説明

保護膜用熱硬化性樹脂組成物およびカラーフィルタ

【課題】本発明は、硬度が高い保護膜を形成することができる保護膜用熱硬化性樹脂組成物を提供することを主目的としている。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、バインダー樹脂、多官能性モノマー、および溶剤を少なくとも有し、上記多官能性モノマーが、下記一般式(1)で表されるホスファゼンモノマーを含有するものであることを特徴とする保護膜用熱硬化性樹脂組成物を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬度が高い保護膜とすることができる保護膜用熱硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、カラーフィルタは、透明基材と、透明基材上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基材上に形成された遮光部とを有している。
また、カラーフィルタの表面を保護し、平坦化するために、上記着色層および遮光部を覆うように保護膜(オーバーコート層)が設けられる。
【0003】
このような保護膜の形成方法としては、UV硬化性樹脂組成物を用いる場合と比較し工程数が短くコストダウンになることから、保護膜用熱硬化性樹脂組成物を着色層等が形成された透明基板の全面に塗布する方法が一般的に用いられる(特許文献1)。
しかしながら、このような保護膜用熱硬化性樹脂組成物を用いて得られた保護膜は硬度が低く、例えば、液晶分子を一定方向に傾けるために保護膜にラビング処理を施した際に、保護膜が削れる(保護膜がラビング処理により破損し破片が生じる状態になることをいう)といった不具合を生じ、歩留まりの低下を引き起こすといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−251536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、硬度が高い保護膜を形成することができる保護膜用熱硬化性樹脂組成物を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、バインダー樹脂、多官能性モノマー、および溶剤を少なくとも有し、上記多官能性モノマーが、下記一般式(1)で表されるホスファゼンモノマーを含有するものであることを特徴とする保護膜用熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは、それぞれ独立して、末端に二重結合を有する置換基を示す。)
【0009】
本発明によれば、多官能性モノマーとしてホスファゼンモノマーを含有することにより、硬度が高い保護膜を形成することができる。
【0010】
本発明においては、上記多官能性モノマーが、上記ホスファゼンモノマー以外にその他のモノマーを含むものであることが好ましい。上記多官能性モノマーが、上記ホスファゼンモノマー以外にその他のモノマーを含むことにより、着色が少なく、硬度の高い保護膜を形成することができるからである。
【0011】
本発明においては、上記ホスファゼンモノマーの含有量が、固形分中に0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。上記ホスファゼンモノマーの含有量が、上述した範囲内であることにより、着色が少なく、硬度の高い保護膜を形成することができるからである。
【0012】
本発明においては、上記ホスファゼンモノマーが、2,2,4,4,6,6−ヘキサ{2−(メタクリロイルオキシ)−エトキシ}−1,3,5−トリアザ−2,4,6−トリホスホリンであることが好ましい。上記ホスファゼンモノマーが、上記化合物であることにより、特に硬度の高い保護膜を形成することができるからである。
【0013】
本発明は、上述した保護膜用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された保護膜を有することを特徴とするカラーフィルタを提供する。
【0014】
本発明によれば、上記保護膜が上述した保護膜用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されたものであることにより、硬度の高いものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、硬度の高い保護膜を形成することができる保護膜用熱硬化性樹脂組成物を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、保護膜用熱硬化性樹脂組成物、およびそれを用いたカラーフィルタに関するものである。
以下、本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物およびカラーフィルタについて説明する。
【0018】
A.保護膜用熱硬化性樹脂組成物
まず、本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物について説明する。本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、バインダー樹脂、多官能性モノマー、および溶剤を少なくとも有し、上記多官能性モノマーが、下記一般式(1)で表されるホスファゼンモノマーを含有するものであることを特徴とするものである。
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、Rは、それぞれ独立して、末端に二重結合を有する置換基を示す。)
【0021】
本発明によれば、多官能性モノマーとして上記ホスファゼンモノマーを含有することにより、硬度が高い保護膜を形成することができる。そして、上記保護膜を、ラビング処理等を施した場合でも削れ等のないものとすることができる。
ここで、上記ホスファゼンモノマーを多官能性モノマーとして含有することにより、上述したような効果を奏する理由については、以下のように推察される。
【0022】
すなわち、上記ホスファゼンモノマーは六官能であるため、多官能性モノマーやバインダー樹脂と結合することにより、密な網目構造を形成することができる。
また、ホスファゼン環を有しており、従来、保護膜用熱硬化性樹脂組成物の多官能性モノマーとして用いられるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等と比較して、より高密度な網目構造を形成することができる。
このようなことにより、上記ホスファゼンモノマーを含む組成物を用いて保護膜を形成した場合には、硬度の高い保護膜とすることができるのである。
【0023】
本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、バインダー樹脂と、多官能性モノマーと、溶剤とを少なくとも有するものである。
以下、本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0024】
1.多官能性モノマー
本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物に含まれる多官能性モノマーは、ホスファゼンモノマーを含有するものである。
【0025】
(1)ホスファゼンモノマー
本発明に用いられるホスファゼンモノマーは、下記一般式(1)で表されるものであり、エチレン性不飽和二重結合を6つ有する六官能のモノマーである。
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、Rは、それぞれ独立して、末端に二重結合を有する置換基を示す。)
【0028】
本発明における官能基Rとしては、エチレン性不飽和二重結合を末端に有するものであり、他の多官能性モノマーおよび/またはバインダー樹脂と結合することができるものであれば良いが、例えば、下記一般式(2)で表されるものとすることができる。
【0029】
【化4】

【0030】
(式中、RおよびRは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、mは1〜10の整数を示す。)
【0031】
本発明においては、mが1〜10の整数であるが、なかでも、1〜5の整数であることが好ましい。mが上述した範囲内であることにより、より高密度が網目構造を形成することができるからである。
【0032】
本発明においては、特に、Rがメチル基であり、Rが水素原子であり、mが1である2,2,4,4,6,6−ヘキサ{2−(メタクリロイルオキシ)−エトキシ}−1,3,5−トリアザ−2,4,6−トリホスホリンを好ましく用いることができる。上記ホスファゼンモノマーがこのような化合物であることにより、特に硬度の高い保護層を形成することができるからである。
【0033】
これらのホスファゼンモノマーは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0034】
本発明に用いられるホスファゼンモノマーの含有量としては、所望の硬度の保護膜を形成することができるものであれば良いが、具体的には、固形分中に0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.5質量%〜9質量%の範囲内であることが好ましく、特に2質量%〜8質量%の範囲内であることが好ましい。上記ホスファゼンモノマーは比較的透明度の低いモノマーであるため、上記含有量が上記範囲より多いと、得られる保護膜が着色してしまうおそれがあるからであり、上記範囲より少ないと、十分な硬度とすることが困難になるおそれがあるからである。すなわち、上記含有量が上述した範囲内であることにより、着色が少なく硬度の高い保護膜を形成することができるからである。
なお、固形分とは、本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物の溶剤以外の全ての成分をいうものである。
【0035】
(2)多官能性モノマー
本発明に用いられる多官能性モノマーは、少なくとも、上記ホスファゼンモノマーを含むものであるが、上記ホスファゼンモノマー以外に、その他のモノマーを含むものであることが好ましい。
上述したように、上記ホスファゼンモノマーを多量に含むと保護膜が着色するおそれがあるからである。このため、上記その他のモノマーを含むことにより、保護膜を、着色が少なく、硬度の高い保護膜を形成することができるからである。
【0036】
このようなその他のモノマーとしては、複数の重合性の官能基を有するものであり、上述したホスファゼンモノマー等と結合可能なものであれば良いが、なかでも、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0037】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
これらの多官能(メタ)アクリレートは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0040】
特に、本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物に優れた硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能(メタ)アクリレートが、重合可能な二重結合を1分子中に2つ(二官能)以上有することが好ましく、さらに3つ(三官能)以上有することが好ましい。
【0041】
本発明に用いられる多官能性モノマーの含有量としては、所望の硬度の保護膜を形成することができるものであれば良いが、具体的には、固形分中に5質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも10質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましく、特に20質量%〜80質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が、上述した範囲内であることにより、硬度が高い保護膜を形成することができるからである。
なお、上記多官能性モノマーの含有量は、上記ホスファゼンモノマーおよびその他のモノマーを含む全多官能性モノマーの含有量をいうものである。
【0042】
2.バインダー樹脂
本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物に含まれるバインダー樹脂は、所望の硬度の保護膜を形成することができるものであれば良いが、カラーフィルタにおける保護膜の形成に用いられることから、耐熱性および製造工程において使用される有機溶剤への耐性を有する樹脂であることが好ましい。
具体的には、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ノボラック系樹脂などの硬化性または非硬化性の樹脂を挙げることができるが、通常、アクリル系樹脂が用いられる。
【0043】
上記バインダー樹脂の含有量としては、固形分中に5質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、特に8質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述した範囲内であることにより、高い硬度の保護膜とすることができるからである。
【0044】
3.溶剤
本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物に含まれる溶剤は、上記保護膜用熱硬化性樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されるものではない。
【0045】
具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;および、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;などが挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0046】
本発明に用いられる溶剤の含有量としては、本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物中に60質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは70質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。このような含有量であることにより、塗布に適した粘度とすることができるからである。
【0047】
4.保護膜用熱硬化性樹脂組成物
本発明の保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、上記バインダー樹脂、多官能性モノマーおよび溶剤を少なくとも含むものであるが、必要に応じて、開始剤、酸無水物、添加剤等を含有していてもよい。
【0048】
本発明に用いられる開始剤としては、加熱することにより上記保護膜用熱硬化性樹脂組成物を所望の硬度に硬化させることができるものであれば良く、一般的なものを用いることができる。
【0049】
具体的には、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4´−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、P−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブチキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、2,4ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−ブタノン)、1,2−オクタジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]等の開始剤が挙げられる。本発明においては、なかでも、自己開裂型の開始剤を好ましく用いることができる。
【0050】
このような自己開裂型の開始剤の具体的な商品名としては、イルガキュア907(チバスペシャリティーケミカルズ社製)、イルガキュア184(チバスペシャリティーケミカルズ社製)、Esacure one(ラムバーティ(Lamberti spa)社製)を好ましく用いることができ、なかでも、イルガキュア907を好ましく用いることができる。
【0051】
本発明では、これらの開始剤を単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0052】
このような開始剤の含有量としては、固形分中に、0.01質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.7質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0053】
また、本発明においては、開始剤に増感剤を組み合わせて用いることができる。このような増感剤としては、一般的に用いられる増感剤を使用することができ、例えば脂肪族あるいは芳香族の単、多官能チオール化合物や芳香族アミン系化合物等を挙げることができる。
このような増感剤の含有量としては、固形分中に、0.01質量%〜2質量%の範囲内、なかでも0.7質量%〜1.2質量%の範囲内であることが好ましい。
【0054】
本発明に用いられる酸無水物としては、加熱することにより上記保護膜用熱硬化性樹脂組成物を所望の硬度に硬化させることができるものであれば良く、例えば、多価カルボン酸無水物が挙げられる。このような多価カルボン酸無水物としては、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸等の脂肪族または脂環族ジカルボン酸二無水物等の脂肪族多価カルボン酸二無水物およびこれらの誘導体;無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物およびこれらの誘導体;エチレングリコールビストリメリレイト、グリセリントリストリメリレイト等のエステル基含有酸無水物等を挙げることができ、また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
【0055】
本発明においては、なかでも脂肪族または脂環族ジカルボン酸二無水物およびこれらの誘導体や芳香族多価カルボン酸無水物およびこれらの誘導体を好ましく用いることができ、特に無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸等を好ましく用いることができる。
【0056】
このような酸無水物の含有量としては、上記開始剤が含まれない場合において、固形分中に、1質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、3質量%〜12質量%の範囲内であることが好ましい。
【0057】
本発明に用いられる添加剤としては、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤等などが挙げられる。
【0058】
これらの中で、用いることができる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類等を挙げることができる。また、その他にもフッ素系界面活性剤も用いることができる。
【0059】
このような界面活性剤の含有量としては、固形分中、0.001質量%〜0.01質量%の範囲内程度であることが好ましい。
【0060】
また、可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等が挙げられる。消泡剤、レベリング剤としては、例えばシリコン系、アクリル系の化合物等が挙げられる。
【0061】
B.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上述した保護膜用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された保護膜を有することを特徴とするものである。
【0062】
このような本発明のカラーフィルタについて図を参照して説明する。図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、上記透明基板1上にパターン状に形成され、開口部を備える遮光部2と、上記開口部に形成され、赤色パターン3R、緑色パターン3Gおよび青色パターン3Bから構成される着色層3と、上記着色層3上に形成された保護膜4と、を有するものである。
ここで、上記保護膜4は、上記保護膜用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されたものである。
【0063】
本発明によれば、上記保護膜が上述した保護膜用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されたものであることにより、硬度の高いものとすることができる。
【0064】
本発明のカラーフィルタは、上記保護膜を有するものであるが、通常、透明基板と、上記透明基板上にパターン状に形成され、開口部を備える遮光部と、上記開口部に形成された着色層と、を有するものである。
以下、本発明のカラーフィルタの各構成に分けて説明する。
【0065】
1.保護膜
本発明に用いられる保護膜は、着色層の保護およびカラーフィルタを平坦化するために上記透明基板上に形成された遮光部および着色層上に設けられるものであり、上記保護膜用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されたものである。
なお、上記保護膜用熱硬化性樹脂組成物は、上記「A.保護膜用熱硬化性樹脂組成物」の項で説明した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0066】
本発明に用いられる保護膜は、上記遮光部および着色層が形成された透明基板の全面に形成されていてもよく、パターン状に形成されていてもよい。
【0067】
本発明に用いられる保護膜の膜厚としては、0.1μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。上記範囲より小さいと、十分な平坦性が得られないからである。
なお、保護膜の厚みとは、上記遮光部の開口部に形成された各色の着色層の表面から保護膜の表面までの距離をいう。
【0068】
2.カラーフィルタ
本発明のカラーフィルタは、上記保護膜以外に、通常、上記保護膜により覆われる透明基板、遮光部、および着色層を有するものであるが、必要に応じて、透明電極層や配向膜、柱状スペーサ等が形成されたものであっても良い。
なお、このような透明基板、遮光部、着色層、透明電極層、配向膜、および柱状スペーサとしては、一般的なカラーフィルタにおいて用いられているものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0069】
本発明のカラーフィルタの製造方法としては、上記保護膜用熱硬化性樹脂組成物を用いて、上記遮光部および着色層上に保護膜を形成する方法であれば良く、一般的なカラーフィルタの製造方法を用いることができる。
具体的には、上記保護膜用熱硬化性樹脂組成物を、上記透明基板上に形成された遮光部および着色層を覆うようにスプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法等により塗布した後、その塗膜を加熱することにより硬化させる方法を挙げることができる。
なお、上記透明基板上に、遮光部および着色層を形成する方法としては、カラーフィルタに一般的に用いられる方法により形成することができる。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0072】
[実施例1〜7および比較例1〜2]
バインダー樹脂と、多官能性モノマーと、エポキシ硬化剤と、添加剤と、溶剤とを、下記表1に示すように配合して、保護膜用熱硬化性樹脂組成物を調製した。
なお、表1中の数値は、配合の割合を重量部で表したものである。また、カッコ内の数値は各成分中の固形分を重量部で表したものである。
【0073】
この際、バインダー樹脂として、スチレン(St)/シクロヘキシルアクリレート(CHA)の共重合体のグリシジルメタクリレート(GMA)付加物(重量比:GMA/St/CHA=60/23.5/16.5)(新中村化学工業、NKポリマーDGI−004、固形分濃度(NV)51.7質量%、メトキシブチルアセテート(メトアセ溶液))(バインダー樹脂1)、アクリル系樹脂(新中村化学工業製、NKポリマーB−7500、NV23.9質量%(メトアセ溶液))(バインダー樹脂2)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、NV30質量%(ジメチルジグリコール(DMDG)溶液)(バインダー樹脂3)を用いた。
【0074】
多官能性モノマーとして、2,2,4,4,6,6−ヘキサ{2−(メタクリロイルオキシ)−エトキシ}−1,3,5−トリアザ−2,4,6−トリホスホリン(共栄社化学製、PPZ)(モノマー1)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(DPPA/DPHA)混合物(東亞合成製、アロニックスM−402)(モノマー2)を用いた。
【0075】
エポキシ硬化剤として、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテートと脂環式ジカルボン酸無水物との混合物(新日本理化製、リカシッドMTA−15)を用いた。
【0076】
添加剤として、ポリシロキサンヘキサアクリレート(NV10質量%DMDG溶液)(ダイセルサイテック、EBECRYL−1360)を用いた。
【0077】
溶剤として、DMDG(ダイセル化学製)を用いた。
【0078】
【表1】

【0079】
[評価]
実施例および比較例の保護膜用熱硬化性樹脂組成物について、下記に示す方法により塗布性を評価した。
【0080】
1.保護膜の形成
100mm角のガラス基板に、スピンコーターを用いて厚み1.5μmの塗膜となるように、上記保護膜用熱硬化性樹脂組成物を塗布した。
その後、減圧乾燥し、次いで、230℃で、0.5時間加熱することにより、上記保護膜用熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、保護膜を形成した。
【0081】
2.硬度測定
実施例および比較例の保護膜用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された保護膜について、ビッカース硬度および引っかき硬度の測定を行った。結果を下記表2に示す。
なお、ビッカース硬度(単位:HV)の測定には、フィッシャースコープH100V((株)フィッシャーインストルメンツ製)を用い、下記の測定条件で測定した。
【0082】
(ビッカース硬度測定条件)
荷重の増加:80mN/36s
クリープ:5s
荷重の減少:80mN/36s
クリープ:5s
圧子:ビッカース圧子
【0083】
また、引っかき硬度の測定方法としては、表面性測定機(新東科学(株)製、トライボギアHEIDON−14DR)を用い、以下の判断基準となる荷重(g)を測定した。また、測定条件については以下の測定条件を用いた。
【0084】
(引っかき硬度測定条件)
針の移動速度:300mm/min
針:サファイア
【0085】
(引っかき硬度判断基準)
○:傷がつかない
△:薄い傷がつく
×:傷がつく
【0086】
【表2】

【0087】
表2に示すように、実施例では、保護膜の硬度を高いものとすることができた。
【符号の説明】
【0088】
1…透明基板
2…遮光部
3…着色層
4…保護膜
10…カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、多官能性モノマー、および溶剤を少なくとも有し、
前記多官能性モノマーが、下記一般式(1)で表されるホスファゼンモノマーを含有するものであることを特徴とする保護膜用熱硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは、それぞれ独立して、末端に二重結合を有する置換基を示す。)
【請求項2】
前記多官能性モノマーが、前記ホスファゼンモノマー以外にその他のモノマーを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の保護膜用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ホスファゼンモノマーの含有量が、固形分中に0.1質量%〜10質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の保護膜用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ホスファゼンモノマーが、2,2,4,4,6,6−ヘキサ{2−(メタクリロイルオキシ)−エトキシ}−1,3,5−トリアザ−2,4,6−トリホスホリンであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の保護膜用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の保護膜用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された保護膜を有することを特徴とするカラーフィルタ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−204532(P2010−204532A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51932(P2009−51932)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】