説明

保水性舗装並びにその材料。

【課題】 ヒ−トアイランド抑止効果を持つ道路舗装材料を廃棄物リサイクル材料を用いて低コストで製造することを目的とする。アスファルト工事のように短時間で施工が出来、通行が出来る条件を持ち、温度上昇を防止しうる、水硬性保水材料による新規な舗装方法とその材料を提供する。
【解決手段】 焼成条件によって焼セッコウ(半水セッコウ)の初期凝結と硬化開始までのオ−プンタイムを調整できる技術を開発し、更にセッコウにセメントを加えて初期の水和反応生成物であるエトリンガイトの生成率を調整することにより、オ−プンタイムの調整、長期強度の向上を図ったものである。セッコウ/セメント系硬化体は連続気孔を持ち、保水性が高く、更に骨材を選択する事により雨水を保水すると共に、地下水からも水を補給して長期にわたりヒ−トアイランド抑止効果を持続するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を含むセッコウ資材を使用する、従来にない保水性舗装とその材料に関するものである。即ち、本発明はセッコウ資材を使用して、高い保水性を持ち、かつ充分な強度を持った道路舗装材料に関するものであり、施工面1m2 当たり最大30リットルの雨水、地下水を保水し、夏季において蒸発気化熱によって大気空間を冷却するヒ−トアイランド抑止効果を持つ低コストの舗装を主としてリサイクル資源を使って造る新技術である。

【背景技術】
【0002】
近年、アスファルトやコンクリ−トの舗装は、特に夏季において、路面からの赤外線の放射によりヒ−トアイランド現象を助長し、夏季の熱苦しさを耐え難いものにしている。そこで、本発明者らは、自然のシルト土壌や、森林のように雨水を一時貯留させて、真夏に蒸発気化潜熱作用によって冷却する効果に着目し、特願平7−126549或いは特願平7−195746の他、焼成したセラミックス製品を開発し、既に広く市場に施工されているが施工仕上がりコストは一般舗装の2倍以上の高価格となることが欠点となっている。また、コンクリ−ト系製品は透水性或いは保水性のコンクリ−ト舗装ブロック材が、政府の推進もあり、高い市場ニ−ズとなっている。更には古来の三和土(たたき)と称される風化花崗岩のシルト質土壌に石灰を加えて反応させ、硬化させた材料があり、近時これらの技術を復活したソイル固化工法も市場に登場してきた。
【0003】
ここで、前記従来技術について、概要を説明すれば以下の如くである。特願平7−126549は「多孔質焼結体とその製造方法」であり、その目的は、天然シルト土壌のような保水性と透水性を兼ね備えた高強度で軽く、耐候性の高い多孔質セラミック焼結体とその製造方法を提供するものである。またその構成は、従来の陶磁器焼結体と全く異なる気孔の構造、即ち、骨材粒子の膨張と結合相の収縮によって引起される引剥し亀裂反応によつて生成される材料構造として、層状のトンネル構造をもつ飽和度の高い毛細管気孔を造りあげる。保水性、透水性は、芝生土壌に近い特性を示し、従来の焼結体では、見られなあい特徴がある軽くて強度の高い舗装材料を造ることができる。気化熱による地球の温暖化の防止の効果も大いに期待され得るというものである。

【0004】
特願平7−195746は、「石炭灰を原料とする焼結体とその製造方法」であり、その目的は、窯業原料として適する化学成分をもち、しかも高温処理をしてガラス質粒子となった、極めて有用な石炭灰の従来使用されなかった原因であるブラックコア−を解消し均質な多孔質の保水性、透水性を兼ね備えた、焼結体とその製造方法を提供することである。而して、その構成は、石炭灰フライアッシュとクリンカ−アッシュとを両者の合計量で50〜85重量%、粘土質原料と水硬性セメントとを両者の合計量で15〜30重量%(ただし、水硬性セメントは粘土質原料1重量部に対して、0.3〜0.5重量部の範囲調合する)、而して焼結調整材料0〜20重量%を加えた原料組成物を成形乾燥した後、焼成してなる石炭灰を原料とする焼結体である。

【0005】
次に、第三者の従来技術の例について説明する。特開2004−3158は「保水性舗装」であり、課題は道路にできるだけ水を保持させ、その蒸発によって道路の温度上昇、更にはその付近の建造物等の温度上昇を防止する舗装を提供することである。解決手段は通水性舗装材層の骨材間隙に、粉粒状の保水材を散布充填し、次いで樹脂モルタルを同様に骨材間隙に充填するものであって、該樹脂モルタルは、骨材が平均粒径2mm以下のものであり、それ自身通水性を有するものを使用するというものである。

【0006】
【特許文献1】特願平7−126549 ;特開平8−319179
【特許文献2】特願平7−195746 ;特開平9−25155
【特許文献3】特願2002−158805;特開2004−3158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のように、いわゆるヒ−トアイランド防止のため、道路の舗装材料として、低コストの舗装材料を創始開発しようとしているものであるが、従来技術中には目的を満たすものは見当たらない。即ち、上記特願平7−126549の材料は、透水性、保水性は兼ねるけれども、一種の陶磁器板であるから、1000〜1200℃で焼成されるものである。従って、部分的に地球の温暖化防止は期待されうるが、コストが高いので、その温暖化防止はせまい範囲にとどまり目的を達成できないという問題点がある。
【0008】
また、特願平7−195746の材料はフライアッシュを使ったもので、多孔質で保水性、透水性を兼ねるものではあるけれども、これも陶磁器の一種であって、1000〜1200℃で焼成するものである。従って、矢張り、道路舗装材料としては可成りコストが高いという欠点がある。
【0009】
他方、特願2002−158805は、樹脂モルタルを使用する保水性舗装材料であるが、これに使用する吸水性ポリマ−は、いわゆる高分子材料であるから、有機製品の単価は非常に高く、無機物の数倍である。従って、道路舗装の材料としては非常に高価であるという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記ヒ−トアイランド現象を極力防止し、この地球を人間にとって、他の動物たちにとっても、住みやすくし、環境を保全するため、できるだけ低コストで地球温暖化を阻止することにより、新規かつ進歩性ある技術を創始提供することを課題とする。
【0011】
次に、発明が解決しようとする課題について具体的に説明する。本発明者らは、これらヒ−トアイランド現象防止材料の市場に着目し、現状製品の価格、物性を分析し、また機能、効果を解析したところ、より低コストで、より高性能の舗装を造るには以下の諸点が要点であることを確認した。
1)施工工事がアスファルト施工のように材料を敷きならしして転圧施工が出来る材料が必要である。アスファルト施工は加熱工程があるため、高額の設備機器を要し、これらの償却が大きいコストを占めていること。
2)保水機能において、セラミックス製品やコンクリ−トブロック製品はいずれも1m2
当たりの最大保水量は9〜12リットル程度であり、雨がない場合の持続効果は3〜5 日の短期間であり、人工的に散水する必要がある。また、施工はいずれもサンドクッシ ヨン層の上に施工する為、地下からの水の補充が行なわれないことである。
【0012】
更に、以上から本発明が解決すべき課題を具体的に説明する。
[第1の課題]
水硬性の硬化物であり、硬化体には40〜100μm程度の連続した気孔を多量に持ち かつ必要な強度特性をクリアする組成物であること。また、これら硬化体はセメント系 のように硬化収縮を起こさず、キレツの発生がない無収縮であることである。更には、 モルタル材として水を加えてから転圧施工完了までの作業条件においても、少なくとも 2時間程度の作業オ−プンタイムのある硬化性状を持っていることである。また、施工 完了後は速やかに硬化して数時間以内に使用出来る早期硬化性を有することである。
[第2の課題]
それは骨材類の選択である。低コスト化の為に本施工材料は少量のセメント以外は全て 未利用資源、及び廃棄物の中から目的に応じて選択して使用することが必要であり、か つ環境基準に規定された有害物の無溶出等をクリアするものであることである。

【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記の課題を解決するために、課題毎に次の手段を構成するものである。
[第1の課題を解決する手段]としては、水硬性硬化物は廃棄セッコウボ−ドの再利用に よって造る。本発明者は既に赤外線加熱方式によるセッコウの焼成方法について特願2 002−8242及び特願2004−96994を出願し、これらの設備を用いて温度 (160〜200℃)時間などの加熱条件を制御することにより、半水セッコウ、二水 セッコウ及び無水セッコウの混合された従来市場にない水和硬化反応を示す焼セッコウ を造る技術を完成している。本発明においては、半水セッコウと二水セッコウの混合さ れた組成物の中で、前記請求項2に示すように、半水セッコウ50〜60重量%、二水 セッコウ40〜50重量%の範囲にある焼セッコウはポルトランドセメントと共存する と、加水10数分で凝結して一時的に固化反応が起こるが、エトリンガイトの生成が続 いている間にはゲル状態となり、硬化反応が開始しないという特徴を持つことを発見し た。即ち、骨材を混合してミキサ−内で加水混合すると、一時凝結によってぱさぱさの モルタルとなるが、施工面に散布して転圧動作が加わると結晶化反応は急速に発現して 硬化することを発見した。更に、半水セッコウと二水セッコウの組み合せについて数多 くの実験を行い、半水セッコウ50%以下の場合はオ−プンタイムは長くなるが、強度 は急速に低下するものであった。また、セッコウとセメントの比率はエトリンガイトの 生成量に比例し、セッコウ/セメント比が0.3以下ではオ−プンタイムが短すぎる。 また、0.8以上では初期強度が低いものであった。更にセッコウを多量に含むエトリ ンガイト組成物の特徴として、硬化時の収縮が起こらず、収縮キレツの発生は起こらな いという範囲は前記請求項2に示すものである。また、セッコウの硬化体は、かさ比重 0.7〜0.8で極めて高い気孔率を持ち、かつこれら気孔はお互いに連結されたもの である。セメントと共存した硬化体も吸水率は40%を超える高い保水率を持つもので あった。
【0014】
[第2の課題を解決する手段]としては、骨材の選択は施工路面の使用目的により選択す コンクリ−トやアスファルト骨材など、保水性のない骨材は高強度を要求される路面用 に用い、瓦やレンガ或いは石炭灰クリンカ−など多くの気孔を持つものは保水性をより 高める用途に或いは木片などを骨材として弾性のある舗装等にも適用するものである。 細骨材は粒径1〜5mm以下の状態で使用するが、鋳物廃砂や砕石廃砂は石英質であり 掘削残土や浚渫土などは主としてシルト質粘土であり、化学成分としてAl2 O3 を含 み、長期的にエトリンガイトの生成が増加するものである。また、製鋼スラグ類は例え ば転炉スラグ類の風化した粉末はCaO成分を含み、粘土質とポゾラン反応を起こして 長期にわたり硬化するものである。
【発明の効果】
【0015】
1)機能的効果
本発明の舗装材は、以下の実施例にも示される通り、従来のアスファルト舗装と大気冷却効果を、試算したデ−タで比較すると、夏期日中の路面温度は約15〜20℃低く、大気温度は1.5〜2.0℃の低下効果があり、大都市圏のエネルギ−節減出来るものである。
2)経済的効果
従来市場の保水性舗装は1m2 当たり8,000〜10,000円の高いコストを要するが、本発明の保水性舗装は、従来のアスファルト施工よりも低コストであり、約1/2のコストで提供出来るものである。
【実施の形態と実施例】
【0016】
本発明の保水性舗装の材料は水硬性であり、無収縮である。少なくとも、1m2 当たり10リットル以上の保水性を有する各種目的の舗装工事に適用せんとするものである。一般に保水性舗装施工された表面は大気中の粉塵によって目詰まりを起こして大気への蒸発は粉塵の積層された層からの水の蒸発であり、表面に構成された気孔は5〜20μmの微細な気孔構成となり、施工実績から推定される蒸発水量は1m2 当たり、気温30℃で約200〜300gであり、雨によって保水した水は3〜5日で機能を失うものであるが、本発明の施工は施工下地が保水性の高いシルト質の上に直接結合された状態となり、毛細管吸引力により下地路盤からの水分の補給が起こり、極めて長期に水分の蒸発機能が持続することが特徴である。
本発明の保水性舗装材の組成物として代表的な物性を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
以上のように、保水性のない骨材を使っても強度は充分に発現し、保水率も18.5%であるが、細骨材として保水性のシルト粘土質を置換すると強度は低下するが、歩行や軽車両の通行できる充分な強度を持ち、保水率は大幅にアップする。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、廃棄物を含むセッコウ資材を使用する、従来にない保水性舗装とその材料に関するものである。即ち、本発明はセッコウ資材を使用して、高い保水性を持ち、かつ充分な強度を持った道路舗装材料に関するものであり、施工面1m2 当たり最大30リットルの雨水、地下水を保水し、夏季において蒸発気化熱によって大気空間を冷却するヒ−トアイランド抑止効果を持つ低コストの舗装を主としてリサイクル資源を使って造る新技術である。その上に、本発明の保水性舗装材の舗装工事コストは、従来のアスファルト舗装コストの約半分である。従って、本発明の保水性舗装材を用いた工事は、今後盛んに行なわれるようになり、産業上の利用可能性は甚大である。
























【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄資材セッコウを含むセッコウを主成分とし、保水性を有する水硬性材料と、粒径が5〜80mmの粗骨材と、粒径が5mm未満の細骨材とを、必要により土木学会の仕様に準拠して配合し、必要により加水し均一に混合し、転圧、充填したことを特徴とする保水性舗装並びにその材料。
【請求項2】
前記保水性を有する水硬性材料は、焼セッコウとセメント類材料が1:0.3〜0.8の重量比率で混合され、かつ該焼セッコウの内訳成分は、半水セッコウが50〜60重量%、二水セッコウが40〜60重量%の範囲で配合されたものである請求項1に記載の保水性舗装並びにその材料。
【請求項3】
前記粗骨材は、再生骨材、屋根瓦、レンガ、コンクリ−ト類のいずれかの廃棄物の破砕物、プラスチック廃棄物の破砕物、木片、溶融スラグ類、火山軽石、石炭灰クリンカ−、貝殻類のうちより選ばれた1種以上のものである請求項1又は2に記載の保水性舗装並びにその材料。
【請求項4】
前記細骨材は、鋳物廃砂、砕石廃砂、焼却灰、掘削残土及び浚渫土から得られたシルト質材料、石炭灰、鉄鋼スラグ類及び前記請求項3に示す粗骨材の整粒工程の篩通過の材料のうちから選ばれた一種以上のものである請求項1〜3のいずれかに記載の保水性舗装並びにその材料。











【公開番号】特開2006−52589(P2006−52589A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235254(P2004−235254)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000129611)株式会社クレー・バーン技術研究所 (11)
【出願人】(000177704)山陰建設工業株式会社 (10)
【出願人】(504110915)
【Fターム(参考)】