説明

個体識別システム、個体識別方法、及びプログラム

【課題】 タガントを利用して対象物の個体識別を行うシステムにおいて、個体識別の精度を向上させる。
【解決手段】 複数種類の色または形状が混在したタガントを物品に付与する。コンピュータ4は対象物2の画像データ20を読み取り、画像認識処理により各タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出し、特徴量テーブル6を生成してデータベース5に登録する。例えば、タガントの形状、色、回転角度情報を特徴量とする。識別対象とする物品の画像データ20’からも同様の画像処理手法で各タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出し、特徴量テーブル6’を生成し、登録されている特徴量テーブル6と照合することにより、識別対象とする対象物の個体を識別し、結果を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タガント(追跡用微小細粒)を利用して物品の個体識別を行う個体識別システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品や商品パッケージ、証明書等の公的証書や商品券等の有価証券等の真正性認証(個体識別)を行うための技術として、人工物メトリクス(artifact−metrics)技術が提案されている。人工物メトリクス技術とは、対象物(人工物)から分離不可能に、ランダムに付与されている固有の特徴を計測し、事前に計測された情報と比較照合することにより、対象物の個体識別を行うものである。対象物の固有の特徴としては、大別して光学特性、磁気特性、電気特性、振動特性等の各種物理特性の一形態として計測される。光学特性を有するものの具体例としては、(1)基材にランダム分散した粒状物(タガント)の光反射パターン、(2)基材にランダム分散した光ファイバの透過光パターン、(3)基材のランダムな斑の透過光パターン、(4)ランダムに配置されたポリマファイバの視差画像パターン、(5)基材にランダム分散したファイバの画像パターン等が挙げられる。また磁気特性を有するものとしては(6)基材にランダム分散した磁性ファイバの磁気パターン、(7)磁気ストライプにランダムに記録された磁気パターン、(8)磁気ストライプの製造時にランダムに配置された磁気パターン等の磁性特性を有するもの、等が挙げられる。また、電気特性を有するものの例としては(9)半導体素子内のメモリセルにランダムに蓄積された電荷量パターン等が挙げられる。また、振動特性を有するものとしては(10)導電性ファイバをランダム分散した基材の共振パターン、(11)容器に貼ったシールを振動させたときの共鳴パターン等が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、透明プラスチック基材の片面に、少なくとも、光回折構造形成層、粘着剤層、被覆材料が順次形成されたラベルについて記載されている。当該ラベルの粘着剤層または光回折構造形成層に微小細粒を混入することによって、真偽判別要素であるホログラムとタガント(追跡用添加物)としての微小細粒を存在させ、偽造防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−261967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1では、ルーペ等によって拡大するか、紫外、赤外などの光を当てることでタガントの存在を確認していた。つまり、タガント粒子の存在の有無を人の目により確認することで物品の真偽が判断されるため、技術に進歩によりタガントの偽造が可能となると簡単に模倣される恐れがあった。また、単にタガントが付与されていることを確認するだけでは個体を明確に識別することができなかった。
また、個体識別の精度向上を図りつつも、目的によっては、識別の処理速度を優先させたい場合もある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、タガントを利用して対象物の個体識別を行うシステムにおいて、個体識別の精度を向上し、また処理手順の自由度を増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するため第1の発明は、コンピュータを利用し、複数のタガントがランダムに付与された物品の個体を識別する個体識別システムであって、前記タガントは複数種類の色または形状が混在し、前記コンピュータは、前記物品の画像データを取得する画像データ取得手段と、前記画像データから少なくとも前記タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記特徴量抽出手段により抽出された複数の特徴量を組み合わせた特徴量テーブルを生成してデータベースに登録する登録手段と、識別対象とする物品について、前記画像データを取得し、取得した画像データから前記特徴量抽出手段と同一の処理により複数の特徴量を抽出して、特徴量テーブルを生成する特徴量テーブル生成手段と、前記特徴量テーブル生成手段により生成された特徴量テーブルと、前記データベースに登録されている特徴量テーブルとを照合することにより、前記識別対象とする対象物の個体を識別する個体識別手段と、前記個体識別手段による識別の結果を提示する結果提示手段と、を備えることを特徴とする個体識別システムである。
【0008】
また、第2の発明は、コンピュータを利用し、複数のタガントがランダムに付与された物品の個体を識別する個体識別方法であって、前記タガントは複数種類の色または形状が混在し、前記コンピュータが、前記物品を撮像した画像データを取得する画像データ取得ステップと、前記画像データから少なくとも前記タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、抽出された複数の特徴量を組み合わせた特徴量テーブルを生成してデータベースに登録する登録ステップと、識別対象とする物品について、前記画像データを取得し、取得した画像データから前記特徴量抽出ステップと同一の処理により複数の特徴量を抽出して、特徴量テーブルを生成する特徴量テーブル生成ステップと、前記特徴量テーブル生成手ステップにより生成された特徴量テーブルと、前記データベースに登録されている特徴量テーブルとを照合することにより、前記識別対象とする対象物の個体を識別する個体識別ステップと、個体識別の結果を提示する結果提示ステップと、を含む処理を行うことを特徴とする個体識別方法である。
【0009】
第1、第2の発明によれば、物品に付与するタガントとして、複数種類の色または形状が混在したタガントを利用する。そして、物品の画像データを読み取り、コンピュータにより画像認識処理を行い、各タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出する。そして、抽出された複数の特徴量を組み合わせた特徴量テーブルを生成してデータベースに登録しておく。識別対象とする物品についての画像データからも同様の画像処理手法で各タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出し、特徴量テーブルを生成し、データベースに予め登録されている特徴量テーブルと照合することにより、識別対象とする対象物の個体を識別し、識別結果を提示する。
したがって、各タガントの有無または分布位置のみならず、タガントに関する様々な特徴量を複数抽出して照合に利用できるため、個体識別精度が向上する。また、複数の特徴量を組み合わせて個体識別に利用できるため、処理手順の自由度が増加し、目的に応じて、処理速度を優先する、或いは個体識別精度を優先する等、柔軟に対応できる。
【0010】
また、前記タガントの形状は非対称性を有し、前記特徴量テーブルには、各タガントの分布位置情報と回転角度情報とが組み合わされて格納されることが望ましい。この場合、特徴量として、各タガントの分布位置情報と回転角度情報とを組み合わせた特徴量を抽出できるため、個体識別の精度が向上する。
【0011】
また、前記特徴量テーブルは、形状毎または色毎にグループ化されて登録されることが望ましい。この場合、照合処理において、常にすべての特徴量について照合を行う必要はなく、あるグループの照合を行い、一致率が高い場合に、更に他のグループの照合を行うというように、処理量を低減することも可能となる。これにより処理速度を高速化できる。
【0012】
また、第3の発明は、コンピュータにより読み取り可能な形式で記述されたプログラムであって、複数の複数種類の色または形状を混在させたタガントがランダムに付与された物品を撮像した画像データを取得する画像データ取得ステップと、前記画像データから少なくとも前記タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、抽出された複数の特徴量を組み合わせた特徴量テーブルを生成してデータベースに登録する登録ステップと、識別対象とする物品について、前記画像データを取得し、取得した画像データから前記特徴量抽出ステップと同一の処理により複数の特徴量を抽出して、特徴量テーブルを生成する特徴量テーブル生成ステップと、前記特徴量テーブル生成手ステップにより生成された特徴量テーブルと、前記データベースに登録されている特徴量テーブルとを照合することにより、前記識別対象とする対象物の個体を識別する個体識別ステップと、個体識別の結果を提示する結果提示ステップと、を含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0013】
第3の発明により、コンピュータを第1の発明の個体識別システムのコンピュータとして機能させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、タガントを利用して対象物の個体識別を行うシステムにおいて、複数の特徴量を組み合わせた照合を行うことで、個体識別の精度を向上させることが可能となるとともに、処理手順の自由度を増加させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】個体識別システム1の全体構成図
【図2】対象物2から読み取った画像データ20の一例
【図3】コンピュータ4のハードウエア構成を示すブロック図
【図4】特徴量テーブル6(6’)の一例を示す図
【図5】登録処理の流れを説明するフローチャート
【図6】形状抽出処理について説明する図
【図7】色抽出処理について説明する図
【図8】回転角度抽出処理について説明する図
【図9】照合処理の流れを説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
まず、図1〜図4を参照して、本発明に係る個体識別システム1の構成を説明する。
図1に示すように、個体識別システム1は、対象物(登録対象物2、識別対象物2’を含む)、対象物2,2’を撮像する画像読取装置3、画像読取装置3にて読み取られた対象物2,2’の画像データに対して画像処理を施し、固有の特徴量を取得し、取得した特徴量を用いて後述する登録処理または照合処理を行うコンピュータ4と、を備える。コンピュータ4は、LANまたはインターネット等のネットワークを介して照合処理を行うサーバ装置等に接続されるようにしてもよい。
【0018】
対象物2、2’は、複数のタガント(微小細粒)がランダムに付与されている。各タガントは、例えばインクに混入されて対象物2,2’に印刷されることにより、ランダムに付与できる。
また、本発明において、タガントは、複数の種類の形状(模様も含む。)、色を有するものが混在する。
図2は対象物2から読み取った画像データ20の一例である。
図2に示すように各タガント201,202,・・・は、様々な形状や色となっている。
例えば、色は、赤、青、緑の3色を用い、形状は、ハート形、星形、十字型、六角形、動物形、顔形等とし、個々のタガントのサイズは1μm程度とすることが望ましいが、これに限定されない。
これらのタガントは個々の対象物に対し、ランダムに付与されるため、各タガントの分布位置、分布割合、対象物に付着した際の各タガントの回転角度等を完全に一致させることは困難である。
そこで、本発明では、タガントの分布位置のみならず、色、形状、回転角度等も特徴量として読取り、個々の対象物2の特徴量テーブル6としてデータベース5に登録しておくとともに、個体識別を行う際は、識別対象とする対象物(識別対象物)2’について、登録時と同様に、色、形状、回転角度等の特徴量を読み取って特徴量テーブル6’を生成し、データベース5に登録されている特徴量テーブル6と照合することによって、識別対象物2’の個体を識別する。
【0019】
次に、図3を参照してコンピュータ4のハードウエア構成について説明する。
図3に示すように、コンピュータ4は、制御部41、記憶部42、入力部43、表示部44、メディア入出力部45、通信I/F部46、周辺機器I/F部47等がバス49を介して接続されて構成される。また、周辺機器I/F部47には、画像読取装置3(図1参照)や、ID読取装置(不図示)が接続されている。
【0020】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Accsess Memory)等により構成される。
CPUは、記憶部42、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス49を介して接続された各部を駆動制御する。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持する。RAMは、ロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部41が後述する各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。また、制御部41は、記憶部42に記憶されているプログラムに従って、後述する登録処理(図5参照)、照合処理(図9参照)を実行する。各処理の詳細については後述する。
【0021】
記憶部42は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部41が実行するプログラムや、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティング・システム)等が格納されている。これらのプログラムコードは、制御部41により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて実行される。
【0022】
入力部43は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、タブレット等のポインティング・デバイス、テンキー等の入力装置であり、入力されたデータを制御部41へ出力する。
【0023】
表示部44は、例えば液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路(ビデオアダプタ等)で構成され、制御部41の制御により入力された表示情報をディスプレイ装置上に表示させる。
なお、入力部43と表示部44とが一体的に構成されたタッチパネル式の入出力部としてもよい。
【0024】
メディア入出力部45は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、PDドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、MOドライブ等のメディア入出力装置であり、データの入出力を行う。
通信I/F46は、通信制御装置、通信ポート等を有し、ネットワークを介して所定の外部装置との通信を媒介する通信インタフェースであり、通信制御を行う。例えば、通信I/F46を介してデータベース5と接続される。
【0025】
周辺機器I/F(インタフェース)47は、コンピュータ4に周辺機器を接続させるためのポートであり、コンピュータ4は周辺機器I/F47を介して周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F47は、USBやIEEE1394やRS−232C等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
【0026】
画像読取装置3は、スキャナ、カメラ等の光学的読取装置であり、対象物2を撮像し、その画像データ20を読み取って、コンピュータ4に入力する。
また、各対象物2には後述するようにそれぞれIDが付与されるが、IDがICチップのメモリ等にIDが記憶されている場合は、ID読取装置として、対応するICリーダ/ライタ等を周辺機器I/F47に接続するようにする。また、IDがバーコード等の形式で付与される場合には、ID読取装置として、バーコードリーダ等を周辺機器I/F47に接続するようにする。
【0027】
バス49は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0028】
図1のデータベース5には、各対象物2の複数の特徴量が格納された特徴量テーブル6が記憶されている。
図4に特徴量テーブル6の一例を示す。
【0029】
図4に示すように特徴量テーブル6は、各対象物2から読み取った画像データから取得した各タガント(No.0001、No.0002、・・・等)に関する複数の特徴量が格納される。特徴量としては、タガントの形状情報6B、分布位置情報(X座標情報6C、Y座標情報6D)、色情報6E、回転角度情報6F等が格納される。
なお、これらの各特徴量は全て格納されていなくてもよい。
例えば、分布位置情報(X座標情報6C、Y座標情報6D)と形状情報6Bの組み合わせ、分布位置情報と色情報6Eの組み合わせ、分布位置情報と回転角度情報6Fの組み合わせ等としてもよい。
どの特徴量を組み合わせるかは、後述する登録処理及び照合処理の特徴量テーブル生成ステップ(ステップS105、S205)の処理内容を変更すれば、適宜変更できる。
【0030】
また、特徴量テーブル6には、各タガントの分布位置情報(X座標情報6C、Y座標情報6D)が色毎または形状毎にグループ化されて、格納されるようにしてもよい。
複数のグループに分割されて登録されている場合は、あるグループについて照合処理を行い、一致率が高い場合に、更に次のグループについて照合処理を行うようにすれば、無駄な照合作業を減らすことができ、照合速度の向上を図ることができる。
【0031】
また、図4の例では、分布位置情報は絶対位置を示す座標値が格納されているが、絶対位置に限らず、あるタガントの分布位置を基準とした相対位置情報を格納するようにしてもよい。各タガントとの相対的な位置関係を示すロバストな値(アフィン不変量)を特徴量とすれば、対象物2の撮影時のずれ(位置ずれ、回転ずれ、拡大・縮小ずれ等)を吸収でき、精度よく個体識別ができるようになる。ロバストな値(アフィン不変量)の具体例としては、あるタガントとそのタガントに隣接する2つのタガントとで三角形を形成し、このような三角形を周囲4方向に形成し、それらの三角形の面積比を求め、面積比の関係をそのタガントの特徴量とすることが挙げられる。
【0032】
次に、個体識別システム1のコンピュータ4により実行される登録処理及び照合処理の流れについて説明する。
図5は、登録処理の全体の流れを説明するフローチャート、図6は形状抽出処理、図7は色抽出処理、図8は回転角度抽出処理についてそれぞれ説明する図である。図9は照合処理を説明するフローチャートである。
【0033】
まず、登録処理の流れを図5を参照して説明する。
画像読取装置3により登録対象とする対象物2が撮影されると、その画像データ20がコンピュータ4に入力される。コンピュータ4の制御部41は画像データ20を取得すると(ステップS101)、画像データ20に対して各タガントの形状抽出処理(ステップS102;図6)、色抽出処理(ステップS103;図7)、及び回転角度抽出処理(ステップS104;図8)を施す。これらの各処理では、画像データ20に含まれる各タガントの分布位置情報も抽出される。また、形状抽出処理、色抽出処理、及び回転角度抽出処理の処理順序は、この順に限定されず、どの順序で行ってもよい。
【0034】
制御部41は、ステップS102〜ステップS104の各処理で読み取った各タガントの分布位置情報(X座標情報6C、Y座標情報6D)、形状情報6B、色情報6E、及び回転角度情報6Fを格納した特徴量テーブル6を生成する(ステップS105)。また、制御部41は、生成した特徴量テーブル6にユニークIDを付与し(ステップS106)、データベース6に登録する(ステップS107)。
【0035】
ここで、図6を参照してステップS102の形状抽出処理について説明する。
図6(A)に示すように、コンピュータ4が取得した画像データ20には複数種類の形状のタガントが含まれている。例えば、星形、十字形、ハート形が混在するものとする。なお、これらの抽出すべきタガントの形状情報は、例えば記憶部42の形状データベース(不図示)に予め保持されているものとする。
【0036】
制御部41は、画像データ20から形状データベースに登録されている形状に一致する形状を有するタガントを抽出し、図6(B)に示すように、形状毎の画像データ20A、20B、20Cにフィルタリングする。すると、星形のタガントが抽出された画像データ20A、十字形のタガントが抽出された画像データ20B、ハート形のタガントが抽出された画像データ20Cを得る。各タガントの配置は元の画像データ20のままである。制御部41は、各画像データ20A,20B,20Cから各タガントの分布位置情報(X座標、Y座標)を取得する。図6(C)では、あるタガントの位置を基準に相対位置情報を求めることを示すために、破線で相対位置の関係を示しているが、各タガントの分布位置情報として絶対位置情報を取得するようにしてもよい。絶対位置情報を取得する場合は、対象物2に予めマーカを付与しておき、このマーカに合わせてすべての対象物を撮像するようにして、各画像の撮像の位置、角度、スケールを一致させるようにすることが望ましい。
【0037】
また、図6の例のように、画像データ20をタガントの形状毎にフィルタリングする場合は、特徴量テーブル6は、図4に示すような各タガントが端点から順にナンバリング(図4の6A)され、各タガントの形状、分布位置、色、回転角度等が列記された形式ではなく、形状毎にグループ化された複数の特徴量テーブル6となる。例えば、ハート形のタガントのみを抽出し、その分布位置情報(X座標、Y座標)や、色、回転角度が格納された特徴量テーブル、星形のタガントのみを抽出し、その分布位置情報(X座標、Y座標)や、色、回転角度が格納された特徴量テーブル、のように、形状毎の特徴量テーブルが生成され、データベース5に登録される。
【0038】
次に、図7を参照してステップS103の色抽出処理について説明する。
図7(A)に示すように、コンピュータ4が取得した画像データ20に複数種類の色のタガントが含まれているものとする。例えば、赤(図7では白抜き)、青(図7では黒)、緑(図7では点模様)が混在するものとする。なお、これらの抽出すべきタガントの色情報は、例えば記憶部42の色データベース(不図示)に予め保持されているものとする。
【0039】
制御部41は、図7(B)に示すように、画像データ20を色データベースに登録されている各色の画像データ20D、20E、20Fに分解する。各タガントの配置は元の画像データ20のままである。制御部41は、各色の画像データ20D,20E,20Fから各タガントの分布位置情報(X座標、Y座標)を取得する。図7(C)では、あるタガントの位置を基準に相対位置情報を求めることを示すため、破線で相対位置の関係を示しているが、上述のように、各タガントの分布位置情報として絶対位置情報を取得するようにしてもよい。
【0040】
また、図7の例のように、画像データ20をタガントの色毎に分解する場合は、特徴量テーブル6は、図4に示す形式でなく、色毎にグループ化された複数の特徴量テーブルとなる。例えば、緑のタガントのみを抽出し、その分布位置情報(X座標、Y座標)や、形状、回転角度が格納された特徴量テーブル、赤のタガントのみを抽出し、その分布位置情報(X座標、Y座標)や、形状、回転角度が格納された特徴量テーブル、のように、各形状毎の特徴量テーブルが生成され、データベース5に登録される。
また、図6に示すように、形状毎にグループ化された特徴量データベース6が既に生成されている場合は、各形状の特徴量データベースについて、更に色毎にグループ化してもよい。
【0041】
次に、図8を参照してステップS104の回転角度抽出処理について説明する。
図8(A)では、回転角度抽出のため、各タガントの形状と色はすべて同一ものとしているが、実際は複数の形状及び色が混在した画像データについて回転角度抽出処理を行う。
図8に示すハート型のタガントのように非対称性を有する形状であれば、各タガントの回転角度情報を取得できる。
例えば、制御部41は、画像認識処理によって各タガント201,202,203のハート型の形状を認識し、その形状から各タガントの正面方向(図8の矢印)を認識する。そして、あるタガント210を基準タガントとし(図8(B))、基準タガント210と他のタガント211,212の正面方向の角度差をそれぞれ回転角度として抽出する。
図8(C)に示すように、すべてのタガント210,211,212について、それぞれ対応する分布点210’,211’,212’の位置情報と回転角度情報とが抽出できる。抽出した位置情報及び回転角度情報は、図4の特徴量テーブル6に、X座標情報6C、Y座標情報6D、回転角度情報6Fとして格納される。
【0042】
次に、照合処理の流れを図9を参照して説明する。
なお、照合処理を開始する前に、データベース5には複数の対象物の特徴量テーブル6がそのユニークIDとともに蓄積記憶されているものとする。
【0043】
まず、画像読取装置3により個体識別対象とする対象物2’が撮影されると、その画像データ20’がコンピュータ4に入力される。また、個体識別対象とする対象物2’のユニークIDもコンピュータ4に入力される。コンピュータ4の制御部41は画像データ20’とユニークIDを取得すると(ステップS201)、画像データ20’から各タガントの形状抽出処理(ステップS202)、色抽出処理(ステップS203)、及び回転角度抽出処理(ステップS204)を行い、ステップS202〜ステップS204の各処理で読み取った各タガントの分布位置情報(X座標、Y座標)、形状情報、色情報、及び回転角度情報を格納した特徴量テーブル6’を生成する(ステップS205)。
ステップS201〜ステップS205の各処理は、図5に示す登録処理における形状抽出処理(ステップS102)、色抽出処理(ステップS103)、及び回転角度抽出処理(ステップS104)、特徴量テーブル生成処理(ステップS105)と同一の処理を行うものとする。
【0044】
制御部41は、データベース5からステップS201で取得したユニークIDに該当する特徴量テーブル6を取得し(ステップS206)、ステップS205で生成した特徴量テーブル6’と照合する(ステップS207)。
照合処理の方法については、特徴量テーブル6,6’の形態に応じて適切な照合方法を採用すればよい。例えば、各特徴量テーブル6,6’の各項目6A〜6Fを要素とするベクトルを生成し、相関値(類似度)を求め、その大きさが所定の閾値を上回る場合に、一致と判定するようにすればよい。
【0045】
ステップS207における照合の結果、個体識別対象とする対象物2の特徴量テーブル6’がデータベース5に格納されている特徴量テーブル6と一致すれば、その対象物2の真性が認証される。一方、不一致の場合は、その対象物2は偽の物品と判断される。制御部41は、照合結果を表示部44に表示し、ユーザに提示する(ステップS208)。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態の個体識別システム1では、物品に付与するタガントとして、複数種類の色または形状が混在したタガントを利用する。そして、対象物2の画像データ20を読み取り、コンピュータ4により画像認識処理を行い、各タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出する。そして、抽出された複数の特徴量を組み合わせた特徴量テーブル6を生成してデータベース5に登録しておき、識別対象とする物品2’についての画像データ20’から同様の画像処理手法で各タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出し、特徴量テーブル6’を生成する。コンピュータ4は、個体識別対象とする対象物2’から生成された特徴量テーブル6’と、データベース5に予め登録されている特徴量テーブル6とを照合することにより、識別対象とする対象物2の個体を識別し、結果を提示する。
【0047】
したがって、各タガントの有無または分布位置のみならず、タガントに関する様々な特徴量を複数抽出して照合に利用できるため、個体識別の精度が向上する。すなわち、例えば本実施の形態では、各タガントのX座標、Y座標の他、色、形状、回転角度も特徴量として抽出し、照合に利用するため、照合する情報を5次元まで増やすことができる。
また、タガントの形状は非対称性を有するものを利用すれば、特徴量として、各タガントの分布位置情報と回転角度情報とを組み合わせた特徴量を抽出できるため、認証精度が向上する。
また、色毎または形状毎のようにグループ化した特徴量テーブル6を生成すれば、照合処理において、常にすべての特徴量について照合を行う必要はなく、まず、あるグループの照合を行い、一致率が高い場合に、更に他のグループの照合を行うというように、処理量を低減することも可能である。これにより照合処理速度を高速化できる。
また、複数の特徴量を組み合わせて照合に利用できるため、処理手順の自由度が増し、識別精度優先或いは処理速度優先等のように、様々な目的に応じて柔軟な処理を行わせること可能となる。
【0048】
以上、本発明に係る個体識別システム1の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。上述の実施の形態で示したタガントの形状や色は一例であり、その他の形状または色等を示すタガントを採用してもよい。また各タガントの大きさが異なるものを採用してもよい。この場合は、タガントの分布位置情報を抽出し、タガントの大きさ別に特徴量テーブル6にグループ化して格納すればよい。その他、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0049】
1・・・・・・・・・・・・個体識別システム
2・・・・・・・・・・・・物品(登録対象とする対象物)
2’・・・・・・・・・・・物品(識別対象とする対象物)
3・・・・・・・・・・・・画像読取装置
4・・・・・・・・・・・・コンピュータ
5・・・・・・・・・・・・データベース
6・・・・・・・・・・・・特徴量データベース
20・・・・・・・・・・・画像データ
201、202,…・・・・タガント
20A,20B,20C・・・形状毎に分解された画像データ
20D,20E,20F・・・色毎に分解された画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを利用し、複数のタガントがランダムに付与された物品の個体を識別する個体識別システムであって、
前記タガントは複数種類の色または形状が混在し、
前記コンピュータは、
前記物品の画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データから少なくとも前記タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記特徴量抽出手段により抽出された複数の特徴量を組み合わせた特徴量テーブルを生成してデータベースに登録する登録手段と、
識別対象とする物品について、前記画像データを取得し、取得した画像データから前記特徴量抽出手段と同一の処理により複数の特徴量を抽出して、特徴量テーブルを生成する特徴量テーブル生成手段と、
前記特徴量テーブル生成手段により生成された特徴量テーブルと、前記データベースに登録されている特徴量テーブルとを照合することにより、前記識別対象とする対象物の個体を識別する個体識別手段と、
前記個体識別手段による識別の結果を提示する結果提示手段と、
を備えることを特徴とする個体識別システム。
【請求項2】
前記タガントの形状は非対称性を有し、
前記特徴量テーブルには、
各タガントの分布位置情報と回転角度情報とが組み合わされて格納されることを特徴とする請求項1に記載の個体識別システム。
【請求項3】
前記特徴量テーブルは、形状毎にグループ化されて登録されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の個体識別システム。
【請求項4】
前記特徴量テーブルは、色毎にグループ化されて登録されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の個体識別システム。
【請求項5】
コンピュータを利用し、複数のタガントがランダムに付与された物品の個体を識別する個体識別方法であって、
前記タガントは複数種類の色または形状が混在し、
前記コンピュータが、
前記物品を撮像した画像データを取得する画像データ取得ステップと、
前記画像データから少なくとも前記タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
抽出された複数の特徴量を組み合わせた特徴量テーブルを生成してデータベースに登録する登録ステップと、
識別対象とする物品について、前記画像データを取得し、取得した画像データから前記特徴量抽出ステップと同一の処理により複数の特徴量を抽出して、特徴量テーブルを生成する特徴量テーブル生成ステップと、
前記特徴量テーブル生成手ステップにより生成された特徴量テーブルと、前記データベースに登録されている特徴量テーブルとを照合することにより、前記識別対象とする対象物の個体を識別する個体識別ステップと、
個体識別の結果を提示する結果提示ステップと、
を含む処理を行うことを特徴とする個体識別方法。
【請求項6】
コンピュータにより読み取り可能な形式で記述されたプログラムであって、
複数の複数種類の色または形状を混在させたタガントがランダムに付与された物品を撮像した画像データを取得する画像データ取得ステップと、
前記画像データから少なくとも前記タガントの分布位置情報を含む複数の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
抽出された複数の特徴量を組み合わせた特徴量テーブルを生成してデータベースに登録する登録ステップと、
識別対象とする物品について、前記画像データを取得し、取得した画像データから前記特徴量抽出ステップと同一の処理により複数の特徴量を抽出して、特徴量テーブルを生成する特徴量テーブル生成ステップと、
前記特徴量テーブル生成手ステップにより生成された特徴量テーブルと、前記データベースに登録されている特徴量テーブルとを照合することにより、前記識別対象とする対象物の個体を識別する個体識別ステップと、
個体識別の結果を提示する結果提示ステップと、
を含む処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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