説明

個人特定情報取得方法および個人特定情報取得システム

【課題】マウスの移動軌跡を正確に個人特定情報として利用可能となる個人特定情報取得方法および個人特定情報取得システムを提供する。
【解決手段】 マウス35の移動に基づいて入力されるマウス移動信号によるマウスの移動軌跡を、所定の点を原点Oとして、原点からの距離rと、原点からの距離rが描く線分と原点Oを通る所定の座標軸Xとの角度θとに基づく極座標の時間変化として算出し、極座標の時間変化をユーザごとに個人を特定する情報として記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザごとに異なるマウス操作の移動軌跡に基づく個人特定情報を取得する取得方法および取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
銀行のATMや、特定人しか出入りできない出入口のロック機構などでは、特定人であることを認証するためにパスワードを入力することが一般的である。
しかし、パスワードを生年月日等で安易に設定してしまうとパスワードを簡単に解読されるおそれもある。
【0003】
そこで、個人認証を行うために、指紋や虹彩を検出してユーザを特定しようとする技術も開発されている。しかし、指紋や虹彩を検出するには専用装置が必要となり、導入するにはコスト高となってしまうため、指紋や虹彩によって個人認証を行うシステムはあまり普及が進んでいないという側面がある。
【0004】
そこで、マウスの操作には個人差があることを見出し、これに基づいて個人認証を行うことが既に提案されている(非特許文献1、非特許文献2参照)。
非特許文献1では、サインは頻繁に書かれ、その人特有の身体的特徴と同様であり、他人が模倣することは難しいので、マウスで書いたサインにおける加速度ベクトルを解析することで個人認証を行う提案がなされている。
【0005】
非特許文献2では、マウスの移動方向のパターンが、個人を識別するための特徴として利用できることを実験に基づいて確認し、これに基づいてモニタ上でのマウス操作の始点と終点の位置の組み合わせを抽出することで個人認証を行い得る内容が開示されている。
【0006】
また、マウスの移動軌跡パターンをX座標とY座標で表して本人の認証を行うシステムも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【非特許文献1】A.F.Syukri 岡本栄司、「マウスで書いたサインによる個人識別システムに関する研究」、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科情報システム学専攻修士論文、1998年
【非特許文献2】泉正夫 長尾若 宮本貴朗 福永邦雄、「マウス操作の特徴を用いた個人識別システム」、電子情報通信学会論文誌B、vol.J87-B、NO.2、p305-308、2004年2月
【特許文献1】特開2002−32142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1における提案では、個人のサインに基づいてマウスの移動軌跡を検出することを前提としている。しかし、そもそも日本ではサインを書く機会は非常に少なく、特有の身体的特徴と同様の特徴とは言い難い。さらに、コンピュータの利用中にマウスでサインを書く機会は少なく、ユーザにわざわざサインを書かせて個人認証を行うのでは、ユーザの利便性に欠くという課題がある。
【0009】
非特許文献2における提案では、モニタ上におけるマウスの始点の位置と終点の位置の組み合わせを抽出するようにしているが、マウス操作の始点位置と終点位置は、主としてウインドウの大きさや使用しているアプリケーションによって変わり、個人の特徴にはあまり依存しないのではないかという考えもあり、真に個人認証が行えるかどうか疑念の余地があるという課題がある。
【0010】
なお、人間の腕の動作は、上腕・下腕・手先が複数の関節によって連結されたものである以上、マウスを動かす手先の動作は、胴体を基準として見ると極座標系によって表現することが最も正確であると考えられる。
そこで、特許文献1のように、マウスの移動軌跡のパターンをX座標とY座標で取得したとしても、正確な情報が取得できないおそれがあるという課題もある。
【0011】
また、本発明者は、マウスの移動軌跡は個人を特定するための重要な情報であるとし、この情報(個人特定情報)を個人認証に用いるだけでなく、腕の動作がそのまま移動軌跡として現れる以上、マウスの移動軌跡に基づいてそのときの健康状態等を把握できるのではないかと考えた。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、マウスの移動軌跡を正確に個人特定情報として利用可能となる個人特定情報取得方法および個人特定情報取得システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる個人特定情報取得方法によれば、マウスの移動に基づいて入力されるマウス移動信号によるマウスの移動軌跡を、所定の点を原点として、原点からの距離と、原点からの距離が描く線分と原点を通る所定の座標軸との角度とに基づく極座標の時間変化として算出し、極座標の時間変化をユーザごとに個人を特定する情報として記憶することを特徴としている。
この方法によれば、所定の原点からの距離の時間変化と、原点を通る座標軸との角度の時間変化に基づいてマウスの移動軌跡を表すので、人間の腕の動作に基づくマウスの移動軌跡を正確に表現することができ、マウスの移動軌跡に個人ごとに差があることを明確にできる。このため正確な個人特定情報を取得可能である。
【0014】
また、前記移動軌跡は、マウスがクリックされたことに基づいて入力されるクリック信号と、次に入力されるクリック信号との間において取得することを特徴としてもよい。
これによれば、通常意味無くマウスを動かしているときの移動軌跡を個人特定情報として扱わず、マウスをクリックしてからの動作を意味のあるマウスの移動軌跡として個人特定情報として取り扱うことができ、より正確な個人特定情報の取得ができる。
【0015】
本発明にかかる個人特定情報取得システムによれば、マウスと、マウスを操作した際にマウス操作に連動して移動するカーソルが表示されるモニタと、マウスを使用しているユーザのユーザ名を記憶するユーザ名記憶手段と、マウスから入力されるマウス移動信号を受信し、マウス移動信号によるマウスの移動軌跡を、所定の点を原点として、原点からの距離と、原点からの距離が描く線分と原点を通る所定の座標軸との角度とに基づく極座標の時間変化として算出する極座標算出手段と、極座標の時間変化のデータテーブルが、ユーザ名記憶手段に記憶されているユーザ名ごとに複数記憶されるデータテーブル記憶手段とを具備することを特徴としている。
この構成を採用することにより、ユーザごとに個人特定情報としてのマウスの移動軌跡を極座標の時間変化として算出したものを蓄積させることができ、正確な個人特定情報を取得することができる。
【0016】
また、前記極座標算出手段は、マウスがクリックされたことに基づいて入力されるクリック信号と、次に入力されるクリック信号との間において、マウスの移動軌跡の極座標の時間変化を算出する取得することを特徴とすることにより、ユーザが無意味に移動させたマウスの移動軌跡を取得せず、意味のある移動軌跡のみ個人特定情報として取得するので、より正確な個人特定情報の取得が可能である。
【0017】
さらに、前記極座標の時間変化を、前記データテーブル記憶手段に記憶されている同じユーザ名の過去のデータテーブルの内容と比較する比較手段を具備することを特徴としてもよい。
この構成によれば、現在マウスを操作しているユーザの状態が、過去に蓄積された情報に基づいていつもと違う状態であること(例えば病気であったりする場合)を検出することができる。また、過去に蓄積された情報から、現在マウス操作中のユーザが、全く違う人物であるということも考えられる。このような場合には、本人かそうでないかを容易に検出することができ、セキュリティ分野に役立てることができる。
【0018】
なお、前記比較手段による比較の結果、マウスの移動軌跡の極座標の時間変化が過去のデータテーブルの内容と異なることが判明した場合には、移動軌跡が異常であることを現在マウス操作中のユーザに通知する通知手段を具備することを特徴としてもよい。
この構成によれば、ユーザの状態(身体的な状態が)が異常であることを通知する場合には、ユーザの健康管理に寄与することができ、またセキュリティ分野に用いる場合には、偽ったユーザ名を使用している者に対する警告等を発するなど何らかの対処を行うようにすることができる。
【0019】
また、前記比較手段による比較の結果、マウスの移動軌跡の極座標の時間変化が過去のデータテーブルの内容と異なることが判明した場合には、移動軌跡が異常であることをシステム管理者に通知する異常アクセス通知手段を具備することを特徴としてもよい。
この構成によれば、ネットワークセキュリティにおいて、システム管理者側でアクセス制限などの対処を行うようにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる個人特定情報取得方法および個人特定情報取得システムによれば、マウスの移動軌跡に基づく個人特定情報をより正確に取得できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、本発明にかかる個人特定情報取得方法の原理について説明する。
図1にマウスの移動軌跡を示す。ここで、始点と終点は、ユーザがマウスをクリックした位置であるとする。つまり、本実施形態では、ユーザがマウスをクリックした位置を始点とし、ユーザが次にマウスをクリックした位置を終点としてその間の移動軌跡10を、個人を特定する情報として取得するものである。
【0022】
マウスの移動軌跡10は、通常のコンピュータでは、X−Y座標系によって処理されるが、本実施形態では、移動軌跡10の所定の原点Oに対する距離rと、原点Oを通る座標軸Xに対する角度θによって表される極座標に基づいて各位置を算出する。そして、所定の原点Oに対する距離rの時間変化と、原点Oを通る座標軸Xに対する角度θの時間変化とで、移動軌跡10が表現できる。
【0023】
図2に、距離rの時間変化と角度θの時間変化を表すグラフを示す。
マウスの移動軌跡は、極座標で算出された各位置に基づいて、距離rの時間tに関する関数と、角度θの時間tに関する関数によって表すことができる。ここでは、横軸に時間tをとり、縦軸に距離rと角度θをとっている。
この2つの関数を、数式で表す事ができれば、その数式をパターンとして蓄積して記憶していくことができる。
【0024】
図3に、数式のパターンを記憶したデータベースの説明図を示す。
なお、2つの関数は、rのtに関する2次関数r=at+bt+c、θのtに関する2次関数θ=it+jt+kで表せる場合を例として示している。
この2つの関数のパラメータa、b、c、およびi、j、kをそれぞれデータベースとして記憶する。これらのパラメータを記憶する際には、マウスをクリックしたクリック位置、データを取得した時刻もパラメータと関連づけして記憶する。
データべースは、ユーザ毎に設けるようにする。このようにすることで、各ユーザのマウスの移動軌跡のパターンを蓄積させ、様々な利用に供することができる。
【0025】
次に、個人特定情報取得システムの内容について、図4に基づいて説明する。
本実施形態における個人特定情報取得システム30は、制御部32と、制御部32に接続された記憶装置34と、マウス35と、キーボード36とを備えている。また、制御部32には、キーボード36から入力された文字や、マウス35によって移動するカーソルを表示させるためのモニタ38が接続されている。
ユーザがマウス35を操作すると、マウス35の移動に基づくマウス移動信号や、マウス35のボタンをクリックすることによるクリック信号が制御部32に入力される。
【0026】
制御部32は、マウス35が移動してマウス移動信号が入力されてきた場合に、マウス移動信号を解析し、モニタ上でカーソルが移動する方向、速度および距離を算出し、モニタに対して算出されたカーソルの移動方向、速度および距離を出力してカーソルを制御する制御信号を出力するカーソル制御手段42が設けられている。
例えば、マウス移動信号は、マウスのX軸方向への移動と、Y軸方向への移動とがそれぞれパルス信号で表されており、カーソル制御手段42は各パルス信号のパルス数の比、パルス周期などによって、カーソルの移動方向、速度および距離を算出する。
【0027】
また制御部32には、マウス移動信号に基づいてマウスの移動軌跡を、極座標の時間変化として算出する極座標算出手段44が設けられている。
極座標算出手段44は、図1および図2に示したように、マウス移動信号に基づく移動軌跡について、所定の位置を原点として、移動軌跡の各点における原点からの距離rと、移動軌跡の各点における原点を通る座標軸(例えばX軸)と距離rが描く線分との角度θを算出し、距離rの時間変化を第1の関数として、角度θの時間変化を第2の関数として算出する。
【0028】
制御部32は、算出した距離rの時間tに関する第1の関数のパラメータと、角度θの時間tに関する第2の関数のパラメータを、個人を特定する情報として、ユーザごとに、データテーブル39として記憶装置34に記憶するように動作する。
データテーブル39は、2つの関数のパラメータの他に、これらパラメータを取得した時刻と、マウスの移動軌跡の始点と終点(すなわち、ユーザがマウスをクリックした位置)もユーザごとに記憶している。また、ユーザがマウス35のボタンをクリックした位置は、X−Y座標で記憶しておけばよい。したがって、マウス移動信号に基づいてクリックした位置の座標は容易に特定できる。
【0029】
制御部32としては、CPU、ROMおよびRAM等から構成される。CPUは、ROMあるいは他の記憶装置に予め記憶されている制御プログラムを読み出して実行することによって、上述したようなカーソル制御手段42、極座標算出手段44を実現する。
【0030】
なお、制御部32は、現在マウス35を使用しているユーザを特定するために、キーボード36からユーザ名を入力させて、ユーザ名を記憶させておくユーザ名記憶部45を有している。
制御部32は、待機状態ではユーザ名を入力するように促す表示画面をモニタ38に表示させておき、ユーザが使用する際にはユーザ名を入力しない限り他の機能が起動しないように制御する。
ユーザが、自らのユーザ名を入力した場合には、制御部32では入力されたユーザ名をユーザ名記憶部45に記憶し、ユーザ名に対応するデータテーブル39を作成する。
【0031】
また、制御部32には、上述のように作成されたデータテーブル39に基いて、各ユーザごとに取得したマウスの移動軌跡の極座標の時間変化と、すでに記憶されている極座標の時間変化とを比較する比較手段46が設けられている。
具体的には、比較手段46は、入力されてきたクリック位置の座標が同一ユーザのデータテーブル39に記憶されているクリック位置の座標と近似する位置(予め設定した範囲内)にある場合には、2つの関数の各パラメータの値を比較するように機能する。
【0032】
制御部32は、比較手段46が比較した結果、現在入力中のマウス35の移動軌跡が、蓄積されてきた同一ユーザのマウス35の移動軌跡と異なると判断した場合には、モニタ38にユーザが異なっている旨、またはユーザの体調が悪いようなので気をつけるように促す旨などの画面を表示させるように制御する(特許請求の範囲でいう通知手段に該当する)。
【0033】
(実施例1)
上述した実施形態をさらに具体化した実施例の構成について、図5に基づいて説明する。
本実施例は、個人特定情報取得システムとして通常のパーソナルコンピュータを採用したものである。
パーソナルコンピュータ50は、本体内にCPU52と、記憶装置51とを具備している。記憶装置51としては、半導体メモリであるROM53およびRAM54と、磁気ディスク装置であるハードディスク55とが設けられている。さらにパーソナルコンピュータ50は、周辺機器として表示装置であるモニタ56と、入力手段であるキーボード58と、マウス61とを備えている。
ハードディスク55内にはOS(Operating System)59が記憶されており、OS59が起動することにより、パーソナルコンピュータ50のシステム全体の制御を実行する。
【0034】
マウス61は、通常PS/2やUSBといった規格に基いてパーソナルコンピュータ50に接続される。パーソナルコンピュータ50には、規格に基いたマウス61の接続コネクタ60が設けられており、接続コネクタ60はCPU52に接続される。
CPU52では、実行中のOS59のマウスドライバ機能またはハードディスク55にインストールされているマウスドライバソフトウェアが、マウスから入力されたマウス移動信号に基づいてモニタ上のカーソルを移動制御するとともに、マウスから入力されたクリック信号に基づいて該当する動作を実行するように制御する。
【0035】
ハードディスク55またはROM53等の記憶装置51には、ユーザ名が記憶されている。CPU52は、入力されたユーザ名が以前に記憶されているものであるか否かを判断し、以前に記憶されているものであった場合には同じユーザ名のデータテーブル64にマウスの移動軌跡の極座標の時間変化を記憶し、同じユーザ名が記憶されていなかった場合には、このユーザ名に対応する新たなデータテーブル64を作成する。
【0036】
ハードディスク55またはROM53等の記憶装置51には、CPU52によって読み出されて実行され、マウスの移動軌跡を極座標の時間変化で算出する極座標算出プログラム62が記憶されている。極座標算出プログラム62によって算出された極座標の時間変化は、ハードディスク55またはROM53等の記憶装置51内のデータテーブル64に記憶される。
【0037】
ハードディスク55またはROM53等の記憶装置51には、CPU52によって読み出されて実行され、入力されたマウスの移動軌跡の極座標の時間変化と、データテーブル64内に記憶されているマウスの移動軌跡の極座標の時間変化とを比較し、現在マウスを操作しているユーザの状態を解析するユーザ状態解析プログラム65が記憶されている。また、ユーザ状態解析プログラム65は、ユーザの状態を解析した結果をモニタ56へ表示させる機能を有している。
【0038】
以下、図6に基いて本実施例の動作について説明する。
キーボード58からユーザがユーザ名を入力すると、CPU52はユーザ名がすでに登録されているかどうかを確認し(ステップS100)、登録されているようであればそのまま処理を続行し、登録されていなければ新たなユーザ名でテータテーブルを作成する(ステップS101)。
【0039】
CPU52は、クリック信号が入力された場合には、クリック信号が入力されてから次のクリック信号が入力されるまでの間について(ステップS102)、マウスの移動軌跡の極座標による時間変化を算出する(ステップS104)。具体的には、マウスの各移動点において、原点からの距離rと、原点を通る所定の座標軸との角度θを算出し、この距離rの時間tによる変化を第1の関数として算出し、角度θの時間tによる変化を第2の関数として算出する。
【0040】
そして、CPU52は、移動軌跡を極座標で表した場合の距離rと角度θの時間変化を表す2つの関数のパラメータと、この移動軌跡が入力された時刻と、移動軌跡の始点と終点を示すクリック位置の座標とを、ユーザごとのデータテーブル64に記憶させる(ステップS106)。
【0041】
CPU52は、以前に作成された同一のユーザついてのデータテーブル64が存在している場合には、パラメータ、時刻およびクリック位置の座標を記憶させつつ、同一ユーザのデータテーブル64に記憶されている以前のデータと比較する。データの比較は、まずクリック位置の座標について行われる(ステップS108、ステップS110)。
CPU52は、クリック位置の座標が、以前に記憶されているクリック位置の座標と近似している(所定の範囲内に入る)ものがあると判断した場合、次にパラメータについての比較を実行する(ステップS112)。
なお、CPU52は、クリック位置の座標が、以前に記憶されているクリック位置の座標と近似していない(所定の範囲内に入らない)と判断した場合には、比較対象となる移動軌跡がデータテーブルに蓄積されていないとして、移動軌跡の極座標のパラメータ、時刻およびクリック位置の座標をそのまま蓄積し続け、ユーザのマウス操作も続行させる。
【0042】
次に、CPU52は、2つの関数のパラメータを比較した場合(ステップS112、ステップS114)、以前に記憶されているパラメータと近似していない(所定の範囲内に入らない)と判断した場合、移動軌跡が以前とは異なっている旨をモニタ56に表示して、ユーザに通知する(ステップS116)。
なお、CPU52は、2つの関数のパラメータが、以前に記憶されているパラメータと近似している(所定の範囲内に入る)と判断した場合には、同一ユーザであり、且つ特に健康状態にも問題はないとして、移動軌跡の極座標のパラメータ、時刻およびクリック位置の座標をそのまま蓄積し続け、ユーザのマウス操作も続行させる。
【0043】
なお、CPU52が比較した結果、マウスの移動軌跡が以前のデータテーブル64に記憶されているものとは異なっていると判断した場合には、CPU52は、単に移動軌跡が異なっているとの通知だけではなく、健康状態に問題がある旨をモニタ56に表示させてもよい。このようにすることで、ユーザはマウス操作を行うだけで自分の健康状態を知ることができるようになり、ユーザの健康管理の維持に寄与する。
【0044】
(実施例2)
次に、上述した実施形態を実施例1とは別の構成で具体化した実施例2について、図7に基いて説明する。
実施例2では、個人特定情報取得システムとして、パーソナルコンピュータ50とネットワーク68を介して接続されたサーバ70とから構成される。なお、上述した実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する場合もある。
【0045】
パーソナルコンピュータ50およびサーバ70は、インターネット等のネットワーク68を介して接続されており、相互に通信可能に設けられている。
パーソナルコンピュータ50とサーバ70には、それぞれネットワーク接続用の通信ポート69,72が設けられており、データを所定のプロトコルで変換して通信が行われる。
【0046】
パーソナルコンピュータ50もサーバ70も内部の基本的なハードウェア構成はほぼ同様である。
すなわち、サーバ70は本体内にCPU74と、記憶装置71とを具備している。記憶装置71としては、半導体メモリであるROM73およびRAM75と、磁気ディスク装置であるハードディスク76とが設けられている。
ハードディスク76内にはOS(Operating System)77が記憶されており、OS77が起動することにより、サーバ70のシステム全体の制御を実行する。
【0047】
本実施例のパーソナルコンピュータ50のハードディスク55またはROM53等の記憶装置51には、パーソナルコンピュータ50のマウス61の移動軌跡を極座標の時間変化で算出する極座標算出プログラム62が記憶されている。極座標算出プログラム62によって算出された極座標の時間変化は、通信ポート69を介してサーバ70へ送信される。
【0048】
サーバ70のハードディスク76またはRAM75等の記憶装置71には、パーソナルコンピュータ50から送信されてきたマウスの移動軌跡の極座標の時間変化をデータテーブル78として記憶している。すなわち、本実施例では、実際にキーボード58が設けられている装置では、単にマウスの移動軌跡の極座標の時間変化の算出のみを実行し、算出されたデータは別の装置でデータテーブルとして蓄積されている。
【0049】
また、サーバ70の記憶装置71には、受信したマウスの移動軌跡の極座標の時間変化と、データテーブル78内に記憶されている過去の移動軌跡の極座標の時間変化とを比較し、現在のユーザの状態を解析するユーザ状態解析プログラム65が記憶されている。また、ユーザ状態解析プログラム65は、ユーザの状態を解析した結果をパーソナルコンピュータ50へ送信する機能を有している。
ユーザ状態解析プログラム65は、CPU74によって読み出されて実行される。
【0050】
本実施例では、ユーザ状態解析プログラム65によって、ネットワークセキュリティにおける個人認証を行うことができる。
つまり、ユーザ状態解析プログラム65によって、現在ユーザが操作しているマウスの移動軌跡と、過去に記憶しておいたデータテーブル78の移動軌跡とが異なる場合には、ネットワークにおけるパーソナルコンピュータ50の接続を認めないなどの処置を施し、その結果をパーソナルコンピュータ50へ送信する。また、ユーザ状態解析プログラム65によって、現在ユーザが操作しているマウスの移動軌跡と、過去に記憶しておいたデータテーブル78の移動軌跡とが異なる場合には、システム管理者に通知することにより、システム管理者側でアクセス制限などの処置を施すように促しても好適である。
【0051】
なお、本実施例においては、上述したようにネットワークセキュリティにおける個人認証を実行するものに限定するのではなく、サーバ70を病院または健康保健に関する機関内に設置し、パーソナルコンピュータ50をユーザの自宅や職場等に設置し、ユーザ状態解析プログラム65は、データテーブル78に記憶されているマウスの移動軌跡と、現在ユーザが操作しているマウスの移動軌跡とを比較し、ユーザの健康状態を解析してパーソナルコンピュータ50に解析した健康状態を表示させるようにしてもよい。
【0052】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の原理について説明するための説明図である。
【図2】移動軌跡を極座標で表したときの原点からの距離の時間変化と、原点を通る座標軸との角度の時間変化を示したグラフである。
【図3】データテーブルの構成を示す説明図である。
【図4】本発明の個人特定情報取得システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明をパーソナルコンピュータで実現した実施例1のブロック図である。
【図6】実施例1の動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明をパーソナルコンピュータとサーバとで実現した実施例2のブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
30 個人特定情報取得システム
32 制御部
34 記憶装置
35 マウス
36 キーボード
38 モニタ
39 データテーブル
42 カーソル制御手段
44 極座標算出手段
45 ユーザ名記憶部
46 比較手段
50 パーソナルコンピュータ
51 記憶装置
52 CPU
53 ROM
54 RAM
55 ハードディスク
56 モニタ
58 キーボード
59 OS
60 接続コネクタ
61 マウス
62 極座標算出プログラム
64 データテーブル
65 ユーザ状態解析プログラム
68 ネットワーク
69,72 通信ポート
70 サーバ
71 記憶装置
73 ROM
74 CPU
75 RAM
76 ハードディスク
77 OS
78 データテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスの移動に基づいて入力されるマウス移動信号によるマウスの移動軌跡を、所定の点を原点として、原点からの距離と、原点からの距離が描く線分と原点を通る所定の座標軸との角度とに基づく極座標の時間変化として算出し、
極座標の時間変化をユーザごとに個人を特定する情報として記憶することを特徴とする個人特定情報取得方法。
【請求項2】
前記移動軌跡は、マウスがクリックされたことに基づいて入力されるクリック信号と、次に入力されるクリック信号との間において取得することを特徴とする請求項1記載の個人特定情報取得方法。
【請求項3】
マウスと、
マウスを操作した際にマウス操作に連動して移動するカーソルが表示されるモニタと、
マウスを使用しているユーザのユーザ名を記憶するユーザ名記憶手段と、
マウスから入力されるマウス移動信号を受信し、マウス移動信号によるマウスの移動軌跡を、所定の点を原点として、原点からの距離と、原点からの距離が描く線分と原点を通る所定の座標軸との角度とに基づく極座標の時間変化として算出する極座標算出手段と、
極座標の時間変化のデータテーブルが、ユーザ名記憶手段に記憶されているユーザ名ごとに複数記憶されるデータテーブル記憶手段とを具備することを特徴とする個人特定情報取得システム。
【請求項4】
前記極座標算出手段は、マウスがクリックされたことに基づいて入力されるクリック信号と、次に入力されるクリック信号との間において、マウスの移動軌跡の極座標の時間変化を算出する取得することを特徴とする請求項3記載の個人特定情報取得システム。
【請求項5】
前記極座標の時間変化を、前記データテーブル記憶手段に記憶されている同じユーザ名の過去のデータテーブルの内容と比較する比較手段を具備することを特徴とする請求項3または請求項4記載の個人特定情報取得システム。
【請求項6】
前記比較手段による比較の結果、マウスの移動軌跡の極座標の時間変化が過去のデータテーブルの内容と異なることが判明した場合には、移動軌跡が異常であることを現在マウス操作中のユーザに通知する通知手段を具備することを特徴とする請求項5記載の個人特定情報取得システム。
【請求項7】
前記比較手段による比較の結果、マウスの移動軌跡の極座標の時間変化が過去のデータテーブルの内容と異なることが判明した場合には、移動軌跡が異常であることをシステム管理者に通知する異常アクセス通知手段を具備することを特徴とする請求項5記載の個人特定情報取得システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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