説明

修飾酸化チタン微粒子及びそれを用いた光電変換素子

【課題】色素増感型太陽電池等に有用な金属微粒子の開発及び色素増感型太陽電池においてより高い開放電圧を発現する光電変換素子を提供すること。
【解決手段】周期表IB族酸化物、IIA族酸化物、IIB族酸化物、IIIA族酸化物、IIIB族酸化物、チタン酸化物以外のIVA族酸化物、IVB族酸化物、VIA族酸化物、VIII族酸化物及びバナジウム酸化物からなる群から選ばれる一種類又は二種類以上の非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)と酸化チタンから成る修飾酸化チタン微粒子、及び該修飾酸化チタン微粒子を使用した光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修飾酸化チタン微粒子及びその製造方法並びにそれを用いた光電変換素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーンなエネルギー源として注目されている太陽電池は、近年、一般住宅用に利用されるようになってきたが、未だ充分に普及するには至っていない。その理由としては、太陽電池そのものの性能が充分優れているとは言い難いためモジュールを大きくせざるを得ないこと、モジュール製造における生産性が低いこと、その結果、太陽電池そのものが高価になること等が挙げられる。
【0003】
太陽電池にはいくつかの種類があるが実用化している大部分はシリコン太陽電池である。しかし、最近になって色素増感型太陽電池が注目され、実用化を目指して研究がなされている。色素増感型の湿式太陽電池は古くから研究されているものであり、その基本構造は、通常、金属酸化物等の半導体、そこに吸着した色素、電解質溶液及び対極からなっている。これらのうち、色素や電解溶液については様々な種類のものが検討されているが、半導体についての研究はその種類が限られている。初期の色素増感型の湿式太陽電池においては、半導体の単結晶電極、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化カドミウム(CdS)、酸化スズ(SnO2)等が用いられている。しかし、単結晶電極は色素の吸着能が小さいため変換効率が非常に低く、コストが高いというデメリットがあった。これを改善すべく提案されたのが、微粒子を焼結し、細孔を多く設けた高表面積半導体を電極として用いる方法で、坪村らによって、有機色素を吸着したこのような多孔質の酸化亜鉛を用いた電極の性能が非常に高いことが報告されている(特許文献1)。
【0004】
その後、1991年にグレッツェル(スイス)らによって光電変換素子を用いた新しいタイプの光(太陽)電池が開発された。これは、グレッツェルセルとも呼ばれ、透明導電性基板上に色素によって増感され、一方の極になる酸化物半導体微粒子からなる薄膜基板と、それと対峙するようにプラチナ等の還元剤を配した対極からなる基板との間に電荷移動層(レドックス物質を含む電解液)を狭持したもので、ルテニウム錯体色素を多孔質酸化チタン電極に吸着させることにより、シリコン太陽電池に近い性能を有するまでになっている(非特許文献1)。しかし、このような色素増感型の太陽電池についてはその後、エネルギー変換効率の顕著な向上効果が得られていない。又、前記シリコン太陽電池は高価であり、その代替えとしても、色素増感型の太陽電池の更なる変換効率の向上等が必要とされている。
色素増感型の太陽電池の変換効率を左右する主要な因子としては、短絡電流、開放電圧、形状因子などが挙げられるが、これらのうち短絡電流や形状因子については、使用する増感色素の工夫による吸収波長領域の拡大、電池の内部抵抗の減少等による変換効率の向上の為のさまざまな改善が提案されている。しかしながら、開放電圧については、余り研究もされず、その改善が殆ど進んでいないと言っても過言ではない。唯一、特許文献2では、開放電圧の向上という目的で酸化ニオブを半導体電極に用いているが、単一金属の酸化物であるため、その効果は不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2664194号公報
【特許文献2】特許第2945955号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.115(1993)6382
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、色素増感型太陽電池に有用な金属酸化物微粒子並びにそれを用いた高い開放電圧の発現を可能にする太陽電池を提供することを主要な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)で修飾された多孔質のチタン系複合酸化物微粒子(以下修飾酸化チタン微粒子という)が前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
即ち本発明は、
(1)周期表IB族酸化物、IIA族酸化物、IIB族酸化物、IIIA族酸化物、IIIB族酸化物、チタン酸化物以外のIVA族酸化物、IVB族酸化物、VIA族酸化物、VIII族酸化物及びバナジウム酸化物からなる群から選ばれる一種類又は二種類以上の非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)と酸化チタンから成る修飾酸化チタン微粒子、
(2)非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)がマグネシウム酸化物、カルシウム酸化物、ストロンチウム酸化物、ジルコニウム酸化物、タンタル酸化物、クロム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、スカンジウム酸化物、バナジウム酸化物、鉄酸化物、ニッケル酸化物、タングステン酸化物、亜鉛酸化物、アルミニウム酸化物、インジウム酸化物、珪素酸化物及びスズ酸化物からなる群から選ばれる一種又は二種である(1)に記載の修飾酸化チタン微粒子、
(3)酸化チタンがアナタース型である(1)または(2)に記載の修飾酸化チタン微粒子、
(4)酸化チタンに対する酸化チタン以外の非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)の割合が、チタン/非チタン金属原子(珪素原子も含む)の原子比で、1/0.02〜0.5である(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の修飾酸化チタン微粒子、
(5)周期表IIA族金属、IIB族金属、IIIA族金属、IIIB族金属、チタン以外のIVA族金属、IVB族金属及びVA族金属からなる群から選ばれる一種類又は二種類以上の非チタン金属(珪素も含む)のアルコキサイドを有機溶媒中でチタンアルコキサイドと反応させることを特徴とする非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)と酸化チタンから成る修飾酸化チタン微粒子の製造方法、
(6)有機溶媒がアルコール溶媒であることを特徴とする(5)に記載の修飾酸化チタン微粒子の製造方法、
(7)アルコール溶媒が、1価アルコール又は多価アルコールであることを特徴とする(6)に記載の修飾酸化チタン微粒子の製造方法、
(8)多価アルコールが、1,4−ブタンジオール又はオクタノールであることを特徴とする(7)に記載の修飾酸化チタン微粒子の製造方法、
(9)色素によって増感された半導体含有層を有する導電性支持体と、対向電極を有する導電性支持体を所定の間隔で対向配置し、当該両支持体の間隙に電荷移動層を挟持してなる光電変換素子において、該半導体含有層が(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の修飾酸化チタン微粒子を含有することを特徴とする色素増感光電変換素子、
(10)修飾酸化チタン微粒子の一次粒子の平均粒子径が1〜1000nmの範囲である(9)記載の色素増感光電変換素子、
(11)色素がメチン系色素であることを特徴とする、(9)又は(10)記載の色素増感光電変換素子、
(12)色素がメチン系色素及び金属錯体系色素であることを特徴とする、(9)又は(10)記載の色素増感光電変換素子、
(13)色素によって増感された半導体含有層を有する導電性支持体と、対向電極を有する導電性支持体を所定の間隔で対向配置し、当該両支持体の間隙に電荷移動層を挟持してなる光電変換素子において、該半導体含有層が(5)乃至(8)のいずれか1項に記載の方法により得られた、ニオブ酸化物又はタンタル酸化物と酸化チタンから成る、修飾酸化チタン微粒子を含有することを特徴とする色素増感光電変換素子、
(14)色素がメチン系色素であることを特徴とする、(13)記載の色素増感光電変換素子、
(15)色素がメチン系色素及び金属錯体系色素であることを特徴とする、(13)記載の色素増感光電変換素子、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の修飾酸化チタン微粒子を用いた太陽電池は開放電圧が高い。従って、電卓など一定以上の電圧と最小限の電流だけで機能するような電気製品用の電源として有用である。また、電圧が高いので、電池の直列枚数を少なくすることができ、電気製品等の製作コストが低くなるというメリットがある。
また、本発明の修飾酸化チタン微粒子は光触媒能に優れているので、光を利用した酸化反応用の触媒としてあるいは半導体電極等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の色素増感型光電変換素子の一例の要部断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
まず本発明の修飾酸化チタン微粒子について説明する。
本発明の修飾酸化チタン微粒子は、チタン系複合酸化物微粒子とも言うことができるもので、酸化チタンに複合される非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)の種類、酸化チタンと複合される非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)との割合、更にはその複合方法にそれぞれ特徴を有するものである。
【0013】
修飾酸化チタン微粒子に複合される非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)の種類としては、周期表IB族酸化物、IIA族酸化物、IIB族酸化物、IIIA族酸化物、IIIB族酸化物、チタン酸化物以外のIVA族酸化物、IVB族酸化物、VIA族酸化物、VIII族酸化物及びバナジウム酸化物からなる群から選ばれる一種類又は二種類以上の非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)が用いられる。非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)の好ましいものとしては、例えばバナジウム酸化物、周期表IIA族酸化物であるマグネシウム酸化物、カルシウム酸化物、ストロンチウム酸化物、IIB族酸化物である亜鉛酸化物、IIIA族酸化物であるスカンジウム酸化物、IIIB族酸化物であるアルミニウム酸化物、インジウム酸化物、IVA族酸化物であるジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、IVB族酸化物である珪素酸化物、スズ酸化物、VIA族酸化物であるクロム酸化物、モリブデン酸化物、タングステンの酸化物、VIII族酸化物である鉄酸化物、ニッケル酸化物、IB族酸化物である銀酸化物、があげられ、特に、マグネシウム、ジルコニウム、珪素の酸化物が好ましく、これらは一種類あるいは2種類以上併用しても良い。また、金属酸化物としてタンタル酸化物やニオブ酸化物を使用しても良い。
【0014】
本発明の修飾酸化チタン微粒子において、酸化チタンに複合される酸化チタン以外の非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)の割合は、チタン/非チタン金属原子(珪素原子も含む)の原子比で、1/0.005〜20が好ましく、1/0.01〜3がより好ましく、1/0.02〜0.5がさらに好ましい。
【0015】
本発明の修飾酸化チタン微粒子を太陽電池用に使用する場合、修飾酸化チタン微粒子からなる半導体含有層(後記)は、増感色素等を吸着させる目的で高い表面積を有するものが好ましい。又本発明の修飾酸化チタン微粒子は、高い表面積を達成すべく、その1次粒子径が小さいことが好ましい。具体的には1〜3000nm、好ましくは5〜500nmが更に好ましい。修飾酸化チタン微粒子の1次粒子径は比表面積から計算が可能で、比表面積は通常0.5〜1500m2/g、好ましくは3〜300m2/gである。また、修飾酸化チタン微粒子の細孔容積は0.05〜0.8ml/gが好ましく、更に平均細孔径が1〜250nmの範囲にあることが好ましい。下記するような製造法で得られた修飾酸化チタン微粒子は通常前記のような物性を有する微粒子として得られるが、所望により、篩い分けることにより微粒子の物性を前記したような範囲に整えることも可能である。
【0016】
本発明の修飾酸化チタン微粒子の製造方法としては修飾酸化チタン微粒子の原料となる物質、チタンアルコキサイドとチタン以外の前記各非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)のアルコキサイドを溶媒中、反応容器内で反応させて得ることが出来る。尚、チタンアルコキサイド及びチタン以外の前記金属の、塩化物、硫化物、硝酸塩、酢酸塩等の任意塩からなる混合物を溶媒中、反応容器内で反応させることによっても得られるが、非チタン金属(珪素も含む)のアルコキサイドを用いる方法が好ましい。使用する溶媒としては、例えばアルコール、ヘキサン、トルエン等の有機溶媒、若しくはそれらの混合物を用いることが出来る。このような溶媒を使用することにより、結晶性の高い修飾酸化チタン微粒子が得られる。原料が金属アルコキサイドである場合は特に、1価アルコール又は多価アルコールであることが好ましく、より好ましくは沸点が80℃以上の多価アルコール、特に1,4−ブタンジオール、オクタノールが好ましい。また、水を添加しない有機溶媒が好ましい。ここで、「水を添加しない有機溶媒」とは自然状態のときの有機溶媒のことである。水分含量が10%以下、5%以下、3%以下の有機溶媒がこの順で好ましい。反応温度は概ね110℃以上400℃以下が好ましい。反応は窒素置換下で行なっても良い。また反応終了後、遠心分離等の操作により所望の微粒子を得ても良いし、反応終了後、反応温度付近に温度を保持したまま反応容器に取り付けられたバルブを開放して、内圧により、必要に応じて加熱下に、使用したアルコール類等の溶媒を気化した状態で除去する事により微粒子を得ることも出来る。
【0017】
本発明の修飾酸化チタン微粒子は光触媒能に優れているので、本多−藤嶋効果に代表される光酸化反応用の触媒や、その耐熱性を利用した触媒用担体等として使用が可能であるが、好ましい用途は色素増感光電変換素子における半導体含有層(半導体電極)としての用途である。即ち、本発明の修飾酸化チタン微粒子を用いた光電変換素子に使用することにより開放電圧の向上等において顕著な効果が発揮される。
【0018】
以下本発明の修飾酸化チタン微粒子の好ましい用途の一つである太陽電池に使用する方法について説明する。
本発明の修飾酸化チタン微粒子は酸化チタンとそれに複合される非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)の種類と割合、更には複合方法を工夫したものであり、このような修飾酸化チタン微粒子は、例えば、触媒活性の高い光触媒物質や特定の増感用色素で増感することにより、その光触媒能を増大することが出来る。即ち、少なくとも一方は透明な導電性ガラス等の導電性の支持体上に増感色素を吸着させた半導体含有層を有する導電性の支持体と、対向電極を有する導電性の支持体を所定の間隔で対向配置し、当該両支持体の間隙に電荷移動層を挟持してなる光電変換素子において、半導体含有層として本修飾酸化チタン微粒子を用いて形成し、該修飾酸化チタン微粒子に増感用色素を吸着させることにより、前記特徴を持つ光電変換素子及び太陽電池を得ることを可能にする。尚、本発明では、光電変換素子から発生した電流を取り出せるようにリード線を配し、閉回路としたものを太陽電池という。
【0019】
本発明において、導電性の支持体としては、例えばFTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ITO(インジウムドープ酸化スズ)に代表される導電性物質をガラス、プラスティック、ポリマーフィルム、チタン、タンタル、カ−ボンなどの安定な無機性又は有機性基板の表面に薄膜化させたものが用いられる。その導電性は通常1000Ω/cm2以下、好ましくは100Ω/cm2以下である。導電性の支持体の表面に、色素によって増感された半導体含有層を配置したものが半導体電極である。以下、導電性の支持体を単に導電性支持体ともいう。このような導電性支持体はそれ自体公知の方法により調製してもよいし、市場から入手することも出来る。
【0020】
半導体含有層を導電性支持体上に設ける方法としては、修飾酸化チタン微粒子のスラリー又はペーストを導電性支持体上に塗布又はコートした後、乾燥、硬化もしくは焼成する方法等が好ましく、その他酸化物半導体からなる薄膜を蒸着により直接基板上に作成する方法、基板を電極として電気的に析出させる方法等も採用出来る。修飾酸化チタン微粒子のスラリーを用いる方法等が酸化物半導体電極の性能上最も好ましい。スラリーは2次凝集していることのある酸化物半導体微粒子を分散剤を用いて分散媒中に平均1次粒子径が1〜3000nmになるように分散させたり、本発明におけるような、アルコール中でのアルコキサイドの加水分解反応(グリコサーマル法)にて酸化物半導体の前駆体であるアルコキサイド等を加水分解して得られた修飾酸化チタン微粒子の懸濁液から調製することが出来る。
【0021】
スラリーを得る上での分散媒としては修飾酸化チタン微粒子を分散させ得るものであれば何れでも良く、水、エタノール等のアルコール、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン等の炭化水素等の有機溶媒が用いられ、これらは混合して用いても良く、水を用いることはスラリーの粘度変化を少なくするという点で好ましい。
【0022】
スラリーには安定した一次微粒子を得る目的で分散安定剤等を加えることも可能である。用いうる分散安定剤の具体例にはポリエチレングリコール等の多価アルコール、またはこれらの多価アルコールとフェノール、オクチルアルコール等との縮合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリルアマイド、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩の、アクリルアマイドと(メタ)アクリル酸またはそのアルカリ金属塩との共重合体又は(A)アクリルアマイド及び/または(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩と(B)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、もしくはスチレン、エチレン、プロピレン等の疎水性モノマーとの共重合体で水溶性であるポリアクリル酸系誘導体、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、ナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、高分子量のリグニンスルホン酸塩、塩酸、硝酸、酢酸等の酸が挙げられるが、これらの分散安定剤に限定されるものではない。又、これら分散安定剤は単独使用だけでなく、2種以上を併用することも出来る。
【0023】
これらの内、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、またはフェノール、オクチルアルコール等との縮合物、分子内にカルボキシル基および/またはスルホン基および/またはアミド基を有するものが好ましく、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸リチウム等のポリ(メタ)アクリル酸およびその塩やカルボキシメチルセルロース、塩酸、硝酸、酢酸等の酸が好ましい。
【0024】
スラリー中の修飾酸化チタン微粒子の濃度は通常1〜90重量%、好ましくは5〜80重量%である。
【0025】
スラリーを塗布した導電性支持体の焼成温度は、おおむね使用されている基板の融点(又は軟化点)以下の温度で、通常100〜900℃、好ましくは100〜600℃である。また、焼成時間は特に限定はされないが、おおむね4時間以内が好ましい。焼成後の膜厚は1〜100μm程度が好ましく、3〜50μmがさらに好ましく、5〜30μmが特に好ましい。
【0026】
こうして得られた半導体含有層の表面平滑性を向上させる目的で2次処理を施してもよい(非特許文献1参照)。例えば修飾酸化チタン微粒子を調製するために用いた非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)の金属と同一の非チタン金属(珪素も含む)のアルコキサイド、塩化物、硝化物、硫化物、酢酸塩等の溶液に直接、半導体含有層を有する導電性支持体ごと浸漬して乾燥もしくは再焼成することにより、平滑性を向上することが出来る。金属アルコキサイドとしてはチタンエトキサイド、チタンイソプロポキサイド、チタンt−ブトキサイド、n−ジブチル−ジアセチルスズ等が挙げられ、そのアルコール溶液が用いられる。塩化物の場合には例えば四塩化チタン、四塩化スズ、塩化亜鉛等が挙げられ、その水溶液等が適宜用いられる
【0027】
本発明の修飾酸化チタン微粒子に増感用の色素が吸着(担持)することにより、効率よく、光エネルギーを吸収して電気エネルギーに変換することができる。増感用の色素としては金属錯体色素、非金属有機色素等が用いられ、修飾酸化チタン微粒子と相まって光吸収を増感させるものであれば特に限定はなく、1種類の色素でも良いし、数種類の色素を混合して用いても良い。又、混合する場合は有機色素同士でも良いし、有機色素と金属錯体色素を混合しても良い。特に吸収波長の異なる色素同士を混合することにより、幅広い吸収波長を利用することが出来、変換効率の高い色素増感光電変換素子、太陽電池が得られる。用い得る金属錯体色素としては、例えばルテニウム錯体、フタロシアニン、ポルフィリンなどが挙げられ、同じく有機色素としては非金属のフタロシアニン、ポルフィリンやシアニン、メロシアニン、オキソノール、トリフェニルメタン系、アクリル酸系色素、などのメチン系色素や、キサンテン系、アゾ系、アンスラキノン系、ペリレン系等の色素が挙げられる。好ましくはルテニウム錯体やメロシアニン、上記アクリル酸系等のメチン系色素等が挙げられる。好ましいものとしては、国際公開特許WO2002011213号公報、国際公開特許WO2002071530号公報、特開2002−334729号公報、特開2003−007358号公報、特開2003-017146号公報、特開2003-059547号公報、特開2003-086257号公報、特開2003-115333号公報、特開2003-132965号公報、特開2003-142172号公報、特開2003-151649号公報、特開2003-157915号公報、特開2003-282165号公報、特開2004-014175号公報、特開2004-022222号公報、特願2004-320699号公報、特願2005-111696号公報、特願2005-151422号公報、特願2005-173429号公報、特願2005-177087号公報、等に記載の化合物等が挙げられ、これらの中でも特に好ましいものとしては、例えば下記の一般式(1)で表される色素が挙げられる。なお、一般式(1)中の各置換基を表1に示す。
【0028】
【化1】

【0029】
【表1】

【0030】
その他の具体例としては以下の色素などが挙げられる。
【0031】
【化2】

【0032】
色素を混合して用いる場合の各色素の比率は特に限定は無く、それぞれの色素より最適条件が選択されるが、一般的に等モルずつの混合から、1つの色素につき、10%モル程度以上使用するのが好ましい。2種以上の色素を溶解もしくは分散した溶液を用いて、半導体含有層に色素を吸着する場合、溶液中の色素合計の濃度は1種類のみ担持する場合と同様でよい。色素を混合して使用する場合の溶媒としては下記するような溶媒が使用可能であり、使用する各色素用の溶媒は同一でも異なっていてもよい。
【0033】
色素を担持させる方法としては、前記各色素を下記するような溶媒に溶解して得た溶液、又は溶解性の低い色素にあっては色素を分散せしめて得た分散液に上記修飾酸化チタン微粒子又は修飾酸化チタン微粒子からなる半導体含有層の設けられた導電性支持体を浸漬する方法が挙げられる。色素溶液中に導電性支持体上に作成した半導体含有層を浸す方法が好ましい。浸漬温度はおおむね常温から溶媒の沸点迄であり、また浸漬時間は1時間から48時間程度である。色素を溶解させるのに使用しうる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、t−ブタノール等が挙げられる。溶液の色素濃度は通常1×10-6M〜1Mが良く、好ましくは1×10-5M〜1×10-1Mである。光電変換素子の場合、この様にして色素で増感した半導体含有層を配置した導電性支持体が半導体電極として機能する。
【0034】
半導体含有層に色素を担持する際、色素同士の会合を防ぐために包接化合物の共存下、色素を担持することが効果的である。ここで包接化合物としてはコール酸等のステロイド系化合物、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレン、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられるが、好ましいものとしてはコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸メチルエステル、コール酸ナトリウム等のコール酸類、ポリエチレンオキサイド等である。又、色素を担持させた後、4ーt−ブチルピリジン等のアミン化合物で半導体電極表面を処理しても良い。処理の方法は例えばアミンのエタノール溶液に色素を担持した半導体含有層の設けられた基板を浸す方法等が採られる。
【0035】
本発明の光電変換素子は、上記半導体含有層に増感色素を担持させて得られた半導体電極、これと対峙するように設けられる対極及び両極間に設けられる電荷移動層を主要な要素として構成される。
電荷移動層としては酸化還元系電解質、正孔輸送材料等を溶媒や常温溶融塩(イオン性液体)中に溶解させた溶液が用いられる。
用いうる酸化還元系電解質としては、例えばハロゲン分子とハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物とからなるハロゲン酸化還元系電解質、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン、コバルト錯体などの金属錯体等の金属酸化還元系電解質、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等の有機酸化還元系電解質などをあげることができるが、ハロゲン酸化還元系電解質が好ましい。ハロゲン分子−ハロゲン化合物からなるハロゲン酸化還元系電解質におけるハロゲン分子としては、例えばヨウ素分子や臭素分子等があげられ、ヨウ素分子が好ましい。又、ハロゲンイオンを対イオンとするハロゲン化合物としては、例えばLiI、NaI、KI、CsI、CaI2、CuI等のハロゲン化金属塩あるいはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド、1−メチル−3−アルキルイミダゾリウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイドなどのハロゲンの有機4級アンモニウム塩等があげられるが、ヨウ素イオンを対イオンとする塩類が好ましい。ヨウ素イオンを対イオンとする塩類としては、例えばヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化トリメチルアンモニウム塩等があげられる。
【0036】
又、電荷移動層が溶液の形で構成されている場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられる。例えばアセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジメトキシエタン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、1、2−ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、1、3−ジオキソラン、メチルフォルメート、2ーメチルテトラヒドロフラン、3−メトキシ−オキサジリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン、スルフォラン、テトラヒドロフラン、水等が好ましい例として挙げられ、これらの中でも、特に、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、3−メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、エチレングリコール、3−メトキシオキサジリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン等が特に好ましい。これらは単独もしくは2種以上組み合わせて用いても良い。酸化還元系電解質の濃度は通常0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜90重量%である。
【0037】
又、電荷移動層を調製するに当たり、常温溶融液(イオン性液体)を酸化還元系電解質の溶媒として用いる方法も採用出来る。用いうる常温溶融液としては、例えば1−メチル−3−アルキルイミダゾリウムヨーダイド、ビニルイミダゾリウムテトラフルオライド、1−エチルイミダゾ−ルスルフォネート、アルキルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルアミド、1−メチルピロリジニウムアイオヨーダイド、1−メチル−3−アルキルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド等が挙げられる。また、光電変換素子の耐久性向上の目的で電荷移動層に低分子ゲル化剤を溶解させて増粘させたり、反応性成分を併用して電荷移動層注入後に反応させてゲル電解質とすることもできる。
一方、本発明の光電変換素子においては、固体型として、酸化還元系電解質の代わりに正孔輸送材料やP型半導体を用いることもできる。用いうる正孔輸送材料としては、例えばアミン誘導体やポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子やディスコティック液晶などが挙げられ、また、P型半導体としては、例えばCuI、CuSCN等が挙げられる。
【0038】
本発明の光電変換素子における対向電極としては、前記FTO導電性ガラス等の導電性支持体の表面に、酸化還元系電解質が担う還元反応に触媒的に作用する白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等を蒸着したり、導電性微粒子前駆体を塗布、焼成したもの等それ自体公知のものが用いられる。塗布、焼成した後の白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等の膜厚は10〜500Åが好ましい。
【0039】
本発明の色素増感素子は、導電性支持体表面に色素で増感させた半導体含有層を配した半導体電極に対向電極を所定の間隔に対向配置し、周囲をシール剤でシールし、その間隙に前記電荷移動層を封入したものである。その製法としては、例えば、一方の導電性支持体の周囲にシール部分を考慮して、色素で増感された半導体含有層を配し半導体電極とする。次ぎに、例えば紫外線硬化型の光電変換素子用のシール剤に、グラスファイバー等のスペーサーを添加後、この半導体電極の周囲に電荷移動層の注入口を残してスクリーン印刷もしくはディスペンサーによりシール剤を塗布した後、例えば100℃10分間の加熱で溶剤を蒸発させ、ついでもう一方の導電性支持体の上に白金等を配したものをそれらの導電面が対面するように重ね合わせ、プレスにてギャップ出しを行い、高圧水銀灯にてUV光を、例えば、3000mJ/cm2照射して硬化させる。必要により、例えば120℃で10分間、後硬化させることもできる。
【0040】
両導電性支持体間の間隙に電荷移動層を注入した後、その電荷移動層注入口を封止剤で封止して光電変換素子を得ることができる。尚、前記において、シ−ル剤としては、エポキシ樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、架橋剤、重合開始剤等を主要な成分として調製される。又は封止剤はポリイソブチレン系樹脂を主要な成分として調製される。これらはそれぞれ市販品をそのまま使用することも出来る。このようにして得られた本発明の光電変換素子は接着性、耐湿熱性等の耐久性に優れたもので、その正極と負極にリード線を配し、その間に抵抗成分を挿入する事により色素増感型太陽電池を得ることが出来る。
【0041】
図1(第1図)は本発明による修飾酸化チタン微粒子から調製された光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池の構造を説明する要部断面模式図であって、1は導電性物質、2は色素によって増感された半導体含有層をそれぞれ示す。1と2を併せて半導体電極という。又、3は基板の内側の導電面の上に白金等を配した対向電極、4は対向する導電性支持体に挟まれるように配されている電荷移動層、5はシール剤、6は基板をそれぞれ示す。1と6を併せて導電性支持体という。
【実施例】
【0042】
以下に実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
【0043】
実施例1
チタンアルコキシドとしてチタンイソプロポキシド7.32gと、ジルコニアアルコキシドとしてジルコニアイソプロポキサイド24.23gを用い、それらの混合物(Ti/Zr原子比=1/3)を溶媒としての1,4−ブタンジオール130ml中に懸濁して、容量300mlのオートクレーブ内に入れて密封した。オートクレーブ中を窒素にて置換後、300℃に昇温して2時間の加熱処理を行った。反応終了後、300℃に保ったままオートクレーブのバルブを開き、溶媒を除去することで、反応生成物をキセロゲルとして回収し、修飾酸化チタン微粒子11.4gを得た。
【0044】
実施例2
チタンアルコキシドとしてチタンイソプロポキシド25gと、ジルコニアアルコキシドとしてジルコニアイソプロポキサイド18.2gを用い、それらの混合物(Ti/Zr原子比=1/0.3)を溶媒としての1,4−ブタンジオール130ml中に懸濁して、容量300mlのオートクレーブ内に入れて密封した。オートクレーブ中を窒素にて置換後、300℃に昇温して2時間の加熱処理を行った。反応終了後、自然冷却して、修飾酸化チタン微粒子13.7gを含む懸濁液150mlを得た。
【0045】
実施例3
チタンアルコキシドとしてチタンイソプロポキシド25gと、ジルコニアアルコキシドとしてジアルコニアイソプロポキサイド25gを用い、それらの混合物(Ti/Zr原子比=1/1)を溶媒としての1,4−ブタンジオール260ml中に懸濁して、容量300mlのオートクレーブ内に入れて密封した。オートクレーブ中を窒素にて置換後、300℃に昇温して2時間の加熱処理を行った。反応終了後、自然冷却して、修飾酸化チタン微粒子16.3gを含む懸濁液300mlを得た。
【0046】
実施例4
チタンイソプロポキシドとオルトケイ酸テトラエチルを表2に示されるような原子比で使用し、実施例2と同様にして、修飾酸化チタン微粒子11.1gを含む懸濁液150mlを得た。
【0047】
実施例5
チタンイソプロポキシドとオルトケイ酸テトラエチルを表2に示されるような原子比で使用し、実施例2と同様にして、修飾酸化チタン微粒子11.1gを含む懸濁液150mlを得た。
【0048】
実施例6
チタンイソプロポキシドとアルミニウムテトライソプロポキサイドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例2と同様にして、修飾酸化チタン微粒子11.0gを含む懸濁液150mlを得た。
【0049】
実施例7
チタンイソプロポキシド、オルトケイ酸エチル及びジルコニアイソプロポキサイドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例2と同様にして、修飾酸化チタン微粒子14.2gを含む懸濁液150mlを得た。
【0050】
実施例8
チタンアルコキシドとしてチタンイソプロポキシド25gと、ジルコニアアルコキシドとしてジルコニアイソプロポキサイド1.82gを用い、それらの混合物(Ti/Zr原子比=1/0.03)を溶媒としての1,4−ブタンジオール130ml中に懸濁して、容量300mlのオートクレーブ内に入れて密封した。オートクレーブ中を窒素にて置換後、300℃に昇温して2時間の加熱処理を行なった。反応終了後、自然冷却して、修飾酸化チタン微粒子7.5gを含む懸濁液150mlを得た。
【0051】
実施例9
チタンイソプロポキシドとジルコニアイソプロポキサイドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子8.5gを含む懸濁液150mlを得た。
【0052】
実施例10
チタンイソプロポキシドとジルコニアイソプロポキサイドを表2に示されるような原子比で使用し、それらの混合物を溶媒としてのトルエン130ml中に懸濁して、その他の条件は実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子13.1gを含む懸濁液150mlを得た。
【0053】
実施例11
チタンイソプロポキシドとオルトケイ酸テトラエチルを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子8.1gを含む懸濁液150mlを得た。
【0054】
実施例12
チタンイソプロポキシドとオルトケイ酸テトラエチルを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子8.1gを含む懸濁液150mlを得た。
【0055】
実施例13
チタンイソプロポキシドとオルトケイ酸テトラエチルを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子10.3gを含む懸濁液150mlを得た。
【0056】
実施例14
チタンイソプロポキシドとオルトケイ酸テトラエチルを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子17.1gを含む懸濁液150mlを得た。
【0057】
実施例15
チタンイソプロポキシドとアルミニウムテトライソプロポキサイドを表2に示されるような原子比で使用し、それらの混合物を溶媒としてのヘキサン130ml中に懸濁して、その他の条件は実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子8.2gを含む懸濁液150mlを得た。
【0058】
実施例16
チタンイソプロポキシドとアルミニウムテトライソプロポキサイドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子10.5gを含む懸濁液150mlを得た。
【0059】
実施例17
チタンイソプロポキシドとアルミニウムテトライソプロポキサイドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子17.5gを含む懸濁液150mlを得た。
【0060】
実施例18
チタンイソプロポキシド、オルトケイ酸テトラエチル及びジルコニアイソプロポキサイドを表2に示されるような原子比で使用し、それらの混合物を溶媒としてのn−オクタノール130ml中に懸濁して、その他の条件は実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子14.2gを含む懸濁液150mlを得た。
【0061】
実施例19
チタンイソプロポキシド、オルトケイ酸テトラエチル及びジルコニアイソプロポキサイドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子16.5gを含む懸濁液150mlを得た。
【0062】
実施例20
チタンイソプロポキシドとニオブブトキシドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子7.6gを含む懸濁液150mlを得た。
【0063】
実施例21
チタンイソプロポキシドとニオブブトキシドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子8.8gを含む懸濁液150mlを得た。
【0064】
実施例22
チタンイソプロポキシドとニオブブトキシドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子14.6gを含む懸濁液150mlを得た。
【0065】
実施例23
チタンイソプロポキシドと酢酸マグネシウム四水和物を表2に示されるような原子比で使用し、それらの混合物を溶媒としてのn−オクタノール130ml中に懸濁して、その他の条件は実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子7.7gを含む懸濁液150mlを得た。
【0066】
実施例24
チタンイソプロポキシドと酢酸マグネシウム四水和物を表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子9.3gを含む懸濁液150mlを得た。
【0067】
実施例25
チタンイソプロポキシドと酢酸マグネシウム四水和物を表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子15.7gを含む懸濁液150mlを得た。
【0068】
実施例26
チタンイソプロポキシドとストロンチウムイソプロポキシドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子9.6gを含む懸濁液150mlを得た。
【0069】
実施例27
チタンイソプロポキシドとインジウムイソプロポキシドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子9.8gを含む懸濁液150mlを得た。
【0070】
実施例28
チタンイソプロポキシドとタングステンイソプロポキシドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子9.5gを含む懸濁液150mlを得た。
【0071】
実施例29
チタンイソプロポキシドと亜鉛イソプロポキシドを表2に示されるような原子比で使用し、実施例8と同様にして、修飾酸化チタン微粒子9.6gを含む懸濁液150mlを得た。
【0072】
比較例1
チタンイソプロポキシドを使用し、実施例8と同様にして酸化チタン微粒子7.0gを含む懸濁液150mlを得た。
【0073】
試験例1
上記各実施例1〜29で得られた本発明の各修飾酸化チタン微粒子について、比表面積を測定し、次の式より粒子径(r)を求め、表2にまとめた。
式:比表面積=(2x4πr)/(rx真比重)
なお、真比重は酸化チタン(アナタース)の真比重値4.15を用いて求めた。
また、比表面積の測定は、前記でえられた各懸濁液を乾燥し、450℃で30分焼成した後、ゼミニ2735(商品名 自動比表面積測定装置(株)島津製作所製)を用いて行った。
【0074】
【表2】

【0075】
実施例30〜70
光電変換素子の例(第1図)に示すように、色素増感型太陽電池の導電性支持体である導電性ガラス支持体(ガラス=基板6)の導電性物質FTO(1)上に実施例1〜7で得られた各修飾酸化チタン微粒子をターピネオールでペースト状にしたものを塗布して、450℃、30分焼成した後、下記の色素(1)、色素(2)、色素(3)の何れかの若しくは2種類の色素を混合した3×10-4Mエタノール溶液に24時間浸漬して色素で増感された半導体電極(2)を作成した。
【0076】
【化3】

【0077】
次に、同じく導電性ガラス支持体の導電性物質FTO上にPtを200Å蒸着させて対向電極(3)を作成した。これらをシ−ル剤(5)で貼り合わせ、両極間の電荷移動層(4)の注入口(図示せず)からヨウ素系の電荷移動層4a(ヨウ素/ヨウ化リチウム/メチルヘキシルイミダゾリウムアイオダイド(四国化成工業製)/t−ブチルピリジンをそれぞれ0.1M/0.1M/0.6M/1Mとなるように3−メトキシプロキオニトリル中で調整)をセル内に充填した後、注入口から紫外線硬化型の封止剤で封止して紫外線を照射することにより硬化させてそれぞれ本発明の光電変換素子を得た。
【0078】
下記表3には、各実施例において使用した修飾酸化チタン微粒子、色素、修飾酸化チタン微粒子層の焼成後の膜厚、使用した電荷移動層をそれぞれ示した。尚、表3において電荷移動層4bはヨウ素/ヨウ化テトラ−n−プロピルアンモニウムをそれぞれ0.05M/0.5Mとなるようにエチレンカーボネート/アセトニトリル(6/4)で調製した。
【0079】
実験例:本発明の光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池の性能試験
実施例30〜70で得られた各光電変換素子について、測定すべき光電変換素子の実行部分を0.5×0.5cm2とした。光源は1kWキセノンランプ(ワコム電創(株)(株)製)を用いて、AM(エアマス)1.5フィルターを通して100mW/cm2とし色素増感型太陽電池を得た。各太陽電池をソーラシュミレータ((株)渡辺商行製)に接続し、開放電圧(V)を測定した。
開放電圧(V)の測定結果を表3に纏めた。
【0080】
【表3】

【0081】
表3から明らかなように、本発明の光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池は、開放電圧が0.71以上という高い電圧を発生するものである。特に、ジルコニウムやアルミニウムで修飾した修飾酸化チタン微粒子を使用したものは、開放電圧が1以上というより高い電圧を発生する。このように、本発明の光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池は、開放電圧が大きいので、電卓、携帯電話など一定以上の電圧と最小限の電流だけで機能するような小型の電気製品等に組み込んだ場合、電池の直列枚数が少なくてすみ、電気製品等の製作コストが低くなる。
【符号の説明】
【0082】
1は導電性物質を、2は半導体金属層を、3は対向電極を、4は電荷移動層を、5はシール剤、6は基板(ガラス支持体)をそれぞれ示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期表IB族酸化物、IIA族酸化物、IIB族酸化物、IIIA族酸化物、IIIB族酸化物、チタン酸化物以外のIVA族酸化物、IVB族酸化物、VIA族酸化物、VIII族酸化物及びバナジウム酸化物からなる群から選ばれる一種類又は二種類以上の非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)と酸化チタンから成る修飾酸化チタン微粒子。
【請求項2】
非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)がマグネシウム酸化物、カルシウム酸化物、ストロンチウム酸化物、ジルコニウム酸化物、タンタル酸化物、クロム酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、スカンジウム酸化物、バナジウム酸化物、鉄酸化物、ニッケル酸化物、タングステン酸化物、亜鉛酸化物、アルミニウム酸化物、インジウム酸化物、珪素酸化物及びスズ酸化物からなる群から選ばれる一種又は二種である請求項1に記載の修飾酸化チタン微粒子。
【請求項3】
酸化チタンがアナタース型である請求項1または2に記載の修飾酸化チタン微粒子。
【請求項4】
酸化チタンに対する酸化チタン以外の非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)の割合が、チタン/非チタン金属原子(珪素原子も含む)の原子比で、1/0.02〜0.5である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の修飾酸化チタン微粒子。
【請求項5】
周期表IIA族金属、IIB族金属、IIIA族金属、IIIB族金属、チタン以外のIVA族金属、IVB族金属及びVA族金属からなる群から選ばれる一種類又は二種類以上の非チタン金属(珪素も含む)のアルコキサイドを有機溶媒中でチタンアルコキサイドと反応させることを特徴とする非チタン金属酸化物(珪素酸化物も含む)と酸化チタンから成る修飾酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項6】
有機溶媒がアルコール溶媒であることを特徴とする請求項5に記載の修飾酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項7】
アルコール溶媒が、1価アルコール又は多価アルコールであることを特徴とする請求項6に記載の修飾酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項8】
多価アルコールが、1,4−ブタンジオールであることを特徴とする請求項7に記載の修飾酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項9】
色素によって増感された半導体含有層を有する導電性支持体と、対向電極を有する導電性支持体を所定の間隔で対向配置し、当該両支持体の間隙に電荷移動層を挟持してなる光電変換素子において、該半導体含有層が請求項1乃至4のいずれか1項に記載の修飾酸化チタン微粒子を含有することを特徴とする色素増感光電変換素子。
【請求項10】
修飾酸化チタン微粒子の一次粒子の平均粒子径が1〜1000nmの範囲である請求項9記載の色素増感光電変換素子。
【請求項11】
色素がメチン系色素であることを特徴とする、請求項9又は10記載の色素増感光電変換素子。
【請求項12】
色素がメチン系色素及び金属錯体系色素であることを特徴とする、請求項9又は10記載の色素増感光電変換素子。
【請求項13】
色素によって増感された半導体含有層を有する導電性支持体と、対向電極を有する導電性支持体を所定の間隔で対向配置し、当該両支持体の間隙に電荷移動層を挟持してなる光電変換素子において、該半導体含有層が請求項5乃至8のいずれか1項に記載の方法により得られたニオブ酸化物又はタンタル酸化物と酸化チタンから成る修飾酸化チタン微粒子を含有することを特徴とする色素増感光電変換素子。
【請求項14】
色素がメチン系色素であることを特徴とする、請求項13記載の色素増感光電変換素子。
【請求項15】
色素がメチン系色素及び金属錯体系色素であることを特徴とする、請求項13記載の色素増感光電変換素子。

【図1】
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【公開番号】特開2012−67009(P2012−67009A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266448(P2011−266448)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【分割の表示】特願2007−500563(P2007−500563)の分割
【原出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】