説明

保温性食品容器及びその製造方法

【課題】特定の分離された内部コンパートメント内において、異なった温度で複数の食品を効果的に保存することを可能にする保温性食品容器を提供する。
【解決手段】保温性食品容器4は、外側本体8と、互いに分離されて、外側本体8内に収容され、食品収容用の二つのトレイ12と、外側本体8に取外し自在に接合可能な外側密閉蓋16と、トレイ12と外側本体8との間に配置された断熱要素14とを有している。少なくとも二つのトレイ12は、接合リング20と共にオーバーモールドされ、接合リング20は、少なくとも一つの分離隔壁24の部位でトレイ12を分離させた状態に維持させてトレイ12を互いに接合させ、更に、断熱要素14をトレイ12と外側本体8との間に配置した後に、接合リング20と外側本体8との間に気密接合を構成するように、少なくとも二つのトレイ12を接合させている接合リング20を外側本体8に溶接及び/又は接着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温性食品容器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の容器の技術分野においては、特に食品用の保温性容器として、断熱された少なくとも一つのトレイを有して温度を可能な限り一定に保ちつつ食品を内部に保存するように構成された保温性容器が知られている。
【0003】
そのような従来技術の解決策はいくつかの欠点を有している。
【0004】
例えば、従来技術の容器は、特定の分離された内部コンパートメント内において、異なった温度で複数の食品を効果的に保存することを可能にするものではない。
【0005】
言い換えると、従来の容器は単一の食品収容・保存コンパートメントしか有していない。また、互いに分離された二つの食品収容コンパートメントを有する容器であっても、そのようなコンパートメントは効果的に隔離されていないため、複数の食品、例えば、温かい食品と冷たい食品とを異なる温度を維持させるように、それら食品をそのような異なった温度で保存することを許容するものではない。
【0006】
さらに、従来技術の解決策は、複数のトレイ又は複数の内部収容コンパートメントの間で十分な隔離が担保されるように対処されている場合であっても、トレイが密封されていないことを考慮すると、例えば、食器洗い機のようなものでその容器を完全に洗浄することを許容するものではない。その結果、例えば食器洗い機によって洗浄した場合や、水浴内で洗浄した場合に、水が浸潤することにより、時間の経過に伴って、バクテリアが増殖し、最終的に内側トレイと容器の外側本体との間の隔離ライニングを悪化させてしまうこととなる。
【0007】
さらに、従来技術の容器は、構造が複雑で、製造するのにコストがかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術に関連して上述した欠点を克服することの可能な保温性食品容器を作ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような欠点及び制約は、請求項1に記載の保温性食品容器と、請求項14に記載した、同容器の製造方法によって解決される。
【0010】
本発明の他の実施形態については、従属項に記載されている。
【0011】
本発明の更なる特徴や利点については、本発明の好ましい実施形態であるが、本発明を何ら限定するものではない実施形態についての後述の説明によって、より明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】組み立てられた状態の、本発明による容器の斜視図である。
【図2】容器の内部を部分的に視ることができるように複数の構成要素が取り除かれた状態の、図1に示した容器の斜視図である。
【図3】外側密閉蓋が取り除かれた状態の、図1に示した容器の斜視図である。
【図4】図1に示した容器の分解斜視図である。
【図5】図1に示した容器の断面図である。
【図6a】本発明の別の実施形態に係る容器の蓋の平面図である。
【図6b】図6aに示した蓋の断面図である。
【0013】
以下に説明する本発明の複数の実施形態において共通する構成要素及びその構成要素の部品については、同じ参照符号を用いて説明する。
【0014】
添付図面を参照すると、本発明の一実施形態に係る保温性食品容器、即ち、複数の食品を収容するのに好適で、内部に収容された食品の温度を可能な限り一定に保つのに適切な隔離構造を有する容器が参照符号4で示されている。
【0015】
容器4は、何らかの形状及び寸法を備えた外側本体8を有し、この外側本体8は、好ましくは、ポリスチレンから作られるが、ABS又はその他の類似したプラスチック材料から作ることもできる。
【0016】
外側本体8は食品を収容するための少なくとも二つのトレイ12を有し、これらトレイ12は相互に分離されている。換言すると、これらトレイは、相互に個別に作られており、互いに連通することはない。そのため、トレイは、複数の食品が互いに接触することや混ぜ合わせられることがないように、複数の食品を分離させて収容することができる。
【0017】
より多くのトレイ12を容器4内に設けてもよいことは明らかである。それらトレイは、複数の食品を更に細区分けすることを許容する内側コンパートメント、又は、例えば、カトラリー(cutlery),ポット,鍋又は一般的な付属品を配列することを可能にさせる内側コンパートメントをも想定したものであってもよい。
【0018】
好ましくは、トレイ12はスチール、例えばステンレス鋼、又は、例えば食品用プラスチックのような、食品に接触するのに適した材料から作られている。
【0019】
容器4は、以下により詳しく説明するように、トレイ12と外側本体8との間に配置された断熱要素14と、外側本体8に取外し自在に装着される外側密閉蓋16を更に有している。
【0020】
有益なことに、トレイ12は、それらトレイを少なくとも一つの分離隔壁24の部位で分離された状態に維持させてそれらトレイを一体に接合させる接合リング20と共にオーバーモールドされている。
【0021】
トレイ12と接合リング20との双方は、一体成形品として成形することもできる。この場合には、一体成形品は、好ましくは、プラスチックにより、即ち、食品にとって好適なプラスチックから作られる。
【0022】
接合リング20を外側本体8に簡単に溶接又は/及び接着させることを可能にさせるように、接合リング20は、好ましくは、ポリスチレン、又は、外側本体8の材料と適合性のあるその他のプラスチック材料から作られている。
【0023】
接合リング20と外側本体8との溶接は、例えば、超音波溶接によって実施することができる。そのような溶接に代えて、接着又は同様の接合方法を採用することができる。
【0024】
接合リング20と外側本体8との接合に続いて、接合リング20と外側本体8との間に液体が浸潤することの可能性を回避するためにこれら要素の間に密閉接合処理が施される。特に、そのような密閉接合は、接合リング20と外側本体8との間の溶接又は接着を実施する前に外側本体8とトレイ12との間に配置された断熱要素14に何らかの液体が浸潤し及び接触することを防止する。それ故、容器の内部でバクテリアが増殖するという状況が起こることが阻止される。
【0025】
断熱要素14は、食品と接触することのないトレイ12の外側壁32と外側本体8の内側壁36との間の容積をほぼ完全に埋めるようにトレイ12に対応した形状(counter−shaped)に形成されている。
【0026】
特に、断熱要素14は、少なくとも二つのトレイ12の間の分離隔壁24内に挿入される少なくとも一つの中間壁40を有している。
【0027】
好ましくは、断熱要素14は、接合リング20用の支持要素として機能する側方リム44を有している。換言すると、接合リング20は、外側本体8に直接溶接される前に、断熱要素14の側方リム44の上に載置される。
【0028】
好ましくは、接合リング20と外側本体8との双方は、ポリスチレンで作られ、超音波溶接によって一体に溶接される。それに代えて、接着又は同様な接合方法を用いることができる。
【0029】
好ましくは、接合リング20は、各トレイ12の食品収容コンパートメント48とほぼ面一となるように食品収容コンパートメント48の部位においてトレイ12とオーバーモールドされている。
【0030】
接合リング20は外側周辺リム52を有し、容器4は、外側周辺リム52と気密的に接続可能な複数の内側密閉蓋56を有し、各内側密閉蓋56は対応のトレイ12を気密に密閉する。
【0031】
内側密閉蓋56は、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)又はその他の類似のプラスチック材料から作られている。
【0032】
好ましくは、外側蓋16は、例えば、EPS又はポリウレタン・フォーム製の少なくとも一つの断熱層60を有している。
【0033】
断熱要素14と断熱層60の双方は、ポリスチレン・フォーム又は類似のプラスチック材料から作ることができる。また、断熱要素14と断熱層60の双方は、革新的技術(例えば、ナノテクノロジー)を用いて作ることができる。そのような適用によって、熱的性能を向上させ及び食品を収容するための機能体積を増大させるように、断熱要素と断熱層の厚みを最大限に薄くさせることができる。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、外側蓋16は、断熱層60を内部に閉鎖させるように一体に溶接された外側プレート64と内側プレート68とを更に有している。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、内側プレート68と外側プレート64は、ポリスチレン、ABS又はその他の類似のプラスチック材料から作ることができ、例えば、超音波溶接によって互いに直接溶接される。それに代えて、接着又は類似の接合技術を用いることができる。
【0036】
外側蓋16は、閉じられた状態で、外側本体8に外側蓋16を固定させるための、穴の開いた機械的ブロックを構成する可動ハンドル72を介在させることにより外側本体8に接続させることができる。
【0037】
本発明の一実施形態(図6a及び図6b)によれば、組立工程中に外側蓋16と外側本体8内に残留するエアーを抽出することを許容するようにバルブ82を外側蓋16と外側本体8に設けることが考えられる。
【0038】
特に、外側蓋16と外側本体8に設けられたバルブ82は、容器を食器洗い機で洗浄中に、又は、電子レンジ内で使用中に、容器の内側及び外側プラスチック壁が変形するのを防止することができる。
【0039】
ここで、本発明による容器を具体化させ及び組立てるための方法について説明する。
【0040】
具体的には、容器の外側本体8を、例えば、モールディングによって作成し、食品を収容するための少なくとも二つのトレイ12を作成する。これらトレイ12が互いに分離されていて、外側本体8の内部に収容される。トレイは、例えば、モールディング、及び/又は、例えばステンレス鋼のような金属プレートのスピニング法によって得ることができる。
【0041】
少なくとも二つのトレイ12は、それらを少なくとも一つの分離隔壁24の部位で分離させた状態に維持させてそれらトレイを一体に接合させる接合リング20と共にオーバーモールドし、トレイ12と外側本体8との間に断熱要素14を配置させる。
【0042】
接合リング20と外側本体8との間に気密接合が構成されるように、接合リング20を、例えば、超音波溶接によって外側本体8に溶接させ及び/又は接着させる。この接合によって、断熱要素14は、接合リング20と外側本体8との間で気密な態様で閉塞される。
【0043】
次に、外側本体8に対して取外し自在に接合可能な外側密閉蓋16を作成する。
【0044】
好ましくは、接合リング20を、トレイ12の食品収容コンパートメント48の部位と位置的に対応した外側周辺リム52を接合リング20に設けるようにモールドする。また、外側周辺リム52と気密な態様で接合可能な二つの内側密閉蓋56を成形する。各内側密閉蓋56は、対応のトレイ27を気密な態様で閉塞する。
【0045】
上記記載内容から理解することができるように、本発明による容器は、従来技術に存在する欠点を克服することができる。
【0046】
具体的には、本発明による容器は、特定の隔離した複数の内側トレイ内において、異なる温度で複数の食品を効果的に保存することができる。
【0047】
複数のトレイは、互いに完全に隔離されているため、トレイ相互間でかなりの熱交換を生じさせることなく、同時に温かい食品と冷たい食品とを保存することができる。
【0048】
従って、このようにして、温かい食品と冷たい食品とを効果的に保存して、それら食品の温度を長時間に亘って維持させることができる。
【0049】
さらに、本発明による容器は気密に閉塞される内側トレイを有しており、こうして、バクテリアの繁殖と、内側トレイと容器の外側本体との間に挿入される内側隔離ライニング(断絶要素)の悪化を引き起こす水の浸潤のリスクを負うことなく、容器を、例えば、食器洗い機で完全に洗浄することができる。
【0050】
さらに、本発明による容器は、構造が単純で、低コストで製造することができる。
【0051】
当業者は、付随的な及び特定の要求に対応するために、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、上述した容器及び製造方法の実施形態に対して様々な変更及び修正を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側本体(8)と、
互いに分離されて、前記外側本体(8)内に収容される、食品収容用の少なくとも二つのトレイ(12)と、
前記外側本体(8)に取外し自在に接合可能な外側密閉蓋(16)と、
前記少なくとも二つのトレイ(12)と前記外側本体(8)との間に配置された断熱要素(14)とを有する保温性食品容器(4)であって、
前記少なくとも二つのトレイ(12)が、接合リング(20)にオーバーモールドされ、又は、接合リング(20)と一体成形品として形成され、前記接合リング(20)が、少なくとも一つの分離隔壁(24)の部位で前記少なくとも二つのトレイ(12)を分離させた状態に維持させて前記少なくとも二つのトレイ(12)を互いに接合させ、
前記断熱要素(14)を前記少なくとも二つのトレイ(12)と前記外側本体(8)との間に配置した後に、前記リング(20)と前記外側本体(8)との間に気密接合を構成するように、前記少なくとも二つのトレイ(12)を接合している前記接合リング(20)が前記外側本体(8)に溶接及び/又は接着されていることを特徴とする保温性食品容器(4)。
【請求項2】
前記少なくとも二つのトレイ(12)の間の前記分離隔壁(24)に挿入される少なくとも一つの中間壁(40)を含むように、前記断熱要素(14)が前記少なくとも二つのトレイ(12)に対応した形状に形成されている、請求項1に記載の保温性食品容器(4)。
【請求項3】
前記少なくとも二つのトレイ(12)と前記外側本体(8)との間の容積を完全に埋めるように、前記断熱要素(14)が、前記少なくとも二つのトレイ(12)と前記外側本体(8)とに対応する形状を有している、請求項1及び2に記載の保温性食品容器(4)。
【請求項4】
前記断熱要素(14)が、前記接合リング(20)用の支持要素を構成する側方リム(44)を有している、請求項1〜3のいずれかに記載の保温性食品容器(4)。
【請求項5】
前記接合リング(20)と前記外側本体(8)とが、ポリスチレンから作られて、超音波溶接によって互いに溶接されている、請求項1〜4のいずれかに記載の保温性食品容器(4)。
【請求項6】
前記接合リング(20)が前記少なくとも二つのトレイ(12)の各々の食品収容コンパートメント(48)と略面一となるように、前記接合リング(20)が前記食品収容コンパートメント(48)の部位で前記少なくとも二つのトレイ(12)と共にオーバーモールドされている、請求項1〜5のいずれかに記載の保温性食品容器(4)。
【請求項7】
前記接合リング(20)が外側周辺リム52を有し、前記容器(4)が前記外側周辺リム52と気密な態様で接合可能な複数の内側密閉蓋(56)を有し、前記内側密閉蓋(56)の各々が、気密な態様で対応のトレイ(12)を閉塞している、請求項6に記載の保温性食品容器(4)。
【請求項8】
前記少なくとも二つのトレイ(12)が鋼又は食品用プラスチックから作られている、請求項1〜7のいずれかに記載の保温性食品容器(4)。
【請求項9】
前記内側密閉蓋(56)が低密度ポリエチレン(LDPE)から作られている、請求項7に記載の保温性食品容器(4)。
【請求項10】
前記外側密閉蓋(16)が、EPS又はポリウレタン・フォーム製の少なくとも一つの断熱層(60)を有している、請求項1〜9のいずれかに記載の保温性食品容器(4)。
【請求項11】
前記外側密閉蓋(16)が、前記断熱層(60)を内部に閉鎖させるように互いに溶接された外側プレート(64)と内側プレート(68)とを有している、請求項1〜10のいずれかに記載の保温性食品容器(4)。
【請求項12】
前記外側プレート(64)と前記内側プレート(68)とが、ポリスチレンから作られて、超音波溶接によって直接互いに溶接されている、請求項11に記載の保温性食品容器(4)。
【請求項13】
前記外側密閉蓋(16)が、閉じられた状態で、前記外側本体(8)に前記外側密閉蓋(16)を固定させるための、穴の開いた機械的ブロックを構成する可動ハンドル(72)を介在させることにより前記外側本体(8)に接続されている、請求項1〜12のいずれかに記載の保温性食品容器(4)。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の保温性食品容器(4)を製造するための方法であって、
前記容器(4)の外側本体(8)を用意する工程と、
互いに分離していて、前記外側本体(8)内に収容される、食品収容用の少なくとも二つのトレイ(12)を用意する工程と、
少なくとも一つの分離隔壁(24)の部位で前記少なくとも二つのトレイ(12)を分離させた状態に維持させて前記少なくとも二つのトレイ(12)が接合リング(20)によって互いに接合されるように、前記少なくとも二つのトレイ(12)を前記接合リング(20)と共にオーバーモールディングし、又は、前記少なくとも二つのトレイ(12)を前記接合リング(20)との一体成形品としてモールディングする工程と、
前記少なくとも二つのトレイ(12)と前記外側本体(8)との間に断熱要素(14)を介装させる工程と、
前記接合リング(20)と前記外側本体(8)との間に気密接合を構成するように前記接合リング(20)を前記外側本体(8)に溶接及び/又は接着する工程と、
前記外側本体(8)に取外し自在に接合可能な外側密閉蓋(16)を用意する工程を含んでいることを特徴とする、保温性食品容器(4)を製造するための方法
【請求項15】
前記接合リング(20)が前記少なくとも二つのトレイ(12)の食品収容コンパートメント(48)の部位と位置的に対応する部位に外側周辺リム(52)を備えるように前記接合リング(20)をモールディングする工程と、前記外側周辺リム(52)と気密な態様で接合可能であって、対応のトレイ(12)を気密な態様で夫々閉塞するようになっている複数の内側密閉蓋(56)を用意する工程を含んでいる、請求項14に記載の、保温性食品容器(4)を製造するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公開番号】特開2013−17815(P2013−17815A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145326(P2012−145326)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(512169729)アテール エス.アール.エル. (1)
【Fターム(参考)】