修飾型Cpn10およびPRRシグナル伝達
本発明は、Ala Cpn10ポリペプチドと比較して、PRRリガンドに対する増加した親和性を有する、単離されたCpn10ポリペプチドに関する。別の実施形態では、本発明は、修飾型シャペロニン10ポリペプチド、およびこれをコードする核酸、このようなポリペプチドを含む組成物、ならびにそれらの使用にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾型シャペロニン10ポリペプチド、およびこれをコードする核酸に関する。また、本発明は、シャペロニン10の突然変異体、およびこのようなポリペプチドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱ショックタンパク質10(Hsp10)および初期妊娠因子(EPF)としても知られる哺乳類のシャペロニン10(Cpn10)は一般に、熱ショックタンパク質60(Hsp60)としても知られるシャペロニン60(Cpn60)と一緒に、タンパク質のフォールディングに関与するミトコンドリア「分子シャペロン」タンパク質として特徴付けられている。Cpn10およびCpn60は、それぞれ細菌タンパク質GroESおよびGroELのホモログである。GroESおよびCpn10は各々オリゴマー化して、前者がGroEL分子14個、後者がCpn60分子7個で構成されるバレル構造の上に蓋として結合する7員環になり、この複合体に変性タンパク質を繋留する(Bukau and Horwich, 1998, Cell 92:351〜366(非特許文献1);Hartl and Hayer−Hartl, 2002, Science 295:1852〜1858(非特許文献2))。
【0003】
Cpn10タンパク質は、種間で高度に保存されている。ヒトCpn10は、ウシ、イヌ、ヒツジ、ブタのCpn10と100%同一であり、ラットのCpn10とはアミノ酸位置が1箇所異なるだけである。ヒトCpn10は、大腸菌(Escherichia coli)由来のGroESとの配列相同性が38%(類似性60%)である。Cpn10/GroESタンパク質は、各モノマーが基本的に3種類の構造領域すなわち、コアの逆平行βバレル領域と、これに隣接する「ルーフ(roof)」βヘアピンループ領域と、「可動性(mobile)ループ」領域とで構成される、ドーム形をした七量体のリングである。各モノマーの逆平行βバレル領域がドームのコアを形成し、七量体として連結されると各モノマーのβヘアピンループがドームのルーフを形成する。それぞれのモノマーにおいて、可動性ループ領域は、ルーフループとは反対側のβバレルの端にある。逆平行βバレル領域の一部が、空洞の内側に向いている下側のリム領域を形成する。この下側のリム領域には、75位のチロシン(Y75)をはじめとして、系統発生的に保存された多数のアミノ酸が含まれる。
【0004】
分子シャペロンとしての細胞内での役割だけでなく、Cpn10は細胞表面(Bellesら, 1999, Infect Immun 67:4191〜4200(非特許文献3)を参照のこと)や細胞外液(Shinら, 2003, J Biol Chem 278:7607〜7616(非特許文献4)を参照のこと)にも頻繁に見られ、次第に炎症性疾患の治療における潜在性を持つ免疫応答制御因子として認識されるようになっている。その結果、最近になって人間の関節リウマチ患者(Vanagsら Lancet 2006, 368:855〜863(非特許文献5))および乾癬患者(Williamsら Arch. Dermatol. 2008, 144:683〜685(非特許文献6))の治療におけるCpn10の有効性と安全性が立証されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bukau and Horwich, 1998, Cell 92:351〜366
【非特許文献2】Hartl and Hayer−Hartl, 2002, Science 295:1852〜1858
【非特許文献3】Bellesら, 1999, Infect Immun 67:4191〜4200
【非特許文献4】Shinら, 2003, J Biol Chem 278:7607〜7616
【非特許文献5】Vanagsら Lancet 2006, 368:855〜863
【非特許文献6】Williamsら Arch. Dermatol. 2008, 144:683〜685
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この免疫調節活性を媒介しているCpn10分子内の部位については、依然として特定しきれずにいる。本発明は、Cpn10の免疫調節活性、特にToll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合ドメインLRR含有ファミリー(NLR)、RIG−I様受容体(RLR)、IRFのDNA依存性活性化因子(DAI)、C型レクチン受容体(CLR)またはIFI20X/IFI16ファミリーのメンバー(Ifi16、Aim2、MNDA、IFIXなど)などのパターン認識受容体(PRR)のリガンドを結合するにあたってそれが果たす役割に、Cpn10の修飾による影響がおよぶという発見に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、Ala−Cpn10ポリペプチド(配列番号3)と比較して、核酸ベースのPRRリガンドに対する増加した親和性を有する、単離されたCpn10ポリペプチドが得られる。
【0008】
PRRは、Toll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合ドメインLRR含有ファミリー(NLR)、RIG−I様受容体(RLR)、IRFのDNA依存性活性化因子(DAI)、C型レクチン受容体(CLR)またはIFI20X/IFI16ファミリーのメンバー(Ifi16、Aim2、MNDA、IFIXなど)であってもよい。
【0009】
TLRは、TLR3、TLR7、TLR8またはTLR9のうちの少なくとも1つからなる群より選択されるものであってもよい。一実施形態では、TLRがTLR9であってもよい。
【0010】
リガンドは、アゴニストであってもアンタゴニストであってもよい。一実施形態では、前記ポリペプチドは、Ala−Cpn10ポリペプチドと比較して、より大きい正味の正電荷を有する。
【0011】
単離されたポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチドと比較して、N末端にグリシン(G)によるアミノ酸挿入をさらに含むものであってもよい。このポリペプチドは、天然由来のものであってもよいし、組換え生成したものや合成的に生成したものであってもよい。Cpn10は、真核生物起源のものであってもよい。ポリペプチドは、哺乳類起源のものであってもよい。ポリペプチドは、ヒトCpn10であってもよい。
【0012】
もうひとつの実施形態では、単離されたポリペプチドが、Ala−Cpn10分子の少なくとも1つの突然変異を有する。突然変異は、アミノ酸の置換、付加または欠失であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。置換は、1つ以上の正に荷電した残基による、1つ以上のアミノ酸残基の置き換えであってもよい。もうひとつの実施形態では、1つ以上の負に荷電した残基が、中性または正に荷電した残基で置き換えられてもよい。突然変異的な付加は、1つ以上の正に荷電した残基を含むことであってもよい。突然変異的な欠失は、1つ以上の負に荷電した残基の除去であってもよい。
【0013】
もうひとつの実施形態では、中性の残基を正に荷電した残基で置き換えてもよい。正に荷電した残基は、アルギニン(R)、リジン(K)またはヒスチジン(H)であり得る。中性の残基は、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、システイン(C)、メチオニン(M)またはHであり得る。ここで、ヒスチジンはpKaが約6.5であるため、pH7.4(細胞外環境など)で11%前後イオン化され、pH6.0(TLR3、TLR7、TLR8、およびTLR9を含むリソソーム区画など)で76%前後イオン化されることになる。
【0014】
もうひとつの実施形態では、少なくとも1つの突然変異が、野生型Cpn10分子のN末端、βバレル、可動性ループ、ルーフループ、C末端または3つの結合ループのいずれかまたはこれらの任意の組み合わせに所在する。
【0015】
さらに別の実施形態では、ポリペプチドが、野生型Cpn10分子の1〜7位、9位、12〜14位、16位、18〜42位、44位、46位、50位、52〜63位、65〜69位、73〜79位、81位、83〜89位、91〜94位、96位、98位、100位、101位からなる群より選択されるかまたはこれらの任意の組み合わせのアミノ酸位置に、突然変異を含む。
【0016】
別の実施形態では、前記ポリペプチドが、A1(K、RまたはH)、G2(K、RまたはH)、Q3(K、RまたはH)、A4(K、RまたはH)、F5(K、RまたはH)、R6(KまたはH)、K7(RまたはH)、L9(K、RまたはH)、F12(K、RまたはH)、D13(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R14(KまたはH)、L16(K、RまたはH)、E18(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R19(KまたはH)、S20(K、RまたはH)、A21(K、RまたはH)、A22(K、RまたはH)、E23(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、T24(K、RまたはH)、V25(K、RまたはH)、T26(K、RまたはH)、R27(KまたはH)、G28(K、RまたはH)、G29(K、RまたはH)、I30(K、RまたはH)、M31(K、RまたはH)、L32(K、RまたはH)、P33(K、RまたはH)、E34(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K35(RまたはH)、S36(K、RまたはH)、Q37(K、RまたはH)、G38(K、RまたはH)、K39(K、RまたはH)、V40(K、RまたはH)、L41(K、RまたはH)、Q42(K、RまたはH)、T44(K、RまたはH)、V46(K、RまたはH)、S50(K、RまたはH)、S52(K、RまたはH)、K53(RまたはH)、G54(K、RまたはH)、K55(RまたはH)、G56(K、RまたはH)、G57(、K、RまたはH)、E58(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、I59(K、RまたはH)、Q60(K、RまたはH)、P61(K、RまたはH)、V62(K、RまたはH)、S63(K、RまたはH)、K65(RまたはH)、V66(K、RまたはH)、G67(K、RまたはH)、D68(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K69(RまたはH)、P73(K、RまたはH)、E74(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y75(E、GK、K、RまたはH)、G76(K、RまたはH)、G77(K、RまたはH)、T78(K、RまたはH)、K79(RまたはH)、V81(K、RまたはH)、D83(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT),D84(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K85(K、RまたはH)、D86(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y87(K、RまたはH)、F88(K、RまたはH)、L89(K、RまたはH)、R91(KまたはH)、D92(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、G93(K、RまたはH)、D94(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、L96(K、RまたはH)、K98(RまたはH)、V100(K、RまたはH)、D101(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、MH−Cpn10、MR−Cpn10、MK−Cpn10、MKK−Cpn10、MKKK−Cpn10、Ala−Cpn10−K21、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−K39、Ala−Cpn10−KK39、Ala−Cpn10−K57、Ala−Cpn10−KK57、Ala−Cpn10−K76、Ala−Cpn10−KK76、Ala−Cpn10−K85、Ala−Cpn10−KK85、Ala−Cpn10−K102、Ala−Cpn10−KK102、ΔD13、ΔE18、ΔE23、ΔE34、ΔE58、ΔE68、ΔE74、ΔD83、ΔD84、ΔD86、ΔD92、ΔD94、およびΔD101からなる群より選択される突然変異またはこれらの組み合わせを含む。
【0017】
もうひとつの実施形態では、突然変異が、表2に定義するようなN末端に所在する。この突然変異は挿入であってもよい。たとえば、N末端での挿入が、それぞれ配列番号307、313、316、319、310で示すように、MH、MK、MKK、MKKK、MRからなる群より選択される。
【0018】
また、Cpn10ポリペプチドは、それぞれ配列番号37または10で示すような置換Q3KまたはK7Rを含む。
【0019】
さらに別の実施形態では、突然変異が、表2に定義するような可動性ループに所在する。この突然変異は欠失であってもよい。欠失は、配列番号199および202に示すようなE23またはE34であってもよい。突然変異は挿入であってもよい。挿入は、配列番号322および325に示すようなK21またはKK21であってもよい。突然変異は置換であってもよい。たとえば、この置換は、配列番号16、64、67、70、73、76、79、265、268に示すようなA22K、E23Q、T24K、K27R、G29K、M31K、E34K、E34Q、Q37Kからなる群より選択される。
【0020】
本明細書では、2つ以上のモノマーが互いに共有結合的に結合された7つのCpn10モノマーを含む、単離されたCpn10オリゴマーも得られる。Cpn10七量体では、1つのモノマーのC末端と隣接するモノマーのN末端との間に共有結合が形成される。共有結合の形成に用いられるC末端およびN末端については、1つ以上のアミノ酸(Ala−Cpn10またはGly−Cpn10など)を付加して長くしてもよいし、1つ以上のアミノ酸を除去して短くしてもよい。たとえば、単離されたCpn10ポリペプチドは、配列番号355に示す共有結合Cpn10である。
【0021】
別の実施形態では、共有結合的に結合された七量体の各モノマーが、A1(K、RまたはH)、G2(K、RまたはH)、Q3(K、RまたはH)、A4(K、RまたはH)、F5(K、RまたはH)、R6(KまたはH)、K7(RまたはH)、L9(K、RまたはH)、F12(K、RまたはH)、D13(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R14(KまたはH),L16(K、RまたはH)、E18(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R19(KまたはH)、S20(K、RまたはH)、A21(K、RまたはH)、A22(K、RまたはH)、E23(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、T24(K、RまたはH)、V25(K、RまたはH)、T26(K、RまたはH)、R27(KまたはH)、G28(K、RまたはH)、G29(K、RまたはH)、I30(K、RまたはH)、M31(K、RまたはH)、L32(K、RまたはH)、P33(K、RまたはH)、E34(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K35(RまたはH)、S36(K、RまたはH)、Q37(K、RまたはH)、G38(K、RまたはH)、K39(K、RまたはH)、V40(K、RまたはH)、L41(K、RまたはH)、Q42(K、RまたはH)、T44(K、RまたはH)、V46(K、RまたはH)、S50(K、RまたはH)、S52(K、RまたはH)、K53(RまたはH)、G54(K、RまたはH)、K55(RまたはH)、G56(K、RまたはH)、G57(K、RまたはH)、E58(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、I59(K、RまたはH)、Q60(K、RまたはH)、P61(K、RまたはH)、V62(K、RまたはH)、S63(K、RまたはH)、K65(RまたはH)、V66(K、RまたはH)、G67(K、RまたはH)、D68(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K69(RまたはH)、P73(K、RまたはH)、E74(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y75(E、GK、K、RまたはH)、G76(K、RまたはH)、G77(K、RまたはH)、T78(K、RまたはH)、K79(RまたはH)、V81(K、RまたはH)、D83(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT),D84(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K85(K、RまたはH)、D86(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y87(K、RまたはH)、F88(K、RまたはH)、L89(K、RまたはH)、R91(KまたはH)、D92(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、G93(K、RまたはH)、D94(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、L96(K、RまたはH)、K98(RまたはH)、V100(K、RまたはH)、D101(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、MH−Cpn10、MR−Cpn10、MK−Cpn10、MKK−Cpn10、MKKK−Cpn10、Ala−Cpn10−K21、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−K39、Ala−Cpn10−KK39、Ala−Cpn10−K57、Ala−Cpn10−KK57、Ala−Cpn10−K76、Ala−Cpn10−KK76、Ala−Cpn10−K85、Ala−Cpn10−KK85、Ala−Cpn10−K102、Ala−Cpn10−KK102、ΔD13、ΔE18、ΔE23、ΔE34、ΔE58、ΔE68、ΔE74、ΔD83、ΔD84、ΔD86、ΔD92、ΔD94、およびΔD101からなる群より選択されるかまたはこれらの組み合わせの1つ以上の突然変異を含むものであってもよい。もうひとつの実施形態では、突然変異が、表2に定義するようなβバレルに所在する。少なくとも1つの突然変異が置換であってもよい。この置換は、配列番号13、25、28、31、46、49、52、55、58、61、58、61、85、88、91、94、97、118、121、124、145、148、160、163、166、169、172、175、178、181、184、187、190、217、244、250、253、256、259、262、274、286、289、292、295、298、301に示すようなL9K、F12K、D13K、D13N、E18A、E18K、E18M、E18Q、E18S、E18R、R19K、S20K、L41K、Q42K、T44K、S50K、S50R、V66K、D68K、D68N、K69R、P73K、G77K、T78K、K85R、D86K、D86N、D86R、Y87K、F88K、L89K、D92K、D92N、G93K、D94A、D94K、D94M、D94N、D94R、D94S、L96K、K98RまたはV100Kであってもよい。
【0022】
もうひとつの実施形態では、突然変異が、表2に定義するようなルーフループに所在する。この突然変異は挿入であってもよい。挿入は、配列番号334または337に示すようなK57またはKK57であってもよい。突然変異は欠失であってもよい。この欠失は、配列番号205に示すようなE58であってもよい。突然変異は置換であってもよく、たとえば、単離されたCpn10ポリペプチドが、配列番号6、22、100、103、106、109、112、115、271に示すようなX−Cpn10−K53E、Ala−Cpn10−S52K、G54K、K55R、G56K、E58K、E58Q、Q60K、P61Kである。もうひとつの実施形態では、単離されたCpn10ポリペプチドが、野生型Cpn10ポリペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸残基53位および/または55位で、ルーフループに1つ以上のアミノ酸置換を含む。たとえば、単離されたCpn10ポリペプチドは、配列番号8に示す配列でコードされるようなAla−Cpn10−K53M、K55Mであってもよい。
【0023】
もうひとつの実施形態では、突然変異が、表2に定義するような結合ループL1に所在する。この突然変異は挿入であってもよい。挿入は、配列番号328または331に示すようなK39またはKK39であってもよい。突然変異は置換であってもよい。たとえば、この置換は、配列番号19または82に示すようなK39RまたはV40Kからなる群より選択される。さらに別の実施形態では、突然変異が、表2に定義するような結合ループ2(下側のリム領域)に所在する。この突然変異は挿入であってもよい。この挿入は、配列番号340に示すようなK76であってもよい。突然変異は置換であってもよい。この置換は、配列番号130に示すようなX−Cpn10−Y75Kあるいは、配列番号127、133、136、139、142、238または277に示すようなAla−Cpn10−E74K、Y75H、Y75K、Y75R、Y75GKまたはG76Kであってもよい。突然変異は欠失であってもよい。この欠失は、配列番号208に示すようなE74であってもよい。
【0024】
別の実施形態では、突然変異が、表2に定義するような結合ループ3に所在する。この突然変異は挿入であってもよい。挿入は、配列番号343または346に示すようなK85またはKK85であってもよい。突然変異は置換であってもよい。この置換は、配列番号151、154、157、280または283に示すようなV81K、D83K、D83N、D84KまたはD84Nであってもよい。突然変異は欠失であってもよい。この欠失は、配列番号211に示すようなD84であってもよい。
【0025】
もうひとつの実施形態では、突然変異が、表2に定義するようなC末端に所在する。この突然変異は挿入であってもよい。挿入は、配列番号349または352に示すようなK102またはKK102であってもよい。突然変異は置換であってもよい。この置換は、配列番号193、196または304に示すようなD101K、D101NまたはD101Rであってもよい。
【0026】
もうひとつの実施形態では、ポリペプチドは、表2に定義するような野生型Cpn10分子のN末端、βバレル、可動性ループ、ルーフループ、C末端または3つの結合ループのいずれかからなる、Cpn10の1つ以上の領域内の任意の位置に、少なくとも2つの突然変異を含むものであってもよい。たとえば、Cpn10ポリペプチドは、Ala−Cpn10−F12K,D92K、E18K,D101K;E34Q,Y75K;Q42K,D101K;T44K,D101K;S50K,D101K;Q60K,T78K;E74K,Y75E;Y75GK;Y75G,G76K;Y75K,D94K;Y75K,D94Nを含むものであってもよい。ポリペプチドは、配列番号214、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247に示すようなアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドをコードする単離された核酸が得られる。
【0028】
一実施形態では、単離された核酸が、配列番号7、9、11、12、14、15、17、18、20、21、23、24、26、27、29、30、32、33、35、36、38、39、41、42、44、45、47、48、50、51、53、54、56、57、59、60、62、63、65、66、68、69、71、72、74、75、77、78、80、81、83、84、86、87、89、90、92、93、95、96、98、99、101、102、104、105、107、108、110、111、113、114、116、117、119、120、122、123、125、126、128、129、131、132、134、135、137、138、140、141、143、144、146、147、149、150、152、153、155、156、158、159、161、162、164、165、167、168、170、171、173、174、176、177、179、180、182、183、185、186、188、189、191、192、194、195、197、198、200、201、203、204、206、207、209、210、212、213、215、216、218、219、221、222、224、225、227、228、230、231、233、234、236、237、239、240、242、243、245、246、248、249、251、252、254、255、257、258、260、261、263、264、266、267、269、270、272、273、275、276、278、279、281、282、284、285 287、288、290、291、293、294、296、297、299、300、302、303、305、306、308、309、311、312、314、315、317、318、320、321、323、324、326、327、329、330、332、333、335、336、338、339、341、342、344、345、347、348、350、351、353、354または356からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むものであってもよい。
【0029】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様による核酸を含む発現構築物であって、1つ以上の制御配列に作動可能に連結された構築物が得られる。
【0030】
核酸は、コドン最適化Cpn10核酸であってもよい。
【0031】
コドン最適化核酸配列は、トランスファーRNAプールの有用性を高め、一層効率的な終止コドンを開拓し、RNA二次構造および/または不安定化要素を除去する1つ以上のヌクレオチド置換を有するものであってもよい。
【0032】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドを発現する宿主細胞、または第2の態様による核酸もしくは第3の態様による発現構築物を含む宿主細胞が得られる。
【0033】
本発明の第5の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドと選択的に結合する抗体が得られる。
【0034】
本発明の第6の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドと複合した炎症誘発性核酸または免疫抑制性核酸が得られる。
【0035】
本発明の第7の態様によれば、第1の態様によるポリペプチド、第2の態様による核酸または第3の態様による発現構築物あるいは第5の態様による抗体を含む、薬学的組成物が得られる。
【0036】
本発明の第8の態様によれば、第1の態様によるCpn10ポリペプチドまたは第2の態様による核酸の治療有効量を前記被験体に投与するステップを含む、被験体を治療する方法が得られる。
【0037】
治療によって、被験体における免疫応答が調節されることがある。免疫応答は、PRRシグナル伝達の制御によって調節されることがある。
【0038】
本発明の第9の態様によれば、第1の態様によるCpn10ポリペプチドまたは第2の態様による核酸の有効量を被験体に投与することを含む、被験体における疾患、障害または症状を治療または予防するための方法が得られる。
【0039】
疾患、障害または症状は、インスリン依存性糖尿病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン病(Sjorgren’s disease)、グレーブス病、多発性硬化症、関節リウマチ、慢性疲労症候群、アルツハイマー病、喘息、アレルギー、GVHD、アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis)、炎症性疼痛、乾癬、HIV、慢性免疫活性化(Chronic immune activation)、慢性筋炎、強皮症などの急性または慢性の炎症性疾患;または非小細胞肺癌、腎細胞癌、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、基底細胞癌などの癌;あるいは感染症から選択されるものであってもよい。感染症は、細菌感染、ウイルス感染または真菌感染に起因するものであってもよい。
【0040】
一実施形態では、慢性免疫活性化が、胃腸管から循環系への細菌産物および/またはウイルス産物の漏出と関連するものである。たとえば、漏出は、口腔、腸または小腸から起こり得る。細菌産物またはウイルス産物の漏出は、細菌感染、ウイルス感染、炎症性腸疾患および腸疾患などの感染または疾患によって引き起こされる場合がある。ウイルス感染の一例に、HIV感染またはC型肝炎感染がある。細菌産物は、LPSまたは核酸を含む場合がある。ウイルス産物は、核酸を含む場合がある。
【0041】
別の実施形態では、慢性免疫活性化が、LPSによるTLRシグナル伝達の免疫調節またはTLRへの核酸結合に関与する。LPSはTLR4と結合するのに対し、核酸はTLR3、7、8または9を結合できる。
【0042】
本発明の第10の態様によれば、被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、PRRシグナル伝達を調節するための方法であって、第1の態様によるCpn10ポリペプチドまたは第2の態様による核酸の治療有効量を投与することを含む方法が得られる。
【0043】
本発明の第11の態様によれば、被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、1つ以上の免疫調節物質の産生および/または分泌を調節するための方法であって、第1の態様によるCpn10ポリペプチドまたは第2の態様による核酸の治療有効量を投与することを含む、方法が得られる。
【0044】
ポリペプチドは、PRRリガンドを結合することによって、PRRからのシグナル伝達を調節するものであってもよい。
【0045】
免疫調節物質は、炎症促進性サイトカインもしくはケモカインまたは抗炎症性サイトカインもしくはケモカインであってもよい。サイトカインまたはケモカインは、TNF−α、IL−1、IL−6、RANTES、IL−10、IL−17、IL−23、TGF−βまたはI型インターフェロンから選択されるものであってもよい。I型インターフェロンは、IFNα、IFNβまたはIFNγであってもよい。
【0046】
本発明の第12の態様によれば、被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、1つ以上の免疫調節物質の産生および/または分泌を阻害するための方法であって、第1の態様によるCpn10ポリペプチドまたは第2の態様による核酸の有効量を投与することを含む、方法が得られる。
【0047】
ポリペプチドは、PRRリガンドを結合することによって、PRRからのシグナル伝達を調節するものであってもよい。PRRリガンドに対するポリペプチドの結合が、PRRを有する細胞に対する免疫調節作用を持つものであってもよい。この細胞は、抗原提示細胞であってもよいし、T細胞またはB細胞であってもよい。抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージまたは単球であってもよい。
【0048】
免疫調節物質は、炎症促進性サイトカインまたはケモカインであってもよいし、抗炎症性サイトカインまたはケモカインであってもよい。サイトカインまたはケモカインは、TNF−α、IL−1、IL−6、RANTES、IL−10、IL−17、IL−23、TGF−βまたはI型インターフェロンから選択されるものであってもよい。I型インターフェロンは、IFNα、IFNβまたはIFNγであってもよい。
【0049】
本発明の第13の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドと結合する化合物を同定する方法であって、
(a)候補化合物を前記ポリペプチドと接触させるステップ、および
(b)候補化合物と前記ポリペプチドとの間の複合体の形成をアッセイするステップ
を含む方法が得られる。
【0050】
複合体の形成のアッセイは、競合的結合アッセイ、ツーハイブリッドアッセイ、ゲル濾過クロマトグラフィ、AlphaScreen(登録商標)ハイスループットスクリーニング、電気泳動移動度シフト(ゲルシフト)アッセイおよび/またはプレートキャプチャアッセイであってもよい。
【0051】
アッセイは、定性的であっても定量的であってもよい。
【0052】
本発明の第14の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)前記ポリペプチドを、前記ポリペプチドと候補化合物との相互作用を可能にするのに適した条件下で、候補化合物と接触させるステップ、および
(b)前記ポリペプチドの活性をアッセイするステップ
を含む方法が得られる。
【0053】
ポリペプチドの活性のアッセイは、標識基質を加えるステップと、標識基質の変化を測定するステップとを含むものであってもよい。
【0054】
本発明の第15の態様によれば、
(a)第1の態様によるポリペプチドを、前記ポリペプチドと候補化合物との相互作用を可能にするのに適した条件下で、候補PRRリガンド化合物と接触させるステップ、および
(b)Ala−Cpn10と比較した、前記ポリペプチドとの前記化合物の親和性の増加をアッセイするステップ、および/または
(c)候補PRRリガンド化合物および第1の態様によるポリペプチドの存在下で、PRR活性化の増加または低下をアッセイするステップ
を含む、PRRリガンドをスクリーニングする方法が得られる。
【0055】
また、本発明は、上記の態様および実施形態による単離されたCpn10ポリペプチドおよびポリヌクレオチドのバリアント、誘導体、ホモログ、アナログ、フラグメントも企図する。
【0056】
上記の態様および実施形態によれば、Cpn10ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、どのような動物由来のものであってもよく、組換えDNA技術を用いて生成したものであっても、合成的に生成したものであってもよい。Cpn10は、真核生物のCpn10であってもよい。たとえば、Cpn10はヒトCpn10である。
【0057】
野生型Cpn10分子またはポリペプチドは、アセチル−Cpn10またはX−Cpn10(配列番号1)であってもよい。
【0058】
上記の態様および実施形態によれば、Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性は、ポリペプチドの七量体の生成に関与することがある。この七量体は、任意の組み合わせで突然変異体を含むものであってもよいし、非突然変異体ポリペプチドであってもよい。
【0059】
定義
本明細書の文脈において、「含む(comprising)」という表現は、「主に含む(including)が必ずしもそれだけとはかぎらない」ことを意味する。さらに、「含む(comprise)」や「含む(comprises)」などの「含む(comprising)」という単語の活用形についても、その形に応じて意味が変化する。
【0060】
「野生型」という用語は、Cpn10分子またはポリペプチドに関して本明細書で使用する場合、天然または非天然の形態を含む。たとえば、天然のヒトCpn10は、そのN末端でアセチル化される。本発明では、野生型Cpn10という用語の範囲内に、配列番号1に示すようなアセチル化された(X−Cpn10)分子またはアセチル化されていない(X−Cpn10)分子を企図する。
【0061】
「Ala−Cpn10」という用語は、大腸菌(E.coli)で産生されるヒトCpn10を示す。この場合、Ala−Cpn10はN末端のアラニン残基が多い状態で産生される。Ala−Cpn10の配列を配列番号3としてあげておく。
【0062】
「免疫調節物質」という用語は、免疫系と相互作用し、免疫応答の活性化、阻害、調節、維持、成熟、抑制または増強において役割を果たす分子メディエータを意味する。免疫調節物質は、炎症促進性サイトカインもしくはケモカインまたは抗炎症性サイトカインもしくはケモカインであってもよい。サイトカインまたはケモカインは、TNF−α、IL−1、IL−6、RANTES、IL−10、IL−17、IL−23、TGF−βまたはI型インターフェロンから選択されるものであってもよい。I型インターフェロンは、IFNα、IFNβまたはIFNγであってもよい。
【0063】
「パターン認識受容体」またはPRRという用語は、本明細書で使用する場合、Toll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合ドメインLRR含有ファミリー(NLR)、RIG−I様受容体(RLR)、IRFのDNA依存性活性化因子(DAI)、C型レクチン受容体(CLR)またはIFI20X/IFI16ファミリーのメンバー(Ifi16、Aim2、MNDA、およびIFIXなど)をはじめとするいくつかのクラスの生殖系列コードタンパク質を意味する(たとえば、審良(Akira)ら, Cell 2006, 124:783〜801;Latz, E.およびFitzgerald, K.A.(2008) Nat. Rev. Immunol. Vol. 8, No. 4, Posterを参照のこと)。通常、PRRは核酸ベースのPRR(通常は細胞内に常在)と細胞表面PRR(通常は疎水性リガンドを認識する)の2つの群に分けられる。PRRは、抗原提示細胞(樹状細胞、単球、マクロファージなど)、T細胞、B細胞を含むがこれに限定されるものではないさまざまな細胞型に存在する。
【0064】
「Toll様受容体」またはTLRという用語は、病原体と相互作用し、感染に対する宿主免疫応答を作動させる受容体を意味する。哺乳動物では、病原体によるTLRの活性化によって、病原体の散在を防止し、なおかつ樹状細胞上のTLRによって、獲得免疫の発達を指示する自然免疫の炎症過程が発動される。TLRは、ヒトで知られる生殖系列10における限られた数の遺伝子によってコードされる。これらの10受容体は、リポ多糖などの糖脂質、フラゲリンなどのタンパク質、dsRNAなどの核酸をはじめとして、多岐にわたる病原体由来の分子サインを認識する。TLRは、通常は疎水性リガンドを認識する細胞表面TLRと、通常は核酸ベースのリガンドを認識する細胞内TLR(すなわちTLR−3、TLR−7、TLR−8、TLR−9)の2つの群に分けられる。
【0065】
本明細書で使用する場合、「調節する(modulating)」、「調節する(modulates)」ならびにその活用形は、本発明の特定の調節分子または調節剤の非存在下での活性、生成、分泌のレベルまたはそれの他の機能と比較して、調節分子または調節剤の存在下における活性、生成、分泌のレベルまたは分子の機能が増大または減少することを示す。これらの用語は、増減の定量化を暗示するものではない。調節は、所望の結果を生成できればどのような大きさであってもよく、直接的であっても間接的であってもよい。
【0066】
「正味の電荷」という用語は、本明細書で使用する場合、分子の変化を示す。タンパク質、ペプチド、ポリペプチド(Cpn10ポリペプチドなど)といったアミノ酸配列を含む分子は、正または負に荷電できるものである。特定pHでのポリペプチドの正味の電荷については、ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式(Hasselbalch, K.A., 1917 Biochemische Zeitschrift 78: 112〜144)と、ポリペプチドのイオン化可能なアミノ酸側鎖およびN末端およびC末端の周知のpKa値とに基づいて計算で求めることが可能である。
【0067】
「正味の正電荷がより大きい」という表現は、本明細書で使用する場合、Ala−Cpn10に対する分子の正電荷の増加である。
【0068】
「可動性ループ」という表現は、18個のアミノ酸残基を含むCpn10分子の柔軟な領域である。可動性ループは、残基A21〜G38を含む(図1参照;残基の番号は、本明細書で説明するようなアセチル化されたまたはアセチル化されていないX−Cpn10(配列番号1)のいずれかに基づくものである)。
【0069】
「ルーフループ」という用語は、14個のアミノ酸残基を含むCpn10分子の柔軟な領域である。ルーフループは、残基S52〜V62を含む(図1参照;残基の番号は、本明細書で説明するようなアセチル化されたまたはアセチル化されていないX−Cpn10(配列番号1のいずれかに基づくものである)。
【0070】
本明細書で説明するような「βバレル」は、5つのセグメントすなわち、1番目、2番目、3番目、4番目、5番目のセグメントを含むCpn10分子の領域である。1番目のセグメントは、残基F8〜S20を含み、2番目のセグメントはL41〜G51を含み、3番目のセグメントはS63〜P73を含み、4番目のセグメントはG77〜V80を含み、5番目のセグメントは残基K85〜V100を含む(図1参照)。残基の番号は、本明細書で説明するようなX−Cpn10(配列番号1)に基づくものである。
【0071】
「結合ループ」という用語は、可動性ループおよびルーフループなど、Cpn10分子のさまざまなループをβバレルと接続するCpn10分子の柔軟な領域を示す。結合ループには、1番目、2番目、3番目の3つがある。1番目の結合ループは残基K39〜V40を含む。2番目の結合ループはE74〜G76を含み、3番目のループは残基V81〜D84を含む(図1参照)。残基の番号は、本明細書で説明するようなX−Cpn10(配列番号1)に基づくものである。
【0072】
「N末端」という用語は、残基A1〜K7を含むCpn10分子のN末端の柔軟な領域(図1参照)である。残基の番号は、本明細書で説明するようなX−Cpn10(配列番号1)に基づくものである。
【0073】
「C末端」という用語は、Cpn10分子のD101を含む(図1参照;残基の番号は、本明細書で説明するようなX−Cpn10(配列番号1)に基づくものである)。
【0074】
「アミノ酸」という用語は、本明細書で使用する場合、アミン官能基とカルボキシル官能基の両方を含む分子を意味する。
【0075】
「荷電した残基」という用語は、本明細書で使用する場合、正または負の電荷を持つための電位のある側鎖を有するアミノ酸残基を意味する。
【0076】
「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに結合されたアミノ酸で構成されるポリマーを意味する。「ポリペプチド」という用語は、全長タンパク質の一部を構成するものであってもよい。さらに、「ポリペプチド」という用語は、野生型Cpn10分子と比較してそのアミノ酸配列に少なくとも1つの修飾を呈することがあるポリペプチドを示す。この修飾は、ユビキチン化、(放射性核種またはさまざまな酵素での)標識、ペグ化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)などの共有ポリマー結合、オルニチンなどのアミノ酸の化学合成による挿入または置換(これらはヒトタンパク質で天然に発生するものである)といった技術などの化学修飾を含むものであってもよい。
【0077】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用する場合、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド塩基あるいは、天然ヌクレオチドの周知のアナログまたはこれらの混合物の一本鎖または二本鎖ポリマーを示す。この用語には、特に明記しないかぎり、特定配列ならびにこれと相補な配列を含む。「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書では同義に用いられる。
【0078】
「CpG」という用語は、本明細書で使用する場合、塩基の直鎖状配列においてその長さ方向にシトシンヌクレオチドがグアニンヌクレオチドの次に生じ、DNAで2つのヌクレオシドを連結するリン酸塩によって分離されているDNAの領域内のメチル化されていない部位を示す。「CpG」は、上記の意味と、グアニンと対をなすシトシン塩基とを区別するのに用いられる。抗原提示細胞を刺激する機能に違いのある3つの異なるタイプのCpGオリゴデオキシヌクレオチドが同定されている。すなわち、CpG−A(ヒトODN−2216)は形質細胞様樹状細胞(PDC)において大量のインターフェロン−α(IFN−α)およびIFN−βを誘導する。CpG−B(ヒトODN−2006およびマウスODN−1826)はPDC成熟を誘導し、B細胞の強力な活性化因子であるが少量のIFN−αおよびIFN−βしか刺激しない。これに対し、CpG−C(ヒトODN−M362)はB細胞およびNK細胞を誘導し、ヒト末梢血単核細胞のIFN−α産生を誘導する。
【0079】
「単離された」という表現は、対象となる分子が、存在する優勢な種になる(分子ベースで組成物/試料中に個々の他の種より豊富である)ような形で、対象となる分子がその天然の環境または宿主から取り出され、関連の不純物が低減または除去された状態のことを意味する。一般に、実質的に精製された画分とは、存在する全巨大分子種の少なくとも約30パーセントを目的の種が占める組成物である。通常、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全巨大分子種の約80〜90パーセントを超えて含むことになる。最も一般には、目的の種を実質的に同質になる(従来の検出方法では組成物中に汚染種を検出できない)まで精製し、その組成物は実質的に単一の巨大分子種からなる。
【0080】
本明細書で使用する場合、「実質的に」という表現は、大多数であるが必ずしもすべてとはかぎらないことを意味し、したがって、対応する野生型ポリペプチドの構成領域を「実質的に」欠いた修飾ポリペプチドといえば、その修飾ポリペプチドがその構成領域の一部を保持することがある。たとえば、対応する野生型ポリペプチドの構成領域を「実質的に」欠いた修飾ポリペプチドは、その構成領域の配列の50パーセント前後またはそれ未満を保持することがあるが、一般に構成領域は、取り除かれる領域の配列の割合に応じて、構造的および/または機能的に不活性にされる。
【0081】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、本明細書で使用する場合、1つのアミノ酸を同様の構造的および/または化学的特性を持つ他のアミノ酸で置き換えることを示す。保存的アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性および/または両親媒の性質のうちの1つ以上の類似性に基づいてなされるものであってもよい。たとえば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニンがある。荷電していない極性のアミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミンがある。正に荷電した(塩基性)極性のアミノ酸には、アルギニン、リジン、ヒスチジンがある。負に荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸がある。アミノ酸の「挿入」または「欠失」は、好ましくはアミノ酸約1〜20個、一層好ましくはアミノ酸1〜10個の範囲である。その変形については、組換えDNA技術を用いてポリペプチド分子におけるアミノ酸の挿入、欠失または置換を体系的に実施し、得られた組換えバリアントの活性をアッセイすることで、実験で求めるようにしてもよい。
【0082】
本明細書で使用する場合、「治療」、「治療する」という表現ならびにその活用形は、疾患状態または症候を改善し、疾患の確立を予防し、そうでなければ疾患または他の望ましくない症候の進行を何らかの形で予防、妨害、遅延または反転するあらゆる用途を示す。
【0083】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、その意味に、無毒であるが所望の治療効果または予防効果を得られるだけの作用剤または化合物の十分な量を含む。必要とされる厳密な量は、治療対象となる種、被験体の年齢と全身症状、治療対象となる症状の重症度、投与対象となる特定の作用剤、投与モードなどの要因に応じて、被験体ごとに異なる。このため、厳密な「有効量」を指定することが可能である。しかしながら、どの事例でも、適当な「有効量」は当業者が常法の実験だけで決定できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】A.Cpn10のさまざまな領域を示す大腸菌(E.coli)Cpn10(GroES)の結晶構造。Cpn10は、10kDaの同一のサブユニット7個からなる。B.Cpn10とGroESのアミノ酸配列を示す。GroESのリボン構造は、Xuら(Nature 1997, 388:741〜750)によって刊行されたX線結晶配位から作成したものであり、この構造では、通常は無秩序な可動性ループがGroELとの相互作用によって完全に整列配置されている(この図ではGroELを省略した)。
【図2】多数の生物王国から得たヒトCpn10とCpn10ホモログの配列アライメント。ヒトCpn10とは異なるアミノ酸に影を付けてある。可動性ループおよびβヘアピンルーフループの位置を示す。囲み(aからeでマーク)は、55残基βバレルコアの予測される境界を示す(Huntら, 1997 Cell 90: 361〜371)。ヒトCpn10に対するさまざまなホモログの同一性および類似性のパーセンテージを示す。各タンパク質のSwissProtの受入番号をあげておく。ヒトCpn10に対する配列の同一性(%)と類似性(%)の計算は、NCBIブラスト(Altschulら, 1997 Nucleic Acids Res. 25:3389〜3402)を用いて実施し、NS=有意な類似性が認められなかったことを示す。また、ExPASyプロテオミクスサーバーProtParam Tool(www.expasy.org/tools/protparam.html)を用いて等電点(pI)を計算した。
【図3】クーマシーブリリアントブルーで染色したSDS−PAGEによって、組換えCpn10タンパク質が>99%純粋であることが明らかになる。
【図4】1μgのTLR3アゴニストポリ(I:C)(合成dsRNAアナログ)を、50μgのCpn10バリアントと一緒に、表記の塩濃度で10mM Tris−HCl(pH7.6)にて23℃で1時間インキュベートした。試料を1%TAEアガロースゲルにて分離し、臭化エチジウムで染色した。遊離Cpn10が負電極(ゲルの頂部)に向かって遊走するのに対し、遊離ポリ(I:C)は正電極(ゲルの底部)に向かって遊走し、Cpn10−ポリ(I:C)の複合体は両方の分子の移動を遅らせる。
【図5】1μgのヒトODN−2216クラスA(TLR9アゴニスト;Invivogen)を、50μgのCpn10と一緒に、表記の塩濃度で10mM Tris−HCl(pH7.6)にて23℃で15分間インキュベートした。試料を1%TAEアガロースゲルにて分離し、臭化エチジウムで染色した。遊離Cpn10が負電極(ゲルの頂部)に向かって遊走するのに対し、遊離CpG−ODNは正電極(ゲルの底部)に向かって遊走し、Cpn10−CpG−ODNの複合体は両方の分子の移動を遅らせる。
【図6】0.5μgの大腸菌(E.coli)K12 ssRNA(Invivogen カタログ番号tlrl−ecrna)(TLR7/8アゴニスト)を、50μgのCpn10バリアントと一緒に、10mM Tris−HCl(pH7.6)中、表記の塩濃度(0、150および500mM NaCl)にて23℃で30分間インキュベートした。試料を1%TAEアガロースゲルにて分離し、臭化エチジウムで染色した。遊離Cpn10が負電極(ゲルの頂部)に向かって遊走するのに対し、遊離ssRNAは正電極(ゲルの底部)に向かって遊走し、Cpn10−ssRNAの複合体は両方の分子の移動を遅らせる。
【図7】CpGオリゴヌクレオチド(ODN)に対するCpn10結合の定量分析。調製緩衝液pH7.2(Invitrogen)中、Ala−Cpn10およびCpn10突然変異体を1μg/μlで調製し、96ウェルのプレートの三重ウェルに、4℃で16時間、50μgを吸着させた。結合しなかったタンパク質をデカントした後、プレートを1%BSAおよび5%スクロースのPBS溶液(pH7.2)で23℃で2時間ブロックした。PBS(pH7.2)中0.02μg/μlで調製された50μlの3’−ビオチン標識ヒトODN−2216クラス−A、ヒトODN−2006クラス−BまたはヒトODN−M362クラス−C(TLR9アゴニスト)(Proligo/Sigma)を各ウェルに加え、23℃で2時間インキュベートした。未結合のリガンドを、PBS(pH7.2)+0.05%Tween 20で5回洗浄して取り除いた。結合したCpG−ODNをストレプトアビジン−HRPおよびTMB検出系でA450nmにて分析した。結果は3つの複製の平均であり、各CpGに対するAla−Cpn10の結合のレベルに正規化したものである。
【図8】Cpn10がCpG−B ODN誘発NFκB活性を調節する。Genejuiceを製造業者の指示(Novogen)どおりに使用し、pNifty NFκB−ルシフェラーゼレポータープラスミド(InvivoGen)をRAW264.7(マウスマクロファージ)細胞にトランスフェクトした。24時間後、細胞をトリプシン処理し、カウントし、2.5×105個の細胞を1mlの培地にて24ウェルのプレートの各ウェルに蒔き、一晩放置して接着させた。100μgのCpn10構築物または調製緩衝液の対照を4μgのCpG−B ODN−1826(Invivogen)と混合し、遠心濾過装置YM10(Amicon)に通した。流動容量分全体をRAW264−pNIFty−LUC細胞に加え、37℃で5時間インキュベートした。細胞を洗浄した後、1ウェルあたり100μlのCCLR 1×溶液(Promegaルシフェラーゼ溶解緩衝液)で溶解させ、製造業者の指示どおりにルシフェラーゼ基質と混合し、ルシフェラーゼカウントを測定した。図は、100%のAla−Cpn10に正規化したNFκB活性化レベルを示すものである。
【図9】ポリ(I:C)刺激に対するCpn10突然変異体による影響。GeneJuiceを製造業者の指示(Novogen)どおりに使用し、pNifty NFkB−ルシフェラーゼ(InvivoGen)およびTLR3をコードするプラスミドをHEK293細胞に一過的にトランスフェクトした。24時間後、トランスフェクト細胞をトリプシン処理し、カウントし、1×105個の細胞を1mlの培地にて24ウェルのプレートの各ウェルに蒔き、24時間放置して接着させた。次に、100ugのCpn10、0.1ugのポリ(I:C)(InvivoGen)、10ulのSUPERase RNAse阻害因子(Ambion)を、各ウェルに24時間加えた。続いて上清を除去し、細胞をPBSで洗浄し、1×溶解緩衝液(Promega)で溶解させ、ルシフェラーゼをアッセイした。ルシフェラーゼのレベルを100%のポリ(I:C)単独に正規化した。値は3つ重複させたウェルの平均を表す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
Cpn10は、10kDaの同一のサブユニットからなるドーム形の七量体リングである(図1)。ドームの表面は親水性であり、高度に荷電されている。それぞれのCpn10サブユニットは、いくつかのループ構造によって結合される5つのセグメントで不規則なβバレルの形態を形成する。3つの小さな結合ループと、バレルから突出する2つの大きなループ伸展部がある。第1の伸展部は、七量体の中心に向かって伸展し、ドーム様構造のルーフを形成するβヘアピンループ(「ルーフループ」)である。興味深いことに、生理的な条件下でGroES(大腸菌(E.coli)Cpn10)のルーフには、ルーフループの先端に負に荷電した残基のクラスターが含まれるのに対し、哺乳類Cpn10のルーフでは、ルーフループの先端にアミノ酸の正に荷電したクラスターが含まれる。一方、バクテリオファージのCpn10(Gp31)からはルーフの大部分が完全に欠けている。また、この分子は、ドームの底から伸展し、Cpn60との相互作用を媒介する柔軟な18個のアミノ酸からなる可動性ループである、別の伸展部を有する。残基Glu−74、Tyr−75、Gly−76で構成される小さな接続ループのうちの1つは、ドームの底から伸展し、内側に突出して下側のリム領域を形成する。下側のリム領域のアミノ酸残基は、ほとんどの真核生物で系統発生的に保存されている。
【0086】
どのような機序または経路にも拘泥することなく、本発明者らは、Cpn10ポリペプチドの電荷を変更する、主にアミノ酸の置換、欠失、付加またはこれらの組み合わせによって一連の突然変異を生成し、Cpn10と1つ以上のPRRリガンドとの相互作用を改変する、特にPRRリガンドに対するCpn10の結合親和性(PRRシグナル伝達によって免疫系/応答を調節する機能の指標である)を高める上で、突然変異が有効であることを本明細書にて示す。PRRリガンドに対するCpn10ポリペプチドの結合には、PRRを持つ特定の免疫細胞に対する免疫調節作用がある。細胞は、抗原提示細胞であってもよいし、T細胞またはB細胞であってもよい。抗原提示細胞は、樹状細胞であってもよいし、マクロファージまたは単球であってもよい。
【0087】
Toll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合ドメインLRR含有ファミリー(NLR)、RIG−I様受容体(RLR)、IRFのDNA依存性活性化因子(DAI)、C型レクチン受容体(CLR)、IFI20X/IFI16ファミリー(Ifi16、Aim2、MNDAおよびIFIX)をはじめとするパターン認識受容体(PRR)は、免疫系の番人であり、特定の病原体関連分子パターン(PAMPS)を認識し、免疫応答を発動して、侵入してくる病原体に対する防御の最前線で働く。また、PRRは、自己分子が変化するとPRRを過剰に活性化させ、病的な状態を発生させることにつながる敗血症、自己免疫疾患または慢性炎症性疾患をはじめとする多くの炎症性症候群で、何らかの役割を果たしているようにも思われる。
【0088】
Cpn10ポリペプチド突然変異体
陽性残基の付加または陰性残基の除去による余分な正電荷の追加によって、核酸ベースのPRRリガンドに対して(Ala−Cpn10およびX−Cpn10よりも)かなり強く結合するCpn10分子が生成される。余分な正電荷は、(1)既存の表面/液(solution)露出中性残基または陰性残基を陽性残基で置き換える、(2)既存の表面/液露出陰性残基を中性残基で置き換える、(3)別の表面/液露出陽性残基を導入する(ループ構造またはN末端およびC末端を延長するなど)または(4)既存の表面/液露出陰性残基を取り除く(ループ構造またはN末端およびC末端を短くするなど)ことによって追加可能である。本発明者らが得た結果では、複数の正電荷を導入すると(Ala−Cpn10−Y75K、D94Kなど)、個々の突然変異よりも結合電位が有意に高まる場合があることも分かる。
【0089】
タンパク質の正味の電荷の計算
特定pHでのポリペプチドの正味の電荷を、ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式(Hasselbalch, K.A., 1917 Biochemische Zeitschrift 78: 112〜144)と、ポリペプチドのイオン化可能なアミノ酸側鎖ならびにN末端およびC末端の周知のpKa値とに基づいて計算する。ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式は、弱酸/塩基およびそのコンジュゲート塩基/酸を含有する溶液のpHは、以下の明らかなように、これら2種類の溶質のモル濃度の比にのみ左右され、希釈率とは無関係なままであることも示している。
ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式
酸の式:pH=pKa+log[A−]/[HA](C末端、Asp、Glu、Cys、Tyrで使用)
塩基の式:pH=pKa+log[B]/[BH+](N末端、Lys、Arg、Hisで使用)
式中、[A−]は関連する酸のコンジュゲート塩基のモル濃度(C末端、Asp、Glu、Cys、Tyr)を示し、[BH+]は、関連する塩基のコンジュゲート酸のモル濃度(N末端、Lys、Arg、His)を示す。ポリペプチド内のイオン化可能な基のpKa値は当該技術分野において周知であり、多数の学術雑誌やテキストに見いだすことが可能である。使用するpKa値の組次第で、計算で得られるタンパク質の正味の電荷は若干変わってくるが、これは本研究で得られる結論を変えるものではない。表3で用いたpKa値は、N末端8.0、C末端3.1、Lys 10.0、Arg 12.0、His 6.5、Glu 4.4、Asp 4.4、Tyr 10.0、Cys 8.5である(Stryer, L., 1988 「Biochemistry」 textbook 第3版, New York, W.H. Freeman, ISBN 0716719207)。
【0090】
このため、イオン化可能な基を複数有するポリペプチドでは、特定pHにおけるそのポリペプチドの正味の電荷を以下のようにして計算すればよい。
1.イオン化可能な残基(Cys、Asp、Glu、His、Lys、Arg、Tyr、カルボキシル末端、アミノ末端)をすべて列挙する。
2.イオン化可能な基のpKaがpH値から≧2単位離れている場合、計算なしで電荷を1、0、−1と割り当てることが可能である。たとえば、pH7.3で、リジン(pKa10.0)は100%プロトン化され、平均電荷が+1となる。一方、pH7.3では、グルタミン酸塩(pKa4.4)とアスパラギン酸塩(pKa4.4)がいずれも100%脱プロトン化され、平均電荷が−1となる。
3.ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式を使用して、特定pHでの各イオン化可能な基のイオン化率を計算する。表3では、pH7.3とpH7.4(生理的なpHとして採用)で計算を行った。
4.各イオン化可能な基のイオン化率(zi)に特定のポリペプチド内に生じる個々のイオン化可能な基の総数(ni)を掛け、各々のイオン化可能な基によって得られる総電荷を得る。次に、各々のイオン化可能な基によって得られるすべての電荷を総和(Z=Σnizi)して、特定pHでのそのポリペプチドの正味の電荷にすることで、特定pHでのポリペプチドの正味の電荷(Z)を得る。
【0091】
ポリペプチドの正味の電荷を求めるこのアプローチを使いやすいように自動化した、多数の無料で利用可能な資源が存在する。たとえば、Protein Calculator V3.3(http://www.scripps.edu/〜cdputnam/protcalc.html)は、アミノ酸配列に基づいてタンパク質の正味の電荷を求めるための無料で利用できるツールである。このツールを使用し、表3に示すような生理的pH(7.3〜7.4を採用)で多数のCpn10ポリペプチドの正味の電荷を求めた。
【0092】
突然変異のタイプ
陽性残基を加えるか陰性残基を取り除くことで、炎症誘発性核酸に対する親和性の高いCpn10バリアントを生成することが可能である。炎症誘発性核酸に対する親和性の高いCpn10バリアントを生成するのに利用した突然変異は、突然変異によってpH7.4での正電荷がAla−Cpn10よりも高いCpn10バリアントが得られるのであれば、アミノ酸残基の挿入、欠失、置換または付加あるいはこれらの組み合わせでよい。
【0093】
一実施形態では、図1bに定義するCpn10ポリペプチドのいずれかの領域などに対して、既存の残基を正に荷電した残基で置き換えてもよいし、負に荷電した残基を中性残基で置き換えてもよく、別の正に荷電した残基を加えたり、負に荷電した残基を取り除いたりしてもよい。突然変異については、部位特異的突然変異誘発、相同的組換え、トランスポゾン突然変異誘発または配列タグ突然変異誘発などの当該技術分野において周知のどのような手段で作り出してもよい。一般に、部位特異的突然変異誘発を使用する。
【0094】
当業者であれば、Ala−Cpn10よりもpH7.4での正電荷が高く、炎症誘発性核酸に対する親和性の高いCpn10バリアントを生じる突然変異の数とタイプについては、いずれも本発明の範囲に包含されることを認識するであろう。
【0095】
ポリペプチド
本明細書に開示するように、本発明は、単離されたCpn10ポリペプチドならびに、1つ以上のアミノ酸の欠失、付加または置換を含む核酸ベースのPRRリガンドに対する親和性をAla−Cpn10よりも高くすることを企図している。
【0096】
Cpn10は、天然のものであってもよいし、天然由来、組換えまたは合成Cpn10であってもよい。Cpn10分子は、真核生物から得られるどのようなCpn10ポリペプチドであってもよい。図2に示すような一例として、Cpn10は、酵母(出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)など)、線形動物(線虫(Caenorhabditis elegans)など)、カエル(ゼノパス・トロピカリス(Xenopus tropicalis)など)、ニワトリ(Gallus gallusなど)、ゼブラフィッシュ(ゼブラフィッシュ(Danio rerio)など)、ハエ(キイロショウジョウバエ(Drosphila melanogaster)などのショウジョウバエなど)、植物(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)など)または哺乳動物由来のものであってもよい。哺乳類のCpn10は、霊長類、マウス、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、ブタまたはウマであってもよい。あるいは、Cpn10は、古細菌由来のものであってもよい。特定の実施形態では、Cpn10がヒトCpn10である。
【0097】
また、本発明は、上記にて開示したようなヒトCpn10ポリペプチドホモログの修飾にも関し、ここで1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失または置換によって修飾されたこれらの分子ならびに、これらの修飾がどのように核酸ベースのPRRリガンドに対するこれらのCpn10ポリペプチドの親和性を高めることができるのかということも包含する。さらに、アミノ酸付加は、Cpn10ポリペプチドまたはそのフラグメントと、ポリヒスチジンタグなどの第2のポリペプチドまたはペプチドとの融合、マルトース結合タンパク質融合、グルタチオンSトランスフェラーゼ融合、緑色蛍光タンパク質融合あるいは、FLAG、c−mycまたはヘキサヒスチジンタグなどのエピトープタグの付加を伴うものであってもよい。Cpn10ポリペプチドは、N末端に開始メチオニンを含むものであってもよいし、含まないものであってもよい。たとえば、ヒトCpn10は、N末端に別のGSMトリペプチドを含むものであってもよく(たとえば、開示内容を本明細書に援用する国際特許出願公開第95/15338号パンフレットを参照のこと)、別のアラニン(A;配列番号3〜5)または別のグリシンを含むものであってもよい。また、本発明は、Cpn10のこのような修飾形態をコードするポリヌクレオチドの使用も企図する。ヒトCpn10に基づくまたは実質的にこれに由来する本発明のCpn10ポリペプチドの場合、当該ポリペプチドは、N末端配列AGQAFRKFL、MAGQ、AGQまたはAAGQを含むものであってもよく、任意に上述したような1つ以上の修飾を含む。
【0098】
「バリアント」という用語は、本明細書で使用する場合、実質的に類似の配列を示す。通常、ポリペプチド配列のバリアントは、共通して定性的な生物活性を持つ。さらに、これらのポリペプチド配列のバリアントは、配列同一性が少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%であり得る。「バリアント」という用語の意味には、本発明のポリペプチドのホモログも含まれる。ホモログは一般に、異なる種に由来するが、本明細書に開示の対応するポリペプチドと実質的に同じ生物機能または活性を持つポリペプチドである。
【0099】
さらに、「バリアント」という用語は、本発明のポリペプチドのアナログも含み、「アナログ」という用語は、本発明のポリペプチドの誘導体であるポリペプチドを意味し、この誘導体は、ポリペプチドが実質的に同じ機能を維持するような形での1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換を含む。
【0100】
また、本発明は、本明細書に開示のポリペプチドのフラグメントも企図する。「フラグメント」という用語は、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントの構成要素をコードするか、その構成要素であるポリペプチド分子を示す。一般に、フラグメントは、それが構成するポリペプチドと共通して定性的な生物活性を持つ。ペプチドフラグメントは、約5〜約150アミノ酸長、約5〜約100アミノ酸長、約5〜約50アミノ酸長または約5〜約25アミノ酸長であってもよい。あるいは、ペプチドフラグメントは、約5〜約15アミノ酸長であってもよい。
【0101】
上述したような1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失または置換によってN末端および/またはC末端で修飾されるCpn10ポリペプチドも、本発明の範囲に包含される。
【0102】
Cpn10 cDNA配列の最適化
本発明では、最適化されたCpn10 cDNA配列を利用して、Cpn10ポリペプチドを生成する上での豊富なトランスファーRNA(tRNA)プールの利用を増やす。tRNAプールによって、メッセンジャーRNAからのタンパク質の翻訳用に特定のアミノ酸をコードする特定のコドンが得られることは、周知である。さらに、tRNAプールによっては、他のtRNAプールよりも豊富なことがあるのも周知である。これは、大量のタンパク質が特定の発現系から産生される場合に、枯渇しているそれほど豊富でないtRNAプールの収率が落ちるおよび/またはtRNA置換によって突然変異が生じることにつながり得る。
【0103】
本発明に関して、これに影響されやすい特定のCpn10バリアントが見いだされた。たとえば、大腸菌(E.coli)におけるCpn10の過発現時、Gly39に用いられるまれなグリシン(Gly)GGA tRNAを枯渇させ、極めて一般的なグルタミン酸塩/グルタミン酸(Glu)GAA tRNAで置換してもよい。
【0104】
このように、任意の数の位置で最適化されたコドンを用いる最適化された配列を構築してもよい。特に、グリシンおよびアルギニン残基G3、G29、G39、G50、G55、G58、G68、G77、G98、R8、R16、R21およびR93の特定の最適化によって、野生型cDNAの発現レベルに達したが、Cpn10全体としての収率が保たれたままバリアントレベルは有意に減少した。
【0105】
また、Cpn10バリアントは、細胞TGA終止コドンによるリボソームリーディングが原因で生成されることもある。この点に関して、TGA終止コドンをTAA終止コドンに変え、この問題を回避することでこれを最適化してもよい。
【0106】
Cpn10の生成
本発明によれば、Cpn10ポリペプチドを、当業者間で周知の組換えDNAおよび分子生物学の標準的な手法を用いて生成してもよい。たとえば、Sambrookら, Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989およびAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. and Wiley−Intersciences, 1992などの標準的なテキストから、ガイダンスを得られる。Mortonら, 2000(Immunol Cell Biol 78:603〜607), Ryanら, 1995(J Biol Chem 270:22037〜22043)およびJohnsonら, 2005(J Biol Chem 280:4037〜4047)に記載された方法は、Cpn10ポリペプチドの好適な精製方法の一例であるが、本発明が使用する精製方法または生成方法によって限定されるものではなく、他の方法を用いて、本発明の方法および組成物に従って用いるCpn10を生成してもよいことは、当業者であれば理解できるであろう。
【0107】
本発明に従って用いられるCpn10ポリペプチドおよびペプチドフラグメントは、標準的な組換え核酸手法で得たものであってもよいし、従来の液体または固体相合成手法で合成されたものであってもよい。Cpn10ペプチドは、endoLys−C、endoArg−C、endoGlu−Cおよびブドウ球菌V8−プロテアーゼなどの1種類以上のプロテイナーゼによるポリペプチドの消化によって生成できるものである。消化されたペプチドフラグメントは、たとえば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による手法などで精製可能である。
【0108】
本発明のCpn10ポリペプチドの精製を、大規模製造目的でスケールアップしてもよい。たとえば、本明細書で説明するように、本発明者らは、大量(グラム単位)の高度に精製された臨床グレードのCpn10ポリペプチドを製造するためのバイオプロセスを開発した。
【0109】
本発明のCpn10ポリペプチドならびに、そのフラグメントおよびバリアントを、当業者間で周知の液体または固体相化学の標準的な方法で合成してもよい。たとえば、StewardおよびYoung(Steward, J.M. & Young, J.D., Solid Phase Peptide Synthesis.(第2版) Pierce Chemical Co., Illinois, USA(1984)の固体相化学手順で当該分子を合成してもよい。
【0110】
通常、このような合成方法は、1種類以上のアミノ酸または適宜保護したアミノ酸を成長しているペプチド鎖に逐次追加することを含む。一般に、第1のアミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかを、好適な保護基で保護する。次に、アミド結合の形成に適した条件下で、適宜保護した無料の(complimentary)(アミノまたはカルボキシル)基を有する配列における次のアミノ酸を加えることで、保護されたアミノ酸を不活性固体支持体に結合させるか、溶液中で使用する。次に、保護基をこの新たに加えたアミノ酸残基から除去し、次の(保護された)アミノ酸を加えるといった具合である。最終的に、所望のアミノ酸が結合され、残った保護基と、必要であれば固体支持体を、順次または同時に除去して最終的なポリペプチドを生成する。
【0111】
Cpn10ポリペプチドにおけるアミノ酸の変更は、関連業界の当業者間で周知の手法で実施すればよい。たとえば、適切な読み枠が維持される条件で、付加、欠失または置換を含むヌクレオチド交換法(保存および/または非保存)によってアミノ酸の変更を実施してもよい。代表的な手法として、ランダム突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、オリゴヌクレオチド仲介またはポリヌクレオチド仲介突然変異誘発、既存のまたは遺伝子工学的制限酵素部位を用いる選択した領域の欠失、ポリメラーゼ連鎖反応があげられる。
【0112】
本発明のCpn10ポリペプチドによる免疫調節活性の生成は、Cpn10ポリペプチドの七量体の形成を伴うものであってもよい。本発明の目的での免疫調節活性の試験は、当業者間で周知の多数の手法のうち、どれを用いて実施してもよい。本明細書で例示するように、Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性は、たとえばNF−κB−ルシフェラーゼレポーター細胞株を用いて、一般にポリ(I:C)などのTLR−3アゴニストの存在下で、ポリペプチドがToll様受容体TLR−3からのシグナル伝達を調節する機能を測定することで判断できるものである。TLR−7、8および9などの他のTLRも本明細書で説明するようにして試験される。これに代えて、あるいはこれに加えて、たとえば末梢血単核細胞などの細胞におけるサイトカイン産生の測定、競合的結合アッセイ、ツーハイブリッドアッセイ、フィルタアッセイ、電気泳動移動度シフト(ゲルシフト)アッセイ、プレートキャプチャアッセイまたは免疫調節活性を測定できるようにするアッセイの任意の組み合わせによって、他のアッセイを用いてin vitro、ex vivoまたはin vivoで免疫調節活性を判断してもよい。
【0113】
ポリヌクレオチド
本発明の実施形態は、上述したようなCpn10ポリペプチドならびに、当該ポリペプチドのバリアントおよびフラグメントをコードする、単離されたポリヌクレオチドを提供するものである。本発明の範囲内で企図されるポリヌクレオチドの非限定的な例を、本明細書では配列番号7、9、11、12、14、15、17、18、20、21、23、24、26、27、29、30、32、33、35、36、38、39、41、42、44、45、47、48、50、51、53、54、56、57、59、60、62、63、65、66、68、69、71、72、74、75、77、78、80、81、83、84、86、87、89、90、92、93、95、96、98、99、101、102、104、105、107、108、110、111、113、114、116、117、119、120、122、123、125、126、128、129、131、132、134、135、137、138、140、141、143、144、146、147、149、150、152、153、155、156、158、159、161、162、164、165、167、168、170、171、173、174、176、177、179、180、182、183、185、186、188、189、191、192、194、195、197、198、200、201、203、204、206、207、209、210、212、213、215、216、218、219、221、222、224、225、227、228、230、231、233、234、236、237、239、240、242、243、245、246、248、249、251、252、254、255、257、258、260、261、263、264、266、267、269、270、272、273、275、276、278、279、281、282、284、285 287、288、290、291、293、294、296、297、299、300、302、303、305、306、308、309、311、312、314、315、317、318、320、321、323、324、326、327、329、330、332、333、335、336、338、339、341、342、344、345、347、348、350、351、353、354または356で示す。
【0114】
上述したポリペプチドについて、「バリアント」という用語は、本明細書で使用する場合、実質的に類似の配列を示す。通常、ポリヌクレオチド配列のバリアントは、共通して定性的な生物活性を持つポリペプチドをコードする。さらに、これらのポリヌクレオチド配列のバリアントは、配列同一性が少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%であり得る。「バリアント」という用語の意味には、本発明のポリヌクレオチドのホモログも含まれる。ホモログは一般に、異なる種に由来するが、実質的に同じ活性を持つポリヌクレオチドである。
【0115】
本発明のポリヌクレオチドのフラグメントも企図される。「フラグメント」という用語は、本発明のポリヌクレオチドの構成要素をコードするか、あるいはその構成要素である核酸分子を示す。ポリヌクレオチドのフラグメントは、必ずしも生物活性を維持しているポリペプチドをコードする必要はない。むしろ、フラグメントは、たとえば、ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして有用なことがある。フラグメントは、本発明のポリヌクレオチド由来のものであってもよいし、あるいは、化学合成などの他の手段で合成したものであってもよい。また、当業者間で周知の手法を用いて、アンチセンス分子の生成に本発明のポリヌクレオチドおよびそのフラグメントを使用してもよい。
【0116】
このように、本発明は、本発明のポリヌクレオチドの配列に基づいて、プライマーおよびプローブとして用いられるオリゴヌクレオチドおよびフラグメントを企図する。オリゴヌクレオチドは、PCRなどの核酸増幅反応で使用するのに適したヌクレオチド残基の短いストレッチであり、一般に少なくとも約10ヌクレオチド〜約50ヌクレオチド長であり、より一般には約15〜約30ヌクレオチド長である。プローブは、一般にハイブリダイゼーションによって相同の配列を検出するのに用いられる、たとえば約10ヌクレオチドから数千ヌクレオチドという可変長のヌクレオチド配列である。配列間の相同レベル(配列同一性)は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーにかなり大きく左右される。特に、プローブとして用いられるヌクレオチド配列は、低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシーまたは高ストリンジェンシーの条件下で、本明細書に開示のポリヌクレオチドのホモログまたは他のバリアントとハイブリダイズできるものである。低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、2×SSCにて50℃で実施されるハイブリダイゼーションに対応するものであってもよい。当業者間で周知の多数の条件および因子があり、これらを用いてハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを変更してもよい。たとえば、特定の核酸に対するハイブリダイズ対象となる核酸の長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成物);塩および他の成分の濃度、ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコールなどの有無など;ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄ステップの温度の変更。たとえば、ハイブリダイゼーションフィルタを、2×SSC、0.5%SDS、少なくとも55℃(低ストリンジェンシー)、少なくとも60℃(中ストリンジェンシー)、少なくとも65℃(中程度の/高ストリンジェンシー)、少なくとも70℃(高ストリンジェンシー)または少なくとも75℃(極高ストリンジェンシー)で、30分間2回洗浄してもよい。
【0117】
特定の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドをベクターにクローニングしてもよい。ベクターは、外来配列を挿入し、これを真核生物細胞に導入し、導入した配列を発現させるのに適したプラスミドベクターであってもよいし、ウイルスベクターあるいは他の好適なビヒクルであってもよい。一般に、ベクターは真核生物の発現ベクターであり、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列などの発現制御およびプロセシング配列を含むものであってもよい。
【0118】
抗体
本発明は、本発明のCpn10ポリペプチドならびに、そのフラグメントおよびアナログと選択的に結合する抗体を提供するものである。好適な抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、単鎖、Fabフラグメント、Fab発現ライブラリがあげられる。本発明の抗体は、Cpn10ポリペプチドあるいは、そのフラグメントまたはアナログのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用することもある。
【0119】
本発明のCpn10ポリペプチド、特に免疫調節活性および/またはパートナーまたは基質結合に関与するもの離散的な領域またはフラグメントから抗体を調製してもよい。抗原Cpn10ポリペプチドは、少なくとも約5、好ましくは少なくとも約10のアミノ酸を含有する。
【0120】
好適な抗体を生成するための方法については、当業者であれば容易に理解できよう。たとえば、Antibodies−A Laboratory Manual, Harlow and Lane編, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y.(1988)に記載のハイブリドーマ技術を用いて、一般にFab部分を含有する抗Cpn10モノクローナル抗体を調製すればよい。
【0121】
本発明のCpn10ポリペプチド、そのフラグメントまたはアナログに向けたモノクローナル抗体の調製にあたって、培養中で連続細胞株によって抗体分子を生成できるものであれば、どのような手法を使用してもよい。これには、もともとKohlerら, Nature, 256:495〜497(1975)によって開発されたハイブリドーマ手法ならびに、トリオーマ手法、ヒトB細胞ハイブリドーマ手法[Kozborら,Immunology Today, 4:72(1983)]、ヒトモノクローナル抗体を生成するためのEBV−ハイブリドーマ手法[Coleら, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, 第77〜96ページ, Alan R. Liss, Inc.,(1985)]が含まれる。発癌DNAでのBリンパ球の直接形質転換またはEpstein−Barrウイルスの形質移入などの融合以外の手法によって、不死抗体産生細胞株を作製することが可能である。たとえば、M. Schreierら, 「Hybridoma Techniques」(1980); Hammerlingら, 「Monoclonal Antibodies and T−cell Hybridomas」(1981); Kennettら, 「Monoclonal Antibodies」(1980)を参照のこと。
【0122】
要するに、モノクローナル抗体、ミエローマまたは他の自己増殖性細胞株の生成元になるハイブリドーマを生成する手段を、その認識因子結合部分あるいは、認識因子、あるいはその起点特異的DNA結合部分で過免疫化した哺乳動物の脾臓から得たリンパ球と融合させる。本発明を実施するにあたって有用なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、それが持つ本認識因子と免疫反応する機能ならびに、標的細胞において指定の転写活性を阻害する機能によって同定する。
【0123】
本発明を実施するにあたって有用なモノクローナル抗体は、適当な抗原特異性を持つ抗体分子を分泌するハイブリドーマを含有する栄養培地を含むモノクローナルハイブリドーマ培養を開始することで生成可能である。この培養を、ハイブリドーマが抗体分子を培地に分泌するのに十分な条件下で、これに十分な時間維持する。次に、抗体含有培地を回収する。その後は、周知の手法によって抗体分子をさらに単離することが可能である。
【0124】
同様に、本発明のCpn10ポリペプチドあるいは、そのフラグメントまたはアナログに対するポリクローナル抗体の生成に使用できる当該技術分野において周知のさまざまな手順がある。Cpn10ポリクローナル抗体を生成するために、Cpn10ポリペプチドあるいは、そのフラグメントまたはアナログを注射することで、ウサギ、ネズミ、ラット、ヒツジ、ヤギなどを含むがこれに限定されるものではないさまざまな宿主動物を免疫することが可能である。さらに、Cpn10ポリペプチドあるいは、そのフラグメントまたはアナログを、ウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの免疫原性キャリアにコンジュゲートすることも可能である。また、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールならびに、BCG(カルメット−ゲラン(Calmette−Guerin)桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒトアジュバントを含むがこれに限定されるものではない、さまざまなアジュバントを使用して、免疫学的応答を増加させてもよい。
【0125】
所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野において周知の多岐にわたる手法によっても達成可能である。抗体の免疫特異的結合のアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、サンドイッチイムノアッセイ、免疫放射定量アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、タンパク質Aアッセイ、免疫電気泳動アッセイなどがあげられるが、これに限定されるものではない(たとえば、Ausubelら編, 1994, Current Protocols in Molecular Biology,第1巻, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと)。抗体結合については、一次抗Cpn10抗体上の検出可能な標識によって検出すればよい。あるいは、二次抗体との結合あるいは、適宜標識した試薬によって抗Cpn10抗体を検出してもよい。イムノアッセイにおける結合を検出する多種多様な方法が当該技術分野において周知であり、本発明の範囲に包含される。
【0126】
本発明の抗体を、当業者間で周知の診断方法およびキットに利用して、体液または組織中のCpn10を定性的または定量的に検出することが可能である。あるいは、さまざまな疾患、障害、症状を治療するための方法および組成物に抗体を用いてもよい。
【0127】
本発明のCpn10ポリペプチドまたはそのフラグメントまたはアナログに対して産生された抗体(またはそのフラグメント)は、Cpn10への結合親和性を有する。好ましくは、この抗体(またはそのフラグメント)は、結合親和性または結合活性が約105M−1を上回り、一層好ましくは約106M−1を上回り、一層好ましくは約107M−1を上回り、最も好ましくは約108M−1を上回る。
【0128】
本発明による抗体を好適な量で得る観点から、無血清培地でのバッチ発酵を用いて抗体を創成してもよい。発酵後、クロマトグラフィおよびウイルス不活性化/除去ステップを取り入れた多段階の手順で抗体を精製してもよい。たとえば、まずは抗体をタンパク質A親和性クロマトグラフィによって分離した後、溶媒/洗剤で処理し、脂質エンベロープウイルスを不活性化させる。一般にアニオンおよびカチオン交換クロマトグラフィによるさらなる精製を利用して、残っているタンパク質、溶媒/洗剤および核酸を除去してもよい。ゲル濾過カラムを用いて、精製抗体をさらに精製し、0.9%生理食塩水に配合してもよい。配合後のバルク調製物を滅菌し、ウイルスを濾過し、分注してもよい。
【0129】
アゴニストおよびアンタゴニスト
上述した方法を使用して、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントのアゴニストである作用剤を同定してもよい。アゴニストである作用剤は、ポリペプチドの生物活性のうちの1つ以上を増強する。あるいは、上述した方法によって、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントのアンタゴニストである作用剤を同定してもよい。アンタゴニストである作用剤は、ポリペプチドの生物活性のうちの1つ以上を減弱させる。アゴニストは、本明細書で説明するようなCpn10ポリペプチドなどの分子の生物活性のうちの1つ以上を増強するのに対し、アンタゴニストはポリペプチドの生物活性のうちの1つ以上を減弱させる。一例において、本発明のポリペプチドのアゴニストは、免疫抑制性核酸であってもよい。この核酸は、複合体において本発明のポリペプチドを結合できる。別の例では、本発明のポリペプチドのアンタゴニストが炎症誘発性核酸であってもよい。この核酸も、複合体において本発明のポリペプチドを結合できる。このような本発明のポリペプチドの強力な活性調節因子を、当業者間で周知の多数の方法で、上記の方法によってスクリーニング用に生成してもよい。たとえば、X線結晶学および核磁気共鳴分析法などの方法を用いて、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントの構造をモデル化し、これによってコンピュータベースのモデリングを用いて潜在的な調節作用剤の設計を容易にしてもよい。さまざまな形態のコンビナトリアル化学を使用して、推定上の調節因子を生成してもよい。後述するスクリーニング方法を用いて、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントのアゴニストまたはアンタゴニストである作用剤を同定してもよい。抗体、低分子量ペプチド、核酸、非タンパク質性有機分子は、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用できる作用剤の例である。
【0130】
スクリーニング
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドと結合するか、そうでなければこれと相互作用する化合物、特にその活性を調節する化合物を、多岐にわたる好適な方法で同定することができる。非限定的な方法として、ツーハイブリッド法、免疫共沈降、アフィニティ精製、質量分析、タンデムアフィニティ精製、ファージディスプレイ、ラベル転移、DNAマイクロアレイ/遺伝子同時発現、タンパク質マイクロアレイがあげられる。
【0131】
本発明のCpn10ポリペプチドおよび適切なフラグメントおよびバリアントを、高スループットスクリーンに使用して、候補化合物がCpn10と結合するか、そうでなければこれと相互作用する機能をアッセイすることが可能である。このような候補化合物は、本明細書で説明するようなポリペプチド、当該ポリペプチドのフラグメントまたはバリアントと複合体を形成する炎症誘発性核酸または免疫抑制性核酸であり得る。候補化合物はタンパク質であってもよい。
【0132】
これらの候補化合物をさらに、機能的Cpn10に対してスクリーニングし、この化合物がCpn10活性に対しておよぼす影響を判断することが可能である。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドならびに、そのフラグメントおよびアナログは、これらの分子と相互作用する化合物および作用剤のスクリーニングおよび同定に有用である。特に、望ましい化合物は、これらのポリペプチドおよびポリヌクレオチドの活性を調節する化合物である。当該化合物は、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの発現または活性を賦活、刺激、増加、阻害または防止することによって、調節作用を発揮することがある。好適な化合物は、直接(結合など)または間接的な相互作用によって、その作用を発揮することがある。本明細書で説明するように、本発明のCpn10ポリペプチドの活性を調節するか、そうでなければこれと相互作用できる化合物をスクリーニングする方法がある。これらの化合物は、多岐にわたる好適な方法で同定できるものである。相互作用および/または結合については、ゲルシフトアッセイおよび内部で説明されたプレート結合アッセイあるいは、またはツーハイブリッドアッセイ系などの標準的な競合的結合アッセイを用いて判断すればよい。
【0133】
たとえば、ツーハイブリッドアッセイは、一般にタンパク質−タンパク質相互作用の検出に用いられる、酵母ベースの遺伝子アッセイ系(FieldsおよびSong,1989)である。簡単に説明すると、このアッセイでは転写活性化因子のマルチドメインの性質を利用している。たとえば、周知の転写活性化因子のDNA結合ドメインを本発明のCpn10ポリペプチドあるいはそのフラグメントまたはバリアントと融合させ、転写活性化因子の活性化ドメインを候補タンパク質と融合させることができる。候補タンパク質とCpn10ポリペプチドあるいはそのフラグメントまたはバリアントとの相互作用により、転写活性因子のDNA結合ドメインと活性化ドメインとが近接する。このため、転写活性因子によって活性化された特定のレポーター遺伝子の転写により、相互作用を検出することが可能である。
【0134】
あるいは、アフィニティクロマトグラフィを用いて、Cpn10の結合パートナーを同定してもよい。たとえば、本発明のCpn10ポリペプチドあるいは、そのフラグメントまたはバリアントを支持体(セファロースなど)に固定化し、カラムに細胞可溶化物を通してもよい。その後、固定化したCpn10ポリペプチド、フラグメントまたはバリアントに結合しているタンパク質をカラムから溶出し、同定することが可能である。最初に、当該タンパクをN末端アミノ酸シーケンシングなどで同定してもよい。
【0135】
上記の手法の改変例において、Cpn10ポリペプチド、フラグメントまたはバリアントを、アルカリホスファターゼなどの検出可能なタグと融合させ、FlanaganおよびLeder(1990)に説明されているような免疫沈降の改変形態を用いることで、融合タンパク質を生成してもよい。
【0136】
Cpn10活性を調節する化合物を検出するための方法は、Cpn10ポリペプチドを候補化合物および好適な標識基質と組み合わせ、基質の変化に基づいて当該化合物がCpn10に対しておよぼす作用を監視する(時間の関数として求めてもよい)ことを伴うものであってもよい。好適な標識物質としては、比色測定、放射測定、蛍光測定または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ベースの方法に合わせて標識された物質があげられる。
【0137】
たとえば、免疫共沈降を利用して、候補作用剤または複数の候補作用剤が、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントと相互作用または結合するか否かを判断してもよい。この手法を用いて、タンパク質−タンパク質相互作用の保存に適した非変性条件下で、藍藻毒性生物、藍藻類および/または渦鞭毛藻類を溶解してもよい。続いて、得られる溶液を、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントに特異な抗体と一緒にインキュベートし、固体支持体に結合された抗体結合タンパク質で捕捉するなどの方法でバルク溶液から免疫沈降させることが可能である。この方法による本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントの免疫沈降は、そのタンパク質に関連する作用剤の免疫共沈降を容易にするものである。SDS−PAGE、ウエスタンブロッティング、質量分析を含むがこれに限定されるものではない、当該技術分野において周知の多数の方法を用いて同定関連の作用剤を確立することが可能である。
【0138】
あるいは、ファージディスプレイ法を利用して、候補作用剤または複数の候補作用剤が、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントと相互作用または結合するか否かを判断してもよい。ファージディスプレイは、遺伝子バンクから得た複数の遺伝子をファージに組み込むことでタンパク質相互作用をスクリーニングするための試験である。この方法では、組換えDNA手法を用いて多数の遺伝子をバクテリオファージのコートタンパク質との融合体として発現させ、各遺伝子の当該ペプチドまたはタンパク質産物をウイルス粒子の表面にディスプレイさせる。該当するファージがディスプレイしたペプチドまたはタンパク質産物のライブラリ全体を、このようにして作製することが可能である。その後、ファージがディスプレイしたペプチドまたはタンパク質産物の得られるライブラリが本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントと結合する機能をスクリーニングしてもよい。相互作用しているファージから抽出されるDNAは、相互作用しているタンパク質の配列を含む。
【0139】
あるいは、アフィニティクロマトグラフィを用いて、候補作用剤または複数の候補作用剤が本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントと相互作用または結合するか否かを判断してもよい。たとえば、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントを支持体(セファロースなど)に固定化し、カラムに細胞可溶化物を通してもよい。その後、固定化した本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントに結合しているタンパク質をカラムから溶出し、N末端アミノ酸シーケンシングなどによって同定してもよい。
【0140】
また、本発明は、ポリペプチドの発現を変化させることで本発明のポリペプチドに対してその調節作用を発揮できる化合物を企図するものである。この場合、候補化合物の存在下でのポリペプチドの発現レベルを候補化合物の非存在下での発現レベルと比較することで、当該化合物を同定してもよい。
【0141】
抗体との関連で、当該技術分野において周知の多種多様な手法で所望の抗体のスクリーニングを達成することも可能である。抗体の免疫特異的結合のアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、サンドイッチイムノアッセイ、免疫放射定量アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、タンパク質Aアッセイ、免疫電気泳動法アッセイなど(たとえば、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, 第1巻, John Wiley & Sons, Inc., New York (1994)を参照のこと)があげられるが、これに限定されるものではない。抗体結合については、一次抗体上の検出可能な標識によって検出すればよい。あるいは、二次抗体との結合あるいは、適宜標識した試薬によって抗体を検出してもよい。イムノアッセイにおける結合を検出する多種多様な方法が当該技術分野において周知であり、本発明の範囲に包含される。
【0142】
上述した方法は、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントと相互作用またはその活性を調節できる作用剤の同定に利用できるいくつかのタイプの方法の単なる一例にすぎないことは、理解できよう。当業者であれば他の好適な方法も知るであろうし、それらも本発明の範囲に包含される。
【0143】
組成物と投与経路
本発明のCpn10ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、治療薬としても有用なことがある。これらの分子には、被験体に対して治療有効量の当該分子を投与することで、被験体の疾患または症状を治療または予防する上での用途がある。一般に、当該疾患および症状は、被験体の免疫応答を調節することで治療できるものである。一例として、このような疾患および症状は、インスリン依存性糖尿病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン病、グレーブス病、多発性硬化症、関節リウマチ、慢性疲労症候群、アルツハイマー病、喘息、アレルギー、多発性硬化症、GVHD、アテローム性動脈硬化症、炎症性疼痛、乾癬、HIV、慢性免疫活性化、慢性筋炎、強皮症などの急性または慢性炎症性疾患を含むものであってもよい。疾患が、非小細胞肺癌、腎細胞癌、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、基底細胞癌などの癌であってもよい。疾患が感染症であってもよい。
【0144】
感染症は、細菌感染、ウイルス感染または真菌感染に起因するものであってもよい。慢性免疫活性化は、胃腸管から循環系への細菌産物(LPSなど)および/またはウイルス産物(核酸など)の漏出と関連するものである。たとえば、漏出は、口腔、腸または小腸から起こり得る。細菌産物またはウイルス産物の漏出は、細菌感染、ウイルス感染、炎症性腸疾患および腸疾患などの感染または疾患によって引き起こされる場合がある。ウイルス感染の一例に、HIV感染またはC型肝炎感染がある。
【0145】
慢性免疫活性化は、LPSによるTLRシグナル伝達の免疫調節またはTLRへの核酸結合に関与する。LPSはTLR2またはTLR4と結合できるのに対し、核酸はTLR3、7、8または9を結合できる。
【0146】
したがって、疾患および症状の治療または予防に用いられるCpn10ポリペプチドおよびポリヌクレオチドを含む薬学的に有用な組成物も、本明細書にて企図される。
【0147】
抗Cpn10抗体をはじめとする、本発明のCpn10ポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストは、治療薬として有用なこともある。このため、本発明は、当該アゴニストおよびアンタゴニストを用いる治療方法ならびに、これを含む薬学的組成物も企図するものである。
【0148】
通常、本発明の方法に従って用いられる好適な組成物については、当業者間で周知の方法および手順で調製してもよく、このため、薬学的に許容されるキャリア、希釈剤および/またはアジュバントを含むものであってもよい。
【0149】
組成物は、標準的な経路で投与できるものである。通常、この組成物は非経口経路(たとえば、静脈内、脊髄内、皮下または筋肉内)、経口経路または局所経路で投与される。投与は、全身投与であってもよいし、部分投与または局所投与であってもよい。特定の状況で用いられる特定の投与経路は、治療対象となる症状の性質、症状の重症度と度合い、送達される特定化合物の必要投与量、化合物によって生じ得る副作用をはじめとする多数の要因に左右されることになる。
【0150】
通常、好適な組成物は、当業者間で周知の方法で調製できるものであり、薬学的に許容される希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤を含むものであってもよい。希釈剤、アジュバントおよび賦形剤は、その組成物の他の成分と適合性があり、そのレシピエントにとって有害ではないという意味で、「許容可能な」ものでなければならない。
【0151】
薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤の例として、脱塩水または蒸留水;生理食塩水溶液;ピーナッツ油、紅花油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油などのピーナッツ油、紅花油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、落花生油またはココナッツオイルなどの植物油;シリコーン油(メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのポリシロキサンを含む);揮発性シリコーン;液状パラフィン、ソフトパラフィンまたはスクアランなどの鉱油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;エタノールまたはイソプロパノールなどの低級アルカノール;低級アラルカノール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールまたはグリセリンなどの低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピルまたはオレイン酸エチルなどの脂肪酸エステル;ポリビニルピリドン;寒天;カラギーナン;トラガントゴムまたはアカシアゴム、ワセリンがあげられる。一般に、キャリアは組成物の10重量%〜99.9重量%を構成することになる。
【0152】
本発明の組成物は、注射投与に適した形態、経口摂取に適した処方剤の形態(カプセル、錠剤、カプレット、エリキシル剤など)、局所投与に適した軟膏、クリームまたはローションの形態、点眼薬としての送達に適した形態、鼻腔内吸引または経口吸引などの吸引投与に適したエアロゾル形態、非経口投与すなわち、皮下注射、筋肉内注射または静脈注射に適した形態であってもよい。
【0153】
注射可能な溶液または懸濁液としての投与用では、無毒で非経口的に許容可能な希釈剤またはキャリアとして、リンゲル液、等張生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、1,2プロピレングリコールがあげられる。
【0154】
経口用途での好適なキャリア、希釈剤、賦形剤、アジュバントの例としては、ピーナッツ油、液状パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アカシアゴム、トラガントゴム、右旋糖、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン、レシチンがあげられる。これらに加えて、好適な香味料や着色料を経口製剤に含有させてもよい。カプセルの形態で用いる場合は、このカプセルに、崩壊を遅らせるモノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの化合物をコーティングしてもよい。
【0155】
アジュバントは一般に、皮膚軟化剤、乳化剤、増粘剤、保存剤、殺菌剤、緩衝剤を含む。
【0156】
経口投与用の固体形態は、ヒトおよび獣医薬理学的な実務で許容できるバインダ、甘味料、崩壊剤、希釈剤、香料、コーティング剤、保存剤、潤滑剤および/または時間遅延剤を含むものであってもよい。好適なバインダとしては、アカシアゴム、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースまたはポリエチレングリコールがあげられる。好適な甘味料としては、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテーム(aspartame)またはサッカリンがあげられる。好適な崩壊剤としては、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸または寒天があげられる。好適な希釈剤としては、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、右旋糖、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムまたはリン酸二カルシウムがあげられる。好適な香味料としては、ペパーミント油、冬緑油、サクランボ、オレンジまたはラズベリー香料があげられる。好適なコーティング剤としては、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはそれらのエステルのポリマーまたはコポリマー、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、シェラックまたはグルテンがあげられる。好適な保存剤としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α−トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは亜硫酸水素ナトリウムがあげられる。好適な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはタルクがあげられる。好適な時間遅延剤としては、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンがあげられる。
【0157】
経口投与用の液体形態は、上記の作用剤に加えて、液体キャリアを含むものであってもよい。好適な液体キャリアとしては、水、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、紅花油、落花生油、ココナッツオイルなどの油類、液状パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリドまたはこれらの混合物があげられる。
【0158】
経口投与用の懸濁液は、分散剤および/または懸濁化剤をさらに含むものであってもよい。好適な懸濁化剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムまたはアセチルアルコールがあげられる。好適な分散剤としては、レシチン、ステアリン酸などの脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノまたはジオレアート、ステアラートまたはラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノまたはジオレアート、ステアラートまたはラウラートなどがあげられる。
【0159】
経口投与用のエマルションは、1種類以上の乳化剤をさらに含むものであってもよい。好適な乳化剤としては、上記に例示したような分散剤あるいは、グアーガム、アカシアゴムまたはトラガントゴムなどの天然ゴムがあげられる。
【0160】
非経口投与可能な組成物を調製するための方法は当業者には自明であり、たとえば、Remington’s Pharmaceutical Science、第15版、Mack Publishing Company、Easton,Pa.に一層詳細に記載され、これを本明細書に援用する。
【0161】
本発明の局所製剤は、活性成分を1種類以上の許容可能なキャリアならびに、任意に他の治療成分と一緒に含む。局所投与に適した製剤としては、リニメント剤、ローション、クリーム、軟膏またはペーストなど、治療が必要な部位への皮膚からの浸透に適した液体または半液体の調製物ならびに、眼、耳または鼻への投与に適した点薬(drop)があげられる。
【0162】
本発明による点薬は、滅菌された水性または油性の溶液または懸濁液を含むものであってもよい。これらは、殺菌薬および/または殺真菌薬および/または他の好適な保存剤の水溶液(任意に界面活性剤を含む)に活性成分を溶解させて、調製できるものである。次に、得られた溶液を濾過により清澄化し、好適な容器に移し、滅菌すればよい。滅菌は、90〜100℃で半時間ほどオートクレーブ処理または維持するか、濾過した上で無菌技術によって容器に移して達成すればよい。点薬に含有させるのに適した殺菌薬または殺真菌薬の例としては、硝酸フェニル水銀または酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)、酢酸クロルヘキシジン(0.01%)があげられる。油性溶液を調製するのに適した溶媒としては、グリセロール、希釈アルコール、プロピレングリコールがあげられる。
【0163】
本発明によるローションとしては、皮膚または眼への塗布に適したものがあげられる。点眼ローションは、任意に殺菌薬を含有する滅菌水溶液を含むものであってもよく、点薬の調製に関して上述したものと同様の方法で調製してもよい。皮膚への塗布用のローションまたはリニメント剤は、アルコールまたはアセトンなどの皮膚の乾燥を促進し、冷却する作用剤および/またはグリセロールなどの保湿剤あるいは、ヒマシ油または落花生油などのオイルを含有してもよい。
【0164】
本発明によるクリーム、軟膏またはペーストは、外用塗布用に活性成分を含む半固体製剤である。これらは、細かく砕いた形態または粉末状の活性成分を、単独で、あるいは水性または非水性流体中の溶液または懸濁液の状態で、グリース状または非グリース状の基材と混合して調製できるものである。この基材は、硬パラフィン、軟パラフィンまたは液状パラフィンなどの炭化水素、グリセロール、蜜蝋、金属石鹸;粘液;アーモンド油、トウモロコシ油、落花生油、ヒマシ油またはオリーブ油などの天然由来の油;羊毛脂またはその誘導体あるいは、ステアリン酸またはオレイン酸などの脂肪酸を、プロピレングリコールまたはマクロゴールなどのアルコールと一緒に含むものであってもよい。
【0165】
この組成物には、ソルビタンエステルまたはそのポリオキシエチレン誘導体などのアニオン系、カチオン系または非イオン系界面活性剤などの好適な界面活性剤を取り入れてもよい。天然ゴム、セルロース誘導体などの懸濁化剤あるいは、ケイ質シリカなどの無機材料およびラノリンなどの他の成分を含有させてもよい。
【0166】
この組成物を、リポソームの形態で投与してもよい。リポソームは通常、リン脂質または他の脂質物質から誘導され、水性媒質中に分散した一重膜または多重膜の水和液晶によって形成される。リポソームを形成できる、無毒で生理学的に許容され、代謝可能な脂質を使用できる。リポソーム状の組成物は、安定剤、保存剤、賦形剤などを含有するものであってもよい。好ましい脂質は、天然と合成の両方のリン脂質およびホスファチヂルコリン(レシチン)である。リポソームを形成するための方法は当該技術分野において周知であり、特にこれに関しては、その内容を本明細書に援用するPrescott編, Methods in Cell Biology, 第XIV巻, Academic Press, New York, N.Y. (1976),第33ページ以下を参照のこと。
【0167】
この組成物を、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体のアレイとコンジュゲートさせてもよい。タンパク質へのPEG付加(PEG化)は、タンパク質の血漿クリアランス速度を落とすことで、その有効性を高めるための十分に確立された方法である(Nucciら, 1991, Adv. Drug Del. Rev. 6:133)。PEG化の別の利点として、タンパク質の安定性が高まり、免疫原性が低下し、溶解度が増し、タンパク質分解に対する感受性が低下することがあげられる(Sheffield W. 2001, Curr Drug Targets Cardiovasc Haematol Disord. 1:1〜22)。PEG分子は、−(OCH3CH2)n−OHの基本繰返し構造を含み、分子量に基づいて分類される。PEG誘導体をタンパク質とコンジュゲートさせて、その流体力学半径を大きくするが、その半減期の増加は通常、付加したPEG鎖の大きさと直接関連している(Sheffield W. 2001, Curr Drug Targets Cardiovasc Haematol Disord. 1:1〜22)。
【0168】
この組成物を微粒子の形で投与してもよい。ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸−コ−グリコリド(PLGA)、エプシロン−カプロラクトン(ε−カプロラクトン)から形成される生分解性の微粒子が、血漿中の半減期を長くすることで有効性を持続させるための薬剤キャリアとして広く用いられている(R.Kumar, M., 2000, J Pharm Pharmaceut Sci. 3(2) 234〜258)。微粒子は、ワクチン、抗生物質、DNAなどのさまざまな薬剤候補の送達用に処方されている。さらに、これらの製剤は、非経口の皮下注射、静脈内注射、吸引をはじめとするさまざまな送達経路用に開発されている。
【0169】
この組成物に、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)および有機溶媒または有機溶媒混合物からなる徐放マトリクスを取り入れてもよい。また、ポリマー添加物を放出調節剤としてビヒクルに添加し、粘度をさらに高めて放出速度を低下させてもよい。SAIBは周知の食品添加物である。これは疎水性が極めて高く、公称ではイソ酪酸6対酢酸2という比で完全にエステル化されたスクロース誘導体である。混合エステルとして、SAIBは結晶化せずに透明で粘性の液体として存在する。SAIBを、エタノールまたはベンジルアルコールなどの薬学的に許容される有機溶媒と混合すると、混合物の粘度が、注射可能な程度まで低下する。薬学的活性成分をSAIB送達ビヒクルに添加し、SAIB溶液または懸濁液の製剤を形成してもよい。この製剤を皮下注射すると、溶媒がマトリクスから拡散し、SAIB−薬剤またはSAIB−薬剤−ポリマー混合物が、in situ形成持続製剤として構成される。
【0170】
本発明の目的において、分子および作用剤は、被験体に対して治療的または予防的のいずれかの組成物として投与されるものであってもよい。治療用途では、すでに何らかの疾患に罹患している患者に対し、疾患およびその合併症を治癒させるまたは少なくとも部分的に抑制できるだけの十分な量の組成物を投与する。組成物は、患者を効果的に治療できるだけの十分な量の分子または作用剤を提供するものでなければならない。
【0171】
また、本発明の実施形態は、Cpn10をコードするポリヌクレオチドの投与も企図するものである。このような状況では、ポリヌクレオチドは一般に、ポリヌクレオチドを被験体に投与した後に適切なポリペプチド配列が産生されるような形で、プロモーターに対して作動可能に連結される。このポリヌクレオチドを、ベクターで被験体に投与してもよい。ベクターは、外来配列を挿入し、これを真核生物細胞に導入し、導入した配列を発現させるのに適したプラスミドベクターであってもよいし、ウイルスベクターまたは他の好適なビヒクルであってもよい。一般に、ベクターは真核生物の発現ベクターであり、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列などの発現制御およびプロセシング配列を含むものであってもよい。投与対象となる核酸構築物は、ネイキッドDNAを含むものであってもよいし、あるいは、1種類以上の薬学的に許容されるキャリアと併用される組成物の形であってもよい。
【0172】
本発明の方法によれば、本発明のCpn10ポリペプチドを単独で投与してもよいし、1種類以上の別の作用剤と併せて投与してもよいことは、当業者であれば理解できよう。たとえば、本発明のCpn10ポリペプチドを、TLR−3などのTLR受容体を刺激できる1種類以上のアゴニストと一緒に投与してもよい。また、本発明は、本発明のCpn10ポリペプチドを他の治療アプローチと併せて使用して、疾患および障害を治療する併用療法を企図するものである。たとえば、Cpn10ポリペプチドは、IFNβまたはIFN1βなどのI型インターフェロンを用いる療法に応答するウイルス疾患の治療において有用なことがあり、多発性硬化症などの自己免疫疾患の治療にあたって本発明のCpn10ポリペプチドをIFNβと併せて使用してもよい。
【0173】
そのような併用療法では、所望の効果が得られるように、併用療法の各成分を同時に投与してもよいし、あるいは任意の順序または異なる時刻に逐次投与してもよい。あるいは、成分を単一の投与単位にまとめて混合生成物として処方してもよい。別々に投与するのであれば、同じ投与経路で成分を投与すると好ましいことがあるが、必ずしもそうでなければならないわけではない。
【0174】
投与量
特定の患者に対する治療上有効な投与レベルは、治療対象となる障害およびその障害の重症度;使用する分子または作用剤の活性;使用する組成物;年齢、体重、全体的な健康状態、患者の性別および食事;投与時間;投与経路;分子または作用剤の隔離速度;治療期間;治療と組み合わせてまたは治療と同時に用いられる薬剤ならびに、医薬分野で周知の他の関連する要因をはじめとする、多種多様な要因に左右されることになる。
【0175】
当業者であれば、常法での実験により、適用可能な疾患および症状の治療に必要な作用剤または化合物の有効かつ無毒の量を判断することができよう。
【0176】
通常、有効投与量は、隔週で(bi weekly)体重1kgあたり約0.0001mg〜約100mg、一般に隔週で体重1kgあたり約0.001mg〜約75mg、隔週で体重1kgあたり約0.01mg〜約50mg、隔週で体重1kgあたり約0.05mg〜約50mg、隔週ごとに体重1kgあたり約0.1mg〜約10mg、隔週で体重1kgあたり0.1mg前後の範囲にあると想定される。また、本明細書では、投与量の週に1回または3週間に1回での投与も企図される。
【0177】
あるいは、有効投与量が隔週で患者1人あたり約25〜150mgであってもよい。通常、有効投与量は、隔週で患者1人あたり約2.5〜約750mg、好ましくは隔週で患者1人あたり約10〜約350mg、一層好ましくは隔週で患者1人あたり約25〜150mg、なお一層好ましくは週に約25〜200mgの範囲にあると想定される。
【0178】
一般に、治療用途では、疾患状態の期間中の治療となる。
【0179】
さらに、個々の投与量の最適な量および間隔は、治療対象となる疾患状態の性質と度合い、形態、投与経路および投与部位、治療対象となる特定の個体の性質に応じて判断されることになるのは、当業者であれば自明であろう。また、このような最適な条件については、従来の手法で判断可能である。
【0180】
また、規定の日数のあいだにおける1日あたりの投与回数についても、従来の治療過程判断試験を用いて当業者が確認可能であることは、当業者であれば自明であろう。
【0181】
以下、具体的な実施例を参照して本発明について説明するが、これらの実施例は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0182】
実施例1:Cpn10ポリペプチドの生成
本発明のCpn10ポリペプチドの生成プロセスをさらに定義するために、以下の非限定的な実施例をあげておく。
【0183】
まず、ヒトCpn10をコードする熱誘導可能な発現プラスミドを、修飾のある状態または修飾のない状態で大腸菌(E.coli)株XL1−Blue(Stratagene)に形質転換し、選択した単一のクローンからマスター細胞バンクを確立した。
【0184】
次に、基本的にRyanら(1995, J Biol Chem 270: 22037〜22043)に記載されているようにして、Cpn10を大腸菌(E.coli)で産生させた。また、Macro−Prep High Q(BioRad)を結合しない材料を、S−セファロースに続いてゲル濾過(Superdex 200、Amersham Biosciences)でさらに精製した。精製後のCpn10を50mMのTris−HCl(pH7.6)および150mMのNaCl緩衝液に入れたものを、0.2mmのMustang E膜のあるAcrodiscで製造業者の指示どおり濾過し(Pall Corporation、Ann Arbor,MI.カタログ番号MSTG5E3)、残っているエンドトキシンを除去して、−70℃で保管した。たとえば図3に示すようなさまざまなCpn10突然変異体ポリペプチドなどのCpn10の純度を求めたところ、SDS−PAGEにおけるクーマシーブリリアント染色で>99%であった。使用前にアリコートを1回解凍した。
【0185】
実施例2:Cpn10タンパク質の分子シャペロン活性
さまざまなアミノ酸残基の重要性、その電位電荷、シャペロン活性との関連でこれらの残基の位置について調べるために、本発明者らは、1つ以上の突然変異を含み、なおかつ余分なN末端アラニン(Ala)残基がある場合とない場合とで、大腸菌(E.coli)GroELとの併用でCpn10ポリペプチド(表1参照)が分子シャペロンとして作用してタンパク質を折り畳む機能を試験した。これについては、Weber F.およびHayer−Hartl M.K.(Chaperonin Protocols, Ed Schneider C., Humana Press Inc., 2000, p117−126)から適合させた方法を用いるin vitroでのロダネーゼリフォールディングのアッセイによって判断した。
【0186】
天然のウシロダネーゼ(30μM、SIGMA)を、20mMのMOPS−KOH(pH7.5)、100mMのKCl、20mMのMgCl2(緩衝液A)に5MのグアニジンHClと8mMのDTTを含有させた中で変性させた後、変性剤からGroEL(400nM)を含有する緩衝液Aに希釈(75倍)し、ロダネーゼの最終濃度が400nMになるようにした。GroELは、すみやかに安定して変性ロダネーゼ(D−Rho)を結合したのに対し、緩衝液単独では、D−Rhoはミスフォールドして凝集した(すなわち、自然なリフォールディングが不十分であった)。事前に形成しておいたGroEL結合ロダネーゼの安定した複合体にCpn10およびATP(20.1mM)を加えると、効率的なリフォールディングが進行する。Cpn10の非存在下、ATPの添加によってD−Rhoがフォールディングできない形でGroELのオンオフを繰り返し、最終的にミスフォールディングして凝集する(この反応が好適なアッセイブランクとして機能する)。各フォールディング反応物の総容量は、特定の時点(すなわち、0、15、30、45、60、75、90分)で290μLであり、30μLのアリコートを取り出し、70μLのロダネーゼ活性アッセイ混合物(57.1mMのKH2PO4(pH7.5)、71.4mMのEDTA、71.4mMのチオ硫酸Na、71.4mMのKCN)と6分間一緒にする。ATPでのリフォールディング反応の開始前に、リフォールディング時点T=0分として30μLのアリコートを取る。ロダネーゼ活性アッセイ混合物内のEDTAがMg2+イオンとキレート形成し、これがGroELのATP結合を防止して、結果としてフォールディング反応が瞬時に停止する。その後、6分後に50μLの15%(v/v)ホルムアルデヒド(最終濃度5%v/v)を加えてロダネーゼ活性を停止させる。
【0187】
ロダネーゼは、チオ硫酸塩とシアン化物からのチオシアニド(「Rhodanid」)の形成を触媒する。チオシアニドは、硝酸第二鉄の存在下で赤鉄錯体を形成することで、比色的に(吸光度450nm)容易に検出される。ロダネーゼ活性の測定(150μL)では、硝酸第二鉄試薬150μL(164.5mMの硝酸第二鉄および9.2%v/vの硝酸)を添加して発色させる。ロダネーゼ活性の測定値については、96ウェルのマイクロプレートにて、A450nmで読み取る。
【0188】
一般的なロダネーゼのフォールディング反応は、フォールドされたロダネーゼの収率が最大となるまでの間、ロダネーゼ活性(すなわちフォールドされたロダネーゼ)の指数関数的勾配に沿った形となる。GroEL(400nM)とロダネーゼ(400nM)が一定量であれば、Cpn10(7量体)とGroEL(14量体)のモル濃度が等しくなる(すなわち400nM)まで、(ロダネーゼ活性と時間との間に)Cpn10の増加に伴う直線的な関係が観察される。Cpn10の濃度が400nMを上回ると、ロダネーゼ活性の増加がすみやかに最大に達する。このアッセイを、5つの標準(二重)と試験試料(二重)で構成する。Cpn10標準の濃度は、0nM、140nM、250nM、280nM、350nMである。30、45、60、75、90分の時点でのロダネーゼ活性(すなわちCpn10活性)の測定値を平均する。0nMのCpn10標準はアッセイのバックグラウンド活性の好適な測定値として役立つため、0nMのCpn10好適なについての吸光度の値を、計算で求めた他のすべての吸光度値(または活性値)から差し引く。バックグラウンド補正後、280nMのCpn10標準の吸光度値を100%活性として指定し、他のすべての吸光度値を、100%標準に対する相対活性%に変換する。二重に実施する測定を比較することで外れ値のデータ点を除外し、二重の測定値で30%を超える偏差を許容範囲外とする。許容されるデータを使用して、5つの標準濃度すなわち0nMのCpn10(0%活性)、140nMのCpn10(50%活性)、250nMのCpn10(89.3%活性)、280nMのCpn10(100%活性)、350nMのCpn10(125%活性)を用いて、線形較正曲線を生成する。ロダネーゼ活性(Ala−Cpn10活性など)をAla−Cpn10濃度に対してプロットする。アッセイバイアスの補正のため、被験試料からの活性値の比率を、線形較正曲線から得た式を用いて再計算する。
【0189】
シャペロニン(GroELおよびCpn10)の濃度についてはタンパク質のオリゴマーの分子量(MW)を用いて計算し、一方、ロダネーゼではモノマーのMWから計算する。たとえば、大腸菌(E.coli)GroELの14量体(SwissProt P0A6F5)=800,766.4g/mol、ヒトAla−Cpn10の7量体(SwissProt P61604)=76,100.5g/mol、ヒトX−Cpn10−Y75Kの7量体=75,358.5g/mol、ヒトAla−Cpn10−Y75Kの7量体=75,855.5g/mol、ウシロダネーゼの単量体(SwisProt P00586)=33,164.6g/molである。
【0190】
以下の表1に示すように、Ala−Cpn10標準曲線の方程式から多数のCpn10タンパク質の活性を求めた。反応はすべて、二重に実施した。
【0191】
【表1】
【0192】
実施例3:Cpn10突然変異体がポリ(I:C)、CpG−ODN、RNAと結合する
TLRは細胞外と細胞内のどちらでも発現され、細胞表面(TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR10、TLR11)で発現されると通常は疎水性リガンドを認識するのに対し、細胞内区画にあると(TLR3、TLR7、TLR8、TLR9)通常は負に荷電した核酸ベースのリガンドを認識する(審良ら 2006, 124: 783〜801)。
【0193】
本明細書で説明するように、本発明者らは、Ala−Cpn10が負に荷電した核酸ベースのTLRリガンドを結合し、これが、図4に示すようなポリ(I:C)(TLR3アゴニスト)、図5および図7に示すようなメチル化されていない一本鎖CpG−オリゴヌクレオチド(ODN)のいくつかのクラス(ヒトODN−2216クラスA、ヒトODN−2006クラスB、ヒトODN−M362クラスC;すべてのTLR9アゴニスト)および図6に示すような大腸菌(E.coli)K12 ssRNA(TLR7/8リガンド)を含むことを示している。
【0194】
後述するように、本発明者らはさらに、多数の突然変異体が、Ala−Cpn10よりもしっかりとポリ(I:C)(図4)、CpG−ODN(図5)およびssRNA(図6)に結合することも示している。
【0195】
図4に関して、Ala−Cpn10−E18A、Ala−Cpn10−E34Q、Ala−Cpn10−D68N、Ala−Cpn10−D83N、Ala−Cpn10−D94N、Ala−Cpn10−Y75R、Ala−Cpn10−E18K,D101K、Ala−Cpn10−E34Q,Y75K、Ala−Cpn10−Q42,D101K、Ala−Cpn10−T44K,D101K、Ala−Cpn10−S50K,D101K、Ala−Cpn10−E74K,Y75E、Ala−Cpn10−Y75G,G76K、Ala−Cpn10−Y75GK、Ala−Cpn10−Y75K,D94K、Ala−Cpn10−Q3K、Ala−Cpn10−S50K、Ala−Cpn10−D68K、Ala−Cpn10−D94K、Ala−Cpn10−D101K、共有結合−Cpn10、MR−Cpn10、MKKK−Cpn10などの突然変異体は、Ala−Cpn10よりもしっかりとポリI:Cを結合する。さらに、X−Cpn10−Y75K、Ala−Cpn10−Y75Kなどのいくつかの突然変異体は、TLR3アゴニストポリ(I:C)に非常にしっかりと結合するため、150mMのNaClで解離するAla−Cpn10とは異なり、500mMのNaClでは完全には放出できない(図4)。興味深いことに、低NaCl濃度では、多くのCpn10バリアントが、臭化エチジウムによるインターカレーションからこれを隔離するような形でポリ(I:C)の長いポリマーと結合することから、おそらくいくつかのCpn10七量体が単一のポリ(I:C)鎖と結合していると思われる(図4)。Ala−Cpn10−Y75K、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−D94N、Ala−Cpn10−Y75K,D94Kをはじめとするいくつかの突然変異体も、低塩濃度で結合ポリ(I:C)を臭化エチジウムによるインターカレーションから隔離するが、≧150mMでは、結合ポリ(I:C)が逃げることなく臭化エチジウムによるインターカレーションに十分なほど結合部位が開く。
【0196】
ポリ(I:C)との相互作用と同様に、X−Cpn10およびAla−Cpn10とTLR9アゴニストCpG−クラスAとの不安定な複合体が、生理的塩濃度(約150mM)で観察された(図5)。これとは対照的に、本発明者らは、ポリ(I:C)との相互作用と同様に、いくつかのCpn10バリアントとCpG−クラスAとの間に有意に強い会合が形成された(図4および5)ことを観察した。実際、CpG−クラスAとの複合体は、500mMのNaCl(図5)では解離に対してほとんど耐性であった。TLR7およびTLR8アゴニスト大腸菌(E.coli)K12 ssRNAに関して、実験から、Ala−Cpn10よりもAla−Cpn10−Y75K、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−D94NおよびAla−Cpn10−Y75K,D94Kなどの多くのCpn10バリアントとの間で強い会合が形成されているということが分かる(図6)。150mMのNaClでは、Ala−Cpn10とX−Cpn10がssRNAから完全に解離する。しかしながら、いくつかの突然変異体は、500mMのNaClの存在下にてしっかりと結合したままである。
【0197】
実施例4:CpGオリゴヌクレオチド(ODN)に対するCpn10結合の定量的分析
ODNに対するCpn10突然変異体の結合量を判断するために、pH7.2のPBS(Invitrogen)中にて10μg/μlで突然変異体を調製し、96ウェルのプレートの三重ウェルに、4℃で16時間、50μgを吸着させた。結合しなかったタンパク質をデカントした後、プレートを1%BSAおよび5%スクロースのPBS溶液(pH7.2)で23℃で2時間ブロックした。PBS(pH7.2)中0.01μg/μlで調製された50μlの3’−ビオチン標識ヒトODN−2216クラス−A、ヒトODN−2006クラス−BまたはヒトODN−M362クラス−C(TLR9アゴニスト)(Proligo/Sigma)を各ウェルに加え、23℃で2時間インキュベートした。未結合のリガンドを、PBS(pH7.2)+0.05%Tween 20で5回洗浄して取り除いた。結合したCpG−ODNをストレプトアビジン−HRPおよびTMB検出系でA450nmにて分析した。
【0198】
図7において、生理的塩濃度(約150mM)での定量分析では、Ala−Cpn10に比して多数の突然変異体に対するCpG−クラスA、BおよびCの有意に強い相互作用が強調される。
【0199】
陽性置換(Q3K、E18K、Q42K、T44K、S50K、D86K、D101K)を含むCpn10突然変異体を作製し、試験したところ、Ala−Cpn10に比してCpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された。
【0200】
研究対象とした陰性から中性のすべての置換(E18Q、E18A、E18S、E18M、D68N、D83NおよびD101N)では、Ala−Cpn10に比してCpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された。
【0201】
複数の陽性置換Cpn10突然変異体に関して、CpG−ODNクラス−A/B/Cへの結合の定量分析によって、Ala−Cpn10に比して、Ala−Cpn10−Y75K,D94KおよびAla−Cpn10−E34Q,Y75Kなど、いずれも親和性が有意に改善されたことが確認された(図7)。
【0202】
MK−Cpn10およびAla−Cpn10−K85など、研究した陽性挿入(延長)のCpn10突然変異体はいずれも、Ala−Cpn10に比して/CpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された。
【0203】
実施例5:Cpn10がCpG−B ODN誘発NFκB活性を調節する
PRRリガンドの高親和性結合を免疫調節活性の増大と相関させることができるか否かを判断するために、いくつかの細胞ベースのアッセイを開発し、さまざまなCpn10突然変異体が炎症誘発性核酸を隔離することでPRRシグナル伝達のレベルを下げる機能を評価した。第1に、CpG−ODNクラスBおよび未結合のPRRリガンドとともにインキュベートした場合にAla−Cpn10およびX−Cpn10に比して高親和性のバインダを使用して、マウスマクロファージ(RAW264細胞)にてNFκBを刺激した。
【0204】
NFκB−ルシフェラーゼレポータープラスミド(pNIFty2−LUC;Invivogen)をRAW264.7(マウスマクロファージ)細胞に安定的にトランスフェクトした。RAW264−pNIFty2−LUC細胞を蒔き、一晩放置して接着させた。100μgのCpn10構築物または調製緩衝液の対照を4μgのCpG−B ODN−1826(Invivogen)と混合し、遠心濾過装置YM10(Amicon)に通した。流動容量分全体をRAW264−pNIFty2−LUC細胞に加え、37℃で5時間インキュベートした。細胞を洗浄した後、1ウェルあたり100μlのCCLR 1×溶液(Promegaルシフェラーゼ溶解緩衝液)で溶解させ、製造業者の指示どおりにルシフェラーゼ基質と混合し、ルシフェラーゼカウントを測定した。Ala−Cpn10でのTLR9の活性化レベルに、100%の値を割り当てた。
【0205】
図8は、高親和性バインダと、Ala−Cpn10に比して低減されたNFκBレベルとのしっかりとした相関を示す。図8から、Ala−Cpn10−Y75K、Ala−Cpn10−E18A、Ala−Cpn10−Y75K,D94K、Ala−Cpn10−E34Q,Y75K、Ala−Cpn10−Q3K、Ala−Cpn10−E18K,D101K、MKK−Cpn10などの1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加を含む単離されたCpn10ポリペプチドが、Ala−Cpn10の場合よりもTLR9の低いレベルの活性化につながることが分かる。
【0206】
実施例6:HEK293細胞においてCpn10突然変異体がTLR−3によりポリ(I:C)誘発NFκB産生を阻害する
TLR3およびpNIFTY−NFκBルシフェラーゼレポーター遺伝子をHEK293細胞に一過的にトランスフェクトした。24時間後、トランスフェクト細胞を24ウェルのプレートに1×105で蒔き、一晩放置して接着させた。次に、0.1ugのポリ(I:C)で、100ugのCpn10突然変異体、10ulのSUPERase RNAse阻害因子(Ambion)の存在下または非存在下で、競合アッセイとして細胞を18時間刺激した(図9)。ポリ(I:C)およびCpn10を所望の濃度にて30分間一緒に混合した後、細胞に加えた。条件ごとに3重に試験した。刺激の18時間後、細胞を溶解させ、ルシフェラーゼカウントを測定した。
【0207】
ルシフェラーゼカウントをポリ(I:C)単独に対して正規化し、これを100%の値とした。ポリ(I:C)で細胞を刺激すると、Ala−Cpn10はルシフェラーゼ(すなわちNFκB)のレベルを22%下げることができた。突然変異体、Ala−Cpn10−Y75K、X−Cpn10−Y75K、Ala−Cpn10−D94K,Ala−Cpn10−Y75GK、Ala−Cpn10−E18K,D101KおよびAla−Cpn10−E34Q,Y75Kのうちのいくつかが、ポリ(I:C)誘発TLR3の有意な調節を示し、Ala−Cpn10−Y75Kがシグナル伝達を53%低下させ、X−Cpn10−Y75Kはシグナル伝達を71%低下させ、Ala−Cpn10−D94Kはシグナル伝達を82%低下させるといった具合である(図9)。このことから、Cpn10突然変異体のほとんどに、特にTLR3シグナル伝達に関与する場合に免疫系を調節する機能があることが分かる。
【0208】
実施例7:突然変異体のパネル
上記の方法および試験を適用するにあたり、本発明者らは、さまざまな突然変異のある多数のCpn10ポリペプチドを生成し、X−Cpn10およびAla−Cpn10などのCpn10分子と比較して、ポリ(I:C)およびいくつかのクラスのODNなどのPRRリガンドに対する結合性を増加させる機能におけるさまざまなアミノ酸残基の重要性(Cpn10分子における電荷および位置など)を評価した。
【0209】
本発明者らは、表1に示すように、Cpn10分子のN末端、βバレル、可動性ループ、ルーフループ、C末端および結合ループの各々におけるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つを置換した。本発明者らは、中性のアミノ酸残基を正に荷電した残基と置き換えるか、負に荷電したアミノ酸残基を中性または正に荷電した残基と置き換えるか、正に荷電した残基を別の正に荷電した残基と置き換えるか、正に荷電した残基を挿入または負に荷電した残基を欠失させるかのいずれかを実施した。
【0210】
【表2】
【0211】
単一置換の突然変異に加えて、本発明者らは、二重突然変異体など、上記の突然変異のうちの2つ以上の組み合わせを含むCpn10ポリペプチドを生成した(たとえばAla−Cpn10−F12K,D92K、Ala−Cpn10−E18K,D101K、Ala−Cpn10−E34Q,Y75K、Ala−Cpn10−Q42K,D101K、Ala−Cpn10−T44K,D101K、Ala−Cpn10−S50K,D101K、Ala−Cpn10−Q60K,T78K、Ala−Cpn10−E74K,Y75E、Ala−Cpn10−Y75GK、Ala−Cpn10−Y75G,G76K、Ala−Cpn10−Y75K,D94KおよびAla−Cpn10−Y75K,D94N。さらに、本発明者らは、陽性挿入(延長)および陰性欠失(除去)Cpn10バリアント(MH−Cpn10、MR−Cpn10、MK−Cpn10、MKK−Cpn10、MKKK−Cpn10、Ala−Cpn10−K21、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−K39、Ala−Cpn10−KK39、Ala−Cpn10−K57、Ala−Cpn10−KK57、Ala−Cpn10−K76、Ala−Cpn10−KK76、Ala−Cpn10−K85、Ala−Cpn10−KK85、Ala−Cpn10−K102、Ala−Cpn10−KK102、ΔD13、ΔE18、ΔE23、ΔE34、ΔE58、ΔE68、ΔE74、ΔD83、ΔD84、ΔD86、ΔD92、ΔD94、ΔD101など)を生成した。
【0212】
本明細書では、別の二重突然変異体、三重突然変異体などの生成につながる上記の突然変異の任意の組み合わせも、本発明の範囲に包含されることが企図される。
【0213】
実施例8:Cpn10ポリペプチドの正味の電荷の計算
タンパク質の正味の電荷の計算
上述したように、特定pHでのポリペプチドの正味の電荷を、ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式(Hasselbalch, K.A., 1917 Biochemische Zeitschrift 78: 112〜144)ならびに、ポリペプチドのイオン化可能なアミノ酸側鎖およびN末端およびC末端の周知のpKa値に基づいて計算する。表3で利用するpKa値は、N末端8.0、C末端3.1、Lys 10.0、Arg 12.0、His 6.5、Glu 4.4、Asp 4.4、Tyr 10.0、Cys 8.5である(Stryer, L., 1988 「Biochemistry」 textbook 第3版, New York, W.H. Freeman, ISBN 0716719207)。上述した方法を利用して、表3に示すようなCpn10バリアントの正味の電荷をpH7.3とpH7.4(生理的なpHとして採用)で計算した。
【0214】
【表3】
【0215】
実施例9:概要
本発明者らは、Cpn10がいくつかの病原体認識受容体(PRR)を調節することを以前に発見し、最近になって、人間の関節リウマチ患者(Vanagsら Lancet 2006; 368:855〜863)および乾癬患者(Williamsら Arch. Dermatol. 2008; 144:683〜685)の治療におけるその有効性と安全性を示した。今、本発明者らは、Cpn10のバリアントがいくつかの核酸ベースのPRRリガンドと特異的に結合されることを示す。
【0216】
陽性残基を加えるか陰性残基を取り除いて余分な正電荷を加えると、(Ala−Cpn10およびX−Cpn10に比して)核酸ベースのPRRリガンドと有意に強く結合するCpn10分子が生成される。余分な正電荷については、(1)既存の表面/液露出中性残基または陰性残基を陽性残基で置き換える、(2)既存の表面/液露出陰性残基を中性残基で置き換える、(3)別の表面/液露出陽性残基を導入する(ループ構造またはN末端およびC末端を延長するなど)または(4)既存の表面/液露出陰性残基を取り除く(ループ構造またはN末端およびC末端を短くするなど)ことによって加えることができる。また、本発明者らの結果から、複数の正電荷を導入すると(Ala−Cpn10−F12K,D92N;E18K,D101K;E34Q,Y75K;Q42K,D101K;T44K,D101K;S50K,D101K;Q60K,T78K;E74K,Y75E;Y75GK;Y75G,G76K;Y75K,D94K;Y75K,D94Nなど)すると、個々の突然変異よりも結合電位が有意に高まる場合があることも分かる。
【0217】
事前に存在する中性および陰性残基をリジン(K)またはアルギニン(R)残基で置き換えることによる効果を調べた。陽性置換研究(A1K、Q3K、Q3R、F5K、D13K、E18K、E18R、S20K、A22K、T24K、G29K、M31K、E34K、Q37K、V40K、L41K、Q42K、T44K、S50K、S50R、S52K、G54K、G56K、E58K、Q60K、P61K、V66K、D68K、P73K、E74K、Y75K、Y75H、Y75R、G76K、G77K、T78K、V81K、D83K、D84L、D86K、D86R、Y87K、F88K、L89K、D92K、G93K、D94K、D94R、L96K、V100K、D101KおよびD101R;配列番号34−45および52−198)ではいずれも、Ala−Cpn10に比してポリ(I:C)、大腸菌(E.coli)K12 ssRNAおよびいくつかのCpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された(図4〜図9)。
【0218】
事前に存在する陰性残基(すなわちEおよびD)を中性残基(たとえば、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、S、T、H)で置き換えることによる効果についても調べた。ここでも、陰性から中性のすべての置換研究(D13N、E18A、E18M、E18Q、E18S、E23Q、E34Q、E58Q、D68N、E74Q、D83N、D84N、D86N、D92N、D94A、D94M、D94N、D94SおよびD101N;配列番号250−306)で、Ala−Cpn10に比してポリ(I:C)、大腸菌(E.coli)K12 ssRNAおよびいくつかのCpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された(図4〜図9)。
【0219】
複数の正電荷を付加することで、結合がさらにしっかりとしたものになるかどうかを調べるために、いくつかのバリアントを調製した(ieg E18K/D101K、Q42K/D101K、T44K/D101KおよびS50K/D101K;配列番号217−231)。予想どおり、すべての核酸ベースのPRRリガンドに対して高親和性の結合が観察された(図4〜図9)。上記にて概説したように、既存の中性または陰性残基を陽性残基(K,R,H)で置き換えたり、陰性残基を中性残基で置き換えたりすることで、Cpn10に正電荷を加えることが可能である。正電荷を別の方法として、このような構造変化に耐えられるCpn10の位置での陽性残基(K,R,H)の挿入がある。各Cpn10サブユニットを、3つの小さなループと2つの大きなβヘアピン折り返しループで接続される不連続なβバレル構造にフォールドされる101のアミノ酸から形成する(図1)。βバレル構造によって、すべてのサブユニット−サブユニット相互作用およびCpn10七量体の安定性が得られる。βバレルのセグメントを延長すると、構造的な不安定さが生じる可能性がある。これに対し、N末端、C末端またはいくつかの結合ループを延長しても、このような構造変化に一層よく耐えられると思われる。この予測と一致する形で、いくつかのCpn10ホモログは、自然に伸展するセグメントを有する(図2)。たとえば、バクテリオファージT4 Cpn10(Gp31)は、有意に延長された可動性ループおよびL−3ループを有する。蚊、ハエ、マイコバクテリアのCpn10は、延長されたルーフループを持つのに対し、多数のCpn10が長めのN末端およびC末端を含む。表4に示すように、5つの結合ループ(すなわちL−1、L−2、L−3、可動性ループおよびルーフループ)、N末端およびC末端の各々への陽性残基の挿入に成功した。
【0220】
【表4】
【0221】
研究した陽性挿入(延長)Cpn10バリアントはいずれも、Ala−Cpn10に比してポリ(I:C)およびいくつかのCpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された(図4〜図9;配列番号307〜354)。
【0222】
1つの陽性付加を有するCpn10バリアントはいずれも、大腸菌(E.coli)K12 ssRNAと相互作用し、Ala−Cpn10よりも高い親和性を呈する。同様に、複数の陽性付加を有するCpn10バリアント(E18K/D101K、Q42K/D101K、T44K/D101K、S50K/D101K、MKK−Cpn10、MKKK−Cpn10、Ala−Cpn10−KK39、Ala−Cpn10−KK85およびAla−Cpn10−KK102)では、Ala−Cpn10に比して大腸菌(E.coli)K12 ssRNAに対する親和性が改善されている(図6)。正味の正電荷を高めるには、陰性残基を中性または陽性残基と置換すればよい。もうひとつの可能性として、陰性残基を完全に取り除くことがある。上述したように、多数のCpn10ホモログが自然に伸展され、また短縮された結合ループ(すなわちL−1、L−2、L−3、可動性ループおよびルーフループ)を有する。23位、34位、58位、74位および84位で陰性残基を除去すると(配列番号199〜213)、これらのCpn10バリアントで核酸ベースのPRRリガンドに対する親和性が高まることが示された。陰性残基D68、D84、D101も、Cpn10の構造の完全性を犠牲にすることなく欠失可能であり、これらのバリアントも高親和性バインダであると想定される。
【0223】
PRRリガンドの高親和性結合を免疫調節活性の増大と相関させることができるか否かを判断するために、いくつかの細胞ベースのアッセイを開発し、さまざまなCpn10突然変異体が炎症誘発性核酸を隔離することでPRRシグナル伝達のレベルを下げる機能を評価した。第1に、Ala−Cpn10に比して高親和性のバインダをCpG−ODNクラスBと一緒にインキュベートし、未結合のPRRリガンドを用いてNFκBをマウスマクロファージ(RAW264細胞)にて刺激した。図8は、高親和性バインダとAla−Cpn10に比して低減されたNFκBレベルとのしっかりとした相関を示す。同様に、X−Cpn10−K53EおよびAla−Cpn10−K53M,K55Mなど、PRRリガンドに対する親和性を妥協した突然変異体では、Ala−Cpn10に比してNFκB活性化のレベルが増加した。細胞での高親和性バインダの生物活性を試験するために、次にポリ(I:C)で刺激した場合に炎症誘発性NFκB活性化(TLR3を発現しているHEK細胞から)を抑える機能についてCpn10バリアントを評価した。この系では、高親和性のバインダ(Ala−Cpn10−D101Kなど)は通常、Ala−Cpn10に比してNFκB活性化を阻害する有意に改善された機能を示した(図7+図9)。正に荷電した残基を他の正に荷電した残基で置き換え(K7R、R19K、K27R、K39R、K55R、K69R、K85RおよびK98R;配列番号10〜33など)ても、Ala−Cpn10に比して当該Cpn10バリアントが炎症促進性核酸を結合する機能に有意な影響はなかった(図8)。
【0224】
本明細書では、上記ならびに本明細書全体をとおして述べる突然変異のある単離されたCpn10ポリペプチドで、核酸ベースのPRRリガンド、特にTLR−3アゴニストポリ(I:C)、TLR7およびTLR8アゴニスト大腸菌(E.coli) ssRNAおよびTLR9アゴニスト非メチル化CpG−オリゴヌクレオチド(ODN)(ODN−2216クラスA、ODN−2006クラスBおよびODN−M362クラスC)に対する親和性が高まることが示される。また、本明細書では、これらのCpn10ポリペプチドがポリ(I:C)およびCpG誘発NFkB活性化を阻害することもことも示される。
【0225】
結論
本明細書に含むデータから、Cpn10分子内にて、正に荷電した残基を加えるまたは負に荷電した残基を取り除く、負に荷電した残基を中性または正に荷電した残基で置き換える、中性残基を正に荷電した残基で置き換えることで、PRRの核酸ベースのリガンドに対する親和性が高められた、実施例8で列挙したようなCpn10突然変異体を生成することが可能であることが明らかになっている。たとえば、本発明者らは、Ala−Cpn10−Y75Kならびに、多くの他のCpn10突然変異体が、Ala−Cpn10に比してポリ(I:C)、CpG−ODNクラス−A/B/Cおよび大腸菌(E.coli)K12 ssRNAに対して有意に改善された親和性を持つことを確認した(図4〜図7)が、これはアミノ酸の置換、欠失および/または挿入によってCpn10分子の正味の正電荷を増したことによる可能性がある。
【0226】
さらに、本発明者らは、Cpn10分子内のいくつかの位置において正電荷を導入することで、PRRの核酸ベースのリガンドに対する高親和性の結合を達成可能であることも見いだした。核酸ベースのPRRリガンドに対する本発明のポリペプチドの親和性が高められたことは、免疫調節活性が高められたことを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾型シャペロニン10ポリペプチド、およびこれをコードする核酸に関する。また、本発明は、シャペロニン10の突然変異体、およびこのようなポリペプチドを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱ショックタンパク質10(Hsp10)および初期妊娠因子(EPF)としても知られる哺乳類のシャペロニン10(Cpn10)は一般に、熱ショックタンパク質60(Hsp60)としても知られるシャペロニン60(Cpn60)と一緒に、タンパク質のフォールディングに関与するミトコンドリア「分子シャペロン」タンパク質として特徴付けられている。Cpn10およびCpn60は、それぞれ細菌タンパク質GroESおよびGroELのホモログである。GroESおよびCpn10は各々オリゴマー化して、前者がGroEL分子14個、後者がCpn60分子7個で構成されるバレル構造の上に蓋として結合する7員環になり、この複合体に変性タンパク質を繋留する(Bukau and Horwich, 1998, Cell 92:351〜366(非特許文献1);Hartl and Hayer−Hartl, 2002, Science 295:1852〜1858(非特許文献2))。
【0003】
Cpn10タンパク質は、種間で高度に保存されている。ヒトCpn10は、ウシ、イヌ、ヒツジ、ブタのCpn10と100%同一であり、ラットのCpn10とはアミノ酸位置が1箇所異なるだけである。ヒトCpn10は、大腸菌(Escherichia coli)由来のGroESとの配列相同性が38%(類似性60%)である。Cpn10/GroESタンパク質は、各モノマーが基本的に3種類の構造領域すなわち、コアの逆平行βバレル領域と、これに隣接する「ルーフ(roof)」βヘアピンループ領域と、「可動性(mobile)ループ」領域とで構成される、ドーム形をした七量体のリングである。各モノマーの逆平行βバレル領域がドームのコアを形成し、七量体として連結されると各モノマーのβヘアピンループがドームのルーフを形成する。それぞれのモノマーにおいて、可動性ループ領域は、ルーフループとは反対側のβバレルの端にある。逆平行βバレル領域の一部が、空洞の内側に向いている下側のリム領域を形成する。この下側のリム領域には、75位のチロシン(Y75)をはじめとして、系統発生的に保存された多数のアミノ酸が含まれる。
【0004】
分子シャペロンとしての細胞内での役割だけでなく、Cpn10は細胞表面(Bellesら, 1999, Infect Immun 67:4191〜4200(非特許文献3)を参照のこと)や細胞外液(Shinら, 2003, J Biol Chem 278:7607〜7616(非特許文献4)を参照のこと)にも頻繁に見られ、次第に炎症性疾患の治療における潜在性を持つ免疫応答制御因子として認識されるようになっている。その結果、最近になって人間の関節リウマチ患者(Vanagsら Lancet 2006, 368:855〜863(非特許文献5))および乾癬患者(Williamsら Arch. Dermatol. 2008, 144:683〜685(非特許文献6))の治療におけるCpn10の有効性と安全性が立証されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bukau and Horwich, 1998, Cell 92:351〜366
【非特許文献2】Hartl and Hayer−Hartl, 2002, Science 295:1852〜1858
【非特許文献3】Bellesら, 1999, Infect Immun 67:4191〜4200
【非特許文献4】Shinら, 2003, J Biol Chem 278:7607〜7616
【非特許文献5】Vanagsら Lancet 2006, 368:855〜863
【非特許文献6】Williamsら Arch. Dermatol. 2008, 144:683〜685
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この免疫調節活性を媒介しているCpn10分子内の部位については、依然として特定しきれずにいる。本発明は、Cpn10の免疫調節活性、特にToll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合ドメインLRR含有ファミリー(NLR)、RIG−I様受容体(RLR)、IRFのDNA依存性活性化因子(DAI)、C型レクチン受容体(CLR)またはIFI20X/IFI16ファミリーのメンバー(Ifi16、Aim2、MNDA、IFIXなど)などのパターン認識受容体(PRR)のリガンドを結合するにあたってそれが果たす役割に、Cpn10の修飾による影響がおよぶという発見に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、Ala−Cpn10ポリペプチド(配列番号3)と比較して、核酸ベースのPRRリガンドに対する増加した親和性を有する、単離されたCpn10ポリペプチドが得られる。
【0008】
PRRは、Toll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合ドメインLRR含有ファミリー(NLR)、RIG−I様受容体(RLR)、IRFのDNA依存性活性化因子(DAI)、C型レクチン受容体(CLR)またはIFI20X/IFI16ファミリーのメンバー(Ifi16、Aim2、MNDA、IFIXなど)であってもよい。
【0009】
TLRは、TLR3、TLR7、TLR8またはTLR9のうちの少なくとも1つからなる群より選択されるものであってもよい。一実施形態では、TLRがTLR9であってもよい。
【0010】
リガンドは、アゴニストであってもアンタゴニストであってもよい。一実施形態では、前記ポリペプチドは、Ala−Cpn10ポリペプチドと比較して、より大きい正味の正電荷を有する。
【0011】
単離されたポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチドと比較して、N末端にグリシン(G)によるアミノ酸挿入をさらに含むものであってもよい。このポリペプチドは、天然由来のものであってもよいし、組換え生成したものや合成的に生成したものであってもよい。Cpn10は、真核生物起源のものであってもよい。ポリペプチドは、哺乳類起源のものであってもよい。ポリペプチドは、ヒトCpn10であってもよい。
【0012】
もうひとつの実施形態では、単離されたポリペプチドが、Ala−Cpn10分子の少なくとも1つの突然変異を有する。突然変異は、アミノ酸の置換、付加または欠失であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。置換は、1つ以上の正に荷電した残基による、1つ以上のアミノ酸残基の置き換えであってもよい。もうひとつの実施形態では、1つ以上の負に荷電した残基が、中性または正に荷電した残基で置き換えられてもよい。突然変異的な付加は、1つ以上の正に荷電した残基を含むことであってもよい。突然変異的な欠失は、1つ以上の負に荷電した残基の除去であってもよい。
【0013】
もうひとつの実施形態では、中性の残基を正に荷電した残基で置き換えてもよい。正に荷電した残基は、アルギニン(R)、リジン(K)またはヒスチジン(H)であり得る。中性の残基は、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、システイン(C)、メチオニン(M)またはHであり得る。ここで、ヒスチジンはpKaが約6.5であるため、pH7.4(細胞外環境など)で11%前後イオン化され、pH6.0(TLR3、TLR7、TLR8、およびTLR9を含むリソソーム区画など)で76%前後イオン化されることになる。
【0014】
もうひとつの実施形態では、少なくとも1つの突然変異が、野生型Cpn10分子のN末端、βバレル、可動性ループ、ルーフループ、C末端または3つの結合ループのいずれかまたはこれらの任意の組み合わせに所在する。
【0015】
さらに別の実施形態では、ポリペプチドが、野生型Cpn10分子の1〜7位、9位、12〜14位、16位、18〜42位、44位、46位、50位、52〜63位、65〜69位、73〜79位、81位、83〜89位、91〜94位、96位、98位、100位、101位からなる群より選択されるかまたはこれらの任意の組み合わせのアミノ酸位置に、突然変異を含む。
【0016】
別の実施形態では、前記ポリペプチドが、A1(K、RまたはH)、G2(K、RまたはH)、Q3(K、RまたはH)、A4(K、RまたはH)、F5(K、RまたはH)、R6(KまたはH)、K7(RまたはH)、L9(K、RまたはH)、F12(K、RまたはH)、D13(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R14(KまたはH)、L16(K、RまたはH)、E18(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R19(KまたはH)、S20(K、RまたはH)、A21(K、RまたはH)、A22(K、RまたはH)、E23(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、T24(K、RまたはH)、V25(K、RまたはH)、T26(K、RまたはH)、R27(KまたはH)、G28(K、RまたはH)、G29(K、RまたはH)、I30(K、RまたはH)、M31(K、RまたはH)、L32(K、RまたはH)、P33(K、RまたはH)、E34(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K35(RまたはH)、S36(K、RまたはH)、Q37(K、RまたはH)、G38(K、RまたはH)、K39(K、RまたはH)、V40(K、RまたはH)、L41(K、RまたはH)、Q42(K、RまたはH)、T44(K、RまたはH)、V46(K、RまたはH)、S50(K、RまたはH)、S52(K、RまたはH)、K53(RまたはH)、G54(K、RまたはH)、K55(RまたはH)、G56(K、RまたはH)、G57(、K、RまたはH)、E58(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、I59(K、RまたはH)、Q60(K、RまたはH)、P61(K、RまたはH)、V62(K、RまたはH)、S63(K、RまたはH)、K65(RまたはH)、V66(K、RまたはH)、G67(K、RまたはH)、D68(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K69(RまたはH)、P73(K、RまたはH)、E74(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y75(E、GK、K、RまたはH)、G76(K、RまたはH)、G77(K、RまたはH)、T78(K、RまたはH)、K79(RまたはH)、V81(K、RまたはH)、D83(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT),D84(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K85(K、RまたはH)、D86(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y87(K、RまたはH)、F88(K、RまたはH)、L89(K、RまたはH)、R91(KまたはH)、D92(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、G93(K、RまたはH)、D94(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、L96(K、RまたはH)、K98(RまたはH)、V100(K、RまたはH)、D101(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、MH−Cpn10、MR−Cpn10、MK−Cpn10、MKK−Cpn10、MKKK−Cpn10、Ala−Cpn10−K21、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−K39、Ala−Cpn10−KK39、Ala−Cpn10−K57、Ala−Cpn10−KK57、Ala−Cpn10−K76、Ala−Cpn10−KK76、Ala−Cpn10−K85、Ala−Cpn10−KK85、Ala−Cpn10−K102、Ala−Cpn10−KK102、ΔD13、ΔE18、ΔE23、ΔE34、ΔE58、ΔE68、ΔE74、ΔD83、ΔD84、ΔD86、ΔD92、ΔD94、およびΔD101からなる群より選択される突然変異またはこれらの組み合わせを含む。
【0017】
もうひとつの実施形態では、突然変異が、表2に定義するようなN末端に所在する。この突然変異は挿入であってもよい。たとえば、N末端での挿入が、それぞれ配列番号307、313、316、319、310で示すように、MH、MK、MKK、MKKK、MRからなる群より選択される。
【0018】
また、Cpn10ポリペプチドは、それぞれ配列番号37または10で示すような置換Q3KまたはK7Rを含む。
【0019】
さらに別の実施形態では、突然変異が、表2に定義するような可動性ループに所在する。この突然変異は欠失であってもよい。欠失は、配列番号199および202に示すようなE23またはE34であってもよい。突然変異は挿入であってもよい。挿入は、配列番号322および325に示すようなK21またはKK21であってもよい。突然変異は置換であってもよい。たとえば、この置換は、配列番号16、64、67、70、73、76、79、265、268に示すようなA22K、E23Q、T24K、K27R、G29K、M31K、E34K、E34Q、Q37Kからなる群より選択される。
【0020】
本明細書では、2つ以上のモノマーが互いに共有結合的に結合された7つのCpn10モノマーを含む、単離されたCpn10オリゴマーも得られる。Cpn10七量体では、1つのモノマーのC末端と隣接するモノマーのN末端との間に共有結合が形成される。共有結合の形成に用いられるC末端およびN末端については、1つ以上のアミノ酸(Ala−Cpn10またはGly−Cpn10など)を付加して長くしてもよいし、1つ以上のアミノ酸を除去して短くしてもよい。たとえば、単離されたCpn10ポリペプチドは、配列番号355に示す共有結合Cpn10である。
【0021】
別の実施形態では、共有結合的に結合された七量体の各モノマーが、A1(K、RまたはH)、G2(K、RまたはH)、Q3(K、RまたはH)、A4(K、RまたはH)、F5(K、RまたはH)、R6(KまたはH)、K7(RまたはH)、L9(K、RまたはH)、F12(K、RまたはH)、D13(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R14(KまたはH),L16(K、RまたはH)、E18(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R19(KまたはH)、S20(K、RまたはH)、A21(K、RまたはH)、A22(K、RまたはH)、E23(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、T24(K、RまたはH)、V25(K、RまたはH)、T26(K、RまたはH)、R27(KまたはH)、G28(K、RまたはH)、G29(K、RまたはH)、I30(K、RまたはH)、M31(K、RまたはH)、L32(K、RまたはH)、P33(K、RまたはH)、E34(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K35(RまたはH)、S36(K、RまたはH)、Q37(K、RまたはH)、G38(K、RまたはH)、K39(K、RまたはH)、V40(K、RまたはH)、L41(K、RまたはH)、Q42(K、RまたはH)、T44(K、RまたはH)、V46(K、RまたはH)、S50(K、RまたはH)、S52(K、RまたはH)、K53(RまたはH)、G54(K、RまたはH)、K55(RまたはH)、G56(K、RまたはH)、G57(K、RまたはH)、E58(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、I59(K、RまたはH)、Q60(K、RまたはH)、P61(K、RまたはH)、V62(K、RまたはH)、S63(K、RまたはH)、K65(RまたはH)、V66(K、RまたはH)、G67(K、RまたはH)、D68(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K69(RまたはH)、P73(K、RまたはH)、E74(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y75(E、GK、K、RまたはH)、G76(K、RまたはH)、G77(K、RまたはH)、T78(K、RまたはH)、K79(RまたはH)、V81(K、RまたはH)、D83(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT),D84(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K85(K、RまたはH)、D86(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y87(K、RまたはH)、F88(K、RまたはH)、L89(K、RまたはH)、R91(KまたはH)、D92(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、G93(K、RまたはH)、D94(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、L96(K、RまたはH)、K98(RまたはH)、V100(K、RまたはH)、D101(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、MH−Cpn10、MR−Cpn10、MK−Cpn10、MKK−Cpn10、MKKK−Cpn10、Ala−Cpn10−K21、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−K39、Ala−Cpn10−KK39、Ala−Cpn10−K57、Ala−Cpn10−KK57、Ala−Cpn10−K76、Ala−Cpn10−KK76、Ala−Cpn10−K85、Ala−Cpn10−KK85、Ala−Cpn10−K102、Ala−Cpn10−KK102、ΔD13、ΔE18、ΔE23、ΔE34、ΔE58、ΔE68、ΔE74、ΔD83、ΔD84、ΔD86、ΔD92、ΔD94、およびΔD101からなる群より選択されるかまたはこれらの組み合わせの1つ以上の突然変異を含むものであってもよい。もうひとつの実施形態では、突然変異が、表2に定義するようなβバレルに所在する。少なくとも1つの突然変異が置換であってもよい。この置換は、配列番号13、25、28、31、46、49、52、55、58、61、58、61、85、88、91、94、97、118、121、124、145、148、160、163、166、169、172、175、178、181、184、187、190、217、244、250、253、256、259、262、274、286、289、292、295、298、301に示すようなL9K、F12K、D13K、D13N、E18A、E18K、E18M、E18Q、E18S、E18R、R19K、S20K、L41K、Q42K、T44K、S50K、S50R、V66K、D68K、D68N、K69R、P73K、G77K、T78K、K85R、D86K、D86N、D86R、Y87K、F88K、L89K、D92K、D92N、G93K、D94A、D94K、D94M、D94N、D94R、D94S、L96K、K98RまたはV100Kであってもよい。
【0022】
もうひとつの実施形態では、突然変異が、表2に定義するようなルーフループに所在する。この突然変異は挿入であってもよい。挿入は、配列番号334または337に示すようなK57またはKK57であってもよい。突然変異は欠失であってもよい。この欠失は、配列番号205に示すようなE58であってもよい。突然変異は置換であってもよく、たとえば、単離されたCpn10ポリペプチドが、配列番号6、22、100、103、106、109、112、115、271に示すようなX−Cpn10−K53E、Ala−Cpn10−S52K、G54K、K55R、G56K、E58K、E58Q、Q60K、P61Kである。もうひとつの実施形態では、単離されたCpn10ポリペプチドが、野生型Cpn10ポリペプチドのアミノ酸配列のアミノ酸残基53位および/または55位で、ルーフループに1つ以上のアミノ酸置換を含む。たとえば、単離されたCpn10ポリペプチドは、配列番号8に示す配列でコードされるようなAla−Cpn10−K53M、K55Mであってもよい。
【0023】
もうひとつの実施形態では、突然変異が、表2に定義するような結合ループL1に所在する。この突然変異は挿入であってもよい。挿入は、配列番号328または331に示すようなK39またはKK39であってもよい。突然変異は置換であってもよい。たとえば、この置換は、配列番号19または82に示すようなK39RまたはV40Kからなる群より選択される。さらに別の実施形態では、突然変異が、表2に定義するような結合ループ2(下側のリム領域)に所在する。この突然変異は挿入であってもよい。この挿入は、配列番号340に示すようなK76であってもよい。突然変異は置換であってもよい。この置換は、配列番号130に示すようなX−Cpn10−Y75Kあるいは、配列番号127、133、136、139、142、238または277に示すようなAla−Cpn10−E74K、Y75H、Y75K、Y75R、Y75GKまたはG76Kであってもよい。突然変異は欠失であってもよい。この欠失は、配列番号208に示すようなE74であってもよい。
【0024】
別の実施形態では、突然変異が、表2に定義するような結合ループ3に所在する。この突然変異は挿入であってもよい。挿入は、配列番号343または346に示すようなK85またはKK85であってもよい。突然変異は置換であってもよい。この置換は、配列番号151、154、157、280または283に示すようなV81K、D83K、D83N、D84KまたはD84Nであってもよい。突然変異は欠失であってもよい。この欠失は、配列番号211に示すようなD84であってもよい。
【0025】
もうひとつの実施形態では、突然変異が、表2に定義するようなC末端に所在する。この突然変異は挿入であってもよい。挿入は、配列番号349または352に示すようなK102またはKK102であってもよい。突然変異は置換であってもよい。この置換は、配列番号193、196または304に示すようなD101K、D101NまたはD101Rであってもよい。
【0026】
もうひとつの実施形態では、ポリペプチドは、表2に定義するような野生型Cpn10分子のN末端、βバレル、可動性ループ、ルーフループ、C末端または3つの結合ループのいずれかからなる、Cpn10の1つ以上の領域内の任意の位置に、少なくとも2つの突然変異を含むものであってもよい。たとえば、Cpn10ポリペプチドは、Ala−Cpn10−F12K,D92K、E18K,D101K;E34Q,Y75K;Q42K,D101K;T44K,D101K;S50K,D101K;Q60K,T78K;E74K,Y75E;Y75GK;Y75G,G76K;Y75K,D94K;Y75K,D94Nを含むものであってもよい。ポリペプチドは、配列番号214、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247に示すようなアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドをコードする単離された核酸が得られる。
【0028】
一実施形態では、単離された核酸が、配列番号7、9、11、12、14、15、17、18、20、21、23、24、26、27、29、30、32、33、35、36、38、39、41、42、44、45、47、48、50、51、53、54、56、57、59、60、62、63、65、66、68、69、71、72、74、75、77、78、80、81、83、84、86、87、89、90、92、93、95、96、98、99、101、102、104、105、107、108、110、111、113、114、116、117、119、120、122、123、125、126、128、129、131、132、134、135、137、138、140、141、143、144、146、147、149、150、152、153、155、156、158、159、161、162、164、165、167、168、170、171、173、174、176、177、179、180、182、183、185、186、188、189、191、192、194、195、197、198、200、201、203、204、206、207、209、210、212、213、215、216、218、219、221、222、224、225、227、228、230、231、233、234、236、237、239、240、242、243、245、246、248、249、251、252、254、255、257、258、260、261、263、264、266、267、269、270、272、273、275、276、278、279、281、282、284、285 287、288、290、291、293、294、296、297、299、300、302、303、305、306、308、309、311、312、314、315、317、318、320、321、323、324、326、327、329、330、332、333、335、336、338、339、341、342、344、345、347、348、350、351、353、354または356からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含むものであってもよい。
【0029】
本発明の第3の態様によれば、第2の態様による核酸を含む発現構築物であって、1つ以上の制御配列に作動可能に連結された構築物が得られる。
【0030】
核酸は、コドン最適化Cpn10核酸であってもよい。
【0031】
コドン最適化核酸配列は、トランスファーRNAプールの有用性を高め、一層効率的な終止コドンを開拓し、RNA二次構造および/または不安定化要素を除去する1つ以上のヌクレオチド置換を有するものであってもよい。
【0032】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドを発現する宿主細胞、または第2の態様による核酸もしくは第3の態様による発現構築物を含む宿主細胞が得られる。
【0033】
本発明の第5の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドと選択的に結合する抗体が得られる。
【0034】
本発明の第6の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドと複合した炎症誘発性核酸または免疫抑制性核酸が得られる。
【0035】
本発明の第7の態様によれば、第1の態様によるポリペプチド、第2の態様による核酸または第3の態様による発現構築物あるいは第5の態様による抗体を含む、薬学的組成物が得られる。
【0036】
本発明の第8の態様によれば、第1の態様によるCpn10ポリペプチドまたは第2の態様による核酸の治療有効量を前記被験体に投与するステップを含む、被験体を治療する方法が得られる。
【0037】
治療によって、被験体における免疫応答が調節されることがある。免疫応答は、PRRシグナル伝達の制御によって調節されることがある。
【0038】
本発明の第9の態様によれば、第1の態様によるCpn10ポリペプチドまたは第2の態様による核酸の有効量を被験体に投与することを含む、被験体における疾患、障害または症状を治療または予防するための方法が得られる。
【0039】
疾患、障害または症状は、インスリン依存性糖尿病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン病(Sjorgren’s disease)、グレーブス病、多発性硬化症、関節リウマチ、慢性疲労症候群、アルツハイマー病、喘息、アレルギー、GVHD、アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis)、炎症性疼痛、乾癬、HIV、慢性免疫活性化(Chronic immune activation)、慢性筋炎、強皮症などの急性または慢性の炎症性疾患;または非小細胞肺癌、腎細胞癌、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、基底細胞癌などの癌;あるいは感染症から選択されるものであってもよい。感染症は、細菌感染、ウイルス感染または真菌感染に起因するものであってもよい。
【0040】
一実施形態では、慢性免疫活性化が、胃腸管から循環系への細菌産物および/またはウイルス産物の漏出と関連するものである。たとえば、漏出は、口腔、腸または小腸から起こり得る。細菌産物またはウイルス産物の漏出は、細菌感染、ウイルス感染、炎症性腸疾患および腸疾患などの感染または疾患によって引き起こされる場合がある。ウイルス感染の一例に、HIV感染またはC型肝炎感染がある。細菌産物は、LPSまたは核酸を含む場合がある。ウイルス産物は、核酸を含む場合がある。
【0041】
別の実施形態では、慢性免疫活性化が、LPSによるTLRシグナル伝達の免疫調節またはTLRへの核酸結合に関与する。LPSはTLR4と結合するのに対し、核酸はTLR3、7、8または9を結合できる。
【0042】
本発明の第10の態様によれば、被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、PRRシグナル伝達を調節するための方法であって、第1の態様によるCpn10ポリペプチドまたは第2の態様による核酸の治療有効量を投与することを含む方法が得られる。
【0043】
本発明の第11の態様によれば、被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、1つ以上の免疫調節物質の産生および/または分泌を調節するための方法であって、第1の態様によるCpn10ポリペプチドまたは第2の態様による核酸の治療有効量を投与することを含む、方法が得られる。
【0044】
ポリペプチドは、PRRリガンドを結合することによって、PRRからのシグナル伝達を調節するものであってもよい。
【0045】
免疫調節物質は、炎症促進性サイトカインもしくはケモカインまたは抗炎症性サイトカインもしくはケモカインであってもよい。サイトカインまたはケモカインは、TNF−α、IL−1、IL−6、RANTES、IL−10、IL−17、IL−23、TGF−βまたはI型インターフェロンから選択されるものであってもよい。I型インターフェロンは、IFNα、IFNβまたはIFNγであってもよい。
【0046】
本発明の第12の態様によれば、被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、1つ以上の免疫調節物質の産生および/または分泌を阻害するための方法であって、第1の態様によるCpn10ポリペプチドまたは第2の態様による核酸の有効量を投与することを含む、方法が得られる。
【0047】
ポリペプチドは、PRRリガンドを結合することによって、PRRからのシグナル伝達を調節するものであってもよい。PRRリガンドに対するポリペプチドの結合が、PRRを有する細胞に対する免疫調節作用を持つものであってもよい。この細胞は、抗原提示細胞であってもよいし、T細胞またはB細胞であってもよい。抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージまたは単球であってもよい。
【0048】
免疫調節物質は、炎症促進性サイトカインまたはケモカインであってもよいし、抗炎症性サイトカインまたはケモカインであってもよい。サイトカインまたはケモカインは、TNF−α、IL−1、IL−6、RANTES、IL−10、IL−17、IL−23、TGF−βまたはI型インターフェロンから選択されるものであってもよい。I型インターフェロンは、IFNα、IFNβまたはIFNγであってもよい。
【0049】
本発明の第13の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドと結合する化合物を同定する方法であって、
(a)候補化合物を前記ポリペプチドと接触させるステップ、および
(b)候補化合物と前記ポリペプチドとの間の複合体の形成をアッセイするステップ
を含む方法が得られる。
【0050】
複合体の形成のアッセイは、競合的結合アッセイ、ツーハイブリッドアッセイ、ゲル濾過クロマトグラフィ、AlphaScreen(登録商標)ハイスループットスクリーニング、電気泳動移動度シフト(ゲルシフト)アッセイおよび/またはプレートキャプチャアッセイであってもよい。
【0051】
アッセイは、定性的であっても定量的であってもよい。
【0052】
本発明の第14の態様によれば、第1の態様によるポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)前記ポリペプチドを、前記ポリペプチドと候補化合物との相互作用を可能にするのに適した条件下で、候補化合物と接触させるステップ、および
(b)前記ポリペプチドの活性をアッセイするステップ
を含む方法が得られる。
【0053】
ポリペプチドの活性のアッセイは、標識基質を加えるステップと、標識基質の変化を測定するステップとを含むものであってもよい。
【0054】
本発明の第15の態様によれば、
(a)第1の態様によるポリペプチドを、前記ポリペプチドと候補化合物との相互作用を可能にするのに適した条件下で、候補PRRリガンド化合物と接触させるステップ、および
(b)Ala−Cpn10と比較した、前記ポリペプチドとの前記化合物の親和性の増加をアッセイするステップ、および/または
(c)候補PRRリガンド化合物および第1の態様によるポリペプチドの存在下で、PRR活性化の増加または低下をアッセイするステップ
を含む、PRRリガンドをスクリーニングする方法が得られる。
【0055】
また、本発明は、上記の態様および実施形態による単離されたCpn10ポリペプチドおよびポリヌクレオチドのバリアント、誘導体、ホモログ、アナログ、フラグメントも企図する。
【0056】
上記の態様および実施形態によれば、Cpn10ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、どのような動物由来のものであってもよく、組換えDNA技術を用いて生成したものであっても、合成的に生成したものであってもよい。Cpn10は、真核生物のCpn10であってもよい。たとえば、Cpn10はヒトCpn10である。
【0057】
野生型Cpn10分子またはポリペプチドは、アセチル−Cpn10またはX−Cpn10(配列番号1)であってもよい。
【0058】
上記の態様および実施形態によれば、Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性は、ポリペプチドの七量体の生成に関与することがある。この七量体は、任意の組み合わせで突然変異体を含むものであってもよいし、非突然変異体ポリペプチドであってもよい。
【0059】
定義
本明細書の文脈において、「含む(comprising)」という表現は、「主に含む(including)が必ずしもそれだけとはかぎらない」ことを意味する。さらに、「含む(comprise)」や「含む(comprises)」などの「含む(comprising)」という単語の活用形についても、その形に応じて意味が変化する。
【0060】
「野生型」という用語は、Cpn10分子またはポリペプチドに関して本明細書で使用する場合、天然または非天然の形態を含む。たとえば、天然のヒトCpn10は、そのN末端でアセチル化される。本発明では、野生型Cpn10という用語の範囲内に、配列番号1に示すようなアセチル化された(X−Cpn10)分子またはアセチル化されていない(X−Cpn10)分子を企図する。
【0061】
「Ala−Cpn10」という用語は、大腸菌(E.coli)で産生されるヒトCpn10を示す。この場合、Ala−Cpn10はN末端のアラニン残基が多い状態で産生される。Ala−Cpn10の配列を配列番号3としてあげておく。
【0062】
「免疫調節物質」という用語は、免疫系と相互作用し、免疫応答の活性化、阻害、調節、維持、成熟、抑制または増強において役割を果たす分子メディエータを意味する。免疫調節物質は、炎症促進性サイトカインもしくはケモカインまたは抗炎症性サイトカインもしくはケモカインであってもよい。サイトカインまたはケモカインは、TNF−α、IL−1、IL−6、RANTES、IL−10、IL−17、IL−23、TGF−βまたはI型インターフェロンから選択されるものであってもよい。I型インターフェロンは、IFNα、IFNβまたはIFNγであってもよい。
【0063】
「パターン認識受容体」またはPRRという用語は、本明細書で使用する場合、Toll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合ドメインLRR含有ファミリー(NLR)、RIG−I様受容体(RLR)、IRFのDNA依存性活性化因子(DAI)、C型レクチン受容体(CLR)またはIFI20X/IFI16ファミリーのメンバー(Ifi16、Aim2、MNDA、およびIFIXなど)をはじめとするいくつかのクラスの生殖系列コードタンパク質を意味する(たとえば、審良(Akira)ら, Cell 2006, 124:783〜801;Latz, E.およびFitzgerald, K.A.(2008) Nat. Rev. Immunol. Vol. 8, No. 4, Posterを参照のこと)。通常、PRRは核酸ベースのPRR(通常は細胞内に常在)と細胞表面PRR(通常は疎水性リガンドを認識する)の2つの群に分けられる。PRRは、抗原提示細胞(樹状細胞、単球、マクロファージなど)、T細胞、B細胞を含むがこれに限定されるものではないさまざまな細胞型に存在する。
【0064】
「Toll様受容体」またはTLRという用語は、病原体と相互作用し、感染に対する宿主免疫応答を作動させる受容体を意味する。哺乳動物では、病原体によるTLRの活性化によって、病原体の散在を防止し、なおかつ樹状細胞上のTLRによって、獲得免疫の発達を指示する自然免疫の炎症過程が発動される。TLRは、ヒトで知られる生殖系列10における限られた数の遺伝子によってコードされる。これらの10受容体は、リポ多糖などの糖脂質、フラゲリンなどのタンパク質、dsRNAなどの核酸をはじめとして、多岐にわたる病原体由来の分子サインを認識する。TLRは、通常は疎水性リガンドを認識する細胞表面TLRと、通常は核酸ベースのリガンドを認識する細胞内TLR(すなわちTLR−3、TLR−7、TLR−8、TLR−9)の2つの群に分けられる。
【0065】
本明細書で使用する場合、「調節する(modulating)」、「調節する(modulates)」ならびにその活用形は、本発明の特定の調節分子または調節剤の非存在下での活性、生成、分泌のレベルまたはそれの他の機能と比較して、調節分子または調節剤の存在下における活性、生成、分泌のレベルまたは分子の機能が増大または減少することを示す。これらの用語は、増減の定量化を暗示するものではない。調節は、所望の結果を生成できればどのような大きさであってもよく、直接的であっても間接的であってもよい。
【0066】
「正味の電荷」という用語は、本明細書で使用する場合、分子の変化を示す。タンパク質、ペプチド、ポリペプチド(Cpn10ポリペプチドなど)といったアミノ酸配列を含む分子は、正または負に荷電できるものである。特定pHでのポリペプチドの正味の電荷については、ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式(Hasselbalch, K.A., 1917 Biochemische Zeitschrift 78: 112〜144)と、ポリペプチドのイオン化可能なアミノ酸側鎖およびN末端およびC末端の周知のpKa値とに基づいて計算で求めることが可能である。
【0067】
「正味の正電荷がより大きい」という表現は、本明細書で使用する場合、Ala−Cpn10に対する分子の正電荷の増加である。
【0068】
「可動性ループ」という表現は、18個のアミノ酸残基を含むCpn10分子の柔軟な領域である。可動性ループは、残基A21〜G38を含む(図1参照;残基の番号は、本明細書で説明するようなアセチル化されたまたはアセチル化されていないX−Cpn10(配列番号1)のいずれかに基づくものである)。
【0069】
「ルーフループ」という用語は、14個のアミノ酸残基を含むCpn10分子の柔軟な領域である。ルーフループは、残基S52〜V62を含む(図1参照;残基の番号は、本明細書で説明するようなアセチル化されたまたはアセチル化されていないX−Cpn10(配列番号1のいずれかに基づくものである)。
【0070】
本明細書で説明するような「βバレル」は、5つのセグメントすなわち、1番目、2番目、3番目、4番目、5番目のセグメントを含むCpn10分子の領域である。1番目のセグメントは、残基F8〜S20を含み、2番目のセグメントはL41〜G51を含み、3番目のセグメントはS63〜P73を含み、4番目のセグメントはG77〜V80を含み、5番目のセグメントは残基K85〜V100を含む(図1参照)。残基の番号は、本明細書で説明するようなX−Cpn10(配列番号1)に基づくものである。
【0071】
「結合ループ」という用語は、可動性ループおよびルーフループなど、Cpn10分子のさまざまなループをβバレルと接続するCpn10分子の柔軟な領域を示す。結合ループには、1番目、2番目、3番目の3つがある。1番目の結合ループは残基K39〜V40を含む。2番目の結合ループはE74〜G76を含み、3番目のループは残基V81〜D84を含む(図1参照)。残基の番号は、本明細書で説明するようなX−Cpn10(配列番号1)に基づくものである。
【0072】
「N末端」という用語は、残基A1〜K7を含むCpn10分子のN末端の柔軟な領域(図1参照)である。残基の番号は、本明細書で説明するようなX−Cpn10(配列番号1)に基づくものである。
【0073】
「C末端」という用語は、Cpn10分子のD101を含む(図1参照;残基の番号は、本明細書で説明するようなX−Cpn10(配列番号1)に基づくものである)。
【0074】
「アミノ酸」という用語は、本明細書で使用する場合、アミン官能基とカルボキシル官能基の両方を含む分子を意味する。
【0075】
「荷電した残基」という用語は、本明細書で使用する場合、正または負の電荷を持つための電位のある側鎖を有するアミノ酸残基を意味する。
【0076】
「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに結合されたアミノ酸で構成されるポリマーを意味する。「ポリペプチド」という用語は、全長タンパク質の一部を構成するものであってもよい。さらに、「ポリペプチド」という用語は、野生型Cpn10分子と比較してそのアミノ酸配列に少なくとも1つの修飾を呈することがあるポリペプチドを示す。この修飾は、ユビキチン化、(放射性核種またはさまざまな酵素での)標識、ペグ化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)などの共有ポリマー結合、オルニチンなどのアミノ酸の化学合成による挿入または置換(これらはヒトタンパク質で天然に発生するものである)といった技術などの化学修飾を含むものであってもよい。
【0077】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用する場合、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド塩基あるいは、天然ヌクレオチドの周知のアナログまたはこれらの混合物の一本鎖または二本鎖ポリマーを示す。この用語には、特に明記しないかぎり、特定配列ならびにこれと相補な配列を含む。「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書では同義に用いられる。
【0078】
「CpG」という用語は、本明細書で使用する場合、塩基の直鎖状配列においてその長さ方向にシトシンヌクレオチドがグアニンヌクレオチドの次に生じ、DNAで2つのヌクレオシドを連結するリン酸塩によって分離されているDNAの領域内のメチル化されていない部位を示す。「CpG」は、上記の意味と、グアニンと対をなすシトシン塩基とを区別するのに用いられる。抗原提示細胞を刺激する機能に違いのある3つの異なるタイプのCpGオリゴデオキシヌクレオチドが同定されている。すなわち、CpG−A(ヒトODN−2216)は形質細胞様樹状細胞(PDC)において大量のインターフェロン−α(IFN−α)およびIFN−βを誘導する。CpG−B(ヒトODN−2006およびマウスODN−1826)はPDC成熟を誘導し、B細胞の強力な活性化因子であるが少量のIFN−αおよびIFN−βしか刺激しない。これに対し、CpG−C(ヒトODN−M362)はB細胞およびNK細胞を誘導し、ヒト末梢血単核細胞のIFN−α産生を誘導する。
【0079】
「単離された」という表現は、対象となる分子が、存在する優勢な種になる(分子ベースで組成物/試料中に個々の他の種より豊富である)ような形で、対象となる分子がその天然の環境または宿主から取り出され、関連の不純物が低減または除去された状態のことを意味する。一般に、実質的に精製された画分とは、存在する全巨大分子種の少なくとも約30パーセントを目的の種が占める組成物である。通常、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全巨大分子種の約80〜90パーセントを超えて含むことになる。最も一般には、目的の種を実質的に同質になる(従来の検出方法では組成物中に汚染種を検出できない)まで精製し、その組成物は実質的に単一の巨大分子種からなる。
【0080】
本明細書で使用する場合、「実質的に」という表現は、大多数であるが必ずしもすべてとはかぎらないことを意味し、したがって、対応する野生型ポリペプチドの構成領域を「実質的に」欠いた修飾ポリペプチドといえば、その修飾ポリペプチドがその構成領域の一部を保持することがある。たとえば、対応する野生型ポリペプチドの構成領域を「実質的に」欠いた修飾ポリペプチドは、その構成領域の配列の50パーセント前後またはそれ未満を保持することがあるが、一般に構成領域は、取り除かれる領域の配列の割合に応じて、構造的および/または機能的に不活性にされる。
【0081】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、本明細書で使用する場合、1つのアミノ酸を同様の構造的および/または化学的特性を持つ他のアミノ酸で置き換えることを示す。保存的アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性および/または両親媒の性質のうちの1つ以上の類似性に基づいてなされるものであってもよい。たとえば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニンがある。荷電していない極性のアミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミンがある。正に荷電した(塩基性)極性のアミノ酸には、アルギニン、リジン、ヒスチジンがある。負に荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸がある。アミノ酸の「挿入」または「欠失」は、好ましくはアミノ酸約1〜20個、一層好ましくはアミノ酸1〜10個の範囲である。その変形については、組換えDNA技術を用いてポリペプチド分子におけるアミノ酸の挿入、欠失または置換を体系的に実施し、得られた組換えバリアントの活性をアッセイすることで、実験で求めるようにしてもよい。
【0082】
本明細書で使用する場合、「治療」、「治療する」という表現ならびにその活用形は、疾患状態または症候を改善し、疾患の確立を予防し、そうでなければ疾患または他の望ましくない症候の進行を何らかの形で予防、妨害、遅延または反転するあらゆる用途を示す。
【0083】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、その意味に、無毒であるが所望の治療効果または予防効果を得られるだけの作用剤または化合物の十分な量を含む。必要とされる厳密な量は、治療対象となる種、被験体の年齢と全身症状、治療対象となる症状の重症度、投与対象となる特定の作用剤、投与モードなどの要因に応じて、被験体ごとに異なる。このため、厳密な「有効量」を指定することが可能である。しかしながら、どの事例でも、適当な「有効量」は当業者が常法の実験だけで決定できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】A.Cpn10のさまざまな領域を示す大腸菌(E.coli)Cpn10(GroES)の結晶構造。Cpn10は、10kDaの同一のサブユニット7個からなる。B.Cpn10とGroESのアミノ酸配列を示す。GroESのリボン構造は、Xuら(Nature 1997, 388:741〜750)によって刊行されたX線結晶配位から作成したものであり、この構造では、通常は無秩序な可動性ループがGroELとの相互作用によって完全に整列配置されている(この図ではGroELを省略した)。
【図2】多数の生物王国から得たヒトCpn10とCpn10ホモログの配列アライメント。ヒトCpn10とは異なるアミノ酸に影を付けてある。可動性ループおよびβヘアピンルーフループの位置を示す。囲み(aからeでマーク)は、55残基βバレルコアの予測される境界を示す(Huntら, 1997 Cell 90: 361〜371)。ヒトCpn10に対するさまざまなホモログの同一性および類似性のパーセンテージを示す。各タンパク質のSwissProtの受入番号をあげておく。ヒトCpn10に対する配列の同一性(%)と類似性(%)の計算は、NCBIブラスト(Altschulら, 1997 Nucleic Acids Res. 25:3389〜3402)を用いて実施し、NS=有意な類似性が認められなかったことを示す。また、ExPASyプロテオミクスサーバーProtParam Tool(www.expasy.org/tools/protparam.html)を用いて等電点(pI)を計算した。
【図3】クーマシーブリリアントブルーで染色したSDS−PAGEによって、組換えCpn10タンパク質が>99%純粋であることが明らかになる。
【図4】1μgのTLR3アゴニストポリ(I:C)(合成dsRNAアナログ)を、50μgのCpn10バリアントと一緒に、表記の塩濃度で10mM Tris−HCl(pH7.6)にて23℃で1時間インキュベートした。試料を1%TAEアガロースゲルにて分離し、臭化エチジウムで染色した。遊離Cpn10が負電極(ゲルの頂部)に向かって遊走するのに対し、遊離ポリ(I:C)は正電極(ゲルの底部)に向かって遊走し、Cpn10−ポリ(I:C)の複合体は両方の分子の移動を遅らせる。
【図5】1μgのヒトODN−2216クラスA(TLR9アゴニスト;Invivogen)を、50μgのCpn10と一緒に、表記の塩濃度で10mM Tris−HCl(pH7.6)にて23℃で15分間インキュベートした。試料を1%TAEアガロースゲルにて分離し、臭化エチジウムで染色した。遊離Cpn10が負電極(ゲルの頂部)に向かって遊走するのに対し、遊離CpG−ODNは正電極(ゲルの底部)に向かって遊走し、Cpn10−CpG−ODNの複合体は両方の分子の移動を遅らせる。
【図6】0.5μgの大腸菌(E.coli)K12 ssRNA(Invivogen カタログ番号tlrl−ecrna)(TLR7/8アゴニスト)を、50μgのCpn10バリアントと一緒に、10mM Tris−HCl(pH7.6)中、表記の塩濃度(0、150および500mM NaCl)にて23℃で30分間インキュベートした。試料を1%TAEアガロースゲルにて分離し、臭化エチジウムで染色した。遊離Cpn10が負電極(ゲルの頂部)に向かって遊走するのに対し、遊離ssRNAは正電極(ゲルの底部)に向かって遊走し、Cpn10−ssRNAの複合体は両方の分子の移動を遅らせる。
【図7】CpGオリゴヌクレオチド(ODN)に対するCpn10結合の定量分析。調製緩衝液pH7.2(Invitrogen)中、Ala−Cpn10およびCpn10突然変異体を1μg/μlで調製し、96ウェルのプレートの三重ウェルに、4℃で16時間、50μgを吸着させた。結合しなかったタンパク質をデカントした後、プレートを1%BSAおよび5%スクロースのPBS溶液(pH7.2)で23℃で2時間ブロックした。PBS(pH7.2)中0.02μg/μlで調製された50μlの3’−ビオチン標識ヒトODN−2216クラス−A、ヒトODN−2006クラス−BまたはヒトODN−M362クラス−C(TLR9アゴニスト)(Proligo/Sigma)を各ウェルに加え、23℃で2時間インキュベートした。未結合のリガンドを、PBS(pH7.2)+0.05%Tween 20で5回洗浄して取り除いた。結合したCpG−ODNをストレプトアビジン−HRPおよびTMB検出系でA450nmにて分析した。結果は3つの複製の平均であり、各CpGに対するAla−Cpn10の結合のレベルに正規化したものである。
【図8】Cpn10がCpG−B ODN誘発NFκB活性を調節する。Genejuiceを製造業者の指示(Novogen)どおりに使用し、pNifty NFκB−ルシフェラーゼレポータープラスミド(InvivoGen)をRAW264.7(マウスマクロファージ)細胞にトランスフェクトした。24時間後、細胞をトリプシン処理し、カウントし、2.5×105個の細胞を1mlの培地にて24ウェルのプレートの各ウェルに蒔き、一晩放置して接着させた。100μgのCpn10構築物または調製緩衝液の対照を4μgのCpG−B ODN−1826(Invivogen)と混合し、遠心濾過装置YM10(Amicon)に通した。流動容量分全体をRAW264−pNIFty−LUC細胞に加え、37℃で5時間インキュベートした。細胞を洗浄した後、1ウェルあたり100μlのCCLR 1×溶液(Promegaルシフェラーゼ溶解緩衝液)で溶解させ、製造業者の指示どおりにルシフェラーゼ基質と混合し、ルシフェラーゼカウントを測定した。図は、100%のAla−Cpn10に正規化したNFκB活性化レベルを示すものである。
【図9】ポリ(I:C)刺激に対するCpn10突然変異体による影響。GeneJuiceを製造業者の指示(Novogen)どおりに使用し、pNifty NFkB−ルシフェラーゼ(InvivoGen)およびTLR3をコードするプラスミドをHEK293細胞に一過的にトランスフェクトした。24時間後、トランスフェクト細胞をトリプシン処理し、カウントし、1×105個の細胞を1mlの培地にて24ウェルのプレートの各ウェルに蒔き、24時間放置して接着させた。次に、100ugのCpn10、0.1ugのポリ(I:C)(InvivoGen)、10ulのSUPERase RNAse阻害因子(Ambion)を、各ウェルに24時間加えた。続いて上清を除去し、細胞をPBSで洗浄し、1×溶解緩衝液(Promega)で溶解させ、ルシフェラーゼをアッセイした。ルシフェラーゼのレベルを100%のポリ(I:C)単独に正規化した。値は3つ重複させたウェルの平均を表す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
Cpn10は、10kDaの同一のサブユニットからなるドーム形の七量体リングである(図1)。ドームの表面は親水性であり、高度に荷電されている。それぞれのCpn10サブユニットは、いくつかのループ構造によって結合される5つのセグメントで不規則なβバレルの形態を形成する。3つの小さな結合ループと、バレルから突出する2つの大きなループ伸展部がある。第1の伸展部は、七量体の中心に向かって伸展し、ドーム様構造のルーフを形成するβヘアピンループ(「ルーフループ」)である。興味深いことに、生理的な条件下でGroES(大腸菌(E.coli)Cpn10)のルーフには、ルーフループの先端に負に荷電した残基のクラスターが含まれるのに対し、哺乳類Cpn10のルーフでは、ルーフループの先端にアミノ酸の正に荷電したクラスターが含まれる。一方、バクテリオファージのCpn10(Gp31)からはルーフの大部分が完全に欠けている。また、この分子は、ドームの底から伸展し、Cpn60との相互作用を媒介する柔軟な18個のアミノ酸からなる可動性ループである、別の伸展部を有する。残基Glu−74、Tyr−75、Gly−76で構成される小さな接続ループのうちの1つは、ドームの底から伸展し、内側に突出して下側のリム領域を形成する。下側のリム領域のアミノ酸残基は、ほとんどの真核生物で系統発生的に保存されている。
【0086】
どのような機序または経路にも拘泥することなく、本発明者らは、Cpn10ポリペプチドの電荷を変更する、主にアミノ酸の置換、欠失、付加またはこれらの組み合わせによって一連の突然変異を生成し、Cpn10と1つ以上のPRRリガンドとの相互作用を改変する、特にPRRリガンドに対するCpn10の結合親和性(PRRシグナル伝達によって免疫系/応答を調節する機能の指標である)を高める上で、突然変異が有効であることを本明細書にて示す。PRRリガンドに対するCpn10ポリペプチドの結合には、PRRを持つ特定の免疫細胞に対する免疫調節作用がある。細胞は、抗原提示細胞であってもよいし、T細胞またはB細胞であってもよい。抗原提示細胞は、樹状細胞であってもよいし、マクロファージまたは単球であってもよい。
【0087】
Toll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合ドメインLRR含有ファミリー(NLR)、RIG−I様受容体(RLR)、IRFのDNA依存性活性化因子(DAI)、C型レクチン受容体(CLR)、IFI20X/IFI16ファミリー(Ifi16、Aim2、MNDAおよびIFIX)をはじめとするパターン認識受容体(PRR)は、免疫系の番人であり、特定の病原体関連分子パターン(PAMPS)を認識し、免疫応答を発動して、侵入してくる病原体に対する防御の最前線で働く。また、PRRは、自己分子が変化するとPRRを過剰に活性化させ、病的な状態を発生させることにつながる敗血症、自己免疫疾患または慢性炎症性疾患をはじめとする多くの炎症性症候群で、何らかの役割を果たしているようにも思われる。
【0088】
Cpn10ポリペプチド突然変異体
陽性残基の付加または陰性残基の除去による余分な正電荷の追加によって、核酸ベースのPRRリガンドに対して(Ala−Cpn10およびX−Cpn10よりも)かなり強く結合するCpn10分子が生成される。余分な正電荷は、(1)既存の表面/液(solution)露出中性残基または陰性残基を陽性残基で置き換える、(2)既存の表面/液露出陰性残基を中性残基で置き換える、(3)別の表面/液露出陽性残基を導入する(ループ構造またはN末端およびC末端を延長するなど)または(4)既存の表面/液露出陰性残基を取り除く(ループ構造またはN末端およびC末端を短くするなど)ことによって追加可能である。本発明者らが得た結果では、複数の正電荷を導入すると(Ala−Cpn10−Y75K、D94Kなど)、個々の突然変異よりも結合電位が有意に高まる場合があることも分かる。
【0089】
タンパク質の正味の電荷の計算
特定pHでのポリペプチドの正味の電荷を、ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式(Hasselbalch, K.A., 1917 Biochemische Zeitschrift 78: 112〜144)と、ポリペプチドのイオン化可能なアミノ酸側鎖ならびにN末端およびC末端の周知のpKa値とに基づいて計算する。ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式は、弱酸/塩基およびそのコンジュゲート塩基/酸を含有する溶液のpHは、以下の明らかなように、これら2種類の溶質のモル濃度の比にのみ左右され、希釈率とは無関係なままであることも示している。
ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式
酸の式:pH=pKa+log[A−]/[HA](C末端、Asp、Glu、Cys、Tyrで使用)
塩基の式:pH=pKa+log[B]/[BH+](N末端、Lys、Arg、Hisで使用)
式中、[A−]は関連する酸のコンジュゲート塩基のモル濃度(C末端、Asp、Glu、Cys、Tyr)を示し、[BH+]は、関連する塩基のコンジュゲート酸のモル濃度(N末端、Lys、Arg、His)を示す。ポリペプチド内のイオン化可能な基のpKa値は当該技術分野において周知であり、多数の学術雑誌やテキストに見いだすことが可能である。使用するpKa値の組次第で、計算で得られるタンパク質の正味の電荷は若干変わってくるが、これは本研究で得られる結論を変えるものではない。表3で用いたpKa値は、N末端8.0、C末端3.1、Lys 10.0、Arg 12.0、His 6.5、Glu 4.4、Asp 4.4、Tyr 10.0、Cys 8.5である(Stryer, L., 1988 「Biochemistry」 textbook 第3版, New York, W.H. Freeman, ISBN 0716719207)。
【0090】
このため、イオン化可能な基を複数有するポリペプチドでは、特定pHにおけるそのポリペプチドの正味の電荷を以下のようにして計算すればよい。
1.イオン化可能な残基(Cys、Asp、Glu、His、Lys、Arg、Tyr、カルボキシル末端、アミノ末端)をすべて列挙する。
2.イオン化可能な基のpKaがpH値から≧2単位離れている場合、計算なしで電荷を1、0、−1と割り当てることが可能である。たとえば、pH7.3で、リジン(pKa10.0)は100%プロトン化され、平均電荷が+1となる。一方、pH7.3では、グルタミン酸塩(pKa4.4)とアスパラギン酸塩(pKa4.4)がいずれも100%脱プロトン化され、平均電荷が−1となる。
3.ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式を使用して、特定pHでの各イオン化可能な基のイオン化率を計算する。表3では、pH7.3とpH7.4(生理的なpHとして採用)で計算を行った。
4.各イオン化可能な基のイオン化率(zi)に特定のポリペプチド内に生じる個々のイオン化可能な基の総数(ni)を掛け、各々のイオン化可能な基によって得られる総電荷を得る。次に、各々のイオン化可能な基によって得られるすべての電荷を総和(Z=Σnizi)して、特定pHでのそのポリペプチドの正味の電荷にすることで、特定pHでのポリペプチドの正味の電荷(Z)を得る。
【0091】
ポリペプチドの正味の電荷を求めるこのアプローチを使いやすいように自動化した、多数の無料で利用可能な資源が存在する。たとえば、Protein Calculator V3.3(http://www.scripps.edu/〜cdputnam/protcalc.html)は、アミノ酸配列に基づいてタンパク質の正味の電荷を求めるための無料で利用できるツールである。このツールを使用し、表3に示すような生理的pH(7.3〜7.4を採用)で多数のCpn10ポリペプチドの正味の電荷を求めた。
【0092】
突然変異のタイプ
陽性残基を加えるか陰性残基を取り除くことで、炎症誘発性核酸に対する親和性の高いCpn10バリアントを生成することが可能である。炎症誘発性核酸に対する親和性の高いCpn10バリアントを生成するのに利用した突然変異は、突然変異によってpH7.4での正電荷がAla−Cpn10よりも高いCpn10バリアントが得られるのであれば、アミノ酸残基の挿入、欠失、置換または付加あるいはこれらの組み合わせでよい。
【0093】
一実施形態では、図1bに定義するCpn10ポリペプチドのいずれかの領域などに対して、既存の残基を正に荷電した残基で置き換えてもよいし、負に荷電した残基を中性残基で置き換えてもよく、別の正に荷電した残基を加えたり、負に荷電した残基を取り除いたりしてもよい。突然変異については、部位特異的突然変異誘発、相同的組換え、トランスポゾン突然変異誘発または配列タグ突然変異誘発などの当該技術分野において周知のどのような手段で作り出してもよい。一般に、部位特異的突然変異誘発を使用する。
【0094】
当業者であれば、Ala−Cpn10よりもpH7.4での正電荷が高く、炎症誘発性核酸に対する親和性の高いCpn10バリアントを生じる突然変異の数とタイプについては、いずれも本発明の範囲に包含されることを認識するであろう。
【0095】
ポリペプチド
本明細書に開示するように、本発明は、単離されたCpn10ポリペプチドならびに、1つ以上のアミノ酸の欠失、付加または置換を含む核酸ベースのPRRリガンドに対する親和性をAla−Cpn10よりも高くすることを企図している。
【0096】
Cpn10は、天然のものであってもよいし、天然由来、組換えまたは合成Cpn10であってもよい。Cpn10分子は、真核生物から得られるどのようなCpn10ポリペプチドであってもよい。図2に示すような一例として、Cpn10は、酵母(出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)など)、線形動物(線虫(Caenorhabditis elegans)など)、カエル(ゼノパス・トロピカリス(Xenopus tropicalis)など)、ニワトリ(Gallus gallusなど)、ゼブラフィッシュ(ゼブラフィッシュ(Danio rerio)など)、ハエ(キイロショウジョウバエ(Drosphila melanogaster)などのショウジョウバエなど)、植物(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)など)または哺乳動物由来のものであってもよい。哺乳類のCpn10は、霊長類、マウス、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、ブタまたはウマであってもよい。あるいは、Cpn10は、古細菌由来のものであってもよい。特定の実施形態では、Cpn10がヒトCpn10である。
【0097】
また、本発明は、上記にて開示したようなヒトCpn10ポリペプチドホモログの修飾にも関し、ここで1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失または置換によって修飾されたこれらの分子ならびに、これらの修飾がどのように核酸ベースのPRRリガンドに対するこれらのCpn10ポリペプチドの親和性を高めることができるのかということも包含する。さらに、アミノ酸付加は、Cpn10ポリペプチドまたはそのフラグメントと、ポリヒスチジンタグなどの第2のポリペプチドまたはペプチドとの融合、マルトース結合タンパク質融合、グルタチオンSトランスフェラーゼ融合、緑色蛍光タンパク質融合あるいは、FLAG、c−mycまたはヘキサヒスチジンタグなどのエピトープタグの付加を伴うものであってもよい。Cpn10ポリペプチドは、N末端に開始メチオニンを含むものであってもよいし、含まないものであってもよい。たとえば、ヒトCpn10は、N末端に別のGSMトリペプチドを含むものであってもよく(たとえば、開示内容を本明細書に援用する国際特許出願公開第95/15338号パンフレットを参照のこと)、別のアラニン(A;配列番号3〜5)または別のグリシンを含むものであってもよい。また、本発明は、Cpn10のこのような修飾形態をコードするポリヌクレオチドの使用も企図する。ヒトCpn10に基づくまたは実質的にこれに由来する本発明のCpn10ポリペプチドの場合、当該ポリペプチドは、N末端配列AGQAFRKFL、MAGQ、AGQまたはAAGQを含むものであってもよく、任意に上述したような1つ以上の修飾を含む。
【0098】
「バリアント」という用語は、本明細書で使用する場合、実質的に類似の配列を示す。通常、ポリペプチド配列のバリアントは、共通して定性的な生物活性を持つ。さらに、これらのポリペプチド配列のバリアントは、配列同一性が少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%であり得る。「バリアント」という用語の意味には、本発明のポリペプチドのホモログも含まれる。ホモログは一般に、異なる種に由来するが、本明細書に開示の対応するポリペプチドと実質的に同じ生物機能または活性を持つポリペプチドである。
【0099】
さらに、「バリアント」という用語は、本発明のポリペプチドのアナログも含み、「アナログ」という用語は、本発明のポリペプチドの誘導体であるポリペプチドを意味し、この誘導体は、ポリペプチドが実質的に同じ機能を維持するような形での1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換を含む。
【0100】
また、本発明は、本明細書に開示のポリペプチドのフラグメントも企図する。「フラグメント」という用語は、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントの構成要素をコードするか、その構成要素であるポリペプチド分子を示す。一般に、フラグメントは、それが構成するポリペプチドと共通して定性的な生物活性を持つ。ペプチドフラグメントは、約5〜約150アミノ酸長、約5〜約100アミノ酸長、約5〜約50アミノ酸長または約5〜約25アミノ酸長であってもよい。あるいは、ペプチドフラグメントは、約5〜約15アミノ酸長であってもよい。
【0101】
上述したような1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失または置換によってN末端および/またはC末端で修飾されるCpn10ポリペプチドも、本発明の範囲に包含される。
【0102】
Cpn10 cDNA配列の最適化
本発明では、最適化されたCpn10 cDNA配列を利用して、Cpn10ポリペプチドを生成する上での豊富なトランスファーRNA(tRNA)プールの利用を増やす。tRNAプールによって、メッセンジャーRNAからのタンパク質の翻訳用に特定のアミノ酸をコードする特定のコドンが得られることは、周知である。さらに、tRNAプールによっては、他のtRNAプールよりも豊富なことがあるのも周知である。これは、大量のタンパク質が特定の発現系から産生される場合に、枯渇しているそれほど豊富でないtRNAプールの収率が落ちるおよび/またはtRNA置換によって突然変異が生じることにつながり得る。
【0103】
本発明に関して、これに影響されやすい特定のCpn10バリアントが見いだされた。たとえば、大腸菌(E.coli)におけるCpn10の過発現時、Gly39に用いられるまれなグリシン(Gly)GGA tRNAを枯渇させ、極めて一般的なグルタミン酸塩/グルタミン酸(Glu)GAA tRNAで置換してもよい。
【0104】
このように、任意の数の位置で最適化されたコドンを用いる最適化された配列を構築してもよい。特に、グリシンおよびアルギニン残基G3、G29、G39、G50、G55、G58、G68、G77、G98、R8、R16、R21およびR93の特定の最適化によって、野生型cDNAの発現レベルに達したが、Cpn10全体としての収率が保たれたままバリアントレベルは有意に減少した。
【0105】
また、Cpn10バリアントは、細胞TGA終止コドンによるリボソームリーディングが原因で生成されることもある。この点に関して、TGA終止コドンをTAA終止コドンに変え、この問題を回避することでこれを最適化してもよい。
【0106】
Cpn10の生成
本発明によれば、Cpn10ポリペプチドを、当業者間で周知の組換えDNAおよび分子生物学の標準的な手法を用いて生成してもよい。たとえば、Sambrookら, Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989およびAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. and Wiley−Intersciences, 1992などの標準的なテキストから、ガイダンスを得られる。Mortonら, 2000(Immunol Cell Biol 78:603〜607), Ryanら, 1995(J Biol Chem 270:22037〜22043)およびJohnsonら, 2005(J Biol Chem 280:4037〜4047)に記載された方法は、Cpn10ポリペプチドの好適な精製方法の一例であるが、本発明が使用する精製方法または生成方法によって限定されるものではなく、他の方法を用いて、本発明の方法および組成物に従って用いるCpn10を生成してもよいことは、当業者であれば理解できるであろう。
【0107】
本発明に従って用いられるCpn10ポリペプチドおよびペプチドフラグメントは、標準的な組換え核酸手法で得たものであってもよいし、従来の液体または固体相合成手法で合成されたものであってもよい。Cpn10ペプチドは、endoLys−C、endoArg−C、endoGlu−Cおよびブドウ球菌V8−プロテアーゼなどの1種類以上のプロテイナーゼによるポリペプチドの消化によって生成できるものである。消化されたペプチドフラグメントは、たとえば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による手法などで精製可能である。
【0108】
本発明のCpn10ポリペプチドの精製を、大規模製造目的でスケールアップしてもよい。たとえば、本明細書で説明するように、本発明者らは、大量(グラム単位)の高度に精製された臨床グレードのCpn10ポリペプチドを製造するためのバイオプロセスを開発した。
【0109】
本発明のCpn10ポリペプチドならびに、そのフラグメントおよびバリアントを、当業者間で周知の液体または固体相化学の標準的な方法で合成してもよい。たとえば、StewardおよびYoung(Steward, J.M. & Young, J.D., Solid Phase Peptide Synthesis.(第2版) Pierce Chemical Co., Illinois, USA(1984)の固体相化学手順で当該分子を合成してもよい。
【0110】
通常、このような合成方法は、1種類以上のアミノ酸または適宜保護したアミノ酸を成長しているペプチド鎖に逐次追加することを含む。一般に、第1のアミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかを、好適な保護基で保護する。次に、アミド結合の形成に適した条件下で、適宜保護した無料の(complimentary)(アミノまたはカルボキシル)基を有する配列における次のアミノ酸を加えることで、保護されたアミノ酸を不活性固体支持体に結合させるか、溶液中で使用する。次に、保護基をこの新たに加えたアミノ酸残基から除去し、次の(保護された)アミノ酸を加えるといった具合である。最終的に、所望のアミノ酸が結合され、残った保護基と、必要であれば固体支持体を、順次または同時に除去して最終的なポリペプチドを生成する。
【0111】
Cpn10ポリペプチドにおけるアミノ酸の変更は、関連業界の当業者間で周知の手法で実施すればよい。たとえば、適切な読み枠が維持される条件で、付加、欠失または置換を含むヌクレオチド交換法(保存および/または非保存)によってアミノ酸の変更を実施してもよい。代表的な手法として、ランダム突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、オリゴヌクレオチド仲介またはポリヌクレオチド仲介突然変異誘発、既存のまたは遺伝子工学的制限酵素部位を用いる選択した領域の欠失、ポリメラーゼ連鎖反応があげられる。
【0112】
本発明のCpn10ポリペプチドによる免疫調節活性の生成は、Cpn10ポリペプチドの七量体の形成を伴うものであってもよい。本発明の目的での免疫調節活性の試験は、当業者間で周知の多数の手法のうち、どれを用いて実施してもよい。本明細書で例示するように、Cpn10ポリペプチドの免疫調節活性は、たとえばNF−κB−ルシフェラーゼレポーター細胞株を用いて、一般にポリ(I:C)などのTLR−3アゴニストの存在下で、ポリペプチドがToll様受容体TLR−3からのシグナル伝達を調節する機能を測定することで判断できるものである。TLR−7、8および9などの他のTLRも本明細書で説明するようにして試験される。これに代えて、あるいはこれに加えて、たとえば末梢血単核細胞などの細胞におけるサイトカイン産生の測定、競合的結合アッセイ、ツーハイブリッドアッセイ、フィルタアッセイ、電気泳動移動度シフト(ゲルシフト)アッセイ、プレートキャプチャアッセイまたは免疫調節活性を測定できるようにするアッセイの任意の組み合わせによって、他のアッセイを用いてin vitro、ex vivoまたはin vivoで免疫調節活性を判断してもよい。
【0113】
ポリヌクレオチド
本発明の実施形態は、上述したようなCpn10ポリペプチドならびに、当該ポリペプチドのバリアントおよびフラグメントをコードする、単離されたポリヌクレオチドを提供するものである。本発明の範囲内で企図されるポリヌクレオチドの非限定的な例を、本明細書では配列番号7、9、11、12、14、15、17、18、20、21、23、24、26、27、29、30、32、33、35、36、38、39、41、42、44、45、47、48、50、51、53、54、56、57、59、60、62、63、65、66、68、69、71、72、74、75、77、78、80、81、83、84、86、87、89、90、92、93、95、96、98、99、101、102、104、105、107、108、110、111、113、114、116、117、119、120、122、123、125、126、128、129、131、132、134、135、137、138、140、141、143、144、146、147、149、150、152、153、155、156、158、159、161、162、164、165、167、168、170、171、173、174、176、177、179、180、182、183、185、186、188、189、191、192、194、195、197、198、200、201、203、204、206、207、209、210、212、213、215、216、218、219、221、222、224、225、227、228、230、231、233、234、236、237、239、240、242、243、245、246、248、249、251、252、254、255、257、258、260、261、263、264、266、267、269、270、272、273、275、276、278、279、281、282、284、285 287、288、290、291、293、294、296、297、299、300、302、303、305、306、308、309、311、312、314、315、317、318、320、321、323、324、326、327、329、330、332、333、335、336、338、339、341、342、344、345、347、348、350、351、353、354または356で示す。
【0114】
上述したポリペプチドについて、「バリアント」という用語は、本明細書で使用する場合、実質的に類似の配列を示す。通常、ポリヌクレオチド配列のバリアントは、共通して定性的な生物活性を持つポリペプチドをコードする。さらに、これらのポリヌクレオチド配列のバリアントは、配列同一性が少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%であり得る。「バリアント」という用語の意味には、本発明のポリヌクレオチドのホモログも含まれる。ホモログは一般に、異なる種に由来するが、実質的に同じ活性を持つポリヌクレオチドである。
【0115】
本発明のポリヌクレオチドのフラグメントも企図される。「フラグメント」という用語は、本発明のポリヌクレオチドの構成要素をコードするか、あるいはその構成要素である核酸分子を示す。ポリヌクレオチドのフラグメントは、必ずしも生物活性を維持しているポリペプチドをコードする必要はない。むしろ、フラグメントは、たとえば、ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして有用なことがある。フラグメントは、本発明のポリヌクレオチド由来のものであってもよいし、あるいは、化学合成などの他の手段で合成したものであってもよい。また、当業者間で周知の手法を用いて、アンチセンス分子の生成に本発明のポリヌクレオチドおよびそのフラグメントを使用してもよい。
【0116】
このように、本発明は、本発明のポリヌクレオチドの配列に基づいて、プライマーおよびプローブとして用いられるオリゴヌクレオチドおよびフラグメントを企図する。オリゴヌクレオチドは、PCRなどの核酸増幅反応で使用するのに適したヌクレオチド残基の短いストレッチであり、一般に少なくとも約10ヌクレオチド〜約50ヌクレオチド長であり、より一般には約15〜約30ヌクレオチド長である。プローブは、一般にハイブリダイゼーションによって相同の配列を検出するのに用いられる、たとえば約10ヌクレオチドから数千ヌクレオチドという可変長のヌクレオチド配列である。配列間の相同レベル(配列同一性)は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーにかなり大きく左右される。特に、プローブとして用いられるヌクレオチド配列は、低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシーまたは高ストリンジェンシーの条件下で、本明細書に開示のポリヌクレオチドのホモログまたは他のバリアントとハイブリダイズできるものである。低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、2×SSCにて50℃で実施されるハイブリダイゼーションに対応するものであってもよい。当業者間で周知の多数の条件および因子があり、これらを用いてハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを変更してもよい。たとえば、特定の核酸に対するハイブリダイズ対象となる核酸の長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成物);塩および他の成分の濃度、ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコールなどの有無など;ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄ステップの温度の変更。たとえば、ハイブリダイゼーションフィルタを、2×SSC、0.5%SDS、少なくとも55℃(低ストリンジェンシー)、少なくとも60℃(中ストリンジェンシー)、少なくとも65℃(中程度の/高ストリンジェンシー)、少なくとも70℃(高ストリンジェンシー)または少なくとも75℃(極高ストリンジェンシー)で、30分間2回洗浄してもよい。
【0117】
特定の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドをベクターにクローニングしてもよい。ベクターは、外来配列を挿入し、これを真核生物細胞に導入し、導入した配列を発現させるのに適したプラスミドベクターであってもよいし、ウイルスベクターあるいは他の好適なビヒクルであってもよい。一般に、ベクターは真核生物の発現ベクターであり、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列などの発現制御およびプロセシング配列を含むものであってもよい。
【0118】
抗体
本発明は、本発明のCpn10ポリペプチドならびに、そのフラグメントおよびアナログと選択的に結合する抗体を提供するものである。好適な抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、単鎖、Fabフラグメント、Fab発現ライブラリがあげられる。本発明の抗体は、Cpn10ポリペプチドあるいは、そのフラグメントまたはアナログのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用することもある。
【0119】
本発明のCpn10ポリペプチド、特に免疫調節活性および/またはパートナーまたは基質結合に関与するもの離散的な領域またはフラグメントから抗体を調製してもよい。抗原Cpn10ポリペプチドは、少なくとも約5、好ましくは少なくとも約10のアミノ酸を含有する。
【0120】
好適な抗体を生成するための方法については、当業者であれば容易に理解できよう。たとえば、Antibodies−A Laboratory Manual, Harlow and Lane編, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y.(1988)に記載のハイブリドーマ技術を用いて、一般にFab部分を含有する抗Cpn10モノクローナル抗体を調製すればよい。
【0121】
本発明のCpn10ポリペプチド、そのフラグメントまたはアナログに向けたモノクローナル抗体の調製にあたって、培養中で連続細胞株によって抗体分子を生成できるものであれば、どのような手法を使用してもよい。これには、もともとKohlerら, Nature, 256:495〜497(1975)によって開発されたハイブリドーマ手法ならびに、トリオーマ手法、ヒトB細胞ハイブリドーマ手法[Kozborら,Immunology Today, 4:72(1983)]、ヒトモノクローナル抗体を生成するためのEBV−ハイブリドーマ手法[Coleら, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, 第77〜96ページ, Alan R. Liss, Inc.,(1985)]が含まれる。発癌DNAでのBリンパ球の直接形質転換またはEpstein−Barrウイルスの形質移入などの融合以外の手法によって、不死抗体産生細胞株を作製することが可能である。たとえば、M. Schreierら, 「Hybridoma Techniques」(1980); Hammerlingら, 「Monoclonal Antibodies and T−cell Hybridomas」(1981); Kennettら, 「Monoclonal Antibodies」(1980)を参照のこと。
【0122】
要するに、モノクローナル抗体、ミエローマまたは他の自己増殖性細胞株の生成元になるハイブリドーマを生成する手段を、その認識因子結合部分あるいは、認識因子、あるいはその起点特異的DNA結合部分で過免疫化した哺乳動物の脾臓から得たリンパ球と融合させる。本発明を実施するにあたって有用なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、それが持つ本認識因子と免疫反応する機能ならびに、標的細胞において指定の転写活性を阻害する機能によって同定する。
【0123】
本発明を実施するにあたって有用なモノクローナル抗体は、適当な抗原特異性を持つ抗体分子を分泌するハイブリドーマを含有する栄養培地を含むモノクローナルハイブリドーマ培養を開始することで生成可能である。この培養を、ハイブリドーマが抗体分子を培地に分泌するのに十分な条件下で、これに十分な時間維持する。次に、抗体含有培地を回収する。その後は、周知の手法によって抗体分子をさらに単離することが可能である。
【0124】
同様に、本発明のCpn10ポリペプチドあるいは、そのフラグメントまたはアナログに対するポリクローナル抗体の生成に使用できる当該技術分野において周知のさまざまな手順がある。Cpn10ポリクローナル抗体を生成するために、Cpn10ポリペプチドあるいは、そのフラグメントまたはアナログを注射することで、ウサギ、ネズミ、ラット、ヒツジ、ヤギなどを含むがこれに限定されるものではないさまざまな宿主動物を免疫することが可能である。さらに、Cpn10ポリペプチドあるいは、そのフラグメントまたはアナログを、ウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの免疫原性キャリアにコンジュゲートすることも可能である。また、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールならびに、BCG(カルメット−ゲラン(Calmette−Guerin)桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒトアジュバントを含むがこれに限定されるものではない、さまざまなアジュバントを使用して、免疫学的応答を増加させてもよい。
【0125】
所望の抗体のスクリーニングは、当該技術分野において周知の多岐にわたる手法によっても達成可能である。抗体の免疫特異的結合のアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、サンドイッチイムノアッセイ、免疫放射定量アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、タンパク質Aアッセイ、免疫電気泳動アッセイなどがあげられるが、これに限定されるものではない(たとえば、Ausubelら編, 1994, Current Protocols in Molecular Biology,第1巻, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと)。抗体結合については、一次抗Cpn10抗体上の検出可能な標識によって検出すればよい。あるいは、二次抗体との結合あるいは、適宜標識した試薬によって抗Cpn10抗体を検出してもよい。イムノアッセイにおける結合を検出する多種多様な方法が当該技術分野において周知であり、本発明の範囲に包含される。
【0126】
本発明の抗体を、当業者間で周知の診断方法およびキットに利用して、体液または組織中のCpn10を定性的または定量的に検出することが可能である。あるいは、さまざまな疾患、障害、症状を治療するための方法および組成物に抗体を用いてもよい。
【0127】
本発明のCpn10ポリペプチドまたはそのフラグメントまたはアナログに対して産生された抗体(またはそのフラグメント)は、Cpn10への結合親和性を有する。好ましくは、この抗体(またはそのフラグメント)は、結合親和性または結合活性が約105M−1を上回り、一層好ましくは約106M−1を上回り、一層好ましくは約107M−1を上回り、最も好ましくは約108M−1を上回る。
【0128】
本発明による抗体を好適な量で得る観点から、無血清培地でのバッチ発酵を用いて抗体を創成してもよい。発酵後、クロマトグラフィおよびウイルス不活性化/除去ステップを取り入れた多段階の手順で抗体を精製してもよい。たとえば、まずは抗体をタンパク質A親和性クロマトグラフィによって分離した後、溶媒/洗剤で処理し、脂質エンベロープウイルスを不活性化させる。一般にアニオンおよびカチオン交換クロマトグラフィによるさらなる精製を利用して、残っているタンパク質、溶媒/洗剤および核酸を除去してもよい。ゲル濾過カラムを用いて、精製抗体をさらに精製し、0.9%生理食塩水に配合してもよい。配合後のバルク調製物を滅菌し、ウイルスを濾過し、分注してもよい。
【0129】
アゴニストおよびアンタゴニスト
上述した方法を使用して、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントのアゴニストである作用剤を同定してもよい。アゴニストである作用剤は、ポリペプチドの生物活性のうちの1つ以上を増強する。あるいは、上述した方法によって、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントのアンタゴニストである作用剤を同定してもよい。アンタゴニストである作用剤は、ポリペプチドの生物活性のうちの1つ以上を減弱させる。アゴニストは、本明細書で説明するようなCpn10ポリペプチドなどの分子の生物活性のうちの1つ以上を増強するのに対し、アンタゴニストはポリペプチドの生物活性のうちの1つ以上を減弱させる。一例において、本発明のポリペプチドのアゴニストは、免疫抑制性核酸であってもよい。この核酸は、複合体において本発明のポリペプチドを結合できる。別の例では、本発明のポリペプチドのアンタゴニストが炎症誘発性核酸であってもよい。この核酸も、複合体において本発明のポリペプチドを結合できる。このような本発明のポリペプチドの強力な活性調節因子を、当業者間で周知の多数の方法で、上記の方法によってスクリーニング用に生成してもよい。たとえば、X線結晶学および核磁気共鳴分析法などの方法を用いて、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントの構造をモデル化し、これによってコンピュータベースのモデリングを用いて潜在的な調節作用剤の設計を容易にしてもよい。さまざまな形態のコンビナトリアル化学を使用して、推定上の調節因子を生成してもよい。後述するスクリーニング方法を用いて、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントのアゴニストまたはアンタゴニストである作用剤を同定してもよい。抗体、低分子量ペプチド、核酸、非タンパク質性有機分子は、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用できる作用剤の例である。
【0130】
スクリーニング
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドと結合するか、そうでなければこれと相互作用する化合物、特にその活性を調節する化合物を、多岐にわたる好適な方法で同定することができる。非限定的な方法として、ツーハイブリッド法、免疫共沈降、アフィニティ精製、質量分析、タンデムアフィニティ精製、ファージディスプレイ、ラベル転移、DNAマイクロアレイ/遺伝子同時発現、タンパク質マイクロアレイがあげられる。
【0131】
本発明のCpn10ポリペプチドおよび適切なフラグメントおよびバリアントを、高スループットスクリーンに使用して、候補化合物がCpn10と結合するか、そうでなければこれと相互作用する機能をアッセイすることが可能である。このような候補化合物は、本明細書で説明するようなポリペプチド、当該ポリペプチドのフラグメントまたはバリアントと複合体を形成する炎症誘発性核酸または免疫抑制性核酸であり得る。候補化合物はタンパク質であってもよい。
【0132】
これらの候補化合物をさらに、機能的Cpn10に対してスクリーニングし、この化合物がCpn10活性に対しておよぼす影響を判断することが可能である。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドならびに、そのフラグメントおよびアナログは、これらの分子と相互作用する化合物および作用剤のスクリーニングおよび同定に有用である。特に、望ましい化合物は、これらのポリペプチドおよびポリヌクレオチドの活性を調節する化合物である。当該化合物は、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの発現または活性を賦活、刺激、増加、阻害または防止することによって、調節作用を発揮することがある。好適な化合物は、直接(結合など)または間接的な相互作用によって、その作用を発揮することがある。本明細書で説明するように、本発明のCpn10ポリペプチドの活性を調節するか、そうでなければこれと相互作用できる化合物をスクリーニングする方法がある。これらの化合物は、多岐にわたる好適な方法で同定できるものである。相互作用および/または結合については、ゲルシフトアッセイおよび内部で説明されたプレート結合アッセイあるいは、またはツーハイブリッドアッセイ系などの標準的な競合的結合アッセイを用いて判断すればよい。
【0133】
たとえば、ツーハイブリッドアッセイは、一般にタンパク質−タンパク質相互作用の検出に用いられる、酵母ベースの遺伝子アッセイ系(FieldsおよびSong,1989)である。簡単に説明すると、このアッセイでは転写活性化因子のマルチドメインの性質を利用している。たとえば、周知の転写活性化因子のDNA結合ドメインを本発明のCpn10ポリペプチドあるいはそのフラグメントまたはバリアントと融合させ、転写活性化因子の活性化ドメインを候補タンパク質と融合させることができる。候補タンパク質とCpn10ポリペプチドあるいはそのフラグメントまたはバリアントとの相互作用により、転写活性因子のDNA結合ドメインと活性化ドメインとが近接する。このため、転写活性因子によって活性化された特定のレポーター遺伝子の転写により、相互作用を検出することが可能である。
【0134】
あるいは、アフィニティクロマトグラフィを用いて、Cpn10の結合パートナーを同定してもよい。たとえば、本発明のCpn10ポリペプチドあるいは、そのフラグメントまたはバリアントを支持体(セファロースなど)に固定化し、カラムに細胞可溶化物を通してもよい。その後、固定化したCpn10ポリペプチド、フラグメントまたはバリアントに結合しているタンパク質をカラムから溶出し、同定することが可能である。最初に、当該タンパクをN末端アミノ酸シーケンシングなどで同定してもよい。
【0135】
上記の手法の改変例において、Cpn10ポリペプチド、フラグメントまたはバリアントを、アルカリホスファターゼなどの検出可能なタグと融合させ、FlanaganおよびLeder(1990)に説明されているような免疫沈降の改変形態を用いることで、融合タンパク質を生成してもよい。
【0136】
Cpn10活性を調節する化合物を検出するための方法は、Cpn10ポリペプチドを候補化合物および好適な標識基質と組み合わせ、基質の変化に基づいて当該化合物がCpn10に対しておよぼす作用を監視する(時間の関数として求めてもよい)ことを伴うものであってもよい。好適な標識物質としては、比色測定、放射測定、蛍光測定または蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ベースの方法に合わせて標識された物質があげられる。
【0137】
たとえば、免疫共沈降を利用して、候補作用剤または複数の候補作用剤が、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントと相互作用または結合するか否かを判断してもよい。この手法を用いて、タンパク質−タンパク質相互作用の保存に適した非変性条件下で、藍藻毒性生物、藍藻類および/または渦鞭毛藻類を溶解してもよい。続いて、得られる溶液を、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントに特異な抗体と一緒にインキュベートし、固体支持体に結合された抗体結合タンパク質で捕捉するなどの方法でバルク溶液から免疫沈降させることが可能である。この方法による本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントの免疫沈降は、そのタンパク質に関連する作用剤の免疫共沈降を容易にするものである。SDS−PAGE、ウエスタンブロッティング、質量分析を含むがこれに限定されるものではない、当該技術分野において周知の多数の方法を用いて同定関連の作用剤を確立することが可能である。
【0138】
あるいは、ファージディスプレイ法を利用して、候補作用剤または複数の候補作用剤が、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントと相互作用または結合するか否かを判断してもよい。ファージディスプレイは、遺伝子バンクから得た複数の遺伝子をファージに組み込むことでタンパク質相互作用をスクリーニングするための試験である。この方法では、組換えDNA手法を用いて多数の遺伝子をバクテリオファージのコートタンパク質との融合体として発現させ、各遺伝子の当該ペプチドまたはタンパク質産物をウイルス粒子の表面にディスプレイさせる。該当するファージがディスプレイしたペプチドまたはタンパク質産物のライブラリ全体を、このようにして作製することが可能である。その後、ファージがディスプレイしたペプチドまたはタンパク質産物の得られるライブラリが本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントと結合する機能をスクリーニングしてもよい。相互作用しているファージから抽出されるDNAは、相互作用しているタンパク質の配列を含む。
【0139】
あるいは、アフィニティクロマトグラフィを用いて、候補作用剤または複数の候補作用剤が本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントと相互作用または結合するか否かを判断してもよい。たとえば、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントを支持体(セファロースなど)に固定化し、カラムに細胞可溶化物を通してもよい。その後、固定化した本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントに結合しているタンパク質をカラムから溶出し、N末端アミノ酸シーケンシングなどによって同定してもよい。
【0140】
また、本発明は、ポリペプチドの発現を変化させることで本発明のポリペプチドに対してその調節作用を発揮できる化合物を企図するものである。この場合、候補化合物の存在下でのポリペプチドの発現レベルを候補化合物の非存在下での発現レベルと比較することで、当該化合物を同定してもよい。
【0141】
抗体との関連で、当該技術分野において周知の多種多様な手法で所望の抗体のスクリーニングを達成することも可能である。抗体の免疫特異的結合のアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、サンドイッチイムノアッセイ、免疫放射定量アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫蛍光アッセイ、タンパク質Aアッセイ、免疫電気泳動法アッセイなど(たとえば、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, 第1巻, John Wiley & Sons, Inc., New York (1994)を参照のこと)があげられるが、これに限定されるものではない。抗体結合については、一次抗体上の検出可能な標識によって検出すればよい。あるいは、二次抗体との結合あるいは、適宜標識した試薬によって抗体を検出してもよい。イムノアッセイにおける結合を検出する多種多様な方法が当該技術分野において周知であり、本発明の範囲に包含される。
【0142】
上述した方法は、本発明のポリペプチドまたはそのバリアントまたはフラグメントと相互作用またはその活性を調節できる作用剤の同定に利用できるいくつかのタイプの方法の単なる一例にすぎないことは、理解できよう。当業者であれば他の好適な方法も知るであろうし、それらも本発明の範囲に包含される。
【0143】
組成物と投与経路
本発明のCpn10ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、治療薬としても有用なことがある。これらの分子には、被験体に対して治療有効量の当該分子を投与することで、被験体の疾患または症状を治療または予防する上での用途がある。一般に、当該疾患および症状は、被験体の免疫応答を調節することで治療できるものである。一例として、このような疾患および症状は、インスリン依存性糖尿病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン病、グレーブス病、多発性硬化症、関節リウマチ、慢性疲労症候群、アルツハイマー病、喘息、アレルギー、多発性硬化症、GVHD、アテローム性動脈硬化症、炎症性疼痛、乾癬、HIV、慢性免疫活性化、慢性筋炎、強皮症などの急性または慢性炎症性疾患を含むものであってもよい。疾患が、非小細胞肺癌、腎細胞癌、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、基底細胞癌などの癌であってもよい。疾患が感染症であってもよい。
【0144】
感染症は、細菌感染、ウイルス感染または真菌感染に起因するものであってもよい。慢性免疫活性化は、胃腸管から循環系への細菌産物(LPSなど)および/またはウイルス産物(核酸など)の漏出と関連するものである。たとえば、漏出は、口腔、腸または小腸から起こり得る。細菌産物またはウイルス産物の漏出は、細菌感染、ウイルス感染、炎症性腸疾患および腸疾患などの感染または疾患によって引き起こされる場合がある。ウイルス感染の一例に、HIV感染またはC型肝炎感染がある。
【0145】
慢性免疫活性化は、LPSによるTLRシグナル伝達の免疫調節またはTLRへの核酸結合に関与する。LPSはTLR2またはTLR4と結合できるのに対し、核酸はTLR3、7、8または9を結合できる。
【0146】
したがって、疾患および症状の治療または予防に用いられるCpn10ポリペプチドおよびポリヌクレオチドを含む薬学的に有用な組成物も、本明細書にて企図される。
【0147】
抗Cpn10抗体をはじめとする、本発明のCpn10ポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニストは、治療薬として有用なこともある。このため、本発明は、当該アゴニストおよびアンタゴニストを用いる治療方法ならびに、これを含む薬学的組成物も企図するものである。
【0148】
通常、本発明の方法に従って用いられる好適な組成物については、当業者間で周知の方法および手順で調製してもよく、このため、薬学的に許容されるキャリア、希釈剤および/またはアジュバントを含むものであってもよい。
【0149】
組成物は、標準的な経路で投与できるものである。通常、この組成物は非経口経路(たとえば、静脈内、脊髄内、皮下または筋肉内)、経口経路または局所経路で投与される。投与は、全身投与であってもよいし、部分投与または局所投与であってもよい。特定の状況で用いられる特定の投与経路は、治療対象となる症状の性質、症状の重症度と度合い、送達される特定化合物の必要投与量、化合物によって生じ得る副作用をはじめとする多数の要因に左右されることになる。
【0150】
通常、好適な組成物は、当業者間で周知の方法で調製できるものであり、薬学的に許容される希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤を含むものであってもよい。希釈剤、アジュバントおよび賦形剤は、その組成物の他の成分と適合性があり、そのレシピエントにとって有害ではないという意味で、「許容可能な」ものでなければならない。
【0151】
薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤の例として、脱塩水または蒸留水;生理食塩水溶液;ピーナッツ油、紅花油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油などのピーナッツ油、紅花油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、落花生油またはココナッツオイルなどの植物油;シリコーン油(メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのポリシロキサンを含む);揮発性シリコーン;液状パラフィン、ソフトパラフィンまたはスクアランなどの鉱油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;エタノールまたはイソプロパノールなどの低級アルカノール;低級アラルカノール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールまたはグリセリンなどの低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピルまたはオレイン酸エチルなどの脂肪酸エステル;ポリビニルピリドン;寒天;カラギーナン;トラガントゴムまたはアカシアゴム、ワセリンがあげられる。一般に、キャリアは組成物の10重量%〜99.9重量%を構成することになる。
【0152】
本発明の組成物は、注射投与に適した形態、経口摂取に適した処方剤の形態(カプセル、錠剤、カプレット、エリキシル剤など)、局所投与に適した軟膏、クリームまたはローションの形態、点眼薬としての送達に適した形態、鼻腔内吸引または経口吸引などの吸引投与に適したエアロゾル形態、非経口投与すなわち、皮下注射、筋肉内注射または静脈注射に適した形態であってもよい。
【0153】
注射可能な溶液または懸濁液としての投与用では、無毒で非経口的に許容可能な希釈剤またはキャリアとして、リンゲル液、等張生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、1,2プロピレングリコールがあげられる。
【0154】
経口用途での好適なキャリア、希釈剤、賦形剤、アジュバントの例としては、ピーナッツ油、液状パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アカシアゴム、トラガントゴム、右旋糖、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン、レシチンがあげられる。これらに加えて、好適な香味料や着色料を経口製剤に含有させてもよい。カプセルの形態で用いる場合は、このカプセルに、崩壊を遅らせるモノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの化合物をコーティングしてもよい。
【0155】
アジュバントは一般に、皮膚軟化剤、乳化剤、増粘剤、保存剤、殺菌剤、緩衝剤を含む。
【0156】
経口投与用の固体形態は、ヒトおよび獣医薬理学的な実務で許容できるバインダ、甘味料、崩壊剤、希釈剤、香料、コーティング剤、保存剤、潤滑剤および/または時間遅延剤を含むものであってもよい。好適なバインダとしては、アカシアゴム、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースまたはポリエチレングリコールがあげられる。好適な甘味料としては、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテーム(aspartame)またはサッカリンがあげられる。好適な崩壊剤としては、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸または寒天があげられる。好適な希釈剤としては、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、右旋糖、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムまたはリン酸二カルシウムがあげられる。好適な香味料としては、ペパーミント油、冬緑油、サクランボ、オレンジまたはラズベリー香料があげられる。好適なコーティング剤としては、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはそれらのエステルのポリマーまたはコポリマー、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、シェラックまたはグルテンがあげられる。好適な保存剤としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α−トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは亜硫酸水素ナトリウムがあげられる。好適な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはタルクがあげられる。好適な時間遅延剤としては、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンがあげられる。
【0157】
経口投与用の液体形態は、上記の作用剤に加えて、液体キャリアを含むものであってもよい。好適な液体キャリアとしては、水、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、紅花油、落花生油、ココナッツオイルなどの油類、液状パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリドまたはこれらの混合物があげられる。
【0158】
経口投与用の懸濁液は、分散剤および/または懸濁化剤をさらに含むものであってもよい。好適な懸濁化剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムまたはアセチルアルコールがあげられる。好適な分散剤としては、レシチン、ステアリン酸などの脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノまたはジオレアート、ステアラートまたはラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノまたはジオレアート、ステアラートまたはラウラートなどがあげられる。
【0159】
経口投与用のエマルションは、1種類以上の乳化剤をさらに含むものであってもよい。好適な乳化剤としては、上記に例示したような分散剤あるいは、グアーガム、アカシアゴムまたはトラガントゴムなどの天然ゴムがあげられる。
【0160】
非経口投与可能な組成物を調製するための方法は当業者には自明であり、たとえば、Remington’s Pharmaceutical Science、第15版、Mack Publishing Company、Easton,Pa.に一層詳細に記載され、これを本明細書に援用する。
【0161】
本発明の局所製剤は、活性成分を1種類以上の許容可能なキャリアならびに、任意に他の治療成分と一緒に含む。局所投与に適した製剤としては、リニメント剤、ローション、クリーム、軟膏またはペーストなど、治療が必要な部位への皮膚からの浸透に適した液体または半液体の調製物ならびに、眼、耳または鼻への投与に適した点薬(drop)があげられる。
【0162】
本発明による点薬は、滅菌された水性または油性の溶液または懸濁液を含むものであってもよい。これらは、殺菌薬および/または殺真菌薬および/または他の好適な保存剤の水溶液(任意に界面活性剤を含む)に活性成分を溶解させて、調製できるものである。次に、得られた溶液を濾過により清澄化し、好適な容器に移し、滅菌すればよい。滅菌は、90〜100℃で半時間ほどオートクレーブ処理または維持するか、濾過した上で無菌技術によって容器に移して達成すればよい。点薬に含有させるのに適した殺菌薬または殺真菌薬の例としては、硝酸フェニル水銀または酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)、酢酸クロルヘキシジン(0.01%)があげられる。油性溶液を調製するのに適した溶媒としては、グリセロール、希釈アルコール、プロピレングリコールがあげられる。
【0163】
本発明によるローションとしては、皮膚または眼への塗布に適したものがあげられる。点眼ローションは、任意に殺菌薬を含有する滅菌水溶液を含むものであってもよく、点薬の調製に関して上述したものと同様の方法で調製してもよい。皮膚への塗布用のローションまたはリニメント剤は、アルコールまたはアセトンなどの皮膚の乾燥を促進し、冷却する作用剤および/またはグリセロールなどの保湿剤あるいは、ヒマシ油または落花生油などのオイルを含有してもよい。
【0164】
本発明によるクリーム、軟膏またはペーストは、外用塗布用に活性成分を含む半固体製剤である。これらは、細かく砕いた形態または粉末状の活性成分を、単独で、あるいは水性または非水性流体中の溶液または懸濁液の状態で、グリース状または非グリース状の基材と混合して調製できるものである。この基材は、硬パラフィン、軟パラフィンまたは液状パラフィンなどの炭化水素、グリセロール、蜜蝋、金属石鹸;粘液;アーモンド油、トウモロコシ油、落花生油、ヒマシ油またはオリーブ油などの天然由来の油;羊毛脂またはその誘導体あるいは、ステアリン酸またはオレイン酸などの脂肪酸を、プロピレングリコールまたはマクロゴールなどのアルコールと一緒に含むものであってもよい。
【0165】
この組成物には、ソルビタンエステルまたはそのポリオキシエチレン誘導体などのアニオン系、カチオン系または非イオン系界面活性剤などの好適な界面活性剤を取り入れてもよい。天然ゴム、セルロース誘導体などの懸濁化剤あるいは、ケイ質シリカなどの無機材料およびラノリンなどの他の成分を含有させてもよい。
【0166】
この組成物を、リポソームの形態で投与してもよい。リポソームは通常、リン脂質または他の脂質物質から誘導され、水性媒質中に分散した一重膜または多重膜の水和液晶によって形成される。リポソームを形成できる、無毒で生理学的に許容され、代謝可能な脂質を使用できる。リポソーム状の組成物は、安定剤、保存剤、賦形剤などを含有するものであってもよい。好ましい脂質は、天然と合成の両方のリン脂質およびホスファチヂルコリン(レシチン)である。リポソームを形成するための方法は当該技術分野において周知であり、特にこれに関しては、その内容を本明細書に援用するPrescott編, Methods in Cell Biology, 第XIV巻, Academic Press, New York, N.Y. (1976),第33ページ以下を参照のこと。
【0167】
この組成物を、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体のアレイとコンジュゲートさせてもよい。タンパク質へのPEG付加(PEG化)は、タンパク質の血漿クリアランス速度を落とすことで、その有効性を高めるための十分に確立された方法である(Nucciら, 1991, Adv. Drug Del. Rev. 6:133)。PEG化の別の利点として、タンパク質の安定性が高まり、免疫原性が低下し、溶解度が増し、タンパク質分解に対する感受性が低下することがあげられる(Sheffield W. 2001, Curr Drug Targets Cardiovasc Haematol Disord. 1:1〜22)。PEG分子は、−(OCH3CH2)n−OHの基本繰返し構造を含み、分子量に基づいて分類される。PEG誘導体をタンパク質とコンジュゲートさせて、その流体力学半径を大きくするが、その半減期の増加は通常、付加したPEG鎖の大きさと直接関連している(Sheffield W. 2001, Curr Drug Targets Cardiovasc Haematol Disord. 1:1〜22)。
【0168】
この組成物を微粒子の形で投与してもよい。ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸−コ−グリコリド(PLGA)、エプシロン−カプロラクトン(ε−カプロラクトン)から形成される生分解性の微粒子が、血漿中の半減期を長くすることで有効性を持続させるための薬剤キャリアとして広く用いられている(R.Kumar, M., 2000, J Pharm Pharmaceut Sci. 3(2) 234〜258)。微粒子は、ワクチン、抗生物質、DNAなどのさまざまな薬剤候補の送達用に処方されている。さらに、これらの製剤は、非経口の皮下注射、静脈内注射、吸引をはじめとするさまざまな送達経路用に開発されている。
【0169】
この組成物に、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)および有機溶媒または有機溶媒混合物からなる徐放マトリクスを取り入れてもよい。また、ポリマー添加物を放出調節剤としてビヒクルに添加し、粘度をさらに高めて放出速度を低下させてもよい。SAIBは周知の食品添加物である。これは疎水性が極めて高く、公称ではイソ酪酸6対酢酸2という比で完全にエステル化されたスクロース誘導体である。混合エステルとして、SAIBは結晶化せずに透明で粘性の液体として存在する。SAIBを、エタノールまたはベンジルアルコールなどの薬学的に許容される有機溶媒と混合すると、混合物の粘度が、注射可能な程度まで低下する。薬学的活性成分をSAIB送達ビヒクルに添加し、SAIB溶液または懸濁液の製剤を形成してもよい。この製剤を皮下注射すると、溶媒がマトリクスから拡散し、SAIB−薬剤またはSAIB−薬剤−ポリマー混合物が、in situ形成持続製剤として構成される。
【0170】
本発明の目的において、分子および作用剤は、被験体に対して治療的または予防的のいずれかの組成物として投与されるものであってもよい。治療用途では、すでに何らかの疾患に罹患している患者に対し、疾患およびその合併症を治癒させるまたは少なくとも部分的に抑制できるだけの十分な量の組成物を投与する。組成物は、患者を効果的に治療できるだけの十分な量の分子または作用剤を提供するものでなければならない。
【0171】
また、本発明の実施形態は、Cpn10をコードするポリヌクレオチドの投与も企図するものである。このような状況では、ポリヌクレオチドは一般に、ポリヌクレオチドを被験体に投与した後に適切なポリペプチド配列が産生されるような形で、プロモーターに対して作動可能に連結される。このポリヌクレオチドを、ベクターで被験体に投与してもよい。ベクターは、外来配列を挿入し、これを真核生物細胞に導入し、導入した配列を発現させるのに適したプラスミドベクターであってもよいし、ウイルスベクターまたは他の好適なビヒクルであってもよい。一般に、ベクターは真核生物の発現ベクターであり、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列などの発現制御およびプロセシング配列を含むものであってもよい。投与対象となる核酸構築物は、ネイキッドDNAを含むものであってもよいし、あるいは、1種類以上の薬学的に許容されるキャリアと併用される組成物の形であってもよい。
【0172】
本発明の方法によれば、本発明のCpn10ポリペプチドを単独で投与してもよいし、1種類以上の別の作用剤と併せて投与してもよいことは、当業者であれば理解できよう。たとえば、本発明のCpn10ポリペプチドを、TLR−3などのTLR受容体を刺激できる1種類以上のアゴニストと一緒に投与してもよい。また、本発明は、本発明のCpn10ポリペプチドを他の治療アプローチと併せて使用して、疾患および障害を治療する併用療法を企図するものである。たとえば、Cpn10ポリペプチドは、IFNβまたはIFN1βなどのI型インターフェロンを用いる療法に応答するウイルス疾患の治療において有用なことがあり、多発性硬化症などの自己免疫疾患の治療にあたって本発明のCpn10ポリペプチドをIFNβと併せて使用してもよい。
【0173】
そのような併用療法では、所望の効果が得られるように、併用療法の各成分を同時に投与してもよいし、あるいは任意の順序または異なる時刻に逐次投与してもよい。あるいは、成分を単一の投与単位にまとめて混合生成物として処方してもよい。別々に投与するのであれば、同じ投与経路で成分を投与すると好ましいことがあるが、必ずしもそうでなければならないわけではない。
【0174】
投与量
特定の患者に対する治療上有効な投与レベルは、治療対象となる障害およびその障害の重症度;使用する分子または作用剤の活性;使用する組成物;年齢、体重、全体的な健康状態、患者の性別および食事;投与時間;投与経路;分子または作用剤の隔離速度;治療期間;治療と組み合わせてまたは治療と同時に用いられる薬剤ならびに、医薬分野で周知の他の関連する要因をはじめとする、多種多様な要因に左右されることになる。
【0175】
当業者であれば、常法での実験により、適用可能な疾患および症状の治療に必要な作用剤または化合物の有効かつ無毒の量を判断することができよう。
【0176】
通常、有効投与量は、隔週で(bi weekly)体重1kgあたり約0.0001mg〜約100mg、一般に隔週で体重1kgあたり約0.001mg〜約75mg、隔週で体重1kgあたり約0.01mg〜約50mg、隔週で体重1kgあたり約0.05mg〜約50mg、隔週ごとに体重1kgあたり約0.1mg〜約10mg、隔週で体重1kgあたり0.1mg前後の範囲にあると想定される。また、本明細書では、投与量の週に1回または3週間に1回での投与も企図される。
【0177】
あるいは、有効投与量が隔週で患者1人あたり約25〜150mgであってもよい。通常、有効投与量は、隔週で患者1人あたり約2.5〜約750mg、好ましくは隔週で患者1人あたり約10〜約350mg、一層好ましくは隔週で患者1人あたり約25〜150mg、なお一層好ましくは週に約25〜200mgの範囲にあると想定される。
【0178】
一般に、治療用途では、疾患状態の期間中の治療となる。
【0179】
さらに、個々の投与量の最適な量および間隔は、治療対象となる疾患状態の性質と度合い、形態、投与経路および投与部位、治療対象となる特定の個体の性質に応じて判断されることになるのは、当業者であれば自明であろう。また、このような最適な条件については、従来の手法で判断可能である。
【0180】
また、規定の日数のあいだにおける1日あたりの投与回数についても、従来の治療過程判断試験を用いて当業者が確認可能であることは、当業者であれば自明であろう。
【0181】
以下、具体的な実施例を参照して本発明について説明するが、これらの実施例は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0182】
実施例1:Cpn10ポリペプチドの生成
本発明のCpn10ポリペプチドの生成プロセスをさらに定義するために、以下の非限定的な実施例をあげておく。
【0183】
まず、ヒトCpn10をコードする熱誘導可能な発現プラスミドを、修飾のある状態または修飾のない状態で大腸菌(E.coli)株XL1−Blue(Stratagene)に形質転換し、選択した単一のクローンからマスター細胞バンクを確立した。
【0184】
次に、基本的にRyanら(1995, J Biol Chem 270: 22037〜22043)に記載されているようにして、Cpn10を大腸菌(E.coli)で産生させた。また、Macro−Prep High Q(BioRad)を結合しない材料を、S−セファロースに続いてゲル濾過(Superdex 200、Amersham Biosciences)でさらに精製した。精製後のCpn10を50mMのTris−HCl(pH7.6)および150mMのNaCl緩衝液に入れたものを、0.2mmのMustang E膜のあるAcrodiscで製造業者の指示どおり濾過し(Pall Corporation、Ann Arbor,MI.カタログ番号MSTG5E3)、残っているエンドトキシンを除去して、−70℃で保管した。たとえば図3に示すようなさまざまなCpn10突然変異体ポリペプチドなどのCpn10の純度を求めたところ、SDS−PAGEにおけるクーマシーブリリアント染色で>99%であった。使用前にアリコートを1回解凍した。
【0185】
実施例2:Cpn10タンパク質の分子シャペロン活性
さまざまなアミノ酸残基の重要性、その電位電荷、シャペロン活性との関連でこれらの残基の位置について調べるために、本発明者らは、1つ以上の突然変異を含み、なおかつ余分なN末端アラニン(Ala)残基がある場合とない場合とで、大腸菌(E.coli)GroELとの併用でCpn10ポリペプチド(表1参照)が分子シャペロンとして作用してタンパク質を折り畳む機能を試験した。これについては、Weber F.およびHayer−Hartl M.K.(Chaperonin Protocols, Ed Schneider C., Humana Press Inc., 2000, p117−126)から適合させた方法を用いるin vitroでのロダネーゼリフォールディングのアッセイによって判断した。
【0186】
天然のウシロダネーゼ(30μM、SIGMA)を、20mMのMOPS−KOH(pH7.5)、100mMのKCl、20mMのMgCl2(緩衝液A)に5MのグアニジンHClと8mMのDTTを含有させた中で変性させた後、変性剤からGroEL(400nM)を含有する緩衝液Aに希釈(75倍)し、ロダネーゼの最終濃度が400nMになるようにした。GroELは、すみやかに安定して変性ロダネーゼ(D−Rho)を結合したのに対し、緩衝液単独では、D−Rhoはミスフォールドして凝集した(すなわち、自然なリフォールディングが不十分であった)。事前に形成しておいたGroEL結合ロダネーゼの安定した複合体にCpn10およびATP(20.1mM)を加えると、効率的なリフォールディングが進行する。Cpn10の非存在下、ATPの添加によってD−Rhoがフォールディングできない形でGroELのオンオフを繰り返し、最終的にミスフォールディングして凝集する(この反応が好適なアッセイブランクとして機能する)。各フォールディング反応物の総容量は、特定の時点(すなわち、0、15、30、45、60、75、90分)で290μLであり、30μLのアリコートを取り出し、70μLのロダネーゼ活性アッセイ混合物(57.1mMのKH2PO4(pH7.5)、71.4mMのEDTA、71.4mMのチオ硫酸Na、71.4mMのKCN)と6分間一緒にする。ATPでのリフォールディング反応の開始前に、リフォールディング時点T=0分として30μLのアリコートを取る。ロダネーゼ活性アッセイ混合物内のEDTAがMg2+イオンとキレート形成し、これがGroELのATP結合を防止して、結果としてフォールディング反応が瞬時に停止する。その後、6分後に50μLの15%(v/v)ホルムアルデヒド(最終濃度5%v/v)を加えてロダネーゼ活性を停止させる。
【0187】
ロダネーゼは、チオ硫酸塩とシアン化物からのチオシアニド(「Rhodanid」)の形成を触媒する。チオシアニドは、硝酸第二鉄の存在下で赤鉄錯体を形成することで、比色的に(吸光度450nm)容易に検出される。ロダネーゼ活性の測定(150μL)では、硝酸第二鉄試薬150μL(164.5mMの硝酸第二鉄および9.2%v/vの硝酸)を添加して発色させる。ロダネーゼ活性の測定値については、96ウェルのマイクロプレートにて、A450nmで読み取る。
【0188】
一般的なロダネーゼのフォールディング反応は、フォールドされたロダネーゼの収率が最大となるまでの間、ロダネーゼ活性(すなわちフォールドされたロダネーゼ)の指数関数的勾配に沿った形となる。GroEL(400nM)とロダネーゼ(400nM)が一定量であれば、Cpn10(7量体)とGroEL(14量体)のモル濃度が等しくなる(すなわち400nM)まで、(ロダネーゼ活性と時間との間に)Cpn10の増加に伴う直線的な関係が観察される。Cpn10の濃度が400nMを上回ると、ロダネーゼ活性の増加がすみやかに最大に達する。このアッセイを、5つの標準(二重)と試験試料(二重)で構成する。Cpn10標準の濃度は、0nM、140nM、250nM、280nM、350nMである。30、45、60、75、90分の時点でのロダネーゼ活性(すなわちCpn10活性)の測定値を平均する。0nMのCpn10標準はアッセイのバックグラウンド活性の好適な測定値として役立つため、0nMのCpn10好適なについての吸光度の値を、計算で求めた他のすべての吸光度値(または活性値)から差し引く。バックグラウンド補正後、280nMのCpn10標準の吸光度値を100%活性として指定し、他のすべての吸光度値を、100%標準に対する相対活性%に変換する。二重に実施する測定を比較することで外れ値のデータ点を除外し、二重の測定値で30%を超える偏差を許容範囲外とする。許容されるデータを使用して、5つの標準濃度すなわち0nMのCpn10(0%活性)、140nMのCpn10(50%活性)、250nMのCpn10(89.3%活性)、280nMのCpn10(100%活性)、350nMのCpn10(125%活性)を用いて、線形較正曲線を生成する。ロダネーゼ活性(Ala−Cpn10活性など)をAla−Cpn10濃度に対してプロットする。アッセイバイアスの補正のため、被験試料からの活性値の比率を、線形較正曲線から得た式を用いて再計算する。
【0189】
シャペロニン(GroELおよびCpn10)の濃度についてはタンパク質のオリゴマーの分子量(MW)を用いて計算し、一方、ロダネーゼではモノマーのMWから計算する。たとえば、大腸菌(E.coli)GroELの14量体(SwissProt P0A6F5)=800,766.4g/mol、ヒトAla−Cpn10の7量体(SwissProt P61604)=76,100.5g/mol、ヒトX−Cpn10−Y75Kの7量体=75,358.5g/mol、ヒトAla−Cpn10−Y75Kの7量体=75,855.5g/mol、ウシロダネーゼの単量体(SwisProt P00586)=33,164.6g/molである。
【0190】
以下の表1に示すように、Ala−Cpn10標準曲線の方程式から多数のCpn10タンパク質の活性を求めた。反応はすべて、二重に実施した。
【0191】
【表1】
【0192】
実施例3:Cpn10突然変異体がポリ(I:C)、CpG−ODN、RNAと結合する
TLRは細胞外と細胞内のどちらでも発現され、細胞表面(TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、TLR6、TLR10、TLR11)で発現されると通常は疎水性リガンドを認識するのに対し、細胞内区画にあると(TLR3、TLR7、TLR8、TLR9)通常は負に荷電した核酸ベースのリガンドを認識する(審良ら 2006, 124: 783〜801)。
【0193】
本明細書で説明するように、本発明者らは、Ala−Cpn10が負に荷電した核酸ベースのTLRリガンドを結合し、これが、図4に示すようなポリ(I:C)(TLR3アゴニスト)、図5および図7に示すようなメチル化されていない一本鎖CpG−オリゴヌクレオチド(ODN)のいくつかのクラス(ヒトODN−2216クラスA、ヒトODN−2006クラスB、ヒトODN−M362クラスC;すべてのTLR9アゴニスト)および図6に示すような大腸菌(E.coli)K12 ssRNA(TLR7/8リガンド)を含むことを示している。
【0194】
後述するように、本発明者らはさらに、多数の突然変異体が、Ala−Cpn10よりもしっかりとポリ(I:C)(図4)、CpG−ODN(図5)およびssRNA(図6)に結合することも示している。
【0195】
図4に関して、Ala−Cpn10−E18A、Ala−Cpn10−E34Q、Ala−Cpn10−D68N、Ala−Cpn10−D83N、Ala−Cpn10−D94N、Ala−Cpn10−Y75R、Ala−Cpn10−E18K,D101K、Ala−Cpn10−E34Q,Y75K、Ala−Cpn10−Q42,D101K、Ala−Cpn10−T44K,D101K、Ala−Cpn10−S50K,D101K、Ala−Cpn10−E74K,Y75E、Ala−Cpn10−Y75G,G76K、Ala−Cpn10−Y75GK、Ala−Cpn10−Y75K,D94K、Ala−Cpn10−Q3K、Ala−Cpn10−S50K、Ala−Cpn10−D68K、Ala−Cpn10−D94K、Ala−Cpn10−D101K、共有結合−Cpn10、MR−Cpn10、MKKK−Cpn10などの突然変異体は、Ala−Cpn10よりもしっかりとポリI:Cを結合する。さらに、X−Cpn10−Y75K、Ala−Cpn10−Y75Kなどのいくつかの突然変異体は、TLR3アゴニストポリ(I:C)に非常にしっかりと結合するため、150mMのNaClで解離するAla−Cpn10とは異なり、500mMのNaClでは完全には放出できない(図4)。興味深いことに、低NaCl濃度では、多くのCpn10バリアントが、臭化エチジウムによるインターカレーションからこれを隔離するような形でポリ(I:C)の長いポリマーと結合することから、おそらくいくつかのCpn10七量体が単一のポリ(I:C)鎖と結合していると思われる(図4)。Ala−Cpn10−Y75K、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−D94N、Ala−Cpn10−Y75K,D94Kをはじめとするいくつかの突然変異体も、低塩濃度で結合ポリ(I:C)を臭化エチジウムによるインターカレーションから隔離するが、≧150mMでは、結合ポリ(I:C)が逃げることなく臭化エチジウムによるインターカレーションに十分なほど結合部位が開く。
【0196】
ポリ(I:C)との相互作用と同様に、X−Cpn10およびAla−Cpn10とTLR9アゴニストCpG−クラスAとの不安定な複合体が、生理的塩濃度(約150mM)で観察された(図5)。これとは対照的に、本発明者らは、ポリ(I:C)との相互作用と同様に、いくつかのCpn10バリアントとCpG−クラスAとの間に有意に強い会合が形成された(図4および5)ことを観察した。実際、CpG−クラスAとの複合体は、500mMのNaCl(図5)では解離に対してほとんど耐性であった。TLR7およびTLR8アゴニスト大腸菌(E.coli)K12 ssRNAに関して、実験から、Ala−Cpn10よりもAla−Cpn10−Y75K、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−D94NおよびAla−Cpn10−Y75K,D94Kなどの多くのCpn10バリアントとの間で強い会合が形成されているということが分かる(図6)。150mMのNaClでは、Ala−Cpn10とX−Cpn10がssRNAから完全に解離する。しかしながら、いくつかの突然変異体は、500mMのNaClの存在下にてしっかりと結合したままである。
【0197】
実施例4:CpGオリゴヌクレオチド(ODN)に対するCpn10結合の定量的分析
ODNに対するCpn10突然変異体の結合量を判断するために、pH7.2のPBS(Invitrogen)中にて10μg/μlで突然変異体を調製し、96ウェルのプレートの三重ウェルに、4℃で16時間、50μgを吸着させた。結合しなかったタンパク質をデカントした後、プレートを1%BSAおよび5%スクロースのPBS溶液(pH7.2)で23℃で2時間ブロックした。PBS(pH7.2)中0.01μg/μlで調製された50μlの3’−ビオチン標識ヒトODN−2216クラス−A、ヒトODN−2006クラス−BまたはヒトODN−M362クラス−C(TLR9アゴニスト)(Proligo/Sigma)を各ウェルに加え、23℃で2時間インキュベートした。未結合のリガンドを、PBS(pH7.2)+0.05%Tween 20で5回洗浄して取り除いた。結合したCpG−ODNをストレプトアビジン−HRPおよびTMB検出系でA450nmにて分析した。
【0198】
図7において、生理的塩濃度(約150mM)での定量分析では、Ala−Cpn10に比して多数の突然変異体に対するCpG−クラスA、BおよびCの有意に強い相互作用が強調される。
【0199】
陽性置換(Q3K、E18K、Q42K、T44K、S50K、D86K、D101K)を含むCpn10突然変異体を作製し、試験したところ、Ala−Cpn10に比してCpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された。
【0200】
研究対象とした陰性から中性のすべての置換(E18Q、E18A、E18S、E18M、D68N、D83NおよびD101N)では、Ala−Cpn10に比してCpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された。
【0201】
複数の陽性置換Cpn10突然変異体に関して、CpG−ODNクラス−A/B/Cへの結合の定量分析によって、Ala−Cpn10に比して、Ala−Cpn10−Y75K,D94KおよびAla−Cpn10−E34Q,Y75Kなど、いずれも親和性が有意に改善されたことが確認された(図7)。
【0202】
MK−Cpn10およびAla−Cpn10−K85など、研究した陽性挿入(延長)のCpn10突然変異体はいずれも、Ala−Cpn10に比して/CpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された。
【0203】
実施例5:Cpn10がCpG−B ODN誘発NFκB活性を調節する
PRRリガンドの高親和性結合を免疫調節活性の増大と相関させることができるか否かを判断するために、いくつかの細胞ベースのアッセイを開発し、さまざまなCpn10突然変異体が炎症誘発性核酸を隔離することでPRRシグナル伝達のレベルを下げる機能を評価した。第1に、CpG−ODNクラスBおよび未結合のPRRリガンドとともにインキュベートした場合にAla−Cpn10およびX−Cpn10に比して高親和性のバインダを使用して、マウスマクロファージ(RAW264細胞)にてNFκBを刺激した。
【0204】
NFκB−ルシフェラーゼレポータープラスミド(pNIFty2−LUC;Invivogen)をRAW264.7(マウスマクロファージ)細胞に安定的にトランスフェクトした。RAW264−pNIFty2−LUC細胞を蒔き、一晩放置して接着させた。100μgのCpn10構築物または調製緩衝液の対照を4μgのCpG−B ODN−1826(Invivogen)と混合し、遠心濾過装置YM10(Amicon)に通した。流動容量分全体をRAW264−pNIFty2−LUC細胞に加え、37℃で5時間インキュベートした。細胞を洗浄した後、1ウェルあたり100μlのCCLR 1×溶液(Promegaルシフェラーゼ溶解緩衝液)で溶解させ、製造業者の指示どおりにルシフェラーゼ基質と混合し、ルシフェラーゼカウントを測定した。Ala−Cpn10でのTLR9の活性化レベルに、100%の値を割り当てた。
【0205】
図8は、高親和性バインダと、Ala−Cpn10に比して低減されたNFκBレベルとのしっかりとした相関を示す。図8から、Ala−Cpn10−Y75K、Ala−Cpn10−E18A、Ala−Cpn10−Y75K,D94K、Ala−Cpn10−E34Q,Y75K、Ala−Cpn10−Q3K、Ala−Cpn10−E18K,D101K、MKK−Cpn10などの1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/または付加を含む単離されたCpn10ポリペプチドが、Ala−Cpn10の場合よりもTLR9の低いレベルの活性化につながることが分かる。
【0206】
実施例6:HEK293細胞においてCpn10突然変異体がTLR−3によりポリ(I:C)誘発NFκB産生を阻害する
TLR3およびpNIFTY−NFκBルシフェラーゼレポーター遺伝子をHEK293細胞に一過的にトランスフェクトした。24時間後、トランスフェクト細胞を24ウェルのプレートに1×105で蒔き、一晩放置して接着させた。次に、0.1ugのポリ(I:C)で、100ugのCpn10突然変異体、10ulのSUPERase RNAse阻害因子(Ambion)の存在下または非存在下で、競合アッセイとして細胞を18時間刺激した(図9)。ポリ(I:C)およびCpn10を所望の濃度にて30分間一緒に混合した後、細胞に加えた。条件ごとに3重に試験した。刺激の18時間後、細胞を溶解させ、ルシフェラーゼカウントを測定した。
【0207】
ルシフェラーゼカウントをポリ(I:C)単独に対して正規化し、これを100%の値とした。ポリ(I:C)で細胞を刺激すると、Ala−Cpn10はルシフェラーゼ(すなわちNFκB)のレベルを22%下げることができた。突然変異体、Ala−Cpn10−Y75K、X−Cpn10−Y75K、Ala−Cpn10−D94K,Ala−Cpn10−Y75GK、Ala−Cpn10−E18K,D101KおよびAla−Cpn10−E34Q,Y75Kのうちのいくつかが、ポリ(I:C)誘発TLR3の有意な調節を示し、Ala−Cpn10−Y75Kがシグナル伝達を53%低下させ、X−Cpn10−Y75Kはシグナル伝達を71%低下させ、Ala−Cpn10−D94Kはシグナル伝達を82%低下させるといった具合である(図9)。このことから、Cpn10突然変異体のほとんどに、特にTLR3シグナル伝達に関与する場合に免疫系を調節する機能があることが分かる。
【0208】
実施例7:突然変異体のパネル
上記の方法および試験を適用するにあたり、本発明者らは、さまざまな突然変異のある多数のCpn10ポリペプチドを生成し、X−Cpn10およびAla−Cpn10などのCpn10分子と比較して、ポリ(I:C)およびいくつかのクラスのODNなどのPRRリガンドに対する結合性を増加させる機能におけるさまざまなアミノ酸残基の重要性(Cpn10分子における電荷および位置など)を評価した。
【0209】
本発明者らは、表1に示すように、Cpn10分子のN末端、βバレル、可動性ループ、ルーフループ、C末端および結合ループの各々におけるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つを置換した。本発明者らは、中性のアミノ酸残基を正に荷電した残基と置き換えるか、負に荷電したアミノ酸残基を中性または正に荷電した残基と置き換えるか、正に荷電した残基を別の正に荷電した残基と置き換えるか、正に荷電した残基を挿入または負に荷電した残基を欠失させるかのいずれかを実施した。
【0210】
【表2】
【0211】
単一置換の突然変異に加えて、本発明者らは、二重突然変異体など、上記の突然変異のうちの2つ以上の組み合わせを含むCpn10ポリペプチドを生成した(たとえばAla−Cpn10−F12K,D92K、Ala−Cpn10−E18K,D101K、Ala−Cpn10−E34Q,Y75K、Ala−Cpn10−Q42K,D101K、Ala−Cpn10−T44K,D101K、Ala−Cpn10−S50K,D101K、Ala−Cpn10−Q60K,T78K、Ala−Cpn10−E74K,Y75E、Ala−Cpn10−Y75GK、Ala−Cpn10−Y75G,G76K、Ala−Cpn10−Y75K,D94KおよびAla−Cpn10−Y75K,D94N。さらに、本発明者らは、陽性挿入(延長)および陰性欠失(除去)Cpn10バリアント(MH−Cpn10、MR−Cpn10、MK−Cpn10、MKK−Cpn10、MKKK−Cpn10、Ala−Cpn10−K21、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−K39、Ala−Cpn10−KK39、Ala−Cpn10−K57、Ala−Cpn10−KK57、Ala−Cpn10−K76、Ala−Cpn10−KK76、Ala−Cpn10−K85、Ala−Cpn10−KK85、Ala−Cpn10−K102、Ala−Cpn10−KK102、ΔD13、ΔE18、ΔE23、ΔE34、ΔE58、ΔE68、ΔE74、ΔD83、ΔD84、ΔD86、ΔD92、ΔD94、ΔD101など)を生成した。
【0212】
本明細書では、別の二重突然変異体、三重突然変異体などの生成につながる上記の突然変異の任意の組み合わせも、本発明の範囲に包含されることが企図される。
【0213】
実施例8:Cpn10ポリペプチドの正味の電荷の計算
タンパク質の正味の電荷の計算
上述したように、特定pHでのポリペプチドの正味の電荷を、ヘンダーソン−ハッセルバルヒ式(Hasselbalch, K.A., 1917 Biochemische Zeitschrift 78: 112〜144)ならびに、ポリペプチドのイオン化可能なアミノ酸側鎖およびN末端およびC末端の周知のpKa値に基づいて計算する。表3で利用するpKa値は、N末端8.0、C末端3.1、Lys 10.0、Arg 12.0、His 6.5、Glu 4.4、Asp 4.4、Tyr 10.0、Cys 8.5である(Stryer, L., 1988 「Biochemistry」 textbook 第3版, New York, W.H. Freeman, ISBN 0716719207)。上述した方法を利用して、表3に示すようなCpn10バリアントの正味の電荷をpH7.3とpH7.4(生理的なpHとして採用)で計算した。
【0214】
【表3】
【0215】
実施例9:概要
本発明者らは、Cpn10がいくつかの病原体認識受容体(PRR)を調節することを以前に発見し、最近になって、人間の関節リウマチ患者(Vanagsら Lancet 2006; 368:855〜863)および乾癬患者(Williamsら Arch. Dermatol. 2008; 144:683〜685)の治療におけるその有効性と安全性を示した。今、本発明者らは、Cpn10のバリアントがいくつかの核酸ベースのPRRリガンドと特異的に結合されることを示す。
【0216】
陽性残基を加えるか陰性残基を取り除いて余分な正電荷を加えると、(Ala−Cpn10およびX−Cpn10に比して)核酸ベースのPRRリガンドと有意に強く結合するCpn10分子が生成される。余分な正電荷については、(1)既存の表面/液露出中性残基または陰性残基を陽性残基で置き換える、(2)既存の表面/液露出陰性残基を中性残基で置き換える、(3)別の表面/液露出陽性残基を導入する(ループ構造またはN末端およびC末端を延長するなど)または(4)既存の表面/液露出陰性残基を取り除く(ループ構造またはN末端およびC末端を短くするなど)ことによって加えることができる。また、本発明者らの結果から、複数の正電荷を導入すると(Ala−Cpn10−F12K,D92N;E18K,D101K;E34Q,Y75K;Q42K,D101K;T44K,D101K;S50K,D101K;Q60K,T78K;E74K,Y75E;Y75GK;Y75G,G76K;Y75K,D94K;Y75K,D94Nなど)すると、個々の突然変異よりも結合電位が有意に高まる場合があることも分かる。
【0217】
事前に存在する中性および陰性残基をリジン(K)またはアルギニン(R)残基で置き換えることによる効果を調べた。陽性置換研究(A1K、Q3K、Q3R、F5K、D13K、E18K、E18R、S20K、A22K、T24K、G29K、M31K、E34K、Q37K、V40K、L41K、Q42K、T44K、S50K、S50R、S52K、G54K、G56K、E58K、Q60K、P61K、V66K、D68K、P73K、E74K、Y75K、Y75H、Y75R、G76K、G77K、T78K、V81K、D83K、D84L、D86K、D86R、Y87K、F88K、L89K、D92K、G93K、D94K、D94R、L96K、V100K、D101KおよびD101R;配列番号34−45および52−198)ではいずれも、Ala−Cpn10に比してポリ(I:C)、大腸菌(E.coli)K12 ssRNAおよびいくつかのCpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された(図4〜図9)。
【0218】
事前に存在する陰性残基(すなわちEおよびD)を中性残基(たとえば、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、S、T、H)で置き換えることによる効果についても調べた。ここでも、陰性から中性のすべての置換研究(D13N、E18A、E18M、E18Q、E18S、E23Q、E34Q、E58Q、D68N、E74Q、D83N、D84N、D86N、D92N、D94A、D94M、D94N、D94SおよびD101N;配列番号250−306)で、Ala−Cpn10に比してポリ(I:C)、大腸菌(E.coli)K12 ssRNAおよびいくつかのCpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された(図4〜図9)。
【0219】
複数の正電荷を付加することで、結合がさらにしっかりとしたものになるかどうかを調べるために、いくつかのバリアントを調製した(ieg E18K/D101K、Q42K/D101K、T44K/D101KおよびS50K/D101K;配列番号217−231)。予想どおり、すべての核酸ベースのPRRリガンドに対して高親和性の結合が観察された(図4〜図9)。上記にて概説したように、既存の中性または陰性残基を陽性残基(K,R,H)で置き換えたり、陰性残基を中性残基で置き換えたりすることで、Cpn10に正電荷を加えることが可能である。正電荷を別の方法として、このような構造変化に耐えられるCpn10の位置での陽性残基(K,R,H)の挿入がある。各Cpn10サブユニットを、3つの小さなループと2つの大きなβヘアピン折り返しループで接続される不連続なβバレル構造にフォールドされる101のアミノ酸から形成する(図1)。βバレル構造によって、すべてのサブユニット−サブユニット相互作用およびCpn10七量体の安定性が得られる。βバレルのセグメントを延長すると、構造的な不安定さが生じる可能性がある。これに対し、N末端、C末端またはいくつかの結合ループを延長しても、このような構造変化に一層よく耐えられると思われる。この予測と一致する形で、いくつかのCpn10ホモログは、自然に伸展するセグメントを有する(図2)。たとえば、バクテリオファージT4 Cpn10(Gp31)は、有意に延長された可動性ループおよびL−3ループを有する。蚊、ハエ、マイコバクテリアのCpn10は、延長されたルーフループを持つのに対し、多数のCpn10が長めのN末端およびC末端を含む。表4に示すように、5つの結合ループ(すなわちL−1、L−2、L−3、可動性ループおよびルーフループ)、N末端およびC末端の各々への陽性残基の挿入に成功した。
【0220】
【表4】
【0221】
研究した陽性挿入(延長)Cpn10バリアントはいずれも、Ala−Cpn10に比してポリ(I:C)およびいくつかのCpG−ODNクラス−A/B/Cに対する親和性が有意に改善された(図4〜図9;配列番号307〜354)。
【0222】
1つの陽性付加を有するCpn10バリアントはいずれも、大腸菌(E.coli)K12 ssRNAと相互作用し、Ala−Cpn10よりも高い親和性を呈する。同様に、複数の陽性付加を有するCpn10バリアント(E18K/D101K、Q42K/D101K、T44K/D101K、S50K/D101K、MKK−Cpn10、MKKK−Cpn10、Ala−Cpn10−KK39、Ala−Cpn10−KK85およびAla−Cpn10−KK102)では、Ala−Cpn10に比して大腸菌(E.coli)K12 ssRNAに対する親和性が改善されている(図6)。正味の正電荷を高めるには、陰性残基を中性または陽性残基と置換すればよい。もうひとつの可能性として、陰性残基を完全に取り除くことがある。上述したように、多数のCpn10ホモログが自然に伸展され、また短縮された結合ループ(すなわちL−1、L−2、L−3、可動性ループおよびルーフループ)を有する。23位、34位、58位、74位および84位で陰性残基を除去すると(配列番号199〜213)、これらのCpn10バリアントで核酸ベースのPRRリガンドに対する親和性が高まることが示された。陰性残基D68、D84、D101も、Cpn10の構造の完全性を犠牲にすることなく欠失可能であり、これらのバリアントも高親和性バインダであると想定される。
【0223】
PRRリガンドの高親和性結合を免疫調節活性の増大と相関させることができるか否かを判断するために、いくつかの細胞ベースのアッセイを開発し、さまざまなCpn10突然変異体が炎症誘発性核酸を隔離することでPRRシグナル伝達のレベルを下げる機能を評価した。第1に、Ala−Cpn10に比して高親和性のバインダをCpG−ODNクラスBと一緒にインキュベートし、未結合のPRRリガンドを用いてNFκBをマウスマクロファージ(RAW264細胞)にて刺激した。図8は、高親和性バインダとAla−Cpn10に比して低減されたNFκBレベルとのしっかりとした相関を示す。同様に、X−Cpn10−K53EおよびAla−Cpn10−K53M,K55Mなど、PRRリガンドに対する親和性を妥協した突然変異体では、Ala−Cpn10に比してNFκB活性化のレベルが増加した。細胞での高親和性バインダの生物活性を試験するために、次にポリ(I:C)で刺激した場合に炎症誘発性NFκB活性化(TLR3を発現しているHEK細胞から)を抑える機能についてCpn10バリアントを評価した。この系では、高親和性のバインダ(Ala−Cpn10−D101Kなど)は通常、Ala−Cpn10に比してNFκB活性化を阻害する有意に改善された機能を示した(図7+図9)。正に荷電した残基を他の正に荷電した残基で置き換え(K7R、R19K、K27R、K39R、K55R、K69R、K85RおよびK98R;配列番号10〜33など)ても、Ala−Cpn10に比して当該Cpn10バリアントが炎症促進性核酸を結合する機能に有意な影響はなかった(図8)。
【0224】
本明細書では、上記ならびに本明細書全体をとおして述べる突然変異のある単離されたCpn10ポリペプチドで、核酸ベースのPRRリガンド、特にTLR−3アゴニストポリ(I:C)、TLR7およびTLR8アゴニスト大腸菌(E.coli) ssRNAおよびTLR9アゴニスト非メチル化CpG−オリゴヌクレオチド(ODN)(ODN−2216クラスA、ODN−2006クラスBおよびODN−M362クラスC)に対する親和性が高まることが示される。また、本明細書では、これらのCpn10ポリペプチドがポリ(I:C)およびCpG誘発NFkB活性化を阻害することもことも示される。
【0225】
結論
本明細書に含むデータから、Cpn10分子内にて、正に荷電した残基を加えるまたは負に荷電した残基を取り除く、負に荷電した残基を中性または正に荷電した残基で置き換える、中性残基を正に荷電した残基で置き換えることで、PRRの核酸ベースのリガンドに対する親和性が高められた、実施例8で列挙したようなCpn10突然変異体を生成することが可能であることが明らかになっている。たとえば、本発明者らは、Ala−Cpn10−Y75Kならびに、多くの他のCpn10突然変異体が、Ala−Cpn10に比してポリ(I:C)、CpG−ODNクラス−A/B/Cおよび大腸菌(E.coli)K12 ssRNAに対して有意に改善された親和性を持つことを確認した(図4〜図7)が、これはアミノ酸の置換、欠失および/または挿入によってCpn10分子の正味の正電荷を増したことによる可能性がある。
【0226】
さらに、本発明者らは、Cpn10分子内のいくつかの位置において正電荷を導入することで、PRRの核酸ベースのリガンドに対する高親和性の結合を達成可能であることも見いだした。核酸ベースのPRRリガンドに対する本発明のポリペプチドの親和性が高められたことは、免疫調節活性が高められたことを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ala−Cpn10ポリペプチドと比較して、PRRリガンドに対する増加した親和性を有する、単離されたCpn10ポリペプチド。
【請求項2】
前記PRRリガンドが、Toll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合ドメインLRR含有ファミリー(NLR)、RIG−I様受容体(RLR)、IRFのDNA依存性活性化因子(DAI)、C型レクチン受容体(CLR)、またはIFI20X/IFI16ファミリーのメンバー(Ifi16、Aim2、MNDA、およびIFIXなど)からなる群より選択されるPRRのシグナル伝達を調節する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記TLRが、TLR3、TLR7、TLR8、またはTLR9のうちの少なくとも1つからなる群より選択される、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
Ala−Cpn10ポリペプチドと比較して、より大きい正味の正電荷を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
Ala−Cpn10分子の少なくとも1つの突然変異を有するポリペプチドであって、前記突然変異が、アミノ酸の置換、付加、または欠失である、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記突然変異が、1つ以上の正に荷電した残基または中性残基による、1つ以上のアミノ酸残基の置き換えである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記突然変異が、1つ以上の中性残基による、1つ以上のアミノ酸残基の置き換えである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記正に荷電した残基が、アルギニン(R)、リジン(K)、およびヒスチジン(H)からなる群より選択される、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記中性残基が、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、システイン(C)、メチオニン(M)、およびヒスチジン(H)からなる群より選択される、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記突然変異が、可動性(mobile)ループ内もしくはルーフ(roof)ループ内のいずれかにおける突然変異であるか、またはCpn10分子の内面もしくは外面のいずれかの範囲内の、露出した遊離側鎖を残基が有する位置における突然変異であるか、またはこれらの組み合わせにおける突然変異である、請求項6〜9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
野生型Cpn10分子の1〜7位、9位、12〜14位、16位、18〜42位、44位、46位、50位、52〜63位、65〜69位、73〜79位、81位、83〜89位、91〜94位、および96位、98位、100位、101位からなる群より選択されるかまたはこれらの組み合わせのアミノ酸位置において、突然変異を含む、請求項5〜10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
A1(K、RまたはH)、G2(K、RまたはH)、Q3(K、RまたはH)、A4(K、RまたはH)、F5(K、RまたはH)、R6(KまたはH)、K7(RまたはH)、L9(K、RまたはH)、F12(K、RまたはH)、D13(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R14(KまたはH)、L16(K、RまたはH)、E18(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R19(KまたはH)、S20(K、RまたはH)、A21(K、RまたはH)、A22(K、RまたはH)、E23(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、T24(K、RまたはH)、V25(K、RまたはH)、T26(K、RまたはH)、R27(KまたはH)、G28(K、RまたはH)、G29(K、RまたはH)、I30(K、RまたはH)、M31(K、RまたはH)、L32(K、RまたはH)、P33(K、RまたはH)、E34(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K35(RまたはH)、S36(K、RまたはH)、Q37(K、RまたはH)、G38(K、RまたはH)、K39(K、RまたはH)、V40(K、RまたはH)、L41(K、RまたはH)、Q42(K、RまたはH)、T44(K、RまたはH)、V46(K、RまたはH)、S50(K、RまたはH)、S52(K、RまたはH)、K53(RまたはH)、G54(K、RまたはH)、K55(RまたはH)、G56(K、RまたはH)、G57(K、RまたはH)、E58(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、I59(K、RまたはH)、Q60(K、RまたはH)、P61(K、RまたはH)、V62(K、RまたはH)、S63(K、RまたはH)、K65(RまたはH)、V66(K、RまたはH)、G67(K、RまたはH)、D68(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K69(RまたはH)、P73(K、RまたはH)、E74(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y75(GK、K、R、H、E)、G76(K、RまたはH)、G77(K、RまたはH)、T78(K、RまたはH)、K79(RまたはH)、V81(K、RまたはH)、D83(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、D84(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K85(K、RまたはH)、D86(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y87(K、RまたはH)、F88(K、RまたはH)、L89(K、RまたはH)、R91(KまたはH)、D92(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、G93(K、RまたはH)、D94(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、L96(K、RまたはH)、K98(RまたはH)、V100(K、RまたはH)、D101(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、MH−Cpn10、MR−Cpn10、MK−Cpn10、MKK−Cpn10、MKKK−Cpn10、Ala−Cpn10−K21、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−K39、Ala−Cpn10−KK39、Ala−Cpn10−K57、Ala−Cpn10−KK57、Ala−Cpn10−K76、Ala−Cpn10−KK76、Ala−Cpn10−K85、Ala−Cpn10−KK85、Ala−Cpn10−K102、Ala−Cpn10−KK102、ΔD13、ΔE18、ΔE23、ΔE34、ΔE58、ΔE68、ΔE74、ΔD83、ΔD84、ΔD86、ΔD92、ΔD94、およびΔD101からなる群より選択されるかまたはこれらの組み合わせの突然変異を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
2つ以上の前記突然変異の組み合わせを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
F12K,D92K;E18K,D101K;E34Q,Y75K;Q42K,D101K;T44K,D101K;S50K,D101K;Q60K,T78K;E74K,Y75E;Y75GK;Y75G,G76K;Y75K,D94K;およびY75K,D94Nからなる群より選択される突然変異を含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
N末端、可動性ループ、ヘアピンルーフループ、またはこれらの組み合わせを欠いているかまたは実質的に欠いている、請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
配列番号34、37、40、43、46、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82、85、88、91、94、97、100、103、106、109、112、115、118、121、124、127、130、133、136、139、142、145、148、151、154、157、160、163、166、169、172、175、178、181、184、187、190、193、196、199、202、205、208、211、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247、250、253、256、259、262、271、274、277、280、283、286、289、292、295、298、301、304、307、310、313、316、319、322、325、328、331、334、337、340、343、346、349、352、または355からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
ヒトCpn10である、請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項19】
請求項18に記載の核酸を含む発現構築物であって、1つ以上の制御配列に作動可能に連結された発現構築物。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現するか、または請求項18に記載の核酸もしくは請求項19に記載の発現構築物を含む、宿主細胞。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドと選択的に結合する抗体。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドを、単独で、あるいは核酸ベースのPRRリガンド、請求項18に記載の核酸、請求項19に記載の発現構築物、もしくは請求項21に記載の抗体のうちの少なくとも1つ、またはこれらの任意の組み合わせと併せてのいずれかで含む、薬学的組成物。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドの治療有効量を、単独で、あるいは核酸ベースのPRRリガンドもしくは請求項18に記載の核酸のうちの少なくとも1つまたはこれらの任意の組み合わせと併せてのいずれかで、被験体に投与するステップを含む、被験体を治療する方法。
【請求項24】
前記治療が被験体における免疫応答を調節し、前記免疫応答が、PRRシグナル伝達の制御によって調節される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
被験体における疾患、障害、または症状を治療または予防するための方法であって、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドの有効量を、単独で、あるいは核酸ベースのPRRリガンドもしくは請求項18に記載の核酸のうちの少なくとも1つまたはこれらの任意の組み合わせと併せてのいずれかで、被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項26】
前記疾患、障害、または症状が、インスリン依存性糖尿病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン病(Sjorgren’s disease)、グレーブス病、多発性硬化症、関節リウマチ、慢性疲労症候群、アルツハイマー病、喘息、アレルギー、GVHD、アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis)、炎症性疼痛、乾癬、HIV、慢性免疫活性化(Chronic immune activation)、慢性筋炎、強皮症などの急性もしくは慢性炎症性疾患;または非小細胞肺癌、腎細胞癌、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、基底細胞癌などの癌;または細菌感染、ウイルス感染もしくは真菌感染に起因しうる感染症からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、PRRシグナル伝達を調節するための方法であって、治療有効量の、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドもしくは請求項18に記載の核酸またはこれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む、方法。
【請求項28】
被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、1つ以上の免疫調節物質の生成および/または分泌を調節するための方法であって、治療有効量の、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドもしくは請求項18に記載の核酸またはこれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む、方法。
【請求項29】
被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、1つ以上の免疫調節物質の生成および/または分泌を阻害するための方法であって、有効量の、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドもしくは請求項18に記載の核酸またはこれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む、方法。
【請求項30】
前記免疫調節物質が、炎症促進性サイトカインもしくはケモカインまたは抗炎症性サイトカインもしくはケモカインであって、前記サイトカインまたはケモカインが、TNF−α、IL−1α/β、IL−6、IL−10、IL−12、IL−17、IL−18、IL−23、RANTES、TGF−β、またはIFN−α、IFN−β、もしくはIFN−γでありうるI型インターフェロンから選択される、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドと結合する化合物を同定する方法であって、
(a)候補化合物を前記ポリペプチドと接触させるステップ、および
(b)前記候補化合物と前記ポリペプチドとの間の複合体の形成をアッセイするステップ
を含む、方法。
【請求項32】
前記アッセイが、競合的結合アッセイ、ゲル濾過クロマトグラフィ、AlphaScreen(登録商標)ハイスループットスクリーニング、ツーハイブリッドアッセイ、電気泳動移動度シフト(ゲルシフト)アッセイ、およびプレートキャプチャアッセイからなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)前記ポリペプチドを、前記ポリペプチドと候補化合物との相互作用を可能にするのに適した条件下で、候補化合物と接触させるステップ、および
(b)前記ポリペプチドの活性をアッセイするステップ
を含む、方法。
【請求項34】
PRRリガンドのスクリーニング方法であって、
(a)請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドを、前記ポリペプチドと候補化合物との相互作用を可能にするのに適した条件下で、候補PRRリガンド化合物と接触させるステップ、および
(b)野生型Cpn10と比較した、前記ポリペプチドとの前記化合物の親和性の増加をアッセイするステップ、および/または
(c)候補PRRリガンド化合物および前記ポリペプチドの存在下で、PRR活性化の増加または低下をアッセイするステップ
を含む、方法。
【請求項35】
機能的バリアント、誘導体、ホモログ、アナログ、またはフラグメントである、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項1】
Ala−Cpn10ポリペプチドと比較して、PRRリガンドに対する増加した親和性を有する、単離されたCpn10ポリペプチド。
【請求項2】
前記PRRリガンドが、Toll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合ドメインLRR含有ファミリー(NLR)、RIG−I様受容体(RLR)、IRFのDNA依存性活性化因子(DAI)、C型レクチン受容体(CLR)、またはIFI20X/IFI16ファミリーのメンバー(Ifi16、Aim2、MNDA、およびIFIXなど)からなる群より選択されるPRRのシグナル伝達を調節する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記TLRが、TLR3、TLR7、TLR8、またはTLR9のうちの少なくとも1つからなる群より選択される、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
Ala−Cpn10ポリペプチドと比較して、より大きい正味の正電荷を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
Ala−Cpn10分子の少なくとも1つの突然変異を有するポリペプチドであって、前記突然変異が、アミノ酸の置換、付加、または欠失である、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記突然変異が、1つ以上の正に荷電した残基または中性残基による、1つ以上のアミノ酸残基の置き換えである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記突然変異が、1つ以上の中性残基による、1つ以上のアミノ酸残基の置き換えである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記正に荷電した残基が、アルギニン(R)、リジン(K)、およびヒスチジン(H)からなる群より選択される、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記中性残基が、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、システイン(C)、メチオニン(M)、およびヒスチジン(H)からなる群より選択される、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記突然変異が、可動性(mobile)ループ内もしくはルーフ(roof)ループ内のいずれかにおける突然変異であるか、またはCpn10分子の内面もしくは外面のいずれかの範囲内の、露出した遊離側鎖を残基が有する位置における突然変異であるか、またはこれらの組み合わせにおける突然変異である、請求項6〜9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
野生型Cpn10分子の1〜7位、9位、12〜14位、16位、18〜42位、44位、46位、50位、52〜63位、65〜69位、73〜79位、81位、83〜89位、91〜94位、および96位、98位、100位、101位からなる群より選択されるかまたはこれらの組み合わせのアミノ酸位置において、突然変異を含む、請求項5〜10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
A1(K、RまたはH)、G2(K、RまたはH)、Q3(K、RまたはH)、A4(K、RまたはH)、F5(K、RまたはH)、R6(KまたはH)、K7(RまたはH)、L9(K、RまたはH)、F12(K、RまたはH)、D13(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R14(KまたはH)、L16(K、RまたはH)、E18(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、R19(KまたはH)、S20(K、RまたはH)、A21(K、RまたはH)、A22(K、RまたはH)、E23(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、T24(K、RまたはH)、V25(K、RまたはH)、T26(K、RまたはH)、R27(KまたはH)、G28(K、RまたはH)、G29(K、RまたはH)、I30(K、RまたはH)、M31(K、RまたはH)、L32(K、RまたはH)、P33(K、RまたはH)、E34(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K35(RまたはH)、S36(K、RまたはH)、Q37(K、RまたはH)、G38(K、RまたはH)、K39(K、RまたはH)、V40(K、RまたはH)、L41(K、RまたはH)、Q42(K、RまたはH)、T44(K、RまたはH)、V46(K、RまたはH)、S50(K、RまたはH)、S52(K、RまたはH)、K53(RまたはH)、G54(K、RまたはH)、K55(RまたはH)、G56(K、RまたはH)、G57(K、RまたはH)、E58(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、I59(K、RまたはH)、Q60(K、RまたはH)、P61(K、RまたはH)、V62(K、RまたはH)、S63(K、RまたはH)、K65(RまたはH)、V66(K、RまたはH)、G67(K、RまたはH)、D68(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K69(RまたはH)、P73(K、RまたはH)、E74(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y75(GK、K、R、H、E)、G76(K、RまたはH)、G77(K、RまたはH)、T78(K、RまたはH)、K79(RまたはH)、V81(K、RまたはH)、D83(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、D84(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、K85(K、RまたはH)、D86(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、Y87(K、RまたはH)、F88(K、RまたはH)、L89(K、RまたはH)、R91(KまたはH)、D92(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、G93(K、RまたはH)、D94(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、L96(K、RまたはH)、K98(RまたはH)、V100(K、RまたはH)、D101(K、R、H、N、Q、G、A、V、L、I、P、F、Y、W、C、M、SまたはT)、MH−Cpn10、MR−Cpn10、MK−Cpn10、MKK−Cpn10、MKKK−Cpn10、Ala−Cpn10−K21、Ala−Cpn10−KK21、Ala−Cpn10−K39、Ala−Cpn10−KK39、Ala−Cpn10−K57、Ala−Cpn10−KK57、Ala−Cpn10−K76、Ala−Cpn10−KK76、Ala−Cpn10−K85、Ala−Cpn10−KK85、Ala−Cpn10−K102、Ala−Cpn10−KK102、ΔD13、ΔE18、ΔE23、ΔE34、ΔE58、ΔE68、ΔE74、ΔD83、ΔD84、ΔD86、ΔD92、ΔD94、およびΔD101からなる群より選択されるかまたはこれらの組み合わせの突然変異を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項13】
2つ以上の前記突然変異の組み合わせを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
F12K,D92K;E18K,D101K;E34Q,Y75K;Q42K,D101K;T44K,D101K;S50K,D101K;Q60K,T78K;E74K,Y75E;Y75GK;Y75G,G76K;Y75K,D94K;およびY75K,D94Nからなる群より選択される突然変異を含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
N末端、可動性ループ、ヘアピンルーフループ、またはこれらの組み合わせを欠いているかまたは実質的に欠いている、請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
配列番号34、37、40、43、46、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82、85、88、91、94、97、100、103、106、109、112、115、118、121、124、127、130、133、136、139、142、145、148、151、154、157、160、163、166、169、172、175、178、181、184、187、190、193、196、199、202、205、208、211、217、220、223、226、229、232、235、238、241、244、247、250、253、256、259、262、271、274、277、280、283、286、289、292、295、298、301、304、307、310、313、316、319、322、325、328、331、334、337、340、343、346、349、352、または355からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
ヒトCpn10である、請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項19】
請求項18に記載の核酸を含む発現構築物であって、1つ以上の制御配列に作動可能に連結された発現構築物。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現するか、または請求項18に記載の核酸もしくは請求項19に記載の発現構築物を含む、宿主細胞。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドと選択的に結合する抗体。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドを、単独で、あるいは核酸ベースのPRRリガンド、請求項18に記載の核酸、請求項19に記載の発現構築物、もしくは請求項21に記載の抗体のうちの少なくとも1つ、またはこれらの任意の組み合わせと併せてのいずれかで含む、薬学的組成物。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドの治療有効量を、単独で、あるいは核酸ベースのPRRリガンドもしくは請求項18に記載の核酸のうちの少なくとも1つまたはこれらの任意の組み合わせと併せてのいずれかで、被験体に投与するステップを含む、被験体を治療する方法。
【請求項24】
前記治療が被験体における免疫応答を調節し、前記免疫応答が、PRRシグナル伝達の制御によって調節される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
被験体における疾患、障害、または症状を治療または予防するための方法であって、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドの有効量を、単独で、あるいは核酸ベースのPRRリガンドもしくは請求項18に記載の核酸のうちの少なくとも1つまたはこれらの任意の組み合わせと併せてのいずれかで、被験体に投与するステップを含む、方法。
【請求項26】
前記疾患、障害、または症状が、インスリン依存性糖尿病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン病(Sjorgren’s disease)、グレーブス病、多発性硬化症、関節リウマチ、慢性疲労症候群、アルツハイマー病、喘息、アレルギー、GVHD、アテローム性動脈硬化症(artherosclerosis)、炎症性疼痛、乾癬、HIV、慢性免疫活性化(Chronic immune activation)、慢性筋炎、強皮症などの急性もしくは慢性炎症性疾患;または非小細胞肺癌、腎細胞癌、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、基底細胞癌などの癌;または細菌感染、ウイルス感染もしくは真菌感染に起因しうる感染症からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、PRRシグナル伝達を調節するための方法であって、治療有効量の、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドもしくは請求項18に記載の核酸またはこれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む、方法。
【請求項28】
被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、1つ以上の免疫調節物質の生成および/または分泌を調節するための方法であって、治療有効量の、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドもしくは請求項18に記載の核酸またはこれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む、方法。
【請求項29】
被験体において、またはその少なくとも1つの細胞、組織、もしくは臓器において、1つ以上の免疫調節物質の生成および/または分泌を阻害するための方法であって、有効量の、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドもしくは請求項18に記載の核酸またはこれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む、方法。
【請求項30】
前記免疫調節物質が、炎症促進性サイトカインもしくはケモカインまたは抗炎症性サイトカインもしくはケモカインであって、前記サイトカインまたはケモカインが、TNF−α、IL−1α/β、IL−6、IL−10、IL−12、IL−17、IL−18、IL−23、RANTES、TGF−β、またはIFN−α、IFN−β、もしくはIFN−γでありうるI型インターフェロンから選択される、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドと結合する化合物を同定する方法であって、
(a)候補化合物を前記ポリペプチドと接触させるステップ、および
(b)前記候補化合物と前記ポリペプチドとの間の複合体の形成をアッセイするステップ
を含む、方法。
【請求項32】
前記アッセイが、競合的結合アッセイ、ゲル濾過クロマトグラフィ、AlphaScreen(登録商標)ハイスループットスクリーニング、ツーハイブリッドアッセイ、電気泳動移動度シフト(ゲルシフト)アッセイ、およびプレートキャプチャアッセイからなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)前記ポリペプチドを、前記ポリペプチドと候補化合物との相互作用を可能にするのに適した条件下で、候補化合物と接触させるステップ、および
(b)前記ポリペプチドの活性をアッセイするステップ
を含む、方法。
【請求項34】
PRRリガンドのスクリーニング方法であって、
(a)請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチドを、前記ポリペプチドと候補化合物との相互作用を可能にするのに適した条件下で、候補PRRリガンド化合物と接触させるステップ、および
(b)野生型Cpn10と比較した、前記ポリペプチドとの前記化合物の親和性の増加をアッセイするステップ、および/または
(c)候補PRRリガンド化合物および前記ポリペプチドの存在下で、PRR活性化の増加または低下をアッセイするステップ
を含む、方法。
【請求項35】
機能的バリアント、誘導体、ホモログ、アナログ、またはフラグメントである、請求項1〜17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4a】
【図4b】
【図4c−1】
【図4c−2】
【図4c−3】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図4g】
【図5a】
【図5b】
【図5c−1】
【図5c−2】
【図5c−3】
【図5c−4】
【図5c−5】
【図5c−6】
【図5c−7】
【図5d−1】
【図5d−2】
【図5d−3】
【図5d−4】
【図5e−1】
【図5e−2】
【図5e−3】
【図5e−4】
【図5f】
【図5g−1】
【図5g−2】
【図5g−3】
【図6a】
【図6b】
【図6c−1】
【図6c−2】
【図6c−3】
【図6d】
【図6e】
【図6f】
【図6g】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図7g】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図8e】
【図8f】
【図8g】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9e】
【図9f−1】
【図9f−2】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4a】
【図4b】
【図4c−1】
【図4c−2】
【図4c−3】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図4g】
【図5a】
【図5b】
【図5c−1】
【図5c−2】
【図5c−3】
【図5c−4】
【図5c−5】
【図5c−6】
【図5c−7】
【図5d−1】
【図5d−2】
【図5d−3】
【図5d−4】
【図5e−1】
【図5e−2】
【図5e−3】
【図5e−4】
【図5f】
【図5g−1】
【図5g−2】
【図5g−3】
【図6a】
【図6b】
【図6c−1】
【図6c−2】
【図6c−3】
【図6d】
【図6e】
【図6f】
【図6g】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図7g】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図8e】
【図8f】
【図8g】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9e】
【図9f−1】
【図9f−2】
【公表番号】特表2011−519548(P2011−519548A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503310(P2011−503310)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000444
【国際公開番号】WO2009/124353
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(508008784)シーバイオ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000444
【国際公開番号】WO2009/124353
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(508008784)シーバイオ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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