説明

保持装置

【課題】火炎の影響下にある場合でも、例えば、フレーム部材を囲んで配置された絶縁マットを確実に保持できる保持器を創出することにある。
【解決手段】保持装置は、非耐火ケースによって囲まれる耐火コアを備え、予張力耐火装置は、一体化されて前記コアに取り付けられ、前記ケースが溶融する場合に、構成要素が前記担体と前記装置との間に確実に保持されるように、装置が解放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年9月26日に出願の独国特許出願公開第10 2005 045 846.7号および2005年9月26日に出願の米国特許仮出願第60/720,624号の出願日の利益を主張するものであり、これらの特許出願の開示は、参照することにより本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、保持装置に関し、特に、航空機で使用する一体化した保持器に関する。
【背景技術】
【0003】
航空機では、様々な領域に電線経路を維持し、誘導するのにケーブル保持器を使用する。
それらが本質的に軽量であることから、樹脂製のケーブル保持器を使用するのが好ましい。
保持器は、横断支持体またはフレーム部材の実際の連結条件、例えば、横断支持体のウェブ厚さや穴径などに合わされる。
【0004】
一般的な保持器は樹脂を含み、ネジおよびナット連結体として設計される。
保持器は、電線群を横断支持体またはフレーム部材に沿って保持したり、案内したりするのに使用される。
一般的な保持器は、特に、フレーム部材に沿って経路を上下に誘導し、絶縁マットを保持するのに使用される。
しかし、熱が過剰な場合、例えば、火炎にさらされた場合、フレーム部材のまわりに絶縁マットを保持する上記の一般的な保持器を構成する樹脂が溶融し、絶縁マットは、ナットおよびネジ連結体上に落下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、火炎の影響下にある場合でも、例えば、フレーム部材を囲んで配置された絶縁マットを確実に保持できる保持器を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的に対する問題解決手段については請求項1に記載している。本発明の有益な改良については従属請求項に記載している。
【0007】
本発明による保持装置は、例えば、金属製の耐火コアを有し、この耐火コアは耐火性でないケースによって囲まれる。
ケースは、例えば、樹脂で作られ、一般的な射出成型法を用いて金属コアを囲んで成型される。
保持装置のコアの一方の端部を、例えば、担体またはフレーム部材に取り付けることができる。
予張力をかけた耐火性装置がケース内に組み入れられてコアに取り付けられる。
ケースが溶融すると、予張力をかけた耐火性装置が解放され、その結果、担体のまわりに配置されていた構成要素(例えば、絶縁マット)を担体と解放された装置との間に確実に保持することができる。
【0008】
本発明の改良形態によれば、ケースは、装置が組み入れられる非耐火性のフランジ領域を有する。
構成要素は、装置がその予張力をかけた状態にあるときに、担体とフランジとの間に確実に保持され、装置がその解放された状態になると、構成要素は、担体と解放された装置との間に確実に保持される。
【0009】
装置の有益な実施形態によれば、装置は、その解放された状態で、コアから外側に向かって半径方向に延びる少なくとも1つのスプリング部材を有する。
【0010】
代替案として、装置は、コアが貫通する螺旋スプリングとすることができ、螺旋スプリングは、その解放された状態で担体の方向に緩み、その結果、構成要素は担体の方向に押され、構成要素の下方へのスライドが防止される。
【0011】
本発明のさらなる発展形態によれば、担体から離れる方向に向いたケースの端部には、例えば、電線管または他のパイプラインなどの配管を保持する保持装置がある。
保持装置およびケースは、例えば、射出成型法を用いて、樹脂から単体部品として作られる。
【0012】
保持装置のコアは、例えば、金属ピンとされる。
代替案として、コアは、担体内に形成された穴を貫通するネジとすることができる。
この実施形態によれば、担体の別の側で、ナット部品を使用してネジをねじ込むことができ、その結果、保持装置を担体に取り付けることができる。
【0013】
本発明によれば、ナット部品は、非耐火性ケーシングによって囲まれた(例えば、金属製の)耐火性ナットであるのが好ましい。
非耐火性ケーシングは、例えば、保持装置のケースと同じ材料で作られる。
同様の態様で、予張力をかけた耐火性テンション装置が、ケーシング内に組み入れられて、ナットに取り付けられ、ケーシングが溶融した場合に解放されて、例えば、絶縁マットなどの構成要素が、担体とテンション装置の間に確実に保持されるようにする。
【0014】
テンション装置は、ネジを用いて取り付けられる上記の装置と同様の態様で設計される。
【0015】
本発明の好ましい改良形態によれば、ナット部品のケーシングは、好ましくはテンション装置が組み込まれた非耐火性フランジを含む。
この構成では、構成要素は、テンション装置がその予張力をかけた状態にあるときに、担体とフランジとの間に確実に保持され、テンション装置が解放された状態になると、構成要素は、担体とテンション装置との間に確実に保持される。
【0016】
改良形態によれば、テンション装置は、ネジから半径方向外側に延びる上記の装置のスプリング部材と同様に、その解放された状態でナットから外側に向かって半径方向に延びる少なくとも1つのスプリング部材を有する。
【0017】
代替案として、テンション装置は、解放された状態でネジから担体の方向に緩む装置と同様に、解放された状態でナットから担体の方向に緩む螺旋スプリングとすることができる。
【0018】
本発明のさらに別の改良形態によれば、担体から離れる方向に向いた担体の端部は、配管を保持する保持器として設計される。
保持器は、例えば、電線管およびパイプを保持し、案内する上記の保持装置と同様の態様で構築される。
【0019】
保持器および/またはケーシングは、例えば、樹脂材料から射出成型で作られる。
保持器およびケーシングを互いに組み入れられるように設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
同封の図面を参照して本発明の好ましい例示的な実施形態を以下に説明する。
以下では、各図の様々な表示において、同一の部品には同じ参照符号が使用されている。
【0021】
図1は、本発明の好ましい例示的な実施形態による保持装置1の上方から斜めに見た斜視図を示す。
保持装置1は、配管を保持する、例えば、ケーブルの電線チューブ(electrical looms)を保持する保持器2を有する。
図1に示すように、保持器2の保持面は、電線管を前記保持面に置けるように、縁部領域3a、3b内に、対応する凹部を有する。
図1では、電線管を示していない。
様々な応用分野に応じて、保持器2の保持面を合わせることができる。
【0022】
図1に示すように、部品4は、基本的に、保持器2から離れる方向に垂直に延びている。
また、部品4は他の何らかの角度で保持器2から離れる方向に延びることもできる。
【0023】
保持器2および部品4は、例えば、1つの樹脂材料で作られ、1つの部品として射出成型される。
代替案として、保持器2および部品4は独立した部品とすることができ、保持器2を部品4に留めることができる。
【0024】
図1に示すように、部品4は、完全にロックする態様で金属製のネジ5を保持している。
また、ネジ5は何か別の適切な耐火性材料で作ることもできる。
【0025】
代替案として、ネジ5をネジのない金属ボルトまたはピンで置き換えることができる。
この場合に、ロッドまたはネジ5の自由端部6は、例えば、担体またはフレーム部材(図示せず)に溶接されるか、または別の方法で前記担体またはフレーム部材に取り付けられる。
ネジの場合に、ネジ5は、例えば、フレーム部材または担体に形成された通し穴(図示せず)を通って、フレーム部材または担体の別の側から金属ネジを用いてネジ留めされる。
【0026】
図1に示すように、部品4はさらに、フランジ7を有する。
フランジ7は、部品4と一体とされ、樹脂材料から射出成型で作られるのが好ましい。
フランジ7について、図2を参照してより詳細に説明する。
【0027】
図2は、図1による保持装置の斜視図を示しており、フランジ7の内部を明確にする。
【0028】
好ましい例示的な実施形態によれば、予張力をかけた装置8は、フランジ7内に成型される。
図2に示すように、装置8は、ネジ5のヘッド部9に取り付けられている。
代替案として、ネジ5を用いて装置8を任意の所望の位置に固定することができる。
特に、予張力(予めかけた張力)をかけた状態で、装置8を部品4内に組み入れることもできる。
【0029】
図3は、図2に示した予張力をかけた装置8の平面図を示している。
図3に示すように、本発明の1つの例示的な実施形態によれば、装置8は、予張力をかけた状態でネジ5のまわりに部分的に延びる3つの弾性スプリング部材10a〜10cを有する。
【0030】
例えば、火炎の影響により、装置8が組み入れられた樹脂製フランジ7が溶融した場合、スプリング部材10a〜10cは外側に跳ねて、基本的には、半径方向の外側にネジ5から離れる方向に突出する。
【0031】
代替案として、例えば、ネジ5のヘッド領域9に取り付けられた耐火性螺旋スプリングとして装置8を設計することができる。
ネジ5は、例えば、螺旋スプリングを貫通することができ、螺旋スプリングは、フランジ7が溶融したときにネジ5に沿って延びる。
【0032】
図4は、本発明の1つの例示的な実施形態によるナット部品11を示し、図1に示す保持装置にナット部品11をねじ込むことができる。
図1による保持装置と同様に、ナット部品11は保持器12を有する。
保持器12は、保持装置1の保持器2と同様に設計され、縁部領域13a、13bに、同じく、ケーブルのチューブ(loom)またはパイプラインを支持する凹部を有する。
部品14は、保持器12から基本的に垂直をなして延びている。
【0033】
部品14および保持器12は、樹脂材料から作られ、例えば、1つの部品として射出成型されるのが好ましい。
代替案として、部品14および保持器12は独立した部品とすることができ、保持器12を部品14に留めることができる。
【0034】
図4に示すように、部品14は、好ましくは、部品14と一体となるように射出成型されたフランジ15を有する。
【0035】
ナット部品の好ましい実施形態によれば、ナット(図示せず)が部品14内に(またはフランジ15内に)成型される。
ナットは、金属または何か別の適切な耐火性材料から作られるのが好ましい。
【0036】
装置8のものと同様な態様で、部品14はテンション装置(図示せず)を有し、このテンション装置については、図5を参照してより詳細に説明する。
【0037】
図5は、図1に示す保持装置1が図4に示すナット部品にねじ込まれて、フレーム部材16に取り付けられた断面図を示している。
【0038】
図5では、ナット部品11は、フレーム部材16の左手側にあり、図1による保持装置は、図5の右手側でフレーム部材16の反対側にある。
【0039】
図5に示すように、フレーム部材16は、ネジ5が図の右手側から挿入される通し穴17を有する。
この場合、ナット部品11は、部品14に組み入れられたナット18を用いてネジ5にねじ込まれる。
【0040】
取り付けた状態では、例えば、保持装置1およびナット部品11の部品4、14のそれぞれの面は、図5に示すように、フレーム部材16の対向面と接触している。
【0041】
図5に示すように、例えば、絶縁マットなどの構造部材19は、フレーム部材16を囲んで配置され、保持装置1およびナット部品11の部品4、14は、絶縁マットを貫通している。
フランジ7、15は、絶縁マット19が保持装置1またはナット部品11から滑り落ちるのを防止する。
【0042】
(火炎にさらされることのない)通常の運転状態では、絶縁マット19は、保持装置1またはナット部品11のフランジ7、15によって、フレーム部材16に確実に保持され、フランジ7、15は、絶縁マット19が保持装置1またはナット部品11から滑り落ちるのを防止する。
【0043】
火炎にさらされると、樹脂製部品が溶融し、上記の装置8は解放されてフランジ7の機能を担い、その結果、絶縁マット19が保持装置1から滑り落ちるのを防止する。
【0044】
保持装置1の装置8のものと同様の態様で、ナット部品11のナット18は、テンション装置20を有する。
テンション装置20は、装置8に関連させて上記に説明した態様と同様な態様で設計され、したがって、火炎にさらされたときに、テンション装置はナット部品11のフランジ15の機能を担い、その結果、絶縁マット19がナット部品11から滑り落ちるのを防止する。
【0045】
好ましい例示的な実施形態に関連させて本発明を上記に説明したが、耐火性コアに取り付けられた耐火性の予張力式装置が、予張力をかけた態様で非耐火性材料に組み入れられて、材料が溶融したときに解放された状態を呈する限りは、本発明の保護的範囲から逸脱することなく、修正および変更を行うこともできるは当然のことである。
【0046】
さらに、本発明は、航空機分野だけでなく、同様の問題が存在するところならどこにでも使用することができ、例えば、船舶や他の乗り物で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の例示的実施形態による保持装置を示す斜視図である。
【図2】図1による保持装置の内部を示す斜視図である。
【図3】図2に示す保持装置が張力のかかった状態にあることを示す平面図である。
【図4】本発明の一例示的実施形態によるナット部品を示し、図1に示す保持装置にナット部品をねじ込むことができる。
【図5】図1に示す保持装置が図4に示すナット部品にねじ込まれて、フレーム部材に取り付けられた断面図を示す。
【符号の説明】
【0048】
1 保持装置
2 保持器
3a、3b 縁部領域
4 部品
5 ネジ
6 自由端部
7 フランジ
8 装置
9 ヘッド部
10a―c スプリング部材
11 ナット部品
12 保持器
13a、13b 縁部領域
14 部品
15 フランジ
16 フレーム部材
17 通し穴
18 ナット
19 絶縁マット
20 テンション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体(16)に連結可能な耐火コア(5、18)を有し、
前記耐火コア(5、18)は、非耐火ケース(7、14)によって囲まれ、
予張力耐火装置(8)は、前記非耐火ケース(4、7)の中に一体化されて前記耐火コア(5、9)に取り付けられ、
前記非耐火ケース(4、7)が溶融する場合に、装置(8)が解放するように、
構成要素(19)が前記担体(16)と前記解放される装置(8)との間に確実に保持される、ことを特徴とする保持装置(1)。
【請求項2】
前記非耐火ケース(4、7)は、前記装置(8)が組み込まれる非耐火フランジ(7)を備え、
前記装置(8)が予張力状態にある場合に、前記構成要素(19)は前記担体(16)と前記非耐火フランジ(7)との間に確実に保持され、
前記装置(8)がその解放状態にある場合に、前記構成要素(19)は前記担体(16)と前記装置(8)との間に確実に保持される、ことを特徴とする請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記装置(8)は、前記耐火コア(5、9)から外側に向かって半径方向に解放状態で延ばす少なくとも1つのスプリング部材(10a、10b、10c)を備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の保持装置。
【請求項4】
前記装置(8)は、前記耐火コア(5)が延ばす螺旋スプリングであり、前記担体(16)の方向に解放状態で弛緩する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の保持装置。
【請求項5】
前記担体(16)から離れる方向に向いた端部に配管のための保持器(2)がある、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の保持装置。
【請求項6】
前記保持器(2)および前記非耐火ケース(4)は、相互に組み込まれる、ことを特徴とする請求項5に記載の保持装置。
【請求項7】
前記保持器(2)又は前記非耐火ケースの少なくとも一方は、樹脂材料から射出成型される、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の保持装置。
【請求項8】
前記耐火コア(5)は、前記担体(16)の通し穴(17)を通って延びるネジであり、前記担体(16)に前記保持装置(1)を取り付けるために前記担体(16)の別の側にナット部品(11)でねじ込まれる、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の保持装置。
【請求項9】
前記ナット部品(11)は、非耐火ケース(14)によって囲まれる耐火ナット(18)を備え、
前記ネジ(5)手段によってねじ込まれ、
予張力耐火テンション装置(20)は、前記非耐火ケース(14)の中に組み込まれ、前記耐火ナット(18)に取り付けられ、
前記非耐火ケース(14)が溶融する場合に、解放され、前記構成要素(19)は前記担体(16)と前記解放したテンション装置(20)との間に確実に保持される、ことを特徴とする請求項8に記載の保持装置。
【請求項10】
前記非耐火ケース(14)は、前記テンション装置(20)が組み込まれる非耐火フランジ(15)を備え、
前記テンション装置(20)が予張力状態にある場合に、前記構成要素(19)は前記担体(16)と前記非耐火フランジ(15)との間に確実に保持され、
前記テンション装置(20)が解放状態にある場合に、前記構成要素(19)は前記担体(16)と前記テンション装置(20)との間に確実に保持される、ことを特徴とする請求項9に記載の保持装置。
【請求項11】
前記テンション装置(20)は、前記耐火ナット(18)から外側に向かって半径方向に解放状態で延ばす少なくとも1つのスプリング部材(10a、10b、10c)を備える、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の保持装置。
【請求項12】
前記テンション装置(20)は、前記担体(16)の方向の前記耐火ナット(18)から解放状態に解放する螺旋スプリングである、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の保持装置。
【請求項13】
前記担体(16)から離れる方向に向いた、前記非耐火ケース(14)の端部は、電線管を保持するように設計された保持器(12)を備える、ことを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1つに記載の保持装置。
【請求項14】
前記保持器(12)および前記非耐火ケース(14)は、相互において一体化される、ことを特徴とする請求項13に記載の保持装置。
【請求項15】
前記保持器(12)又は前記非耐火ケース(14)の少なくとも一方は、樹脂材料からの射出成型である、ことを特徴とする請求項13又は14に記載の保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−510980(P2009−510980A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531598(P2008−531598)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009093
【国際公開番号】WO2007/039095
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(504467484)エアバス・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (268)
【Fターム(参考)】