信号電荷転送装置
【課題】転送チャネルの幅を信号電荷量に応じて連続的に変化させることにより、信号電荷の転送効率を改善する信号電荷転送装置の提供。
【解決手段】信号電荷入力部と、信号電荷転送部と、信号電圧出力部とを備え、信号電荷入力部に入力された信号電荷を信号電荷転送部に印加された転送電圧により信号電圧出力部へ転送し該信号電圧出力部で信号電荷を信号電圧に変換し該信号電圧を出力する信号電荷転送装置であって、信号電荷転送部内のポテンシャルウェルのポテンシャル勾配が、信号電荷の転送方向と垂直な面内で信号電荷転送部の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルが、上記面内のポテンシャル最大値から単調に減少する。
【解決手段】信号電荷入力部と、信号電荷転送部と、信号電圧出力部とを備え、信号電荷入力部に入力された信号電荷を信号電荷転送部に印加された転送電圧により信号電圧出力部へ転送し該信号電圧出力部で信号電荷を信号電圧に変換し該信号電圧を出力する信号電荷転送装置であって、信号電荷転送部内のポテンシャルウェルのポテンシャル勾配が、信号電荷の転送方向と垂直な面内で信号電荷転送部の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルが、上記面内のポテンシャル最大値から単調に減少する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)に代表される信号電荷転送装置に関し、より詳しくは、転送チャネルの幅を信号電荷量に応じて連続的に変化させることにより、信号電荷の転送効率を改善する信号電荷転送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDは、半導体基板上に絶縁膜を介して複数の転送電極(転送ゲート)を電荷転送方向に沿って被着形成して成る信号電荷転送部を備えている。CCDの信号電荷入力部に入力された信号電荷は、転送電極に印加される転送電圧(クロック電圧)により信号電荷転送部内で信号電圧出力部へ転送され、信号電圧出力部で信号電圧に変換されて出力される。CCDの電荷転送効率は次の各要因、
すなわち、
(1)信号電荷自身の自己誘起電界、
(2)熱拡散、
(3)外部電界(フリンジング・フィールド)、
(4)トラップへの捕獲、放出、
によって決められる。
【0003】
図10は、従来技術である特許第2565257号公報に開示された信号電荷転送装置を示す平面図である。図11は、図10に示される信号電荷転送装置のA−A’線断面におけるポテンシャルを示す図である。
特許第2565257号に開示された信号電荷転送装置1000は、図10及び図11に示す如く、信号電荷転送部1001内に所定のチャネル幅W1を有する第1のチャネル1002と、チャネル幅W1より狭いチャネル幅W2を有する第2のチャネル1003とを有する。第2のチャネル1003は、その外側にポテンシャルバリア1005を設けることで形成される。信号電荷入力部1004は、狭いチャネル幅W2に対応して設けられる。この信号電荷転送装置1000においては、信号電荷量に応じて信号電荷が第1のチャネル1002又は第2のチャネル1003内で信号電圧出力部1006へ転送される。すなわち、信号電荷量の多い大信号時には、信号電荷は広いチャンネル幅W1内で転送される。信号電荷量の少ない小信号時には、信号電荷は狭いチャンネル幅W2内で転送される。小信号時に狭いチャンネル幅W2内で電荷転送することにより、信号電荷の自己誘起電界が増すと共に、チャンネル断面積が減少する分トラップの影響が減る。よって、特許第2565257号の信号電荷転送装置1000は、信号電荷量の大小に拘わらず一定の広いチャネル幅で転送していた従来よりも、小信号時の転送効率を改善することができる。
【特許文献1】特許第2565257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、信号電荷は光電変換部で生成されるため、光の強弱に応じて信号電荷量は連続的に変換する。上記した特許第2565257号の信号電荷転送装置1000は、小信号時には狭いチャネル幅W2内で電荷転送し、中信号時及び大信号時には広いチャネル幅W1内で電荷転送していた。このため、信号電荷のチャネル幅の制御は、2段階程度でしか行うことができず、信号電荷量に応じて細かくチャネル幅を制御することはできなかった。よって、転送効率の大幅な改善は望めなかった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、信号電荷量に応じて連続的にチャネル幅を制御することで、小信号時、中信号時、大信号時の全てにおいて、良好な転送効率を確保することができる信号電荷転送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、信号電荷入力部と、信号電荷転送部と、信号電圧出力部とを備え、上記信号電荷入力部に入力された信号電荷を上記信号電荷転送部に印加された転送電圧により上記信号電圧出力部へ転送し該信号電圧出力部で上記信号電荷を信号電圧に変換し該信号電圧を出力する信号電荷転送装置であって、
上記信号電荷転送部内のポテンシャルウェルのポテンシャル勾配が、上記信号電荷の転送方向と垂直な面内で上記信号電荷転送部の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルは、上記面内のポテンシャル最大値から単調に減少する、信号電荷転送装置である。
【0006】
本発明によれば、信号電荷の連続的な変化に応じて信号電荷転送部のチャネル幅を段階的ではなく連続的に変えることができる。これは、信号電荷転送部内のポテンシャルウェルのポテンシャルの勾配が、信号電荷の転送方向と垂直な面内で信号電荷転送部の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、上記垂直な面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルが、上記垂直な面内のポテンシャル最大値から単調に減少するためである。
つまり、信号電荷量が小さい時にはポテンシャルが最大となる部分を含む小さい幅のチャネル内で信号電荷が蓄積及び転送され、信号電荷量が増えるにつれて次第に大きな幅のチャネル内で信号電荷が蓄積及び転送される。これにより、信号電荷量が非常に小さい時、電荷密度を充分に確保して転送に充分な自己誘起電界を確保することができる。また、チャンネル断面積が小さい分トラップの影響が小さくなり、信号電荷量が小さい時の転送効率が向上する。
信号電荷量が増えた場合でも、その増加の度合いに応じて少しずつチャネル幅が増加するので、信号電荷量に応じて転送に充分な電荷密度を確保して充分な自己誘起電界を確保することができる。また、チャネル断面積が必要以上に増えない分トラップの影響を抑制することができる。よって、信号電荷量の多寡に拘わらず信号電荷の転送効率が向上する。
【0007】
本発明においては、上記信号電荷入力部が上記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、上記片側の側壁に位置することが好ましい。
【0008】
この場合、信号電荷入力部から入力された信号電荷は、ポテンシャルが最大となる部分及びその近傍部分に速やかに蓄積される。よって、信号電荷量が小さい場合には、電荷転送方向に直角な面内において、信号電荷入力部から遠く離れた部分まで信号電荷が移動せずに済むので、電荷転送部内に存在し得る欠陥部分に信号電荷がトラップされるのを防ぎ、転送効率の劣化を防止することができる。
【0009】
本発明においては、上記信号電荷入力部が上記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、上記片側の側壁とは反対側の側壁に位置することが好ましい。
【0010】
信号電荷転送部上に設けられる転送ゲートに対する転送電圧の印加は、通常、信号電荷転送部に対し信号電荷入力部が位置する側とは反対側から行われる。転送ゲートは抵抗を有しているから、電圧印加部分から離れるにつれて次第に転送電圧パルス(クロック電圧パルス)が小さくなりその形状が崩れていく。このため、信号電荷入力部付近では転送電圧パルスが小さくなりその形状が崩れていることが多い。しかしながら、上記したように、信号電荷入力部と接続される側壁とは反対側の側壁にポテンシャルが最大となる部分を位置させることで、転送電圧の印加部から大きくはっきりした形状の転送電圧パルスを信号電荷に印加することができる。従って、低い転送電圧や高周波の転送電圧であっても、信号電荷の転送を転送電圧パルスに正確かつ速やかに応答させることができる。
【0011】
本発明においては、上記信号電圧出力部は、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分に対応する位置に設けられ、該信号電圧出力部の幅は、上記信号電荷転送部の幅よりも小さいことが好ましい。
【0012】
信号電荷量が小さい場合には、上述の如く、ポテンシャルが最大となる部分及びその近傍に信号電荷が蓄積される。よって、ポテンシャルが最大となる部分に対応する位置に信号電圧出力部を設けることで、少ない信号電荷を幅の小さい信号電圧出力部に真っ直ぐに導くことができる。これにより、信号電荷量が小さい場合における転送効率の劣化を防ぐことができる。
【0013】
本発明においては、上記信号電荷入力部が上記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、上記片側の側壁と、該片側の側壁とは反対側の側壁との中間に位置することが好ましい。
【0014】
この場合、ポテンシャルが最大となる部分が、信号電荷転送部の幅方向中央部に位置することになるから、信号電荷量が増えた場合に信号電荷転送部の幅方向中央部からその両側に略均等に広がるチャネルが形成される。信号電荷は、そのチャネルの両側から偏りなく信号電圧出力部へ転送される。よって、信号電荷量が小さい時は勿論、信号電荷量が増えても、転送効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
入力される信号電荷量の連続的な変化に応じて、信号電荷転送部内のチャネル幅を連続的に変えることができる。これにより、信号電荷量の少ない時及び多い時のいずれであっても、転送に充分な電荷密度を確保して充分な自己誘起電界を確保することができる。また、チャンネル断面積が抑制される分トラップの影響が減り、信号電荷量の多寡に拘わらず信号電荷の転送効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、第1の実施形態に係る信号電荷転送装置を含むCCDイメージセンサを示す平面図である。図2は、図1に示す信号電荷転送装置を抽出して示す平面図である。図3は、図1及び図2に示す信号電荷転送装置のA−A’線断面図及び信号電荷転送部内のポテンシャルを示す図である。図4は、図3に示す信号電荷転送部に形成されるチャネル内に信号電荷が蓄積されていく様子を順を追って模式的に示す図である。
【0017】
図1及び図2に示される如く、第1の実施形態に係る信号電荷転送装置1は、信号電荷入力部2と、信号電荷転送部3と、信号電圧出力部4とを備える。信号電荷転送装置1は、信号電荷入力部2に入力された信号電荷を、信号電荷転送部3に印加された転送電圧により信号電圧出力部4へ転送し、信号電圧出力部4で信号電荷を信号電圧に変換し該信号電圧を出力するものである。
【0018】
信号電荷転送装置1は、図1に示される如く、CCDイメージセンサ5の一部であり、図示例では、水平CCDとして機能している。図示例におけるCCDイメージセンサ5は、水平CCDとして機能する信号電荷転送装置1と、垂直CCD6と、フォトダイオード7とを備えている。
【0019】
図3に例示されるように、信号電荷転送装置1において、信号電荷転送部3内のポテンシャルウェルのポテンシャル勾配が、信号電荷の転送方向と垂直な面内で信号電荷転送部3の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、上記垂直な面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルは、上記垂直な面内のポテンシャル最大値から単調に減少する。
なお、図3下部に示すポテンシャル図では、ポテンシャルの正の向きを下向きにとっている。従って、このポテンシャル図において、ポテンシャル点が下方に位置する程、ポテンシャルが大きい(ポテンシャルが深い)ことになる。ポテンシャルが大きい程、信号電荷が蓄積され易い。
【0020】
従って、信号電荷が信号電荷転送部3内に入力されると、図4に示す如く、信号電荷はチャネル幅の小さいポテンシャル最大部分にまず蓄積される(図4(a))。これにより、信号電荷密度を充分に確保することができるので、信号電荷量の非常に少ない時にも転送に充分な自己誘起電界を確保することができる。また、チャネル断面積が小さい分トラップの影響が小さくなる。よって、信号電荷量が小さい場合の転送効率が向上する。
信号電荷量が増えると、それに応じて、ポテンシャル最大部分を含む次第に広いチャネル幅の範囲に信号電荷が蓄積されていく(図4(b)〜(d))。よって、信号電荷量が増えても、その増加に応じて少しずつチャネル幅が増加するので、信号電荷密度を充分に確保することができ、信号電荷量に応じて転送に充分な自己誘起電界を確保することができる。また、チャネル断面積が必要以上に増えない分トラップの影響を抑制することができる。よって、信号電荷量の多寡に拘わらず信号電荷の転送効率が向上する。
【0021】
第1の実施形態では、図3に示される如く、信号電荷入力部2が信号電荷転送部3の片側の側壁15に接続され、ポテンシャルが最大となる部分が、片側の側壁15に位置する。
【0022】
この場合、信号電荷入力部2から入力された信号電荷は、ポテンシャルが最大となる部分及びその近傍部分に速やかに蓄積される。よって、信号電荷量が小さい場合には、電荷転送方向に垂直な面内において、信号電荷入力部2から離れた部分、例えば片側の側壁15とは反対側の側壁16まで信号電荷が移動せずに済むので、信号電荷転送部3内に存在し得る欠陥部分に信号電荷がトラップされる確率を減らし、転送効率の劣化を防止することができる。
【0023】
次に、第1の実施形態に係る信号電荷転送装置1の製造方法の一例を図5を用いて説明する。図5は、第1の実施形態に係る信号電荷転送装置1の製造方法の一例を順を追って示す図である。なお、ここでは、図3及び図4に例示したポテンシャル勾配を形成する方法を中心に説明する。信号電荷入力部2及び信号電圧出力部4の製造工程については省略する。
【0024】
まず、シリコン等の基板8上にフォトレジスト9を塗布し、多階調マスク10を介してフォトレジスト9を露光する(図5(a))。多階調マスク10は、一端側A’から他端側Aにかけて光を通す量が次第に減少するように形成されたマスクである。多階調マスク10は、フォトレジスト9の厚みを一端側A’から他端側Aにかけて次第に変化させるために用いられる。
フォトレジスト9を露光し現像すると、厚みが一端側A’から他端側Aにかけて次第に増加し、上面に傾斜を持ったフォトレジスト9が形成される(図5(b))。なお、この例ではポジレジストを用いているが、ネガレジストを用いてもよい。
【0025】
次いで、傾斜を持ったフォトレジスト9を介して基板10にリンあるいはヒ素等の不純物を注入し、熱処理することにより、電荷転送方向と垂直な方向である信号電荷転送部幅方向において不純物濃度及び不純物の存在深さが連続的に変化する不純物拡散領域11を形成することができる(図5(c))。フォトレジスト9の厚みが薄い側A’で、不純物濃度が高く、不純物の存在深さが大きくなる。なお、図5では、簡単のため不純物の存在深さを一定に記載している。
次いで、フォトレジスト9をエッチングにより除去する(図5(d))。
【0026】
次いで、基板8上にゲート酸化膜12、転送ゲート(ゲート電極)13を形成する。これにより、信号電荷転送部3を形成する(図5(e))。このときの信号電荷転送部3内のポテンシャルウェルのポテンシャル勾配は、図5(e)下部に示す如く、信号電荷の転送方向と垂直な面内で信号電荷転送部3の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、上記垂直な面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルは、上記垂直な面内のポテンシャル最大値から単調に減少する。ポテンシャルは、不純物濃度が高い程大きくなるので、ポテンシャルの最大値は、不純物濃度が最大となる部分に現れる。図示例では、信号電荷転送部3の幅方向一端部でポテンシャルが最大となる。以上により、信号電荷転送装置1を形成することができる。
【0027】
第1の実施形態の他の例である信号電荷転送装置32及びその製造方法を図6を用いて説明する。図6は、信号電荷転送装置32の製造方法を順を追って示す図である。なお、ここでは、図4に例示したポテンシャル勾配を形成する方法を中心に説明する。信号電荷入力部及び信号電圧出力部の製造工程については省略する。
【0028】
図5に示す製造方法では、不純物濃度を基板8の幅方向で変化させることにより、ポテンシャル勾配を形成したが、図6に示す例では、ゲート酸化膜120の厚みを基板80の幅方向で変化させることにより、ポテンシャル勾配を形成する。
【0029】
図6に示す例では、まず、基板80の幅方向に不純物濃度一定の不純物拡散領域110を形成し、不純物拡散領域110上にゲート酸化膜120を形成する(図6(a))。
次いで、ゲート酸化膜120上にフォトレジスト90を塗布し、多階調マスク100を介してフォトレジスト90を露光する(図6(b))。
フォトレジスト90を露光し現像すると、厚みが一端側A’から他端側Aにかけて次第に減少し、上面に傾斜を持ったフォトレジスト90が形成される(図6(c))。なお、この例ではポジレジストを用いているが、ネガレジストを用いてもよい。
【0030】
次いで、フォトレジスト90及びゲート酸化膜120のエッチングを行うと、厚みが一端側A’から他端側Aにかけて次第に減少し、上面に傾斜を持ったゲート酸化膜120が形成される(図6(d))。
【0031】
次いで、ゲート酸化膜120上に転送ゲート(ゲート電極)130を形成する。これにより、信号電荷転送装置32を形成する(図6(e))。不純物拡散領域110が信号電荷転送部30となる。信号電荷転送部30内のポテンシャルの大きさは、ゲート酸化膜120の厚みに応じて変化する。つまり、ゲート酸化膜120の厚みが大きい部分ではポテンシャルも大きくなり、ゲート酸化膜120の厚みが小さい部分ではポテンシャルも小さくなる。よって、この製造方法においても、図5に示した製造方法の場合と同様のポテンシャルウェルを形成することができる。
【0032】
図7は、第2の実施形態に係る信号電荷転送装置を示す断面図及びその信号電荷転送部内のポテンシャルを示す図である。なお、第1の実施形態と同一の構成についは、同一の符号を付してその説明を省略する。
上記第1の実施形態では、図3に示される如く信号電荷入力部2が信号電荷転送部3の片側の側壁15に接続され、ポテンシャルが最大となる部分(不純物のドーズ量が最大)が、片側の側壁15に位置していた。
これに対し、第2の実施形態に係る信号電荷転送装置33では、図7に示す如く信号電荷入力部2が信号電荷転送部31の片側の側壁150に接続され、ポテンシャルが最大となる部分(不純物のドーズ量が最大)が、片側の側壁150とは反対側の側壁151に位置する。
【0033】
図1及び図2に示す如く、信号電荷転送部3上に設けられる転送ゲート13に対する転送電圧の印加は、通常、信号電荷入力部2が位置する側とは反対側(図2において斜線部で表した転送電圧印加部17)から行われる。転送ゲート13は抵抗を有しているから、転送電圧印加部17から離れるにつれて次第に転送電圧パルスが小さくなり形状が崩れていく。このため、転送ゲート13の信号電荷入力部2付近では転送電圧パルスが小さくなり、形状が崩れていることが多い。しかしながら、図7に示す如く、信号電荷入力部2と接続される側壁150とは反対側の側壁151にポテンシャルが最大となる部分を位置させることで、転送電圧印加部17から大きくはっきりした形状の転送電圧パルスを信号電荷に印加することができる。従って、低い転送電圧や高周波の転送電圧であっても、信号電荷の転送を転送電圧パルスの変化に正確かつ速やかに応答させることができる。
【0034】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図8及び図9を参照しつつ説明する。
図8は、第3の実施形態に係る信号電荷転送装置を示す平面図である。図9は、第3の実施形態に係る信号電荷転送装置のA−A’線断面図及び信号電荷転送部内のポテンシャルを示す図である。なお、図8では、ゲート酸化膜12及び転送ゲート13の図示を省略している。また、第1の実施形態と同一の構成についは、同一の符号を付してその説明を省略する。
第1の実施形態では、図1及び図2に示す如く、信号電圧出力部4の幅を信号電荷転送部3の幅と略同じに設定していた。信号電圧出力部4は、キャパシタの機能を有しており、その機能によって信号電荷を信号電圧に変換し、該信号電圧を出力する。従って、出力される信号電圧はキャパシタの容量に反比例する。ところが、信号電圧出力部4の幅と信号電荷転送部3の幅を略同じに設定した場合、信号電圧出力部4の断面積が大きくなることから容量も大きくなる。その結果、出力される信号電圧が小さくなり、信号電荷量が小さい場合には信号電圧を精度良く検出することができない可能性がある。
【0035】
そこで、第3の実施形態に係る信号電荷転送装置34では、図8に示す如く、信号電圧出力部21の幅を信号電荷転送部22の幅よりも小さく設定し、信号電圧出力部21のキャパシタとしての容量を小さくする。更に、第3の実施形態では、信号電圧出力部21を、信号電荷の転送方向と垂直な面内でポテンシャルが最大となる部分に対応する位置に設ける。
【0036】
信号電荷量が小さい場合、ポテンシャルが最大となる部分及びその近傍に電荷が蓄積される。よって、ポテンシャルが最大となる部分に対応する位置に信号電圧出力部21を設けることで、少ない信号電荷を幅の小さい信号電圧出力部21に真っ直ぐに導くことができる。これにより、信号電荷量が小さい場合における転送効率の劣化を防ぐことができる。
【0037】
なお、第3の実施形態においては、図9に示す如く、信号電荷入力部2が信号電荷転送部22の片側の側壁19に接続され、ポテンシャルが最大となる部分が、片側の側壁19と、片側の側壁19とは反対側の側壁20との中間に位置することが好ましい。
【0038】
この場合、ポテンシャルが最大となる部分が、信号電荷転送部22の幅方向中央部に位置することになるから、信号電荷量が増えた場合には信号電荷転送部22の幅方向中央部からその両側に略均等に広がるチャネルが形成される。信号電荷は、そのチャネルの両側から偏りなく信号電圧出力部21へスムースに転送される。よって、信号電荷量が小さい時は勿論、信号電荷量が増えても、転送効率を向上させることができる。
【0039】
なお、上記各実施形態では、信号電荷転送装置を水平CCDとして機能するように構成した場合を例にとって説明したが、本発明においては、垂直CCDとして機能するように製造してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、CCDイメージセンサを構成する水平CCD或いは垂直CCDとして用いられる信号電荷転送装置において、信号電荷の転送効率を信号電荷量の多寡に拘わらず改善し得る信号電荷転送装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態に係る信号電荷転送装置を含むCCDイメージセンサを示す平面図
【図2】図1に示す信号電荷転送装置を抽出して示す平面図
【図3】図1及び図2に示す信号電荷転送装置のA−A’線断面図
【図4】図3に示す信号電荷転送部に形成されるチャネル内に信号電荷が蓄積される様子を模式的に示す図
【図5】第1の実施形態に係る信号電荷転送装置の一例の製造方法を順を追って示す図
【図6】第1の実施形態に係る信号電荷転送装置の他の例の製造方法を順を追って示す図
【図7】第2の実施形態に係る信号電荷転送装置を示す断面図及びその信号電荷転送部内のポテンシャルを示す図
【図8】第3の実施形態に係る信号電荷転送装置を示す平面図
【図9】図8に示す信号電荷転送装置のA−A’線断面図及び信号電荷転送部内のポテンシャルを示す図
【図10】従来技術である特許第2565257号に開示された信号電荷転送装置を示す平面図
【図11】図10に示される信号電荷転送装置のA−A’線断面におけるポテンシャルを示す図
【符号の説明】
【0042】
1,32,33,34 信号電荷転送装置
2 信号電荷入力部
3,22,31 信号電荷転送部
4,21 信号電圧出力部
15,19,150 片側の側壁
16,20,151 反対側の側壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)に代表される信号電荷転送装置に関し、より詳しくは、転送チャネルの幅を信号電荷量に応じて連続的に変化させることにより、信号電荷の転送効率を改善する信号電荷転送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDは、半導体基板上に絶縁膜を介して複数の転送電極(転送ゲート)を電荷転送方向に沿って被着形成して成る信号電荷転送部を備えている。CCDの信号電荷入力部に入力された信号電荷は、転送電極に印加される転送電圧(クロック電圧)により信号電荷転送部内で信号電圧出力部へ転送され、信号電圧出力部で信号電圧に変換されて出力される。CCDの電荷転送効率は次の各要因、
すなわち、
(1)信号電荷自身の自己誘起電界、
(2)熱拡散、
(3)外部電界(フリンジング・フィールド)、
(4)トラップへの捕獲、放出、
によって決められる。
【0003】
図10は、従来技術である特許第2565257号公報に開示された信号電荷転送装置を示す平面図である。図11は、図10に示される信号電荷転送装置のA−A’線断面におけるポテンシャルを示す図である。
特許第2565257号に開示された信号電荷転送装置1000は、図10及び図11に示す如く、信号電荷転送部1001内に所定のチャネル幅W1を有する第1のチャネル1002と、チャネル幅W1より狭いチャネル幅W2を有する第2のチャネル1003とを有する。第2のチャネル1003は、その外側にポテンシャルバリア1005を設けることで形成される。信号電荷入力部1004は、狭いチャネル幅W2に対応して設けられる。この信号電荷転送装置1000においては、信号電荷量に応じて信号電荷が第1のチャネル1002又は第2のチャネル1003内で信号電圧出力部1006へ転送される。すなわち、信号電荷量の多い大信号時には、信号電荷は広いチャンネル幅W1内で転送される。信号電荷量の少ない小信号時には、信号電荷は狭いチャンネル幅W2内で転送される。小信号時に狭いチャンネル幅W2内で電荷転送することにより、信号電荷の自己誘起電界が増すと共に、チャンネル断面積が減少する分トラップの影響が減る。よって、特許第2565257号の信号電荷転送装置1000は、信号電荷量の大小に拘わらず一定の広いチャネル幅で転送していた従来よりも、小信号時の転送効率を改善することができる。
【特許文献1】特許第2565257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、信号電荷は光電変換部で生成されるため、光の強弱に応じて信号電荷量は連続的に変換する。上記した特許第2565257号の信号電荷転送装置1000は、小信号時には狭いチャネル幅W2内で電荷転送し、中信号時及び大信号時には広いチャネル幅W1内で電荷転送していた。このため、信号電荷のチャネル幅の制御は、2段階程度でしか行うことができず、信号電荷量に応じて細かくチャネル幅を制御することはできなかった。よって、転送効率の大幅な改善は望めなかった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、信号電荷量に応じて連続的にチャネル幅を制御することで、小信号時、中信号時、大信号時の全てにおいて、良好な転送効率を確保することができる信号電荷転送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、信号電荷入力部と、信号電荷転送部と、信号電圧出力部とを備え、上記信号電荷入力部に入力された信号電荷を上記信号電荷転送部に印加された転送電圧により上記信号電圧出力部へ転送し該信号電圧出力部で上記信号電荷を信号電圧に変換し該信号電圧を出力する信号電荷転送装置であって、
上記信号電荷転送部内のポテンシャルウェルのポテンシャル勾配が、上記信号電荷の転送方向と垂直な面内で上記信号電荷転送部の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルは、上記面内のポテンシャル最大値から単調に減少する、信号電荷転送装置である。
【0006】
本発明によれば、信号電荷の連続的な変化に応じて信号電荷転送部のチャネル幅を段階的ではなく連続的に変えることができる。これは、信号電荷転送部内のポテンシャルウェルのポテンシャルの勾配が、信号電荷の転送方向と垂直な面内で信号電荷転送部の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、上記垂直な面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルが、上記垂直な面内のポテンシャル最大値から単調に減少するためである。
つまり、信号電荷量が小さい時にはポテンシャルが最大となる部分を含む小さい幅のチャネル内で信号電荷が蓄積及び転送され、信号電荷量が増えるにつれて次第に大きな幅のチャネル内で信号電荷が蓄積及び転送される。これにより、信号電荷量が非常に小さい時、電荷密度を充分に確保して転送に充分な自己誘起電界を確保することができる。また、チャンネル断面積が小さい分トラップの影響が小さくなり、信号電荷量が小さい時の転送効率が向上する。
信号電荷量が増えた場合でも、その増加の度合いに応じて少しずつチャネル幅が増加するので、信号電荷量に応じて転送に充分な電荷密度を確保して充分な自己誘起電界を確保することができる。また、チャネル断面積が必要以上に増えない分トラップの影響を抑制することができる。よって、信号電荷量の多寡に拘わらず信号電荷の転送効率が向上する。
【0007】
本発明においては、上記信号電荷入力部が上記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、上記片側の側壁に位置することが好ましい。
【0008】
この場合、信号電荷入力部から入力された信号電荷は、ポテンシャルが最大となる部分及びその近傍部分に速やかに蓄積される。よって、信号電荷量が小さい場合には、電荷転送方向に直角な面内において、信号電荷入力部から遠く離れた部分まで信号電荷が移動せずに済むので、電荷転送部内に存在し得る欠陥部分に信号電荷がトラップされるのを防ぎ、転送効率の劣化を防止することができる。
【0009】
本発明においては、上記信号電荷入力部が上記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、上記片側の側壁とは反対側の側壁に位置することが好ましい。
【0010】
信号電荷転送部上に設けられる転送ゲートに対する転送電圧の印加は、通常、信号電荷転送部に対し信号電荷入力部が位置する側とは反対側から行われる。転送ゲートは抵抗を有しているから、電圧印加部分から離れるにつれて次第に転送電圧パルス(クロック電圧パルス)が小さくなりその形状が崩れていく。このため、信号電荷入力部付近では転送電圧パルスが小さくなりその形状が崩れていることが多い。しかしながら、上記したように、信号電荷入力部と接続される側壁とは反対側の側壁にポテンシャルが最大となる部分を位置させることで、転送電圧の印加部から大きくはっきりした形状の転送電圧パルスを信号電荷に印加することができる。従って、低い転送電圧や高周波の転送電圧であっても、信号電荷の転送を転送電圧パルスに正確かつ速やかに応答させることができる。
【0011】
本発明においては、上記信号電圧出力部は、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分に対応する位置に設けられ、該信号電圧出力部の幅は、上記信号電荷転送部の幅よりも小さいことが好ましい。
【0012】
信号電荷量が小さい場合には、上述の如く、ポテンシャルが最大となる部分及びその近傍に信号電荷が蓄積される。よって、ポテンシャルが最大となる部分に対応する位置に信号電圧出力部を設けることで、少ない信号電荷を幅の小さい信号電圧出力部に真っ直ぐに導くことができる。これにより、信号電荷量が小さい場合における転送効率の劣化を防ぐことができる。
【0013】
本発明においては、上記信号電荷入力部が上記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、上記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、上記片側の側壁と、該片側の側壁とは反対側の側壁との中間に位置することが好ましい。
【0014】
この場合、ポテンシャルが最大となる部分が、信号電荷転送部の幅方向中央部に位置することになるから、信号電荷量が増えた場合に信号電荷転送部の幅方向中央部からその両側に略均等に広がるチャネルが形成される。信号電荷は、そのチャネルの両側から偏りなく信号電圧出力部へ転送される。よって、信号電荷量が小さい時は勿論、信号電荷量が増えても、転送効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
入力される信号電荷量の連続的な変化に応じて、信号電荷転送部内のチャネル幅を連続的に変えることができる。これにより、信号電荷量の少ない時及び多い時のいずれであっても、転送に充分な電荷密度を確保して充分な自己誘起電界を確保することができる。また、チャンネル断面積が抑制される分トラップの影響が減り、信号電荷量の多寡に拘わらず信号電荷の転送効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、第1の実施形態に係る信号電荷転送装置を含むCCDイメージセンサを示す平面図である。図2は、図1に示す信号電荷転送装置を抽出して示す平面図である。図3は、図1及び図2に示す信号電荷転送装置のA−A’線断面図及び信号電荷転送部内のポテンシャルを示す図である。図4は、図3に示す信号電荷転送部に形成されるチャネル内に信号電荷が蓄積されていく様子を順を追って模式的に示す図である。
【0017】
図1及び図2に示される如く、第1の実施形態に係る信号電荷転送装置1は、信号電荷入力部2と、信号電荷転送部3と、信号電圧出力部4とを備える。信号電荷転送装置1は、信号電荷入力部2に入力された信号電荷を、信号電荷転送部3に印加された転送電圧により信号電圧出力部4へ転送し、信号電圧出力部4で信号電荷を信号電圧に変換し該信号電圧を出力するものである。
【0018】
信号電荷転送装置1は、図1に示される如く、CCDイメージセンサ5の一部であり、図示例では、水平CCDとして機能している。図示例におけるCCDイメージセンサ5は、水平CCDとして機能する信号電荷転送装置1と、垂直CCD6と、フォトダイオード7とを備えている。
【0019】
図3に例示されるように、信号電荷転送装置1において、信号電荷転送部3内のポテンシャルウェルのポテンシャル勾配が、信号電荷の転送方向と垂直な面内で信号電荷転送部3の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、上記垂直な面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルは、上記垂直な面内のポテンシャル最大値から単調に減少する。
なお、図3下部に示すポテンシャル図では、ポテンシャルの正の向きを下向きにとっている。従って、このポテンシャル図において、ポテンシャル点が下方に位置する程、ポテンシャルが大きい(ポテンシャルが深い)ことになる。ポテンシャルが大きい程、信号電荷が蓄積され易い。
【0020】
従って、信号電荷が信号電荷転送部3内に入力されると、図4に示す如く、信号電荷はチャネル幅の小さいポテンシャル最大部分にまず蓄積される(図4(a))。これにより、信号電荷密度を充分に確保することができるので、信号電荷量の非常に少ない時にも転送に充分な自己誘起電界を確保することができる。また、チャネル断面積が小さい分トラップの影響が小さくなる。よって、信号電荷量が小さい場合の転送効率が向上する。
信号電荷量が増えると、それに応じて、ポテンシャル最大部分を含む次第に広いチャネル幅の範囲に信号電荷が蓄積されていく(図4(b)〜(d))。よって、信号電荷量が増えても、その増加に応じて少しずつチャネル幅が増加するので、信号電荷密度を充分に確保することができ、信号電荷量に応じて転送に充分な自己誘起電界を確保することができる。また、チャネル断面積が必要以上に増えない分トラップの影響を抑制することができる。よって、信号電荷量の多寡に拘わらず信号電荷の転送効率が向上する。
【0021】
第1の実施形態では、図3に示される如く、信号電荷入力部2が信号電荷転送部3の片側の側壁15に接続され、ポテンシャルが最大となる部分が、片側の側壁15に位置する。
【0022】
この場合、信号電荷入力部2から入力された信号電荷は、ポテンシャルが最大となる部分及びその近傍部分に速やかに蓄積される。よって、信号電荷量が小さい場合には、電荷転送方向に垂直な面内において、信号電荷入力部2から離れた部分、例えば片側の側壁15とは反対側の側壁16まで信号電荷が移動せずに済むので、信号電荷転送部3内に存在し得る欠陥部分に信号電荷がトラップされる確率を減らし、転送効率の劣化を防止することができる。
【0023】
次に、第1の実施形態に係る信号電荷転送装置1の製造方法の一例を図5を用いて説明する。図5は、第1の実施形態に係る信号電荷転送装置1の製造方法の一例を順を追って示す図である。なお、ここでは、図3及び図4に例示したポテンシャル勾配を形成する方法を中心に説明する。信号電荷入力部2及び信号電圧出力部4の製造工程については省略する。
【0024】
まず、シリコン等の基板8上にフォトレジスト9を塗布し、多階調マスク10を介してフォトレジスト9を露光する(図5(a))。多階調マスク10は、一端側A’から他端側Aにかけて光を通す量が次第に減少するように形成されたマスクである。多階調マスク10は、フォトレジスト9の厚みを一端側A’から他端側Aにかけて次第に変化させるために用いられる。
フォトレジスト9を露光し現像すると、厚みが一端側A’から他端側Aにかけて次第に増加し、上面に傾斜を持ったフォトレジスト9が形成される(図5(b))。なお、この例ではポジレジストを用いているが、ネガレジストを用いてもよい。
【0025】
次いで、傾斜を持ったフォトレジスト9を介して基板10にリンあるいはヒ素等の不純物を注入し、熱処理することにより、電荷転送方向と垂直な方向である信号電荷転送部幅方向において不純物濃度及び不純物の存在深さが連続的に変化する不純物拡散領域11を形成することができる(図5(c))。フォトレジスト9の厚みが薄い側A’で、不純物濃度が高く、不純物の存在深さが大きくなる。なお、図5では、簡単のため不純物の存在深さを一定に記載している。
次いで、フォトレジスト9をエッチングにより除去する(図5(d))。
【0026】
次いで、基板8上にゲート酸化膜12、転送ゲート(ゲート電極)13を形成する。これにより、信号電荷転送部3を形成する(図5(e))。このときの信号電荷転送部3内のポテンシャルウェルのポテンシャル勾配は、図5(e)下部に示す如く、信号電荷の転送方向と垂直な面内で信号電荷転送部3の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、上記垂直な面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルは、上記垂直な面内のポテンシャル最大値から単調に減少する。ポテンシャルは、不純物濃度が高い程大きくなるので、ポテンシャルの最大値は、不純物濃度が最大となる部分に現れる。図示例では、信号電荷転送部3の幅方向一端部でポテンシャルが最大となる。以上により、信号電荷転送装置1を形成することができる。
【0027】
第1の実施形態の他の例である信号電荷転送装置32及びその製造方法を図6を用いて説明する。図6は、信号電荷転送装置32の製造方法を順を追って示す図である。なお、ここでは、図4に例示したポテンシャル勾配を形成する方法を中心に説明する。信号電荷入力部及び信号電圧出力部の製造工程については省略する。
【0028】
図5に示す製造方法では、不純物濃度を基板8の幅方向で変化させることにより、ポテンシャル勾配を形成したが、図6に示す例では、ゲート酸化膜120の厚みを基板80の幅方向で変化させることにより、ポテンシャル勾配を形成する。
【0029】
図6に示す例では、まず、基板80の幅方向に不純物濃度一定の不純物拡散領域110を形成し、不純物拡散領域110上にゲート酸化膜120を形成する(図6(a))。
次いで、ゲート酸化膜120上にフォトレジスト90を塗布し、多階調マスク100を介してフォトレジスト90を露光する(図6(b))。
フォトレジスト90を露光し現像すると、厚みが一端側A’から他端側Aにかけて次第に減少し、上面に傾斜を持ったフォトレジスト90が形成される(図6(c))。なお、この例ではポジレジストを用いているが、ネガレジストを用いてもよい。
【0030】
次いで、フォトレジスト90及びゲート酸化膜120のエッチングを行うと、厚みが一端側A’から他端側Aにかけて次第に減少し、上面に傾斜を持ったゲート酸化膜120が形成される(図6(d))。
【0031】
次いで、ゲート酸化膜120上に転送ゲート(ゲート電極)130を形成する。これにより、信号電荷転送装置32を形成する(図6(e))。不純物拡散領域110が信号電荷転送部30となる。信号電荷転送部30内のポテンシャルの大きさは、ゲート酸化膜120の厚みに応じて変化する。つまり、ゲート酸化膜120の厚みが大きい部分ではポテンシャルも大きくなり、ゲート酸化膜120の厚みが小さい部分ではポテンシャルも小さくなる。よって、この製造方法においても、図5に示した製造方法の場合と同様のポテンシャルウェルを形成することができる。
【0032】
図7は、第2の実施形態に係る信号電荷転送装置を示す断面図及びその信号電荷転送部内のポテンシャルを示す図である。なお、第1の実施形態と同一の構成についは、同一の符号を付してその説明を省略する。
上記第1の実施形態では、図3に示される如く信号電荷入力部2が信号電荷転送部3の片側の側壁15に接続され、ポテンシャルが最大となる部分(不純物のドーズ量が最大)が、片側の側壁15に位置していた。
これに対し、第2の実施形態に係る信号電荷転送装置33では、図7に示す如く信号電荷入力部2が信号電荷転送部31の片側の側壁150に接続され、ポテンシャルが最大となる部分(不純物のドーズ量が最大)が、片側の側壁150とは反対側の側壁151に位置する。
【0033】
図1及び図2に示す如く、信号電荷転送部3上に設けられる転送ゲート13に対する転送電圧の印加は、通常、信号電荷入力部2が位置する側とは反対側(図2において斜線部で表した転送電圧印加部17)から行われる。転送ゲート13は抵抗を有しているから、転送電圧印加部17から離れるにつれて次第に転送電圧パルスが小さくなり形状が崩れていく。このため、転送ゲート13の信号電荷入力部2付近では転送電圧パルスが小さくなり、形状が崩れていることが多い。しかしながら、図7に示す如く、信号電荷入力部2と接続される側壁150とは反対側の側壁151にポテンシャルが最大となる部分を位置させることで、転送電圧印加部17から大きくはっきりした形状の転送電圧パルスを信号電荷に印加することができる。従って、低い転送電圧や高周波の転送電圧であっても、信号電荷の転送を転送電圧パルスの変化に正確かつ速やかに応答させることができる。
【0034】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図8及び図9を参照しつつ説明する。
図8は、第3の実施形態に係る信号電荷転送装置を示す平面図である。図9は、第3の実施形態に係る信号電荷転送装置のA−A’線断面図及び信号電荷転送部内のポテンシャルを示す図である。なお、図8では、ゲート酸化膜12及び転送ゲート13の図示を省略している。また、第1の実施形態と同一の構成についは、同一の符号を付してその説明を省略する。
第1の実施形態では、図1及び図2に示す如く、信号電圧出力部4の幅を信号電荷転送部3の幅と略同じに設定していた。信号電圧出力部4は、キャパシタの機能を有しており、その機能によって信号電荷を信号電圧に変換し、該信号電圧を出力する。従って、出力される信号電圧はキャパシタの容量に反比例する。ところが、信号電圧出力部4の幅と信号電荷転送部3の幅を略同じに設定した場合、信号電圧出力部4の断面積が大きくなることから容量も大きくなる。その結果、出力される信号電圧が小さくなり、信号電荷量が小さい場合には信号電圧を精度良く検出することができない可能性がある。
【0035】
そこで、第3の実施形態に係る信号電荷転送装置34では、図8に示す如く、信号電圧出力部21の幅を信号電荷転送部22の幅よりも小さく設定し、信号電圧出力部21のキャパシタとしての容量を小さくする。更に、第3の実施形態では、信号電圧出力部21を、信号電荷の転送方向と垂直な面内でポテンシャルが最大となる部分に対応する位置に設ける。
【0036】
信号電荷量が小さい場合、ポテンシャルが最大となる部分及びその近傍に電荷が蓄積される。よって、ポテンシャルが最大となる部分に対応する位置に信号電圧出力部21を設けることで、少ない信号電荷を幅の小さい信号電圧出力部21に真っ直ぐに導くことができる。これにより、信号電荷量が小さい場合における転送効率の劣化を防ぐことができる。
【0037】
なお、第3の実施形態においては、図9に示す如く、信号電荷入力部2が信号電荷転送部22の片側の側壁19に接続され、ポテンシャルが最大となる部分が、片側の側壁19と、片側の側壁19とは反対側の側壁20との中間に位置することが好ましい。
【0038】
この場合、ポテンシャルが最大となる部分が、信号電荷転送部22の幅方向中央部に位置することになるから、信号電荷量が増えた場合には信号電荷転送部22の幅方向中央部からその両側に略均等に広がるチャネルが形成される。信号電荷は、そのチャネルの両側から偏りなく信号電圧出力部21へスムースに転送される。よって、信号電荷量が小さい時は勿論、信号電荷量が増えても、転送効率を向上させることができる。
【0039】
なお、上記各実施形態では、信号電荷転送装置を水平CCDとして機能するように構成した場合を例にとって説明したが、本発明においては、垂直CCDとして機能するように製造してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、CCDイメージセンサを構成する水平CCD或いは垂直CCDとして用いられる信号電荷転送装置において、信号電荷の転送効率を信号電荷量の多寡に拘わらず改善し得る信号電荷転送装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態に係る信号電荷転送装置を含むCCDイメージセンサを示す平面図
【図2】図1に示す信号電荷転送装置を抽出して示す平面図
【図3】図1及び図2に示す信号電荷転送装置のA−A’線断面図
【図4】図3に示す信号電荷転送部に形成されるチャネル内に信号電荷が蓄積される様子を模式的に示す図
【図5】第1の実施形態に係る信号電荷転送装置の一例の製造方法を順を追って示す図
【図6】第1の実施形態に係る信号電荷転送装置の他の例の製造方法を順を追って示す図
【図7】第2の実施形態に係る信号電荷転送装置を示す断面図及びその信号電荷転送部内のポテンシャルを示す図
【図8】第3の実施形態に係る信号電荷転送装置を示す平面図
【図9】図8に示す信号電荷転送装置のA−A’線断面図及び信号電荷転送部内のポテンシャルを示す図
【図10】従来技術である特許第2565257号に開示された信号電荷転送装置を示す平面図
【図11】図10に示される信号電荷転送装置のA−A’線断面におけるポテンシャルを示す図
【符号の説明】
【0042】
1,32,33,34 信号電荷転送装置
2 信号電荷入力部
3,22,31 信号電荷転送部
4,21 信号電圧出力部
15,19,150 片側の側壁
16,20,151 反対側の側壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号電荷入力部と、信号電荷転送部と、信号電圧出力部とを備え、前記信号電荷入力部に入力された信号電荷を前記信号電荷転送部に印加された転送電圧により前記信号電圧出力部へ転送し該信号電圧出力部で前記信号電荷を信号電圧に変換し該信号電圧を出力する信号電荷転送装置であって、
前記信号電荷転送部内のポテンシャルウェルのポテンシャル勾配が、前記信号電荷の転送方向と垂直な面内で前記信号電荷転送部の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、前記面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルが、前記面内のポテンシャル最大値から単調に減少する、信号電荷転送装置。
【請求項2】
前記信号電荷入力部が前記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、前記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、前記片側の側壁に位置することを特徴とする、請求項1に記載の信号電荷転送装置。
【請求項3】
前記信号電荷入力部が前記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、前記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、前記片側の側壁とは反対側の側壁に位置することを特徴とする、請求項1に記載の信号電荷転送装置。
【請求項4】
前記信号電圧出力部は、前記面内においてポテンシャルが最大となる部分に対応する位置に設けられ、該信号電圧出力部の幅は、前記信号電荷転送部の幅よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の信号電荷転送装置。
【請求項5】
前記信号電荷入力部が前記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、前記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、前記片側の側壁と、該片側の側壁とは反対側の側壁との中間に位置することを特徴とする、請求項4に記載の信号電荷転送装置。
【請求項1】
信号電荷入力部と、信号電荷転送部と、信号電圧出力部とを備え、前記信号電荷入力部に入力された信号電荷を前記信号電荷転送部に印加された転送電圧により前記信号電圧出力部へ転送し該信号電圧出力部で前記信号電荷を信号電圧に変換し該信号電圧を出力する信号電荷転送装置であって、
前記信号電荷転送部内のポテンシャルウェルのポテンシャル勾配が、前記信号電荷の転送方向と垂直な面内で前記信号電荷転送部の幅方向全域にわたって連続しており、且つ、前記面内においてポテンシャルが最大となる部分以外の部分のポテンシャルが、前記面内のポテンシャル最大値から単調に減少する、信号電荷転送装置。
【請求項2】
前記信号電荷入力部が前記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、前記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、前記片側の側壁に位置することを特徴とする、請求項1に記載の信号電荷転送装置。
【請求項3】
前記信号電荷入力部が前記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、前記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、前記片側の側壁とは反対側の側壁に位置することを特徴とする、請求項1に記載の信号電荷転送装置。
【請求項4】
前記信号電圧出力部は、前記面内においてポテンシャルが最大となる部分に対応する位置に設けられ、該信号電圧出力部の幅は、前記信号電荷転送部の幅よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の信号電荷転送装置。
【請求項5】
前記信号電荷入力部が前記信号電荷転送部の片側の側壁に接続され、前記面内においてポテンシャルが最大となる部分が、前記片側の側壁と、該片側の側壁とは反対側の側壁との中間に位置することを特徴とする、請求項4に記載の信号電荷転送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−53461(P2008−53461A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228180(P2006−228180)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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