説明

保護層転写シート

【課題】サーマルヘッドへのカス付着が極めて少なく、かつ優れた光沢感を付与することのできる保護層転写シートを提供する。
【解決手段】基材1の一方の面に保護層3が設けられ、基材の他方の面に背面耐熱層5が設けられ、保護層と被転写体とを重ね合わせ背面耐熱層側からサーマルヘッドによる加熱処理が行われることで、被転写体上に保護層を転写可能な保護層転写シートであって、背面耐熱層には、平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のタルク6及び平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のシリコーン樹脂微粒子7の何れか一方または双方が添加されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護層転写シートに関し、さらに詳しくは、サーマルヘッドへのカス付着が極めて少なく、かつ優れた光沢感を付与することのできる保護層転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、昇華性染料を色材とする色材層がポリエステルフィルム等の基材の一方の面に設けられた転写シートと、被転写材、例えば、紙やプラスチックフィルム等に受容層を形成した受像シートを重ね合わせ、サーマルヘッドによる加熱処理(エネルギー印加処理)により昇華染料を受像シートに転写して画像を形成する昇華転写方式が知られている。このような昇華転写方式によれば、転写シートに印加するエネルギー量によってドット単位で染料の移行量を制御出来るため濃度階調が可能であることから、画像が非常に鮮明であり、且つ透明性、中間調の色再現性、階調性に優れフルカラー写真画像に匹敵する高品質の印画物を形成することができる。
【0003】
一方で、昇華転写方式は、上記の如く階調性画像の形成に優れるものの、形成された印画物は通常の印刷インキによるものとは異なり、色材が顔料でなく比較的低分子量の染料であり且つビヒクルが存在しないため、耐光性、耐候性、耐摩耗性等の耐久性に劣ると言う欠点を有する。そこで、近時、印画物上に保護層を設けるべく、予め保護層が設けられた転写シートを用い、サーマルヘッドにより加熱処理を行うことで印画物上に保護層を転写する方法が知られている。このような転写シートにおいては、保護層を転写する際の基材とサーマルヘッドとのスティッキング現象を防止するために、一般的に、基材の他方の面には背面層が設けられている。
【0004】
しかしながら、従来の背面層では、スティッキングを防止することができたとしても、背面層がサーマルヘッドにより削られ、削りカスがサーマルヘッドに付着してしまう問題が生じていた。サーマルヘッドに背面層の削りカスが付着した場合には、サーマルヘッドからの熱が転写シートに充分に伝わらず、削りカスが付着した箇所の転写シートの保護層は、未転写状態になってしまい印画物に充分な耐久性を付与することができなくなってしまう問題が生ずることとなる。
【0005】
このような状況下、背面層に粒子を含有させた転写シートが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。背面層に粒子が含有された転写シートによれば、背面層に含有された粒子によりサーマルヘッドに付着した削りカスを掻き取ることができ、サーマルヘッドに削りカスが付着した状態で保護層が転写されることによる保護層の未転写を防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−329194号公報
【特許文献2】特開2007−307764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかる背面層は粒子が含有されることでその表面形状は凹凸形状となっており、背面層側からサーマルヘッドにより加熱処理を行った場合には、背面層の凹凸が、転写される保護層にも影響を及ぼし、転写された保護層表面も凹凸形状となってしまう。このように保護層表面に凹凸形状が発現した場合には保護層の光沢性の低下を引き起こしてしまうこととなる。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、サーマルヘッドへのカス付着が極めて少なく、かつ優れた光沢感を付与することのできる保護層転写シートを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、基材の一方の面に保護層が設けられ、基材の他方の面に背面耐熱層が設けられ、保護層と被転写体とを重ね合わせ背面耐熱層側からサーマルヘッドによる加熱処理が行われることで、被転写体上に保護層を転写可能な保護層転写シートであって、前記背面耐熱層には、平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のタルク及び平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のシリコーン樹脂微粒子の何れか一方または双方が添加されてなることを特徴とする。
【0010】
また、前記タルクは、前記背面耐熱層の固形成分に対して0.1重量%以上2.0重量%以下の範囲で添加されていてもよく、また、前記シリコーン樹脂微粒子は、前記背面耐熱層の固形成分に対して0.1重量%以上2.0重量%以下の範囲で添加されていてもよい。
【0011】
また、前記背面耐熱層の塗工量が0.1g/m2以上2.0g/m2以下であってもよい。
【0012】
また、前記保護層には、平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のシリコンフィラーが添加されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保護層転写シートによれば、サーマルヘッドへのカス付着が極めて少なく、かつ保護層が転写された印画物に優れた光沢感を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願発明の保護層転写シートの層構成を示す概略断面図である。
【図2】背面耐熱層の表面に突出した粒子を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の保護層転写シート10について図面を用いて具体的に説明する。図1に示すように本発明の保護層転写シート10は、基材1の一方の面に保護層3が設けられ、基材1の他方の面に背面耐熱層5が設けられることにより形成されている。ここで、本発明の保護層転写シート10は、背面耐熱層5に平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のタルク及び平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のシリコーン樹脂微粒子の何れか一方または双方が添加されている点に特徴を有する。
【0016】
以下、保護層転写シート10を構成する各層について図1を用いてさらに詳細に説明する。
【0017】
(基材)
基材1は本発明の保護層転写シート10における必須の構成であり、後述する保護層3及び背面耐熱層5を保持するために設けられる。基材1の材料については特に限定されないが、保護層3を被転写体上に転写する際にサーマルヘッドにより加えられる熱に耐え、取り扱い上支障のない機械的特性を有することが望ましい。このような基材として、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルムまたはシートを挙げることができる。また、基材1の厚さは、その強度及び耐熱性が適切になるように材料に応じて適宜設定することができ、2.5〜100μm程度が一般的で、好ましくは1〜10μmである。
【0018】
(背面耐熱層)
図1に示すように基材1の他方の面(図1に示す場合には基材1の下面)には、背面耐熱層5が形成されている。背面耐熱層5は本発明の保護層転写シート10における必須の構成でありサーマルヘッドの滑り性を向上させ、スティッキングの防止のほか、後述するサーマルヘッドに付着したカスを除去するために設けられる。
【0019】
背面耐熱層5は、耐熱性のあるバインダー樹脂と、熱離型剤または滑剤の働きをする物質とを基本的な構成成分し、後述する保護層3の転写時にサーマルヘッドに付着する背面耐熱層5の削りカスを除去するためのタルク6及びシリコーン樹脂微粒子7の何れか一方または双方が添加されることにより形成される。
【0020】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、耐熱性を有する樹脂であれば特に限定はなく、このようなバインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、フッ化ビニリデン樹脂、ナイロン、ポリビニルカルバゾール、塩化ゴム、環化ゴム及びポリビニルアルコールが挙げられる。また、これらの樹脂は、ガラス転移点が60℃以上のもの、またはOH基またはCOOH基を有する熱可塑性樹脂にアミノ基を2個以上有する化合物またはジイソシアネートもしくはトリイソシアネートを加えて若干の架橋硬化を起させたものが好ましい。
【0021】
(熱離型剤、滑剤)
上記の熱可塑性樹脂に配合する、熱離型剤または滑剤は、ポリエチレンワックス、パラフィンワックスの様なワックス類、高級脂肪酸のアミド、エステル又は塩類、高級アルコール及びレシチン等のリン酸エステル類のような加熱により溶融してその作用をするものと、フッ素樹脂や無機物質の粉末のように、固体のままで役立つものとがある。尚、これらの滑剤又は熱離型剤に加えて、他の離型剤、例えば、フッ素含有樹脂の粉末、グアナミン樹脂の粉末及び木粉のいずれかを併用することも出来る。
【0022】
(タルク)
タルク6は、サーマルヘッドに付着したカスを除去する(掻き取る)ために背面耐熱層5に添加される。まず初めに、サーマルヘッド走行中にバインダー樹脂が削られることでサーマルヘッドに付着するカスを、背面耐熱層5に含有されるタルク6(後述のシリコーン樹脂微粒子7)が除去するメカニズムについて説明する。詳細は後述するが、図1に示すように、本願発明の保護層転写シート1を構成する背面耐熱層5には、タルク6(シリコーン樹脂微粒子7)が含有されており、含有されたタルク6(シリコーン樹脂微粒子7)の一部が突出(露出)することにより、背面耐熱層5の表面には凹凸が形成されている。タルク6(シリコーン樹脂微粒子7)は上記バインダー樹脂に対して硬度が高いことから、サーマルヘッドに付着したカスは、サーマルヘッド走行中に背面耐熱層5の表面に形成された凹凸(タルク6、シリコーン樹脂微粒子7)に掻き取られるように除去される。
【0023】
上述したように背面耐熱層5の表面に微細な凹凸を形成することで、サーマルヘッドに付着したカスを除去することができるものの、タルク6の粒径が0.1μm未満である場合には、タルク6を背面耐熱層5を形成するための塗工液内に十分に分散させた場合であっても、タルク6を背面耐熱層5の表面に殆ど突出させることができず(換言すれば、背面耐熱層5の表面に微細な凹凸が形成されず)、サーマルヘッドに付着したカスを殆ど除去することができない。
【0024】
また、サーマルヘッドに付着したカスの除去効果にのみ着目するのであれば、背面耐熱層5に平均粒径の大きいタルク6を添加し、背面耐熱層5の表面に形成される凹凸を大きくすることが好ましい。しかしながら、背面耐熱層の表面に形成される凹凸が大きくなった場合には、転写後の保護層3にも大きな凹凸が発現し転写後の保護層3の光沢度は低下することとなる。つまり、添加されるタルク6の粒径が大きいほど転写後の保護層3の光沢度は低下する。
【0025】
さらには、背面耐熱層5から突出した一のタルクに着目してみると、図2に示すように、タルク6の粒径を大きくしていった場合には、突出した部分(背面耐熱層5から突出している部分のタルクの体積)が、埋まっている部分(背面耐熱層5から突出していない部分のタルクの体積)よりも大きくなるように、タルク6(図2に示すタルクA)が背面耐熱層5から突出してしまう場合が生ずる。背面耐熱層5から突出するタルク6の突出量が、背面耐熱層5に埋まるタルク6の量よりも多くなった場合には、サーマルヘッド走行中に背面耐熱層5からタルク6が脱落する可能性が高くなり、タルク6の粒径が大きくなるほど突出するタルク6の突出量は多く、脱落するタルクの量も増加することとなる。このような点を考慮した本願発明の保護層転写シートを構成する背面耐熱層5に添加されるタルク6の平均粒径は、0.1μm以上3.0μm以下の範囲に規定されている。
【0026】
なお、図2は、背面耐熱層5の表面から突出した粒子を示す概略断面図であり、図2におけるタルクAは、突出している部分(斜線部)が埋まっている部分よりも多いタルク6を示し、図2におけるタルクBは、突出している部分(斜線部)が埋まっている部分よりも少ないタルク6を示す。
【0027】
平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のタルク6を添加した背面耐熱層5とすることで、転写後の保護層3の光沢性を低下させることなく、サーマルヘッドに付着したカスを効果的に除去することができる。さらには、タルク6を背面耐熱層5に添加することで、サーマルヘッドと背面耐熱層5との滑り性を向上させることが可能となるほか、含有されたタルク6が背面耐熱層5から脱落することもない。
【0028】
タルク6の添加量について特に限定はないが、タルク6の添加量が背面耐熱層5の固形成分に対して0.1重量%未満である場合には、タルク6を背面耐熱層5内に十分に分散させることができない虞が生ずる。タルク6が背面耐熱層5内に十分に分散されていない場合には、背面耐熱層5の表面に凹凸を発現させることができず、サーマルヘッドに付着したカスを除去する効果が低下してしまうこととなる。一方で、タルク6の添加量が0.1重量%以上であれば、背面耐熱層5の表面に凹凸を発現させることができるものの、タルク6の添加量が2.0重量%より多くなると、転写後の保護層の光沢度が低下してしまう可能性があるほか、背面耐熱層5とサーマルヘッドとの摩擦が高くなり、印画シワや、ヘッドに付着するカスが増加して印画不良(白抜けやおびき)が生ずる可能性がある。このような点を考慮すると、タルク6の添加量は、背面耐熱層5の固形成分に対して0.1重量%以上2.0重量%以下であることが好ましい。上記平均粒径のタルク6を当該範囲の添加量添加させることで、サーマルヘッド自体を削ることなく、サーマルヘッドに付着したカスを除去することができる。
【0029】
(シリコーン樹脂微粒子)
背面耐熱層5にタルク6に代えて、またはタルク6とともにシリコーン樹脂微粒子7を添加することとしても良い。シリコーン樹脂微粒子7がサーマルヘッドに付着したカスを除去するメカニズムは上述のタルク6と同様であり説明は省略する。
【0030】
また、上述したタルク6同様、シリコーン樹脂微粒子7の粒径が0.1μm未満である場合には、シリコーン樹脂微粒子7を塗工液内に十分に分散させた場合であってもシリコーン樹脂微粒子7が背面耐熱層5の表面に殆ど突出せず(背面耐熱層5の表面に微細な凹凸を形成することができず)、サーマルヘッドに付着したカスを殆ど除去することができない。また、シリコーン樹脂微粒子7の粒系を3.0μmより大きくしていった場合には、上述したタルク同様、背面耐熱層5からシリコーン樹脂微粒子7が脱落する脱落量が増加することとなる。さらには、シリコーン樹脂微粒子7の粒径が大きくなるにしたがって、転写後の保護層3の光沢度が低下することとなる。このような点を考慮した本願発明の保護層転写シートを構成する背面耐熱層5に添加されるシリコーン樹脂微粒子7の平均粒径は、0.1μm以上3.0μm以下の範囲に規定されている。
【0031】
シリコーン樹脂微粒子7の添加量について特に限定はないが、上述したタルク6と同様シリコーン樹脂微粒子7の添加量が背面耐熱層5の固形成分に対して0.1重量%以上2.0重量%以下であることが好ましい。
【0032】
シリコーン樹脂微粒子7の形状について特に限定はないが、その形状は真球状であることが好ましい。真球状のシリコーン樹脂微粒子7を添加することでより効果的にサーマルヘッドに付着したカスを除去することができる。
【0033】
なお、保護層3を転写する場合にサーマルヘッドから印加されるエネルギーは、昇華性染料層や、Y、M、C又はBkの熱溶融型色彩層を転写する場合に必要なエネルギーと比較して低いエネルギーでよいことから、保護層3を転写する場合には、サーマルヘッドに付着するカスも少ない。したがって、本発明の保護層転写シート10は、保護層3のみを転写する場合に特に好適に用いることができる。
【0034】
背面耐熱層5の配合について得に限定はないが、前記のバインダー樹脂100重量部に対し、上記の滑剤又は熱離型剤の作用をする物質を10〜100重量部の割合で配合し、背面耐熱層5の固形分に対し、0.1重量%以上2.0重量%以下の範囲でタルク6及び/又はシリコーン樹脂微粒子7が添加されていることが好ましい。また、背面耐熱層5の基材1上への形成方法についても特に限定はないが、例えば、適宜の溶剤で練ってインキとし、ロールコーティング法、グラビアコーティング法,スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法等のコーティング法により、基材1上に、塗布し、乾燥することによって行うことができる。
【0035】
背面耐熱層5の厚さについても特に限定はなく、背面耐熱層5に添加される粒子径(タルク6又はシリコーン樹脂微粒子7の粒径)及び背面耐熱層5内の粒子の分散状態(換言すれば、粒子の含有量)に応じて適宜設定することができる。しかしながら、背面耐熱層5の塗工量が0.1g/m2未満である場合には、上述したように、背面耐熱層5から突出している部分のタルク6(シリコーン樹脂微粒子7)の体積が、背面耐熱層5から突出していない部分のタルク6(シリコーン樹脂微粒子7)の体積よりも大きくなるように、背面耐熱層5からタルク6(シリコーン樹脂微粒子7)突出してしまう場合が生じ、これにより背面耐熱層5からタルク6(シリコーン樹脂微粒子7)が脱落する可能性が高くなる。また、背面耐熱層5の塗工量が2.0g/m2よりも多い場合には、タルク6(シリコーン樹脂微粒子7)が背面耐熱層5から殆ど突出せず背面耐熱層5の表面に凹凸が形成されない場合が生ずることとなる。このような点を考慮すると、背面耐熱層5の塗工量は0.1g/m2以上2.0g/m2以下であることが好ましい。
【0036】
(プライマー層)
図1に示すように基材1と背面耐熱層5との間にプライマー層4を設けることとしても良い。プライマー層4は、基材1と、背面耐熱層5との密着性を向上させるために設けられる層であり、本発明における任意の層である。プライマー層4として、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
【0037】
(保護層)
図1に示すように基材1上(図1に示す場合には基材1の上面)には基材1から剥離可能な保護層3が形成されている。保護層3は、本発明の保護層転写シート10における必須の構成であり、被転写体上に保護層3が転写されることにより形成される印画物の耐久性を向上させるとともに、保護層3が転写された印画物に光沢感を付与するために設けられる。
【0038】
保護層3を形成する材料は、透明性、光沢性を有する材料であれば特に限定されない。このような材料として、例えば、メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、紫外線吸収性樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線吸収性樹脂等が挙げられる。
【0039】
また、電離放射線硬化性樹脂を含有する保護層3は、耐可塑剤性や耐擦過性が特に優れている点で保護層3の材料として好適に用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては特に限定されることはなく、従来公知の電離放射線硬化性樹脂の中から適宜選択して用いることができ、例えば、ラジカル重合性のポリマー又はオリゴマーを電離放射線照射により架橋、硬化させ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線や紫外線によって重合架橋させたものを用いることができる。紫外線吸収性樹脂を含有する保護層3は、印画物に耐光性を付与することに優れている。
【0040】
紫外線吸収性樹脂としては、例えば、反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂又は上記の電離放射線硬化性樹脂に反応、結合させて得た樹脂を使用することができる。より具体的には、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダートアミン系のような従来公知の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、付加重合性二重結合(例えばビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基など)、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したものが挙げられる。
【0041】
保護層3の厚さについても特に限定はないが、保護層3の厚さが0.1μmより薄い場合には、保護層3が転写された印画物表面に耐久性を付与することが困難となる。このような点を考慮すると、保護層3の厚さは、通常0.1〜10μm程度、好ましくは0.5〜5.0μm程度である。
【0042】
また、上述したように背面耐熱層5には、タルク6及び/又はシリコーン樹脂微粒子7が添加され、これによりサーマルヘッドと背面耐熱層5との滑り性を向上させている。ここで、サーマルヘッドと背面耐熱層5との滑り性と、転写時の保護層3と被転写体との滑り性とのバランスによっては、印画物へ保護層3を転写した際に保護層3にシワが生ずる場合があり、滑り性のバランスを保つ必要がある。このような点を考慮すると、保護層3には滑り性のバランスを保つことができる粒子、例えば、シリコンフィラー等が添加されていることが好ましい。保護層3にシリコンフィラー等を添加することで、サーマルヘッドと背面耐熱層5との滑り性と、保護層3と被転写体とのバランスを維持することができ、印画物へ転写後の保護層3にシワが生ずることはなく、意匠性の高い保護層3を転写することが可能となる。シリコンフィラーの粒径について特に限定はないが、粒径の大きいシリコンフィラー等を添加した場合には、保護層3の表面に凹凸が形成されてしまうことから、シリコンフィラーの粒径は0.1μm〜3.0μm程度であることが好ましい。また、シリコンフィラーの添加量は、背面耐熱層5に添加されるタルク6及び/又はシリコーン樹脂微粒子7の添加量に応じて適宜選択することができ、添加量について特に限定はないが、保護層3の固形成分に対して0.1重量%以上2.0重量%程度であることが好ましい。
【0043】
なお、本実施形態においては、保護層3にシリコンフィラーを添加した例を中心に説明を行っているが、滑り性のバランスを保つことができる他の粒子を保護層3に添加することとしてもよい。このような粒子として、例えば、タルク、カオリン、マイカ、グラファイト、炭酸カルシウム、二硫化モリブデン、シリコーンゴムフィラー、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物等が挙げられ、なかでも、タルク、シリコーンゴムフィラー、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。
【0044】
保護層3の形成方法としては、上記樹脂の1種または2種以上を適当な溶剤により、溶解または分散させて保護層用塗工液を調製し、これを基材1上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
【0045】
(離型層)
図1に示すように基材1からの保護層3の剥離性を向上させるために、基材1と保護層3との間に離型層2を形成することとしてもよい。なお、離型層は本発明の保護層転写シート10における任意の層である。離型層2を形成する樹脂としては、従来公知の離型性樹脂であれば特に限定されることはなく、例えば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ−アミノ樹脂及び熱架橋性アルキッド−アミノ樹脂等が挙げられる。また、離型層2は、1種の樹脂からなるものであってもよく、2種以上の樹脂からなるものであってもよい。また離型層2は、離型性樹脂に加えイソシアネート化合物等の架橋剤、錫系触媒、アルミニウム系触媒等の触媒を用いて形成することとしてもよい。なお、離型層2は、転写時に被転写体側へ移行してもよく、基材1側に残ることとしてもよい。また離型層2の厚みは0.5〜5μm程度が一般的である。離型層2の形成方法としては、上記樹脂を適当な溶剤により、溶解または分散させて離型層用塗工液を調製し、これを基材1上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の従来公知の手段により塗布、乾燥して形成することができる。
【0046】
(ヒートシール層)
保護層3上(図1に示す場合には保護層3の上面)にヒートシール層を設けてもよい(図示しない)。ヒートシール層は、本発明の保護層転写シート10における任意の層であり保護層3の被転写体に対する密着性を向上させるために設けられる。ヒートシール層を形成する材料については特に限定はなく、従来公知の感熱接着剤等を使用できるが、ガラス転移温度が50〜100℃の熱可塑性樹脂から形成することがより好ましく、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂などの如く熱時接着性の良好な樹脂から、屈折率が1.52〜1.59程度のもので、また適当なガラス転移温度を有するものが好ましい。
【0047】
ヒートシール層の形成方法について特に限定はないが、上記樹脂を、メチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコールなどの溶剤に、溶解あるいは分散して、また必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、無機あるいは有機のフィラー成分、界面活性剤、離型剤等を添加し、塗布液を調製し、該塗布液を、従来公知のグラビアコート、グラビアリバースコートなどの方法で厚み0.5〜10μmになるように塗布および乾燥して形成することができる。
【0048】
(被転写体)
上記保護層転写シート10の転写に使用可能な被転写体(熱転写受像シート)としては、例えば、普通紙、上質紙、トレーシングペーパー、プラスチックフィルム等の従来公知の材料を挙げることができ、その材料について特に限定されない。
【実施例】
【0049】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0050】
(背面耐熱層用塗工液の準備)
<背面耐熱層用塗工液1>
ポリビニルブチラール樹脂 7部
(エスレックBX−1 積水化学工業(株))
リン酸エステル 6部
(プライサーフA208N 第一工業製薬(株))
タルク 0.3部
(ミクロエースFG15 日本タルク工業(株)製 平均粒径 1.5μm)
ポリイソシアネート 42部
(バーノックD450 大日本インキ化学工業(株))
【0051】
<背面耐熱層用塗工液2>
ポリビニルブチラール樹脂 7部
(エスレックBX−1 積水化学工業(株))
リン酸エステル 6部
(プライサーフA208N 第一工業製薬(株))
真球状シリコーン樹脂微粒子 0.3部
(XC99−A8808 株式会社タナック 社 平均粒径 0.7μm)
ポリイソシアネート 42部
(バーノックD450 大日本インキ化学工業(株)製)
【0052】
<背面耐熱層用塗工液3>
ポリビニルブチラール樹脂 4.55部
(エスレックBX−1 積水化学工業(株))
リン酸エステル 3部
(プライサーフA208N 第一工業製薬(株))
タルク 0.7部
(ミクロエースP−3、日本タルク工業(株)製 平均粒径 5.0μm)
ポリイソシアネート 21部
(バーノックD450 大日本インキ化学工業(株))
【0053】
<背面耐熱層塗工液4>
ポリアミドイミド樹脂 50部
(HR−15ET 東洋紡績社製)
ポリアミドイミドシリコーン樹脂 50部
(HR−14ET 東洋紡績社製)
ステアリルリン酸亜鉛 10部
(GF−100 日本油脂社製)
ポリエステル樹脂 3部
(バイロン220 東洋紡績社製)
タルク 10部
(ミクロエースP−3、日本タルク工業(株)製 平均粒径 5.0μm)
【0054】
(保護層用塗工液の準備)
<保護層用塗工液1>
メタクリル酸メチルとベンゾトリアゾール(反応性紫外線吸収剤)共重合体
(新中村化学工業(株)製バナレジン UVA−73A 固形分(42%))18部
上記共重合体における反応性紫外線吸収剤比率=20%
紫外線吸収剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製チヌビン928) 0.5部
光安定剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製チヌビン770) 0.5部
酸化防止剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製チバIruganox1076) 0.5部
【0055】
<保護層用塗工液2>
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 4.5部
(ソルバインCNL、日信化学工業(株)製)
紫外線吸収剤 15部
(ST−I UVA 40KT、ダイセル化学工業(株)製)
アクリル樹脂溶液 15部
(LP−45M 昭和インキ工業(株)製、固形分:13%)
【0056】
<保護層用塗工液3>
ポリエステル樹脂 20部
(バイロン700 東洋紡績(株)社製)
紫外線吸収ポリマー 13.5部
(PUVA−50M−40TM 大塚化学(株)製 40%溶液)
【0057】
(プライマー層用塗工液の準備)
<プライマー層用塗工液>
ポリエステル 16.67部
(商品名 ポリエスター WR−961、日本合成化学社製 固形分30%)
水 41.67部
イソプロピルアルコール 41.67部
【0058】
(離型層用塗工液の準備)
<離型層用塗工液>
シリコーン変性アクリル樹脂) 16部
(セルトップ226、ダイセル化学工業(株)製
シリコーン変性アクリル樹脂 8部
(セルトップ227、ダイセル化学工業(株)製)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 2.4部
(ソルバインA、日信化学工業(株)製)
硬化触媒 4.5部
(セルトップCAT−A、ダイセル化学工業(株)製
紫外線吸収剤 0.05部
(ユビテックスOB、日本チバガイギー(株)製)
トルエン 9.8部
メチルエチルケトン 9.8部
【0059】
(実施例1)
基材として厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、該基材の一方の面に上記の離型層用塗工液をグラビアコート法にて塗工し、厚さ1.0μmの離型層を形成した。次いで、該離型層上に上記の保護層用塗工液1をグラビアコート法にて塗工し、厚さ1.0μmの保護層3を形成した。また、基材の他方の面には、上記のプライマー層用塗工液をグラビアコート法にて塗工し、厚さ0.2μmのプライマー層4を形成した。次いで、プライマー層上に上記の背面耐熱層用塗工液1をグラビアコート法にて塗工し、厚さ0.4μmの背面耐熱層を形成して実施例1の保護層転写シートを得た。
【0060】
(実施例2)
保護層用塗工液1を保護層用塗工液2に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の保護層転写シートを得た。
【0061】
(実施例3)
背面耐熱層用塗工液1を背面耐熱層用塗工液2に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の保護層転写シートを得た。
【0062】
(実施例4)
背面耐熱層用塗工液1を背面耐熱層用塗工液2に、保護層用塗工液1を保護層用塗工液2に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例4の保護層転写シートを得た。
【0063】
(比較例1)
背面耐熱層用塗工液1を背面耐熱層用塗工液3に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1の保護層転写シートを得た。
【0064】
(比較例2)
背面耐熱層用塗工液1を背面耐熱層用塗工液4に、保護層用塗工液1を保護層用塗工液3に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例2の保護層転写シートを得た。
【0065】
次に、実施例1〜4と比較例1〜2の保護層転写シートを用いて以下の転写条件により熱転写受像シート上へ保護層の転写を行い、サーマルヘッドへのカス付着試験、シワ評価試験を行った。評価方法は以下の方法により行い、試験結果を表1に示す。
【0066】
(転写条件)
三菱電機社製昇華型プリンターCP9000を用い、専用受像紙シートに黒ベタ印画した。
【0067】
(サーマルヘッドへのカス付着試験)
サーマルヘッドへのカス付着試験は、保護層転写後のサーマルヘッドへのカス付着の有無を目視により行った。ここで、サーマルヘッドへのカス付着が殆どないものを○、カス付着があるものを×とした。
【0068】
(シワ評価試験)
シワ評価試験は、転写後の保護層の表面にシワが生じているか否かを目視により行った。ここで、保護層表面にシワが生じていないものを○、シワが生じているものを×とした。評価結果を表1に示す。
【0069】
(光沢度試験)
次に、以下の測定条件にて光沢度試験を行った。光沢度の評価は、
測定入射角20度:走査方向における光沢度が60以上、副走査方向における光沢度が50以上
測定入射角45度:走査方向における光沢度が90以上、副走査方向における光沢度が80以上であるものを○、それ以外のものを×とした。光沢度の評価結果を光沢度の測定結果と併せて表1に示す。
【0070】
光沢度の測定条件
測定機:日本電色(株)製 光沢度計 Gloss meter VG2000
測定入射角:20度、45度
測定方向:走査方向、副走査方向
【0071】
【表1】

【0072】
表1からも明らかなように、平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のタルク及び平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のシリコーン樹脂微粒子が含有された背面耐熱層を備える本発明の実施例1〜3は、サーマルヘッドへのカス付着、印画シワもなく良好な評価が得られた。また、本発明の実施例1〜3は、タルク及びシリコーン樹脂微粒子の平均粒径が本発明の範囲外となる比較例1、2と比較して高い光沢感を付与することができた。
【符号の説明】
【0073】
1…基材
2…離型層
3…保護層
4…プライマー層
5…背面耐熱層
6…タルク
7…シリコーン樹脂微粒子
10…保護層転写シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に保護層が設けられ、基材の他方の面に背面耐熱層が設けられ、保護層と被転写体とを重ね合わせ背面耐熱層側からサーマルヘッドによる加熱処理が行われることで、被転写体上に保護層を転写可能な保護層転写シートであって、
前記背面耐熱層には、平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のタルク及び平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のシリコーン樹脂微粒子の何れか一方または双方が添加されていることを特徴とする保護層転写シート。
【請求項2】
前記タルクは、前記背面耐熱層の固形成分に対して0.1重量%以上2.0重量%以下の範囲で添加されてなることを特徴とする請求項1に記載の保護層転写シート。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂微粒子は、前記背面耐熱層の固形成分に対して0.1重量%以上2.0重量%以下の範囲で添加されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保護層転写シート。
【請求項4】
前記背面耐熱層の塗工量が0.1g/m2以上2.0g/m2以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の保護層転写シート。
【請求項5】
前記保護層には、平均粒径が0.1μm以上3.0μm以下のシリコンフィラーが添加されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の保護層転写シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−68004(P2011−68004A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220293(P2009−220293)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】