説明

信号加工装置および信号復元装置

【課題】信号を加工して送信するとともに、加工された信号を受信し、受信した信号を用いて加工前の信号に近づけるように復元することができる信号加工装置および信号復元装置を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態に係る通信システムにおいては、通常モードに指定されているときには、送信装置10の収音部11で収音した音に対して、加工部103において加工が施されて変化した音が受信装置の放音部から放音される。一方、復元モードに指定されているときには、送信装置10の収音部11で収音した音がパラメータ化され、電子透かしにより送信されたそのパラメータを用いて復元した音、すなわち収音した音に近い状態の音が放音される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の送受信において、セキュリティを向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一人暮らしのお年寄りなどの安否を確認するために、その生活音などを収音してインターネットなどの通信技術を用いて、別の場所へリアルタイムに送信することが行われている。しかし、そのままの生活音を送信すると、プライバシが侵害され不都合があるため、その音について、会話の内容が伝達されることを妨げる加工を行って、曖昧な音にしてから送信する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。この技術によれば、安否の確認は確実に行えるとともに、プライバシに関する不都合も発生しないため非常に有用である。
【特許文献1】特開2005−86707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1の技術により送信される曖昧な音について、例えば、親族が詳しい状況を確認したい場合など、状況に応じて一時的に明瞭に聞き取りたいときもある。その場合、曖昧な音にする加工を行う装置の動作モードの変更をするなどして未加工の音を送受信する必要があった。この場合、未加工の音が他装置において傍受される可能性が残っていた。
【0004】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、信号を加工して送信するとともに、加工された信号を受信し、受信した信号を用いて加工前の信号に近づけるように復元することができる信号加工装置および信号復元装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するため、本発明は、音声または画像を示す信号を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された信号を解析し、所定の特性値を示すパラメータを算出する算出手段と、前記算出手段によって算出されたパラメータのうち、一部または全部のパラメータに応じた信号情報を生成する生成手段と、前記信号に対して、前記信号情報に係るパラメータに応じて予め設定された態様の加工を施した加工信号を生成する加工手段と、前記加工信号に対して、前記信号情報を電子透かしにより重畳して重畳信号を生成する重畳手段と、前記重畳信号を出力する出力手段とを具備することを特徴とする信号加工装置を提供する。
【0006】
また、別の好ましい態様において、前記加工手段は、前記算出手段によって算出されたパラメータの少なくとも一部に対して加工を施し、加工されたパラメータに応じて加工信号を生成することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、音声または画像を示す重畳信号であって、信号情報が電子透かしにより重畳されている重畳信号を取得する取得手段と、前記重畳信号に重畳されている信号情報を抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された信号情報に応じて、前記重畳信号に対して復元処理を行うことにより、復元信号を生成する復元手段と、前記重畳信号または前記復元信号を出力する出力手段とを具備することを特徴とする信号復元装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信号を加工して送信するとともに、加工された信号を受信し、受信した信号を用いて加工前の信号に近づけるように復元することができる信号加工装置および信号復元装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る通信システム1の構成を示すブロック図である。通信システム1は、送信装置10および受信装置20を有する。送信装置10から受信装置20へは、インターネットなどのネットワークを介した通信により、オーディオデータの送信が行われる。以下、送信装置10、受信装置20について、それぞれ図2、図3を用いて順に説明する。
【0011】
図2は、送信装置10の構成を示すブロック図である。送信装置10は、収音部11、送信部12および信号加工部100を有する。
【0012】
収音部11は、マイクロフォンなどの収音手段であって、音声などの収音内容を示すオーディオ信号Sinを出力する。なお、オーディオ信号Sinを出力するものであれば、収音手段でなくてもよく、例えば記憶手段に記憶されたデータを読み出すことによりオーディオ信号Sinを出力するものであってもよい。
【0013】
信号加工部100は、オーディオ信号Sinを取得し、オーディオ信号Sinに対して後述する各処理を行って重畳オーディオ信号Stを出力する。送信部12は、重畳オーディオ信号Stを取得して、通信ネットワークを介して、送信対象となる受信装置20に対して重畳オーディオ信号Stを送信する。
【0014】
信号加工部100の構成について詳しく説明する。信号加工部100は、解析部101、情報生成部102、加工部103および重畳部104を有する。
【0015】
解析部101は、収音部11から取得したオーディオ信号Sinを解析し、オーディオ信号Sinについて、所定の特性値を示すパラメータを算出する。所定の特性値とは、例えば、隠れマルコフモデルなどの公知の音声分析、音声認識、音声合成技術に用いられる特徴パラメータであればよい。また、このような技術により算出されるパラメータに限られず、例えば、FFTなどにより得られる出力レベルの周波数分布など、音の波形から算出可能なパラメータであってもよく、オーディオ信号Sinの特徴を特性値として示すパラメータであれば、どのようなものであってもよい。また、複数種類の特性値を示すパラメータを算出してもよい。そして、解析部101は、算出したパラメータを示すパラメータ情報Dpを出力する。
【0016】
情報生成部102は、パラメータ情報Dpを取得し、パラメータ情報Dpが示すパラメータのうち、少なくとも一部を示す信号情報Daを出力する。この信号情報Daが示すパラメータには、パラメータ情報Dpが示すパラメータのうち、後述する加工オーディオ信号Saを仮に解析部101において解析した場合に得られるパラメータとは値が異なるものとなるパラメータの種類の少なくとも一部が含まれるようになっている。
【0017】
なお、この前提において、信号情報Daに含まれるパラメータの種類は、利用者による図示しない操作部の操作などによって、どの程度オーディオ信号の復元可能かどうかを示す復元レベルの指定可能にし、その指定に応じて信号情報Daに含まれるパラメータの種類が増減するように設定されるようにしてもよい。また、後述する重畳部104において重畳可能なデータ量(ビットレート)に応じて設定されるようにしてもよい。なお、信号情報Daに含まれるパラメータは、パラメータ情報Dpが示すパラメータの全部であってもよい。また、パラメータの種類の増減だけでなく、パラメータの分解能を増減させるようにしてもよい。
【0018】
加工部103は、収音部11から取得したオーディオ信号Sinに対して、信号情報Daに含まれるパラメータの種類に応じて、予め設定された態様の加工を施して、加工オーディオ信号Saとして出力する。加工の態様としては、例えば、上記特許文献1(特開2005−86707号公報)に記載されているようなものであればよい。この加工は、人間の会話の内容が伝達されることを妨げるものであることが望ましいが、何らかの加工が行われ、元のオーディオ信号Sinと、加工オーディオ信号Saとの間に変化が生じていればよい。
【0019】
重畳部104は、加工オーディオ信号Saと信号情報Daとを取得し、オーディオ信号Saに対して、信号情報Daを電子透かしにより重畳した重畳オーディオ信号Stを生成して送信部12に出力する。この重畳は、例えば、信号情報Daをデジタル信号化し、Gold系列、M系列などの拡散符号を用いたスペクトラム拡散方式を用いて重畳すればよい。また、この重畳オーディオ信号Stをスピーカなどの放音手段から放音したときに、加工オーディオ信号Saを放音した場合と比べて、聴感上の違いが少なくなるように、信号情報Daを重畳することが望ましい。例えば、非可聴範囲の周波数帯域に重畳するようにしてもよいし、可聴範囲の周波数帯域であっても、聞き取りにくい高周波数帯域(例えば、10kHz以上)に重畳するようにすればよい。以上が送信装置10の説明である。
【0020】
次に、受信装置20について説明する。図3は、受信装置20の構成を示すブロック図である。受信装置20は、受信部21、放音部22、操作部23および信号復元部200を有する。
【0021】
受信部21は、送信装置10から送信される重畳オーディオ信号Stを受信する。信号復元部200は、受信部21から重畳オーディオ信号Stを取得し、重畳オーディオ信号Stに対して後述する各処理を行って、オーディオ信号Soutを出力する。放音部22は、スピーカなどの放音手段であって、信号復元部200から出力されるオーディオ信号Soutを放音する。
【0022】
操作部23は、利用者の操作に応じた操作信号を出力するスイッチなどであって、この例においては、通常モードまたは復元モードを指定するスイッチを有する。また、音を放音させない停止モードをさらに指定できるようにしてもよい。なお、操作信号は、操作部23の操作に応じて出力されるものに限られず、外部装置などから取得して出力されてもよい。
【0023】
信号復元部200の構成について詳しく説明する。信号復元部200は、抽出部201、復元部202および切替部203を有する。
【0024】
抽出部201は、受信部21から取得した重畳オーディオ信号Stに重畳されている電子透かしの信号情報Daを抽出して出力する。抽出部201には、上述した重畳部104において重畳した情報の抽出方法が上述した重畳方法に応じて予め設定され、重畳オーディオ信号Stから信号情報Daが抽出できるようになっている。例えば、スペクトラム拡散により重畳されている場合には、同じ拡散符号で復元することにより信号情報Daが抽出できるようになっている。
【0025】
復元部202は、抽出部201から信号情報Daを取得し、信号情報Daが示すパラメータを用いて、音声合成などの復元処理を行って、復元オーディオ信号Sbを生成して出力する。
【0026】
切替部203は、受信部21から重畳オーディオ信号Stを、復元部202から復元オーディオ信号Sbを取得し、操作部23により指定されるモードに応じていずれかをオーディオ信号Soutとして出力する。この例においては、出力されるオーディオ信号Soutは、操作部23により指定されるモードが通常モードであるときには、重畳オーディオ信号Stであり、復元モードであるときには、復元オーディオ信号Sbとなる。なお、通常モードに指定されているときは、抽出部201、復元部202の処理が行われないようにしてもよい。
【0027】
このように、第1実施形態における通信システム1においては、受信装置20の放音部22からの放音は、通常モードに指定されているときには、送信装置10の収音部11で収音した音に対して、加工部103において加工が施されて変化した音となる。一方、復元モードに指定されているときには、送信装置10の収音部11で収音した音がパラメータ化され、そのパラメータを用いて復元した音、すなわち収音した音に近い状態の音となる。例えば、受信装置20の利用者は、加工部103における加工が人間の会話の内容が伝達されることを妨げるものである場合には、通常モードにおいては、何らかの音が聞こえる程度であるが、復元モードにおいては、信号情報Daとして送信されるパラメータを用いてオーディオ信号に復元することで、会話の内容がわかるような音として聞くことができる。
【0028】
また、送信装置10から受信装置20への通信経路において、他の装置で重畳オーディオ信号Stを取得して放音しても、受信装置20でいう通常モードの放音でしか聞くことはできず、通信のセキュリティを向上させることができる。また、送信装置10の情報生成部102において信号情報Daを生成するときに、暗号化処理を施し、受信装置20の抽出部201において信号情報Daを復号化することにより、より強固なセキュリティを確保することができる。これにより、アナログ信号での通信であってもデジタル信号による通信と同等なセキュリティ性能を持たせることが可能となる。
【0029】
さらに、情報生成部102において、信号情報Daに含めるパラメータの種類などを増減させる制御をすることもできるから、受信装置20において生成する復元オーディイオ信号Sbの復元品質の上限を制御することもできる。
【0030】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る通信システム1Aは、図4に示す送信装置10Aおよび図5に示す受信装置20Aを有する。図4は、本発明の第2実施形態に係る送信装置10Aの構成を示すブロック図である。図5は、本発明の第2実施形態に係る受信装置20Aの構成を示すブロック図である。
【0031】
図4に示すように、送信装置10Aは、第1実施形態に係る送信装置10とは信号加工部100の構成が異なり、解析部101、情報生成部102A、加工部103A、重畳部104および合成部105を具備する信号加工部100Aを有する。また、図5に示すように、受信装置20Aは、第1実施形態に係る受信装置20とは信号復元部200の構成が異なり、抽出部201、復元部202Aおよび切替部203を具備する信号復元部200Aを有する。以下、第1実施形態と異なる信号加工部100Aおよび信号復元部200Aの構成について、順に説明する。
【0032】
まず、図4を用いて、信号加工部100Aの構成について説明する。解析部101は、収音部11から取得したオーディオ信号Sinについて、第1実施形態における解析部101と同様な処理を行って、パラメータ情報Dpを出力する。
【0033】
加工部103Aは、パラメータ情報Dpを取得し、パラメータ情報Dpが示すパラメータの少なくとも一部に対して、予め設定された態様の加工を施して、加工パラメータ情報Dqとして出力する。また、加工部103Aは、パラメータ情報Dpが示すパラメータのうち、加工が施されるパラメータの種類であって加工前のものを少なくとも含む復元パラメータ情報Drを出力する。すなわち、復元パラメータ情報Drは、パラメータ情報Dpが示すパラメータのうち、加工パラメータ情報Dqが示すパラメータとは値が異なるものとなるパラメータの種類を含むことになる。なお、この復元パラメータ情報Drは、パラメータ情報Dpが示すパラメータを全て含むものとしてもよい。
【0034】
合成部105は、加工パラメータ情報Dqを取得し、加工パラメータ情報Dpが示すパラメータを用いて、音声合成などの処理を行って、加工オーディオ信号Saを生成する。このように加工された加工オーディオ信号Saを放音すると、人間の会話の内容が伝達されることを妨げるものになっていることが望ましいが、加工部103Aによるパラメータの加工により、元のオーディオ信号Sinと、加工オーディオ信号Saとの間に変化が生じていればよい。
【0035】
情報生成部102Aは、復元パラメータ情報Drを取得し、第1実施形態における情報生成部102と同様な処理を行って、信号情報Dbを出力する。この例においては、パラメータ情報Drと信号情報Dbが示すパラメータが同一であるものとする。なお、第1実施形態における場合と同様に、信号情報Daに含まれるパラメータの種類の増減、分解能の増減を行うようにしてもよい。
【0036】
重畳部104は、加工オーディオ信号Saと信号情報Dbとを取得し、第1実施形態における重畳部104と同様に、加工オーディオ信号Saに対して、信号情報Dbを電子透かしにより重畳した重畳オーディオ信号Stを生成して、送信部12に出力する。以上が送信装置10Aの信号加工部100Aの構成についての説明である。
【0037】
次に、図5を用いて、信号復元部200Aの構成について説明する。抽出部201は、第1実施形態における抽出部201と同様に、受信部21から取得した重畳オーディオ信号Stに重畳されている電子透かしの信号情報Dbを抽出して出力する。
【0038】
復元部202Aは、受信部21から重畳オーディオ信号Stを、抽出部201から信号情報Dbを取得し、以下に説明する解析処理、置換処理および復元処理を行って、復元オーディオ信号Sbを生成して出力する。解析処理は、上述の解析部101における解析と同様に、重畳オーディオ信号Stを解析して、パラメータを算出する処理である。これにより算出されるパラメータは、上述したパラメータ情報Dqが示すパラメータと同じものとなる。
【0039】
置換処理は、算出したパラメータのうち、信号情報Dbが示すパラメータに対応するものについて、信号情報Dbが示すパラメータに置換する処理である。このように置換されると、上述したパラメータ情報Dpが示すパラメータと同じものとなる。復元処理は、置換され、パラメータ情報Dpと同様なパラメータを用いて、音声合成など行って、復元オーディオ信号Sbを生成する処理である。
【0040】
切替部203については、第1実施形態における切替部203と同様であるため、説明を省略する。以上が、受信装置20Aの信号復元部200Aの構成についての説明である。
【0041】
このように、第2実施形態における通信システム1Aにおいても、第1実施形態における通信システム1と同様な効果を得ることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。以下の変形例の説明においては、第1実施形態における変形として説明しているが、それぞれ、第2実施形態に対しても適用することができる。
【0043】
<変形例1>
上述した第1実施形態においては、通信システム1は、送信装置10と受信装置20とにより構成されていたが、図6に示すような、通信システム1Bとしてもよい。通信システム1Bは、送信装置10Bと受信装置20Bとの通信経路の途中に中継装置となるサーバ30が設けられている。サーバ30は、第1実施形態における信号加工部100または信号復元部200の構成を有している。サーバ30が有している構成が信号加工部100である場合には、送信装置10Bは、信号加工部100の構成を有していなくてもよい。一方、サーバ30が有している構成が信号復元部200である場合には、受信装置20Bは、信号復元部200の構成を有していなくてもよい。ただし、この場合には、受信装置20Bの操作部23により指定されるモードを示す情報が、サーバ30に送信され、信号復元部200の切替部203に出力されるようにする。
【0044】
また、図7に示すような、通信システム1Cとしてもよい。通信システム1Cは、送信装置10Cと受信装置20Cとの通信経路の途中に中継装置となるサーバ31、32が設けられている。サーバ31は、第1実施形態における信号加工部100の構成を有し、サーバ32は、第1実施形態における信号復元部200の構成を有している。この場合には、送信装置10Cは、信号加工部100の構成を有していなくてもよく、受信装置20Cは、信号復元部200の構成を有していなくてもよい。
【0045】
なお、通信システム1Bにおいて、送信装置10Bが信号加工部100の構成を有している場合、サーバ30においては、重畳オーディオ信号Stに重畳されている信号情報Daが示すパラメータをフィルタリングできるようにしてもよい。この場合には、サーバ30において、信号情報Daを抽出して、信号情報Daに係るパラメータの一部を欠落させ、再度重畳すればよい。このとき、重畳オーディオ信号Stに重畳されていた元の信号情報Daは、除去しておくことが望ましい。
【0046】
<変形例2>
上述した第1実施形態において、受信装置20に、受信部21において受信した重畳オーディオ信号Stを記憶する記憶手段を設けてもよい。そして、操作部23の操作などにより、復元モードが指定されると、所定時間前に記憶された重畳オーディオ信号Stが読み出され、信号加工部100に取得させるようにすればよい。このようにすると、所定時間前に戻って収音した音に近い復元オーディオ信号Sbを聴取することができる。
【0047】
<変形例3>
上述した第1実施形態の送信装置10において、加工部103における処理時間と、解析部101および情報生成部102における処理時間とが異なる場合には、これを一致させるようにいずれかに遅延処理が行われるようにしてもよい。また、受信装置20において、抽出部201および復元部202における処理時間に相当する時間の遅延処理を行う遅延部を受信部21から切替部203への信号経路に設けてもよい。
【0048】
<変形例4>
上述した第1実施形態においては、送信装置10、受信装置20は、音声など示すオーディオ信号についての信号の加工、復元を行っていたが、静止画、動画などの画像を示す画像信号について信号の加工、復元を行えるようにしてもよい。
【0049】
この場合は、収音部11を画像の撮影を行って、撮影内容を示す画像信号を出力する撮像部に置き換え、放音部22の代わりに画像信号に応じた画像を表示する表示部を設ければよい。そして、加工部103においては、画像信号を加工して、例えば、画像の空間周波数成分の高いところを除去する加工を行えばよい。また、色情報、特定の図形パターンなどの加工を行ってもよい。そして、加工した画像信号に対して、加工に係るパラメータであって、加工前のパラメータを含む信号情報を電子透かしにより重畳して送信することにより、受信装置20においては、加工された画像または信号情報が示すパラメータを用いて復元された画像を表示部に表示させることができる。
【0050】
なお、変形例4に示す画像信号と第1実施形態におけるオーディオ信号とは並行して処理されてもよい。
【0051】
<変形例5>
上述した第1実施形態における送信装置10と第2実施形態における受信装置20Aとにより通信システムを構成してもよい。この場合、受信装置20Aの抽出部201からは、信号情報Daが出力され、復元部202Aにおける置換処理は、解析処理によって算出されたパラメータのうち、信号情報Daが示すパラメータと異なる値のパラメータについて、信号情報Daが示すパラメータに置換する処理とすればよい。なお、これとは逆に、第2実施形態における送信装置10Aと第1実施形態における受信装置20とにより通信システムを構成してもよい。
【0052】
<変形例6>
上述した第2実施形態、変形例5における復元部202Aにおいては、解析処理、置換処理および復元処理を行って、復元オーディオ信号Sbを生成していたが、他の方法により生成するようにしてもよい。一例として、上述した変形例5に示すように、第1実施形態における送信装置10と第2実施形態における受信装置20Aとにより通信システムを構成した場合であって、例えば、加工部103による加工は、所定の周波数帯域の信号を欠落させる加工であり、信号情報Daが示すパラメータが、その欠落させた周波数帯域の信号をパラメータ化したものとするときの復元部202Aの処理を説明する。
【0053】
この例における復元部202Aは、抽出部201から出力される信号情報Daが示すパラメータから、上記の欠落させた周波数帯域の信号を復元する処理を行う。また、受信部21から取得する重畳オーディオ信号Stと、復元して得られた欠落させた周波数帯域の信号とに応じて、例えば、これらを合成することにより、復元オーディオ信号Sbを生成する処理を行う。これにより、オーディオ信号Sinに近い信号を復元することができる。このように、復元部202Aの処理にあっては、重畳オーディオ信号Stと信号情報Daとに応じて復元オーディオ信号Sbを生成するようになっていれば、どのような処理過程を経ていてもよい。
【0054】
<変形例7>
上述した第2実施形態においては、復元パラメータ情報Drは、パラメータ情報Dpが示すパラメータのうち、加工が施されるパラメータであって加工前のものを少なくとも含んでいたが、加工を施すことにより変化したパラメータの差分を示すパラメータ差分値で表されるものであってもよい。この場合は、受信装置20Aの復元部202Aにおいては、置換処理の代わりに、解析処理において算出されたパラメータをパラメータ差分値に応じて変更する変更処理を行うようにすればよい。これによっても、パラメータ情報Dpを復元できるから、復元オーディオ信号Sbを生成することができる。
【0055】
また、第1実施形態においても、パラメータ情報Dpをこのように差分値で表すことを適用することができる。すなわち、解析部101は、オーディオ信号Sinを解析して、算出したパラメータを示すパラメータ情報Dpを出力するのではなく、加工部103において加工して得られる加工オーディオ信号Saを、仮に解析部101において解析した場合に算出されるパラメータと、オーディオ信号Sinから得られたパラメータとの差分を示すパラメータ情報Dpを出力すればよい。なお、この場合は、受信装置20は、第2実施形態または変形例6において示す受信装置の構成とすればよい。
【0056】
<変形例8>
上述した第1実施形態における送信装置10と受信装置20との通信については、音声による空中伝搬により行われるようにしてもよい。この場合は、送信部12は、重畳オーディオ信号Stを放音し、受信部21は、放音された重畳オーディオ信号Stを受信するようにすればよい。なお、この通信はアナログの信号を伝送するケーブルなどにより行なわれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る送信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る受信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】第2実施形態に係る送信装置の構成を示すブロック図である。
【図5】第2実施形態に係る受信装置の構成を示すブロック図である。
【図6】変形例1に係る通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図7】変形例1に係る通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B,1C…通信システム、10,10A,10B,10C…送信装置、11…収音部、12…送信部、100,100A…信号加工部、101…解析部、102,102A…情報生成部、103,103A…加工部、104…重畳部、105…合成部、20,20A,20B,20C…受信装置、21…受信部、22…放音部、23…操作部、200,200A…信号復元部、201…抽出部、202,202A…復元部、203…切替部、30,31,32…サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声または画像を示す信号を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された信号を解析し、所定の特性値を示すパラメータを算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出されたパラメータのうち、一部または全部のパラメータに応じた信号情報を生成する生成手段と、
前記信号に対して、前記信号情報に係るパラメータに応じて予め設定された態様の加工を施した加工信号を生成する加工手段と、
前記加工信号に対して、前記信号情報を電子透かしにより重畳して重畳信号を生成する重畳手段と、
前記重畳信号を出力する出力手段と
を具備することを特徴とする信号加工装置。
【請求項2】
前記加工手段は、前記算出手段によって算出されたパラメータの少なくとも一部に対して加工を施し、加工されたパラメータに応じて加工信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の信号加工装置。
【請求項3】
音声または画像を示す重畳信号であって、信号情報が電子透かしにより重畳されている重畳信号を取得する取得手段と、
前記重畳信号に重畳されている信号情報を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段によって抽出された信号情報に応じて、前記重畳信号に対して復元処理を行うことにより、復元信号を生成する復元手段と、
前記重畳信号または前記復元信号を出力する出力手段と
を具備することを特徴とする信号復元装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−87865(P2010−87865A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255086(P2008−255086)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】