説明

保護被膜剤および保護被膜形成方法

被覆物としての金型(9)の外表面、あるいは金型(9)の外表面で特定部分を除く領域に塗布する保護被膜剤(M)および保護被膜形成方法であって、ウレタン、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルからなる混合液に、イソシアネート系化合物および酢酸エチルからなる硬化速度増進剤を混合させたものを用いている。保護被膜剤(M)は、被覆物(27)の外表面に密着して容易には剥離しない状態で金型(9)を覆い、保護被膜(11)として保管時の金型(9)を錆、汚れや損傷などから保護する。保護被膜(11)は、100℃前後の耐熱性を有し、型打ち時に受ける70−80℃の使用温度に十分耐え、衝撃に対する保護被膜(11)の耐剥離性および耐割れ性が向上し、金型(9)が他の部材に衝突した際、保護被膜(11)に割れや欠けが生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、鋳造や鍛造用の金型などの被覆物の保管時、被覆物を錆、汚れや損傷などから保護する保護被膜剤および保護被膜形成方法に関する。
【背景技術】
合成樹脂材、ゴム材や金属材などを成形物に加工する金型用の防錆剤および防錆方法については、特開2000−289036号公報に記載されている。この公報の防錆剤は、天然ゴムやイソプレンゴムなどのゴム材からなる基材と炭化水素系溶剤などの有機溶剤とを混合させたもので、保管時に金型の全面に防錆被膜として塗布されている。防錆被膜は、成形物の原料を流すキャビティが形成された金型の表面側にも塗布されるので、型打ち時にキャビティの形成側の防錆被膜を剥がし取る必要がある。このため、型打ち時に防錆被膜が金型から取出される成形物に少しずつ付着することを考慮し、型打ちを繰り返して転写により、防錆被膜を金型から完全に剥離するようにしている。
しかしながら、上記公報の防錆剤は、組成成分の種類が多い上に、ゴム材からなる基材と炭化水素系溶剤などの有機溶剤との混合割合が複雑で、防錆剤の混合・調整操作が煩わしくコスト的に不利であり、防錆剤の塗布現場の要請に適合し難くなっている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は被覆物の外表面を塗布により密着状態に覆い、適度な硬度を有して被覆物を錆、汚れや損傷などから保護し、しかも比較的簡素な組成成分で実現でき、混合・調整操作が容易でコスト的に有利となる保護被膜剤および保護被膜形成方法を提供することにある。
【発明の開示】
(1)被覆物の外表面、あるいは被覆物の外表面の特定部分を除く領域に塗布する保護被膜剤は、ウレタンにウレタン系硬化剤を硬度増進剤として混合させてなる。
この結果、保護被膜剤は、被覆物の外表面に密着して容易には剥離しない状態で被覆物を覆い、保護被膜として保管時の被覆物を錆、汚れや損傷などから保護することができる。保護被膜剤の塗布後に形成される保護被膜の表面は滑らかであり、その表面に付着した塵埃などの異物を容易に払い除くことができる。
塗布後の保護被膜剤は、保護被膜として100℃前後の耐熱性を有し、型打ち時に受ける70−80℃の使用温度に十分耐え得る。
また、衝撃に対する保護被膜の耐剥離性および耐割れ性が向上し、被覆物が他の部材に衝突した際、保護被膜に割れや欠けが生じない。
また、保護被膜の耐候性が向上し、経時変化に起因する亀裂などの発生がなく、ウレタン系硬化剤の混合割合の調整により保護被膜の硬度(ショアー硬さ)を70−80重量%に設定することができる。
さらに、重ね塗りにより保護被膜の厚みは1.0−1.5mm程度になり、保護被膜に損傷、磨耗や剥がれなどが発生した場合、上塗りにより容易に補修することができる。しかも、ウレタンとウレタン系硬化剤といった比較的簡素な組成成分で、保護被膜の形成を実現でき、混合・調整操作が容易でコスト的に有利となる。
(2)保護被膜剤は、ウレタン、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルからなる混合液に、イソシアネート系化合物および酢酸エチルからなる硬化速度増進剤を混合して、(1)の事項と同様な効果を得ることができる。
(3)保護被膜剤の混合液は、ウレタン10−30重量%、メチルエチルケトン35−45重量%および酢酸エチル35−45重量%からなり、硬化速度増進剤は、イソシアネート系化合物2−30重量%および酢酸エチル30−98重量%からなっており、(1)の事項と同様な効果を得ている。
(4)保護被膜剤は、被覆物の外表面に保護被膜として0.1−3.0mmの厚みで形成されている。保護被膜の厚みは、上塗りなどにより適度に調整することができる。
(5)イソシアネート系化合物は、2.4−トルエンジイソシアネートとして入手し易い既存の化合物で済む利点が得られる。
(6)被覆物の外表面の特定部分を除く領域には、ワックスなどの離型剤が予め上塗りされている。このため、保護被膜を離型剤の溶融温度に温めることにより、離型剤が溶け出すため、保護被膜を容易に被覆物から剥し取ることができる。
(7)被覆物の特定部分には、剥離可能な粘着シートが予め貼着されている。このため、被覆物の再使用時、保護被膜を粘着シートごと剥ぎ取ることにより、保護被膜を特定部分から容易かつ迅速に除去することができる。
(8)被覆物の外表面、あるいは被覆物の外表面の特定部分を除く領域に塗布する工程を有する保護被膜形成方法であって、ウレタンにウレタン系硬化剤を硬度増進剤として混合してなる保護被膜剤を用いているので、(1)の事項と同様な効果が得られる。
(9)被覆物の外表面、あるいは被覆物の外表面の特定部分を除く領域に塗布する工程を有する保護被膜形成方法であって、ウレタン、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルからなる混合液に、イソシアネート系化合物および酢酸エチルからなる硬化速度増進剤を混合させてなる保護被膜剤を用いているため、(2)の事項と同様な効果が得られる。
(10)被覆物の外表面、あるいは被覆物の外表面の特定部分を除く領域に塗布する工程を有する保護被膜形成方法であって、混合液は、ウレタン10−30重量%、メチルエチルケトン35−45重量%および酢酸エチル35−45重量%であり、硬化速度増進剤は、イソシアネート系化合物2−30重量%および酢酸エチル70−98重量%であるため、(3)の事項と同様な効果が得られる。
(11)被覆物の外表面、あるいは被覆物の外表面の特定部分を除く領域に塗布する工程を有する保護被膜形成方法であって、被覆物の外表面にスプレーガンにより、保護被膜剤が0.1−3.0mmの厚みで塗布されて保護被膜を形成する。スプレーガンを用いることにより、保護被膜の重ね塗りを簡単な操作で迅速に行うことができる。
(12)保護被膜剤は、希釈溶液が貯留された収容容器を連結した密閉形タンクに貯留されている。電磁バルブの通電により希釈溶液が収容容器から保護被膜剤に混入する。このため、保護被膜剤の粘度が適度に調整されて、保護被膜剤の良好な塗布状態を維持することができる。
(13)保護被膜剤は、粘度が比較的高い時、密閉形タンクに貯留され、粘度が比較的低い時、開放形タンクに選択的に貯留されるようになっている。密閉形タンクを使用して塗布する場合、コンプレッサーにより密閉形タンクを加圧する。これにより、使用する保護被膜剤の粘度に応じて、密閉形タンクと開放形タンクとを選択的に適用でき、品質の高い保護被膜の形成に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は塗布装置を示す斜視図である(実施例1)。
図2は金型およびスプレーガンの拡大斜視図である。
図3は金型およびスプレーガンの拡大斜視図である(実施例5)。
図4は塗布装置を示す斜視図である(実施例6)。
図5および図6は塗布装置を示す概略図である(実施例7)。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
本発明の実施例1を示す図1において、塗布装置1は、液状の保護被膜剤Mを噴射させるためのスプレーガン2を備えている。塗布装置1において、保護被膜剤Mを液状で貯留する密閉形タンク3は、吸込みホース4を介してスプレーガン2の吸入口5に接続されている。スプレーガン2の空気取入筒6と密閉形タンク3との間には、加圧用のエアポンプ7が設けられている。エアポンプ7と密閉形タンク3との間は、加圧ホース8により連結され、エアポンプ7とスプレーガン2の空気取入筒6との間は、圧縮空気ホース7aにより連結されている。
保護被膜形成方法として、塗布装置1のエアポンプ7を稼働させると、空気が加圧ホース8を介して送られて密閉形タンク3を加圧するとともに、空気が圧縮空気ホース7aを介して空気取入筒6に圧送される。これにより、密閉形タンク3内の保護被膜剤Mが圧縮空気に押圧されて吸込みホース4および吸入口5を介してスプレーガン2に送られる。この状態で引き金2aを操作すると、スプレーガン2から保護被膜剤Mが圧縮空気とともに噴射される。噴射された保護被膜剤Mは、図2に示すように鋳造や鍛造に用いられる鉄製の金型9に塗布される。これにより、保護被膜剤Mが被覆物としての金型9を厚み0.1−3.0mmの保護被膜11として覆い、保管時の金型9を錆、汚れや損傷などから保護する。この場合、保護被膜剤Mの塗布領域は、金型9の外表面でキャビティ10の存する特定部位を除く領域であっても、キャビティ10を含む金型9の外表面の全領域であってもよい。特に、金型9を海外に搬送する場合や生産に用いない金型9を保管する場合には、金型9の全表面に保護被膜剤Mを塗布して金型9を保護する。金型9の再使用時には、キャビティ10が形成された面側のみの保護被膜剤Mを剥がして鋳造装置や鍛造装置に装着される。
金型9のキャビティ10を除く領域に塗布する理由は下記のようである。すなわち、近年の車両用部品の鋳造や鍛造の作業現場では、型打ち時に金型9のキャビティ10が形成された面側(キャビティ10の形成側)に鍍金や研磨などの表面処理が補修として行われるため、保護被膜剤Mは金型9のキャビティ10の形成側には塗布しなくても済むからである。この場合、金型9の装着時には、金型9を保護被膜11で覆ったままで鍛造装置や鋳造装置(図示せず)に取付けられることが一般的である。
保護被膜剤Mは、100重量%のウレタンに、適量のウレタン系硬化剤を硬度増進剤として混合させている。ウレタンとは、カルバミン酸とアルコール類あるいはフェノール類から生じるエステルの総称であり、狭義にカルバミン酸エチルを指す。
保護被膜剤Mにより形成された保護被膜11は、ウレタンが空気中の水分と反応して硬化し、100℃前後の耐熱性を有し、型打ち時に受ける70−80℃の使用温度に十分耐え得る。保護被膜11の硬化期間は、空気中の水分量と周囲温度によって変化するが、常温では48−72時間(2−3日)である。保護被膜11は、常温時の経時変化として月単位で徐々に黄変するが、その分子量および引張強度は比較的小さく、着色可能で金型9に対する密着性および耐磨耗性は良好である。
また、上記の保護被膜剤Mの組成成分によれば、衝撃に対する保護被膜11の耐剥離性および耐割れ性が向上し、金型9が他の部材に衝突した際、保護被膜11に割れや欠けが生じない。
また、保護被膜11の耐候性が向上し、経時変化に起因する亀裂などの発生がなく、ウレタン系硬化剤の混合割合の調整により保護被膜11の硬度(ショアー硬さ)を70−80に設定することができる。
さらに、重ね塗りにより保護被膜11の厚みは1.0−1.5mm程度に設定でき、保護被膜11に損傷、磨耗や剥がれなどが発生した場合、上塗りにより容易に補修することができる。しかも、ウレタンとウレタン系硬化剤といった比較的簡素な組成成分で保護被膜11の形成を実現でき、混合・調整操作が容易でコスト的に有利となる。
なお、密閉形タンク3に貯留する保護被膜剤Mには、適度な粘度を確保するため、メチルエチルケトンや酢酸エチルなどの希釈溶液を加えて粘性を調整しておくものである。
被覆物としては金型9に限らず、工場で使用する機械部品があり、機械部品を在庫として保管する場合、機械部品の全表面に保護被膜剤Mに塗布する。また、被覆物としては工場の付属品や設備であってもよく、付属品や設備の全表面にも保護被膜剤Mを塗布して錆や汚れから保護するものである。いずれの場合にも、使用時には、必要に応じて保護被膜剤Mを機械部品、付属品および設備の全表面から剥がし取るようにしている。このため、後述する実施例4のように、保護被膜剤Mの塗布に先立って、予めワックスなどの離型剤を被覆物に上塗りしておいてもよい。
【実施例2】
実施例2における保護被膜剤Mは、ウレタン、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルからなる混合液に、イソシアネート系化合物および酢酸エチルからなる硬化速度増進剤を混合させてなる。イソシアネート系化合物は、イソシアネート基を持つ化合物の総称で、例えば2、4−トルエンジイソシアネートが挙げられ、アルキル基あるいはアリール基をRとすると、R−N=C=Oの構造式で表わされる化合物である。この場合、イソシアネート系化合物と酢酸エチルの混合割合を変えることにより、保護被膜11の硬化速度を調整することができる。
【実施例3】
実施例3における保護被膜剤Mの混合液は、ウレタン10−30重量%、メチルエチルケトン35−45重量%および酢酸エチル35−45重量%からなり、硬化速度増進剤は、イソシアネート系化合物2−30重量%および酢酸エチル70−98重量%からなっている。実施例3では、混合液の組成成分割合および硬化速度増進剤の組成成分割合を数値化したが、これらの組成成分割合は、使用状況や適用対象などによって自由に変更できるものである。一例として、ウレタン20−26重量%、メチルエチルケトン37−40重量%および酢酸エチル37−40重量%にして、イソシアネート系化合物2−50重量%および酢酸エチル50−98重量%に調整してもよい。この場合、保護被膜11の耐熱性、硬化期間、常温時の経時変化、着色可能性、金型9に対する密着性および耐磨耗性は、実施例1と略同様であるが、分子量および引張強度は比較的大きい。
【実施例4】
実施例4では、保護被膜11で覆われる金型9の外表面にワックスなどの離型剤を、例えば0.01−0.05mm程度の薄い層で予め上塗りしている。このため、必要な場合には、金型9の保護被膜11を離型剤の溶融温度に温めることにより、金型9から容易に剥し取ることができる。離型剤としては、ワックスに代えて潤滑油や固形油脂などを用いてもよい。
【実施例5】
実施例5では、金型9の外表面でキャビティ10を除く領域には、ガムテープなどの粘着シートNを貼着している。このため、金型9の再使用時、保護被膜11を粘着シートNごと剥ぎ取ることにより、保護被膜11をキャビティ10の形成側から容易かつ迅速に除去することができる。粘着シートNは、プラスチックフィルムをはじめ、布地、紙やアルミニウム箔などの金属箔で形成してもよい。また、粘着シートNに代わって、単なるシートによりキャビティ10の形成側をテープなどで仮止めした状態に覆ってもよい。
【実施例6】
実施例6では、密閉形タンク3内の保護被膜剤Mの粘度を適度に調整するために、塗布装置1に収容容器12を付設している。収容容器12はメチルエチルケトンや酢酸エチルなどの希釈溶液を貯留しており、連結ホース13および電磁バルブ14を介して加圧ホース8に連結されている。
このため、塗布装置1の運転時にスプレーガン2から噴出される保護被膜剤Mの粘性状態を判断し、必要に応じてパネル15の押しボタン16を操作すると、電磁バルブ14が通電により開弁するとともに、密閉形タンク3内のパルセータ17が回転駆動される。電磁バルブ14の開弁により、収容容器12内の希釈溶液が、連結ホース13から加圧ホース8に吸引されて密閉形タンク3に供給される。密閉形タンク3に供給された希釈溶液は、保護被膜剤Mに混入し、パルセータ17により攪拌されて保護被膜剤Mを適度な粘度に調整する。
【実施例7】
実施例7では、図5および図6に示すように、保護被膜剤Mの粘度に応じて塗布装置20で開放形タンク21と密閉形タンク22とを選択的に使用する。すなわち、保護被膜剤Mは、粘度が比較的低い時、図5に示す開放形タンク21に貯留され、コンプレッサー23により圧縮された空気を送気管24を介してスプレーガン25に圧送する。この圧送過程で、塗装管26が開放形タンク21内の保護被膜剤Mを負圧により吸い上げてスプレーガン25に供給する。スプレーガン25からは、液状の保護被膜剤Mが圧縮空気とともに噴射して被覆物27を塗布により保護被膜28を形成する。
また、保護被膜剤Mは、粘度が比較的高い時、図6に示す密閉形タンク22に貯留される。この場合、密閉形タンク22とコンプレッサー23との間は、加圧管29により接続されている。このため、保護被膜剤Mの塗布時、密閉形タンク22内の保護被膜剤Mはコンプレッサー23からの圧縮空気により加圧されて、塗装管26を介してスプレーガン25に供給される。実施例7によれば、使用する保護被膜剤Mの粘度に応じて、開放形タンク21と密閉形タンク22とを選択的に適用でき、品質の高い保護被膜28の形成に寄与することができる。
[変形例]
なお、金型9は鉄製に限らず、軟鋼やステンレススチール鋼などの金属を用いてもよい。また、金型9に鍍金などの表面処理を施す場合は、保護被膜11を金型9から剥がすことなく、金型9を保護被膜11で覆わせたまま鍍金槽に浸漬することができる。また、保護被膜剤Mを希釈して粘度を下げることにより、塗布作業が楽になり仕上がりが良好になるので、被覆物に応じて保護被膜剤Mの粘度を調整することができる。保護被膜剤Mの塗布後に、赤外線などの照射により温度を上げて乾燥時間を短縮したり、重ね塗りが容易となるようにしてもよい。
被覆物としては、金型9、工場の機械部品、付属品や設備に限らず、家庭用品をはじめ各種の機具といったように、保管時に錆、汚れや損傷から保護する必要のあるバイク、自転車あるいは自家用車などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
本発明は、金型などの被覆物の外表面、あるいは被覆物の外表面で特定部分を除く領域に塗布する保護被膜剤および保護被膜形成方法であって、ウレタン、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルからなる混合液に、イソシアネート系化合物および酢酸エチルからなる硬化速度増進剤を混合させたものを用いている。保護被膜剤は、被覆物の外表面に密着して容易には剥離しない状態で被覆物を覆い、保護被膜として保管時の被覆物を錆、汚れや損傷などから保護する。しかも、ウレタンとウレタン系硬化剤といった比較的簡素な組成成分で、保護被膜の形成を実現できてコスト的に有利となり、金型などの被覆物に保護被膜を形成する機械製造業全体に適用することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆物の外表面、あるいは前記被覆物の外表面の特定部分を除く領域に塗布する保護被膜剤であって、ウレタンにウレタン系硬化剤を硬度増進剤として混合させてなる保護被膜剤。
【請求項2】
被覆物の外表面、あるいは前記被覆物の外表面の特定部分を除く領域に塗布する保護被膜剤であって、ウレタン、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルからなる混合液に、イソシアネート系化合物および酢酸エチルからなる硬化速度増進剤を混合させてなる保護被膜剤。
【請求項3】
前記混合液は、ウレタン10−30重量%、メチルエチルケトン35−45重量%および酢酸エチル35−45重量%であり、前記硬化速度増進剤は、イソシアネート系化合物2−30重量%および酢酸エチル70−98重量%であることを特徴とする請求項2に記載の保護被膜剤。
【請求項4】
前記被覆物の外表面に保護被膜として0.1−3.0mmの厚みで形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の保護被膜剤。
【請求項5】
前記イソシアネート系化合物は、2.4−トルエンジイソシアネートであることを特徴とする請求項3に記載の保護被膜剤。
【請求項6】
前記被覆物の外表面、あるいは前記被覆物の外表面の特定部分を除く領域には、ワックスなどの離型剤が予め上塗りされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の保護被膜剤。
【請求項7】
前記被覆物の特定部分には、剥離可能な粘着シートが予め貼着されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の保護被膜剤。
【請求項8】
ウレタンにウレタン系硬化剤を硬度増進剤として混合してなる保護被膜剤を被覆物の外表面、あるいは前記被覆物の外表面の特定部分を除く領域に塗布して保護被膜を形成する工程を有する保護被膜形成方法。
【請求項9】
ウレタン、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルからなる混合液に、イソシアネート系化合物および酢酸エチルからなる硬化速度増進剤を混合させてなる保護被膜剤を、被覆物の外表面、あるいは前記被覆物の外表面の特定部分を除く領域に塗布して保護被膜を形成する工程を有する保護被膜形成方法。
【請求項10】
前記混合液は、ウレタン10−30重量%、メチルエチルケトン35−45重量%および酢酸エチル35−45重量%であり、前記硬化速度増進剤は、イソシアネート系化合物2−30重量%および酢酸エチル70−98重量%であることを特徴とする請求項9に記載の保護被膜形成方法。
【請求項11】
前記保護被膜は、スプレーガンにより金型の外表面に0.1−3.0mmの厚みで形成されることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の保護被膜形成方法。
【請求項12】
前記保護被膜剤は、希釈溶液が貯留された収容容器を連結した密閉形タンクに貯留されており、電磁バルブの通電により前記希釈溶液が前記収容容器から前記保護被膜剤に混入して粘度が調整されることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の保護被膜形成方法。
【請求項13】
前記保護被膜剤は、粘度が比較的高い時、密閉形タンクに貯留され、粘度が比較的低い時、開放形タンクに選択的に貯留されるようになっており、前記密閉形タンクを使用して塗布する場合、コンプレッサーにより前記密閉形タンクを加圧することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の保護被膜形成方法。

【国際公開番号】WO2005/080636
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510145(P2006−510145)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003594
【国際出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【出願人】(592000587)
【Fターム(参考)】