説明

信号処理装置及び映像表示装置

【課題】 コントラスト強調処理によって不自然な色が再現されるケースを抑制しながら、十分なコントラストの強調を行うことを可能とする信号処理装置及び映像表示装置を提供する。
【解決手段】 信号処理装置100は、複数の画素毎の映像入力信号に基づいて、複数の画素のそれぞれを複数の色領域に分類する分類部120と、映像入力信号を映像出力信号にコントラスト強調処理によって変換するコントラスト強調処理部130とを備える。コントラスト強調処理部130は、複数の色領域毎に生成されたヒストグラムに基づいて決定された入出力変換特性に従って、複数の色領域のそれぞれに含まれる画素について映像入力信号を映像出力信号に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像入力信号を映像出力信号に変換する信号処理装置及び映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像の高品位化を図る処理として、コントラスト強調処理が知られている。コントラスト強調処理は、例えば、低レベルの映像入力信号をさらに低いレベルの映像出力信号に変換し、高レベルの映像入力信号をさらに高いレベルの映像出力信号に変換する。このようなコントラスト強調処理では、一般的に、S字曲線などのコントラスト強調曲線が用いられる。なお、コントラスト強調曲線は、映像入力信号と映像出力信号との変換を定義する入出力変換特性を示す曲線である。
【0003】
ここで、コントラスト強調量の決定方法としては、以下に示す方法が考えられる。なお、コントラスト強調量は、コントラストの強調度合いを示す値である。例えば、コントラスト強調量は、映像入力信号と映像出力信号との差分と考えることができる。なお、コントラスト強調量は、入出力変換特性と同義である。
【0004】
第1手法としては、フレーム全体における映像入力信号の信号値の分布に応じて、コントラスト強調量をフレーム毎に決定する方法である。第1手法によれば、階調つぶれを抑制しながら、コントラスト強調処理を行うことができる。
【0005】
第2手法としては、映像入力信号が有する色相に応じて、コントラスト強調量を補正する方法である(例えば、特許文献1)。具体的には、第1に、フレーム全体における映像入力信号の信号値の分布に応じて、コントラスト強調量をフレーム毎に決定する。第2に、特定色相(例えば、肌色の色相)を有する画素について、フレーム毎に決定されたコントラスト強調量を補正する。第2手法によれば、特定色相を有する画素が不自然な色になることを抑制しながら、コントラスト強調処理を行うことができる。
【特許文献1】特開2000−59629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した第1手法及び第2手法では、コントラスト強調量は、基本的に、フレーム全体における映像入力信号に基づいて一律に決定される。
【0007】
従って、コントラストの強調が不十分であるケースやコントラスト強調処理によって不自然な色が再現されるケースが生じる場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、コントラスト強調処理によって不自然な色が再現されるケースを抑制しながら、十分なコントラストの強調を行うことを可能とする信号処理装置及び映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の特徴に係る信号処理装置は、フレームを構成する複数の画素毎の映像入力信号を、前記複数の画素毎の映像出力信号に変換する。信号処理装置は、前記複数の画素毎の前記映像入力信号に基づいて、前記複数の画素を第1色領域画素群と第2色領域画素群とに分類する分類部(分類部120)と、前記映像入力信号を前記映像出力信号にコントラスト強調処理によって変換するコントラスト強調部(コントラスト強調処理部130)とを備える。前記コントラスト強調部は、前記第1色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号に基づいて決定された第1コントラスト強調量に従って、前記第1色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号を前記映像出力信号に変換する。前記コントラスト強調部は、前記第2色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号に基づいて決定された第2コントラスト強調量に従って、前記第2色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号を前記映像出力信号に変換する。
【0010】
第1の特徴において、前記分類部は、前記複数の画素毎の前記映像入力信号に基づいて、前記複数の画素毎の色相又は彩度を特定し、前記複数の画素毎の色相又は彩度に基づいて、前記複数の画素を前記第1色領域画素群と前記第2色領域画素群とに分類する。
【0011】
第1の特徴において、前記コントラスト強調部は、前記第1色領域画素群の色領域及び前記第2色領域画素群の色領域が隣接している場合に、前記第1コントラスト強調量及び前記第2コントラスト強調量を線形補間によって補間する。
【0012】
第1の特徴において、前記第1コントラスト強調量は、前記第1色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号の彩度成分又は色相成分に基づいて決定される。前記第2コントラスト強調量は、前記第2色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号の彩度成分又は色相成分に基づいて決定される。前記コントラスト強調部は、前記映像入力信号の彩度成分又は色相成分について、前記コントラスト強調処理を行う。
【0013】
第1の特徴において、前記第1コントラスト強調量は、前記第1色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号の明度成分又は輝度成分に基づいて決定される。前記第2コントラスト強調量は、前記第2色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号の明度成分又は輝度成分に基づいて決定される。前記コントラスト強調部は、前記映像入力信号の明度成分又は輝度成分について、前記コントラスト強調処理を行う。
【0014】
第2の特徴に係る映像表示装置は、光源(光源310)と、前記光源から出射された光を変調する光変調素子(液晶パネル350)と、第1の特徴に係る信号処理装置とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コントラスト強調処理によって不自然な色が再現されるケースを抑制しながら、十分なコントラストの強調を行うことを可能とする信号処理装置及び映像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下において、本発明の実施形態に係る信号処理装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0017】
ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0018】
[実施形態の概要]
信号処理装置は、フレームを構成する複数の画素毎の映像入力信号を、前記複数の画素毎の映像出力信号に変換する。信号処理装置は、複数の画素毎の映像入力信号に基づいて、複数の画素を第1色領域画素群と第2色領域画素群とに分類する分類部と、映像入力信号を映像出力信号にコントラスト強調処理によって変換するコントラスト強調部とを備える。
【0019】
コントラスト強調部は、第1色領域画素群を構成する画素に対応する映像入力信号に基づいて決定された第1コントラスト強調量に従って、第1色領域画素群を構成する画素に対応する映像入力信号を映像出力信号に変換する。
【0020】
コントラスト強調部は、第2色領域画素群を構成する画素に対応する映像入力信号に基づいて決定された第2コントラスト強調量に従って、第2色領域画素群を構成する画素に対応する映像入力信号を映像出力信号に変換する。
【0021】
ここで、信号処理装置は、例えば、プロジェクタやTVなどの映像表示装置に設けられる。なお、第1コントラスト強調量は、第2コントラスト強調量と同じであってもよく、第2コントラスト強調量とは異なっていてもよい。
【0022】
実施形態に係る信号処理装置では、分類部は、複数の画素を第1色領域画素群と第2色領域画素群とに分類し、コントラスト強調部は、色領域画素群毎にコントラスト強調処理を行う。
【0023】
従って、フレーム全体について一律にコントラスト強調処理を行う場合に比べて、コントラストを十分に強調することができる。また、コントラスト強調処理によって不自然な色が再現されるケースを抑制することができる。
【0024】
[第1実施形態]
(信号処理装置の構成)
以下において、第1実施形態に係る信号処理装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る信号処理装置100を示すブロック図である。
【0025】
ここで、信号処理装置100は、映像入力信号を映像出力信号に変換する。映像入力信号は、赤入力信号Rin、緑入力信号Gin及び青入力信号Binを含み、映像出力信号は、赤出力信号Rout、緑出力信号Gout及び青出力信号Boutを含む。
【0026】
図1に示すように、信号処理装置100は、映像信号受付部110と、分類部120と、コントラスト強調処理部130とを有する。
【0027】
映像信号受付部110は、DVDやTVチューナなどの外部装置(不図示)から映像入力信号を受付ける。映像入力信号は、1フレームを構成する複数の画素毎に入力される信号である。
【0028】
分類部120は、複数の画素毎の映像入力信号に基づいて、複数の画素のそれぞれを複数の色領域(複数の色領域画素群)に分類する。複数の色領域のそれぞれは、色相及び彩度によって定義される。
【0029】
第1に、分類部120は、各画素の入力彩度成分Sin、入力色相成分Hin及び入力明度成分Vinを算出する。具体的には、分類部120は、赤入力信号Rin、緑入力信号Gin及び青入力信号Binに基づいて、以下の式に従って、各画素の入力色相成分Hin、入力彩度成分Sin及び入力明度成分Vinを算出する。
【0030】
【数1】

【0031】
ここでは、Rin、Gin及びBinをHin、Sin及びVinに変換する処理をHSV変換処理と称する。
【0032】
第2に、分類部120は、複数の画素のそれぞれを複数の色領域に分類する。第1実施形態では、分類部120は、各画素を7つの色領域に分類する。
【0033】
具体的には、図2及び図3に示すように、分類部120は、入力彩度成分Sinが彩度閾値Sthよりも小さい画素[i]を色領域#0に分類する。続いて、分類部120は、入力彩度成分Sinが彩度閾値Sth以上である画素[i]を入力色相成分Hinに応じて、6つの色領域に分類する。6つの色領域の中心色相は、それぞれ、H〜Hである。
【0034】
すなわち、分類部120は、以下の式に従って、複数の画素のそれぞれを複数の色領域に分類する。
【0035】
【数2】

【0036】
第3に、分類部120は、コントラスト強調処理の対象とすべき成分(例えば、入力色相成分Hin、入力彩度成分Sin又は入力明度成分Vin)のヒストグラムを複数の色領域毎に生成する。第1実施形態では、コントラスト強調処理の対象とすべき成分が入力明度成分Vinであるケースについて例示する。
【0037】
具体的には、分類部120は、図4に示すように、色領域#0〜色領域#6に含まれる画素について、それぞれ、入力明度成分Vinのヒストグラムを生成する。なお、図4において、横軸は、入力明度成分Vinの値を示しており、縦軸は、画素の度数を示している。
【0038】
コントラスト強調処理部130は、映像入力信号を映像出力信号にコントラスト強調処理によって変換する。ここで、コントラスト強調処理部130は、複数の色領域毎にコントラスト強調処理を行うことに留意すべきである。
【0039】
第1に、コントラスト強調処理部130は、入力明度成分Vinのヒストグラム(分布)に基づいて、複数の色領域毎に入出力変換特性を決定する。なお、各色領域の入出力変換特性は、異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0040】
例えば、図5に示すように、入力明度成分Vinと出力明度成分Voutとの変換を定義するコントラスト強調曲線(入出力変換特性)として、S字状の曲線を用いることができる。又は、図6に示すように、入力明度成分Vinと出力明度成分Voutとの変換を定義するコントラスト強調曲線(入出力変換特性)として、区分直線を用いることができる。
【0041】
第2に、コントラスト強調処理部130は、複数の色領域毎に決定された入出力変換特性に基づいて、入力明度成分Vinと出力明度成分Voutに変換する。コントラスト強調処理部130は、出力色相成分Hout及び出力彩度成分Soutとして、入力色相成分Hin及び入力彩度成分Sinをそのまま取得する。
【0042】
第3に、コントラスト強調処理部130は、赤出力信号Rout、緑出力信号Gout及び青出力信号Boutを算出する。具体的には、コントラスト強調処理部130は、出力色相成分Hout、出力彩度成分Sout及び出力明度成分Voutに基づいて、以下の式に従って、赤出力信号Rout、緑出力信号Gout及び青出力信号Boutを算出する。
【0043】
【数3】

【0044】
ここでは、Hout、Sout及びVoutをRout、Gout及びBoutに変換する処理を逆HSV変換処理と称する。
【0045】
(信号処理装置の動作)
以下において、第1実施形態に係る信号処理装置の動作について、図面を参照しながら説明する。図7〜図10は、第1実施形態に係る信号処理装置100の動作を示すフロー図である。
【0046】
図7に示すように、ステップ10において、信号処理装置100は、複数の画素のそれぞれを複数の色領域に分類する。また、信号処理装置100は、コントラスト強調処理の対象とすべき成分(ここでは、入力明度成分Vin)のヒストグラムを複数の色領域毎に生成する。なお、ステップ10の詳細については後述する(図8を参照)。
【0047】
ステップ20において、信号処理装置100は、複数の色領域毎に生成されたヒストグラムに基づいて、入出力変換特性を複数の色領域毎に決定する。なお、ステップ20の詳細については後述する(図9を参照)。
【0048】
ステップ30において、信号処理装置100は、複数の色領域毎に決定された入出力変換特性に基づいて、コントラスト強調処理の対象とすべき成分を変換する。なお、ステップ30の詳細については後述する(図10を参照)。
【0049】
(分類処理)
以下において、上述した分類処理(ステップ10)の詳細について、図8を参照しながら説明する。図8に示すように、ステップ11Aにおいて、信号処理装置100は、分類処理の対象とすべき画素[i]をセットする。ステップ11Bにおいて、信号処理装置100は、分類処理の対象とすべき画素[i]を更新する。すなわち、信号処理装置100は、ステップ11Aとステップ11Bとに挟まれる処理を全画素について実行する。
【0050】
ステップ12において、信号処理装置100は、画素[i]についてHSV変換処理を行う。すなわち、信号処理装置100は、画素[i]のRin、Gin及びBinを画素[i]のHin、Sin及びVinに変換する。
【0051】
ステップ13Aにおいて、信号処理装置100は、色領域kをセットする。ステップ13Bにおいて、信号処理装置100は、色領域kを更新する。すなわち、信号処理装置100は、ステップ13Aとステップ13Bとに挟まれる処理を全色領域について実行する。
【0052】
ステップ14において、信号処理装置100は、画素[i]が色領域kに含まれるか否かを判定する。信号処理装置100は、画素[i]が色領域kに含まれる場合には、ステップ15の処理に移る。一方で、信号処理装置100は、画素[i]が色領域kに含まれない場合には、ステップ13Bの処理に移る。
【0053】
ステップ15において、信号処理装置100は、画素[i]を色領域kのヒストグラムに追加する。なお、ヒストグラムは、コントラスト強調処理の対象とすべき成分(ここでは、入力明度成分Vin)のヒストグラムである。
【0054】
(入出力変換特性決定処理)
以下において、上述した入出力変換特性決定処理(ステップ20)の詳細について、図9を参照しながら説明する。図9に示すように、ステップ21Aにおいて、信号処理装置100は、色領域kをセットする。ステップ21Bにおいて、信号処理装置100は、色領域kを更新する。すなわち、信号処理装置100は、ステップ21Aとステップ21Bとに挟まれる処理を全色領域について実行する。
【0055】
ステップ22において、信号処理装置100は、色領域kのヒストグラムを取得する。上述したように、ヒストグラムは、コントラスト強調処理の対象とすべき成分のヒストグラムである。
【0056】
ステップ23において、信号処理装置100は、色領域kのヒストグラムに基づいて、色領域kに分類された画素の入出力変換特性を決定する。
【0057】
(変換処理)
以下において、上述した変換処理(ステップ30)の詳細について、図10を参照しながら説明する。図10に示すように、ステップ31Aにおいて、信号処理装置100は、分類処理の対象とすべき画素[i]をセットする。ステップ31Bにおいて、信号処理装置100は、分類処理の対象とすべき画素[i]を更新する。すなわち、信号処理装置100は、ステップ31Aとステップ31Bとに挟まれる処理を全画素について実行する。
【0058】
ステップ32において、信号処理装置100は、画素[i]のコントラスト強調処理を行う。具体的には、信号処理装置100は、画素[i]を含む色領域kの入出力変換特性に基づいて、コントラスト強調処理の対象とすべき成分を変換する。
【0059】
ステップ33において、信号処理装置100は、画素[i]について逆HSV変換処理を行う。すなわち、信号処理装置100は、Hout、Sout及びVoutをRout、Gout及びBoutに変換する。
【0060】
(作用及び効果)
第1実施形態では、分類部120は、複数の画素のそれぞれを複数の色領域に分類し、コントラスト強調処理部130は、複数の色領域毎に生成されたヒストグラムに基づいて、コントラスト強調処理を複数の色領域毎に行う。
【0061】
従って、フレーム全体について一律にコントラスト強調処理を行う場合に比べて、コントラストを十分に強調することができる。また、コントラスト強調処理によって不自然な色が再現されるケースを抑制することができる。
【0062】
[比較結果]
以下において、第1実施形態に係るコントラスト強調処理と比較例に係るコントラスト強調処理との比較結果について、図面を参照しながら説明する。図11は、比較例に係るコントラスト強調処理を説明するための図である。図12は、第1実施形態に係るコントラスト強調処理を説明するための図である。
【0063】
比較例では、コントラスト強調処理のコントラスト強調量(入出力変換特性)は、フレーム全体における映像入力信号に基づいて一律に決定される。これに対して、第1実施形態では、上述したように、コントラスト強調処理のコントラスト強調量(入出力変換特性)は、複数の色領域毎に生成されたヒストグラムに基づいて複数の色領域毎に決定される。
【0064】
図11に示すように、比較例では、フレーム全体における映像入力信号に基づいて一律にコントラスト強調量が決定される。すなわち、コントラスト強調量の決定基準がフレーム全体における映像入力信号の分布であるため、コントラストの強調が不十分となる傾向がある。
【0065】
これに対して、第1実施形態では、複数の色領域毎に生成されたヒストグラムに基づいて複数の色領域毎にコントラスト強調量が決定される。すなわち、コントラスト強調量の決定基準が各色領域の映像入力信号の分布であるため、コントラストの強調が比較例に比べて向上する。
【0066】
なお、複数の色領域毎にコントラスト強調量が決定されるため、コントラスト強調処理によって不自然な色が再現されるケースも抑制されることに留意すべきである。
【0067】
[変更例1]
以下において、第1実施形態の変更例1について、図面を参照しながら説明する。以下においては、第1実施形態との相違点について主として説明する。
【0068】
具体的には、変更例1では、コントラスト強調処理部130は、複数の色領域のうち、2つの色領域が隣接するケースにおいて、2つの色領域毎のコントラスト強調量(入出力変換特性)を線形補間によって補間する。
【0069】
(コントラスト強調量の線形補間)
以下において、変更例1に係るコントラスト強調量の線形補間について、図面を参照しながら説明する。図13は、変更例1に係るコントラスト強調量の線形補間を説明するための図である。なお、図13は、色領域#0、色領域#2及び色領域#3の拡大図である。
【0070】
図13では、P#0は、色領域#0の中心位置である。同様に、P#2は、色領域#2の中心位置であり、P#3は、色領域#3の中心位置である。SLは、彩度方向におけるP#0とPとの距離である。Hθは、P#2の色相角θ#2とPの色相角θとの差分であり、Hθは、P#3の色相角θ#2とPの色相角θとの差分である。
【0071】
なお、色領域#0の入出力変換特性をF#0と表すものとする。同様に、色領域#2の入出力変換特性をF#2と表し、色領域#3の入出力変換特性をF#3と表すものとする。
【0072】
ここで、色領域内における位置Pを有する画素[i]の入出力変換特性(コントラスト強調量)について考える。なお、画素[i]の入出力変換特性をFと表すものとする。
【0073】
このようなケースにおいて、コントラスト強調処理部130は、入出力変換特性Fを以下の式に従って算出する。
【0074】
【数4】

【0075】
但し、αは、高彩度成分の適用比率であり、0≦α≦1の関係を満たす。なお、FHxは、低彩度の色領域#0を除いた色領域において、隣接する2つの色領域の入出力変換特性を線形補間した入出力変換特性である。また、FHxは、低彩度の色領域#0の入出力変換特性を線形補間した入出力変換特性である。従って、αは、高彩度成分の適用比率と考えることができる。
【0076】
(作用及び効果)
変更例1では、コントラスト強調処理部130は、複数の色領域のうち、2つの色領域が隣接するケースにおいて、2つの色領域毎のコントラスト強調量(入出力変換特性)を線形補間によって補間する。従って、コントラスト強調処理によって不自然な色が再現されるケースをさらに抑制することができる。
【0077】
[第2実施形態]
以下において、第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。第2実施形態では、第1実施形態に係る信号処理装置100を有する映像表示装置について説明する。
【0078】
第2実施形態では、映像表示装置として、投写型映像表示装置を例示するが、映像表示装置は、投写型映像表示装置に限定されないことは勿論である。
【0079】
(投写型映像表示装置の構成)
以下において、第2実施形態に係る投写型映像表示装置について、図面を参照しながら説明する。図14は、第2実施形態に係る投写型映像表示装置200の構成を示す図である。
【0080】
図14に示すように、投写型映像表示装置200は、投写光学系210と、照明装置220とを有する。投写型映像表示装置200は、後述するように、赤成分光R、緑成分光G及び青成分光Bを利用する。
【0081】
投写光学系210は、照明装置220から出射された映像光をスクリーン(不図示)上などに投写する。
【0082】
第1に、照明装置220は、光源310と、UV/IRカットフィルタ320と、フライアイレンズユニット330と、PBSアレイ340と、複数の液晶パネル350(液晶パネル350R、液晶パネル350G及び液晶パネル350B)と、クロスダイクロイックプリズム360とを有する。
【0083】
光源310は、白色光を発するUHPランプなどである。すなわち、光源310が発する光は、赤成分光R、緑成分光G及び青成分光Bを含む。
【0084】
UV/IRカットフィルタ320は、可視光成分(赤成分光R、緑成分光G及び青成分光B)を透過する。UV/IRカットフィルタ320は、赤外光成分や紫外光成分を遮光する。
【0085】
フライアイレンズユニット330は、光源310が発する光を均一化する。具体的には、フライアイレンズユニット330は、フライアイレンズ331及びフライアイレンズ332によって構成される。フライアイレンズ331及びフライアイレンズ332は、それぞれ、複数の微少レンズによって構成される。各微少レンズは、光源310が発する光が液晶パネル350の全面に照射されるように、光源310が発する光を集光する。
【0086】
PBSアレイ340は、フライアイレンズユニット330から出射された光の偏光状態を揃える。例えば、PBSアレイ340は、フライアイレンズユニット330から出射された光をS偏光(又はP偏光)に揃える。
【0087】
液晶パネル350Rは、赤成分光Rの偏光状態を調整することによって赤成分光Rを変調する。液晶パネル350Rに光が入射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を透過して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を遮光する入射側偏光板352Rが設けられている。液晶パネル350Rから光が出射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を遮光して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を透過する出射側偏光板353Rが設けられている。
【0088】
液晶パネル350Gは、緑成分光Gの偏光状態を調整することによって緑成分光Gを変調する。液晶パネル350Gに光が入射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を透過して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を遮光する入射側偏光板352Gが設けられる。一方で、液晶パネル350Gから光が出射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を遮光して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を透過する出射側偏光板353Gが設けられる。
【0089】
液晶パネル350Bは、青成分光Bの偏光状態を調整することによって青成分光Bを変調する。液晶パネル350Bに光が入射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を透過して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を遮光する入射側偏光板352Bが設けられる。一方で、液晶パネル50Bから光が出射する側には、一の偏光方向(例えば、S偏光)を有する光を遮光して、他の偏光方向(例えば、P偏光)を有する光を透過する出射側偏光板353Bが設けられる。
【0090】
ここで、各液晶パネル350には、コントラスト比や透過率を向上させる補償板(不図示)が設けられていてもよい。また、各偏光板は、偏光板に入射する光の光量や熱負担を軽減させるプリ偏光板を有していてもよい。
【0091】
クロスダイクロイックプリズム360は、液晶パネル350R、液晶パネル350G及び液晶パネル350Bから出射される光を合成する色合成部を構成する。クロスダイクロイックプリズム360から出射された合成光は、投写光学系210に導かれる。
【0092】
第2に、投写光学系210は、ミラー群(ミラー371〜ミラー376)及びレンズ群(レンズ381〜レンズ385)を有する。
【0093】
ミラー371は、青成分光Bを透過して、赤成分光R及び緑成分光Gを反射するダイクロイックミラーである。ミラー372は、赤成分光Rを透過して、緑成分光Gを反射するダイクロイックミラーである。ミラー371及びミラー372は、赤成分光R、緑成分光G及び青成分光Bを分離する色分離部を構成する。
【0094】
ミラー373は、赤成分光R、緑成分光G及び青成分光Bを反射して、赤成分光R、緑成分光G及び青成分光Bをミラー371側に導く。ミラー374は、青成分光Bを反射して、青成分光Bを液晶パネル350B側に導く。ミラー375及びミラー376は、赤成分光Rを反射して、赤成分光Rを液晶パネル350R側に導く。
【0095】
レンズ381は、PBSアレイ340から出射された光を集光するコンデンサレンズである。レンズ382は、ミラー373で反射された光を集光するコンデンサレンズである。
【0096】
レンズ383Rは、液晶パネル350Rに赤成分光Rが照射されるように、赤成分光Rを略平行光化する。レンズ383Gは、液晶パネル350Gに緑成分光Gが照射されるように、緑成分光Gを略平行光化する。レンズ383Bは、液晶パネル350Bに青成分光Bが照射されるように、青成分光Bを略平行光化する。
【0097】
レンズ384及びレンズ385は、赤成分光Rの拡大を抑制しながら、液晶パネル350R上に赤成分光Rを略結像するリレーレンズである。
【0098】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0099】
上述した実施形態では、分類部120は、入力色相成分Hin及び入力彩度成分Sinに基づいて、複数の画素のそれぞれを複数の色領域に分類する。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。
【0100】
具体的には、分類部120は、入力色相成分Hinのみに基づいて、複数の画素のそれぞれを複数の色領域に分類してもよい。分類部120は、入力彩度成分Sinのみに基づいて、複数の画素のそれぞれを複数の色領域に分類してもよい。分類部120は、入力明度成分Vinのみに基づいて、複数の画素のそれぞれを複数の色領域に分類してもよい。分類部120は、入力色相成分Hin、入力彩度成分Sin及び入力明度成分Vinの中から選択された2以上の成分に基づいて、複数の画素のそれぞれを複数の色領域に分類してもよい。
【0101】
上述した実施形態では、コントラスト強調処理部130は、入力明度成分Vinのヒストグラムに基づいて、コントラスト強調処理によって入力明度成分Vinを出力明度成分Voutに変換する。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。
【0102】
具体的には、コントラスト強調処理部130は、入力色相成分Hinのヒストグラムに基づいて、コントラスト強調処理によって入力色相成分Hinを出力色相成分Houtに変換してもよい。コントラスト強調処理部130は、入力彩度成分Sinのヒストグラムに基づいて、コントラスト強調処理によって入力彩度成分Sinを出力彩度成分Soutに変換してもよい。コントラスト強調処理部130は、入力明度成分Vin、入力色相成分Hin及び入力彩度成分Sinの中から選択された2以上の入力成分のヒストグラムに基づいて、コントラスト強調処理によって2以上の入力成分を2以上の出力成分に変換してもよい。
【0103】
また、コントラスト強調処理部130は、入力明度成分Vinに代えて、入力輝度成分のヒストグラムに基づいて、コントラスト強調処理によって入力輝度成分を出力輝度成分に変換してもよい。
【0104】
上述した実施形態では、信号処理装置100は、映像入力信号をHSV変換処理によって、HSV入力信号に変換するケースについて説明した。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。具体的には、信号処理装置100は、映像入力信号をYUV変換処理によって、YCbCr入力信号に変換してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】第1実施形態に係る信号処理装置100を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る色領域を説明するための図である。
【図3】第1実施形態に係る色領域を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係る明度のヒストグラムを示す図である。
【図5】第1実施形態に係る入出力変換特性の一例を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る入出力変換特性の一例を示す図である。
【図7】第1実施形態に係る信号処理装置100の動作を示すフロー図である。
【図8】第1実施形態に係る信号処理装置100の動作を示すフロー図である。
【図9】第1実施形態に係る信号処理装置100の動作を示すフロー図である。
【図10】第1実施形態に係る信号処理装置100の動作を示すフロー図である。
【図11】比較例に係るコントラスト強調処理を説明するための図である。
【図12】第1実施形態に係るコントラスト強調処理を説明するための図である。
【図13】変更例1に係るコントラスト強調量の線形補間について説明するための図である。
【図14】第2実施形態に係る投写型映像表示装置200を示す図である。
【符号の説明】
【0106】
100・・・信号処理装置、110・・・映像信号受付部、120・・・分類部、130・・・コントラスト強調処理部、200・・・投写型映像表示装置、210・・・投写光学系、220・・・照明装置、310・・・光源、320・・・UV/IRカットフィルタ、330・・・フライアイレンズユニット、340・・・PBSアレイ、350・・・液晶パネル、352,353・・・偏光板、360・・・クロスダイクロイックプリズム、371〜376・・・ミラー、381〜385・・・レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームを構成する複数の画素毎の映像入力信号を、前記複数の画素毎の映像出力信号に変換する信号処理装置であって、
前記複数の画素毎の前記映像入力信号に基づいて、前記複数の画素を第1色領域画素群と第2色領域画素群とに分類する分類部と、
前記映像入力信号を前記映像出力信号にコントラスト強調処理によって変換するコントラスト強調部とを備え、
前記コントラスト強調部は、前記第1色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号に基づいて決定された第1コントラスト強調量に従って、前記第1色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号を前記映像出力信号に変換し、
前記コントラスト強調部は、前記第2色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号に基づいて決定された第2コントラスト強調量に従って、前記第2色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号を前記映像出力信号に変換することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記分類部は、前記複数の画素毎の前記映像入力信号に基づいて、前記複数の画素毎の色相又は彩度を特定し、前記複数の画素毎の色相又は彩度に基づいて、前記複数の画素を前記第1色領域画素群と前記第2色領域画素群とに分類することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記コントラスト強調部は、前記第1色領域画素群の色領域及び前記第2色領域画素群の色領域が隣接している場合に、前記第1コントラスト強調量及び前記第2コントラスト強調量を線形補間によって補間することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記第1コントラスト強調量は、前記第1色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号の彩度成分又は色相成分に基づいて決定され、
前記第2コントラスト強調量は、前記第2色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号の彩度成分又は色相成分に基づいて決定され、
前記コントラスト強調部は、前記映像入力信号の彩度成分又は色相成分について、前記コントラスト強調処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記第1コントラスト強調量は、前記第1色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号の明度成分又は輝度成分に基づいて決定され、
前記第2コントラスト強調量は、前記第2色領域画素群を構成する画素に対応する前記映像入力信号の明度成分又は輝度成分に基づいて決定され、
前記コントラスト強調部は、前記映像入力信号の明度成分又は輝度成分について、前記コントラスト強調処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項6】
光源と、前記光源から出射された光を変調する光変調素子と、請求項1に記載の信号処理装置とを備えた映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−147613(P2010−147613A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320320(P2008−320320)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】