信号処理装置、この信号処理装置を備えるレーダ装置及びその信号処理装置の画素抜け検出方法
【課題】方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置において、様々な位置及び大きさで発生する画素抜けを確実に検出できる構成を提供する。
【解決手段】レーダ装置が備える画素抜け検出部は、今回描画するスイープラインである今回スイープラインの画素の位置と、前回処理したスイープラインである前回スイープラインの画素の位置と、に基づいて画素抜け検出を行う。より具体的には、前記画素抜け検出部は、今回スイープライン上の画素である注目画素と、この注目画素にX軸方向又はY軸方向で対応する前回スイープライン上の画素である対応画素と、に挟まれる1以上の中間画素が存在するときに、当該中間画素を画素抜け部分と判定する。
【解決手段】レーダ装置が備える画素抜け検出部は、今回描画するスイープラインである今回スイープラインの画素の位置と、前回処理したスイープラインである前回スイープラインの画素の位置と、に基づいて画素抜け検出を行う。より具体的には、前記画素抜け検出部は、今回スイープライン上の画素である注目画素と、この注目画素にX軸方向又はY軸方向で対応する前回スイープライン上の画素である対応画素と、に挟まれる1以上の中間画素が存在するときに、当該中間画素を画素抜け部分と判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置に関するものである。詳細には、当該信号処理装置における画素抜けの検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置等の信号処理装置は、ユーザが直感的に物標との位置関係を把握できるように、自機(アンテナ)の位置を基準に当該物標をプロットした画像を表示器に表示する。ここで、前記表示器においては画素が格子状(マトリクス状)に配列されているのが通常であるので、物標を画像にプロットする等の場合、画素の位置はXY直交座標系で取り扱われる。例えば、船舶等に用いられるレーダ装置は、回転するアンテナから所定の周期で(所定角度ごとに)電波を出力し、その電波の反射波から得られるデータを直交座標に逐次プロットしていくことで、自船と周囲に存在する物標の位置関係を表示器に視覚的に表現する。
【0003】
しかしながら、上記のレーダ装置により得られる情報は、電波の送信方向に対応して自船(中心)から放射状に引かれた直線上に分布するため、中心からの距離が大きくなればなるほど、隣り合う直線間の隙間が大きくなる。従って、電波の送受信により得られた情報を表示器へ単純に表示した場合、中心位置から離れた部分で画素抜けが生じ、表示画面の見た目を損なう原因となる。そのため、レーダ装置では、このような画素抜け部分を検出して補間処理を行うことがある。この種のレーダ装置を開示するものとして特許文献1がある。
【0004】
特許文献1は、以下のように構成されるレーダ装置を開示する。即ち、レーダ装置は、画像メモリと、LAST検出手段と、画素抜け検出手段と、補間手段と、を備える。前記画像メモリは、受信データを極座標から直交座標に座標変換して記憶する。前記LAST検出手段は、前回スイープラインデータθn-1上の任意のサンプル点iと、前回スイープラインデータθn-1及び今回スイープラインデータθn上の複数の近接サンプル点との各対応画素の一致判断を行う。そして、前記LAST検出手段は、サンプル点iの対応画素が他のサンプル点の各対応画素の全てと一致しない場合に、該サンプル点iをLASTサンプル点として検出する。前記画素抜け手段は、前記他のサンプル点の各対応画素が、LASTサンプル点の対応画素に対してスイープ回転側に接する隣接画素に一致するか否かを検出する。そして、画素抜け検出手段は、前記検出を行った結果、何れも一致しない場合に、該隣接画素に対応するサンプル点が存在しない画素抜け状態があったものとして検出する。補間手段は、画素抜け検出時に該隣接画素を補間画素として、近傍画素のデータで補間する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−352211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画素抜け部分は、アンテナの回転速度、アンテナが電波を出力する周期及び表示する画像の倍率等のパラメータによって、その発生位置や大きさが様々に変化するため、適切に検出されないことがある。この点、特許文献1は、LAST判定された画素に隣接する箇所の画素抜けを検出することができるものの、アンテナ(スイープ)の回転方向に連続して画素抜けが生じているような場合等に、画素抜け部分を検出できないおそれがあった。
【0007】
近年、レーダ装置等の表示器は、その画素数の増加により精密な画像表現が可能になっている。そのため、従来の画素数の画面では発生しなかったような画素抜けが生じる場合があり、画素抜けの検出精度の向上は、重要な解決課題の1つとなっている。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置において、様々な位置及び大きさで発生する画素抜けを確実に検出できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置において、以下の構成が提供される。即ち、この信号処理装置は、画素位置計算部と、画素抜け検出部と、を備える。前記画素位置計算部は、前記エコー信号に基づく情報を含むスイープライン上の点に対応する画素の位置をXY直交座標系で求める。前記画素抜け検出部は、今回描画するスイープラインである今回スイープラインの画素の位置と、前回処理したスイープラインである前回スイープラインの画素の位置と、に基づいて、画素抜けを検出する。また、前記画素抜け検出部は、前記今回スイープライン上の画素である第1画素と、当該第1画素にX軸方向又はY軸方向で対応する前記前回スイープライン上の画素である第2画素と、に挟まれた1以上の画素である中間画素が存在するときに、当該中間画素を画素抜け部分と判定する。
【0011】
これにより、画素が並べられる方向であるX軸方向又はY軸方向で画素抜けを検出していくので、信号の送受信タイミングや画面サイズ等の影響を受けることなく、画素抜けを漏れなく検出することができる。
【0012】
前記の信号処理装置においては、前記画素抜け検出部は、前記今回スイープラインの角度又は前記前回スイープラインの角度に応じて、前記第1画素に対応する前記第2画素を検出する方向である第2画素検出方向を、X軸方向とY軸方向の間で自動的に切り替えることが好ましい。
【0013】
これにより、探知信号の送信角度が広範囲にわたる場合でも、画素抜けを確実に検出できる。
【0014】
前記の信号処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この信号処理装置は、画素の位置を記憶可能な記憶部を備える。前記画素抜け検出部は、前記第1画素の位置を前記記憶部に記憶し、次回のスイープラインの描画時には、前記記憶部の内容を参照することで前記第2画素の位置を取得する。
【0015】
これにより、前回スイープライン上の第2画素の位置を、記憶部の参照により簡単に取得できる。従って、画素抜けの検出を行うための処理をシンプルにできる。
【0016】
ただし、前記の信号処理装置においては、前記画素抜け検出部は、Bresenhamのアルゴリズムを用いた計算により、前記第2画素の位置を取得することもできる。
【0017】
これにより、前回スイープラインの両端の座標だけに基づいて、前回スイープライン上の第2画素の位置を算出できる。また、Bresenhamのアルゴリズムは演算コストが小さいので、画素抜け検出部の構成を容易に簡素化できる。
【0018】
ただし、前記の信号処理装置においては、前記画素抜け検出部は、前記前回スイープライン上の点の位置を示す情報から、三角関数を用いた計算によって前記第2画素の位置を取得することもできる。
【0019】
これにより、前回スイープライン上の画素の位置をそれぞれ記憶させることなく、前回スイープラインの点の位置を示す情報に基づいて前回スイープライン上の第2画素の位置を算出することができる。
【0020】
前記の信号処理装置においては、前記画素抜け検出部によって検出した画素抜け部分を埋めるための補間データを生成する補間処理部を備えることが好ましい。
【0021】
これにより、漏れなく検出される画素抜け部分に補間処理を行うことができるので、未更新の画素を生じさせることなく、適切な画像を表示器に表示させることができる。
【0022】
前記の信号処理装置においては、前記補間処理部は、前記中間画素を埋めるための前記補間データを、当該中間画素に対応する前記第1画素の内容及び第2画素の内容のうち少なくとも一方に基づいて生成することが好ましい。
【0023】
これにより、画素抜けの検出処理と補間処理とを並行して行うことが容易になるので、処理が簡素化される。
【0024】
前記の信号処理装置においては、前記補間処理部は、前記中間画素を埋めるための前記補間データとして、前記第1画素の内容を用いることが好ましい。
【0025】
これにより、過去のスイープライン上の画素の内容を保持したり、参照したりする必要がないので、補間処理を簡略化でき、演算コストを低減することができる。
【0026】
本発明の第2の観点によれば、前記の信号処理装置を備えるレーダ装置が提供される。
【0027】
本発明の第3の観点によれば、方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置において、以下のステップを含む画素抜け検出方法が提供される。即ち、第1ステップでは、前記エコー信号に基づく情報を含むスイープライン上の点に対応する画素の位置をXY直交座標系で求める。第2ステップでは、今回描画するスイープライン上の画素である第1画素の位置と、前回処理したスイープライン上の画素であって前記第1画素にX軸方向又はY軸方向で対応する画素である第2画素の位置と、を取得する。第3ステップでは、前記第2ステップで位置を取得した前記第1画素と前記第2画素とに挟まれるように、1以上の画素である中間画素が存在するか否かを調べ、存在していた場合は、当該中間画素を画素抜け部分と判定する。
【0028】
これにより、画素が並べられる方向であるX軸方向又はY軸方向で画素抜けを検出していくので、信号の送受信タイミングや画面サイズ等の影響を受けることなく、画素抜けを漏れなく検出することができる。
【0029】
前記の信号処理装置の画素抜け検出方法においては、前記第3ステップで検出した画素抜け部分を埋めるように補間処理を行う第4ステップを含むことが好ましい。
【0030】
これにより、漏れなく検出される画素抜け部分に補間処理を行うことができるので、未更新の画素を生じさせることなく、適切な画像を表示器に表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーダ装置の構成を概略的に示したブロック図。
【図2】画素抜け検出方向の切替えを説明する図。
【図3】X軸方向での画素抜け検出を説明する図。
【図4】補間処理の方向を説明する図。
【図5】第1実施形態の画素抜け検出及び補間処理を行う手順を示したフローチャート。
【図6】Bresenhamの描画アルゴリズムを説明する図。
【図7】第2実施形態の画素抜け検出及び補間処理を行う手順を示したフローチャート。
【図8】第3実施形態の画素抜け検出を説明する図。
【図9】三角関数を用いた対応画素の画素位置の取得を説明する図。
【図10】スイープラインの先端が描く円周上に位置する画素に基づいて設定画素を設定するX軸方向のみの画素抜け検出を説明する図。
【図11】前回スイープラインの最遠点画素の位置に基づいて設定画素を設定するX軸方向のみの画素抜け検出を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る信号処理装置としてのレーダ装置10の構成を概略的に示したブロック図である。
【0033】
図1に示す第1実施形態のレーダ装置10は、レーダアンテナ1と、受信部11と、A/D変換部12と、スイープメモリ13と、エコー強度計算部14と、表示用画像メモリ15と、描画アドレス発生部16と、画素抜け検出部31と、補間アドレス発生部32と、補間内容生成部33と、表示器19と、を主要な構成として備えている。
【0034】
レーダアンテナ1は、パルス状の電波である探知信号を送信(放射)できるとともに、この送信した電波の反射波であるエコー信号を受信可能に構成されている。このレーダアンテナ1は、所定の周期で水平面内を回転しており、この回転周期より小さい周期で前記探知信号が方位を異ならせながら繰り返し出力されている。このレーダアンテナ1が1回転する間に探知信号が送信される回数によって、レーダ装置10の角度分解能が決定される。
【0035】
受信部11は、レーダアンテナ1が受信した反射波を検波し、増幅してA/D変換部12に出力する。A/D変換部12は、受信部11から送られてきたアナログ信号を適宜のデジタル信号に変換する。
【0036】
スイープメモリ13は、A/D変換部12によってデジタル信号に変換された1スイープ分の受信データを記憶可能に構成されている。なお、ここでいう「スイープ」とは、探知信号を送信してから次の探知信号を送信するまでの一連の動作をいい、「1スイープ分の受信データ」とは、探知信号を送信した後、次の探知信号を送信するまでの期間に受信したデータをいう。
【0037】
電波は直進する性質を持っているので、1スイープ分の受信データは、自船を起点にしてレーダアンテナ1の向きに引いた1本の直線上における状況を表す。また、レーダアンテナ1が当該直線の向きに探知信号を送信したときに、自船に近い物標によるエコー信号は早いタイミングで受信され、遠い物標によるエコー信号は遅いタイミングで受信される。従って、1スイープ分の受信データには、前記直線上に物標があるか否かの情報、及び、物標があった場合は当該物標が自船からどれだけ離れているかを表す情報が含まれている。前記スイープメモリ13には、1スイープ分の受信データを時系列順で記憶することができる。
【0038】
エコー強度計算部14は、スイープメモリ13から1スイープ分の受信データを時系列順に読み出して振幅を順次計算することで、当該受信データ中に等間隔で設定された複数のポイントでのエコー強度をそれぞれ算出する。これは、実質的には、レーダアンテナ1から探知信号を送信した時点から一定の時間間隔をあけて複数設定された時刻のそれぞれにおいて、反射波のエコー強度を検出することに相当する。
【0039】
エコー強度計算部14で取得されたエコー強度のデータ群(以下、このデータ群を「1スイープ分のエコー強度データ群」と呼ぶことがある。)は、表示用画像メモリ15へ時系列順に出力され、順次記憶される。なお、1スイープ分のエコー強度データ群を表示用画像メモリ15の画像データのうち何れの画素に記憶させるかは、描画アドレス発生部16によって決定される。
【0040】
表示用画像メモリ15は、表示器19に画像を表示するための複数の画素データからなる画像データ(ラスタデータ)を記憶可能に構成されている。表示用画像メモリ15が保持する画像(以下、表示用画像と称する。)は、多数の画素が縦横に格子状(m画素×n画素のマトリクス状)に並べられることで表現されている。
【0041】
この表示用画像メモリ15に格納された表示用画像のデータは、適宜のタイミングで読み出されて表示器19に表示される。表示用画像メモリ15には、エコー強度の情報等を前記画素データとして画素毎に記憶することができる。
【0042】
画素位置計算部としての描画アドレス発生部16は、エコー強度計算部14で得られた1スイープ分のエコー強度データ群を構成するエコー強度データのそれぞれについて、対応する表示用画像上の画素の位置(アドレス)を求めることができる。この描画アドレス発生部16には、探知信号を送信したときのレーダアンテナ1の角度θを表す信号が入力される。描画アドレス発生部16は、レーダアンテナ1の角度θ及びレーダレンジ等に基づき、エコー強度の各データに対応する画素の位置を以下の方法で計算する。
【0043】
即ち、レーダアンテナ1から探知信号を送信してから時間tが経過した時点でエコー信号が返ってきた場合、その時間tの間に、レーダアンテナ1と物標との間の距離rを電波が往復したことになる。従って、水平な平面内でレーダアンテナ1を原点とする極座標系を定義すると、レーダアンテナ1が探知信号を送信してから時間tが経過したときのエコー強度に対応する物標の位置は、当該探知信号の送信時の所定の方位基準(例えば北)からのアンテナ角度をθとして、上記の極座標系で(r,θ)=(c×t/2,θ)と表すことができる。ただし、cは光速である。また、上記極座標系においてアンテナ角度θは、レーダアンテナ1が所定の方位(北方向)を向いているときに0°となり、レーダアンテナ1が通常回転する方向が正となるように定められる。なお、所定の方位としては、船体の座標系(船首基準)を用いることもできる。
【0044】
一方、表示用画像メモリ15で保持される表示用画像は、上記のとおり、格子状(マトリクス状)に配列された画素によって表現される。本実施形態では、表示用画像における各画素の位置を、画像の左上隅を原点とし、右方向にX軸をとり、下方向にY軸をとるXY直交座標系で取り扱うこととしている。
【0045】
そして、描画アドレス発生部16は、前記表示用画像においてエコー強度の情報を記憶させるべき画素の位置を算出する。具体的には、この画素の位置(X,Y)は、上記XY直交座標系における自船(レーダアンテナ1)の位置を(Xs,Ys)とした場合、以下の式(1)に従って計算される。
【数1】
ただし、tは、レーダアンテナ1が探知信号を送信した時点からの経過時間である。kは、表示器19の表示領域のサイズ及びレーダレンジ等を考慮して定められる定数であり、θはアンテナ角度である。なお、(X,Y)は、前記表示用画像を構成する画素の位置(アドレス)を特定するものであるため、X及びYの計算結果において、小数点以下の端数は適宜丸められる。
【0046】
本実施形態では、1スイープ分のエコー強度データ群を構成する各データが、エコー強度計算部14から表示用画像メモリ15へ時系列順に出力される。そして、描画アドレス発生部16は、それぞれのエコー強度データに対応する画素の位置(X,Y)を式(1)に従って順次求めて表示用画像メモリ15へ出力する。従って、1スイープ分のエコー強度データ群を処理する場合、描画アドレス発生部16としては、上記の式においてθを一定とし、tをゼロから増大させながら(X,Y)を繰り返し計算していくことになる。
【0047】
上記の計算により、1スイープ分のエコー強度データ群に対応する表示用画像上の画素をXY直交座標系で表した位置(X,Y)は、自船の位置(Xs,Ys)を基準とした角度θの直線上となる。なお、以下の説明では、この直線を「スイープライン」と称することがある。
【0048】
従って、前記描画アドレス発生部16は、前記直線上の点(スイープライン上の点)に対応する、表示用画像における画素の位置(X,Y)を求める機能を有しているということができる。また、描画アドレス発生部16は、極座標で表現されるスイープライン上の点(r,θ)を、XY直交座標系での画素の位置(X,Y)に変換する、座標変換部としての機能を有しているということができる。
【0049】
描画アドレス発生部16による計算結果として得られる画素の位置(X,Y)は、tがゼロから増大するに伴って自船の位置(Xs,Ys)から離れていくように順次移動し、その移動軌跡が1本の直線(前記スイープライン)を描くことになる。1スイープ分のエコー強度データ群は、前記表示用画像において1本の前記スイープラインを描くように、計算された位置の画素に画素データとして記憶される。
【0050】
なお、このとき、自船の位置(基準位置)に近い範囲では、1つの画素を複数の直線が通過し、複数の極座標系のデータが1つの画素に重なって入力されることになる。そこで本実施形態では、画素に入力された複数のデータに基づいて代表値を決定し、この代表値を前記画素データとして記憶するようになっている。この代表値を決定する方法としては、複数のデータのうち最大値を代表値とする方法や、複数のデータから算出した平均値を代表とする方法等、適宜の方法を採用することができる。
【0051】
また、以後の説明では、表示用画像メモリ15に記憶される前記表示用画像の画素にエコー強度の情報を画素データとして記憶させることを、当該画素に「描画する」(又は、画素を「埋める」)と表現する場合がある。
【0052】
探知信号を1回送信する毎にレーダアンテナ1の角度θが変更されるため、これに伴ってスイープラインの角度も変化する。以下の説明では、現在処理している(描画しようとしている)スイープラインを「今回スイープライン」と称し、これに対応するアンテナ角度をθnとする。また、直前に処理(描画)したスイープラインを「前回スイープライン」と称し、これに対応するアンテナ角度をθn-1(ただし、θn>θn-1)とする。
【0053】
画素抜け検出部31は、画像データに存在する画素抜けを検出するためのものである。この画素抜け検出部31は、今回スイープライン上の画素の位置と、前回スイープライン上の画素の位置と、に基づいて、今回スイープラインと前回スイープラインとの間に発生する画素抜けを検出する。
【0054】
画素抜け検出部31は、スイープライン上の画素の位置を記憶するための対応画素位置記憶メモリ(記憶部、第2画素位置記憶メモリ)40を有している。この対応画素位置記憶メモリ40は、RAM等の適宜のハードウェアで構成されている。なお、この画素抜け検出部31による画素抜け検出の詳細については後述する。
【0055】
補間アドレス発生部32は、画素抜け検出部31によって画素抜けと判定された部分に相当する画素の位置(表示用画像メモリ15でのアドレス)を示す補間用のアドレスを生成する。
【0056】
補間処理部としての補間内容生成部33は、画素抜け検出部31によって画素抜けと判定された部分を埋めるべき内容(補間データ)を生成する。本実施形態では、補間内容生成部33は、エコー強度計算部14の出力に基づいて前記補間データを生成する。この補間データは、補間アドレス発生部32によって生成された補間用のアドレスに基づいて表示用画像メモリ15に書き込まれ、これにより補間が行われる。
【0057】
表示器19は、CRT又はLCD等によって構成されるラスタスキャン式の表示装置である。表示用画像メモリ15から読み出された表示用画像の画像データが、この表示器19によって表示される。
【0058】
以上の構成のレーダ装置10において、エコー強度計算部14は、レーダアンテナ1から探知信号を送信したときのエコー信号に基づいて、1スイープ分のエコー強度データ群を得る。また、描画アドレス発生部16は、探知信号送信時のレーダアンテナ1の角度θに基づいて、1スイープ分のエコー強度データ群を表示用画像メモリ15に記憶させる複数の画素の位置を(XY直交座標系で)順次求める。
【0059】
そして、以上の結果に基づき、表示用画像メモリ15が保持する表示用画像において角度θのスイープラインがあたかも描画されるかのように、前記エコー強度データ群を構成する各データが、表示用画像メモリ15に画素データとして記憶される。以上の処理をレーダアンテナ1の角度θを少しずつ変更しながら繰り返すことで、表示用画像メモリ15の画像データに、自船の位置を基準とするスイープラインを1本ずつ描くことができる。
【0060】
こうして得られた画像データは、表示用画像メモリ15から適宜のタイミングで読み出され、他の情報との合成処理等が適宜行われた上で表示器19に表示される。この結果、多数のスイープラインが放射状に描かれた画像が表示器19に表示され、ユーザは当該画像を見ることで、自船とその周囲の物標との位置関係を知ることができる。レーダアンテナ1の回転に伴って表示用画像メモリ15の画像には新しいスイープラインが繰り返し描画され、この結果、表示器19に表示される画像も随時更新されていく。
【0061】
次に、図2及び図3を参照して、第1実施形態のレーダ装置10の画素抜け検出及び補間処理について説明する。図2は、画素抜け検出方向の切替えを説明する図である。図3は、X軸方向での画素抜け検出を説明する図である。
【0062】
本実施形態の画素抜け検出部31による画素抜けの検出は、隣り合うスイープラインの間に生じる画素抜けを、表示用画像メモリ15において画素が配列される方向(X軸方向又はY軸方向)で検出するものである。
【0063】
以下、X軸方向に画素抜けを検出する場合で説明する。即ち、表示用画像に今回スイープラインを描くためにエコー強度等の情報を書き込むべき画素は複数あるが、そのうちの1つの画素に注目し、この画素を注目画素(第1画素)とする。この注目画素は、描画アドレス発生部16によって、アンテナ角度θn等に基づいて求めることができる。次に、前回スイープラインを描く際にエコー強度が書き込まれた複数の画素の中から、前記注目画素とY座標が同一である画素(言い換えれば、注目画素にX軸方向で対応する画素)を探す。そして、見つかった画素を対応画素(第2画素)とする。
【0064】
次に、注目画素と対応画素の位置関係を調べる。即ち、注目画素と対応画素がX軸方向で隣接している又は重なり合っている場合には、そのX軸方向に画素抜けが生じていないと判定する。一方、注目画素と対応画素とに挟まれた1以上の画素(中間画素)が存在している場合には、画素抜けが生じている(前記中間画素が画素抜け部分である)と判定する。
【0065】
上記で説明したのはX軸方向に画素抜けを検出する方法であるが、Y軸方向に画素抜けを検出する場合も同様である。即ち、画素抜けの検出方向がY軸方向である場合、今回スイープラインを描くために書き込むべき画素群から画素を1つ選んで注目画素とする。また、前回スイープラインを描くために書き込まれた画素群から、前記注目画素とX座標が同一である画素(注目画素にY軸方向で対応する画素)を探し、これを対応画素とする。そして、注目画素と対応画素とに挟まれた1以上の画素が存在すれば、当該画素(中間画素)の部分が画素抜けであると判定する。
【0066】
画素抜けの検出方向をX軸方向とするかY軸方向とするかは、レーダアンテナ1の角度(スイープラインの角度であるスイープ角度)θに応じて決定される。図2に示すように、スイープ角度θが−45度(315度)から45度までの範囲及び135度から225度までの範囲では、X軸方向で画素抜けの検出を行う。また、前記スイープ角度が45度から135度までの範囲及び225度から315度までの範囲では、Y軸方向で画素抜けの検出を行う。なお、この画素抜けの検出方向の決定は、図略のスイープ角度判定部によって行う。この決定にあたって参照されるスイープ角度としては、今回スイープラインの角度θn及び前回スイープラインの角度θn-1のうち何れか一方又は両方を用いることができる。
【0067】
以下、画素抜けの検出方向を上記のように自動的に切り替えることの効果について説明する。即ち、スイープラインの角度θnは0度から360度の範囲で刻々と変化するが、例えば今回スイープラインがY軸方向と平行に近い角度となった場合(θnが0度又は180度に近い場合)、画素抜け検出方向をY軸方向としたのでは、注目画素に対応する対応画素を決定できないおそれがある。しかしながら、本実施形態では、今回スイープラインがY軸方向とほぼ平行な場合は画素抜けの検出方向がX軸方向になるので、画素抜けの検出を適切に行うことができる。同様に、スイープラインがX軸方向と平行に近い角度となった場合、画素抜けの検出方向をY軸方向とすることで、画素抜けの検出を適切に行うことができる。本実施形態では、前回スイープライン上の画素の位置を取得するために対応画素位置記憶メモリ40の記憶内容を参照することとしている。
【0068】
即ち、今回処理しているスイープライン(今回スイープライン)は、次回に処理するスイープラインとの関係では前回スイープラインとなる。そこで画素抜け検出部31は、今回スイープラインを表示用画像に描画する際に描画アドレス発生部16で計算した画素の位置(X,Y)を、次回のスイープライン描画時の画素抜け検出で使用するために、対応画素位置記憶メモリ40に記憶することとしている。
【0069】
画素抜け検出部31は、前記注目画素のY座標を対応画素位置記憶メモリ40のインデックスに指定して記憶内容を参照することにより、前記対応画素のX座標を取得する。そして、注目画素のX座標と対応画素のX座標との差分を計算することで、両画素の間に挟まれた中間画素の有無を判定する。なお、画素抜け検出方向がY軸方向である場合には、前記対応画素位置記憶メモリ40にはX座標のインデックスが付けられ、当該X座標に対応するY座標が記憶されることになる。
【0070】
次に、図3を参照して、X軸方向で画素抜けを検出する例を具体的に説明する。図3は前記表示用画像の一部を概念的に示したものであり、1つのマス目が1つの画素に対応している。図3に示すように、複数の画素が縦横に並べられて表示用画像が構成されており、前回スイープラインが描画された画素と、今回スイープラインが描画される画素と、が模式的に示されている。
【0071】
上述したとおり、表示用画像にスイープラインを形成するための画素の描画は、自船に相当する画素の位置(Xs,Ys)に近い画素から順次行っていく。そして、画素が1つ描画されるごとに、当該画素を注目画素として上記の画素抜け検出を行う。このように、今回スイープラインの画素が1つ描画されるごとに画素抜け検出処理を行うことで、今回スイープラインと前回スイープラインとの間に生じている画素抜けを漏れなく検出することができる。
【0072】
以下、図3の画像において(Xd,Yk)の画素を注目画素とする場合を例にして説明する。今回スイープライン上の点に対応する画素の位置を描画アドレス発生部16が計算した結果として(Xd,Yk)が得られると、画素抜け検出部31は、当該画素(注目画素)のY座標の値、即ちYkをインデックスとして指定して、対応画素位置記憶メモリ40の内容を参照する。対応画素位置記憶メモリ40には、Ykに対応するX座標の値として、前回スイープラインの描画時のX座標であるXbが記憶されている。これにより、注目画素に対応する対応画素の位置(Xb,Yk)を得ることができる。
【0073】
次に、画素抜け検出部31は、注目画素と対応画素のX座標の差分を計算する。今回の例では、差分の値が2以上(Xd−Xb=2)であるので、両画素が隣接しておらず、かつ重なっていないこと(言い換えれば、両画素に挟まれる1つ以上の画素が存在すること)が判る。従って、画素抜け検出部31は、画素抜けがあると判定する。
【0074】
画素抜けの判定後、対応画素位置記憶メモリ40の記憶内容が更新される。即ち、注目画素のY座標(Yk)をインデックスとして指定して、当該Y座標に対応する対応画素位置記憶メモリ40の記憶内容を、注目画素のX座標(Xd)で上書きする。これにより、対応画素位置記憶メモリ40が指す画素の位置が、図3の白抜き矢印で示すようにX軸方向に移動することになる。
【0075】
次に、(Xc,Yl)の画素を注目画素とする場合について説明する。この場合、インデックスとしてYlを指定して対応画素位置記憶メモリ40の記憶内容が参照されると、注目画素にX軸方向で対応する画素(対応画素)のX座標がXbであることが判る。両画素のX座標の差分値を計算すると、Xc−Xb=1であるので、両画素は隣接していることになる。従って、画素抜け検出部31は、画素抜けがないと判定する。
【0076】
本実施形態では、画素抜け検出部31が画素抜けありと判定した場合、当該画素抜け検出部31は画素抜け数を併せて出力する。この画素抜け数は、注目画素と対応画素との間に挟まれる画素(中間画素)の数を意味するものであり、前記のX座標の差分値から1を減じることで得ることができる。画素抜け数がゼロの場合は、画素抜けが検出されなかったことを意味する。
【0077】
次に、図4を参照して補間処理について説明する。図4は、補間処理の方向を説明する図である。
【0078】
本実施形態では、図4に示すように、画素抜け検出方向がX軸方向であるときは、X軸方向に平行な方向で補間処理を行い、画素抜け検出方向がY軸方向であるときは、Y軸方向に平行な方向で補間処理を行う。このように、画素抜けの検出方向と補間処理の方向とは、常に平行な関係となっている。なお、本明細書において補間処理の「方向」とは、補間処理によりデータが書き込まれる対象画素と、前記データを生成するために内容が参照される参照画素と、があるときに、参照画素から対象画素へ向かう方向をいう。
【0079】
本実施形態の補間処理では、画素抜けと判定された前記中間画素を埋めるための補間データとして、当該中間画素に隣接している前記注目画素のデータ(即ち、今回スイープラインのデータ)をそのまま用いる。例えば図3で(Xk,Ya)の画素を注目画素とした場合、X軸方向で対応する対応画素(Xe,Ya)との間に5つの中間画素が存在し、これが画素抜けとして検出される。このとき、5つの中間画素には、注目画素(Xk,Ya)の画素データがそのままコピーされる。
【0080】
これにより、図4に示すように、X軸又はY軸と平行な方向で、かつ、レーダアンテナ1の回転方向とほぼ逆方向となるように補間処理が行われる。この補間処理は、注目画素の内容を中間画素にコピー描画するだけなので、注目画素の描画と並行して高速に行うことができる。また、補間処理のために前回スイープライン上の画素(対応画素)の画素データを参照する必要がないので、処理の高速化を実現できる。
【0081】
次に、図5を参照して、画素抜け検出及び補間データの処理手順について説明する。図5は、第1実施形態の画素抜け検出及び補間処理を行う手順を示したフローチャートである。
【0082】
まず、画素抜け検出部31に、今回スイープラインに基づいて描画されるべき画素の位置(X,Y)が、1画素分入力される(S101)。画素抜け検出部31は、入力された画素を注目画素としたときに、当該注目画素にX軸方向又はY軸方向で対応する対応画素の位置を、対応画素位置記憶メモリ40を参照することで取得する。そして、注目画素と対応画素とのX座標値の差分又はY座標値の差分を算出する(S102)。
【0083】
画素抜け検出部31は、計算された差分値が1以下であるか否かを判定する(S103)。差分値が2以上である場合は、画素抜け検出部31は、画素抜け数を補間アドレス発生部32に出力し(S104)、補間アドレス発生部32は、画素抜け数に基づいて、補間アドレス(即ち、注目画素と対応画素に挟まれた中間画素の位置)を発生させる(S105)。続いて、補間内容生成部33は、前記注目画素の内容をそのまま補間データとし、これを中間画素にコピーすることで、補間処理を行う(S106、S107)。
【0084】
補間処理が終了したところで、前記S102で参照した対応画素位置記憶メモリ40の内容を前記注目画素の位置で更新し(S108)、処理を終了する。なお、S103の判断で差分値が1以下である場合は、S104からS107の処理を行うことなく、対応画素位置記憶メモリ40を更新した後、この処理を終了する。
【0085】
以上の処理を、今回スイープラインを画像に形成するために描画すべき画素の位置(X,Y)が描画アドレス発生部16から1画素分入力される度に繰り返し行うことで、スイープライン間に生じる画素抜けが順次検出されて、漏れなく補間処理することができる。
【0086】
以上に示したように、第1実施形態のレーダ装置10は以下のように構成される。即ち、レーダ装置10は、描画アドレス発生部16と、画素抜け検出部31と、を備える。描画アドレス発生部16は、スイープライン上の点に対応する画素の位置をXY直交座標系で求める。画素抜け検出部31は、今回スイープラインの画素の位置と、前回スイープラインの画素の位置と、に基づいて、画素抜けを検出する。そして、画素抜け検出部31は、今回スイープライン上の画素である注目画素と、当該注目画素にX軸方向又はY軸方向で対応する前回スイープライン上の画素である対応画素と、に挟まれた1以上の画素である中間画素が存在するときに、当該中間画素の部分を画素抜け部分と判定する。
【0087】
これにより、画素が並べられる方向であるX軸方向又はY軸方向で画素抜けを検出していくので、信号の送受信タイミングや画像サイズ等の影響を受けることなく、画素抜けを漏れなく検出することができる。
【0088】
また、本実施形態のレーダ装置10においては、スイープラインの角度に応じて画素抜けを検出する方向を自動的に切り替える。
【0089】
これにより、探知信号を360度の全周に送信する場合でも、スイープラインの全角度範囲にわたって画素抜けを確実に検出でき、後述の補間処理も漏れなく行うことができる。
【0090】
また、本実施形態のレーダ装置10においては、画素の位置を記憶可能な対応画素位置記憶メモリ40を備える。画素抜け検出部31は、注目画素の位置を対応画素位置記憶メモリ40に記憶し、次回のスイープラインの描画時には、対応画素位置記憶メモリ40の内容を参照することで対応画素の位置を取得する。
【0091】
これにより、前回スイープライン上の対応画素の位置を、対応画素位置記憶メモリ40の参照により簡単に取得できる。従って、画素抜けの検出を行うための処理をシンプルにできる。
【0092】
また、本実施形態のレーダ装置10においては、画素抜け検出部31によって検出した画素抜け部分を埋めるための補間内容生成部33を備える。
【0093】
これにより、漏れなく検出される画素抜け部分に補間処理を行うことができるので、未更新の画素を生じさせることなく、適切な画像を表示器19に表示させることができる。これによって、レーダアンテナ1(スイープライン)が1回転する間に全画素の更新を確実に行うことができる。
【0094】
また、本実施形態のレーダ装置10においては、補間内容生成部33は、中間画素を埋めるための補間データを、当該中間画素に対応する注目画素の内容に基づいて生成する。
【0095】
これにより、画素抜けの検出処理と補間処理とを並行して行うことができ、処理を全体として簡素化できる。
【0096】
また、本実施形態のレーダ装置10においては、補間内容生成部33は、中間画素を埋めるための補間データとして、当該中間画素に対応する注目画素の内容を用いる。
【0097】
これにより、過去のスイープライン上の画素の内容を保持したり、参照したりする必要がないので、補間処理を簡略化でき、演算コストを低減することができる。
【0098】
次に、図6及び図7を参照して、第2実施形態の画素抜け検出処理について説明する。図6は、Bresenhamの描画アルゴリズムを説明する図である。図7は、第2実施形態の画素抜け検出及び補間処理を行う手順を示したフローチャートである。なお、第2実施形態の構成のうち、今回スイープライン及び前回スイープライン上の画素の位置を演算して求める処理以外については、上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0099】
本実施形態のレーダ装置10において、描画アドレス発生部16では、上記式(1)を用いる代わりに、Bresenhamの描画アルゴリズムを用いて、今回スイープライン上の画素の位置(アドレス)を算出するように構成されている。同様に、画素抜け検出部31においても、Bresenhamの描画アルゴリズムを用いて、前回スイープライン上の画素の位置(アドレス)を算出するように構成されている。
【0100】
まず、一般的なBresenhamの描画アルゴリズムについて説明する。図6(a)に示すように、XY座標系において、始点(x1,y1)から終点(x2,y2)までを結ぶ直線を描く場合を考える。この直線を表す関数は、以下の式(2)のように記述することができる。
【数2】
ただし、この式には除算が含まれており、計算負荷が大きい。この点、前記Bresenhamのアルゴリズムは、画素がマトリクス状に配置された画像に対し、少ない計算量で効率的に直線を描画するために用いられる。
【0101】
Bresenhamの描画アルゴリズムでは、まず、X軸方向とY軸方向の何れを基準に画素の位置を計算していくかを決定する。この決定にあたっては、与えられた2点間において、X軸方向の距離(Δx=x2−x1)とY軸方向の距離(Δy=y2−y1)とでどちらが長いかを調べ、長い距離の方を基準とすれば良い。例えば、2点の座標がΔy>Δxの関係となっている場合、Y軸方向を基準にして画素の位置を計算する。この場合、Y座標の値をy1からy2まで1ずつ増加させていき、その過程で、X座標の値を初期値x1から適宜のタイミングで1ずつ増加させ、Y座標の値がy2となったときにX座標の値がx2となるようにする。この結果、X座標とY座標で特定される画素の位置は、(x1,y1)から、X軸方向に1だけ移動したりしなかったりしつつY軸方向に1ずつ移動し、(x2,y2)に到達する。そして、その移動軌跡が目的の直線を描くことになる。
【0102】
より具体的には、以下のように考えることができる。即ち、仮にX座標を全く変化させずにY座標を1ずつ増加させ続けたとすると、描画結果はY軸に平行な直線になってしまう。従って、図6(a)のような斜めの直線を描くには、Y座標を増加させる過程で、適宜のタイミングでX座標を1ずつ増加させる必要がある。そこで、本アルゴリズムでは、X座標を増加させるタイミングを決定するために、X軸方向の誤差値eXというパラメータを導入している。
【0103】
この誤差値eXの値は、現在の画素の位置と、描画したい理想の直線と、の間で生じるX軸方向のズレに比例している。この誤差値eXの初期値はゼロとされるが、画素のX座標を変化させずにY座標が1増加した場合、(x2−x1)が毎回加算される。そして、誤差値eXの値が(y2−y1)を超えたところで、X座標を1増加させるとともに、eXから(y2−y1)を減算する。
【0104】
以上の処理を、Y座標の値をy1から1ずつ増加させてy2になるまで繰り返すことにより、画像に目的の直線を引くためにデータを書き込むべき画素の位置を得ることができる。また、誤差値eXの値は常に整数であり、除算等の処理が不要になるので、計算量を削減することができる。
【0105】
そして本実施形態では、直線の始点をレーダアンテナ1の位置(Xs,Ys)とし、終点を今回スイープライン上の最も遠い点とすることにより、今回スイープラインを高速に描画することができる。また、同様に、直線の始点をレーダアンテナ1の位置(Xs,Ys)とし、終点を前回スイープライン上の最も遠い点とすることにより、当該前回スイープライン上の画素の位置を計算で求めることができる。なお、今回スイープラインにおいて、前記終点の位置は上記式(1)に従って適宜計算される。また、計算された今回スイープラインの終点の位置は適宜の記憶部に記憶しておき、次回のスイープラインの描画時に、前回スイープラインの終点の位置として用いられる。
【0106】
次に、上記Bresenhamの描画アルゴリズムを用いて今回スイープラインを描く処理を具体的に説明する。即ち、Bresenhamの描画アルゴリズムでスイープラインを描くときに、1スイープ分のエコー強度データ群を仮に単純にY座標(又はX座標)に対応させて画素データに記憶させることとすると、スイープ角度θによってエコー強度の情報がスイープライン方向に引き伸ばされたり縮められたりして表示用画像に書き込まれることになり、画像の歪みを招く。そこで、本実施形態では、1スイープ分のエコー強度データ群に基づいてスイープラインを描く場合に、Bresenhamの描画アルゴリズムを以下のように拡張して用いる。
【0107】
即ち、1スイープ分のエコー強度データ群がR個のデータで構成され、各エコー強度データは、0番から(R−1)番までのインデックスを指定して適宜の記憶部から読み出すことができるとする。また、エコー強度データ群のインデックスにアクセスするための変数(アクセス変数)をrとする。この場合、本実施形態では図6(b)に示すように、画素がマトリクス状に配置された仮想画像においてr軸とY軸を互いに直交するように定め、その直交座標系で(0,y1)から(R−1,y2)まで直線を引くためにデータを書き込むべき画素の位置(r,Y)を、上記と同様にBresenhamの描画アルゴリズムによって求める。このとき、画素の位置の計算は、r軸方向を基準にして行う。
【0108】
こうして得られた計算結果(r,Y)は、エコー強度データのインデックスと、そのエコー強度データを書き込むべき画素のY座標と、の対応を示す。アクセス変数rを0から1ずつ増大させながら上記の方法でY座標を繰り返し計算すると、適宜のタイミングでY座標が1増加する。このタイミングで、当該Y座標に対応するX座標を前述の描画アルゴリズムで求め、得られた画素(X,Y)に、r番のインデックスで指定されたエコー強度データを書き込む。以上の処理を、rを0からR−1まで1ずつ増大させながら繰り返すことで、エコー強度データを正確な位置の画素に記憶させることができ、画像の歪みを防止できる。
【0109】
ただし、上記の例は、前記XY座標系においてスイープラインの画素の位置を取得する際に、Y軸方向を基準に画素の位置を計算する場合である。X軸方向を基準に画素の位置を計算する場合は、仮想画像においてr軸とX軸による直交座標系を定め、(0,x1)から(R−1,x2)まで直線を引くことになる。
【0110】
なお、この拡張されたBresenhamの描画アルゴリズムは、描画アドレス発生部16が今回スイープライン上の点を求める場合に使用される。一方、画素抜け検出部31においては、前記注目画素に対応する対応画素の位置を求めるだけであるので、拡張されない通常のBresenhamの描画アルゴリズムを用いれば良い。即ち、X軸方向に画素抜けを検出する場合では、注目座標のY座標が変化したタイミングで、それに対応する前回スイープライン上の画素のX座標を、通常のBresenhamの描画アルゴリズムで求めれば十分である。
【0111】
次に、図7を参照して、第2実施形態の画素抜け検出及び補間処理を行う手順について説明する。まず、描画アドレス発生部16によって、今回スイープライン上の点の画素を示す位置(アドレス)が生成され、画素抜け検出部31に入力される(S201)。なお、本実施形態では上述したとおり、今回スイープライン上の点の位置は、拡張されたBresenhamの描画アルゴリズムを用いて算出する。
【0112】
画素抜け検出部31は、前回スイープライン上で自船の位置から最も遠い点の画素の位置を、適宜の記憶部から読み出す。そして、画素抜け検出部31は、S201で入力された画素を注目画素とし、これにX軸方向で対応する前回スイープライン上の画素(対応画素)の位置を、Bresenhamの描画アルゴリズムを用いて算出する(S202)。以後の処理(S203〜S207)は、第1実施形態(S103〜S107)と同様であるので、説明を省略する。なお、本実施形態では対応画素の位置を計算により逐次求めることとしているので、第1実施形態で行われていた画素位置記憶メモリの更新処理(S108)は省略されている。
【0113】
以上に説明した処理が、自船の位置の画素(Xs,Ys)から、今回スイープライン上において自船から最も遠い画素まで、画素の位置が1つ入力される毎に反復される。これにより、今回スイープラインの描画と、補間処理と、を並行して高速に行うことができる。なお、最後の画素(即ち、自船から最も遠い画素)の処理が終了すると、当該画素の座標は適宜の記憶部に記憶され、この内容が、次回のスイープラインの描画時にS202の処理で参照される。
【0114】
以上に説明したように、本実施形態では、Bresenhamの描画アルゴリズムを用いて前回スイープライン上の前記対応画素の位置を算出し、これに基づいて画素抜けを検出している。本実施形態では、スイープライン上で自船から最も遠い画素の位置のみを記憶しておけば、それに基づいて対応画素の位置を計算できるので、対応画素位置記憶メモリ40によって画素アドレスを1画素ごとに記憶する第1実施形態の構成に比べて、記憶領域の効率的な活用という観点から有利である。
【0115】
以上に示したように、第2実施形態のレーダ装置10においては、画素抜け検出部31は、Bresenhamのアルゴリズムを用いた計算により、前記対応画素の位置を取得する。
【0116】
これにより、自船の画素の位置と、前回スイープラインにおいて自船から最も遠い画素の位置に基づいて、前回スイープライン上の対応画素の位置を算出できる。また、Bresenhamのアルゴリズムは演算コストが小さいので、画素抜け検出部31の構成を容易に簡素化することができる。
【0117】
次に、図8及び図9を参照して、極座標系の情報を利用して対応画素を検出する第3実施形態の画素抜け検出部31について説明する。図8は、第3実施形態の画素抜け検出を説明する図である。図9は、三角関数を用いた対応画素の画素位置の取得を説明する図である。なお、第3実施形態において、前回スイープラインの対応画素の位置を取得する処理に関する構成以外は上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する場合がある。
【0118】
図8及び図9は、画素抜けを検出する方向がX軸方向である場合の対応画素の検出を示している。図8に示すように、今回スイープライン上の注目画素に対応する対応画素は、画素抜けを検出する方向(X軸方向)で注目画素に対応する画素であり、前回スイープライン上であって、Y座標の値が、注目画素のY座標の値と同じ画素である。
【0119】
ところで、上記第1実施形態でも説明したように、スイープラインは、エコー強度を示す複数のサンプルデータ(1スイープ分のエコー強度データ群)の極座標系の情報をXY直交座標系にそれぞれ変換することで描画される。従って、前回スイープライン上の複数のサンプルデータのうち、XY直交座標系に変換されたときのY座標の値が、注目画素のY座標の値と同じ値になるサンプルデータを特定できれば、そのサンプルデータからX座標の値を求めることができ、対応画素の画素位置が決定されることになる。以下に、対応画素の画素位置を算出する方法を具体的に説明していく。
【0120】
第3実施形態のレーダ装置10の画素抜け検出部は、エコー強度を示す前回スイープライン上の点であるサンプルデータの極座標系のデータを利用して、対応画素の画素位置を算出するように構成されている。また、第3実施形態の画素抜け検出部31は、前回スイープラインのスイープ角度θn-1を記憶するための前回スイープ角度記憶部を備えるように構成されている。
【0121】
なお、スイープ角度は、今回スイープラインの描画が終了するとともに、適宜のタイミングで更新される。より具体的には、描画が終了した今回スイープラインの角度θが、次回のスイープラインを描画する際の画素抜けを検出するために、前回スイープラインの角度θn-1として前回スイープ角度記憶部に記憶される。
【0122】
以下、画素抜け検出部31の対応画素の画素位置の算出処理について説明する。まず、画素抜け検出部31は、図9に示すように、前回スイープライン上の隣り合うサンプルデータ間の距離方向の長さΔrを求める。Δrは、隣り合うサンプルデータのそれぞれの検出時間の差Δtと光の速度cとによって求めることができる。なお、Δrとしては、反射波のエコー強度を検出する時間間隔に応じて予め設定されているものを用いることもできる。
【0123】
次に、Δr及びスイープ角度θn-1に基づいて三角関数を用いた計算を行うことにより、サンプルデータ間でのXの変化量ΔX=Δrsinθn-1及びYの変化量ΔY=Δrcosθn-1を求める。
【0124】
続いて、X座標及びY座標を表す変数Xt,Ytを自船の位置の座標に初期化する(即ち、Xt=Xs、Yt=Ys)。そして、この変数XtにΔXを加算するとともに、YtからΔYを減算する。次に、減算後のYtの値が注目画素のY座標の値と一致するか否かを調べ、一致している場合は、対応画素の画素位置として座標(Xt,Yt)を設定する。一致していない場合は、Ytの値が注目画素のY座標の値と一致するまで、Xtの加算及びYtの減算を繰り返す。
【0125】
この構成で、初期化処理(Xt=Xs、Yt=Ys)を行った後に、Ytに対してΔYをn回減算した結果、Ytの値が注目画素のY座標の値と一致したとする。この場合、Xtの初期値にΔXをn回加算したものがX座標の値となるので、対応画素の画素位置は、(Xs+n×ΔX,Ys−n×ΔY)となる。なお、Y軸方向で画素抜けの検出を行う場合にも、同様の処理を行うことで対応画素の画素位置を算出することが可能である。
【0126】
以上に示したように、第3実施形態のレーダ装置10において、画素抜け検出部31は、前回スイープライン上の点の位置を示す極座標系の情報から、三角関数を用いた計算によって対応画素の位置を取得する。
【0127】
これにより、前回スイープライン上の画素の位置をそれぞれ記憶させることなく、前回スイープラインの点の位置を示す極座標系の情報に基づいて前回スイープライン上の対応画素の位置を算出することができる。
【0128】
なお、上記第3実施形態に示した極座標系の情報(r,θ)を用いて三角関数により対応画素の画素位置を算出する構成は、以下のように変更することもできる。即ち、最初に、自船からの距離を示す変数rを0で初期化する(r=0)。そして、rに、Δr(隣り合うサンプルデータ間の距離)を加算し、自船の位置(Xs,Ys)、角度θn-1及びr(Δrが加算された値)を用いて三角関数によってX座標及びY座標を求める(X=Xs+rsinθn-1,Y=Ys−rcosθn-1)。このY座標の値が注目画素のY座標の値と一致するまで変数rの加算を繰り返す。即ち、rにΔrが加算されるごとにX座標及びY座標を算出し、算出したY座標の値と注目画素のY座標の値とを比較する。そして、算出したY座標の値と注目画素のY座標の値とが一致したときは、そのときのX座標の値及びY座標の値を対応画素の画素位置に設定するのである。なお、Y軸方向で画素抜けの検出を行う場合にも、同様の処理を行うことで対応画素の画素位置を算出することが可能である。
【0129】
以上に本発明の実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0130】
補間データの生成方法は、上述の実施形態に限定されず、画像の品質や処理効率等を考慮して、適宜の方法を採用することができる。例えば、注目画素ではなく対応画素の内容を中間画素にそのままコピーして埋めたり、注目画素と対応画素の間を直線補間したデータで中間画素を埋めたりすることもできる。また、補間データの生成方法として、直線補間以外にも、放物線補間、キュービック補間、スプライン補間方法等の適宜の方法を採用することもできる。
【0131】
更に、補間処理の方向を、画素抜けの検出方向に対して斜めとすることもできる。また、補間処理は、一方向で行う方法に限定されない。例えば、注目画素又は対応画素から周辺画素(注目画素又は対応画素を中心とする複数の画素からなる領域)に拡張するように補間処理を行っていくこともできる。このように、画素抜け部分に補間データを処理していく手順は事情に応じて適宜の方法を採用することができる。
【0132】
上記実施形態のレーダ装置10は、レーダアンテナ1の角度θに応じて画素抜け検出方向を切り替えるように構成されているが(図2を参照)、画素抜け検出方向を切り替えずにX軸方向又はY軸方向のみで画素抜けの検出を行う構成に変更することができる。この構成では、図2を参照した説明で述べたように、画素抜け検出をX軸方向(又はY軸方向)で行っている場合、スイープラインの角度がX軸(画素抜け検出方向がY軸方向の場合はY軸)に近づいた状態では注目画素が検出できなくなる可能性が高くなる。そのため、画素抜け検出方向を切り替えないレーダ装置10では、注目画素を検出できない範囲の画素抜けを別途処理することが好ましい。
【0133】
次に、図10を参照して、X軸方向のみで画素抜け検出を行い、注目画素が検出できない範囲の画素抜けを別途処理する変形例について説明する。図10は、スイープラインの先端が描く円周上に位置する画素に基づいて、注目画素の代わりとなる設定画素を設定するX軸方向のみの画素抜け検出を説明する図である。なお、画素抜け検出及び補間処理以外は、上記実施形態の構成と同様の構成であるので、その詳細な説明を省略する。
【0134】
図10の変形例は、注目画素が検出できない範囲では、注目画素を仮想的に設定して画素抜け検出を行うものである。なお、以下の説明において、このように注目画素として仮想的に設定された画素のことを「設定画素」と呼ぶことがある。
【0135】
図10に示すように、Y座標が(Ye)のときは、今回スイープライン上に注目画素(Xf,Ye)を検出することができるものの、Y座標が(Yd)、(Yc)、(Yb)のときは、スイープライン上の注目画素を検出することができない。そこで、自船位置(Xs,Ys)を中心とし、スイープラインの長さを半径とした円を考え、この円周上に位置する画素を仮想的な注目画素(設定画素)とする。
【0136】
図10に示すように、注目画素を検出できなかった範囲では、画素アドレスが(Xk,Yd)、(Xk,Yc)、(Xj,Yb)の画素が設定画素になる。そして、この設定画素にX軸方向で対応し、前回スイープライン上に存在する画素を対応画素に設定し、上記実施形態と同様の画素抜け検出を行う。なお、図10の白抜き矢印は図3の白抜き矢印とは意味が異なり、注目画素(及び設定画素)に対応する対応画素を決定する処理を概念的に示すものである。
【0137】
例えば、図10の例では、設定画素を(Xk,Yd)としたときに、対応画素は(Xc,Yd)となるので、これに基づいて画素抜け検出を行う。なお画素抜け検出処理については、注目画素が設定画素である以外は上記実施形態で説明した内容と同様なので、その説明を省略する。
【0138】
この方法により設定された設定画素は、スイープラインの長さを半径とする円周上にあることから、1本のスイープラインによって描画される最も外側の画素の近傍画素の1つである。従って、このように設定された設定画素を注目画素として画素抜け検出を行うことで、スイープラインによって描かれる円の内部に存在する画素抜け部分を漏れなく検出することができる。
【0139】
画素抜けが検出された箇所には、補間内容生成部33で生成された補間データが書き込まれる。この補間データの生成方法としては、設定画素又は対応画素の周辺画素のデータや、方位方向(斜め)の画素のデータ等に基づいて補間データの内容を決定する等、適宜の方法を採用することができる。
【0140】
また、設定画素を設定する方法は上記変形例に限定される訳ではない。次に図11を参照して、前回スイープライン上の最も遠い位置にある画素を基準にして設定画素を設定しX軸方向のみで画素抜け検出を行う別の変形例について説明する。図11は、前回スイープラインの最遠点画素の位置に基づいて設定画素を設定し、X軸方向のみの画素抜け検出を説明する図である。なお、この変形例は、設定画素の設定方法が異なる以外は上記変形例と同様である。
【0141】
本変形例では、図11に示すように、前回スイープライン上の画素であって、レーダアンテナ1の位置(Xs,Ys)から最も遠い位置の画素である最遠点画素を検出する。図11では、前回スイープラインの最遠点画素は、画素アドレスが(Xj,Ya)の画素である。次に、今回スイープライン上の画素であって、前記最遠点画素とX座標が同一である画素(最遠点画素にY軸方向で対応する画素)を探し、この画素と最遠点画素との間に存在する画素を設定画素(仮想的な注目画素)に設定する。この変形例では、図11に示すように、注目画素を検出できない範囲では、画素アドレスが(Xj,Yd)、(Xj,Yc)、(Xj,Yb)の画素が設定画素になる。そして、この設定画素に基づいて対応画素を設定し、上記実施形態と同様に画素抜け検出処理及び補間処理を行っていく。
【0142】
このように、画素抜け検出方向を図2のように切り替えずに、X軸方向のみで画素抜けの検出を行う構成においても、注目画素を検出できない範囲で特別な処理を行うことで、画素抜けを確実に検出して補間処理を適切に行うことができる。なお、Y軸方向のみで画素抜けの検出を行う場合にも、同様の処理を行うことで画素抜けを漏れなく検出することが可能である。
【0143】
また、上記実施形態の構成に加えて、補間スイープラインを描画する構成とすることもできる。補間スイープラインとは、実データに基づいて得られたスイープラインの間を補間するように生成されるスイープラインである。この場合において、前回スイープライン及び今回スイープラインは、実データによるスイープラインであっても良いし、補間スイープラインであっても良い。もっとも、画素抜けを漏れなく検出して補間できる上記実施形態の構成は、従来の構成に比べて、補間スイープラインを生成しない構成(又は少ない構成)に対して一層好適であるということができる。
【0144】
また、上記実施形態では、記憶部として対応画素位置記憶メモリ40が採用されているが、記憶部の構成は適宜変更することができる。例えば、複数のカウンタによって、対応画素(第2画素)の画素位置を記憶する構成とすることもできる。この構成で用いられるカウンタは、前記表示用画像のサイズがm画素×n画素だった場合、mとnのうち大きい方の値の数だけ用意すれば十分である。例えば、画素抜け検出方向がX軸方向である場合、複数の画素位置記憶メモリにはY座標のインデックスが付けられ、それぞれの画素位置記憶メモリには、当該Y座標に対応するX座標が記憶される。従って、この構成においても、画素抜け検出時には、Y座標を指定してカウンタの内容を参照することで、当該Y座標に対応するスイープライン(前回スイープライン)の画素のX座標の値を容易に取得することができる。
【0145】
上記実施形態のレーダ装置10の構成は、舶用機器以外にも適用することが可能である。
【0146】
上記の実施形態では本発明をレーダ装置に適用した例を説明したが、本発明はレーダ装置に限定されない。即ち、方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を表示器に表示する構成の信号処理装置であれば、本発明を適用することができる。この種の信号処理装置としては、例えばスキャニングソナー装置を挙げることができる。
【符号の説明】
【0147】
10 レーダ装置(信号処理装置)
16 描画アドレス発生部(画素位置計算部)
19 表示器
31 画素抜け検出部
33 補間内容生成部(補間処理部)
40 対応画素位置記憶メモリ(記憶部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置に関するものである。詳細には、当該信号処理装置における画素抜けの検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置等の信号処理装置は、ユーザが直感的に物標との位置関係を把握できるように、自機(アンテナ)の位置を基準に当該物標をプロットした画像を表示器に表示する。ここで、前記表示器においては画素が格子状(マトリクス状)に配列されているのが通常であるので、物標を画像にプロットする等の場合、画素の位置はXY直交座標系で取り扱われる。例えば、船舶等に用いられるレーダ装置は、回転するアンテナから所定の周期で(所定角度ごとに)電波を出力し、その電波の反射波から得られるデータを直交座標に逐次プロットしていくことで、自船と周囲に存在する物標の位置関係を表示器に視覚的に表現する。
【0003】
しかしながら、上記のレーダ装置により得られる情報は、電波の送信方向に対応して自船(中心)から放射状に引かれた直線上に分布するため、中心からの距離が大きくなればなるほど、隣り合う直線間の隙間が大きくなる。従って、電波の送受信により得られた情報を表示器へ単純に表示した場合、中心位置から離れた部分で画素抜けが生じ、表示画面の見た目を損なう原因となる。そのため、レーダ装置では、このような画素抜け部分を検出して補間処理を行うことがある。この種のレーダ装置を開示するものとして特許文献1がある。
【0004】
特許文献1は、以下のように構成されるレーダ装置を開示する。即ち、レーダ装置は、画像メモリと、LAST検出手段と、画素抜け検出手段と、補間手段と、を備える。前記画像メモリは、受信データを極座標から直交座標に座標変換して記憶する。前記LAST検出手段は、前回スイープラインデータθn-1上の任意のサンプル点iと、前回スイープラインデータθn-1及び今回スイープラインデータθn上の複数の近接サンプル点との各対応画素の一致判断を行う。そして、前記LAST検出手段は、サンプル点iの対応画素が他のサンプル点の各対応画素の全てと一致しない場合に、該サンプル点iをLASTサンプル点として検出する。前記画素抜け手段は、前記他のサンプル点の各対応画素が、LASTサンプル点の対応画素に対してスイープ回転側に接する隣接画素に一致するか否かを検出する。そして、画素抜け検出手段は、前記検出を行った結果、何れも一致しない場合に、該隣接画素に対応するサンプル点が存在しない画素抜け状態があったものとして検出する。補間手段は、画素抜け検出時に該隣接画素を補間画素として、近傍画素のデータで補間する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−352211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画素抜け部分は、アンテナの回転速度、アンテナが電波を出力する周期及び表示する画像の倍率等のパラメータによって、その発生位置や大きさが様々に変化するため、適切に検出されないことがある。この点、特許文献1は、LAST判定された画素に隣接する箇所の画素抜けを検出することができるものの、アンテナ(スイープ)の回転方向に連続して画素抜けが生じているような場合等に、画素抜け部分を検出できないおそれがあった。
【0007】
近年、レーダ装置等の表示器は、その画素数の増加により精密な画像表現が可能になっている。そのため、従来の画素数の画面では発生しなかったような画素抜けが生じる場合があり、画素抜けの検出精度の向上は、重要な解決課題の1つとなっている。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置において、様々な位置及び大きさで発生する画素抜けを確実に検出できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置において、以下の構成が提供される。即ち、この信号処理装置は、画素位置計算部と、画素抜け検出部と、を備える。前記画素位置計算部は、前記エコー信号に基づく情報を含むスイープライン上の点に対応する画素の位置をXY直交座標系で求める。前記画素抜け検出部は、今回描画するスイープラインである今回スイープラインの画素の位置と、前回処理したスイープラインである前回スイープラインの画素の位置と、に基づいて、画素抜けを検出する。また、前記画素抜け検出部は、前記今回スイープライン上の画素である第1画素と、当該第1画素にX軸方向又はY軸方向で対応する前記前回スイープライン上の画素である第2画素と、に挟まれた1以上の画素である中間画素が存在するときに、当該中間画素を画素抜け部分と判定する。
【0011】
これにより、画素が並べられる方向であるX軸方向又はY軸方向で画素抜けを検出していくので、信号の送受信タイミングや画面サイズ等の影響を受けることなく、画素抜けを漏れなく検出することができる。
【0012】
前記の信号処理装置においては、前記画素抜け検出部は、前記今回スイープラインの角度又は前記前回スイープラインの角度に応じて、前記第1画素に対応する前記第2画素を検出する方向である第2画素検出方向を、X軸方向とY軸方向の間で自動的に切り替えることが好ましい。
【0013】
これにより、探知信号の送信角度が広範囲にわたる場合でも、画素抜けを確実に検出できる。
【0014】
前記の信号処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この信号処理装置は、画素の位置を記憶可能な記憶部を備える。前記画素抜け検出部は、前記第1画素の位置を前記記憶部に記憶し、次回のスイープラインの描画時には、前記記憶部の内容を参照することで前記第2画素の位置を取得する。
【0015】
これにより、前回スイープライン上の第2画素の位置を、記憶部の参照により簡単に取得できる。従って、画素抜けの検出を行うための処理をシンプルにできる。
【0016】
ただし、前記の信号処理装置においては、前記画素抜け検出部は、Bresenhamのアルゴリズムを用いた計算により、前記第2画素の位置を取得することもできる。
【0017】
これにより、前回スイープラインの両端の座標だけに基づいて、前回スイープライン上の第2画素の位置を算出できる。また、Bresenhamのアルゴリズムは演算コストが小さいので、画素抜け検出部の構成を容易に簡素化できる。
【0018】
ただし、前記の信号処理装置においては、前記画素抜け検出部は、前記前回スイープライン上の点の位置を示す情報から、三角関数を用いた計算によって前記第2画素の位置を取得することもできる。
【0019】
これにより、前回スイープライン上の画素の位置をそれぞれ記憶させることなく、前回スイープラインの点の位置を示す情報に基づいて前回スイープライン上の第2画素の位置を算出することができる。
【0020】
前記の信号処理装置においては、前記画素抜け検出部によって検出した画素抜け部分を埋めるための補間データを生成する補間処理部を備えることが好ましい。
【0021】
これにより、漏れなく検出される画素抜け部分に補間処理を行うことができるので、未更新の画素を生じさせることなく、適切な画像を表示器に表示させることができる。
【0022】
前記の信号処理装置においては、前記補間処理部は、前記中間画素を埋めるための前記補間データを、当該中間画素に対応する前記第1画素の内容及び第2画素の内容のうち少なくとも一方に基づいて生成することが好ましい。
【0023】
これにより、画素抜けの検出処理と補間処理とを並行して行うことが容易になるので、処理が簡素化される。
【0024】
前記の信号処理装置においては、前記補間処理部は、前記中間画素を埋めるための前記補間データとして、前記第1画素の内容を用いることが好ましい。
【0025】
これにより、過去のスイープライン上の画素の内容を保持したり、参照したりする必要がないので、補間処理を簡略化でき、演算コストを低減することができる。
【0026】
本発明の第2の観点によれば、前記の信号処理装置を備えるレーダ装置が提供される。
【0027】
本発明の第3の観点によれば、方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置において、以下のステップを含む画素抜け検出方法が提供される。即ち、第1ステップでは、前記エコー信号に基づく情報を含むスイープライン上の点に対応する画素の位置をXY直交座標系で求める。第2ステップでは、今回描画するスイープライン上の画素である第1画素の位置と、前回処理したスイープライン上の画素であって前記第1画素にX軸方向又はY軸方向で対応する画素である第2画素の位置と、を取得する。第3ステップでは、前記第2ステップで位置を取得した前記第1画素と前記第2画素とに挟まれるように、1以上の画素である中間画素が存在するか否かを調べ、存在していた場合は、当該中間画素を画素抜け部分と判定する。
【0028】
これにより、画素が並べられる方向であるX軸方向又はY軸方向で画素抜けを検出していくので、信号の送受信タイミングや画面サイズ等の影響を受けることなく、画素抜けを漏れなく検出することができる。
【0029】
前記の信号処理装置の画素抜け検出方法においては、前記第3ステップで検出した画素抜け部分を埋めるように補間処理を行う第4ステップを含むことが好ましい。
【0030】
これにより、漏れなく検出される画素抜け部分に補間処理を行うことができるので、未更新の画素を生じさせることなく、適切な画像を表示器に表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係るレーダ装置の構成を概略的に示したブロック図。
【図2】画素抜け検出方向の切替えを説明する図。
【図3】X軸方向での画素抜け検出を説明する図。
【図4】補間処理の方向を説明する図。
【図5】第1実施形態の画素抜け検出及び補間処理を行う手順を示したフローチャート。
【図6】Bresenhamの描画アルゴリズムを説明する図。
【図7】第2実施形態の画素抜け検出及び補間処理を行う手順を示したフローチャート。
【図8】第3実施形態の画素抜け検出を説明する図。
【図9】三角関数を用いた対応画素の画素位置の取得を説明する図。
【図10】スイープラインの先端が描く円周上に位置する画素に基づいて設定画素を設定するX軸方向のみの画素抜け検出を説明する図。
【図11】前回スイープラインの最遠点画素の位置に基づいて設定画素を設定するX軸方向のみの画素抜け検出を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る信号処理装置としてのレーダ装置10の構成を概略的に示したブロック図である。
【0033】
図1に示す第1実施形態のレーダ装置10は、レーダアンテナ1と、受信部11と、A/D変換部12と、スイープメモリ13と、エコー強度計算部14と、表示用画像メモリ15と、描画アドレス発生部16と、画素抜け検出部31と、補間アドレス発生部32と、補間内容生成部33と、表示器19と、を主要な構成として備えている。
【0034】
レーダアンテナ1は、パルス状の電波である探知信号を送信(放射)できるとともに、この送信した電波の反射波であるエコー信号を受信可能に構成されている。このレーダアンテナ1は、所定の周期で水平面内を回転しており、この回転周期より小さい周期で前記探知信号が方位を異ならせながら繰り返し出力されている。このレーダアンテナ1が1回転する間に探知信号が送信される回数によって、レーダ装置10の角度分解能が決定される。
【0035】
受信部11は、レーダアンテナ1が受信した反射波を検波し、増幅してA/D変換部12に出力する。A/D変換部12は、受信部11から送られてきたアナログ信号を適宜のデジタル信号に変換する。
【0036】
スイープメモリ13は、A/D変換部12によってデジタル信号に変換された1スイープ分の受信データを記憶可能に構成されている。なお、ここでいう「スイープ」とは、探知信号を送信してから次の探知信号を送信するまでの一連の動作をいい、「1スイープ分の受信データ」とは、探知信号を送信した後、次の探知信号を送信するまでの期間に受信したデータをいう。
【0037】
電波は直進する性質を持っているので、1スイープ分の受信データは、自船を起点にしてレーダアンテナ1の向きに引いた1本の直線上における状況を表す。また、レーダアンテナ1が当該直線の向きに探知信号を送信したときに、自船に近い物標によるエコー信号は早いタイミングで受信され、遠い物標によるエコー信号は遅いタイミングで受信される。従って、1スイープ分の受信データには、前記直線上に物標があるか否かの情報、及び、物標があった場合は当該物標が自船からどれだけ離れているかを表す情報が含まれている。前記スイープメモリ13には、1スイープ分の受信データを時系列順で記憶することができる。
【0038】
エコー強度計算部14は、スイープメモリ13から1スイープ分の受信データを時系列順に読み出して振幅を順次計算することで、当該受信データ中に等間隔で設定された複数のポイントでのエコー強度をそれぞれ算出する。これは、実質的には、レーダアンテナ1から探知信号を送信した時点から一定の時間間隔をあけて複数設定された時刻のそれぞれにおいて、反射波のエコー強度を検出することに相当する。
【0039】
エコー強度計算部14で取得されたエコー強度のデータ群(以下、このデータ群を「1スイープ分のエコー強度データ群」と呼ぶことがある。)は、表示用画像メモリ15へ時系列順に出力され、順次記憶される。なお、1スイープ分のエコー強度データ群を表示用画像メモリ15の画像データのうち何れの画素に記憶させるかは、描画アドレス発生部16によって決定される。
【0040】
表示用画像メモリ15は、表示器19に画像を表示するための複数の画素データからなる画像データ(ラスタデータ)を記憶可能に構成されている。表示用画像メモリ15が保持する画像(以下、表示用画像と称する。)は、多数の画素が縦横に格子状(m画素×n画素のマトリクス状)に並べられることで表現されている。
【0041】
この表示用画像メモリ15に格納された表示用画像のデータは、適宜のタイミングで読み出されて表示器19に表示される。表示用画像メモリ15には、エコー強度の情報等を前記画素データとして画素毎に記憶することができる。
【0042】
画素位置計算部としての描画アドレス発生部16は、エコー強度計算部14で得られた1スイープ分のエコー強度データ群を構成するエコー強度データのそれぞれについて、対応する表示用画像上の画素の位置(アドレス)を求めることができる。この描画アドレス発生部16には、探知信号を送信したときのレーダアンテナ1の角度θを表す信号が入力される。描画アドレス発生部16は、レーダアンテナ1の角度θ及びレーダレンジ等に基づき、エコー強度の各データに対応する画素の位置を以下の方法で計算する。
【0043】
即ち、レーダアンテナ1から探知信号を送信してから時間tが経過した時点でエコー信号が返ってきた場合、その時間tの間に、レーダアンテナ1と物標との間の距離rを電波が往復したことになる。従って、水平な平面内でレーダアンテナ1を原点とする極座標系を定義すると、レーダアンテナ1が探知信号を送信してから時間tが経過したときのエコー強度に対応する物標の位置は、当該探知信号の送信時の所定の方位基準(例えば北)からのアンテナ角度をθとして、上記の極座標系で(r,θ)=(c×t/2,θ)と表すことができる。ただし、cは光速である。また、上記極座標系においてアンテナ角度θは、レーダアンテナ1が所定の方位(北方向)を向いているときに0°となり、レーダアンテナ1が通常回転する方向が正となるように定められる。なお、所定の方位としては、船体の座標系(船首基準)を用いることもできる。
【0044】
一方、表示用画像メモリ15で保持される表示用画像は、上記のとおり、格子状(マトリクス状)に配列された画素によって表現される。本実施形態では、表示用画像における各画素の位置を、画像の左上隅を原点とし、右方向にX軸をとり、下方向にY軸をとるXY直交座標系で取り扱うこととしている。
【0045】
そして、描画アドレス発生部16は、前記表示用画像においてエコー強度の情報を記憶させるべき画素の位置を算出する。具体的には、この画素の位置(X,Y)は、上記XY直交座標系における自船(レーダアンテナ1)の位置を(Xs,Ys)とした場合、以下の式(1)に従って計算される。
【数1】
ただし、tは、レーダアンテナ1が探知信号を送信した時点からの経過時間である。kは、表示器19の表示領域のサイズ及びレーダレンジ等を考慮して定められる定数であり、θはアンテナ角度である。なお、(X,Y)は、前記表示用画像を構成する画素の位置(アドレス)を特定するものであるため、X及びYの計算結果において、小数点以下の端数は適宜丸められる。
【0046】
本実施形態では、1スイープ分のエコー強度データ群を構成する各データが、エコー強度計算部14から表示用画像メモリ15へ時系列順に出力される。そして、描画アドレス発生部16は、それぞれのエコー強度データに対応する画素の位置(X,Y)を式(1)に従って順次求めて表示用画像メモリ15へ出力する。従って、1スイープ分のエコー強度データ群を処理する場合、描画アドレス発生部16としては、上記の式においてθを一定とし、tをゼロから増大させながら(X,Y)を繰り返し計算していくことになる。
【0047】
上記の計算により、1スイープ分のエコー強度データ群に対応する表示用画像上の画素をXY直交座標系で表した位置(X,Y)は、自船の位置(Xs,Ys)を基準とした角度θの直線上となる。なお、以下の説明では、この直線を「スイープライン」と称することがある。
【0048】
従って、前記描画アドレス発生部16は、前記直線上の点(スイープライン上の点)に対応する、表示用画像における画素の位置(X,Y)を求める機能を有しているということができる。また、描画アドレス発生部16は、極座標で表現されるスイープライン上の点(r,θ)を、XY直交座標系での画素の位置(X,Y)に変換する、座標変換部としての機能を有しているということができる。
【0049】
描画アドレス発生部16による計算結果として得られる画素の位置(X,Y)は、tがゼロから増大するに伴って自船の位置(Xs,Ys)から離れていくように順次移動し、その移動軌跡が1本の直線(前記スイープライン)を描くことになる。1スイープ分のエコー強度データ群は、前記表示用画像において1本の前記スイープラインを描くように、計算された位置の画素に画素データとして記憶される。
【0050】
なお、このとき、自船の位置(基準位置)に近い範囲では、1つの画素を複数の直線が通過し、複数の極座標系のデータが1つの画素に重なって入力されることになる。そこで本実施形態では、画素に入力された複数のデータに基づいて代表値を決定し、この代表値を前記画素データとして記憶するようになっている。この代表値を決定する方法としては、複数のデータのうち最大値を代表値とする方法や、複数のデータから算出した平均値を代表とする方法等、適宜の方法を採用することができる。
【0051】
また、以後の説明では、表示用画像メモリ15に記憶される前記表示用画像の画素にエコー強度の情報を画素データとして記憶させることを、当該画素に「描画する」(又は、画素を「埋める」)と表現する場合がある。
【0052】
探知信号を1回送信する毎にレーダアンテナ1の角度θが変更されるため、これに伴ってスイープラインの角度も変化する。以下の説明では、現在処理している(描画しようとしている)スイープラインを「今回スイープライン」と称し、これに対応するアンテナ角度をθnとする。また、直前に処理(描画)したスイープラインを「前回スイープライン」と称し、これに対応するアンテナ角度をθn-1(ただし、θn>θn-1)とする。
【0053】
画素抜け検出部31は、画像データに存在する画素抜けを検出するためのものである。この画素抜け検出部31は、今回スイープライン上の画素の位置と、前回スイープライン上の画素の位置と、に基づいて、今回スイープラインと前回スイープラインとの間に発生する画素抜けを検出する。
【0054】
画素抜け検出部31は、スイープライン上の画素の位置を記憶するための対応画素位置記憶メモリ(記憶部、第2画素位置記憶メモリ)40を有している。この対応画素位置記憶メモリ40は、RAM等の適宜のハードウェアで構成されている。なお、この画素抜け検出部31による画素抜け検出の詳細については後述する。
【0055】
補間アドレス発生部32は、画素抜け検出部31によって画素抜けと判定された部分に相当する画素の位置(表示用画像メモリ15でのアドレス)を示す補間用のアドレスを生成する。
【0056】
補間処理部としての補間内容生成部33は、画素抜け検出部31によって画素抜けと判定された部分を埋めるべき内容(補間データ)を生成する。本実施形態では、補間内容生成部33は、エコー強度計算部14の出力に基づいて前記補間データを生成する。この補間データは、補間アドレス発生部32によって生成された補間用のアドレスに基づいて表示用画像メモリ15に書き込まれ、これにより補間が行われる。
【0057】
表示器19は、CRT又はLCD等によって構成されるラスタスキャン式の表示装置である。表示用画像メモリ15から読み出された表示用画像の画像データが、この表示器19によって表示される。
【0058】
以上の構成のレーダ装置10において、エコー強度計算部14は、レーダアンテナ1から探知信号を送信したときのエコー信号に基づいて、1スイープ分のエコー強度データ群を得る。また、描画アドレス発生部16は、探知信号送信時のレーダアンテナ1の角度θに基づいて、1スイープ分のエコー強度データ群を表示用画像メモリ15に記憶させる複数の画素の位置を(XY直交座標系で)順次求める。
【0059】
そして、以上の結果に基づき、表示用画像メモリ15が保持する表示用画像において角度θのスイープラインがあたかも描画されるかのように、前記エコー強度データ群を構成する各データが、表示用画像メモリ15に画素データとして記憶される。以上の処理をレーダアンテナ1の角度θを少しずつ変更しながら繰り返すことで、表示用画像メモリ15の画像データに、自船の位置を基準とするスイープラインを1本ずつ描くことができる。
【0060】
こうして得られた画像データは、表示用画像メモリ15から適宜のタイミングで読み出され、他の情報との合成処理等が適宜行われた上で表示器19に表示される。この結果、多数のスイープラインが放射状に描かれた画像が表示器19に表示され、ユーザは当該画像を見ることで、自船とその周囲の物標との位置関係を知ることができる。レーダアンテナ1の回転に伴って表示用画像メモリ15の画像には新しいスイープラインが繰り返し描画され、この結果、表示器19に表示される画像も随時更新されていく。
【0061】
次に、図2及び図3を参照して、第1実施形態のレーダ装置10の画素抜け検出及び補間処理について説明する。図2は、画素抜け検出方向の切替えを説明する図である。図3は、X軸方向での画素抜け検出を説明する図である。
【0062】
本実施形態の画素抜け検出部31による画素抜けの検出は、隣り合うスイープラインの間に生じる画素抜けを、表示用画像メモリ15において画素が配列される方向(X軸方向又はY軸方向)で検出するものである。
【0063】
以下、X軸方向に画素抜けを検出する場合で説明する。即ち、表示用画像に今回スイープラインを描くためにエコー強度等の情報を書き込むべき画素は複数あるが、そのうちの1つの画素に注目し、この画素を注目画素(第1画素)とする。この注目画素は、描画アドレス発生部16によって、アンテナ角度θn等に基づいて求めることができる。次に、前回スイープラインを描く際にエコー強度が書き込まれた複数の画素の中から、前記注目画素とY座標が同一である画素(言い換えれば、注目画素にX軸方向で対応する画素)を探す。そして、見つかった画素を対応画素(第2画素)とする。
【0064】
次に、注目画素と対応画素の位置関係を調べる。即ち、注目画素と対応画素がX軸方向で隣接している又は重なり合っている場合には、そのX軸方向に画素抜けが生じていないと判定する。一方、注目画素と対応画素とに挟まれた1以上の画素(中間画素)が存在している場合には、画素抜けが生じている(前記中間画素が画素抜け部分である)と判定する。
【0065】
上記で説明したのはX軸方向に画素抜けを検出する方法であるが、Y軸方向に画素抜けを検出する場合も同様である。即ち、画素抜けの検出方向がY軸方向である場合、今回スイープラインを描くために書き込むべき画素群から画素を1つ選んで注目画素とする。また、前回スイープラインを描くために書き込まれた画素群から、前記注目画素とX座標が同一である画素(注目画素にY軸方向で対応する画素)を探し、これを対応画素とする。そして、注目画素と対応画素とに挟まれた1以上の画素が存在すれば、当該画素(中間画素)の部分が画素抜けであると判定する。
【0066】
画素抜けの検出方向をX軸方向とするかY軸方向とするかは、レーダアンテナ1の角度(スイープラインの角度であるスイープ角度)θに応じて決定される。図2に示すように、スイープ角度θが−45度(315度)から45度までの範囲及び135度から225度までの範囲では、X軸方向で画素抜けの検出を行う。また、前記スイープ角度が45度から135度までの範囲及び225度から315度までの範囲では、Y軸方向で画素抜けの検出を行う。なお、この画素抜けの検出方向の決定は、図略のスイープ角度判定部によって行う。この決定にあたって参照されるスイープ角度としては、今回スイープラインの角度θn及び前回スイープラインの角度θn-1のうち何れか一方又は両方を用いることができる。
【0067】
以下、画素抜けの検出方向を上記のように自動的に切り替えることの効果について説明する。即ち、スイープラインの角度θnは0度から360度の範囲で刻々と変化するが、例えば今回スイープラインがY軸方向と平行に近い角度となった場合(θnが0度又は180度に近い場合)、画素抜け検出方向をY軸方向としたのでは、注目画素に対応する対応画素を決定できないおそれがある。しかしながら、本実施形態では、今回スイープラインがY軸方向とほぼ平行な場合は画素抜けの検出方向がX軸方向になるので、画素抜けの検出を適切に行うことができる。同様に、スイープラインがX軸方向と平行に近い角度となった場合、画素抜けの検出方向をY軸方向とすることで、画素抜けの検出を適切に行うことができる。本実施形態では、前回スイープライン上の画素の位置を取得するために対応画素位置記憶メモリ40の記憶内容を参照することとしている。
【0068】
即ち、今回処理しているスイープライン(今回スイープライン)は、次回に処理するスイープラインとの関係では前回スイープラインとなる。そこで画素抜け検出部31は、今回スイープラインを表示用画像に描画する際に描画アドレス発生部16で計算した画素の位置(X,Y)を、次回のスイープライン描画時の画素抜け検出で使用するために、対応画素位置記憶メモリ40に記憶することとしている。
【0069】
画素抜け検出部31は、前記注目画素のY座標を対応画素位置記憶メモリ40のインデックスに指定して記憶内容を参照することにより、前記対応画素のX座標を取得する。そして、注目画素のX座標と対応画素のX座標との差分を計算することで、両画素の間に挟まれた中間画素の有無を判定する。なお、画素抜け検出方向がY軸方向である場合には、前記対応画素位置記憶メモリ40にはX座標のインデックスが付けられ、当該X座標に対応するY座標が記憶されることになる。
【0070】
次に、図3を参照して、X軸方向で画素抜けを検出する例を具体的に説明する。図3は前記表示用画像の一部を概念的に示したものであり、1つのマス目が1つの画素に対応している。図3に示すように、複数の画素が縦横に並べられて表示用画像が構成されており、前回スイープラインが描画された画素と、今回スイープラインが描画される画素と、が模式的に示されている。
【0071】
上述したとおり、表示用画像にスイープラインを形成するための画素の描画は、自船に相当する画素の位置(Xs,Ys)に近い画素から順次行っていく。そして、画素が1つ描画されるごとに、当該画素を注目画素として上記の画素抜け検出を行う。このように、今回スイープラインの画素が1つ描画されるごとに画素抜け検出処理を行うことで、今回スイープラインと前回スイープラインとの間に生じている画素抜けを漏れなく検出することができる。
【0072】
以下、図3の画像において(Xd,Yk)の画素を注目画素とする場合を例にして説明する。今回スイープライン上の点に対応する画素の位置を描画アドレス発生部16が計算した結果として(Xd,Yk)が得られると、画素抜け検出部31は、当該画素(注目画素)のY座標の値、即ちYkをインデックスとして指定して、対応画素位置記憶メモリ40の内容を参照する。対応画素位置記憶メモリ40には、Ykに対応するX座標の値として、前回スイープラインの描画時のX座標であるXbが記憶されている。これにより、注目画素に対応する対応画素の位置(Xb,Yk)を得ることができる。
【0073】
次に、画素抜け検出部31は、注目画素と対応画素のX座標の差分を計算する。今回の例では、差分の値が2以上(Xd−Xb=2)であるので、両画素が隣接しておらず、かつ重なっていないこと(言い換えれば、両画素に挟まれる1つ以上の画素が存在すること)が判る。従って、画素抜け検出部31は、画素抜けがあると判定する。
【0074】
画素抜けの判定後、対応画素位置記憶メモリ40の記憶内容が更新される。即ち、注目画素のY座標(Yk)をインデックスとして指定して、当該Y座標に対応する対応画素位置記憶メモリ40の記憶内容を、注目画素のX座標(Xd)で上書きする。これにより、対応画素位置記憶メモリ40が指す画素の位置が、図3の白抜き矢印で示すようにX軸方向に移動することになる。
【0075】
次に、(Xc,Yl)の画素を注目画素とする場合について説明する。この場合、インデックスとしてYlを指定して対応画素位置記憶メモリ40の記憶内容が参照されると、注目画素にX軸方向で対応する画素(対応画素)のX座標がXbであることが判る。両画素のX座標の差分値を計算すると、Xc−Xb=1であるので、両画素は隣接していることになる。従って、画素抜け検出部31は、画素抜けがないと判定する。
【0076】
本実施形態では、画素抜け検出部31が画素抜けありと判定した場合、当該画素抜け検出部31は画素抜け数を併せて出力する。この画素抜け数は、注目画素と対応画素との間に挟まれる画素(中間画素)の数を意味するものであり、前記のX座標の差分値から1を減じることで得ることができる。画素抜け数がゼロの場合は、画素抜けが検出されなかったことを意味する。
【0077】
次に、図4を参照して補間処理について説明する。図4は、補間処理の方向を説明する図である。
【0078】
本実施形態では、図4に示すように、画素抜け検出方向がX軸方向であるときは、X軸方向に平行な方向で補間処理を行い、画素抜け検出方向がY軸方向であるときは、Y軸方向に平行な方向で補間処理を行う。このように、画素抜けの検出方向と補間処理の方向とは、常に平行な関係となっている。なお、本明細書において補間処理の「方向」とは、補間処理によりデータが書き込まれる対象画素と、前記データを生成するために内容が参照される参照画素と、があるときに、参照画素から対象画素へ向かう方向をいう。
【0079】
本実施形態の補間処理では、画素抜けと判定された前記中間画素を埋めるための補間データとして、当該中間画素に隣接している前記注目画素のデータ(即ち、今回スイープラインのデータ)をそのまま用いる。例えば図3で(Xk,Ya)の画素を注目画素とした場合、X軸方向で対応する対応画素(Xe,Ya)との間に5つの中間画素が存在し、これが画素抜けとして検出される。このとき、5つの中間画素には、注目画素(Xk,Ya)の画素データがそのままコピーされる。
【0080】
これにより、図4に示すように、X軸又はY軸と平行な方向で、かつ、レーダアンテナ1の回転方向とほぼ逆方向となるように補間処理が行われる。この補間処理は、注目画素の内容を中間画素にコピー描画するだけなので、注目画素の描画と並行して高速に行うことができる。また、補間処理のために前回スイープライン上の画素(対応画素)の画素データを参照する必要がないので、処理の高速化を実現できる。
【0081】
次に、図5を参照して、画素抜け検出及び補間データの処理手順について説明する。図5は、第1実施形態の画素抜け検出及び補間処理を行う手順を示したフローチャートである。
【0082】
まず、画素抜け検出部31に、今回スイープラインに基づいて描画されるべき画素の位置(X,Y)が、1画素分入力される(S101)。画素抜け検出部31は、入力された画素を注目画素としたときに、当該注目画素にX軸方向又はY軸方向で対応する対応画素の位置を、対応画素位置記憶メモリ40を参照することで取得する。そして、注目画素と対応画素とのX座標値の差分又はY座標値の差分を算出する(S102)。
【0083】
画素抜け検出部31は、計算された差分値が1以下であるか否かを判定する(S103)。差分値が2以上である場合は、画素抜け検出部31は、画素抜け数を補間アドレス発生部32に出力し(S104)、補間アドレス発生部32は、画素抜け数に基づいて、補間アドレス(即ち、注目画素と対応画素に挟まれた中間画素の位置)を発生させる(S105)。続いて、補間内容生成部33は、前記注目画素の内容をそのまま補間データとし、これを中間画素にコピーすることで、補間処理を行う(S106、S107)。
【0084】
補間処理が終了したところで、前記S102で参照した対応画素位置記憶メモリ40の内容を前記注目画素の位置で更新し(S108)、処理を終了する。なお、S103の判断で差分値が1以下である場合は、S104からS107の処理を行うことなく、対応画素位置記憶メモリ40を更新した後、この処理を終了する。
【0085】
以上の処理を、今回スイープラインを画像に形成するために描画すべき画素の位置(X,Y)が描画アドレス発生部16から1画素分入力される度に繰り返し行うことで、スイープライン間に生じる画素抜けが順次検出されて、漏れなく補間処理することができる。
【0086】
以上に示したように、第1実施形態のレーダ装置10は以下のように構成される。即ち、レーダ装置10は、描画アドレス発生部16と、画素抜け検出部31と、を備える。描画アドレス発生部16は、スイープライン上の点に対応する画素の位置をXY直交座標系で求める。画素抜け検出部31は、今回スイープラインの画素の位置と、前回スイープラインの画素の位置と、に基づいて、画素抜けを検出する。そして、画素抜け検出部31は、今回スイープライン上の画素である注目画素と、当該注目画素にX軸方向又はY軸方向で対応する前回スイープライン上の画素である対応画素と、に挟まれた1以上の画素である中間画素が存在するときに、当該中間画素の部分を画素抜け部分と判定する。
【0087】
これにより、画素が並べられる方向であるX軸方向又はY軸方向で画素抜けを検出していくので、信号の送受信タイミングや画像サイズ等の影響を受けることなく、画素抜けを漏れなく検出することができる。
【0088】
また、本実施形態のレーダ装置10においては、スイープラインの角度に応じて画素抜けを検出する方向を自動的に切り替える。
【0089】
これにより、探知信号を360度の全周に送信する場合でも、スイープラインの全角度範囲にわたって画素抜けを確実に検出でき、後述の補間処理も漏れなく行うことができる。
【0090】
また、本実施形態のレーダ装置10においては、画素の位置を記憶可能な対応画素位置記憶メモリ40を備える。画素抜け検出部31は、注目画素の位置を対応画素位置記憶メモリ40に記憶し、次回のスイープラインの描画時には、対応画素位置記憶メモリ40の内容を参照することで対応画素の位置を取得する。
【0091】
これにより、前回スイープライン上の対応画素の位置を、対応画素位置記憶メモリ40の参照により簡単に取得できる。従って、画素抜けの検出を行うための処理をシンプルにできる。
【0092】
また、本実施形態のレーダ装置10においては、画素抜け検出部31によって検出した画素抜け部分を埋めるための補間内容生成部33を備える。
【0093】
これにより、漏れなく検出される画素抜け部分に補間処理を行うことができるので、未更新の画素を生じさせることなく、適切な画像を表示器19に表示させることができる。これによって、レーダアンテナ1(スイープライン)が1回転する間に全画素の更新を確実に行うことができる。
【0094】
また、本実施形態のレーダ装置10においては、補間内容生成部33は、中間画素を埋めるための補間データを、当該中間画素に対応する注目画素の内容に基づいて生成する。
【0095】
これにより、画素抜けの検出処理と補間処理とを並行して行うことができ、処理を全体として簡素化できる。
【0096】
また、本実施形態のレーダ装置10においては、補間内容生成部33は、中間画素を埋めるための補間データとして、当該中間画素に対応する注目画素の内容を用いる。
【0097】
これにより、過去のスイープライン上の画素の内容を保持したり、参照したりする必要がないので、補間処理を簡略化でき、演算コストを低減することができる。
【0098】
次に、図6及び図7を参照して、第2実施形態の画素抜け検出処理について説明する。図6は、Bresenhamの描画アルゴリズムを説明する図である。図7は、第2実施形態の画素抜け検出及び補間処理を行う手順を示したフローチャートである。なお、第2実施形態の構成のうち、今回スイープライン及び前回スイープライン上の画素の位置を演算して求める処理以外については、上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0099】
本実施形態のレーダ装置10において、描画アドレス発生部16では、上記式(1)を用いる代わりに、Bresenhamの描画アルゴリズムを用いて、今回スイープライン上の画素の位置(アドレス)を算出するように構成されている。同様に、画素抜け検出部31においても、Bresenhamの描画アルゴリズムを用いて、前回スイープライン上の画素の位置(アドレス)を算出するように構成されている。
【0100】
まず、一般的なBresenhamの描画アルゴリズムについて説明する。図6(a)に示すように、XY座標系において、始点(x1,y1)から終点(x2,y2)までを結ぶ直線を描く場合を考える。この直線を表す関数は、以下の式(2)のように記述することができる。
【数2】
ただし、この式には除算が含まれており、計算負荷が大きい。この点、前記Bresenhamのアルゴリズムは、画素がマトリクス状に配置された画像に対し、少ない計算量で効率的に直線を描画するために用いられる。
【0101】
Bresenhamの描画アルゴリズムでは、まず、X軸方向とY軸方向の何れを基準に画素の位置を計算していくかを決定する。この決定にあたっては、与えられた2点間において、X軸方向の距離(Δx=x2−x1)とY軸方向の距離(Δy=y2−y1)とでどちらが長いかを調べ、長い距離の方を基準とすれば良い。例えば、2点の座標がΔy>Δxの関係となっている場合、Y軸方向を基準にして画素の位置を計算する。この場合、Y座標の値をy1からy2まで1ずつ増加させていき、その過程で、X座標の値を初期値x1から適宜のタイミングで1ずつ増加させ、Y座標の値がy2となったときにX座標の値がx2となるようにする。この結果、X座標とY座標で特定される画素の位置は、(x1,y1)から、X軸方向に1だけ移動したりしなかったりしつつY軸方向に1ずつ移動し、(x2,y2)に到達する。そして、その移動軌跡が目的の直線を描くことになる。
【0102】
より具体的には、以下のように考えることができる。即ち、仮にX座標を全く変化させずにY座標を1ずつ増加させ続けたとすると、描画結果はY軸に平行な直線になってしまう。従って、図6(a)のような斜めの直線を描くには、Y座標を増加させる過程で、適宜のタイミングでX座標を1ずつ増加させる必要がある。そこで、本アルゴリズムでは、X座標を増加させるタイミングを決定するために、X軸方向の誤差値eXというパラメータを導入している。
【0103】
この誤差値eXの値は、現在の画素の位置と、描画したい理想の直線と、の間で生じるX軸方向のズレに比例している。この誤差値eXの初期値はゼロとされるが、画素のX座標を変化させずにY座標が1増加した場合、(x2−x1)が毎回加算される。そして、誤差値eXの値が(y2−y1)を超えたところで、X座標を1増加させるとともに、eXから(y2−y1)を減算する。
【0104】
以上の処理を、Y座標の値をy1から1ずつ増加させてy2になるまで繰り返すことにより、画像に目的の直線を引くためにデータを書き込むべき画素の位置を得ることができる。また、誤差値eXの値は常に整数であり、除算等の処理が不要になるので、計算量を削減することができる。
【0105】
そして本実施形態では、直線の始点をレーダアンテナ1の位置(Xs,Ys)とし、終点を今回スイープライン上の最も遠い点とすることにより、今回スイープラインを高速に描画することができる。また、同様に、直線の始点をレーダアンテナ1の位置(Xs,Ys)とし、終点を前回スイープライン上の最も遠い点とすることにより、当該前回スイープライン上の画素の位置を計算で求めることができる。なお、今回スイープラインにおいて、前記終点の位置は上記式(1)に従って適宜計算される。また、計算された今回スイープラインの終点の位置は適宜の記憶部に記憶しておき、次回のスイープラインの描画時に、前回スイープラインの終点の位置として用いられる。
【0106】
次に、上記Bresenhamの描画アルゴリズムを用いて今回スイープラインを描く処理を具体的に説明する。即ち、Bresenhamの描画アルゴリズムでスイープラインを描くときに、1スイープ分のエコー強度データ群を仮に単純にY座標(又はX座標)に対応させて画素データに記憶させることとすると、スイープ角度θによってエコー強度の情報がスイープライン方向に引き伸ばされたり縮められたりして表示用画像に書き込まれることになり、画像の歪みを招く。そこで、本実施形態では、1スイープ分のエコー強度データ群に基づいてスイープラインを描く場合に、Bresenhamの描画アルゴリズムを以下のように拡張して用いる。
【0107】
即ち、1スイープ分のエコー強度データ群がR個のデータで構成され、各エコー強度データは、0番から(R−1)番までのインデックスを指定して適宜の記憶部から読み出すことができるとする。また、エコー強度データ群のインデックスにアクセスするための変数(アクセス変数)をrとする。この場合、本実施形態では図6(b)に示すように、画素がマトリクス状に配置された仮想画像においてr軸とY軸を互いに直交するように定め、その直交座標系で(0,y1)から(R−1,y2)まで直線を引くためにデータを書き込むべき画素の位置(r,Y)を、上記と同様にBresenhamの描画アルゴリズムによって求める。このとき、画素の位置の計算は、r軸方向を基準にして行う。
【0108】
こうして得られた計算結果(r,Y)は、エコー強度データのインデックスと、そのエコー強度データを書き込むべき画素のY座標と、の対応を示す。アクセス変数rを0から1ずつ増大させながら上記の方法でY座標を繰り返し計算すると、適宜のタイミングでY座標が1増加する。このタイミングで、当該Y座標に対応するX座標を前述の描画アルゴリズムで求め、得られた画素(X,Y)に、r番のインデックスで指定されたエコー強度データを書き込む。以上の処理を、rを0からR−1まで1ずつ増大させながら繰り返すことで、エコー強度データを正確な位置の画素に記憶させることができ、画像の歪みを防止できる。
【0109】
ただし、上記の例は、前記XY座標系においてスイープラインの画素の位置を取得する際に、Y軸方向を基準に画素の位置を計算する場合である。X軸方向を基準に画素の位置を計算する場合は、仮想画像においてr軸とX軸による直交座標系を定め、(0,x1)から(R−1,x2)まで直線を引くことになる。
【0110】
なお、この拡張されたBresenhamの描画アルゴリズムは、描画アドレス発生部16が今回スイープライン上の点を求める場合に使用される。一方、画素抜け検出部31においては、前記注目画素に対応する対応画素の位置を求めるだけであるので、拡張されない通常のBresenhamの描画アルゴリズムを用いれば良い。即ち、X軸方向に画素抜けを検出する場合では、注目座標のY座標が変化したタイミングで、それに対応する前回スイープライン上の画素のX座標を、通常のBresenhamの描画アルゴリズムで求めれば十分である。
【0111】
次に、図7を参照して、第2実施形態の画素抜け検出及び補間処理を行う手順について説明する。まず、描画アドレス発生部16によって、今回スイープライン上の点の画素を示す位置(アドレス)が生成され、画素抜け検出部31に入力される(S201)。なお、本実施形態では上述したとおり、今回スイープライン上の点の位置は、拡張されたBresenhamの描画アルゴリズムを用いて算出する。
【0112】
画素抜け検出部31は、前回スイープライン上で自船の位置から最も遠い点の画素の位置を、適宜の記憶部から読み出す。そして、画素抜け検出部31は、S201で入力された画素を注目画素とし、これにX軸方向で対応する前回スイープライン上の画素(対応画素)の位置を、Bresenhamの描画アルゴリズムを用いて算出する(S202)。以後の処理(S203〜S207)は、第1実施形態(S103〜S107)と同様であるので、説明を省略する。なお、本実施形態では対応画素の位置を計算により逐次求めることとしているので、第1実施形態で行われていた画素位置記憶メモリの更新処理(S108)は省略されている。
【0113】
以上に説明した処理が、自船の位置の画素(Xs,Ys)から、今回スイープライン上において自船から最も遠い画素まで、画素の位置が1つ入力される毎に反復される。これにより、今回スイープラインの描画と、補間処理と、を並行して高速に行うことができる。なお、最後の画素(即ち、自船から最も遠い画素)の処理が終了すると、当該画素の座標は適宜の記憶部に記憶され、この内容が、次回のスイープラインの描画時にS202の処理で参照される。
【0114】
以上に説明したように、本実施形態では、Bresenhamの描画アルゴリズムを用いて前回スイープライン上の前記対応画素の位置を算出し、これに基づいて画素抜けを検出している。本実施形態では、スイープライン上で自船から最も遠い画素の位置のみを記憶しておけば、それに基づいて対応画素の位置を計算できるので、対応画素位置記憶メモリ40によって画素アドレスを1画素ごとに記憶する第1実施形態の構成に比べて、記憶領域の効率的な活用という観点から有利である。
【0115】
以上に示したように、第2実施形態のレーダ装置10においては、画素抜け検出部31は、Bresenhamのアルゴリズムを用いた計算により、前記対応画素の位置を取得する。
【0116】
これにより、自船の画素の位置と、前回スイープラインにおいて自船から最も遠い画素の位置に基づいて、前回スイープライン上の対応画素の位置を算出できる。また、Bresenhamのアルゴリズムは演算コストが小さいので、画素抜け検出部31の構成を容易に簡素化することができる。
【0117】
次に、図8及び図9を参照して、極座標系の情報を利用して対応画素を検出する第3実施形態の画素抜け検出部31について説明する。図8は、第3実施形態の画素抜け検出を説明する図である。図9は、三角関数を用いた対応画素の画素位置の取得を説明する図である。なお、第3実施形態において、前回スイープラインの対応画素の位置を取得する処理に関する構成以外は上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する場合がある。
【0118】
図8及び図9は、画素抜けを検出する方向がX軸方向である場合の対応画素の検出を示している。図8に示すように、今回スイープライン上の注目画素に対応する対応画素は、画素抜けを検出する方向(X軸方向)で注目画素に対応する画素であり、前回スイープライン上であって、Y座標の値が、注目画素のY座標の値と同じ画素である。
【0119】
ところで、上記第1実施形態でも説明したように、スイープラインは、エコー強度を示す複数のサンプルデータ(1スイープ分のエコー強度データ群)の極座標系の情報をXY直交座標系にそれぞれ変換することで描画される。従って、前回スイープライン上の複数のサンプルデータのうち、XY直交座標系に変換されたときのY座標の値が、注目画素のY座標の値と同じ値になるサンプルデータを特定できれば、そのサンプルデータからX座標の値を求めることができ、対応画素の画素位置が決定されることになる。以下に、対応画素の画素位置を算出する方法を具体的に説明していく。
【0120】
第3実施形態のレーダ装置10の画素抜け検出部は、エコー強度を示す前回スイープライン上の点であるサンプルデータの極座標系のデータを利用して、対応画素の画素位置を算出するように構成されている。また、第3実施形態の画素抜け検出部31は、前回スイープラインのスイープ角度θn-1を記憶するための前回スイープ角度記憶部を備えるように構成されている。
【0121】
なお、スイープ角度は、今回スイープラインの描画が終了するとともに、適宜のタイミングで更新される。より具体的には、描画が終了した今回スイープラインの角度θが、次回のスイープラインを描画する際の画素抜けを検出するために、前回スイープラインの角度θn-1として前回スイープ角度記憶部に記憶される。
【0122】
以下、画素抜け検出部31の対応画素の画素位置の算出処理について説明する。まず、画素抜け検出部31は、図9に示すように、前回スイープライン上の隣り合うサンプルデータ間の距離方向の長さΔrを求める。Δrは、隣り合うサンプルデータのそれぞれの検出時間の差Δtと光の速度cとによって求めることができる。なお、Δrとしては、反射波のエコー強度を検出する時間間隔に応じて予め設定されているものを用いることもできる。
【0123】
次に、Δr及びスイープ角度θn-1に基づいて三角関数を用いた計算を行うことにより、サンプルデータ間でのXの変化量ΔX=Δrsinθn-1及びYの変化量ΔY=Δrcosθn-1を求める。
【0124】
続いて、X座標及びY座標を表す変数Xt,Ytを自船の位置の座標に初期化する(即ち、Xt=Xs、Yt=Ys)。そして、この変数XtにΔXを加算するとともに、YtからΔYを減算する。次に、減算後のYtの値が注目画素のY座標の値と一致するか否かを調べ、一致している場合は、対応画素の画素位置として座標(Xt,Yt)を設定する。一致していない場合は、Ytの値が注目画素のY座標の値と一致するまで、Xtの加算及びYtの減算を繰り返す。
【0125】
この構成で、初期化処理(Xt=Xs、Yt=Ys)を行った後に、Ytに対してΔYをn回減算した結果、Ytの値が注目画素のY座標の値と一致したとする。この場合、Xtの初期値にΔXをn回加算したものがX座標の値となるので、対応画素の画素位置は、(Xs+n×ΔX,Ys−n×ΔY)となる。なお、Y軸方向で画素抜けの検出を行う場合にも、同様の処理を行うことで対応画素の画素位置を算出することが可能である。
【0126】
以上に示したように、第3実施形態のレーダ装置10において、画素抜け検出部31は、前回スイープライン上の点の位置を示す極座標系の情報から、三角関数を用いた計算によって対応画素の位置を取得する。
【0127】
これにより、前回スイープライン上の画素の位置をそれぞれ記憶させることなく、前回スイープラインの点の位置を示す極座標系の情報に基づいて前回スイープライン上の対応画素の位置を算出することができる。
【0128】
なお、上記第3実施形態に示した極座標系の情報(r,θ)を用いて三角関数により対応画素の画素位置を算出する構成は、以下のように変更することもできる。即ち、最初に、自船からの距離を示す変数rを0で初期化する(r=0)。そして、rに、Δr(隣り合うサンプルデータ間の距離)を加算し、自船の位置(Xs,Ys)、角度θn-1及びr(Δrが加算された値)を用いて三角関数によってX座標及びY座標を求める(X=Xs+rsinθn-1,Y=Ys−rcosθn-1)。このY座標の値が注目画素のY座標の値と一致するまで変数rの加算を繰り返す。即ち、rにΔrが加算されるごとにX座標及びY座標を算出し、算出したY座標の値と注目画素のY座標の値とを比較する。そして、算出したY座標の値と注目画素のY座標の値とが一致したときは、そのときのX座標の値及びY座標の値を対応画素の画素位置に設定するのである。なお、Y軸方向で画素抜けの検出を行う場合にも、同様の処理を行うことで対応画素の画素位置を算出することが可能である。
【0129】
以上に本発明の実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0130】
補間データの生成方法は、上述の実施形態に限定されず、画像の品質や処理効率等を考慮して、適宜の方法を採用することができる。例えば、注目画素ではなく対応画素の内容を中間画素にそのままコピーして埋めたり、注目画素と対応画素の間を直線補間したデータで中間画素を埋めたりすることもできる。また、補間データの生成方法として、直線補間以外にも、放物線補間、キュービック補間、スプライン補間方法等の適宜の方法を採用することもできる。
【0131】
更に、補間処理の方向を、画素抜けの検出方向に対して斜めとすることもできる。また、補間処理は、一方向で行う方法に限定されない。例えば、注目画素又は対応画素から周辺画素(注目画素又は対応画素を中心とする複数の画素からなる領域)に拡張するように補間処理を行っていくこともできる。このように、画素抜け部分に補間データを処理していく手順は事情に応じて適宜の方法を採用することができる。
【0132】
上記実施形態のレーダ装置10は、レーダアンテナ1の角度θに応じて画素抜け検出方向を切り替えるように構成されているが(図2を参照)、画素抜け検出方向を切り替えずにX軸方向又はY軸方向のみで画素抜けの検出を行う構成に変更することができる。この構成では、図2を参照した説明で述べたように、画素抜け検出をX軸方向(又はY軸方向)で行っている場合、スイープラインの角度がX軸(画素抜け検出方向がY軸方向の場合はY軸)に近づいた状態では注目画素が検出できなくなる可能性が高くなる。そのため、画素抜け検出方向を切り替えないレーダ装置10では、注目画素を検出できない範囲の画素抜けを別途処理することが好ましい。
【0133】
次に、図10を参照して、X軸方向のみで画素抜け検出を行い、注目画素が検出できない範囲の画素抜けを別途処理する変形例について説明する。図10は、スイープラインの先端が描く円周上に位置する画素に基づいて、注目画素の代わりとなる設定画素を設定するX軸方向のみの画素抜け検出を説明する図である。なお、画素抜け検出及び補間処理以外は、上記実施形態の構成と同様の構成であるので、その詳細な説明を省略する。
【0134】
図10の変形例は、注目画素が検出できない範囲では、注目画素を仮想的に設定して画素抜け検出を行うものである。なお、以下の説明において、このように注目画素として仮想的に設定された画素のことを「設定画素」と呼ぶことがある。
【0135】
図10に示すように、Y座標が(Ye)のときは、今回スイープライン上に注目画素(Xf,Ye)を検出することができるものの、Y座標が(Yd)、(Yc)、(Yb)のときは、スイープライン上の注目画素を検出することができない。そこで、自船位置(Xs,Ys)を中心とし、スイープラインの長さを半径とした円を考え、この円周上に位置する画素を仮想的な注目画素(設定画素)とする。
【0136】
図10に示すように、注目画素を検出できなかった範囲では、画素アドレスが(Xk,Yd)、(Xk,Yc)、(Xj,Yb)の画素が設定画素になる。そして、この設定画素にX軸方向で対応し、前回スイープライン上に存在する画素を対応画素に設定し、上記実施形態と同様の画素抜け検出を行う。なお、図10の白抜き矢印は図3の白抜き矢印とは意味が異なり、注目画素(及び設定画素)に対応する対応画素を決定する処理を概念的に示すものである。
【0137】
例えば、図10の例では、設定画素を(Xk,Yd)としたときに、対応画素は(Xc,Yd)となるので、これに基づいて画素抜け検出を行う。なお画素抜け検出処理については、注目画素が設定画素である以外は上記実施形態で説明した内容と同様なので、その説明を省略する。
【0138】
この方法により設定された設定画素は、スイープラインの長さを半径とする円周上にあることから、1本のスイープラインによって描画される最も外側の画素の近傍画素の1つである。従って、このように設定された設定画素を注目画素として画素抜け検出を行うことで、スイープラインによって描かれる円の内部に存在する画素抜け部分を漏れなく検出することができる。
【0139】
画素抜けが検出された箇所には、補間内容生成部33で生成された補間データが書き込まれる。この補間データの生成方法としては、設定画素又は対応画素の周辺画素のデータや、方位方向(斜め)の画素のデータ等に基づいて補間データの内容を決定する等、適宜の方法を採用することができる。
【0140】
また、設定画素を設定する方法は上記変形例に限定される訳ではない。次に図11を参照して、前回スイープライン上の最も遠い位置にある画素を基準にして設定画素を設定しX軸方向のみで画素抜け検出を行う別の変形例について説明する。図11は、前回スイープラインの最遠点画素の位置に基づいて設定画素を設定し、X軸方向のみの画素抜け検出を説明する図である。なお、この変形例は、設定画素の設定方法が異なる以外は上記変形例と同様である。
【0141】
本変形例では、図11に示すように、前回スイープライン上の画素であって、レーダアンテナ1の位置(Xs,Ys)から最も遠い位置の画素である最遠点画素を検出する。図11では、前回スイープラインの最遠点画素は、画素アドレスが(Xj,Ya)の画素である。次に、今回スイープライン上の画素であって、前記最遠点画素とX座標が同一である画素(最遠点画素にY軸方向で対応する画素)を探し、この画素と最遠点画素との間に存在する画素を設定画素(仮想的な注目画素)に設定する。この変形例では、図11に示すように、注目画素を検出できない範囲では、画素アドレスが(Xj,Yd)、(Xj,Yc)、(Xj,Yb)の画素が設定画素になる。そして、この設定画素に基づいて対応画素を設定し、上記実施形態と同様に画素抜け検出処理及び補間処理を行っていく。
【0142】
このように、画素抜け検出方向を図2のように切り替えずに、X軸方向のみで画素抜けの検出を行う構成においても、注目画素を検出できない範囲で特別な処理を行うことで、画素抜けを確実に検出して補間処理を適切に行うことができる。なお、Y軸方向のみで画素抜けの検出を行う場合にも、同様の処理を行うことで画素抜けを漏れなく検出することが可能である。
【0143】
また、上記実施形態の構成に加えて、補間スイープラインを描画する構成とすることもできる。補間スイープラインとは、実データに基づいて得られたスイープラインの間を補間するように生成されるスイープラインである。この場合において、前回スイープライン及び今回スイープラインは、実データによるスイープラインであっても良いし、補間スイープラインであっても良い。もっとも、画素抜けを漏れなく検出して補間できる上記実施形態の構成は、従来の構成に比べて、補間スイープラインを生成しない構成(又は少ない構成)に対して一層好適であるということができる。
【0144】
また、上記実施形態では、記憶部として対応画素位置記憶メモリ40が採用されているが、記憶部の構成は適宜変更することができる。例えば、複数のカウンタによって、対応画素(第2画素)の画素位置を記憶する構成とすることもできる。この構成で用いられるカウンタは、前記表示用画像のサイズがm画素×n画素だった場合、mとnのうち大きい方の値の数だけ用意すれば十分である。例えば、画素抜け検出方向がX軸方向である場合、複数の画素位置記憶メモリにはY座標のインデックスが付けられ、それぞれの画素位置記憶メモリには、当該Y座標に対応するX座標が記憶される。従って、この構成においても、画素抜け検出時には、Y座標を指定してカウンタの内容を参照することで、当該Y座標に対応するスイープライン(前回スイープライン)の画素のX座標の値を容易に取得することができる。
【0145】
上記実施形態のレーダ装置10の構成は、舶用機器以外にも適用することが可能である。
【0146】
上記の実施形態では本発明をレーダ装置に適用した例を説明したが、本発明はレーダ装置に限定されない。即ち、方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を表示器に表示する構成の信号処理装置であれば、本発明を適用することができる。この種の信号処理装置としては、例えばスキャニングソナー装置を挙げることができる。
【符号の説明】
【0147】
10 レーダ装置(信号処理装置)
16 描画アドレス発生部(画素位置計算部)
19 表示器
31 画素抜け検出部
33 補間内容生成部(補間処理部)
40 対応画素位置記憶メモリ(記憶部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置において、
前記エコー信号に基づく情報を含むスイープライン上の点に対応する画素の位置をXY直交座標系で求める画素位置計算部と、
今回描画するスイープラインである今回スイープラインの画素の位置と、前回処理したスイープラインである前回スイープラインの画素の位置と、に基づいて、画素抜けを検出する画素抜け検出部と、
前記画素抜け検出部によって検出した画素抜け部分を埋めるための補間データを生成する補間処理部と、
を備え、
前記画素抜け検出部は、前記今回スイープライン上の画素である第1画素と、当該第1画素にX軸方向又はY軸方向で対応する前記前回スイープライン上の画素である第2画素と、に挟まれた1以上の画素である中間画素が存在するときに、当該中間画素を画素抜け部分と判定することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号処理装置であって、
前記画素抜け検出部は、前記今回スイープラインの角度又は前記前回スイープラインの角度に応じて、前記第1画素に対応する前記第2画素を検出する方向である第2画素検出方向を、X軸方向とY軸方向の間で自動的に切り替えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の信号処理装置であって、
画素の位置を記憶可能な記憶部を備え、
前記画素抜け検出部は、前記第1画素の位置を前記記憶部に記憶し、次回のスイープラインの描画時には、前記記憶部の内容を参照することで前記第2画素の位置を取得することを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の信号処理装置であって、
前記画素抜け検出部は、Bresenhamのアルゴリズムを用いた計算により、前記第2画素の位置を取得することを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の信号処理装置であって、
前記画素抜け検出部は、前記前回スイープライン上の点の位置を示す情報から、三角関数を用いた計算によって前記第2画素の位置を取得することを特徴とする信号処理装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の信号処理装置であって、
前記画素抜け検出部によって検出した画素抜け部分を埋めるための補間データを生成する補間処理部を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の信号処理装置であって、
前記補間処理部は、前記中間画素を埋めるための前記補間データを、当該中間画素に対応する前記第1画素の内容及び第2画素の内容のうち少なくとも一方に基づいて生成することを特徴とする信号処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の信号処理装置であって、
前記補間処理部は、前記中間画素を埋めるための前記補間データとして、前記第1画素の内容を用いることを特徴とする信号処理装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の信号処理装置を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項10】
方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置の画素抜け検出方法において、
前記エコー信号に基づく情報を含むスイープライン上の点に対応する画素の位置をXY直交座標系で求める第1ステップと、
今回描画するスイープライン上の画素である第1画素の位置と、前回処理したスイープライン上の画素であって前記第1画素にX軸方向又はY軸方向で対応する画素である第2画素の位置と、を取得する第2ステップと、
前記第2ステップで位置を取得した前記第1画素と前記第2画素とに挟まれるように、1以上の画素である中間画素が存在するか否かを調べ、存在していた場合は、当該中間画素を画素抜け部分と判定する第3ステップと、
を含むことを特徴とする信号処理装置の画素抜け検出方法。
【請求項11】
請求項10に記載の信号処理装置の画素抜け検出方法であって、
前記第3ステップで検出した画素抜け部分を埋めるように補間処理を行う第4ステップを含むことを特徴とする信号処理装置の画素抜け検出方法。
【請求項1】
方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置において、
前記エコー信号に基づく情報を含むスイープライン上の点に対応する画素の位置をXY直交座標系で求める画素位置計算部と、
今回描画するスイープラインである今回スイープラインの画素の位置と、前回処理したスイープラインである前回スイープラインの画素の位置と、に基づいて、画素抜けを検出する画素抜け検出部と、
前記画素抜け検出部によって検出した画素抜け部分を埋めるための補間データを生成する補間処理部と、
を備え、
前記画素抜け検出部は、前記今回スイープライン上の画素である第1画素と、当該第1画素にX軸方向又はY軸方向で対応する前記前回スイープライン上の画素である第2画素と、に挟まれた1以上の画素である中間画素が存在するときに、当該中間画素を画素抜け部分と判定することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号処理装置であって、
前記画素抜け検出部は、前記今回スイープラインの角度又は前記前回スイープラインの角度に応じて、前記第1画素に対応する前記第2画素を検出する方向である第2画素検出方向を、X軸方向とY軸方向の間で自動的に切り替えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の信号処理装置であって、
画素の位置を記憶可能な記憶部を備え、
前記画素抜け検出部は、前記第1画素の位置を前記記憶部に記憶し、次回のスイープラインの描画時には、前記記憶部の内容を参照することで前記第2画素の位置を取得することを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の信号処理装置であって、
前記画素抜け検出部は、Bresenhamのアルゴリズムを用いた計算により、前記第2画素の位置を取得することを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の信号処理装置であって、
前記画素抜け検出部は、前記前回スイープライン上の点の位置を示す情報から、三角関数を用いた計算によって前記第2画素の位置を取得することを特徴とする信号処理装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の信号処理装置であって、
前記画素抜け検出部によって検出した画素抜け部分を埋めるための補間データを生成する補間処理部を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の信号処理装置であって、
前記補間処理部は、前記中間画素を埋めるための前記補間データを、当該中間画素に対応する前記第1画素の内容及び第2画素の内容のうち少なくとも一方に基づいて生成することを特徴とする信号処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の信号処理装置であって、
前記補間処理部は、前記中間画素を埋めるための前記補間データとして、前記第1画素の内容を用いることを特徴とする信号処理装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の信号処理装置を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項10】
方位を異ならせて探知信号を送信するとともに、画素がマトリクス状に配列されて構成される画像に、エコー信号に基づく情報を描画して表示器に表示する信号処理装置の画素抜け検出方法において、
前記エコー信号に基づく情報を含むスイープライン上の点に対応する画素の位置をXY直交座標系で求める第1ステップと、
今回描画するスイープライン上の画素である第1画素の位置と、前回処理したスイープライン上の画素であって前記第1画素にX軸方向又はY軸方向で対応する画素である第2画素の位置と、を取得する第2ステップと、
前記第2ステップで位置を取得した前記第1画素と前記第2画素とに挟まれるように、1以上の画素である中間画素が存在するか否かを調べ、存在していた場合は、当該中間画素を画素抜け部分と判定する第3ステップと、
を含むことを特徴とする信号処理装置の画素抜け検出方法。
【請求項11】
請求項10に記載の信号処理装置の画素抜け検出方法であって、
前記第3ステップで検出した画素抜け部分を埋めるように補間処理を行う第4ステップを含むことを特徴とする信号処理装置の画素抜け検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−286359(P2010−286359A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140466(P2009−140466)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
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