信号伝送装置、電子機器、及び、信号伝送方法
【課題】変調回路と復調回路との組を複数設けて、各組でそれぞれ異なる周波数の搬送信号を用いて無線により信号伝送を行なう場合に、相互変調歪の問題を防止する。
【解決手段】
送信用の第1の通信部として通信装置710を使用し、受信用の第2の通信部として通信装置810を使用し、それぞれ3つ設ける。対応する送受信の組では、それぞれ異なる周波数の搬送周波数F_1〜F_3で変調や復調を行なう。それぞれ異なる周波数の搬送周波数について、各搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないように、各搬送周波数を設定する。
【解決手段】
送信用の第1の通信部として通信装置710を使用し、受信用の第2の通信部として通信装置810を使用し、それぞれ3つ設ける。対応する送受信の組では、それぞれ異なる周波数の搬送周波数F_1〜F_3で変調や復調を行なう。それぞれ異なる周波数の搬送周波数について、各搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないように、各搬送周波数を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送装置、電子機器、及び、信号伝送方法に関する。より詳細には、回路部材の非線形性に起因して発生する変調歪(特に“相互変調歪”)に関する。
【背景技術】
【0002】
通信エリア内において、1つの搬送周波数を用いた一組の送受信間での伝送だけでなく、複数の周波数の組合せにより信号伝送を行なうことがある。例えば、1組の通信装置間で周波数分割多重方式を適用して(2つの搬送周波数を用いて)双方向同時通信を行なう場合や、複数の通信装置間でそれぞれ異なる搬送周波数を用いて通信(片方向通信や双方向通信)を行なう場合がある。又、1組の通信装置間でありながら変調回路と復調回路との組を複数設けて、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重方式)伝送に代表されるようなシンボルレートを下げる方法の一つとしてのマルチキャリア(MC:Multi-Carrier)伝送を行なう場合もある。
【0003】
通信装置の組数を問わず何れも、変調回路と復調回路との組を複数設けて、変調回路と復調回路との組のそれぞれでは、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なうことになる。これらの複数の周波数の組合せの伝送を行なう場合、増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の回路部材の非線形性(非直線動作)に起因して発生する変調歪が受信品質を劣化させる。例えば、所望波(自局)とは全く関係のない2つの搬送周波数の信号が受信され非線形性を持つ増幅回路や周波数混合回路に入力されると、2つの搬送周波数の差の信号(妨害波成分)も出力される。このとき、2つの搬送周波数の差が所望波の周波数近傍に存在する場合に、この妨害波成分も復調される“相互変調歪”の問題がある。典型的には、自局の受信帯域に隣接する複数の周波数の信号を受信すると、増幅回路や周波数混合回路の線形性能が低いと受信帯域(通常は変調信号の1次成分だけを考えればよい)内に3次歪が発生し受信品質を著しく劣化させる。
【0004】
例えば、特開昭55−38777号公報には、スペクトラム拡散と狭帯域変調の組合せの場合の受信器の性能を緩和させる方法として、拡散変調の受信帯域幅の整数倍の位置に狭帯域変調の周波数を配置する方法が提案されている。しかしながら、狭帯域変調を複数使用すると、その3次歪が拡散変調の帯域内に生じてしまうし、複数の拡散変調の場合には適応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−38777号公報
【0006】
“相互変調歪”の問題を防止する手法としては、例えば、受信回路の入力部に、波長選択性を持つバンドパスフィルタを追加する手法が知られている。しかしながら、この手法は、バンドパスフィルタ分のコストの増大や基板面積の拡大等を招く。又、バンドパスフィルタは、一般的には、固定の周波数に対してのみ作用するため、対応周波数を可変して使用することは難しく通信チャネル(換言すると搬送周波数:以下では「バンド」ともいう)ごとに用意する必要がある。
【0007】
“相互変調歪”の問題を防止する他の手法としては、そもそもの発生原因である“回路部材の非直線動作”を改善する手法も知られている。回路部材の追加を伴わない手法である。例えば、回路の線形性能を高くするために、なるべく直線領域で動作させるように、バイアス電流を大きくする、DCバイアス点を最適化する等の対策が有効になるが、電源電圧の増大や消費電力の増大を招く。あるいは、線形性のよい高価な回路部材を使用するということも考えられるが、高価な回路部材を使っても、原理的に非線形性をゼロにすることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、“相互変調歪”の問題を防止する従来の手法は、専ら、回路部材の側面から対処しようとするものであるが、コストやサイズあるいは電源電圧や消費電力等の点で、万能といえるものにはなっていない。
【0009】
本発明は、回路部材以外の側面から“相互変調歪”の問題を防止することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る信号伝送装置は、伝送対象信号を無線信号として送信する第1の通信部と第1の通信部から送信された無線信号を受信する第2の通信部とがそれぞれ複数設けられている。具体的には、第1の通信部には、伝送対象信号を変調する変調部を設け、第2の通信部には、変調部で変調された変調信号を復調する復調部を設ける。つまり、伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とをそれぞれ複数設けて信号伝送装置を構成する。本発明の第1の態様に係る信号伝送装置の従属項に記載された各信号伝送装置は、本発明の第1の態様に係る信号伝送装置のさらなる有利な具体例を規定する。
【0011】
本発明の第2の態様に係る電子機器は、いわゆる機器内の信号伝送に関するものであり、伝送対象信号を無線信号として送信する第1の通信部と第1の通信部から送信された無線信号を受信する第2の通信部受信部とを1つの筐体内にそれぞれ複数備える。具体的には、第1の通信部には、伝送対象信号を変調する変調部を設け、第2の通信部には、変調部で変調された変調信号を復調する復調部を設ける。つまり、伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とを、それぞれ複数、1つの筐体内に配置して電子機器を構成する。電子機器内には、変調部で変調された変調信号を無線信号として伝送可能にする無線信号伝送路が形成されている。
【0012】
本発明の第3の態様に係る電子機器は、いわゆる機器間の信号伝送に関するものであり、伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部の少なくとも一方が1つの筐体内に複数配置されている第1の電子機器と、第1の電子機器の各変調部と対応する復調部及び第1の電子機器の各復調部と対応する変調部のそれぞれが1つの筐体内に配置されている第2の電子機器とを備えて、1つの電子機器の全体が構成されている。つまり、変調部と復調部とでなる組のそれぞれについて、変調部と復調部の一方が第1の電子機器に配置され、変調部と復調部の他方が第2の電子機器に配置され、このような変調部と復調部とでなる組を複数備えて1つの電子機器の全体が構成される。全ての変調部が第1の電子機器に配置されるとともに全ての復調部が第2の電子機器に配置される場合、全ての変調部が第2の電子機器に配置されるとともに全ての復調部が第1の電子機器に配置される場合、一部の組の変調部と残りの組の復調部とが第1の電子機器に配置されるとともに、その一部の組の変調部と対応する復調部とその残りの組の復調部と対応する変調部とが第2の電子機器に配置される場合の何れでもよい。そして、第1の電子機器と第2の電子機器が定められた位置に配置されたとき、変調部で変調された変調信号を無線信号として伝送可能にする無線信号伝送路が形成されるようになっている。
【0013】
本発明の第4の態様に係る信号伝送方法は、伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とをそれぞれ複数設けておく。
【0014】
そして、本発明の第1の態様に係る信号伝送装置、本発明の第2の態様に係る電子機器、本発明の第3の態様に係る電子機器、及び、本発明の第4の態様に係る信号伝送方法のそれぞれにおいて、変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用する搬送周波数に関しては、それぞれ異なる周波数とする。当然のことであるが、変調部と復調部との組を複数設けて、各組でそれぞれ異なる周波数の搬送周波数を用いて無線(特に電波)により信号伝送を行なう。
【0015】
ここで、変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数については、
1)隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、各搬送周波数が設定されている
という状態にする。
2)好ましくは、各搬送周波数に基づく変調信号の各受信帯域同士が重ならならないように、各搬送周波数が設定されている
という状態にする。
【0016】
変調部(変調回路)と復調部(復調回路)との組を複数設けて、各組でそれぞれ異なる周波数の搬送周波数を用いて無線(特に電波)により信号伝送を行なうに当たり、所望波(自局)とは全く関係のない2つの搬送周波数の信号が受信され(つまり自局の受信帯域内に入って)復調される相互変調歪を問題とするから、使用される搬送周波数は最低でも3つとなる。よって、隣接する3つの搬送周波数に着目して、1)の条件を満たし、好ましくは2)の条件も満たすようにすればよい。また、使用される搬送周波数が4つ以上のときは、そのうちの隣接する3つの搬送周波数の組合せの何れについても、1)の条件を満たし、好ましくは2)の条件も満たすようにすればよい。
【0017】
本発明の手法は、電子計算機(コンピュータ)を用いてソフトウェアで実現することもでき、このためのプログラムやプログラムを格納した記録媒体を発明として抽出することも可能である。プログラムは、コンピュータ読取り可能な記憶媒体に格納されて提供されてもよいし、有線あるいは無線による通信手段を介した配信により提供されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、変調回路と復調回路との組を複数設けて、各組でそれぞれ異なる周波数の搬送周波数を用いて無線(特に電波)により信号伝送を行なう際に使用する搬送周波数の配置の側面から、“相互変調歪”の問題を防止する。このため、回路部材の追加や変更を行なわなくても、“相互変調歪”の問題を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施形態の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する基本構成である。
【図2】図2(A)〜図2(C)は、3バンドの周波数配置の第1例を説明する図である。
【図3】図3(A)〜図3(C)は、3バンドの周波数配置の第2例を説明する図である。
【図4】図4(A)〜図4(C)は、4バンドの周波数配置の第1例を説明する図である。
【図5】図5(A)〜図5(C)は、4バンドの周波数配置の第2例を説明する図である。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、5バンドの周波数配置の第1例を説明する図である。
【図7】図7(A)〜図7(C)は、5バンドの周波数配置の第2例を説明する図である。
【図8】図8(A)〜図8(C)は、6バンドの周波数配置の第1例を説明する図である。
【図9】図9(A)〜図9(C)は、6バンドの周波数配置の第2例を説明する図である。
【図10】図10(A)〜図10(C)は、7バンドの周波数配置の第1例を説明する図である。
【図11】図11(A)〜図11(C)は、7バンドの周波数配置の第2例を説明する図である。
【図12】図12(A)〜図12(C)は、実施例1を説明する図である。
【図13】図13(A)〜図13(B)は、実施例2を説明する図である。
【図14】図14(A)〜図14(B)は、実施例3を説明する図である。
【図15】図15(A)〜図15(B)は、実施例4を説明する図である。
【図16】図16(A)〜図16(B)は、実施例4の変形例を説明する図である。
【図17】図17(A)〜図17(B)は、実施例5を説明する図である。
【図18】図18(A)〜図18(B)は、実施例6の電子機器の第1例を説明する図である。
【図19】図19(A)〜図19(C)は、実施例6の電子機器の第2例を説明する図である。
【図20】図20(A)〜図20(C)は、実施例6の電子機器の第3例を説明する図である。
【図21】図21は、比較例との対比を説明する図であって、周波数分割多重方式の基本的な周波数配置を示す図である。
【図22】図22は、比較例との対比を説明する図であって、変調歪を防止する比較例の方式を説明する図である。
【図23】図23は、本実施形態の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する第1の変形構成である。
【図24】図24は、本実施形態の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する第2の変形構成である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際には、A,B,C,…等のように大文字のアルファベットの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
【0021】
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.通信処理系統:基本
3.3バンドの周波数配置
4.4バンドの周波数配置
5.5バンドの周波数配置
6.6バンドの周波数配置
7.7バンドの周波数配置
8.具体的な適用例
実施例1:同一基板内伝送&制御なし(プリセット)
実施例2:同一基板内伝送&送信側への制御あり
実施例3:同一基板内伝送&送信側及び受信側への制御あり
実施例4:1つの電子機器内での基板間伝送&制御あり
実施例5:機器間伝送&制御あり
実施例6:電子機器への適用事例
9.比較例との対比
10.通信処理系統:変形例(周波数配置のプリセット化)
【0022】
<全体概要>
[信号伝送装置、信号伝送方法]
本発明の第1の態様〜第4の態様と対応する本実施形態の構成においては、伝送対象信号を無線信号として送信する第1の通信部と第1の通信部から送信された無線信号を受信する第2の通信部とをそれぞれ1つ又は複数設けて、信号伝送装置(無線伝送装置とも称する)や電子機器を構成する。送信機能をなす第1の通信部は、伝送対象信号を無線信号として送信する。受信機能をなす第2の通信部は、第1の通信部から送信された無線信号を受信する。第1の通信部には、伝送対象信号を変調する変調部を設け、第2の通信部には、変調部で変調された変調信号を復調する復調部を設け、これら変調部と復調部とをそれぞれ複数設けて信号伝送装置を構成する。尚、一般的には、アンテナと受信回路(第2の通信部)との間に、所望波を通過させるがそれ以外は抑圧する波長選択性を持つ部材(いわゆるバンドパスフィルタ)を設けるが、本実施形態ではそのような波長選択性を持つ部材を必要としない。
【0023】
第1の通信部と第2の通信部の組数(換言すると送受信対の組数)を問わず何れも、変調部と復調部との組を複数設けて、変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用する搬送周波数に関しては、それぞれ異なる周波数とする。ここで、それぞれ異なる周波数の搬送周波数については、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、各搬送周波数を設定する。
【0024】
受信回路は変更せずに、周波数配置により、受信回路における相互変調歪による受信性能の劣化の影響を回避することができる。周波数配置により、相互変調歪の影響を回避できるので、高い選択度の帯域制限フィルタが不要となり、低コストで小サイズの受信回路を構成できる。周波数配置により相互変調歪の影響を回避できるので、受信回路の歪性能を緩和でき、小サイズで低消費電力の構成でもよくなる。
【0025】
変調部で変調された変調信号を無線信号として送信し、その無線信号を受信して復調部に入力することで信号伝送を行なう際に、変調部と復調部との各組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、好ましくは、各搬送周波数に基づく変調信号の各受信帯域同士が重ならならないように各搬送周波数を設定する。
【0026】
変調回路と復調回路との組を複数設けて、各組でそれぞれ異なる周波数の搬送信号を用いて無線(特に電波)により信号伝送を行なうに当たり、所望波(自局)とは全く関係のない2つの搬送周波数の信号が自局の受信帯域内に入って復調される相互変調歪を問題とするから、使用される搬送周波数は最低でも3つとなる。隣接する3つの搬送周波数に着目して周波数配置を決めればよい。この場合、隣接する3つの搬送周波数について、以下のような条件を満たすようにするとよい。
【0027】
[第1の条件]
3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lと中間の周波数の搬送周波数F_Mとの差を第1の周波数差Δ1とし、
3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hと中間の周波数の搬送周波数F_Mとの差を第2の周波数差Δ2としたとき、
第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2とのうち小さい方ΔSを規定する低域側の搬送周波数F_aに基づく変調信号の高域側の受信帯域幅F_a_Uと、第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2のうち小さい方ΔSを規定する高域側の搬送周波数F_bに基づく変調信号の低域側の受信帯域幅F_b_Lとの和が、第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2のうち小さい方ΔSよりも小さい。第1の条件は、式(A)で表すことができる。
「F_a_U」+「F_b_L」<ΔS …(A)
【0028】
[第2の条件]
第1の周波数差Δ1の方が第2の周波数差Δ2よりも小さいときには、第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2との差“|Δ1−Δ2|”は、最も低周波数の搬送周波数F_Lに基づく変調信号の低域側の受信帯域幅F_L_Lと最も高周波数の搬送周波数F_Hに基づく変調信号の低域側の受信帯域幅F_H_Lのうち大きい方よりも大きい。第2の条件は、式(B)で表すことができる。
「F_L_L」と「F_H_L」のうち大きい方<|Δ1−Δ2| …(B)
【0029】
[第3の条件]
第1の周波数差Δ1の方が第2の周波数差Δ2よりも大きいときには、第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2との差“|Δ1−Δ2|”は、最も低周波数の搬送周波数F_Lに基づく変調信号の高域側の受信帯域幅F_L_Hと最も高周波数の搬送周波数F_Hに基づく変調信号の高域側の受信帯域幅F_H_Hのうち大きい方よりも大きい。第3の条件は、式(C)で表すことができる。
「F_L_H」と「F_H_H」のうち大きい方<|Δ1−Δ2| …(C)
【0030】
第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2のうち大きい方をΔLとすると“|Δ1−Δ2|”=ΔL−ΔSとなるから、第1の条件を示す式(A)と第2の条件を示す式(B)とを纏めると、式(D)で表すことができる。
「F_a_U」+「F_b_L」<ΔS<ΔL−α …(D)
ただし、α=「F_L_L」と「F_H_L」のうち大きい方
【0031】
第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2のうち大きい方をΔLとすると“|Δ1−Δ2|”=ΔL−ΔSとなるから、第1の条件を示す式(A)と第3の条件を示す式(C)とを纏めると、式(E)で表すことができる。
「F_a_U」+「F_b_L」<ΔS<ΔL−β …(E)
β=「F_L_H」と「F_H_H」のうち大きい方
【0032】
使用される搬送周波数が4つ以上のときは、第1の観点として、そのうちの隣接する3つの搬送周波数の組合せの何れについても、第1の条件が満たされるとともに、第1の周波数差Δ1の方が第2の周波数差Δ2よりも小さいときには第2の条件が満たされ、第1の周波数差Δ1の方が第2の周波数差Δ2よりも大きいときには第3の条件が満たされるようにする。
【0033】
使用される搬送周波数が4つ以上のときは、第2の観点として、そのうちの隣接する3つの搬送周波数の組合せの何れについても、以下の条件を満たすようにするとよい。
[第4の条件]
3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数に基づいて生成される相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数よりも低域側に生成される相互変調波は、最も低周波数の搬送周波数よりも低域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しない。
[第5の条件]
3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数に基づいて生成される相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数よりも高域側に生成される相互変調波は、最も高周波数の搬送周波数よりも高域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しない。
第4の条件と第5の条件は、使用される搬送周波数が4つ以上のときでも、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される相互変調歪成分の周波数は、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないということを規定している。
【0034】
好ましくは、送受信間の伝送特性が既知であるものとし、第1の通信部と第2の通信部の少なくとも一方に、設定値に基づいて、予め定められた信号処理を行なう信号処理部と、予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する設定値処理部とを備えるとよい。例えば、1つの筐体内の第1の通信部と第2の通信部の配置位置が変化しない場合(機器内通信の場合)や、第1の通信部と第2の通信部のそれぞれが各別の筐体内に配置される場合でも使用状態のときの第1の通信部と第2の通信部の配置位置が予め定められた状態となる場合(比較的近距離の機器間の無線伝送の場合)のように、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、第1の通信部と第2の通信部との間の伝送特性を予め知ることができる。
【0035】
送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。信号処理用の設定値を予め定められた値(つまり固定値)にすることでパラメータ設定を動的に変化させずに済むので、パラメータ演算回路を削減できるし、消費電力を削減することもできる。機器内や比較的近距離の機器間の無線伝送においては通信環境が固定されるため、通信環境に依存する各種回路パラメータを予め決定することができるし、伝送条件が固定である環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。例えば、工場出荷時に最適なパラメータを求めておき、そのパラメータを装置内部に保持しておくことで、パラメータ演算回路の削減や消費電力の削減を行なうことができる。
【0036】
信号処理のパラメータ設定としては種々のものがある。例えば、それぞれ異なる複数の搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合との関係では、変調用の搬送周波数や復調用の搬送周波数の設定がある。信号処理のパラメータ設定の他の例としては、信号増幅回路(振幅調整部)のゲイン設定(信号振幅設定)や位相調整量の設定や周波数特性の設定等もある。ゲイン設定は、送信電力設定や復調機能部に入力される受信レベル設定や自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)等に利用されるし、位相調整量の設定は、搬送信号やクロックを別送する系で送信信号の遅延量に合わせて位相を調整する場合に利用されるし、周波数特性の設定は、送信側で予め低域周波数成分や高域周波数成分の振幅を強調する場合に利用される。
【0037】
好ましくは、変調部と復調部の全てを1つの回路基板上に配置する。この場合、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境を作り易く、使用する搬送周波数を予め固定するのに都合がよい。
【0038】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合でも、各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にしてもよい。送信側の搬送周波数のみを制御することにより、適切な周波数割当てを行なうことができ、相互変調歪の影響を確実に受けないように、最適に制御することができる。
【0039】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合でも、各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にしてもよい。受信側の搬送周波数のみを制御することにより、適切な周波数割当てを行なうことができ、相互変調歪の影響を確実に受けないように、最適に制御することができる。
【0040】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合でも、各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替えるとともに、各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にしてもよい。送信側の搬送周波数のみや受信側の搬送周波数のみを制御する構成よりも、柔軟な制御を行なうことができる。
【0041】
変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合には、好ましくは、各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にするとよい。送信側の搬送周波数のみを制御することにより、適切な周波数割当てを行なうことができ、相互変調歪の影響を確実に受けないように、最適に制御することができる。
【0042】
変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合の他の形態として、好ましくは、各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にするとよい。受信側の搬送周波数のみを制御することにより、適切な周波数割当てを行なうことができ、相互変調歪の影響を確実に受けないように、最適に制御することができる。
【0043】
変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合の他の形態として、好ましくは、各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替えるとともに、各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にするとよい。送信側の搬送周波数のみや受信側の搬送周波数のみを制御する構成よりも、柔軟な制御を行なうことができる。
【0044】
搬送周波数を切り替えるための制御部を備える構成にする場合、搬送周波数を切り替えるための制御信号を有線で変調部或いは復調部に伝送する形態とすることができる。この形態は、変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合でも適用し得るが、特に、変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合に適用すると都合がよい。変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合に有線伝送にするには、いわゆるワイヤーハーネスが必要になるのに対して、変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合は、プリント配線で済むからである。
【0045】
搬送周波数を切り替えるための制御部を備える構成にする場合、搬送周波数を切り替えるための制御信号を無線で変調部或いは復調部に伝送する形態とすることもできる。この形態は、特に、変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合に適用すると都合がよい。物理的に離れた基板間伝送の場合でも、ワイヤーハーネスを使用せずに、周波数割当て用の制御信号を各通信装置に伝送できるからである。尚、この形態は、変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合でも適用し得るが、この場合は、プリント配線を利用した有線伝送を適用した方が、無線伝送化する回路構成が不要な分、コストや回路規模や消費電力の面で利点がある。
【0046】
搬送周波数を切り替えるための制御信号を無線で変調部或いは復調部に伝送する形態とする場合は、搬送周波数を切り替えるための制御信号の無線信号の使用帯域を、伝送対象信号の無線信号の使用帯域外にするとよい。この場合、制御情報の無線伝送が、伝送対象信号の無線伝送に障害を与えないことを、確実に保証することができる。
【0047】
搬送周波数を切り替えるための制御信号を無線で変調部或いは復調部に伝送する形態とする場合において、搬搬送周波数を切り替えるための制御信号の無線信号の使用帯域を伝送対象信号の無線信号の使用帯域にする場合、制御信号の無線信号の搬送周波数についても、受信回路における相互変調歪による受信性能の劣化の影響を回避することができるように、各搬送周波数を設定するとよい。
【0048】
搬送周波数を切り替えるための制御信号を無線で変調部或いは復調部に伝送する形態とする場合において、搬搬送周波数を切り替えるための制御信号の無線信号の使用帯域を伝送対象信号の無線信号の使用帯域にする場合、搬送周波数を切り替えるための制御信号の搬送周波数と伝送対象信号の搬送周波数とに同じ周波数を使用するとよい。この場合、変調部と復調部の対を、通常の被変調信号の伝送用と制御信号の伝送用とに兼用することができる。制御信号の伝送用に送受信の対を別途設けなくても済むので、低コストで小サイズで低消費電力の構成にすることができる。
【0049】
[電子機器]
本発明の第2の態様や本発明の第3の態様と対応する本実施形態の電子機器においては、各部がひとつの筐体内に収容された状態の装置構成で1つの電子機器とすることもできるし、複数の装置(電子機器)の組合せで1つの電子機器の全体が構成されることもある。本実施形態の信号伝送装置は、例えば、デジタル記録再生装置、地上波テレビ受像装置、携帯電話装置、ゲーム装置、コンピュータ等の電子機器において使用される。
【0050】
以下で説明する本実施形態の信号伝送装置や電子機器では、ミリ波帯(波長が1〜10ミリメートル)の搬送周波数を主に使用するものとして説明するが、ミリ波帯に限らず、より波長の短い例えばサブミリ波帯(波長が0.1〜1ミリメートル)やより波長の長いセンチ波帯(波長が1〜10センチメートル)等、ミリ波帯近傍の搬送周波数を使用する場合にも適用可能である。例えば、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合に、使用する搬送周波数の数(バンド数)が多くなりミリ波帯だけでは要求される通信帯域を確保できないときには、サブミリ波帯〜ミリ波帯、ミリ波帯〜センチ波帯、あるいはサブミリ波帯〜ミリ波帯〜センチ波帯を使用する。
【0051】
通信装置を構成する場合、送信側(つまり第1の通信部)単独の場合と、受信側(つまり第1の通信部)単独の場合と、送信側と受信側の双方を有する場合とがある。送信側と受信側は無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)を介して結合されミリ波帯で信号伝送を行なうように構成される。伝送対象の信号を広帯域伝送に適したミリ波帯域に周波数変換して伝送する。ただし、如何なる場合でも、第1の通信部と第2の通信部の組(対)で、信号伝送装置を構成する。特に、本実施形態の場合、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なうので、第1の通信部と第2の通信部の組(対)数が1つであるのか複数であるのかを問わず、変調部と復調部の組(対)を複数設ける。
【0052】
そして、比較的近距離に配置された第1の通信部と第2の通信部の間では、伝送対象の信号をミリ波信号に変換してから、このミリ波信号をミリ波信号伝送路を介して伝送する。本実施形態の「無線伝送」とは、伝送対象の信号を一般的な電気配線(単純なワイヤー配線)ではなく無線(電波:この例ではミリ波)で伝送することを意味する。
【0053】
「比較的近距離」とは、放送や一般的な無線通信で使用される野外(屋外)での通信装置間の距離に比べて距離が短いことを意味し、伝送範囲が閉じられた空間として実質的に特定できる程度のものであればよい。「閉じられた空間」とは、その空間内部から外部への電波の漏れが少なく、逆に、外部から空間内部への電波の到来(侵入)が少ない状態の空間を意味し、典型的にはその空間全体が電波に対して遮蔽効果を持つ筐体(ケース)で囲まれた状態である。例えば、1つの電子機器の筐体内での基板間通信や同一基板上でのチップ間通信や、一方の電子機器に他方の電子機器が装着された状態のように複数の電子機器が一体となった状態での機器間の通信が該当する。「一体」は、装着によって両電子機器が完全に接触した状態が典型例であるが、両電子機器間の伝送範囲が閉じられた空間として実質的に特定できる程度のものであればよい。例えば数センチ以内あるいは10数センチ以内等、比較的近距離で、両電子機器が多少離れた状態で定められた位置に配置されていて「実質的に」一体と見なせる場合も含む。要するに、両電子機器で構成される電波が伝搬し得る空間内部から外部への電波の漏れが少なく、逆に、外部からその空間内部への電波の到来(侵入)が少ない状態であればよい。
【0054】
以下では、1つの電子機器の筐体内での信号伝送を筐体内信号伝送と称し、複数の電子機器が一体(以下、「実質的に一体」も含む)となった状態での信号伝送を機器間信号伝送と称する。筐体内信号伝送の場合は、送信側の通信装置(通信部:送信部)と受信側の通信装置(通信部:受信部)が同一筐体内に収容され、通信部(送信部と受信部)間に無線信号伝送路が形成された信号伝送装置が電子機器そのものとなり得る。一方、機器間信号伝送の場合、送信側の通信装置(通信部:送信部)と受信側の通信装置(通信部:受信部)がそれぞれ異なる電子機器の筐体内に収容され、両電子機器が定められた位置に配置され一体となったときに両電子機器内の通信部(送信部と受信部)間に無線信号伝送路が形成されて信号伝送装置が構築される。
【0055】
ミリ波信号伝送路を挟んで設けられる各通信装置においては、送信系統と受信系統が対となって組み合わされて配置される。各通信装置に送信系統と受信系統を併存させることで双方向通信ができる。各通信装置に送信系統と受信系統を併存させる場合、一方の通信装置と他方の通信装置との間の信号伝送は片方向(一方向)のものでもよいし双方向のものでもよい。例えば、第1の通信装置が送信側となり第2の通信装置が受信側となる場合には、第1の通信装置に送信機能をなす第1の通信部が配置され第2の通信装置に受信機能をなす第2の通信部が配置される。第2の通信装置が送信側となり第1の通信装置が受信側となる場合には、第2の通信装置に送信機能をなす第1の通信部が配置され第1の通信装置に受信機能をなす第2の通信部が配置される。
【0056】
第1の通信部は、例えば、伝送対象の信号を信号処理してミリ波帯の電気信号を生成する送信側の信号生成部(伝送対象の電気信号をミリ波帯の電気信号に変換する信号変換部)と、ミリ波帯の無線信号を伝送する無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)に送信側の信号生成部で生成されたミリ波帯の電気信号を結合させる送信側の信号結合部を送信部に備えるものとする。好ましくは、送信側の信号生成部は、伝送対象の信号を生成する機能部と一体であるのがよい。
【0057】
例えば、送信側の信号生成部は変調回路(変調部)を有し、変調回路が伝送対象の信号(ベースバンド信号)を変調する。送信側の信号生成部は変調回路によって変調された後の信号を周波数変換してミリ波帯の電気信号を生成する。原理的には、伝送対象の信号をダイレクトにミリ波帯の電気信号に変換してもよい。送信側の信号結合部は、送信側の信号生成部によって生成されたミリ波帯の電気信号を無線信号(電磁波、電波)に変換して無線信号伝送路としてのミリ波信号伝送路に供給する。
【0058】
第2の通信部は例えば、無線信号伝送路としてのミリ波信号伝送路を介して伝送されてきたミリ波帯の無線信号を受信し電気信号に変換する受信側の信号結合部を受信部に備えるとともに、受信側の信号結合部により受信され電気信号に変換されたミリ波帯の電気信号(入力信号)を信号処理して通常の電気信号(伝送対象の信号、ベースバンド信号)を生成(復元、再生)する受信側の信号生成部(ミリ波の信号を伝送対象の電気信号に変換する信号変換部)を備えるものとする。好ましくは、受信側の信号生成部は、伝送対象の信号を受け取る機能部と一体であるのがよい。例えば、受信側の信号生成部は復調回路(復調部)を有し、ミリ波帯の電気信号を周波数変換して出力信号を生成し、その後、復調回路が出力信号を復調することで伝送対象の信号を生成する。原理的には、ミリ波帯の電気信号からダイレクトに伝送対象の信号に変換してもよい。
【0059】
つまり、信号インタフェースをとるに当たり、伝送対象の信号に関して、無線信号により接点レスやケーブルレスで伝送する(電気配線での伝送でない)。好ましくは、少なくとも信号伝送(特に高速伝送や大容量伝送が要求される映像信号や高速のクロック信号等)に関しては、ミリ波帯等の無線信号により伝送する。要するに、従前は電気配線によって行なわれていた信号伝送を本実施例では無線信号(電波)により行なう。ミリ波帯等の無線信号で信号伝送を行なうことで、ギガビット毎秒〔Gbps〕オーダーの高速信号伝送を実現することができるし、無線信号の及ぶ範囲を容易に制限でき、この性質に起因する効果も得られる。
【0060】
ここで、各信号結合部は、第1の通信部と第2の通信部が無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)を介して無線信号(ここではミリ波帯の無線信号)が伝送可能となるようにするものであればよい。例えばアンテナ構造(アンテナ結合部)を備えるものとしてもよいし、アンテナ構造を具備せずに結合をとるものでもよい。「ミリ波の信号を伝送するミリ波信号伝送路」等の無線信号伝送路は、空気(いわゆる自由空間)であってもよいが、好ましくは、無線信号(電磁波、電波)を伝送路中に閉じ込めつつ無線信号を伝送させる構造(無線信号閉込め構造、例えばミリ波閉込め構造)を持つものがよい。無線信号閉込め構造を積極的に利用することで、例えば電気配線のように無線信号伝送路の引回しを任意に確定することができる。このような無線信号閉込め構造のものとしては、例えば、典型的にはいわゆる導波管が該当するが、これに限らない。例えば、無線信号を伝送可能な誘電体素材で構成されたもの(誘電体伝送路や無線信号誘電体内伝送路と称する)や、伝送路を構成し、かつ、無線信号の外部放射を抑える遮蔽材が伝送路を囲むように設けられその遮蔽材の内部が中空の中空導波路がよい。誘電体素材や遮蔽材に柔軟性を持たせることで無線信号伝送路の引回しが可能となる。空気(いわゆる自由空間)の場合、各信号結合部はアンテナ構造をとることになり、そのアンテナ構造によって近距離の空間中を信号伝送することになる。一方、誘電体素材で構成されたものとする場合は、アンテナ構造をとることもできるが、そのことは必須でない。
【0061】
[電気配線による信号伝送と無線伝送との対比]
電気配線を介して信号伝送を行なう信号伝送では、次のような問題がある。
i)伝送データの大容量・高速化が求められるが、電気配線の伝送速度・伝送容量には限界がある。
ii)伝送データの高速化の問題に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落とす手法がある。しかしながら、この手法では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化、コネクタ部や電気的インタフェースの物理サイズの増大等が求められ、それらの形状が複雑化し、これらの信頼性が低下し、コストが増大する等の問題が起こる。
iii)映画映像やコンピュータ画像等の情報量の膨大化に伴い、ベースバンド信号の帯域が広くなるに従って、EMC(電磁環境適合性)の問題がより顕在化してくる。例えば、電気配線を用いた場合は、配線がアンテナとなって、アンテナの同調周波数に対応した信号が干渉される。又、配線のインピーダンスの不整合等による反射や共振によるものも不要輻射の原因となる。このような問題を対策するために、電子機器の構成が複雑化する。
iv)EMCの他に、反射があると受信側でシンボル間での干渉による伝送エラーや妨害の飛び込みによる伝送エラーも問題となってくる。
【0062】
これに対して、電気配線ではなく無線(例えばミリ波帯を使用)で信号伝送を行なう場合、配線形状やコネクタの位置を気にする必要がないため、レイアウトに対する制限があまり発生しない。ミリ波による信号伝送に置き換えた信号については配線や端子を割愛できるので、EMCの問題から解消される。一般に、通信装置内部で他にミリ波帯の周波数を使用している機能部は存在しないため、EMCの対策が容易に実現できる。送信側の通信装置と受信側の通信装置を近接した状態での無線伝送となり、固定位置間や既知の位置関係の信号伝送であるため、次のような利点が得られる。
1)送信側と受信側の間の伝搬チャネル(導波構造)を適正に設計することが容易である。
2)送信側と受信側を封止する伝送路結合部の誘電体構造と伝搬チャネル(ミリ波信号伝送路の導波構造)を併せて設計することで、自由空間伝送より、信頼性の高い良好な伝送が可能になる。
3)無線伝送を管理するコントローラの制御も一般の無線通信のように動的にアダプティブに頻繁に行なう必要はないため、制御によるオーバーヘッドを一般の無線通信に比べて小さくすることができる。その結果、制御回路や演算回路等で使用する設定値 (いわゆるパラメータ)を定数(いわゆる固定値)にすることができ、小型、低消費電力、高速化が可能になる。例えば、製造時や設計時に無線伝送特性を校正し、個体のばらつき等を把握すれば、そのデータを参照できるので、信号処理部の動作を規定する設定値は、プリセットや静的な制御にできる。その設定値は信号処理部の動作を概ね適正に規定するから、簡易な構成かつ低消費電力でありながら、高品位の通信が可能になる。
【0063】
又、波長の短いミリ波帯での無線通信にすることで、次のような利点が得られる。
a)ミリ波通信は通信帯域を広く取れるため、データレートを大きくとることが簡単にできる。
b)伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数から離すことができ、ミリ波とベースバンド信号の周波数の干渉が起こり難い。
c)ミリ波帯は波長が短いため、波長に応じてきまるアンテナや導波構造を小さくできる。加えて、距離減衰が大きく回折も少ないため電磁シールドが行ない易い。
d)通常の野外での無線通信では、搬送波の安定度については、干渉等を防ぐため、厳しい規制がある。そのような安定度の高い搬送波を実現するためには、高い安定度の外部周波数基準部品と逓倍回路やPLL(位相同期ループ回路)等が用いられ、回路規模が大きくなる。しかしながら、ミリ波は(特に固定位置間や既知の位置関係の信号伝送との併用時は)、容易に遮蔽でき、外部に漏れないようにできる。安定度を緩めた搬送波で伝送された信号を受信側で小さい回路で復調するのには、注入同期方式を採用するのが好適である。
【0064】
例えば、比較的近距離(例えば10数センチ以内)に配置されている電子機器間や電子機器内での高速信号伝送を実現する手法として、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)が知られている。しかしながら、最近のさらなる伝送データの大容量高速化に伴い、消費電力の増加、反射等による信号歪みの影響の増加、不要輻射の増加(いわゆるEMIの問題)、等が問題となる。例えば、映像信号(撮像信号を含む)やコンピュータ画像等の信号を機器内や機器間で高速(リアルタイム)に伝送する場合にLVDSでは限界に達してきている。
【0065】
データの高速伝送に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落としてもよい。しかしながら、この対処では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化や半導体チップサイズの拡大等が求められる。また、高速・大容量のデータを配線で引き回すことでいわゆる電磁界障害が問題となる。
【0066】
LVDSや配線数を増やす手法における問題は何れも、電気配線により信号を伝送することに起因している。そこで、電気配線により信号を伝送することに起因する問題を解決する手法として、電気配線を無線化して伝送する手法(特に電波で信号伝送を行なう手法)を採ってもよい。電気配線を無線化して伝送する手法としては例えば、筐体内の信号伝送を無線で行なうとともに、UWB(Ultra Wide Band )通信方式を適用してもよいし(第1の手法と記す)、波長の短い(1〜10ミリメートル)ミリ波帯の搬送周波数を使用してもよい(第2の手法と記す)。しかしながら、第1の手法のUWB通信方式では、搬送周波数が低く、例えば映像信号を伝送するような高速通信に向かないし、アンテナが大きくなる等、サイズ上の問題がある。さらに、伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数に近いため、無線信号とベースバンド信号との間で干渉が起こり易いという問題点もある。また、搬送周波数が低い場合は、機器内の駆動系ノイズの影響を受け易く、その対処が必要になる。これに対して、第2の手法のように、より波長の短いミリ波帯の搬送周波数を使用すると、アンテナサイズや干渉の問題を解決し得る。
【0067】
ここでは、ミリ波帯で無線通信を行なう場合で説明したが、その適用範囲はミリ波帯で通信を行なうものに限定されない。ミリ波帯を下回る周波数帯(センチ波帯)や、逆にミリ波帯を超える周波数帯(サブミリ波帯)での通信を適用してもよい。ただし、筐体内信号伝送や機器間信号伝送においては、過度に波長が長くも短くもないミリ波帯を主に使用するのが効果的である。
【0068】
以下、本実施例の信号伝送装置や電子機器について具体的に説明する。なお、最も好適な例として、多くの機能部が半導体集積回路(チップ、例えばCMOSのIC)に形成されている例で説明するが、このことは必須でない。
【0069】
<通信処理系統:基本>
図1は、本実施形態の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する基本構成である。
【0070】
[機能構成]
図1に示すように、信号伝送装置1は、第1の無線機器の一例である第1通信装置100と第2の無線機器の一例である第2通信装置200が無線信号伝送路9を介して結合されミリ波帯を主とする無線信号を利用して信号伝送を行なうように構成されている。図では、第1通信装置100側に送信系統を設け、第2通信装置200に受信系統を設けた場合で示している。
【0071】
第1通信装置100にはミリ波帯送信に対応した半導体チップ103が設けられ、第2通信装置200にはミリ波帯受信に対応した半導体チップ203が設けられている。
【0072】
本実施例では、ミリ波帯での通信の対象となる信号を、高速性や大容量性が求められる信号のみとし、その他の低速・小容量で十分なものや電源等直流と見なせる信号に関してはミリ波信号への変換対象としない。これらミリ波信号への変換対象としない信号(電源を含む)については、従前と同様の手法で基板間の信号の接続をとるようにする。ミリ波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。
【0073】
[第1通信装置]
第1通信装置100は、基板102上に、ミリ波帯送信に対応した半導体チップ103と伝送路結合部108が搭載されている。半導体チップ103は、LSI機能部104と信号生成部107(ミリ波信号生成部)を一体化したLSI(Large Scale Integrated Circuit)である。半導体チップ103は伝送路結合部108と接続される。伝送路結合部108は、電気信号を無線信号に変換して無線信号伝送路9に送信する送信部の一例であり、例えば、アンテナ結合部やアンテナ端子やマイクロストリップ線路やアンテナ等を具備するアンテナ構造が適用される。伝送路結合部108と無線信号伝送路9との結合箇所が送信箇所である。
【0074】
LSI機能部104は、第1通信装置100の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方に送信したい各種の信号を処理する回路が含まれる。
【0075】
信号生成部107(電気信号変換部)は、LSI機能部104からの信号をミリ波信号に変換し、無線信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。送信側信号生成部110と伝送路結合部108で送信系統(送信部:送信側の通信部)が構成される。
【0076】
送信側信号生成部110は、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成するために、多重化処理部113、パラレルシリアル変換部114、変調部115、周波数変換部116、増幅部117を有する。増幅部117は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。なお、変調部115と周波数変換部116は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
【0077】
多重化処理部113は、LSI機能部104からの信号の内で、ミリ波帯での通信の対象となる信号が複数種(N1とする)ある場合に、時分割多重、周波数分割多重、符号分割多重等の多重化処理を行なうことで、複数種の信号を1系統の信号に纏める。例えば、高速性や大容量性が求められる複数種の信号をミリ波での伝送の対象として、1系統の信号に纏める。
【0078】
パラレルシリアル変換部114は、パラレルの信号をシリアルのデータ信号に変換して変調部115に供給する。変調部115は、伝送対象信号を変調して周波数変換部116に供給する。パラレルシリアル変換部114は、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられ、シリアルインタフェース仕様の場合は不要である。
【0079】
変調部115としては、基本的には、振幅・周波数・位相の少なくとも1つを伝送対象信号で変調するものであればよく、これらの任意の組合せの方式も採用し得る。例えば、アナログ変調方式であれば、例えば、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)とベクトル変調がある。ベクトル変調として、周波数変調(FM:Frequency Modulation)と位相変調(PM:Phase Modulation)がある。デジタル変調方式であれば、例えば、振幅遷移変調(ASK:Amplitude shift keying)、周波数遷移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、位相遷移変調(PSK:Phase Shift Keying)、振幅と位相を変調する振幅位相変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)がある。振幅位相変調としては直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が代表的である。
【0080】
周波数変換部116は、変調部115によって変調された後の伝送対象信号を周波数変換してミリ波の電気信号を生成して増幅部117に供給する。ミリ波の電気信号とは、概ね30〜300ギガヘルツ〔GHz〕の範囲のある周波数の電気信号をいう。「概ね」と称したのはミリ波通信による効果が得られる程度の周波数であればよく、下限は30ギガヘルツに限定されず、上限は300ギガヘルツに限定されないことに基づく。
【0081】
周波数変換部116としては様々な回路構成を採り得るが、例えば、周波数混合回路(ミキサー回路)と局部発振回路とを備えた構成を採用すればよい。局部発振回路は、変調に用いる搬送波(キャリア信号、基準搬送波)を生成する。周波数混合回路は、パラレルシリアル変換部114からの信号で局部発振回路が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の伝送信号を生成して増幅部117に供給する。
【0082】
増幅部117は、周波数変換後のミリ波の電気信号を増幅して伝送路結合部108に供給する。増幅部117には図示しないアンテナ端子を介して双方向の伝送路結合部108に接続される。
【0083】
伝送路結合部108は、送信側信号生成部110によって生成されたミリ波の信号を無線信号伝送路9に送信する。伝送路結合部108は、アンテナ結合部で構成される。アンテナ結合部は伝送路結合部108(信号結合部)の一例やその一部を構成する。アンテナ結合部とは、狭義的には半導体チップ内の電子回路と、チップ内又はチップ外に配置されるアンテナを結合する部分をいい、広義的には、半導体チップと無線信号伝送路9を信号結合する部分をいう。例えば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、無線信号伝送路9との結合部における構造をいい、ミリ波帯の電気信号を電磁波(電波)に変換して無線信号伝送路9に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。
【0084】
無線信号伝送路9は、自由空間伝送路として、例えば筐体内の空間を伝搬する構成にしてもよい。又、好ましくは、導波管、伝送線路、誘電体線路、誘電体内等の導波構造で構成し、ミリ波帯域の電磁波を伝送路に閉じ込める構成にして、効率よく伝送させる特性を有するものとするのが望ましい。例えば、一定範囲の比誘電率と一定範囲の誘電正接を持つ誘電体素材を含んで構成された誘電体伝送路9Aにするとよい。例えば、筐体内の全体に誘電体素材を充填することで、伝送路結合部108と伝送路結合部208の間には、自由空間伝送路ではなく誘電体伝送路9Aが配される。又、伝送路結合部108のアンテナと伝送路結合部208のアンテナの間を誘電体素材で構成されたある線径を持つ線状部材である誘電体線路で接続することで誘電体伝送路9Aを構成してもよい。なお、ミリ波信号を伝送路に閉じ込める構成の無線信号伝送路9としては、誘電体伝送路9Aの他に、伝送路の周囲が遮蔽材で囲まれその内部が中空の中空導波路としてもよい。
【0085】
[第2通信装置]
第2通信装置200は、基板202上に、ミリ波帯受信に対応した半導体チップ203と伝送路結合部208が搭載されている。半導体チップ203は、LSI機能部204と信号生成部207(ミリ波信号生成部)を一体化したLSIである。図示しないが、第1通信装置100と同様に、LSI機能部204と信号生成部207を一体化しない構成にしてもよい。
【0086】
半導体チップ203は伝送路結合部108と同様の伝送路結合部208と接続される。伝送路結合部208は、無線信号伝送路9を介して伝送された無線信号を電気信号に変換する受信部の一例であり、伝送路結合部108と同様のものが採用され、無線信号伝送路9からミリ波帯の無線信号を受信し電気信号に変換して受信側信号生成部220に出力する。伝送路結合部208と無線信号伝送路9との結合箇所が受信箇所である。
【0087】
信号生成部207(電気信号変換部)は、無線信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。受信側信号生成部220と伝送路結合部208で受信系統(受信部:受信側の通信部)が構成される。
【0088】
受信側信号生成部220は、伝送路結合部208によって受信したミリ波の電気信号を信号処理して出力信号を生成するために、増幅部224、周波数変換部225、復調部226、シリアルパラレル変換部227、単一化処理部228を有する。増幅部224は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。周波数変換部225と復調部226は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
【0089】
伝送路結合部208には受信側信号生成部220が接続される。受信側の増幅部224は、伝送路結合部208に接続され、アンテナによって受信された後のミリ波の電気信号を増幅して周波数変換部225に供給する。周波数変換部225は、増幅後のミリ波の電気信号を周波数変換して周波数変換後の信号を復調部226に供給する。復調部226は、周波数変換後の信号を復調してベースバンドの信号を取得しシリアルパラレル変換部227に供給する。
【0090】
シリアルパラレル変換部227は、シリアルの受信データをパラレルの出力データに変換して単一化処理部228に供給する。シリアルパラレル変換部227は、パラレルシリアル変換部114と同様に、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられる。第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がシリアル形式の場合は、パラレルシリアル変換部114とリアルパラレル変換部227を設けなくてもよい。
【0091】
第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がパラレル形式の場合には、入力信号をパラレルシリアル変換して半導体チップ203側へ伝送し、又半導体チップ203側からの受信信号をシリアルパラレル変換することにより、ミリ波変換対象の信号数が削減される。
【0092】
単一化処理部228は、多重化処理部113と対応するもので、1系統に纏められている信号を複数種の信号_@(@は1〜N)に分離する。例えば、1系統の信号に纏められている複数本のデータ信号を各別に分離してLSI機能部204に供給する。
【0093】
LSI機能部204は、第2通信装置200の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。
【0094】
[双方向通信への対応]
信号生成部107と伝送路結合部108や信号生成部207と伝送路結合部208はデータの双方向性を持つ構成にすることで、双方向通信にも対応できる。例えば、信号生成部107や信号生成部207には、それぞれ受信側の信号生成部、送信側の信号生成部を設ける。伝送路結合部108や伝送路結合部208は、送信側と受信側に各別に設けてもよいが、送受信に兼用されるものとすることもできる。
【0095】
なお、ここで示す「双方向通信」は、ミリ波の伝送チャネルである無線信号伝送路9が1系統(一芯)の一芯双方向伝送となる。この実現には、時分割多重(TDD:Time Division Duplex)を適用する半二重方式と、周波数分割多重(FDD:Frequency Division Duplex)等を適用することが考えられるが、本実施形態では周波数分割多重を採用する。
【0096】
[接続と動作]
入力信号を周波数変換して信号伝送するという手法は、放送や無線通信で一般的に用いられている。これらの用途では、どこまで通信できるか(熱雑音に対してのS/Nの問題)、反射やマルチパスにどう対応するか、妨害や他チャンネルとの干渉をどう抑えるか等の問題に対応できるような比較的複雑な送信器や受信器等が用いられている。
【0097】
これに対して、本実施形態で使用する信号生成部107と信号生成部207は、放送や無線通信で一般的に用いられる複雑な送信器や受信器等の使用周波数に比べて、より高い周波数帯のミリ波帯を主に使用するので、波長λが短いため、周波数の再利用がし易く、近傍に配置された多くのデバイス間での通信をするのに適したものが使用される。
【0098】
本実施形態では、従来の電気配線を利用した信号インタフェースとは異なり、前述のようにミリ波帯で信号伝送を行なうことで高速性と大容量に柔軟に対応できるようにしている。例えば、高速性や大容量性が求められる信号のみをミリ波帯での通信の対象としており、装置構成によっては、第1通信装置100と第2通信装置200は、低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の電気配線によるインタフェース(端子・コネクタによる接続)を一部に備えることになる。
【0099】
信号生成部107は、予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、LSI機能部104から入力された入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。信号生成部107は、例えば、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路で伝送路結合部108に接続され、生成されたミリ波の信号が伝送路結合部108を介して無線信号伝送路9に電磁波(電波、無線信号)となって供給される。
【0100】
伝送路結合部108は、アンテナ構造を有し、伝送されたミリ波の信号を電磁波に変換し、電磁波を送出する機能を有する。伝送路結合部108は無線信号伝送路9と結合されており、無線信号伝送路9の一方の端部に伝送路結合部108で変換された電磁波が供給される。無線信号伝送路9の他端には第2通信装置200側の伝送路結合部208が結合されている。無線信号伝送路9を第1通信装置100側の伝送路結合部108と第2通信装置200側の伝送路結合部208の間に設けることにより、無線信号伝送路9にはミリ波帯を主とする電磁波が伝搬する。
【0101】
無線信号伝送路9には第2通信装置200側の伝送路結合部208が結合されている。伝送路結合部208は、無線信号伝送路9の他端に伝送された電磁波を受信し、ミリ波の信号に変換して信号生成部207(ベースバンド信号生成部)に供給する。信号生成部207は、予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、変換されたミリ波の信号を信号処理して出力信号(ベースバンド信号)を生成しLSI機能部204へ供給する。
【0102】
ここまでは第1通信装置100から第2通信装置200への信号伝送の場合で説明したが、第1通信装置100と第2通信装置200をともに双方向通信へ対応した構成にすることで、第2通信装置200のLSI機能部204からの信号を第1通信装置100へ伝送する場合も同様に考えればよく双方向にミリ波の信号を伝送できる。
【0103】
次に、同一通信エリアで、変調回路と復調回路との組を複数設けて、変調回路と復調回路との組のそれぞれで、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合に、回路部材の追加や変更を行なわずに、搬送周波数の配置の側面から対処する本実施形態の手法について説明する。
【0104】
<3バンドの周波数配置>
図2及び図3は、それぞれ周波数の異なる3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3を使用する場合(3バンドと称する)の周波数配置の決定方法を説明する図である。ここで、図2は、3バンドの周波数配置の第1例を示し、図3は、3バンドの周波数配置の第2例を示す。
【0105】
説明の都合上、周波数の高低をF_1<F_2<F_3とする。即ち、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_1であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_2であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_3である。
【0106】
搬送周波数F_1と搬送周波数F_2の周波数差(=F_2−F_1)をD12、搬送周波数F_2と搬送周波数F_3の周波数差(=F_3−F_2)をD23とする。即ち、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_1)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_2)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD12であり、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_3)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_2)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD23である。
【0107】
搬送周波数F_1に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw1とし、全受信帯域幅Bw1のうち、低域側の受信帯域幅をBw1_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw1_Hとする。搬送周波数F_2に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw2とし、全受信帯域幅Bw2のうち、低域側の受信帯域幅をBw2_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw2_Hとする。搬送周波数F_3に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw3とし、全受信帯域幅Bw3のうち、低域側の受信帯域幅をBw3_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw3_Hとする。
【0108】
搬送周波数F_1に基づく変調信号と搬送周波数F_2に基づく変調信号との帯域間隔をH12とし、搬送周波数F_2に基づく変調信号と搬送周波数F_3に基づく変調信号との帯域間隔をH23とする。式的には、帯域間隔H12は“D12−Bw1_H−Bw2_L”となり、帯域間隔H23は“D23−Bw2_H−Bw3_L”となる。
【0109】
搬送周波数F_1と搬送周波数F_2とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_1−F_2)をIM12とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_2−F_1)をIM21とする。搬送周波数F_2と搬送周波数F_3とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_2−F_3)をIM23とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_3−F_2)をIM32とする。
【0110】
[第1例]
第1例はD12<D23の場合であり、この場合における3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3と3次の相互変調歪周波数IM12、IM21、IM23、IM32の関係が図2に示されている。
【0111】
この場合、第1の周波数差Δ1(=D12)と第2の周波数差Δ2(=D23)のうち小さい方ΔSは第1の周波数差Δ1(=D12)である。この小さい方ΔS(=D12)を規定する低域側の搬送周波数F_aは搬送周波数F_1であり、この搬送周波数F_a(=F_1)に基づく変調信号の高域側の受信帯域幅F_a_UはBw1_Hである。又、この小さい方ΔS(=D12)を規定する高域側の搬送周波数F_bは搬送周波数F_2であり、この搬送周波数F_b(=F_2)に基づく変調信号の低域側の受信帯域幅F_b_LはBw2_Lである。
【0112】
ここで、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件を求めると以下のようになる。
【0113】
各搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならないためには、式(1)(式(1−1)及び式(1−2))に示すように、搬送周波数F_1に基づく変調信号と搬送周波数F_2に基づく変調信号との帯域間隔H12が正の値になり、かつ、搬送周波数F_2に基づく変調信号と搬送周波数F_3に基づく変調信号との帯域間隔H23も正の値になることが必要となる(図2(A)を参照)。
【0114】
【数1】
【0115】
搬送周波数F_1と搬送周波数F_2とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分の歪周波数IM12は搬送周波数F_1よりも低域側に存在するので、妨害の問題は起きない(図2(B)を参照)。
【0116】
一方、搬送周波数F_1と搬送周波数F_2とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち高域成分の歪周波数IM21は搬送周波数F_2よりも高域側に存在するので、搬送周波数F_3に基づく変調信号との重なりによる妨害が起こり得る。これを防止するには、歪周波数IM21が、搬送周波数F_3に基づく変調信号の帯域内に発生しないようにすればよく、式(2)に示すように、歪周波数IM21と搬送周波数F_3に基づく変調信号の低域側の帯域との間隔H2が正の値になることが必要となる(図2(B)を参照)。
【0117】
【数2】
【0118】
搬送周波数F_2と搬送周波数F_3とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち高域成分の歪周波数IM32は搬送周波数F_3よりも高域側に存在するので、妨害の問題は起きない(図2(C)を参照)。
【0119】
一方、搬送周波数F_2と搬送周波数F_3とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分の歪周波数IM23は、搬送周波数F_1よりも低域側に存在し、搬送周波数F_1に基づく変調信号との重なりによる妨害が起こり得る。これを防止するには、歪周波数IM23が、搬送周波数F_1に基づく変調信号の帯域内に発生しないようにすればよく、式(3)に示すように、歪周波数IM23と搬送周波数F_1に基づく変調信号の低域側の帯域との間隔H3が正の値になることが必要となる(図2(C)を参照)。
【0120】
【数3】
【0121】
式(1)、式(2)、式(3)より、搬送周波数F_L(=F_1)と搬送周波数F_M(=F_2)との差として求められる第1の周波数差Δ1(=D12)は、式(4)で示す範囲に規定される。
【0122】
【数4】
【0123】
式(4)のうちの“Bw1_H+Bw2_L<D12”は前述の条件1と対応する。式(4)のうちの“D12<D23−(Bw1_LとBw3_Lのうち大きい方)”は“|D12−D23|>(Bw1_LとBw3_Lのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件2と対応する。
【0124】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置を、式(4)を満たすように定めることで、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0125】
尚、Bw1_L=Bw1_HのときはBw1_L=Bw1_H=Bw1/2であり、Bw2_L=Bw2_HのときはBw2_L=Bw2_H=Bw2/2であり、Bw3_L=Bw3_HのときはBw3_L=Bw3_H=Bw3/2であるから、式(1−1)は式(5−1)に変形でき、式(1−2)は式(5−2)に変形でき、式(2)は式(5−3)に変形でき、式(3)は式(5−4)に変形でき、式(4)は式(5−5)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3)であるとしたときには、式(5−5)は式(5−6)のように簡略化できる。
【0126】
【数5】
【0127】
[第2例]
第2例はD12>D23の場合であり、この場合における3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3と3次の相互変調歪周波数IM12、IM21、IM23、IM32の関係が図3に示されている。
【0128】
この場合、第1の周波数差Δ1(=D12)と第2の周波数差Δ2(=D23)のうち小さい方ΔSは第2の周波数差Δ2(=D23)である。この小さい方ΔS(=D23)を規定する低域側の搬送周波数F_aは搬送周波数F_2であり、この搬送周波数F_a(=F_2)に基づく変調信号の高域側の受信帯域幅F_a_UはBw2_Hである。又、この小さい方ΔS(=D23)を規定する高域側の搬送周波数F_bは搬送周波数F_3であり、この搬送周波数F_b(=F_3)に基づく変調信号の低域側の受信帯域幅F_b_LはBw3_Lである。
【0129】
ここで、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件を求めると以下のようになる。
【0130】
各搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならないためには、式(6)(式(6−1)及び式(6−2))に示すように、搬送周波数F_1に基づく変調信号と搬送周波数F_2に基づく変調信号との帯域間隔H12が正の値になり、かつ、搬送周波数F_2に基づく変調信号と搬送周波数F_3に基づく変調信号との帯域間隔H23も正の値になることが必要となる(図3(A)を参照)。
【0131】
【数6】
【0132】
搬送周波数F_1と搬送周波数F_2とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分の歪周波数IM12は搬送周波数F_1よりも低域側に存在するので、妨害の問題は起きない(図3(B)を参照)。
【0133】
一方、搬送周波数F_1と搬送周波数F_2とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち高域成分の歪周波数IM21は、搬送周波数F_3よりも高域側に存在し、搬送周波数F_3に基づく変調信号との重なりによる妨害が起こり得る。これを防止するには、歪周波数IM21が、搬送周波数F_3に基づく変調信号の帯域内に発生しないようにすればよく、式(7)に示すように、歪周波数IM21と搬送周波数F_3に基づく変調信号の高域側の帯域との間隔H5が正の値になることが必要となる(図3(B)を参照)。
【0134】
【数7】
【0135】
搬送周波数F_2と搬送周波数F_3とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち高域成分の歪周波数IM32は搬送周波数F_3よりも高域側に存在するので、妨害の問題は起きない(図3(C)を参照)。
【0136】
一方、搬送周波数F_2と搬送周波数F_3とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分の歪周波数IM23は、搬送周波数F_2よりも低域側に存在し、搬送周波数F_1に基づく変調信号との重なりによる妨害が起こり得る。これを防止するには、歪周波数IM23が、搬送周波数F_1に基づく変調信号の帯域内に発生しないようにすればよく、式(8)に示すように、歪周波数IM23と搬送周波数F_1に基づく変調信号の高域側の帯域との間隔H6が正の値になることが必要となる(図3(C)を参照)。
【0137】
【数8】
【0138】
式(6)、式(7)、式(8)より、搬送周波数F_H(=F_3)と搬送周波数F_M(=F_2)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D23)は、式(9)で示す範囲に規定される。
【0139】
【数9】
【0140】
式(9)のうちの“Bw2_H+Bw3_L<D23”は前述の条件1と対応する。式(9)のうちの“D23<D12−(Bw1_HとBw3_Hのうち大きい方)”は“|D12−D23|>(Bw1_HとBw3_Hのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件3と対応する。
【0141】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置を、式(9)を満たすように定めることで、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0142】
尚、Bw1_L=Bw1_HのときはBw1_L=Bw1_H=Bw1/2であり、Bw2_L=Bw2_HのときはBw2_L=Bw2_H=Bw2/2であり、Bw3_L=Bw3_HのときはBw3_L=Bw3_H=Bw3/2であるから、式(6−1)は式(10−1)に変形でき、式(6−2)は式(10−2)に変形でき、式(7)は式(10−3)に変形でき、式(8)は式(10−4)に変形でき、式(9)は式(10−5)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3)であるとしたときには、式(10−5)は式(10−6)のように簡略化できる。
【0143】
【数10】
【0144】
このように、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置を、式(4)あるいは式(9)を満たすように定めることで、N次(ここでは3次)の相互変調歪の影響を回避できる。そのため、例えば、高い選択度の帯域制限フィルタをが不要となり、低コストで小サイズの受信器を構成できるし、受信器の歪性能を緩和でき、小サイズで低消費電力の受信器を構成できる。
【0145】
<4バンドの周波数配置>
図4及び図5は、それぞれ周波数の異なる4つの搬送周波数を使用する場合(4バンドと称する)の周波数配置の決定方法を説明する図である。ここで、図4は、4バンドの周波数配置の第1例を示し、図5は、4バンドの周波数配置の第2例を示す。
【0146】
4つの搬送周波数について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件は、3バンド時に決定した周波数配置をベースに、より低域側あるいはより高域側に新たに追加した第4の搬送周波数を含む隣接する3つの搬送周波数について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用すればよい。以下具体的に説明する。
【0147】
[第1例]
第1例は、3バンドの周波数配置の第1例をベースに、より高域側に新たに第4の搬送周波数を追加する態様であり、第4の搬送周波数をF_4とし、周波数の高低がF_1<F_2<F_3<F_4となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0148】
3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_2であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_3であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_4である。
【0149】
搬送周波数F_3と搬送周波数F_4の周波数差(=F_4−F_3)をD34とする。3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_2)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_3)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD23であり、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_4)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_3)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD34である。
【0150】
搬送周波数F_4に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw4とし、全受信帯域幅Bw4のうち、低域側の受信帯域幅をBw4_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw4_Hとする。搬送周波数F_3に基づく変調信号と搬送周波数F_4に基づく変調信号との帯域間隔をH34とする。式的には、帯域間隔H34は“D34−Bw3_H−Bw4_L”となる。
【0151】
搬送周波数F_3と搬送周波数F_4とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_3−F_4)をIM34とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_4−F_3)をIM43とする。
【0152】
これらの場合、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置に関しては、D23>D34として、3バンドの周波数配置の第2例の決定方法を同様に適用すればよい。
【0153】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_H(=F_4)と搬送周波数F_M(=F_3)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D34)は、式(9)の変形として、式(11)で示す範囲に規定される。
【0154】
【数11】
【0155】
式(11)のうちの“Bw3_H+Bw4_L<D34”は前述の条件1と対応する。式(11)のうちの“D34<D23−(Bw2_HとBw4_Hのうち大きい方)”は“|D23−D34|>(Bw2_HとBw4_Hのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件3と対応する。
【0156】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定めるとともに、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定める。
【0157】
3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_2)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_3)に基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_2)よりも低域側に生成される3次相互変調波(歪周波数IM23)は、最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_2)よりも低域側の搬送周波数(=F_1)に基づく変調信号の帯域内には存在しない。つまり、第4の条件が満たされる。
【0158】
又、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_3)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_2)に基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_3)よりも高域側に生成される3次相互変調波(歪周波数IM32)は、最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_3)よりも高域側の搬送周波数(=F_4)に基づく変調信号の帯域内には存在しない。つまり、第5の条件が満たされる。
【0159】
これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0160】
尚、Bw4_L=B4_HのときはBw4_L=Bw4_H=Bw4/2であるから、式(11)は式(12−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4)であるとしたときには、式(12−1)は式(12−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34とすると、式(12−2)は式(12−3)のように変形できる。
【0161】
【数12】
【0162】
[第2例]
第2例は、3バンドの周波数配置の第2例をベースに、より低域側に新たに第4の搬送周波数を追加する態様であり、第4の搬送周波数をF_0とし、周波数の高低がF_0<F_1<F_2<F_3となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0163】
3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_0であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_1であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_2である。
【0164】
搬送周波数F_0と搬送周波数F_1の周波数差(=F_1−F_0)をD01とする。3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_0)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD01であり、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_2)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD12である。
【0165】
搬送周波数F_0に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw0とし、全受信帯域幅Bw0のうち、低域側の受信帯域幅をBw0_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw0_Hとする。搬送周波数F_0に基づく変調信号と搬送周波数F_1に基づく変調信号との帯域間隔をH01とする。式的には、帯域間隔H01は“D01−Bw0_H−Bw1_L”となる。
【0166】
搬送周波数F_0と搬送周波数F_1とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_0−F_1)をIM01とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_1−F_0)をIM10とする。
【0167】
これらの場合、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置に関しては、D01<D12として、3バンドの周波数配置の第1例の決定方法を同様に適用すればよい。
【0168】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_L(=F_0)と搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第1の周波数差Δ1(=D01)は、式(4)の変形として、式(13)で示す範囲に規定される。
【0169】
【数13】
【0170】
式(13)のうちの“Bw0_H+Bw1_L<D01”は前述の条件1と対応する。式(13)のうちの“D01<D12−(Bw0_LとBw2_Lのうち大きい方)”は“|D01−D12|>(Bw0_LとBw2_Lのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件2と対応する。
【0171】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(9)を満たすように定めるとともに、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置が式(13)を満たすように定める。
【0172】
3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_1)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_2)に基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_1)よりも低域側に生成される3次相互変調波(歪周波数IM12)は、最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_1)よりも低域側の搬送周波数(=F_0)に基づく変調信号の帯域内には存在しない。
【0173】
又、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_2)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_1)に基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_2)よりも高域側に生成される3次相互変調波(歪周波数IM21)は、最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_2)よりも高域側の搬送周波数(=F_3)に基づく変調信号の帯域内には存在しない。
【0174】
これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0175】
尚、Bw0_L=Bw0_HのときはBw0_L=Bw0_H=Bw0/2であるから、式(13)は式(14−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw0=Bw1=Bw2=Bw3)であるとしたときには、式(14−1)は式(14−2)のように簡略化できるし、さらにはD01=D23とすると、式(14−2)は式(14−3)のように変形できる。
【0176】
【数14】
【0177】
<5バンドの周波数配置>
図6及び図7は、それぞれ周波数の異なる5つの搬送周波数を使用する場合(5バンドと称する)の周波数配置の決定方法を説明する図である。ここで、図6は、5バンドの周波数配置の第1例を示し、図7は、5バンドの周波数配置の第2例を示す。
【0178】
5つの搬送周波数について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件は、4バンド時に決定した周波数配置をベースに、より低域側あるいはより高域側に新たに追加した第5の搬送周波数を含む隣接する3つの搬送周波数について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用すればよい。
【0179】
以下具体的に説明する。尚、周波数の大小関係の説明の便宜上、4バンドの周波数配置の第1例をベースとする変形例として説明する。
【0180】
[第1例]
第1例は、4バンドの周波数配置の第1例をベースに、より高域側に新たに第5の搬送周波数を追加する態様であり、第5の搬送周波数をF_5とし、周波数の高低がF_1<F_2<F_3<F_4<F_5となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0181】
尚、隣接していない搬送周波数、例えば搬送周波数F_1にとって搬送周波数F_3、F_4、F_5は、帯域として、それらのビートは搬送周波数F_1に基づく変調信号に妨害を与えないと考える。このことは第2例でも同様である。
【0182】
3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_3であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_4であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_5である。
【0183】
搬送周波数F_4と搬送周波数F_5の周波数差(=F_5−F_4)をD45とする。3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_3)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_4)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD34であり、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_5)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_4)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD45である。
【0184】
搬送周波数F_5に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw5とし、全受信帯域幅Bw5のうち、低域側の受信帯域幅をBw5_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw5_Hとする。搬送周波数F_4に基づく変調信号と搬送周波数F_5に基づく変調信号との帯域間隔をH45とする。式的には、帯域間隔H45は“D45−Bw4_H−Bw5_L”となる。
【0185】
搬送周波数F_4と搬送周波数F_5とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_4−F_5)をIM45とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_5−F_4)をIM54とする。
【0186】
これらの場合、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置に関しては、D34<D45として、3バンドの周波数配置の第1例の決定方法を同様に適用すればよい。
【0187】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_L(=F_3)と搬送周波数F_M(=F_4)との差として求められる第1の周波数差Δ1(=D34)は、式(4)の変形として、式(15)で示す範囲に規定される。
【0188】
【数15】
【0189】
式(15)のうちの“Bw3_H+Bw4_L<D34”は前述の条件1と対応する。式(5)のうちの“D34<D45−(Bw3_LとBw5_Lのうち大きい方)”は“|D34−D45|>(Bw3_LとBw5_Lのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件2と対応する。
【0190】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(15)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0191】
尚、式(15)は、式(11)と同様に、周波数差D34の範囲を規定するから、結果的には、周波数差D34は、式(11)と式(15)の両方を満たさなければならない。したがって、周波数差D34は、式(11)と式(15)を纏めて、式(16)で示す範囲に規定される。
【0192】
【数16】
【0193】
又、Bw5_L=B5_HのときはBw5_L=Bw5_H=Bw5/2であるから、式(15)は式(17−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4=Bw5)であるとしたときには、式(17−1)は式(17−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34、D23=D45とすると、式(17−2)は式(17−3)のように変形できる。
【0194】
【数17】
【0195】
[第2例]
第2例は、4バンドの周波数配置の第1例をベースに、より低域側に新たに第5の搬送周波数を追加する態様であり、第5の搬送周波数をF_0とし、周波数の高低がF_0<F_1<F_2<F_3<F_4となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0196】
3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_0であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_1であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_2である。
【0197】
周波数や周波数差は4バンドの周波数配置の第2例の決定方法で説明したものと同様であるが、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置に関しては、D01>D12として、3バンドの周波数配置の第2例の決定方法を同様に適用する。
【0198】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_H(=F_2)と搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D12)は、式(9)の変形として、式(18)で示す範囲に規定される。
【0199】
【数18】
【0200】
式(18)のうちの“Bw1_H+Bw2_L<D12”は前述の条件1と対応する。式(18)のうちの“D12<D01−(Bw0_HとBw2_Hのうち大きい方)”は“|D01−D12|>(Bw0_HとBw2_Hのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件2と対応する。
【0201】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2、の周波数配置が式(18)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0202】
尚、式(18)は、式(4)と同様に、周波数差D12の範囲を規定するから、結果的には、周波数差D34は、式(4)と式(18)の両方を満たさなければならない。したがって、周波数差D34は、式(4)と式(18)を纏めて、式(19)で示す範囲に規定される。
【0203】
【数19】
【0204】
又、Bw0_L=B0_HのときはBw0_L=Bw0_H=Bw0/2であるから、式(18)は式(20−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw0=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4)であるとしたときには、式(20−1)は式(20−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34、D01=D23とすると、式(20−2)は式(20−3)のように変形できる。
【0205】
【数20】
【0206】
第1例と第2例の何れにおいても、隣接する3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側に生成される3次相互変調波は、最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第4の条件が満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”であり、第2例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”である。
【0207】
又、第1例と第2例の何れにおいても、3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側に生成される3次相互変調波は、最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第5の条件も満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”であり、第2例の場合は“F_0、F_1、F_2”又は“F_1、F_2、F_3”である。
【0208】
<6バンドの周波数配置>
図8及び図9は、それぞれ周波数の異なる6つの搬送周波数を使用する場合(6バンドと称する)の周波数配置の決定方法を説明する図である。ここで、図8は、6バンドの周波数配置の第1例を示し、図9は、6バンドの周波数配置の第2例を示す。
【0209】
6つの搬送周波数について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件は、5バンド時に決定した周波数配置をベースに、より低域側あるいはより高域側に新たに追加した第6の搬送周波数を含む隣接する3つの搬送周波数について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用すればよい。
【0210】
以下具体的に説明する。尚、周波数の大小関係の説明の便宜上、5バンドの周波数配置の第1例をベースとする変形例として説明する。
【0211】
[第1例]
第1例は、5バンドの周波数配置の第1例をベースに、より高域側に新たに第6の搬送周波数を追加する態様であり、第6の搬送周波数をF_6とし、周波数の高低がF_1<F_2<F_3<F_4<F_5<F_6となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0212】
尚、隣接していない搬送周波数、例えば搬送周波数F_1にとって搬送周波数F_3、F_4、F_5は、帯域として、それらのビートは搬送周波数F_1に基づく変調信号に妨害を与えないと考える。このことは第2例でも同様である。
【0213】
3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_4であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_5であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_6である。
【0214】
搬送周波数F_5と搬送周波数F_6の周波数差(=F_6−F_5)をD56とする。3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_4)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_5)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD45であり、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_6)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_5)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD56である。
【0215】
搬送周波数F_6に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw6とし、全受信帯域幅Bw6のうち、低域側の受信帯域幅をBw6_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw6_Hとする。搬送周波数F_5に基づく変調信号と搬送周波数F_6に基づく変調信号との帯域間隔をH56とする。式的には、帯域間隔H56は“D56−Bw5_H−Bw6_L”となる。
【0216】
搬送周波数F_5と搬送周波数F_6とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_5−F_6)をIM56とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_6−F_5)をIM65とする。
【0217】
これらの場合、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置に関しては、D45>D56として、3バンドの周波数配置の第2例の決定方法を同様に適用すればよい。
【0218】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_H(=F_6)と搬送周波数F_M(=F_5)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D56)は、式(9)の変形として、式(21)で示す範囲に規定される。
【0219】
【数21】
【0220】
式(21)のうちの“Bw5_H+Bw6_L<D56”は前述の条件1と対応する。式(21)のうちの“D56<D45−(Bw4_HとBw6_Hのうち大きい方)”は“|D45−D56|>(Bw4_HとBw6_Hのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件3と対応する。
【0221】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(15)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定める。あるいは、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、4つの搬送周波数F_2、F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(16)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0222】
尚、Bw6_L=B6_HのときはBw6_L=Bw6_H=Bw6/2であるから、式(21)は式(22−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4=Bw5=Bw6)であるとしたときには、式(22−1)は式(22−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34=D56、D23=D45とすると、式(22−2)は式(22−3)のように変形できる。
【0223】
【数22】
【0224】
[第2例]
第2例は、5バンドの周波数配置の第1例をベースに、より低域側に新たに第6の搬送周波数を追加する態様であり、第6の搬送周波数をF_0とし、周波数の高低がF_0<F_1<F_2<F_3<F_4<F_5となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0225】
3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_0であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_1であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_2である。
【0226】
周波数や周波数差は4バンドの周波数配置の第2例の決定方法で説明したものと同様であるが、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置に関しては、D01>D12として、3バンドの周波数配置の第2例の決定方法を同様に適用する。
【0227】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_H(=F_2)と搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D12)は、式(9)の変形として、式(23)で示す範囲に規定される。
【0228】
【数23】
【0229】
尚、式(23)は、式(18)と同じであり、式(4)や式(18)と同様に、周波数差D12の範囲を規定するから、式(4)と式(23)を纏めて、式(19)で示す範囲に規定される。
【0230】
3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(15)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置が式(23)を満たすように定める。あるいは、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、4つの搬送周波数F_2、F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(16)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置が式(23)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0231】
尚、Bw0_L=B0_HのときはBw0_L=Bw0_H=Bw0/2であるから、式(23)は式(24−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw0=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4=Bw5)であるとしたときには、式(24−1)は式(24−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34、D01=D23=D45とすると、式(24−2)は式(24−3)のように変形できる。
【0232】
【数24】
【0233】
第1例と第2例の何れにおいても、隣接する3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側に生成される3次相互変調波は、最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第4の条件が満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”又は“F_4、F_5、F_6”であり、第2例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”である。
【0234】
又、第1例と第2例の何れにおいても、3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側に生成される3次相互変調波は、最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第5の条件も満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”であり、第2例の場合は“F_0、F_1、F_2”又は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”である。
【0235】
<7バンドの周波数配置>
図10及び図11は、それぞれ周波数の異なる7つの搬送周波数を使用する場合(7バンドと称する)の周波数配置の決定方法を説明する図である。ここで、図10は、7バンドの周波数配置の第1例を示し、図11は、7バンドの周波数配置の第2例を示す。
【0236】
7つの搬送周波数について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件は、6バンド時に決定した周波数配置をベースに、より低域側あるいはより高域側に新たに追加した第6の搬送周波数を含む隣接する3つの搬送周波数について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用すればよい。
【0237】
以下具体的に説明する。尚、周波数の大小関係の説明の便宜上、6バンドの周波数配置の第1例をベースとする変形例として説明する。
【0238】
[第1例]
第1例は、6バンドの周波数配置の第1例をベースに、より高域側に新たに第7の搬送周波数を追加する態様であり、第7の搬送周波数をF_7とし、周波数の高低がF_1<F_2<F_3<F_4<F_5<F_6<F_7となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0239】
3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_5であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_6であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_7である。
【0240】
搬送周波数F_6と搬送周波数F_7の周波数差(=F_7−F_6)をD67とする。3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_5)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_6)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD56であり、3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_7)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_6)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD67である。
【0241】
搬送周波数F_7に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw7とし、全受信帯域幅Bw7のうち、低域側の受信帯域幅をBw7_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw7_Hとする。搬送周波数F_6に基づく変調信号と搬送周波数F_7に基づく変調信号との帯域間隔をH67とする。式的には、帯域間隔H67は“D67−Bw6_H−Bw7_L”となる。
【0242】
搬送周波数F_6と搬送周波数F_7とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_6−F_7)をIM67とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_7−F_6)をIM76とする。
【0243】
これらの場合、3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7の周波数配置に関しては、D56<D67として、3バンドの周波数配置の第1例の決定方法を同様に適用すればよい。
【0244】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_L(=F_4)と搬送周波数F_M(=F_5)との差として求められる第1の周波数差Δ1(=D56)は、式(4)の変形として、式(25)で示す範囲に規定される。
【0245】
【数25】
【0246】
式(25)のうちの“Bw5_H+Bw6_L<D56”は前述の条件1と対応する。式(25)のうちの“D56<D67−(Bw5_LとBw7_Lのうち大きい方)”は“|D56−D67|>(Bw5_LとBw7_Lのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件2と対応する。
【0247】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(15)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7の周波数配置が式(25)を満たすように定める。あるいは、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、4つの搬送周波数F_2、F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(16)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7の周波数配置が式(25)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0248】
尚、式(25)は、式(21)と同様に、周波数差D45の範囲を規定するから、結果的には、周波数差D45は、式(21)と式(25)の両方を満たさなければならない。したがって、周波数差D45は、式(21)と式(25)を纏めて、式(26)で示す範囲に規定される。
【0249】
【数26】
【0250】
又、Bw7_L=B7_HのときはBw7_L=Bw7_H=Bw7/2であるから、式(25)は式(27−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4=Bw5=Bw6=Bw7)であるとしたときには、式(27−1)は式(27−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34=D56、D23=D45=D67とすると、式(27−2)は式(27−3)のように変形できる。
【0251】
【数27】
【0252】
[第2例]
第2例は、6バンドの周波数配置の第1例をベースに、より低域側に新たに第7の搬送周波数を追加する態様であり、第7の搬送周波数をF_0とし、周波数の高低がF_0<F_1<F_2<F_3<F_4<F_5<F_6となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0253】
3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_0であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_1であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_2である。
【0254】
周波数や周波数差は4バンドの周波数配置の第2例の決定方法で説明したものと同様であるが、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置に関しては、D01>D12として、3バンドの周波数配置の第2例の決定方法を同様に適用する。
【0255】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_H(=F_2)と搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D12)は、式(9)の変形として、式(28)で示す範囲に規定される。
【0256】
【数28】
【0257】
尚、式(28)は、式(23)と同じであり、式(4)や式(18)や式(23)と同様に、周波数差D12の範囲を規定するから、式(4)と式(28)を纏めて、式(19)で示す範囲に規定される。
【0258】
3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(15)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置が式(28)を満たすように定める。あるいは、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、4つの搬送周波数F_2、F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(16)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置が式(28)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0259】
尚、Bw0_L=B0_HのときはBw0_L=Bw0_H=Bw0/2であるから、式(28)は式(29−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw0=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4=Bw5=Bw6)であるとしたときには、式(29−1)は式(29−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34=D56、D01=D23=D45とすると、式(20−2)は式(20−3)のように変形できる。
【0260】
【数29】
【0261】
第1例と第2例の何れにおいても、隣接する3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側に生成される3次相互変調波は、最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第4の条件が満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”又は“F_4、F_5、F_6”又は“F_5、F_6、F_7”であり、第2例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”又は“F_4、F_5、F_6”である。
【0262】
又、第1例と第2例の何れにおいても、3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側に生成される3次相互変調波は、最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第5の条件も満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”又は“F_4、F_5、F_6”であり、第2例の場合は“F_0、F_1、F_2”又は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”である。
【0263】
[8バンド以上の周波数配置]
8バンド以上の場合の周波数配置については詳細な説明を割愛するが、これまでの説明から理解できるように、1つ少ないバンド数の周波数配置をベースにして、3バンドの周波数配置の第1例又は第2例を適用して1バンドを追加するとよい。即ち、1つ少ないバンド数の周波数配置をベースにして、より低域側あるいはより高域側に新たな搬送周波数を追加し、その追加した搬送周波数を含む隣接する3つの搬送周波数に関して、3バンドの周波数配置の第1例又は第2例を適用して周波数配置を決定するとよい。
【0264】
<具体的な適用例>
以下、具体的な適用例を示す。説明や理解を容易にするため、特段の断りのない限り、1つの通信装置には、変調部と復調部の何れか一方を1つ備えるものとして説明する。送信側の通信装置と受信側の通信装置とで、信号伝送装置が構成される。尚、以下において、装置を構成する各部がひとつの筐体内に収容された状態の構成で信号伝送装置や電子機器とすることもできる。信号伝送装置や電子機器は、単体の場合もあれば、複数の信号伝送装置や複数の電子機器の組合せで信号伝送装置や電子機器の全体が構成される場合もある。
【0265】
なお、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明の技術的範囲は後述の実施例に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で後述の実施例に多様な変更又は改良を加えることができ、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。又、後述の実施例は、クレーム(請求項)に係る発明を限定するものではなく、又実施例の中で説明される特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。後述の実施例には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。後述する各実施例は、それぞれ単独で適用されることに限らず、可能な範囲で、それぞれ任意に組み合わせて適用することもできる。実施例に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【実施例1】
【0266】
図12は、実施例1を説明する図である。ここで、図12(A)は通信装置の配置イメージを示し、図12(B)は通信装置の詳細構成例を示し、図12(C)は搬送周波数の周波数配置の例を示す。
【0267】
実施例1は、1つの電子機器内の同一基板内に全通信装置(通信チップ)が搭載され、各搬送搬送周波数を予め設定しておく形態である。電子機器内の回路基板上に、3組以上の送受信の組合せが、配置や電波の指向性等に拘わらず無作為に行なわれるような場合を想定する。
【0268】
例えば、図12では、3バンドの周波数配置を適用する場合で示している。図12(A)に示すように、電子機器751内の回路基板701上には、送信器の機能を持つ通信装置710_1と受信器の機能を持つ通信装置810_1の組、送信器の機能を持つ通信装置710_2と受信器の機能を持つ通信装置810_2の組、送信器の機能を持つ通信装置710_3と受信器の機能を持つ通信装置810_3の組、といった3組の送受信の組合せでなる信号伝送装置1Aが収容されている。
【0269】
図12(B)に示すように、通信装置710_1、通信装置710_2、通信装置710_3のそれぞれは、変調対象信号処理部712と、信号増幅部713と、ローカル周波数としての搬送周波数F_@(@は1、2、3の何れか)を生成する送信側局部発振部714と、周波数混合部715(いわゆるミキサー)と、出力増幅部717とを備え、出力増幅部717には送信アンテナ718が接続されている。送信側局部発振部714と周波数混合部715とで変調部が構成される。変調対象信号処理部712は、例えばローパスフィルタを有し、被変調信号の受信帯域幅を制限する。信号増幅部713は、変調対象信号処理部712から出力された信号の振幅をゲイン倍する。周波数混合部715は、信号増幅部713から出力された信号と送信側局部発振部714からの搬送信号(搬送周波数F_@)とを乗算することで変調処理を行なう。出力増幅部717は、周波数混合部715で変調された信号の振幅をゲイン倍する。
【0270】
図12(B)に示すように、通信装置810_1、通信装置810_2、通信装置810_3のそれぞれは、入力増幅部812と、搬送周波数F_@を生成する受信側局部発振部814と、周波数混合部815(いわゆるミキサー)と、復調信号処理部816(例えばローパスフィルタ)と、出力増幅部817とを備え、入力増幅部812には受信アンテナ818が接続されている。受信側局部発振部814と周波数混合部815とで復調部が構成される。入力増幅部812は、受信アンテナ818で受けた受信信号の振幅をゲイン倍する。周波数混合部815は、入力増幅部812から出力された受信信号と受信側局部発振部814からの搬送信号(搬送周波数F_@)とを乗算することで復調処理を行なう。復調信号処理部816は、例えばローパスフィルタを有し、復調信号の受信帯域幅を制限する。出力増幅部817は、復調信号処理部816から出力された復調信号の振幅をゲイン倍する。
【0271】
図12(B−1)に示すように、通信装置710_1に全受信帯域幅Bw1の被変調信号S711を入力し、搬送周波数F_1の送信側局部発振部714にて変調をかけて送信アンテナ718にて、電波を送信する。受信アンテナ818にてこの変調信号を受けて通信装置810_1に入力し、復調部で復調して復調信号S811を出力増幅部817から出力する。
【0272】
図12(B−2)に示すように、通信装置710_2に全受信帯域幅Bw2の被変調信号S721を入力し、搬送周波数F_2の送信側局部発振部714にて変調をかけて送信アンテナ718にて、電波を送信する。受信アンテナ818にてこの変調信号を受けて通信装置810_2に入力し、復調部で復調して復調信号S821を出力増幅部817から出力する。
【0273】
図12(B−3)に示すように、通信装置710_3に全受信帯域幅Bw3の被変調信号S731を入力し、搬送周波数F_3の送信側局部発振部714にて変調をかけて送信アンテナ718にて、電波を送信する。受信アンテナ818にてこの変調信号を受けて通信装置810_3に入力し、復調部で復調して復調信号S831を出力増幅部817から出力する。
【0274】
ここで、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置としては、前述の3バンドの周波数配置の第1例又は第2例を適用する。例えば、図12(C)に示す例は、3バンドの周波数配置の第1例を適用した場合を示している。3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置を図12(C)に示すようにプリセットしておくことで、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0275】
例えば、いわゆるセルラ等の野外通信とは異なり、機器内や機器間の無線伝送においては、伝搬路の状況が変化しない、受信電力変動やタイミング変動が実質的にない(皆無あるいは極めて少ない)、伝搬距離が短い、マルチパスの遅延スプレッドが小さい、等の特徴がある。これらを纏めて、「機器内又は機器間の無線伝送」の特徴と記す。「機器内又は機器間の無線伝送」では、野外の無線通信のように、常に伝搬路の状況を調べる必要はなく、予め定められた設定値を使用できると考えてよい。即ち、「機器内又は機器間の無線伝送」では静的な環境での無線信号伝送と考えてよく、通信環境特性は概ね不変であると考えてよい。このことは、「通信環境が不変(固定)であるからパラメータ設定も不変(固定)でよい」ことを意味する。
【0276】
送信部と受信部との間の伝送特性が既知であるものとして扱うことができる。例えば、1つの筐体内の送信部と受信部の配置位置が変化しない場合(機器内通信の場合)や、送信部と受信部のそれぞれが各別の筐体内に配置される場合でも使用状態のときの送信部と受信部の配置位置が予め定められた状態となる場合(比較的近距離の機器間の無線伝送の場合)のように、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、送信部と受信部との間の伝送特性を予め知ることができる。
【0277】
例えば、本実施形態のように、同一エリアとしての機器内や比較的近距離の機器間で、複数の変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合、想定していない搬送周波数を使用する通信チャネルが突然に現れるということはあり得ないと考えてよい。よって、例えば、周波数分割多重によるマルチチャネル伝送を行なうために使用する各搬送周波数を予め製品出荷時等に決定し、その情報をメモリに保存しておき、動作時はこの情報を元に変調や復調に使用する搬送周波数の設定を行なえばよい。後述の実施例2等とは異なり、送受信の組合せは固定されてしまうが、通信環境特性を常に監視してその結果に基づいて搬送周波数の配置を最適な状態にする動的制御の機構は不要であるから、回路規模を小さくでき、又、消費電力を小さくできる。
【実施例2】
【0278】
図13は、実施例2を説明する図である。ここで、図13(A)は通信装置と周波数制御部の配置イメージを示し、図13(B)は通信装置の詳細構成例及び通信装置と周波数制御部との接続関係を示す。
【0279】
実施例2は、実施例1に対して、搬送周波数を動的に制御可能にする形態である。後述の実施例3との相違点としては、制御情報を送信側のみへ伝送する点にある。以下、実施例1との相違点について説明する。
【0280】
電子機器751内の回路基板701上には、3つの通信装置710と通信装置810の組の他に、送信側の3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3を制御する周波数制御部702が設けらた信号伝送装置1Bが収容されている。例えば、周波数制御部702をCPU等のソフトウェアによりプログラム実行できるデバイスとすると、適切な周波数割当てを動的に行なうことができる。無線による機器内信号伝送(つまり同一エリア内での無線による信号伝送)において、複数の変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合に、各搬送周波数を最適な位置に制御することができる。
【0281】
又、信号伝送装置1Bには、予備用の送受信の組を必要に応じて設ける。図は、予備用の送受信の組として、搬送周波数F_4で変調や復調を行なう通信装置710_4と通信装置810_4の組を設けた例で示している。
【0282】
周波数制御部702から各通信装置710へは、各搬送周波数F_@(@は1、2、3、4の何れか)を制御するための周波数割当て用の制御情報を含む制御情報S702が供給される。尚、周波数制御部702からは周波数割当て以外の制御情報も各通信装置710に供給してもよい。
【0283】
制御情報S702の各通信装置710への伝送は有線でもよいし無線でもよいが、ここでは、同一基板内での複数の変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう点に着目して、プリント配線を利用した有線伝送にする。無線伝送にするよりも装置構成をコンパクトにできる。
【0284】
制御情報S702を無線で伝送する場合は、その使用通信帯域は、通信装置710と通信装置810との間での通常の被変調信号用の無線通信に使用する搬送周波数の周波数帯(例えばミリ波帯や、その上下両側を含むセンチ波帯〜サブミリ波帯)を使用しないようにする。例えば、赤外線通信やレーザ光通信で行なうとよい。制御情報S702の無線伝送が、通常の被変調信号用の無線伝送に障害を与えないことを、確実に保証するためである。
【0285】
実施例2によれば、送信側の搬送周波数を制御する周波数制御部702により、適切な周波数割当てを行なうことで、機器内伝送を最適に制御することができる。周波数割当ては初期設定時に設定することもできるが、装置使用時に送信側の搬送周波数を動的に設定できる利点がある。
【0286】
例えば、通信装置710_1と通信装置810_1の組、通信装置710_2と通信装置810_2の組、通信装置710_3と通信装置810_3の組で、既に3バンド(3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3)の動作が行なわれている状態で、新たに通信装置710_4と通信装置810_4の組での1バンド(搬送周波数F_4)を追加できる。又、通信装置710_1、通信装置710_2、通信装置710_3のそれぞれが使用する搬送周波数を3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の中で切り替えることで、受信用の搬送周波数を切り替えなくても、送受信の組を切り替えることもできる。
【0287】
又、図示していないが、相互変調歪による妨害が発生しているか否かの情報を各通信装置810から周波数制御部702に通知し、その情報に基づいて、妨害局側で使用する搬送周波数を切り替えるように制御してもよい。通信障害を受けた被妨害局側で使用する搬送周波数を変更しなくても、相互変調歪による通信障害を防止できる。周波数配置の設定が適正でなかった場合や、4次以降の相互変調歪成分による通信障害が発生した場合の対処として有効である。例えば、野外の無線通信で相互変調歪による通信障害が発生したとき、被妨害局側で使用する搬送周波数を切り替えるということはあり得るが、被妨害局が妨害局側で使用する搬送周波数を切り替えるように制御することはできないのと、大きく異なる。
【実施例3】
【0288】
図14は、実施例3を説明する図である。ここで、図14(A)は通信装置と周波数制御部の配置イメージを示し、図14(B)は通信装置の詳細構成例及び通信装置と周波数制御部との接続関係を示す。
【0289】
実施例3は、実施例1に対して、搬送周波数を動的に制御可能にする形態である点で、実施例2と似ている。実施例2との相違点としては、制御情報を受信側へも伝送する点にある。以下、実施例1及び実施例2との相違点について説明する。
【0290】
電子機器内の回路基板701上には、3つの通信装置710と通信装置810の組の他に、送信側及び受信側の各3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3を制御する周波数制御部704が設けられた信号伝送装置1Cが収容されている。又、予備用の送受信の組を必要に応じて設ける。図は、予備用の送受信の組として、搬送周波数F_4で変調や復調を行なう通信装置710_4と通信装置810_4の組を設けた例で示している。
【0291】
周波数制御部704から各通信装置710へは、各搬送周波数F_@(@は1、2、3、4の何れか)を制御するための周波数割当て用の制御情報を含む制御情報S704が供給される。又、周波数制御部704から各通信装置810へは、各搬送周波数F_@(@は1、2、3、4の何れか)を制御するための周波数割当て用の制御情報を含む制御情報S804が供給される。尚、周波数制御部704からは周波数割当て以外の制御情報も各通信装置710や各通信装置810に供給してもよい。制御情報S702の各通信装置710への伝送及び制御情報S804の各通信装置810への伝送は有線でもよいし無線(例えば赤外線)でもよいが、ここではプリント配線を利用した有線伝送にする。
【0292】
実施例3によれば、送信側及び受信側の搬送周波数を制御する周波数制御部704により、適切な周波数割当てを行なうことで、機器内伝送を最適に制御することができる。周波数割当ては初期設定時に設定することもできるが、装置使用時に送信側の搬送周波数を動的に設定できる利点があるだけでなく、受信側の搬送周波数も動的に設定でき、受信器の動作も制御できる利点がある。例えば、通信装置810_1、通信装置810_2、通信装置810_3のそれぞれが使用する搬送周波数を3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の中で切り替えることで、送受信の組を切り替えることができる。送信側と受信側の双方の搬送周波数を切り替えることができるので、切替えの自由度が、送信側と受信側の何れか一方のみを切り替える構成の場合よりも、切替えの自由度が高い。
【0293】
[実施例2及び実施例3の変形例]
図示しないが、実施例2や実施例3に対する変形例として、制御情報を受信側のみへ伝送することで、受信用の搬送周波数を動的に制御可能にする構成としてもよい。この場合、送信用の搬送周波数を切り替えなくても、受信用の搬送周波数を切り替えることで、送受信の組を切り替えることができる。
【実施例4】
【0294】
図15は、実施例4を説明する図である。ここで、図15(A)は通信装置の配置イメージを示し、図15(B)は通信装置の詳細構成例を示す。図16は、実施例4の変形例を説明する図である。ここで、図16(A)は通信装置の配置イメージを示し、図16(B)は通信装置の詳細構成例を示す。
【0295】
実施例4及びその変形例は、実施例2や実施例3に対して、搬送周波数を制御する周波数制御部の機能を通信装置に持たせる形態である。つまり、実施例2や実施例3との相違点としては、周波数割当て情報を含む制御信号を無線で伝達する点にある。図15は、実施例2に対する変形例であり、送信側の搬送周波数のみを切り替える構成であるが、実施例3のように、送信側と受信側の双方の搬送周波数を切り替える構成や、受信側の搬送周波数のみを切り替える構成としてもよい。以下、実施例2との相違点について説明する。
【0296】
図15(A)及び図16(A)に示すように、1つの電子機器751内には4つの回路基板701_1、回路基板701_2、回路基板701_3、回路基板701_4が設けられた信号伝送装置1Dが収容されている。回路基板701_1には、送信器(通信装置710_1と同様のもの)と周波数制御部702(あるいは周波数制御部704)の機能を持つ通信装置721が設けられている。回路基板701_2には、送信器と受信器の機能を持つ通信装置722及び通信装置724と、受信器の機能を持つ通信装置810_3とが設けられた信号伝送装置1Dが収容されている。回路基板701_3には、送信器と受信器の機能を持つ通信装置723と受信器の機能を持つ通信装置810_3が設けられている。回路基板701_4には、受信器の機能を持つ通信装置810_4が設けられている。搬送周波数F_2と搬送周波数F_3の帯域を、回路基板701_2と回路基板701_3との間での互いの送受信に使用することで、回路基板間で双方向の信号伝送を制御できるようにしている。
【0297】
図15(B)及び図16(B)に示すように、通信装置722は、受信器の機能を持つ通信装置810_12と送信器の機能を持つ通信装置710_2とを備え、通信装置810_12は復調した制御信号S706により通信装置710_2の搬送周波数F_2を制御するようになっている。通信装置723は、受信器の機能を持つ通信装置810_13と送信器の機能を持つ通信装置710_3とを備え、通信装置810_13は復調した制御信号S707により通信装置710_3の搬送周波数F_3を制御するようになっている。通信装置724は、受信器の機能を持つ通信装置810_14と送信器の機能を持つ通信装置710_4とを備え、通信装置810_14は復調した制御信号S708により通信装置710_4の搬送周波数F_4を制御するようになっている。制御情報S705の伝送用の送受信の対として、通信装置721の通信装置710_1と通信装置722の通信装置810_12との対、通信装置721の通信装置710_1と通信装置723の通信装置810_13との対、通信装置721の通信装置710_1と通信装置724の通信装置810_14との対、の3組が存在し、通信装置710_1が3組の送受信の対に兼用された形態になっている。
【0298】
制御情報S705の通信装置810_12、通信装置810_13、通信装置810_14への伝送を無線で行なう際に、その使用通信帯域を、通信装置710と通信装置810との間での無線通信に使用する搬送周波数の周波数帯(例えばミリ波帯や、その上下両側を含むセンチ波帯〜サブミリ波帯)と同じにする。例えば、通信装置721と、通信装置810_12、通信装置810_13、通信装置810_14との間では、搬送周波数F_1で無線通信を行なう。周波数割当て情報を含む制御信号S705を通信装置721にて搬送周波数F_1の送信側局部発振部714で変調をかけて送信アンテナ718より、電波で放出する。例えば、周波数制御部702や周波数制御部704の機能をなす通信装置721をCPU等のソフトウェアによりプログラム実行できるデバイスとすると、適切な周波数割当てを動的に行なうことができる。無線による機器内信号伝送や機器間信号伝送(つまり同一エリア内での無線による信号伝送)において、変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合に、搬送周波数を最適な位置に制御することができる。
【0299】
搬送周波数F_1の通信装置810_12と搬送周波数F_2の通信装置710_2とを備える通信装置722では、搬送周波数F_1による変調信号を受信アンテナ818で受けて通信装置810_12で受信し制御信号S706を復調する。制御信号S706が通信装置710_2に供給されることで、通信装置710_2の搬送周波数F_2等が制御される。被変調信号S721を搬送周波数F_2の通信装置710_2で変調をかけて送信アンテナ718より電波で放出する。この電波を受信アンテナ818で受け通信装置810_2で受信し、復調部で復調信号S821を復調する。
【0300】
搬送周波数F_1の通信装置810_13と搬送周波数F_3の通信装置710_3とを備える通信装置723では、搬送周波数F_1による変調信号を受信アンテナ818で受けて通信装置810_13で受信し制御信号S707を復調する。制御信号S707が通信装置710_3に供給されることで、通信装置710_3の搬送周波数F_3等が制御される。被変調信号S731を搬送周波数F_3の通信装置710_3で変調をかけて送信アンテナ718より電波で放出する。この電波を受信アンテナ818で受け通信装置810_3で受信し、復調部で復調信号S831を復調する。
【0301】
搬送周波数F_1の通信装置810_14と搬送周波数F_4の通信装置710_4とを備える通信装置724では、搬送周波数F_1による変調信号を受信アンテナ818で受けて通信装置810_14で受信し制御信号S708を復調する。制御信号S708が通信装置710_4に供給されることで、通信装置710_4の搬送周波数F_4等が制御される。被変調信号S741を搬送周波数F_4の通信装置710_4で変調をかけて送信アンテナ718より電波で放出する。この電波を受信アンテナ818で受け通信装置810_4で受信し、復調部で復調信号S841を復調する。
【0302】
このように、実施例4では、搬送周波数を制御する周波数制御信号を無線で伝送することにより、実施例2と同様の作用を行なうことができ、物理的に離れた基板間伝送のような場合でも、周波数割当てを制御することができる。例えば、周波数割当ては初期設定時に設定することもできるが、既に無線通信の動作が行われている状態で、新たに1バンドを追加する場合には、搬送周波数F_1の周波数配置も適正にしつつ、残りの各搬送周波数F_2〜F_4の周波数割当てを無線で動的に制御することができる。
【0303】
例えば、図15に示した態様では、搬送周波数F_1は制御信号S705の無線伝送用としてのみ使用しており、搬送周波数F_2を用いた通信装置710_2と通信装置810_2との間での信号伝送と、搬送周波数F_3を用いた通信装置710_3と通信装置810_3との間での信号伝送が行なわれている状態で、新たに搬送周波数F_4を用いた通信装置710_4と通信装置810_4との間での信号伝送を開始する。
【0304】
一方、図16に示した変形例では、図15に示した態様に加えて、搬送周波数F_1は制御信号S705だけでなく、全受信帯域幅Bw1の被変調信号S711を伝送するためにも使用している。つまり、通信装置721を、通常の被変調信号の伝送用と制御信号の伝送用とに兼用している。図16(B)では、通信装置722、通信装置723、通信装置724の全てが被変調信号S711に対応する復調信号S811を出力するように記載しているが、このことは必須ではなく、何れか1つのみが対応していればよい。この変形例の場合、搬送周波数F_1を用いた通信装置710(通信装置710_1と同様のもの)と通信装置810_1との間での信号伝送と、搬送周波数F_2を用いた通信装置710_2と通信装置810_2との間での信号伝送と、搬送周波数F_3を用いた通信装置710_3と通信装置810_3との間での信号伝送が行なわれている状態で、新たに搬送周波数F_4を用いた通信装置710_4と通信装置810_4との間での信号伝送を開始することができる。
【0305】
図示しないが、実施例3のように、受信器側についても搬送周波数F_1の帯域の受信器(通信装置810)を備えることで、受信器の動作も制御することができ、実施例3と同様の周波数割当てを無線で制御することができる。
【0306】
搬送周波数F_2と搬送周波数F_3の帯域を、回路基板701_2と回路基板701_3との間での互いの送受信に使用することで、回路基板間の双方向の信号伝送を制御する場合も同様に、周波数割当てを無線で制御することができる。
【実施例5】
【0307】
図17は、実施例5を説明する図である。ここで、図17(A)は通信装置の配置イメージを示し、図17(B)は通信装置の詳細構成例を示す。
【0308】
実施例5は、複数の電子機器間の無線伝送において、実施例4と同様の作用を行なう点に特徴がある。図17は、送信側の搬送周波数のみを切り替える構成であるが、実施例3のように、送信側と受信側の双方の搬送周波数を切り替える構成や、受信側の搬送周波数のみを切り替える構成としてもよい。
【0309】
例えば、図17(A)に示すように、第1の電子機器752内には2つの回路基板701_1、回路基板701_2が設けられた信号伝送装置1E_1が収容されている。第2の電子機器753内には2つの回路基板701_3、回路基板701_4が設けられた信号伝送装置1E_2が収容されている。信号伝送装置1E_1と信号伝送装置1E_2とにより信号伝送装置1Eの全体が構成される。その他は、実施例4と同様である。
【0310】
尚、図17(B)中に点線で示しているのは、実施例4の変形例と同様に、通信装置721を、通常の被変調信号(被変調信号S711)の伝送用と制御信号S705の伝送用とに兼用する場合の態様である。
【0311】
送受信の組ごとに、送信側の通信装置710(通信部:送信部)と受信側の通信装置810(通信部:受信部)がそれぞれ異なる電子機器の筐体内に収容されている。電子機器752と電子機器753が定められた位置に配置され一体となったときに両電子機器内の通信部(送信部と受信部)間に無線信号伝送路が形成され、実施例4と同様の状態となる。よって、実施例4と同様に、搬送周波数を制御する周波数制御信号を無線で伝送することにより、周波数割当てを制御することができる。
【0312】
[実施例1〜実施例5の変形例]
前述の説明は、1つの通信装置に、変調部と復調部の何れか一方を1つ備えるものとして説明したが、これには限定されない。例えば、1組の通信装置において、変調部と復調部との組を複数設けて、マルチキャリア伝送(例えばOFDM伝送)を行なう場合にも、前述の実施例1〜実施例5の考え方を同様に適用できる。要は、変調部と復調部のそれぞれを通信装置や電子機器の何れの箇所に設ける(配置する)かに拘わらず、変調部と復調部の組を複数設けて、変調部と復調部とでなる各組においてそれぞれ異なる周波数の搬送信号を使用する場合には、前述の実施例1〜実施例5の考え方を同様に適用できる。
【実施例6】
【0313】
実施例6は、前述の各実施例の搬送周波数の周波数配置(周波数割当て)を電子機器へ適用する事例である。以下に3つの代表的な事例を示す。
【0314】
[第1例]
図18は、実施例6の電子機器の第1例を説明する図である。第1例は、1つの電子機器の筐体内で無線により信号伝送を行なう場合での適用例である。電子機器としては固体撮像装置を搭載した撮像装置への適用例で示す。この種の撮像装置は、例えばデジタルカメラやビデオカメラ(カムコーダ)あるいはコンピュータ機器のカメラ(Webカメラ)等として市場に流通される。
【0315】
第1通信装置が制御回路や画像処理回路等を搭載したメイン基板に搭載され、第2通信装置が固体撮像装置を搭載した撮像基板(カメラ基板)に搭載されている装置構成となっている。
【0316】
撮像装置500の筐体590内には、撮像基板502とメイン基板602が配置されている。撮像基板502には固体撮像装置505が搭載される。例えば、固体撮像装置505はCCD(Charge Coupled Device)で、その駆動部(水平ドライバや垂直ドライバ)も含めて撮像基板502に搭載する場合や、CMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor)センサの場合が該当する。
【0317】
メイン基板602に半導体チップ103を搭載し、撮像基板502に半導体チップ203を搭載する。図示しないが、撮像基板502には、固体撮像装置505の他に撮像駆動部等周辺回路が搭載され、又、メイン基板602には画像処理エンジン605や操作部や各種のセンサ等が搭載される。
【0318】
半導体チップ103と半導体チップ203のそれぞれには、送信チップや受信チップと同等の機能を組み込む。送信チップと受信チップの両機能を組み込むことで双方向通信にも対処できる。
【0319】
固体撮像装置505や撮像駆動部は、第1通信装置側のLSI機能部のアプリケーション機能部に該当する。LSI機能部には送信側の信号生成部が接続され、さらに伝送路結合部を介してアンテナ236(送信箇所)と接続される。信号生成部や伝送路結合部は固体撮像装置505とは別の半導体チップ203に収容してあり撮像基板502に搭載される。
【0320】
画像処理エンジン605や操作部や各種のセンサ等は第2通信装置側のLSI機能部のアプリケーション機能部に該当し、固体撮像装置505で得られた撮像信号を処理する画像処理部が収容される。LSI機能部には受信側の信号生成部が接続され、さらに伝送路結合部を介してアンテナ136(受信箇所)と接続される。信号生成部や伝送路結合部は画像処理エンジン605とは別の半導体チップ103に収容してありメイン基板602に搭載される。
【0321】
送信側の信号生成部は例えば、多重化処理部、パラレルシリアル変換部、変調部、周波数変換部、増幅部等を具備し、受信側の信号生成部は例えば、増幅部、周波数変換部、復調部、シリアルパラレル変換部、単一化処理部等を具備する。これらの点は、後述する他の適用事例でも同様である。
【0322】
アンテナ136とアンテナ236との間で無線通信が行なわれることで、固体撮像装置505で取得される画像信号は、アンテナ間の無線信号伝送路9を介してメイン基板602へと伝送される。双方向通信に対応するように構成してもよく、この場合例えば、固体撮像装置505を制御するための基準クロックや各種の制御信号は、アンテナ間の無線信号伝送路9を介して撮像基板502へと伝送される。
【0323】
図18(A−1)及び図18(B−1)の何れも、2系統の無線信号伝送路9が設けられており、図18(A)では自由空間伝送路9Bとしているが、図18(B)では中空導波路9Lとしている。各系統内にはそれぞれ3組の送受信対が存在し、例えば周波数分割多重方式を採用する。
【0324】
中空導波路9Lとしては、周囲が遮蔽材で囲まれ内部が中空の構造であればよい。例えば、周囲が遮蔽材の一例である導電体MZで囲まれ内部が中空の構造にする。例えば、メイン基板602上にアンテナ136を取り囲む形で導電体MZの囲いが取り付けられている。アンテナ136と対向する位置に撮像基板502側のアンテナ236の移動中心が配置されるようにする。導電体MZの内部が中空であるので誘電体素材を使用する必要がなく低コストで簡易に無線信号伝送路9を構成できる。
【0325】
各系統の基本的な動作は1系統の動作と同様であるが、例えば自由空間伝送路9Bの図18(A−1)の場合、系統間の距離(チャネル間距離:この例では2つの送信側のアンテナ間距離に対応)が短いほど、それぞれの無線信号伝送路9が近接することになり、各系統で同じ搬送周波数を使用して同時通信を行なうと、受信部側での干渉や混信が問題になる虞れがある。送信側のアンテナ(空中線)の配置、送信側のアンテナの電磁波出力の強度、受信側のアンテナの配置等の調整が困難で、チャネル間距離が短く、電磁波伝送路の干渉や混信を避けることが困難な場合、自由空間伝送路9B_1と自由空間伝送路9B_2に関しても、周波数帯を異なるものとする周波数分割多重方式を採用する。
【0326】
具体的には、図18(A−2)に示すように、アンテナ136_11とアンテナ236_11との間では搬送周波数F_11を使用し、アンテナ136_12とアンテナ236_12との間では搬送周波数F_12を使用し、アンテナ136_13とアンテナ236_13との間では搬送周波数F_13を使用する。アンテナ136_21とアンテナ236_21との間では搬送周波数F_21を使用し、アンテナ136_22とアンテナ236_22との間では搬送周波数F_22を使用し、アンテナ136_23とアンテナ236_23との間では搬送周波数F_23を使用する。
【0327】
6つの搬送周波数を使用することになるが、この際には、図18(A−3)に示すように、前述した6バンドの周波数配置の決定方法を採用する。これにより、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0328】
又、図18(B−1)に示すように、2つのミリ波信号伝送路の間に、電磁波の遮蔽物(導電体MZ:金属など)を設置してもよい。この場合、中空導波路9L_1内の3組では周波数分割多重方式を採用し、中空導波路9L_2内の3組でも周波数分割多重方式を採用するが、中空導波路9L_1と中空導波路9L_2との関係では同じ搬送周波数を使用できる。
【0329】
具体的には、図18(B−2)に示すように、アンテナ136_11とアンテナ236_11との間では搬送周波数F_1を使用し、アンテナ136_12とアンテナ236_12との間では搬送周波数F_2を使用し、アンテナ136_13とアンテナ236_13との間では搬送周波数F_3を使用する。アンテナ136_21とアンテナ236_21との間では搬送周波数F_1を使用し、アンテナ136_22とアンテナ236_22との間では搬送周波数F_2を使用し、アンテナ136_23とアンテナ236_23との間では搬送周波数F_3を使用する。
【0330】
3つの搬送周波数を使用することになるが、この際には、図18(B−3)に示すように、前述した3バンドの周波数配置の決定方法を採用する。これにより、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0331】
[第2例]
図19は、実施例6の電子機器の第2例を説明する図である。第2例は、複数の電子機器が一体となった状態での電子機器間で無線により信号伝送を行なう場合での適用例である。特に、一方の電子機器が他方の電子機器に装着されたときの両電子機器間の信号伝送への適用である。
【0332】
例えば、中央演算処理装置(CPU)や不揮発性の記憶装置(例えばフラッシュメモリ)等が内蔵されたいわゆるICカードやメモリカードを代表例とするカード型の情報処理装置を本体側の電子機器に装着可能(着脱自在)にしたものがある。一方(第1)の電子機器の一例であるカード型の情報処理装置を以下では「カード型装置」とも称する。本体側となる他方(第2)の電子機器を以下では単に電子機器とも称する。
【0333】
メモリカード201Bの構造例(平面透視及び断面透視)が図19(A)に示されている。電子機器101Bの構造例(平面透視及び断面透視)が図19(B)に示されている。 電子機器101Bのスロット構造4(特に開口部192)にメモリカード201Bが挿入されたときの構造例(断面透視)が図19(C)に示されている。
【0334】
スロット構造4は、電子機器101Bの筺体190にメモリカード201B(その筐体290)を開口部192から挿抜して固定可能な構成となっている。スロット構造4のメモリカード201Bの端子との接触位置には受け側のコネクタ180が設けられる。無線伝送に置き換えた信号についてはコネクタ端子(コネクタピン)が不要である。
【0335】
図19(A)に示すようにメモリカード201Bの筐体290に円筒状の凹形状構成298(窪み)を設け、図19(B)に示すように電子機器101Bの筺体190に円筒状の凸形状構成198(出っ張り)を設けている。メモリカード201Bは、基板202の一方の面に、複数(図は3つ)の半導体チップ203を有し、基板202の一方の面には複数(図は3つ)のアンテナ236(計3つのアンテナ236)が形成されている。筐体290は、各アンテナ236と同一面に凹形状構成298が形成され、凹形状構成298の部分が無線信号伝送可能な誘電体素材を含む誘電体樹脂で構成される。
【0336】
基板202の一辺には、筐体290の決められた箇所で電子機器101Bと接続するための接続端子280が決められた位置に設けられている。メモリカード201Bは、低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の端子構造を一部に備える。ミリ波での信号伝送の対象となり得るものは、図中に破線で示すように、端子を取り外している。
【0337】
図19(B)に示すように、電子機器101Bは、基板102の開口部192側の面に複数(図は3つ)の半導体チップ103を有し、基板102の一方の面に複数(図は3つ)のアンテナ236(計3つのアンテナ236)が形成されている。筺体190は、スロット構造4として、メモリカード201Bが挿抜される開口部192が形成されている。筺体190には、メモリカード201Bが開口部192に挿入されたときに、凹形状構成298の位置に対応する部分に、ミリ波閉じ込め構造(導波路構造)を持つ凸形状構成198が形成され誘電体伝送路9Aとなるように構成されている。
【0338】
図19(C)に示すように、スロット構造4の筺体190は開口部192からのメモリカード201Bの挿入に対し、凸形状構成198(誘電体伝送路9A)と凹形状構成298が凹凸状に接触するようなメカ構造を有する。凹凸構造が嵌合するときに、複数(図は3つ)のアンテナ136と複数(図は2つ)のアンテナ236のそれぞれ対応するもの同士が対向するとともに、その間に無線信号伝送路9として誘電体伝送路9Aが配置される。これによって、対応するアンテナ136とアンテナ236の間で、周波数分割多重方式を採用して、無線による信号伝送を行なうことができる。メモリカード201Bは、誘電体伝送路9Aとアンテナ236の間に筐体290を挟むが、凹形状構成298の部分の素材が誘電体素材であるのでミリ波帯での無線伝送に大きな影響を与えるものではない。
【0339】
尚、3つの搬送周波数を使用することになるが、この際には、前述した3バンドの周波数配置の決定方法を採用する。これにより、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0340】
[第3例]
図20は、実施例6の電子機器の第3例を説明する図である。信号伝送装置1は、第1の電子機器の一例として携帯型の画像再生装置201Kを備えるとともに、画像再生装置201Kが搭載される第2(本体側)の電子機器の一例として画像取得装置101Kを備えている。画像取得装置101Kには、画像再生装置201Kが搭載される載置台5Kが筐体190の一部に設けられている。なお、載置台5Kに代えて、第2例のようにスロット構造4にしてもよい。一方の電子機器が他方の電子機器に装着されたときの両電子機器間において、無線で信号伝送を行なうという点では第2例と同じである。以下では、第2例との相違点に着目して説明する。
【0341】
画像取得装置101Kは概ね直方体(箱形)の形状をなしており、もはやカード型とは言えない。画像取得装置101Kとしては、例えば動画データを取得するものであればよく、例えばデジタル記録再生装置や地上波テレビ受像機が該当する。画像再生装置201Kには、アプリケーション機能部として、画像取得装置101K側から伝送されてくる動画データを記憶する記憶装置や、記憶装置から動画データを読み出して表示部(例えば液晶表示装置や有機EL表示装置)にて動画を再生する機能部が設けられる。構造的には、メモリカード201Bを画像再生装置201Kに置き換え、電子機器101Bを画像取得装置101Kに置き換えたと考えればよい。
【0342】
載置台5Kの下部の筺体190内には、例えば第2例(図19)と同様に、複数(図は3つ)の半導体チップ103が収容されており、ある位置には複数(例えば3つ)のアンテナ136が設けられる。アンテナ136と対向する筺体190の部分には、無線信号伝送路9として誘電体素材により誘電体伝送路9Aが構成されるようにしてある。載置台5Kに搭載される画像再生装置201Kの筺体290内には、例えば第2例(図19)と同様に、複数(図は3つ)の半導体チップ203が収容されており、各半導体チップ203と対応してアンテナ236(計3つのアンテナ236)が設けられる。3つのアンテナ236と対向する筺体290の部分は、誘電体素材により無線信号伝送路9(誘電体伝送路9A)が構成されるようにしてある。これらの点は前述の第2例と同様である。
【0343】
第3例は、嵌合構造という考え方ではなく壁面突当て方式を採り、載置台5Kの角101aに画像取得装置101Kが突き当てられるように置かれたときに複数(図は3つ)のアンテナ136と複数(図は3つ)のアンテナ236の対応するもの同士が対向するとともに、その間に無線信号伝送路9として誘電体伝送路9Aが配置されるようにしているので、位置ズレによる影響を確実に排除できる。このような構成により、載置台5Kに対する画像再生装置201Kの搭載(装着)時に、画像再生装置201Kの無線信号伝送に対する位置合せ行なうことが可能となり、対応するアンテナ136とアンテナ236の間で、周波数分割多重方式を採用して、無線による信号伝送を行なうことができる。アンテナ136とアンテナ236との間に筐体190と筐体290を挟むが、誘電体素材であるのでミリ波帯での無線伝送に大きな影響を与えるものではない。
【0344】
尚、3つの搬送周波数を使用することになるが、この際には、前述した3バンドの周波数配置の決定方法を採用する。これにより、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0345】
<比較例との対比>
図21〜図22は、比較例との対比を説明する図である。ここで、図21は、変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合(例えば周波数分割多重方式を適用する場合)の基本的な周波数配置を示す図である。図22は、変調歪を防止する比較例の方式を説明する図である。
【0346】
同一エリアで、変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合、回路部材の非線形性に起因して発生するN次相互変調歪による混信が問題となる。特に、3次の相互変調歪成分は使用周波数の近傍に発生し、又、4次以降の成分よりもレベルが大きいため、混信を避けることが難しく、通信障害の原因となる。この問題を防止するためには、最適な搬送周波数を選択することが肝要となる。
【0347】
例えば、増幅器は入力された信号を増幅率倍に増幅して出力する。このとき、周波数の異なる入力信号が2つあった場合、理想化されたモデルのとき(入力と出力は比例関係にあり、非直線性成分を含まないとき)には、それぞれの入力信号の振幅がゲイン倍されて出力される。しかしながら、実際には、増幅器は入力と出力はほぼ比例関係にあるが完全ではなく、非直線性成分を含んでいる。このような場合、周波数の異なる複数の信号を増幅器に入力すると、入力にはない周波数の信号が出力に発生する。これを、変調歪(IMD:InterModulation Distortio)と称する。変調歪成分の周波数は不規則ではなく、次式で規定される。
±m×f1±n×f2 ただしm、n=0、1、2、3、…
【0348】
|m|+|n|(m、nの絶対値)の組合せで表される周波数の変調歪をN(=|m|+|n|)次変調歪と称する。例えばm=±1でn=±1の変調歪を2次歪、m=±1でn=±2及びm=±2でn=±1の変調歪を3次歪と称する。1次は自分自身であるから除外し、2次、3次、4次、…となる。m、nは無限に続くので変調歪は無限に存在することになるが、実際には次数が高くなると減衰するため、通常は、3次や4次程度までを考慮すればよい。
【0349】
又、変調歪は、それが現れる現象に応じて、“混変調歪”と“相互変調歪”とに区別される。本実施形態は、そのうちの“相互変調歪”に関して対策を採る。“混変調歪”は、強力な周波数の局(妨害局)が現れていて、その妨害局が振幅変調波を出力している場合に、自局の受信している信号が、妨害局の振幅変調と同じ変調を受ける現象である。
【0350】
一方、“相互変調歪”は、自局とは全く関係のない2波を起因として起こる妨害である。即ち、自局以外の強力な2周波数の局が現れていて(両方が強力である場合と片方のみが極端に強力な場合の何れでもよい)、その2局の周波数差(混変調積)が受信周波数や中間周波数にかぶる場合に、妨害波として受信される現象である。よって、自局の受信周波数が妨害の2局の周波数差から外れると妨害は起こらない。本実施形態は、この点に着目して、増幅器や周波数混合部等の回路の非線形性に起因して発生する変調歪による混信の影響を受けない適正な周波数位置に各搬送周波数を設定する。
【0351】
「双方向通信」の実現には、例えば、電波の伝送チャネルである無線信号伝送路が1系統(一芯)の一芯双方向伝送の場合、時分割多重(TDD:Time Division Duplex)を適用する半二重方式と、周波数分割多重(FDD:Frequency Division Duplex )などが適用される。
【0352】
しかし、時分割多重の場合、送信と受信の分離を時分割で行なうので、第1通信装置から第2通信装置への信号伝送と第2通信装置から第1通信装置への信号伝送を同時に行なう「双方向通信の同時性(一芯同時双方向伝送)」は実現されず、一芯同時双方向伝送は、周波数分割多重で実現される。周波数分割多重は1組の通信装置間で双方向同時通信を行なう場合への対処に限らず、様々な信号伝送に利用される。例えば、複数の通信装置間で片方向通信や双方向通信を行なう場合や、1組の通信装置間でありながら変調回路と復調回路との組を複数設けて、OFDM伝送に代表されるようなシンボルレートを下げる方法の一つとしてのマルチキャリア伝送を行なう場合等、多重伝送(多チャネル化)を実現する際にも周波数分割多重が利用される。
【0353】
周波数分割多重による双方向通信は、図21(A)に示すように、送信と受信に異なった周波数を用いるので、無線信号伝送路の伝送受信帯域幅を広くする。又、周波数分割多重で多重伝送(多チャネル化)を実現するには、図21(B)に示すように、各別の搬送周波数F_@で変調して(それぞれ異なる周波数帯に変換して)、それら各別の搬送周波数を用いた電波を同一方向または逆方向に伝送する。この場合に、各通信系統(通信チャネル)に異なった周波数を用いる場合は、図21(C)や図21(D)に示すように、伝送受信帯域幅を一層広くとる。ここで、図21(B)〜図21(C)に示す周波数配置の例では、ほぼ等周波数間隔で周波数帯域F_@(いわゆる通信チャネル)が並んでおり、隣接する通信チャネル間での3次相互変調歪は隣接チャネルと同じ周波数となって混信してしまう。
【0354】
“混変調歪”と“相互変調歪”の何れも、必要帯域外の電波を高周波増幅器に入力させないことで防止できる。あるいは、そもそもの発生原因である増幅器や周波数混合部等の直線性をよくすることでも防止できる。即ち、そもそもの原因が回路の非直線動作にあるので、できるだけ直線領域で動作させるように設計する等の手法が有効である。
【0355】
例えば、ミリ波を用いた機器内伝送は少ない電力で高データレートの信号伝送が可能であり今後の応用が期待されるが、機器内には一組の伝送だけでなく、複数の周波数の組合せの伝送が必要となってくる。受信帯域に隣接する複数の周波数の信号を受信すると、増幅器や周波数混合部の線形性能が低いと受信帯域内に3次歪が発生し受信品質を著しく劣化させる。
【0356】
このため、例えば図22に示すように、受信回路の入力部に受信したい帯域のみを通過させて、隣接する周波数成分を減衰させるために選択度の高い帯域制限フィルタ(BPF:バンドパスフィルタ)を追加する。この場合、部品コストの増大を招くし、半導体集積回路内に内蔵できないときには基板面積を拡大させる。又、帯域制限フィルタは一般的には固定の周波数に対してのみ作用するため、対応周波数を可変して使用することは難しく、使用する帯域ごとに用意する必要があり、複数の種類の部品を管理するためのコストアップが生じる。又、帯域制限フィルタの選択度が低い場合は、回路の線形性能を高くする必要があり、消費電力の増大やチップサイズの増加によるコストアップの懸念がある。
【0357】
又、特開昭55−38777号公報には、スペクトラム拡散と狭帯域変調の組合せの場合の受信器の性能を緩和させる方法として、拡散変調の受信帯域幅fcの整数倍の位置に狭帯域変調の周波数を配置する方法が提案されている。しかしながら、狭帯域変調を複数使用すると、その3次歪が拡散変調の帯域内に生じてしまうことや、複数の拡散変調の場合には適応できない難点がある。
【0358】
これに対して、本実施形態の手法は、変調歪による混信の影響を受けない適正な周波数位置に各搬送周波数を設定する。このため、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0359】
<通信処理系統:変形例>
図23〜図24は、本実施形態の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する変形構成である。この変形構成は、前述の実施形態(実施例を含む)に、パラメータ設定の固定化を適用するものである。以下、図1に示した基本構成に対する変形例で説明する。
【0360】
先ず、図23に示す第1の変形構成について説明する。第1通信装置100は、第1設定値決定部7110と、第1設定値記憶部7130と、第1動作制御部7150とを具備した第1設定値処理部7100を基板102上に備える。第1設定値決定部7110は、半導体チップ103の各機能部の動作(換言すると第1通信装置100の全体動作)を指定するための「信号処理用の設定値」(変数、パラメータ)を決定する。変調回路と復調回路との組を複数設けて、各組でそれぞれ異なる周波数の搬送信号を用いて無線(特に電波)により各組同時の信号伝送を行なうこととの関係での「信号処理用の設定値」としては、変調用の搬送周波数や復調用の搬送周波数が該当する。設定値を決定する処理は、例えば、工場での製品出荷時に行なう。第1設定値記憶部7130は、第1設定値決定部7110により決定された設定値を記憶する。第1動作制御部7150は、第1設定値記憶部7130から読み出した設定値に基づいて半導体チップ103の各機能部(この例では、変調部115、周波数変換部116、増幅部117等)を動作させる。
【0361】
図23に示す例では、第1設定値処理部7100を基板102上に備える例で示しているが、これには限らず、図示しないが、第1設定値処理部7100は半導体チップ103が搭載されている基板102とは別の基板に搭載されていてもよい。又、図23に示す例では、第1設定値処理部7100は半導体チップ103の外部に備える例で示しているが、第1設定値処理部7100を半導体チップ103に内蔵してもよく、この場合は、第1設定値処理部7100は制御対象となる各機能部(変調部115、周波数変換部116、増幅部117等)が搭載されている基板102と同一の基板102に搭載されることになる(図示は割愛する)。
【0362】
第2通信装置200は、第2設定値決定部7210と、第2設定値記憶部7230と、第2動作制御部7250とを具備した第2設定値処理部7200を基板202上に備える。第2設定値決定部7210は、半導体チップ203の各機能部の動作(換言すると第2通信装置200の全体動作)を指定するための設定値(変数、パラメータ)を決定する。設定値を決定する処理は、例えば、工場での製品出荷時に行なう。第2設定値記憶部7230は、第2設定値決定部7210により決定された設定値を記憶する。第2動作制御部7250は、第2設定値記憶部7230から読み出した設定値に基づいて半導体チップ203の各機能部(この例では、増幅部224、周波数変換部225、復調部226等)を動作させる。
【0363】
図23に示す例では、第2設定値処理部7200を基板202上に備える例で示しているが、これには限らず、図示しないが、第2設定値処理部7200は半導体チップ203が搭載されている基板202とは別の基板に搭載されていてもよい。又、図23に示す例では、第2設定値処理部7200は半導体チップ203の外部に備える例で示しているが、第2設定値処理部7200を半導体チップ203に内蔵してもよく、この場合は、第2設定値処理部7200は制御対象となる各機能部(増幅部224、周波数変換部225、復調部226)が搭載されている基板202と同一の基板202に搭載されることになる(図示は割愛する)。
【0364】
次に、図24に示す第2の変形構成について説明する。第2の変形構成は、装置外部にて決定された設定値を記憶する点に特徴がある。以下では、第1の変形構成との相違点を中心に説明する。第2の変形構成は、第1設定値決定部7110に代えて第1入出力インタフェース部7170を備え、第2設定値決定部7210に代えて第2入出力インタフェース部7270を備えている。第1入出力インタフェース部7170と第2入出力インタフェース部7270のそれぞれは、設定値を外部から受け付ける設定値受付部の一例である。
【0365】
第1入出力インタフェース部7170は、第1設定値記憶部7130との間のインタフェース機能をなし、外部から与えられる設定値を第1設定値記憶部7130に記憶し、又、第1設定値記憶部7130に記憶されている設定値を読み出して外部に出力する。第2入出力インタフェース部7270は、第2設定値記憶部7230との間のインタフェース機能をなすもので、外部から与えられる設定値を第2設定値記憶部7230に記憶し、又、第2設定値記憶部7230に記憶されている設定値を読み出して外部に出力する。
【0366】
第2の変形構成の場合、第1設定値処理部7100や第2設定値処理部7200にて設定値を決定するのではなく、外部にて設定値を決定する。例えば、設計パラメータと実機の状態から設定値を決定してもよいし、装置の実働試験に基づいて設定値を決定してもよい。又、何れの場合も、装置ごとに個別の設定値を決定するのではなく、各装置に共通の設定値を決定してもよい。設計パラメータから設定値を決定する場合は、概ねこの場合に該当するし、標準の装置での実働試験に基づいて設定値を決定する場合も、この場合に該当する。
【符号の説明】
【0367】
1…信号伝送装置、100…第1通信装置(第1の通信部の機能を持つ)、200…第2通信装置(第2の通信部の機能を持つ)、500…撮像装置(電子機器の一例)、702…周波数制御部、704…周波数制御部、101B…電子機器、201B…メモリカード(電子機器の一例)、101K…画像取得装置(電子機器の一例)、201K…画像再生装置(電子機器の一例)、751…電子機器、752…電子機器、753…電子機器、7100…第1設定値処理部、7200…第2設定値処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送装置、電子機器、及び、信号伝送方法に関する。より詳細には、回路部材の非線形性に起因して発生する変調歪(特に“相互変調歪”)に関する。
【背景技術】
【0002】
通信エリア内において、1つの搬送周波数を用いた一組の送受信間での伝送だけでなく、複数の周波数の組合せにより信号伝送を行なうことがある。例えば、1組の通信装置間で周波数分割多重方式を適用して(2つの搬送周波数を用いて)双方向同時通信を行なう場合や、複数の通信装置間でそれぞれ異なる搬送周波数を用いて通信(片方向通信や双方向通信)を行なう場合がある。又、1組の通信装置間でありながら変調回路と復調回路との組を複数設けて、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重方式)伝送に代表されるようなシンボルレートを下げる方法の一つとしてのマルチキャリア(MC:Multi-Carrier)伝送を行なう場合もある。
【0003】
通信装置の組数を問わず何れも、変調回路と復調回路との組を複数設けて、変調回路と復調回路との組のそれぞれでは、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なうことになる。これらの複数の周波数の組合せの伝送を行なう場合、増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の回路部材の非線形性(非直線動作)に起因して発生する変調歪が受信品質を劣化させる。例えば、所望波(自局)とは全く関係のない2つの搬送周波数の信号が受信され非線形性を持つ増幅回路や周波数混合回路に入力されると、2つの搬送周波数の差の信号(妨害波成分)も出力される。このとき、2つの搬送周波数の差が所望波の周波数近傍に存在する場合に、この妨害波成分も復調される“相互変調歪”の問題がある。典型的には、自局の受信帯域に隣接する複数の周波数の信号を受信すると、増幅回路や周波数混合回路の線形性能が低いと受信帯域(通常は変調信号の1次成分だけを考えればよい)内に3次歪が発生し受信品質を著しく劣化させる。
【0004】
例えば、特開昭55−38777号公報には、スペクトラム拡散と狭帯域変調の組合せの場合の受信器の性能を緩和させる方法として、拡散変調の受信帯域幅の整数倍の位置に狭帯域変調の周波数を配置する方法が提案されている。しかしながら、狭帯域変調を複数使用すると、その3次歪が拡散変調の帯域内に生じてしまうし、複数の拡散変調の場合には適応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−38777号公報
【0006】
“相互変調歪”の問題を防止する手法としては、例えば、受信回路の入力部に、波長選択性を持つバンドパスフィルタを追加する手法が知られている。しかしながら、この手法は、バンドパスフィルタ分のコストの増大や基板面積の拡大等を招く。又、バンドパスフィルタは、一般的には、固定の周波数に対してのみ作用するため、対応周波数を可変して使用することは難しく通信チャネル(換言すると搬送周波数:以下では「バンド」ともいう)ごとに用意する必要がある。
【0007】
“相互変調歪”の問題を防止する他の手法としては、そもそもの発生原因である“回路部材の非直線動作”を改善する手法も知られている。回路部材の追加を伴わない手法である。例えば、回路の線形性能を高くするために、なるべく直線領域で動作させるように、バイアス電流を大きくする、DCバイアス点を最適化する等の対策が有効になるが、電源電圧の増大や消費電力の増大を招く。あるいは、線形性のよい高価な回路部材を使用するということも考えられるが、高価な回路部材を使っても、原理的に非線形性をゼロにすることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、“相互変調歪”の問題を防止する従来の手法は、専ら、回路部材の側面から対処しようとするものであるが、コストやサイズあるいは電源電圧や消費電力等の点で、万能といえるものにはなっていない。
【0009】
本発明は、回路部材以外の側面から“相互変調歪”の問題を防止することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る信号伝送装置は、伝送対象信号を無線信号として送信する第1の通信部と第1の通信部から送信された無線信号を受信する第2の通信部とがそれぞれ複数設けられている。具体的には、第1の通信部には、伝送対象信号を変調する変調部を設け、第2の通信部には、変調部で変調された変調信号を復調する復調部を設ける。つまり、伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とをそれぞれ複数設けて信号伝送装置を構成する。本発明の第1の態様に係る信号伝送装置の従属項に記載された各信号伝送装置は、本発明の第1の態様に係る信号伝送装置のさらなる有利な具体例を規定する。
【0011】
本発明の第2の態様に係る電子機器は、いわゆる機器内の信号伝送に関するものであり、伝送対象信号を無線信号として送信する第1の通信部と第1の通信部から送信された無線信号を受信する第2の通信部受信部とを1つの筐体内にそれぞれ複数備える。具体的には、第1の通信部には、伝送対象信号を変調する変調部を設け、第2の通信部には、変調部で変調された変調信号を復調する復調部を設ける。つまり、伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とを、それぞれ複数、1つの筐体内に配置して電子機器を構成する。電子機器内には、変調部で変調された変調信号を無線信号として伝送可能にする無線信号伝送路が形成されている。
【0012】
本発明の第3の態様に係る電子機器は、いわゆる機器間の信号伝送に関するものであり、伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部の少なくとも一方が1つの筐体内に複数配置されている第1の電子機器と、第1の電子機器の各変調部と対応する復調部及び第1の電子機器の各復調部と対応する変調部のそれぞれが1つの筐体内に配置されている第2の電子機器とを備えて、1つの電子機器の全体が構成されている。つまり、変調部と復調部とでなる組のそれぞれについて、変調部と復調部の一方が第1の電子機器に配置され、変調部と復調部の他方が第2の電子機器に配置され、このような変調部と復調部とでなる組を複数備えて1つの電子機器の全体が構成される。全ての変調部が第1の電子機器に配置されるとともに全ての復調部が第2の電子機器に配置される場合、全ての変調部が第2の電子機器に配置されるとともに全ての復調部が第1の電子機器に配置される場合、一部の組の変調部と残りの組の復調部とが第1の電子機器に配置されるとともに、その一部の組の変調部と対応する復調部とその残りの組の復調部と対応する変調部とが第2の電子機器に配置される場合の何れでもよい。そして、第1の電子機器と第2の電子機器が定められた位置に配置されたとき、変調部で変調された変調信号を無線信号として伝送可能にする無線信号伝送路が形成されるようになっている。
【0013】
本発明の第4の態様に係る信号伝送方法は、伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とをそれぞれ複数設けておく。
【0014】
そして、本発明の第1の態様に係る信号伝送装置、本発明の第2の態様に係る電子機器、本発明の第3の態様に係る電子機器、及び、本発明の第4の態様に係る信号伝送方法のそれぞれにおいて、変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用する搬送周波数に関しては、それぞれ異なる周波数とする。当然のことであるが、変調部と復調部との組を複数設けて、各組でそれぞれ異なる周波数の搬送周波数を用いて無線(特に電波)により信号伝送を行なう。
【0015】
ここで、変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数については、
1)隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、各搬送周波数が設定されている
という状態にする。
2)好ましくは、各搬送周波数に基づく変調信号の各受信帯域同士が重ならならないように、各搬送周波数が設定されている
という状態にする。
【0016】
変調部(変調回路)と復調部(復調回路)との組を複数設けて、各組でそれぞれ異なる周波数の搬送周波数を用いて無線(特に電波)により信号伝送を行なうに当たり、所望波(自局)とは全く関係のない2つの搬送周波数の信号が受信され(つまり自局の受信帯域内に入って)復調される相互変調歪を問題とするから、使用される搬送周波数は最低でも3つとなる。よって、隣接する3つの搬送周波数に着目して、1)の条件を満たし、好ましくは2)の条件も満たすようにすればよい。また、使用される搬送周波数が4つ以上のときは、そのうちの隣接する3つの搬送周波数の組合せの何れについても、1)の条件を満たし、好ましくは2)の条件も満たすようにすればよい。
【0017】
本発明の手法は、電子計算機(コンピュータ)を用いてソフトウェアで実現することもでき、このためのプログラムやプログラムを格納した記録媒体を発明として抽出することも可能である。プログラムは、コンピュータ読取り可能な記憶媒体に格納されて提供されてもよいし、有線あるいは無線による通信手段を介した配信により提供されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、変調回路と復調回路との組を複数設けて、各組でそれぞれ異なる周波数の搬送周波数を用いて無線(特に電波)により信号伝送を行なう際に使用する搬送周波数の配置の側面から、“相互変調歪”の問題を防止する。このため、回路部材の追加や変更を行なわなくても、“相互変調歪”の問題を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施形態の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する基本構成である。
【図2】図2(A)〜図2(C)は、3バンドの周波数配置の第1例を説明する図である。
【図3】図3(A)〜図3(C)は、3バンドの周波数配置の第2例を説明する図である。
【図4】図4(A)〜図4(C)は、4バンドの周波数配置の第1例を説明する図である。
【図5】図5(A)〜図5(C)は、4バンドの周波数配置の第2例を説明する図である。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、5バンドの周波数配置の第1例を説明する図である。
【図7】図7(A)〜図7(C)は、5バンドの周波数配置の第2例を説明する図である。
【図8】図8(A)〜図8(C)は、6バンドの周波数配置の第1例を説明する図である。
【図9】図9(A)〜図9(C)は、6バンドの周波数配置の第2例を説明する図である。
【図10】図10(A)〜図10(C)は、7バンドの周波数配置の第1例を説明する図である。
【図11】図11(A)〜図11(C)は、7バンドの周波数配置の第2例を説明する図である。
【図12】図12(A)〜図12(C)は、実施例1を説明する図である。
【図13】図13(A)〜図13(B)は、実施例2を説明する図である。
【図14】図14(A)〜図14(B)は、実施例3を説明する図である。
【図15】図15(A)〜図15(B)は、実施例4を説明する図である。
【図16】図16(A)〜図16(B)は、実施例4の変形例を説明する図である。
【図17】図17(A)〜図17(B)は、実施例5を説明する図である。
【図18】図18(A)〜図18(B)は、実施例6の電子機器の第1例を説明する図である。
【図19】図19(A)〜図19(C)は、実施例6の電子機器の第2例を説明する図である。
【図20】図20(A)〜図20(C)は、実施例6の電子機器の第3例を説明する図である。
【図21】図21は、比較例との対比を説明する図であって、周波数分割多重方式の基本的な周波数配置を示す図である。
【図22】図22は、比較例との対比を説明する図であって、変調歪を防止する比較例の方式を説明する図である。
【図23】図23は、本実施形態の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する第1の変形構成である。
【図24】図24は、本実施形態の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する第2の変形構成である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際には、A,B,C,…等のように大文字のアルファベットの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
【0021】
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.通信処理系統:基本
3.3バンドの周波数配置
4.4バンドの周波数配置
5.5バンドの周波数配置
6.6バンドの周波数配置
7.7バンドの周波数配置
8.具体的な適用例
実施例1:同一基板内伝送&制御なし(プリセット)
実施例2:同一基板内伝送&送信側への制御あり
実施例3:同一基板内伝送&送信側及び受信側への制御あり
実施例4:1つの電子機器内での基板間伝送&制御あり
実施例5:機器間伝送&制御あり
実施例6:電子機器への適用事例
9.比較例との対比
10.通信処理系統:変形例(周波数配置のプリセット化)
【0022】
<全体概要>
[信号伝送装置、信号伝送方法]
本発明の第1の態様〜第4の態様と対応する本実施形態の構成においては、伝送対象信号を無線信号として送信する第1の通信部と第1の通信部から送信された無線信号を受信する第2の通信部とをそれぞれ1つ又は複数設けて、信号伝送装置(無線伝送装置とも称する)や電子機器を構成する。送信機能をなす第1の通信部は、伝送対象信号を無線信号として送信する。受信機能をなす第2の通信部は、第1の通信部から送信された無線信号を受信する。第1の通信部には、伝送対象信号を変調する変調部を設け、第2の通信部には、変調部で変調された変調信号を復調する復調部を設け、これら変調部と復調部とをそれぞれ複数設けて信号伝送装置を構成する。尚、一般的には、アンテナと受信回路(第2の通信部)との間に、所望波を通過させるがそれ以外は抑圧する波長選択性を持つ部材(いわゆるバンドパスフィルタ)を設けるが、本実施形態ではそのような波長選択性を持つ部材を必要としない。
【0023】
第1の通信部と第2の通信部の組数(換言すると送受信対の組数)を問わず何れも、変調部と復調部との組を複数設けて、変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用する搬送周波数に関しては、それぞれ異なる周波数とする。ここで、それぞれ異なる周波数の搬送周波数については、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、各搬送周波数を設定する。
【0024】
受信回路は変更せずに、周波数配置により、受信回路における相互変調歪による受信性能の劣化の影響を回避することができる。周波数配置により、相互変調歪の影響を回避できるので、高い選択度の帯域制限フィルタが不要となり、低コストで小サイズの受信回路を構成できる。周波数配置により相互変調歪の影響を回避できるので、受信回路の歪性能を緩和でき、小サイズで低消費電力の構成でもよくなる。
【0025】
変調部で変調された変調信号を無線信号として送信し、その無線信号を受信して復調部に入力することで信号伝送を行なう際に、変調部と復調部との各組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、好ましくは、各搬送周波数に基づく変調信号の各受信帯域同士が重ならならないように各搬送周波数を設定する。
【0026】
変調回路と復調回路との組を複数設けて、各組でそれぞれ異なる周波数の搬送信号を用いて無線(特に電波)により信号伝送を行なうに当たり、所望波(自局)とは全く関係のない2つの搬送周波数の信号が自局の受信帯域内に入って復調される相互変調歪を問題とするから、使用される搬送周波数は最低でも3つとなる。隣接する3つの搬送周波数に着目して周波数配置を決めればよい。この場合、隣接する3つの搬送周波数について、以下のような条件を満たすようにするとよい。
【0027】
[第1の条件]
3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lと中間の周波数の搬送周波数F_Mとの差を第1の周波数差Δ1とし、
3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hと中間の周波数の搬送周波数F_Mとの差を第2の周波数差Δ2としたとき、
第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2とのうち小さい方ΔSを規定する低域側の搬送周波数F_aに基づく変調信号の高域側の受信帯域幅F_a_Uと、第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2のうち小さい方ΔSを規定する高域側の搬送周波数F_bに基づく変調信号の低域側の受信帯域幅F_b_Lとの和が、第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2のうち小さい方ΔSよりも小さい。第1の条件は、式(A)で表すことができる。
「F_a_U」+「F_b_L」<ΔS …(A)
【0028】
[第2の条件]
第1の周波数差Δ1の方が第2の周波数差Δ2よりも小さいときには、第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2との差“|Δ1−Δ2|”は、最も低周波数の搬送周波数F_Lに基づく変調信号の低域側の受信帯域幅F_L_Lと最も高周波数の搬送周波数F_Hに基づく変調信号の低域側の受信帯域幅F_H_Lのうち大きい方よりも大きい。第2の条件は、式(B)で表すことができる。
「F_L_L」と「F_H_L」のうち大きい方<|Δ1−Δ2| …(B)
【0029】
[第3の条件]
第1の周波数差Δ1の方が第2の周波数差Δ2よりも大きいときには、第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2との差“|Δ1−Δ2|”は、最も低周波数の搬送周波数F_Lに基づく変調信号の高域側の受信帯域幅F_L_Hと最も高周波数の搬送周波数F_Hに基づく変調信号の高域側の受信帯域幅F_H_Hのうち大きい方よりも大きい。第3の条件は、式(C)で表すことができる。
「F_L_H」と「F_H_H」のうち大きい方<|Δ1−Δ2| …(C)
【0030】
第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2のうち大きい方をΔLとすると“|Δ1−Δ2|”=ΔL−ΔSとなるから、第1の条件を示す式(A)と第2の条件を示す式(B)とを纏めると、式(D)で表すことができる。
「F_a_U」+「F_b_L」<ΔS<ΔL−α …(D)
ただし、α=「F_L_L」と「F_H_L」のうち大きい方
【0031】
第1の周波数差Δ1と第2の周波数差Δ2のうち大きい方をΔLとすると“|Δ1−Δ2|”=ΔL−ΔSとなるから、第1の条件を示す式(A)と第3の条件を示す式(C)とを纏めると、式(E)で表すことができる。
「F_a_U」+「F_b_L」<ΔS<ΔL−β …(E)
β=「F_L_H」と「F_H_H」のうち大きい方
【0032】
使用される搬送周波数が4つ以上のときは、第1の観点として、そのうちの隣接する3つの搬送周波数の組合せの何れについても、第1の条件が満たされるとともに、第1の周波数差Δ1の方が第2の周波数差Δ2よりも小さいときには第2の条件が満たされ、第1の周波数差Δ1の方が第2の周波数差Δ2よりも大きいときには第3の条件が満たされるようにする。
【0033】
使用される搬送周波数が4つ以上のときは、第2の観点として、そのうちの隣接する3つの搬送周波数の組合せの何れについても、以下の条件を満たすようにするとよい。
[第4の条件]
3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数に基づいて生成される相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数よりも低域側に生成される相互変調波は、最も低周波数の搬送周波数よりも低域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しない。
[第5の条件]
3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数に基づいて生成される相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数よりも高域側に生成される相互変調波は、最も高周波数の搬送周波数よりも高域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しない。
第4の条件と第5の条件は、使用される搬送周波数が4つ以上のときでも、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される相互変調歪成分の周波数は、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないということを規定している。
【0034】
好ましくは、送受信間の伝送特性が既知であるものとし、第1の通信部と第2の通信部の少なくとも一方に、設定値に基づいて、予め定められた信号処理を行なう信号処理部と、予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する設定値処理部とを備えるとよい。例えば、1つの筐体内の第1の通信部と第2の通信部の配置位置が変化しない場合(機器内通信の場合)や、第1の通信部と第2の通信部のそれぞれが各別の筐体内に配置される場合でも使用状態のときの第1の通信部と第2の通信部の配置位置が予め定められた状態となる場合(比較的近距離の機器間の無線伝送の場合)のように、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、第1の通信部と第2の通信部との間の伝送特性を予め知ることができる。
【0035】
送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。信号処理用の設定値を予め定められた値(つまり固定値)にすることでパラメータ設定を動的に変化させずに済むので、パラメータ演算回路を削減できるし、消費電力を削減することもできる。機器内や比較的近距離の機器間の無線伝送においては通信環境が固定されるため、通信環境に依存する各種回路パラメータを予め決定することができるし、伝送条件が固定である環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。例えば、工場出荷時に最適なパラメータを求めておき、そのパラメータを装置内部に保持しておくことで、パラメータ演算回路の削減や消費電力の削減を行なうことができる。
【0036】
信号処理のパラメータ設定としては種々のものがある。例えば、それぞれ異なる複数の搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合との関係では、変調用の搬送周波数や復調用の搬送周波数の設定がある。信号処理のパラメータ設定の他の例としては、信号増幅回路(振幅調整部)のゲイン設定(信号振幅設定)や位相調整量の設定や周波数特性の設定等もある。ゲイン設定は、送信電力設定や復調機能部に入力される受信レベル設定や自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)等に利用されるし、位相調整量の設定は、搬送信号やクロックを別送する系で送信信号の遅延量に合わせて位相を調整する場合に利用されるし、周波数特性の設定は、送信側で予め低域周波数成分や高域周波数成分の振幅を強調する場合に利用される。
【0037】
好ましくは、変調部と復調部の全てを1つの回路基板上に配置する。この場合、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境を作り易く、使用する搬送周波数を予め固定するのに都合がよい。
【0038】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合でも、各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にしてもよい。送信側の搬送周波数のみを制御することにより、適切な周波数割当てを行なうことができ、相互変調歪の影響を確実に受けないように、最適に制御することができる。
【0039】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合でも、各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にしてもよい。受信側の搬送周波数のみを制御することにより、適切な周波数割当てを行なうことができ、相互変調歪の影響を確実に受けないように、最適に制御することができる。
【0040】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合でも、各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替えるとともに、各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にしてもよい。送信側の搬送周波数のみや受信側の搬送周波数のみを制御する構成よりも、柔軟な制御を行なうことができる。
【0041】
変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合には、好ましくは、各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にするとよい。送信側の搬送周波数のみを制御することにより、適切な周波数割当てを行なうことができ、相互変調歪の影響を確実に受けないように、最適に制御することができる。
【0042】
変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合の他の形態として、好ましくは、各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にするとよい。受信側の搬送周波数のみを制御することにより、適切な周波数割当てを行なうことができ、相互変調歪の影響を確実に受けないように、最適に制御することができる。
【0043】
変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合の他の形態として、好ましくは、各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替えるとともに、各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備える構成にするとよい。送信側の搬送周波数のみや受信側の搬送周波数のみを制御する構成よりも、柔軟な制御を行なうことができる。
【0044】
搬送周波数を切り替えるための制御部を備える構成にする場合、搬送周波数を切り替えるための制御信号を有線で変調部或いは復調部に伝送する形態とすることができる。この形態は、変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合でも適用し得るが、特に、変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合に適用すると都合がよい。変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合に有線伝送にするには、いわゆるワイヤーハーネスが必要になるのに対して、変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合は、プリント配線で済むからである。
【0045】
搬送周波数を切り替えるための制御部を備える構成にする場合、搬送周波数を切り替えるための制御信号を無線で変調部或いは復調部に伝送する形態とすることもできる。この形態は、特に、変調部と復調部が複数の回路基板に散在している場合に適用すると都合がよい。物理的に離れた基板間伝送の場合でも、ワイヤーハーネスを使用せずに、周波数割当て用の制御信号を各通信装置に伝送できるからである。尚、この形態は、変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている場合でも適用し得るが、この場合は、プリント配線を利用した有線伝送を適用した方が、無線伝送化する回路構成が不要な分、コストや回路規模や消費電力の面で利点がある。
【0046】
搬送周波数を切り替えるための制御信号を無線で変調部或いは復調部に伝送する形態とする場合は、搬送周波数を切り替えるための制御信号の無線信号の使用帯域を、伝送対象信号の無線信号の使用帯域外にするとよい。この場合、制御情報の無線伝送が、伝送対象信号の無線伝送に障害を与えないことを、確実に保証することができる。
【0047】
搬送周波数を切り替えるための制御信号を無線で変調部或いは復調部に伝送する形態とする場合において、搬搬送周波数を切り替えるための制御信号の無線信号の使用帯域を伝送対象信号の無線信号の使用帯域にする場合、制御信号の無線信号の搬送周波数についても、受信回路における相互変調歪による受信性能の劣化の影響を回避することができるように、各搬送周波数を設定するとよい。
【0048】
搬送周波数を切り替えるための制御信号を無線で変調部或いは復調部に伝送する形態とする場合において、搬搬送周波数を切り替えるための制御信号の無線信号の使用帯域を伝送対象信号の無線信号の使用帯域にする場合、搬送周波数を切り替えるための制御信号の搬送周波数と伝送対象信号の搬送周波数とに同じ周波数を使用するとよい。この場合、変調部と復調部の対を、通常の被変調信号の伝送用と制御信号の伝送用とに兼用することができる。制御信号の伝送用に送受信の対を別途設けなくても済むので、低コストで小サイズで低消費電力の構成にすることができる。
【0049】
[電子機器]
本発明の第2の態様や本発明の第3の態様と対応する本実施形態の電子機器においては、各部がひとつの筐体内に収容された状態の装置構成で1つの電子機器とすることもできるし、複数の装置(電子機器)の組合せで1つの電子機器の全体が構成されることもある。本実施形態の信号伝送装置は、例えば、デジタル記録再生装置、地上波テレビ受像装置、携帯電話装置、ゲーム装置、コンピュータ等の電子機器において使用される。
【0050】
以下で説明する本実施形態の信号伝送装置や電子機器では、ミリ波帯(波長が1〜10ミリメートル)の搬送周波数を主に使用するものとして説明するが、ミリ波帯に限らず、より波長の短い例えばサブミリ波帯(波長が0.1〜1ミリメートル)やより波長の長いセンチ波帯(波長が1〜10センチメートル)等、ミリ波帯近傍の搬送周波数を使用する場合にも適用可能である。例えば、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合に、使用する搬送周波数の数(バンド数)が多くなりミリ波帯だけでは要求される通信帯域を確保できないときには、サブミリ波帯〜ミリ波帯、ミリ波帯〜センチ波帯、あるいはサブミリ波帯〜ミリ波帯〜センチ波帯を使用する。
【0051】
通信装置を構成する場合、送信側(つまり第1の通信部)単独の場合と、受信側(つまり第1の通信部)単独の場合と、送信側と受信側の双方を有する場合とがある。送信側と受信側は無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)を介して結合されミリ波帯で信号伝送を行なうように構成される。伝送対象の信号を広帯域伝送に適したミリ波帯域に周波数変換して伝送する。ただし、如何なる場合でも、第1の通信部と第2の通信部の組(対)で、信号伝送装置を構成する。特に、本実施形態の場合、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なうので、第1の通信部と第2の通信部の組(対)数が1つであるのか複数であるのかを問わず、変調部と復調部の組(対)を複数設ける。
【0052】
そして、比較的近距離に配置された第1の通信部と第2の通信部の間では、伝送対象の信号をミリ波信号に変換してから、このミリ波信号をミリ波信号伝送路を介して伝送する。本実施形態の「無線伝送」とは、伝送対象の信号を一般的な電気配線(単純なワイヤー配線)ではなく無線(電波:この例ではミリ波)で伝送することを意味する。
【0053】
「比較的近距離」とは、放送や一般的な無線通信で使用される野外(屋外)での通信装置間の距離に比べて距離が短いことを意味し、伝送範囲が閉じられた空間として実質的に特定できる程度のものであればよい。「閉じられた空間」とは、その空間内部から外部への電波の漏れが少なく、逆に、外部から空間内部への電波の到来(侵入)が少ない状態の空間を意味し、典型的にはその空間全体が電波に対して遮蔽効果を持つ筐体(ケース)で囲まれた状態である。例えば、1つの電子機器の筐体内での基板間通信や同一基板上でのチップ間通信や、一方の電子機器に他方の電子機器が装着された状態のように複数の電子機器が一体となった状態での機器間の通信が該当する。「一体」は、装着によって両電子機器が完全に接触した状態が典型例であるが、両電子機器間の伝送範囲が閉じられた空間として実質的に特定できる程度のものであればよい。例えば数センチ以内あるいは10数センチ以内等、比較的近距離で、両電子機器が多少離れた状態で定められた位置に配置されていて「実質的に」一体と見なせる場合も含む。要するに、両電子機器で構成される電波が伝搬し得る空間内部から外部への電波の漏れが少なく、逆に、外部からその空間内部への電波の到来(侵入)が少ない状態であればよい。
【0054】
以下では、1つの電子機器の筐体内での信号伝送を筐体内信号伝送と称し、複数の電子機器が一体(以下、「実質的に一体」も含む)となった状態での信号伝送を機器間信号伝送と称する。筐体内信号伝送の場合は、送信側の通信装置(通信部:送信部)と受信側の通信装置(通信部:受信部)が同一筐体内に収容され、通信部(送信部と受信部)間に無線信号伝送路が形成された信号伝送装置が電子機器そのものとなり得る。一方、機器間信号伝送の場合、送信側の通信装置(通信部:送信部)と受信側の通信装置(通信部:受信部)がそれぞれ異なる電子機器の筐体内に収容され、両電子機器が定められた位置に配置され一体となったときに両電子機器内の通信部(送信部と受信部)間に無線信号伝送路が形成されて信号伝送装置が構築される。
【0055】
ミリ波信号伝送路を挟んで設けられる各通信装置においては、送信系統と受信系統が対となって組み合わされて配置される。各通信装置に送信系統と受信系統を併存させることで双方向通信ができる。各通信装置に送信系統と受信系統を併存させる場合、一方の通信装置と他方の通信装置との間の信号伝送は片方向(一方向)のものでもよいし双方向のものでもよい。例えば、第1の通信装置が送信側となり第2の通信装置が受信側となる場合には、第1の通信装置に送信機能をなす第1の通信部が配置され第2の通信装置に受信機能をなす第2の通信部が配置される。第2の通信装置が送信側となり第1の通信装置が受信側となる場合には、第2の通信装置に送信機能をなす第1の通信部が配置され第1の通信装置に受信機能をなす第2の通信部が配置される。
【0056】
第1の通信部は、例えば、伝送対象の信号を信号処理してミリ波帯の電気信号を生成する送信側の信号生成部(伝送対象の電気信号をミリ波帯の電気信号に変換する信号変換部)と、ミリ波帯の無線信号を伝送する無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)に送信側の信号生成部で生成されたミリ波帯の電気信号を結合させる送信側の信号結合部を送信部に備えるものとする。好ましくは、送信側の信号生成部は、伝送対象の信号を生成する機能部と一体であるのがよい。
【0057】
例えば、送信側の信号生成部は変調回路(変調部)を有し、変調回路が伝送対象の信号(ベースバンド信号)を変調する。送信側の信号生成部は変調回路によって変調された後の信号を周波数変換してミリ波帯の電気信号を生成する。原理的には、伝送対象の信号をダイレクトにミリ波帯の電気信号に変換してもよい。送信側の信号結合部は、送信側の信号生成部によって生成されたミリ波帯の電気信号を無線信号(電磁波、電波)に変換して無線信号伝送路としてのミリ波信号伝送路に供給する。
【0058】
第2の通信部は例えば、無線信号伝送路としてのミリ波信号伝送路を介して伝送されてきたミリ波帯の無線信号を受信し電気信号に変換する受信側の信号結合部を受信部に備えるとともに、受信側の信号結合部により受信され電気信号に変換されたミリ波帯の電気信号(入力信号)を信号処理して通常の電気信号(伝送対象の信号、ベースバンド信号)を生成(復元、再生)する受信側の信号生成部(ミリ波の信号を伝送対象の電気信号に変換する信号変換部)を備えるものとする。好ましくは、受信側の信号生成部は、伝送対象の信号を受け取る機能部と一体であるのがよい。例えば、受信側の信号生成部は復調回路(復調部)を有し、ミリ波帯の電気信号を周波数変換して出力信号を生成し、その後、復調回路が出力信号を復調することで伝送対象の信号を生成する。原理的には、ミリ波帯の電気信号からダイレクトに伝送対象の信号に変換してもよい。
【0059】
つまり、信号インタフェースをとるに当たり、伝送対象の信号に関して、無線信号により接点レスやケーブルレスで伝送する(電気配線での伝送でない)。好ましくは、少なくとも信号伝送(特に高速伝送や大容量伝送が要求される映像信号や高速のクロック信号等)に関しては、ミリ波帯等の無線信号により伝送する。要するに、従前は電気配線によって行なわれていた信号伝送を本実施例では無線信号(電波)により行なう。ミリ波帯等の無線信号で信号伝送を行なうことで、ギガビット毎秒〔Gbps〕オーダーの高速信号伝送を実現することができるし、無線信号の及ぶ範囲を容易に制限でき、この性質に起因する効果も得られる。
【0060】
ここで、各信号結合部は、第1の通信部と第2の通信部が無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)を介して無線信号(ここではミリ波帯の無線信号)が伝送可能となるようにするものであればよい。例えばアンテナ構造(アンテナ結合部)を備えるものとしてもよいし、アンテナ構造を具備せずに結合をとるものでもよい。「ミリ波の信号を伝送するミリ波信号伝送路」等の無線信号伝送路は、空気(いわゆる自由空間)であってもよいが、好ましくは、無線信号(電磁波、電波)を伝送路中に閉じ込めつつ無線信号を伝送させる構造(無線信号閉込め構造、例えばミリ波閉込め構造)を持つものがよい。無線信号閉込め構造を積極的に利用することで、例えば電気配線のように無線信号伝送路の引回しを任意に確定することができる。このような無線信号閉込め構造のものとしては、例えば、典型的にはいわゆる導波管が該当するが、これに限らない。例えば、無線信号を伝送可能な誘電体素材で構成されたもの(誘電体伝送路や無線信号誘電体内伝送路と称する)や、伝送路を構成し、かつ、無線信号の外部放射を抑える遮蔽材が伝送路を囲むように設けられその遮蔽材の内部が中空の中空導波路がよい。誘電体素材や遮蔽材に柔軟性を持たせることで無線信号伝送路の引回しが可能となる。空気(いわゆる自由空間)の場合、各信号結合部はアンテナ構造をとることになり、そのアンテナ構造によって近距離の空間中を信号伝送することになる。一方、誘電体素材で構成されたものとする場合は、アンテナ構造をとることもできるが、そのことは必須でない。
【0061】
[電気配線による信号伝送と無線伝送との対比]
電気配線を介して信号伝送を行なう信号伝送では、次のような問題がある。
i)伝送データの大容量・高速化が求められるが、電気配線の伝送速度・伝送容量には限界がある。
ii)伝送データの高速化の問題に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落とす手法がある。しかしながら、この手法では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化、コネクタ部や電気的インタフェースの物理サイズの増大等が求められ、それらの形状が複雑化し、これらの信頼性が低下し、コストが増大する等の問題が起こる。
iii)映画映像やコンピュータ画像等の情報量の膨大化に伴い、ベースバンド信号の帯域が広くなるに従って、EMC(電磁環境適合性)の問題がより顕在化してくる。例えば、電気配線を用いた場合は、配線がアンテナとなって、アンテナの同調周波数に対応した信号が干渉される。又、配線のインピーダンスの不整合等による反射や共振によるものも不要輻射の原因となる。このような問題を対策するために、電子機器の構成が複雑化する。
iv)EMCの他に、反射があると受信側でシンボル間での干渉による伝送エラーや妨害の飛び込みによる伝送エラーも問題となってくる。
【0062】
これに対して、電気配線ではなく無線(例えばミリ波帯を使用)で信号伝送を行なう場合、配線形状やコネクタの位置を気にする必要がないため、レイアウトに対する制限があまり発生しない。ミリ波による信号伝送に置き換えた信号については配線や端子を割愛できるので、EMCの問題から解消される。一般に、通信装置内部で他にミリ波帯の周波数を使用している機能部は存在しないため、EMCの対策が容易に実現できる。送信側の通信装置と受信側の通信装置を近接した状態での無線伝送となり、固定位置間や既知の位置関係の信号伝送であるため、次のような利点が得られる。
1)送信側と受信側の間の伝搬チャネル(導波構造)を適正に設計することが容易である。
2)送信側と受信側を封止する伝送路結合部の誘電体構造と伝搬チャネル(ミリ波信号伝送路の導波構造)を併せて設計することで、自由空間伝送より、信頼性の高い良好な伝送が可能になる。
3)無線伝送を管理するコントローラの制御も一般の無線通信のように動的にアダプティブに頻繁に行なう必要はないため、制御によるオーバーヘッドを一般の無線通信に比べて小さくすることができる。その結果、制御回路や演算回路等で使用する設定値 (いわゆるパラメータ)を定数(いわゆる固定値)にすることができ、小型、低消費電力、高速化が可能になる。例えば、製造時や設計時に無線伝送特性を校正し、個体のばらつき等を把握すれば、そのデータを参照できるので、信号処理部の動作を規定する設定値は、プリセットや静的な制御にできる。その設定値は信号処理部の動作を概ね適正に規定するから、簡易な構成かつ低消費電力でありながら、高品位の通信が可能になる。
【0063】
又、波長の短いミリ波帯での無線通信にすることで、次のような利点が得られる。
a)ミリ波通信は通信帯域を広く取れるため、データレートを大きくとることが簡単にできる。
b)伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数から離すことができ、ミリ波とベースバンド信号の周波数の干渉が起こり難い。
c)ミリ波帯は波長が短いため、波長に応じてきまるアンテナや導波構造を小さくできる。加えて、距離減衰が大きく回折も少ないため電磁シールドが行ない易い。
d)通常の野外での無線通信では、搬送波の安定度については、干渉等を防ぐため、厳しい規制がある。そのような安定度の高い搬送波を実現するためには、高い安定度の外部周波数基準部品と逓倍回路やPLL(位相同期ループ回路)等が用いられ、回路規模が大きくなる。しかしながら、ミリ波は(特に固定位置間や既知の位置関係の信号伝送との併用時は)、容易に遮蔽でき、外部に漏れないようにできる。安定度を緩めた搬送波で伝送された信号を受信側で小さい回路で復調するのには、注入同期方式を採用するのが好適である。
【0064】
例えば、比較的近距離(例えば10数センチ以内)に配置されている電子機器間や電子機器内での高速信号伝送を実現する手法として、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)が知られている。しかしながら、最近のさらなる伝送データの大容量高速化に伴い、消費電力の増加、反射等による信号歪みの影響の増加、不要輻射の増加(いわゆるEMIの問題)、等が問題となる。例えば、映像信号(撮像信号を含む)やコンピュータ画像等の信号を機器内や機器間で高速(リアルタイム)に伝送する場合にLVDSでは限界に達してきている。
【0065】
データの高速伝送に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落としてもよい。しかしながら、この対処では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化や半導体チップサイズの拡大等が求められる。また、高速・大容量のデータを配線で引き回すことでいわゆる電磁界障害が問題となる。
【0066】
LVDSや配線数を増やす手法における問題は何れも、電気配線により信号を伝送することに起因している。そこで、電気配線により信号を伝送することに起因する問題を解決する手法として、電気配線を無線化して伝送する手法(特に電波で信号伝送を行なう手法)を採ってもよい。電気配線を無線化して伝送する手法としては例えば、筐体内の信号伝送を無線で行なうとともに、UWB(Ultra Wide Band )通信方式を適用してもよいし(第1の手法と記す)、波長の短い(1〜10ミリメートル)ミリ波帯の搬送周波数を使用してもよい(第2の手法と記す)。しかしながら、第1の手法のUWB通信方式では、搬送周波数が低く、例えば映像信号を伝送するような高速通信に向かないし、アンテナが大きくなる等、サイズ上の問題がある。さらに、伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数に近いため、無線信号とベースバンド信号との間で干渉が起こり易いという問題点もある。また、搬送周波数が低い場合は、機器内の駆動系ノイズの影響を受け易く、その対処が必要になる。これに対して、第2の手法のように、より波長の短いミリ波帯の搬送周波数を使用すると、アンテナサイズや干渉の問題を解決し得る。
【0067】
ここでは、ミリ波帯で無線通信を行なう場合で説明したが、その適用範囲はミリ波帯で通信を行なうものに限定されない。ミリ波帯を下回る周波数帯(センチ波帯)や、逆にミリ波帯を超える周波数帯(サブミリ波帯)での通信を適用してもよい。ただし、筐体内信号伝送や機器間信号伝送においては、過度に波長が長くも短くもないミリ波帯を主に使用するのが効果的である。
【0068】
以下、本実施例の信号伝送装置や電子機器について具体的に説明する。なお、最も好適な例として、多くの機能部が半導体集積回路(チップ、例えばCMOSのIC)に形成されている例で説明するが、このことは必須でない。
【0069】
<通信処理系統:基本>
図1は、本実施形態の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する基本構成である。
【0070】
[機能構成]
図1に示すように、信号伝送装置1は、第1の無線機器の一例である第1通信装置100と第2の無線機器の一例である第2通信装置200が無線信号伝送路9を介して結合されミリ波帯を主とする無線信号を利用して信号伝送を行なうように構成されている。図では、第1通信装置100側に送信系統を設け、第2通信装置200に受信系統を設けた場合で示している。
【0071】
第1通信装置100にはミリ波帯送信に対応した半導体チップ103が設けられ、第2通信装置200にはミリ波帯受信に対応した半導体チップ203が設けられている。
【0072】
本実施例では、ミリ波帯での通信の対象となる信号を、高速性や大容量性が求められる信号のみとし、その他の低速・小容量で十分なものや電源等直流と見なせる信号に関してはミリ波信号への変換対象としない。これらミリ波信号への変換対象としない信号(電源を含む)については、従前と同様の手法で基板間の信号の接続をとるようにする。ミリ波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。
【0073】
[第1通信装置]
第1通信装置100は、基板102上に、ミリ波帯送信に対応した半導体チップ103と伝送路結合部108が搭載されている。半導体チップ103は、LSI機能部104と信号生成部107(ミリ波信号生成部)を一体化したLSI(Large Scale Integrated Circuit)である。半導体チップ103は伝送路結合部108と接続される。伝送路結合部108は、電気信号を無線信号に変換して無線信号伝送路9に送信する送信部の一例であり、例えば、アンテナ結合部やアンテナ端子やマイクロストリップ線路やアンテナ等を具備するアンテナ構造が適用される。伝送路結合部108と無線信号伝送路9との結合箇所が送信箇所である。
【0074】
LSI機能部104は、第1通信装置100の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方に送信したい各種の信号を処理する回路が含まれる。
【0075】
信号生成部107(電気信号変換部)は、LSI機能部104からの信号をミリ波信号に変換し、無線信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。送信側信号生成部110と伝送路結合部108で送信系統(送信部:送信側の通信部)が構成される。
【0076】
送信側信号生成部110は、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成するために、多重化処理部113、パラレルシリアル変換部114、変調部115、周波数変換部116、増幅部117を有する。増幅部117は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。なお、変調部115と周波数変換部116は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
【0077】
多重化処理部113は、LSI機能部104からの信号の内で、ミリ波帯での通信の対象となる信号が複数種(N1とする)ある場合に、時分割多重、周波数分割多重、符号分割多重等の多重化処理を行なうことで、複数種の信号を1系統の信号に纏める。例えば、高速性や大容量性が求められる複数種の信号をミリ波での伝送の対象として、1系統の信号に纏める。
【0078】
パラレルシリアル変換部114は、パラレルの信号をシリアルのデータ信号に変換して変調部115に供給する。変調部115は、伝送対象信号を変調して周波数変換部116に供給する。パラレルシリアル変換部114は、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられ、シリアルインタフェース仕様の場合は不要である。
【0079】
変調部115としては、基本的には、振幅・周波数・位相の少なくとも1つを伝送対象信号で変調するものであればよく、これらの任意の組合せの方式も採用し得る。例えば、アナログ変調方式であれば、例えば、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)とベクトル変調がある。ベクトル変調として、周波数変調(FM:Frequency Modulation)と位相変調(PM:Phase Modulation)がある。デジタル変調方式であれば、例えば、振幅遷移変調(ASK:Amplitude shift keying)、周波数遷移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、位相遷移変調(PSK:Phase Shift Keying)、振幅と位相を変調する振幅位相変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)がある。振幅位相変調としては直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が代表的である。
【0080】
周波数変換部116は、変調部115によって変調された後の伝送対象信号を周波数変換してミリ波の電気信号を生成して増幅部117に供給する。ミリ波の電気信号とは、概ね30〜300ギガヘルツ〔GHz〕の範囲のある周波数の電気信号をいう。「概ね」と称したのはミリ波通信による効果が得られる程度の周波数であればよく、下限は30ギガヘルツに限定されず、上限は300ギガヘルツに限定されないことに基づく。
【0081】
周波数変換部116としては様々な回路構成を採り得るが、例えば、周波数混合回路(ミキサー回路)と局部発振回路とを備えた構成を採用すればよい。局部発振回路は、変調に用いる搬送波(キャリア信号、基準搬送波)を生成する。周波数混合回路は、パラレルシリアル変換部114からの信号で局部発振回路が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の伝送信号を生成して増幅部117に供給する。
【0082】
増幅部117は、周波数変換後のミリ波の電気信号を増幅して伝送路結合部108に供給する。増幅部117には図示しないアンテナ端子を介して双方向の伝送路結合部108に接続される。
【0083】
伝送路結合部108は、送信側信号生成部110によって生成されたミリ波の信号を無線信号伝送路9に送信する。伝送路結合部108は、アンテナ結合部で構成される。アンテナ結合部は伝送路結合部108(信号結合部)の一例やその一部を構成する。アンテナ結合部とは、狭義的には半導体チップ内の電子回路と、チップ内又はチップ外に配置されるアンテナを結合する部分をいい、広義的には、半導体チップと無線信号伝送路9を信号結合する部分をいう。例えば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、無線信号伝送路9との結合部における構造をいい、ミリ波帯の電気信号を電磁波(電波)に変換して無線信号伝送路9に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。
【0084】
無線信号伝送路9は、自由空間伝送路として、例えば筐体内の空間を伝搬する構成にしてもよい。又、好ましくは、導波管、伝送線路、誘電体線路、誘電体内等の導波構造で構成し、ミリ波帯域の電磁波を伝送路に閉じ込める構成にして、効率よく伝送させる特性を有するものとするのが望ましい。例えば、一定範囲の比誘電率と一定範囲の誘電正接を持つ誘電体素材を含んで構成された誘電体伝送路9Aにするとよい。例えば、筐体内の全体に誘電体素材を充填することで、伝送路結合部108と伝送路結合部208の間には、自由空間伝送路ではなく誘電体伝送路9Aが配される。又、伝送路結合部108のアンテナと伝送路結合部208のアンテナの間を誘電体素材で構成されたある線径を持つ線状部材である誘電体線路で接続することで誘電体伝送路9Aを構成してもよい。なお、ミリ波信号を伝送路に閉じ込める構成の無線信号伝送路9としては、誘電体伝送路9Aの他に、伝送路の周囲が遮蔽材で囲まれその内部が中空の中空導波路としてもよい。
【0085】
[第2通信装置]
第2通信装置200は、基板202上に、ミリ波帯受信に対応した半導体チップ203と伝送路結合部208が搭載されている。半導体チップ203は、LSI機能部204と信号生成部207(ミリ波信号生成部)を一体化したLSIである。図示しないが、第1通信装置100と同様に、LSI機能部204と信号生成部207を一体化しない構成にしてもよい。
【0086】
半導体チップ203は伝送路結合部108と同様の伝送路結合部208と接続される。伝送路結合部208は、無線信号伝送路9を介して伝送された無線信号を電気信号に変換する受信部の一例であり、伝送路結合部108と同様のものが採用され、無線信号伝送路9からミリ波帯の無線信号を受信し電気信号に変換して受信側信号生成部220に出力する。伝送路結合部208と無線信号伝送路9との結合箇所が受信箇所である。
【0087】
信号生成部207(電気信号変換部)は、無線信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。受信側信号生成部220と伝送路結合部208で受信系統(受信部:受信側の通信部)が構成される。
【0088】
受信側信号生成部220は、伝送路結合部208によって受信したミリ波の電気信号を信号処理して出力信号を生成するために、増幅部224、周波数変換部225、復調部226、シリアルパラレル変換部227、単一化処理部228を有する。増幅部224は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。周波数変換部225と復調部226は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
【0089】
伝送路結合部208には受信側信号生成部220が接続される。受信側の増幅部224は、伝送路結合部208に接続され、アンテナによって受信された後のミリ波の電気信号を増幅して周波数変換部225に供給する。周波数変換部225は、増幅後のミリ波の電気信号を周波数変換して周波数変換後の信号を復調部226に供給する。復調部226は、周波数変換後の信号を復調してベースバンドの信号を取得しシリアルパラレル変換部227に供給する。
【0090】
シリアルパラレル変換部227は、シリアルの受信データをパラレルの出力データに変換して単一化処理部228に供給する。シリアルパラレル変換部227は、パラレルシリアル変換部114と同様に、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられる。第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がシリアル形式の場合は、パラレルシリアル変換部114とリアルパラレル変換部227を設けなくてもよい。
【0091】
第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がパラレル形式の場合には、入力信号をパラレルシリアル変換して半導体チップ203側へ伝送し、又半導体チップ203側からの受信信号をシリアルパラレル変換することにより、ミリ波変換対象の信号数が削減される。
【0092】
単一化処理部228は、多重化処理部113と対応するもので、1系統に纏められている信号を複数種の信号_@(@は1〜N)に分離する。例えば、1系統の信号に纏められている複数本のデータ信号を各別に分離してLSI機能部204に供給する。
【0093】
LSI機能部204は、第2通信装置200の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。
【0094】
[双方向通信への対応]
信号生成部107と伝送路結合部108や信号生成部207と伝送路結合部208はデータの双方向性を持つ構成にすることで、双方向通信にも対応できる。例えば、信号生成部107や信号生成部207には、それぞれ受信側の信号生成部、送信側の信号生成部を設ける。伝送路結合部108や伝送路結合部208は、送信側と受信側に各別に設けてもよいが、送受信に兼用されるものとすることもできる。
【0095】
なお、ここで示す「双方向通信」は、ミリ波の伝送チャネルである無線信号伝送路9が1系統(一芯)の一芯双方向伝送となる。この実現には、時分割多重(TDD:Time Division Duplex)を適用する半二重方式と、周波数分割多重(FDD:Frequency Division Duplex)等を適用することが考えられるが、本実施形態では周波数分割多重を採用する。
【0096】
[接続と動作]
入力信号を周波数変換して信号伝送するという手法は、放送や無線通信で一般的に用いられている。これらの用途では、どこまで通信できるか(熱雑音に対してのS/Nの問題)、反射やマルチパスにどう対応するか、妨害や他チャンネルとの干渉をどう抑えるか等の問題に対応できるような比較的複雑な送信器や受信器等が用いられている。
【0097】
これに対して、本実施形態で使用する信号生成部107と信号生成部207は、放送や無線通信で一般的に用いられる複雑な送信器や受信器等の使用周波数に比べて、より高い周波数帯のミリ波帯を主に使用するので、波長λが短いため、周波数の再利用がし易く、近傍に配置された多くのデバイス間での通信をするのに適したものが使用される。
【0098】
本実施形態では、従来の電気配線を利用した信号インタフェースとは異なり、前述のようにミリ波帯で信号伝送を行なうことで高速性と大容量に柔軟に対応できるようにしている。例えば、高速性や大容量性が求められる信号のみをミリ波帯での通信の対象としており、装置構成によっては、第1通信装置100と第2通信装置200は、低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の電気配線によるインタフェース(端子・コネクタによる接続)を一部に備えることになる。
【0099】
信号生成部107は、予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、LSI機能部104から入力された入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。信号生成部107は、例えば、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路で伝送路結合部108に接続され、生成されたミリ波の信号が伝送路結合部108を介して無線信号伝送路9に電磁波(電波、無線信号)となって供給される。
【0100】
伝送路結合部108は、アンテナ構造を有し、伝送されたミリ波の信号を電磁波に変換し、電磁波を送出する機能を有する。伝送路結合部108は無線信号伝送路9と結合されており、無線信号伝送路9の一方の端部に伝送路結合部108で変換された電磁波が供給される。無線信号伝送路9の他端には第2通信装置200側の伝送路結合部208が結合されている。無線信号伝送路9を第1通信装置100側の伝送路結合部108と第2通信装置200側の伝送路結合部208の間に設けることにより、無線信号伝送路9にはミリ波帯を主とする電磁波が伝搬する。
【0101】
無線信号伝送路9には第2通信装置200側の伝送路結合部208が結合されている。伝送路結合部208は、無線信号伝送路9の他端に伝送された電磁波を受信し、ミリ波の信号に変換して信号生成部207(ベースバンド信号生成部)に供給する。信号生成部207は、予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、変換されたミリ波の信号を信号処理して出力信号(ベースバンド信号)を生成しLSI機能部204へ供給する。
【0102】
ここまでは第1通信装置100から第2通信装置200への信号伝送の場合で説明したが、第1通信装置100と第2通信装置200をともに双方向通信へ対応した構成にすることで、第2通信装置200のLSI機能部204からの信号を第1通信装置100へ伝送する場合も同様に考えればよく双方向にミリ波の信号を伝送できる。
【0103】
次に、同一通信エリアで、変調回路と復調回路との組を複数設けて、変調回路と復調回路との組のそれぞれで、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合に、回路部材の追加や変更を行なわずに、搬送周波数の配置の側面から対処する本実施形態の手法について説明する。
【0104】
<3バンドの周波数配置>
図2及び図3は、それぞれ周波数の異なる3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3を使用する場合(3バンドと称する)の周波数配置の決定方法を説明する図である。ここで、図2は、3バンドの周波数配置の第1例を示し、図3は、3バンドの周波数配置の第2例を示す。
【0105】
説明の都合上、周波数の高低をF_1<F_2<F_3とする。即ち、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_1であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_2であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_3である。
【0106】
搬送周波数F_1と搬送周波数F_2の周波数差(=F_2−F_1)をD12、搬送周波数F_2と搬送周波数F_3の周波数差(=F_3−F_2)をD23とする。即ち、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_1)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_2)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD12であり、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_3)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_2)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD23である。
【0107】
搬送周波数F_1に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw1とし、全受信帯域幅Bw1のうち、低域側の受信帯域幅をBw1_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw1_Hとする。搬送周波数F_2に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw2とし、全受信帯域幅Bw2のうち、低域側の受信帯域幅をBw2_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw2_Hとする。搬送周波数F_3に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw3とし、全受信帯域幅Bw3のうち、低域側の受信帯域幅をBw3_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw3_Hとする。
【0108】
搬送周波数F_1に基づく変調信号と搬送周波数F_2に基づく変調信号との帯域間隔をH12とし、搬送周波数F_2に基づく変調信号と搬送周波数F_3に基づく変調信号との帯域間隔をH23とする。式的には、帯域間隔H12は“D12−Bw1_H−Bw2_L”となり、帯域間隔H23は“D23−Bw2_H−Bw3_L”となる。
【0109】
搬送周波数F_1と搬送周波数F_2とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_1−F_2)をIM12とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_2−F_1)をIM21とする。搬送周波数F_2と搬送周波数F_3とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_2−F_3)をIM23とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_3−F_2)をIM32とする。
【0110】
[第1例]
第1例はD12<D23の場合であり、この場合における3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3と3次の相互変調歪周波数IM12、IM21、IM23、IM32の関係が図2に示されている。
【0111】
この場合、第1の周波数差Δ1(=D12)と第2の周波数差Δ2(=D23)のうち小さい方ΔSは第1の周波数差Δ1(=D12)である。この小さい方ΔS(=D12)を規定する低域側の搬送周波数F_aは搬送周波数F_1であり、この搬送周波数F_a(=F_1)に基づく変調信号の高域側の受信帯域幅F_a_UはBw1_Hである。又、この小さい方ΔS(=D12)を規定する高域側の搬送周波数F_bは搬送周波数F_2であり、この搬送周波数F_b(=F_2)に基づく変調信号の低域側の受信帯域幅F_b_LはBw2_Lである。
【0112】
ここで、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件を求めると以下のようになる。
【0113】
各搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならないためには、式(1)(式(1−1)及び式(1−2))に示すように、搬送周波数F_1に基づく変調信号と搬送周波数F_2に基づく変調信号との帯域間隔H12が正の値になり、かつ、搬送周波数F_2に基づく変調信号と搬送周波数F_3に基づく変調信号との帯域間隔H23も正の値になることが必要となる(図2(A)を参照)。
【0114】
【数1】
【0115】
搬送周波数F_1と搬送周波数F_2とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分の歪周波数IM12は搬送周波数F_1よりも低域側に存在するので、妨害の問題は起きない(図2(B)を参照)。
【0116】
一方、搬送周波数F_1と搬送周波数F_2とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち高域成分の歪周波数IM21は搬送周波数F_2よりも高域側に存在するので、搬送周波数F_3に基づく変調信号との重なりによる妨害が起こり得る。これを防止するには、歪周波数IM21が、搬送周波数F_3に基づく変調信号の帯域内に発生しないようにすればよく、式(2)に示すように、歪周波数IM21と搬送周波数F_3に基づく変調信号の低域側の帯域との間隔H2が正の値になることが必要となる(図2(B)を参照)。
【0117】
【数2】
【0118】
搬送周波数F_2と搬送周波数F_3とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち高域成分の歪周波数IM32は搬送周波数F_3よりも高域側に存在するので、妨害の問題は起きない(図2(C)を参照)。
【0119】
一方、搬送周波数F_2と搬送周波数F_3とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分の歪周波数IM23は、搬送周波数F_1よりも低域側に存在し、搬送周波数F_1に基づく変調信号との重なりによる妨害が起こり得る。これを防止するには、歪周波数IM23が、搬送周波数F_1に基づく変調信号の帯域内に発生しないようにすればよく、式(3)に示すように、歪周波数IM23と搬送周波数F_1に基づく変調信号の低域側の帯域との間隔H3が正の値になることが必要となる(図2(C)を参照)。
【0120】
【数3】
【0121】
式(1)、式(2)、式(3)より、搬送周波数F_L(=F_1)と搬送周波数F_M(=F_2)との差として求められる第1の周波数差Δ1(=D12)は、式(4)で示す範囲に規定される。
【0122】
【数4】
【0123】
式(4)のうちの“Bw1_H+Bw2_L<D12”は前述の条件1と対応する。式(4)のうちの“D12<D23−(Bw1_LとBw3_Lのうち大きい方)”は“|D12−D23|>(Bw1_LとBw3_Lのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件2と対応する。
【0124】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置を、式(4)を満たすように定めることで、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0125】
尚、Bw1_L=Bw1_HのときはBw1_L=Bw1_H=Bw1/2であり、Bw2_L=Bw2_HのときはBw2_L=Bw2_H=Bw2/2であり、Bw3_L=Bw3_HのときはBw3_L=Bw3_H=Bw3/2であるから、式(1−1)は式(5−1)に変形でき、式(1−2)は式(5−2)に変形でき、式(2)は式(5−3)に変形でき、式(3)は式(5−4)に変形でき、式(4)は式(5−5)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3)であるとしたときには、式(5−5)は式(5−6)のように簡略化できる。
【0126】
【数5】
【0127】
[第2例]
第2例はD12>D23の場合であり、この場合における3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3と3次の相互変調歪周波数IM12、IM21、IM23、IM32の関係が図3に示されている。
【0128】
この場合、第1の周波数差Δ1(=D12)と第2の周波数差Δ2(=D23)のうち小さい方ΔSは第2の周波数差Δ2(=D23)である。この小さい方ΔS(=D23)を規定する低域側の搬送周波数F_aは搬送周波数F_2であり、この搬送周波数F_a(=F_2)に基づく変調信号の高域側の受信帯域幅F_a_UはBw2_Hである。又、この小さい方ΔS(=D23)を規定する高域側の搬送周波数F_bは搬送周波数F_3であり、この搬送周波数F_b(=F_3)に基づく変調信号の低域側の受信帯域幅F_b_LはBw3_Lである。
【0129】
ここで、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件を求めると以下のようになる。
【0130】
各搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならないためには、式(6)(式(6−1)及び式(6−2))に示すように、搬送周波数F_1に基づく変調信号と搬送周波数F_2に基づく変調信号との帯域間隔H12が正の値になり、かつ、搬送周波数F_2に基づく変調信号と搬送周波数F_3に基づく変調信号との帯域間隔H23も正の値になることが必要となる(図3(A)を参照)。
【0131】
【数6】
【0132】
搬送周波数F_1と搬送周波数F_2とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分の歪周波数IM12は搬送周波数F_1よりも低域側に存在するので、妨害の問題は起きない(図3(B)を参照)。
【0133】
一方、搬送周波数F_1と搬送周波数F_2とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち高域成分の歪周波数IM21は、搬送周波数F_3よりも高域側に存在し、搬送周波数F_3に基づく変調信号との重なりによる妨害が起こり得る。これを防止するには、歪周波数IM21が、搬送周波数F_3に基づく変調信号の帯域内に発生しないようにすればよく、式(7)に示すように、歪周波数IM21と搬送周波数F_3に基づく変調信号の高域側の帯域との間隔H5が正の値になることが必要となる(図3(B)を参照)。
【0134】
【数7】
【0135】
搬送周波数F_2と搬送周波数F_3とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち高域成分の歪周波数IM32は搬送周波数F_3よりも高域側に存在するので、妨害の問題は起きない(図3(C)を参照)。
【0136】
一方、搬送周波数F_2と搬送周波数F_3とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分の歪周波数IM23は、搬送周波数F_2よりも低域側に存在し、搬送周波数F_1に基づく変調信号との重なりによる妨害が起こり得る。これを防止するには、歪周波数IM23が、搬送周波数F_1に基づく変調信号の帯域内に発生しないようにすればよく、式(8)に示すように、歪周波数IM23と搬送周波数F_1に基づく変調信号の高域側の帯域との間隔H6が正の値になることが必要となる(図3(C)を参照)。
【0137】
【数8】
【0138】
式(6)、式(7)、式(8)より、搬送周波数F_H(=F_3)と搬送周波数F_M(=F_2)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D23)は、式(9)で示す範囲に規定される。
【0139】
【数9】
【0140】
式(9)のうちの“Bw2_H+Bw3_L<D23”は前述の条件1と対応する。式(9)のうちの“D23<D12−(Bw1_HとBw3_Hのうち大きい方)”は“|D12−D23|>(Bw1_HとBw3_Hのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件3と対応する。
【0141】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置を、式(9)を満たすように定めることで、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0142】
尚、Bw1_L=Bw1_HのときはBw1_L=Bw1_H=Bw1/2であり、Bw2_L=Bw2_HのときはBw2_L=Bw2_H=Bw2/2であり、Bw3_L=Bw3_HのときはBw3_L=Bw3_H=Bw3/2であるから、式(6−1)は式(10−1)に変形でき、式(6−2)は式(10−2)に変形でき、式(7)は式(10−3)に変形でき、式(8)は式(10−4)に変形でき、式(9)は式(10−5)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3)であるとしたときには、式(10−5)は式(10−6)のように簡略化できる。
【0143】
【数10】
【0144】
このように、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置を、式(4)あるいは式(9)を満たすように定めることで、N次(ここでは3次)の相互変調歪の影響を回避できる。そのため、例えば、高い選択度の帯域制限フィルタをが不要となり、低コストで小サイズの受信器を構成できるし、受信器の歪性能を緩和でき、小サイズで低消費電力の受信器を構成できる。
【0145】
<4バンドの周波数配置>
図4及び図5は、それぞれ周波数の異なる4つの搬送周波数を使用する場合(4バンドと称する)の周波数配置の決定方法を説明する図である。ここで、図4は、4バンドの周波数配置の第1例を示し、図5は、4バンドの周波数配置の第2例を示す。
【0146】
4つの搬送周波数について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件は、3バンド時に決定した周波数配置をベースに、より低域側あるいはより高域側に新たに追加した第4の搬送周波数を含む隣接する3つの搬送周波数について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用すればよい。以下具体的に説明する。
【0147】
[第1例]
第1例は、3バンドの周波数配置の第1例をベースに、より高域側に新たに第4の搬送周波数を追加する態様であり、第4の搬送周波数をF_4とし、周波数の高低がF_1<F_2<F_3<F_4となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0148】
3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_2であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_3であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_4である。
【0149】
搬送周波数F_3と搬送周波数F_4の周波数差(=F_4−F_3)をD34とする。3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_2)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_3)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD23であり、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_4)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_3)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD34である。
【0150】
搬送周波数F_4に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw4とし、全受信帯域幅Bw4のうち、低域側の受信帯域幅をBw4_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw4_Hとする。搬送周波数F_3に基づく変調信号と搬送周波数F_4に基づく変調信号との帯域間隔をH34とする。式的には、帯域間隔H34は“D34−Bw3_H−Bw4_L”となる。
【0151】
搬送周波数F_3と搬送周波数F_4とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_3−F_4)をIM34とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_4−F_3)をIM43とする。
【0152】
これらの場合、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置に関しては、D23>D34として、3バンドの周波数配置の第2例の決定方法を同様に適用すればよい。
【0153】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_H(=F_4)と搬送周波数F_M(=F_3)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D34)は、式(9)の変形として、式(11)で示す範囲に規定される。
【0154】
【数11】
【0155】
式(11)のうちの“Bw3_H+Bw4_L<D34”は前述の条件1と対応する。式(11)のうちの“D34<D23−(Bw2_HとBw4_Hのうち大きい方)”は“|D23−D34|>(Bw2_HとBw4_Hのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件3と対応する。
【0156】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定めるとともに、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定める。
【0157】
3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_2)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_3)に基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_2)よりも低域側に生成される3次相互変調波(歪周波数IM23)は、最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_2)よりも低域側の搬送周波数(=F_1)に基づく変調信号の帯域内には存在しない。つまり、第4の条件が満たされる。
【0158】
又、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_3)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_2)に基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_3)よりも高域側に生成される3次相互変調波(歪周波数IM32)は、最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_3)よりも高域側の搬送周波数(=F_4)に基づく変調信号の帯域内には存在しない。つまり、第5の条件が満たされる。
【0159】
これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0160】
尚、Bw4_L=B4_HのときはBw4_L=Bw4_H=Bw4/2であるから、式(11)は式(12−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4)であるとしたときには、式(12−1)は式(12−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34とすると、式(12−2)は式(12−3)のように変形できる。
【0161】
【数12】
【0162】
[第2例]
第2例は、3バンドの周波数配置の第2例をベースに、より低域側に新たに第4の搬送周波数を追加する態様であり、第4の搬送周波数をF_0とし、周波数の高低がF_0<F_1<F_2<F_3となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0163】
3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_0であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_1であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_2である。
【0164】
搬送周波数F_0と搬送周波数F_1の周波数差(=F_1−F_0)をD01とする。3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_0)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD01であり、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_2)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD12である。
【0165】
搬送周波数F_0に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw0とし、全受信帯域幅Bw0のうち、低域側の受信帯域幅をBw0_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw0_Hとする。搬送周波数F_0に基づく変調信号と搬送周波数F_1に基づく変調信号との帯域間隔をH01とする。式的には、帯域間隔H01は“D01−Bw0_H−Bw1_L”となる。
【0166】
搬送周波数F_0と搬送周波数F_1とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_0−F_1)をIM01とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_1−F_0)をIM10とする。
【0167】
これらの場合、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置に関しては、D01<D12として、3バンドの周波数配置の第1例の決定方法を同様に適用すればよい。
【0168】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_L(=F_0)と搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第1の周波数差Δ1(=D01)は、式(4)の変形として、式(13)で示す範囲に規定される。
【0169】
【数13】
【0170】
式(13)のうちの“Bw0_H+Bw1_L<D01”は前述の条件1と対応する。式(13)のうちの“D01<D12−(Bw0_LとBw2_Lのうち大きい方)”は“|D01−D12|>(Bw0_LとBw2_Lのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件2と対応する。
【0171】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(9)を満たすように定めるとともに、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置が式(13)を満たすように定める。
【0172】
3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_1)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_2)に基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_1)よりも低域側に生成される3次相互変調波(歪周波数IM12)は、最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_1)よりも低域側の搬送周波数(=F_0)に基づく変調信号の帯域内には存在しない。
【0173】
又、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_2)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_1)に基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_2)よりも高域側に生成される3次相互変調波(歪周波数IM21)は、最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_2)よりも高域側の搬送周波数(=F_3)に基づく変調信号の帯域内には存在しない。
【0174】
これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0175】
尚、Bw0_L=Bw0_HのときはBw0_L=Bw0_H=Bw0/2であるから、式(13)は式(14−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw0=Bw1=Bw2=Bw3)であるとしたときには、式(14−1)は式(14−2)のように簡略化できるし、さらにはD01=D23とすると、式(14−2)は式(14−3)のように変形できる。
【0176】
【数14】
【0177】
<5バンドの周波数配置>
図6及び図7は、それぞれ周波数の異なる5つの搬送周波数を使用する場合(5バンドと称する)の周波数配置の決定方法を説明する図である。ここで、図6は、5バンドの周波数配置の第1例を示し、図7は、5バンドの周波数配置の第2例を示す。
【0178】
5つの搬送周波数について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件は、4バンド時に決定した周波数配置をベースに、より低域側あるいはより高域側に新たに追加した第5の搬送周波数を含む隣接する3つの搬送周波数について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用すればよい。
【0179】
以下具体的に説明する。尚、周波数の大小関係の説明の便宜上、4バンドの周波数配置の第1例をベースとする変形例として説明する。
【0180】
[第1例]
第1例は、4バンドの周波数配置の第1例をベースに、より高域側に新たに第5の搬送周波数を追加する態様であり、第5の搬送周波数をF_5とし、周波数の高低がF_1<F_2<F_3<F_4<F_5となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0181】
尚、隣接していない搬送周波数、例えば搬送周波数F_1にとって搬送周波数F_3、F_4、F_5は、帯域として、それらのビートは搬送周波数F_1に基づく変調信号に妨害を与えないと考える。このことは第2例でも同様である。
【0182】
3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_3であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_4であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_5である。
【0183】
搬送周波数F_4と搬送周波数F_5の周波数差(=F_5−F_4)をD45とする。3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_3)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_4)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD34であり、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_5)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_4)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD45である。
【0184】
搬送周波数F_5に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw5とし、全受信帯域幅Bw5のうち、低域側の受信帯域幅をBw5_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw5_Hとする。搬送周波数F_4に基づく変調信号と搬送周波数F_5に基づく変調信号との帯域間隔をH45とする。式的には、帯域間隔H45は“D45−Bw4_H−Bw5_L”となる。
【0185】
搬送周波数F_4と搬送周波数F_5とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_4−F_5)をIM45とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_5−F_4)をIM54とする。
【0186】
これらの場合、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置に関しては、D34<D45として、3バンドの周波数配置の第1例の決定方法を同様に適用すればよい。
【0187】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_L(=F_3)と搬送周波数F_M(=F_4)との差として求められる第1の周波数差Δ1(=D34)は、式(4)の変形として、式(15)で示す範囲に規定される。
【0188】
【数15】
【0189】
式(15)のうちの“Bw3_H+Bw4_L<D34”は前述の条件1と対応する。式(5)のうちの“D34<D45−(Bw3_LとBw5_Lのうち大きい方)”は“|D34−D45|>(Bw3_LとBw5_Lのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件2と対応する。
【0190】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(15)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0191】
尚、式(15)は、式(11)と同様に、周波数差D34の範囲を規定するから、結果的には、周波数差D34は、式(11)と式(15)の両方を満たさなければならない。したがって、周波数差D34は、式(11)と式(15)を纏めて、式(16)で示す範囲に規定される。
【0192】
【数16】
【0193】
又、Bw5_L=B5_HのときはBw5_L=Bw5_H=Bw5/2であるから、式(15)は式(17−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4=Bw5)であるとしたときには、式(17−1)は式(17−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34、D23=D45とすると、式(17−2)は式(17−3)のように変形できる。
【0194】
【数17】
【0195】
[第2例]
第2例は、4バンドの周波数配置の第1例をベースに、より低域側に新たに第5の搬送周波数を追加する態様であり、第5の搬送周波数をF_0とし、周波数の高低がF_0<F_1<F_2<F_3<F_4となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0196】
3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_0であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_1であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_2である。
【0197】
周波数や周波数差は4バンドの周波数配置の第2例の決定方法で説明したものと同様であるが、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置に関しては、D01>D12として、3バンドの周波数配置の第2例の決定方法を同様に適用する。
【0198】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_H(=F_2)と搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D12)は、式(9)の変形として、式(18)で示す範囲に規定される。
【0199】
【数18】
【0200】
式(18)のうちの“Bw1_H+Bw2_L<D12”は前述の条件1と対応する。式(18)のうちの“D12<D01−(Bw0_HとBw2_Hのうち大きい方)”は“|D01−D12|>(Bw0_HとBw2_Hのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件2と対応する。
【0201】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2、の周波数配置が式(18)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0202】
尚、式(18)は、式(4)と同様に、周波数差D12の範囲を規定するから、結果的には、周波数差D34は、式(4)と式(18)の両方を満たさなければならない。したがって、周波数差D34は、式(4)と式(18)を纏めて、式(19)で示す範囲に規定される。
【0203】
【数19】
【0204】
又、Bw0_L=B0_HのときはBw0_L=Bw0_H=Bw0/2であるから、式(18)は式(20−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw0=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4)であるとしたときには、式(20−1)は式(20−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34、D01=D23とすると、式(20−2)は式(20−3)のように変形できる。
【0205】
【数20】
【0206】
第1例と第2例の何れにおいても、隣接する3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側に生成される3次相互変調波は、最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第4の条件が満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”であり、第2例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”である。
【0207】
又、第1例と第2例の何れにおいても、3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側に生成される3次相互変調波は、最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第5の条件も満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”であり、第2例の場合は“F_0、F_1、F_2”又は“F_1、F_2、F_3”である。
【0208】
<6バンドの周波数配置>
図8及び図9は、それぞれ周波数の異なる6つの搬送周波数を使用する場合(6バンドと称する)の周波数配置の決定方法を説明する図である。ここで、図8は、6バンドの周波数配置の第1例を示し、図9は、6バンドの周波数配置の第2例を示す。
【0209】
6つの搬送周波数について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件は、5バンド時に決定した周波数配置をベースに、より低域側あるいはより高域側に新たに追加した第6の搬送周波数を含む隣接する3つの搬送周波数について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用すればよい。
【0210】
以下具体的に説明する。尚、周波数の大小関係の説明の便宜上、5バンドの周波数配置の第1例をベースとする変形例として説明する。
【0211】
[第1例]
第1例は、5バンドの周波数配置の第1例をベースに、より高域側に新たに第6の搬送周波数を追加する態様であり、第6の搬送周波数をF_6とし、周波数の高低がF_1<F_2<F_3<F_4<F_5<F_6となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0212】
尚、隣接していない搬送周波数、例えば搬送周波数F_1にとって搬送周波数F_3、F_4、F_5は、帯域として、それらのビートは搬送周波数F_1に基づく変調信号に妨害を与えないと考える。このことは第2例でも同様である。
【0213】
3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_4であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_5であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_6である。
【0214】
搬送周波数F_5と搬送周波数F_6の周波数差(=F_6−F_5)をD56とする。3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_4)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_5)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD45であり、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_6)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_5)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD56である。
【0215】
搬送周波数F_6に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw6とし、全受信帯域幅Bw6のうち、低域側の受信帯域幅をBw6_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw6_Hとする。搬送周波数F_5に基づく変調信号と搬送周波数F_6に基づく変調信号との帯域間隔をH56とする。式的には、帯域間隔H56は“D56−Bw5_H−Bw6_L”となる。
【0216】
搬送周波数F_5と搬送周波数F_6とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_5−F_6)をIM56とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_6−F_5)をIM65とする。
【0217】
これらの場合、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置に関しては、D45>D56として、3バンドの周波数配置の第2例の決定方法を同様に適用すればよい。
【0218】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_H(=F_6)と搬送周波数F_M(=F_5)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D56)は、式(9)の変形として、式(21)で示す範囲に規定される。
【0219】
【数21】
【0220】
式(21)のうちの“Bw5_H+Bw6_L<D56”は前述の条件1と対応する。式(21)のうちの“D56<D45−(Bw4_HとBw6_Hのうち大きい方)”は“|D45−D56|>(Bw4_HとBw6_Hのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件3と対応する。
【0221】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(15)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定める。あるいは、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、4つの搬送周波数F_2、F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(16)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0222】
尚、Bw6_L=B6_HのときはBw6_L=Bw6_H=Bw6/2であるから、式(21)は式(22−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4=Bw5=Bw6)であるとしたときには、式(22−1)は式(22−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34=D56、D23=D45とすると、式(22−2)は式(22−3)のように変形できる。
【0223】
【数22】
【0224】
[第2例]
第2例は、5バンドの周波数配置の第1例をベースに、より低域側に新たに第6の搬送周波数を追加する態様であり、第6の搬送周波数をF_0とし、周波数の高低がF_0<F_1<F_2<F_3<F_4<F_5となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0225】
3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_0であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_1であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_2である。
【0226】
周波数や周波数差は4バンドの周波数配置の第2例の決定方法で説明したものと同様であるが、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置に関しては、D01>D12として、3バンドの周波数配置の第2例の決定方法を同様に適用する。
【0227】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_H(=F_2)と搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D12)は、式(9)の変形として、式(23)で示す範囲に規定される。
【0228】
【数23】
【0229】
尚、式(23)は、式(18)と同じであり、式(4)や式(18)と同様に、周波数差D12の範囲を規定するから、式(4)と式(23)を纏めて、式(19)で示す範囲に規定される。
【0230】
3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(15)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置が式(23)を満たすように定める。あるいは、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、4つの搬送周波数F_2、F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(16)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置が式(23)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0231】
尚、Bw0_L=B0_HのときはBw0_L=Bw0_H=Bw0/2であるから、式(23)は式(24−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw0=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4=Bw5)であるとしたときには、式(24−1)は式(24−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34、D01=D23=D45とすると、式(24−2)は式(24−3)のように変形できる。
【0232】
【数24】
【0233】
第1例と第2例の何れにおいても、隣接する3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側に生成される3次相互変調波は、最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第4の条件が満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”又は“F_4、F_5、F_6”であり、第2例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”である。
【0234】
又、第1例と第2例の何れにおいても、3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側に生成される3次相互変調波は、最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第5の条件も満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”であり、第2例の場合は“F_0、F_1、F_2”又は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”である。
【0235】
<7バンドの周波数配置>
図10及び図11は、それぞれ周波数の異なる7つの搬送周波数を使用する場合(7バンドと称する)の周波数配置の決定方法を説明する図である。ここで、図10は、7バンドの周波数配置の第1例を示し、図11は、7バンドの周波数配置の第2例を示す。
【0236】
7つの搬送周波数について、それぞれの搬送周波数に基づく変調信号の各帯域同士が重ならず、かつ、隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成されるN次(ここでは3次)の相互変調歪成分の周波数が、各搬送周波数に基づく変調信号の帯域内の何れにも存在しないための条件は、6バンド時に決定した周波数配置をベースに、より低域側あるいはより高域側に新たに追加した第6の搬送周波数を含む隣接する3つの搬送周波数について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用すればよい。
【0237】
以下具体的に説明する。尚、周波数の大小関係の説明の便宜上、6バンドの周波数配置の第1例をベースとする変形例として説明する。
【0238】
[第1例]
第1例は、6バンドの周波数配置の第1例をベースに、より高域側に新たに第7の搬送周波数を追加する態様であり、第7の搬送周波数をF_7とし、周波数の高低がF_1<F_2<F_3<F_4<F_5<F_6<F_7となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0239】
3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_5であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_6であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_7である。
【0240】
搬送周波数F_6と搬送周波数F_7の周波数差(=F_7−F_6)をD67とする。3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7のうちの最も低周波数の搬送周波数F_L(=F_5)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_6)との差として求められる第1の周波数差Δ1はD56であり、3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7のうちの最も高周波数の搬送周波数F_H(=F_7)と中間の周波数の搬送周波数F_M(=F_6)との差として求められる第2の周波数差Δ2はD67である。
【0241】
搬送周波数F_7に基づく変調信号の全受信帯域幅をBw7とし、全受信帯域幅Bw7のうち、低域側の受信帯域幅をBw7_Lとし、高域側の受信帯域幅をBw7_Hとする。搬送周波数F_6に基づく変調信号と搬送周波数F_7に基づく変調信号との帯域間隔をH67とする。式的には、帯域間隔H67は“D67−Bw6_H−Bw7_L”となる。
【0242】
搬送周波数F_6と搬送周波数F_7とに基づいて生成される3次の相互変調歪成分のうち低域成分(低周波数側の成分)の歪周波数(=2F_6−F_7)をIM67とし、高域成分(高周波数側の成分)の歪周波数(=2F_7−F_6)をIM76とする。
【0243】
これらの場合、3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7の周波数配置に関しては、D56<D67として、3バンドの周波数配置の第1例の決定方法を同様に適用すればよい。
【0244】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_L(=F_4)と搬送周波数F_M(=F_5)との差として求められる第1の周波数差Δ1(=D56)は、式(4)の変形として、式(25)で示す範囲に規定される。
【0245】
【数25】
【0246】
式(25)のうちの“Bw5_H+Bw6_L<D56”は前述の条件1と対応する。式(25)のうちの“D56<D67−(Bw5_LとBw7_Lのうち大きい方)”は“|D56−D67|>(Bw5_LとBw7_Lのうち大きい方)”と変形でき、これは前述の条件2と対応する。
【0247】
よって、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(15)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7の周波数配置が式(25)を満たすように定める。あるいは、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、4つの搬送周波数F_2、F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(16)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_5、F_6、F_7の周波数配置が式(25)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0248】
尚、式(25)は、式(21)と同様に、周波数差D45の範囲を規定するから、結果的には、周波数差D45は、式(21)と式(25)の両方を満たさなければならない。したがって、周波数差D45は、式(21)と式(25)を纏めて、式(26)で示す範囲に規定される。
【0249】
【数26】
【0250】
又、Bw7_L=B7_HのときはBw7_L=Bw7_H=Bw7/2であるから、式(25)は式(27−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4=Bw5=Bw6=Bw7)であるとしたときには、式(27−1)は式(27−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34=D56、D23=D45=D67とすると、式(27−2)は式(27−3)のように変形できる。
【0251】
【数27】
【0252】
[第2例]
第2例は、6バンドの周波数配置の第1例をベースに、より低域側に新たに第7の搬送周波数を追加する態様であり、第7の搬送周波数をF_0とし、周波数の高低がF_0<F_1<F_2<F_3<F_4<F_5<F_6となるようにする。そして、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2について、3バンドの周波数配置の決定方法を同様に適用する。
【0253】
3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lは搬送周波数F_0であり、中間の周波数の搬送周波数F_Mは搬送周波数F_1であり、最も高周波数の搬送周波数F_Hは搬送周波数F_2である。
【0254】
周波数や周波数差は4バンドの周波数配置の第2例の決定方法で説明したものと同様であるが、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置に関しては、D01>D12として、3バンドの周波数配置の第2例の決定方法を同様に適用する。
【0255】
詳細な説明は割愛するが、搬送周波数F_H(=F_2)と搬送周波数F_M(=F_1)との差として求められる第2の周波数差Δ2(=D12)は、式(9)の変形として、式(28)で示す範囲に規定される。
【0256】
【数28】
【0257】
尚、式(28)は、式(23)と同じであり、式(4)や式(18)や式(23)と同様に、周波数差D12の範囲を規定するから、式(4)と式(28)を纏めて、式(19)で示す範囲に規定される。
【0258】
3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_2、F_3、F_4の周波数配置が式(11)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(15)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置が式(28)を満たすように定める。あるいは、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置が式(4)を満たすように定め、4つの搬送周波数F_2、F_3、F_4、F_5の周波数配置が式(16)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_4、F_5、F_6の周波数配置が式(21)を満たすように定め、3つの搬送周波数F_0、F_1、F_2の周波数配置が式(28)を満たすように定める。これにより、3バンド周波数配置と同様に、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0259】
尚、Bw0_L=B0_HのときはBw0_L=Bw0_H=Bw0/2であるから、式(28)は式(29−1)に変形できる。さらに、各変調信号の全帯域が等しくBw(=Bw0=Bw1=Bw2=Bw3=Bw4=Bw5=Bw6)であるとしたときには、式(29−1)は式(29−2)のように簡略化できるし、さらにはD12=D34=D56、D01=D23=D45とすると、式(20−2)は式(20−3)のように変形できる。
【0260】
【数29】
【0261】
第1例と第2例の何れにおいても、隣接する3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側に生成される3次相互変調波は、最も低周波数の搬送周波数F_Lよりも低域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第4の条件が満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”又は“F_4、F_5、F_6”又は“F_5、F_6、F_7”であり、第2例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”又は“F_4、F_5、F_6”である。
【0262】
又、第1例と第2例の何れにおいても、3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hと中間の周波数の搬送周波数F_Mに基づいて生成される3次相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側に生成される3次相互変調波は、最も高周波数の搬送周波数F_Hよりも高域側の搬送周波数に基づく変調信号の帯域内には存在しないという第5の条件も満たされている。因みに、「隣接する3つの搬送周波数」の組合せは、第1例の場合は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”又は“F_4、F_5、F_6”であり、第2例の場合は“F_0、F_1、F_2”又は“F_1、F_2、F_3”又は“F_2、F_3、F_4”又は“F_3、F_4、F_5”である。
【0263】
[8バンド以上の周波数配置]
8バンド以上の場合の周波数配置については詳細な説明を割愛するが、これまでの説明から理解できるように、1つ少ないバンド数の周波数配置をベースにして、3バンドの周波数配置の第1例又は第2例を適用して1バンドを追加するとよい。即ち、1つ少ないバンド数の周波数配置をベースにして、より低域側あるいはより高域側に新たな搬送周波数を追加し、その追加した搬送周波数を含む隣接する3つの搬送周波数に関して、3バンドの周波数配置の第1例又は第2例を適用して周波数配置を決定するとよい。
【0264】
<具体的な適用例>
以下、具体的な適用例を示す。説明や理解を容易にするため、特段の断りのない限り、1つの通信装置には、変調部と復調部の何れか一方を1つ備えるものとして説明する。送信側の通信装置と受信側の通信装置とで、信号伝送装置が構成される。尚、以下において、装置を構成する各部がひとつの筐体内に収容された状態の構成で信号伝送装置や電子機器とすることもできる。信号伝送装置や電子機器は、単体の場合もあれば、複数の信号伝送装置や複数の電子機器の組合せで信号伝送装置や電子機器の全体が構成される場合もある。
【0265】
なお、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明の技術的範囲は後述の実施例に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で後述の実施例に多様な変更又は改良を加えることができ、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。又、後述の実施例は、クレーム(請求項)に係る発明を限定するものではなく、又実施例の中で説明される特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。後述の実施例には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。後述する各実施例は、それぞれ単独で適用されることに限らず、可能な範囲で、それぞれ任意に組み合わせて適用することもできる。実施例に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【実施例1】
【0266】
図12は、実施例1を説明する図である。ここで、図12(A)は通信装置の配置イメージを示し、図12(B)は通信装置の詳細構成例を示し、図12(C)は搬送周波数の周波数配置の例を示す。
【0267】
実施例1は、1つの電子機器内の同一基板内に全通信装置(通信チップ)が搭載され、各搬送搬送周波数を予め設定しておく形態である。電子機器内の回路基板上に、3組以上の送受信の組合せが、配置や電波の指向性等に拘わらず無作為に行なわれるような場合を想定する。
【0268】
例えば、図12では、3バンドの周波数配置を適用する場合で示している。図12(A)に示すように、電子機器751内の回路基板701上には、送信器の機能を持つ通信装置710_1と受信器の機能を持つ通信装置810_1の組、送信器の機能を持つ通信装置710_2と受信器の機能を持つ通信装置810_2の組、送信器の機能を持つ通信装置710_3と受信器の機能を持つ通信装置810_3の組、といった3組の送受信の組合せでなる信号伝送装置1Aが収容されている。
【0269】
図12(B)に示すように、通信装置710_1、通信装置710_2、通信装置710_3のそれぞれは、変調対象信号処理部712と、信号増幅部713と、ローカル周波数としての搬送周波数F_@(@は1、2、3の何れか)を生成する送信側局部発振部714と、周波数混合部715(いわゆるミキサー)と、出力増幅部717とを備え、出力増幅部717には送信アンテナ718が接続されている。送信側局部発振部714と周波数混合部715とで変調部が構成される。変調対象信号処理部712は、例えばローパスフィルタを有し、被変調信号の受信帯域幅を制限する。信号増幅部713は、変調対象信号処理部712から出力された信号の振幅をゲイン倍する。周波数混合部715は、信号増幅部713から出力された信号と送信側局部発振部714からの搬送信号(搬送周波数F_@)とを乗算することで変調処理を行なう。出力増幅部717は、周波数混合部715で変調された信号の振幅をゲイン倍する。
【0270】
図12(B)に示すように、通信装置810_1、通信装置810_2、通信装置810_3のそれぞれは、入力増幅部812と、搬送周波数F_@を生成する受信側局部発振部814と、周波数混合部815(いわゆるミキサー)と、復調信号処理部816(例えばローパスフィルタ)と、出力増幅部817とを備え、入力増幅部812には受信アンテナ818が接続されている。受信側局部発振部814と周波数混合部815とで復調部が構成される。入力増幅部812は、受信アンテナ818で受けた受信信号の振幅をゲイン倍する。周波数混合部815は、入力増幅部812から出力された受信信号と受信側局部発振部814からの搬送信号(搬送周波数F_@)とを乗算することで復調処理を行なう。復調信号処理部816は、例えばローパスフィルタを有し、復調信号の受信帯域幅を制限する。出力増幅部817は、復調信号処理部816から出力された復調信号の振幅をゲイン倍する。
【0271】
図12(B−1)に示すように、通信装置710_1に全受信帯域幅Bw1の被変調信号S711を入力し、搬送周波数F_1の送信側局部発振部714にて変調をかけて送信アンテナ718にて、電波を送信する。受信アンテナ818にてこの変調信号を受けて通信装置810_1に入力し、復調部で復調して復調信号S811を出力増幅部817から出力する。
【0272】
図12(B−2)に示すように、通信装置710_2に全受信帯域幅Bw2の被変調信号S721を入力し、搬送周波数F_2の送信側局部発振部714にて変調をかけて送信アンテナ718にて、電波を送信する。受信アンテナ818にてこの変調信号を受けて通信装置810_2に入力し、復調部で復調して復調信号S821を出力増幅部817から出力する。
【0273】
図12(B−3)に示すように、通信装置710_3に全受信帯域幅Bw3の被変調信号S731を入力し、搬送周波数F_3の送信側局部発振部714にて変調をかけて送信アンテナ718にて、電波を送信する。受信アンテナ818にてこの変調信号を受けて通信装置810_3に入力し、復調部で復調して復調信号S831を出力増幅部817から出力する。
【0274】
ここで、3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置としては、前述の3バンドの周波数配置の第1例又は第2例を適用する。例えば、図12(C)に示す例は、3バンドの周波数配置の第1例を適用した場合を示している。3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の周波数配置を図12(C)に示すようにプリセットしておくことで、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0275】
例えば、いわゆるセルラ等の野外通信とは異なり、機器内や機器間の無線伝送においては、伝搬路の状況が変化しない、受信電力変動やタイミング変動が実質的にない(皆無あるいは極めて少ない)、伝搬距離が短い、マルチパスの遅延スプレッドが小さい、等の特徴がある。これらを纏めて、「機器内又は機器間の無線伝送」の特徴と記す。「機器内又は機器間の無線伝送」では、野外の無線通信のように、常に伝搬路の状況を調べる必要はなく、予め定められた設定値を使用できると考えてよい。即ち、「機器内又は機器間の無線伝送」では静的な環境での無線信号伝送と考えてよく、通信環境特性は概ね不変であると考えてよい。このことは、「通信環境が不変(固定)であるからパラメータ設定も不変(固定)でよい」ことを意味する。
【0276】
送信部と受信部との間の伝送特性が既知であるものとして扱うことができる。例えば、1つの筐体内の送信部と受信部の配置位置が変化しない場合(機器内通信の場合)や、送信部と受信部のそれぞれが各別の筐体内に配置される場合でも使用状態のときの送信部と受信部の配置位置が予め定められた状態となる場合(比較的近距離の機器間の無線伝送の場合)のように、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、送信部と受信部との間の伝送特性を予め知ることができる。
【0277】
例えば、本実施形態のように、同一エリアとしての機器内や比較的近距離の機器間で、複数の変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合、想定していない搬送周波数を使用する通信チャネルが突然に現れるということはあり得ないと考えてよい。よって、例えば、周波数分割多重によるマルチチャネル伝送を行なうために使用する各搬送周波数を予め製品出荷時等に決定し、その情報をメモリに保存しておき、動作時はこの情報を元に変調や復調に使用する搬送周波数の設定を行なえばよい。後述の実施例2等とは異なり、送受信の組合せは固定されてしまうが、通信環境特性を常に監視してその結果に基づいて搬送周波数の配置を最適な状態にする動的制御の機構は不要であるから、回路規模を小さくでき、又、消費電力を小さくできる。
【実施例2】
【0278】
図13は、実施例2を説明する図である。ここで、図13(A)は通信装置と周波数制御部の配置イメージを示し、図13(B)は通信装置の詳細構成例及び通信装置と周波数制御部との接続関係を示す。
【0279】
実施例2は、実施例1に対して、搬送周波数を動的に制御可能にする形態である。後述の実施例3との相違点としては、制御情報を送信側のみへ伝送する点にある。以下、実施例1との相違点について説明する。
【0280】
電子機器751内の回路基板701上には、3つの通信装置710と通信装置810の組の他に、送信側の3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3を制御する周波数制御部702が設けらた信号伝送装置1Bが収容されている。例えば、周波数制御部702をCPU等のソフトウェアによりプログラム実行できるデバイスとすると、適切な周波数割当てを動的に行なうことができる。無線による機器内信号伝送(つまり同一エリア内での無線による信号伝送)において、複数の変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合に、各搬送周波数を最適な位置に制御することができる。
【0281】
又、信号伝送装置1Bには、予備用の送受信の組を必要に応じて設ける。図は、予備用の送受信の組として、搬送周波数F_4で変調や復調を行なう通信装置710_4と通信装置810_4の組を設けた例で示している。
【0282】
周波数制御部702から各通信装置710へは、各搬送周波数F_@(@は1、2、3、4の何れか)を制御するための周波数割当て用の制御情報を含む制御情報S702が供給される。尚、周波数制御部702からは周波数割当て以外の制御情報も各通信装置710に供給してもよい。
【0283】
制御情報S702の各通信装置710への伝送は有線でもよいし無線でもよいが、ここでは、同一基板内での複数の変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう点に着目して、プリント配線を利用した有線伝送にする。無線伝送にするよりも装置構成をコンパクトにできる。
【0284】
制御情報S702を無線で伝送する場合は、その使用通信帯域は、通信装置710と通信装置810との間での通常の被変調信号用の無線通信に使用する搬送周波数の周波数帯(例えばミリ波帯や、その上下両側を含むセンチ波帯〜サブミリ波帯)を使用しないようにする。例えば、赤外線通信やレーザ光通信で行なうとよい。制御情報S702の無線伝送が、通常の被変調信号用の無線伝送に障害を与えないことを、確実に保証するためである。
【0285】
実施例2によれば、送信側の搬送周波数を制御する周波数制御部702により、適切な周波数割当てを行なうことで、機器内伝送を最適に制御することができる。周波数割当ては初期設定時に設定することもできるが、装置使用時に送信側の搬送周波数を動的に設定できる利点がある。
【0286】
例えば、通信装置710_1と通信装置810_1の組、通信装置710_2と通信装置810_2の組、通信装置710_3と通信装置810_3の組で、既に3バンド(3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3)の動作が行なわれている状態で、新たに通信装置710_4と通信装置810_4の組での1バンド(搬送周波数F_4)を追加できる。又、通信装置710_1、通信装置710_2、通信装置710_3のそれぞれが使用する搬送周波数を3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の中で切り替えることで、受信用の搬送周波数を切り替えなくても、送受信の組を切り替えることもできる。
【0287】
又、図示していないが、相互変調歪による妨害が発生しているか否かの情報を各通信装置810から周波数制御部702に通知し、その情報に基づいて、妨害局側で使用する搬送周波数を切り替えるように制御してもよい。通信障害を受けた被妨害局側で使用する搬送周波数を変更しなくても、相互変調歪による通信障害を防止できる。周波数配置の設定が適正でなかった場合や、4次以降の相互変調歪成分による通信障害が発生した場合の対処として有効である。例えば、野外の無線通信で相互変調歪による通信障害が発生したとき、被妨害局側で使用する搬送周波数を切り替えるということはあり得るが、被妨害局が妨害局側で使用する搬送周波数を切り替えるように制御することはできないのと、大きく異なる。
【実施例3】
【0288】
図14は、実施例3を説明する図である。ここで、図14(A)は通信装置と周波数制御部の配置イメージを示し、図14(B)は通信装置の詳細構成例及び通信装置と周波数制御部との接続関係を示す。
【0289】
実施例3は、実施例1に対して、搬送周波数を動的に制御可能にする形態である点で、実施例2と似ている。実施例2との相違点としては、制御情報を受信側へも伝送する点にある。以下、実施例1及び実施例2との相違点について説明する。
【0290】
電子機器内の回路基板701上には、3つの通信装置710と通信装置810の組の他に、送信側及び受信側の各3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3を制御する周波数制御部704が設けられた信号伝送装置1Cが収容されている。又、予備用の送受信の組を必要に応じて設ける。図は、予備用の送受信の組として、搬送周波数F_4で変調や復調を行なう通信装置710_4と通信装置810_4の組を設けた例で示している。
【0291】
周波数制御部704から各通信装置710へは、各搬送周波数F_@(@は1、2、3、4の何れか)を制御するための周波数割当て用の制御情報を含む制御情報S704が供給される。又、周波数制御部704から各通信装置810へは、各搬送周波数F_@(@は1、2、3、4の何れか)を制御するための周波数割当て用の制御情報を含む制御情報S804が供給される。尚、周波数制御部704からは周波数割当て以外の制御情報も各通信装置710や各通信装置810に供給してもよい。制御情報S702の各通信装置710への伝送及び制御情報S804の各通信装置810への伝送は有線でもよいし無線(例えば赤外線)でもよいが、ここではプリント配線を利用した有線伝送にする。
【0292】
実施例3によれば、送信側及び受信側の搬送周波数を制御する周波数制御部704により、適切な周波数割当てを行なうことで、機器内伝送を最適に制御することができる。周波数割当ては初期設定時に設定することもできるが、装置使用時に送信側の搬送周波数を動的に設定できる利点があるだけでなく、受信側の搬送周波数も動的に設定でき、受信器の動作も制御できる利点がある。例えば、通信装置810_1、通信装置810_2、通信装置810_3のそれぞれが使用する搬送周波数を3つの搬送周波数F_1、F_2、F_3の中で切り替えることで、送受信の組を切り替えることができる。送信側と受信側の双方の搬送周波数を切り替えることができるので、切替えの自由度が、送信側と受信側の何れか一方のみを切り替える構成の場合よりも、切替えの自由度が高い。
【0293】
[実施例2及び実施例3の変形例]
図示しないが、実施例2や実施例3に対する変形例として、制御情報を受信側のみへ伝送することで、受信用の搬送周波数を動的に制御可能にする構成としてもよい。この場合、送信用の搬送周波数を切り替えなくても、受信用の搬送周波数を切り替えることで、送受信の組を切り替えることができる。
【実施例4】
【0294】
図15は、実施例4を説明する図である。ここで、図15(A)は通信装置の配置イメージを示し、図15(B)は通信装置の詳細構成例を示す。図16は、実施例4の変形例を説明する図である。ここで、図16(A)は通信装置の配置イメージを示し、図16(B)は通信装置の詳細構成例を示す。
【0295】
実施例4及びその変形例は、実施例2や実施例3に対して、搬送周波数を制御する周波数制御部の機能を通信装置に持たせる形態である。つまり、実施例2や実施例3との相違点としては、周波数割当て情報を含む制御信号を無線で伝達する点にある。図15は、実施例2に対する変形例であり、送信側の搬送周波数のみを切り替える構成であるが、実施例3のように、送信側と受信側の双方の搬送周波数を切り替える構成や、受信側の搬送周波数のみを切り替える構成としてもよい。以下、実施例2との相違点について説明する。
【0296】
図15(A)及び図16(A)に示すように、1つの電子機器751内には4つの回路基板701_1、回路基板701_2、回路基板701_3、回路基板701_4が設けられた信号伝送装置1Dが収容されている。回路基板701_1には、送信器(通信装置710_1と同様のもの)と周波数制御部702(あるいは周波数制御部704)の機能を持つ通信装置721が設けられている。回路基板701_2には、送信器と受信器の機能を持つ通信装置722及び通信装置724と、受信器の機能を持つ通信装置810_3とが設けられた信号伝送装置1Dが収容されている。回路基板701_3には、送信器と受信器の機能を持つ通信装置723と受信器の機能を持つ通信装置810_3が設けられている。回路基板701_4には、受信器の機能を持つ通信装置810_4が設けられている。搬送周波数F_2と搬送周波数F_3の帯域を、回路基板701_2と回路基板701_3との間での互いの送受信に使用することで、回路基板間で双方向の信号伝送を制御できるようにしている。
【0297】
図15(B)及び図16(B)に示すように、通信装置722は、受信器の機能を持つ通信装置810_12と送信器の機能を持つ通信装置710_2とを備え、通信装置810_12は復調した制御信号S706により通信装置710_2の搬送周波数F_2を制御するようになっている。通信装置723は、受信器の機能を持つ通信装置810_13と送信器の機能を持つ通信装置710_3とを備え、通信装置810_13は復調した制御信号S707により通信装置710_3の搬送周波数F_3を制御するようになっている。通信装置724は、受信器の機能を持つ通信装置810_14と送信器の機能を持つ通信装置710_4とを備え、通信装置810_14は復調した制御信号S708により通信装置710_4の搬送周波数F_4を制御するようになっている。制御情報S705の伝送用の送受信の対として、通信装置721の通信装置710_1と通信装置722の通信装置810_12との対、通信装置721の通信装置710_1と通信装置723の通信装置810_13との対、通信装置721の通信装置710_1と通信装置724の通信装置810_14との対、の3組が存在し、通信装置710_1が3組の送受信の対に兼用された形態になっている。
【0298】
制御情報S705の通信装置810_12、通信装置810_13、通信装置810_14への伝送を無線で行なう際に、その使用通信帯域を、通信装置710と通信装置810との間での無線通信に使用する搬送周波数の周波数帯(例えばミリ波帯や、その上下両側を含むセンチ波帯〜サブミリ波帯)と同じにする。例えば、通信装置721と、通信装置810_12、通信装置810_13、通信装置810_14との間では、搬送周波数F_1で無線通信を行なう。周波数割当て情報を含む制御信号S705を通信装置721にて搬送周波数F_1の送信側局部発振部714で変調をかけて送信アンテナ718より、電波で放出する。例えば、周波数制御部702や周波数制御部704の機能をなす通信装置721をCPU等のソフトウェアによりプログラム実行できるデバイスとすると、適切な周波数割当てを動的に行なうことができる。無線による機器内信号伝送や機器間信号伝送(つまり同一エリア内での無線による信号伝送)において、変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合に、搬送周波数を最適な位置に制御することができる。
【0299】
搬送周波数F_1の通信装置810_12と搬送周波数F_2の通信装置710_2とを備える通信装置722では、搬送周波数F_1による変調信号を受信アンテナ818で受けて通信装置810_12で受信し制御信号S706を復調する。制御信号S706が通信装置710_2に供給されることで、通信装置710_2の搬送周波数F_2等が制御される。被変調信号S721を搬送周波数F_2の通信装置710_2で変調をかけて送信アンテナ718より電波で放出する。この電波を受信アンテナ818で受け通信装置810_2で受信し、復調部で復調信号S821を復調する。
【0300】
搬送周波数F_1の通信装置810_13と搬送周波数F_3の通信装置710_3とを備える通信装置723では、搬送周波数F_1による変調信号を受信アンテナ818で受けて通信装置810_13で受信し制御信号S707を復調する。制御信号S707が通信装置710_3に供給されることで、通信装置710_3の搬送周波数F_3等が制御される。被変調信号S731を搬送周波数F_3の通信装置710_3で変調をかけて送信アンテナ718より電波で放出する。この電波を受信アンテナ818で受け通信装置810_3で受信し、復調部で復調信号S831を復調する。
【0301】
搬送周波数F_1の通信装置810_14と搬送周波数F_4の通信装置710_4とを備える通信装置724では、搬送周波数F_1による変調信号を受信アンテナ818で受けて通信装置810_14で受信し制御信号S708を復調する。制御信号S708が通信装置710_4に供給されることで、通信装置710_4の搬送周波数F_4等が制御される。被変調信号S741を搬送周波数F_4の通信装置710_4で変調をかけて送信アンテナ718より電波で放出する。この電波を受信アンテナ818で受け通信装置810_4で受信し、復調部で復調信号S841を復調する。
【0302】
このように、実施例4では、搬送周波数を制御する周波数制御信号を無線で伝送することにより、実施例2と同様の作用を行なうことができ、物理的に離れた基板間伝送のような場合でも、周波数割当てを制御することができる。例えば、周波数割当ては初期設定時に設定することもできるが、既に無線通信の動作が行われている状態で、新たに1バンドを追加する場合には、搬送周波数F_1の周波数配置も適正にしつつ、残りの各搬送周波数F_2〜F_4の周波数割当てを無線で動的に制御することができる。
【0303】
例えば、図15に示した態様では、搬送周波数F_1は制御信号S705の無線伝送用としてのみ使用しており、搬送周波数F_2を用いた通信装置710_2と通信装置810_2との間での信号伝送と、搬送周波数F_3を用いた通信装置710_3と通信装置810_3との間での信号伝送が行なわれている状態で、新たに搬送周波数F_4を用いた通信装置710_4と通信装置810_4との間での信号伝送を開始する。
【0304】
一方、図16に示した変形例では、図15に示した態様に加えて、搬送周波数F_1は制御信号S705だけでなく、全受信帯域幅Bw1の被変調信号S711を伝送するためにも使用している。つまり、通信装置721を、通常の被変調信号の伝送用と制御信号の伝送用とに兼用している。図16(B)では、通信装置722、通信装置723、通信装置724の全てが被変調信号S711に対応する復調信号S811を出力するように記載しているが、このことは必須ではなく、何れか1つのみが対応していればよい。この変形例の場合、搬送周波数F_1を用いた通信装置710(通信装置710_1と同様のもの)と通信装置810_1との間での信号伝送と、搬送周波数F_2を用いた通信装置710_2と通信装置810_2との間での信号伝送と、搬送周波数F_3を用いた通信装置710_3と通信装置810_3との間での信号伝送が行なわれている状態で、新たに搬送周波数F_4を用いた通信装置710_4と通信装置810_4との間での信号伝送を開始することができる。
【0305】
図示しないが、実施例3のように、受信器側についても搬送周波数F_1の帯域の受信器(通信装置810)を備えることで、受信器の動作も制御することができ、実施例3と同様の周波数割当てを無線で制御することができる。
【0306】
搬送周波数F_2と搬送周波数F_3の帯域を、回路基板701_2と回路基板701_3との間での互いの送受信に使用することで、回路基板間の双方向の信号伝送を制御する場合も同様に、周波数割当てを無線で制御することができる。
【実施例5】
【0307】
図17は、実施例5を説明する図である。ここで、図17(A)は通信装置の配置イメージを示し、図17(B)は通信装置の詳細構成例を示す。
【0308】
実施例5は、複数の電子機器間の無線伝送において、実施例4と同様の作用を行なう点に特徴がある。図17は、送信側の搬送周波数のみを切り替える構成であるが、実施例3のように、送信側と受信側の双方の搬送周波数を切り替える構成や、受信側の搬送周波数のみを切り替える構成としてもよい。
【0309】
例えば、図17(A)に示すように、第1の電子機器752内には2つの回路基板701_1、回路基板701_2が設けられた信号伝送装置1E_1が収容されている。第2の電子機器753内には2つの回路基板701_3、回路基板701_4が設けられた信号伝送装置1E_2が収容されている。信号伝送装置1E_1と信号伝送装置1E_2とにより信号伝送装置1Eの全体が構成される。その他は、実施例4と同様である。
【0310】
尚、図17(B)中に点線で示しているのは、実施例4の変形例と同様に、通信装置721を、通常の被変調信号(被変調信号S711)の伝送用と制御信号S705の伝送用とに兼用する場合の態様である。
【0311】
送受信の組ごとに、送信側の通信装置710(通信部:送信部)と受信側の通信装置810(通信部:受信部)がそれぞれ異なる電子機器の筐体内に収容されている。電子機器752と電子機器753が定められた位置に配置され一体となったときに両電子機器内の通信部(送信部と受信部)間に無線信号伝送路が形成され、実施例4と同様の状態となる。よって、実施例4と同様に、搬送周波数を制御する周波数制御信号を無線で伝送することにより、周波数割当てを制御することができる。
【0312】
[実施例1〜実施例5の変形例]
前述の説明は、1つの通信装置に、変調部と復調部の何れか一方を1つ備えるものとして説明したが、これには限定されない。例えば、1組の通信装置において、変調部と復調部との組を複数設けて、マルチキャリア伝送(例えばOFDM伝送)を行なう場合にも、前述の実施例1〜実施例5の考え方を同様に適用できる。要は、変調部と復調部のそれぞれを通信装置や電子機器の何れの箇所に設ける(配置する)かに拘わらず、変調部と復調部の組を複数設けて、変調部と復調部とでなる各組においてそれぞれ異なる周波数の搬送信号を使用する場合には、前述の実施例1〜実施例5の考え方を同様に適用できる。
【実施例6】
【0313】
実施例6は、前述の各実施例の搬送周波数の周波数配置(周波数割当て)を電子機器へ適用する事例である。以下に3つの代表的な事例を示す。
【0314】
[第1例]
図18は、実施例6の電子機器の第1例を説明する図である。第1例は、1つの電子機器の筐体内で無線により信号伝送を行なう場合での適用例である。電子機器としては固体撮像装置を搭載した撮像装置への適用例で示す。この種の撮像装置は、例えばデジタルカメラやビデオカメラ(カムコーダ)あるいはコンピュータ機器のカメラ(Webカメラ)等として市場に流通される。
【0315】
第1通信装置が制御回路や画像処理回路等を搭載したメイン基板に搭載され、第2通信装置が固体撮像装置を搭載した撮像基板(カメラ基板)に搭載されている装置構成となっている。
【0316】
撮像装置500の筐体590内には、撮像基板502とメイン基板602が配置されている。撮像基板502には固体撮像装置505が搭載される。例えば、固体撮像装置505はCCD(Charge Coupled Device)で、その駆動部(水平ドライバや垂直ドライバ)も含めて撮像基板502に搭載する場合や、CMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor)センサの場合が該当する。
【0317】
メイン基板602に半導体チップ103を搭載し、撮像基板502に半導体チップ203を搭載する。図示しないが、撮像基板502には、固体撮像装置505の他に撮像駆動部等周辺回路が搭載され、又、メイン基板602には画像処理エンジン605や操作部や各種のセンサ等が搭載される。
【0318】
半導体チップ103と半導体チップ203のそれぞれには、送信チップや受信チップと同等の機能を組み込む。送信チップと受信チップの両機能を組み込むことで双方向通信にも対処できる。
【0319】
固体撮像装置505や撮像駆動部は、第1通信装置側のLSI機能部のアプリケーション機能部に該当する。LSI機能部には送信側の信号生成部が接続され、さらに伝送路結合部を介してアンテナ236(送信箇所)と接続される。信号生成部や伝送路結合部は固体撮像装置505とは別の半導体チップ203に収容してあり撮像基板502に搭載される。
【0320】
画像処理エンジン605や操作部や各種のセンサ等は第2通信装置側のLSI機能部のアプリケーション機能部に該当し、固体撮像装置505で得られた撮像信号を処理する画像処理部が収容される。LSI機能部には受信側の信号生成部が接続され、さらに伝送路結合部を介してアンテナ136(受信箇所)と接続される。信号生成部や伝送路結合部は画像処理エンジン605とは別の半導体チップ103に収容してありメイン基板602に搭載される。
【0321】
送信側の信号生成部は例えば、多重化処理部、パラレルシリアル変換部、変調部、周波数変換部、増幅部等を具備し、受信側の信号生成部は例えば、増幅部、周波数変換部、復調部、シリアルパラレル変換部、単一化処理部等を具備する。これらの点は、後述する他の適用事例でも同様である。
【0322】
アンテナ136とアンテナ236との間で無線通信が行なわれることで、固体撮像装置505で取得される画像信号は、アンテナ間の無線信号伝送路9を介してメイン基板602へと伝送される。双方向通信に対応するように構成してもよく、この場合例えば、固体撮像装置505を制御するための基準クロックや各種の制御信号は、アンテナ間の無線信号伝送路9を介して撮像基板502へと伝送される。
【0323】
図18(A−1)及び図18(B−1)の何れも、2系統の無線信号伝送路9が設けられており、図18(A)では自由空間伝送路9Bとしているが、図18(B)では中空導波路9Lとしている。各系統内にはそれぞれ3組の送受信対が存在し、例えば周波数分割多重方式を採用する。
【0324】
中空導波路9Lとしては、周囲が遮蔽材で囲まれ内部が中空の構造であればよい。例えば、周囲が遮蔽材の一例である導電体MZで囲まれ内部が中空の構造にする。例えば、メイン基板602上にアンテナ136を取り囲む形で導電体MZの囲いが取り付けられている。アンテナ136と対向する位置に撮像基板502側のアンテナ236の移動中心が配置されるようにする。導電体MZの内部が中空であるので誘電体素材を使用する必要がなく低コストで簡易に無線信号伝送路9を構成できる。
【0325】
各系統の基本的な動作は1系統の動作と同様であるが、例えば自由空間伝送路9Bの図18(A−1)の場合、系統間の距離(チャネル間距離:この例では2つの送信側のアンテナ間距離に対応)が短いほど、それぞれの無線信号伝送路9が近接することになり、各系統で同じ搬送周波数を使用して同時通信を行なうと、受信部側での干渉や混信が問題になる虞れがある。送信側のアンテナ(空中線)の配置、送信側のアンテナの電磁波出力の強度、受信側のアンテナの配置等の調整が困難で、チャネル間距離が短く、電磁波伝送路の干渉や混信を避けることが困難な場合、自由空間伝送路9B_1と自由空間伝送路9B_2に関しても、周波数帯を異なるものとする周波数分割多重方式を採用する。
【0326】
具体的には、図18(A−2)に示すように、アンテナ136_11とアンテナ236_11との間では搬送周波数F_11を使用し、アンテナ136_12とアンテナ236_12との間では搬送周波数F_12を使用し、アンテナ136_13とアンテナ236_13との間では搬送周波数F_13を使用する。アンテナ136_21とアンテナ236_21との間では搬送周波数F_21を使用し、アンテナ136_22とアンテナ236_22との間では搬送周波数F_22を使用し、アンテナ136_23とアンテナ236_23との間では搬送周波数F_23を使用する。
【0327】
6つの搬送周波数を使用することになるが、この際には、図18(A−3)に示すように、前述した6バンドの周波数配置の決定方法を採用する。これにより、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0328】
又、図18(B−1)に示すように、2つのミリ波信号伝送路の間に、電磁波の遮蔽物(導電体MZ:金属など)を設置してもよい。この場合、中空導波路9L_1内の3組では周波数分割多重方式を採用し、中空導波路9L_2内の3組でも周波数分割多重方式を採用するが、中空導波路9L_1と中空導波路9L_2との関係では同じ搬送周波数を使用できる。
【0329】
具体的には、図18(B−2)に示すように、アンテナ136_11とアンテナ236_11との間では搬送周波数F_1を使用し、アンテナ136_12とアンテナ236_12との間では搬送周波数F_2を使用し、アンテナ136_13とアンテナ236_13との間では搬送周波数F_3を使用する。アンテナ136_21とアンテナ236_21との間では搬送周波数F_1を使用し、アンテナ136_22とアンテナ236_22との間では搬送周波数F_2を使用し、アンテナ136_23とアンテナ236_23との間では搬送周波数F_3を使用する。
【0330】
3つの搬送周波数を使用することになるが、この際には、図18(B−3)に示すように、前述した3バンドの周波数配置の決定方法を採用する。これにより、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0331】
[第2例]
図19は、実施例6の電子機器の第2例を説明する図である。第2例は、複数の電子機器が一体となった状態での電子機器間で無線により信号伝送を行なう場合での適用例である。特に、一方の電子機器が他方の電子機器に装着されたときの両電子機器間の信号伝送への適用である。
【0332】
例えば、中央演算処理装置(CPU)や不揮発性の記憶装置(例えばフラッシュメモリ)等が内蔵されたいわゆるICカードやメモリカードを代表例とするカード型の情報処理装置を本体側の電子機器に装着可能(着脱自在)にしたものがある。一方(第1)の電子機器の一例であるカード型の情報処理装置を以下では「カード型装置」とも称する。本体側となる他方(第2)の電子機器を以下では単に電子機器とも称する。
【0333】
メモリカード201Bの構造例(平面透視及び断面透視)が図19(A)に示されている。電子機器101Bの構造例(平面透視及び断面透視)が図19(B)に示されている。 電子機器101Bのスロット構造4(特に開口部192)にメモリカード201Bが挿入されたときの構造例(断面透視)が図19(C)に示されている。
【0334】
スロット構造4は、電子機器101Bの筺体190にメモリカード201B(その筐体290)を開口部192から挿抜して固定可能な構成となっている。スロット構造4のメモリカード201Bの端子との接触位置には受け側のコネクタ180が設けられる。無線伝送に置き換えた信号についてはコネクタ端子(コネクタピン)が不要である。
【0335】
図19(A)に示すようにメモリカード201Bの筐体290に円筒状の凹形状構成298(窪み)を設け、図19(B)に示すように電子機器101Bの筺体190に円筒状の凸形状構成198(出っ張り)を設けている。メモリカード201Bは、基板202の一方の面に、複数(図は3つ)の半導体チップ203を有し、基板202の一方の面には複数(図は3つ)のアンテナ236(計3つのアンテナ236)が形成されている。筐体290は、各アンテナ236と同一面に凹形状構成298が形成され、凹形状構成298の部分が無線信号伝送可能な誘電体素材を含む誘電体樹脂で構成される。
【0336】
基板202の一辺には、筐体290の決められた箇所で電子機器101Bと接続するための接続端子280が決められた位置に設けられている。メモリカード201Bは、低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の端子構造を一部に備える。ミリ波での信号伝送の対象となり得るものは、図中に破線で示すように、端子を取り外している。
【0337】
図19(B)に示すように、電子機器101Bは、基板102の開口部192側の面に複数(図は3つ)の半導体チップ103を有し、基板102の一方の面に複数(図は3つ)のアンテナ236(計3つのアンテナ236)が形成されている。筺体190は、スロット構造4として、メモリカード201Bが挿抜される開口部192が形成されている。筺体190には、メモリカード201Bが開口部192に挿入されたときに、凹形状構成298の位置に対応する部分に、ミリ波閉じ込め構造(導波路構造)を持つ凸形状構成198が形成され誘電体伝送路9Aとなるように構成されている。
【0338】
図19(C)に示すように、スロット構造4の筺体190は開口部192からのメモリカード201Bの挿入に対し、凸形状構成198(誘電体伝送路9A)と凹形状構成298が凹凸状に接触するようなメカ構造を有する。凹凸構造が嵌合するときに、複数(図は3つ)のアンテナ136と複数(図は2つ)のアンテナ236のそれぞれ対応するもの同士が対向するとともに、その間に無線信号伝送路9として誘電体伝送路9Aが配置される。これによって、対応するアンテナ136とアンテナ236の間で、周波数分割多重方式を採用して、無線による信号伝送を行なうことができる。メモリカード201Bは、誘電体伝送路9Aとアンテナ236の間に筐体290を挟むが、凹形状構成298の部分の素材が誘電体素材であるのでミリ波帯での無線伝送に大きな影響を与えるものではない。
【0339】
尚、3つの搬送周波数を使用することになるが、この際には、前述した3バンドの周波数配置の決定方法を採用する。これにより、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0340】
[第3例]
図20は、実施例6の電子機器の第3例を説明する図である。信号伝送装置1は、第1の電子機器の一例として携帯型の画像再生装置201Kを備えるとともに、画像再生装置201Kが搭載される第2(本体側)の電子機器の一例として画像取得装置101Kを備えている。画像取得装置101Kには、画像再生装置201Kが搭載される載置台5Kが筐体190の一部に設けられている。なお、載置台5Kに代えて、第2例のようにスロット構造4にしてもよい。一方の電子機器が他方の電子機器に装着されたときの両電子機器間において、無線で信号伝送を行なうという点では第2例と同じである。以下では、第2例との相違点に着目して説明する。
【0341】
画像取得装置101Kは概ね直方体(箱形)の形状をなしており、もはやカード型とは言えない。画像取得装置101Kとしては、例えば動画データを取得するものであればよく、例えばデジタル記録再生装置や地上波テレビ受像機が該当する。画像再生装置201Kには、アプリケーション機能部として、画像取得装置101K側から伝送されてくる動画データを記憶する記憶装置や、記憶装置から動画データを読み出して表示部(例えば液晶表示装置や有機EL表示装置)にて動画を再生する機能部が設けられる。構造的には、メモリカード201Bを画像再生装置201Kに置き換え、電子機器101Bを画像取得装置101Kに置き換えたと考えればよい。
【0342】
載置台5Kの下部の筺体190内には、例えば第2例(図19)と同様に、複数(図は3つ)の半導体チップ103が収容されており、ある位置には複数(例えば3つ)のアンテナ136が設けられる。アンテナ136と対向する筺体190の部分には、無線信号伝送路9として誘電体素材により誘電体伝送路9Aが構成されるようにしてある。載置台5Kに搭載される画像再生装置201Kの筺体290内には、例えば第2例(図19)と同様に、複数(図は3つ)の半導体チップ203が収容されており、各半導体チップ203と対応してアンテナ236(計3つのアンテナ236)が設けられる。3つのアンテナ236と対向する筺体290の部分は、誘電体素材により無線信号伝送路9(誘電体伝送路9A)が構成されるようにしてある。これらの点は前述の第2例と同様である。
【0343】
第3例は、嵌合構造という考え方ではなく壁面突当て方式を採り、載置台5Kの角101aに画像取得装置101Kが突き当てられるように置かれたときに複数(図は3つ)のアンテナ136と複数(図は3つ)のアンテナ236の対応するもの同士が対向するとともに、その間に無線信号伝送路9として誘電体伝送路9Aが配置されるようにしているので、位置ズレによる影響を確実に排除できる。このような構成により、載置台5Kに対する画像再生装置201Kの搭載(装着)時に、画像再生装置201Kの無線信号伝送に対する位置合せ行なうことが可能となり、対応するアンテナ136とアンテナ236の間で、周波数分割多重方式を採用して、無線による信号伝送を行なうことができる。アンテナ136とアンテナ236との間に筐体190と筐体290を挟むが、誘電体素材であるのでミリ波帯での無線伝送に大きな影響を与えるものではない。
【0344】
尚、3つの搬送周波数を使用することになるが、この際には、前述した3バンドの周波数配置の決定方法を採用する。これにより、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0345】
<比較例との対比>
図21〜図22は、比較例との対比を説明する図である。ここで、図21は、変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合(例えば周波数分割多重方式を適用する場合)の基本的な周波数配置を示す図である。図22は、変調歪を防止する比較例の方式を説明する図である。
【0346】
同一エリアで、変調回路と復調回路との組で、それぞれ異なる搬送周波数を用いて同時通信を行なう場合、回路部材の非線形性に起因して発生するN次相互変調歪による混信が問題となる。特に、3次の相互変調歪成分は使用周波数の近傍に発生し、又、4次以降の成分よりもレベルが大きいため、混信を避けることが難しく、通信障害の原因となる。この問題を防止するためには、最適な搬送周波数を選択することが肝要となる。
【0347】
例えば、増幅器は入力された信号を増幅率倍に増幅して出力する。このとき、周波数の異なる入力信号が2つあった場合、理想化されたモデルのとき(入力と出力は比例関係にあり、非直線性成分を含まないとき)には、それぞれの入力信号の振幅がゲイン倍されて出力される。しかしながら、実際には、増幅器は入力と出力はほぼ比例関係にあるが完全ではなく、非直線性成分を含んでいる。このような場合、周波数の異なる複数の信号を増幅器に入力すると、入力にはない周波数の信号が出力に発生する。これを、変調歪(IMD:InterModulation Distortio)と称する。変調歪成分の周波数は不規則ではなく、次式で規定される。
±m×f1±n×f2 ただしm、n=0、1、2、3、…
【0348】
|m|+|n|(m、nの絶対値)の組合せで表される周波数の変調歪をN(=|m|+|n|)次変調歪と称する。例えばm=±1でn=±1の変調歪を2次歪、m=±1でn=±2及びm=±2でn=±1の変調歪を3次歪と称する。1次は自分自身であるから除外し、2次、3次、4次、…となる。m、nは無限に続くので変調歪は無限に存在することになるが、実際には次数が高くなると減衰するため、通常は、3次や4次程度までを考慮すればよい。
【0349】
又、変調歪は、それが現れる現象に応じて、“混変調歪”と“相互変調歪”とに区別される。本実施形態は、そのうちの“相互変調歪”に関して対策を採る。“混変調歪”は、強力な周波数の局(妨害局)が現れていて、その妨害局が振幅変調波を出力している場合に、自局の受信している信号が、妨害局の振幅変調と同じ変調を受ける現象である。
【0350】
一方、“相互変調歪”は、自局とは全く関係のない2波を起因として起こる妨害である。即ち、自局以外の強力な2周波数の局が現れていて(両方が強力である場合と片方のみが極端に強力な場合の何れでもよい)、その2局の周波数差(混変調積)が受信周波数や中間周波数にかぶる場合に、妨害波として受信される現象である。よって、自局の受信周波数が妨害の2局の周波数差から外れると妨害は起こらない。本実施形態は、この点に着目して、増幅器や周波数混合部等の回路の非線形性に起因して発生する変調歪による混信の影響を受けない適正な周波数位置に各搬送周波数を設定する。
【0351】
「双方向通信」の実現には、例えば、電波の伝送チャネルである無線信号伝送路が1系統(一芯)の一芯双方向伝送の場合、時分割多重(TDD:Time Division Duplex)を適用する半二重方式と、周波数分割多重(FDD:Frequency Division Duplex )などが適用される。
【0352】
しかし、時分割多重の場合、送信と受信の分離を時分割で行なうので、第1通信装置から第2通信装置への信号伝送と第2通信装置から第1通信装置への信号伝送を同時に行なう「双方向通信の同時性(一芯同時双方向伝送)」は実現されず、一芯同時双方向伝送は、周波数分割多重で実現される。周波数分割多重は1組の通信装置間で双方向同時通信を行なう場合への対処に限らず、様々な信号伝送に利用される。例えば、複数の通信装置間で片方向通信や双方向通信を行なう場合や、1組の通信装置間でありながら変調回路と復調回路との組を複数設けて、OFDM伝送に代表されるようなシンボルレートを下げる方法の一つとしてのマルチキャリア伝送を行なう場合等、多重伝送(多チャネル化)を実現する際にも周波数分割多重が利用される。
【0353】
周波数分割多重による双方向通信は、図21(A)に示すように、送信と受信に異なった周波数を用いるので、無線信号伝送路の伝送受信帯域幅を広くする。又、周波数分割多重で多重伝送(多チャネル化)を実現するには、図21(B)に示すように、各別の搬送周波数F_@で変調して(それぞれ異なる周波数帯に変換して)、それら各別の搬送周波数を用いた電波を同一方向または逆方向に伝送する。この場合に、各通信系統(通信チャネル)に異なった周波数を用いる場合は、図21(C)や図21(D)に示すように、伝送受信帯域幅を一層広くとる。ここで、図21(B)〜図21(C)に示す周波数配置の例では、ほぼ等周波数間隔で周波数帯域F_@(いわゆる通信チャネル)が並んでおり、隣接する通信チャネル間での3次相互変調歪は隣接チャネルと同じ周波数となって混信してしまう。
【0354】
“混変調歪”と“相互変調歪”の何れも、必要帯域外の電波を高周波増幅器に入力させないことで防止できる。あるいは、そもそもの発生原因である増幅器や周波数混合部等の直線性をよくすることでも防止できる。即ち、そもそもの原因が回路の非直線動作にあるので、できるだけ直線領域で動作させるように設計する等の手法が有効である。
【0355】
例えば、ミリ波を用いた機器内伝送は少ない電力で高データレートの信号伝送が可能であり今後の応用が期待されるが、機器内には一組の伝送だけでなく、複数の周波数の組合せの伝送が必要となってくる。受信帯域に隣接する複数の周波数の信号を受信すると、増幅器や周波数混合部の線形性能が低いと受信帯域内に3次歪が発生し受信品質を著しく劣化させる。
【0356】
このため、例えば図22に示すように、受信回路の入力部に受信したい帯域のみを通過させて、隣接する周波数成分を減衰させるために選択度の高い帯域制限フィルタ(BPF:バンドパスフィルタ)を追加する。この場合、部品コストの増大を招くし、半導体集積回路内に内蔵できないときには基板面積を拡大させる。又、帯域制限フィルタは一般的には固定の周波数に対してのみ作用するため、対応周波数を可変して使用することは難しく、使用する帯域ごとに用意する必要があり、複数の種類の部品を管理するためのコストアップが生じる。又、帯域制限フィルタの選択度が低い場合は、回路の線形性能を高くする必要があり、消費電力の増大やチップサイズの増加によるコストアップの懸念がある。
【0357】
又、特開昭55−38777号公報には、スペクトラム拡散と狭帯域変調の組合せの場合の受信器の性能を緩和させる方法として、拡散変調の受信帯域幅fcの整数倍の位置に狭帯域変調の周波数を配置する方法が提案されている。しかしながら、狭帯域変調を複数使用すると、その3次歪が拡散変調の帯域内に生じてしまうことや、複数の拡散変調の場合には適応できない難点がある。
【0358】
これに対して、本実施形態の手法は、変調歪による混信の影響を受けない適正な周波数位置に各搬送周波数を設定する。このため、高い選択度の帯域制限フィルタを用いることなく受信器の増幅器や周波数混合部(ミキサー)等の線形性能を緩和することができ、コスト低減、消費電力の低減、回路規模の削減等を行なうことができる。
【0359】
<通信処理系統:変形例>
図23〜図24は、本実施形態の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する変形構成である。この変形構成は、前述の実施形態(実施例を含む)に、パラメータ設定の固定化を適用するものである。以下、図1に示した基本構成に対する変形例で説明する。
【0360】
先ず、図23に示す第1の変形構成について説明する。第1通信装置100は、第1設定値決定部7110と、第1設定値記憶部7130と、第1動作制御部7150とを具備した第1設定値処理部7100を基板102上に備える。第1設定値決定部7110は、半導体チップ103の各機能部の動作(換言すると第1通信装置100の全体動作)を指定するための「信号処理用の設定値」(変数、パラメータ)を決定する。変調回路と復調回路との組を複数設けて、各組でそれぞれ異なる周波数の搬送信号を用いて無線(特に電波)により各組同時の信号伝送を行なうこととの関係での「信号処理用の設定値」としては、変調用の搬送周波数や復調用の搬送周波数が該当する。設定値を決定する処理は、例えば、工場での製品出荷時に行なう。第1設定値記憶部7130は、第1設定値決定部7110により決定された設定値を記憶する。第1動作制御部7150は、第1設定値記憶部7130から読み出した設定値に基づいて半導体チップ103の各機能部(この例では、変調部115、周波数変換部116、増幅部117等)を動作させる。
【0361】
図23に示す例では、第1設定値処理部7100を基板102上に備える例で示しているが、これには限らず、図示しないが、第1設定値処理部7100は半導体チップ103が搭載されている基板102とは別の基板に搭載されていてもよい。又、図23に示す例では、第1設定値処理部7100は半導体チップ103の外部に備える例で示しているが、第1設定値処理部7100を半導体チップ103に内蔵してもよく、この場合は、第1設定値処理部7100は制御対象となる各機能部(変調部115、周波数変換部116、増幅部117等)が搭載されている基板102と同一の基板102に搭載されることになる(図示は割愛する)。
【0362】
第2通信装置200は、第2設定値決定部7210と、第2設定値記憶部7230と、第2動作制御部7250とを具備した第2設定値処理部7200を基板202上に備える。第2設定値決定部7210は、半導体チップ203の各機能部の動作(換言すると第2通信装置200の全体動作)を指定するための設定値(変数、パラメータ)を決定する。設定値を決定する処理は、例えば、工場での製品出荷時に行なう。第2設定値記憶部7230は、第2設定値決定部7210により決定された設定値を記憶する。第2動作制御部7250は、第2設定値記憶部7230から読み出した設定値に基づいて半導体チップ203の各機能部(この例では、増幅部224、周波数変換部225、復調部226等)を動作させる。
【0363】
図23に示す例では、第2設定値処理部7200を基板202上に備える例で示しているが、これには限らず、図示しないが、第2設定値処理部7200は半導体チップ203が搭載されている基板202とは別の基板に搭載されていてもよい。又、図23に示す例では、第2設定値処理部7200は半導体チップ203の外部に備える例で示しているが、第2設定値処理部7200を半導体チップ203に内蔵してもよく、この場合は、第2設定値処理部7200は制御対象となる各機能部(増幅部224、周波数変換部225、復調部226)が搭載されている基板202と同一の基板202に搭載されることになる(図示は割愛する)。
【0364】
次に、図24に示す第2の変形構成について説明する。第2の変形構成は、装置外部にて決定された設定値を記憶する点に特徴がある。以下では、第1の変形構成との相違点を中心に説明する。第2の変形構成は、第1設定値決定部7110に代えて第1入出力インタフェース部7170を備え、第2設定値決定部7210に代えて第2入出力インタフェース部7270を備えている。第1入出力インタフェース部7170と第2入出力インタフェース部7270のそれぞれは、設定値を外部から受け付ける設定値受付部の一例である。
【0365】
第1入出力インタフェース部7170は、第1設定値記憶部7130との間のインタフェース機能をなし、外部から与えられる設定値を第1設定値記憶部7130に記憶し、又、第1設定値記憶部7130に記憶されている設定値を読み出して外部に出力する。第2入出力インタフェース部7270は、第2設定値記憶部7230との間のインタフェース機能をなすもので、外部から与えられる設定値を第2設定値記憶部7230に記憶し、又、第2設定値記憶部7230に記憶されている設定値を読み出して外部に出力する。
【0366】
第2の変形構成の場合、第1設定値処理部7100や第2設定値処理部7200にて設定値を決定するのではなく、外部にて設定値を決定する。例えば、設計パラメータと実機の状態から設定値を決定してもよいし、装置の実働試験に基づいて設定値を決定してもよい。又、何れの場合も、装置ごとに個別の設定値を決定するのではなく、各装置に共通の設定値を決定してもよい。設計パラメータから設定値を決定する場合は、概ねこの場合に該当するし、標準の装置での実働試験に基づいて設定値を決定する場合も、この場合に該当する。
【符号の説明】
【0367】
1…信号伝送装置、100…第1通信装置(第1の通信部の機能を持つ)、200…第2通信装置(第2の通信部の機能を持つ)、500…撮像装置(電子機器の一例)、702…周波数制御部、704…周波数制御部、101B…電子機器、201B…メモリカード(電子機器の一例)、101K…画像取得装置(電子機器の一例)、201K…画像再生装置(電子機器の一例)、751…電子機器、752…電子機器、753…電子機器、7100…第1設定値処理部、7200…第2設定値処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とがそれぞれ複数設けられており、
変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、
隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される3次の相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、
各搬送周波数が設定されている信号伝送装置。
【請求項2】
変調部で変調された変調信号を無線信号として送信し、その無線信号を受信して復調部に入力することで信号伝送を行なう際に、変調部と復調部との各組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、
各搬送周波数に基づく変調信号の各受信帯域同士が重ならならないように各搬送周波数が設定されている請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
隣接する3つの搬送周波数のうちの最も低い周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数との差を第1の周波数差とし、隣接する3つの搬送周波数のうちの最も高い周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数との差を第2の周波数差としたとき、第1の周波数差と第2の周波数差とのうち小さい方を規定する低域側の搬送周波数に基づく変調信号の高域側の受信帯域幅と、第1の周波数差と第2の周波数差のうち小さい方を規定する高域側の搬送周波数に基づく変調信号の低域側の受信帯域幅との和が、第1の周波数差と第2の周波数差のうち小さい方よりも小さいという第1の条件が満たされるとともに、
第1の周波数差の方が第2の周波数差よりも小さいときには、第1の周波数差と第2の周波数差との差は、最も低周波数の搬送周波数に基づく変調信号の低域側の受信帯域幅と最も高周波数の搬送周波数に基づく変調信号の低域側の受信帯域幅のうち大きい方よりも大きいという第2の条件が満たされように、
第1の周波数差の方が第2の周波数差よりも大きいときには、第1の周波数差と第2の周波数差との差は、最も低周波数の搬送周波数に基づく変調信号の高域側の受信帯域幅と最も高周波数の搬送周波数に基づく変調信号の高域側の受信帯域幅のうち大きい方よりも大きいという第3の条件が満たされるように、
隣接する3つの搬送周波数が設定されている請求項1又は請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
使用される搬送周波数が4つ以上であり、
そのうちの隣接する3つの搬送周波数の組合せごとに、
第1の条件が満たされるとともに、
第1の周波数差の方が第2の周波数差よりも小さいときには第2の条件が満たされ、第1の周波数差の方が第2の周波数差よりも大きいときには第3の条件が満たされるように、各搬送周波数が設定されている請求項3に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
使用される搬送周波数が4つ以上であり、
そのうちの隣接する3つの搬送周波数の組合せごとに、
3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数に基づいて生成される相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数よりも低域側に生成される相互変調波は、最も低周波数の搬送周波数よりも低域側の搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内には存在せず、
3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数に基づいて生成される相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数よりも高域側に生成される相互変調波は、最も高周波数の搬送周波数よりも高域側の搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内には存在しないように、各搬送周波数が設定されている請求項3に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
送受信間の伝送特性が既知であり、
設定値に基づいて、予め定められた信号処理を行なう信号処理部と、
予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する設定値処理部とを備えた請求項1から請求項5の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項8】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されており、
各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項9】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されており、
各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項10】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されており、
各変調部が送信用に使用する搬送周波数及び各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項11】
変調部と復調部が、複数の回路基板に散在しており、
各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項12】
変調部と復調部が、複数の回路基板に散在しており、
各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項13】
変調部と復調部が、複数の回路基板に散在しており、
各変調部が送信用に使用する搬送周波数及び各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項14】
制御部が搬送周波数を切り替えるための制御信号は、有線で変調部或いは復調部に伝送される請求項8から請求項10の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項15】
制御部が搬送周波数を切り替えるための制御信号は、無線で変調部或いは復調部に伝送される請求項8から請求項13の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項16】
制御部は、搬送周波数を切り替えるための制御信号の無線信号の使用帯域を、伝送対象信号の無線信号の使用帯域外にする請求項15に記載の信号伝送装置。
【請求項17】
制御部は、
搬搬送周波数を切り替えるための制御信号の無線信号の使用帯域を、伝送対象信号の無線信号の使用帯域にし、
制御信号の無線信号の搬送周波数についても、
隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、
各搬送周波数を設定する請求項15に記載の信号伝送装置。
【請求項18】
伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とがそれぞれ複数、1つの筐体内に配置されており、
変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、
隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される3次の相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、
各搬送周波数が設定されている電子機器。
【請求項19】
伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部の少なくとも一方が1つの筐体内に複数配置されている第1の電子機器と、
第1の電子機器の各変調部と対応する復調部及び第1の電子機器の各復調部と対応する変調部のそれぞれが1つの筐体内に配置されている第2の電子機器と、
を備え、
第1の電子機器と第2の電子機器が定められた位置に配置されたとき、変調部で変調された変調信号を無線信号として伝送可能にする無線信号伝送路が形成されるようになっており、
変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、
隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される3次の相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、
各搬送周波数が設定されている電子機器。
【請求項20】
伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とをそれぞれ複数設けておき、
変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、
隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される3次の相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、各搬送周波数を設定する信号伝送方法。
【請求項1】
伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とがそれぞれ複数設けられており、
変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、
隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される3次の相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、
各搬送周波数が設定されている信号伝送装置。
【請求項2】
変調部で変調された変調信号を無線信号として送信し、その無線信号を受信して復調部に入力することで信号伝送を行なう際に、変調部と復調部との各組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、
各搬送周波数に基づく変調信号の各受信帯域同士が重ならならないように各搬送周波数が設定されている請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
隣接する3つの搬送周波数のうちの最も低い周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数との差を第1の周波数差とし、隣接する3つの搬送周波数のうちの最も高い周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数との差を第2の周波数差としたとき、第1の周波数差と第2の周波数差とのうち小さい方を規定する低域側の搬送周波数に基づく変調信号の高域側の受信帯域幅と、第1の周波数差と第2の周波数差のうち小さい方を規定する高域側の搬送周波数に基づく変調信号の低域側の受信帯域幅との和が、第1の周波数差と第2の周波数差のうち小さい方よりも小さいという第1の条件が満たされるとともに、
第1の周波数差の方が第2の周波数差よりも小さいときには、第1の周波数差と第2の周波数差との差は、最も低周波数の搬送周波数に基づく変調信号の低域側の受信帯域幅と最も高周波数の搬送周波数に基づく変調信号の低域側の受信帯域幅のうち大きい方よりも大きいという第2の条件が満たされように、
第1の周波数差の方が第2の周波数差よりも大きいときには、第1の周波数差と第2の周波数差との差は、最も低周波数の搬送周波数に基づく変調信号の高域側の受信帯域幅と最も高周波数の搬送周波数に基づく変調信号の高域側の受信帯域幅のうち大きい方よりも大きいという第3の条件が満たされるように、
隣接する3つの搬送周波数が設定されている請求項1又は請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
使用される搬送周波数が4つ以上であり、
そのうちの隣接する3つの搬送周波数の組合せごとに、
第1の条件が満たされるとともに、
第1の周波数差の方が第2の周波数差よりも小さいときには第2の条件が満たされ、第1の周波数差の方が第2の周波数差よりも大きいときには第3の条件が満たされるように、各搬送周波数が設定されている請求項3に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
使用される搬送周波数が4つ以上であり、
そのうちの隣接する3つの搬送周波数の組合せごとに、
3つの搬送周波数のうちの最も低周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数に基づいて生成される相互変調波のうちの最も低周波数の搬送周波数よりも低域側に生成される相互変調波は、最も低周波数の搬送周波数よりも低域側の搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内には存在せず、
3つの搬送周波数のうちの最も高周波数の搬送周波数と中間の周波数の搬送周波数に基づいて生成される相互変調波のうちの最も高周波数の搬送周波数よりも高域側に生成される相互変調波は、最も高周波数の搬送周波数よりも高域側の搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内には存在しないように、各搬送周波数が設定されている請求項3に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
送受信間の伝送特性が既知であり、
設定値に基づいて、予め定められた信号処理を行なう信号処理部と、
予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する設定値処理部とを備えた請求項1から請求項5の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項8】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されており、
各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項9】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されており、
各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項10】
変調部と復調部の全てが1つの回路基板上に配置されており、
各変調部が送信用に使用する搬送周波数及び各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項11】
変調部と復調部が、複数の回路基板に散在しており、
各変調部が送信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項12】
変調部と復調部が、複数の回路基板に散在しており、
各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項13】
変調部と復調部が、複数の回路基板に散在しており、
各変調部が送信用に使用する搬送周波数及び各復調部が受信用に使用する搬送周波数を切り替える制御部を備えている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項14】
制御部が搬送周波数を切り替えるための制御信号は、有線で変調部或いは復調部に伝送される請求項8から請求項10の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項15】
制御部が搬送周波数を切り替えるための制御信号は、無線で変調部或いは復調部に伝送される請求項8から請求項13の何れか一項に記載の信号伝送装置。
【請求項16】
制御部は、搬送周波数を切り替えるための制御信号の無線信号の使用帯域を、伝送対象信号の無線信号の使用帯域外にする請求項15に記載の信号伝送装置。
【請求項17】
制御部は、
搬搬送周波数を切り替えるための制御信号の無線信号の使用帯域を、伝送対象信号の無線信号の使用帯域にし、
制御信号の無線信号の搬送周波数についても、
隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、
各搬送周波数を設定する請求項15に記載の信号伝送装置。
【請求項18】
伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とがそれぞれ複数、1つの筐体内に配置されており、
変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、
隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される3次の相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、
各搬送周波数が設定されている電子機器。
【請求項19】
伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部の少なくとも一方が1つの筐体内に複数配置されている第1の電子機器と、
第1の電子機器の各変調部と対応する復調部及び第1の電子機器の各復調部と対応する変調部のそれぞれが1つの筐体内に配置されている第2の電子機器と、
を備え、
第1の電子機器と第2の電子機器が定められた位置に配置されたとき、変調部で変調された変調信号を無線信号として伝送可能にする無線信号伝送路が形成されるようになっており、
変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、
隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される3次の相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、
各搬送周波数が設定されている電子機器。
【請求項20】
伝送対象信号を変調する変調部と変調部で変調された変調信号を復調する復調部とをそれぞれ複数設けておき、
変調部と復調部とでなるそれぞれの組において使用するそれぞれ異なる周波数の搬送周波数について、
隣接する2つの搬送周波数に基づいて生成される3次の相互変調歪成分の周波数は、残りの各搬送周波数に基づく変調信号の受信帯域内の何れにも存在しないように、各搬送周波数を設定する信号伝送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−89997(P2012−89997A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233695(P2010−233695)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]