説明

保護ケーシングを有するカニューレ

自由なカニューレ端部のための旋回可能な保護ケーシングを有する、特に血液採取装置のための、有利にはカニューレホルダを備えたカニューレにおいては、前記保護ケーシングが、互いに向き合う両側壁と、これらの側壁に成形された少なくとも1つの薄片対(8a,8b)とを有していて、該薄片対(8a,8b)が、内方に向かって漏斗状に互いに当接し合って、この当接箇所で拡開可能な漏斗スリット(S)を形成しており、前記側壁(7a,7b)間に前記薄片対(8a,8b)によってカニューレ開口(8)が準備されていて、前記保護ケーシング(102)の周面が、前記カニューレ開口(8)を除いて閉じられている。本発明によれば、前記保護ケーシング(102)が、互いに嵌合し合っているインナーケーシング(2a)とアウターケーシング(11)とから成る2つのケーシング部分より構成されており、前記インナーケーシング(2a)が薄片対(8a,8b)を有していて、前記インナーケーシング(2a)を包囲するアウターケーシング(11)が前記インナーケーシング(2a)と比較してより低い弾性を有するスリーブとして構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に血液採取装置のための、カニューレホルダを備えたカニューレであって、前記血液採取装置が、自由なカニューレ端部のための旋回可能な保護ケーシングを有しており、該保護ケーシングが、互いに向き合う両側壁と、これらの側壁に成形された少なくとも1つの薄片対とを有していて、該薄片対が、内方に向かって漏斗状に互いに当接し合って、この当接箇所で拡開可能な漏斗スリットを形成しており、前記側壁間に前記薄片対によってカニューレ開口が準備されていて、前記保護ケーシングの周面が、前記カニューレ開口を除いて閉じられている形式のものに関する。
【0002】
US5490841(米国特許第5490841号明細書)、DE69127906T2(ドイツ連邦共和国第69127906号ヨーロッパ特許明細書の翻訳文)、DE69225609T2(ドイツ連邦共和国第69225609号ヨーロッパ特許明細書の翻訳文)、US3658061(米国特許第3658061号明細書)によれば、多くの変化実施例により構成された安全ケーシング若しくは保護ケーシングを備えた前記のような血液採取装置が公知である。この保護ケーシングは、注射器のカニューレのためにも使用することができる。使用者又は第三者がカニューレ若しくは、カニューレ内に残存する血液滴に接触しないように、また突き傷を避けるために、血液採取終了後に保護ケーシングがカニューレと同一列になるように旋回せしめられ、次いで、カニューレが保護ケーシングによって収容されるようになっている。保護ケーシングは、カニューレ侵入開口として、開放した細長いスリットを有している。細長い保護ケーシングが、カニューレと整列した位置に旋回せしめられると、スリットを通って保護ケーシング内にカニューレが侵入する。
【0003】
保護ケーシング内に進入旋回されたカニューレが保護ケーシングから意図せずに、自動的に再び突き出すのを避けるために、保護ケーシング内に拘束手段が設けられている。この拘束手段は、複数のフックとして構成されており、これらのフックは、保護ケーシング壁によって包囲されたカニューレ内に、及びひいては保護ケーシング内で保護ケーシングの底壁若しくは底領域内に配置されている。このー血液採取装置においては、保護ケーシングは、舌片及び緊締リングを介して、定置に又は回転可能にカニューレホルダに固定されている。
【0004】
公知の保護ケーシングにおいては、拘束手段としてのフックは、カニューレが自然に再び突き出してしまうのを確実に阻止することができない、という欠点がある。つまり、カニューレが側方で自由なフック端部に沿って再び保護ケーシングから滑り出すのを阻止することができない。例えば米国特許第5490841号明細書においては、スリットの側面から圧力が、ケーシングの全長に亘って延在する、カニューレを導入し易くするためのフレキシブルな薄片に作用し、それによってカニューレ侵入開口が拡開されるか若しくは広げられるようになっていることによって、導入スリットがさらに大きく開放するようになっている。従って、カニューレ/ニードルは、保護ケーシングから不意に突き出すことになる。それによってさらに、汚染された液体が流れ出すという問題もある。このことは度外視しても、付加的な抑制手段若しくはフックを備えた保護ケーシングは、製造費用がかかり、付加的なケーシングを破壊する(前記DE69127906T2、DE69225609T2参照)必要がある。また操作員は、自由なカニューレ端部をフック手段に導入する必要があるので、器用さ及び特に慎重さが必要とされる。
【0005】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式のカニューレを改良して、前記のような欠点がなく、特に使用者のために高い安全性が提供されるようにすることである。
【0006】
この課題を解決した本発明によれば、保護ケーシングが、互いに嵌合し合っているインナーケーシングとアウターケーシングとから成る2つのケーシング部分より構成されており、前記インナーケーシングが薄片対を有していて、前記インナーケーシングを包囲するアウターケーシングが前記インナーケーシングと比較してより低い弾性を有するスリーブとして構成されている。本発明によれば、保護ケーシングの一般的な一体構造形式から解放され、それによって、フレキシブルな薄片対(選択的に一方の薄片だけをフレキシブルに構成し、他方の薄片は剛性であってよい)に基づいて、必要であれば、可撓性の弾性的な材料より成るインナーケーシングが、十分に非弾性的な内実のアウターケーシングによって、外部から加えられる圧力に対して保護されるようになっているので、漏斗状スリットが不都合に広がることはない。
【0007】
この場合、インナーケーシングがカニューレホルダに接続されていて、このカニューレホルダに弾性の低いアウターケーシングが被せ嵌められるようになっていてもよいし、又はアウターケーシングがカニューレホルダに接続されていて、このカニューレホルダ内にインナーケーシングが挿入されるようになっていてもよい。
【0008】
前記課題を解決した本発明の別の構成によれば、保護ケーシングが、互いに嵌合し合っているインナーケーシングとアウターケーシングとから成る2つのケーシング部分より構成されており、前記インナーケーシングが薄片対を有していて、前記インナーケーシングを包囲するアウターケーシングが前記インナーケーシングと比較してより低い弾性を有するスリーブとして構成されており、前記アウターケーシングが、複数の接触面を備えていて、これらの接触面は、インナーケーシングの、互いに向き合う相補的な接触面に作用する外部の圧力が、前記漏斗状スリットに向かう閉鎖力を導入するようになっている。
【0009】
この場合、圧力を加えるか若しくは意図しない外部の圧力をさらに伝達するアウターケーシングが、傾斜面若しくはこれと類似の接触面と共に、所望の力の導入を可能にする手段を形成し、この力を導入する箇所において、インナーケーシングの上部の側壁の自由端部が、この自由端部に成形された内方に向かって互いに向き合う両薄片が係合し合い、これらの薄片が、これらの薄片に対して相補的な、インナーケーシングの相補的な傾斜面又はこれと類似の接触面が当接するようにすることが望ましい。これによって得られた面接触部が、移行箇所つまり薄片の領域及び薄片に隣接する領域における規定された力の導入のために役立つようになっている。アウターケーシングを介して導入された側方の圧力は、漏斗状スリットを確実に閉鎖維持する。つまり、互いに当接し合うフレキシブルな薄片の自由端部が常に互いに当接し合うように保たれる。
【0010】
しかも、インナーケーシングの漏斗状のカニューレ侵入開口の前に、インナーケーシングを包囲するアウターケーシングによる入口開口が設けられており、この入口開口は、インナーケーシングの両側壁に成形された、上方に突き出し、かつ互いに向き合うアウターケーシングヘッドウエブによって形成される。インナーケーシング特に薄片との接触は避けられ、それによって安全性の機能に不都合な影響が及ぼされないようになっている。入口開口は、例えば操作員の指がアウターケーシングヘッドウエブを通り過ぎて薄片に触れることができないようになっている。
【0011】
本発明のその他の特徴及び詳細は、血液採取装置に関連した図面を用いて以下に説明した本発明の説明、並びに請求項に記載されている。
【0012】
図1は、従来の保護ケーシングを備えた、カニューレホルダの全体の閉鎖前の状態を、血液採取装置の詳細として示し、
図2は、2つのケーシング部分より成る保護ケーシングを備えた、カニューレホルダの全体の閉鎖前の状態を、血液採取装置の詳細として示し、
図3は、図1の詳細を示す、保護ケーシングの横断面図、
図4は、図2の詳細を示す、保護ケーシングの拡大した横断面図、
図5は、図4に示した保護ケーシングの変化例である。
【0013】
図1及び図2に示した、図示していない血液採取管に接続可能なカニューレホルダ1は、一般的に曲げ倒された若しくは傾けられた保護ケーシング2,102を備えた状態で供給され、この場合、自由なカニューレ端部4aがそのカニューレに、若しくはダブルカニューレ3がその下側のカニューレ端部4bに、同様に研がれた尖端を有しており、このカニューレ端部4aは、別個の被覆スリーブ103(この被覆スリーブ103は使用前に取り除かれる)によって保護されている。次いで、使用後に、ダブルカニューレ3の自由なカニューレ端部4aは、保護ケーシング2若しくは102によって包囲され、この保護ケーシング2若しくは102内に閉じ込められる。保護ケーシング2若しくは102は、図示の実施例では、ベルトヒンジ又は舌片ヒンジ5によってその保持リング6に固定されており、この保持リング6は、自由なカニューレ端部4aに向いた側の、カニューレホルダ1の上端部に配置されている。
【0014】
射出成形によって軟質プラスチックより製造された公知の保護ケーシング2は、フレキシブルな薄片対8a,8b(以下では単に薄片と称呼されている)によって形成されたカニューレ侵入開口8を有している。前記薄片対8a,8bは、側壁7a,7bの自由な端部から成形されていて、内方に漏斗状に広がっていて、図示の実施例ではケーシング全長に亘って延在している。フレキシブルな薄片8a,8bの開口部領域には、図3に示されているように漏斗スリットSが設けられている。保護ケーシング2内に収容されたカニューレは、意図せずに薄片に圧縮力が加えられると、漏斗スリットS及びカニューレ開口8を介して、保護ケーシング2から不都合に再び滑り出すことがある。
【0015】
自由なカニューレ端部4aが不都合に滑り出す、このような欠点は、図2及び図4によれば、保護ケーシング102の2分割された実施例によって避けられる。図2及び図4に示した保護ケーシング102は、フレキシブルな薄片8a,8bを有する弾性的なインナーケーシング2aと、このインナーケーシング2aに被せ嵌められるアウターケーシング11とから成っており、このアウターケーシング11は、前記アウターケーシング2aと比較して、形状安定性が高く、かつ弾性度がより小さい材料より成っている。図示の実施例では、インナーケーシング2aは、ベルトヒンジ又は舌片ヒンジ5を介してカニューレホルダ1のホルダリング6に結合されている。選択的に、アウターケーシング11は保持リング6に結合されていて、次いで弾性的なインナーケーシング2aがアウターケーシング内に挿入されてもよい。いずれにしてもアウターケーシング11は、フレキシブルなインナーケーシング2aを、不意にもたらされる外部の圧力に対して保護し、漏斗スリットSを閉鎖状態で保持し、この漏斗スリットSは開放できないようになっている。
【0016】
アウターケーシング11は、漏斗状のカニューレ侵入開口8が入口開口9と同一列を成すように、構成されている。入口開口9は、アウターケーシングヘッドウエブ10a,10bによって形成されており、このアウターケーシングヘッドウエブ10a,10bは、インナーケーシング2a若しくはその側壁7a,7bの薄片8a,8bから上方に突き出していて、このアウターケーシングヘッドウエブ10a,10bの端縁部が互いに向き合うように成形されている。この突き出した領域の足部に、図示の実施例ではアウターケーシングヘッドウエブ10a,10bに選択的な曲率半径を有する内側輪郭12a,12bが設けられており、この内側輪郭12a,12bは接触面13a若しくは13bとしての傾斜面を備えている。これらの接触面13a,13b(傾斜面)は、インナーケーシング2aの側壁7a,7bの自由端部における相補的な接触面14a,14bとしての傾斜面に当接する。アウターケーシング11に作用する圧力は、前記接触面(傾斜面)13a,13b及び14a,14bを介して及び/又は側壁7a,7bを介して限定的にフレキシブルな薄片8a,8bに導入される。これによって、漏斗スリットSの開放は阻止される。しかも、接触面(傾斜面)13a,13b及び14a,14bは、アウターケーシング11若しくはインナーケーシング2aを互いに入れ子式に摺動させて同心的に組み立てる際のガイド部として用いられる。このことは、図5に示した保護ケーシング102の実施例においても当てはまる。図5に示した保護ケーシング102の実施例は、前記実施例のものと比較して、薄片対の一方の薄片8aだけがフレキシブルであって、他方の薄片8bは剛性に構成されている点だけが相違している。薄片対が全体的にフレキシブルであることに変わりはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の保護ケーシングを備えた、カニューレホルダの全体の閉鎖前の状態を示す、血液採取装置の概略的な側面図である。
【図2】2つのケーシング部分より成る本発明による保護ケーシングを備えた、カニューレホルダの全体の閉鎖前の状態を示す、血液採取装置の概略的な側面図である。
【図3】図1の詳細を示す、保護ケーシングの横断面図である。
【図4】図2の詳細を示す、保護ケーシングの拡大した横断面図である。
【図5】図4に示した保護ケーシングの変化例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殊に血液採取装置のための、カニューレホルダ(1)を備えたカニューレであって、前記血液採取装置が、自由なカニューレ端部(4a)のための旋回可能な保護ケーシング(102)を有しており、該保護ケーシング(102)が、互いに向き合う両側壁(7a,7b)と、これらの側壁(7a,7b)に成形された少なくとも1つの薄片対(8a,8b)とを有していて、該薄片対(8a,8b)が、内方に向かって漏斗状に互いに当接し合って、この当接箇所で拡開可能な漏斗スリット(S)を形成しており、前記側壁(7a,7b)間に前記薄片対(8a,8b)によってカニューレ開口(8)が準備されていて、前記保護ケーシング(102)の周面が、前記カニューレ開口(8)を除いて閉じられている形式のものにおいて、
前記保護ケーシング(102)が、互いに嵌合し合っているインナーケーシング(2a)とアウターケーシング(11)とから成る2つのケーシング部分より構成されており、前記インナーケーシング(2a)が薄片対(8a,8b)を有していて、前記インナーケーシング(2a)を包囲するアウターケーシング(11)が前記インナーケーシング(2a)と比較してより低い弾性を有するスリーブとして構成されていることを特徴とする、保護ケーシングを備えたカニューレ。
【請求項2】
殊に血液採取装置のための、カニューレホルダ(1)を備えたカニューレであって、前記血液採取装置が、自由なカニューレ端部(4a)のための旋回可能な保護ケーシング(102)を有しており、該保護ケーシング(102)が、互いに向き合う両側壁(7a,7b)と、これらの側壁(7a,7b)に成形された少なくとも1つの薄片対(8a,8b)とを有していて、該薄片対(8a,8b)が、内方に向かって漏斗状に互いに当接し合って、この当接箇所で拡開可能な漏斗スリット(S)を形成しており、前記側壁(7a,7b)間に前記薄片対(8a,8b)によってカニューレ開口(8)が準備されていて、前記保護ケーシング(102)の周面が、前記カニューレ開口(8)を除いて閉じられている形式のものにおいて、
前記保護ケーシング(102)が、互いに嵌合し合っているインナーケーシング(2a)とアウターケーシング(11)とから成る2つのケーシング部分より構成されており、前記インナーケーシング(2a)が薄片対(8a,8b)を有していて、前記インナーケーシング(2a)を包囲するアウターケーシング(11)が前記インナーケーシング(2a)と比較してより低い弾性を有するスリーブとして構成されており、前記アウターケーシング(11)が、複数の接触面(13,13b)を備えていて、これらの接触面(13,13b)は、インナーケーシング(2a)の、互いに向き合う相補的な接触面(14a,14b)に作用する外部の圧力が、前記漏斗状スリット(S)に向かう閉鎖力を導入するようになっていることを特徴とする、保護ケーシングを備えたカニューレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−529990(P2009−529990A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500696(P2009−500696)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000502
【国際公開番号】WO2007/110043
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(597154612)ザルシュテット アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】Sarstedt AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Rommelsdorfer Strasse, D−51588 Nuembrecht, Germany
【Fターム(参考)】