説明

保護膜形成用樹脂組成物およびカラーフィルタの保護膜

【課題】塗布方法としてスリット塗布法を採用した場合であっても、表面が平坦でない基板に対して、当該基板上に、表面の平坦性が高く、且つ透明性、耐熱性等の諸性能に優れる保護膜を形成することのできる保護膜形成用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】上記保護膜形成用樹脂組成物は、(A)エポキシ基を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位を有する重合体、(B)多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物、(C)シリコーン鎖を有する特定の重合体、(D)2個以上のカチオン重合性基を有する化合物ならびに(E)エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成用樹脂組成物およびカラーフィルタの保護膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子等の表示素子においては、その製造工程中に、溶剤、酸またはアルカリ溶液等による浸漬処理が行なわれ、また、スパッタリングにより配線電極層を形成する際には、素子の表面が局部的に高温に曝される。このような処理によって素子が劣化あるいは損傷することを防止するために、これらの処理に対して耐性を有する薄膜からなる保護膜を素子の表面に設けることが行なわれている。
このような保護膜においては、当該保護膜を形成すべき基体または下層、更に保護膜上に形成される層に対して接着性が高いものであること、膜自体が平滑で強靱であること、透明性を有するものであること、耐熱性および耐光性が高く、長期間にわたって着色、黄変、白化等の変質を起こさないものであること、耐水性、耐溶剤性、耐酸性および耐アルカリ性に優れたものであること等の性能が要求される。これらの諸特性を満たす保護膜を形成するための材料としては、例えばグリシジル基を有する重合体を含有する保護膜形成用樹脂組成物が知られている(特許文献1および特許文献2参照)。このような保護膜形成用樹脂組成物においては、当該保護膜形成用樹脂組成物を、保護膜を形成すべき基体の表面に塗布した後、この塗膜を加熱処理して硬化することにより、保護膜を形成することができる。
【0003】
ところで、スーパーツイステッドネマチック(STN)方式のカラー液晶表示素子においては、ツイステッドネマチック(TN)方式の液晶表示素子と比較して、セルギャップの均一性が極めて重要である。従って、STN方式のカラー液晶表示素子に用いられる基板としては、その表面の平坦性が高いものであることが要求される。表面の平坦性の低い基板を用いると、得られる液晶表示素子に表示ムラが発生するからである。例えばカラーフィルタが形成された基板(カラーフィルタ付き基板)においては、その表面にカラーフィルタによる凹凸が形成されている。そして、このカラーフィルタ付き基板に、公知の保護膜形成用樹脂組成物を用いて保護膜を形成すると、平坦化性能に優れるといわれる保護膜形成用樹脂組成物を用いた場合でも、カラーフィルタによる凹凸を十分に払拭することはできず、保護膜表面に若干の凹凸が残っていた。これまでは、この程度の平坦性でも許容されていた。しかし、近年の高画質化、高精細化の要望のため、わずかの色ムラの発生も許されなくなり、コントラストの更なる向上が求められている。そのために液晶表示素子に用いられる基板には、更に高度の平坦化が要求されるようになってきており、従来知られている保護膜形成用樹脂組成物ではかかる要求に応えられないことが明らかとなっている。
【0004】
これらに加えて、近年の大画面テレビのトレンド、プロセスコスト削減の要請に伴い、カラーフィルタ付き基板の製造に使用される基板ガラスサイズが大型化する傾向にある。そのため、基板上に保護膜を形成するに際して行われる保護膜形成用樹脂組成物の塗布工程において、従来広く行われてきたスピンコート法の採用が困難となってきており、塗布方法が、組成物をスリット状のノズルから吐出して塗布する、いわゆるスリット塗布法に変更されている。このスリット塗布法は、スピンコート法と比較して塗布に要する組成物の量が低減できるメリットもあり、液晶表示素子製造のコスト削減にも資する。しかしながら、かかるスリット塗布法では、基板の数点を微小なピンで支持しつつ塗膜の形成を行うため、塗膜に支持ピンに起因する微小な凹凸からなるムラが発生する場合があり、上記の高度の平坦性を実現する支障となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−78453号公報
【特許文献2】特開2001−91732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、塗布方法としてスリット塗布法を採用した場合であっても、表面が平坦でない基板に対して、当該基板上に、表面の平坦性が高く、且つ透明性、耐熱性等の諸性能に優れる保護膜を形成することのできる保護膜形成用樹脂組成物および表面の平坦性が高く、且つ透明性、耐熱性等の諸性能に優れるカラーフィルタの保護膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的および利点は、第一に、
(A)エポキシ基を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位を有する重合体(以下、「(A)重合体」という。)、
(B)多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「(B)化合物」という。)、
(C)(c1)下記式(1)で表される化合物(以下、「(c1)化合物」という。)25〜35質量%、
(c2)下記一般式(2)で表される化合物(以下、「(c2)化合物」という。)20〜30質量%、
(c3)下記一般式(3)で表される基を有する重合性不飽和化合物(以下、「(c3)化合物」という。)15〜20質量%および
(c4)炭素原子数1〜8のアルキル基を有する重合性不飽和化合物(以下、「(c4)化合物」という。)25〜35質量%および
(c5)一分子中に2個以上の不飽和結合を有する重合性不飽和化合物(以下、「(c5)化合物」という。)1〜5質量%
の共重合体であって、その重量平均分子量が5,000〜25,000である共重合体(以下、「(C)共重合体」という。)、
(D)2個以上のカチオン重合性基を有する化合物(ただし、(A)重合体に該当するものを除く。)ならびに
(E)エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物
を含有する保護膜形成用樹脂組成物によって達成される。
CH=CRCOOCHCH17 (1)
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基である。)
CH=CRCOO(CO) (2)
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であり、aは繰り返し単位数であって、その数平均値は4〜12である。)
【0008】
【化1】

【0009】
(式(3)中、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、フェニル基または下記一般式(4)で表される基であり、bは0〜3の整数である。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式(4)中、R、R10およびR11は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基またはフェニル基であり、cは0〜3の整数である。)
本発明の上記目的および利点は、第二に、
上記の保護膜形成用樹脂組成物から形成されたカラーフィルタの保護膜によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、塗布方法としてスリット塗布法を採用した場合であっても、表面が平坦でない基板に対して、当該基板上に、表面の平坦性が高く、且つ透明性、耐熱性等の諸性能に優れる保護膜を形成することのできる保護膜形成用組成物および表面の平坦性が高く、且つ透明性、耐熱性等の諸性能に優れるカラーフィルタの保護膜が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
<保護膜形成用樹脂組成物>
本発明の保護膜形成用樹脂組成物は、上記(A)重合体、(B)化合物、(C)共重合体、(D)化合物および(E)化合物を含有する。本発明の保護膜形成用樹脂組成物は、上記各成分のほかに、任意的に(F)硬化促進剤を更に含有していてもよい。
本発明の保護膜形成用樹脂組成物は、好ましくは、上記の各成分を溶媒に溶解した溶液状組成物として調製されるが、より好ましくは(A)重合体、(C)共重合体、(D)化合物および(E)化合物ならびに溶媒ならびに必要に応じて(F)硬化促進剤を含有する第一液と、(B)化合物および溶媒を含有する第二液とに分割して保存され、使用に際して両液を混合して用いる、二液型の保護膜形成用樹脂組成物として使用される。
【0014】
[(A)重合体]
本発明における(A)重合体は、エポキシ基を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位を有する重合体である。
(A)重合体は、エポキシ基を有する重合性不飽和化合物のみの重合体であってもよく、あるいはエポキシ基を有する重合性不飽和化合物とその他の重合性不飽和化合物との共重合体であってもよい。
ここで、上記エポキシ基を有する重合性不飽和化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、α−エチルアクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3−メチル−3−(メタ)アクロイロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクロイロキシメチルオキセタン等を挙げることができる。これらのうち、好ましいものとして、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3−メチル−3−(メタ)アクロイロキシメチルオキセタンおよび3−エチル−3−(メタ)アクロイロキシメチルオキセタンを挙げることができる。これらの化合物は、共重合反応性が高く、また形成される保護膜の耐熱性や表面硬度を高めるのに有効であることから、好ましく用いられる。
これらのエポキシ基を有する重合性不飽和化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0015】
上記その他の重合性不飽和化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸のエステル、ビニル芳香族化合物等を挙げることができる。上記(メタ)アクリル酸のエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、(メタ)アクリル酸[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボニル等を;上記ビニル芳香族化合物としては、例えばN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、スチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン等を、それぞれ挙げることができる。これのうち、好ましいものとして、メタクリル酸メチル、メタクリル酸[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、スチレンおよびp−メトキシスチレンを挙げることができる。これらの好ましいその他の重合性不飽和化合物は、共重合反応性が高い。
これらその他の重合性不飽和化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
(A)重合体におけるエポキシ基を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位に対して、好ましくは10〜70質量%であり、特に好ましくは20〜60質量%である。この値が70質量%を超えると得られる第一液の保存安定性が損なわれる場合があり、一方この値が10質量%未満では形成される保護膜の耐熱性や表面硬度が不足する場合がある。
(A)重合体につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量」または「Mw」という。)は、2,000〜20,000の範囲であることが好ましい。ここで、Mwが2,000未満である(A)重合体を用いると、得られる保護膜形成用樹脂組成物の塗布性が損なわれる場合があり、一方、(A)重合体のMwが20,000を超えると、得られる第一液の保存安定性が不足する場合がある。(A)重合体のMwは、表面の平坦性が極めて高い保護膜を得ることができる観点から、2,000以上10,000未満であることがより好ましい。
(A)重合体の分子量分布(Mw/Mn:ただしこのMnは、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。以下同じ。)は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3である。
【0017】
かかる(A)重合体は、エポキシ基を有する重合性不飽和化合物またはエポキシ基を有する重合性不飽和化合物とその他の重合性不飽和化合物とを、好ましくは適当な溶媒中、重合開始剤の存在下に重合または共重合させることにより、製造することができる。
ここで使用することのできる溶媒としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコールアルキルアセテート、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテルが好ましく、特にジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものを使用することができ、その例としては、例えばアゾ化合物、有機過酸化物および過酸化水素を挙げることができ、これら具体例としては、上記アゾ化合物として、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等を;
上記有機化酸化物として、例えばベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等を、それぞれ挙げることができる。
ラジカル重合開始剤として有機過酸化物または過酸化水素を使用する場合には、これらと還元剤とを組み合わせてレドックス型重合開始剤として使用してもよい。
【0018】
[(B)化合物]
本発明における(B)化合物は、多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。この(B)化合物は、(A)重合体に対する硬化剤として作用する。
上記多価カルボン酸無水物の例としては、例えば脂肪族ジカルボン酸無水物、脂環族多価カルボン酸二無水物、芳香族多価カルボン酸無水物、エステル基を有する酸無水物等を挙げることができる。これらの具体例としては、上記脂肪族ジカルボン酸無水物として、例えば無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸等を;
上記脂環族多価カルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等を;
上記芳香族多価カルボン酸無水物として、例えば無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等を;
上記エステル基を有する酸無水物として、例えばエチレングリコールビス無水トリメリテート、グリセリントリス無水トリメリテート等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち、形成される保護膜の耐熱性がより優れるとの観点から、特に芳香族多価カルボン酸無水物が好適である。
【0019】
上記多価カルボン酸の例としては、例えば脂肪族多価カルボン酸、脂環族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸等を挙げることができ、これらの具体例としては、上記脂肪族多価カルボン酸として、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等を;
上記脂環族多価カルボン酸として、例えばヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等を;
上記芳香族多価カルボン酸として、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸等を、それぞれ挙げることができる。これらの中では、得られる保護膜形成用樹脂組成物の反応性、形成される保護膜の耐熱性等の観点から、芳香族多価カルボン酸が好適である。
これらの多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の保護膜形成用樹脂組成物における(B)化合物の使用割合は、(A)重合体100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部であり、より好ましくは3〜50重量部である。(B)化合物の使用割合が1質量部未満である場合には、形成される保護膜が十分な架橋密度を有するものとならず、当該保護膜の各種耐性が不足することがある。一方,(B)化合物の使用割合が100質量部を超える場合には、形成される保護膜中に未反応の(B)化合物が多量に残存し、その結果、当該保護膜の性質が不安定なものとなったり、基板に対する保護膜の密着性が低下したりする場合がある。
【0020】
[(C)共重合体]
本発明における(C)共重合体は、上記(c1)化合物、(c2)化合物、(c3)化合物、(c4)化合物および(c5)化合物の共重合体であり、本発明の保護膜形成用樹脂組成物において、表面張力の低下性能が高い界面活性剤として機能し、これを少ない割合で使用した場合でも、形成される保護膜の表面平坦性を顕著に向上することができる。
上記(c1)化合物としては、例えば下記式(c1−1)および(c1−2)
CH=CHCOOCHCH(CFCF (c1−1)
CH=C(CH)COOCHCH(CFCF (c1−2)
のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
上記(c2)化合物は、上記一般式(2)におけるaの値が異なる化合物の混合物として使用され、aの数平均値は4〜12である。このaの値は、(c2)化合物につきゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量から、計算により求めることができる。
かかる(c2)化合物としては、市販品を好適に使用することができ、その例として例えば新中村化学工業(株)製のNK−エステルM−40G、M−90G、AM−90G;日油(株)製ブレンマーPME−200、PME−400、PME−550等を挙げることができる。
上記一般式(3)において、RおよびRがそれぞれ複数存在するときには、各Rは同一であっても相異なっていてもよく、各Rは同一であっても相異なっていてもよい。また、上記一般式(4)において、R10およびR11がそれぞれ複数存在するときには、各R10は同一であっても相異なっていてもよく、各R11は同一であっても相異なっていてもよい。
上記(c3)化合物としては、上記式(3)において、R、RおよびRが、それぞれ、炭素原子数1〜20のアルキル基またはフェニル基であり、且つRおよびRが、それぞれ、上記式(4)で表される基を有する重合性不飽和化合物であることが好ましい。
(c3)化合物として、好ましくは下記一般式(c3−1)
【0021】
【化3】

【0022】
(式(c3−1)中、RSiは上記一般式(3)で表される基であり、R12は水素原子またはメチル基であり、dは1〜3の整数である。)
で表される化合物である。(c3)化合物のより具体的な例としては、下記一般式(c3−1−1)〜(c3−1−3)
【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
(上式中、Meはメチル基であり、Phはフェニル基であり、r、sおよびtは、それぞれ、0〜3の整数である。)
のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
上記(c4)化合物としては、例えば炭素原子数1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、具体的には、例えばメチルメタクリレート、2−エチルへキシルアクリレート等を挙げることができる。
上記(c5)化合物の具体例としては、例えばテトラメチレングリコールの両末端をメタクリレート化した化合物、重合度1〜20のポリエチレングリコール、重合度1〜20のポリプロピレングリコール等を挙げることができる。上記(c5)化合物としては、市販品を好適に使用することができ、その具体例として、例えば新中村化学工業(株)社製のNKエステル1G、同2G、同3G、同4G、同9G、同14G、同3G等を挙げることができる。
(C)共重合体における(c1)化合物、(c2)化合物、(c3)化合物、(c4)化合物および(c5)化合物のそれぞれに由来する繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位の合計に対して、(c1)化合物につき25〜35重量%であり、(c2)化合物につき20〜30重量%であり、(c3)化合物につき15〜20重量%であり、(c4)化合物につき25〜35重量%であり、そして(c5)化合物につき1〜5重量%である。
(C)共重合体の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜25,000であるが、10,000〜25,000であることが好ましく、特に15,000〜25,000であることが好ましい。(C)共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1〜10であり、より好ましくは2〜4である。
【0027】
かかる(C)共重合体の製造方法に関しては特に制限はなく、公知の方法、例えばラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、エマルジョン重合法等によって製造することができるが、溶液中におけるラジカル重合法によることが簡便であるため、工業的に好ましい。
共重合体(C)を製造する際に用いられる重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物等を挙げることができる。
共重合体(C)の製造は、溶剤の存在下または非存在下のいずれでも実施することができるが、作業性の点から溶剤存在下で行うことが好ましい。上記溶剤としては、例えばアルコール、ケトン、エステル、モノカルボン酸のアルキルエステル、極性溶媒、エーテル、プロピレングリコールおよびそのエステル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、フッ素化イナートリキッド等を挙げることができる。上記アルコールとしては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等を;
上記ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミノケトン等を;
上記エステルとしては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を;
上記モノカルボン酸のアルキルエステルとしては、例えば2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等を;
【0028】
上記極性溶媒としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を;
上記エーテルとしては、例えばメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソロブアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を;
上記プロピレングリコールおよびそのエステルとしては、例えばプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等を;
上記ハロゲン化炭化水素としては、例えば1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等を;
上記芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等を;
上記フッ素化イナートリキッドとしては、例えばパーフルオロオクタン、パーフロロトリ−n−ブチルアミン等を、それぞれ挙げることができ、これらのいずれをも使用することができる。
共重合体(C)の製造に際しては、更に必要に応じて、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、エチルチオグリコール酸、オクチルチオグリコール酸等の連鎖移動剤を使用してもよい。
本発明の保護膜形成用樹脂組成物における(C)共重合体の使用割合は、(A)重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜3質量部であり、より好ましくは0.05〜2質量部である。
ここで、(C)共重合体の使用割合が3質量部を超えると、塗膜の膜荒れが生じやすくなる場合があり、形成される保護膜の表面平坦性が損なわれる場合がある。
【0029】
[(D)化合物]
本発明における(D)化合物は、2個以上のカチオン重合性基を有する化合物(ただし、(A)重合体に該当するものを除く。)である。ここで、カチオン重合性基としては、例えばエポキシ基等を挙げることができる。
かかる(D)化合物としては、ジアルコールのジグリシジルエーテル、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族ポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、天然油のエポキシ化物等を挙げることができる。上記ジアルコールのジグリシジルエーテルとしては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールADジグリシジルエーテル等を;
上記多価アルコールのポリグリシジルエーテルとしては、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等を、それぞれ挙げることができる。
上記ポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルにおけるポリエーテルポリオールは、例えば脂肪族多価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等、に1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得ることができる。
上記天然油のエポキシ化物としては、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等を挙げることができる。
【0030】
このような(D)化合物として使用できる市販品としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、例えばエピコート1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)等を;
ビスフェノールF型エポキシ樹脂として、例えばエピコート807(ジャパンエポキシレジン(株)製)等を;
フェノールノボラック型エポキシ樹脂として、例えばエピコート152、同154、同157S65(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN201、同202(以上、日本化薬(株)製)等を;
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、例えばEOCN102、同103S、同104S、1020、1025、1027(以上、日本化薬(株)製)、エピコート180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)等を;
ポリフェノール型エポキシ樹脂として、例えばエピコート1032H60、同XY−4000(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)等を;
環状脂肪族エポキシ樹脂として、例えばCY−175、同177、同179、アラルダイトCY−182、同192、184(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ERL−4234、4299、4221、4206(以上、U.C.C社製)、ショーダイン509(昭和電工(株)製)、エピクロン200、同400(以上、DIC(株)製)、エピコート871、同872(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ED−5661、同5662(以上、セラニーズコーティング(株)製)等を;
脂肪族ポリグリシジルエーテルとして、例えばエポライト100MF(共栄社化学(株)製)、エピオールTMP(日油(株)製)等を、それぞれ挙げることができる。
本発明の保護膜形成用樹脂組成物における(D)化合物の使用割合は、(A)重合体100質量部に対して、好ましくは3〜200質量部であり、更に好ましくは5〜100質量部であり、特に10〜50質量部であることが好ましい。(D)化合物の使用割割合が200質量部を超えると、保護膜形成用樹脂組成物の塗布性が損なわれる場合があり、一方、3質量部未満であると、形成される保護膜の硬度が不足する場合がある。
【0031】
[(E)化合物]
本発明における(E)化合物は、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物である。その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の保護膜形成用樹脂組成物における(E)化合物の使用割合は、(A)重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部であり、より好ましくは5〜30質量部である。
(E)化合物の使用割合が0.1質量部未満である場合には、形成される保護膜の基板に対する密着性を付与する効果が十分に得られない場合があり、一方、(E)化合物の使用割合が200質量部を超えると、形成される保護膜の耐アルカリ性、耐溶剤性等が不足する場合がある。
【0032】
[(F)硬化促進剤]
本発明において、(A)重合体と(B)化合物との反応を促進するために任意的に更に(F)硬化促進剤を使用することができる。かかる(F)硬化促進剤としては、2級窒素原子または3級窒素原子を含むヘテロ環構造を有する化合物を好適に使用することができる。
このような化合物の具体例としては、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、インドール、インダゾール、ベンズイミダゾール若しくはイソシアヌル酸またはこれらの誘導体等を挙げることができる。これらのうち、イミダゾール誘導体を好ましいものとして挙げることができる。イミダゾール誘導体としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3”,5”−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾール、ベンズイミダゾール等が好適であり、最も好適には2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾールおよび1−ベンジル−2−メチルイミダゾールから選ばれる化合物が使用される。これらの化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の保護膜形成用樹脂組成物における(F)硬化促進剤の使用割合は、(A)重合体100質量部に対して、好ましくは30質量部以下であり、特に0.1〜10質量部の割合で使用されることが好ましい。ここで、(F)硬化促進剤の使用割合が30質量部を超えると、得られる第一液の保存安定性が損なわれる場合がある。
【0033】
[溶媒]
本発明の保護膜形成用樹脂組成物において使用することのできる溶媒は、上記の各成分を溶解または分散することができ、且つ各成分と反応しないものから選択される。
このような溶媒としては、例えばエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート、ケトン等を挙げることができる。
これらの溶媒の具体例としては、エーテルとして、例えばテトラヒドロフラン等を;
エチレングリコールアルキルエーテルアセテートとして、例えばメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を;
ジエチレングリコールジアルキルエーテルとして、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等を;
プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートとして、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等を;
プロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネートとして、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールブチルエーテルプロピオネート等を;
ケトンとして、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、メチルイソアミルケトン等を、それぞれ挙げることができる。
これらのうち、ジエチレングリコール、プロピレングリコールアルキルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルがより好ましく、特にジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
【0034】
[保護膜形成用樹脂組成物]
本発明の保護膜形成用樹脂組成物は、上記のとおり、(A)重合体、(C)共重合体、(D)化合物および(E)化合物ならびに溶媒ならびに必要に応じて(F)硬化促進剤を含有する第一液と、(B)化合物および溶媒を含有する第二液とに分割して保存し、使用に際して両液を混合して用いる、二液系の保護膜形成用樹脂組成物として使用することが好ましい。
第一液の固形分濃度(第一液中の溶媒以外の全成分の合成重量が第一液の全重量に占める割合)は、好ましくは3〜40質量%であり、より好ましくは5〜30質量%である。
第二液の固形分濃度(第二液中の(B)化合物の重量が第二液の全重量に占める割合)は、好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは15〜30質量%である。
【0035】
<保護膜の形成方法>
本発明の保護膜形成用樹脂組成物を用いて、例えば以下のようにして保護膜を形成することができる。
本発明の保護膜形成用樹脂組成物は、好ましくは二液型の保護膜形成用樹脂組成物であり、使用に際して第一液と第二液とを混合して用いる。ここで、第二液中の(B)化合物の量の第一液中の(A)重合体に対する割合が上記の好ましい使用割合となるように混合する。本発明の保護膜形成用樹脂組成物は、第一液と第二液の混合後、好ましくは24時間以内、より好ましくは18時間以内に使用に供される。
保護膜を形成するには、先ず混合後の保護膜形成用樹脂組成物を、保護膜を形成すべき基体の表面に塗布する。次いで好ましくはプレベークを行うことにより溶媒を除去して塗膜を形成し、更にポストベークを行うことにより塗膜を硬化し、保護膜とする。
保護膜の形成に使用される基板の種類としては、例えばガラス基体、シリコンウエハーおよびこれらの表面に各種の金属、例えばITO(酸化インジウムスズ)等、が形成された基板を挙げることができる。
樹脂組成物溶液の塗布方法としては、特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリット塗布法、バー塗布法、インクジェット法等の適宜の方法を採用することができ、スピンコート法、スリット塗布法が好ましい。特にスリット塗布法を採用した場合に、本発明の有利な効果を最大限に発揮することができるため、好ましい。
【0036】
プレベークおよびポストベークの条件は、それぞれ各成分の種類、使用割合等によって適宜に設定されるべきである。プレベークは、例えば70〜90℃において、例えば1〜15分程度の条件で行うことができる。ポストベークは、ホットプレート、クリーンオーブン等の適宜の加熱装置により行うことができる。ポストベークの温度としては150〜250℃が好ましい。ポストベークの時間としては、加熱装置としてホットプレートを使用する場合には5〜30分間、加熱装置としてクリーンオーブンを使用する場合には30〜90分間が行うことが、それぞれ好ましい。
このようにして形成された保護膜の膜厚は、好ましくは0.1〜8μmであり、より好ましくは0.1〜6μmであり、更に好ましくは0.1〜4μmである。なお、保護膜を段差を有する基体上に形成する場合には、上記の膜厚は、段差の最上部からの厚さを意味する。
本発明の保護膜形成用樹脂組成物により形成される保護膜は、以下の実施例から明らかなように、段差のある基板上に形成した場合でも表面の平坦化性能が高く、しかも各種の物性に優れたものであるから、例えばカラーフィルタ等の光デバイス用の保護膜として極めて好適である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
測定装置:東ソー(株)製、「HLC8220システム」
分離カラム:東ソー(株)製、TSKgelGMHHR−Nの4本を直列に接続して使用
カラム温度:40℃
溶出溶媒:テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μm
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
また、保護膜形成用樹脂組成物の溶液粘度は、東京計器(株)製のE型粘度計を用いて30℃において測定した。
【0038】
<(A)重合体の製造>
合成例1
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル5質量部およびジエチレングリコールメチルエチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸グリシジル70質量部およびスチレン30質量部を仕込み窒素置換した後ゆるやかに撹拌を始めた。溶液温度を70℃に上昇し、この温度を5時間保持することにより、共重合体(A−1)を含む重合体溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度(重合体溶液中の重合体の重量が溶液の全重量に占める割合をいう。以下同じ。)は、33.1質量%であった。得られた重合体の重量平均分子量Mwは10,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
合成例2
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル5質量部およびジエチレングリコールメチルエチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸グリシジル50質量部およびスチレン50質量部を仕込み窒素置換した後ゆるやかに撹拌を始めた。溶液温度を70℃に上昇し、この温度を5時間保持することにより、共重合体(A−2)を含む重合体溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度は、32.6質量%であった。得られた重合体の重量平均分子量Mwは11,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2であった。
<(C)共重合体の製造>
合成例3
攪拌装置、コンデンサーおよび温度計を備えたガラスフラスコに(c1)化合物として上記式(c1−1)で表される化合物28.4質量部、(c2)化合物としてNK−エステルM−90G(商品名、新中村化学(株)製)20.7質量部、(c3)化合物として下記式(c3−1−1−1)
【0039】
【化7】

【0040】
(上式中、Meはメチル基である。)
で表される化合物18.1質量部ならびに(c4)化合物としてメチルメタクリレート5.9質量部および2−エチルヘキシルアクリレート23.5質量部、(c5)化合物としてテトラメチレングリコールの両末端をメタクリレート化した化合物3.4質量部、ならびに溶媒としてイソプロピルアルコール414質量部を仕込み、窒素ガス気流中、還流下で、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.7質量部および連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン4質量部を添加した後、75℃にて8時間還流して共重合を行うことにより、共重合体(C−1)を含有する溶液を得た。その後、エバポレーターを用いて70℃以下の加熱条件で溶媒を除去して共重合体(C−1)を単離した。得られた共重合体(C−1)の数平均分子量Mnは2,800であり、重量平均分子量Mwは5,300、また、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
合成例4
上記合成例3において、連鎖移動剤としてのラウリルメルカプタンの添加量を1質量部としたほかは合成例3と同様にして、共重合体(C−2)を得た。
得られた共重合体(C−2)の数平均分子量Mnは4,700であり、重量平均分子量Mwは11,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。
合成例5
上記合成例3において、連鎖移動剤としてのラウリルメルカプタンを使用せず、共重合温度および時間を、それぞれ、73℃および10時間としたほかは合成例3と同様にして、共重合体(C−3)を得た。
得られた共重合体(C−3)の数平均分子量Mnは5,600であり、重量平均分子量Mwは21,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.8であった。
【0041】
実施例1
<保護膜形成用樹脂組成物の調製>
[第一液の調製]
(A)重合体として上記合成例1で得た共重合体(A−1)を含む溶液(共重合体(A−1)に換算して100質量部に相当する量)に、(C)共重合体として上記合成例3で得た共重合体(C−1)0.5重量部を加え、ここに(D)化合物としてノボラック型エポキシ樹脂(商品名「エピコート152」、ジャパンエポキシレジン(株)製)40.0質量部および(E)化合物としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン20.0質量部を加え、更に溶媒としてジエチレングリコールメチルエチルエーテルを添加した後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過することにより、固形分濃度18質量%の第一液を調製した。
[第二液の調製]
(B)化合物として無水トリメリット酸40重量部を溶媒であるジエチレングリコールメチルエチルエーテルに溶解することにより、固形分濃度25質量%の第二液を調製した。
[保護膜形成用樹脂組成物の調製]
上記で調製した第一液の全量に対して上記第二液の全量を加えて混合することにより、保護膜形成用樹脂組成物を調製した。この保護膜形成用樹脂組成物の溶液粘度は4.5cPであった。
この保護膜形成用樹脂組成物を用いて、以下のようにして評価を行った。
評価結果は表1に示した。
【0042】
<保護膜形成用樹脂組成物の評価>
(1)塗膜の外観評価
上記で調製した保護膜形成用樹脂組成物を、550×650mmのクロム成膜ガラス上にスリットダイコーター(東京応化工業(株)製、型式「TR632105−CL」)を用いて塗布し、到達圧力を100Paに設定し真空乾燥により溶媒を除去し、更に80℃において2分間プレベークすることにより、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。
この塗膜につき、ナトリウムランプ下、目視により外観の観察を行った。全体に発生しているモヤ状のムラをモヤムラ、プレベーク炉のプロキシピンに由来するムラをピンムラとして、これらのムラの発生状況を評価した。ほとんどムラが見えなかった場合を塗膜外観「優良」、ムラがわずかに見られた場合を外観「良好」、ムラがはっきりと見えた場合を外観「不良」とした。
(2)透明性の評価
上記で調製した保護膜形成用樹脂組成物を、550×650mmの無アルカリガラス基板上にスリットダイコーター「TR632105−CL」を用い塗布し、到達圧力を100Paに設定し真空乾燥により溶媒を除去し、次いで80℃において2分間プレベークし、更にオーブン中で230℃にて60分間ポストベークすることにより、膜厚1.0μmの硬化膜(保護膜)を形成した。
上記保護膜を有する基板について、分光光度計(日立製作所(株)製、型式「150−20型ダブルビーム」)を用い、保護膜を有さない無アルカリガラス基板を参照側として波長範囲400〜800nmの透過率を測定した。この波長範囲における透過率の最小値を、透明性の値として表1に示した。この値が95%以上であるとき、保護膜の透明性は良好といえる。
(3)耐熱変色性の評価
上記「(2)透明性評価」において形成した保護膜を有する基板につき、更にオーブン中250℃で1時間加熱した後、再度上記(2)と同様にして透明性の測定を行った。このとき、下記式に従って算出した耐熱変色性を表1に示した。この値が5%以下であるとき、耐熱変色性は良好といえる。
耐熱変色性(%)=加熱前の透明性(%)−加熱後の透明性(%)
【0043】
(4)平坦化性能の評価
SiOディップガラス基板上に、顔料系カラーレジスト(商品名「JCR RED 689」、「JCR GREEN 706」および「CR 8200B」、以上、JSR(株)製)を用いて、赤、緑および青の3色のストライプ状カラーフィルタを形成した。すなわち、上記カラーレジストの1色をスピンナーにより塗布し、ホットプレート上で90℃、150秒間プレベークして塗膜を形成した後、定のパターンマスクを介して、露光機Canon PLA501F(キャノン(株)製)を用いてghi線(波長436nm、405nm、365nmの強度比=2.7:2.5:4.8)をi線換算で2,000J/mの露光量にて照射し、次いで0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて現像し、超純水にて60秒間リンスした後、更にオーブン中で230℃にて30分間加熱処理することにより、単色のストライプ状カラーフィルタを形成した。この操作を3色につき繰り返すことにより、赤、緑および青の3色のストライプ状カラーフィルタ(ストライプ幅200μm)を形成した。
このカラーフィルタが形成された基板表面の凹凸を、表面粗さ計「α−ステップ」(商品名:ケーエルエー・テンコール(株)製)で測定したところ、1.0μmであった。ただし、測定長2,000μm、測定範囲2,000μm角、測定点数n=5で測定した。すなわち、測定方向を赤、緑、青方向のストライプライン短軸方向および赤・赤、緑・緑、青・青の同一色のストライプライン長軸方向の2方向とし、各方向につきn=5で測定した(合計のn数は10)。
この上に、上記保護膜形成用組成物をスピンナーにて塗布した後、ホットプレート上において90℃にて5分間プレベークして塗膜を形成した後、更にオーブン中において230℃にて60分間ポストベークすることにより、カラーフィルタの上面からの膜厚が2.0μmの保護膜を形成した。
上記のようにして形成したカラーフィルタ上に保護膜を有する基板について、接触式膜厚測定装置「α−ステップ」にて保護膜の表面の凹凸を測定した。ただし、測定長2,000μm、測定範囲2,000μm角、測定点数n=5で測定した。すなわち、測定方向を赤、緑、青方向のストライプライン短軸方向および赤・赤、緑・緑、青・青の同一色のストライプライン長軸方向の2方向とし、各方向につきn=5で測定した(合計のn数は10)。各測定ごとの最高部と最底部の高低差(nm)の10回の平均値を表1に示した。この値が300nm以下のとき、平坦化性能は良好といえる。
【0044】
(5)塗膜の膜厚の均一性の評価
上記「(2)透明性評価」と同様にして、無アルカリガラス基板上に保護膜を形成した。この基板上の保護膜につき、同一基板内の塗布膜厚を20点測定し、下記式により塗膜の膜厚均一性を算出した。
塗膜の膜厚均一性(%)=[(膜厚の最大値−最小値)÷{(20点の膜厚の平均値)×2}]×100
なお、上記20点の測定点は、以下のようにして定めた。すなわち、基板(550×650mm)の長辺および短辺の各端部から5cmの範囲を除いた内側の領域(450×550mm)を測定領域とし、該領域内で長辺方向および短辺方向の直線上でそれぞれ4cmおきに各10点(計20点)を決め、これらを測定点とした。
このようにして算出された塗膜の膜厚均一性が1%以下であった場合、塗膜の膜厚均一性は良好であるといえる。
【0045】
実施例2〜7および比較例1〜3
各成分の種類および使用量を、それぞれ表1に記載のとおりとしたほかは、実施例1と同様にして保護膜形成用樹脂組成物を調製して評価した。
評価結果は表1に示した。
実施例5〜7においては、(A)〜(E)成分のほか、更に(F)硬化促進剤として1−ベンジル−2−メチルイミダゾールをそれぞれ1.0質量部ずつ使用した。実施例6および7においては、(C)共重合体をそれぞれ2種類ずつ使用した。比較例1および2においては、(C)共重合体の代わりに市販の界面活性剤を使用し、比較例3では(C)共重合体および市販の界面活性剤のどちらも使用しなかった。
表1における「−」は、当該欄に該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0046】
表1に示した各成分の略称は、それぞれ以下のものを表す。
<(A)重合体>
A−1:上記合成例1で製造した共重合体(A−1)
A−2:上記合成例2で製造した共重合体(A−2)
なお、(A)重合体は、それぞれこれを含有する溶液として第一液の調製に供した。表1における(A)重合体の使用量は、使用した重合体溶液に含有される各(A)重合体の量に換算した値である。
<(C)共重合体>
C−1:上記合成例3で製造した共重合体(C−1)
C−2:上記合成例4で製造した共重合体(C−2)
C−3:上記合成例5で製造した共重合体(C−3)
<界面活性剤>
c−1:シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製 商品名:SH−193)
c−2:フッ素系界面活性剤((株)ネオス製 商品名:フタージェント222F)
<(E)化合物>
E−1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
<(F)硬化促進剤>
F−1:1−ベンジル−2−メチルイミダゾール
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ基を有する重合性不飽和化合物に由来する繰り返し単位を有する重合体、
(B)多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物、
(C)(c1)下記式(1)で表される化合物25〜35質量%、
(c2)下記一般式(2)で表される化合物20〜30質量%、
(c3)下記一般式(3)で表される基を有する重合性不飽和化合物15〜20質量%、
(c4)炭素原子数1〜8のアルキル基を有する重合性不飽和化合物25〜35質量%および
(c5)一分子中に2個以上の不飽和結合を有する重合性不飽和化合物1〜5質量%
の共重合体であって、その重量平均分子量が5,000〜25,000である共重合体、
(D)2個以上のカチオン重合性基を有する化合物(ただし、(A)重合体に該当するものを除く。)ならびに
(E)エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物
を含有することを特徴とする、保護膜形成用樹脂組成物。
CH=CRCOOCHCH17 (1)
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基である。)
CH=CRCOO(CO) (2)
(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であり、aは繰り返し単位数であって、その数平均値は4〜12である。)
【化1】

(式(3)中、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、フェニル基または下記一般式(4)で表される基であり、bは0〜3の整数である。)
【化2】

(式(4)中、R、R10およびR11は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基またはフェニル基であり、cは0〜3の整数である。)
【請求項2】
さらに、(F)硬化促進剤を含有する、請求項1に記載の保護膜形成用樹脂組成物。
【請求項3】
スリット塗布法に用いられる、請求項1または2に記載の保護膜形成用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護膜形成用樹脂組成物から形成されたことを特徴とする、カラーフィルタの保護膜。

【公開番号】特開2010−174082(P2010−174082A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16114(P2009−16114)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】