説明

偏光フィルム、偏光板、及び液晶表示装置

本発明の偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素が吸着、配向したものであり、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素による染色処理、延伸処理、硼酸処理、さらに塩素化合物含有水溶液中に浸漬する補色処理を施すことにより製造される。偏光フィルムは、染色処理、延伸処理、硼酸処理により硼酸含有量を5〜40重量%に調整されるとともに、補色処理により塩素イオン200〜10、000ppmを含む。本発明の偏光フィルムは、パラレルニコルに配置した際に無彩色な色相を保ち、且つ高温高湿条件下及び高温条件下での光学特性の耐久性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着、配向させることによってなる偏光フィルム、それを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着、配向させた偏光フィルムが知られている。このような偏光フィルムは通常、片面、または両面に保護フィルムを貼り合わせた偏光板として、液晶表示装置用部材の一つとして用いられている。他方、液晶表示装置において色の再現性に優れるカラー表示を実現するには、良好な白色表示を達成することが望まれており、そのために、パラレルニコルに配置した際に無彩色の色相を有する偏光フィルムが望まれている。このような偏光フィルムとしては、例えば特開2002−22950号公報記載の偏光フィルムが知られている。
【0003】
また、近年、卓上電子計算機、電子時計、パーソナル・コンピュータ、携帯型電話機、PDA(personal digital assistant)、自動車や機械の計器類等、種々の分野において液晶表示装置が使用されるようになっている。液晶表示装置の利用分野が拡大するに伴い、用途に応じた液晶表示装置の耐久性の向上が望まれている。具体的には、屋外や車内で使用される場合や機械の計器等に用いられる場合など、高温条件下や高湿条件下で長時間の使用に耐え得る液晶表示装置が求められている。そのため、高温条件下、高温高湿条件下に長時間放置した際の光学特性の劣化が少ない、即ち耐久性が高い偏光フィルム及び偏光板が求められている。高温高湿条件下での耐久性を改良したものとしては、例えば特開平2−43504号公報記載の偏光フィルムが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述したような、従来のパラレルニコルに配置した際に無彩色の色相を有する偏光フィルムは、高温条件下、高温高湿条件下における光学特性の耐久性が低いといった問題があった。
【0005】
従来より、偏光素子として多用されているヨウ素を吸着、配向させた偏光フィルムの耐久性を向上させる方法として、偏光フィルム中のヨウ化カリウムや、硼酸の含有量を増加させるなどの方法が知られている。このような耐久性向上方法を、上記従来の無彩色の色相を有する偏光フィルムに適用した場合、例えば、ヨウ化カリウムの含有量を増加させた場合には、耐久性は向上するが、偏光フィルムの色相が無彩色ではなくなり黄味がかった色相になってしまうといった問題があった。また、硼酸の含有量を増加させた場合には、高温高湿条件下での光学特性の耐久性は向上するが、逆に高温条件下での光学特性の耐久性が低下してしまうといった問題があった。
【0006】
本発明の課題は、上記問題を解決するために、パラレルニコルに配置した際、無彩色な色相を呈し、且つ高温高湿条件下及び高温条件下における光学特性の耐久性の高い偏光フィルムを提供することを目的とする。また、さらには該偏光フィルムを用いた高耐久性を有する偏光板及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、硼酸及び特定の範囲の塩素イオンを含有するポリビニルアルコール系樹脂フィルムから得られる偏光フィルム、並びにそれから調製される偏光板及び液晶表示装置により前記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
(1)ヨウ素が吸着、配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムであって、硼酸及び200〜10、000ppmの塩素イオンを含有することを特徴とする偏光フィルム、
(2)偏光フィルム中の硼酸の含有量が5〜40重量%である(1)記載の偏光フィルム、
(3)ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、ヨウ素による処理(染色処理)、延伸処理及び硼酸による処理(硼酸処理)を任意の順序で施して得られた、硼酸及びヨウ素を含有したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを塩素化合物を含有する水溶液で処理することを特徴とする(1)又は(2)記載の偏光フィルムの製造法、
(4)ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、ヨウ素による処理(染色処理)を施した後、延伸処理、硼酸処理、塩素化合物を含有する水溶液による処理をこの順序で施すことを特徴とする(1)又は(2)記載の偏光フィルムの製造法、
(5)(1)または(2)に記載の偏光フィルムの片面または両面に保護フィルムが貼合されてなることを特徴とする偏光板、
(6)保護フィルムがアセテート系樹脂フィルムである(5)の偏光板、
(7)保護フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムである(5)の偏光板、
(8)(5)乃至(7)のいずれか一項に記載の偏光板を備えてなる液晶表示装置、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無彩色の色相であって、かつ高温条件下及び高温高湿条件下における光学特性の耐久性に優れた偏光フィルム及び偏光板を実現することができる。また、良好な白色表示で高温条件下及び高温高湿条件下における耐久性の高い液晶表示装置を実現することが可能となり、液晶表示装置の利用分野をより拡大することができる。
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明に適用される偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素が吸着、配向したものであり、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素により染色処理を施した後に又はこれと同時に、延伸処理、硼酸処理、さらに塩素化合物含有水溶液中に浸漬する補色処理を施すことにより製造されるものである。
【0010】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの原料としては、通常、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール変性体が使用され、その重合度は1000〜10、000程度の範囲、好ましくは1500〜5000の範囲である。ポリビニルアルコール系樹脂は通常、ケン化されたものが使用され、そのケン化度は通常85〜100モル%程度、好ましくは98〜100モル%の範囲である。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜することにより製造される。製膜は公知の方法により行うことができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚みは通常50μm〜150μm程度である。
【0011】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた後、ヨウ素による染色処理が施される。ヨウ素による染色処理は、例えばヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液などに、更に、硼酸を含有させた染色溶液に上述したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬することにより行われる。水溶液を用いる場合、該水溶液におけるヨウ素、ヨウ化カリウムの使用量は、水100重量部に対してヨウ素が0.01〜0.3重量部、ヨウ化カリウムが0.01〜3.0重量部程度である。染色溶液の温度は20〜50℃程度である。浸漬時間は10〜300秒程度の範囲である。かかるヨウ素による染色処理によって、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着させる。
【0012】
次いで、ヨウ素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを所定の倍率に一軸延伸する延伸処理が施される。延伸処理は、硼酸水溶液中にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬させながら行われる。硼酸水溶液における硼酸の使用量は、水100重量部に対して、硼酸3.0重量部程度である。硼酸水溶液の温度は例えば、30〜60℃程度である。延伸方法としては、熱ロールによる方法でもよいし、周速の異なる二つのロールの間で一軸延伸する方法でもよい。延伸倍率は通常4.0〜7.0倍程度である。
【0013】
硼酸処理は、硼酸水溶液中に、上記染色処理、延伸処理が施されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬することにより行われる。硼酸処理における硼酸水溶液としては、水100重量部に対して、硼酸3.0〜7.0重量部、好ましくは4.0〜6.0重量部を溶解したものが用いられる。硼酸水溶液の温度は例えば40℃以上であり、好ましくは50〜85℃である。浸漬時間は、前記の温度で、例えば10〜600秒、好ましくは30〜300秒である。
【0014】
上述した、硼酸水溶液中での延伸処理、及び硼酸処理により、本発明における偏光フィルムは硼酸を含有することとなる。偏光フィルムの硼酸含有量は、5〜40重量%である。より好ましくは、15〜25重量%である。延伸処理、硼酸処理における硼酸濃度・浸漬時間・溶液温度をそれぞれ調整することにより、得られる偏光フィルムの硼酸含有量が調整される。
【0015】
補色処理は、上記染色処理、延伸処理、硼酸処理の施されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを塩素化合物を含有する水溶液(以下、塩素化合物水溶液という)へ浸漬することにより行われる。塩素化合物水溶液としては、水100重量部に対して、塩素化合物0.1〜10重量部、好ましくは1.0〜5.0重量部を溶解したものが用いられる。塩素化合物水溶液の温度は例えば30〜70℃。浸漬時間は、前記温度で例えば10〜300秒である。補色処理を行なうことにより、ヨウ素イオンの状態が安定化し、色変化を生じにくくさせる効果がある。
【0016】
塩素化合物水溶液の調製に用いる塩素化合物としては、例えば塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム等のアルカリ金属の塩素化合物、または例えば塩化ベリリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属の塩素化合物、または例えば塩化コバルト、塩化亜鉛等の金属の塩素化合物等が挙げられる。
【0017】
補色処理を行うことにより、偏光フィルムは塩素イオンを含有することとなる。偏光フィルムの塩素イオン含有量は、200〜10、000ppm、好ましくは300〜5000ppmである。このようにして、硼酸及び塩素イオン200〜10、000ppmを共に含む偏光フィルムを得ることができる。補色処理後、水洗し、乾燥処理が行われる。乾燥処理における乾燥温度は40〜50℃程度、乾燥時間は60秒程度である。
【0018】
偏光フィルム中の硼酸濃度は、得られた偏光フィルムを純水中で加熱して完全に溶解させ、フェノールフタレン指示薬を添加し、NaOH水溶液で中和滴定して求めた。塩素イオン濃度はイオンクロマト法(ダイオネクス社製DX−320)で求めた。
【0019】
以上のようにして得られた本発明の偏光フィルムは、硼酸及び一定量の塩素イオンを含むことにより、高温条件下及び高温高湿条件下における高い耐久性を実現し、且つパラレルニコルに配置した際に無彩色を実現するものである。
【0020】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば上記実施の形態においては、延伸処理をヨウ素による染色処理後に行うこととしたが、ヨウ素による染色処理の前、またはヨウ素による染色処理中に行うこととしても良い。また、硼酸処理中に延伸処理を行うこととしても良い。また、例えば大気中で延伸を行う乾式延伸であっても良い。ヨウ素による染色処理中に延伸処理を行う場合や、硼酸処理中に延伸処理を行う場合、乾式延伸を行う場合には、得られる偏光フィルムの硼酸含有量は、硼酸処理のみにより5〜40重量%の範囲になるように調整されることとなる。
【0021】
上述のように延伸処理が、ヨウ素による染色処理または硼酸処理と同時に行う場合、あるいは乾式延伸を行う場合には、硼酸処理の硼酸水溶液の硼酸濃度を上記実施の形態における範囲よりも高くしても良いし、浸漬時間を上記実施の形態における範囲よりも長くしても良い。
【0022】
また、例えば延伸処理を複数回に分けて行うこととしても良いし、硼酸処理を複数回行うこととしても良い。また、例えばヨウ素による染色処理におけるヨウ素染色溶液に硼酸を含ませることとしても良い。これらのような場合には、各処理の硼酸濃度、浸漬時間、溶液温度を上記実施の形態における範囲に限定せず、偏光フィルム中の硼酸の含有量が5〜40重量%になるように適宜調整することが可能である。
【0023】
本発明の偏光板は前記のようにして得られた本発明の偏光フィルムの片面または両面に保護フィルムを貼り合せたものである。ここで、保護フィルムは、偏光フィルムの耐水性や取扱性の向上などを目的として付加されるものであり、その形成には適宜な透明物質を用いることができる。とくに、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れるプラスチックなどが好ましく用いられる。その一例としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系及びシリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂などから得られるフィルムがあげられ、これらのうちポリオレフィン系樹脂としては、非晶性ポリオレフィン系樹脂でノルボルネン又は多環状ノルボルネン系モノマーのような環状ポリオレフィンの重合単位を有する樹脂が挙げられる。好ましい保護フィルムはトリアセチルセルローズ(TAC)等が挙げられる。また、保護層に用いられる透明保護フィルムは、本発明の目的を損なわない限り、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキングの防止や拡散ないしアンチグレア等を目的とした処理などを施したものであっても良い。
【0024】
本発明の偏光フィルムと保護フィルムとの接着処理は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルアルコール系ポリマーからなる接着剤、或いは、硼酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミン、シュウ酸などの、ビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤からなる接着剤、透明性の良好なエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニルなどの溶剤型接着剤、またはアクリル系樹脂、ウレタン樹脂などの重合反応により硬化し得る接着性樹脂などにより行うことができる。
【0025】
本発明の偏光板は他の光学材料の光学層に積層した光学部材として用いることもできる。例えば反射板や半透過反射板、位相差板(1/2波長板、1/4波長板などのλ板も含む)、視角補償フィルムや輝度向上フィルムなどの、液晶表示装置等の形成に用いられることのある適宜な光学材料を1層または2層以上積層して用いることができる。その具体例としては、本発明の偏光板に、更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過反射型偏光板、同じく本発明の偏光板に、更に位相差板が積層されている楕円偏光板または円偏光板、本発明の偏光板に、視角補償フィルムが積層されている偏光板、あるいは、本発明の偏光板に、更に輝度向上フィルムが積層されている偏光板等が挙げられる。
【0026】
また、本発明の偏光板を用いた種々の光学部材は、液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。例えば、本発明の偏光板を液晶セルの片側又は両側に配置してなる反射型、透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。この場合、液晶表示装置を形成する液晶セルは任意であり、例えば薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなどの適宜なタイプの液晶セルを用いたものであって良い。
【0027】
また、液晶セルの両側に偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。更に、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することもできる。
【0028】
偏光板を液晶表示装置の部材として使用する場合には、その片側又は両側に液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を有するものとすることもできる。その粘着層の形成には、適宜な粘着性物質や粘着剤を用いることができ、特に限定はない。その例としては、アクリル系重合体やシリコーン系ポリマー、ポリエステルやポリウレタン、ポリアミドやポリエーテル、フッ素系やゴム系などの適宜なポリマーをベースポリマーとするものなどが挙げられる。
【0029】
本発明の偏光板は、ツイストネマチック方式(TN)Mスーパーツイストネマチック方式(STN)、薄膜トランジスタ方式(TFT)、バーチカルアライメント方式(VA)、インプレーンスイッチング方式(IPS)等の液晶表示装置全般で使用することが出来る。
【0030】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0031】
実施例1
ポリビニルアルコール樹脂製フィルム(厚さ75μm)(クラレ株式会社製VF−XS)を30℃の水中で5分間膨潤させた後、30℃の染色液(水100重量部に対しヨウ素0.05重量部、ヨウ化カリウム0.1重量部を含有する)の中に5分間浸してヨウ素による染色処理を行い、次いで50℃の3重量%硼酸水溶液中で5.5倍に延伸し延伸フィルムを得た。延伸処理の後、50℃の5重量%硼酸水溶液中に延伸フィルムを2分間浸し、その後、30℃の1%塩化カリウム水溶液中にて1分間浸し、水洗後、40℃の空気中で乾燥して本発明の偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの厚さは25μmであった。偏光フィルム中の硼酸濃度は中和滴定法で、塩素イオン濃度はイオンクロマト法(ダイオネクス社製DX−320)で求めた。偏光フィルムの硼酸含有量は22.0重量%、塩素イオン含有量は1、100ppmであった。
【0032】
得られた偏光フィルムの両面にTACフィルム(厚さ80μm)(富士写真フィルム製T80UZ)をポバール系接着剤にてラミネートした後、70℃×5分間乾燥して偏光板を得た。この偏光板は、パラレルニコルにおける色相a*=−1.01、色相b*=0.64(色相a*及びb*は国際照明委員会(CIE)により定められた色座標を示す)である無彩色であった。
【0033】
実施例2
ポリビニルアルコールフィルム(クラレ株式会社製VF−XS)を30℃の水中にて5分間膨潤させた後、ポリビニルアルコールフィルムを30℃の染色液(水100重量部に対しヨウ素0.05重量部、ヨウ化カリウム0.1重量部)の中に5分間浸してヨウ素による染色処理を行い、次いで50℃の3%硼酸水溶液中で5.5倍に延伸した。延伸処理の後、50℃の5%硼酸水溶液中に延伸フィルムを2分間浸し、その後、30℃の1%塩化ナトリウム水溶液中にて1分間浸し、水洗後、40℃の空気中で乾燥して本発明の偏光フィルムを得た。偏光フィルムの硼酸含有量は22.3重量%、塩素イオン含有量は1、300ppmであった。
【0034】
得られた偏光フィルムの両面にTACフィルム(富士写真フィルム製T80UZ)をポバール系接着剤にてラミネートした後、70℃×5分間乾燥して本発明の偏光板を得た。この偏光板は、パラレルニコルにおける色相a*=−1.18、色相b*=0.62である無彩色であった。
【0035】
実施例3
ポリビニルアルコールフィルム(クラレ株式会社製VF−XS)を30℃の水中にて5分間膨潤させた後、ポリビニルアルコールフィルムを30℃の染色液(水100重量部に対しヨウ素0.05重量部、ヨウ化カリウム0.1重量部)の中に5分間浸してヨウ素による染色処理を行い、次いで50℃の3%硼酸水溶液中で5.5倍に延伸した。延伸処理の後、50℃の5%硼酸水溶液中に延伸フィルムを2分間浸し、その後、30℃の0.2%塩化カリウム水溶液中にて1分間浸し、水洗後、40℃の空気中で乾燥して本発明の偏光フィルムを得た。偏光フィルムの硼酸含有量は22.5重量%、塩素イオン含有量は310ppmであった。
【0036】
得られた偏光フィルムの両面にTACフィルム(富士写真フィルム製T80UZ)をポバール系接着剤にてラミネートした後、70℃×5分間乾燥して本発明の偏光板を得た。この偏光板は、パラレルニコルにおける色相a*=−0.87、色相b*=0.59である無彩色であった。
【0037】
実施例4
ポリビニルアルコールフィルム(クラレ株式会社製VF−XS)を30℃の水中にて5分間膨潤させた後、ポリビニルアルコールフィルムを30℃の染色液(水100重量部に対しヨウ素0.05重量部、ヨウ化カリウム0.1重量部)の中に5分間浸してヨウ素による染色処理を行い、次いで50℃の3%硼酸水溶液中で5.5倍に延伸した。延伸処理の後、50℃の5%硼酸水溶液中に延伸フィルムを2分間浸し、その後、30℃の5%塩化カリウム水溶液中にて1分間浸し、水洗後、40℃の空気中で乾燥して本発明の偏光フィルムを得た。偏光フィルムの硼酸含有量は21.5重量%、塩素イオン含有量は5、000ppmであった。
【0038】
得られた偏光フィルムの両面にTACフィルム(富士写真フィルム製T80UZ)をポバール系接着剤にてラミネートした後、70℃×5分間乾燥して本発明の偏光板を得た。この偏光板は、パラレルニコルにおける色相a*=−0.91、色相b*=0.49である無彩色であった。
【0039】
比較例1
ポリビニルアルコール(厚さ75μm)(クラレ株式会社製VF−XH)を30℃の水中にて5分間膨潤させた後、ポリビニルアルコールフィルムを35℃の染色液(水100重量部に対しヨウ素0.05重量部、ヨウ化カリウム0.1重量部)の中に5分間浸してヨウ素による染色処理を行い、次いで50℃の2%硼酸水溶液中で4.7倍にフィルムを延伸した。延伸処理の後、25℃の水中にて2分間フィルムを洗浄後、40℃の空気中で乾燥して比較用の偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの硼酸含有量は16.5重量%、塩素イオン含有量は30ppmであった。
【0040】
得られた偏光フィルムの両面にTACフィルム(富士写真フィルム製T80UZ)をポバール系接着剤にてラミネートした後、60℃×5分間乾燥して偏光板を得た。この偏光板は、パラレルニコルにおける色相a*=−0.87、色相b*=0.68である無彩色であった。
【0041】
実施例1乃至実施例4及び比較例1において得られた本発明の及び比較用の偏光板を通常の液晶表示装置の部材として用いる場合と同様にガラス基板と液晶セル(LCD)に貼り、高温条件(85℃)および高温高湿条件(60℃×90%RH)の環境条件下で試験を行ったその結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1は高温条件(85℃)および高温高湿条件(60℃×90%)下においてそれぞれ1000時間放置する試験を行った際の「偏光度変化」と「色変化(Δ(a*.b*))、及び「LCDに貼った結果」を示している。ここで、「偏光度変化」とは、試験前と試験後との偏光度の差を示し、“+”は試験後の偏光度が試験前の偏光度よりも上昇したことを示し、“−”は試験後の偏光度が試験前の偏光度よりも減少したことを示す。また、「色変化(Δ(a*.b*))」は、数式{(Δa*)2+(Δb*)2}1/2である。Δa*、Δb*はそれぞれ試験前と試験後とのパラレルニコルにおける色相a*の変化量、色相b*の変化量である。即ち、Δ(a*.b*)は試験前と試験後との偏光板の色相の変化を示す。「LCDに貼った結果」とは、各試験後の液晶表示状態を目視により評価した結果である。
【0044】
表1に示すように、本発明の偏光板は、高温条件(85℃)下、及び高温高湿条件(60℃×90%RH)下において、長時間(1000h)放置した場合の偏光度変化は、比較例1に示す偏光板に対して少なく、耐久性が向上している。また、色変化(Δ(a*.b*))は、比較例1に示す偏光板の値に対して、本発明の偏光板の値は小さいものとなっている。これは、本発明の偏光板は変色がほとんど起こっていない、即ち無彩色の色相を試験後も保っていることを示している。また、本発明の液晶表示状態に問題が生じることもなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素が吸着、配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムであって、硼酸及び200〜10、000ppmの塩素イオンを含有することを特徴とする偏光フィルム。
【請求項2】
偏光フィルム中の硼酸の含有量が5〜40重量%である請求項1記載の偏光フィルム。
【請求項3】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、ヨウ素による処理(染色処理)、延伸処理及び硼酸による処理(硼酸処理)を任意の順序で施して得られた、硼酸及びヨウ素を含有したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを塩素化合物を含有する水溶液で処理することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の偏光フィルムの製造法。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、ヨウ素による処理(染色処理)を施した後、延伸処理、硼酸処理、塩素化合物を含有する水溶液による処理をこの順序で施すことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の偏光フィルムの製造法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の偏光フィルムの片面または両面に保護フィルムが貼合されてなることを特徴とする偏光板。
【請求項6】
保護フィルムがアセテート系樹脂フィルムである請求項5の偏光板。
【請求項7】
保護フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムである請求項5の偏光板。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の偏光板を備えてなる液晶表示装置。

【国際公開番号】WO2005/029143
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514036(P2005−514036)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013413
【国際出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(594190998)株式会社ポラテクノ (30)
【Fターム(参考)】