説明

信号検出回路

【課題】高い精度と安定性を有する、磁気センサの信号検出回路を提供する。
【解決手段】磁気センサの検出コイルの出力電圧が印加される作動増幅器と、前記差動増幅器の出力電圧に隣接する2つのスパイク状電圧が発生する期間は一方の論理レベルとなるデジタル信号を出力するコンパレータと、前記コンパレータが前記一方の論理レベルのデジタル信号を出力する期間、カウント動作を行うカウント回路と、を備えた信号検出回路であって、前記カウント回路は、所定周波数の第1クロックをカウントする第1カウンタと、前記第1クロックに対して周波数が同一で位相が異なる第2クロックをカウントする、前記第1カウンタのビット数と同一ビット数の第2カウンタと、前記第1カウンタ及び前記第2カウンタの各カウント値を加算する加算器と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
強磁性体の磁化特性が非線形であることを利用したフラックスゲート磁力計が知られている。フラックスゲート磁力計の構成の一例として、励磁コイル駆動回路、磁気センサ、磁気センサの信号検出回路とからなるものが知られている。(特許文献1参照)。
この磁気センサの信号検出回路は、励磁コイル駆動回路から入力される周期的なドライブ信号によって磁気センサ内の励磁コイルの磁束を周期的に飽和させ、その磁束密度変化によって、誘起された磁気センサ内の検出コイルの誘起電圧波形を検出する。外部磁場が印加されている場合、外部磁場の大きさに応じて、飽和時間間隔が変化するため、検出電圧波形の隣接間隔を磁気センサの信号検出回路内に組み込まれているカウンタによってカウントすることで外部磁場の方位などに関する情報を得ることが出来る。
【特許文献1】特開2007−78423
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、フラックスゲート磁力計は空間軸方向に対する複数の磁場測定を行うため、多数の方位データを取り扱う必要がある。よって外部磁場の情報を得るための、磁気センサの信号検出回路内に組み込まれるカウンタは、高精度のものが要求される。
しかし、同時に、磁気センサの信号検出回路には、高い精度と安定性が要求されるため、高精度のカウンタを用意するにあたり、カウンタの構成ビット数を増やすことや、クロック信号の周波数を高くすることは、ノイズの発生やコストアップ等の要因となり適さないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前述した課題を解決する主たる発明は、磁気センサの検出コイルの出力電圧が印加される作動増幅器と、前記差動増幅器の出力電圧に隣接する2つのスパイク状電圧が発生する期間は一方の論理レベルとなるデジタル信号を出力するコンパレータと、前記コンパレータが前記一方の論理レベルのデジタル信号を出力する期間、カウント動作を行うカウント回路と、を備えた信号検出回路であって、前記カウント回路は、所定周波数の第1クロックをカウントする第1カウンタと、前記第1クロックに対して周波数が同一で位相が異なる第2クロックをカウントする、前記第1カウンタのビット数と同一ビット数の第2カウンタと、前記第1カウンタ及び前記第2カウンタの各カウント値を加算する加算器と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、高い精度と安定性を有する、磁気センサの信号検出回路を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0007】
===フラックスゲート磁力計の構成===
図3に本発明の一実施形態として説明するフラックスゲート磁力計の構成を示している。同図に示すフラックスゲート磁力計1は、X軸、Y軸、Z軸の各軸に対応する3つの磁気センサ11、12、13を有している。これらの各磁気センサ11、12、13は、ナノ結晶軟磁性材料等の軟磁性材料からなる磁性体コア111、121、131に、励磁コイル112、122、132及び検出コイル113、123、133を巻回した構造からなる。励磁コイル112、122、132は、励磁側スイッチ回路21、非反転増幅器22、反転増幅器23、D/Aコンバータ24、及びD/Aコンバータ24の動作を制御する制御ロジック(以下、DAC制御ロジック25という)を含んで構成される励磁コイル駆動回路によって駆動される。また検出コイル113、123、133の出力電圧は検出側スイッチ回路31出力電圧を所定の電圧レベルに調節する電圧調整回路32、出力電圧を増幅する差動増幅器33、出力電圧に含まれる2つのスパイク状電圧の間の期間においてロウ(LOW)レベルのデジタル信号STOPを出力するヒステリシスコンパレータ34、及びヒステリシスコンパレータ34から出力されるデジタル信号STOPがロウレベルである期間におけるクロックCLKのパルス数をカウントするカウント回路35を含んで構成される信号検出回路によって処理される。尚、クロックCLKは、自走発振又は他走発振の何れであってもよい。
【0008】
制御回路41は、DAC制御ロジック25を制御する。制御回路41は、カウント回路35から入力されるカウント値を受信して、これを内部のメモリ411に記憶する。制御回路41には励磁側のスイッチ回路21及び検出側のスイッチ回路31の制御ライン51が接続しており、制御回路41は制御ライン51を通じてスイッチ21及びスイッチ31の開閉を制御する。制御回路41は、バスライン61を介してマイクロコンピュータ71(外部装置)と通信可能に接続しており、メモリ411に記憶しているカウント値をマイクロコンピュータ71に適宜送信する。
【0009】
===フラックスゲート磁力計の動作===
図4は本実施形態のフラックスゲート磁力計1の動作を示すタイミングチャートである。以下、同図に示すタイミングチャートとともに、フラックスゲート磁力計1の動作について説明する。なお、以下の説明において、励磁側スイッチ回路21及び検出側スイッチ回路31のすべての接点はあらかじめ開放(オフ)されているものとする。
【0010】
図4に示すように、まずマイクロコンピュータ71から制御回路41にバスライン61を介して測定開始信号が入力される(t1)。測定開始信号が入力されると、制御回路41は、次に励磁側スイッチ回路21及び検出側スイッチ回路31にX軸の接点をオンにするための信号(以下、X軸選択信号という)を出力する(t2)。X軸選択信号が入力されると、励磁側スイッチ回路21及び検出側スイッチ回路31は、X軸方向の磁場を測定するための磁気センサ11の励磁コイル112及び検出コイル113の接点をオンにする。このように、励磁側のスイッチ回路21によって、後述するドライブ信号P及びドライブ信号Nが印加される励磁コイル112、122、132が選択される。
【0011】
次に制御回路41は、DAC制御ロジック25にドライブ開始イネーブル信号を出力する(t3)。DAC制御ロジック25は、ドライブ開始イネーブル信号が入力されると、D/Aコンバータ24にDACデータが入力される。具体的には、まずDACデータとしてダウンカウントデータを入力する(t4〜t5)。このダウンカウントデータによって、非反転増幅器22や反転増幅器23等の回路素子に損傷を与えるような高圧の逆起電力が励磁コイル112に生じるのを防ぐための信号が、後述する昇圧期間の直前に付加される。次にDAC制御ロジック25は、D/Aコンバータ24から三角波の昇圧期間の信号が出力される(t5〜t8)。
【0012】
次にDAC制御ロジック25は、t8においてD/Aコンバータ24へのアップカウントデータの出力を停止し、今度はダウンカウントデータを出力する。これによりD/Aコンバータ24から三角波の降圧期間の信号が出力される(t8〜t11)。次にDAC制御ロジック25は、t11においてD/Aコンバータ24へのダウンカウントデータの出力を停止してアップカウントデータを出力する。このアップカウントデータによって、非反転増幅器22や反転増幅器23などの回路素子に損傷を与えるような降圧の逆起電力が励磁コイルに生じるのを防ぐための信号が、上記降圧期間の直後に付加される。
【0013】
D/Aコンバータ24のドライブ信号は、非反転増幅器22の非反転入力端子に供給される。D/Aコンバータ24のVref信号は、反転増幅器23の非反転入力端子に供給される。非反転増幅器22の反転入力端子には、非反転増幅器22の出力が負帰還されている。また反転増幅器23の反転入力端子には、非反転増幅器22の出力が入力されている。これにより非反転増幅器22からはD/Aコンバータ24の出力信号を増幅した、図4中実線で示す信号(以下、ドライブ信号Pという)が、また反転増幅器23からはドライブ信号Pの振幅を反転させた、図4中破線で示す信号(以下、ドライブ信号Nという)がそれぞれ出力される。
【0014】
非反転増幅器22から出力されたドライブ信号Pは、励磁コイル112の2つの端子のうちの1つに印加される。また反転増幅器23から出力されたドライブ信号Nは、励磁コイル112の2つの端子のうちのもう一端に印加される。従って、励磁コイル112には、ドライブ信号Pとドライブ信号Nの差分の電圧(以下、この電圧を励磁電圧という)が印加されることになる。
【0015】
図4に示すように、検出コイル113の端子間に生じるスパイク状電圧(t7、t10)は、磁気センサ11のB−H曲線(B:磁束密度、H:磁場)における非飽和区間において生じる起電力によるものである。t7、t10における2つのスパイク状電圧の時間間隔(Tx)は、磁気センサ11に印加される外部磁場ΔHに応じて変化する。つまり、2つのスパイク状電圧が出力される時間間隔(Tx)を測定することにより外部磁場ΔHの強度等に関する情報を得ることができる。
【0016】
検出コイル113に生じたスパイク状電圧は、電圧調整回路32によって所定の電圧レベルに変換された後、差動増幅器33に入力されて増幅される。差動増幅器33によって増幅された出力電圧は、ヒステリシスコンパレータ34に入力される。
【0017】
ヒステリシスコンパレータ34は、出力電圧に含まれる隣接するスパイク状電圧に挟まれる期間中にロウレベルとなり、それ以外の期間ではハイ(High)レベルとなるデジタル信号STOPを出力する。初期状態では、ヒステリシスコンパレータ34はハイレベルを出力している。そして、ヒステリシスコンパレータ34は、t6における励磁電圧の極性反転に起因して生じたスパイク状電圧が入力されたタイミングでロウレベルの出力を開始する(t7)。またヒステリシスコンパレータ34は、t9における励磁電圧の極性反転に起因して生じたスパイク状電圧が入力されたタイミングで出力をハイレベルに切り換える(t10)。
【0018】
ヒステリシスコンパレータ34から出力されたデジタル信号STOPは、カウント回路35に入力される。カウント回路35にはクロックCLKが入力されており、カウント回路35は、ヒステリシスコンパレータ34から出力されるデジタル信号STOPがロウレベルになっている期間におけるクロックCLKのパルス数をカウントする。デジタル信号STOPがハイレベルとなってパルス数のカウントが終了すると、カウント回路35は、カウント値を制御回路41に出力する。制御回路41は、入力されたカウント値をメモリ411に記憶する。
【0019】
次に制御回路41は、DAC制御ロジック25に入力しているドライブ開始イネーブル信号をオフする(t13)。また制御回路41は、励磁側スイッチ回路21及び検出側スイッチ回路31へのX軸選択信号の入力を停止する(t14)。これによりX軸方向の磁場を測定するための磁気センサ11の励磁コイル112及び検出コイル113の接点がオフされる。
【0020】
次に制御回路41は、励磁側スイッチ回路21及び検出側スイッチ回路31にY軸の接点をオンにする信号(以下、Y軸選択信号という)を送信する(t15)。これによりY軸についての処理が開始される。なお、t15〜t16の期間に行われるY軸についての処理は、X軸の場合と同様に行われる。またt17〜t18の期間に行われるZ軸についての処理についてもX軸の場合と同様に行われる。
【0021】
以上によりX軸、Y軸、Z軸のそれぞれについてのカウント値がメモリ411に記憶されると、次に制御回路41はカウント値の書き込みが終了した旨を通知する割込み信号をマイクロコンピュータ71に送信する(t19)。マイクロコンピュータ71は、割込み信号を受信すると、制御回路41に読み出し要求を送信する。これにより制御回路41のメモリ411に記憶されているX軸、Y軸、Z軸のそれぞれについてのカウント値がマイクロコンピュータ71によって読み出される(t20)。なお、マイクロコンピュータ71に送信されたカウント値はマイクロコンピュータ71内部の演算部(不図示)によって適宜演算処理され、例えば方位を示すための方位データを得ることができる。
【0022】
ところで本実施形態のフラックスゲート磁力計1は、カウント回路35でクロックのパルス数をカウントすることにより2つのスパイク状電圧の時間間隔(Tx、Ty、Tz)を測定するため、積分回路等のアナログ回路を用いた場合に比べて高精度の測定が可能である。
【0023】
===カウント回路35の構成===
図1は、本発明の磁気センサの信号検出回路に用いられるカウント回路の構成例を示すブロック図である。カウント回路35は、ANDゲート(ゲート回路)351と、第1カウンタ352と、第2カウンタ353と、加算器354を有する。
【0024】
ANDゲート351は、一方の入力端子にクロックCLKが入力され、他方の入力端子にヒステリシスコンパレータ34から出力されるデジタル信号STOPが反転入力される。つまり、ANDゲート351は、デジタル信号STOPがロウレベルのときにクロックCLKを出力する。
【0025】
第1カウンタ352は、nビットからなるカウンタであり、リセット端子R1と、クロック端子CLK1と、出力端子Q1とを有する。リセット端子R1にはデジタル信号STOPが入力され、クロック端子CLK1にはANDゲート351から出力されるクロックCLKが第1クロックとして入力される。つまり、第1カウンタ352は、デジタル信号STOPがハイレベルのとき、リセット端子R1がハイレベルとなることによりリセットされ、第1クロックのカウントが禁止される。一方、第1カウンタ352はデジタル信号STOPがロウレベルのとき、リセット端子R1がロウレベルとなることによりリセット解除され、第1クロックの立ち上がりをカウントし、そのカウント結果であるnビットのカウント値を出力端子Q1から出力する。
【0026】
第2カウンタ353は、nビットからなるカウンタであり、リセット端子R2と、クロック端子CLK2と、出力端子Q2とを有する。リセット端子R2にはデジタル信号STOPがリセット端子R1と共通に入力され、クロック端子CLK2にはANDゲート351から出力されるクロックCLKを反転したクロックが第2クロックとして入力される。つまり、第2カウンタ353は、デジタル信号STOPがハイレベルのとき、リセット端子R2がハイレベルとなることによりリセットされ、第2クロックのカウントが禁止される。一方、第2カウンタ352は、デジタル信号STOPがロウレベルのとき、リセット端子R2がロウレベルとなることによりリセット解除され、第2クロックの立ち上がりをカウントし、そのカウント結果であるnビットのカウント値を出力端子Q2から出力する。
【0027】
ここで、第1クロック及び第2クロックは互いに反転した逆相の関係にあるため、第2クロックの立上がりは第1クロックの立下がりである。つまり、デジタル信号STOPがロウレベルの期間、第2カウンタ353が第2クロックの立上がりをカウントする動作は第1クロックの立下がりをカウントする動作と等価である。
【0028】
加算器354は、第1カウンタ352及び第2カウンタ353から各々出力されるカウント値を加算して出力するものである。
【0029】
===カウント回路35の動作===
図2は、図1に示すカウント回路の動作を示すタイミングチャートである。
以下、図2のタイミングチャートを基に図1に示すカウント回路35の動作について説明する。尚、説明の便宜上、第1カウンタ352及び第2カウンタ353各々のビット数n=3として説明を行う。
【0030】
先ず、時刻T0においてデジタル信号STOPがハイレベルからロウレベルへ立下がって変化したものとする。つまり、時刻T0までは、デジタル信号STOPがハイレベルであるため、第1カウンタ352及び第2カウンタ353ともにリセットされてカウント動作を禁止されており、第1カウンタ352の出力端子Q1及び第2カウンタ353の出力端子Q2から各々出力される3ビットデータはともに“000”のままである。
【0031】
そして、時刻T0以後、第1カウンタ352及び第2カウンタ353は、デジタル信号STOPがロウレベルとなることによりリセット解除される。つまり、第1カウンタ352はその後入力される第1クロックの立上がりを順次カウントし、一方、第2カウンタ353はその後入力される第2クロックの立上がりを順次カウントすることとなる。
【0032】
従って、第1カウンタ352は、第1クロックが立上がる時刻T1、T2、T3、T4、T5、T6・・・のタイミングで3ビットのカウント値を+1ずつインクリメントし、一方、第2カウンタ353は、第2クロックが立上がる時刻T1’、T2’、T3’、T4’、T5’・・・のタイミングで3ビットのカウント値を+1ずつインクリメントしていく。
つまり、第1カウンタ352から出力される3ビットのカウント値は第1クロックの立上がりを基点として1周期単位で+1ずつ変化し、第2カウンタ353から出力される3ビットのカウント値は第2クロックの立上がりを基点として1周期単位で+1ずつ変化する。換言すると、第1カウンタ352及び第2カウンタ353のカウント値の何れか一方は、常にクロックCLKの半周期単位で変化することとなる。加算器354は、クロックCLKの半周期単位で変化する第1カウンタ352及び第2カウンタ353のカウント値を加算するため、加算器354自体の加算結果もクロックCLKの半周期単位で+1ずつインクリメントされることとなる。
【0033】
例えば、時刻T3−T4’の間における第1カウンタ352及び第2カウンタ353のカウント値を取り上げて具体的に説明する。
【0034】
時刻T3においては、第1クロックの立上がりタイミングであるため、第1カウンタ352はインクリメント動作を行い、第1カウンタ352のカウント値は“010”から“001”へ変化する。このカウント値は時刻T4で第1クロックが再び立上がるまで保持される。一方、第2クロックは立下がるため、第2カウンタ353はカウントを行わず、そのカウント値は“010”のままである。従って、このとき加算器354から出力される加算値は“0101”となる。
【0035】
次に、時刻T3’においては、第2クロックの立上がりタイミングであるため、第2カウンタ353はインクリメント動作を行い、第2カウンタ353のカウント値は“010”から“011”へ変化する。このカウント値は時刻T4’で第2クロックが再び立上がるまで保持される。一方、第1クロックは立下がるため、第1カウンタ352はカウントを行わず、そのカウント値は“011”のままである。従って、このとき加算器354から出力される加算値は“0110”となる。
【0036】
次に、時刻T4においては、第1クロックの立上がりタイミングであるため、第1カウンタ352はインクリメント動作を行い、第1カウンタ352のカウント値は“011”から“100”へ変化する。このカウント値は時刻T5で第1クロックが再び立上がるまで保持される。一方、第2クロックは立ち下がるため、第2カウンタ353はカウントを行わず、そのカウント値は“011”のままである。従って、このとき加算器354から出力される加算値は“0111”となる。
【0037】
次に時刻T4’においては、第2クロックの立上がりタイミングであるため、第2カウンタ353はインクリメント動作を行い、第2カウンタ353のカウント値は“011”から“100”へ変化する。このカウント値は時刻T5’で第2クロックが再び立上がるまで保持される。一方、第1クロックは立下がるため、第1カウンタ352はカウントを行わず、そのカウント値は“100”のままである。従って、このとき加算器354から出力される加算値は“1000”となる。
【0038】
このように、クロックCLKの周波数を変更せずに使用することで、加算器354から、クロックCLKの半周期ごとに変化する4ビットの加算値を得ることができる。つまり、第1カウンタ352及び第2カウンタ353のビット数が各々3ビットであるにも関わらず、クロックCLKを用いることで、あたかも4ビットカウンタにクロックCLKの2倍の周波数のクロックを用いてカウント動作させたのと同等のカウント結果を得ることができる。従って、加算器354から得られる加算値は第1カウンタ352及び第2カウンタ353の各カウント値よりも1ビット多いことから、第1カウンタ352及び第2カウンタ353の各情報量に比べて2倍の情報量を有することとなる。
【0039】
加算器354から出力される4ビットの加算値、即ちカウント回路35から出力される4ビットのカウント値は、制御回路41内部のメモリ411に記憶された後にマイクロコンピュータ71に送信され、当該カウント値に相当する方位データを得るための演算処理が実行される。
【0040】
ここで、図5は方位データに基づき特定される方位を示す図である。尚、カウント回路35から出力されるカウント値が仮に3ビットである場合、8種類の方位データを求めることができ、この方位データに基づき得られる方位を実線のベクトルで示す。ところが、本実施形態においては、カウント回路35から出力されるカウント値は4ビットであって16種類の方位データを求めることができるため、この方位データに基づき得られる方位として、実線のベクトルに加え、当該実線の隣接するベクトルの中間を埋める破線のベクトルで示す方位を得ることができる。従って、クロックCLKの周波数を変更することなく、フラックスゲート磁力計の方位の測定にかかる分解能を2倍の精度に向上させることが可能となる。これはn=3の場合に限定されるものではなく、カウント値のビット数が1ビット増加することにより、当該カウント値から得られる情報量が2倍に増加することに起因するものである。
【0041】
以上より、本発明の信号検出回路によれば、クロックCLKの周波数を変更することなく、2個のnビットのカウンタと加算器を用意することで、n+1ビットのカウンタをクロックCLKの周波数よりも高い周波数のクロックでカウントしたのと等価の結果を得ることができる。そのため、フラックスゲート磁力計において、方位に関して2倍の情報量を有する方位データを得ることができる。この際、クロックCLKの周波数をそのまま使用できるため、クロックのための新たな発振源を用意する必要がなく、また、クロック周波数を高くしないためノイズの発生を抑えてフラックスゲート磁力計の誤動作を防止し、正確な方位データを求めることができる。更に、クロックCLKの周波数を変更せずに、フラックスゲート磁力計の方位の測定にかかる分解能を2倍の精度に向上させることができる。
【0042】
また、第1クロック及び第2クロックは互いに逆相であって、カウント回路35から出力されるカウント値は第1クロック及び第2クロックの半周期単位でインクリメントされる。つまり、カウント回路35から出力されるカウント値は常に同一間隔で変化するため、制御回路41内のメモリ411に確実に記憶され、マイクロコンピュータ71による方位を求めるための演算処理が正確なものとなる。
【0043】
また、第2クロックは第1クロックを反転させたクロックである。つまり、2つの第1及び第2クロックを発生するため、他走発振の場合には1つのクロックCLKを用意すればよく、自走発振の場合には1個の発振回路を用意すればよく、これにより部品点数を減らすことができる。特に本発明の信号検出回路を集積化する場合、第1及び第2クロックを得るために、他走発振のクロックCLKを使用する際にはクロック入力端子が1端子で済み、自走発振のクロックCLKを使用する際には1個の発振回路を用意すればよく、これに伴い、チップ面積を減らすことができる。
【0044】
また、クロックCLKと第1カウンタ352及び第2カウンタ353の入力の間にANDゲート351を介在させたことから、第1カウンタ352及び第2カウンタ353がカウントを行う期間を正確に定めることができる。よってマイクロコンピュータ71は正確なカウント値に相当する方位データに基づいて方位を正確に定めることができる。
【0045】
===その他の実施形態===
以上、本発明にかかる一実施形態につき説明したが、上記の実施形態の説明は、本発明の理解を容易とするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0046】
例えば、図1の構成例では、入力クロックはクロックCLKのみであったが、それに限定されるものではない。逆相の状態にある独立した第1クロック及び第2クロックを第1カウンタ、第2カウンタの各々に入力してもよい。また、第1クロック及び第2クロックを独立したクロックとする場合、上記の逆相のみならず、周期が同じであれば位相が逆相以外で異なっているだけでもよく、第1カウンタ及び第2カウンタはそれぞれ、第1クロックの立上がりと第2クロックの立上がり、第1クロックの立上がりと第2クロックの立下がり、第1クロックの立下がりと第2クロックの立上がり、第1クロックの立下りと第2クロックの立下がりの組み合わせでカウントを行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の磁気センサの信号検出回路に用いられるカウント回路の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示すカウント回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の一実施形態として説明するフラックスゲート磁力計の構成を示す図である。
【図4】本実施形態のフラックスゲート磁力計の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】方位データに基づき特定される方位を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
33 差動増幅器
34 コンパレータ
35 カウント回路
351 ANDゲート
352 第1カウンタ
353 第2カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサの検出コイルの出力電圧が印加される差動増幅器と、
前記差動増幅器の出力電圧に隣接する2つのスパイク状電圧が発生する期間は一方の論理レベルとなるデジタル信号を出力するコンパレータと、
前記コンパレータが前記一方の論理レベルのデジタル信号を出力する期間、カウント動作を行うカウント回路と、を備え、
前記カウント回路は、
所定周波数の第1クロックをカウントする第1カウンタと、
前記第1クロックに対して周波数が同一で位相が異なる第2クロックをカウントする、前記第1カウンタのビット数と同一ビット数の第2カウンタと、
前記第1カウンタ及び前記第2カウンタの各カウント値を加算する加算器と、を有する
ことを特徴とする信号検出回路。
【請求項2】
前記第1クロック及び前記第2クロックは逆相であり、
前記第1カウンタは前記第1クロックの一方の論理レベルから他方の論理レベルへの変化をカウントし、
前記第2カウンタは前記第2クロックの前記一方の論理レベルから前記他方の論理レベルへの変化をカウントする、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号検出回路。
【請求項3】
前記第2クロックは前記第1クロックの反転クロックである、
ことを特徴とする請求項2に記載の信号検出回路。
【請求項4】
前記第1カウンタ及び前記第2カウンタに対する前記第1クロック及び前記第2クロックの入力を一定期間許可するゲート回路、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の信号検出回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−292325(P2008−292325A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138401(P2007−138401)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】