信号変換回路ならびにそれを用いた増幅回路,送信装置および通信装置
【課題】 入力された信号の位相差が大きいときの出力電力の低下を抑制した信号変換回路を提供する。
【解決手段】 第1信号S1,第2信号S2,第1信号S1をφ1だけ遅延させた第3信号S3,第2信号S2をφ2(φ2=φ1+φ3)だけ遅延させた第4信号S4を出力する第1回路4と、第1信号S1,第2信号S2がソース端子,ゲート端子に入力されて第5信号S5を出力するトランジスタ7と、第3信号S3,第4信号S4がソース端子,ゲート端子に入力されて第6信号S6を出力するトランジスタ8と、第6信号S6をφ4(φ4≧0)だけ遅延させた第7信号S7をスイッチ回路57を介して出力し、第5信号S5をφ5(φ5=180°+φ1+φ4)だけ遅延させた第8信号S8を出力する第2回路5と、スイッチ回路57を制御する第3回路6と、第7信号S7,第8信号S8を加算する第4回路9とを有する信号変換回路とする。
【解決手段】 第1信号S1,第2信号S2,第1信号S1をφ1だけ遅延させた第3信号S3,第2信号S2をφ2(φ2=φ1+φ3)だけ遅延させた第4信号S4を出力する第1回路4と、第1信号S1,第2信号S2がソース端子,ゲート端子に入力されて第5信号S5を出力するトランジスタ7と、第3信号S3,第4信号S4がソース端子,ゲート端子に入力されて第6信号S6を出力するトランジスタ8と、第6信号S6をφ4(φ4≧0)だけ遅延させた第7信号S7をスイッチ回路57を介して出力し、第5信号S5をφ5(φ5=180°+φ1+φ4)だけ遅延させた第8信号S8を出力する第2回路5と、スイッチ回路57を制御する第3回路6と、第7信号S7,第8信号S8を加算する第4回路9とを有する信号変換回路とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された2つの信号の位相差が大きいときの出力電力の低下が抑制された信号変換回路ならびにそれを用いた増幅回路,送信装置および通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、入力された2つの入力信号の位相差に応じたデューティ比を有するパルス状の信号を出力する信号変換回路が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−182906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の信号変換回路においては、入力された2つの信号の位相差が大きいときに出力電力が低下することがあった。
【0005】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、入力された2つの信号の位相差が大きいときの出力電力の低下が抑制された信号変換回路ならびにそれを用いた増幅回路,送信装置および通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の信号変換回路は、第1信号および該第1信号に対して位相が等しいか又は遅れている第2信号が入力されて、前記第1信号と、前記第2信号と、前記第1信号の位相をφ1(φ1≧0)だけ遅延させた位相を有する第3信号と、前記第2信号の位相をφ2(φ2=φ1+φ3,φ3は所定の正の値)だけ遅延させた位相を有する第4信号とを出力する第1回路と、前記第1信号および前記第2信号の一方がソース端子に入力されるとともに、前記第1信号および前記第2信号の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第5信号を出力する第1のトランジスタと、前記第3信号および前記第4信号の一方がソース端子に入力されるとともに、前記第3信号および前記第4信号の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第6信号を出力する第2のトランジスタと、前記第5信号および前記第6信号が入力されて、前記第6信号の位相をφ4(φ4≧0)だけ遅延させた位相を有する第7信号をスイッチ回路を介して出力するとともに、前記第5信号の位相をφ5(φ5=180°+φ1+φ4)だけ遅延させた位相を有する第8信号を出力する第2回路と、前記第1信号と前記第2信号との位相差が所定の値よりも大きいときに前記スイッチ回路が閉じるように前記スイッチ回路を制御する第9信号を出力する第3回路と、入力された前記第7信号および第8信号を加算して第10信号を出力する第4回路とを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の増幅回路は、前記信号変換回路と、第11信号が入力されて、該第11信号の振幅の変化に応じて互いの位相差が変化する前記第1信号および前記第2信号を出力する第5回路と、前記第10信号が直接または他の回路を介してゲート端子に入力されて、ドレイン端子から第12信号を出力するトランジスタと、前記第12信号が入力されて、前記第11信号の基本波の周波数の信号を出力する第6回路とを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の送信装置は、送信回路と、前記幅回路と、該増幅回路を介して前記送信回路に接続されたアンテナとを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の通信装置は、送信回路と、前記増幅回路と、該増幅回路を介して前記送信回路に接続されたアンテナと、該アンテナに接続された受信回路とを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の信号変換回路によれば、入力された2つの信号の位相差が大きいときの出力電力の低下が抑制された信号変換回路を得ることができる。
本発明の増幅回路によれば、入力電力が小さいときの出力電力の低下が抑制された増幅回路を得ることができる。
本発明の送信装置によれば、消費電力の小さい送信装置を得ることができる。
本発明の通信装置によれば、消費電力の小さい通信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路を示す回路図である。
【図2】図1における第7回路61の一例を示す回路図である。
【図3】従来の信号変換回路を示す回路図である。
【図4】従来の信号変換回路の問題点を説明するためのグラフである。
【図5】(a),(b)は従来の信号変換回路の問題点を説明するための図である。
【図6】(a),(b)は従来の信号変換回路の問題点を説明するための図である。
【図7】(a),(b)は従来の信号変換回路の問題点を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態の第2の例の信号変換回路を示す回路図である。
【図9】本発明の実施の形態の第3の例の増幅回路を示す回路図である。
【図10】本発明の実施の形態の第4の例の送信装置を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態の第5の例の通信装置を示すブロック図である。
【図12】本発明の信号変換回路の効果を示すグラフである。
【図13】本発明の信号変換回路の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の信号変換回路ならびにそれを用いた増幅回路,送信装置および通信装置を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態の第1の例)
図1は本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路を示す回路図である。図2は、図1における第7回路61の一例を示す回路図である。本例の信号変換回路30は、図1に示すように、端子1〜3と、トランジスタ7,8と、第1回路4と、第2回路5と、第3回路6と、第4回路9とを有している。
【0014】
端子1には図示せぬ外部回路から第1信号S1が入力され、端子2には図示せぬ外部回路から第2信号S2が入力される。なお、本例の信号変換回路において、第1信号S1および第2信号S2は、振幅が一定で互いに周波数が等しい信号である。また、第1信号S1および第2信号S2は、正弦波状や矩形波状の信号でもよく、パルス状の信号でも構わない。また、第2信号S2は、第1信号S1に対して位相が等しいか又は遅れている信号である。
【0015】
第1回路4は、端子11〜16と、移相器17とを有している。端子11は、端子1に接続されており、端子1から第1信号S1が入力される。また、端子1は、端子13および端子15に接続されている。よって、端子11に入力された第1信号S1が端子13か
らそのまま出力される。また、端子15から出力される第3信号S3も、第1信号S1と全く同じ信号となっている。すなわち、第3信号S3の位相の第1信号S1の位相に対する遅延量をφ1とすると、φ1=0に設定されている。なお、φ1は、通常は0に設定されるが、0以上の任意の値に設定しても構わない。その場合には、端子11と端子15との間に移相量φ1の移相器が挿入される。
【0016】
端子12は、端子2に接続されており、端子2から第2信号S2が入力される。また、端子12は、端子14に接続されており、端子12に入力される第2信号S2は、端子14からそのまま出力される。また、端子12は、移相器17を介して端子16に接続されている。移相器17の移相量をφ2とすると、φ2=φ1+φ3と設定される。なお、φ3は、第1信号S1および第2信号S2の波形等に応じて予め定められる値であり、設定方法は後述する。本例の信号変換回路では、φ3=1°に設定されており、前述したように、φ1=0に設定されているため、φ2=φ1+φ3=0+1°=1°とされている。つまり、端子16から出力される第4信号S4の位相の第2信号S2の位相に対する遅延量φ2は、φ2=1°に設定されている。
【0017】
このように、第1回路4は、第1信号S1および第2信号S2が入力されて、第1信号S1と、第2信号S2と、第1信号S1の位相をφ1(φ1≧0)だけ遅延させた位相を有する第3信号S3と、第2信号S2の位相をφ2(φ2=φ1+φ3,φ3は所定の正の値)だけ遅延させた位相を有する第4信号S4とを出力する。
【0018】
トランジスタ7は、ソース端子が端子13に接続されているとともにゲート端子が端子14に接続されている。そして、トランジスタ7は、ソース端子に第1信号S1が入力されるとともに、ゲート端子に第2信号S2が入力されて、第1信号S1と第2信号S2との位相差に応じてデューティ比が変化する信号である第5信号S5をドレイン端子から出力する。すなわち、トランジスタ7は、第1信号S1および第2信号S2の一方がソース端子に入力されるとともに、第1信号S1および第2信号S2の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第5信号S5を出力する。
【0019】
トランジスタ8は、ソース端子が端子16に接続されているとともにゲート端子が端子15に接続されている。そして、トランジスタ8は、ソース端子に第4信号S4が入力されるとともに、ゲート端子に第3信号S3が入力されて、第3信号S3と第4信号S4との位相差に応じてデューティ比が変化する信号である第6信号S6をドレイン端子から出力する。すなわち、トランジスタ8は、第3信号S3および第4信号S4の一方がソース端子に入力されるとともに、第3信号S3および第4信号S4の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第6信号S6を出力する。なお、トランジスタ7,8はnチャネルFETであり、それぞれのゲート端子には、必要に応じて所定のバイアス電圧が加えられる。
【0020】
第2回路5は、端子51〜54と、移相器56と、スイッチ回路57とを有している。端子53は、トランジスタ8のドレイン端子に接続されており、トランジスタ8から第6信号S6が入力される。また、端子53は、スイッチ回路57を介して端子54に接続されており、スイッチ回路57が閉じる(ON状態になる)ことにより、端子53と端子54とが導通(短絡)されて、端子54から第7信号S7が出力される。よって、第7信号S7の位相の第6信号S6の位相に対する遅延量をφ4とすると、φ4=0に設定されている。なお、φ4は、通常は0に設定されるが、0以上の任意の値に設定しても構わない。その場合には、端子53と端子54との間に移相量φ4の移相器が挿入される。
【0021】
端子51は、トランジスタ7のドレイン端子に接続されており、トランジスタ7から第5信号S5が入力される。また、端子51は、移相器56を介して端子52に接続されて
いる。移相器56の移相量をφ5とすると、φ5=180°+φ1+φ4に設定される。つまり、端子52から出力される第8信号S8の位相の第5信号S5の位相に対する遅延量φ5は、φ5=180°+φ1+φ4に設定される。本例の信号変換回路では、前述したように、φ1=0,φ4=0に設定されているため、φ5=180°となっている。
【0022】
このように、第2回路5は、第5信号S5および第6信号S6が入力されて、第6信号S6の位相をφ4(φ4≧0)だけ遅延させた位相を有する第7信号S7をスイッチ回路57を介して出力するとともに、第5信号S5の位相をφ5(φ5=180°+φ1+φ4)だけ遅延させた位相を有する第8信号S8を出力する。
【0023】
第3回路6は、第7回路61と比較回路62とを有している。第7回路61は、端子20が端子1に接続されており、端子21が端子2に接続されており、端子22が比較回路62に接続されている。そして、第7回路61は、端子20に第1信号S1が入力されるとともに、端子21に第2信号S2が入力されて、第1信号S1と第2信号S2との位相差の情報を有する第13信号S13を端子22から比較回路62へ出力する。
【0024】
図2に第7回路61の回路構成の一例を示す。端子20は、トランジスタ23のゲート端子に接続されており、端子21は、トランジスタ24のゲート端子に接続されている。なお、図示しないバイアス回路が設けられ、トランジスタ23およびトランジスタ24のゲート端子に直流バイアス電圧が供給される。
【0025】
トランジスタ23のドレイン端子は電源電圧Vddに接続されており、トランジスタ23のソース端子はトランジスタ24のドレイン端子に接続されており、トランジスタ24のソース端子はトランジスタ25のドレイン端子に接続されており、トランジスタ25のソース端子はグランド電位に接続されている。トランジスタ25は、ドレイン端子とゲート端子とが接続され、カレントミラー回路の参照電流側トランジスタとして機能する。
【0026】
通常、nチャネルトランジスタは、ピンチオフ電圧以上の正電圧がゲート端子に印加されると、ドレイン・ソース端子間が導通する。従って、第1信号S1および第2信号S2がピンチオフ電圧以上の正電圧の時、トランジスタ23およびトランジスタ24がON状態になる。本回路構成では、トランジスタ23およびトランジスタ24がAND回路を形成しているため、第1信号S1および第2信号S2が両方ともピンチオフ電圧以上の正電圧の時だけ、トランジスタ25のドレイン端子に電源電圧Vddが供給されることになる。
【0027】
トランジスタ23およびトランジスタ24の両方がON状態の時間は、第1信号S1と第2信号S2との位相差に対応する。すなわち、2つの入力信号の位相差が小さい場合、両方ともON状態である時間は長くなり、2つの入力信号の位相差が大きい場合は、両方ともON状態である時間は短くなる。これにより、第1信号S1と第2信号S2との位相差の増減が、トランジスタ25のドレイン端子への電源電圧Vddの供給時間の増減に置き換えられる。
【0028】
トランジスタ25は、ゲート端子とドレイン端子とが接続されているため等価的にダイオードと見なすことができ、その結果、ドレイン端子に流れる電流に応じた電圧がゲート端子に得られる。前述のように、トランジスタ25のドレインには、第1信号S1と第2信号S2との位相差に応じて、電源電圧Vddが供給されるため、トランジスタ25のゲート端子から、第1信号S1と第2信号S2との位相差に応じた電圧を有する第13信号S13が出力される。具体的には、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなるにつれて小さくなる電圧を有する第13信号S13が、端子22から比較回路62へ出力される。
【0029】
比較回路62には、第7回路61から第13信号S13が入力されるとともに、図示せぬ外部回路から、所定の電圧を有する第14信号S14が入力される。比較回路62は、第13信号S13の電圧と第14信号S14の電圧とを比較して、第13信号S13の電圧が第14信号S14の電圧よりも小さいときにスイッチ回路57が閉じるようにスイッチ回路57を制御する第9信号S9を出力する。なお、比較回路62としては、よく知られた種々の比較回路を用いることができる。
【0030】
このようにして、第3回路6は、第1信号S1と第2信号S2との位相差が所定の値よりも大きいときにスイッチ回路57が閉じるようにスイッチ回路57を制御する第9信号S9を出力する。なお、第3回路6は、このような機能を有していればよく、他の回路構成でも構わない。例えば、トランジスタ7のドレイン端子から出力される第5信号S5の基本波成分の電力は、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなるにつれて小さくなる。よって、例えば、第5信号S5の基本波成分の電力を電力検波器で検波した電圧V1と第14信号S14の電圧とを比較して、電圧V1が第14信号S14の電圧よりも小さいときにスイッチ回路57が閉じるようにスイッチ回路57を制御する第9信号S9を出力するような第3回路6であっても構わない。
【0031】
第4回路9には、第2回路5から第7信号S7および第8信号S8が入力される。第4回路9は、入力された第7信号S7および第8信号S8を加算して第10信号S10を端子3へ出力する。このような第4回路9としては、例えば、入力された2つの信号の電圧を加算して出力する既知の加算回路を用いることができる。
【0032】
図3は、図1に示す本例の信号変換回路30から移相器17,第2回路5および第3回路6を取り除いた従来の信号変換回路40を示す回路図である。図4は、図3に示す従来の信号変換回路40における問題点を説明するためのグラフである。図4に示すグラフにおいて、横軸は第1信号S1と第2信号S2との位相差を示し、縦軸は信号変換回路40からの出力信号である第15信号S15の基本波成分の電力を示す。なお、この従来の信号変換回路40においては、第1信号S1がトランジスタ7のソース端子およびトランジスタ8のゲート端子にそのまま入力され、第2信号S2がトランジスタ7のゲート端子およびトランジスタ8のソース端子にそのまま入力される。そして、トランジスタ7およびトランジスタ8のドレイン端子からそれぞれ出力された信号がそのまま加算されて第15信号S15が出力される。
【0033】
図4に示すグラフから明らかなように、図3に示す従来の信号変換回路40においては、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって180°に近づいたときに急激に出力電力が低下するという問題が生じる。なお、図4に示すグラフは、第1信号S1および第2信号S2として、矩形波状の信号(完全な矩形波ではないがそれに近い波形を有する信号)を用いているため、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって180°に近づいたときに急激に出力電力が低下している。第1信号S1および第2信号S2の波形が、完全な矩形波から正弦波に近づくにつれて、出力電力の低下が生じる位相差が小さくなる。
【0034】
図5〜7は、この問題が生じるメカニズムを説明するための図である。図5〜7において、(a)は第1信号S1および第2信号S2の波形を示すグラフであり、(b)は第15信号S15の波形を示すグラフである。また、41は第1信号S1の電圧を示し、42は第2信号S2の電圧を示し、43は第15信号S15の電圧を示し、47はトランジスタ7,8のピンチオフ電圧を示す。また、それぞれのグラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。そして、図5は、第1信号S1と第2信号S2との位相差が小さいときの状態を示し、図6は、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって18
0°に近づいたときの状態を示し、図7は、第1信号S1と第2信号S2との位相差が180°を超えたときの状態を示す。なお、図5〜7においては、わかりやすくするために、第1信号S1および第2信号S2が正弦波である場合を示している。
【0035】
第1信号S1と第2信号S2との位相差が小さいときは、図5に示すように、第15信号S15の波高は充分に大きい。しかしながら、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって180°に近づくと、図6に示すように、第15信号S15の波高が小さくなってしまう。これにより、図4のグラフに示すように、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって180°に近づくと第15信号S15の基本波成分の電力が急激に低下するという問題が生じる。なお、第1信号S1と第2信号S2との位相差が180°を超えて大きくなると、図7に示すように、位相が180°異なるスプリアスが現れ、その波高が次第に大きくなる。これにより、図4に示すグラフに示すように、第1信号S1と第2信号S2との位相差が180°を超えて大きくなるにつれて、第15信号S15の基本波成分の電力が急激に増加する現象が生じる。
【0036】
図1に示す本例の信号変換回路30においては、第1回路4を有していることから、トランジスタ8に入力される第3信号S3と第4信号S4との位相差を、トランジスタ7に入力される第1信号S1と第2信号S2との位相差に対してφ3だけ大きくすることができる。そして、図4に示すグラフにおいて第15信号S15の基本波成分の電力が低下し始めるときの第1信号S1と第2信号S2との位相差をφ6としたときに、φ3の値を、φ3=180°−φ6を満足する値に設定する。これにより、トランジスタ7から出力される第5信号S5の波高が次第に小さくなって基本波成分の電力が低下するときに、波高が次第に大きくなる第6信号S6をトランジスタ8から出力することができる。そして、第2回路5によって、第5信号S5および第6信号S6の位相を等しくして第7信号S7および第8信号S8として出力し、第4回路9によって加算して第10信号S10として出力する。これにより、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって180°に近づいたときの第10信号S10の基本波成分の電力低下を低減することができる。
【0037】
なお、第2回路5のスイッチ回路57が閉じるときの第1信号S1と第2信号S2との位相差は、図4に示すグラフにおいて第15信号S15の基本波成分の電力が低下し始めるときの第1信号S1と第2信号S2との位相差であるφ6に等しく設定する。これにより、必要なときだけ第7信号S7を第8信号S8に加算することができる。
【0038】
(実施の形態の第2の例)
図8は本発明の実施の形態の第2の例の信号変換回路を示す回路図である。なお、本例においては、前述した実施の形態の第1の例の信号変換回路30と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素には同じ参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
本例の信号変換回路50は、図8に示すように、第1回路4の端子13がトランジスタ7のゲート端子に接続されており、第1回路4の端子14がトランジスタ7のソース端子に接続されており、第1回路4の端子15がトランジスタ8のソース端子に接続されており、第1回路4の端子16がトランジスタ8のゲート端子に接続されている。そして、第1信号S1がトランジスタ7のゲート端子に入力され、第2信号S2がトランジスタ7のソース端子に入力され、第3信号S3がトランジスタ8のソース端子に入力され、第4信号S4がトランジスタ8のゲート端子に入力される。このような構成を備える本例の信号変換回路50も、図1に示す実施の形態の第1の例の信号変換回路30と同様に機能する。
【0040】
(実施の形態の第3の例)
図9は本発明の実施の形態の第3の例の増幅回路を示す回路図である。本例の増幅回路
80は、図9に示すように、図1に示した実施の形態の第1の例の信号変換回路30に加えて、第5回路31と、第6回路33と、トランジスタ63と、低域通過フィルタ回路65と、端子34,35とを有している。
【0041】
端子34には、図示せぬ外部回路から第11信号S11が入力される。本例の増幅回路80において、第11信号S11は、包絡線変動を有する信号である。第5回路31は、端子34に接続されており、第11信号S11が入力されて、第11信号S11の振幅の変化に応じて互いの位相差が変化する第1信号S1および第2信号S2を生成する。なお、本例の増幅回路80において、第1信号S1および第2信号S2は、互いに周波数の等しい矩形波状の定包絡線信号である。そして、第11信号S11の振幅が小さくなるにつれて、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなるように設定されている。そして、第5回路31は、第1信号S1を信号変換回路30の端子1へ出力し、第2信号S2を信号変換回路30の端子2へ出力する。このような第5回路31としては、公知の定包絡線信号生成回路を用いることができる。定包絡線信号生成回路であれば、どのような構成であっても良く、アナログ方式でもデジタル方式でも構わない。また、正弦波信号の矩形波状の信号への変換は、リミッタアンプ等を用いて容易に行うことができる。
【0042】
信号変換回路30は、第1信号S1および第2信号S2が入力されて、第1信号S1と第2信号S2との位相差に応じてデューティ比が変化する第10信号S10を端子3から出力する。
【0043】
トランジスタ63のゲート端子は、信号変換回路30の端子3に接続されており、図示せぬDCカットキャパシタを介して第10信号S10がゲート端子に入力される。また、トランジスタ63のゲート端子には、図示せぬバイアス回路から所定のバイアス電圧が加えられる。トランジスタ63のドレイン端子は、低域通過フィルタ回路65を介して電源電位Vddに接続される。トランジスタ63のソース端子は基準電位(グランド電位)に接続される。そして、トランジスタ63は、第10信号S10をスイッチング増幅した信号である第12信号S12をドレイン端子から第6回路33へ出力する。
【0044】
第6回路33は、LC直列共振回路26と、整合回路27とを有している。LC直列共振回路26はトランジスタ63のドレイン端子に接続されており、LC直列共振回路26と端子35とが整合回路27を介して接続されている。LC直列共振回路26は、互いに直列に接続されたインダクタおよびキャパシタによって構成されており、その共振周波数は、第11信号S11の基本波の周波数(第12信号S12の基本波の周波数と同じ)に略等しい値に設定されている。整合回路27は、インダクタおよびキャパシタによって構成されており、ローパスフィルタ型の整合回路となっている。このような構成を有する第6回路33は、信号変換回路30から第12信号S12が入力されて、第11信号S11の基本波の周波数の信号を主に出力する。
【0045】
このような構成を有する本例の増幅回路80は、入力される第11信号S11が包絡線変動を有する信号である場合においても、高効率で線形増幅して出力することができる。また、2つの入力信号の位相差が大きいときの出力電力の低下が低減された信号変換回路30を有していることから、入力される第11信号S11の振幅が小さいときの出力電力の低下が低減された高効率の増幅回路を得ることができる。なお、図1に示す実施の形態の第1の例の信号変換回路30の代わりに図8に示す実施の形態の第2の例の信号変換回路50を有する増幅回路80であっても良いことは言うまでもない。
【0046】
(実施の形態の第4の例)
図10は本発明の実施の形態の第4の例の送信装置を示すブロック図である。本例の送信装置は、図10に示すように、送信回路81と、図9に示した増幅回路80と、増幅回
路80を介して送信回路81に接続されたアンテナ82とを有している。このような構成を有する本例の送信装置によれば、送信回路81から出力された送信信号を、高効率の増幅回路80を用いて増幅してアンテナ82へ出力することができるので、消費電力が小さい送信装置を得ることができる。
【0047】
(実施の形態の第5の例)
図11は本発明の実施の形態の第5の例の通信装置を示すブロック図である。本例の通信装置は、図11に示すように、送信回路81と、第2の増幅回路80と、増幅回路80を介して送信回路81に接続されたアンテナ82と、アンテナ82に接続された受信回路83とを有している。また、アンテナ82と、増幅回路80および受信回路83との間にはアンテナ共用回路84が挿入されている。このような構成を有する本例の通信装置によれば、送信回路81から出力された送信信号を、高効率の増幅回路80を用いて増幅してアンテナ82へ出力することができるので、消費電力が小さい通信装置を得ることができる。
【0048】
(変形例)
本発明は前述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良が可能である。
【0049】
例えば、前述した実施の形態の第1の例の信号変換回路30および実施の形態の第2の例の信号変換回路50においては、第3信号S3の位相の第1信号S1の位相に対する遅延量φ1と、第7信号S7の位相の第6信号S6の位相に対する遅延量であるφ4とがともに0である場合を示したが、これに限定されるものではない。例えば、φ1=10°,φ3=1°,φ4=20°とする場合には、φ2=φ1+φ3=10°+1°=11°となり、φ5=180°+φ1+φ4=180°+10°+20°=210°となる。この場合には、端子11と端子15との間に移相量10°の移相器を新たに挿入し、端子53と端子54との間に移相量20°の移相器を新たに挿入するとともに、端子12と端子16との間に配置された移相器17の移相量を11°に設定し、端子51と端子52との間に配置された移相器56の移相量を210°に設定すればよい。
【実施例】
【0050】
次に、本発明の信号変換回路の具体例について説明する。図1に示した本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30および図3に示した比較例の信号変換回路40の電気特性をシミュレーションによって算出した。このシミュレーションにおいて、第1信号S1および第2信号S2は、周波数が730MHzで電力が0dBmの矩形波状の信号とした。移相器17における移相量φ2は、φ2=φ1+φ3=0+1°=1°とした。移相器56における移相量φ5は、φ5=180°+φ1+φ4=180°+0+0=180°に設定した。トランジスタ7,8,23,24,25は、NチャネルFETとした。
【0051】
その結果を図12のグラフに示す。グラフにおいて、横軸は、第1信号S1と第2信号S2との位相差であり、縦軸は、信号変換回路からの出力信号の基本波成分の電力である。また、実線は、図1に示した本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30の電気特性を示し、破線は、図3に示した比較例の信号変換回路40の電気特性を示す。図12に示すグラフによれば、比較例の信号変換回路40では、第1信号S1と第2信号S2との位相差が179°を超えた付近から急激に出力信号の基本波成分の電力が低下しているのに対して、本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30では、出力信号の基本波成分の電力の急激な低下が殆ど見られないことがわかる。これにより本発明の有効性が確認できる。
【0052】
さらに、図1に示した本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30に、図9に示
した第5回路31を加えた回路と、本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30の代わりに、図3に示した比較例の信号変換回路40を用いた回路とを作成して、その電気特性をシミュレーションした。
【0053】
その結果を図13のグラフに示す。グラフにおいて、横軸は、入力信号である第11信号S11の電力であり、縦軸は、信号変換回路からの出力信号の基本波成分の電力である。また、実線は、図1に示した本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30を用いたときの電気特性を示し、破線は、図3に示した比較例の信号変換回路40を用いたときの電気特性を示す。図13に示すグラフによれば、比較例の信号変換回路40を用いたときには、入力信号である第11信号S11の電力が−30dBよりも小さくなった付近から急激に出力信号の基本波成分の電力が低下して、入力信号の電力と出力信号の電力との間の線形性が低下している。これに対して、本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30を用いたときには、出力信号の基本波成分の電力の急激な低下が見られず、入力信号の電力と出力信号の電力との間の線形性が改善されていることがわかる。これにより本発明の有効性が確認できた。
【符号の説明】
【0054】
7,8,23,24,25,63:トランジスタ
4:第1回路
5:第2回路
6:第3回路
9:第4回路
30,40,50:信号変換回路
31:第5回路
33:第6回路
80:増幅回路
81:送信回路
82:アンテナ
83:受信回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された2つの信号の位相差が大きいときの出力電力の低下が抑制された信号変換回路ならびにそれを用いた増幅回路,送信装置および通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、入力された2つの入力信号の位相差に応じたデューティ比を有するパルス状の信号を出力する信号変換回路が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−182906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の信号変換回路においては、入力された2つの信号の位相差が大きいときに出力電力が低下することがあった。
【0005】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、入力された2つの信号の位相差が大きいときの出力電力の低下が抑制された信号変換回路ならびにそれを用いた増幅回路,送信装置および通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の信号変換回路は、第1信号および該第1信号に対して位相が等しいか又は遅れている第2信号が入力されて、前記第1信号と、前記第2信号と、前記第1信号の位相をφ1(φ1≧0)だけ遅延させた位相を有する第3信号と、前記第2信号の位相をφ2(φ2=φ1+φ3,φ3は所定の正の値)だけ遅延させた位相を有する第4信号とを出力する第1回路と、前記第1信号および前記第2信号の一方がソース端子に入力されるとともに、前記第1信号および前記第2信号の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第5信号を出力する第1のトランジスタと、前記第3信号および前記第4信号の一方がソース端子に入力されるとともに、前記第3信号および前記第4信号の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第6信号を出力する第2のトランジスタと、前記第5信号および前記第6信号が入力されて、前記第6信号の位相をφ4(φ4≧0)だけ遅延させた位相を有する第7信号をスイッチ回路を介して出力するとともに、前記第5信号の位相をφ5(φ5=180°+φ1+φ4)だけ遅延させた位相を有する第8信号を出力する第2回路と、前記第1信号と前記第2信号との位相差が所定の値よりも大きいときに前記スイッチ回路が閉じるように前記スイッチ回路を制御する第9信号を出力する第3回路と、入力された前記第7信号および第8信号を加算して第10信号を出力する第4回路とを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の増幅回路は、前記信号変換回路と、第11信号が入力されて、該第11信号の振幅の変化に応じて互いの位相差が変化する前記第1信号および前記第2信号を出力する第5回路と、前記第10信号が直接または他の回路を介してゲート端子に入力されて、ドレイン端子から第12信号を出力するトランジスタと、前記第12信号が入力されて、前記第11信号の基本波の周波数の信号を出力する第6回路とを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の送信装置は、送信回路と、前記幅回路と、該増幅回路を介して前記送信回路に接続されたアンテナとを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の通信装置は、送信回路と、前記増幅回路と、該増幅回路を介して前記送信回路に接続されたアンテナと、該アンテナに接続された受信回路とを少なくとも有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の信号変換回路によれば、入力された2つの信号の位相差が大きいときの出力電力の低下が抑制された信号変換回路を得ることができる。
本発明の増幅回路によれば、入力電力が小さいときの出力電力の低下が抑制された増幅回路を得ることができる。
本発明の送信装置によれば、消費電力の小さい送信装置を得ることができる。
本発明の通信装置によれば、消費電力の小さい通信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路を示す回路図である。
【図2】図1における第7回路61の一例を示す回路図である。
【図3】従来の信号変換回路を示す回路図である。
【図4】従来の信号変換回路の問題点を説明するためのグラフである。
【図5】(a),(b)は従来の信号変換回路の問題点を説明するための図である。
【図6】(a),(b)は従来の信号変換回路の問題点を説明するための図である。
【図7】(a),(b)は従来の信号変換回路の問題点を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態の第2の例の信号変換回路を示す回路図である。
【図9】本発明の実施の形態の第3の例の増幅回路を示す回路図である。
【図10】本発明の実施の形態の第4の例の送信装置を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態の第5の例の通信装置を示すブロック図である。
【図12】本発明の信号変換回路の効果を示すグラフである。
【図13】本発明の信号変換回路の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の信号変換回路ならびにそれを用いた増幅回路,送信装置および通信装置を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態の第1の例)
図1は本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路を示す回路図である。図2は、図1における第7回路61の一例を示す回路図である。本例の信号変換回路30は、図1に示すように、端子1〜3と、トランジスタ7,8と、第1回路4と、第2回路5と、第3回路6と、第4回路9とを有している。
【0014】
端子1には図示せぬ外部回路から第1信号S1が入力され、端子2には図示せぬ外部回路から第2信号S2が入力される。なお、本例の信号変換回路において、第1信号S1および第2信号S2は、振幅が一定で互いに周波数が等しい信号である。また、第1信号S1および第2信号S2は、正弦波状や矩形波状の信号でもよく、パルス状の信号でも構わない。また、第2信号S2は、第1信号S1に対して位相が等しいか又は遅れている信号である。
【0015】
第1回路4は、端子11〜16と、移相器17とを有している。端子11は、端子1に接続されており、端子1から第1信号S1が入力される。また、端子1は、端子13および端子15に接続されている。よって、端子11に入力された第1信号S1が端子13か
らそのまま出力される。また、端子15から出力される第3信号S3も、第1信号S1と全く同じ信号となっている。すなわち、第3信号S3の位相の第1信号S1の位相に対する遅延量をφ1とすると、φ1=0に設定されている。なお、φ1は、通常は0に設定されるが、0以上の任意の値に設定しても構わない。その場合には、端子11と端子15との間に移相量φ1の移相器が挿入される。
【0016】
端子12は、端子2に接続されており、端子2から第2信号S2が入力される。また、端子12は、端子14に接続されており、端子12に入力される第2信号S2は、端子14からそのまま出力される。また、端子12は、移相器17を介して端子16に接続されている。移相器17の移相量をφ2とすると、φ2=φ1+φ3と設定される。なお、φ3は、第1信号S1および第2信号S2の波形等に応じて予め定められる値であり、設定方法は後述する。本例の信号変換回路では、φ3=1°に設定されており、前述したように、φ1=0に設定されているため、φ2=φ1+φ3=0+1°=1°とされている。つまり、端子16から出力される第4信号S4の位相の第2信号S2の位相に対する遅延量φ2は、φ2=1°に設定されている。
【0017】
このように、第1回路4は、第1信号S1および第2信号S2が入力されて、第1信号S1と、第2信号S2と、第1信号S1の位相をφ1(φ1≧0)だけ遅延させた位相を有する第3信号S3と、第2信号S2の位相をφ2(φ2=φ1+φ3,φ3は所定の正の値)だけ遅延させた位相を有する第4信号S4とを出力する。
【0018】
トランジスタ7は、ソース端子が端子13に接続されているとともにゲート端子が端子14に接続されている。そして、トランジスタ7は、ソース端子に第1信号S1が入力されるとともに、ゲート端子に第2信号S2が入力されて、第1信号S1と第2信号S2との位相差に応じてデューティ比が変化する信号である第5信号S5をドレイン端子から出力する。すなわち、トランジスタ7は、第1信号S1および第2信号S2の一方がソース端子に入力されるとともに、第1信号S1および第2信号S2の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第5信号S5を出力する。
【0019】
トランジスタ8は、ソース端子が端子16に接続されているとともにゲート端子が端子15に接続されている。そして、トランジスタ8は、ソース端子に第4信号S4が入力されるとともに、ゲート端子に第3信号S3が入力されて、第3信号S3と第4信号S4との位相差に応じてデューティ比が変化する信号である第6信号S6をドレイン端子から出力する。すなわち、トランジスタ8は、第3信号S3および第4信号S4の一方がソース端子に入力されるとともに、第3信号S3および第4信号S4の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第6信号S6を出力する。なお、トランジスタ7,8はnチャネルFETであり、それぞれのゲート端子には、必要に応じて所定のバイアス電圧が加えられる。
【0020】
第2回路5は、端子51〜54と、移相器56と、スイッチ回路57とを有している。端子53は、トランジスタ8のドレイン端子に接続されており、トランジスタ8から第6信号S6が入力される。また、端子53は、スイッチ回路57を介して端子54に接続されており、スイッチ回路57が閉じる(ON状態になる)ことにより、端子53と端子54とが導通(短絡)されて、端子54から第7信号S7が出力される。よって、第7信号S7の位相の第6信号S6の位相に対する遅延量をφ4とすると、φ4=0に設定されている。なお、φ4は、通常は0に設定されるが、0以上の任意の値に設定しても構わない。その場合には、端子53と端子54との間に移相量φ4の移相器が挿入される。
【0021】
端子51は、トランジスタ7のドレイン端子に接続されており、トランジスタ7から第5信号S5が入力される。また、端子51は、移相器56を介して端子52に接続されて
いる。移相器56の移相量をφ5とすると、φ5=180°+φ1+φ4に設定される。つまり、端子52から出力される第8信号S8の位相の第5信号S5の位相に対する遅延量φ5は、φ5=180°+φ1+φ4に設定される。本例の信号変換回路では、前述したように、φ1=0,φ4=0に設定されているため、φ5=180°となっている。
【0022】
このように、第2回路5は、第5信号S5および第6信号S6が入力されて、第6信号S6の位相をφ4(φ4≧0)だけ遅延させた位相を有する第7信号S7をスイッチ回路57を介して出力するとともに、第5信号S5の位相をφ5(φ5=180°+φ1+φ4)だけ遅延させた位相を有する第8信号S8を出力する。
【0023】
第3回路6は、第7回路61と比較回路62とを有している。第7回路61は、端子20が端子1に接続されており、端子21が端子2に接続されており、端子22が比較回路62に接続されている。そして、第7回路61は、端子20に第1信号S1が入力されるとともに、端子21に第2信号S2が入力されて、第1信号S1と第2信号S2との位相差の情報を有する第13信号S13を端子22から比較回路62へ出力する。
【0024】
図2に第7回路61の回路構成の一例を示す。端子20は、トランジスタ23のゲート端子に接続されており、端子21は、トランジスタ24のゲート端子に接続されている。なお、図示しないバイアス回路が設けられ、トランジスタ23およびトランジスタ24のゲート端子に直流バイアス電圧が供給される。
【0025】
トランジスタ23のドレイン端子は電源電圧Vddに接続されており、トランジスタ23のソース端子はトランジスタ24のドレイン端子に接続されており、トランジスタ24のソース端子はトランジスタ25のドレイン端子に接続されており、トランジスタ25のソース端子はグランド電位に接続されている。トランジスタ25は、ドレイン端子とゲート端子とが接続され、カレントミラー回路の参照電流側トランジスタとして機能する。
【0026】
通常、nチャネルトランジスタは、ピンチオフ電圧以上の正電圧がゲート端子に印加されると、ドレイン・ソース端子間が導通する。従って、第1信号S1および第2信号S2がピンチオフ電圧以上の正電圧の時、トランジスタ23およびトランジスタ24がON状態になる。本回路構成では、トランジスタ23およびトランジスタ24がAND回路を形成しているため、第1信号S1および第2信号S2が両方ともピンチオフ電圧以上の正電圧の時だけ、トランジスタ25のドレイン端子に電源電圧Vddが供給されることになる。
【0027】
トランジスタ23およびトランジスタ24の両方がON状態の時間は、第1信号S1と第2信号S2との位相差に対応する。すなわち、2つの入力信号の位相差が小さい場合、両方ともON状態である時間は長くなり、2つの入力信号の位相差が大きい場合は、両方ともON状態である時間は短くなる。これにより、第1信号S1と第2信号S2との位相差の増減が、トランジスタ25のドレイン端子への電源電圧Vddの供給時間の増減に置き換えられる。
【0028】
トランジスタ25は、ゲート端子とドレイン端子とが接続されているため等価的にダイオードと見なすことができ、その結果、ドレイン端子に流れる電流に応じた電圧がゲート端子に得られる。前述のように、トランジスタ25のドレインには、第1信号S1と第2信号S2との位相差に応じて、電源電圧Vddが供給されるため、トランジスタ25のゲート端子から、第1信号S1と第2信号S2との位相差に応じた電圧を有する第13信号S13が出力される。具体的には、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなるにつれて小さくなる電圧を有する第13信号S13が、端子22から比較回路62へ出力される。
【0029】
比較回路62には、第7回路61から第13信号S13が入力されるとともに、図示せぬ外部回路から、所定の電圧を有する第14信号S14が入力される。比較回路62は、第13信号S13の電圧と第14信号S14の電圧とを比較して、第13信号S13の電圧が第14信号S14の電圧よりも小さいときにスイッチ回路57が閉じるようにスイッチ回路57を制御する第9信号S9を出力する。なお、比較回路62としては、よく知られた種々の比較回路を用いることができる。
【0030】
このようにして、第3回路6は、第1信号S1と第2信号S2との位相差が所定の値よりも大きいときにスイッチ回路57が閉じるようにスイッチ回路57を制御する第9信号S9を出力する。なお、第3回路6は、このような機能を有していればよく、他の回路構成でも構わない。例えば、トランジスタ7のドレイン端子から出力される第5信号S5の基本波成分の電力は、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなるにつれて小さくなる。よって、例えば、第5信号S5の基本波成分の電力を電力検波器で検波した電圧V1と第14信号S14の電圧とを比較して、電圧V1が第14信号S14の電圧よりも小さいときにスイッチ回路57が閉じるようにスイッチ回路57を制御する第9信号S9を出力するような第3回路6であっても構わない。
【0031】
第4回路9には、第2回路5から第7信号S7および第8信号S8が入力される。第4回路9は、入力された第7信号S7および第8信号S8を加算して第10信号S10を端子3へ出力する。このような第4回路9としては、例えば、入力された2つの信号の電圧を加算して出力する既知の加算回路を用いることができる。
【0032】
図3は、図1に示す本例の信号変換回路30から移相器17,第2回路5および第3回路6を取り除いた従来の信号変換回路40を示す回路図である。図4は、図3に示す従来の信号変換回路40における問題点を説明するためのグラフである。図4に示すグラフにおいて、横軸は第1信号S1と第2信号S2との位相差を示し、縦軸は信号変換回路40からの出力信号である第15信号S15の基本波成分の電力を示す。なお、この従来の信号変換回路40においては、第1信号S1がトランジスタ7のソース端子およびトランジスタ8のゲート端子にそのまま入力され、第2信号S2がトランジスタ7のゲート端子およびトランジスタ8のソース端子にそのまま入力される。そして、トランジスタ7およびトランジスタ8のドレイン端子からそれぞれ出力された信号がそのまま加算されて第15信号S15が出力される。
【0033】
図4に示すグラフから明らかなように、図3に示す従来の信号変換回路40においては、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって180°に近づいたときに急激に出力電力が低下するという問題が生じる。なお、図4に示すグラフは、第1信号S1および第2信号S2として、矩形波状の信号(完全な矩形波ではないがそれに近い波形を有する信号)を用いているため、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって180°に近づいたときに急激に出力電力が低下している。第1信号S1および第2信号S2の波形が、完全な矩形波から正弦波に近づくにつれて、出力電力の低下が生じる位相差が小さくなる。
【0034】
図5〜7は、この問題が生じるメカニズムを説明するための図である。図5〜7において、(a)は第1信号S1および第2信号S2の波形を示すグラフであり、(b)は第15信号S15の波形を示すグラフである。また、41は第1信号S1の電圧を示し、42は第2信号S2の電圧を示し、43は第15信号S15の電圧を示し、47はトランジスタ7,8のピンチオフ電圧を示す。また、それぞれのグラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。そして、図5は、第1信号S1と第2信号S2との位相差が小さいときの状態を示し、図6は、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって18
0°に近づいたときの状態を示し、図7は、第1信号S1と第2信号S2との位相差が180°を超えたときの状態を示す。なお、図5〜7においては、わかりやすくするために、第1信号S1および第2信号S2が正弦波である場合を示している。
【0035】
第1信号S1と第2信号S2との位相差が小さいときは、図5に示すように、第15信号S15の波高は充分に大きい。しかしながら、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって180°に近づくと、図6に示すように、第15信号S15の波高が小さくなってしまう。これにより、図4のグラフに示すように、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって180°に近づくと第15信号S15の基本波成分の電力が急激に低下するという問題が生じる。なお、第1信号S1と第2信号S2との位相差が180°を超えて大きくなると、図7に示すように、位相が180°異なるスプリアスが現れ、その波高が次第に大きくなる。これにより、図4に示すグラフに示すように、第1信号S1と第2信号S2との位相差が180°を超えて大きくなるにつれて、第15信号S15の基本波成分の電力が急激に増加する現象が生じる。
【0036】
図1に示す本例の信号変換回路30においては、第1回路4を有していることから、トランジスタ8に入力される第3信号S3と第4信号S4との位相差を、トランジスタ7に入力される第1信号S1と第2信号S2との位相差に対してφ3だけ大きくすることができる。そして、図4に示すグラフにおいて第15信号S15の基本波成分の電力が低下し始めるときの第1信号S1と第2信号S2との位相差をφ6としたときに、φ3の値を、φ3=180°−φ6を満足する値に設定する。これにより、トランジスタ7から出力される第5信号S5の波高が次第に小さくなって基本波成分の電力が低下するときに、波高が次第に大きくなる第6信号S6をトランジスタ8から出力することができる。そして、第2回路5によって、第5信号S5および第6信号S6の位相を等しくして第7信号S7および第8信号S8として出力し、第4回路9によって加算して第10信号S10として出力する。これにより、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなって180°に近づいたときの第10信号S10の基本波成分の電力低下を低減することができる。
【0037】
なお、第2回路5のスイッチ回路57が閉じるときの第1信号S1と第2信号S2との位相差は、図4に示すグラフにおいて第15信号S15の基本波成分の電力が低下し始めるときの第1信号S1と第2信号S2との位相差であるφ6に等しく設定する。これにより、必要なときだけ第7信号S7を第8信号S8に加算することができる。
【0038】
(実施の形態の第2の例)
図8は本発明の実施の形態の第2の例の信号変換回路を示す回路図である。なお、本例においては、前述した実施の形態の第1の例の信号変換回路30と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素には同じ参照符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
本例の信号変換回路50は、図8に示すように、第1回路4の端子13がトランジスタ7のゲート端子に接続されており、第1回路4の端子14がトランジスタ7のソース端子に接続されており、第1回路4の端子15がトランジスタ8のソース端子に接続されており、第1回路4の端子16がトランジスタ8のゲート端子に接続されている。そして、第1信号S1がトランジスタ7のゲート端子に入力され、第2信号S2がトランジスタ7のソース端子に入力され、第3信号S3がトランジスタ8のソース端子に入力され、第4信号S4がトランジスタ8のゲート端子に入力される。このような構成を備える本例の信号変換回路50も、図1に示す実施の形態の第1の例の信号変換回路30と同様に機能する。
【0040】
(実施の形態の第3の例)
図9は本発明の実施の形態の第3の例の増幅回路を示す回路図である。本例の増幅回路
80は、図9に示すように、図1に示した実施の形態の第1の例の信号変換回路30に加えて、第5回路31と、第6回路33と、トランジスタ63と、低域通過フィルタ回路65と、端子34,35とを有している。
【0041】
端子34には、図示せぬ外部回路から第11信号S11が入力される。本例の増幅回路80において、第11信号S11は、包絡線変動を有する信号である。第5回路31は、端子34に接続されており、第11信号S11が入力されて、第11信号S11の振幅の変化に応じて互いの位相差が変化する第1信号S1および第2信号S2を生成する。なお、本例の増幅回路80において、第1信号S1および第2信号S2は、互いに周波数の等しい矩形波状の定包絡線信号である。そして、第11信号S11の振幅が小さくなるにつれて、第1信号S1と第2信号S2との位相差が大きくなるように設定されている。そして、第5回路31は、第1信号S1を信号変換回路30の端子1へ出力し、第2信号S2を信号変換回路30の端子2へ出力する。このような第5回路31としては、公知の定包絡線信号生成回路を用いることができる。定包絡線信号生成回路であれば、どのような構成であっても良く、アナログ方式でもデジタル方式でも構わない。また、正弦波信号の矩形波状の信号への変換は、リミッタアンプ等を用いて容易に行うことができる。
【0042】
信号変換回路30は、第1信号S1および第2信号S2が入力されて、第1信号S1と第2信号S2との位相差に応じてデューティ比が変化する第10信号S10を端子3から出力する。
【0043】
トランジスタ63のゲート端子は、信号変換回路30の端子3に接続されており、図示せぬDCカットキャパシタを介して第10信号S10がゲート端子に入力される。また、トランジスタ63のゲート端子には、図示せぬバイアス回路から所定のバイアス電圧が加えられる。トランジスタ63のドレイン端子は、低域通過フィルタ回路65を介して電源電位Vddに接続される。トランジスタ63のソース端子は基準電位(グランド電位)に接続される。そして、トランジスタ63は、第10信号S10をスイッチング増幅した信号である第12信号S12をドレイン端子から第6回路33へ出力する。
【0044】
第6回路33は、LC直列共振回路26と、整合回路27とを有している。LC直列共振回路26はトランジスタ63のドレイン端子に接続されており、LC直列共振回路26と端子35とが整合回路27を介して接続されている。LC直列共振回路26は、互いに直列に接続されたインダクタおよびキャパシタによって構成されており、その共振周波数は、第11信号S11の基本波の周波数(第12信号S12の基本波の周波数と同じ)に略等しい値に設定されている。整合回路27は、インダクタおよびキャパシタによって構成されており、ローパスフィルタ型の整合回路となっている。このような構成を有する第6回路33は、信号変換回路30から第12信号S12が入力されて、第11信号S11の基本波の周波数の信号を主に出力する。
【0045】
このような構成を有する本例の増幅回路80は、入力される第11信号S11が包絡線変動を有する信号である場合においても、高効率で線形増幅して出力することができる。また、2つの入力信号の位相差が大きいときの出力電力の低下が低減された信号変換回路30を有していることから、入力される第11信号S11の振幅が小さいときの出力電力の低下が低減された高効率の増幅回路を得ることができる。なお、図1に示す実施の形態の第1の例の信号変換回路30の代わりに図8に示す実施の形態の第2の例の信号変換回路50を有する増幅回路80であっても良いことは言うまでもない。
【0046】
(実施の形態の第4の例)
図10は本発明の実施の形態の第4の例の送信装置を示すブロック図である。本例の送信装置は、図10に示すように、送信回路81と、図9に示した増幅回路80と、増幅回
路80を介して送信回路81に接続されたアンテナ82とを有している。このような構成を有する本例の送信装置によれば、送信回路81から出力された送信信号を、高効率の増幅回路80を用いて増幅してアンテナ82へ出力することができるので、消費電力が小さい送信装置を得ることができる。
【0047】
(実施の形態の第5の例)
図11は本発明の実施の形態の第5の例の通信装置を示すブロック図である。本例の通信装置は、図11に示すように、送信回路81と、第2の増幅回路80と、増幅回路80を介して送信回路81に接続されたアンテナ82と、アンテナ82に接続された受信回路83とを有している。また、アンテナ82と、増幅回路80および受信回路83との間にはアンテナ共用回路84が挿入されている。このような構成を有する本例の通信装置によれば、送信回路81から出力された送信信号を、高効率の増幅回路80を用いて増幅してアンテナ82へ出力することができるので、消費電力が小さい通信装置を得ることができる。
【0048】
(変形例)
本発明は前述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良が可能である。
【0049】
例えば、前述した実施の形態の第1の例の信号変換回路30および実施の形態の第2の例の信号変換回路50においては、第3信号S3の位相の第1信号S1の位相に対する遅延量φ1と、第7信号S7の位相の第6信号S6の位相に対する遅延量であるφ4とがともに0である場合を示したが、これに限定されるものではない。例えば、φ1=10°,φ3=1°,φ4=20°とする場合には、φ2=φ1+φ3=10°+1°=11°となり、φ5=180°+φ1+φ4=180°+10°+20°=210°となる。この場合には、端子11と端子15との間に移相量10°の移相器を新たに挿入し、端子53と端子54との間に移相量20°の移相器を新たに挿入するとともに、端子12と端子16との間に配置された移相器17の移相量を11°に設定し、端子51と端子52との間に配置された移相器56の移相量を210°に設定すればよい。
【実施例】
【0050】
次に、本発明の信号変換回路の具体例について説明する。図1に示した本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30および図3に示した比較例の信号変換回路40の電気特性をシミュレーションによって算出した。このシミュレーションにおいて、第1信号S1および第2信号S2は、周波数が730MHzで電力が0dBmの矩形波状の信号とした。移相器17における移相量φ2は、φ2=φ1+φ3=0+1°=1°とした。移相器56における移相量φ5は、φ5=180°+φ1+φ4=180°+0+0=180°に設定した。トランジスタ7,8,23,24,25は、NチャネルFETとした。
【0051】
その結果を図12のグラフに示す。グラフにおいて、横軸は、第1信号S1と第2信号S2との位相差であり、縦軸は、信号変換回路からの出力信号の基本波成分の電力である。また、実線は、図1に示した本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30の電気特性を示し、破線は、図3に示した比較例の信号変換回路40の電気特性を示す。図12に示すグラフによれば、比較例の信号変換回路40では、第1信号S1と第2信号S2との位相差が179°を超えた付近から急激に出力信号の基本波成分の電力が低下しているのに対して、本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30では、出力信号の基本波成分の電力の急激な低下が殆ど見られないことがわかる。これにより本発明の有効性が確認できる。
【0052】
さらに、図1に示した本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30に、図9に示
した第5回路31を加えた回路と、本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30の代わりに、図3に示した比較例の信号変換回路40を用いた回路とを作成して、その電気特性をシミュレーションした。
【0053】
その結果を図13のグラフに示す。グラフにおいて、横軸は、入力信号である第11信号S11の電力であり、縦軸は、信号変換回路からの出力信号の基本波成分の電力である。また、実線は、図1に示した本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30を用いたときの電気特性を示し、破線は、図3に示した比較例の信号変換回路40を用いたときの電気特性を示す。図13に示すグラフによれば、比較例の信号変換回路40を用いたときには、入力信号である第11信号S11の電力が−30dBよりも小さくなった付近から急激に出力信号の基本波成分の電力が低下して、入力信号の電力と出力信号の電力との間の線形性が低下している。これに対して、本発明の実施の形態の第1の例の信号変換回路30を用いたときには、出力信号の基本波成分の電力の急激な低下が見られず、入力信号の電力と出力信号の電力との間の線形性が改善されていることがわかる。これにより本発明の有効性が確認できた。
【符号の説明】
【0054】
7,8,23,24,25,63:トランジスタ
4:第1回路
5:第2回路
6:第3回路
9:第4回路
30,40,50:信号変換回路
31:第5回路
33:第6回路
80:増幅回路
81:送信回路
82:アンテナ
83:受信回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号および該第1信号に対して位相が等しいか又は遅れている第2信号が入力されて、前記第1信号と、前記第2信号と、前記第1信号の位相をφ1(φ1≧0)だけ遅延させた位相を有する第3信号と、前記第2信号の位相をφ2(φ2=φ1+φ3,φ3は所定の正の値)だけ遅延させた位相を有する第4信号とを出力する第1回路と、
前記第1信号および前記第2信号の一方がソース端子に入力されるとともに、前記第1信号および前記第2信号の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第5信号を出力する第1のトランジスタと、
前記第3信号および前記第4信号の一方がソース端子に入力されるとともに、前記第3信号および前記第4信号の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第6信号を出力する第2のトランジスタと、
前記第5信号および前記第6信号が入力されて、前記第6信号の位相をφ4(φ4≧0)だけ遅延させた位相を有する第7信号をスイッチ回路を介して出力するとともに、前記第5信号の位相をφ5(φ5=180°+φ1+φ4)だけ遅延させた位相を有する第8信号を出力する第2回路と、
前記第1信号と前記第2信号との位相差が所定の値よりも大きいときに前記スイッチ回路が閉じるように前記スイッチ回路を制御する第9信号を出力する第3回路と、
入力された前記第7信号および第8信号を加算して第10信号を出力する第4回路とを少なくとも有していることを特徴とする信号変換回路。
【請求項2】
請求項1に記載の信号変換回路と、
第11信号が入力されて、該第11信号の振幅の変化に応じて互いの位相差が変化する前記第1信号および前記第2信号を出力する第5回路と、
前記第10信号が直接または他の回路を介してゲート端子に入力されて、ドレイン端子から第12信号を出力するトランジスタと、
前記第12信号が入力されて、前記第11信号の基本波の周波数の信号を出力する第6回路とを少なくとも有していることを特徴とする増幅回路。
【請求項3】
送信回路と、請求項2に記載の増幅回路と、該増幅回路を介して前記送信回路に接続されたアンテナとを少なくとも有していることを特徴とする送信装置。
【請求項4】
送信回路と、請求項2に記載の増幅回路と、該増幅回路を介して前記送信回路に接続されたアンテナと、該アンテナに接続された受信回路とを少なくとも有していることを特徴とする通信装置。
【請求項1】
第1信号および該第1信号に対して位相が等しいか又は遅れている第2信号が入力されて、前記第1信号と、前記第2信号と、前記第1信号の位相をφ1(φ1≧0)だけ遅延させた位相を有する第3信号と、前記第2信号の位相をφ2(φ2=φ1+φ3,φ3は所定の正の値)だけ遅延させた位相を有する第4信号とを出力する第1回路と、
前記第1信号および前記第2信号の一方がソース端子に入力されるとともに、前記第1信号および前記第2信号の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第5信号を出力する第1のトランジスタと、
前記第3信号および前記第4信号の一方がソース端子に入力されるとともに、前記第3信号および前記第4信号の他方がゲート端子に入力されてドレイン端子から第6信号を出力する第2のトランジスタと、
前記第5信号および前記第6信号が入力されて、前記第6信号の位相をφ4(φ4≧0)だけ遅延させた位相を有する第7信号をスイッチ回路を介して出力するとともに、前記第5信号の位相をφ5(φ5=180°+φ1+φ4)だけ遅延させた位相を有する第8信号を出力する第2回路と、
前記第1信号と前記第2信号との位相差が所定の値よりも大きいときに前記スイッチ回路が閉じるように前記スイッチ回路を制御する第9信号を出力する第3回路と、
入力された前記第7信号および第8信号を加算して第10信号を出力する第4回路とを少なくとも有していることを特徴とする信号変換回路。
【請求項2】
請求項1に記載の信号変換回路と、
第11信号が入力されて、該第11信号の振幅の変化に応じて互いの位相差が変化する前記第1信号および前記第2信号を出力する第5回路と、
前記第10信号が直接または他の回路を介してゲート端子に入力されて、ドレイン端子から第12信号を出力するトランジスタと、
前記第12信号が入力されて、前記第11信号の基本波の周波数の信号を出力する第6回路とを少なくとも有していることを特徴とする増幅回路。
【請求項3】
送信回路と、請求項2に記載の増幅回路と、該増幅回路を介して前記送信回路に接続されたアンテナとを少なくとも有していることを特徴とする送信装置。
【請求項4】
送信回路と、請求項2に記載の増幅回路と、該増幅回路を介して前記送信回路に接続されたアンテナと、該アンテナに接続された受信回路とを少なくとも有していることを特徴とする通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−93810(P2013−93810A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236107(P2011−236107)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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