説明

信号発生器

【課題】 アクセス制限に関するコード管理を容易にし、立場に応じて許可される機能を複数組み合わせて使用可能として利便性を向上させ、更にセキュリティを向上させることができる信号発生器を提供する
【解決手段】 複数の機能を備え、各機能についてアクセス許可を指示するキーコードと、アクセス不許可を指示するスルーコードとをEEPROM15に記憶しておき、外部の制御用PC2からモード切替コマンドとそれに続く複数のコードの組み合わせが入力されると、制御部11が、EEPROM15を参照して、受信した複数のコードを各コードに分割し、各コードに対応する機能を特定して、当該コードがキーコードであるかスルーコードであるかを解析し、キーコードであれば当該機能へのアクセスを許可し、スルーコードであれば当該機能へのアクセスを許可しない信号発生器としており、更に、コードの文字数や配列順を可変とする信号発生器としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客や保守者等の立場に応じてアクセス可能な機能を制限可能な信号発生器に係り、特に簡単な制御で複数の機能についてのアクセス制御を行うと共に、セキュリティを向上させることができる信号発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
信号発生器(低雑音信号発生器)は、無線機等の検査や保守に用いられ、標準器により校正された、周波数・電力・変調の電気信号を出力するものである。
信号発生器を通信用インタフェースを介して制御用パーソナルコンピュータ(制御用PC)と接続してシリアル通信を行うことにより、顧客が制御用PCからリモート制御で検査等を行ったり、製造元が保守等を行うことが可能となっている。
また、汎用であるため、顧客や製造者以外にも、営業、校正、保守等を行うサービスエンジニアが使用することもあり、同一機器をさまざまな立場の人が使用する。
【0003】
機器を使用する使用者の立場は、顧客者、操作者、調整者、保守者、製造者の5つに分類され、各立場によってアクセス可能(利用可能)な機能が異なる。
(1)顧客者(USER)は、実運用を行うユーザであり、信号発生器をリモート制御して検査や測定等を行い、それに関する機能は利用可能である。
(2)操作者(OPErator)は、営業担当者や、デモンストレーション担当者であり、主として装置の操作を行う。
(3)調整者(ADJustment)は、装置内部に記憶されているパラメータの変更等の調整を行う。
(4)保守者(MAINTenance)は、ファームウェアの更新やトラブル解析等を行う。
(5)製造者(ADMINistrator)は、全ての機能を使用可能である。
【0004】
信号発生器の通信インタフェースの口はどの立場の使用者であっても共通であるため、立場に応じたアクセス制限を行う必要がある。
つまり、各立場に利用可能な機能/利用不可能な機能を設定しておき、使用者の立場に応じた機能の使用を許可するようになっている。
【0005】
[シリアル通信のコマンド]
制御用PCと信号発生器とは、シリアル通信を行う。シリアル通信で用いられるコマンドの例について簡単に説明する。
モードセレクトコマンドは、使用者に応じて機能の使用可能/使用不能を制御するものであり、使用不能のコマンドでのアクセスを禁止する。
リモート制御コマンドは、信号発生器をリモート制御するためのコマンドであり、顧客に開放されるコマンドである。
ダウンロードコマンドは、ファームウェアをダウンロードするためのコマンドである。
通常保守コマンドは、通常、装置の保守を行うためのコマンドである。
パラメータコマンドは、装置に搭載されているEEPROMに保存されているパラメータ類を変更するためのコマンドである。
【0006】
[従来のアクセス制限]
従来の信号発生器におけるアクセス制限について説明する。従来の信号発生器におけるアクセス制限の方法としては、ログイン方式とモード切替方式とがある。
[ログイン方式]
まず、従来の信号発生器で用いられるログイン方式について説明する。
ログイン方式は、PCのアカウント管理と同等のものであり、(1)顧客(USER)をデフォルトのアカウントとして、他のアカウント((2)操作、(3)調整、(4)保守、(5)製造)にログインすることで、ログインしたアカウントに応じた機能を使用できるようにする。
【0007】
各アカウントにログインするためには、各アカウントに対応するパスワード等のセキュリティコードを入力する。
そして、各アカウントからログアウトすることにより(1)顧客のアカウントに戻る。
ログイン方式では、セキュリティコードが(1)顧客以外のアカウントの数だけ必要であり、セキュリティコードの管理が煩雑である。また、アカウント毎に機能が対応付けられており、別のセキュリティコードを用いて再度ログインしてアカウントを切り替えないと別の機能を使用することはできない。
尚、(5)製造のアカウントでは全ての機能が使用できるが、それ以外の(1)〜(4)では許可される機能は重複しない。
【0008】
[モード切替方式]
次に、従来の信号発生器で用いられるモード切替方式について説明する。
モード切替方式では、(1)顧客、(2)操作、(3)調整、(4)保守、(5)製造の各モードが設けられており、デフォルトである顧客モードから各モードに移行するためのコマンド(又はコマンドとセキュリティコード)を入力すると、当該モードに移行して当該モードで許可されている機能を使用できるようになる。
例えば、一般の顧客は、他のモードに移行するコマンドを認識していないので、デフォルトである顧客モードで許可される機能のみを使用する。
【0009】
モード切替方式では、顧客モード以外のモードから更に別のモードに移行する場合には、一旦終了命令により顧客モードに戻ってから他のモードに移行する。
モード切替方式では、セキュリティコードの管理が煩雑であり、また、別の機能を使用するには、一旦顧客モードに戻ってから別のモードに移行するコマンドを入力しなければならず、不便である。
更に、セキュリティコードを付さない場合、モードに移行するコマンドを機種やユーザ毎に変更することができず、セキュリティが脆弱である。
【0010】
[関連技術]
尚、使用者に応じたアクセス制限に関する技術としては、特開2004−260515号公報「事務機器、事務機器の制御方法、及び事務機器の制御プログラム」(東芝テック株式会社、特許文献1)、特開2003−296145号公報「システム制御プログラム」(株式会社日立製作所、特許文献2)がある。
【0011】
特許文献1には、事務機器の保守において、権限に応じたJOBモード毎に記述されたコマンドによって通信インタフェースを切り替えて、それぞれ許可された処理機能を実行することが記載されている。
【0012】
また、特許文献2には、システムの保守において、保守操作モードに遷移した場合に、ファームウェアが、保守操作モードでの経過時間を監視し、一定時間を経過すると自動的に通常操作モードに遷移することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−260515号公報
【特許文献2】特開2003−296145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の信号発生器では、アクセス制限をログイン方式又はモード切替方式によって行っており、パスワード等のアクセス制限を制御するコードの数が多く管理が煩雑であり、また、各アカウントやモードといった立場に応じて許可される機能を複数組み合わせて使用することはできず不便であるという問題点があった。
【0015】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、アクセス制限に関するコード管理を容易にし、立場に応じて許可される機能を複数組み合わせて使用可能として利便性を向上させ、更にセキュリティを向上させることができる信号発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の機能を備えた信号発生器であって、機能毎に、機能へのアクセスを許可するキーコードと、機能へのアクセスを許可しないスルーコードとが予めパラメータとして記憶される記憶部と、デフォルトの機能のみ使用可能な状態において、制御用コンピュータから、アクセス制限情報として複数のコードの組み合わせが入力されると、各コードに分割し、分割されたコードが、キーコードに該当するかスルーコードに該当するかを判定し、キーコードであれば、キーコードに対応する機能へのアクセスを許可し、スルーコードであればスルーコードに対応する機能へのアクセスを許可しない制御部とを備えたことを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、上記信号発生器において、パラメータには、コードの文字数が記憶されており、制御部が、文字数に基づいて受信したコードの組み合わせを各コードに分割することを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記信号発生器において、パラメータには、機能に対応するコードの配列順が記憶されており、制御部が、分割されたコードを配列順に従って並べ替えて、各コードが対応する機能のキーコード又はスルーコードに該当するか否かの判定を行うことを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記信号発生器において、表示部を備え、制御部が、分割されたコードが対応する機能のキーコード又はスルーコードのいずれにも該当しない場合には、表示部又は制御用コンピュータにエラー表示を行うことを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、上記信号発生器において、制御部は、許可されている機能を示す状態表示を表示部に表示し、複数の機能が許可されている状態では、当該複数の機能を示す状態表示を表示部に表示することを特徴としている。
【0021】
また、本発明は、上記信号発生器において、制御部は、特定時間操作が無い場合には、デフォルトの機能のみ使用可能な状態に戻ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の機能を備えた信号発生器であって、機能毎に、機能へのアクセスを許可するキーコードと、機能へのアクセスを許可しないスルーコードとが予めパラメータとして記憶される記憶部と、デフォルトの機能のみ使用可能な状態において、制御用コンピュータから、アクセス制限情報として複数のコードの組み合わせが入力されると、各コードに分割し、分割されたコードが、キーコードに該当するかスルーコードに該当するかを判定し、キーコードであれば、キーコードに対応する機能へのアクセスを許可し、スルーコードであればスルーコードに対応する機能へのアクセスを許可しない制御部とを備えた信号発生器としているので、使用者は、キーコードとスルーコードの組み合わせによって複数の機能についてのアクセス許可又は不許可を容易に設定でき、また、複数の機能を利用可能として、利便性を向上させることができる効果がある。
【0023】
また、本発明によれば、パラメータには、コードの文字数が記憶されており、制御部が、文字数に基づいて受信したコードの組み合わせを各コードに分割する上記信号発生器としているので、使用者が連続して入力した複数のコードの組み合わせを、個々のコードに容易に分割することができる効果がある。
【0024】
また、本発明によれば、パラメータには、機能に対応するコードの配列順が記憶されており、制御部が、分割されたコードを配列順に従って並べ替えて、各コードが対応する機能のキーコード又はスルーコードに該当するか否かの判定を行う上記信号発生器としているので、第三者に機能とコードとの対応付けを特定されにくくして、機能へのアクセスにおけるセキュリティを向上させる効果がある。
【0025】
また、本発明によれば、表示部を備え、制御部が、分割されたコードが対応する機能のキーコード又はスルーコードのいずれにも該当しない場合には、表示部又は制御用コンピュータにエラー表示を行う上記信号発生器としているので、使用者等にエラーになったことを報知できる効果がある。
【0026】
また、本発明によれば、制御部は、許可されている機能を示す状態表示を表示部に表示し、複数の機能が許可されている状態では、当該複数の機能を示す状態表示を表示部に表示する上記信号発生器としているので、使用者は、現在使用可能となっている機能を容易に認識できる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、制御部は、特定時間操作が無い場合には、デフォルトの機能のみ使用可能な状態に戻る上記信号発生器としているので、使用者が所望の機能を用いた作業終了後にデフォルト状態に戻すのを忘れたとしても、確実にデフォルト状態に戻すことができ、セキュリティを向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る信号発生器の構成ブロック図である。
【図2】本信号発生器におけるアクセス制限の概要を示す模式説明図である。
【図3】モード切替コマンドの入力例及び各機能の有効/無効の状態を示す模式説明図である。
【図4】(a)は本信号発生器のEEPROM15に記憶されているスルーコード情報パラメータの説明図であり、(b)は本信号発生器のEEPROM15に記憶されているキーコード情報パラメータの説明図である。
【図5】制御部11におけるアクセス制限処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る信号発生器は、複数の立場に応じたモードと機能(機能群)とを予め割り付け、各モードの機能について使用(アクセス)を許可することを指示するキーコードと、使用を許可しないことを指示するスルーコードとを記憶しておき、外部の制御用PCからアクセス制限情報として複数のコードの組み合わせが入力されると、当該アクセス制限情報をコード毎に分割して、各コードに対応する機能を特定し、各機能に対応するコードがキーコードであるかスルーコードであるかを解析し、キーコードであれば当該機能の使用を許可し、スルーコードであれば当該機能の使用を許可しないものとしており、2種類のコードを用いて種々の立場に応じた機能のアクセス許可/不許可を容易に制御することができるものである。
【0030】
また、本信号発生器は、記憶部に、各機能に対応するキーコード及びスルーコードとコードの文字数、及び制御用PCから受信するアクセス制限情報におけるコードの配列順をパラメータとして記憶しているので、顧客や装置によって文字数や配列順を変えてコードを変更することができ、各機能に対応するキーコード及びスルーコードを第三者に解読されにくくして、セキュリティを向上させることができる効果がある。
【0031】
[実施の形態に係る信号発生器の構成:図1]
本発明の実施の形態に係る信号発生器の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る信号発生器の構成ブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る信号発生器(本信号発生器)1は、制御部11と、内蔵信号発生器12と、ユーザインタフェース13と、表示部14と、EEPROM15と、キー入力部16とを備え、ユーザインタフェース13を介して制御用PC2と接続されている。
【0032】
各部について説明する。
制御部11は、マイコン等で構成され、従来と同様に装置全体の制御を行い、内蔵信号発生器12に所定の信号を発生、出力させ、測定結果を入力して表示部14に出力すると共に制御用PC2に通知する。また、制御部11は、本信号発生器の特徴として、アクセス制限の制御を行う。制御部11の動作については後述する。
【0033】
内蔵信号発生器12は、マイコン、信号生成部、測定部等を備え、制御部11からの指示に応じて所定の信号を発生して外部に出力し、検査対象機器から出力された信号を入力して測定し、測定結果が基準範囲外であればアラーム信号を出力する。
【0034】
ユーザインタフェース13は、USBインタフェースであり、外部の制御用PC2と接続してシリアル通信を行う。
表示部14は、VFD(Vacuum Fluorescent Display;蛍光表示管)等で構成され、測定結果等を表示する。
【0035】
EEPROM15は、本信号発生器の特徴であるアクセス制限の制御パラメータとして、機能へのアクセスを許可するキーコード及びそれに関連するパラメータ(キーコード情報パラメータ)と、機能へのアクセスを禁止するスルーコード及びそれに関連するパラメータ(スルーコード情報パラメータ)とを記憶している。EEPROM15に記憶されたパラメータについては後で詳細に説明する。
【0036】
[本実施の形態のアクセス制限の概要:図2]
次に、本信号発生器におけるアクセス制限の概要について図2を用いて説明する。図2は、本信号発生器におけるアクセス制限の概要を示す模式説明図である。
図2に示すように、本信号発生器では、(1)顧客、(2)操作、(3)調整、(4)保守の4つのモードを備え、各モードによって使用(アクセス)可能な機能が規定されている。つまり、「モード」とそのモード状態で許可される「機能」とは1対1に対応しており、請求項では単に「機能」と記載している。
【0037】
各モードに対応する機能の内容は従来とほぼ同様であり、例えば、顧客モードには実運用で用いられるリモート制御の機能がアクセス許可され、操作モードには装置の操作の機能が許可され、調整モードではパラメータの更新の機能が許可され、保守モードではファームウェア等の保守機能が許可されている。
【0038】
モードの切り替え方法及びアクセスの許可/不許可(機能の有効/無効)の設定についてその概略を説明する。
図2に示すように、本信号発生器では、最もアクセスが制限されている(1)顧客モードをデフォルトとしており、装置起動時には顧客モードになる。つまり、本信号発生器の使用者は全て顧客モードの機能は使用可能である。
【0039】
また、本信号発生器の特徴として、1つ又は複数のモードを組み合わせて許可設定可能としている。そのため、従来の「製造モード」は、デフォルトの(1)顧客モードに加えて(2)操作、(3)調整、(4)保守の3つのモードを全て許可とすることで実現可能となっている。
【0040】
そして、本信号発生器では、(2)操作、(3)調整、(4)保守の各モードの機能を有効又は無効にするために、モード切替コマンド(Mchg)を用いる。
図2に示すように、(1)顧客モードにおいて、制御用PC2からMchgコマンドを用いて各モードに対応する機能の有効/無効を設定する。ここでは、(2)操作、(3)調整、(4)保守の各機能についてそれぞれ有効/無効を設定する。複数の機能を有効とすることも可能である。
【0041】
そして、(2)(3)(4)の各モード状態から(1)顧客モードに戻るには、終了コマンド(Exit)コマンドを用いる。尚、複数のモードが設定されている(許可されている)状態でも、1回のExitコマンドの入力で顧客モードへの移行が可能となっている。
【0042】
[Mchgコマンド入力フォーマット:図3]
次に、本信号発生器におけるモード切替コマンドの入力例について図3を用いて説明する。図3は、モード切替コマンドの入力例及び各機能の有効/無効の状態を示す模式説明図である。
図3に示すように、図2に示した3つのモードの機能の有効/無効を設定する場合、Mchgコマンドに続いて、各モードに対応する機能の有効/無効を設定する3つのコードを入力する。つまり、「Mchg□Code1, Code2, Code3」となる( "□" はスペースを表す。また、実際にはカンマ "," は入力せず、3つのコードを連続して入力する)。
【0043】
"Code" に付された番号(コード番号)は、モードを特定するものであり、予めEEPROM15にコード番号とモードとの対応付けが記憶されている。
図3の例では、コード番号1は操作モードに対応し、Code1は、操作モードの機能について有効とするか無効とするかを決定するコードである。
同様に、コード番号2は調整モードに対応し、Code2は、調整モードの機能の有効/無効を決定し、コード番号3は保守モードに対応し、Code3は保守モードの機能の有効/無効を決定するコードである。
【0044】
更に、本信号発生器では、機能を「有効(アクセス可能、アクセス許可)」に設定するコードであるキーコードと、機能を「無効(アクセス不可、アクセス不許可)」に設定するコードをスルーコードとを備えている。
キーコード、スルーコードはそれぞれ、予めEEPROM15に記憶されているが、必要に応じて書き換え可能である。また、キーコード、スルーコードは1種類としてもよいが、本信号発生器では、各モードに応じて異なるコードとしている。
EEPROM15に記憶されるキーコード、スルーコードのパラメータについては、後で詳細に説明する。
【0045】
つまり、本信号発生器では、Mchgコマンドに続いて入力される一連のコードの内、各モードに対応するコード番号のコードがキーコードであるかスルーコードであるかによって、当該モードの機能の有効/無効が設定されるものである。
【0046】
図3の例を用いて具体的に説明する。
図3の例では、顧客モードにおいて、「Mchg□キーコード1, スルーコード2, キーコード3」が入力された場合を示している。これは、(2)操作モードの機能を有効にし、(3)調整モードの機能を無効にし、(4)保守モードの機能を有効にするコマンドとなる。
つまり、使用者は、制御用PCからの1回のコマンド送信で、(2)操作モード、(3)調整モード、(4)保守モードの機能について有効/無効を設定できるものであり、操作性を向上させることができるものである。
【0047】
そして、本信号発生器の制御部11は、ユーザインタフェース13を介して制御用PC2から上記コマンドを受信すると、EEPROM15に記憶されているパラメータと比較して、キーコードと一致したモードは有効にして、当該モードの機能へのアクセスを許可し、スルーコードに一致したモードは無効にし、当該モードの機能へのアクセスを許可しないよう制御する。
そして、Exitコマンドが入力されると、(1)顧客モードの状態に戻る。
【0048】
尚、ここでは、顧客、操作、調整、保守というようにアクセス制限の大きい順にモード(機能)を配列し、顧客モード以外の、操作、調整、保守の各モードにコード番号を順に割り付けて説明しているが、コード番号とアクセス制限の大小とは無関係であり、どのコード番号をどのモードに対応付けるかは任意に設定可能である。コード番号とモードとの対応付けをEEPROM15に記憶しておけばよい。
【0049】
[モード切り替えに伴う表示]
次に、モード切り替えに伴う表示例について説明する。
モード切替コマンドによって、(1)顧客モードから(2)操作、(3)調整、(4)保守のいずれか又はその組み合わせに移行した場合、現在どのモード状態にあるか、つまりどのモードの機能が許可されているかを示すため、表示部14にモード名を示すプロンプトが表示される。
【0050】
具体的には、(2)操作モードであれば、プロンプト「OPE>」が表示され、(3)調整モードであればプロンプト「ADJ>」が表示され、(4)保守モードであればプロンプト「MAINT>」が表示される。
使用者は、表示されたプロンプトにより現在のモード状態で、どの機能を使用できるかを認識することができるものである。
【0051】
また、複数のモード状態が設定されている場合には、複数のモード状態を併記したプロンプトが表示される。例えば、(2)操作モードと(4)保守モードが有効の場合には、「OPE,MAINT>」のプロンプトが表示される。
【0052】
そして、各モード状態からExitコマンドにより(1)顧客モードに移行すると、カーソルのみが表示される。つまり、(1)顧客モードでは、プロンプトは表示されない。
モード切替コマンド(Mchg)は、カーソルが表示されている場合のみ入力可能である。
【0053】
また、本信号発生器の制御部11は、(1)顧客モード以外の状態に移行した場合、操作が無い状態で一定時間以上経過すると、Exitコマンドが入力されなくても(1)顧客モードに移行するようにしている。
通常、信号発生器の使用者は、Mchgコマンドにより所望の機能を選択して設定して作業を行った場合、作業の終了後にはExitコマンドでデフォルトの(1)顧客モードに戻しておくが、使用者がExitコマンドを入力し忘れた場合でも、これによりセキュリティを維持することが可能となるものである。
【0054】
[コード情報のパラメータ:図4]
次に、EEPROM15に記憶されているコード情報について図4を用いて説明する。図4は、本信号発生器のEEPROM15に記憶されているコード情報のパラメータを示す説明図であり、(a)はスルーコード情報パラメータを示し、(b)はキーコード情報パラメータを示している。
図4(a)に示すように、スルーコード情報パラメータは、32Bytes文字コード(32文字)の情報であり、コード順と、コード数と、コード1、コード2、コード3が格納されている。図4の例は、図2に示したモードに対応しており、顧客モード(1)以外に3つのモードがある場合を示している。
EEPROM15に格納されたパラメータは、制御用PCから送信されたコード情報を解析するために用いられるものである。
【0055】
コード順は、コード1、コード2、コード3がどのような順で配列されているかを規定する情報である。コード順により、顧客モード以外のモードの数(ここでは「3」)も認識可能である。
コード数は、以下に続くコード1、コード2、コード3の各キーコードの文字数を指定する。文字数はコード1,2,3で共通となっており、ここでは各コード最大8文字まで使用可能な文字数の内、何文字使用しているかを示す情報である。
【0056】
そして、コード1は、コード番号1に対応するモード(ここでは(2)操作モード)のスルーコードであり、コード2は、コード番号2に対応するモード(ここでは(3)調整モード)のスルーコードであり、コード3は、コード番号3に対応するモード(ここでは(4)保守モード)のスルーコードである。
【0057】
また、(b)に示すように、キーコード情報パラメータも同様の構成で記憶されており、コード順と、コード数と、コード1((2)操作モードのキーコード)、コード2((3)調整モードのキーコード)、コード3((4)保守モードのキーコード)が格納されている。
つまり、コード順とコード数の情報は、スルーコード情報パラメータとキーコード情報パラメータで共通の情報となっている。
【0058】
このように、コードの文字数やコードの配列順を任意に設定可能とすることにより、仮に制御用PCからのコマンド情報が漏れたとしても、傍受者には各モードの機能にアクセスするためのコード情報が各々何文字で、どのような配列で並んでいるかわからないので、各コード情報を解読するのは困難となり、セキュリティを向上させることができるものである。
【0059】
そして、本信号発生器の使用者は、予めEEPROM15に記憶されているコード情報のパラメータを認識しており、図3に示したように、パラメータで規定されたコード数(文字数)のキーコード又はスルーコードを、パラメータで規定されたコード順で連続して配列して、モード切替コマンドに付して制御用PC2から送信する。
【0060】
そして、本信号発生器の制御部11では、受信したコード情報をEEPROM15のパラメータに基づいて解析して、モード毎の機能の有効/無効を設定するアクセス制限処理を行うようになっている。
【0061】
[アクセス制限処理:図5]
次に、本信号発生器の制御部11におけるアクセス制限処理について図5を用いて説明する。図5は、制御部11におけるアクセス制限処理を示すフローチャート図である。
図5に示すように、(1)顧客モードにおいて、ユーザインタフェース13を介して制御用PC2からのモード切替コマンドとそれに続くコード情報を受信すると(100)、制御部11は、EEPROM15のスルーコード情報パラメータ、キーコード情報パラメータを参照して、コード数(コードの文字数)に基づいて受信コードを分割する(102)。
【0062】
そして、制御部11は、EEPROM15に記憶されたパラメータのコード順から、コード数の最大値(N)を求める(104)。図4の例では最大値(N)=3である。
更に、制御部11は、コード順に基づいて、分割された受信コードをコード番号順に並べ替える(106)。つまり、コード1、コード2、コード3の順に並べ替える。
【0063】
そして、制御部11は、コード番号n=1として(108)、コードnと、EEPROM15に記憶されているキーコードnとを比較し、一致しているかどうか判断する(110)。
一致していれば(Yesの場合)、制御部11は、コード番号nに対応するモードを有効にする(112)。例えば、n=1の場合には、(2)操作モードを有効にして、操作モードに対応する機能へのアクセスを許可し、操作モードのプロンプト「OPE>」を表示する。
【0064】
そして、制御部11は、コード番号nがコード数の最大値N以上(n≧N)であるかどうかを判断し(120)、nが最大値未満である場合(Noの場合)には、nに1を加算して(n=n+1)(122)、処理110に移行して同様の処理を繰り返す。
次のモードについてもキーコードと一致すれば、当該モードも有効となり、対応する機能へのアクセスを許可し、それに対応するプロンプトを表示する。
【0065】
また、処理110においてコードnがキーコードnと一致しなかった場合、制御部11は、コードnがスルーコードnと一致するかどうかを判断し(114)、一致した場合には、アクセスを許可せずそのまま処理120に移行する。
【0066】
処理114においてコードnがスルーコードnと一致しなかった場合には、受信したコードnはキーコードnともスルーコードnとも一致しないことになるので、不正なコードであるとしてアクセス拒否(アクセスNG)として、その旨表示すると共に制御用PCにアクセス拒否を通知し(116)、処理を終了する。
【0067】
そして、処理120でnがコード数の最大値以上(n≧N)となった場合(Yesの場合)には、受信したコマンドに含まれる全てのモードに対応するコードを解析して有効/無効を設定したことになり、制御部11は、処理を終了する。
このようにして、制御部11におけるアクセス制限処理が行われるものである。
【0068】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る信号発生器によれば、複数のモードとそれに対応する機能を備え、各モードの機能についてアクセスを許可することを示すキーコードと、アクセスを許可しないスルーコードとをEEPROM15に記憶しておき、ユーザインタフェース13を介して外部の制御用PC2からモード切替コマンドとそれに続く複数のコードの組み合わせが入力されると、制御部11が、EEPROM15を参照して、受信した複数のコードから各モードの機能に対応するコードを特定して、当該コードがキーコードであるかスルーコードであるかを解析し、キーコードであれば当該モードの機能へのアクセスを許可し、スルーコードであれば当該モードの機能へのアクセスを許可しない信号発生器としているので、使用者は、1回のコマンド送信で、キーコードとスルーコードの組み合わせによって全てのモードの機能についてのアクセス許可/不許可を設定でき、コード管理や操作が容易であり、また、複数のモードの機能を使用可能とすることができ、利便性を向上させる効果がある。
【0069】
また、本信号発生器によれば、キーコード情報パラメータとスルーコード情報パラメータとして、コードの配列順(コード順)やコードの文字数(コード数)をEEPROM15に記憶しておき、制御用PCからパラメータに基づいたコードの組み合わせを送信して、信号発生器の制御部11が受信したコードを当該パラメータに基づいて解析するようにしているので、コードの文字数や配列順を可変として、第三者にキーコードやスルーコードを解読されにくくして、機能へのアクセスにおけるセキュリティを向上させる効果がある。
【0070】
また、本信号発生器によれば、アクセスが許可されたモードをプロンプトによって表示し、複数のモードが許可されている場合には複数のモードを示すプロンプトを表示するようにしているので、使用者はどの機能が使用可能であるか容易に認識できる効果がある。
【0071】
また、本信号発生器によれば、制御部11は、デフォルトである顧客モード以外のモードが許可されている状態で、一定時間以上操作が為されない場合には、顧客モードに移行するようにしているので、使用者が顧客モードに戻す終了コマンドを入力し忘れた場合でも、確実に顧客モードに戻すことができ、セキュリティを向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、アクセス制限に関するコード管理を容易にし、立場に応じて許可される機能を複数組み合わせて使用可能として利便性を向上させ、更にセキュリティを向上させることができる信号発生器に適している。
【符号の説明】
【0073】
1...信号発生器、 2...制御用PC、 11...制御部、 12...内蔵信号発生器、 13...ユーザインタフェース、 14...表示部、 15...EEPROM、 16...キー入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能を備えた信号発生器であって、
前記機能毎に、機能へのアクセスを許可するキーコードと、機能へのアクセスを許可しないスルーコードとが予めパラメータとして記憶される記憶部と、
デフォルトの機能のみ使用可能な状態において、制御用コンピュータから、アクセス制限情報として複数のコードの組み合わせが入力されると、各コードに分割し、前記分割されたコードが、キーコードに該当するかスルーコードに該当するかを判定し、キーコードであれば、前記キーコードに対応する機能へのアクセスを許可し、スルーコードであれば前記スルーコードに対応する機能へのアクセスを許可しない制御部とを備えたことを特徴とする信号発生器。
【請求項2】
パラメータには、コードの文字数が記憶されており、
制御部が、前記文字数に基づいて受信したコードの組み合わせを各コードに分割することを特徴とする請求項1記載の信号発生器。
【請求項3】
パラメータには、機能に対応するコードの配列順が記憶されており、
制御部が、分割されたコードを前記配列順に従って並べ替えて、前記各コードが対応する機能のキーコード又はスルーコードに該当するか否かの判定を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の信号発生器。
【請求項4】
表示部を備え、
制御部が、分割されたコードが対応する機能のキーコード又はスルーコードのいずれにも該当しない場合には、前記表示部又は制御用コンピュータにエラー表示を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の信号発生器。
【請求項5】
制御部は、許可されている機能を示す状態表示を表示部に表示し、複数の機能が許可されている状態では、前記複数の機能を示す状態表示を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の信号発生器。
【請求項6】
制御部は、特定時間操作が無い場合には、デフォルトの機能のみ使用可能な状態に戻ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の信号発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−168682(P2012−168682A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28222(P2011−28222)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】