説明

信号機

【課題】信号機からの光を必要な方向にのみ配光し、光を有効利用して低消費電力かつ高輝度の交通用信号機および鉄道用信号機を提供する。
【解決手段】レーザ光を用いて指向性の高い信号機を実現するとともに、エッジライト導光板の偏向溝の形状を工夫することにより所望の配光とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源としてレーザ光を使用した交通信号機および鉄道用信号機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路交通用信号機や鉄道用信号機としては、椀状の反射鏡内に白熱電球を内蔵し、反射鏡の投光開口端を閉じる投光性カバーを青色、黄色、赤色に着色したものが用いられてきた。近年、発光ダイオード(以下LED)の高輝度化に伴い、これらの信号機の光源には発光効率がよく、長寿命のLEDが用いられるようになってきた。
【0003】
このような信号機において、特に鉄道用信号機では、信号機から出射する光の指向性が求められる。これは、トンネル内などでは信号機の光が散乱すると、目的のレーン以外でも信号を現示しているように見える危険があるためである。
【0004】
このような課題に対して、視野角を狭くした信号機が提案されている。例えば特許文献1には、LED光源の前に小さい穴径を有するブリンカー(目隠し)を設け、正面に出射した光のみを通過させる構成としている。
【0005】
また、交通用信号機では消費電力を抑えるとともに、自動車の運転手からみて必要な輝度を確保するために、信号機の配光指向性が必要とされる。ただし、交通用信号機では正面方向の他、下方向へも配光する必要があり、信号機から見て上下非対称な配光特性とするのが望ましい。
【0006】
このような課題に対して例えば特許文献2では、投光光学系の焦点位置から光源を上方向にずらすとともに光源位置を調整可能とし、やや下向きに光を照射する構成としている。
【特許文献1】特開2006−142850号公報
【特許文献2】特開平6−349307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成では、正面以外に出射する光を遮光しているだけであるので、遮光された光は有効に利用されていない。また、特許文献2に記載の構成では、左右方向の配光特性について記載されていない。すなわち、左右方向の視野角を狭くすれば、信号機の下付近の道路脇からは信号が見えにくいという課題が生じ、逆に左右方向の視野角を広くすれば、信号機から遠方では道路から離れた所まで照明されるので、光の利用に無駄が生じるとともに、近隣の住民にとっても迷惑である。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、信号機からの光を必要な方向にのみ配光し、光を有効利用して低消費電力かつ高輝度の交通用信号機および鉄道用信号機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の信号機は、レーザ光を出射する光源と、上記光源から出射した光を面状に広げて出射する面発光部と、上記光源からの光を上記面発光部に導く光ファイバと、上記光源の発光、消灯を制御する信号制御部とを備えた構成とする。
【0010】
このように構成することにより、指向性が高く、高輝度で低消費電力の信号機が実現できる。また光源を発光部と離れた位置に配置できるため、光源の取替え等のメンテナンスが容易である。
【0011】
このとき、面発光部は、光ファイバから出射したレーザ光を線状に広げて出射する線状導光部と、上記線状導光部から出射したレーザ光を側面から入射させ一方の主面から出射する導光板とを備え、上記線状導光部は、略平行な光を出射するように構成され、上記導光板は、上記一方の主面の対向面に、入射光を前記一方の主面に向けて偏向する偏向溝を有し、上記偏向溝は光が入射する入射面に対して平行に形成する。このように構成することにより高い指向性が得られ、トンネル内等で誤認を防ぐ鉄道用信号機として有用である。
【0012】
あるいは、面発光部は、光ファイバから出射したレーザ光をリング状の光線に変換するリング状導光部と、上記リング状導光部から出射したレーザ光を外周側面から入射させ一方の主面から出射する円形の導光板とを備え、上記リング状導光部は、内周側面から中心に向かって光を出射するように構成する。このように構成しても高い指向性が得られ、鉄道用信号機として有用である。
【0013】
また、面発光部は、導光板の上記一方の主面に隣接してシリンドリカルレンズアレイを備え、上記シリンドリカルレンズアレイで上記導光板から出射した光を1次元方向に拡散させる構成とする。このように構成すると交通用信号機として用いることができる。
【0014】
あるいは、導光板の偏向溝は、偏向面が曲面で形成され、上記偏向面は上記一方の主面に対する傾斜角が0度から45度の間で徐々に変化するように構成する。このように構成しても交通用信号機として用いることができる。
【0015】
あるいは、導光板の偏向溝は、偏向面の上記一方の主面に対する傾斜角が異なる多種類の偏向溝から構成され、各偏向溝の偏向面は、上記一方の主面に対する傾斜角が0度から45度の間で構成する。このように構成しても、交通用信号機として用いることができる。
【0016】
さらに、偏向溝の偏向面に、上記偏向面が曲率を有する方向と直交する方向に光を拡散させる拡散溝を有し、上記拡散溝は、上記偏向面の上記一方の主面に対する傾斜角が小さくなるほど広く拡散するように構成する。このように構成すると、交通用信号機として用いる場合に、道路に沿った領域にのみ信号の光を配光できるので、信号から出射する光を有効に利用でき、さらに高輝度、低消費電力の信号機が実現できる。
【0017】
あるいは、偏向溝の偏向面は、前記偏向面が上記一方の出射面に対して傾斜する方向と直交する方向に曲率を有し、上記偏向面の上記一方の主面に対する傾斜角が小さくなるほど広く拡散するように構成する。このように構成しても、交通用信号機として用いる場合に、道路に沿った領域にのみ信号の光を配光できるので、信号から出射する光を有効に利用でき、さらに高輝度、低消費電力の信号機が実現できる。
【0018】
また、同じ波長のレーザ光を出射する少なくとも2つのレーザ光源と、上記少なくとも2つのレーザ光源の発光、消灯を独立に制御する信号制御部と、上記少なくとも2つのレーザ光源から出射したレーザ光をそれぞれ入射させ、面状に広げて出射する面発光部と、を有し、上記少なくとも2つのレーザ光源から出射したレーザ光は、上記面発光部からそれぞれ異なる角度で指向性を有して出射するように構成する。このように構成すると、通用信号機として用いる場合に、信号機と車の距離に応じて独立して信号の表示を行うことができ、交通の安全性あるいは円滑性を向上させることができる。
【0019】
このとき、導光板は、両側の側面からレーザ光が入射するように構成され、上記導光板の偏向溝は、光が入射する方向に応じてそれぞれ異なる角度で偏向する、2つの偏向面を有するように構成する。このように構成すると、異なる別々の方向に独立して信号表示を行える信号機が実現できる。
【0020】
また、出射する光が直線偏光、あるいは円偏光となるように構成する。このように構成すると、運転手が偏光フィルタを併せて用いれば、太陽の影響を低減して信号機の視認性を向上させることができる。
【0021】
さらに、面発光部は、出射する光の偏光がその他の領域から出射する光の偏光と直交する領域を有し、上記領域は、上記面発光部から出射する光の色に応じた所定の記号の形状となるように構成する。このように構成すると、偏光眼鏡等を用いれば、色覚異常者にも信号の認識が容易になり、誤認を防ぐことができる。
【0022】
また、面発光部は、光ファイバから出射したレーザ光を均一に広げる発散素子と、上記発散素子から出射したレーザ光に所定の配光特性を持たせるコリメート素子を備えた構成とする。このように構成すると、高い指向性が得られるため、鉄道用信号機として用いることができる。
【0023】
また、上記レーザ光源は、赤色と緑色のレーザ光を出射するレーザ光源を有し、黄色信号の面発光部には、上記赤色レーザ光と緑色レーザ光を導くように構成する。このように構成すると、黄色に発光する表示を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高輝度で低消費電力の信号機が実現できる。また、指向性の高い鉄道用信号機が実現できるので、目的のレーン以外で信号を誤認する危険性を低減できる。さらに、併せて偏光フィルタを用いることにより、背景に太陽がある場合の視認性を向上させる、あるいは、色覚異常者の信号の誤認を防ぐ等、交通用信号機としても大きな効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合もある。また、図面は、理解しやすくするためにそれぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、形状等については正確な表示ではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態における信号機10の概略構成を示しており、(a)は概略構成図、(b)は(a)の1C−1C線から見た断面図を示している。
【0027】
図1(a)(b)に示すように本実施の形態の信号機10は、光源部11と信号表示部12から構成され、光源部11から出射した光を光ファイバ13で信号表示部12に導くように構成している。光源部11は、レーザ光源14と、少なくともレーザ光源14の発光/消灯を制御する信号制御部15と、レーザ光源14から出射するレーザ光16を光ファイバ13に導く集光レンズ17を備えた構成であり、信号表示部12は光ファイバ13から出射した光をコリメートするコリメートレンズ18と、入射端面19aから入射した光を側面19bから出射させて線状の光に変換する導光棒19と、入射端面20aから入射した光を一方の主面20bから出射する導光板20と、導光板20に隣接して配置された反射シート21を備えた構成である。図示は省略するが、同じ構造の構成が信号色ごとに用意され、同じ光源部11、および同じ信号表示部12の内部に配置され、それぞれ別々の光ファイバ13で各信号色の光源と発光部がつながれている。
【0028】
ここで、レーザ光源14は信号色、あるいは、光の加法昆色により信号色を表示できる波長のレーザ光を出射するように構成されている。具体的には、赤信号には赤色レーザ光源、青信号には青または緑色レーザ光源が使用され、黄信号の場合は、赤色および緑色レーザ光源から出射するレーザ光が昆色されるように構成される。
【0029】
また、導光棒19の側面19bの対向面には、入射光を全反射して略90度偏向するように構成された偏向溝19cが設けられており、略平行に入射した光を線状の平行光に変換して出射するように構成されている。さらに、導光棒19から出射する光の光量分布が側面19bの長手方向中央付近に多く集まるように、偏向溝19cの間隔あるいは深さの分布が設定されている。
【0030】
また、導光板20の一方の主面20bの対向面20cには、入射光を全反射させて一方の主面20bに向けて偏向する偏光溝20dが設けられている。この偏向溝20dは入射端面20aに対して平行に設けられており、略平行に入射した光を平行のまま偏向して出射するように構成されている。さらに、偏向溝20dは発光させる領域に合わせて円形の領域に形成されている。
【0031】
なお、偏向溝20dが形成される領域は対向面20cの全面でもよく、この場合は、導光棒19から出射する光が均一となるように構成される。
【0032】
このように構成された信号機10において、レーザ光源14から出射されるレーザ光16は集光レンズ17、光ファイバ13、コリメートレンズ18を経由して信号表示部12内部の導光棒19に平行光で入射し、偏向溝19cで偏向されて側面19bから略平行光で出射する。導光棒19を出射したレーザ光16は、同様に導光板20に略平行光で入射し、偏向溝20cで偏向されて一方の主面20bから略平行光で出射する。この導光板20から出射するレーザ光16は略平行な光であり、極めて指向性の高い光となる。
【0033】
以上、説明したように、本実施の形態ではレーザ光源を用いることにより、簡単な構成で極めて高い指向性を有する信号機を実現することができる。このような指向性の高い信号機は、例えばトンネルの内部に配置した場合に、信号機からの光がトンネルの壁面で反射して散乱するのを低減できるため、特に鉄道用信号機として用いれば、誤認の危険性の少ない信号機として有用である。
【0034】
さらに、信号機から出射する不要な光を遮光して指向性を高める方式と異なり、出射する光をすべて有効に使えるため、高輝度あるいは低消費電力の信号機が実現できる。
【0035】
また、レーザ光源を用いることにより、光ファイバを用いて効率よく光を導くことができるので、光源部11を信号表示部12と離れた位置に配置することができる。従来の信号機は高所に設置されることが多く、光源の交換などのメンテナンスが容易でないという課題があるが、本実施の形態の信号機は光源部11を作業し易い場所に配置する、あるいは、複数の信号機の光源部を1カ所に集める等の構成が可能であり、メンテナンスが容易である。
【0036】
なお、図1に示した本実施の形態では、光ファイバ13から出射したレーザ光16を導光棒19および導光板20を用いて面状に拡げる構成としたが、拡散素子を用いて均一にレーザ光を拡げる構成としてもよい。
【0037】
図13は拡散素子を用いた構成を示しており、光ファイバ13から出射したレーザ光16を拡散素子51を用いて均一に拡げ、反射板52で折り返してフレネルレンズ53で略平行な光に変換するように構成している。このように構成しても簡単な構成で指向性の高い出射光が得られる。
【0038】
また、本実施の形態では、信号機の正面方向に指向性の高い光が出射する構成としたが、導光板20の偏向溝20dの偏向面を曲面にする、あるいは、信号機の前面にシリンドリカルレンズアレイを配置することにより、配光範囲を正面方向から下方向までの範囲に広げることができ、交通用信号機としても有効に利用することができる。
【0039】
図2は偏向面を曲面にした場合の偏向溝20dの拡大図を示しており、この偏向溝20dは一方の主面20bに対する傾斜角が0度から45度までの間で徐々に変化するように構成されている。このように構成すると、偏向溝20dで偏向された光は信号機の正面方向と下方向の間の範囲に出射し、上方向および左右方向の不要な方向に光が出射しないので、光の利用効率の高い交通用信号機が実現できる。
【0040】
あるいは、偏向面の一方の主面20bに対する傾斜角が異なる多種類の偏向溝をランダムに高密度に配置しても同様な効果が得られる。
【0041】
また、図3はシリンドリカルレンズアレイ22を用いた信号表示部12の断面図を示している。この図において、導光板20はやや下向きに略平行な光が出射するように構成されており、シリンドリカルレンズアレイ22により導光板20から出射した光を上下方向に拡散するように構成している。このように構成しても、上方向および左右方向の不要な方向に光が出射しないので、光の利用効率の高い交通用信号機が実現できる。
【0042】
なお、本実施の形態では導光板の形状を四角形としたが、導光板の形状が円形であってもよい。図4は円形の導光板を用いた信号機の概略構成図を示しており、(a)は概略構成図、(b)は(a)の4C−4C線から見た断面図を示している。
【0043】
図4(a)(b)に示すように、この実施形態では、光源部11および光ファイバ13は図1に示した構成と同じであり、信号表示部12はリング状導光体24と、円形導光板25を備えた構成となる。
【0044】
ここでリング状導光体24は、リング状の導光路の一部に設けられた入射端面24aから光を入射させ、リング状の導光体24の内部を伝搬させながら外周部に設けられた偏光溝24cにより偏向し、リングの中央に向かって光を出射するように構成されている。
【0045】
また、円形導光板25は、円錐形状に形成され外周の側面25aから光を入射させて一方の主面25bから出射するように構成されている。一方の主面25bの対向面には入射光を全反射により偏向する偏向溝25dが同心円状に形成されている。
【0046】
なお、円形導光板25の断面が屈曲しているのは、出射光の指向性を保ったまま、偏向溝25dにおける反射角を大きくするためである。これは、反射角を大きくし、余裕を持って全反射条件を満たすように構成することにより、光束のばらつき等により偏向溝25dで全反射せずに背面に透過してしまう光を低減するためである。
【0047】
以上のように構成しても、指向性が高く、光の利用効率も高い信号機が実現でき、鉄道用信号機として有用である。また、図2に示した構成のようにシリンドリカルレンズアレイ22を併せて用いれば、交通用信号としても有用である。
【0048】
(実施の形態2)
本実施の形態において、図1に示した実施の形態1と異なるのは導光板の偏向溝のみであるので、その他の構成要素については実施の形態1と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0049】
図5は本実施形態の信号表示部12の概略構成図であり、(a)は信号表示部の断面図、(b)は導光板の偏向溝の概略斜視図を示している。
【0050】
図5(a)(b)に示すように本実施の形態の導光板20の偏向溝20dは図中Y方向に曲率を有する曲面で構成されており、図2に示した構成と同様に、一方の主面20bに対する傾斜が0度から45度の間で徐々に変化するように形成されている。
【0051】
さらに偏向溝20dには、偏向面にレーザ光16を図中X方向に散乱させる細かい溝20eが形成されており、この溝20eは偏向面の一方の主面20bに対する傾斜が小さくなるほど細かくなるように構成されている。
【0052】
このように構成された偏向溝20dに、図中Y方向に進行する略平行なレーザ光16が入射すると、偏向溝20dの偏向面の傾斜角に応じてそれぞれYZ平面内の反射角が変わり、例えば、出射光26a、26b、26cとなる。このとき出射光26a、26b、26cは溝20eによりさらにX方向に散乱され、その散乱度合いは出射光26a、出射光26b、出射光26cの順で大きくなる。
【0053】
なお、このような出射光は、図6に示すようなY方向に傾斜し、X方向に曲率を有する複数種類の偏向溝を有する導光板を用いても実現できる。図6に示す偏向溝20dは、一方の主面20bに対する傾斜角が小さくなるほど、X方向の曲率半径が小さくなるように構成されており、個々の溝がそれぞれ異なる方向に偏向させるように構成しているが、このような溝を高密度に配置しても図5(b)に示した構成と同様な出射光が得られる。
【0054】
次に、図5あるいは図6のように構成された信号表示部12から出射する出射光26の届く範囲について説明する。図7は信号機からの出射光が届く範囲を示した説明図であり、(a)は信号機の概略斜視図、(b)は出射光の照明範囲を説明する上面図である。
【0055】
図7(a)(b)に示すように本実施の形態の信号表示部12を用いると、信号機10の下方に向かう出射光26cは左右方向への配光が大きく、信号機10から遠方に向かう出射光26aは左右方向への配光が少ないので、道路周辺以外に向かう光が少なく、道路に沿って無駄なく配光することができる。
【0056】
以上、説明したように、本実施の形態の信号機は、所望の出射角特性が得られるように導光板を構成することにより、道路に沿って無駄なく信号機からの光を配光できるので、非常に光利用効率の高い道路用信号機が実現でき、さらに高輝度、低消費電力を実現できる。
【0057】
(実施の形態3)
図8は本実施の形態における信号機30の概略構成を示しており、(a)は概略構成図、(b)は(a)の8C−8C線から見た断面図を示している。
【0058】
図8(a)(b)に示すように本実施の形態の信号機30は、光源部31と信号表示部32から構成され、光源部31から出射した光を2本の光ファイバ13で信号表示部32に導くように構成している。
【0059】
光源部31はレーザ光源34a、34bと、レーザ光源34a、34bの発光/消灯を独立に制御する信号制御部35と、レーザ光源34a、34bから出射するレーザ光36a、36bを2本の光ファイバ13にそれぞれ導く集光レンズ17を備えた構成であり、信号表示部32は2本の光ファイバ13から出射した光をそれぞれコリメートするコリメートレンズ18と、入射端面19aから入射した光を側面19bから出射させて線状の光に変換する導光棒19と、両側の入射端面37aから入射した光を一方の主面37bから出射する導光板37と、導光板37に隣接して配置された反射シート21を備えた構成である。
【0060】
ここで、レーザ光源34a、34bは、それぞれ出射するレーザ光36a、36bが単体あるいは昆色によってほぼ同色となるように構成されている。
【0061】
また、導光板37の一方の主面37bの対向面37cには、入射光を全反射させて一方の主面37bに向けて偏向する偏光溝37dが設けられている。この偏向溝37dは入射端面37aに対して平行に設けられており、略平行に入射した光を平行のまま偏向して出射するように構成されている。さらに偏向溝37dは、両側の入射端面37aに対してそれぞれ異なる傾斜角の偏向面を有し、両側から入射した光をそれぞれ異なる方向に偏向するように構成されている。
【0062】
また、導光板37は図8(b)に示すようにV字に屈曲したように構成されている。これは両側の入射端面37aから入射した光が反対側の入射端面37aに到達し、光が抜けてしまうのを防ぐためである。
【0063】
このように構成された信号機30において、レーザ光源34a、34bから出射されるレーザ光36a、36bは、それぞれ集光レンズ17、光ファイバ13、コリメートレンズ18を経由して表示部32内部の導光板37の両側に配置された導光棒19に平行光で入射し、偏向溝19cで偏向されて側面19bからそれぞれ略平行光で出射する。
【0064】
導光棒19を出射したレーザ光36a、36bは、導光板37の両側の入射端面37aから略平行に入射し、偏向溝37dで偏向されて、レーザ光36aは信号表示部32の下方向に向かって出射し、レーザ光36bは信号表示部32の正面方向に向かって出射する。
【0065】
図9は信号機30の信号表示部32から出射したレーザ光36a、36bが届く範囲を示しており、この図においてレーザ光36aは道路上の領域38において視認できるように配光され、レーザ光36bは道路上の領域39において視認できるように配光される。
【0066】
このように構成された本実施の形態の信号機30は、レーザ光36aとレーザ光36bをそれぞれ独立に制御できるので、信号機からの距離が異なる領域に異なる信号を表示することができる。
【0067】
このような信号機は、例えば、信号が青から赤に変わる場合に、信号機の近くの領域38では黄色信号を表示し、信号機から遠い領域39では同じ瞬間に早めに赤信号の表示にすることができ、信号の変わり目であわてて交差点に突っ込んでくるような危険な事態を防ぐことができる。
【0068】
以上、説明したように、本実施の形態の信号機は、信号機の近くと遠くで信号表示の切り換えに時間差を設ける等、車と信号機の距離に応じて適切な信号を表示することが可能であり、交通の安全性あるいは円滑性を向上させた交通用信号機を実現できる。
【0069】
(実施の形態4)
図10は本実施の形態における信号機40の概略構成を示している。図10に示すように本実施の形態の信号機40は、光源部41と信号表示部42と光源部41から出射した光を信号表示部42に導く光ファイバ13から構成される。ここで光源部41は実施の形態1の光源部11と同様の構成であるので説明を省略する。
【0070】
本実施の形態において、信号表示部42は光ファイバ13から出射した光をコリメートするコリメートレンズ18と、P偏光を透過し、S偏光を反射するPBS面43aと反射面43bを含む複合偏光プリズム43と、複合偏光プリズム43のPBS面43aを透過した光の偏光を90度回転させるように配置された1/2波長板44と、図1に示した第1の実施の形態と同様に構成された導光棒19と導光板20を備えた構成である。
【0071】
このように構成された信号機40において、光源部41から出射されるレーザ光16は、光ファイバ13を通ることによりランダムな偏光となって出射し、コリメートレンズ18を経由して信号表示部42内部の複合偏光プリズム43に入射する。複合偏光プリズム43に入射したレーザ光16のうち、P偏光成分(紙面に平行な方向の偏光)はPBS面43aを透過し、S偏光成分(紙面に垂直な方向の偏光)はPBS面43aで反射し、PBS面43aで反射した光はさらに反射面43bで反射して、それぞれ複合偏光プリズム43を出射する。
【0072】
複合偏光プリズム43を出射したレーザ光16のうち、PBS面43aを透過してきた光は1/2波長板44により偏光が90度回転され、PBS面43aで反射した光と同じ紙面に垂直な方向の偏光となって導光棒19に入射する。
【0073】
ここで、導光棒19の偏向溝19cの偏向面は、導光棒19に入射したレーザ光16の偏光に対して平行であるので、レーザ光16は偏向溝19cで偏光が乱れることなく全反射して、紙面に垂直な偏光のまま導光棒19から出射し、導光板20に入射する。
【0074】
ここで、導光板20の偏光溝20dの偏向面は入射したレーザ光16の偏光面に対して垂直であるので、レーザ光16は偏光が乱れることなく全反射して、図中上下方向の偏光となって出射する。
【0075】
図11は信号機40の利用場面を示した説明図であり、信号表示部42の背後に太陽46がある場合を示している。この図のような場合、信号表示部42から出射したレーザ光16と太陽光47がほぼ同じ方向から視界に入ってくるために非常にまぶしく、信号を視認しにくい。
【0076】
このとき、運転席の日除けの代わりに垂直方向の偏光成分のみを透過する偏光板45を用いて、この偏光板45を通して信号表示部42を見ると、レーザ光16の輝度は低下しないが、太陽光47の明るさは半減するため信号の表示を視認し易くなる。
【0077】
あるいは、図12に示す信号表示部42の表示面のように、信号色に対応した記号を表す領域48a、48b、48cの部分に1/2波長板の機能を有する位相差フィルムを配置してその他の領域と偏光が直交するように構成すると、偏光眼鏡等を通してみた場合に記号が浮かんで見えるため、色覚異常(色盲、色弱)者の誤認を防ぐことができる。
【0078】
以上、説明したように、本実施の形態の信号機は、レーザ光源を用いることにより高い光利用効率で偏光の揃った出射光が得られるので、これを利用して、信号表示部と太陽が重なった場合の視認性を向上させることができる。さらに、色覚異常者の誤認を防ぐ信号機を実現できる。
【0079】
なお、本実施の形態では直線偏光の光が出射する構成としたが、信号表示部の表示面にさらに1/4波長板を配置して円偏光を出射する構成としてもよい。この場合は1/4波長板と偏光板を通して信号機を見ることにより、本実施の形態と同様の効果が得られる。この場合、1/4波長板と偏光板からなる眼鏡を用いると、顔を傾けても信号の見え方が変わらない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の信号機は、レーザ光源を用いているので指向性が高く、低消費電力で高輝度の信号機が実現できる。鉄道用の信号機として用いれば、目的のレーン以外で信号を誤認する危険性を回避でき有用である。さらに、偏光のそろった光を効率よく出射させることができるので、偏光フィルタ等を併せて使うことにより、視認性の向上や色覚異常者の誤認を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における信号機の概略構成図で概略構成図(b)(a)の1C−1C線から見た断面図
【図2】本発明の実施の形態1における偏向溝の別形態の拡大図
【図3】本発明の実施の形態1における信号表示部の別形態の断面図
【図4】(a)本発明の第1の実施の形態における信号機の別形態の概略構成図で概略構成図(b)(a)の4C−4C線から見た断面図
【図5】(a)本発明の実施の形態2における信号表示部の概略構成図で断面図(b)偏向溝の概略斜視図
【図6】本発明の実施の形態2における偏向溝の別形態の概略斜視図
【図7】(a)本発明の実施の形態2の信号機からの出射光が届く範囲を示した説明図で、信号機の概略斜視図(b)出射光の照明範囲を説明する上面図
【図8】(a)本発明の実施の形態3における信号機の概略構成図で概略構成図(b)(a)の1C−1C線から見た断面図
【図9】本発明の第3の実施の形態の信号機からの出射光が届く範囲を示した説明図
【図10】本発明の第4の実施の形態における信号機の概略構成図
【図11】本発明の第4の実施の形態における信号機の利用場面を示した説明図
【図12】本発明の第4の実施の形態における信号表示部の表示面の別形態を示した構成図
【図13】本発明の第1の実施の形態における信号機の別形態の概略構成図
【符号の説明】
【0082】
10,30,40,50 信号機
11,31,41 光源部
12,32,42 信号表示部
13 光ファイバ
14,34a,34b レーザ光源
15,35 信号制御部
16,36a,36b レーザ光
17 集光レンズ
18 コリメートレンズ
19 導光棒
19a 入射端面
19b 側面
19c 偏向溝
20,37 導光板
20a,37a 入射端面
20b,37b 一方の主面
20c,37c 対向面
20d,37d 偏向溝
20e 溝
21 反射シート
22 シリンドリカルレンズアレイ
24 リング状導光体
24a 入射端面
24c 偏向溝
25 円形導光体
25a 側面
25b 一方の主面
25d 偏向溝
26,26a,26b,26c 出射光
38,39 領域
43 複合偏光プリズム
43a PBS面
43b 反射面
44 1/2波長板
45 偏光板
46 太陽
47 太陽光
48a,48b,48c 位相差フィルム
51 拡散素子
52 反射板
53 フレネルレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、
前記光源から出射した光を面状に広げて出射する面発光部と、
前記光源からの光を前記面発光部に導く光ファイバと、
前記光源の発光、消灯を制御する信号制御部と、
を備えたことを特徴とする信号機。
【請求項2】
面発光部は、光ファイバから出射したレーザ光を線状に広げて出射する線状導光部と、
前記線状導光部から出射したレーザ光を側面から入射させ一方の主面から出射する導光板と、
を備え、
前記線状導光部は、略平行な光を出射するように構成され、
前記導光板は、前記一方の主面の対向面に、入射光を前記一方の主面に向けて偏向する偏向溝を有し、前記偏向溝は光が入射する入射面に対して平行に形成されていることを特徴とする請求項1記載の信号機。
【請求項3】
面発光部は、光ファイバから出射したレーザ光をリング状の光線に変換するリング状導光部と、
前記リング状導光部から出射したレーザ光を外周側面から入射させ一方の主面から出射する円形の導光板と、を備え、
前記リング状導光部は、内周側面から中心に向かって光を出射するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の信号機。
【請求項4】
面発光部は、導光板の前記一方の主面に隣接してシリンドリカルレンズアレイを備え、
前記シリンドリカルレンズアレイで前記導光板から出射した光を1次元方向に拡散させることを特徴とする請求項2または請求項3記載の信号機。
【請求項5】
導光板の偏向溝は、偏向面が曲面で形成され、前記偏向面は前記一方の主面に対する傾斜角が0度から45度の間で徐々に変化するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の信号機。
【請求項6】
導光板の偏向溝は、偏向面の前記一方の主面に対する傾斜角が異なる多種類の偏向溝から構成され、各偏向溝の偏向面は、前記一方の主面に対する傾斜角が0度から45度の間で構成されていることを特徴とする請求項2記載の信号機。
【請求項7】
偏向溝の偏向面に、前記偏向面が曲率を有する方向と直交する方向に光を拡散させる拡散溝を有し、前記拡散溝は、前記偏向面の前記一方の主面に対する傾斜角が小さくなるほど広く拡散するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の信号機。
【請求項8】
偏向溝の偏向面は、前記偏向面が前記一方の主面に対して傾斜する方向と直交する方向に曲率を有し、前記偏向面の前記一方の主面に対する傾斜角が小さくなるほど広く拡散するように構成されていることを特徴とする請求項6記載の信号機。
【請求項9】
同じ波長のレーザ光を出射する少なくとも2つのレーザ光源と、
前記少なくとも2つのレーザ光源の発光、消灯を独立に制御する信号制御部と、
前記少なくとも2つのレーザ光源から出射したレーザ光をそれぞれ入射させ、面状に広げて出射する面発光部と、を有し、
前記少なくとも2つのレーザ光源から出射したレーザ光は、前記面発光部からそれぞれ異なる角度で指向性を有して出射することを特徴とする請求項2記載の信号機。
【請求項10】
導光板は、両側の側面からレーザ光が入射するように構成され、
前記導光板の偏向溝は、光が入射する方向に応じてそれぞれ異なる角度で偏向する、2つの偏向面を有することを特徴とする請求項9記載の信号機。
【請求項11】
出射する光が直線偏光、あるいは円偏光となるように構成したことを特徴とする請求項2記載の信号機。
【請求項12】
面発光部は、出射する光の偏光がその他の領域から出射する光の偏光と直交する領域を有し、
前記領域は、前記面発光部から出射する光の色に応じた所定の記号の形状となるように構成されたことを特徴とする請求項11記載の信号機。
【請求項13】
面発光部は、光ファイバから出射したレーザ光を均一に広げる発散素子と、前記発散素子から出射したレーザ光に所定の配光特性を持たせるコリメート素子を備えたことを特徴とする請求項1記載の信号機。
【請求項14】
前記レーザ光源は、赤色と緑色のレーザ光を出射するレーザ光源を有し、
黄色信号の面発光部には、前記赤色レーザ光と緑色レーザ光を導くように構成したことを特徴とする請求項1から請求項13に記載の信号機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−265960(P2009−265960A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115048(P2008−115048)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】