保水性ブロックおよびペーパースラッジ灰を用いた低スランプ硬練り水硬性組成物
【課題】 吸水性および長期の保水機能を有する保水性ブロックおよびPS灰の大量使用が可能な低スランプ硬練り水硬性組成物を提供する。
【解決手段】 産業廃棄物であるPS灰を配合した超硬練りの即脱可能なコンクリートにより、保水性ブロックを製造する。セメントともに用いる単位PS灰量は100〜300kg/m3とする。その他、吸水性の高いパーライトくずなどを配合する。中空ブロック製品への適用においては、超硬練りの即脱可能なコンクリートとして、単位セメント量が280〜320kg/m3、かつ単位PS灰量が160〜240kg/m3となるようにPS灰を配合することにより、高い製品強度が得られる。
【解決手段】 産業廃棄物であるPS灰を配合した超硬練りの即脱可能なコンクリートにより、保水性ブロックを製造する。セメントともに用いる単位PS灰量は100〜300kg/m3とする。その他、吸水性の高いパーライトくずなどを配合する。中空ブロック製品への適用においては、超硬練りの即脱可能なコンクリートとして、単位セメント量が280〜320kg/m3、かつ単位PS灰量が160〜240kg/m3となるようにPS灰を配合することにより、高い製品強度が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装材などとして用いられるとしての保水性に優れた保水性ブロックおよびその製造に適したペーパースラッジ灰を用いた低スランプ硬練り水硬性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペーパースラッジとは、製紙原料のうち紙にできなかった微細繊維や、タルク、カオリンなどの填料、および古紙混入異物などからなる製紙汚泥である。このペーパースラッジを焼却した灰がペーパースラッジ灰(以下、PS灰という)である。一般的にPS灰は、製紙会社から最も多く排出される廃棄物であり、PS灰の再資源化は大変重要である。
【0003】
これまでのPS灰の再資源化の例としては、土壌改良材、セメント原料、製鉄保温材などへの利用が知られている。そのようなPS灰の再資源化に関する従来技術としては、特許文献1、2記載の発明などがある。
【0004】
産業廃棄物としてのPS灰の大量使用の目的で、PS灰をモルタルあるいはコンクリートに大量に混入することを考えた場合、PS灰は吸水率が高いため流動性の低下が問題となる。そこで、本願の発明者らは、低スランプ硬練り水硬性組成物、特にいわゆる即脱可能なスランプゼロの超硬練りコンクリートへの適用の可能性を検討した。
【0005】
その場合のコンクリート製品としての適用対象としては、例えば中空ブロックやPS灰の吸水性を活かした保水性ブロックへの適用が考えられる。
【0006】
保水性ブロックは、道路舗装材などとして用いられており、透水性ブロックのように雨天時、雨水を吸い込むため、水溜りができず快適な歩行が可能であるだけでなく、水を保持する機能があるため、晴天時に水分を放出することにより、路面の温度を下げ、これにより、ヒートアイランド現象を緩和し、熱帯夜を低減するという効果がある。
【0007】
そのような保水性ブロックに関する従来技術としては、特許文献3、4、5記載の発明などがある。
【0008】
【特許文献1】特許2742898号公報
【特許文献2】特開2005−344031号公報
【特許文献3】特開2003−146772号公報
【特許文献4】特開2003−268706号公報
【特許文献5】特開2005−035801号公報
【非特許文献1】安田浩二、「下水汚泥溶融スラグを細骨材として用いたコンクリートの諸性状改良に関する研究」、宇都宮大学卒業論文、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように廃棄物としてのPS灰の再資源化の研究がなされているが、廃棄物を減らす目的からは、従来以上に大量使用が可能であることが望ましい。一方、モルタルやコンクリートへの大量混入は、製品としての質や、強度の低下の問題があり、用途も限定される。
【0010】
また、適用対象の一つと考えられる保水性ブロックについては、必要な強度を確保した上で、吸水性に優れ、かつ長期に渡り保水機能が維持されることが要求される。
【0011】
本発明は上述のような背景のもとになされたものであり、吸水性および長期の保水機能を有する保水性ブロックおよびPS灰の大量使用が可能な低スランプ硬練り水硬性組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の請求項1に係る発明は、水硬性組成物からなる多孔質の保水性ブロックにおいて、絶乾状態のブロック全体を水中に浸して24時間吸水させた後の単位体積当たりの保水量が0.15g/cm3以上、絶乾状態のブロックの下端部を水に浸し30分経過した後のブロックの質量M30と十分に湿潤状態としたときのブロックの質量Mcwの比の百分率(M30/Mcw)×100%としての吸上げ高さが70%以上、曲げ強度が3N/mm2以上であり、十分に湿潤状態とした状態から100〜110℃で加熱して絶乾状態となるまでの湿潤−絶乾時間が48時間以上であることを特徴とするものである。
【0013】
保水量が0.15g/cm3以上、吸上げ高さが70%以上、曲げ強度が3N/mm2以上というのは、保水性舗装ブロック品質規格検討委員会による平成17年7月の「保水性舗装用コンクリートブロック品質規格」にその試験方法とともに規定された数値であり、製品として出荷するのに必要な要件となる。
【0014】
従来の保水性ブロックの湿潤−絶乾時間は、せいぜい24時間程度であるのに対し、請求項1は従来の保水性ブロックの約2倍以上となる48時間以上を限定要件としたものである。
【0015】
後述する実験結果においては、保水量が0.15g/cm3以上、吸上げ高さが70%以上、曲げ強度が3N/mm2以上という規格を満たすものおよび規格に近い性能を示すものについて、湿潤−絶乾時間として120時間が実証されており、実際の舗装に用いた場合でも夏の炎天下において従来の保水性ブロックと比較してはるかに長期の保水性維持効果が期待できる。湿潤−絶乾時間の具体的な測定手法の一例は発明を実施するための最良の形態の項で述べることとする。
【0016】
なお、保水性ブロックにおいてPS灰を用いること、あるいはPS灰を用いる場合のその量については限定されない。
【0017】
請求項2は、請求項1に係る保水性ブロックにおいて、前記水硬性組成物は、セメント、パーライトくずおよびペーパースラッジ灰が配合された超硬練りの即脱可能なコンクリートであり、前記ペーパースラッジ灰について単位ペーパースラッジ灰量が100〜300kg/m3であることを特徴とするものである。
【0018】
後述する実験結果において、単位PS灰量が100〜300kg/m3を配合した超硬練り即脱可能なコンクリートが請求項1の要件を満たすことを確認しているが、廃棄物としてのPS灰の大量混入により、廃棄物の処理を兼ねた効率的な再資源化が図れる。また、高い吸水性を有するパーライトくずの配合によっても保水性能の向上が期待できる。
【0019】
請求項3は、請求項2に係る保水性ブロックにおいて、前記パーライトくずについて単位パーライトくず量が300kg/m3以上であることを特徴とするものである。
【0020】
パーライトくず自体が高い吸水性を有しており、後述する実験結果からも単位パーライトくず量を300kg/m3以上とすることで、PS灰の吸水効果と相俟って、従来の保水性ブロックに比べ非常に優れた保水性能が期待できる。
【0021】
請求項4に係る低スランプ硬練り水硬性組成物は、単位セメント量が150kg/m3以上、かつ単位PS灰量が100〜300kg/m3の範囲でPS灰を配合したことを特徴とするものである。
【0022】
請求項4は、具体的な用途が特定されない主として超硬練り、いわゆるスランプ0のの即脱可能なコンクリートとしての水硬性組成物を限定したものであり、大量のPS灰を再生資源として有効利用しつつ、同水準の配合においてPS灰を配合しないものと同等以上の圧縮強度のコンクリートを得ることができる。
【0023】
単位セメント量が150kg/m3より小さくなると圧縮強度低下が大きくなる恐れがある。単位PS灰量が100kg/m3以上とすることで、超硬練りの即脱可能なコンクリートとして十分利用可能となるが、単位PS灰量が300kg/m3を越えると型枠への充填性が損なわれるなど成型が困難となる恐れがある。
【0024】
請求項5は、具体的な用途が特定されない主として超硬練りの即脱可能なコンクリートとしての水硬性組成物として、さらに好ましい範囲を限定したものであり、単位セメント量が280〜320kg/m3、かつ単位PS灰量が160〜240kg/m3の範囲でPS灰を配合したことを特徴とするものである。
【0025】
後述する実験において、上記の範囲であれば同水準の配合においてPS灰を配合しないものに対し、1.5倍以上の圧縮強度を持つコンクリートができることが確認された。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、吸水性および長期の保水機能を有する優れた保水性ブロックが得られ、また用途の特定されない低スランプ硬練り水硬性組成物として、廃棄物であるPS灰を大量に有効利用しつつ、強度的に優れた即脱可能なコンクリートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の最良の実施形態を求めるため、実験を行ったので、以下にその詳細を既述する。
【0028】
1.PS灰を混和したモルタルの諸性状
1−1.実験の概要
既往の研究では、PS灰をコンクリ−ト用混和材として使用する際、PS灰の主成分であるシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)によるポゾラン反応によって強度増加が期待できる。しかしながら、PS灰の大量使用を目的とした配合選定は行われていないのが現状である。そこで、まずモルタルにおいてPS灰を混和した場合の強度特性を以下のように段階的に把握することとした。
【0029】
(1) PS灰をセメントに置換した際のPS灰強度寄与の把握
(2) 単位セメント量一定でPS灰を細骨材に置換した際の強度特性の把握
(3) PS灰をセメント、細骨材両方に置換した際の強度特性の把握
これらの実験を行うことにより、モルタルにおいてPS灰の大量使用を可能とする置換方法および置換量の選定を行う。また、(1)の実験においては、養生条件の違いによる強度の変化を調べるために、養生条件を変えた場合についても実験を行った。
【0030】
1−2.使用材料
以下の実験における使用材料を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
実験で使用したPS 灰の化学成分を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
1−3.PS灰セメント置換実験
1−3−1.配合条件および示方配合
配合条件は、水セメント比W/C=30%、セメントと細骨材の体積比C:S=1:1とし、PS灰をセメントに対して、20、40、60、80%内割で体積置換した4配合、および比較用としてPS灰無混入のものを加えた計5配合について試験を行った。比較用配合において0打フロー110±10mm、15打フロー130±20mm、空気量2.0±1%となるように混和剤により調整した。
【0035】
表3に配合表を示す。また、強度寄与率算出のため、各配合におけるW/CおよびW/Bと同値のW/CとしたPS無混入プレーンモルタルを作成した。
【0036】
【表3】
【0037】
ここで養生条件は、蒸気養生とし前置き時間2h(20℃、RH60%)、温度上昇速度20℃/h、最高温度保持時間24hとする。最高温度は60℃、80℃、100℃の3水準による強度の変化を確認した。また、蒸気養生後は気中養生とした。
【0038】
1−3−2.練り混ぜ方法
ミキサーはホバ−ト型ミキサーを用いた。まずセメントと砂を入れて30秒混ぜた後、水と混和剤を入れて3分間練り混ぜた。
【0039】
1−3−3.試験項目および試験方法
(1) モルタルフロー試験
スランプフロー試験は「JIS R 5201−1997(2002 確認)セメントの物理試験方法」に準じて行った。
【0040】
練り混ぜたモルタルを乾燥した布でよくぬぐったフローテ−ブル上の中央の位置に正しく置いたフローコ−ンに2層に詰める。各層は、突き棒の先端がその層の約1/2の深さまで入るよう、全面にわたって各々15回突き、最後に不足分を補い表面をならす。直ちにフローコ−ンを正しく上の方に取り去り、モルタルが広がった後の径を最大と認める方向と、これに直角な方向とで測定し、その平均値をスランプフロー値とした。
【0041】
(2) 空気量試験
空気量試験は「JIS A 1116−1998 フレッシュコンクリ−トの単位質量試験方法および空気量の質量による試験方法(質量法)」に準じて行った。
【0042】
(3) 圧縮強度試験
圧縮強度試験は「JIS−A−1108−1999 コンクリ−トの圧縮強度試験方法」に準じて行った。蒸気養生については脱型1日強度、気中養生については材齢14日について圧縮強度試を行った。また、供試体寸法より見かけ密度の算出を行った。
【0043】
1−3−4.試験結果および考察
(1) フレッシュ試験結果
フレッシュ試験結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
PS灰量の増加に伴い、所定のスランプフローを得るために必要な高性能減水剤添加量は増加した。特に、PS灰置換率60%以上では、高性能減水剤添加量を増加させてもその効果が確認されず、流動性を得ることができなかった。
【0046】
PS灰置換率60%のモルタルではテーブルバイブレーターを用いて型枠へ充填する必要があり、PS灰置換率80%のモルタルにいたっては、振動加圧を行わなければ型枠への充填が困難であった。これは吸水率の高いPS灰が多く入ることで余剰水がなくなったために流動性が失われたことが原因と考えられる。
【0047】
また、PS置換率60%以上においては消泡剤の効果が確認されず、空気量が増大した。これは、型枠への充填が困難であったことより、連続気泡が多く存在していると考えられる。
【0048】
ここで硬化したコンクリ−トの見かけ密度を算出した。単位PS灰量が増えるにつれて密度は低下した。PS灰置換率80%ではプレーンモルタルより2割ほど減少した。これは、PS灰の密度がセメントの密度の7割ほどであるためである。
【0049】
(2) 圧縮強度試験結果
圧縮強度試験結果を表5に示す。表4より、空気量の変化にばらつきがあるため、「空気量1%増加すると、圧縮強度は5%減少する」とし、それぞれの養生温度におけるPS灰置換率0%のときの空気量を基準として補正を行った。補正後のPS灰の置換率と圧縮強度の関係を図1、図2に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
図1、図2より、養生温度に関わらずPS置換率20%までは無置換のプレーンモルタルと同等の圧縮強度を得られたが、PS置換率20%以降においては、PS置換率の増加に伴い直線的に圧縮強度が低下することが確認された。これは初期強度、14日強度で同じような傾向を示した。強度低下の原因は、PS灰が十分に結合材として反応しなかったと考えられる。そこでPS灰の強度寄与率を算出する。
【0052】
強度寄与率は以下の式(1)で定義する。
【0053】
【数1】
【0054】
ここで、
PW/C:各配合におけるW/Cと同値のW/CとしたPS灰無混入プレーンモルタル
PW/B:各配合におけるW/Bと同値のW/CとしたPS灰無混入プレーンモルタル
強度寄与率算出のため、PW/C 、PW/Bにおける圧縮試験結果を表6に、C/Wと圧縮強度の関係を図3、図4に示す。
【0055】
【表6】
【0056】
図4においてC/Wと圧縮強度の関係を回帰し、各養生温度における強度算定式を求めることによりPW/C−40、PW/C−60、PW/C−80 の圧縮強度を予測し、強度寄与率を算出した。算出結果を表 3−7 に示す。
【0057】
【表7】
【0058】
図5、図6より、強度寄与率は養生温度に関わらず、PS置換率の増加に伴いほぼ直線的に低下する傾向を示した。PS置換率20%〜40%においては、結合材として約70%以上機能しているが、PS置換60%以上では、結合材として20%〜65%しか機能していないことが確認された。
【0059】
このことから、PS灰をセメンに置換する際には40%程度までが強度的に限界であると考えられる。したがって、十分な強度を得るためにはポゾラン反応を起すのに必要な水酸化カルシウムを得るために、ある程度の単位セメント量が必要であると考えられる。
そこで、次に単位セメント量を変えずにPS灰を細骨材に置換した実験を行うこととした。
【0060】
1−4.PS灰細骨材置換実験
1−4−1.配合条件および示方配合
配合条件は、セメント置換と同様とし、PS灰を細骨材(川砂)に対して、10、20、30%体積置換した3配合および比較用としてPS灰無混入のものを加えた計4配合について試験を行った。PS灰無混入の配合において0打フロー110±10mm、15打フロー130±20mm、空気量2.0±1.0%となるように混和剤により調整した。表8に配合表を示す。
【0061】
【表8】
【0062】
ここで養生条件は、蒸気養生とし前置き時間2h(20℃、RH60%)、温度上昇速度20℃/h、最高温度60℃、最高温度保持時間24hとした。また、蒸気養生後は気中養生とした。
【0063】
1−4−2.練り混ぜ方法
1−3−2と同様。
【0064】
1−4−3.試験項目および試験方法
1−3−3と同様。
【0065】
1−4−4.試験結果および考察
(1) フレッシュ試験結果
フレッシュ試験結果を表9に示す。
【0066】
【表9】
【0067】
セメント置換と同様にPS灰置換量が増えるにつれて所定のスランプフローを得るために必要な高性能減水剤の量が増えて行った。また、PS灰の単位量と高性能減水剤の量の関係は、セメント置換と同程度となっている。これにより、PS灰の単位量によって高性能減水剤の量を決めることができることがわかった。
【0068】
また、今回の実験ではAE剤を添加しなかったためPS灰の量の増加と共に空気量は著しく増加した。PS灰の一番多いPS−S30 においてはプレーンモルタルの空気量の約3倍になった。
【0069】
密度においてもセメント置換同様に減少傾向が確認された。一番PS灰が多い配合において、プレーンモルタルより15%ほどの減少が見られた。
【0070】
(2) 圧縮強度試験結果
空気量が一定でないためにセメント置換と同様に補正を行った。圧縮強度試験結果、および圧縮強度比を表10に示す。
【0071】
【表10】
【0072】
図7より、PS灰の置換量と共に圧縮強度は直線的に増加することが確認された。全ての置換率で初期強度において10%以上、14日強度において30%〜40%の強度の増加が見られた。この結果から14日での強度の伸びがプレーンモルタルよりも大きいことが確認された。これは、PS灰の主成分であるシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)とセメントの水和によって生じた水酸化カルシウムとのポゾラン反応によるものである。
【0073】
また、セメント置換ではPS灰量の増加に伴い、十分な水和が起こらなかったために細骨材に置換したもののような強度の増加が見られなかったと考えられる。
【0074】
これらの結果よりセメント、細骨材の両方にPS灰を置換することによってPS灰を大量に使用しながら、プレーンのモルタルと同等の強度を得られる可能性を見出せた。そこでセメント、細骨材の両方に置換したモルタルの実験を次のシリ−ズで行うこととした。
【0075】
1−5.PS灰セメント細骨材置換実験
1−5−1.配合条件および示方配合
配合条件は、セメント置換と同様とし、PS灰をセメントに対して、30、40、50%内割で体積置換した3水準およびPS灰を細骨材(川砂)に対して、0、10、20、30、40%内割体積置換した5水準の計15配合について試験を行った。表11に配合表を示す。
【0076】
また、養生条件は細骨材置換と同様とする。
【0077】
【表11】
【0078】
1−5−2.練り混ぜ方法
1−3−2と同様。
【0079】
1−5−3.試験項目および試験方法
1−3−3と同様。
【0080】
1−5−4.試験結果および考察
(1) フレッシュ試験結果
フレッシュ試験結果を表12に示す。
【0081】
【表12】
【0082】
フレッシュ性状としては、前の二つの実験と同様に所定のモルタルフローを得るために必要な高性能減水剤の量は置換量の増加と共に増えた。ここで高性能減水剤の添加率の上限を粉体量の5.0%として実験を行ったために5.0%添加して流動性を得られなかったC50−S40では実験を行わなかった。
【0083】
また、単位PS灰量が同じである配合においては同程度の高性能減水剤の添加率となっている。また、セメント置換と同様に単位PS灰量462g/L以上において振動締め固めによる型枠への充填が、617g/L以上において振動加圧による型枠への充填が必要となった。
【0084】
空気量についてもそれまでの実験同様にPS灰の量の増加とともに増えていった。特に、一番空気量が多いC40−S40の配合ではプレーンモルタルの約4倍の空気量となった。
【0085】
密度についてもそれまでの実験同様、単位PS灰量の増加と共に減少傾向が見られた。最も減少したもので1.94g/cm3でプレーンモルタルより10%ほどの減少が見られた。
【0086】
プレーンモルタルからの空気量の増加量、密度の減少量を表13に示す。
【0087】
【表13】
【0088】
(2) 圧縮強度試験結果
圧縮強度試験結果を表14に示す。
【0089】
【表14】
【0090】
PS灰置換率と圧縮強度の関係を図9、図10に、圧縮強度比との関係を図11、図12に、単位PS灰量と圧縮強度の関係を図13、図14に示した。 図9よりセメント置換量一定のもとで細骨材置換量を変化させていくと、初期の圧縮強度にピ−クがあることが分かった。
【0091】
また、いずれのピ−クも単位PS灰量462g/Lであり、いずれのピ−クもプレーンモルタルの圧縮強度に近い値を示している。これは、PS灰の置換量が増えるにつれて、流動性が低下することにより充填不良を起したためにピ−クが発生すると考えられる。また、特に最も単位PS灰が多く、単位セメント量の少ないC50−S30ではプレーンモルタルの30%ほどまで圧縮強度が低下している。
【0092】
14日強度ではピ−クが単位PS灰量385g/Lに変化した。これは、PS灰のポゾラン反応が初期強度でピ−クになったものより単位セメント量が多い配合でより行われたためと考えられる。また、ここで圧縮強度比をみると充填が不十分であったC50−S30を除いては、すべての配合で1.0に近い値を示しているかもしくは1.0を超えている。これは、ポゾラン反応による長期強度の伸びによるものである。
【0093】
1−6.まとめ
PS灰を混和したモルタルの諸性状を以下にまとめる。
【0094】
(a) セメント置換、細骨材置換のどちらの場合においてもPS灰添加量が増えるに従い、所定のスランプフローを得るのに必要な混和剤の量が増えた。特に単位PS灰量が462g/L以上になると振動締め固めでの型枠の充填が必要となる。
【0095】
(b) 単位PS灰量の増加に伴い、空気量は増大する傾向が確認された。また、単位PS灰量462g/L以上では消泡剤の効果が確認されない。
【0096】
(c) 単位PS灰量の増加に伴いモルタルの密度は低下する傾向が確認された。
【0097】
(d) セメント置換の場合において、置換量が20%以下だとプレ−ンモルタルと同等の強度が確認された。これより大きい場合において、強度は直線的に減少する。
【0098】
(e) セメント置換におけるPS灰の圧縮強度寄与率は、20%〜40%においては、結合材として約70%以上機能しているが、PS置換率60%以上では、結合材として20%〜65%程度しか機能していないことが確認された。
【0099】
(f) 細骨材置換において、PS灰の置換量が増えると共に強度は直線的に増加する。14日強度では30%以上の増加が期待できる。
【0100】
(g) セメント、細骨材の両方に置換すると、圧縮強度にピ−クが確認された。これは、セメント、細骨材の置換率に関係なく単位PS灰量462g/Lであった。
【0101】
(h) セメント、細骨材の両方に置換すると、14日強度において最も強度が伸びるのは、セメント、細骨材の置換率に関係なく単位PS灰量365g/Lであった。
【0102】
(i) セメント、細骨材の両方に置換すると、14日強度において振動加圧を必要とする配合を除いて、プレーンモルタルの強度より大きくなる。
【0103】
2.PS灰を混和したコンクリートの諸性状
2−1.概要
「1.PS灰を混和したモルタルの諸性状」の結果から、PS灰をセメントおよび細骨材に置換することによって、モルタルの流動性が失われることが分かった。
【0104】
そこで、PS灰をスランプゼロの超硬練りコンクリートの即脱製品をターゲットに、PS灰をコンクリートに置換し、そのときの強度特性を求めることとした。
【0105】
そこで、まず、一般的な製品に用いられるコンクリートにPS灰を置換することによってできる超硬練りコンクリートの強度特性の把握を行った。また、超硬練りコンクリートのフレッシュ性状評価法として簡易的な締固め性試験を行った。
【0106】
2−2.使用材料
1−2と同様とする。
【0107】
2−3.配合条件および示方配合
基本配合を表15に示す。
【0108】
【表15】
【0109】
配合条件は、基本配合を元にPS灰をセメントに対して、0、10、20、30、40、50%内割で体積置換した6水準およびPS灰を細骨材(川砂)に対して、0、10、20、30、40、50%内割体積置換した6水準の計36配合について試験を行った。
【0110】
表16に配合表を示す。混和剤の添加率は振動加圧により型枠に充填できる程度とした。ただし、混和剤の添加量の上限を5%とし、5%添加して振動加圧できないものについては試験を行わないものとする。
【0111】
養生条件は、前置き時間2h、温度上昇速度20℃/h、最高温度60℃、最高温度保持時間24hとした。
【0112】
【表16】
【0113】
2−4.練り混ぜ方法
ミキサーは、10Lオムニミキサーを用いた。混練時間は材料投入後30秒間とした。また、練混ぜ時間は水投入後360秒間とした。
【0114】
2−5.試験項目および方法
(1) スランプ試験
「コンクリートのスランプ試験方法(JIS A 1101)」に準じて行った。
【0115】
(2) 空気量試験
空気量試験は、「JIS A 1116−1998フレッシュコンクリートの単位質量試験方法および空気量の質量による試験方法(質量法)」に準じて行った。
【0116】
(3) 簡易締固め性試験
超硬練りコンクリートの充填性の評価として、同一振動、加圧条件下での充填性と時間の関係を以下の様に測定することで評価することとした。
(a) テーブルバイブレーター上にΦ10×20cmの型枠を設置、固定する。
(b) 型枠に試料(1.8kg)をつめて、表面を整える。
(c) 型枠上面からの高さを4点測定する(初期値)。
(d) おもりを載せて振動を5、20、60、120、180、300秒かける。
(e) 各振動時間においておもりをはずし、4点で高さをはかる。
(f) 充填率を算出する。
【0117】
(4) 圧縮強度試験
「JIS-A-1108-1999 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。蒸気養生については脱型1日強度について圧縮強度試験を行った。また、供試体寸法より見かけ密度の算出を行った。
【0118】
2−6.試験結果および考察
(1) フレッシュ試験結果
フレッシュ試験結果を表18に示す。
【0119】
基本配合ではSL10±2cmを目標としたがPS灰を置換すると、コンクリートの流動性が失われスランプを確保することが困難であった。したがって、混和剤によりスランプの調整を行うことは困難であるため、テーブルバイブレーターにより振動を与えることによって成型が可能となるよう、混和剤の調整を行った。
【0120】
なお、混和剤添加量の上限値を5%としており、表17に成型の可、不可を示した。
【0121】
【表17】
【0122】
ここで、セメント置換率0%、細骨材置換率50%の配合において振動加圧成型を行った際に成型ができたものの、空気量が14%とかなり大きいものになってしまったため、これも成型の限界とし、この配合と同様の性状を示したものについては成型不可とした。成型可能であったのは単位PS灰量300kg/m3以下であった。
【0123】
【表18】
【0124】
フレッシュ試験の結果から、モルタル試験同様にPS灰添加量の増大に伴いコンクリートの流動性は低下することが確認された。特に単位PS灰量100kg/m3を超える配合においては、スランプゼロの超固練りコンクリートとなった。
【0125】
これは「1.PS灰を混和したモルタルの諸性状」で述べたのと同様に、吸水率の高いPS灰が多く入るためにフレッシュコンクリート中の余剰水が減ることによると考えられる。
【0126】
空気量については、モルタル試験の際に見られたような、顕著な増加傾向は確認されなかった。型枠の充填が可能な範囲において、1〜3%程の範囲に入っている。しかしながら、PS灰の混入量が250kg/m3を超える配合では空気量が他の配合に比べて大きくなる。
【0127】
これは振動加圧による型枠への充填を行ったため、充填性の良し悪しにより空気量に差がでたと考えられる。このことから、同じスランプ0の配合でも充填性に違いがでるため超硬練りコンクリートの性状評価をする必要があった。
【0128】
密度についても、モルタル試験のような顕著な減少傾向は確認されなかった。減少の割合は一番大きいもので無混入のものより3%ほど減少している。これは、モルタル試験よりも単位PS灰量が多くないために、それほど大きな減少が見られなかったと考えられる。
【0129】
ここで、超硬練りコンクリートのフレッシュ性状を評価するため締固め性試験を行った。この結果から超固練りコンクリートの充填率とそれに要する時間により、超固練りコンクリートの充填性を評価した。ここで、充填率が100%を超える配合があった。これは試験を行った際に振動加圧により水分がコンクリート表面に出て、型枠から抜けたためである。
【0130】
試験結果を図15〜図20に示す。単位セメント量ごとに6シリーズに分けて図に記した。いずれのシリーズにおいても単位PS灰量が増えるにつれて、充填に有する時間が長くなったため、充填性が悪くなったと考えられる。
【0131】
特にC0S50、C10S40、C40S30の3配合においては、100%充填しなかった。これらの配合はいずれも単位PS灰量300kg/m3以上であるため、このことからも成形性の限界が単位PS灰量300kg/m3であることが確認できた。
【0132】
この試験結果から、コンクリート製品を製造する際は、同一の振動加圧条件でコンクリートの成型を行うため、充填性が良いものでは単位水量を減らすことが可能である。
【0133】
(2) 圧縮強度
圧縮強度試験結果を表19に示す。表17より、空気量の変化にばらつきがあるため、モルタル試験同様に「空気量1%増加すると圧縮強度は5%減少する」とし、PS灰置換率0%のときの空気量を基準として補正を行った。
【0134】
表19で得られた圧縮強度のデータを強度別に見てみると、プレーンである置換量0での圧縮強度30.81N/mm2を下回るものは、成型が不可能であったもの(セメント置換率0%、細骨材置換率50%)を除けば、単位セメント量200kg/m3以下もしくは単位PS灰量100kg/m3以下であった。その他の配合では無混入コンクリートよりも強度が強くなった。
【0135】
これはPS灰のポゾラン反応によるものであり、極端にセメント量が少ない場合には水和反応の際に生成される水酸化カルシウムが少なく、ポゾラン反応が十分に起こらないために強度が低下したと考えられる。
【0136】
また、最も強度が出た配合はC0-S40であり、無混入コンクリートの2.4倍ほどの強度であった。この配合を中心に強度は下がっていく傾向にある。これにより、PS灰混入コンクリートにおいてはPS灰の添加量と、PS灰のポゾラン反応を起すために必要なセメント量の関係がコンクリートの圧縮強度増進に効果があると考えられる。
【0137】
この結果と成型が可能と考えられる単位PS灰量300kg/m3程度を踏まえると、単位セメント量200kg/m3以上でかつ単位PS灰量100kg/m3以上300kg/m3以下の範囲でPS灰をコンクリートに混入させた場合においては、プレーンコンクリート以上の圧縮強度をもつコンクリートができることが分かった。特に、単位セメント量300±20kg/m3でかつ単位PS灰量200±40の配合においてはプレーンコンクリートの1.5倍以上の圧縮強度を持つコンクリートができることが確認された。
【0138】
【表19】
【0139】
2−7.まとめ
(a) PS灰用いたコンクリートにおいて振動加圧による成型可能であったのは単位PS灰量300kg/m3であった。
(b) モルタル試験同様にPS灰添加量の増大に伴いコンクリートの流動性は低下することが確認された。特に単位PS灰量100kg/m3を超える配合においては、スランプゼロの超固練りコンクリートとなった。
(c) 空気量は、振動加圧による充填性が確保される配合においては、無混入のものと同等の値を示す。
(d) 密度は、1%〜3%程度の減少が確認された。
(e) PS灰量が増えるにしたがって、充填に要する時間が長くなることが確認された。特に単位PS灰量が300kg/m3を超えると充填性は著しく悪くなる。
(f) 圧縮強度は、単位セメント量200kg/m3以下もしくは単位PS灰量100kg/m3以下の配合においては無混入のものより強度が低下する。
(g) 単位セメント量200kg/m3以上でかつ単位PS灰量100kg/m3以上300kg/m3以下の範囲でPS灰をコンクリートに混入させた場合においては、プレーンコンクリート以上の圧縮強度をもつコンクリートができる。
(h) 単位セメント量300±20kg/m3でかつ単位PS灰量200±40kg/m3の配合においてはプレーンコンクリートの1.5倍以上の圧縮強度増加が確認された。
【0140】
以上の結果から、PS灰をセメントおよび細骨材に置換することにより、圧縮強度の強い超硬練りコンクリートを作ることができることが確認できた。また、コンクリート二次製品に適用することを考えると、強度増加は維持できればよいため、さらにセメントを減らし、PS灰量を増やすことができると考えられる。
【0141】
これにより、PS灰大量使用およびセメント量の削減によるコスト低下が望め、さらに密度も軽くなるため、運送コストも減らすことが可能になる。
【0142】
3.PS灰を用いたコンクリート二次製品への適用
3−1.概要
「2.PS灰を混和したコンクリートの諸性状」の結果から、PS灰をセメントおよび細骨材に置換することにより、圧縮強度の強い超硬練りコンクリートを作ることができた。また、コンクリート二次製品に適用することを考えると、強度増加は維持できれば良いため、さらにセメントを減らし、PS灰量を増やすことができる。
【0143】
これにより、PS灰大量使用およびセメント量の削減によるコスト低下が望め、さらに密度も軽くなるため、運送コストも減らすことが可能になると考えられた。
【0144】
そこで、中空ブロックを対象としてPS灰を最も多く使い、かつセメント量をなるべく減らすことのできる配合を選定し、製品工場の実際の製造方法を用いた実験を行った。
【0145】
また、吸水性に優れているというPS灰の特徴を生かして、保水性に優れたインターロッキングブロック(以下、ILBという)の開発も行った。保水ILBは雨水を吸い込むことで、雨天時の転倒の防止効果だけでなく、溜め込んだ水分を晴天時に放出することができるため、ヒートアイランド現象の緩和にもつながる非常に優れたILBである。
【0146】
3−2.中空ブロックへの適用
超硬練りコンクリートの即脱製品への適用として中空ブロックをターゲットに実際の工場の製品ラインを用いた実験を行い、その性能の評価をした。この際中空ブロックにおいて強度は一般のコンクリートより小さくて良いため、前述の単位セメント量200kg/m3以上でかつ単位PS灰量100kg/m3以上300kg/m3以下の範囲よりもさらにセメント量を減らしたものについて、実験室で配合を選定し、実際の工場において実験を行った。
【0147】
3−2−1.使用材料
中空ブロックにおける使用材料を表20に示す。
【0148】
【表20】
【0149】
3−2−2.配合選定
(1) 使用配合
工場で製品に適用する配合の選定を以下で行った。配合選定は、コンクリート中空ブロックの圧縮強度の規格値8N/mm2以上となり、かつPS灰を大量に使用できるような配合を選定した。そのため、成型可能である単位PS灰量300kg/m3としてセメント量200kg/m3から段階的に減らす配合で実験を行い圧縮強度の評価を行った。
【0150】
表21に配合表を示す。
【0151】
【表21】
【0152】
ここで養生条件は、蒸気養生とし前置き時間2h(20℃、RH60%)、温度上昇速度20℃/h、最高温度60℃、最高温度保持時間24hとした。また、蒸気養生後は気中養生とした。
【0153】
(2) 練り混ぜ方法
ミキサーはホバート型ミキサーを用いた。まずセメントと砂を入れて30秒混ぜた後、水と混和剤を入れて3分間練り混ぜた。
【0154】
(3) 圧縮強度試験結果
圧縮強度試験は「JIS-A-1108-1999 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。材齢は蒸気養生1日と気中養生14日とした。
【0155】
表22に圧縮強度試験結果を示す。
【0156】
【表22】
【0157】
(4) 試験結果および考察
図21より、セメント量を減らしていくと強度が減少して行った。しかし14日強度では、全ての配合において、コンクリート中空ブロックの規格である8N/mm2を満たしている。
【0158】
また、セメント量150kg/m3、125kg/m3においては、基本配合と同等の圧縮強度が得られた。密度においても基本配合と比べて、1割程度の減少が確認された。これにより、目的に合う配合の選定ができた。
【0159】
3−2−3.製品工場実験
(1) 使用配合
表23に製品工場で実験を行った配合を示す。配合選定の結果から、十分に規定の圧縮強度を満たした単位セメント量200kg/m3、150kg/m3および規定値の範囲ぎりぎりである単位セメント量100kg/m3の3配合に、(4)、(5)の2配合を加え、合計5配合について、実験を行った。
【0160】
【表23】
【0161】
*工場では、フレッシュ性状の補正を水量で行っている。表中の水量の()内に示した値は、実験時の水量である。
【0162】
(2) 養生条件
蒸気養生とし、前置き時間1h、温度上昇速度10℃/h、最高温度75℃±5℃、最高温度保持時間4h、自然温度降下とした。
【0163】
(3) 試験項目および目標値
圧縮強度試験は「JIS-A-1108-1999 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。試験は気中養生材齢6日で行った。圧縮強度は中空ブロックの規格値である8N/mm2を目標とした。
【0164】
(4) 試験結果および考察
表24に圧縮強度試験結果を示す。
【0165】
【表24】
【0166】
製品のラインに流す際に、単位水量を変化させることでフレッシュ性状の調整を行うが、(4)、(5)の配合に比べて(1)〜(3)の配合では、ラインに流すのに必要な水量が多くなった。これは、PS灰量が多いため、水量が多くなったと考えられる。
【0167】
しかし、(3)の配合以外では、圧縮強度の規格値である8N/mm2を超えた。この結果から、今回行った配合のうち(1)、(2)および(4)、(5)については、十分実製品として適用できると考えられる。
【0168】
特に、実験室で配合選定を行った配合についての適用性が確認されたため、超硬練りコンクリートにおいて、PS灰の大量使用が可能であることが分かった。しかし、(2)、(3) の配合では、即脱後養生室までの運搬時にクラックが生じるものがあった。特に(3)の配合ではクラックが多く確認された。
【0169】
3−3.インターロッキングブロックへの適用
3−3−1.使用材料
表25に使用材料を示す。
【0170】
【表25】
【0171】
*パーライトくず:パーライトは、真珠岩等水分を含むガラス質流紋岩類を粉砕後、高温で焼成発泡させたものである。非常に軽量で、膨張させると多孔質構造、高い吸水性、断熱性などの特性を発揮する。今回使用しているパーライトくずとは、パーライトを生成する際に、発泡せずにパーライトとして使用できないものである。しかしながら、パーライトくずについても高い吸水性が確認されているため、保水性能を付加するために用いた。
【0172】
*下水汚泥溶融スラグ:汚泥焼却灰を溶融スラグ化したもので、水中で急冷された水砕スラグは細砂状であるため、砂の代替品として埋め戻し材やコンクリート用細骨材等に使用することが期待される。細骨材としての使用に関しては十分可能であることが知られているため、細骨材として砂の変わりに使用した。
【0173】
*再生骨材:粗骨材として使用した再生骨材は、実験を行った製品工場から出たコンクリート塊を破砕してできたものである。
【0174】
3−3−2.配合条件および配合選定
実製品は、2tの加圧条件下で成型を行うため、実験室で製品の再現をするのは困難である。そこで、ILBに必要とされる強度を満たす配合の選定を行った。配合の選定は、 パーライトくずの置換量の選定→パーライトくずPS灰の割合の選定→工場実験配合の決定という フローで行った。
【0175】
(a) 配合選定A
(1)使用配合
表26に配合表を示す。ここで行うのは、パーライトくずの使用量を決定するための選定である。吸水性能をILBに付加するためには、なるべく多くのパーライトくずを入れる必要がある。
【0176】
そこで、パーライトくずと粗骨材の割合(PA/(PA+G))とセメント量をさまざまに変えて実験を行い、使用量の検討を行い、保水性ブロックの曲げ強度の品質規格である3N/mm2以上(圧縮強度17N/mm2以上)を満たす配合を選定した。ただし、試験室ではILBの成型が不可能であったため、圧縮強度での検討を行った。
【0177】
【表26】
【0178】
(2) 養生条件
養生は蒸気養生とし、前置き時間1h、温度上昇速度10℃/h、最高温度75℃±5℃、最高温度保持時間4h、自然温度降下とした。
【0179】
(3) 練り混ぜ方法
ミキサーはホバート型ミキサーを用いた。まず、セメントと砂を入れて30秒混ぜた後、水と混和剤を入れて3分間練り混ぜた。
【0180】
(4) 試験結果
圧縮強度試験は「JIS-A-1108-1999 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。表27に圧縮強度試験結果を示す。
【0181】
【表27】
【0182】
圧縮強度試験の結果、規格値を満足する配合はC450−s/a60のみであった。また、粉体量が増えるにしたがって、強度は落ちてしまっている。このため所定の強度を得るためには粉体量に限界があると考えられる。PA/(PA+G)は60%程度にしなくてはならないことが確認された。
【0183】
(b) 配合選定B
(1)使用配合
所定の強度を得るためには粉体量(セメント、パーライトくず、PS灰の合計量)に限界があることが確認されたため、粉体量を一定にして、それと同じ質量の粗骨材を入れた配合での実験を行った。表28に配合表を示す。
【0184】
【表28】
【0185】
(2) 養生条件
養生は蒸気養生とし、前置き時間1h、温度上昇速度10℃/h、最高温度75℃±5℃、最高温度保持時間4h、自然温度降下とした。
【0186】
(3) 練り混ぜ方法
ミキサーはホバート型ミキサーを用いた。まずセメントと砂を入れて30秒混ぜた後、水と混和剤を入れて3分間練り混ぜた。
【0187】
(4) 試験結果
圧縮強度試験は「JIS-A-1108-1999 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。圧縮強度試験結果を表29に示す。
【0188】
【表29】
【0189】
粉体量を一定にすることにより、配合選定Aよりも強度は増加した。また、そこにPS灰を加えることにより初期強度が強くなった。また、全ての配合において圧縮強度の規格値を満足した。このため工場実験において行う配合は、コスト面を考えて最もセメント量の少ない配合とすることにした。
【0190】
3−3−3.製品工場実験
3−3−2の結果から選定された配合について、実製品の製造ラインを用いて実験を行い、保水・吸水性能についての試験を行った。保水・吸水性能の確認実験のため、養生は実製品とは違い気中養生とした。そのため、曲げ強度は参考値とする。
【0191】
(1) 使用配合
配合表を表30に示す。配合は、実験室で選定した2種類と、配合(2)の粗骨材の重量の半分を川砂および下水汚泥溶融スラグに置換したものの計4配合とした。また、比較用として工場で作られたパーライトくずのみを使った保水性ILBの試作品の配合を用いた。
【0192】
【表30】
【0193】
*工場では、フレッシュ性状の補正を水量で行っている。表中の水量の()内に示した値は、実験時の水量である。
【0194】
(2) 試験項目および目標値
曲げ試験はJIS A1106に準拠して行った。
保水性試験は、保水量を求めた。保水量は、湿潤質量と絶乾質量および供試体の体積を求めて、以下の式で算出した。
【0195】
【数2】
【0196】
ここに、
湿潤質量:15〜25℃の清水中で24時間吸水させた後、供試体を取り出して、図25のような密閉式のプラスチック容器に入れて、15〜30℃の室温で30分間水を切り、絞った濡れウエスで目に見える水分をぬぐった後、直ちに計測した時の質量。
【0197】
絶乾質量:温度105±5℃の乾燥機内において一定質量となるまで乾燥した後、常温まで冷却したときの質量。
【0198】
吸水性試験は、以下のような手順で30分間の水の吸い上げ高さを求めた。
(a) ブロックを温度105±5℃の乾燥機内で一定質量になるまで乾燥した後、常温まで冷却する。
(b) ブロックを図26に示す吸水性試験装置に設置する。設置後の推移はブロック底面から5mmの高さとなるようにし、水は15〜25℃の清水とする。供試体設置台の上面には、金網などのブロック底面に水が回るような材料を用いるか、吸水性のスポンジを挟む。
(c) 30分経過後にブロックを取り出し、水が滴り落ちない程度まで水を切り、絞ったウエスで目に見える水滴をぬぐう。この時の質量を30分後の吸い上げ質量とする。
(d) ブロックを湿潤状態とし、湿潤質量を計る。
(e) 吸い上げ高さは、以下の計算式より求める。
【0199】
【数3】
【0200】
各項目の製品の規格値を表31に示す。
【0201】
【表31】
【0202】
*曲げ強度の()内の数字は圧縮強度を示している。曲げ強度試験ができない場合に適用する。
【0203】
(3) 試験結果および考察
試験結果を表32に示す。
【0204】
【表32】
【0205】
配合選定試験の結果から、強度については十分規定値を満たしていると判断し、気中養生14日で曲げ試験を行ったため、曲げ強度は参考値とする(実際の製品は蒸気養生を行うため、いずれの配合もより曲げ強度が出ると考えられるため)。
【0206】
保水・吸水性能を見ると、保水性能は規格値をすべての配合で満たしていた。特に(3)の配合においては規定の倍ほどの吸水量を示した。(2)、(3)、(4)ではパーライトくず、PS灰量がほぼ同じであるが、(3)は細骨材を用いたことで充填性が増し、空隙が減ったため保水量が増したと考えられる。吸い上げ高さについては、(3)の配合のみ規格値を満たした。しかしながら(4)の配合については非常に近い値を示している。
【0207】
ここで、パーライトくずを用いた試作品と、今回実験を行った中で総合的に最も性能の良かった(4)の配合を比較すると、曲げ強度、保水量はともに比較用の配合を上回る結果となった。30分後の吸い上げ高さでは、比較用の方が吸水能力が高い結果となった。
【0208】
また、供試体が絶乾状態になるまでの時間を比較すると比較用の配合では1日ほどで絶乾状態になったのに対し、今回の実験の供試体は5日間ほど経時変化をしていた。このため、PS灰を用いることで、水をキープする時間が長くなることが分かった。これらの結果から、PS灰を保水性に適用することが可能であることが確認された。
【0209】
3−4.まとめ
(1) 中空ブロックへの適用
「2.PS灰を混和したコンクリートの諸性状」で得られた結果をもとに中空ブロックにPS灰を適用した結果、単位セメント量を40〜90kg/m3程度減少し、かつ単位PS灰量300kg/m3においての適用が可能であることが確認された。
【0210】
運搬の際にクラックを生じるものも見受けられたが、強度が十分に出ているものについては、クラックは見られなかった。したがって、今回圧縮強度の規格値を満たした配合については、十分製品とし適用できる。
【0211】
(2) 保水性ILBへの適用
ILBにPS灰およびパーライトくずを用いることで以下の性能が確認された。
(a) PS灰およびパーライトくずをILBに適用することで、保水・吸水性能を付加できることが確認された。
(b) PS灰を用いることにより規格値よりも1.3〜2倍ほどの保水量を得られる。
(c) PS灰を用いることでパーライトくずのみを用いる場合よりも、長い間水をキープする。
以上よりPS灰の保水性ILBへの適用することが可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】圧縮強度試験結果(蒸気2日)のグラフである。
【図2】圧縮強度試験結果(気中14日)のグラフである。
【図3】C/Wと圧縮強度の関係(気中14日)のグラフである。
【図4】C/Wと圧縮強度の関係(気中14日)のグラフである。
【図5】PS置換率と強度寄与率の関係(蒸気 2 日)のグラフである。
【図6】PS置換率と強度寄与率の関係(気中14日)のグラフである。
【図7】圧縮強度試験結果(細骨材置換)のグラフである。
【図8】圧縮強度比(細骨材置換)のグラフである。
【図9】圧縮強度試験結果(蒸気2日)のグラフである。
【図10】圧縮強度試験結果(気中14日)のグラフである。
【図11】圧縮強度比(蒸気2日)のグラフである。
【図12】圧縮強度比(気中14日)のグラフである。
【図13】単位PS灰量と圧縮強度の関係(蒸気2日)のグラフである。
【図14】単位PS灰量と圧縮強度の関係(気中14日)のグラフである。
【図15】充填性試験結果(C0シリーズ)のグラフである。
【図16】充填性試験結果(C10シリーズ)のグラフである。
【図17】充填性試験結果(C20シリーズ)のグラフである。
【図18】充填性試験結果(C30シリーズ)のグラフである。
【図19】充填性試験結果(C40シリーズ)のグラフである。
【図20】充填性試験結果(C50シリーズ)のグラフである。
【図21】単位PS灰量と圧縮強度の関係のグラフである。
【図22】圧縮試験結果のグラフ(棒グラフ)である。
【図23】圧縮強度試験結果(配合選定A)のグラフ(棒グラフ)である。
【図24】圧縮強度試験結果(配合選定B)のグラフ(棒グラフ)である。
【図25】湿潤状態にする装置の概要図である。
【図26】吸水性試験装置の概要図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装材などとして用いられるとしての保水性に優れた保水性ブロックおよびその製造に適したペーパースラッジ灰を用いた低スランプ硬練り水硬性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペーパースラッジとは、製紙原料のうち紙にできなかった微細繊維や、タルク、カオリンなどの填料、および古紙混入異物などからなる製紙汚泥である。このペーパースラッジを焼却した灰がペーパースラッジ灰(以下、PS灰という)である。一般的にPS灰は、製紙会社から最も多く排出される廃棄物であり、PS灰の再資源化は大変重要である。
【0003】
これまでのPS灰の再資源化の例としては、土壌改良材、セメント原料、製鉄保温材などへの利用が知られている。そのようなPS灰の再資源化に関する従来技術としては、特許文献1、2記載の発明などがある。
【0004】
産業廃棄物としてのPS灰の大量使用の目的で、PS灰をモルタルあるいはコンクリートに大量に混入することを考えた場合、PS灰は吸水率が高いため流動性の低下が問題となる。そこで、本願の発明者らは、低スランプ硬練り水硬性組成物、特にいわゆる即脱可能なスランプゼロの超硬練りコンクリートへの適用の可能性を検討した。
【0005】
その場合のコンクリート製品としての適用対象としては、例えば中空ブロックやPS灰の吸水性を活かした保水性ブロックへの適用が考えられる。
【0006】
保水性ブロックは、道路舗装材などとして用いられており、透水性ブロックのように雨天時、雨水を吸い込むため、水溜りができず快適な歩行が可能であるだけでなく、水を保持する機能があるため、晴天時に水分を放出することにより、路面の温度を下げ、これにより、ヒートアイランド現象を緩和し、熱帯夜を低減するという効果がある。
【0007】
そのような保水性ブロックに関する従来技術としては、特許文献3、4、5記載の発明などがある。
【0008】
【特許文献1】特許2742898号公報
【特許文献2】特開2005−344031号公報
【特許文献3】特開2003−146772号公報
【特許文献4】特開2003−268706号公報
【特許文献5】特開2005−035801号公報
【非特許文献1】安田浩二、「下水汚泥溶融スラグを細骨材として用いたコンクリートの諸性状改良に関する研究」、宇都宮大学卒業論文、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように廃棄物としてのPS灰の再資源化の研究がなされているが、廃棄物を減らす目的からは、従来以上に大量使用が可能であることが望ましい。一方、モルタルやコンクリートへの大量混入は、製品としての質や、強度の低下の問題があり、用途も限定される。
【0010】
また、適用対象の一つと考えられる保水性ブロックについては、必要な強度を確保した上で、吸水性に優れ、かつ長期に渡り保水機能が維持されることが要求される。
【0011】
本発明は上述のような背景のもとになされたものであり、吸水性および長期の保水機能を有する保水性ブロックおよびPS灰の大量使用が可能な低スランプ硬練り水硬性組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の請求項1に係る発明は、水硬性組成物からなる多孔質の保水性ブロックにおいて、絶乾状態のブロック全体を水中に浸して24時間吸水させた後の単位体積当たりの保水量が0.15g/cm3以上、絶乾状態のブロックの下端部を水に浸し30分経過した後のブロックの質量M30と十分に湿潤状態としたときのブロックの質量Mcwの比の百分率(M30/Mcw)×100%としての吸上げ高さが70%以上、曲げ強度が3N/mm2以上であり、十分に湿潤状態とした状態から100〜110℃で加熱して絶乾状態となるまでの湿潤−絶乾時間が48時間以上であることを特徴とするものである。
【0013】
保水量が0.15g/cm3以上、吸上げ高さが70%以上、曲げ強度が3N/mm2以上というのは、保水性舗装ブロック品質規格検討委員会による平成17年7月の「保水性舗装用コンクリートブロック品質規格」にその試験方法とともに規定された数値であり、製品として出荷するのに必要な要件となる。
【0014】
従来の保水性ブロックの湿潤−絶乾時間は、せいぜい24時間程度であるのに対し、請求項1は従来の保水性ブロックの約2倍以上となる48時間以上を限定要件としたものである。
【0015】
後述する実験結果においては、保水量が0.15g/cm3以上、吸上げ高さが70%以上、曲げ強度が3N/mm2以上という規格を満たすものおよび規格に近い性能を示すものについて、湿潤−絶乾時間として120時間が実証されており、実際の舗装に用いた場合でも夏の炎天下において従来の保水性ブロックと比較してはるかに長期の保水性維持効果が期待できる。湿潤−絶乾時間の具体的な測定手法の一例は発明を実施するための最良の形態の項で述べることとする。
【0016】
なお、保水性ブロックにおいてPS灰を用いること、あるいはPS灰を用いる場合のその量については限定されない。
【0017】
請求項2は、請求項1に係る保水性ブロックにおいて、前記水硬性組成物は、セメント、パーライトくずおよびペーパースラッジ灰が配合された超硬練りの即脱可能なコンクリートであり、前記ペーパースラッジ灰について単位ペーパースラッジ灰量が100〜300kg/m3であることを特徴とするものである。
【0018】
後述する実験結果において、単位PS灰量が100〜300kg/m3を配合した超硬練り即脱可能なコンクリートが請求項1の要件を満たすことを確認しているが、廃棄物としてのPS灰の大量混入により、廃棄物の処理を兼ねた効率的な再資源化が図れる。また、高い吸水性を有するパーライトくずの配合によっても保水性能の向上が期待できる。
【0019】
請求項3は、請求項2に係る保水性ブロックにおいて、前記パーライトくずについて単位パーライトくず量が300kg/m3以上であることを特徴とするものである。
【0020】
パーライトくず自体が高い吸水性を有しており、後述する実験結果からも単位パーライトくず量を300kg/m3以上とすることで、PS灰の吸水効果と相俟って、従来の保水性ブロックに比べ非常に優れた保水性能が期待できる。
【0021】
請求項4に係る低スランプ硬練り水硬性組成物は、単位セメント量が150kg/m3以上、かつ単位PS灰量が100〜300kg/m3の範囲でPS灰を配合したことを特徴とするものである。
【0022】
請求項4は、具体的な用途が特定されない主として超硬練り、いわゆるスランプ0のの即脱可能なコンクリートとしての水硬性組成物を限定したものであり、大量のPS灰を再生資源として有効利用しつつ、同水準の配合においてPS灰を配合しないものと同等以上の圧縮強度のコンクリートを得ることができる。
【0023】
単位セメント量が150kg/m3より小さくなると圧縮強度低下が大きくなる恐れがある。単位PS灰量が100kg/m3以上とすることで、超硬練りの即脱可能なコンクリートとして十分利用可能となるが、単位PS灰量が300kg/m3を越えると型枠への充填性が損なわれるなど成型が困難となる恐れがある。
【0024】
請求項5は、具体的な用途が特定されない主として超硬練りの即脱可能なコンクリートとしての水硬性組成物として、さらに好ましい範囲を限定したものであり、単位セメント量が280〜320kg/m3、かつ単位PS灰量が160〜240kg/m3の範囲でPS灰を配合したことを特徴とするものである。
【0025】
後述する実験において、上記の範囲であれば同水準の配合においてPS灰を配合しないものに対し、1.5倍以上の圧縮強度を持つコンクリートができることが確認された。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、吸水性および長期の保水機能を有する優れた保水性ブロックが得られ、また用途の特定されない低スランプ硬練り水硬性組成物として、廃棄物であるPS灰を大量に有効利用しつつ、強度的に優れた即脱可能なコンクリートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の最良の実施形態を求めるため、実験を行ったので、以下にその詳細を既述する。
【0028】
1.PS灰を混和したモルタルの諸性状
1−1.実験の概要
既往の研究では、PS灰をコンクリ−ト用混和材として使用する際、PS灰の主成分であるシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)によるポゾラン反応によって強度増加が期待できる。しかしながら、PS灰の大量使用を目的とした配合選定は行われていないのが現状である。そこで、まずモルタルにおいてPS灰を混和した場合の強度特性を以下のように段階的に把握することとした。
【0029】
(1) PS灰をセメントに置換した際のPS灰強度寄与の把握
(2) 単位セメント量一定でPS灰を細骨材に置換した際の強度特性の把握
(3) PS灰をセメント、細骨材両方に置換した際の強度特性の把握
これらの実験を行うことにより、モルタルにおいてPS灰の大量使用を可能とする置換方法および置換量の選定を行う。また、(1)の実験においては、養生条件の違いによる強度の変化を調べるために、養生条件を変えた場合についても実験を行った。
【0030】
1−2.使用材料
以下の実験における使用材料を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
実験で使用したPS 灰の化学成分を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
1−3.PS灰セメント置換実験
1−3−1.配合条件および示方配合
配合条件は、水セメント比W/C=30%、セメントと細骨材の体積比C:S=1:1とし、PS灰をセメントに対して、20、40、60、80%内割で体積置換した4配合、および比較用としてPS灰無混入のものを加えた計5配合について試験を行った。比較用配合において0打フロー110±10mm、15打フロー130±20mm、空気量2.0±1%となるように混和剤により調整した。
【0035】
表3に配合表を示す。また、強度寄与率算出のため、各配合におけるW/CおよびW/Bと同値のW/CとしたPS無混入プレーンモルタルを作成した。
【0036】
【表3】
【0037】
ここで養生条件は、蒸気養生とし前置き時間2h(20℃、RH60%)、温度上昇速度20℃/h、最高温度保持時間24hとする。最高温度は60℃、80℃、100℃の3水準による強度の変化を確認した。また、蒸気養生後は気中養生とした。
【0038】
1−3−2.練り混ぜ方法
ミキサーはホバ−ト型ミキサーを用いた。まずセメントと砂を入れて30秒混ぜた後、水と混和剤を入れて3分間練り混ぜた。
【0039】
1−3−3.試験項目および試験方法
(1) モルタルフロー試験
スランプフロー試験は「JIS R 5201−1997(2002 確認)セメントの物理試験方法」に準じて行った。
【0040】
練り混ぜたモルタルを乾燥した布でよくぬぐったフローテ−ブル上の中央の位置に正しく置いたフローコ−ンに2層に詰める。各層は、突き棒の先端がその層の約1/2の深さまで入るよう、全面にわたって各々15回突き、最後に不足分を補い表面をならす。直ちにフローコ−ンを正しく上の方に取り去り、モルタルが広がった後の径を最大と認める方向と、これに直角な方向とで測定し、その平均値をスランプフロー値とした。
【0041】
(2) 空気量試験
空気量試験は「JIS A 1116−1998 フレッシュコンクリ−トの単位質量試験方法および空気量の質量による試験方法(質量法)」に準じて行った。
【0042】
(3) 圧縮強度試験
圧縮強度試験は「JIS−A−1108−1999 コンクリ−トの圧縮強度試験方法」に準じて行った。蒸気養生については脱型1日強度、気中養生については材齢14日について圧縮強度試を行った。また、供試体寸法より見かけ密度の算出を行った。
【0043】
1−3−4.試験結果および考察
(1) フレッシュ試験結果
フレッシュ試験結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
PS灰量の増加に伴い、所定のスランプフローを得るために必要な高性能減水剤添加量は増加した。特に、PS灰置換率60%以上では、高性能減水剤添加量を増加させてもその効果が確認されず、流動性を得ることができなかった。
【0046】
PS灰置換率60%のモルタルではテーブルバイブレーターを用いて型枠へ充填する必要があり、PS灰置換率80%のモルタルにいたっては、振動加圧を行わなければ型枠への充填が困難であった。これは吸水率の高いPS灰が多く入ることで余剰水がなくなったために流動性が失われたことが原因と考えられる。
【0047】
また、PS置換率60%以上においては消泡剤の効果が確認されず、空気量が増大した。これは、型枠への充填が困難であったことより、連続気泡が多く存在していると考えられる。
【0048】
ここで硬化したコンクリ−トの見かけ密度を算出した。単位PS灰量が増えるにつれて密度は低下した。PS灰置換率80%ではプレーンモルタルより2割ほど減少した。これは、PS灰の密度がセメントの密度の7割ほどであるためである。
【0049】
(2) 圧縮強度試験結果
圧縮強度試験結果を表5に示す。表4より、空気量の変化にばらつきがあるため、「空気量1%増加すると、圧縮強度は5%減少する」とし、それぞれの養生温度におけるPS灰置換率0%のときの空気量を基準として補正を行った。補正後のPS灰の置換率と圧縮強度の関係を図1、図2に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
図1、図2より、養生温度に関わらずPS置換率20%までは無置換のプレーンモルタルと同等の圧縮強度を得られたが、PS置換率20%以降においては、PS置換率の増加に伴い直線的に圧縮強度が低下することが確認された。これは初期強度、14日強度で同じような傾向を示した。強度低下の原因は、PS灰が十分に結合材として反応しなかったと考えられる。そこでPS灰の強度寄与率を算出する。
【0052】
強度寄与率は以下の式(1)で定義する。
【0053】
【数1】
【0054】
ここで、
PW/C:各配合におけるW/Cと同値のW/CとしたPS灰無混入プレーンモルタル
PW/B:各配合におけるW/Bと同値のW/CとしたPS灰無混入プレーンモルタル
強度寄与率算出のため、PW/C 、PW/Bにおける圧縮試験結果を表6に、C/Wと圧縮強度の関係を図3、図4に示す。
【0055】
【表6】
【0056】
図4においてC/Wと圧縮強度の関係を回帰し、各養生温度における強度算定式を求めることによりPW/C−40、PW/C−60、PW/C−80 の圧縮強度を予測し、強度寄与率を算出した。算出結果を表 3−7 に示す。
【0057】
【表7】
【0058】
図5、図6より、強度寄与率は養生温度に関わらず、PS置換率の増加に伴いほぼ直線的に低下する傾向を示した。PS置換率20%〜40%においては、結合材として約70%以上機能しているが、PS置換60%以上では、結合材として20%〜65%しか機能していないことが確認された。
【0059】
このことから、PS灰をセメンに置換する際には40%程度までが強度的に限界であると考えられる。したがって、十分な強度を得るためにはポゾラン反応を起すのに必要な水酸化カルシウムを得るために、ある程度の単位セメント量が必要であると考えられる。
そこで、次に単位セメント量を変えずにPS灰を細骨材に置換した実験を行うこととした。
【0060】
1−4.PS灰細骨材置換実験
1−4−1.配合条件および示方配合
配合条件は、セメント置換と同様とし、PS灰を細骨材(川砂)に対して、10、20、30%体積置換した3配合および比較用としてPS灰無混入のものを加えた計4配合について試験を行った。PS灰無混入の配合において0打フロー110±10mm、15打フロー130±20mm、空気量2.0±1.0%となるように混和剤により調整した。表8に配合表を示す。
【0061】
【表8】
【0062】
ここで養生条件は、蒸気養生とし前置き時間2h(20℃、RH60%)、温度上昇速度20℃/h、最高温度60℃、最高温度保持時間24hとした。また、蒸気養生後は気中養生とした。
【0063】
1−4−2.練り混ぜ方法
1−3−2と同様。
【0064】
1−4−3.試験項目および試験方法
1−3−3と同様。
【0065】
1−4−4.試験結果および考察
(1) フレッシュ試験結果
フレッシュ試験結果を表9に示す。
【0066】
【表9】
【0067】
セメント置換と同様にPS灰置換量が増えるにつれて所定のスランプフローを得るために必要な高性能減水剤の量が増えて行った。また、PS灰の単位量と高性能減水剤の量の関係は、セメント置換と同程度となっている。これにより、PS灰の単位量によって高性能減水剤の量を決めることができることがわかった。
【0068】
また、今回の実験ではAE剤を添加しなかったためPS灰の量の増加と共に空気量は著しく増加した。PS灰の一番多いPS−S30 においてはプレーンモルタルの空気量の約3倍になった。
【0069】
密度においてもセメント置換同様に減少傾向が確認された。一番PS灰が多い配合において、プレーンモルタルより15%ほどの減少が見られた。
【0070】
(2) 圧縮強度試験結果
空気量が一定でないためにセメント置換と同様に補正を行った。圧縮強度試験結果、および圧縮強度比を表10に示す。
【0071】
【表10】
【0072】
図7より、PS灰の置換量と共に圧縮強度は直線的に増加することが確認された。全ての置換率で初期強度において10%以上、14日強度において30%〜40%の強度の増加が見られた。この結果から14日での強度の伸びがプレーンモルタルよりも大きいことが確認された。これは、PS灰の主成分であるシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)とセメントの水和によって生じた水酸化カルシウムとのポゾラン反応によるものである。
【0073】
また、セメント置換ではPS灰量の増加に伴い、十分な水和が起こらなかったために細骨材に置換したもののような強度の増加が見られなかったと考えられる。
【0074】
これらの結果よりセメント、細骨材の両方にPS灰を置換することによってPS灰を大量に使用しながら、プレーンのモルタルと同等の強度を得られる可能性を見出せた。そこでセメント、細骨材の両方に置換したモルタルの実験を次のシリ−ズで行うこととした。
【0075】
1−5.PS灰セメント細骨材置換実験
1−5−1.配合条件および示方配合
配合条件は、セメント置換と同様とし、PS灰をセメントに対して、30、40、50%内割で体積置換した3水準およびPS灰を細骨材(川砂)に対して、0、10、20、30、40%内割体積置換した5水準の計15配合について試験を行った。表11に配合表を示す。
【0076】
また、養生条件は細骨材置換と同様とする。
【0077】
【表11】
【0078】
1−5−2.練り混ぜ方法
1−3−2と同様。
【0079】
1−5−3.試験項目および試験方法
1−3−3と同様。
【0080】
1−5−4.試験結果および考察
(1) フレッシュ試験結果
フレッシュ試験結果を表12に示す。
【0081】
【表12】
【0082】
フレッシュ性状としては、前の二つの実験と同様に所定のモルタルフローを得るために必要な高性能減水剤の量は置換量の増加と共に増えた。ここで高性能減水剤の添加率の上限を粉体量の5.0%として実験を行ったために5.0%添加して流動性を得られなかったC50−S40では実験を行わなかった。
【0083】
また、単位PS灰量が同じである配合においては同程度の高性能減水剤の添加率となっている。また、セメント置換と同様に単位PS灰量462g/L以上において振動締め固めによる型枠への充填が、617g/L以上において振動加圧による型枠への充填が必要となった。
【0084】
空気量についてもそれまでの実験同様にPS灰の量の増加とともに増えていった。特に、一番空気量が多いC40−S40の配合ではプレーンモルタルの約4倍の空気量となった。
【0085】
密度についてもそれまでの実験同様、単位PS灰量の増加と共に減少傾向が見られた。最も減少したもので1.94g/cm3でプレーンモルタルより10%ほどの減少が見られた。
【0086】
プレーンモルタルからの空気量の増加量、密度の減少量を表13に示す。
【0087】
【表13】
【0088】
(2) 圧縮強度試験結果
圧縮強度試験結果を表14に示す。
【0089】
【表14】
【0090】
PS灰置換率と圧縮強度の関係を図9、図10に、圧縮強度比との関係を図11、図12に、単位PS灰量と圧縮強度の関係を図13、図14に示した。 図9よりセメント置換量一定のもとで細骨材置換量を変化させていくと、初期の圧縮強度にピ−クがあることが分かった。
【0091】
また、いずれのピ−クも単位PS灰量462g/Lであり、いずれのピ−クもプレーンモルタルの圧縮強度に近い値を示している。これは、PS灰の置換量が増えるにつれて、流動性が低下することにより充填不良を起したためにピ−クが発生すると考えられる。また、特に最も単位PS灰が多く、単位セメント量の少ないC50−S30ではプレーンモルタルの30%ほどまで圧縮強度が低下している。
【0092】
14日強度ではピ−クが単位PS灰量385g/Lに変化した。これは、PS灰のポゾラン反応が初期強度でピ−クになったものより単位セメント量が多い配合でより行われたためと考えられる。また、ここで圧縮強度比をみると充填が不十分であったC50−S30を除いては、すべての配合で1.0に近い値を示しているかもしくは1.0を超えている。これは、ポゾラン反応による長期強度の伸びによるものである。
【0093】
1−6.まとめ
PS灰を混和したモルタルの諸性状を以下にまとめる。
【0094】
(a) セメント置換、細骨材置換のどちらの場合においてもPS灰添加量が増えるに従い、所定のスランプフローを得るのに必要な混和剤の量が増えた。特に単位PS灰量が462g/L以上になると振動締め固めでの型枠の充填が必要となる。
【0095】
(b) 単位PS灰量の増加に伴い、空気量は増大する傾向が確認された。また、単位PS灰量462g/L以上では消泡剤の効果が確認されない。
【0096】
(c) 単位PS灰量の増加に伴いモルタルの密度は低下する傾向が確認された。
【0097】
(d) セメント置換の場合において、置換量が20%以下だとプレ−ンモルタルと同等の強度が確認された。これより大きい場合において、強度は直線的に減少する。
【0098】
(e) セメント置換におけるPS灰の圧縮強度寄与率は、20%〜40%においては、結合材として約70%以上機能しているが、PS置換率60%以上では、結合材として20%〜65%程度しか機能していないことが確認された。
【0099】
(f) 細骨材置換において、PS灰の置換量が増えると共に強度は直線的に増加する。14日強度では30%以上の増加が期待できる。
【0100】
(g) セメント、細骨材の両方に置換すると、圧縮強度にピ−クが確認された。これは、セメント、細骨材の置換率に関係なく単位PS灰量462g/Lであった。
【0101】
(h) セメント、細骨材の両方に置換すると、14日強度において最も強度が伸びるのは、セメント、細骨材の置換率に関係なく単位PS灰量365g/Lであった。
【0102】
(i) セメント、細骨材の両方に置換すると、14日強度において振動加圧を必要とする配合を除いて、プレーンモルタルの強度より大きくなる。
【0103】
2.PS灰を混和したコンクリートの諸性状
2−1.概要
「1.PS灰を混和したモルタルの諸性状」の結果から、PS灰をセメントおよび細骨材に置換することによって、モルタルの流動性が失われることが分かった。
【0104】
そこで、PS灰をスランプゼロの超硬練りコンクリートの即脱製品をターゲットに、PS灰をコンクリートに置換し、そのときの強度特性を求めることとした。
【0105】
そこで、まず、一般的な製品に用いられるコンクリートにPS灰を置換することによってできる超硬練りコンクリートの強度特性の把握を行った。また、超硬練りコンクリートのフレッシュ性状評価法として簡易的な締固め性試験を行った。
【0106】
2−2.使用材料
1−2と同様とする。
【0107】
2−3.配合条件および示方配合
基本配合を表15に示す。
【0108】
【表15】
【0109】
配合条件は、基本配合を元にPS灰をセメントに対して、0、10、20、30、40、50%内割で体積置換した6水準およびPS灰を細骨材(川砂)に対して、0、10、20、30、40、50%内割体積置換した6水準の計36配合について試験を行った。
【0110】
表16に配合表を示す。混和剤の添加率は振動加圧により型枠に充填できる程度とした。ただし、混和剤の添加量の上限を5%とし、5%添加して振動加圧できないものについては試験を行わないものとする。
【0111】
養生条件は、前置き時間2h、温度上昇速度20℃/h、最高温度60℃、最高温度保持時間24hとした。
【0112】
【表16】
【0113】
2−4.練り混ぜ方法
ミキサーは、10Lオムニミキサーを用いた。混練時間は材料投入後30秒間とした。また、練混ぜ時間は水投入後360秒間とした。
【0114】
2−5.試験項目および方法
(1) スランプ試験
「コンクリートのスランプ試験方法(JIS A 1101)」に準じて行った。
【0115】
(2) 空気量試験
空気量試験は、「JIS A 1116−1998フレッシュコンクリートの単位質量試験方法および空気量の質量による試験方法(質量法)」に準じて行った。
【0116】
(3) 簡易締固め性試験
超硬練りコンクリートの充填性の評価として、同一振動、加圧条件下での充填性と時間の関係を以下の様に測定することで評価することとした。
(a) テーブルバイブレーター上にΦ10×20cmの型枠を設置、固定する。
(b) 型枠に試料(1.8kg)をつめて、表面を整える。
(c) 型枠上面からの高さを4点測定する(初期値)。
(d) おもりを載せて振動を5、20、60、120、180、300秒かける。
(e) 各振動時間においておもりをはずし、4点で高さをはかる。
(f) 充填率を算出する。
【0117】
(4) 圧縮強度試験
「JIS-A-1108-1999 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。蒸気養生については脱型1日強度について圧縮強度試験を行った。また、供試体寸法より見かけ密度の算出を行った。
【0118】
2−6.試験結果および考察
(1) フレッシュ試験結果
フレッシュ試験結果を表18に示す。
【0119】
基本配合ではSL10±2cmを目標としたがPS灰を置換すると、コンクリートの流動性が失われスランプを確保することが困難であった。したがって、混和剤によりスランプの調整を行うことは困難であるため、テーブルバイブレーターにより振動を与えることによって成型が可能となるよう、混和剤の調整を行った。
【0120】
なお、混和剤添加量の上限値を5%としており、表17に成型の可、不可を示した。
【0121】
【表17】
【0122】
ここで、セメント置換率0%、細骨材置換率50%の配合において振動加圧成型を行った際に成型ができたものの、空気量が14%とかなり大きいものになってしまったため、これも成型の限界とし、この配合と同様の性状を示したものについては成型不可とした。成型可能であったのは単位PS灰量300kg/m3以下であった。
【0123】
【表18】
【0124】
フレッシュ試験の結果から、モルタル試験同様にPS灰添加量の増大に伴いコンクリートの流動性は低下することが確認された。特に単位PS灰量100kg/m3を超える配合においては、スランプゼロの超固練りコンクリートとなった。
【0125】
これは「1.PS灰を混和したモルタルの諸性状」で述べたのと同様に、吸水率の高いPS灰が多く入るためにフレッシュコンクリート中の余剰水が減ることによると考えられる。
【0126】
空気量については、モルタル試験の際に見られたような、顕著な増加傾向は確認されなかった。型枠の充填が可能な範囲において、1〜3%程の範囲に入っている。しかしながら、PS灰の混入量が250kg/m3を超える配合では空気量が他の配合に比べて大きくなる。
【0127】
これは振動加圧による型枠への充填を行ったため、充填性の良し悪しにより空気量に差がでたと考えられる。このことから、同じスランプ0の配合でも充填性に違いがでるため超硬練りコンクリートの性状評価をする必要があった。
【0128】
密度についても、モルタル試験のような顕著な減少傾向は確認されなかった。減少の割合は一番大きいもので無混入のものより3%ほど減少している。これは、モルタル試験よりも単位PS灰量が多くないために、それほど大きな減少が見られなかったと考えられる。
【0129】
ここで、超硬練りコンクリートのフレッシュ性状を評価するため締固め性試験を行った。この結果から超固練りコンクリートの充填率とそれに要する時間により、超固練りコンクリートの充填性を評価した。ここで、充填率が100%を超える配合があった。これは試験を行った際に振動加圧により水分がコンクリート表面に出て、型枠から抜けたためである。
【0130】
試験結果を図15〜図20に示す。単位セメント量ごとに6シリーズに分けて図に記した。いずれのシリーズにおいても単位PS灰量が増えるにつれて、充填に有する時間が長くなったため、充填性が悪くなったと考えられる。
【0131】
特にC0S50、C10S40、C40S30の3配合においては、100%充填しなかった。これらの配合はいずれも単位PS灰量300kg/m3以上であるため、このことからも成形性の限界が単位PS灰量300kg/m3であることが確認できた。
【0132】
この試験結果から、コンクリート製品を製造する際は、同一の振動加圧条件でコンクリートの成型を行うため、充填性が良いものでは単位水量を減らすことが可能である。
【0133】
(2) 圧縮強度
圧縮強度試験結果を表19に示す。表17より、空気量の変化にばらつきがあるため、モルタル試験同様に「空気量1%増加すると圧縮強度は5%減少する」とし、PS灰置換率0%のときの空気量を基準として補正を行った。
【0134】
表19で得られた圧縮強度のデータを強度別に見てみると、プレーンである置換量0での圧縮強度30.81N/mm2を下回るものは、成型が不可能であったもの(セメント置換率0%、細骨材置換率50%)を除けば、単位セメント量200kg/m3以下もしくは単位PS灰量100kg/m3以下であった。その他の配合では無混入コンクリートよりも強度が強くなった。
【0135】
これはPS灰のポゾラン反応によるものであり、極端にセメント量が少ない場合には水和反応の際に生成される水酸化カルシウムが少なく、ポゾラン反応が十分に起こらないために強度が低下したと考えられる。
【0136】
また、最も強度が出た配合はC0-S40であり、無混入コンクリートの2.4倍ほどの強度であった。この配合を中心に強度は下がっていく傾向にある。これにより、PS灰混入コンクリートにおいてはPS灰の添加量と、PS灰のポゾラン反応を起すために必要なセメント量の関係がコンクリートの圧縮強度増進に効果があると考えられる。
【0137】
この結果と成型が可能と考えられる単位PS灰量300kg/m3程度を踏まえると、単位セメント量200kg/m3以上でかつ単位PS灰量100kg/m3以上300kg/m3以下の範囲でPS灰をコンクリートに混入させた場合においては、プレーンコンクリート以上の圧縮強度をもつコンクリートができることが分かった。特に、単位セメント量300±20kg/m3でかつ単位PS灰量200±40の配合においてはプレーンコンクリートの1.5倍以上の圧縮強度を持つコンクリートができることが確認された。
【0138】
【表19】
【0139】
2−7.まとめ
(a) PS灰用いたコンクリートにおいて振動加圧による成型可能であったのは単位PS灰量300kg/m3であった。
(b) モルタル試験同様にPS灰添加量の増大に伴いコンクリートの流動性は低下することが確認された。特に単位PS灰量100kg/m3を超える配合においては、スランプゼロの超固練りコンクリートとなった。
(c) 空気量は、振動加圧による充填性が確保される配合においては、無混入のものと同等の値を示す。
(d) 密度は、1%〜3%程度の減少が確認された。
(e) PS灰量が増えるにしたがって、充填に要する時間が長くなることが確認された。特に単位PS灰量が300kg/m3を超えると充填性は著しく悪くなる。
(f) 圧縮強度は、単位セメント量200kg/m3以下もしくは単位PS灰量100kg/m3以下の配合においては無混入のものより強度が低下する。
(g) 単位セメント量200kg/m3以上でかつ単位PS灰量100kg/m3以上300kg/m3以下の範囲でPS灰をコンクリートに混入させた場合においては、プレーンコンクリート以上の圧縮強度をもつコンクリートができる。
(h) 単位セメント量300±20kg/m3でかつ単位PS灰量200±40kg/m3の配合においてはプレーンコンクリートの1.5倍以上の圧縮強度増加が確認された。
【0140】
以上の結果から、PS灰をセメントおよび細骨材に置換することにより、圧縮強度の強い超硬練りコンクリートを作ることができることが確認できた。また、コンクリート二次製品に適用することを考えると、強度増加は維持できればよいため、さらにセメントを減らし、PS灰量を増やすことができると考えられる。
【0141】
これにより、PS灰大量使用およびセメント量の削減によるコスト低下が望め、さらに密度も軽くなるため、運送コストも減らすことが可能になる。
【0142】
3.PS灰を用いたコンクリート二次製品への適用
3−1.概要
「2.PS灰を混和したコンクリートの諸性状」の結果から、PS灰をセメントおよび細骨材に置換することにより、圧縮強度の強い超硬練りコンクリートを作ることができた。また、コンクリート二次製品に適用することを考えると、強度増加は維持できれば良いため、さらにセメントを減らし、PS灰量を増やすことができる。
【0143】
これにより、PS灰大量使用およびセメント量の削減によるコスト低下が望め、さらに密度も軽くなるため、運送コストも減らすことが可能になると考えられた。
【0144】
そこで、中空ブロックを対象としてPS灰を最も多く使い、かつセメント量をなるべく減らすことのできる配合を選定し、製品工場の実際の製造方法を用いた実験を行った。
【0145】
また、吸水性に優れているというPS灰の特徴を生かして、保水性に優れたインターロッキングブロック(以下、ILBという)の開発も行った。保水ILBは雨水を吸い込むことで、雨天時の転倒の防止効果だけでなく、溜め込んだ水分を晴天時に放出することができるため、ヒートアイランド現象の緩和にもつながる非常に優れたILBである。
【0146】
3−2.中空ブロックへの適用
超硬練りコンクリートの即脱製品への適用として中空ブロックをターゲットに実際の工場の製品ラインを用いた実験を行い、その性能の評価をした。この際中空ブロックにおいて強度は一般のコンクリートより小さくて良いため、前述の単位セメント量200kg/m3以上でかつ単位PS灰量100kg/m3以上300kg/m3以下の範囲よりもさらにセメント量を減らしたものについて、実験室で配合を選定し、実際の工場において実験を行った。
【0147】
3−2−1.使用材料
中空ブロックにおける使用材料を表20に示す。
【0148】
【表20】
【0149】
3−2−2.配合選定
(1) 使用配合
工場で製品に適用する配合の選定を以下で行った。配合選定は、コンクリート中空ブロックの圧縮強度の規格値8N/mm2以上となり、かつPS灰を大量に使用できるような配合を選定した。そのため、成型可能である単位PS灰量300kg/m3としてセメント量200kg/m3から段階的に減らす配合で実験を行い圧縮強度の評価を行った。
【0150】
表21に配合表を示す。
【0151】
【表21】
【0152】
ここで養生条件は、蒸気養生とし前置き時間2h(20℃、RH60%)、温度上昇速度20℃/h、最高温度60℃、最高温度保持時間24hとした。また、蒸気養生後は気中養生とした。
【0153】
(2) 練り混ぜ方法
ミキサーはホバート型ミキサーを用いた。まずセメントと砂を入れて30秒混ぜた後、水と混和剤を入れて3分間練り混ぜた。
【0154】
(3) 圧縮強度試験結果
圧縮強度試験は「JIS-A-1108-1999 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。材齢は蒸気養生1日と気中養生14日とした。
【0155】
表22に圧縮強度試験結果を示す。
【0156】
【表22】
【0157】
(4) 試験結果および考察
図21より、セメント量を減らしていくと強度が減少して行った。しかし14日強度では、全ての配合において、コンクリート中空ブロックの規格である8N/mm2を満たしている。
【0158】
また、セメント量150kg/m3、125kg/m3においては、基本配合と同等の圧縮強度が得られた。密度においても基本配合と比べて、1割程度の減少が確認された。これにより、目的に合う配合の選定ができた。
【0159】
3−2−3.製品工場実験
(1) 使用配合
表23に製品工場で実験を行った配合を示す。配合選定の結果から、十分に規定の圧縮強度を満たした単位セメント量200kg/m3、150kg/m3および規定値の範囲ぎりぎりである単位セメント量100kg/m3の3配合に、(4)、(5)の2配合を加え、合計5配合について、実験を行った。
【0160】
【表23】
【0161】
*工場では、フレッシュ性状の補正を水量で行っている。表中の水量の()内に示した値は、実験時の水量である。
【0162】
(2) 養生条件
蒸気養生とし、前置き時間1h、温度上昇速度10℃/h、最高温度75℃±5℃、最高温度保持時間4h、自然温度降下とした。
【0163】
(3) 試験項目および目標値
圧縮強度試験は「JIS-A-1108-1999 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。試験は気中養生材齢6日で行った。圧縮強度は中空ブロックの規格値である8N/mm2を目標とした。
【0164】
(4) 試験結果および考察
表24に圧縮強度試験結果を示す。
【0165】
【表24】
【0166】
製品のラインに流す際に、単位水量を変化させることでフレッシュ性状の調整を行うが、(4)、(5)の配合に比べて(1)〜(3)の配合では、ラインに流すのに必要な水量が多くなった。これは、PS灰量が多いため、水量が多くなったと考えられる。
【0167】
しかし、(3)の配合以外では、圧縮強度の規格値である8N/mm2を超えた。この結果から、今回行った配合のうち(1)、(2)および(4)、(5)については、十分実製品として適用できると考えられる。
【0168】
特に、実験室で配合選定を行った配合についての適用性が確認されたため、超硬練りコンクリートにおいて、PS灰の大量使用が可能であることが分かった。しかし、(2)、(3) の配合では、即脱後養生室までの運搬時にクラックが生じるものがあった。特に(3)の配合ではクラックが多く確認された。
【0169】
3−3.インターロッキングブロックへの適用
3−3−1.使用材料
表25に使用材料を示す。
【0170】
【表25】
【0171】
*パーライトくず:パーライトは、真珠岩等水分を含むガラス質流紋岩類を粉砕後、高温で焼成発泡させたものである。非常に軽量で、膨張させると多孔質構造、高い吸水性、断熱性などの特性を発揮する。今回使用しているパーライトくずとは、パーライトを生成する際に、発泡せずにパーライトとして使用できないものである。しかしながら、パーライトくずについても高い吸水性が確認されているため、保水性能を付加するために用いた。
【0172】
*下水汚泥溶融スラグ:汚泥焼却灰を溶融スラグ化したもので、水中で急冷された水砕スラグは細砂状であるため、砂の代替品として埋め戻し材やコンクリート用細骨材等に使用することが期待される。細骨材としての使用に関しては十分可能であることが知られているため、細骨材として砂の変わりに使用した。
【0173】
*再生骨材:粗骨材として使用した再生骨材は、実験を行った製品工場から出たコンクリート塊を破砕してできたものである。
【0174】
3−3−2.配合条件および配合選定
実製品は、2tの加圧条件下で成型を行うため、実験室で製品の再現をするのは困難である。そこで、ILBに必要とされる強度を満たす配合の選定を行った。配合の選定は、 パーライトくずの置換量の選定→パーライトくずPS灰の割合の選定→工場実験配合の決定という フローで行った。
【0175】
(a) 配合選定A
(1)使用配合
表26に配合表を示す。ここで行うのは、パーライトくずの使用量を決定するための選定である。吸水性能をILBに付加するためには、なるべく多くのパーライトくずを入れる必要がある。
【0176】
そこで、パーライトくずと粗骨材の割合(PA/(PA+G))とセメント量をさまざまに変えて実験を行い、使用量の検討を行い、保水性ブロックの曲げ強度の品質規格である3N/mm2以上(圧縮強度17N/mm2以上)を満たす配合を選定した。ただし、試験室ではILBの成型が不可能であったため、圧縮強度での検討を行った。
【0177】
【表26】
【0178】
(2) 養生条件
養生は蒸気養生とし、前置き時間1h、温度上昇速度10℃/h、最高温度75℃±5℃、最高温度保持時間4h、自然温度降下とした。
【0179】
(3) 練り混ぜ方法
ミキサーはホバート型ミキサーを用いた。まず、セメントと砂を入れて30秒混ぜた後、水と混和剤を入れて3分間練り混ぜた。
【0180】
(4) 試験結果
圧縮強度試験は「JIS-A-1108-1999 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。表27に圧縮強度試験結果を示す。
【0181】
【表27】
【0182】
圧縮強度試験の結果、規格値を満足する配合はC450−s/a60のみであった。また、粉体量が増えるにしたがって、強度は落ちてしまっている。このため所定の強度を得るためには粉体量に限界があると考えられる。PA/(PA+G)は60%程度にしなくてはならないことが確認された。
【0183】
(b) 配合選定B
(1)使用配合
所定の強度を得るためには粉体量(セメント、パーライトくず、PS灰の合計量)に限界があることが確認されたため、粉体量を一定にして、それと同じ質量の粗骨材を入れた配合での実験を行った。表28に配合表を示す。
【0184】
【表28】
【0185】
(2) 養生条件
養生は蒸気養生とし、前置き時間1h、温度上昇速度10℃/h、最高温度75℃±5℃、最高温度保持時間4h、自然温度降下とした。
【0186】
(3) 練り混ぜ方法
ミキサーはホバート型ミキサーを用いた。まずセメントと砂を入れて30秒混ぜた後、水と混和剤を入れて3分間練り混ぜた。
【0187】
(4) 試験結果
圧縮強度試験は「JIS-A-1108-1999 コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して行った。圧縮強度試験結果を表29に示す。
【0188】
【表29】
【0189】
粉体量を一定にすることにより、配合選定Aよりも強度は増加した。また、そこにPS灰を加えることにより初期強度が強くなった。また、全ての配合において圧縮強度の規格値を満足した。このため工場実験において行う配合は、コスト面を考えて最もセメント量の少ない配合とすることにした。
【0190】
3−3−3.製品工場実験
3−3−2の結果から選定された配合について、実製品の製造ラインを用いて実験を行い、保水・吸水性能についての試験を行った。保水・吸水性能の確認実験のため、養生は実製品とは違い気中養生とした。そのため、曲げ強度は参考値とする。
【0191】
(1) 使用配合
配合表を表30に示す。配合は、実験室で選定した2種類と、配合(2)の粗骨材の重量の半分を川砂および下水汚泥溶融スラグに置換したものの計4配合とした。また、比較用として工場で作られたパーライトくずのみを使った保水性ILBの試作品の配合を用いた。
【0192】
【表30】
【0193】
*工場では、フレッシュ性状の補正を水量で行っている。表中の水量の()内に示した値は、実験時の水量である。
【0194】
(2) 試験項目および目標値
曲げ試験はJIS A1106に準拠して行った。
保水性試験は、保水量を求めた。保水量は、湿潤質量と絶乾質量および供試体の体積を求めて、以下の式で算出した。
【0195】
【数2】
【0196】
ここに、
湿潤質量:15〜25℃の清水中で24時間吸水させた後、供試体を取り出して、図25のような密閉式のプラスチック容器に入れて、15〜30℃の室温で30分間水を切り、絞った濡れウエスで目に見える水分をぬぐった後、直ちに計測した時の質量。
【0197】
絶乾質量:温度105±5℃の乾燥機内において一定質量となるまで乾燥した後、常温まで冷却したときの質量。
【0198】
吸水性試験は、以下のような手順で30分間の水の吸い上げ高さを求めた。
(a) ブロックを温度105±5℃の乾燥機内で一定質量になるまで乾燥した後、常温まで冷却する。
(b) ブロックを図26に示す吸水性試験装置に設置する。設置後の推移はブロック底面から5mmの高さとなるようにし、水は15〜25℃の清水とする。供試体設置台の上面には、金網などのブロック底面に水が回るような材料を用いるか、吸水性のスポンジを挟む。
(c) 30分経過後にブロックを取り出し、水が滴り落ちない程度まで水を切り、絞ったウエスで目に見える水滴をぬぐう。この時の質量を30分後の吸い上げ質量とする。
(d) ブロックを湿潤状態とし、湿潤質量を計る。
(e) 吸い上げ高さは、以下の計算式より求める。
【0199】
【数3】
【0200】
各項目の製品の規格値を表31に示す。
【0201】
【表31】
【0202】
*曲げ強度の()内の数字は圧縮強度を示している。曲げ強度試験ができない場合に適用する。
【0203】
(3) 試験結果および考察
試験結果を表32に示す。
【0204】
【表32】
【0205】
配合選定試験の結果から、強度については十分規定値を満たしていると判断し、気中養生14日で曲げ試験を行ったため、曲げ強度は参考値とする(実際の製品は蒸気養生を行うため、いずれの配合もより曲げ強度が出ると考えられるため)。
【0206】
保水・吸水性能を見ると、保水性能は規格値をすべての配合で満たしていた。特に(3)の配合においては規定の倍ほどの吸水量を示した。(2)、(3)、(4)ではパーライトくず、PS灰量がほぼ同じであるが、(3)は細骨材を用いたことで充填性が増し、空隙が減ったため保水量が増したと考えられる。吸い上げ高さについては、(3)の配合のみ規格値を満たした。しかしながら(4)の配合については非常に近い値を示している。
【0207】
ここで、パーライトくずを用いた試作品と、今回実験を行った中で総合的に最も性能の良かった(4)の配合を比較すると、曲げ強度、保水量はともに比較用の配合を上回る結果となった。30分後の吸い上げ高さでは、比較用の方が吸水能力が高い結果となった。
【0208】
また、供試体が絶乾状態になるまでの時間を比較すると比較用の配合では1日ほどで絶乾状態になったのに対し、今回の実験の供試体は5日間ほど経時変化をしていた。このため、PS灰を用いることで、水をキープする時間が長くなることが分かった。これらの結果から、PS灰を保水性に適用することが可能であることが確認された。
【0209】
3−4.まとめ
(1) 中空ブロックへの適用
「2.PS灰を混和したコンクリートの諸性状」で得られた結果をもとに中空ブロックにPS灰を適用した結果、単位セメント量を40〜90kg/m3程度減少し、かつ単位PS灰量300kg/m3においての適用が可能であることが確認された。
【0210】
運搬の際にクラックを生じるものも見受けられたが、強度が十分に出ているものについては、クラックは見られなかった。したがって、今回圧縮強度の規格値を満たした配合については、十分製品とし適用できる。
【0211】
(2) 保水性ILBへの適用
ILBにPS灰およびパーライトくずを用いることで以下の性能が確認された。
(a) PS灰およびパーライトくずをILBに適用することで、保水・吸水性能を付加できることが確認された。
(b) PS灰を用いることにより規格値よりも1.3〜2倍ほどの保水量を得られる。
(c) PS灰を用いることでパーライトくずのみを用いる場合よりも、長い間水をキープする。
以上よりPS灰の保水性ILBへの適用することが可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】圧縮強度試験結果(蒸気2日)のグラフである。
【図2】圧縮強度試験結果(気中14日)のグラフである。
【図3】C/Wと圧縮強度の関係(気中14日)のグラフである。
【図4】C/Wと圧縮強度の関係(気中14日)のグラフである。
【図5】PS置換率と強度寄与率の関係(蒸気 2 日)のグラフである。
【図6】PS置換率と強度寄与率の関係(気中14日)のグラフである。
【図7】圧縮強度試験結果(細骨材置換)のグラフである。
【図8】圧縮強度比(細骨材置換)のグラフである。
【図9】圧縮強度試験結果(蒸気2日)のグラフである。
【図10】圧縮強度試験結果(気中14日)のグラフである。
【図11】圧縮強度比(蒸気2日)のグラフである。
【図12】圧縮強度比(気中14日)のグラフである。
【図13】単位PS灰量と圧縮強度の関係(蒸気2日)のグラフである。
【図14】単位PS灰量と圧縮強度の関係(気中14日)のグラフである。
【図15】充填性試験結果(C0シリーズ)のグラフである。
【図16】充填性試験結果(C10シリーズ)のグラフである。
【図17】充填性試験結果(C20シリーズ)のグラフである。
【図18】充填性試験結果(C30シリーズ)のグラフである。
【図19】充填性試験結果(C40シリーズ)のグラフである。
【図20】充填性試験結果(C50シリーズ)のグラフである。
【図21】単位PS灰量と圧縮強度の関係のグラフである。
【図22】圧縮試験結果のグラフ(棒グラフ)である。
【図23】圧縮強度試験結果(配合選定A)のグラフ(棒グラフ)である。
【図24】圧縮強度試験結果(配合選定B)のグラフ(棒グラフ)である。
【図25】湿潤状態にする装置の概要図である。
【図26】吸水性試験装置の概要図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性組成物からなる多孔質の保水性ブロックにおいて、絶乾状態のブロック全体を水中に浸して24時間吸水させた後の単位体積当たりの保水量が0.15g/cm3以上、絶乾状態のブロックの下端部を水に浸し30分経過した後のブロックの質量M30と十分に湿潤状態としたときのブロックの質量Mcwの比の百分率(M30/Mcw)×100%としての吸上げ高さが70%以上、曲げ強度が3N/mm2以上であり、十分に湿潤状態とした状態から100〜110℃で加熱して絶乾状態となるまでの湿潤−絶乾時間が48時間以上であることを特徴とする保水性ブロック。
【請求項2】
前記水硬性組成物は、セメント、パーライトくずおよびペーパースラッジ灰が配合された超硬練りの即脱可能なコンクリートであり、前記ペーパースラッジ灰について単位ペーパースラッジ灰量が100〜300kg/m3であることを特徴とする請求項1記載の保水性ブロック。
【請求項3】
前記パーライトくずについて単位パーライトくず量が300kg/m3以上であることを特徴とする請求項2記載の保水性ブロック。
【請求項4】
単位セメント量が150kg/m3以上、かつ単位ペーパースラッジ灰量が100〜300kg/m3の範囲でペーパースラッジ灰を配合したことを特徴とする低スランプ硬練り水硬性組成物。
【請求項5】
単位セメント量が280〜320kg/m3、かつ単位ペーパースラッジ灰量が160〜240kg/m3の範囲でペーパースラッジ灰を配合したことを特徴とする低スランプ硬練り水硬性組成物。
【請求項1】
水硬性組成物からなる多孔質の保水性ブロックにおいて、絶乾状態のブロック全体を水中に浸して24時間吸水させた後の単位体積当たりの保水量が0.15g/cm3以上、絶乾状態のブロックの下端部を水に浸し30分経過した後のブロックの質量M30と十分に湿潤状態としたときのブロックの質量Mcwの比の百分率(M30/Mcw)×100%としての吸上げ高さが70%以上、曲げ強度が3N/mm2以上であり、十分に湿潤状態とした状態から100〜110℃で加熱して絶乾状態となるまでの湿潤−絶乾時間が48時間以上であることを特徴とする保水性ブロック。
【請求項2】
前記水硬性組成物は、セメント、パーライトくずおよびペーパースラッジ灰が配合された超硬練りの即脱可能なコンクリートであり、前記ペーパースラッジ灰について単位ペーパースラッジ灰量が100〜300kg/m3であることを特徴とする請求項1記載の保水性ブロック。
【請求項3】
前記パーライトくずについて単位パーライトくず量が300kg/m3以上であることを特徴とする請求項2記載の保水性ブロック。
【請求項4】
単位セメント量が150kg/m3以上、かつ単位ペーパースラッジ灰量が100〜300kg/m3の範囲でペーパースラッジ灰を配合したことを特徴とする低スランプ硬練り水硬性組成物。
【請求項5】
単位セメント量が280〜320kg/m3、かつ単位ペーパースラッジ灰量が160〜240kg/m3の範囲でペーパースラッジ灰を配合したことを特徴とする低スランプ硬練り水硬性組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2007−230827(P2007−230827A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55079(P2006−55079)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 国立大学法人宇都宮大学工学部建設学科建設工学コース 平成17年度卒業論文発表会(平成18年2月2日)にて発表
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 国立大学法人宇都宮大学工学部建設学科建設工学コース 平成17年度卒業論文発表会(平成18年2月2日)にて発表
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】
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