説明

保護管端末キャップ

【課題】様々な外径の配管材や配線が保護管に収容された二重配管構造に対応可能な保護管端末キャップを提供する。
【解決手段】配管材21、22又は配線25が収容された保護管20の端末開口部20aを覆う被覆部1と、該被覆部1に連続して設けられ、保護管20の端部の外周面20bに固定可能な固定部2と、を備える保護管端末キャップ10であって、被覆部1から突出し、保護管20に収容された配管材21、22又は配線25を挿通可能な筒状部3、4を備えており、筒状部3、4は、被覆部1から離れるにつれて徐々に又は段階的に細くなっている部分を有する、保護管端末キャップ10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管材又は配線を収容した保護管の端末に被せて使用される保護管端末キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
建物に備えられた水回りや温水床暖房などの設備に対して給排水などを行う目的で、樹脂製の配管材が多用されている。このような配管材は、紫外線による劣化や他の部材との接触による損傷を防止するため、保護管に収容して用いられることがある。この保護管には、複数の配管材が収容される場合や、配線が収容される場合もある。以下、配管材又は配線と、それらを収容する保護管とを備えた構造を、二重配管構造という。
【0003】
二重配管構造とした場合、保護管に収容された配管材や配線は、保護管の端末から引き出され、それぞれ所定の設備に接続して使用される。また、このように保護管の端末から配管材や配線を引き出す場合、保護管と保護管内の配管材や配線との間の空間に塵埃、雨水、虫などの異物が侵入することを防止するなどの目的で、保護管の端末をキャップで覆うことがある。このように保護管の端末に被せて使用するキャップのことを保護管端末キャップということがある。
【0004】
従来の保護管端末キャップの例としては、例えば非特許文献1に開示されているものがある。非特許文献1に開示された保護管端末キャップは、保護管に収容された配管材を挿通可能な筒状部が2つ設けられている。また、保護管に収容された配線を挿通可能な筒状部も1つ設けられている。非特許文献1に開示されているような従来の保護管端末キャップにおいて、各筒状部の内径は、該筒状部に挿通される配管材又は配線の外径と略同一であり、該筒状部の軸心方向の全長に亘って略一定となっている。
【0005】
また、特許文献1には、保護管の端末開口部を被覆する被覆部と、保護管の管端周壁部に係止する係止部を有し被覆部に連設される取付部とを備え、被覆部は、保護管に挿通する被保護管の外径に対応した範囲内に、他の部分より強度が弱い貫通部を有することを特徴とする保護管端末キャップが開示されている。また、特許文献2には、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体であって、メルトフローレートが0.1〜95g/10分、密度が0.888〜0.930g/cm、Q値(Mw/Mn)が2.5未満であるエチレン・α−オレフィン共重合体を成形して成ることを特徴とするプラスチック二重配管の端末シーリングキャップが開示されている。さらに、特許文献3には、配線・配管材が挿通されその径方向の移動を規制する挿通孔と、外面に軸方向に連続する凹凸が形成され前記挿通孔から引き出された配線・配管材を内部に収容して保護する波付保護管が接続される接続部とを備えた接続具に波付保護管が接続される波付保護管の接続構造であって、接続部は、波付保護管の外面に形成された凹部に嵌入してその軸方向の移動を規制する移動規制突部を有し、接続部に接続された波付保護管は、その内面に配線・配管材が当接することにより径方向の移動を規制されて移動規制突部から離脱するのが防止されることを特徴とする波付保護管の接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−208683号公報
【特許文献2】特開平9−137154号公報
【特許文献3】特開2010−112511号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】意匠登録第996117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、保護管端末キャップは、保護管と該保護管内の配管材や配線との間の空間に塵埃、雨水、虫などの異物が侵入することを防止するなどの目的で用いられる。よって、保護管に収容される配管材又は配線と、それらを挿通させるために保護管端末キャップに設けられた孔(筒状部)との間に形成される隙間は小さいことが好ましい。そのため、上述したように、従来の保護管端末キャップにおいて各筒状部の内径は、該筒状部に挿通される配管材又は配線の外径と略同一になるように形成されている。
【0009】
しかしながら、保護管に収容される配管材には様々な外径のものがある。したがって、上記非特許文献1や特許文献1〜3に開示されているような従来の保護管端末キャップでは、保護管に収容される配管材と、配管材を挿通させるために保護管端末キャップに設けられた孔(筒状部)との間に形成される隙間を小さくするために、保護管に収容する配管材などの外径や、保護管の収容する配管材などの組み合わせに応じた様々な形態の保護管端末キャップを用意しなければならなかった。すなわち、従来の保護管端末キャップでは、保護管に収容する配管材などを挿通させるための孔や筒状部の内径が異なる形態のものを多種類作製しなければならず、コストがかかるという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、様々な外径の配管材や配線が保護管に収容された二重配管構造に対応可能な保護管端末キャップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。
【0012】
本発明は、配管材又は配線が収容された保護管の端末開口部を覆う被覆部と、該被覆部に連続して設けられ、保護管の端部の外周面に固定可能な固定部と、を備える保護管端末キャップであって、被覆部から突出し、保護管に収容された配管材又は配線を挿通可能な筒状部を備えており、該筒状部は、被覆部から離れるにつれて徐々に又は段階的に細くなっている部分を有する、保護管端末キャップである。
【0013】
上記のように、保護管に収容された配管材又は配線を挿通可能な筒状部を、軸心方向において内径が一定ではない部分を有する形態とすることにより、適切な箇所で筒状部を切断すれば、その切断部分における筒状部の内径を適切な大きさにすることができる。すなわち、筒状部を適切な箇所で切断することによって、筒状部において最も内径が小さい部分の内径(以下、「最小内径」ということがある。)を、該筒状部に挿通させる配管材又は配線の外径に合わせて変更することができる。よって、様々な外径の配管材又は配線に対して、筒状部に挿通した際に径方向における移動を抑制し、筒状部と該筒状部に挿通された配管材又は配線との隙間から保護管内に異物が侵入することを防止できる。したがって、様々な外径の配管材や配線が保護管に収容された二重配管構造に対応可能な保護管端末キャップとすることができる。なお、筒状部を切断せずとも筒状部の最小内径と筒状部に挿通させる配管材又は配線の外径が略等しい場合は、筒状部を切断する必要はない。
【0014】
本発明の保護管端末キャップにおいて、筒状部が、被覆部から固定部とは反対側に突出している形態とすることが好ましい。
【0015】
上記のように、筒状部が被覆部から固定部とは反対側に突出している形態とすることによって、筒状部を適切な箇所で切断することが容易になる。すなわち、筒状部の最小内径を、該筒状部に挿通させる配管材又は配線の外径に合わせることが容易になる。したがって、様々な外径の配管材や配線が保護管に収容された二重配管構造に対応させることが容易な保護管端末キャップとすることができる。
【0016】
本発明の保護管端末キャップにおいて、筒状部を複数備えている形態とすることが好ましい。
【0017】
筒状部を複数備える形態とすることによって、保護管に複数の配管材又は配線が収容された二重配管構造に対応可能となる。なお、筒状部を複数備える場合、各筒状部は同様の形態であってもよく、夫々内径や軸方向の長さを適宜変更した形態であってもよい。
【0018】
本発明の保護管端末キャップにおいて、さらに、被覆部から突出し、被覆部側の端部に開口部を有するとともに他端側に底部を有する有底筒状部を備えており、該有底筒状部は、底部を切除することによって、保護管に収容された配管材又は配線を挿通可能であることが好ましい。
【0019】
従来の保護管端末キャップでは、保護管内に配線を収容した二重配管構造に使用する場合と保護管内に配線が収容されていない二重配管構造に使用する場合とで、それぞれ異なる形態とする必要があった。配線を収容している保護管に用いる形態の保護管端末キャップを、配線を収容していない保護管に用いれば、配線を挿通すべき孔(筒状部)から保護管内に異物が侵入する虞があるからである。本発明の保護管端末キャップによれば、上記のような有底筒状部を備える形態とすることによって、保護管内に配線が収容されている二重配管構造に使用する場合は、有底筒状部の底部を切除することで該有底筒状部を筒状にして配線を挿通させることができる。一方、保護管内に配線が収容されていない二重配管構造に使用する場合は、有底筒状部の底部を切除せずにそのままの形態で使用することにより、保護管内に異物が侵入することを防止できる。このように、上記有底筒状部を備える形態とすることによって、保護管内に配線が収容された二重配管構造に使用する場合と配線が収容されていない二重配管構造に使用する場合とで形態を変更する必要がなくなる。なお、上記の説明では、保護管内に配線が収容された二重配管構造に用いる場合と保護管内に配線が収容されてない二重配管構造に用いる場合とを比較して、有底筒状部を備える保護管端末キャップの利点を説明したが、上記と同様の理由から、有底筒状部を備えることによって、保護管内に収容される配管材の数が異なる二重配管構造にも形態を変更させずに対応可能な保護管端末キャップとすることができる。すなわち、保護管内に収容される配管材の数に合わせて有底筒状部の底部を切除し、配管材を挿通させる筒状部を形成することができる。
【0020】
本発明の保護管端末キャップにおいて、上記有底筒状部を備える場合、該有底筒状部が、被覆部から固定部とは反対側に突出していることが好ましい。
【0021】
上記のように、有底筒状部が被覆部から固定部とは反対側に突出している形態とすることによって、有底筒状部の底部を切除し、配管材又は配線を挿通させる筒状部を形成することが容易になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、様々な外径の配管材や配線が保護管に収容された二重配管構造に対応可能な保護管端末キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1(a)は保護管端末キャップ10を概略的に示す正面図である。図1(b)は保護管端末キャップ10を概略的に示す背面図である。図1(c)は保護管端末キャップ10を概略的に示す側面図である。
【図2】図2(a)は保護管端末キャップ10を概略的に示す平面図である。図2(b)は保護管端末キャップ10を概略的に示す底面図である。
【図3】図3(a)は図2(a)に示したIIIa−IIIaにおける保護管端末キャップ10の断面を概略的に示す図である。図3(b)は図2(a)に示したIIIb−IIIbにおける保護管端末キャップ10の断面を概略的に示す図である。
【図4】保護管端末キャップ10の使用例を概略的に示す図である。図4(a)は図3(a)に対応した断面図である。図4(b)は図3(b)に対応した断面図である。
【図5】保護管端末キャップ10の他の使用例を概略的に示す図であり、図4(a)に対応した断面図である。
【図6】保護管端末キャップ50を概略的に示す図であり、図3(a)に対応した断面図である。
【図7】保護管端末キャップ60を概略的に示す図であり、図3(a)に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。なお、各図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜簡略化している。また、各図面において、同様の構成のものには同じ符号を付しており、繰り返しとなる符号は一部省略している場合がある。
【0025】
図1(a)は保護管端末キャップ10を概略的に示す正面図である。図1(b)は保護管端末キャップ10を概略的に示す背面図である。図1(c)は保護管端末キャップ10を概略的に示す側面図である。図1(a)、図1(b)及び図1(c)において、左右方向が筒状部3、4の軸心方向である。図2(a)は保護管端末キャップ10を概略的に示す平面図である。図2(b)は保護管端末キャップ10を概略的に示す底面図である。図2(a)及び図2(b)において、紙面奥/手前方向が筒状部3、4の軸心方向である。図3(a)は図2(a)に示したIIIa−IIIaにおける保護管端末キャップ10の断面を概略的に示す図である。図3(b)は図2(a)に示したIIIb−IIIbにおける保護管端末キャップ10の断面を概略的に示す図である。
【0026】
保護管端末キャップ10は、保護管端末キャップ10を保護管に取り付けた際に、該保護管の端末開口部を覆う被覆部1と、該被覆部1に連続して設けられており、保護管端末キャップ10を保護管に取り付けた際に、該保護管の端部の外周面に固定可能な固定部2とを備えている。また、保護管端末キャップ10は、被覆部1から突出した筒状部3、4及び有底筒状部5を備えている。
【0027】
図4に、保護管端末キャップ10の使用例を概略的に示した。図4(a)は図3(a)に対応した断面図である。図4(b)は図3(b)に対応した断面図である。
【0028】
図4(a)及び図4(b)に示したように、被覆部1は、保護管端末キャップ10を保護管20に取り付けた際に、後に詳述する筒状部3、4及び有底筒状部5の開口部が形成された部分を除いて、保護管20の末端開口部20aを覆う部位である。一方、固定部2は、保護管端末キャップ10を保護管20に取り付けた際に、保護管20の端部の外周面20bに固定可能な部位である。具体的には、固定部2の内周面側には全周に亘って複数の突起部6、6、6が形成されており、該突起部6、6、6を利用して固定部2を保護管20の端部の外周面20bに固定することができる。
【0029】
次に、筒状部3、4について説明する。筒状部3、4は、保護管に収容された配管材又は配線を挿通可能な部位である。図1などに示したように、筒状部3、4は、被覆部1から離れるにつれて段階的に細くなっている部分を有している。より具体的には、筒状部3は、被覆部1に連続して設けられ、軸心方向において内径が略一定である第1の部位3aと、第1の部位3aに連続して設けられ、第1の部位3aから離れるにつれて内径が徐々に細くなっている傾斜部3cと、傾斜部3cに連続して設けられ、軸心方向において内径が略一定である第2の部位3bとを備えている。第2の部位3bは、第1の部位3aよりも内径が細くなっている。一方、筒状部4は、被覆部1に連続して設けられ、軸心方向において内径が略一定である第1の部位4aと、第1の部位4aから離れるにつれて内径が徐々に細くなっている傾斜部4cと、傾斜部4cに連続して設けられ、軸心方向において内径が略一定である第2の部位4bとを備えている。第2の部位4bは、第1の部位4aよりも内径が細くなっている。
【0030】
上記のように、筒状部3、4は軸心方向において内径が一定ではない部分を有している。そのため、適切な箇所で筒状部3、4を切断すれば、その切断部分における筒状部3、4の内径を適切な大きさにすることができ、筒状部3、4の最小内径を、該筒状部3、4に挿通させる配管材又は配線の外径に合わせることができる。すなわち、筒状部3、4を適切な箇所で切断することによって、筒状部3、4の最小内径を、筒状部3、4に挿通させる配管材又は配線の外径に合わせて変更することができる。よって、様々な外径の配管材又は配線に対して、筒状部3、4に挿通した際に挿通された配管材又は配線が自在に動くのを抑え、筒状部3、4と該筒状部3、4に挿通された配管材又は配線との隙間から保護管内に異物が侵入することを防止できる。したがって、保護管端末キャップ10は、様々な外径の配管材又は配線が保護管に収容された二重配管構造に対応可能である。
【0031】
なお、筒状部3、4を切断せずとも筒状部3、4の最小内径と筒状部3、4に挿通させる配管材又は配線の外径が略等しい場合は、筒状部3、4を切断する必要はない。例えば、図4(a)及び図4(b)に示した保護管端末キャップ10の使用例では、筒状部3の第2の部位3bの内径と略同一の外径を有する配管材21を筒状部3に挿通し、筒状部4の第2の部位4bの内径と略同一の外径を有する配管材22を筒状部4に挿通しているため、筒状部3、4を切断せずにそのまま使用している。
【0032】
一方、筒状部3、4に挿通する配管材が第2の部位3b、4bより太い場合には、筒状部3、4の一部を切断して、その切断部における筒状部3、4の内径を筒状部3、4に挿通する配管材の外径に合わせることができる。図5は、保護管端末キャップ10の他の使用例を概略的に示す図であり、図4(a)に対応した断面図である。図5に示した符号3’、4’は、それぞれ筒状部3、4の一部を切断した筒状部を示している。図5に示した使用例では、筒状部3、4の一部を切断し、第1の部位3aの内径と略同一の外径を有する配管材23を筒状部3’に挿通し、第1の部位4aの内径と略同一の外径を有する配管材24を筒状部4’に挿通している。
【0033】
上述したように、保護管端末キャップ10によれば、保護管に収容された配管材又は配線の外径に応じて、筒状部3、4の端部の内径を適切な大きさにすることができる。そのため、筒状部3、4に挿通される配管材又は配線の外径が異なる場合であっても、別形態の保護管端末キャップを用意することなく、筒状部3、4と筒状部3、4に挿通された配管材又は配線との間に形成される間隙を小さくし、保護管内に異物が侵入することを防止できる。
【0034】
保護管端末キャップ10において、筒状部3、4の第1の部位3a、4aの軸心方向の長さL1(図3(a)参照)及び第2の部位3b、4bの軸心方向の長さL2(図3(a)参照)は特に限定されないが、筒状部3、4に配管材又は配線を挿通した際に、挿通された配管材又は配線が自在に動くのを抑えられる程度の長さであることが好ましい。また、L1、L2が長すぎる場合は、保護管端末キャップ10の取り扱いが難しくなる。これらの観点から、例えば、L1は、5mm以上40mm以下とすることが好ましく、10mm以上30mm以下とすることがより好ましく、15mm以上25mm以下とすることがさらに好ましい。L2は、3mm以上15mm以下とすることが好ましく、4mm以上13mm以下とすることがより好ましく、より好ましくは5mm以上10mm以下とすることがさらに好ましい。また、筒状部3、4の第1の部位3a、4aの内径d1(図3(a)参照)及び第2の部位3b、4bの内径d2(図3(a)参照)は特に限定されず、筒状部3、4に挿通することが想定される配管材などの外径に応じて、適宜変更可能である。例えば、d1及びd2は、それぞれ挿通する配管材の外径に対して、+0.05mm以上、+0.8mm以下であることが好ましく、+0.1mm以上、+0.5mm以下とすることがより好ましく、+0.15mm以上、+0.3mm以下とすることがさらに好ましい。d1及びd2を上記範囲とすることによって、配管材などを挿通することが容易になるとともに、筒状部と該筒状部に挿通された配管材などとの間から保護管内に異物が侵入することを防止し易くなる。
【0035】
次に、有底筒状部5について説明する。保護管端末キャップ10は、被覆部1から突出し、被覆部1側の端部に開口部5aを有するとともに他端側に底部5bを有する有底筒状部5を備えている。有底筒状部5の底部5bを切除することによって、筒状部を形成し、該筒状部に配管材又は配線を挿通することができる。例えば、図4(b)に示したように、有底筒状部5の底部5bを切除して筒状部5’を形成し、保護管20に収容された配線25を筒状部5’に挿通させることができる。
【0036】
保護管端末キャップ10によれば、有底筒状部5を備える形態とすることによって、保護管端末キャップ10を取り付ける保護管内に配線が収容されている場合は有底筒状部5の底部5bを切除して筒状部5’を形成することにより、配線を筒状部5’に挿通させることができる。一方、保護管端末キャップ10を取り付ける保護管内に配線が収容されていない場合は、有底筒状部5の底部5bを切除せずに有底筒状部5をそのままの形態で使用することにより、保護管内に異物が侵入することを防止できる。このように、保護管端末キャップ10によれば、有底筒状部5を備える形態とすることによって、配線が収容された保護管に使用する場合と配線が収容されていない保護管に使用する場合とで別々に保護管端末キャップを用意する必要がなくなる。
【0037】
また、筒状部5’に配管材を挿通するとすれば、上記と同様の理由から、保護管端末キャップ10を取り付ける保護管内に収容される配管材の数が異なる場合であっても、形態を変更させずに保護管端末キャップ10を取り付けることができる。すなわち、保護管端末キャップ10を取り付ける保護管に収容された配管材の数が2本の場合(筒状部3、4に配管材を挿通させ、有底筒状部5の底部5bは切除しない。)でも3本の場合(筒状部3、4、5’に配管材を挿通させる。)でも、保護管端末キャップ10を取り付けることができる。
【0038】
保護管端末キャップ10において、有底筒状部5の軸心方向の長さL3(図3(b)参照)は特に限定されないが、底部5bを切除して形成した筒状部5’に配管材又は配線を挿通した際に、挿通された配管材又は配線が自在に動くのを抑えられる程度の長さであることが好ましい。また、L3が長すぎる場合は、保護管端末キャップ10の取り扱いが難しくなる。これらの観点から、例えば、L3は、10mm以上40mm以下であることが好ましく、12mm以上30mm以下であることがより好ましく、15mm以上25mm以下であることがさらに好ましい。また、有底筒状部5の内径d3(図3(b)参照)は特に限定されず、底部5bを切除して形成した筒状部5’に挿通することが想定される配線などの外径に応じて、適宜変更可能である。
【0039】
これまでに説明したように、保護管端末キャップ10によれば、様々な外径の配管材や配線が保護管に収容された二重配管構造に対して、形態を変更させずに使用することができる。よって、例えば、金型を用いて保護管端末キャップ10を作製する場合は、使用する金型の種類を少なくすることができる。そのため、保護管端末キャップ10の生産コストを抑えることができる。また、使用する金型の種類を少なくすることによって、生産時において、金型を交換する工程を削減できるという利点も有する。さらに、用意すべき保護管端末キャップ10の種類を少なくすることができるので、在庫管理が容易になり、在庫維持管理費用を低減することもできる。
【0040】
保護管端末キャップ10を構成する材料は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系の樹脂によって構成することができる。中でもポリエチレン樹脂が好ましく、低密度ポリエチレン樹脂がより好ましい。当該低密度ポリエチレン樹脂で市販されているものとしては、例えば、日本ポリエチレン株式会社製の「カーネル」やデュポンダウエラストマーズ株式会社製の「エンゲージ」等がある。
【0041】
また、保護管端末キャップ10の製造方法は特に限定されないが、例えば、射出成形によって製造することができる。射出成形によって保護管端末キャップ10を製造する場合、一般的に入手できる市販の射出成形機を使用することができる。この場合、上記原料を成形できる範囲で、射出温度、射出圧力、冷却温度、冷却時間などの射出条件を適宜調整することができる。
【0042】
保護管端末キャップ10を適用可能な二重配管構造は特に限定されず、例えば、温水床暖房などの設備に用いられる給排水を行う配管材が保護管に収容された二重配管構造に適用することができる。温水床暖房などの設備に用いられる給排水を行う配管材は、例えば、ポリオレフィン系の樹脂管で構成することができる。より具体的には、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、PE−RT管、アルミ層をポリエチレン樹脂で挟んだアルミ複合管などで構成することができる。
【0043】
これまでの本発明の説明では、保護管内に2本の配管材及び1本の配線が収容された二重配管構造に用いる形態の保護管端末キャップ10を例示して説明した。すなわち、2つの筒状部3、4にそれぞれ配管材を挿通し、1つの有底筒状部5の底部5bを切除して形成した筒状部5’に配線を挿通させることができる形態の保護管端末キャップ10について主に説明した。しかしながら、本発明の保護管端末キャップはかかる形態に限定されるものではない。本発明の保護管端末キャップは、保護管の端末開口部を覆う被覆部から突出し、保護管に収容された配管材又は配線を挿通可能であり、被覆部から離れるにつれて徐々に又は段階的に細くなっている部分を有する筒状部を、少なくとも1つ備えていればよい。本発明の保護管端末キャップに備えられる筒状部及び有底筒状部の数は、該保護管端末キャップを取り付ける保護管内に収容された配管材及び配線の本数に応じて適宜変更可能である。
【0044】
また、これまでの本発明の説明では、有底筒状部5の内径(底部5bを除く。)が軸心方向において一定である形態を図示して説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。本発明の保護管端末キャップに備えられる有底筒状部も筒状部と同様に、内径が一定ではない形態とすることができる。
【0045】
また、これまでの本発明の説明では、筒状部3、4が被覆部1から離れるにつれて段階的に細くなっている形態を例示して説明したが、本発明の保護管端末キャップに備えられる筒状部を段階的に細くする場合、その段数は何段階であってもよい。また、発明の保護管端末キャップに備えられる筒状部は、被覆部から離れるにつれて徐々に細くなっている形態とすることもできる。
【0046】
図6は、保護管端末キャップ50を概略的に示す図であり、図3(a)に対応した断面図である。保護管端末キャップ50は、被覆部1から離れるにつれて徐々に細くなっている筒状部53、54を備えている。当該筒状部53、54を適切な箇所で切断すれば、その切断部における筒状部53、54の内径を適切な大きさに調整することができる。したがって、上述した保護管端末キャップ10と同様に、保護管端末キャップ50は、様々な外径の配管材や配線が保護管に収容された二重配管構造に対応可能である。
【0047】
また、これまでの本発明の説明では、筒状部3、4及び有底筒状部5が被覆部1から固定部2とは反対側に突出している形態を例示して説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。
【0048】
図7は、保護管端末キャップ60を概略的に示す図であり、図3(a)に対応する断面図である。保護管端末キャップ60は、被覆部1から固定部2側に突出するようにして形成された筒状部63、64を備えている。保護管端末キャップ60において、筒状部63、64は、突出している方向が異なる以外は、上述した保護管端末キャップ10に備えられる筒状部3、4と同様とすることができる。このような形態であっても、筒状部63、64を適切な箇所で切断することによって、その切断部における筒状部63、64の内径を適切な大きさにすることができる。したがって、上述した保護管端末キャップ10と同様に、保護管端末キャップ60は、様々な外径の配管材や配線が保護管に収容された二重配管構造に対応可能である。なお、図7には有底筒状部は図示していないが、有底筒状部も被覆部1から固定部2側に突出した形態とすることができる。ただし、被覆部から固定部とは反対側に筒状部及び有底筒状部が突出している形態の方が、筒状部及び有底筒状部を切断し易いため、好ましい。
【0049】
また、これまでの本発明の説明では、断面が略楕円である固定部2を備える形態の保護管端末キャップ10を例示して説明したが、本発明の保護管端末キャップはかかる形態に限定されるものではない。本発明の保護管端末キャップに備えられる固定部の形状は、本発明の保護管端末キャップを取り付ける保護管の形状に応じて適宜変更可能である。したがって、固定部の断面は、例えば円形であってもよい。
【0050】
また、これまでの本発明の説明では、固定部2の内周面側に設けられた突起部6、6、6を用いて固定部2を保護管20の端部の外周面20bに固定する形態を例示して説明したが、本発明の保護管端末キャップはかかる形態に限定されるものではない。本発明の保護管端末キャップに備えられる固定部を保護管の端部の外周面に固定する手段は特に限定されず、例えば、固定部の内周面側に公知の方法によって滑り止めを設けてもよい。
【実施例】
【0051】
以下に説明する配管材、該配管材を収容する保護管、及び保護管端末キャップを用意した。
・保護管:保護管端末キャップを取り付ける側の端末開口部の外周が、長外径36.5mm、短外径23.0mmの略楕円形である保護管。
・配管材:外径10mmの配管材、及び外径13mmの配管材。
・保護管端末キャップ:保護管の端部の外周面に固定される固定部は、長内径37.5mm、短内径23.7mmの略楕円形とした。保護管の端部の外周面に固定部を固定するため、固定部の内周面側には、全周に亘って形成された突起部を軸心方向に並列するように3列設けた。該突起部の高さは0.5mmとした。筒状部は保護管端末キャップ10のように段階的に内径が変化する形態とし、被覆部側の内径d1(図3(a)参照)を13.2mm、他端側の内径d2(図3(a)参照)を10.2mmとした。有底筒状部の内径d3(図3(b)参照)は、5mmとした。また、筒状部の肉厚は1mm程度とし、固定部の肉厚は1.5mm程度とした。
【0052】
外径13mmの配管材を保護管端末キャップの筒状部に挿通させる場合は、内径が13.2mmの箇所で該筒状部を切断して、配管材を筒状部に挿通させた。一方、外径10mmの配管材を保護管端末キャップの筒状部に挿通させる場合は、該筒状部を切断せずに、配管材を筒状部に挿通させた。また、有底筒状部の底部を切断して筒状部を形成し、該筒状部には配線を挿通させた。その結果、上記のように外径が異なる配管材を備えた二重配管構造に取り付ける場合であっても、保護管内に配線を収容する場合及び収容しない場合であっても、一種類の保護管端末キャップで対応することができた。
【符号の説明】
【0053】
1 被覆部
2 固定部
3 筒状部
3’ 筒状部
4 筒状部
4’ 筒状部
5 有底筒状部
5’ 筒状部
6 突起部
10 保護管端末キャップ
20 保護管
20a 端末開口部
20b 外周面
21、22、23、24 配管材
25 配線
50 保護管端末キャップ
53、54 筒状部
60 保護管端末キャップ
63、64 筒状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管材又は配線が収容された保護管の端末開口部を覆う被覆部と、該被覆部に連続して設けられ、前記保護管の端部の外周面に固定可能な固定部と、を備える保護管端末キャップであって、
前記被覆部から突出し、前記保護管に収容された前記配管材又は配線を挿通可能な筒状部を備えており、
前記筒状部は、前記被覆部から離れるにつれて徐々に又は段階的に細くなっている部分を有する、保護管端末キャップ。
【請求項2】
前記筒状部が、前記被覆部から前記固定部とは反対側に突出している、請求項1に記載の保護管端末キャップ。
【請求項3】
前記筒状部を複数備えている、請求項1又は2に記載の保護管端末キャップ。
【請求項4】
さらに、前記被覆部から突出し、前記被覆部側の端部に開口部を有するとともに他端側に底部を有する有底筒状部を備えており、
前記有底筒状部は、前記底部を切除することによって、前記保護管に収容された前記配管材又は配線を挿通可能である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護管端末キャップ。
【請求項5】
前記有底筒状部が、前記被覆部から前記固定部とは反対側に突出している、請求項4に記載の保護管端末キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−247036(P2012−247036A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120973(P2011−120973)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】