信号伝送装置
【課題】
固定部に対して回転可能な回転部から固定部に信号を光伝送するシステムにおいて、光軸ずれによる受光レベル変動を軽減する。
【解決手段】
固定部(121)に対して回転部(122)を回転可能に支持する機構中で、LED回路(101)がフォトダイオード(106)と対面する。測定モードで、回転部(122)の制御部(134)は、所定の回転角度位置でLED回路(101)を一定電流で駆動する。固定部(121)の制御部(153)は、フォトダイオード(106)の出力から各回転角度位置での受光レベルを計測し、その角度依存をEEPROM(154)に格納する。回転時、回転部(122)は、固定部(121)に回転角度位置を伝送する。固定部(121)の制御部(153)は、フォトダイオード(106)の出力を増幅する増幅回路(150)の増幅率を回転角度位置に応じた増幅率に制御する。
固定部に対して回転可能な回転部から固定部に信号を光伝送するシステムにおいて、光軸ずれによる受光レベル変動を軽減する。
【解決手段】
固定部(121)に対して回転部(122)を回転可能に支持する機構中で、LED回路(101)がフォトダイオード(106)と対面する。測定モードで、回転部(122)の制御部(134)は、所定の回転角度位置でLED回路(101)を一定電流で駆動する。固定部(121)の制御部(153)は、フォトダイオード(106)の出力から各回転角度位置での受光レベルを計測し、その角度依存をEEPROM(154)に格納する。回転時、回転部(122)は、固定部(121)に回転角度位置を伝送する。固定部(121)の制御部(153)は、フォトダイオード(106)の出力を増幅する増幅回路(150)の増幅率を回転角度位置に応じた増幅率に制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機構を介して信号を伝送する信号伝送装置に関し、より具体的には、エンドレスに回転可能な回転機構の、固定部と回転部との間で信号を伝送する信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンドレスに回転可能な回転機構を有した装置における、固定部と回転部の間の信号伝送は、スリップリングを使用して信号伝送する方式と、発光素子と受光素子の間の光結合による光伝送方式が知られている。
【0003】
スリップリング方式では、スリップリング上を固定ブラシが摺動しながら信号伝送するので、機械的接触に伴うノイズ発生や、長時間の連続摺動により、インピーダンスが上昇する。この結果、特に映像信号などの高周波伝送において信号伝送性能が劣化する。
【0004】
光伝送方式は機械的な接触が無いので、機械的接触に伴うノイズが発生せず、またインピーダンス上昇による伝達性能の劣化がない。しかし、発光素子と受光素子間の光軸にずれが生じると、信号伝送性能が劣化する。特許文献1には、回転部に配置した発光素子と、固定部に配置した受光素子との間に中空円筒状の導光板を設け、回転に関わらず発光素子の出力光を受光素子に導くようにした構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−154207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された構成では、中空円筒上の導光板がコストアップ要因になるだけでなく、装置が大型化するという問題点がある。
【0007】
本発明は、導光板を用いない光伝送方式の信号伝送装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る信号伝送装置は、固定部に対して回転可能な回転部から前記固定部に信号を伝送する信号伝送装置であって、前記回転部に配置され、前記信号を搬送する光信号を出力する発光素子と、前記固定部に配置され、前記光信号を受光する受光素子と、前記受光素子の出力から前記信号を受信する受信手段と、前記固定部に対する前記回転部の複数の回転位置に対する、前記発光素子の駆動レベル又は前記受信手段の受信特性を記憶する記憶手段と、前記固定部に対する前記回転部の現在の回転位置に応じて、前記記憶手段を参照し、前記発光素子の駆動レベル又は前記受信手段の受信特性を、前記回転位置に応じた変化が少なくなるように制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光伝送のための発光素子と受光素子の光軸関係が回転部の回転により変動する場合でも、良好な光伝送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例を組み込んだ旋回カメラの概略構成ブロック図を示す。
【図2】旋回カメラの旋回構造を示す中央断面図である。
【図3】LEDとフォトダイオードの光軸にずれがある場合の波形例である。
【図4】本実施例を使用するネットワークカメラシステムの概略構成図を示す。
【図5】測定モードでの回転部と固定部の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】増幅回路の回路例である。
【図7】ピークホールド回路の回路例である。
【図8】2値化回路の回路例である。
【図9】図6に示す増幅回路の抵抗値と増幅率の関係を示す表である。
【図10】増幅回路の入力電圧と出力電圧の関係例である。
【図11】EEPROMの記憶値例である。
【図12】パンコマンドに対する回転部と固定部の処理内容を示すフローチャートである。
【図13】回転角度に応じて閾値電圧を変更するようにした2値化回路の回路構成図である。
【図14】回転角度に応じて閾値電圧を変更するようにした場合のEEPROM154の記憶例である。
【図15】2値弁別閾値を固定とした場合と回転角度に依存して変更する場合のフォトダイオードの出力波形例である。
【図16】回転角度に応じて閾値電圧を変更するようにした場合のパン回転処理のフローチャートである。
【図17】LEDの駆動電流を回転角度に依存して変更する場合のLED回路の回路例である。
【図18】LEDの駆動電流を回転角度に依存して変更する場合のEEPROM154の記憶例である。
【図19】LEDの駆動電流を一定とした場合と回転角度に依存して変更する場合のフォトダイオードの出力波形例である。
【図20】回転部を回転駆動する手段と回転位置検出手段を固定部に配置した実施例の概略構成ブロック図である。
【図21】固定部から回転部への光伝送手段を追加した光伝送系の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の一実施例を組み込んだ旋回カメラの概略構成ブロック図を示す。図4は、本実施例を使用するネットワークカメラシステムの概略構成図を示す。
【0013】
129は、図1に示す構成の旋回カメラである。121は旋回カメラ129の固定部であり、監視カメラとして使われる場合は、壁や天井に装着される。122は旋回カメラ129の回転部であり、ネットワーク126を介して接続されているビューア128からのパン制御コマンドに応じて、水平方向(パン方向)に回転する。後述するが、回転部122は、固定部121の所定軸線を回転中心としてエンドレスに回転可能である。
【0014】
123は撮影レンズである。撮影レンズ123による光学像は、光電変換され、データ圧縮されて、回転部122から固定部121に光伝送される。
【0015】
124はネットワークコネクタであり、ネットワークケーブル125を介してネットワーク126に接続する。固定部121は、回転部122から光伝送された映像信号をネットワーク送信可能な信号に変換し、ネットワーク126を介してパソコン128に送信する。ネットワークケーブル125は図示しないハブを介してネットワーク126に接続する。ネットワーク126は例えば、インターネットを含む。
【0016】
旋回カメラ129による映像を鑑賞するためのビューアとしてのパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略す。)128は、ネットワークケーブル127を介してネットワーク126に接続する。パソコン128は、旋回カメラ129からの圧縮された映像信号をネットワーク126経由で受信し、表示する。パソコン128には、旋回カメラ129の撮影方向を制御するアプリケーションソフトウエア(ビューア)がインストールされている。ユーザは、例えば、パソコン128のモニタ画面上にビューアにより表示されるウインドウ中で撮像方向をスクロールバーなどで指定できる。ビューアは、指定された撮影方向への回転を指示するパン制御コマンドをネットワーク126経由で旋回カメラ129に送信する。ビューアは、測定モードを指示するアイコンを表示し、ユーザは,指定したい測定モードに対応するアイコンを選択する。ビューアは、選択されたアイコンに応じた測定コマンドを生成し、ネットワーク126経由で旋回カメラ129に送信する。
【0017】
図2は、旋回カメラ129の旋回構造を示す中央断面図である。図2(a)はスリップリングにおける光伝送系の発光素子と受光素子の光軸が合致している場合を示す。図2(b)は、発光素子の光軸が受光素子に対して傾いている場合を示す。
【0018】
図2(a)において、101〜104は、旋回構造の回転部122における構成部分である。斜線で示した105〜109は、旋回構造の固定部121における構成部分である。固定部121に対して回転部122は、水平方向(パン方向)にエンドレスに回転可能な構造になっている
【0019】
101は発光素子としての発光ダイオード(LED)を有するLED回路であり、回転部122からの圧縮された映像信号を100MHz程度の帯域で搬送する光信号を発生する。102はスリップリングであり、固定部121の電源線と回転部122の電源線を電気的に接続する。固定部121の電源線には、100kHz程度のパン制御コマンドなどの制御コマンドが重畳されている。100kHz程度の低周波にすることで、制御コマンド信号は、スリップリング102を介して安定的に固定部121から回転部122に伝送される。
【0020】
103は、回転部122に配置した構成部品を支えるモールド部品である。104は回転部122のプリント基板であり、図1に示す機能ブロックを実現する電気部品が装着されている。
【0021】
105は固定部121のモールド部品であり、回転部122のモールド部品103を支えることにより、回転部122全体を支える。固定部121のモールド部品105と回転部122のモールド部品103の接合部分は、パン回転しやすいようにリブを立てて点接触するようにしてもよい。またベアリングを用いて摩擦を少なくする構造にしてもよい。
【0022】
106は受光素子としてのフォトダイオードであり、LED回路101のLEDから出力される信号光を受光し、電気信号に変換する。107はフォトダイオード106の受光面である。
【0023】
108は固定部121のプリント基板であり、図1に示す機能ブロックを実現する電気部品が装着されている。
【0024】
109はスリップリング102に摺動接触するブラシであり、固定部121からの電源電圧と制御コマンドをスリップリング102に印加する。
【0025】
図2(a)に示す回転構造をとることにより、回転部122は、固定部121に対して360度以上のエンドレスの回転が可能でありながら、どの回転角度でも信号伝送と電源供給が可能になる。
【0026】
図2(a)に示すように、LED回路101は、回転部122の回転中心軸線上にあり、その回転中心軸線に沿って信号光をフォトダイオード106の受光面107に向け出力する。従って、回転部122がどの角度に回転しても、LED回路101の出力光は、フォトダイオード106に入射する。
【0027】
図2(b)に示す断面図では、LED回路101のLEDが傾いて取り付けられ、またフォトダイオード106の取り付け位置が右方向にずれている。この配置例では、例えば、LED回路101の出力光軸から右に40度ほど傾いた角度位置110にフォトダイオード106の受光面107が存在する。LED回路101の出力光の一部しか、フォトダイオード106に入射しない。本実施例で用いるLED回路101では、40度の傾きで60%光量が低下する。
【0028】
図2(c)は、図2(b)に配置のケースで、180°パン回転した場合のLED回路101のLEDとフォトダイオード106の位置関係を示す。LED回路101のLEDの出力光軸から左に20度ほど傾いた角度位置111にフォトダイオード106の受光面107が位置する。ずれた入射により、フォトダイオード106の入射光量が、光軸があっている場合よりも、例えば30%程度、少なくなる。
【0029】
図3(a)は、LED回路101のLEDに一定電流を印加したときの、パン回転角度に応じたフォトダイオード106の出力電流を示す。170は、図2(a)に示すようにLED回路101のLEDとフォトダイオード106の光軸があっている場合の、フォトダイオード106の出力電流を示す。171は、図2(b),(c)に示すようにLED回路101のLEDとフォトダイオード106の光軸が傾いている場合の、フォトダイオード106の出力電流を示す。電流171の大きさは、パン角度に対して変動し、位置172で最大になり、位置173で最小になる。位置173は、例えば,図2(b)に示す位置関係に対応し、位置172は、図2(c)に示す位置関係に対応する。
【0030】
図3(b)は、測定モードでLED回路101のLEDをパルス駆動した場合の、位置172,173に相当する位置でのフォトダイオード106の出力電流の変化の一例を示す。175はLED回路101のLEDに印加される測定信号(パルス電流)を示す。176は、位置172におけるフォトダイオード106の出力電流を示す。177は、位置173におけるフォトダイオード106の出力電流を示す。
【0031】
本実施例では、以下の構成を採用することで、パン角度位置に応じてフォトダイオード106の出力電流レベルが変動する場合でも、支障なく光伝送できるようにしている。図1を参照して、そのための構成と動作を詳細に説明する。
【0032】
回転部122では、映像信号生成手段である撮像部130が、レンズ123による光学像を所定形式の映像信号に変換する。撮像部130は、光学像を画像信号に変換する撮像素子と、撮像素子の出力画像信号に色バランス調整及びγ補正などの公知のカメラ信号処理を施すカメラ信号処理回路を具備する。圧縮回路131は、撮像部130から出力される映像信号をMPEG又はH.264などの動画圧縮方式で圧縮し、パケット化された圧縮映像信号を生成する。パケット化された圧縮映像信号はパケット終了を示すコードEND CODEを持つ。制御部134は、パケット終了コードEND CODEにより各パケットの終端を検出する。以下の説明では、圧縮回路131の出力信号をパケット信号と表記する。
【0033】
回転部122の制御部134は、固定部121からの要求に応じて又は定期的に、パン角度情報を合成回路132に出力する。合成回路132は、圧縮回路131からのパケット信号の合間に制御部134からの制御/ステータス信号を挿入して伝達回路133に出力する。すなわち、合成回路132は、パケット信号に制御部134からの信号を時分割多重する時分割多重回路である。ただし、合成回路132は、測定モードでは、制御部134から測定信号175を受信すると、パケット信号出力を禁止し、測定信号175のみを伝達回路133に出力する。
【0034】
伝達回路133は、パラレルで入力される合成回路132の出力信号をシリアル信号に変換し、LED回路101に供給する。LED回路101は、伝達回路133の出力信号を光信号に変換し、フォトダイオード106に向け出射する。
【0035】
電源回路139は、固定部121の電源回路159からスリップリング102を介して供給される電力を元に、回転部122の各部に必要な電源電圧を供給する。
【0036】
制御部134は、固定部121からスリップリング102を介して受信するパン制御信号に従い、パン回転駆動部136によりパン回転の加速減速を制御する。制御部134は、回転位置検出機構138からの回転位置情報に従い、パン回転を制御すると共に、パン角度情報を生成して合成回路132に送信する。制御部134はまた、固定部121からスリップリング102を介して受信する測定モード信号に従い測定信号を生成し、合成回路132に供給する。記憶部135は、制御部134の制御に必要な変数などを記憶する。
【0037】
パン回転駆動部136は、制御部134からの制御信号に従いパルス信号を生成し、電流増幅して、パン回転機構137に出力する。パン回転機構137はパルスモータを具備し、パン回転駆動部136からのパルス信号に従い回転部122を固定部121に対して回転させる。
【0038】
回転位置検出機構138は、ホームポジジョンを検出する手段と回転位置を検出する手段を具備し、パン回転に応じた位置情報を制御部134に伝達する。
【0039】
固定部121の構成と基本的な動作を説明する。
【0040】
フォトダイオード106は、LED回路101からの光信号を受光し、対応する電気信号を出力する。増幅回路150は、フォトダイオード106の出力電流を電圧に変換し、制御部153により制御される、回転角度に応じた増幅率で増幅する。増幅回路150の詳細は、図6を参照して後述する。
【0041】
ピークホールド回路151は、フォトダイオード106の出力電流の電圧変換し、ピーク電圧検出する。ピーク電圧を検出するのは、図3(b)に示すように、フォトダイオード106の出力電流はパルス波形を積分した波形となるからである。ピークホールド回路151は、検出したピーク電圧値を制御部153に供給する。ピークホールド回路151の詳細は、図7を参照して、後述する。
【0042】
2値化回路152は、増幅回路150の出力信号を所定の閾値で2値化する。2値化により生成された2値化信号は、パルストランス156と制御部153に供給される。なお、制御部153は、測定モードの開始時には、生成した2値化信号をパルストランス156に出力しないように、2値化回路を制御する。2値化回路152の詳細は、図8を参照して、後述する。
【0043】
制御部153は、測定モードのときに回転部122から送信されたパン角度情報をEEPROM154に格納する。制御部153は、ピークホールド回路151から出力されるピーク電圧値をデジタル化し、増幅回路150の増幅率を計算する。制御部153は、計算された増幅率を回転部122の回転角度と共に、EEPROM154に記憶する。制御部153はまた、ビューア128から送信されたパン制御コマンド及び測定コマンドなどのコマンド信号を受信し、信号重畳回路158に転送する。
【0044】
信号重畳回路158は、制御部153からのコマンド信号を100KHz程度の低周波数で電源に重畳し、ブラシ109を介して回転部122のスリップリング102に供給する。スリップリング102は、長時間の使用によりインピーダンスが上昇するが、100KHz程度であれば、伝送に支障ない。
【0045】
パルストランス156は、2値化回路152からの2値化信号をインピーダンス分離してネットワークコネクタ124に転送する。パルストランス156はまた、ネットワークコネクタ124からの信号(例えば、ビューアからのコマンド)をインピーダンス分離して受信PHY157に転送する。ネットワークコネクタ124にはネットワークケーブル125が接続され、ネットワーク126を介してビューア128と通信する。
【0046】
受信PHY157は、パルストランス156からの信号を電圧変換及びシリアルパラレル変換して、制御部153に供給する。
【0047】
固定部121に配置した電源回路159は、固定部121の回路素子に電源を供給するとともに、信号重畳回路158、ブラシ109及びスリップリング102を介して回転部122に電源を供給する。ブラシ109はスリップリング102に物理的に接触し、スリップリング102との電気接続を常時維持する。
【0048】
図6は、増幅回路150の詳細と、増幅回路150に関連する制御部153の内部回路を示す。
【0049】
フォトダイオード106は、LED回路101のLEDからの光信号が入射すると、カソードCATからアノードANOの方向に電流を発生する。抵抗R9はフォトダイオード106で発生した電流を電圧に変換する。DCカップリングコンデンサC5は、発生した電圧のDC成分を取り除き、AC成分のみをオペアンプA2に伝達する。オペアンプA2及び抵抗R5〜R8で構成される回路は、非反転増幅回路を構成する。
【0050】
オペアンプA2の入力電圧をVi2、抵抗R5,R6,R7の合成抵抗値をRp2とすると、オペアンプA2の出力電圧Vo2は、
Vo2=(R8+Rp2)/Rp2×Vi2
で表される。
【0051】
制御部153のポート制御レジスタ185は、電界効果トランジスタF5,F6,F7のオン/オフを制御する。この制御により、オペアンプA2で構成される非反転増幅回路の増幅率を変更できる。図9は、抵抗値と増幅率の関係を示す。欄194は、電界効果トランジスタF5,F6,F7によりオン(グランドに接続)にされる抵抗を示す。図9では、抵抗R5,R6,R7の抵抗値をそれぞれR5=2KΩ、R6=3KΩ、R7=4KΩとしている。欄191は合成抵抗Rp2の値を示す。欄192は非反転増幅回路の増幅率を示す。欄193はピークホールド回路151で検出した入力電圧Vi2の範囲を示す。欄193に示す電流範囲に対して欄192に示す増幅率が選択されるように、制御部153は、電界効果トランジスタF5,F6,F7のオン/オフを制御することになる。
【0052】
図10は、欄192に示す増幅率を使用した際の、入力電圧Vi2と出力電圧Vo2の関係を示す。入力電圧が30mVから120mVの範囲において、出力電圧Vo2は340mV〜500mVの範囲となる。増幅回路150は、2値化回路152で2値化できる電圧を出力可能となる。
【0053】
制御部153の中央処理回路としてのCPU181は、ROM182に記憶されたマイクロ命令を次々と処理し、実行することで、制御部153自体及び各部を制御する。ROM182はマイクロ命令を記憶し、RAM183は、CPU181が処理する際の変数などを記憶する。
【0054】
バスライン184が、CPU181、ROM182、RAM183、EEPROM154及びポート制御レジスタ185間にデータを伝送する。CPU181は、電界効果トランジスタF5〜F7をオン/オフする制御値をポート制御レジスタ185に格納することで、電界効果トランジスタF5〜F7を制御する。
【0055】
EEPROM154には、複数のパン回転角度について適用すべき増幅率が、受信特性の一要素として格納される。図11は、EEPROM154に記憶される値の一例を示す。EEPROM154には、入力電圧Vi2とオンにする抵抗との対応を10°刻みで格納してある。
【0056】
入力電圧Vi2が電流171(図3)に示すのと同様な分布を示す場合で、回転角度0°のとき57mV、回転角度10°のとき65mV、回転角度180°のとき90mV、回転角度350°のとき65mVであるとする。増幅率は、図9に示す表から、それぞれ6.9、6、4.3及び6となる。オンにする抵抗は、0°のとき抵抗R6,R7、10°のとき抵抗R5、180°のとき抵抗R6、350°のとき抵抗R5となる。
【0057】
CPU181は、EEPROM154の記憶内容を呼び出し、パン回転角度に応じた増幅率にするために電界効果トランジスタF5〜F7のオン/オフを制御する。
【0058】
図7は、ピークホールド回路151の回路例を示す。抵抗R1とコンデンサC1は積分回路を構成し、フォトダイオード106のカソードに生じるノイズを除去する。ダイオードD1は、オペアンプA1の出力が出力電圧187よりも高くなった場合に電流を流し、コンデンサC2を充電して、出力電圧を上昇する。抵抗R2は放電用抵抗である。電圧187はピーク検出の電圧値であり、制御部153に供給される。
【0059】
制御部153は、電圧値187をデジタル値に変換するAD変換器188を内蔵する。制御部153のCPU181は、ピークホールド回路151の出力電圧値を、回転角度に応じた検出電圧としてEEPROM154に格納する。図11に示す表の「検出電圧」が、ピークホールド回路151で検出された電圧値を示す。
【0060】
図8は、2値化回路152の回路例を示す。増幅回路150の出力電圧が閾値V10よりも高い場合、オペアンプA11はハイ電圧を出力し、閾値電圧V10よりも低い場合、ロー電圧を出力する。抵抗R10,R11は、ヒステリシス特性を持たせるために配置される。
【0061】
オペアンプA11の出力、すなわち、2値化された信号は、スイッチSW10を介してパルストランス156に供給される。スイッチSW10は、映像信号を送信するときは接続状態又はクローズ状態になり、測定モード中などでは非接続状態又はオープン状態になるように制御部153により制御される。測定モードでは、2値化回路152の出力は、映像信号を示すものではないので、スイッチSW10をオープン状態又はオフにする。SW10がオフのとき、外部出力は禁止される。
【0062】
図5は、ビューア128からの測定モード開始の指示を受信したときの、回転部122と固定部121の処理内容を示すフローチャートである。左側が固定部121の処理を示し、右側が回転部122の処理を示す。
【0063】
ステップS200で、固定部121の制御部153は、測定モード開始の指示をビューア128からネットワーク経由で受信する。ステップS201で、制御部153は、測定モードへの移行を回転部122に通知する。先に説明したように、制御部153は測定コマンドを生成し、信号重畳回路158、ブラシ109及びスリップリング102を介して、回転部122の制御部134に送信する。
【0064】
ステップS202で、制御部134は、撮像部130及び圧縮回路131を停止状態にして映像信号を出力しないように制御する。
【0065】
ステップS203で、固定部121は回転部122にホームポジションコマンドを送信する。
【0066】
ステップS207で、制御部153は、スイッチSW10をオープン状態に切り替え、2値化回路152の出力信号がネットワーク126に出力されないようにする。
【0067】
回転部122の制御部134は、ホームポジションコマンドを受信すると、ステップS204で、パン回転機構137を回転させる。
【0068】
ステップS205で、制御部134は、回転位置検出機構138の出力によりホームポジションに到達したかどうかを検出する。ホームポジションを検出するまで、制御部134は、ステップS204,205を繰り返す。
【0069】
ステップS205でホームポジションを検出すると、ステップS206で、制御部134は測定信号175(図3(b))を生成し、LED回路101に光信号を生成させる。固定部121では、フォトダイオード106がLED回路101からの光信号を受光し、光電変換して、ピークホールド回路151に供給する。ステップS208で、ピークホールド回路151がピーク電圧を検出する。制御部153は、検出された電圧値を取り込む。
【0070】
ステップS209で、制御部153は、回転角度に対応した検出電圧を、図11に示すようにEEPROM154に格納する。
【0071】
ステップS210で、制御部153は、図9に示すテーブルを参照し、検出電圧に基づいた増幅率とオンにする抵抗を指定する。たとえば、検出電圧が57mAであれば、図9に示すテーブルから抵抗R6,R7をオンにするように指定することになる。
【0072】
ステップS211で、制御部153は、指定した抵抗を図11に示すようにEEPROM154に格納する。ステップS212で、制御部153は、パン角度が350度になったかどうかを判別し、350度に満たない場合は、ステップS213に進む。
【0073】
ステップS213で、制御部153は、パン回転コマンドを生成する。本実施例では、10度ずつパン回転するようにパン回転コマンドを生成するようにしている。
【0074】
ステップS208からステップS213を繰り返すことで、制御部153は、図11に示すような、回転角度と検出電圧と指定抵抗の対応を示すテーブルをEEPROM154に完成する。
【0075】
ステップS214で、回転部122の制御部134は、パン回転コマンドを受信して、測定信号を停止する。ステップS215で、制御部134は、パン回転機構137を回転させる。ステップS216で、制御部134は、回転位置検出機構138が10度回転したことを検出すると、パン回転機構137によるパン駆動を停止し、ステップS206に戻って測定信号を出力する。
【0076】
パン回転中に測定信号をステップS214で停止するのは、固定部121のピークホールド回路151での誤検出を防止するためである。
【0077】
ステップS212で、制御部153は、パン角度が350度になったと検出すると、ステップS230に進み、測定モード終了通知を回転部122に伝達する。この測定モード終了通知に応じて、回転部122の制御部134は、ステップS232で測定信号を停止する。ステップS234で、回転部122の制御部134は、測定モード終了信号を生成し、固定部121及びビューア128に送信する。ステップS235で、制御部134は、撮像部130及び圧縮回路131を能動状態にして、映像信号を出力可能にする。
【0078】
他方、ステップS233で、固定部121の制御部153は、SW10をオン状態とする。これにより、固定部121は、回転部122からの信号をネットワーク126経由でビューア128に送信できる状態になる。
【0079】
本実施例では、測定モードはビューア128からの測定コマンドにより実行されるが、旋回カメラ129の電源オン時に実行するようにしてもよい。
【0080】
図12は、旋回カメラ129がビューア128からネットワーク126を介してパンコマンドを受け取った際の処理手順を示すフローチャートである。左側が固定部121の処理を示し、右側が回転部122の処理を示す。
【0081】
ステップS250で、固定部121の制御部153がパンコマンドを受信すると、ステップS251で、制御部153は、パンコマンドを回転部122の制御部134に転送する。
【0082】
ステップS252で、回転部122の制御部134は、パンコマンドに従いパン回転機構137にパン回転を実行させる。ステップS253で、制御部134は、圧縮回路131から出力されるパケット信号のパケット終了コードEND CODEを検出することで、パケット終了を判別する。パケット終了コードを検出すると、ステップS269で、制御部134は、圧縮回路131で生成するパケット信号の合成回路132への伝達を一時停止するように圧縮回路131を制御する。圧縮回路131は、内部に図示しない記憶手段を持ち、生成したが出力しないパケット信号を一時保持する。
【0083】
ステップS254で、制御部134は、回転位置検出機構138から位置情報を得てパン角度情報を生成する。ステップS255で、制御部134は、生成したパン角度情報を固定部121に伝達する。
【0084】
ステップS256で、固定部121の制御部153は、コードEND CODEを検出して、パケット終了を判別する。具体的には、制御部153は、2値化回路152で2値化されたパケット信号からコードEND CODEを検出する。
【0085】
ステップS257で、制御部153は、2値化回路152のSW10をオフにする。SW10をオフにすることで、パン角度情報がパルストランス156に伝達されず、従って、ネットワーク126に出力されない。
【0086】
ステップS258で、制御部153が、ステップS255で回転部122から送信されたパン角度情報を取り込む。ステップS259で、制御部153は、EEPROM154に図5に示すフローに従って記憶された表を参照し、パン角度に応じた抵抗を指定する。すなわち、制御部153は、回転部122の現在の回転位置に応じた制御値(ここでは、増幅率)をEEPROM154から読み出す伊。
【0087】
例えば、パン角度が0°の場合、図11により、抵抗R6,R7を指定することになる。ステップS260で、制御部153は、指定抵抗に対応する電界効果トランジスタがオンになるように、ポート制御レジスタ185に所定値をセットする。例えば、抵抗R6,R7が指定される場合、電界効果トランジスタF6,F7をオン状態にする。
【0088】
図6に示す増幅回路は、フォトダイオード106の出力電流を電圧変換し、図9に示す増幅率で増幅する。たとえば、抵抗R6,R7がオンになった場合、制御部153は、図6に示す増幅回路に増幅率6.9をセットする。
【0089】
ステップS261で、制御部153は、2値化回路152のSW10をオン状態にする。
【0090】
ステップS262で、制御部153は、回転部122にパケットを要求する。この要求に対し、ステップS263で、回転部122の制御部134は、ステップS269で一時停止したパケット信号の送信を開始する。ステップS264で、固定部121の制御部153は、回転部122からのパケット受信を開始する。固定部121では、増幅回路150がパン角度位置に応じた増幅率で受信信号を増幅する。この増幅率の設定により、図2(b),(c)で説明したようなLED回路101のLEDとフォトダイオード106の光軸ずれがあったとしても、良好な信号伝送特性を実現できる。固定部121は、受信したパケットで伝送された映像情報を、ネットワーク126を介してビューア128に送信する。
【0091】
ステップS265で、制御部153は、パケット終了を判別する。パケット伝送が終了するまで、パケット受信を継続する。
【0092】
パケット伝送が終了すると、ステップS266で、制御部153は、2値化回路152のSW10をオフにする。他方、回転部122の制御部134は、ステップS267で、ステップS265と同様に、パケット終了を判別する。パケット送信が終了するまで、パケット送信を継続する。
【0093】
パケット送信が終了すると、ステップS268で、制御部134は、パン駆動を終了するか否かを判別する。すなわち、パン回転機構137による回転動作が終了したかどうかを判別する。パン回転機構137による回転動作が終了していなければ、制御部134は、ステップS269に戻り、パン角度情報の生成と送信、パン回転、及びをパケット信号の送信を実行する。パン回転機構137による回転動作が終了していれば、ステップS270で、制御部134は、パン終了情報を固定部121に送信する。
【0094】
ステップS271で、固定部121の制御部153は、パン終了情報の受信を判別する。パン終了情報を受け取っていない場合、制御部153は、ステップS258〜S271の処理を繰り返す。すなわち、増幅回路150の増幅率をパン角度位置に応じて調整し、回転部122からのパケット信号を受信する。他方、パン終了情報を受け取ると、ステップS272で、制御部153は、2値化回路152のSW10をオンにする。これは、パン回転が終了した後に回転部122から伝達されたパケット信号を、ネットワーク126経由でビューア128に繰り返し送信するためである。
【0095】
本実施例では、固定部121から回転部122にスリップリング102及びブラシ109を用いて電源とコマンド信号を伝送している。しかし、ムービングトランスを用いて、電源とコマンド信号を伝送しても良い。
【0096】
本実施例では、受信特性の一要素としてパン角度に応じた増幅率を不揮発性メモリであるEEPROM154に記憶していたが、揮発性メモリであるRAMに記憶してもよい。また、旋回カメラの電源オン/オフ時に自動的に測定モードを実行し、パン角度に応じた増幅率を揮発性メモリに記憶するようにしてもよい。
【実施例2】
【0097】
フォトダイオード106の出力信号の2値弁別閾値を回転角度に応じて変更する実施例を説明する。
【0098】
図15(a)は、フォトダイオードの出力信号の2値弁別閾値を固定とした場合のタイミングチャートを示す。図15(b)は、フォトダイオードの出力信号の2値弁別閾値を回転角度に依存して変更するようにした場合のタイミングチャートを示す。
【0099】
図15(a)において、310はLED回路101のLEDに印加される送信信号又は駆動信号である。311,312はフォトダイオード106の出力電流を電圧に変換した信号であり、311は光量の多い時の信号波形を示し、312は光量の少ない時の信号波形を示す。313,314は信号311,312を2値弁別する閾値電圧を示す。図15(a)では、閾値電圧313,314は互いに等しく、信号313のマーク/スペースに対してほぼ中間値に設定されている。図15(a)に示す例では、信号312に対して閾値電圧314が高すぎるので、正しく2値弁別することができない。
【0100】
他方、図15(b)は、回転角度に応じて閾値電圧を変更する本実施例の波形例を示す。図15(b)では、フォトダイオード106の出力電流が小さくなる回転角度に対して符号315に示すように閾値電圧を小さくしている。これにより、回転部のどの回転角度に対しても、2値化回路152は、受信信号を正しく2値化できる。
【0101】
図13は、回転角度に応じて閾値電圧を変更するようにした2値化回路152の回路構成図を示す。制御部153のDA変換器301が回転角度に応じた閾値電圧を発生し、オペアンプA11のプラス端子に供給する。
【0102】
図14は、本実施例におけるEEPROM154の記憶内容例を示す。図5を参照して説明した測定モードでの処理により、回転角度302に応じた検出電圧303を記憶し、検出電圧303のほぼ中間の電圧を閾値電圧304としてEEPROM154に記憶する。本実施例では、回転角度に応じた2値弁別閾値を受信特性の一要素としてEEPROM154に記憶する。
【0103】
図16は本実施例におけるパン回転処理のフローチャートを示す。左側が固定部121の処理を示し、右側が回転部122の処理を示す。図12とおなじ処理は、詳細な説明を省略する。
【0104】
ステップS258で、固定部121は、パン回転角度を回転部122から受け取り、ステップS320で、制御部153は、EEPROM154に記憶する、パン角度に応じた閾値電圧を指定する。例えばパン角度が0°の場合、閾値電圧304(図14)から28mVを指定する。
【0105】
ステップS321で、制御部153は、指定した閾値電圧をDA変換器301からオペアンプA11のプラス端子に供給する。この処理により、回転角度に応じた閾値電圧が2値化回路152に設定される。これにより、図15(b)に示す出力信号312のような状態でも、正しく2値化可能となる。
【0106】
2値化回路152の閾値を回転角度に応じて変更する構成を、実施例1として説明した、回転角度に応じて増幅率を制御する構成と組み合わせてもよい。
【実施例3】
【0107】
受信信号レベルが回転角度に関わらず一定又はほぼ一定となるように、回転角度に応じてLED回路101のLEDの駆動レベルを制御する実施例を説明する。
【0108】
図19(a)は、LEDの駆動レベルを回転角度に関わらず一定とした場合のタイミングチャートを示す。図19(b)は、受信信号レベルが回転角度に関わらず一定又はほぼ一定となるように、LEDの駆動レベルを回転角度に応じて変更する本実施例のタイミングチャートを示す。
【0109】
図19(a)において、310はLED回路101のLEDに印加される送信信号又は駆動信号である。311,312はフォトダイオード106の出力電流を電圧に変換した信号であり、311は光量の多い時の信号波形を示し、312は光量の少ない時の信号波形を示す。
【0110】
本実施例では、図19(b)に実線310で示すように、受信信号レベルが低くなってしまうような回転角度では、破線360に示すようにLED駆動信号の振幅を大きくする。この結果、受信信号が符号312に示すレベルから破線361で示すレベルに増加する。
【0111】
図17は、本実施例のLED回路101の回路例を示す。350はLEDである。伝達回路133はLED350及び抵抗R30を介して制御部134のDA変換器352の出力に接続する。制御部134は、DA変換器352の出力電圧を制御することで、LED350に流れる駆動電流を制御できる。例えば、伝達回路133の出力信号は、3V振幅のパルス信号である。LED350は順方向電圧が0.6Vであり、抵抗R30の抵抗値は40Ωにしている。
【0112】
図18は、EEPROM154の記憶内容例を示す。実施例1と同様、測定モード(図5)の処理を行い、回転角度353に応じた検出電圧354を記憶する。検出電圧354の電圧値は、LED電流を24mAにした場合に、ピークホールド回路151が検出する電圧値である。
【0113】
本実施例では、制御部134は、検出電圧354に応じて、補正後のピークホールド回路151での電圧が約120mVになるように、LED電流355を決定する。制御部134は、求めたLED電流355からDA変換器352の出力電圧356を決定する。
【0114】
図18に示す例では、回転角度353が0°のとき、検出電圧が57mVである。57mVはLED電流を24mAにしてピークホールド回路151で検出した結果であり、補正後の電圧を120mVにするLED電流355は、
120mV/57mV×24mA≒50mA
で求めることができる。
【0115】
同様に回転角度353が10°のとき、検出電圧が65mVである。補正後の検出電圧を120mVにするLED電流355は、
120mV/65mV×24mA≒44mA
となる。
【0116】
DA変換器352の出力電圧356は、LED電流355と、伝達回路133の出力信号の振幅電圧である3.0V、LED回路101のLEDの順方向電圧0.6V及び抵抗R30の抵抗値40Ωから求められる。すなわち、
DA変換器の出力電圧=振幅電圧3.0V−順方向電圧0.6V−抵抗40Ω×LED電流
である。たとえば回転角度0°のとき、DA変換器352の出力電圧は、3.0V−0.6V−40Ω×0.05A=0.4Vとなる。
【0117】
本実施例では、このようにDA変換器352の出力電圧を決定し、EEPROM154に記憶する。
【0118】
本実施例では、EEPROM154にLED電流355を記憶するようにしているが、パン回転処理で必要なのはDA変換器の出力電圧である。従って、LED電流355のEEPROM154への記憶は、必須では無い。
【実施例4】
【0119】
回転部を回転駆動する手段と回転位置検出手段を固定部に配置しても良い。図20は、本発明の実施例4の概略構成ブロック図を示す。本実施例では、固定部121aに回転部122aの回転に係わる手段、具体的には、パン回転駆動部136a、パン回転機構137a及び回転位置検出機構138aを配置した。パン回転機構137a、パン回転駆動部136a及び回転位置検出機構138aを固定部121aに配置したので、固定部121の制御部153aは、直接、パン回転位置を検出できる。
【0120】
この構成では、回転部から固定部にパン回転位置を伝達する必要が無いので、回転部122aに合成回路132が不要となる。
【実施例5】
【0121】
上記実施例では、回転部から固定部への信号伝送に光空間伝送を採用したが、固定部から回転部への信号伝送にも光空間伝送を採用しても良い。図21は、そのような構成の回転部と固定部との間の光空間伝送の概略構成図を示す。
【0122】
図21(a)において、501は回転部に配置されたLED(第1の発光素子)である。502は回転部に配置されたフォトダイオード(第1の受光素子)である。503は固定部に配置されたLED(第2の発光素子)である。504は固定部に配置されたフォトダイオード(第2の受光素子)である。回転部のある回転角度位置で、LED501とフォトダイオード504が対面し、LED503とフォトダイオード502が対面する。
【0123】
図21(b)は、図21(a)に示す位置から180度、回転部が固定部に対して回転したときのLED501,503及びフォトダイオード502,504の位置関係を示す。図21(b)に示すように、LED501がLED503と対面し、フォトダイオード502がフォトダイオード504と対面する位置になる。通常、LED501,503の出射角度は広いので、図21(b)に示すように、出射光軸と受光光軸が横にずれても、十分に強い光信号がフォトダイオード502,504に入射しうる。上記実施例で説明したように、回転角度に応じて、増幅率、閾値及び/又はLED駆動電流を制御することで、光による双方向伝送を実現できる。
【0124】
旋回カメラを用いたネットワークカメラシステムの実施例を説明したが、本発明は、回転機構をもった各種装置に応用可能である。
【0125】
本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機構を介して信号を伝送する信号伝送装置に関し、より具体的には、エンドレスに回転可能な回転機構の、固定部と回転部との間で信号を伝送する信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンドレスに回転可能な回転機構を有した装置における、固定部と回転部の間の信号伝送は、スリップリングを使用して信号伝送する方式と、発光素子と受光素子の間の光結合による光伝送方式が知られている。
【0003】
スリップリング方式では、スリップリング上を固定ブラシが摺動しながら信号伝送するので、機械的接触に伴うノイズ発生や、長時間の連続摺動により、インピーダンスが上昇する。この結果、特に映像信号などの高周波伝送において信号伝送性能が劣化する。
【0004】
光伝送方式は機械的な接触が無いので、機械的接触に伴うノイズが発生せず、またインピーダンス上昇による伝達性能の劣化がない。しかし、発光素子と受光素子間の光軸にずれが生じると、信号伝送性能が劣化する。特許文献1には、回転部に配置した発光素子と、固定部に配置した受光素子との間に中空円筒状の導光板を設け、回転に関わらず発光素子の出力光を受光素子に導くようにした構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−154207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された構成では、中空円筒上の導光板がコストアップ要因になるだけでなく、装置が大型化するという問題点がある。
【0007】
本発明は、導光板を用いない光伝送方式の信号伝送装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る信号伝送装置は、固定部に対して回転可能な回転部から前記固定部に信号を伝送する信号伝送装置であって、前記回転部に配置され、前記信号を搬送する光信号を出力する発光素子と、前記固定部に配置され、前記光信号を受光する受光素子と、前記受光素子の出力から前記信号を受信する受信手段と、前記固定部に対する前記回転部の複数の回転位置に対する、前記発光素子の駆動レベル又は前記受信手段の受信特性を記憶する記憶手段と、前記固定部に対する前記回転部の現在の回転位置に応じて、前記記憶手段を参照し、前記発光素子の駆動レベル又は前記受信手段の受信特性を、前記回転位置に応じた変化が少なくなるように制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光伝送のための発光素子と受光素子の光軸関係が回転部の回転により変動する場合でも、良好な光伝送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例を組み込んだ旋回カメラの概略構成ブロック図を示す。
【図2】旋回カメラの旋回構造を示す中央断面図である。
【図3】LEDとフォトダイオードの光軸にずれがある場合の波形例である。
【図4】本実施例を使用するネットワークカメラシステムの概略構成図を示す。
【図5】測定モードでの回転部と固定部の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】増幅回路の回路例である。
【図7】ピークホールド回路の回路例である。
【図8】2値化回路の回路例である。
【図9】図6に示す増幅回路の抵抗値と増幅率の関係を示す表である。
【図10】増幅回路の入力電圧と出力電圧の関係例である。
【図11】EEPROMの記憶値例である。
【図12】パンコマンドに対する回転部と固定部の処理内容を示すフローチャートである。
【図13】回転角度に応じて閾値電圧を変更するようにした2値化回路の回路構成図である。
【図14】回転角度に応じて閾値電圧を変更するようにした場合のEEPROM154の記憶例である。
【図15】2値弁別閾値を固定とした場合と回転角度に依存して変更する場合のフォトダイオードの出力波形例である。
【図16】回転角度に応じて閾値電圧を変更するようにした場合のパン回転処理のフローチャートである。
【図17】LEDの駆動電流を回転角度に依存して変更する場合のLED回路の回路例である。
【図18】LEDの駆動電流を回転角度に依存して変更する場合のEEPROM154の記憶例である。
【図19】LEDの駆動電流を一定とした場合と回転角度に依存して変更する場合のフォトダイオードの出力波形例である。
【図20】回転部を回転駆動する手段と回転位置検出手段を固定部に配置した実施例の概略構成ブロック図である。
【図21】固定部から回転部への光伝送手段を追加した光伝送系の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の一実施例を組み込んだ旋回カメラの概略構成ブロック図を示す。図4は、本実施例を使用するネットワークカメラシステムの概略構成図を示す。
【0013】
129は、図1に示す構成の旋回カメラである。121は旋回カメラ129の固定部であり、監視カメラとして使われる場合は、壁や天井に装着される。122は旋回カメラ129の回転部であり、ネットワーク126を介して接続されているビューア128からのパン制御コマンドに応じて、水平方向(パン方向)に回転する。後述するが、回転部122は、固定部121の所定軸線を回転中心としてエンドレスに回転可能である。
【0014】
123は撮影レンズである。撮影レンズ123による光学像は、光電変換され、データ圧縮されて、回転部122から固定部121に光伝送される。
【0015】
124はネットワークコネクタであり、ネットワークケーブル125を介してネットワーク126に接続する。固定部121は、回転部122から光伝送された映像信号をネットワーク送信可能な信号に変換し、ネットワーク126を介してパソコン128に送信する。ネットワークケーブル125は図示しないハブを介してネットワーク126に接続する。ネットワーク126は例えば、インターネットを含む。
【0016】
旋回カメラ129による映像を鑑賞するためのビューアとしてのパーソナルコンピュータ(以下、パソコンと略す。)128は、ネットワークケーブル127を介してネットワーク126に接続する。パソコン128は、旋回カメラ129からの圧縮された映像信号をネットワーク126経由で受信し、表示する。パソコン128には、旋回カメラ129の撮影方向を制御するアプリケーションソフトウエア(ビューア)がインストールされている。ユーザは、例えば、パソコン128のモニタ画面上にビューアにより表示されるウインドウ中で撮像方向をスクロールバーなどで指定できる。ビューアは、指定された撮影方向への回転を指示するパン制御コマンドをネットワーク126経由で旋回カメラ129に送信する。ビューアは、測定モードを指示するアイコンを表示し、ユーザは,指定したい測定モードに対応するアイコンを選択する。ビューアは、選択されたアイコンに応じた測定コマンドを生成し、ネットワーク126経由で旋回カメラ129に送信する。
【0017】
図2は、旋回カメラ129の旋回構造を示す中央断面図である。図2(a)はスリップリングにおける光伝送系の発光素子と受光素子の光軸が合致している場合を示す。図2(b)は、発光素子の光軸が受光素子に対して傾いている場合を示す。
【0018】
図2(a)において、101〜104は、旋回構造の回転部122における構成部分である。斜線で示した105〜109は、旋回構造の固定部121における構成部分である。固定部121に対して回転部122は、水平方向(パン方向)にエンドレスに回転可能な構造になっている
【0019】
101は発光素子としての発光ダイオード(LED)を有するLED回路であり、回転部122からの圧縮された映像信号を100MHz程度の帯域で搬送する光信号を発生する。102はスリップリングであり、固定部121の電源線と回転部122の電源線を電気的に接続する。固定部121の電源線には、100kHz程度のパン制御コマンドなどの制御コマンドが重畳されている。100kHz程度の低周波にすることで、制御コマンド信号は、スリップリング102を介して安定的に固定部121から回転部122に伝送される。
【0020】
103は、回転部122に配置した構成部品を支えるモールド部品である。104は回転部122のプリント基板であり、図1に示す機能ブロックを実現する電気部品が装着されている。
【0021】
105は固定部121のモールド部品であり、回転部122のモールド部品103を支えることにより、回転部122全体を支える。固定部121のモールド部品105と回転部122のモールド部品103の接合部分は、パン回転しやすいようにリブを立てて点接触するようにしてもよい。またベアリングを用いて摩擦を少なくする構造にしてもよい。
【0022】
106は受光素子としてのフォトダイオードであり、LED回路101のLEDから出力される信号光を受光し、電気信号に変換する。107はフォトダイオード106の受光面である。
【0023】
108は固定部121のプリント基板であり、図1に示す機能ブロックを実現する電気部品が装着されている。
【0024】
109はスリップリング102に摺動接触するブラシであり、固定部121からの電源電圧と制御コマンドをスリップリング102に印加する。
【0025】
図2(a)に示す回転構造をとることにより、回転部122は、固定部121に対して360度以上のエンドレスの回転が可能でありながら、どの回転角度でも信号伝送と電源供給が可能になる。
【0026】
図2(a)に示すように、LED回路101は、回転部122の回転中心軸線上にあり、その回転中心軸線に沿って信号光をフォトダイオード106の受光面107に向け出力する。従って、回転部122がどの角度に回転しても、LED回路101の出力光は、フォトダイオード106に入射する。
【0027】
図2(b)に示す断面図では、LED回路101のLEDが傾いて取り付けられ、またフォトダイオード106の取り付け位置が右方向にずれている。この配置例では、例えば、LED回路101の出力光軸から右に40度ほど傾いた角度位置110にフォトダイオード106の受光面107が存在する。LED回路101の出力光の一部しか、フォトダイオード106に入射しない。本実施例で用いるLED回路101では、40度の傾きで60%光量が低下する。
【0028】
図2(c)は、図2(b)に配置のケースで、180°パン回転した場合のLED回路101のLEDとフォトダイオード106の位置関係を示す。LED回路101のLEDの出力光軸から左に20度ほど傾いた角度位置111にフォトダイオード106の受光面107が位置する。ずれた入射により、フォトダイオード106の入射光量が、光軸があっている場合よりも、例えば30%程度、少なくなる。
【0029】
図3(a)は、LED回路101のLEDに一定電流を印加したときの、パン回転角度に応じたフォトダイオード106の出力電流を示す。170は、図2(a)に示すようにLED回路101のLEDとフォトダイオード106の光軸があっている場合の、フォトダイオード106の出力電流を示す。171は、図2(b),(c)に示すようにLED回路101のLEDとフォトダイオード106の光軸が傾いている場合の、フォトダイオード106の出力電流を示す。電流171の大きさは、パン角度に対して変動し、位置172で最大になり、位置173で最小になる。位置173は、例えば,図2(b)に示す位置関係に対応し、位置172は、図2(c)に示す位置関係に対応する。
【0030】
図3(b)は、測定モードでLED回路101のLEDをパルス駆動した場合の、位置172,173に相当する位置でのフォトダイオード106の出力電流の変化の一例を示す。175はLED回路101のLEDに印加される測定信号(パルス電流)を示す。176は、位置172におけるフォトダイオード106の出力電流を示す。177は、位置173におけるフォトダイオード106の出力電流を示す。
【0031】
本実施例では、以下の構成を採用することで、パン角度位置に応じてフォトダイオード106の出力電流レベルが変動する場合でも、支障なく光伝送できるようにしている。図1を参照して、そのための構成と動作を詳細に説明する。
【0032】
回転部122では、映像信号生成手段である撮像部130が、レンズ123による光学像を所定形式の映像信号に変換する。撮像部130は、光学像を画像信号に変換する撮像素子と、撮像素子の出力画像信号に色バランス調整及びγ補正などの公知のカメラ信号処理を施すカメラ信号処理回路を具備する。圧縮回路131は、撮像部130から出力される映像信号をMPEG又はH.264などの動画圧縮方式で圧縮し、パケット化された圧縮映像信号を生成する。パケット化された圧縮映像信号はパケット終了を示すコードEND CODEを持つ。制御部134は、パケット終了コードEND CODEにより各パケットの終端を検出する。以下の説明では、圧縮回路131の出力信号をパケット信号と表記する。
【0033】
回転部122の制御部134は、固定部121からの要求に応じて又は定期的に、パン角度情報を合成回路132に出力する。合成回路132は、圧縮回路131からのパケット信号の合間に制御部134からの制御/ステータス信号を挿入して伝達回路133に出力する。すなわち、合成回路132は、パケット信号に制御部134からの信号を時分割多重する時分割多重回路である。ただし、合成回路132は、測定モードでは、制御部134から測定信号175を受信すると、パケット信号出力を禁止し、測定信号175のみを伝達回路133に出力する。
【0034】
伝達回路133は、パラレルで入力される合成回路132の出力信号をシリアル信号に変換し、LED回路101に供給する。LED回路101は、伝達回路133の出力信号を光信号に変換し、フォトダイオード106に向け出射する。
【0035】
電源回路139は、固定部121の電源回路159からスリップリング102を介して供給される電力を元に、回転部122の各部に必要な電源電圧を供給する。
【0036】
制御部134は、固定部121からスリップリング102を介して受信するパン制御信号に従い、パン回転駆動部136によりパン回転の加速減速を制御する。制御部134は、回転位置検出機構138からの回転位置情報に従い、パン回転を制御すると共に、パン角度情報を生成して合成回路132に送信する。制御部134はまた、固定部121からスリップリング102を介して受信する測定モード信号に従い測定信号を生成し、合成回路132に供給する。記憶部135は、制御部134の制御に必要な変数などを記憶する。
【0037】
パン回転駆動部136は、制御部134からの制御信号に従いパルス信号を生成し、電流増幅して、パン回転機構137に出力する。パン回転機構137はパルスモータを具備し、パン回転駆動部136からのパルス信号に従い回転部122を固定部121に対して回転させる。
【0038】
回転位置検出機構138は、ホームポジジョンを検出する手段と回転位置を検出する手段を具備し、パン回転に応じた位置情報を制御部134に伝達する。
【0039】
固定部121の構成と基本的な動作を説明する。
【0040】
フォトダイオード106は、LED回路101からの光信号を受光し、対応する電気信号を出力する。増幅回路150は、フォトダイオード106の出力電流を電圧に変換し、制御部153により制御される、回転角度に応じた増幅率で増幅する。増幅回路150の詳細は、図6を参照して後述する。
【0041】
ピークホールド回路151は、フォトダイオード106の出力電流の電圧変換し、ピーク電圧検出する。ピーク電圧を検出するのは、図3(b)に示すように、フォトダイオード106の出力電流はパルス波形を積分した波形となるからである。ピークホールド回路151は、検出したピーク電圧値を制御部153に供給する。ピークホールド回路151の詳細は、図7を参照して、後述する。
【0042】
2値化回路152は、増幅回路150の出力信号を所定の閾値で2値化する。2値化により生成された2値化信号は、パルストランス156と制御部153に供給される。なお、制御部153は、測定モードの開始時には、生成した2値化信号をパルストランス156に出力しないように、2値化回路を制御する。2値化回路152の詳細は、図8を参照して、後述する。
【0043】
制御部153は、測定モードのときに回転部122から送信されたパン角度情報をEEPROM154に格納する。制御部153は、ピークホールド回路151から出力されるピーク電圧値をデジタル化し、増幅回路150の増幅率を計算する。制御部153は、計算された増幅率を回転部122の回転角度と共に、EEPROM154に記憶する。制御部153はまた、ビューア128から送信されたパン制御コマンド及び測定コマンドなどのコマンド信号を受信し、信号重畳回路158に転送する。
【0044】
信号重畳回路158は、制御部153からのコマンド信号を100KHz程度の低周波数で電源に重畳し、ブラシ109を介して回転部122のスリップリング102に供給する。スリップリング102は、長時間の使用によりインピーダンスが上昇するが、100KHz程度であれば、伝送に支障ない。
【0045】
パルストランス156は、2値化回路152からの2値化信号をインピーダンス分離してネットワークコネクタ124に転送する。パルストランス156はまた、ネットワークコネクタ124からの信号(例えば、ビューアからのコマンド)をインピーダンス分離して受信PHY157に転送する。ネットワークコネクタ124にはネットワークケーブル125が接続され、ネットワーク126を介してビューア128と通信する。
【0046】
受信PHY157は、パルストランス156からの信号を電圧変換及びシリアルパラレル変換して、制御部153に供給する。
【0047】
固定部121に配置した電源回路159は、固定部121の回路素子に電源を供給するとともに、信号重畳回路158、ブラシ109及びスリップリング102を介して回転部122に電源を供給する。ブラシ109はスリップリング102に物理的に接触し、スリップリング102との電気接続を常時維持する。
【0048】
図6は、増幅回路150の詳細と、増幅回路150に関連する制御部153の内部回路を示す。
【0049】
フォトダイオード106は、LED回路101のLEDからの光信号が入射すると、カソードCATからアノードANOの方向に電流を発生する。抵抗R9はフォトダイオード106で発生した電流を電圧に変換する。DCカップリングコンデンサC5は、発生した電圧のDC成分を取り除き、AC成分のみをオペアンプA2に伝達する。オペアンプA2及び抵抗R5〜R8で構成される回路は、非反転増幅回路を構成する。
【0050】
オペアンプA2の入力電圧をVi2、抵抗R5,R6,R7の合成抵抗値をRp2とすると、オペアンプA2の出力電圧Vo2は、
Vo2=(R8+Rp2)/Rp2×Vi2
で表される。
【0051】
制御部153のポート制御レジスタ185は、電界効果トランジスタF5,F6,F7のオン/オフを制御する。この制御により、オペアンプA2で構成される非反転増幅回路の増幅率を変更できる。図9は、抵抗値と増幅率の関係を示す。欄194は、電界効果トランジスタF5,F6,F7によりオン(グランドに接続)にされる抵抗を示す。図9では、抵抗R5,R6,R7の抵抗値をそれぞれR5=2KΩ、R6=3KΩ、R7=4KΩとしている。欄191は合成抵抗Rp2の値を示す。欄192は非反転増幅回路の増幅率を示す。欄193はピークホールド回路151で検出した入力電圧Vi2の範囲を示す。欄193に示す電流範囲に対して欄192に示す増幅率が選択されるように、制御部153は、電界効果トランジスタF5,F6,F7のオン/オフを制御することになる。
【0052】
図10は、欄192に示す増幅率を使用した際の、入力電圧Vi2と出力電圧Vo2の関係を示す。入力電圧が30mVから120mVの範囲において、出力電圧Vo2は340mV〜500mVの範囲となる。増幅回路150は、2値化回路152で2値化できる電圧を出力可能となる。
【0053】
制御部153の中央処理回路としてのCPU181は、ROM182に記憶されたマイクロ命令を次々と処理し、実行することで、制御部153自体及び各部を制御する。ROM182はマイクロ命令を記憶し、RAM183は、CPU181が処理する際の変数などを記憶する。
【0054】
バスライン184が、CPU181、ROM182、RAM183、EEPROM154及びポート制御レジスタ185間にデータを伝送する。CPU181は、電界効果トランジスタF5〜F7をオン/オフする制御値をポート制御レジスタ185に格納することで、電界効果トランジスタF5〜F7を制御する。
【0055】
EEPROM154には、複数のパン回転角度について適用すべき増幅率が、受信特性の一要素として格納される。図11は、EEPROM154に記憶される値の一例を示す。EEPROM154には、入力電圧Vi2とオンにする抵抗との対応を10°刻みで格納してある。
【0056】
入力電圧Vi2が電流171(図3)に示すのと同様な分布を示す場合で、回転角度0°のとき57mV、回転角度10°のとき65mV、回転角度180°のとき90mV、回転角度350°のとき65mVであるとする。増幅率は、図9に示す表から、それぞれ6.9、6、4.3及び6となる。オンにする抵抗は、0°のとき抵抗R6,R7、10°のとき抵抗R5、180°のとき抵抗R6、350°のとき抵抗R5となる。
【0057】
CPU181は、EEPROM154の記憶内容を呼び出し、パン回転角度に応じた増幅率にするために電界効果トランジスタF5〜F7のオン/オフを制御する。
【0058】
図7は、ピークホールド回路151の回路例を示す。抵抗R1とコンデンサC1は積分回路を構成し、フォトダイオード106のカソードに生じるノイズを除去する。ダイオードD1は、オペアンプA1の出力が出力電圧187よりも高くなった場合に電流を流し、コンデンサC2を充電して、出力電圧を上昇する。抵抗R2は放電用抵抗である。電圧187はピーク検出の電圧値であり、制御部153に供給される。
【0059】
制御部153は、電圧値187をデジタル値に変換するAD変換器188を内蔵する。制御部153のCPU181は、ピークホールド回路151の出力電圧値を、回転角度に応じた検出電圧としてEEPROM154に格納する。図11に示す表の「検出電圧」が、ピークホールド回路151で検出された電圧値を示す。
【0060】
図8は、2値化回路152の回路例を示す。増幅回路150の出力電圧が閾値V10よりも高い場合、オペアンプA11はハイ電圧を出力し、閾値電圧V10よりも低い場合、ロー電圧を出力する。抵抗R10,R11は、ヒステリシス特性を持たせるために配置される。
【0061】
オペアンプA11の出力、すなわち、2値化された信号は、スイッチSW10を介してパルストランス156に供給される。スイッチSW10は、映像信号を送信するときは接続状態又はクローズ状態になり、測定モード中などでは非接続状態又はオープン状態になるように制御部153により制御される。測定モードでは、2値化回路152の出力は、映像信号を示すものではないので、スイッチSW10をオープン状態又はオフにする。SW10がオフのとき、外部出力は禁止される。
【0062】
図5は、ビューア128からの測定モード開始の指示を受信したときの、回転部122と固定部121の処理内容を示すフローチャートである。左側が固定部121の処理を示し、右側が回転部122の処理を示す。
【0063】
ステップS200で、固定部121の制御部153は、測定モード開始の指示をビューア128からネットワーク経由で受信する。ステップS201で、制御部153は、測定モードへの移行を回転部122に通知する。先に説明したように、制御部153は測定コマンドを生成し、信号重畳回路158、ブラシ109及びスリップリング102を介して、回転部122の制御部134に送信する。
【0064】
ステップS202で、制御部134は、撮像部130及び圧縮回路131を停止状態にして映像信号を出力しないように制御する。
【0065】
ステップS203で、固定部121は回転部122にホームポジションコマンドを送信する。
【0066】
ステップS207で、制御部153は、スイッチSW10をオープン状態に切り替え、2値化回路152の出力信号がネットワーク126に出力されないようにする。
【0067】
回転部122の制御部134は、ホームポジションコマンドを受信すると、ステップS204で、パン回転機構137を回転させる。
【0068】
ステップS205で、制御部134は、回転位置検出機構138の出力によりホームポジションに到達したかどうかを検出する。ホームポジションを検出するまで、制御部134は、ステップS204,205を繰り返す。
【0069】
ステップS205でホームポジションを検出すると、ステップS206で、制御部134は測定信号175(図3(b))を生成し、LED回路101に光信号を生成させる。固定部121では、フォトダイオード106がLED回路101からの光信号を受光し、光電変換して、ピークホールド回路151に供給する。ステップS208で、ピークホールド回路151がピーク電圧を検出する。制御部153は、検出された電圧値を取り込む。
【0070】
ステップS209で、制御部153は、回転角度に対応した検出電圧を、図11に示すようにEEPROM154に格納する。
【0071】
ステップS210で、制御部153は、図9に示すテーブルを参照し、検出電圧に基づいた増幅率とオンにする抵抗を指定する。たとえば、検出電圧が57mAであれば、図9に示すテーブルから抵抗R6,R7をオンにするように指定することになる。
【0072】
ステップS211で、制御部153は、指定した抵抗を図11に示すようにEEPROM154に格納する。ステップS212で、制御部153は、パン角度が350度になったかどうかを判別し、350度に満たない場合は、ステップS213に進む。
【0073】
ステップS213で、制御部153は、パン回転コマンドを生成する。本実施例では、10度ずつパン回転するようにパン回転コマンドを生成するようにしている。
【0074】
ステップS208からステップS213を繰り返すことで、制御部153は、図11に示すような、回転角度と検出電圧と指定抵抗の対応を示すテーブルをEEPROM154に完成する。
【0075】
ステップS214で、回転部122の制御部134は、パン回転コマンドを受信して、測定信号を停止する。ステップS215で、制御部134は、パン回転機構137を回転させる。ステップS216で、制御部134は、回転位置検出機構138が10度回転したことを検出すると、パン回転機構137によるパン駆動を停止し、ステップS206に戻って測定信号を出力する。
【0076】
パン回転中に測定信号をステップS214で停止するのは、固定部121のピークホールド回路151での誤検出を防止するためである。
【0077】
ステップS212で、制御部153は、パン角度が350度になったと検出すると、ステップS230に進み、測定モード終了通知を回転部122に伝達する。この測定モード終了通知に応じて、回転部122の制御部134は、ステップS232で測定信号を停止する。ステップS234で、回転部122の制御部134は、測定モード終了信号を生成し、固定部121及びビューア128に送信する。ステップS235で、制御部134は、撮像部130及び圧縮回路131を能動状態にして、映像信号を出力可能にする。
【0078】
他方、ステップS233で、固定部121の制御部153は、SW10をオン状態とする。これにより、固定部121は、回転部122からの信号をネットワーク126経由でビューア128に送信できる状態になる。
【0079】
本実施例では、測定モードはビューア128からの測定コマンドにより実行されるが、旋回カメラ129の電源オン時に実行するようにしてもよい。
【0080】
図12は、旋回カメラ129がビューア128からネットワーク126を介してパンコマンドを受け取った際の処理手順を示すフローチャートである。左側が固定部121の処理を示し、右側が回転部122の処理を示す。
【0081】
ステップS250で、固定部121の制御部153がパンコマンドを受信すると、ステップS251で、制御部153は、パンコマンドを回転部122の制御部134に転送する。
【0082】
ステップS252で、回転部122の制御部134は、パンコマンドに従いパン回転機構137にパン回転を実行させる。ステップS253で、制御部134は、圧縮回路131から出力されるパケット信号のパケット終了コードEND CODEを検出することで、パケット終了を判別する。パケット終了コードを検出すると、ステップS269で、制御部134は、圧縮回路131で生成するパケット信号の合成回路132への伝達を一時停止するように圧縮回路131を制御する。圧縮回路131は、内部に図示しない記憶手段を持ち、生成したが出力しないパケット信号を一時保持する。
【0083】
ステップS254で、制御部134は、回転位置検出機構138から位置情報を得てパン角度情報を生成する。ステップS255で、制御部134は、生成したパン角度情報を固定部121に伝達する。
【0084】
ステップS256で、固定部121の制御部153は、コードEND CODEを検出して、パケット終了を判別する。具体的には、制御部153は、2値化回路152で2値化されたパケット信号からコードEND CODEを検出する。
【0085】
ステップS257で、制御部153は、2値化回路152のSW10をオフにする。SW10をオフにすることで、パン角度情報がパルストランス156に伝達されず、従って、ネットワーク126に出力されない。
【0086】
ステップS258で、制御部153が、ステップS255で回転部122から送信されたパン角度情報を取り込む。ステップS259で、制御部153は、EEPROM154に図5に示すフローに従って記憶された表を参照し、パン角度に応じた抵抗を指定する。すなわち、制御部153は、回転部122の現在の回転位置に応じた制御値(ここでは、増幅率)をEEPROM154から読み出す伊。
【0087】
例えば、パン角度が0°の場合、図11により、抵抗R6,R7を指定することになる。ステップS260で、制御部153は、指定抵抗に対応する電界効果トランジスタがオンになるように、ポート制御レジスタ185に所定値をセットする。例えば、抵抗R6,R7が指定される場合、電界効果トランジスタF6,F7をオン状態にする。
【0088】
図6に示す増幅回路は、フォトダイオード106の出力電流を電圧変換し、図9に示す増幅率で増幅する。たとえば、抵抗R6,R7がオンになった場合、制御部153は、図6に示す増幅回路に増幅率6.9をセットする。
【0089】
ステップS261で、制御部153は、2値化回路152のSW10をオン状態にする。
【0090】
ステップS262で、制御部153は、回転部122にパケットを要求する。この要求に対し、ステップS263で、回転部122の制御部134は、ステップS269で一時停止したパケット信号の送信を開始する。ステップS264で、固定部121の制御部153は、回転部122からのパケット受信を開始する。固定部121では、増幅回路150がパン角度位置に応じた増幅率で受信信号を増幅する。この増幅率の設定により、図2(b),(c)で説明したようなLED回路101のLEDとフォトダイオード106の光軸ずれがあったとしても、良好な信号伝送特性を実現できる。固定部121は、受信したパケットで伝送された映像情報を、ネットワーク126を介してビューア128に送信する。
【0091】
ステップS265で、制御部153は、パケット終了を判別する。パケット伝送が終了するまで、パケット受信を継続する。
【0092】
パケット伝送が終了すると、ステップS266で、制御部153は、2値化回路152のSW10をオフにする。他方、回転部122の制御部134は、ステップS267で、ステップS265と同様に、パケット終了を判別する。パケット送信が終了するまで、パケット送信を継続する。
【0093】
パケット送信が終了すると、ステップS268で、制御部134は、パン駆動を終了するか否かを判別する。すなわち、パン回転機構137による回転動作が終了したかどうかを判別する。パン回転機構137による回転動作が終了していなければ、制御部134は、ステップS269に戻り、パン角度情報の生成と送信、パン回転、及びをパケット信号の送信を実行する。パン回転機構137による回転動作が終了していれば、ステップS270で、制御部134は、パン終了情報を固定部121に送信する。
【0094】
ステップS271で、固定部121の制御部153は、パン終了情報の受信を判別する。パン終了情報を受け取っていない場合、制御部153は、ステップS258〜S271の処理を繰り返す。すなわち、増幅回路150の増幅率をパン角度位置に応じて調整し、回転部122からのパケット信号を受信する。他方、パン終了情報を受け取ると、ステップS272で、制御部153は、2値化回路152のSW10をオンにする。これは、パン回転が終了した後に回転部122から伝達されたパケット信号を、ネットワーク126経由でビューア128に繰り返し送信するためである。
【0095】
本実施例では、固定部121から回転部122にスリップリング102及びブラシ109を用いて電源とコマンド信号を伝送している。しかし、ムービングトランスを用いて、電源とコマンド信号を伝送しても良い。
【0096】
本実施例では、受信特性の一要素としてパン角度に応じた増幅率を不揮発性メモリであるEEPROM154に記憶していたが、揮発性メモリであるRAMに記憶してもよい。また、旋回カメラの電源オン/オフ時に自動的に測定モードを実行し、パン角度に応じた増幅率を揮発性メモリに記憶するようにしてもよい。
【実施例2】
【0097】
フォトダイオード106の出力信号の2値弁別閾値を回転角度に応じて変更する実施例を説明する。
【0098】
図15(a)は、フォトダイオードの出力信号の2値弁別閾値を固定とした場合のタイミングチャートを示す。図15(b)は、フォトダイオードの出力信号の2値弁別閾値を回転角度に依存して変更するようにした場合のタイミングチャートを示す。
【0099】
図15(a)において、310はLED回路101のLEDに印加される送信信号又は駆動信号である。311,312はフォトダイオード106の出力電流を電圧に変換した信号であり、311は光量の多い時の信号波形を示し、312は光量の少ない時の信号波形を示す。313,314は信号311,312を2値弁別する閾値電圧を示す。図15(a)では、閾値電圧313,314は互いに等しく、信号313のマーク/スペースに対してほぼ中間値に設定されている。図15(a)に示す例では、信号312に対して閾値電圧314が高すぎるので、正しく2値弁別することができない。
【0100】
他方、図15(b)は、回転角度に応じて閾値電圧を変更する本実施例の波形例を示す。図15(b)では、フォトダイオード106の出力電流が小さくなる回転角度に対して符号315に示すように閾値電圧を小さくしている。これにより、回転部のどの回転角度に対しても、2値化回路152は、受信信号を正しく2値化できる。
【0101】
図13は、回転角度に応じて閾値電圧を変更するようにした2値化回路152の回路構成図を示す。制御部153のDA変換器301が回転角度に応じた閾値電圧を発生し、オペアンプA11のプラス端子に供給する。
【0102】
図14は、本実施例におけるEEPROM154の記憶内容例を示す。図5を参照して説明した測定モードでの処理により、回転角度302に応じた検出電圧303を記憶し、検出電圧303のほぼ中間の電圧を閾値電圧304としてEEPROM154に記憶する。本実施例では、回転角度に応じた2値弁別閾値を受信特性の一要素としてEEPROM154に記憶する。
【0103】
図16は本実施例におけるパン回転処理のフローチャートを示す。左側が固定部121の処理を示し、右側が回転部122の処理を示す。図12とおなじ処理は、詳細な説明を省略する。
【0104】
ステップS258で、固定部121は、パン回転角度を回転部122から受け取り、ステップS320で、制御部153は、EEPROM154に記憶する、パン角度に応じた閾値電圧を指定する。例えばパン角度が0°の場合、閾値電圧304(図14)から28mVを指定する。
【0105】
ステップS321で、制御部153は、指定した閾値電圧をDA変換器301からオペアンプA11のプラス端子に供給する。この処理により、回転角度に応じた閾値電圧が2値化回路152に設定される。これにより、図15(b)に示す出力信号312のような状態でも、正しく2値化可能となる。
【0106】
2値化回路152の閾値を回転角度に応じて変更する構成を、実施例1として説明した、回転角度に応じて増幅率を制御する構成と組み合わせてもよい。
【実施例3】
【0107】
受信信号レベルが回転角度に関わらず一定又はほぼ一定となるように、回転角度に応じてLED回路101のLEDの駆動レベルを制御する実施例を説明する。
【0108】
図19(a)は、LEDの駆動レベルを回転角度に関わらず一定とした場合のタイミングチャートを示す。図19(b)は、受信信号レベルが回転角度に関わらず一定又はほぼ一定となるように、LEDの駆動レベルを回転角度に応じて変更する本実施例のタイミングチャートを示す。
【0109】
図19(a)において、310はLED回路101のLEDに印加される送信信号又は駆動信号である。311,312はフォトダイオード106の出力電流を電圧に変換した信号であり、311は光量の多い時の信号波形を示し、312は光量の少ない時の信号波形を示す。
【0110】
本実施例では、図19(b)に実線310で示すように、受信信号レベルが低くなってしまうような回転角度では、破線360に示すようにLED駆動信号の振幅を大きくする。この結果、受信信号が符号312に示すレベルから破線361で示すレベルに増加する。
【0111】
図17は、本実施例のLED回路101の回路例を示す。350はLEDである。伝達回路133はLED350及び抵抗R30を介して制御部134のDA変換器352の出力に接続する。制御部134は、DA変換器352の出力電圧を制御することで、LED350に流れる駆動電流を制御できる。例えば、伝達回路133の出力信号は、3V振幅のパルス信号である。LED350は順方向電圧が0.6Vであり、抵抗R30の抵抗値は40Ωにしている。
【0112】
図18は、EEPROM154の記憶内容例を示す。実施例1と同様、測定モード(図5)の処理を行い、回転角度353に応じた検出電圧354を記憶する。検出電圧354の電圧値は、LED電流を24mAにした場合に、ピークホールド回路151が検出する電圧値である。
【0113】
本実施例では、制御部134は、検出電圧354に応じて、補正後のピークホールド回路151での電圧が約120mVになるように、LED電流355を決定する。制御部134は、求めたLED電流355からDA変換器352の出力電圧356を決定する。
【0114】
図18に示す例では、回転角度353が0°のとき、検出電圧が57mVである。57mVはLED電流を24mAにしてピークホールド回路151で検出した結果であり、補正後の電圧を120mVにするLED電流355は、
120mV/57mV×24mA≒50mA
で求めることができる。
【0115】
同様に回転角度353が10°のとき、検出電圧が65mVである。補正後の検出電圧を120mVにするLED電流355は、
120mV/65mV×24mA≒44mA
となる。
【0116】
DA変換器352の出力電圧356は、LED電流355と、伝達回路133の出力信号の振幅電圧である3.0V、LED回路101のLEDの順方向電圧0.6V及び抵抗R30の抵抗値40Ωから求められる。すなわち、
DA変換器の出力電圧=振幅電圧3.0V−順方向電圧0.6V−抵抗40Ω×LED電流
である。たとえば回転角度0°のとき、DA変換器352の出力電圧は、3.0V−0.6V−40Ω×0.05A=0.4Vとなる。
【0117】
本実施例では、このようにDA変換器352の出力電圧を決定し、EEPROM154に記憶する。
【0118】
本実施例では、EEPROM154にLED電流355を記憶するようにしているが、パン回転処理で必要なのはDA変換器の出力電圧である。従って、LED電流355のEEPROM154への記憶は、必須では無い。
【実施例4】
【0119】
回転部を回転駆動する手段と回転位置検出手段を固定部に配置しても良い。図20は、本発明の実施例4の概略構成ブロック図を示す。本実施例では、固定部121aに回転部122aの回転に係わる手段、具体的には、パン回転駆動部136a、パン回転機構137a及び回転位置検出機構138aを配置した。パン回転機構137a、パン回転駆動部136a及び回転位置検出機構138aを固定部121aに配置したので、固定部121の制御部153aは、直接、パン回転位置を検出できる。
【0120】
この構成では、回転部から固定部にパン回転位置を伝達する必要が無いので、回転部122aに合成回路132が不要となる。
【実施例5】
【0121】
上記実施例では、回転部から固定部への信号伝送に光空間伝送を採用したが、固定部から回転部への信号伝送にも光空間伝送を採用しても良い。図21は、そのような構成の回転部と固定部との間の光空間伝送の概略構成図を示す。
【0122】
図21(a)において、501は回転部に配置されたLED(第1の発光素子)である。502は回転部に配置されたフォトダイオード(第1の受光素子)である。503は固定部に配置されたLED(第2の発光素子)である。504は固定部に配置されたフォトダイオード(第2の受光素子)である。回転部のある回転角度位置で、LED501とフォトダイオード504が対面し、LED503とフォトダイオード502が対面する。
【0123】
図21(b)は、図21(a)に示す位置から180度、回転部が固定部に対して回転したときのLED501,503及びフォトダイオード502,504の位置関係を示す。図21(b)に示すように、LED501がLED503と対面し、フォトダイオード502がフォトダイオード504と対面する位置になる。通常、LED501,503の出射角度は広いので、図21(b)に示すように、出射光軸と受光光軸が横にずれても、十分に強い光信号がフォトダイオード502,504に入射しうる。上記実施例で説明したように、回転角度に応じて、増幅率、閾値及び/又はLED駆動電流を制御することで、光による双方向伝送を実現できる。
【0124】
旋回カメラを用いたネットワークカメラシステムの実施例を説明したが、本発明は、回転機構をもった各種装置に応用可能である。
【0125】
本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部に対して回転可能な回転部から前記固定部に信号を伝送する信号伝送装置であって、
前記回転部に配置され、前記信号を搬送する光信号を出力する発光素子と、
前記固定部に配置され、前記光信号を受光する受光素子と、
前記受光素子の出力から前記信号を受信する受信手段と、
前記固定部に対する前記回転部の複数の回転位置に対する、前記発光素子の駆動レベル又は前記受信手段の受信特性を記憶する記憶手段と、
前記固定部に対する前記回転部の現在の回転位置に応じて、前記記憶手段を参照し、前記発光素子の駆動レベル又は前記受信手段の受信特性を、前記回転位置に応じた変化が少なくなるように制御する制御手段
とを具備することを特徴とする信号伝送装置。
【請求項2】
前記受信特性が、前記受光素子の出力信号を増幅する増幅手段の増幅率であることを特徴とする請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記受信手段が2値化手段を具備し、前記受信特性が前記2値化手段の2値弁別閾値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
更に、測定モードにおいて、前記固定部に対する前記回転部の複数の回転位置に対する、前記発光素子の駆動レベル又は前記受信手段の受信特性を測定し、前記記憶手段に記憶する測定手段を具備することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
前記回転部は撮像手段を具備し、前記信号が、前記撮像手段による映像信号を搬送する信号であり、
前記制御手段は、前記測定モードにおいて、前記受信手段による受信信号の外部出力を禁止する
ことを特徴とする請求項4に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
前記回転部が、前記固定部に対して前記回転部を回転させる回転機構と、前記信号として前記回転位置を示す信号を出力する手段とを具備することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
前記回転部はネットワークを介して外部装置からコマンドを受信する手段を具備することを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項8】
前記固定部が、前記回転部に送信すべき信号を搬送する光信号を発生する第2の発光素子を具備し、前記回転部が、前記第2の発光素子から出力される光信号を受光する第2の受光素子を具備することを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項1】
固定部に対して回転可能な回転部から前記固定部に信号を伝送する信号伝送装置であって、
前記回転部に配置され、前記信号を搬送する光信号を出力する発光素子と、
前記固定部に配置され、前記光信号を受光する受光素子と、
前記受光素子の出力から前記信号を受信する受信手段と、
前記固定部に対する前記回転部の複数の回転位置に対する、前記発光素子の駆動レベル又は前記受信手段の受信特性を記憶する記憶手段と、
前記固定部に対する前記回転部の現在の回転位置に応じて、前記記憶手段を参照し、前記発光素子の駆動レベル又は前記受信手段の受信特性を、前記回転位置に応じた変化が少なくなるように制御する制御手段
とを具備することを特徴とする信号伝送装置。
【請求項2】
前記受信特性が、前記受光素子の出力信号を増幅する増幅手段の増幅率であることを特徴とする請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記受信手段が2値化手段を具備し、前記受信特性が前記2値化手段の2値弁別閾値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
更に、測定モードにおいて、前記固定部に対する前記回転部の複数の回転位置に対する、前記発光素子の駆動レベル又は前記受信手段の受信特性を測定し、前記記憶手段に記憶する測定手段を具備することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
前記回転部は撮像手段を具備し、前記信号が、前記撮像手段による映像信号を搬送する信号であり、
前記制御手段は、前記測定モードにおいて、前記受信手段による受信信号の外部出力を禁止する
ことを特徴とする請求項4に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
前記回転部が、前記固定部に対して前記回転部を回転させる回転機構と、前記信号として前記回転位置を示す信号を出力する手段とを具備することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
前記回転部はネットワークを介して外部装置からコマンドを受信する手段を具備することを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項8】
前記固定部が、前記回転部に送信すべき信号を搬送する光信号を発生する第2の発光素子を具備し、前記回転部が、前記第2の発光素子から出力される光信号を受光する第2の受光素子を具備することを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の信号伝送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−34043(P2013−34043A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167984(P2011−167984)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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