要がある。しかし、人の手で超音波探触子を所定位置で保持することは極めて困難であった。そのため、従来から、超音波探触子と診断対象部位との相対位置関係を保持する装置が多数提案されている(例えば、下記特許文献1,2など)。これらの技術によれば、超音波探触子を所定位置で保持することが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2003−79622号公報
【特許文献2】特開2000−70264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、複数の超音波探触子を用いて、診断対象部位の離間した複数個所の状態を同時に取得したいという要望がある。例えば、骨折した骨、すなわち、折骨に荷重を掛け、その際の折骨の傾斜角度や変位量を取得し、この傾斜角度または変位量等に基づいて折骨の癒合(接合)度合いを判断することがある。この傾斜角度等を取得するためには、折骨上の二点の位置情報を取得する必要がある。折骨上の二点の位置情報を取得するためには、二つの超音波探触子を折骨(診断対象部位)に対して位置固定で保持する必要がある。
【0006】
しかし、従来の保持装置では、単一の超音波探触子しか保持できないため、離間した複数箇所の状態を同時に取得することは困難であった。もちろん、従来の保持装置を複数用いて、複数の超音波探触子を同時に保持することも考えられる。しかし、その場合は複数の超音波探触子同士の位置関係の調整が煩雑であった。また、傾斜角度等の算出に際しては、正確な超音波探触子間距離が必要になるが、複数の超音波探触子がそれぞれ別個の保持装置で保持されている状態では、正確な超音波探触子間距離を取得することは困難であった。そして、その結果、超音波診断の精度が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、超音波診断の精度をより向上でき得る保持装置および超音波診断装置を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、複数の超音波探触子をその位置関係を維持したまま体表に近接対向して保持でき得る保持装置および超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保持装置は、複数の超音波探触子を被検体の体表に近接対向させて保持する保持装置であって、超音波の送受波面を外部に露出させた状態で前記超音波探触子を収容するとともに、前記保持装置に対する超音波探触子の位置を規制する複数の収容手段と、前記複数の収容手段を互いに連結して、その相対位置関係を維持する連結手段と、を備え、収容手段または連結手段を粘着性部材で体表に貼着することで、前記複数の超音波探触子をその相対位置関係を維持しつつ前記体表に近接対向させることを特徴とする。
【0009】
好適な態様では、前記連結手段は、前記体表に当接される当接面を備えたブロック体であり、前記収容手段は、前記ブロック体の当接面に形成された凹部である。
【0010】
他の好適な態様では、前記連結手段は、前記収容手段に対して着脱自在である。前記連結手段は、前記複数の収容手段同士の相対距離が調整可能であることが望ましい。また、前記連結手段は、前記複数の収容手段同士の相対角度が調整可能であることが望ましい。例えば、前記収容手段または前記連結手段のいずれか一方は、軸部材を備え、前記収容手段または前記連結手段の他方は、前記軸部材を挟持するとともに、その挟持力が可変の挟持部材を備えることが望ましい。
【0011】
他の好適な態様では、前記収容手段は、前記超音波探触子を収容する本体部と、前記本体部の下端から外側に延びる鍔部材と、を有し、前記鍔部材を粘着性部材で体表に貼着する。他の好適な態様では、前記連結手段は、体表に当接される当接部材を備え、前記当接部材を粘着性部材で体表に貼着する。
【0012】
他の好適な態様では、前記超音波探触子と前記体表との間に、超音波に対する透過性と弾性とを備えた音響整合部材が配される場合に、前記収容部材の収容空間の断面積は、無負荷状態における前記音響整合部材の断面積より大きく、前記収容部材の収容空間の深さは、無負荷状態における前記音響整合部材と前記超音波探触子の厚みの和より小さい。
【0013】
他の本発明である超音波診断装置は、被検体の内部の診断部位に対して超音波を送受波する複数の超音波探触子と、前記複数の超音波探触子を被検体に近接対向して保持する保持装置と、を有し、前記保持装置は、超音波の送受波面を外部に露出させた状態で前記超音波探触子を収容するとともに、前記保持装置に対する超音波探触子の位置を規制する複数の収容手段と、前記複数の収容手段を互いに連結して、その位置関係を維持する連結手段と、を備え、収容手段または連結手段を粘着性部材で体表に貼着することで、前記複数の超音波探触子をその相対位置関係を維持しつつ前記体表に近接対向させて超音波を送受波することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波探触子同士の位置関係が、収容手段および連結手段によって維持される。また、超音波探触子同士の距離等も容易に取得することができる。その結果、超音波診断の精度をより向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第一実施形態である超音波診断装置10の構成を示すブロック図である。この超音波診断装置10は、骨折した骨の癒合診断に特に好適な構成となっている。ただし、適宜、プローブ12の数や、保持具16の形状等を変更することにより、他の用途にも適用でき得る。
【0016】
この超音波診断装置10は、二つのプローブ12を備えている。この二つのプローブ12は、後に詳説するように、診断対象部位である折骨上の二点に対して同時に超音波の送受波を行うために設けられている。各プローブ12は、超音波を送受波する超音波探触子であり、九つの単振動子が3×3のアレイ状に配されている。各単振動子は、後述する送受信部20からの指示に応じて超音波を送信するとともに、その反射波を受信する。受信された反射波は、プローブ12と装置本体部18とを接続するプローブケーブル13を介して、エコー信号として送受信部20へと出力される。
【0017】
ここで、本実施形態におけるプローブ12は、通常のプローブに比べ、振動子数が非常に少ない構成となっているが、これは、プローブ12を小型、軽量化するためである。すなわち、骨の癒合診断の際には、プローブ12を被検体の体表に貼着した状態で、骨折部位に負荷がかかるように被検体に運動させる。その際、プローブ12が被検体の運動を阻害しないように、また、自重によるプローブ12の位置ずれを防止するために、本実施形態では、振動子の数を低減して、プローブ12を小型、軽量化している。
【0018】
各プローブ12は、スタンドオフ14を介して体表に対向配置される。スタンドオフ14は、音響整合部材として機能するもので、超音波が透過可能であって、その音響インピーダンスが生体に近い材料からなる。本実施形態のスタンドオフ14は、適宜、その形状変形が可能な程度の弾性を備えた固体である。このスタンドオフ14が、体表およびプローブ12の形状に応じて変形することにより、プローブ12および体表との間に存在する隙間が埋められる。これにより、プローブ12と体表との間にある空気による超音波の減衰や反射を防止し、より効率の良い超音波送受信を行うことが可能となる。
【0019】
二組のプローブ12およびスタンドオフ14は、単一の保持具16により保持される。保持具16は、二つのプローブ12を、その位置関係を維持したまま保持する。この保持具16は、後に詳説するが、二つの収容部と、当該二つの収容部を連結する連結部と、を備えている。各収容部には、既述のプローブ12およびスタンドオフ14が収容され、保持される。そして、この保持具16は、プローブ12およびスタンドオフ14を保持した状態で、両面粘着テープにより被検体の体表に貼着される。これにより、二つのプローブ12は、その位置関係を維持したまま、被検体の体表に近接対向することができ、診断対象部位に対して超音波の送受波が可能となる。
【0020】
装置本体部18は、送受信部20や信号処理部22、制御部28、表示器30などがユニット化されて構成されている。送受信部20は、制御部28からの指示に応じて、プローブ12の単振動子に超音波の送信を指示する送信信号を供給する。また、プローブ12から出力されるエコー信号を受信し、これに整相加算や、ゲイン調整、ダイナミックレンジ調整等の信号処理を施す。
【0021】
信号処理部22は、受信信号に対して必要な処理を実行する回路であり、表示モードに応じてBモード形成用の信号処理、Mモード形成用の信号処理などが実行される。また、この信号処理部22は、得られたエコー信号から骨表面部を抽出してトラッキングをする、いわゆるエコートラッキング処理を行う。具体的には、骨の特定ポイント、いわゆる、トラッキングポイントに対して超音波を送信して得られたエコー信号の振幅から、当該トラッキングポイントの位置を検出する。このエコートラッキング処理には、周知の技術、例えば、特開2004−298205号公報に詳述される技術などが利用できる。本実施形態では、二つのプローブ12を用いて、二つのトラッキングポイントの位置を検出している。
【0022】
出力処理部24は、エコー信号に対して送受波座標系から表示座標系への座標変換や補間処理などを実行し、超音波画像データを形成する。形成された超音波画像データは、表示器30に出力される。また、出力処理部24は、得られた二つのトラッキングポイントの位置に基づいて、骨の角度変化量や、二点のトラッキングポイントの相対位置変化量などを算出し、数値やグラフに変換して表示器に出力する。医師等の診断者は、この角度変化量や相対位置変化量に基づき、折骨の癒合度合いを診断する。制御部28は、装置本体部18全体を制御するものである。この制御部28には、操作部26を介してユーザからの指示が入力される。制御部28は、このユーザからの指示に応じて装置本体部18を構成する各部に制御信号を出力し、制御する。
【0023】
次に、二つのプローブ12を保持する保持具16について説明する。図2は保持具16に二つのプローブ12をセットした際の斜視図であり、図3はその分解斜視図である。また、図4は、保持具16を違う角度から見た斜視図である。
【0024】
保持具16は、略直方体のブロック体で、その底面(体表との対向面)の両端部にはプローブ12およびスタンドオフ14を収容する収容部34が形成されている。つまり、この保持具16は、二組のプローブ12およびスタンドオフ14が収容可能となっている。収容部34は、具体的には、保持具16の底面に形成された凹部である。この収容部34は、体表側の一面が開口されており、超音波の送受波面を外部に露出させつつ体表面に対向させた状態でプローブ12を収容可能となっている。また、長尺方向の一側面も開口されており、プローブ12の一側面から引き出されているプローブケーブル13を外部に引き出すことが可能となっている。この収容部34に収容されるプローブ12は、両面粘着テープ36により保持具16に貼着される。
【0025】
この二つの収容部34は、保持具16の本体部32によって、その位置関係を維持したまま連結されていることになる。したがって、保持具の本体部32は、二つの収容部34を連結する連結手段として機能する。二つの収容部34が、その位置関係を維持したまま連結されることにより、プローブ12同士の位置関係が保持される。その結果、折骨の癒合診断時に、二つのプローブ12からの受信信号に基づき抽出される二点のトラッキングポイントの相対位置関係が保持され、結果として、骨癒合診断の信頼性をより向上できる。また、プローブ間距離は、保持具16を体表に貼着する前、または、後からでも計測できる。その結果、容易に正確なプローブ間距離を計測することができ、折骨のより正確な傾斜角度等を得ることができる。
【0026】
収容部34を除く保持具16の底面には、両面粘着テープ38が貼着される。そして、この両面粘着テープ38により保持具16が体表に貼着される。この貼着により、保持具16と折骨(診断対象部位)との相対位置関係が保持され、ひいては、保持具16に保持されたプローブ12と折骨との相対位置関係が保持される。
【0027】
ところで、本実施形態では、この保持具16を二層構造、すなわち、平板状の基板42と、当該基板42に固着される位置決板40と、の積層構造としている。基板42は、カーボンファイバなどの軽量かつ高剛性の材料からなる。また、位置決板40は、アクリルなどの良好な加工性を有し、かつ、軽量な材料からなる。位置決板40の両端部には切り欠きが形成されており、この切り欠きが基板42と協働して収容部34を形成する。このように二層構造とするのは、保持具16全体の剛性を向上させるためである。すなわち、保持具16全体を、カーボンファイバなどの高剛性材料で構成すれば、保持具16全体の剛性を向上できる。しかし、その場合は、収容部34等を形成するための加工が困難になるという問題がある。逆に、保持具16全体をアクリル等の加工性に優れた材料で形成すれば、収容部34等の加工は容易になるが、保持具16全体の剛性は低下するという問題がある。そこで、本実施形態では、一部を高剛性の材料で形成し、加工が必要な部位のみを加工性に優れた材料で形成している。これにより、収容部34等を高精度で加工できるとともに、保持具16全体の剛性を向上している。ただし、当然ながら、二層構造とせず、単一材料のみで構成してもよい。また、複数層構造、単層構造のいずれの場合であっても、軽量材料を用いることが望ましい。これは、自重による保持具16の位置ずれを防止するためである。
【0028】
次に収容部34の形状について詳説する。図5は、収容部34にプローブ12およびスタンドオフ14を収容した際の概略断面図である。図5(A)は無負荷状態を、図5(B)は保持具16を体表側へ押圧した際の状態を示している。
【0029】
収容部34は、プローブ12を収容する第一空間44と、スタンドオフ14を収容する第二空間46に大別される。第一空間44は、プローブ12とほぼ同じサイズ、すなわち、幅、奥行き、高さがプローブ12と同じ大きさとなっている。したがって、プローブ12と収容部34の側面との間には隙間が殆ど生じず、第一空間44の内部でプローブ12は殆ど移動しない。そのため、プローブ12を第一空間44に収容すれば、プローブ12は保持具16に対して自動的に位置決めされることになる。その結果、二つのプローブ12の相対位置関係も保持されることになる。
【0030】
スタンドオフ14が収容される第二空間46の幅および奥行きは無負荷状態におけるスタンドオフ14のそれより僅かに大きく、第二空間46の高さはスタンドオフ14のそれより僅かに小さくなっている。つまり、無負荷状態において、スタンドオフ14と収容部34の側面との間には隙間が生じていることになる。この隙間は、保持具16を体表50側に押圧した際のスタンドオフ14の形状変形を許容するために設けられている。そして、このスタンドオフ14の形状変形によりプローブ12とスタンドオフ14、スタンドオフ14と体表50との間の空気が除去され、より効率的な超音波の送受波が可能となる。
【0031】
すなわち、通常、体表50は平坦面ではなく、凹凸や弧などがある。また、スタンドオフ14も、無負荷状態では、略平坦面であるが、多少の凹凸や弧が存在する。かかる凹凸や円弧があるスタンドオフ14や体表50との間には隙間が生じやすい。また、平坦面のプローブ12と凹凸や円弧があるスタンドオフ14との間にも隙間が生じやすい。超音波診断時には、保持具16を体表50側に押圧してスタンドオフ14を形状変形させ、この隙間を除去している。このスタンドオフ14の形状変形を許容するために、本実施形態では、第二空間46をスタンドオフ14より若干大きめに形成している。
【0032】
次に、この保持具16を用いて折骨、特に、下腿52の折骨の癒合診断の流れについて簡単に説明する。図6は、下腿52の折骨の癒合診断の様子を示す図である。また、図7は、図6におけるA−A概略断面図である。骨の癒合診断を行う際には、まず、二組のプローブ12およびスタンドオフ14を保持具16に装着する。すなわち、プローブ12の天面に両面粘着テープ36を貼着し、その状態でプローブ12を収容部34の第一空間44に収容する。このとき、プローブ12の端面を収容部34の端面に当接させることで、プローブ12が保持具16に対して容易に位置決めされる。そして、両面粘着テープ36によりプローブ12が保持具16に貼着されることにより、プローブ12の保持具16に対する相対位置が維持される。
【0033】
続いて、二つの第二空間46にスタンドオフ14を収容する。このとき、スタンドオフ14は無負荷状態であるため、スタンドオフ14と収容部34の側面との間に僅かな間隙が形成され、保持具16の底面からはスタンドオフ14が僅かに突出した状態となっている。
【0034】
この状態で、二組のプローブ12およびスタンドオフ14を収容した保持具16を診断対象部位近傍の体表に貼着する。具体的には、保持具16の底面に両面粘着テープ38を貼着し、さらに、この両面粘着テープ38を体表50に貼着する。本実施形態では、折骨56の癒合診断を目的としているため、二つのプローブ12が折骨56の真上に位置するように保持具16を貼着する。この貼着により、保持具16が体表50上に保持され、当該保持具16により保持されたプローブ12が体表50に近接対向される。さらに、プローブ12から引き出されているプローブケーブル13を体表50の適当な位置に粘着テープ48等で貼着する。これは、プローブケーブル13の自重によりプローブ12等の位置がずれることを防止するためである。
【0035】
保持具16の貼着がなされれば、続いて、折骨56に対する超音波の送受波を開始する。この超音波の送受波は、まず、折骨56に対して負荷を与えない状態で行われる。このとき、各プローブ12からの超音波ビームを受ける折骨上の点がトラッキングポイント58として抽出される。本実施形態では、二つのプローブ12で超音波を送受波しているため、二点のトラッキングポイント58が抽出される。折骨56に対して送信された超音波は、骨表面で反射され、プローブ12で受信される。プローブ12で受信された反射波は、エコー信号として装置本体部18に送信される。装置本体部18では、整相加算等の信号処理を施した後、二点のトラッキングポイント58を抽出し、その位置情報を算出する。そして、得られた二点の位置情報に基づき、二点の相対位置関係および折骨56の傾斜角度を算出する。この傾斜角度等の算出には、プローブ間距離が必要となる。本実施形態では、保持具16により保持されたプローブ間距離は一定であるため、正確なプローブ間距離を容易に取得することができる。
【0036】
無負荷状態での折骨56の位置情報および傾斜角度が得られれば、続いて、折骨56に負荷を加え、その状態での位置情報および傾斜角度を取得する。具体的には、折骨56に負荷がかかるように被検体に運動、例えば、歩行などをさせる。歩行を行えば、被検体の体重相当の荷重が折骨56に付加されることになる。そして、その状態で超音波を送受波し、再度、二点のトラッキングポイント58の位置情報等を算出し、二点の相対位置関係および折骨56の傾斜角度を算出する。
【0037】
無負荷状態および負荷状態で、二点(トラッキングポイント58)の相対位置関係、および、折骨56の傾斜角度が得られれば、これらの情報に基づき荷重負荷による傾斜の増加量や二点の位置変化量を算出する。そして、この傾斜の増加量および位置変化量に基づき折骨の癒合診断を行う。すなわち、折骨56の癒合度合いが高いほど、傾斜の増加量および位置変化量は少なくなる。そのため、傾斜の増加量および位置変化量が所定の基準値より小さい場合には、折骨が充分に癒合されていると診断できるのである。
【0038】
ここで、正確な癒合診断のためには、無負荷状態および負荷状態におけるトラッキングポイント58(超音波の送波点)の位置がずれないことが重要となる。そして、トラッキングポイント58の位置ずれを防止するためには、二つのプローブ12同士の相対位置関係、および、プローブ12と折骨56との相対位置関係が保持されていることが必要となる。本実施形態では、既述の保持具16を用いることにより、二つのプローブ12同士の相対位置関係、および、プローブ12と折骨56との相対位置関係が保持される。その結果、荷重の負荷前後でのトラッキングポイント58の位置ずれが防止でき、結果として、信頼性のより高い癒合診断が可能となる。
【0039】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態は、保持具16の構成以外は、上記の第一実施形態とほぼ同様の構成である。したがって、ここでは、第二実施形態の保持具16についてのみ説明する。図8は第二実施形態における保持具16にプローブ12等を装着したときの斜視図であり、図9はその分解斜視図である。
【0040】
この保持具16は、二つの収容部材60と、当該二つの収容部材60を連結する連結部材62と、を備えている。各収容部材60は、プローブ12等が収容される略箱状の本体部64と、当該本体部64の下端から外側水平方向に延びる鍔部66と、当該鍔部66の上面に固着された挟持部材68と、を備えている。本体部64および鍔部66は、金属等の剛性材料によって一体成形されており、挟持部材68は、ボルト等により鍔部66上面に固着されている。
【0041】
本体部64は、下面が開口した略箱状であり、この箱状の内部にプローブ12およびスタンドオフ14が収容される。本体部64の幅および奥行は、プローブ12のそれとほぼ同じである。したがって、この本体部64に収容されることにより、プローブ12は、収容部材60に対する位置が規制される。一方、スタンドオフ14の幅および奥行は、本体部64のそれに比べ、若干小さくなっている。代わりに、スタンドオフ14およびプローブ12の厚みの和は、本体部64の深さより若干大きくなっている。つまり、スタンドオフ14の側面と本体部64の内側面との間には隙間が生じている。この隙間は、スタンドオフ14の形状変形を許容するために設けられている。そして、スタンドオフ14がプローブ12および体表の形状に応じて、変形することにより、プローブ12から体表までの間に介在する空気が除去され、より効率的な超音波の送受波が可能となる。なお、この本体部64の一側面には、プローブケーブルを引き出すための切り欠き64aが形成されている。
【0042】
本体部64の下端からは、外側水平方向に延びる鍔部66が形成されている。この鍔部66の底面が体表との当接面になり、この底面に両面粘着テープ74が貼着される。そして、この両面粘着テープが体表に貼着されることにより、折骨に対する保持具16の相対位置が保持される。
【0043】
鍔部66の上面には、挟持部材68が固着されている。この挟持部材68は、後述する連結部材62、具体的には、軸部材63を挟持する部材である。この挟持部材68には、軸部材63の挿通を受け入れる貫通孔69が形成されている。また、挟持部材68の上端から貫通孔69にかけて切り込み70が形成されており、この切り込み70の幅を可変することにより、貫通孔69の内径を変えることができる。切り込み70の幅は、当該切り込み70に対して垂直に貫通されたボルト72aおよびナット72bの締め込み量を可変することにより変えることができる。
【0044】
ボルト72aおよびナット72bの締め込み量を大きくし、貫通孔69の内径を小さくすることで、軸部材63を強固に挟持でき、軸部材63に対する収容部材60の距離関係および角度関係を保持できる。その結果、プローブ同士の位置関係を維持することができ、超音波診断の信頼性をより向上できる。一方、締め込み量を小さくし、貫通孔69の内径を大きくすることで、軸部材63の取り外しや、軸部材63の挿通量、および、収容部材60に対する軸部材63の角度等を変えることができる。そして、軸部材63の挿通量で二つの収容部材60の距離関係を、軸部材63の角度で二つの収容部材60の角度関係を調整することができる。また、軸部材63を取り外し、異なる長さの別の軸部材と交換することで、両収容部材60の距離関係をより柔軟に可変することができる。なお、両収容部材60の相対位置関係を変更した場合でも、保持具16を体表から取り外してから計測することで、両収容部材60の相対位置関係を容易に計測することが可能である。あるいは、軸部材63にプローブ間距離が認識でき得るような目盛りを付してもよい。
【0045】
連結部材62は、記述したように、挟持部材68の貫通孔69に挿通される軸部材63である。この軸部材63の両端が、二つの収容部材60の挟持部材68に挟持されることにより、二つの収容部材60が連結される。そして、二つの収容部材60の距離関係および角度関係が維持される。
【0046】
この保持具16を用いて癒合診断を行う流れは、第一実施形態の場合とほぼ同様である。すなわち、各収容部材60にプローブ12およびスタンドオフ14をセットした上で、保持具16を体表に貼着し、超音波の送受波を開始する。ただし、本実施形態では、保持具16を貼着する体表の形状等に応じて、二つの収容部材60の距離および角度関係を調整することができる。すなわち、被検体の体表は平坦でなく、湾曲や傾斜が生じている。かかる湾曲や傾斜により、スタンドオフ14の底面が体表に密着できなかったり、鍔部66の底面に貼着された両面粘着テープ74が体表に当接できなかったり、という問題が生じる場合がある。かかる場合に、本実施形態では、挟持部材68の挟持力を緩めて軸部材63の挿通量や挿通角度を変え、収容部材60が好適な位置および角度に配されるように調整することができる。その結果、プローブ12と体表との空気をより確実に除去できるため、より好適な超音波の送受波が可能となる。また、両面粘着テープ74と体表との接触面積を広げることができ、より高い貼着力を得ることができる。
【0047】
二つの収容部材60を好適な位置に調整できれば、挟持部材68のボルト72aおよびナット72bを締めて、両収容部材60の位置関係を固定する。これにより、プローブ12同士の位置関係が保持される。また、プローブ12と折骨との相対位置関係も保持される。その結果、折骨への荷重負荷の前後での、トラッキングポイントの位置ずれが防止され、より良好な超音波診断が可能となる。
【0048】
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態も、保持具16の構成以外は、第一実施形態とほぼ同様である。したがって、以下では、第三実施形態における保持具16の構成を中心に説明する。図10は第三実施形態における保持具16にプローブ12等を収納した際の斜視図であり、図11はその分解斜視図である。
【0049】
この保持具16は、二つの収容部材60と、当該収容部材60を連結する連結部材62に大別される。各収容部材60は、プローブ12およびスタンドオフ14を収容する略箱状であり、その一側面にはプローブケーブル13を引き出すための切り欠き62aが形成されている。また、異なる一側面には、連結用軸82が突出形成されている。この連結用軸82は、後述する連結部材62に設けられた挟持部材68により挟持される。
【0050】
この収容部材60の内寸は、第二実施形態の収容部材60とほぼ同様である。すなわち、幅および奥行は、プローブ12のそれとほぼ同じであり、スタンドオフ14のそれより若干大きい。代わりに深さは、プローブ12およびスタンドオフ14の厚みの和より若干小さくなっている。かかる内寸とすることで、収容部材60に対するプローブ12の相対位置を規制することができる。また、スタンドオフ14の形状変形を許容することができ、プローブ12と体表との間に介在する空気を除去できる。その結果、効率的な超音波の送受波が可能となる。
【0051】
連結部材62は、基板80と、当該基板80上に固着された二つの挟持部材68と、からなる。基板80は、剛性材料からなる平板であり、その底面には両面粘着テープ74が貼着される。また、挟持部材68は、既述の収容部材60の連結用軸82を挟持する。この挟持部材68は、基板80の両端にそれぞれ一つずつ、計二つ設けられている。各挟持部材68は、連結用軸82の挿通を受け入れる貫通孔69が形成されており、この貫通孔69の上部には挟持部材68の上端まで延びる切込み70が形成されている。そして、この切り込み70に対して垂直に挿通されたボルト72aと当該ボルト72aに螺合されたナット72bとの締め込み量を調整することにより、貫通孔69の内径を可変、換言すれば、連結用軸82の矜持力を可変できる。例えば、ボルト72aおよびナット72bの締め込み量を大きくすれば、貫通孔69に挿通されている連結用軸82を強固に挟持することができ、連結部材62に対する収容部材60の位置関係を保持することができる。ひいては、二つの収容部材60に収容される二つのプローブ12の相対位置関係を維持することができる。一方、ボルト72aおよびナット72bの締め込み量を小さくして貫通孔69の内径を広げれば、収容部材60の取り外しや、連結用軸82の挿通量および挿通角度を調整することができる。換言すれば、締め込み量を小さくすることで、連結部材62に対する収容部材60の相対位置関係、ひいては、収容部材60同士の相対位置関係を調整することができる。つまり、本実施形態でも、被検体体表の形状に応じて、収容部材60同士の相対位置関係が調整可能であり、収容部材60を適宜、所望の位置に配することが可能となる。これにより、プローブ12と体表との空気をより確実に除去でき、より好適な超音波の送受波が可能となる。また、両面粘着テープ74と体表との接触面積を広げることができ、より高い貼着力を得ることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、連結部材62の基板80を平板としているが、被検体の体表形状に応じて湾曲等した板材としてもよい。基板80を被検体の体表に応じた形状とすることで、両面粘着テープ74と体表との接触面積を増加することができ、折骨に対するプローブ12の位置をより確実に維持することができる。
【0053】
また、上記の第一から第三実施形態における保持具16は、いずれも、二つのプローブ12を保持する構成となっているが、収容部34または収容部材60の数を増やして、より多数のプローブ12を保持するようにしてもよい。また、収容部34または収容部材60の形状等はプローブ12や被検体形状に応じて適宜、変更可能である。さらに、本実施形態では、両面粘着テープを用いて保持具16を体表に貼着しているが、他の貼着手段を用いて貼着してもよい。例えば、片面粘着テープを保持具16の上側から貼着するようにしてもよいし、バンド状部材で保持具16を体表側に圧着させてもよい。また、以上の実施形態の超音波診断装置は、いずれも、折骨の癒合診断を目的としているが、プローブの数や保持具の形状等を変更することにより、当然、他の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第一実施形態である超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】プローブ等をセットした状態の保持具の斜視図である。
【図3】図2の保持具の分解斜視図である。
【図4】図2の保持具を別の角度から見た斜視図である。
【図5】プローブ等をセットした状態の保持具の概略断面図であり、(A)は無負荷状態の様子を、(B)は保持具を体表側に押圧した際の様子を示す。
【図6】折骨の癒合診断の様子を示す図である。
【図7】図6におけるA−A概略断面図である。
【図8】第二実施形態の保持具にプローブ等をセットした様子を示す斜視図である。
【図9】図8の保持具の分解斜視図である。
【図10】第三実施形態の保持具にプローブ等をセットした様子を示す斜視図である。
【図11】図10の保持具の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
10 超音波診断装置、12 プローブ、14 スタンドオフ、16 保持具、18 装置本体部、20 送受信部、22 信号処理部、24 出力処理部、26 操作部、28 制御部、30 表示器、34 収容部、36,38,74 両面粘着テープ、50 体表、56 折骨、58 トラッキングポイント、60 収容部材、62 連結部材、63 軸部材、64 本体部、66 鍔部、68 挟持部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波探触子を被検体の体表に近接対向させて保持する保持装置であって、
超音波の送受波面を外部に露出させた状態で前記超音波探触子を収容するとともに、前記保持装置に対する前記超音波探触子の位置を規制する複数の収容手段と、
前記複数の収容手段を互いに連結して、その相対位置関係を維持する連結手段と、
を備え、前記収容手段または前記連結手段を粘着性部材で体表に貼着することで、前記複数の超音波探触子をその相対位置関係を維持しつつ前記体表に近接対向させることを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置であって、
前記連結手段は、前記体表に当接される当接面を備えたブロック体であり、
前記収容手段は、前記ブロック体の当接面に形成された凹部であることを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1に記載の保持装置であって、
前記連結手段は、前記収容手段に対して着脱自在であることを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の保持装置であって、
前記連結手段は、前記複数の収容手段同士の相対距離が調整可能であることを特徴とする保持装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の保持装置であって、
前記連結手段は、前記複数の収容手段同士の相対角度が調整可能であることを特徴とする保持装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の保持装置であって、
前記収容手段または前記連結手段のいずれか一方は、軸部材を備え、
前記収容手段または前記連結手段の他方は、前記軸部材を挟持するとともに、その挟持力が可変の挟持部材を備えることを特徴とする保持装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の保持装置であって、
前記収容手段は、
前記超音波探触子を収容する本体部と、
前記本体部の下端から外側に延びる鍔部材と、
を有し、前記鍔部材を粘着性部材で体表に貼着することを特徴とする保持装置。
【請求項8】
請求項3から6のいずれか1項に記載の保持装置であって、
前記連結手段は、前記体表に当接される当接部材を備え、
前記当接部材を粘着性部材で体表に貼着することを特徴とする保持装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の保持装置であって、
前記超音波探触子と前記体表との間に、超音波に対する透過性と弾性とを備えた音響整合部材が配される場合に、
前記収容部材の収容空間の断面積は、無負荷状態における前記音響整合部材の断面積より大きく、
前記収容部材の収容空間の深さは、無負荷状態における前記音響整合部材と前記超音波探触子の厚みの和より小さいことを特徴とする保持装置。
【請求項10】
被検体の内部の診断部位に対して超音波を送受波する複数の超音波探触子と、
前記複数の超音波探触子を被検体に近接対向して保持する保持装置と、
を有し、前記保持装置は、
超音波の送受波面を外部に露出させた状態で前記超音波探触子を収容するとともに、前記保持装置に対する前記超音波探触子の位置を規制する複数の収容手段と、
前記複数の収容手段を互いに連結して、その位置関係を維持する連結手段と、
を備え、前記収容手段または前記連結手段を粘着性部材で体表に貼着することで、前記複数の超音波探触子をその相対位置関係を維持しつつ前記体表に近接対向させて超音波を送受波することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項1】
複数の超音波探触子を被検体の体表に近接対向させて保持する保持装置であって、
超音波の送受波面を外部に露出させた状態で前記超音波探触子を収容するとともに、前記保持装置に対する前記超音波探触子の位置を規制する複数の収容手段と、
前記複数の収容手段を互いに連結して、その相対位置関係を維持する連結手段と、
を備え、前記収容手段または前記連結手段を粘着性部材で体表に貼着することで、前記複数の超音波探触子をその相対位置関係を維持しつつ前記体表に近接対向させることを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置であって、
前記連結手段は、前記体表に当接される当接面を備えたブロック体であり、
前記収容手段は、前記ブロック体の当接面に形成された凹部であることを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1に記載の保持装置であって、
前記連結手段は、前記収容手段に対して着脱自在であることを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の保持装置であって、
前記連結手段は、前記複数の収容手段同士の相対距離が調整可能であることを特徴とする保持装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の保持装置であって、
前記連結手段は、前記複数の収容手段同士の相対角度が調整可能であることを特徴とする保持装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の保持装置であって、
前記収容手段または前記連結手段のいずれか一方は、軸部材を備え、
前記収容手段または前記連結手段の他方は、前記軸部材を挟持するとともに、その挟持力が可変の挟持部材を備えることを特徴とする保持装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の保持装置であって、
前記収容手段は、
前記超音波探触子を収容する本体部と、
前記本体部の下端から外側に延びる鍔部材と、
を有し、前記鍔部材を粘着性部材で体表に貼着することを特徴とする保持装置。
【請求項8】
請求項3から6のいずれか1項に記載の保持装置であって、
前記連結手段は、前記体表に当接される当接部材を備え、
前記当接部材を粘着性部材で体表に貼着することを特徴とする保持装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の保持装置であって、
前記超音波探触子と前記体表との間に、超音波に対する透過性と弾性とを備えた音響整合部材が配される場合に、
前記収容部材の収容空間の断面積は、無負荷状態における前記音響整合部材の断面積より大きく、
前記収容部材の収容空間の深さは、無負荷状態における前記音響整合部材と前記超音波探触子の厚みの和より小さいことを特徴とする保持装置。
【請求項10】
被検体の内部の診断部位に対して超音波を送受波する複数の超音波探触子と、
前記複数の超音波探触子を被検体に近接対向して保持する保持装置と、
を有し、前記保持装置は、
超音波の送受波面を外部に露出させた状態で前記超音波探触子を収容するとともに、前記保持装置に対する前記超音波探触子の位置を規制する複数の収容手段と、
前記複数の収容手段を互いに連結して、その位置関係を維持する連結手段と、
を備え、前記収容手段または前記連結手段を粘着性部材で体表に貼着することで、前記複数の超音波探触子をその相対位置関係を維持しつつ前記体表に近接対向させて超音波を送受波することを特徴とする超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−320540(P2006−320540A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146740(P2005−146740)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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