説明

偏光光学素子およびポリウレタン含有フィルムを調製する方法

硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムを調製する方法であって、a)イソシアネート官能基を有するポリウレタン材料を含む第1の成分を準備するステップ;b)イソシアネートと反応する活性水素を含む官能基を有する材料を第2の成分として準備するステップ;c)第1の成分および第2の成分を混合して、反応混合物を生成するステップ;d)反応混合物を支持基材に実質的に均一な厚さで流延して、その上にフィルムを形成するステップ;e)支持基材上のフィルムを、硬化したフィルムを得るのに十分な温度に十分な時間加熱するステップ;およびf)硬化したフィルムを支持基材から取り外して、非複屈折性である非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを得るステップ、を含む方法が記載されている。フリーフィルムは非複屈折性である。このフィルムから調製された光学素子および物品も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本願は、2006年6月8日に出願された、米国仮特許出願第60/811,906号からの優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、偏光光学素子および物品、ならびに硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
耐久性および耐摩耗性を維持しながら許容できる画像品質を提供する偏光光学素子が、ディスプレイ、スクリーン、フロントガラス、サングラス、ファッションレンズ、非処方および処方レンズ、スポーツ用マスク、顔面防護器具、ならびにゴーグルなどの種々の用途で求められている。
【0004】
通常の偏光フィルターは、延伸またはその他の方法で配向し、ヨウ素発色団または二色性染料を含浸させたポリビニルアルコールなどのポリマー材料のシートまたは層から形成される。通常は、これらの含浸シートは、良好な光学諸特性を有するセルローストリアセテートまたはポリエチレンテレフタレートの支持フィルム間で積層されている。
【0005】
ポリウレタン−尿素などのポリウレタン含有材料は、その優れた特性、具体的には低複屈折性、弾性、ならびに耐薬品性および耐衝撃性のため、光学物品の製造において有用なポリマーとして開発されている。これらは、通常はレンズ、ガラス板などのための成形(mold)キャスティングで使用されてきた。これまで、その使用は、ポリウレタン含有ポリマーのフィルムを調製するのが困難であるため、これらの用途に限定されていた。このような問題点としては、低ゲル時間および高粘度を挙げることができ、これらの材料の通常のフィルムキャスティングが、乏しい加工性(workability)のため非常に困難になる。
【0006】
ポリマーフィルムにおける複屈折(birefringence)または「複屈折(double refraction)」は、フィルム製造操作中、ポリマーの配向によって引き起こされる可能性がある。ポリマーの分子配向によって、フィルム面内で屈折率が大幅に異なる可能性がある。複屈折は、フィルム面内での垂直方向のこれらの屈折率間の差である。複屈折性が低いまたは無視できるほどの光学材料は、ある種の光学物品、特に偏光フィルターと組み合わせた光学物品において望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
その優れた光学的および機械的諸特性を利用するために、光学素子および他の物品でフィルム層として使用するためのフリーフィルム中のポリウレタン含有材料を調製する方法を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
本発明によれば、硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを調製する方法が提供される。この方法は、
a)イソシアネート官能基を有するポリウレタン材料を含む第1の成分を準備するステップ;
b)イソシアネートと反応する活性水素を含む官能基を有する材料を含む第2の成分を準備するステップ;
c)第1の成分および第2の成分を混合して、反応混合物を生成するステップ;
d)反応混合物を支持基材に実質的に均一な厚さで流延して(cast)、その上にフィルムを形成するステップ;
e)支持基材上のフィルムを、硬化したフィルムを得るのに十分な温度に十分な時間加熱するステップ;および
f)硬化したフィルムを支持基材から取り外して、非複屈折性である非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを得るステップ
を含む。本発明の方法で調製された硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムは、優れた耐温度性および耐薬品性をもたらし、広範囲の種々のポリマーフィルムおよびコーティングと適合性がある。
【0009】
さらに、本発明は、
a)2つの対向表面を有する偏光フィルム層、および
b)上記偏光層の対向表面の少なくとも1つに付加された硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムを含む保護支持層
を組み合わせて含む偏光光学素子も対象とする。
【0010】
さらに、本発明は光学物品を提供する。上記光学物品は、
a)基材;および
b)上記基材に付加された偏光光学素子
を組み合わせて含み、b)は
i)2つの対向表面を有する偏光フィルム層;および
ii)偏光層の対向表面の少なくとも1つに付加された硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを含む保護支持層、
を組み合わせて含む。本発明の光学物品は、ディスプレイ、スクリーン、レンズ、フロントガラス、眼用物品、またはガラス板を含み得、光学物品は、液晶ディスプレイの構成要素として特に適切である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態に従う偏光光学素子の断面図である。
【図2】図2は、本発明に従う偏光光学素子の特定の実施形態の図である。
【図3】図3は、本発明に従う光学物品の断面図である。具体的には、液晶ディスプレイの断面分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形の「a」、「an」、および「the」には、はっきりかつ明白に1つの指示物に限定されない限り、複数が含まれることに留意されたい。
【0013】
本明細書では、別段の示唆のない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用されるすべての材料の量、反応条件、および他のパラメータを表す数値は、すべての場合用語「約」で修飾されていると理解されたい。したがって、反対の記載のない限り、下記の明細書および添付の特許請求の範囲で記載の数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。最低でも、均等論の特許請求の範囲への適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効数字の数を考慮に入れて一般的な丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0014】
本明細書では数値範囲はすべて、記載された数値範囲内のすべての数値およびすべての数値の範囲を包含する。本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体例に記載されている数値はできる限り正確に報告されている。しかし、任意の数値は、それぞれの試験測定で見られる標準偏差に必ず起因する一定の誤差を本来含んでいる。
【0015】
本明細書に提示されている本発明の様々な実施形態および実施例はそれぞれ、本発明の範囲に関して限定するものでないと理解されるべきである。
【0016】
下記の説明および特許請求の範囲で使用されるように、下記の用語は指示された意味を有する。
【0017】
用語「アクリリック(acrylic)」と「アクリレート」は同義で使用され(ただし、そうすることが意図する意味を変更しない限りである)、別段に明確な指示のない限り、アクリル酸類、無水物類、およびそれらの誘導体、具体的にはそれらのC〜Cアルキルエステル類、低級アルキル置換アクリル酸、例えばC〜C置換アクリル酸、具体的にはメタクリル酸、エタクリル酸など、およびそれらのC〜Cアルキルエステル類を包含する。用語「(メタ)アクリリック」または「(メタ)アクリレート」は、指示された材料、例えば(メタ)アクリレートモノマーのアクリリック/アクリレートとメタクリリック/メタクリレートの両方の形を包含するよう意図されている。
【0018】
一部の特定の説明の硬化したまたは硬化性の組成物、例えば「硬化した組成物」に関連して使用される用語「硬化」、「硬化した」、または類似の用語は、硬化性組成物を形成する重合性および/または架橋性の成分の少なくとも一部分が、少なくとも部分重合および/または架橋されていることを意味する。例えば硬化性フィルム形成組成物に関連して使用される用語「硬化性」は、指示された組成物が、例えば熱、触媒、電子ビーム、化学ラジカル開始反応、および/または光開始反応、具体的には紫外線または他の化学線への曝露による光開始反応が挙げられるが、これらに限定されない手段によって重合可能または架橋可能であることを意味する。本発明の文脈では、「硬化した」組成物は、重合性または架橋性の成分の利用可能性に応じて、さらに硬化性であり続ける可能性がある。
【0019】
用語「非エラストマー性」は、典型的なエラストマーの挙動を示さない材料を意味する。すなわち、これらは、可逆的な変形またはその元の長さの少なくとも2倍への伸びを容易には起こさない。
【0020】
用語「光影響機能」、「光影響特性」、または同様な意味の用語は、指示された材料、例えばコーティング、フィルム、基材などが、材料に影響を与える入射光線、例えば可視光線、紫外(UV)線、および/または赤外(IR)線の吸収(またはフィルタリング)によって改質できることを意味する。代替の実施形態では、光影響機能は、例えば偏光子および/または二色性染料による光偏光;例えば化学線への曝露時に変色する発色団、具体的にはフォトクロミック材料、の使用による光吸収性の変化;例えば固定用色合い、具体的には通常の染料、の使用による入射光線の一部分のみの透過;あるいはこのような光影響機能の1つまたは複数の組合せであり得る。
【0021】
例えば剛性光学基材に関連して使用される用語「少なくとも1つの光影響特性を有するように適合された」は、指定された品目が、それに組み込まれたまたは付加された光影響特性を有し得ることを意味する。例えば、光影響特性を有するように適合されたプラスチックまたはポリマーマトリックスは、マトリックスが、内部にフォトクロミック色素または色合いを収容するのに十分な内部自由体積を有することを意味する。あるいは、このようなプラスチックマトリックスの表面は、それに付加しているフォトクロミックもしくは色合い層、フィルム、もしくはコーティングを有し得る可能性があり、かつ/またはそれに付加している偏光フィルムを有し得る。
【0022】
用語「上に(on)」、「に付加した(appended to)」、「に固定した(affixed to)」、「に結合した(bonded to)」、「に接着した(adhered to)」、または同様の用語は、指定の品目、例えばコーティング、フィルム、または層が、直接に物体または基材表面に接続され(重ねられ)、あるいは例えば(重ねられた)1つまたは複数の他のコーティング、フィルム、または層を介して、間接的に物体または基材表面に接続されていることを意味する。
【0023】
用語「眼用」は、目および視力に関連する素子およびデバイス、具体的にはアイウェア用レンズ、例えば矯正および非矯正レンズ、および拡大鏡を意味するが、これらに限定されない。
【0024】
例えばポリマー材料に関連して使用される用語「光学的品質」、例えば「光学的品質の樹脂」または「光学的品質の有機ポリマー材料」は、指示された材料、例えばポリマー材料、樹脂、または樹脂組成物が、その適切な光学諸特性のため、光学物品、具体的には眼用レンズとしてまたは光学物品と組み合わせて使用することができる基材、層、フィルム、またはコーティングであり、あるいはそれらを形成することを意味する。
【0025】
例えば光学基材に関連して使用される用語「剛性」は、指定された品目が自己支持性であることを意味する。
【0026】
用語「光学基材」は、指定された基材が、少なくとも4パーセントの光透過値を示し(入射光を透過する)、例えばHaze Gard Plus Instrumentを用いて550ナノメートルで測定したとき、5%未満、(基材の厚さに応じて)例えば1%未満のヘイズ値を示すことを意味する。光学基材としては、光学物品、具体的にはレンズ、光学層(例えば光学樹脂層、光学フィルム、および光学コーティング)、ならびに光影響特性を有する光学基材が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
用語「フォトクロミック受容性」は、指示された品目に組み込まれたフォトクロミック材料が商業的光学用途で必要とされる程度にその無色の形からその着色した形に変化する(次いで、その無色の形に戻る)ことが可能になるのに十分な自由体積を、その指示された品目が有することを意味する。
【0028】
例えば眼用素子および光学基材に関連して使用される用語「色合いのある(tinted)」は、指示された品目が、指示された品目の上または中に通常の着色染料、赤外および/または紫外線吸収材料などであるが、これらに限定されない固定用(fixed)光線吸収剤を含有することを意味する。色合いのある品目は、化学線に応答して大幅に変化することのない可視光線吸収スペクトルを有する。
【0029】
例えば眼用素子および光学基材に関連して使用される用語「色合いのない(non−tinted)」は、指示された品目が固定用光線吸収剤を実質的に含まないことを意味する。色合いのない品目は、化学線に応答して大幅に変化することのない可視光線吸収スペクトルを有する。
【0030】
用語「化学線」は、紫外(「UV」)光範囲から、可視光範囲を経て赤外範囲に至る、電磁放射線の波長の光を包含する。本発明で使用されるコーティング組成物を硬化するために使用することができる化学線は、一般に150〜2,000ナノメートル(nm)、180〜1,000nm、または200〜500nmの電磁放射線の波長を有する。一実施形態では、10〜390nmの波長を有する紫外線を使用することができる。適切な紫外線供給源の例としては、水銀アーク、炭素アーク、低圧、中圧または高圧水銀ランプ、過流プラズマアーク、および紫外発光ダイオードが挙げられる。適切な紫外線発光ランプは、ランプ管の長さ全体で200〜600ワット/インチ(79〜237ワット/センチメートル)の出力を有する中圧水銀蒸気ランプである。
【0031】
例えば眼用素子および光学基材に関連して使用される用語「色合いのあるフォトクロミック」は、指示された品目が固定用光吸収剤およびフォトクロミック材料を含有することを意味する。指示された品目は、化学線に応答して変わり、化学線が取り除かれたとき熱的に可逆である可視光線吸収スペクトルを有する。例えば、色合いのあるフォトクロミック品目は、光吸収剤(例えば着色染料)の第1の特性、および光吸収剤とフォトクロミック材料が化学線に曝露されたときの活性化されたフォトクロミック材料との組合せの第2の色特性を有することがある。
【0032】
用語「二色性材料」、「二色性染料」、または同様の用語は、透過線の2つの直交面偏光成分の一方を他方より強く吸収する材料/染料を意味する。二色性材料は限定されるものではないが、例えばインジゴイド類、チオインジゴイド類、メロシアニン類、インダン類、アゾおよびポリ(アゾ)染料類、ベンゾキノン類、ナフトキノン類、アントラキノン類、(ポリ)アントラキノン類、アントラピリミジノン類、ヨウ素およびヨーデート類(iodate)が挙げられる。用語「二色性」は、「偏光性」または同様な意味の言葉と同義である。
【0033】
用語「二色性フォトクロミック」は、二色性とフォトクロミック性とを共に示す指定の材料または物品を意味する。限定されるものではないが、代替の実施形態では、指定の材料としては、フォトクロミック色素/化合物と二色性染料/化合物、またはフォトクロミック性と二色性とを共に有する単一染料/化合物を挙げることができる。
【0034】
例えば基材、フィルム、材料、および/またはコーティングに関連して使用される用語「透過性」は、指示された基材、コーティング、フィルム、および/または材料が、目立つような分散なしに光を透過させ、したがって向こうにある物体が完全に目に見える特性を有することを意味する。
【0035】
語句「少なくとも一部のフィルム」は、基材の完全な表面に至るまで少なくとも一部分を覆うフィルムの量を意味する。「フィルム」は、シーティング型の材料またはコーティング型の材料によって形成することができる、材料の実質的に連続した薄層と定義される。本明細書では、「フリーフィルム」は、自己充足的な構造的完全性の物品、すなわち、必ずしも支持基材と接触しておらず、かつそれを必要としない薄いシートを含む。
【0036】
用語「フォトクロミックの量」は、活性化時に肉眼で識別できるフォトクロミック効果を生じるのに十分な量のフォトクロミック材料が使用されていることを意味する。特定の使用量は、その照射時に望まれる色の強度、およびフォトクロミック材料を組み込むために使用される方法に依存することが多い。通常は、限定されないが、別の実施形態では、フォトクロミック材料が組み込まれる量が多くなるほど、色の強度がある限界まで大きくなる。望むならより多量の材料を添加することができるが、ある段階以後、より多量の材料を添加しても注目すべき効果がない。
【0037】
用語「重ねられた」は、積層物品において別の指定の層の上にまたはそれに続いて接触させられた(apply)コーティングまたはフィルムを示す。
【0038】
上記の通り、本発明は、硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを調製する方法を対象とする。この方法は、
a)イソシアネート官能基を有するポリウレタン材料を含む第1の成分を準備するステップ;
b)イソシアネートと反応する活性水素を含む官能基を有する材料を含む第2の成分を準備するステップ;
c)第1の成分および第2の成分を混合して、反応混合物を生成するステップ;
d)反応混合物を支持基材に実質的に均一な厚さで流延して、その上にフィルムを形成するステップ;
e)支持基材上のフィルムを、硬化したフィルムを得るのに十分な温度に十分な時間加熱するステップ;および
f)硬化したフィルムを支持基材から取り外して、非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを得るステップ
を含む。このフリーフィルムは非複屈折性である。いくつかの実施形態では、ポリウレタン含有材料を調製するために使用される材料に応じて、フリーフィルムは、少なくとも9000psiの破断応力、および少なくとも70%の破断歪を示し得る。。
【0039】
第1の成分で使用するためのイソシアネート官能基を有する適切なポリウレタン材料としては、(a)ポリイソシアネートと(b)イソシアネート類と反応する活性水素を含む基を有する材料とに由来するポリウレタンプレポリマー類を挙げることができる。
【0040】
第1の成分中のポリウレタン材料の調製で有用なポリイソシアネート類は、多数であり、広範囲である。限定するものではないが、例えば脂肪族ポリイソシアネート類、イソシアナト基の1つまたは複数が脂環式環に直接結合している脂環式ポリイソシアネート類、イソシアナト基の1つまたは複数が脂環式環に直接結合していない脂環式ポリイソシアネート類、イソシアナト基の1つまたは複数が芳香族環に直接結合している芳香族ポリイソシアネート類、およびイソシアナト基の1つまたは複数が芳香族環に直接結合していない芳香族ポリイソシアネート、およびそれらの混合物を挙げることができる。一部の用途では、ポリウレタン含有物を着色(例えば、黄変)させない材料を慎重に選択しなければならない。
【0041】
ポリイソシアネートとしては、脂肪族または脂環式のジイソシアネート類、芳香族ジイソシアネート類、それらの環式ダイマーおよび環式トリマー、ならびにそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。適切なポリイソシアネート類は限定されるものではないが、例えば、Bayerから市販されているDESMODUR N 3300(ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー);DESMODUR N 3400(60%のヘキサメチレンジイソシアネートダイマーおよび40%のヘキサメチレンジイソシアネートトリマー)を挙げることができる。非限定的な実施形態では、ポリイソシアネートとしては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびそれらの異性体混合物を挙げることができる。本明細書および特許請求の範囲では、用語「異性体混合物」は、ポリイソシアネートのシス−シス、トランス−トランス、および/またはシス−トランス異性体の混合物を意味する。本発明で使用するための異性体混合物は限定されるものではないが、例えば以下「PICM」(パライソシアナトシクロヘキシルメタン)と呼ばれる4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)のトランス−トランス異性体、PICMのシス−トランス異性体、PICMのシス−シス異性体、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0042】
本発明で使用するための適切な異性体としては、次の4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の3種類の異性体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
【化1】

PICMは、当技術分野でよく知られている手順、具体的には参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2,644,007号;第2,680,127号、および第2,908,703号に開示される手順で、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(PACM)をホスゲン化することによって調製することができる。PACM異性体混合物は、ホスゲン化時に、室温において液相、部分的液相、または固相中でPICMを生成することができる。あるいは、PACM異性体混合物は、水およびメタノールやエタノールなどのアルコール類の存在下でメチレンジアニリンの水素化および/またはPACM異性体混合物の分別結晶化によって得ることができる。
【0044】
使用することができる追加の脂肪族および脂環式ジイソシアネート類としては、Arco Chemicalから市販されている3−イソシアナト−メチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(「IPDI」)、およびCytec Industries Inc.から商標名TMXDI(登録商標)(メタ)脂肪族イソシアネートで市販されているメタ−テトラメチルキシレンジイソシアネート(1,3−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)−ベンゼン)が挙げられる。
【0045】
本明細書および特許請求の範囲では、用語「脂肪族および脂環式ジイソシアネート類」は、2つのジイソシアネート反応性末端基を有する直鎖または環化物で連結している6〜100個の炭素原子を意味する。本発明の非限定的な実施形態では、本発明で使用するための脂肪族および脂環式ジイソシアネート類としては、TMXDIおよび式R−(NCO)の化合物(式中、Rは脂肪族基または脂環式基を表す)を挙げることができる。
【0046】
第1の成分のポリウレタン材料を調製するために使用される活性水素を含む基を含む材料(b)は、ヒドロキシル(OH)基、ならびに望むならイソシアネートと反応する他の活性水素基(例えば、アミノ基)および/またはチオール基を含む、いずれの化合物または化合物の混合物でもよい。材料(b)は、OH基、および第一級アミン基、第二級アミン基、チオール基、ならびに/またはそれらの組合せを含む少なくとも2つの活性水素を含む基を有する化合物を含み得る。OH基を有する単一の多官能性化合物を使用してもよい。あるいは混合官能基を有する単一の多官能性化合物を使用してもよく、または混合物を使用してもよい。いくつかの異なる化合物は、同じまたは異なる官能基を有する混合物として使用することができる。例えば、異なる2種類のポリアミンを使用することができ、ポリアミン類と混合したポリチオール類を使用することができ、または例えばヒドロキシル官能性ポリチオール類と混合したポリアミン類が適切である。
【0047】
第1の成分中のポリウレタン材料の調製において本発明で使用するための適切なOHを含む材料としては、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカプロラクトンポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
ポリエーテルポリオール類の例は、ポリアルキレンエーテルポリオール類であり、次の構造式を有するポリアルキレンエーテルポリオール類を挙げることができる:
【0049】
【化2】

式中、置換基R1は水素、または混合置換基を含む1〜5個の炭素原子を有する低級アルキルであり、nは、通常は2〜6であり、mは8〜100以上である。ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール類、ポリ(オキシテトラエチレン)グリコール類、ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)グリコール類、およびポリ(オキシ−1,2−ブチレン)グリコール類が挙げられる。アルキレンオキシド類は限定されるものではないが、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、アラルキレンオキシド類、具体的にはスチレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。非限定的な別の実施形態では、ポリオキシアルキレンポリオール類は、アルキレンオキシドの混合物を用いて、ランダムまたは段階的オキシアルキル化で調製することができる。
【0050】
様々なポリオール類、例えばジオール類、具体的にはエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAなど、または他の高次ポリオール類、具体的にはトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールなどのオキシアルキル化によって生成されたポリエーテルポリオール類も有用である。指示されるように利用することができる高次官能性ポリオール類は、例えばスクロースやソルビトールなどの化合物のオキシアルキル化によって作製することができる。1つの一般的に利用されるオキシアルキル化方法は、酸性または塩基性触媒の存在下におけるポリオールとアルキレンオキシド、例えばプロピレンまたはエチレンオキシドの反応である。特定のポリエーテル類としては、E.I.Du Pont de Nemours and Company,Inc.から入手可能な名称TERATHANEおよびTERACOL、ならびにGreat Lakes Chemical Corp.の子会社であるQ O Chemicals,Inc.から入手可能なPOLYMEGで販売されているものが挙げられる。
【0051】
本発明で使用するためのポリエーテルグリコール類としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0052】
ポリエーテル含有ポリオールは、エチレンオキシド−プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシド−ブチレンオキシドのブロックを含めて、ブロックコポリマーを含み得る。BASFから市販されているPLURONIC R、PLURONIC L62D、TETRONIC R、およびTETRONICは、本発明でポリエーテル含有ポリオール材料として使用することができる。
【0053】
適切なポリエステルグリコール類としては、4〜10個の炭素原子を有する1つまたは複数のジカルボン酸類、具体的にはアジピン酸、コハク酸、またはセバシン酸と、2〜10個の炭素原子を有する1つまたは複数の低分子量グリコール類、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、および1,10−デカンジオールとのエステル化生成物を挙げることができるが、これらに限定されない。非限定的な実施形態では、ポリエステルグリコール類は、アジピン酸と2〜10個の炭素原子を有するグリコール類とのエステル化生成物であり得る。
【0054】
本発明で使用するための適切なポリカプロラクトングリコール類としては、E−カプロラクトンと上記の低分子量グリコール類の1つまたは複数との反応生成物を挙げることができる。ポリカプロラクトンは、2官能性活性水素化合物、具体的には水または上記の低分子量グリコール類の少なくとも1つの存在下でカプロラクトンを縮合することによって調製してもよい。ポリカプロラクトングリコール類の特定の例としては、Solvay Corp.からCAPA(登録商標)2047およびCAPA(登録商標)2077として入手可能なポリカプロラクトンポリエステルジオール類が挙げられる。
【0055】
ポリカーボネートポリオール類は当技術分野で知られており、具体的にはRavecarbTM 107(Enichem S.p.A.)が市販されている。非限定的な実施形態では、米国特許第4,160,853号に記載されているようになど、ポリカーボネートポリオールは、有機グリコール、具体的にはジオールとジアルキルカーボネートを反応させることによって生成することができる。非限定的な実施形態では、ポリオールとしては、様々な重合度のポリヘキサメチルカーボネートを挙げることができる。
【0056】
グリコール材料は、低分子量ポリオール類、具体的には分子量が500未満のポリオール類、およびそれらの適合性混合物を含み得る。本明細書では、用語「適合性」は、単一相が形成されるようにグリコール類が相互に可溶性であることを意味する。これらのポリオール類は限定されるものではないが、例えば低分子量ジオール類およびトリオール類を挙げることができる。使用する場合、トリオールの量は、ポリウレタンにおいて架橋度が高くならないように選択される。高架橋度によって、適度な熱および圧力で形成することができない硬化性ポリウレタンを生じる可能性がある。有機グリコールは、通常は2〜16個、または2〜6個、または2〜10個の炭素原子を含む。このようなグリコール類は限定されるものではないが、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−、1,3−および1,4−ブタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、1,3−、2,4−および1,5−ペンタンジオール、2,5−および1,6−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ビス(ヒドロキシエチル)−シクロヘキサン、グリセリン、テトラメチロールメタン、具体的にはペンタエリトリトール、トリメチロールエタン、およびトリメチロールプロパン、ならびにそれらの異性体を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0057】
OHを含む材料の重量平均分子量は、例えば少なくとも60、具体的には少なくとも90、または少なくとも200であり得る。さらに、OHを含む材料の重量平均分子量は、例えば10,000未満、具体的には7000未満、または5000未満、または2000未満であり得る。
【0058】
本発明で使用するためのOHを含む材料としては、少なくとも1つの低分子量ジカルボン酸、具体的にはアジピン酸から生成されるターエステル類を挙げることができる。
【0059】
本発明で使用するためのポリエステルグリコール類およびポリカプロラクトングリコール類は、例えばD. M. Young、F. Hostettlerら、「Polyesters from Lactone」、Union Carbide F−40、147頁の論文に記載されている既知のエステル化またはエステル交換手順で調製することができる。
【0060】
ポリエステルグリコール類は、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸;1,10−デカンジオールとアジピン酸;または1,10−デカンジオールとカプロラクトンの反応によっても調製することができる。
【0061】
非限定的な代替実施形態では、本発明で使用するためのOHを含む材料は、(a)アジピン酸と、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、または1,10−デカンジオールから選択された少なくとも1つのジオールとのエステル化生成物;(b)E−カプロラクトンと、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、または1,10−デカンジオールから選択された少なくとも1つのジオールとの反応生成物;(c)ポリテトラメチレングリコール;(d)脂肪族ポリカーボネートグリコール類、および(e)それらの混合物から選択することができる。
【0062】
チオール含有材料を使用して、ハイインデックスポリウレタン含有フィルム;すなわち、比較的に高い屈折率を有するフィルムを調製するためのプレポリマー、具体的には硫黄含有イソシアネート官能性ポリウレタンを生成することができる。これらの実施形態では、第1の成分として使用されるポリウレタンプレポリマーは、ポリウレタンプレポリマーを調製するために使用されるポリチオールおよび/またはポリチオールオリゴマーにジスルフィド結合が含まれているため、ジスルフィド結合を含む可能性があることに留意されたい。
【0063】
チオール含有材料は、少なくとも2つのチオール官能基を有することができ、ジチオール、2つを超えるチオール官能基を有する化合物、またはジチオールと2つを超えるチオール官能基を有する化合物(高次ポリチオール)との混合物を含み得る。このような混合物としては、ジチオール類の混合物および/または高次ポリチオール類の混合物を挙げることができる。チオール官能基は、少数(すなわち、すべての基の50パーセント未満)が鎖に沿った懸垂型であり得るが、通常は末端基である。化合物(a)は、さらに少数の他の活性水素官能基(すなわち、チオールとは異なる)、例えばヒドロキシル官能基を含むことがある。チオール含有材料は、鎖状または分岐状であり得、環式アルキル、アリール、アラルキル、またはアルカリール(alkaryl)基を含み得る。
【0064】
チオール含有材料は、実質的に線状のオリゴマーポリチオールが生成されるように選択することができる。したがって、材料がジチオールと2つを超えるチオール官能基を有する化合物との混合物を含む場合、2つを超えるチオール官能基を有する化合物は、混合物の10重量パーセントまでの量で存在し得る。
【0065】
適切なジチオール類としては、鎖状または分岐状の脂肪族、脂環式、芳香族、ヘテロ環式、ポリマー性、オリゴマー性のジチオール類、およびそれらの混合物を挙げることができる。ジチオールは、エーテル結合(−O−)、スルフィド結合(−S−)、ポリスルフィド結合(−S−、式中、xは少なくとも2、または2〜4である)、およびこのような結合の組合せを含めて、種々の結合を含み得るが、これらに限定されない。
【0066】
本発明で使用するための適切なジチオール類は限定されるものではないが、例えば2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、ジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)、エタンジチオール、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、エチレングリコールジ(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)、ポリ(エチレングリコール)ジ(2−メルカプトアセテート)、およびポリ(エチレングリコール)ジ(3−メルカプトプロピオネート)、ベンゼンジチオール、4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール、4,4’−チオジベンゼンチオール、およびそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0067】
ジチオールとしては、ジスルフィド結合を有するジチオールオリゴマー類、具体的には次式で表される材料を挙げることができる:
【0068】
【化3】

式中、nは1〜21の整数を表し得る。
【0069】
式Iで表されるジチオールオリゴマー類は、当技術分野で知られているように、例えば塩基性触媒の存在下で2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアンと硫黄との反応によって調製することができる。
【0070】
ポリチオール類中のSH基の性質としては、酸化的カップリングが容易に起こることができ、ジスルフィド結合が形成される。様々な酸化剤は、このような酸化的カップリングを生じることができる。空気中の酸素は、場合によってはポリチオールの貯蔵中にこのような酸化的カップリングを招く恐れがある。チオール基の酸化的カップリングのあり得るメカニズムは、チイルラジカル(thiyl radical)が生成し、続いて前記チイルラジカルがカップリングして、ジスルフィド結合が形成されるものであると考えられる。さらに、ジスルフィド結合の形成は、チイルラジカルの生成を招き得る条件下で起こり得ると考えられる。この条件としては、ラジカル開始反応を伴う反応条件が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のポリチオール類の調製において化合物(a)として使用するためのポリチオール類としては、貯蔵中に形成されたジスルフィド結合を含む種を挙げることができる。
【0071】
第1の成分中のポリウレタン材料の調製において材料(b)中で使用するためのポリチオール類としては、ポリチオールの合成中に形成されたジスルフィド結合を含む種も挙げることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するためのジチオールとしては、次の構造式で表される少なくとも1つのジチオールを挙げることができる。
【0073】
【化4】

1,3−ジチオラン(例えば、式IIおよびIII)または1,3−ジチアン(例えば、式IVおよびV)を含むスルフィドを含むジチオール類は、米国特許第7,009,032B2号に記載されるように、asym−ジクロロアセトン(asym−dichloroacetone)とジメルカプタンを反応させ、次いでその反応生成物とジメルカプトアルキルスルフィド、ジメルカプタンまたはそれらの混合物とを反応させることによって調製することができる。
【0074】
asym−ジクロロアセトンとの反応で使用するための適切なジメルカプタンは限定されるものではないが、例えば次式で表される材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
【化5】

式中、YはCHまたは(CH−S−CH)を表し得、nは0〜5の整数であり得る。本発明においてasym−ジクロロアセトンとの反応のためのジメルカプタンは、例えばエタンジチオール、プロパンジチオール、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0076】
上記の反応を実施するのに適したasym−ジクロロアセトンおよびジメルカプタンの量は変えることができる。例えば、asym−ジクロロアセトンおよびジメルカプタンは、ジクロロアセトンとジメルカプタンのモル比が1:1〜1:10となり得る量で、反応混合物中に存在し得る
asym−ジクロロアセトンとジメルカプタンを反応させるのに適切な温度は、しばしば0〜100℃で変えることができる。
【0077】
asym−ジクロロアセトンとジメルカプタンの反応生成物との反応で使用するための適切なジメルカプタン類は限定されるものではないが、例えば上記の一般式VIで表される材料、芳香族ジメルカプタン類、シクロアルキルジメルカプタン類、複素環式ジメルカプタン類、分岐ジメルカプタン類、およびそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0078】
asym−ジクロロアセトンとジメルカプタンの反応生成物との反応で使用するための適切なジメルカプトアルキルスルフィド類は限定されるものではないが、例えば次式で表される材料を挙げることができる:
【0079】
【化6】

式中、XはO、S、またはSeを表し得、nは0〜10の整数であり得、mは0〜10の整数であり得、pは、1〜10の整数であり得、qは0〜3の整数であり得、ただし(m+n)が1〜20の整数であることを条件にする。
【0080】
本発明で使用するための適切なジメルカプトアルキルスルフィド類は限定されるものではないが、例えば分岐ジメルカプトアルキルスルフィド類を挙げることができる。
【0081】
asym−ジクロロアセトンとジメルカプタンとの反応生成物と反応させるのに適したジメルカプタン、ジメルカプトアルキルスルフィド、またはそれらの混合物の量は、変えることができる。通常は、ジメルカプタン、ジメルカプトアルキルスルフィド、またはそれらの混合物は、反応生成物とジメルカプタン、ジメルカプトアルキルスルフィド、またはそれらの混合物との当量比が1:1.01〜1:2となり得る量で、反応混合物中に存在し得るさらに、この反応を実施するのに適切な温度は、0〜100℃の範囲内で変えることができる。
【0082】
asym−ジクロロアセトンとジメルカプタンとの反応は、酸触媒の存在下で実施することができる。酸触媒は、当技術分野で知られている広範な種々のもの、具体的にはルイス酸類およびブレンステッド酸類から選択することができるが、これらに限定されない。適切な酸触媒は限定されるものではないが、例えばUlmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、1992年、A21巻、673〜674頁に記載されている酸触媒を挙げることができる。酸触媒は、三フッ化ホウ素エーテラート、塩酸、トルエンスルホン酸、およびそれらの混合物から選択されることが多い。酸触媒の量は、反応混合物の0.01〜10重量パーセントで変えることができる。
【0083】
あるいは、asym−ジクロロアセトンとジメルカプタンとの反応生成物を、塩基の存在下でジメルカプトアルキルスルフィド、ジメルカプタン、またはそれらの混合物と反応させることができる。塩基は、当技術分野で知られている広範な種々のもの、具体的にはルイス塩基類およびブレンステッド塩基類から選択することができるが、これらに限定されない。適切な塩基類は限定されるものではないが、例えばUlmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、1992年、A21巻、673〜674頁に記載されている塩基類を挙げることができる。塩基は、水酸化ナトリウムであることが多い。塩基の量は変えることができる。通常は、塩基と最初の反応の反応生成物との適切な当量比は、1:1〜10:1であり得る。
【0084】
asym−ジクロロアセトンとジメルカプタンとの反応は、溶媒の存在下で実施することができる。溶媒は、有機溶媒から選択することができるが、これらに限定されない。適切な溶媒は限定されるものではないが、例えばクロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、酢酸、およびそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0085】
別の実施形態では、asym−ジクロロアセトンとジメルカプタンとの反応生成物を、溶媒の存在下または非存在下にジメルカプトアルキルスルフィド、ジメルカプタン、またはそれらの混合物と反応させることができる。ここで、溶媒は有機溶媒から選択することができるが、これらに限定されない。適切な有機溶媒は限定されるものではないが、例えばアルコール類、具体的にはメタノール、エタノール、およびプロパノール(ただし、これらに限定されない);芳香族炭化水素溶媒、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン(ただし、これらに限定されない);ケトン類、具体的にはメチルエチルケトン(ただし、これに限定されない);水;ならびにそれらの混合物を挙げることができる。
【0086】
asym−ジクロロアセトンとジメルカプタンとの反応は、脱水試薬の存在下で実施することもできる。脱水試薬は、当技術分野で知られている広範な種々のものから選択することができる。この反応で使用するための適切な脱水試薬としては、硫酸マグネシウムを挙げることができるが、これに限定されない。脱水試薬の量は、脱水反応の化学量論に従って広範に変えることができる。
【0087】
第1の成分中のポリウレタン材料の調製において材料(b)で使用するためのポリチオール類は、いくつかの非限定的な実施形態で、2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチオランとジメルカプトジエチルスルフィドを反応させて、式IIIのジメルカプト−1,3−ジチオラン誘導体を生成することによって調製することができる。あるいは、2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチオランと1,2−エタンジチオールを反応させて、式IIのジメルカプト−1,3−ジチオラン誘導体を生成することができる。2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチアンとジメルカプトジエチルスルフィドを反応させて、式Vのジメルカプト−1,3−ジチアン誘導体を生成することができる。また、2−メチル−2−ジクロロメチル−1,3−ジチアンと1,2−エタンジチオールを反応させて、式IVのジメルカプト−1,3−ジチアン誘導体を生成することもできる。
【0088】
材料(b)として使用するのに適したジチオールの別の非限定的な例としては、ジクロロ誘導体とジメルカプトアルキルスルフィドを以下の通り反応させることによって調製された少なくとも1つのジチオールオリゴマーを挙げることができる:
【0089】
【化7】

式中、RはCH、CHCO、C〜C10アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル、またはアルキル−COを表し得;YはC〜C10アルキル、シクロアルキル、C〜C14アリール、(CH(S)(CH、(CH(Se)(CH、(CH(Te)(CHを表し得る、ただしmは1〜5の整数であり得、pおよびqはそれぞれ、1〜10の整数であり得;nは1〜20の整数であり得;xは0〜10の整数であり得る。
【0090】
ジクロロ誘導体とジメルカプトアルキルスルフィドとの反応は、塩基の存在下で実施することができる。適切な塩基類には、上記に開示するものに加えて、当業者に知られているいずれも含まれる。
【0091】
ジクロロ誘導体とジメルカプトアルキルスルフィドとの反応は、相間移動触媒の存在下で実施してもよい。本発明で使用するための適切な相間移動触媒は周知であり、様々である。非限定的な例としては、テトラアルキルアンモニウム塩類およびテトラアルキルホスホニウム塩類を挙げることができるが、これらに限定されない。この反応は、相間移動触媒としてテトラブチルホスホニウムブロミドの存在下で実施されることが多い。相間移動触媒の量は、ジメルカプトスルフィド反応物に対して0〜50当量%、または0〜10当量%、または0〜5当量%で広範に変えることができる。
【0092】
材料(b)で使用するためのポリチオール類は、さらにヒドロキシル官能基を含み得る。ヒドロキシルと複数の(1つを超える)チオール基とを有する適切な材料は限定されるものではないが、例えばグリセリンビス(2−メルカプトアセテート)、グリセリンビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールビス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリトリトールトリス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリトリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、およびそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0093】
上記に開示するジチオール類に加えて、適切なジチオール類の特定の例としては、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,3−ペンタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,3−ジメルカプト−3−メチルブタン、ジペンテンジメルカプタン、エチルシクロヘキシルジチオール(ECHDT)、ジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)、メチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン(DMMD)、エチレングリコールジ(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0094】
材料(b)で使用するための適切な3官能性または高次官能性ポリチオール類は、当技術分野で知られている広範な種々のものから選択することができる。非限定的な例としては、ペンタエリトリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、および/またはチオグリセロールビス(2−メルカプトアセテート)を挙げることができる。
【0095】
例えば、ポリチオールは、次の一般式で表される材料から選択することができる:
【0096】
【化8】

式中、RおよびRはそれぞれ独立に、直鎖または分枝鎖のアルキレン、環式アルキレン、フェニレン、およびC〜Cアルキル置換フェニレンから選択することができる。直鎖または分枝鎖のアルキレンは限定されるものではないが、例えばメチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,2−ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、オクタデシレン、およびイコシレン(icosylene)を挙げることができる。環式アルキレン類は限定されるものではないが、例えばシクロペンチレン、シクロへキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレン、およびそれらのアルキル置換誘導体を挙げることができる。2価の結合基であるRおよびRは、メチレン、エチレン、フェニレン、ならびにアルキル置換フェニレン、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、およびノニル置換フェニレンから選択することができる。
【0097】
特定の実施形態では、ポリチオールは、(1)上記のジチオール類のいずれかと、(2)少なくとも2つの二重結合を有する化合物(例えば、ジエン)を一緒に反応させることによって調製することができる。
【0098】
少なくとも2つの二重結合を有する化合物(2)は、非環式ジエン類(直鎖および/または分岐脂肪族非環式ジエン類を含む);非芳香族環を含むジエン類(二重結合が環内に含まれていてもよく、または環内に含まれていなくてもよく、またはそれらの任意の組合せでもよく、また非芳香族単環式基または非芳香族多環式基、またはそれらの組合せを含み得る非芳香族環を含むジエン類を含む);芳香族環を含むジエン類;またはヘテロ環式環を含むジエン類;あるいはこのような非環式基および/または環式基の任意の組合せを含むジエン類から選択することができる。ジエン類は、任意選択でチオエーテル、ジスルフィド、ポリスルフィド、スルホン、エステル、チオエステル、カーボネート、チオカーボネート、ウレタン、もしくはチオウレタン結合、またはハロゲン置換基、あるいはそれらの組合せを含み得る。ただし、ジエン類は、ポリチオールのSH基との反応を経て、共有C−S結合を形成することができる二重結合を含むことを条件にする。少なくとも2つの二重結合を有する化合物(2)は、互いに異なるジエン類の混合物を含むことが多い。
【0099】
少なくとも2つの二重結合を有する化合物(2)は、非環式非共役ジエン類、非環式ポリビニルエーテル類、アリル−(メタ)アクリレート類、ビニル−(メタ)アクリレート類、ジオール類のジ(メタ)アクリル酸エステル類、ジチオール類のジ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(アルキレングリコール)ジオール類のジ(メタ)アクリル酸エステル類、単環式非芳香族ジエン類、多環式非芳香族ジエン類、芳香族環を含むジエン類、芳香族環ジカルボン酸類のジアリルエステル類、芳香族環ジカルボン酸類のジビニルエステル類、および/またはそれらの混合物を含み得る。
【0100】
非環式非共役ジエン類は限定されるものではないが、例えば、次の一般式で表されるものを挙げることができる:
【0101】
【化9】

式中、Rは2価のC〜C30鎖状もしくは分岐状飽和アルキレン基、または2価のC〜C30有機基を表し得、具体的にはエーテル、チオエーテル、エステル、チオエステル、ケトン、ポリスルフィド、スルホン、およびそれらの組合せを含むものなどの基が挙げられるが、これらに限定されない。非環式非共役ジエン類は、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0102】
適切な非環式ポリビニルエーテル類は限定されるものではないが、例えば次の構造式で表されるものを挙げることができる:
CH=CH−−O−−(−−R−−O−−)−−CH=CH
式中、RはC〜Cn−アルキレン、C〜C分岐アルキレン基、または−−[(CH−−)−−O−−]−−(−−CH−−)−−であり得、mは0〜10の有理数であり得、2であることが多く;pは2〜6の整数であり得、qは1〜5の整数であり得、rは2〜10の整数であり得る。
【0103】
使用するのに適切なポリビニルエーテルモノマー類は限定されるものではないが、例えばジビニルエーテルモノマー類、具体的にはエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0104】
鎖状ジオール類のジ(メタ)アクリル酸エステル類としては、エタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,2−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0105】
ジチオール類のジ(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えばそのオリゴマーを含めて、1,2−エタンジチオールのジ(メタ)アクリレート;そのオリゴマーを含めて、ジメルカプトジエチルスルフィドのジ(メタ)アクリレート(すなわち、2,2’−チオエタンジチオールジ(メタ)アクリレート);そのオリゴマーを含めて、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオールのジ(メタ)アクリレート;そのオリゴマーを含めて、2−メルカプトエチルエーテルのジ(メタ)アクリレート;4,4’−チオジベンゼンチオールのジ(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0106】
さらに、適切なジエン類は限定されるものではないが、例えば単環式脂肪族ジエン類、具体的には次の構造式で表されるものを挙げることができる:
【0107】
【化11】

式中、XおよびYはそれぞれ独立に、2価のC1−10飽和アルキレン基;または炭素および水素原子に加えて、硫黄、酸素、およびケイ素の群から選択された少なくとも1つの元素を含む2価のC1−5飽和アルキレン基を表し得;RはHまたはC〜C10アルキルを表し得;また
【0108】
【化12】

式中、XおよびRは上記に定義する通りであり得、RはC〜C10アルケニルを表し得る。単環式脂肪族ジエン類としては、1,4−シクロヘキサジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、ジペンテン、およびテルピネンを挙げることができる。
【0109】
多環式脂肪族ジエン類は限定されるものではないが、例えば5−ビニル−2−ノルボルネン;2,5−ノルボルナジエン;ジシクロペンタジエン、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0110】
芳香族環を含むジエン類は限定されるものではないが、例えば次の構造式で表されるものを挙げることができる:
【0111】
【化13】

式中、Rは水素またはメチルを表し得る。芳香族環を含むジエン類としては、モノマー、具体的にはジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0112】
芳香族環ジカルボン酸類のジアリルエステル類としては、例えば次の構造式で表されるものを挙げることができるが、これらに限定されない:
【0113】
【化14】

式中、mおよびnはそれぞれ独立に、0〜5の整数であり得る。芳香族環ジカルボン酸類のジアリルエステル類としては、o−ジアリルフタレート、m−ジアリルフタレート、p−ジアリルフタレート、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0114】
少なくとも2つの二重結合を有する化合物(2)は、5−ビニル−2−ノルボルネン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ビニルシクロヘキセン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、ジペンテン、テルピネン、ジシクロペンタジエン、シクロドデカジエン、シクロオクタジエン、2−シクロペンテン−1−イル−エーテル、2,5−ノルボルナジエン;1,3−ジビニルベンゼン、1,2−ジビニルベンゼン、および1,4−ジビニルベンゼンを含めて、ジビニルベンゼン;1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,2−ジイソプロペニルベンゼン、および1,4−ジイソプロペニルベンゼンを含めて、ジイソプロペニルベンゼン;アリル(メタ)アクリレート、エタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメルカプトジエチルスルフィドジ(メタ)アクリレート、1,2−エタンジチオールジ(メタ)アクリレート、および/またはそれらの混合物を含み得る。
【0115】
適切なジ(メタ)アクリレートモノマーは限定されるものではないが、例えば他にエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,3−ジメチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、チオジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、およびエトキシ化ビス−フェノールAジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0116】
第1の成分中のポリウレタン材料の調製において材料(b)で使用するためのポリチオール類は、ポリイソシアネート(a)と反応したとき、少なくとも1.50、具体的には少なくとも1.52、または少なくとも1.55、または少なくとも1.60、または少なくとも1.65、または少なくとも1.67の屈折率を有する重合体を生成し得る。さらに、第1の成分中のポリウレタン材料の調製において材料(b)で使用するためのポリチオール類は、ポリイソシアネート(a)と反応したとき、少なくとも30、具体的には少なくとも35、または少なくとも38、または少なくとも39、または少なくとも40、または少なくとも44のアッベ数を有する重合体を生成し得る。屈折率およびアッベ数は、様々な既知の機器を使用して、当技術分野で知られている方法、具体的には米国標準試験方法(American Standard Test Method:ASTM) D 542−00で確定することができる。屈折率およびアッベ数は、下記を除いてASTM D 542−00に従って測定することもできる:(i)Section 7.3で指定される最小限の3個の試験片の代わりに、1〜2個の試料/試験片を試験する;および(ii)Section 8.1で指定されるように試験前に試料/試験片をコンディショニングする代わりに、コンディショニングしていない試料を試験する。さらに、AtagoモデルDR−M2多波長デジタルアッベ屈折計を使用して、試料/試験片の屈折率およびアッベ数を測定することができる。
【0117】
適切なポリチオール類としては、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第11/744,247号の[0025]〜[0092]および[0093]〜[0094]に記載されるチオエーテル官能性オリゴマーポリチオール類も挙げることができる。
【0118】
第1の成分中のポリウレタン材料の調製において材料(b)で使用するためのポリチオール類は、ポリイソシアネート(a)と反応したとき、少なくとも20N/mm、または多くの場合少なくとも50、またはより多くの場合70〜200のマルテンス硬さを有する重合体を生成することができる。このような重合体は、通常はエラストマーではない。すなわち、これらは、その剛性のため実質的には可逆的に変形可能(例えば、伸縮性)ではなく、通常はゴムおよび他のエラストマーポリマー類の特徴である特性を示さない。
【0119】
ポリアミン類(ジアミン類を含む)も、第1の成分のポリウレタン材料を調製するために使用される材料(b)で使用されるのに適している。
【0120】
第1の成分のポリウレタン材料を調製するために使用される材料(b)で使用するためのアミン官能基を有する適切な材料は、少なくとも2つの第一級および/または第二級アミン基(ポリアミン)を有し得る。適切なポリアミン類は限定されるものではないが、例えば窒素原子に結合している基が飽和または不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香族置換脂肪族、脂肪族置換芳香族、およびヘテロ環式であり得る第一級または第二級ジアミン類またはポリアミン類が挙げられる。適切な脂肪族および脂環式ジアミン類は限定されるものではないが、例えば1,2−エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、イソホロンジアミン、プロパン−2,2−シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。適切な芳香族ジアミン類は限定されるものではないが、例えばフェニレンジアミン類およびトルエンジアミン類、例えばo−フェニレンジアミンおよびp−トリレンジアミンが挙げられる。多核芳香族ジアミン類、具体的には4,4’−ビフェニルジアミン、4,4’−メチレンジアニリン、ならびに4,4’−メチレンジアニリンのモノクロロ−およびジクロロ−誘導体も適している。
【0121】
本発明で使用するのに適しているポリアミン類としては、次の化学式を有する材料を挙げることができるが、これらに限定されない:
【0122】
【化15】

式中、RおよびRはそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、およびイソプロピル基から選択することができ、Rは水素および塩素から選択することができる。本発明で使用するためのポリアミン類は限定されるものではないが、例えばLonza Ltd.(スイス、バーゼル(Basel、Switzerland))で製造された次の化合物が挙げられる:
LONZACURE(登録商標)M−DIPA:R=C;R=C;R=H
LONZACURE(登録商標)M−DMA:R=CH;R=CH;R=H
LONZACURE(登録商標)M−MEA:R=CH;R=C;R=H
LONZACURE(登録商標)M−DEA:R=C;R=C;R=H
LONZACURE(登録商標)M−MIPA:R=CH;R=C;R=H
LONZACURE(登録商標)M−CDEA:R=C;R=C;R=Cl
式中、R、R、およびRは、上記の化学式に対応する。
【0123】
ポリアミンとしては、ジアミン反応性化合物、具体的には米国でAir Products and Chemical,Inc.(米国ペンシルベニア州アレンタウン(Allentown、Pa))から入手可能な4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、(Lonzacure(登録商標)M−CDEA);商標名Ethacure 100でAlbemarle Corporationから市販されている2,4−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン、2,6−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン、およびそれらの混合物(「ジエチルトルエンジアミン」または「DETDA」と総称する);商標名Ethacure 300でAlbemarle Corporationから市販されているジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA);MOCAとしてKingyorker Chemicalsから市販されている4,4’−メチレン−ビス−(2−クロロアニリン)を挙げることができる。DETDAは室温で液体であり、25℃で156cPsの粘度を有し得る。DETDAには異性体が存在し、2,4−異性体の範囲が75〜81パーセントであり、2,6−異性体の範囲が18〜24%であり得る。Ethacure 100Sという名称で入手可能なEthacure 100の色安定化体(すなわち、黄色を低減させるための添加剤を含有する調合物)を、本発明で使用してもよい。
【0124】
ポリアミンとしては、他に例えばエチレンアミン類を挙げることができる。適切なエチレンアミン類としては、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ピペラジン、モルホリン、置換モルホリン、ピペリジン、置換ピペリジン、ジエチレンジアミン(DEDA)、および2−アミノ−1−エチルピペラジンを挙げることができるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ポリアミンは、C〜Cジアルキルトルエンジアミンの1つまたは複数の異性体、具体的には3,5−ジメチル−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジメチル−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジイソプロピル−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジイソプロピル−2,6−トルエンジアミン、およびそれらの混合物から選択することができるが、これらに限定されない。メチレンジアニリンおよびトリメチレングリコールジ(パラ−アミノベンゾエート)も適している。
【0125】
適切なポリアミン類としては、さらに例えばメチレンビスアニリン類、アニリンスルフィド類、およびビアニリン類が挙げられ、これらはいずれも、ヘテロ置換されていてもよい。ただし、置換基が反応物間で起こるどの反応にも干渉しないことを条件とする。具体例としては、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、および4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチル−3−クロロアニリン)が挙げられる。
【0126】
頻繁に用いられるアミン官能基を有する適切な材料としては、ジエチレントルエンジアミン、メチレンジアニリン、メチルジイソプロピルアニリン、メチルジエチルアニリン、トリメチレングリコールジ−パラアミノベンゾエート、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、および/または4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチル−3−クロロアニリン)の異性体が挙げられる。適切なジアミン類は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,811,506号、第3欄、44行〜第5欄、25行にも詳細に記載されている。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の成分中の材料のイソシアネート官能基は、少なくとも部分的に封鎖(cap)されていてもよい。イソシアネート基をブロックまたは封鎖する場合、当業者に知られている任意の適切な脂肪族、脂環式、または芳香族のアルキルモノアルコールまたはフェノール化合物を封鎖剤(capping agent)として使用することができる。適切なブロッキング剤としては、例えば高温ではブロックしない材料、具体的にはメタノール、エタノール、およびn−ブタノールを含めて低級脂肪族アルコール類;脂環式アルコール類、具体的にはシクロヘキサノール;芳香族−アルキルアルコール類、具体的にはフェニルカルビノールおよびメチルフェニルカルビノール;ならびにフェノール化合物、具体的にはフェノール自体、および置換フェノール(ただし、置換基がコーティング操作に影響を与えない)、具体的にはクレゾールおよびニトロフェノールが挙げられる。グリコールエーテル類も、封鎖剤として使用することができる。適切なグリコールエーテル類としては、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。他の適切な封鎖剤としては、オキシム、具体的にはメチルエチルケトキシム、アセトンオキシム、およびシクロヘキサノンオキシム;ラクタム、具体的にはε−カプロラクタム;ピラゾール、具体的にはジメチルピラゾール、ならびにアミン類、具体的にはジイソプロピルアミンが挙げられる。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態では、第1の成分中のイソシアネート官能基を有する材料は、ポリスチレンを標準物質として用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで確定して、1000まで、または500まで、または300までの数平均分子量を有し得る。
【0129】
本発明の別の非限定的な実施形態では、イソシアネート官能基を有する材料は、ポリスチレンを標準物質として用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで確定して、1000を超える、または少なくとも1500、または少なくとも2500の数平均分子量を有し得る。
【0130】
第1の成分は、溶媒をさらに含むことができる。適切な溶媒としては、イソシアネート官能基と反応しないということを条件として、当業者に知られている任意の有機溶媒を挙げることができる。可能性のある溶媒としては、アセトン、プロピオン酸アミル、アニソール、ベンゼン、酢酸ブチル、シクロヘキサン、エチレングリコールのジアルキルエーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテルおよびその誘導体(CELLOSOLVE(登録商標)工業用溶媒として販売)、二安息香酸ジエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメトキシベンゼン、酢酸エチル、メチルシクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピオン酸メチル、炭酸プロピレン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、2−メトキシエチルエーテル、3−プロピレングリコールメチルエーテル、およびそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。上記の有機溶媒に加えて、またはその代わりに、ハロゲン化溶媒、例えばハロゲン化アルカン、具体的には塩化メチレンを使用することができる。溶媒は、第1の成分の全重量に対して0〜95重量パーセント、または20〜80重量パーセント、または40〜60重量パーセントの量で、第1の成分中に存在し得る
本発明の方法で使用される第2の成分は、イソシアネートと反応する活性水素官能基を有する材料を含む。
【0131】
活性水素官能基を有する適切な材料としては、第1の成分中のイソシアネート官能基を有するポリウレタン材料の調製において材料(b)として上記に開示するものをいずれでも挙げることができる。
【0132】
第2の成分は、溶媒をさらに含むことができる。適切な溶媒としては、上記に開示するものをいずれでも挙げることができる。溶媒は、第2の成分の全重量に対して0〜95重量パーセント、または20〜80重量パーセント、または40〜60重量パーセントの量で、第2の成分中に存在し得る
本発明の方法のステップ(c)では、第1および第2の成分を混合して、反応混合物を生成する。反応混合物は、個々の成分のいずれかまたは両方の溶媒に加えて、またはその代わりに、溶媒をさらに含むことができる。溶媒は、上記に開示するもののいずれでもよい。溶媒は、反応混合物の全重量に対して0〜95重量パーセント、または20〜80重量パーセント、または40〜60重量パーセントの量で、反応混合物中に存在し得る
本発明のいくつかの実施形態では、反応混合物は、さらに界面活性剤、具体的には当技術分野でよく知られているいずれかのものを含み得る。適切な界面活性剤としては、Solutia,Inc.から入手可能なMEDAFLOW(登録商標);BYK−Chemieから入手可能なBYK−307(登録商標)およびBYK−377(登録商標)、ならびに/またはCytec Surface Specialtiesから入手可能なMULTIFLOW(登録商標)という名称で販売されているものを挙げることができるが、これらに限定されない。界面活性剤は、反応混合物中の樹脂固体の全重量に対して0.2重量パーセントまで、具体的には0.1重量パーセントまで、または0.07重量パーセントまでの量で、反応混合物中に存在し得る
本発明のいくつかの実施形態では、反応混合物は、さらにイソシアネート官能基とアミン官能基の反応を助けるための触媒を含み得る。適切な触媒は、当技術分野で知られているものから選択することができる。非限定的な例としては、第三級アミン触媒、具体的にはトリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、およびそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。このような適切な第三級アミン類は、参照によりその開示内容が本明細書に組み込まれる米国特許第5,693,738号の第10欄、6〜38行に開示されている。他の適切な触媒としては、様々な反応性成分の性質に応じて、ホスフィン類、第三級アンモニウム塩、有機リン化合物、スズ化合物、具体的にはジラウリン酸ジブチルスズ、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0133】
第1および第2の成分を混合して、反応混合物を生成した後、反応混合物を、通常の溶液方法と同様にして支持基材に流延することができる。このような基材は、一般に平滑な表面を有し、例えばガラス、ステンレス鋼などを含み得る。ただし、基材を作製する材料がその後の硬化温度に耐え得ることを条件とする。
【0134】
反応混合物を、支持基材に実質的に均一な厚さで流延して、硬化後、0.5〜20ミル(12.7〜508ミクロン)、具体的には1〜10ミル(25.4〜254ミクロン)、または2〜4ミル(50.8〜101.6ミクロン)の乾燥膜厚が得られる。
【0135】
反応混合物を基材に塗布した後、通常は周囲条件に約1〜20分間曝露することを含む温和加熱または空風乾期間によって溶媒をフィルムから排除することにより、フィルムが基材の表面上に形成される。次いで、基材上のフィルムを、硬化したフィルムを得るのに十分な温度に十分な時間加熱する。硬化操作において、溶媒は排除され、反応混合物中の反応性官能基は、一緒に反応し続ける。ポリウレタン−尿素フィルムを作製する際には、例えば加熱または硬化操作は100〜210℃の範囲の温度で10〜100分間実施され得る。代替実施形態では、硬化は、周囲(例えば、23〜27℃)〜100℃のより低い温度範囲で、より長い期間、具体的には100分間〜5日間実施され得る。硬化温度および滞留時間は、反応性基の種類、任意の触媒の有無および種類などを含めて、反応物の性質に依存する。効果的な硬化操作の後、硬化したフィルムを支持基材から取り外して、フリーフィルムを得ることができる。ポリウレタン含有フリーフィルムを調製するために使用される組成物中の材料として、離型剤を含有し得る。ポリウレタン含有フリーフィルムを調製するために使用される組成物に組み込むことができる離型剤のクラスとしては、炭化水素系離型剤、脂肪酸系離型剤、脂肪酸アミド系離型剤、アルコール系離型剤、脂肪酸エステル系離型剤、シリコーン系離型剤、C〜C16アルキルリン酸エステル系離型剤、ならびにそれらの混合物または組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。炭化水素系離型剤の適切な例としては、合成パラフィン類、ポリエチレンワックス類、およびフルオロカーボン類が挙げられる。使用することができる脂肪酸系離型剤としては、例えばステアリン酸およびヒドロキシステアリン酸が挙げられる。使用することができる脂肪酸アミド系離型剤としては、例えばステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミド、およびアルキレンビス脂肪酸アミド類を挙げることができる。アルコール系離型剤としては、例えばステアリルアルコール、セチルアルコール、および多価アルコール類、具体的にはポリグリコール類およびポリグリセロール類を挙げることができる。含有し得る脂肪酸エステル系離型剤の一例は、ステアリン酸ブチルである。C8〜16アルキルリン酸エステル系離型剤の一例は、Stepan Companyによって製造されたZELEC(登録商標)UNである。
【0136】
得られた硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムは、非複屈折性である。フリーフィルムは、面内および面外共に非複屈折性である。フリーフィルムは、3次元で非複屈折性であり得る。複屈折性は、実施例で後述するように確定する。いくつかの実施形態では、フィルムは、Instronモデル5543引張試験機を使用して確定されるように、少なくとも9000psiの破断応力、および少なくとも70%の破断歪を示し得る。
【0137】
上記の方法に従って調製された硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを使用して、本発明に従う偏光光学素子を形成することができる。
【0138】
前述したように、本発明は、(a)2つの対向表面を有する偏光フィルム層;および(b)上記偏光フィルム層の対向表面の少なくとも1つに付加された上記に記載する任意の硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを含む保護支持層を含む偏光光学素子も対象とする。光学素子の実施形態を図1に例示する。図1に示す本発明の偏光光学素子10は、
a)2つの対向表面12および13を有する偏光フィルム層11と
b)保護支持層21Aおよび21Bと
を組み合わせて含み、保護支持層21Aおよび21Bの少なくとも一方は、偏光層の対向表面12および13のそれぞれに付加された硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを含み、その結果、偏光フィルム層11は、2つの支持層21Aおよび21Bのそれぞれの間に配置されている。
【0139】
前述のように、保護支持層の少なくとも一方は、硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを含む。特定の実施形態では、保護支持層の両方が、硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムを含む。
【0140】
保護支持層の一方が硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムを含む実施形態では、他方の保護支持層は、当技術分野でよく知られている広範囲の種々の材料のいずれかから選択される異なる材料を含み得る。例えば、保護支持層(すなわち、コーティング、フィルム、またはフリーフィルム)は、ポリカーボネート、多環式アルケン、ポリウレタン、ポリ(尿素)ウレタン、ポリチオウレタン、ポリチオ(尿素)ウレタン、ポリオール(アリルカーボネート)、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ビニリデンクロリド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリスルホン、ポリオレフィン、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含み得る。本発明の特定の実施形態では、硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムを含む保護支持層とは異なる保護支持層は、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、および/またはセルロースアセテートブチレートを含み得る。偏光フィルム層は、任意の周知の偏光フィルター、具体的には延伸またはその他の方法で配向し、例えばヨウ素発色団または二色性染料を含浸させたポリマー材料のシートまたは層で形成することができる。例えば、眼用デバイスのための通常の偏光フィルターを形成する一方法は、ポリビニルアルコール(「PVA」)のシートまたは層を加熱して、PVAを軟化させ、次いでシートを延伸して、PVAポリマー鎖を配向させることである。その後、シートに、ヨウ素または染料分子が整列ポリマー鎖と結合し、特定の順序または配列となるように、ヨウ素発色団または二色性染料を含浸させる。あるいは、まずヨウ素発色団または二色性染料をPVAシートに含浸させ、その後シートを、上述したように加熱および延伸して、PVAポリマー鎖および関連する発色団または染料を配向することができる。ポリエチレンテレフタレート(PET)偏光フィルムも適している。
【0141】
ヨウ素発色団および二色性染料は、二色性材料である。すなわち、透過線の2つの直交面偏光成分の一方を他方より強く吸収する。二色性材料は、透過線の2つの直交面偏光成分の一方を優先的に吸収するが、二色性材料の分子が適切に位置付けまたは配置されていない場合、透過線の正味の偏光は実現されない。すなわち、二色性材料の分子のランダムな位置付けのため、個々の分子による選択的吸収は、正味または全体の偏光効果が実現されないように互いに相殺する。しかし、二色性材料の分子をPVAシートの配向ポリマー鎖内に適切に位置付けまたは配置することによって、正味の偏光を実現することができる。すなわち、PVAシートによって、透過線を偏光することができ、または言い換えれば、偏光フィルターを形成することができる。
【0142】
液晶材料を使用して、偏光シートまたは層を形成する方法も周知であり、このようなシートは、本発明の光学素子の偏光フィルム層として使用することができる。例えば、二色性染料を含有する配向サーモトロピック液晶フィルムから形成された偏光シートは適している。あるいは、ポリマー主鎖の一部分として共有結合している二色性染料を含有する液晶ポリマーを押し出すことによって形成された偏光シートを使用することができる。
【0143】
本発明の光学素子では、偏光フィルム層の厚さは、0.1〜10ミル(2.54〜254ミクロン)、または0.3〜2ミル(7.62〜50.8ミクロン)、または0.4〜0.7ミル(10.16〜17.78ミクロン)であり得る。
【0144】
再び図1を参照して、硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムは、偏光層11の対向表面12および13の少なくとも1つに付加されている。したがって、偏光フィルム層11は、2つの支持層21Aおよび21Bのそれぞれの間に位置で効果的に「挟まれている」。
【0145】
このような多層構造では、例えば感圧接着剤で、偏光フィルム層11と支持層21Aおよび21Bを相互に接着させることができる。あるいは、これらの層は、光学素子を組み立てる前に偏光フィルム層および/または支持層の表面処理によって、相互に接着させてもよい。このような表面処理としては、化学的または機械的処理、具体的にはエッチングまたは摩耗によるラフニング(roughening)、物理的または化学的洗浄、プラズマ処理、コロナ処理および/または接着を促進するためのコーティングの塗布を挙げることができる。当業者に周知の積層化手段も同様に使用することができる。さらに、上記の層/フィルムのいずれも、ある層の他の1つまたは複数の層への接着を容易にするための1つまたは複数の接着促進剤を含み得る。
【0146】
本発明の偏光光学素子は、追加の光影響特性、具体的には着色染料またはフォトクロミズムを有し得る。例えば、保護支持層は、色合いを与えるための着色剤を含み得る。同様に、保護支持層は、1つまたは複数のフォトクロミック材料、具体的には下記のもののいずれかを含み得る。例えば、フォトクロミック材料は、硬化したフリーフィルムにそのコーティングとして塗布し;硬化したフリーフィルムに、浸潤方法によって組み込み;フィルム形成する前に、フィルムを形成するために使用される組成物中の成分として含めることができる。また、偏光フィルム層は、二色性材料に加えて、着色剤および/またはフォトクロミック材料を含み得る。偏光フィルム層は、フォトクロミック性および偏光をフィルムに与える二色性フォトクロミック化合物/材料も含むことができる。
【0147】
本発明の偏光光学素子10は、例えば図2に例示するように、支持層21Aおよび21Bの一方または両方の上に重ねられた追加の層をさらに含むことができる。非限定的な例としては、素子を輸送中の引掻きおよび他の損傷から保護するための除去可能な保護フィルム24、素子の多層光学物品への適用を助けるための除去可能な剥離フィルム23を備えた感圧接着剤22などを挙げることができる。フォトクロミックコーティングまたはフィルム、具体的には下記に開示するものも含むことができる。
【0148】
上記に指摘したように、本発明の偏光光学素子を多層光学物品の構成要素として使用することができる。例えば、本発明によれば、偏光光学物品であって、
a)基材;および
b)偏光光学素子、具体的には上述するもののいずれか
を組み合わせて含む偏光光学物品が提供される。
【0149】
本発明の光学物品としては、眼用物品、具体的には度の入っていないレンズ(光学的パワーなし)、および多焦点レンズ(二焦点、三焦点、およびプログレッシブレンズ)を含めて、視力矯正(処方)レンズ(仕上げおよび半仕上げ);ならびに眼用デバイス、具体的にはコンタクトレンズおよび眼内レンズ、サンレンズ、ファッションレンズ、スポーツ用マスク、顔面防護器具、およびゴーグルを挙げることができる。光学物品は、ディスプレイスクリーン(タッチスクリーンなど)、ガラス板、具体的には窓、ならびに乗物用透明物、具体的には自動車用または航空機用フロントガラスおよび側窓から選択することもできる。本発明の特定の実施形態では、光学物品は液晶ディスプレイの構成要素である。
【0150】
本発明の光学物品を、光影響特性、具体的には色または色合いおよび/またはフォトクロミズムを有するように適合させることができる。このような特性は、1種類を超えてもよく、基材、偏光光学素子、ならびに/または基材および/もしくは偏光光学素子を含む層のいずれかに適用された任意の重ねられたコーティングまたはフィルムを含めて、光学物品の構成要素のいずれかに与えられてもよい。
【0151】
本発明の偏光光学素子で使用される基材a)は、光学基材を含み、とりわけ鉱物ガラス(mineral glass)、セラミック、例えばゾルゲル、およびポリマー有機材料から選択することができる。基材は、剛性であり得、すなわちその形状を維持すること、および適用された硬化性フィルム形成組成物を支持することができる。適用された任意のコーティングまたは処理を含めて、光学基材を、上述する少なくとも1つの光影響特性を有するように適合させることができる。本発明の実施形態では、基材は、ポリマー有機材料、具体的には光学的に透明な重合体、例えば光学用途に適した材料、具体的には眼用物品である。このような光学的に透明な重合体は、非常に多様であり得る屈折率を有する。例としては、熱可塑性ポリカーボネートなどの光学樹脂、ならびにPPG Industries,Inc.によってTRIVEX(登録商標)モノマー組成物として、およびCR−という名称で、例えばCR−39(登録商標)モノマー組成物として販売されている光学樹脂の重合体が挙げられる。Mitsui Chemicals Co.,Ltd.から入手可能なMR−6、MR−7、MR−8、およびMR−10という名称の高屈折率ポリチオウレタン基材も適している。他の適切な基材は限定されるものではないが、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0096666号の段落[0061]、および[0064]〜[0081]に開示される。
【0152】
本発明の光学物品で使用される基材は、熱可塑性材料、熱硬化性材料、およびそれらの混合物から選択されたポリマー有機材料を含み得る。このような材料の適切な例は、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、6巻、669〜760頁に記載されている。当業者に知られている適切な化学修飾によって、熱可塑性材料を実質的に熱可塑性または熱硬化性であり得る。
【0153】
本発明で基材として使用することができる光学樹脂としては、さらに例えばハードおよびソフトコンタクトレンズを生成するために使用される樹脂、具体的には米国特許第5,166,345号、第11欄、52行〜第12欄、52行に開示されるもの、米国特許第5,965,630号に記載される高含水率のソフトコンタクトレンズ、および米国特許第5,965,631号に記載される長時間装用コンタクトレンズが挙げられ、それらのコンタクトレンズ用の光学樹脂に関係する開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
基材はそれ自体、ディスプレイ、スクリーン、レンズ、フロントガラス、眼用物品、またはガラス板を含み得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、基材は、その表面にコーティングまたはフィルムを備えることができ、コーティングまたはフィルムは、光影響特性を与え、かつ/または基材を摩耗または他の損傷から保護する。適切な耐摩耗性コーティングとしては、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0207809号、段落[0205]〜[0249]に開示されるものが挙げられる。耐衝撃性を与えるように設計された適切なコーティングとしては、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,316,791号、第3欄、7行〜第7欄、35行に開示されるものが挙げられる。他の適切なコーティングおよびフィルムを、下記でより詳細に述べる。
【0156】
偏光光学素子は、基材の少なくとも1つの表面に付加されている。場合によっては、上記に指摘する基材と偏光光学素子の間に1つまたは複数の介在層が存在することがある。1つの適切な介在層は、視角特性を改善するように光がディスプレイセルを通過するとき引き起こされる位相差の変化を補償するための液晶ディスプレイの構成要素としてしばしば使用される位相差補償層(retardation compensation layer)を含み得る。さらに、コーティングまたはフィルム、具体的には偏光光学素子上に重ねられた上述するものも存在することがある。
【0157】
図3は、本発明の特定の実施形態である液晶ディスプレイ50の断面を示す。液晶54、セルスペーサ55、および封止材料56を含む液晶層は、2枚のガラス基板53の間に積層化されている。ガラス基板53の上に、位相差補償フィルム52および偏光光学素子10が重ねられている。レンズシート51が偏光光学素子10の上に重ねられて、液晶ディスプレイの最外表面となる。液晶ディスプレイ50の内層には、偏光分離フィルム57、集光シート58、拡散体62、導光板60、および反射体61が含まれる。光源59は、例えば冷陰極蛍光灯であり得る。
【0158】
本発明の光学物品で、光影響特性を与えるために広範囲の種々のフォトクロミック材料を使用することができる。このような材料を基材に吸収させ、または当技術分野で知られているコーティングに組み込み、次いで基材に塗布することができる。さらに、フォトクロミック材料は、基材およびその基材に付加された光学素子を含むことができ、そして/またはフォトクロミック材料は、基材と光学素子とを含み得る。フォトクロミック材料は、種々の形で準備することができる。例としては、単一のフォトクロミック化合物;フォトクロミック化合物の混合物;フォトクロミック化合物を含有する材料、具体的にはモノマーまたはポリマー未ゲル化溶液;フォトクロミック化合物が化学結合しているモノマーまたはポリマーなどの材料;フォトクロミック化合物が含まれ、かつ/または化学的に結合している材料であって、材料の外表面は、例えばポリマー樹脂または保護コーティング、具体的にはフォトクロミック材料とフォトクロミック材料に悪影響を及ぼす外部材料、具体的には酸素、湿気、および/または化学薬品との接触を防止する金属酸化物でカプセル化されている(カプセル化は、コーティングの一形態である)材料(このような材料は、米国特許第4,166,043号および第4,367,170号に記載のように保護コーティングを適用する前に粒子に形成することができる);フォトクロミックポリマー、例えば結合しているフォトクロミック化合物を含むフォトクロミックポリマー;あるいはそれらの混合物が挙げられる。
【0159】
無機フォトクロミック材料は、ハロゲン化銀、ハロゲン化カドミウム、および/またはハロゲン化銅の結晶子を含有し得る。他の無機フォトクロミック材料は、ユウロピウム(II)および/またはセリウム(III)を鉱物ガラス、具体的にはソーダ−シリカガラスに添加することによって調製することができる。別の非限定的な実施形態では、無機フォトクロミック材料を溶融ガラスに添加し、粒子に形成し、フィルム形成組成物に組み込む。その組成物を、基材に塗布することができる。このような無機フォトクロミック材料は、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第4版、6巻、322〜325頁に記載されている。
【0160】
フォトクロミック材料は、300〜1000ナノメートルの範囲で活性化吸収極大を有する有機フォトクロミック材料であり得る。実施形態では、有機フォトクロミック材料は、(a)400〜550ナノメートル未満の可視部で最大吸光度を有する有機フォトクロミック材料、および(b)550〜700ナノメートルの可視部で最大吸光度を有する有機フォトクロミック材料の混合物を含む。
【0161】
あるいは、フォトクロミック材料は、ピラン類、オキサジン類、フルギド類、フルギミド類、ジアリールエテン類、およびそれらの混合物から選択することができる有機フォトクロミック材料を含み得る。
【0162】
本明細書で使用することができるフォトクロミックピラン類は限定されるものではないが、例えばベンゾピラン類、およびナフトピラン類、例えばナフト[1,2−b]ピラン類、ナフト[2,1−b]ピラン類、インデノ縮合ナフトピラン類、およびヘテロ環縮合ナフトピラン類、スピロ−9−フルオレノ[1,2−b]ピラン類、フェナントロピラン類、キノリノピラン類;フルオロアンテノピラン類、およびスピロピラン類、例えば、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトピラン類、スピロ(インドリン)ベンゾピラン類、スピロ(インドリン)ナフトピラン類、スピロ(インドリン)キノリノピラン類、およびスピロ(インドリン)ピラン類、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ベンゾピラン類およびナフトピラン類の非限定的な例は、米国特許第5,645,767号、第2欄、16行〜第12欄、57行;米国特許第5,723,072号、第2欄、27行〜第15欄、55行;米国特許第5,698,141号、第2欄、11行〜第19欄、45行;米国特許第6,022,497号、第2欄、21行〜第11欄、46行;米国特許第6,080,338号、第2欄、21行〜第14欄、43行;米国特許第6,136,968号、第2欄、43行〜第20欄、67行;米国特許第6,153,126号、第2欄、26行〜第8欄、60行;米国特許第6,296,785号、第2欄、47行〜第31欄、5行;米国特許第6,348,604号、第3欄、26行〜第17欄、15行;米国特許第6,353,102号、第1欄、62行〜第11欄、64行;米国特許第6,630,597号、第2欄、16行〜第16欄、23行;および米国特許第6,736,998号、第2欄、53行〜第19欄、7行に開示されており、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。さらに、ナフトピラン類および相補的な有機フォトクロミック物質の非限定的な例は、米国特許第5,658,501号、第1欄、64行〜第13欄、17行に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。スピロ(インドリン)ピラン類は、Techniques in Chemistry、III巻、「Photochromism」、3章、Glenn H. Brown編集、John Wiley and Sons, Inc.、New York、1971年という書籍にも記載されている。
【0163】
使用することができるフォトクロミックオキサジン類としては、例えばベンゾオキサジン類、ナフトオキサジン類、およびスピロ−オキサジン類、例えばスピロ(インドリン)ナフトオキサジン類、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン類、スピロ(ベンゾインドリン)ピリドベンゾオキサジン類、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトオキサジン類、スピロ(インドリン)ベンゾオキサジン類、スピロ(インドリン)フルオランテノオキサジン(fluoranthenoxazine)、スピロ(インドリン)キノキサジン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0164】
使用することができるフォトクロミックフルギド類(fulgide)またはフルギミド類(fulgimide)としては、例えば、米国特許第4,685,783号、第1欄、57行〜第5欄、27行、および米国特許第4,931,220号、第1欄、39行〜第22欄、41行に開示されるフルギド類およびフルギミド類が挙げられる。このようなフルギド類およびフルギミド類の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。ジアリールエテン類の非限定的な例は、米国特許出願公開第2003/0174560号、段落[0025]〜[0086]に開示される。
【0165】
重合性有機フォトクロミック材料、具体的には米国特許第5,166,345号、第3欄、36行〜第14欄、3行に開示される重合性ナフトオキサジン類;米国特許第5,236,958号、第1欄、45行〜第6欄、65行に開示される重合性スピロベンゾピラン類;米国特許第5,252,742号、第1欄、45行〜第6欄、65行に開示される重合性スピロベンゾピラン類およびスピロベンゾチオピラン類;米国特許第5,359,085号、第5欄、25行〜第19欄、55行に開示される重合性フルギド類;米国特許第5,488,119号、第1欄、29行〜第7欄、65行に開示される重合性ナフタセンジオン;米国特許第5,821,287号、第3欄、5行〜第11欄、39行に開示される重合性スピロオキサジン類;米国特許第6,113,814号、第2欄、23行〜第23欄、29行に開示される重合性ポリアルコキシル化ナフトピラン類;および米国特許第6,555,028号、第2欄、40行〜第24欄、56行のポリマーマトリックス適合化(compatibilized)ナフトピランを使用することができる。重合性有機フォトクロミック材料に関する上記の特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0166】
通常は、フォトクロミック材料は、フォトクロミック量、すなわち放射線への曝露時に肉眼によって識別できる変色をもたらす量で、光学物品中に存在する。
【0167】
本発明の特定の実施形態では、偏光光学物品は液晶ディスプレイの構成要素を含む。典型的な液晶ディスプレイでは、液晶は、2枚のガラス基板間に封止されている。位相差フィルムをガラス基板の上に重ね、続いて偏光子フィルム、および任意の追加の本質的な層、具体的にはレンズ、拡散体、保護層などを適用する。液晶ディスプレイの偏光子フィルムは、本発明の偏光光学物品を含み得る。
【0168】
液晶ディスプレイ中の通常の偏光子フィルムは、セルローストリアセテート(TAC)フィルムを偏光フィルターの支持体として利用する。硬化性の非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを使用する本発明の偏光光学物品は、可塑剤を必要とすることなく、同程度の光透過率および低複屈折、より高い屈折率、耐熱性、耐薬品性、耐溶媒性、および伸び強度、ならびにより低い水透過性を提示する。さらに、非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムは、広範囲の種々のフィルムおよびコーティングと適合性があり、それらを容易に受容する。
【0169】
本発明の光学物品で使用するのに適した他のコーティングまたはフィルムは、とりわけ色合いコーティングおよび/または耐摩耗性コーティングまたは他の保護コーティングを含み得る。基材に直接適用されたものとして上述したコーティングはいずれも、重ねられたコーティングとして、さらにまたは代わりに使用することができる。同様に、重ねられたコーティングとして本明細書で下記に述べるコーティングはいずれも、基材にさらにまたは代わりに直接適用することができる。
【0170】
このようなフィルムまたはコーティングのために使用される材料の種類は、非常に多様であり、下記に述べる基材および保護フィルムのポリマー有機材料から選択することができる。ポリマー有機材料のフィルムの厚さは、非常に多様である。その厚さは、例えば0.1ミル〜40ミルであり得、記載する値を含めて、これらの値の間の任意の厚さ範囲であり得る。しかし、望むなら、より大きい厚さを使用してもよい。
【0171】
ポリマー有機材料は、熱硬化性材料、熱可塑性材料、およびそれらの混合物から選択することができる。このような材料としては、基材および保護フィルムのために選択されたポリマー有機材料が挙げられる。ポリマー有機材料のフィルムの他の例は、米国特許出願公開第2004/0096666号、段落[0082]〜[0098]に開示され、このようなポリマーフィルムの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0172】
いくつかの実施形態では、フィルムまたはコーティングは、ナイロン、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルクロリド−ビニルアセテートコポリマー、ポリ(C〜Cアルキル)アクリレート類、ポリ(C〜Cアルキル)メタクリレート類、スチレン−ブタジエンコポリマー樹脂、ポリ(尿素−ウレタン)類、ポリウレタン類、ポリテレフタレート類、ポリカーボネート類、ポリカーボネート−シリコーンコポリマー、およびそれらの混合物から選択された熱可塑性ポリマー有機材料を含む。
【0173】
場合によっては、より美しい結果を実現するために、適合性のある(化学的および色的に)固定用(fixed)色合い染料を、基材および/または重ねられたフィルムに添加または適用することができる。例えば、フォトクロミック性眼用レンズなどで、例えばより中間的な色を実現し、または特定の波長の入射光を吸収するために、活性化されたフォトクロミック材料による発色を補完するように染料を選択することができる。別の実施形態では、所望の色相を母材料または基材に与えるように、染料を選択することができる。
【0174】
別の実施形態では、当業者に知られているように、上記の固定用色合い染料を、本発明の光学物品と共に使用される後述の保護フィルムと結合させてもよい。例えば、米国特許第6,042,737号、第4欄、43行〜第5欄、8行を参照のこと。その色合いを付けるコーティングされた基材に関係する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0175】
基材には、摩擦および摩耗の影響による引掻きを防止するために、保護フィルムを適用することができる。保護フィルムは、重ねられたフィルムまたはコーティングとしても機能することができる。特定の実施形態では、本発明の光学物品に接続された保護フィルムは、少なくとも部分的に耐摩耗性のフィルムである。語句「少なくとも部分的に耐摩耗性のフィルム」は、振動サンド方法を使用しての透明プラスチックおよびコーティングの耐摩耗性のためのASTM F−735標準試験方法に類似の方法で試験して、標準参照物質、通常はPPG Industries,Incから入手可能なCR−39(登録商標)モノマーで作製されたプラスチックより高い耐摩耗性を示す、保護ポリマー材料の少なくとも部分的に硬化したコーティングまたはシートの少なくとも部分的なフィルムを意味する。
【0176】
保護フィルムは、保護シート材料、保護傾斜フィルム(これらを挟んでいるフィルムに硬度傾斜も与える)、保護コーティング、およびそれらの組合せから選択することができる。保護コーティング、具体的にはハードコートを、ポリマーフィルム、基材、および/または適用されたフィルムの表面上、例えば保護移行フィルム(protective gradient film)の上に適用することができる。
【0177】
保護フィルムを保護シート材料から選択する場合、例えば米国特許出願公開第2004/0096666号の段落[0118]〜[0126]に開示される保護ポリマーシート材料から選択することができる。
【0178】
保護傾斜フィルムは、少なくとも部分的に耐摩耗性のフィルムをもたらし、続いて別の保護フィルムでコーティングすることができる。保護傾斜フィルムは、輸送中、または追加の保護フィルムを適用する前のその後の取扱い中に物品を保護するように機能することができる。追加の保護フィルムを適用した後、保護傾斜フィルムは、ある適用されたフィルムから別の適用されたフィルムに硬度傾斜をもたらす。このようなフィルムの硬度は、当業者に知られている方法で確定することができる。別の非限定的な実施形態では、保護フィルムが、保護傾斜フィルムの上にある。このような傾斜特性をもたらす保護フィルムは限定されるものではないが、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0165686号、段落[0010]〜[0023]および[0079]〜[0173]に記載される放射線硬化(メタ)アクリレート系コーティングが挙げられる。
【0179】
保護フィルムは、保護コーティングも含むことができる。耐摩耗性および耐引掻性をもたらす当技術分野で知られている保護コーティングの例は、多官能性アクリリック硬質コーティング、メラミン系硬質コーティング、ウレタン系硬質コーティング、アルキド系コーティング、および/またはオルガノシラン型コーティングから選択することができる。このような耐摩耗性コーティングの非限定的な例は、米国特許出願公開第2004/0096666号、段落[0128]〜[0149]および米国特許出願公開第2004/0207809号、段落[0205]〜[0249]に開示され、両方の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0180】
別の実施形態では、光学物品は、さらに少なくとも部分的に反射防止性の表面処理を含む。語句「少なくとも部分的に反射防止性の表面」処理は、それが適用された光学物品の反射防止性において少なくとも部分的な改善があることを意味する。非限定的な実施形態では、無処理の光学物品に比べて、処理した光学物品の表面によって反射されるグレアの量が低減し、かつ/または処理した光学物品の透過率(パーセント)が上昇する。
【0181】
別の非限定的な実施形態では、少なくとも部分的に反射防止性の表面処理、例えば金属酸化物類、金属フッ化物類、または他のこのような材料の単層または多層を、本発明の光学物品、例えばレンズの表面に、真空蒸発、スパッタリング、またはいくつかの他の方法によって接続することができる。
【0182】
本発明の光学物品は、さらに少なくとも部分的に疎水性の表面処理を含む。語句「少なくとも部分的に疎水性の表面」は、基材に接着することができる表面から水の量を低減させることによって、それが適用された基材の撥水性を、無処置の基材に比べて少なくとも部分的に改善するフィルムである。
【0183】
本発明を、次の実施例でさらに詳細に説明するが、実施例は、その多数の修正および変形が当業者に自明であるので、例示するものにすぎない。
【実施例】
【0184】
(実施例1)
本発明の特定の実施形態は、例示のため上述されてきたが、添付の特許請求の範囲に定義する本発明から逸脱することなく、本発明の細部の変形を多数行うことができることは当業者に明らかであろう。
【0185】
(実施例1)
TRIVEX(登録商標)AH樹脂流延溶液の調製
混合装置を装備した適切なガラス容器に、混合しながら、仕込み1を指示した順序で添加した。混合装置を装備した別の適切なガラス容器に、混合しながら、仕込み2を指示した順序で添加した。別のガラス容器に、混合しながら、3.8部の仕込み1および1部の仕込み2を添加した。
【0186】
【化16】

(1)PPG Industries,Inc.から市販されているTRIVEX(登録商標)AH樹脂を、使用前に65℃で2時間維持した。
【0187】
(2)EXALITE(登録商標)Blue 7813染料溶液は、Excitonからの0.1241グラムのEXALITE(登録商標)Blue 7813染料を11.6852グラムのMEKに添加し、混合することによって調製した。
【0188】
(3)BYK(登録商標)−377溶液は、BYK−Chemieからのポリエーテル改質ポリジメチルシロキサンであると報告されている1.0グラムのBYK(登録商標)−377を9.0グラムのMEKに添加し、混合することによって調製した。
【0189】
【化17】


【0190】
(実施例2)
TRIVEX(登録商標)AY樹脂流延溶液の調製
仕込み1および2の材料が以下の通りであった点以外は、実施例1の手順に従った。
【0191】
【化18】

(4)PPG Industries,Inc.から市販されているTRIVEX(登録商標)AY樹脂は、使用前に65℃で2時間維持した。
【0192】
(5)BYK(登録商標)−307溶液は、BYK−Chemieからのポリエーテル改質ポリジメチルシロキサンであると報告されている1.0グラムのBYK(登録商標)−307を9.0グラムのMEKに添加し、混合することによって調製した。
【0193】
【化19】


【0194】
(実施例3)
TRIVEX(登録商標)AH樹脂流延溶液の調製
混合装置を装備した適切なガラス容器に、仕込み1を、混合しながら指示した順序で添加した。混合装置を装備した別の適切なガラス容器に、仕込み2を、混合しながら指示した順序で添加した。別のガラス容器に、混合しながら、3.8部の仕込み1および1部の仕込み2を添加した。
【0195】
【化20】

(6)BYK(登録商標)−377溶液は、BYK−Chemieからポリエーテル改変ポリジメチルシロキサンであると報告されている3.0グラムのBYK(登録商標)−377を27.0グラムの塩化メチレンに添加し、混合することによって調製した。
【0196】
【化21】

(7)ZELEC(登録商標)UN溶液は、0.94グラムのZELEC(登録商標)UN離型剤を17.86グラムの塩化メチレンに添加し、混合することによって調製した。
【0197】
(実施例4)
フィルムキャスティングおよび試験
ステップ1−フィルムキャスティング
GARDCO(登録商標)Automatic Drawdown Machine(Gardner Co.Inc.)を使用した。マイクロフィルムアプリケーター、および30インチ×45インチ(76.2センチメートル(cm)×114.3cm)の大きさのガラス板を装備した。マイクロフィルムアプリケーターのゲージを11ミクロンに設定した。実施例1および2では、3.8部の仕込み1と1部の仕込み2の組合せ約10〜15グラムをガラス板に注ぎ、機械を作動させた。実施例3では、1部の仕込み2に対して3.2部の仕込み1とした。実施例1および2では、得られたコーティングされたガラス板を70℃のオーブンに入れ、20〜25分間の時間間隔で、温度を190℃に上げた。実施例3では、初期オーブン温度は45℃であり、他の条件は同じであった。温度を190℃で20〜25分間維持した。コーティングされたガラス板を取り出し、周囲温度まで放冷し、フィルムをガラス板から取り出した。
【0198】
ステップ2−フィルム試験
実施例1および2のステップ1で調製されたフィルムを表1に示す様々な特性について試験した。比較例は、Fujifilm Corp.から入手したトリアセチルセルロース(TAC)である。比較例の密度について示す結果は、刊行物から収集し、比較例の他の特性は、下記に示すように測定した。実施例3の試験結果を表2に示す。
【0199】
【化22】

(6)複屈折性値は、回転ステージおよび7桁のバビネの補償板(Gaertner Scientific Co.からのModel 617−F)を備えたOptical Bench(Gaertner Scientific Co.からのModel L305)によって確定した。
【0200】
(XY)として報告されている面内複屈折性(Δn12)は、ビーム路程に対して垂直なTD(流延の横方向)軸と、ビーム路程に平行なND(正方向またはフィルムの厚さ方向)軸を用いて直接得た。(Z)として報告されている面外複屈折性(Δn13)は、MD(機械流延方向)軸が光路から垂直なTDの周囲を様々に回転して、次式を用いて計算した。
【0201】
【化23−1】

式中
λ:入射光の波長
:試料厚さ
【0202】
【化23−2】

:材料の平均屈折率
φ:傾斜角
:無傾斜測定によるフィルムの位相差
Rφ:角度φで傾斜させたフィルムの位相差
試料厚さは、精密Fouler電子ユニバーサルマイクロメーターで測定した。
【0203】
(7)実施例2および比較例のフィルムの平均屈折率は、Epic Abbe 60屈折計で確定した。
【0204】
(8)伸び、モジュラス、および応力は、Instron 5543電気機械試験機で、引張り試験片を使用してのプラスチックの引張り性能のためのASTM D1708−06a標準試験方法に従って測定した。記載した結果は、5回の試験の平均値である。
【0205】
(9)TRIVEX AHとAYの密度値は同じである。TRIVEX AHの結果は、TRIVEX(登録商標)G2 Lens Material Product Bulletinに報告され、変位(Displacement)によるプラスチックの密度および比重(相対密度)のためのASTM D792標準試験方法によって試験されたことが報告された。比較例について示した結果は、H. Sataら、「Properties and Applications of Cellulose Triacetate Film」、Macromol. Symp.、2004年、208巻、323〜333頁から抜粋した。
【0206】
(10)透過率およびヘイズは、製造業者の指示書に従って、Garder Hazegard Plus計器で測定した。
【0207】
(11)試料厚さは、精密Fowler電子ユニバーサルマイクロメーターで測定した。記載した結果は、5回の試験の平均値である。
【0208】
(12)試料はすべて、TA Instruments 2920 DSCを用いて、25℃/分〜300℃で有蓋アルミニウム気密皿中で分析した。窒素パージ速度は50mL/分であった。DSCは、インジウムおよびスズの標準物質を用いて較正した。ピーク面積は、S字状ベースラインを使用して算出した。この手順は、一般に示差走査熱分析によるポリマーの融解および結晶化の遷移温度およびエンタルピーのためのASTM D3419−03標準試験方法に従った。
【0209】
(13)報告された結果は、試験サンプルの初期と最終のヘイズ(パーセント)間でヘイズ(パーセント)の表す点以外は、COLTS(登録商標)LaboratoriesのSteel Wool Abrasion−SOP# L−11−12−05に従うSteel Wool Test。記載した結果は、2回の試験の平均値である。
【0210】
(14)COLTS(登録商標)LaboratoriesのBayer Test−SOP# L−11−10−06に従うBayer耐摩耗性。記載した結果は、2回の試験の平均値である。
【0211】
(15)透過率(パーセント)(L)、a(赤色−緑)およびb(黄色−青色)値は、Lumen C光源を使用するHunter LabモデルD25P−9カロリーメーターで、ASTM D 1925−70に従って確定した。正のa値は赤色を示し、負のa値は緑色を示し、正のb値は黄色を示し、および負のb値は青色を示す。
【0212】
(16)耐薬品性は、2インチ×2インチ(5.08cm×5.08cm)の試料を用いて確定した。試料の「前」ヘイズ値は、Hazegard Plus計器で測定した。試料を、室温で溶媒に10分間浸漬した。溶媒を除去した後、試料を脱イオン水ですすぎ、室温で放置して乾燥した。「後」ヘイズ値を確定した。「前」および「後」のヘイズ値間の違いは、表に報告されている。
【0213】
(17)熱膨張係数は、力制御モードのTA Instruments DMA Model 2980に載せた約20.5mm×6mmの大きさの長方形の細片を使用して確定した。試料に、0℃〜180℃の熱を5℃/分および0.2Nの力でかけた。データを4秒毎に収集し、それに応じて温度を較正した。
【0214】
(18)透湿性は、MOCON Permatran W−6 Programmable Water Vapor Permeability Testerを使用して測定し、37.8℃で試験を行った。一般的なタイプの試験方法については、MOCON Permatran W−6を使用した点以外は、ASTM F1249−06「変調赤外線センサーを使用してのプラスチックフィルムおよびシーティングを通過する水蒸気送達速度のための標準試験方法」に記載されている。
【0215】
表1の結果から、実施例1および2のフィルムが、比較例のフィルムを超えて改善された特性を示したことがわかる。実施例1および2のフィルムは両方共、複屈折性がより低く、伸びがより大きく、ヤング率がより低かった。これは、機械的特性がよりよいことを示唆した。耐引掻性は、ヘイズ(パーセント)の差がより小さいことを示し、熱膨張係数およびガラス転移温度はより高かった。実施例2のフィルムは、比較例よりアセトンに対する耐薬品性がよく、ヘイズ(パーセント)の差がより小さく、透湿性試験で値がより低いことが示された。
【0216】
【化24】

本発明は、特定の実施形態の具体的な詳細を参照にして述べられてきた。このような詳細は、添付の特許請求の範囲に含まれる限り、かつその程度までを除いて、本発明の範囲を限定するものと考えることを意図しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムを調製する方法であって、
a)イソシアネート官能基を有するポリウレタン材料を含む第1の成分を準備するステップ;
b)イソシアネートと反応する活性水素を含む官能基を有する材料を含む第2の成分を準備するステップ;
c)該第1の成分および該第2の成分を混合して、反応混合物を生成するステップ;
d)反応混合物を支持基材に実質的に均一な厚さで流延して、その上にフィルムを形成するステップ;
e)該支持基材上のフィルムを、硬化したフィルムを得るのに十分な温度に十分な時間加熱するステップ;および
f)該硬化したフィルムを該支持基材から取り外して、非複屈折性である非エラストマー性ポリウレタン含有フリーフィルムを得るステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の成分が溶媒をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が、前記第1の成分の全重量に対して20〜80重量パーセントの量で該第1の成分に存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の成分が溶媒をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、前記第2の成分の全重量に対して20〜80重量パーセントの量で該第2の成分に存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応混合物が界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物が触媒をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の成分中の材料のイソシアネート官能基が、少なくとも部分的に封鎖されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の成分中のイソシアネート官能基を有する材料が、1000までの数平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の成分中のイソシアネート官能基を有する材料が、1000を超える数平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の成分中の活性水素を含む官能基を有する材料が、ジエチレントルエンジアミン、メチレンジアニリン、メチルジイソプロピルアニリン、メチルジエチルアニリン、トリメチレングリコールジパラアミノベンゾエート、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、および/または4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチル−3−クロロアニリン)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(f)で形成された硬化したフリーフィルムの乾燥膜厚が、0.5〜20ミル(12.7〜508ミクロン)である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルムが、ステップ(e)で100〜210℃の温度に10〜100分間加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記フィルムが、ステップ(e)で25〜100℃の温度に100分〜5日間加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
a)2つの対向表面を有する偏光フィルム層;および
b)該偏光フィルム層の対向表面の少なくとも1つに付加された硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムを含む保護支持層
を組み合わせて含む偏光光学素子。
【請求項16】
前記偏光フィルム層が、延伸させ、ヨウ素発色団または二色性染料を含浸させたポリマー材料を含む、請求項15に記載の光学素子。
【請求項17】
前記ポリマー材料がポリビニルアルコールを含む、請求項16に記載の光学素子。
【請求項18】
前記硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムが非複屈折性である、請求項15に記載の光学素子。
【請求項19】
前記偏光フィルム層および前記支持層が、感圧接着剤で相互に接着されている、請求項15に記載の光学素子。
【請求項20】
前記偏光フィルム層および前記支持層が、前記光学素子を組み立てる前に、該偏光フィルム層および/または該支持層の表面処理によって相互に接着されている、請求項15に記載の光学素子。
【請求項21】
前記素子中の前記偏光フィルム層の厚さが、0.1〜10ミル(2.54〜254ミクロン)である、請求項15に記載の光学素子。
【請求項22】
前記偏光フィルム層が、硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムを含む2枚の保護支持層の間に配置されている、請求項15に記載の光学素子。
【請求項23】
少なくとも1つの支持層上に重ねられた除去可能な保護層をさらに含む、請求項15に記載の光学素子。
【請求項24】
前記硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムが、請求項1に記載の方法で調製される、請求項15に記載の光学素子。
【請求項25】
a)基材;および
b)該基材の少なくとも1つの表面に付加された偏光光学素子
を組み合わせて含む光学物品であって、該偏光光学素子は、
i)2つの対向表面を有する偏光フィルム層;および
ii)該偏光フィルム層の対向表面の少なくとも1つに付加された硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムを含む保護支持層
を組み合わせて含む、光学物品。
【請求項26】
前記偏光光学素子が、前記基材の少なくとも1つの表面上に重ねられている、請求項25に記載の光学物品。
【請求項27】
前記偏光フィルム層が、硬化した非エラストマー性ポリウレタン含有フィルムを含む2枚の保護支持層の間に配置されている、請求項25に記載の光学物品。
【請求項28】
前記基材が、鉱物ガラス、セラミック材料、および/またはポリマー有機材料を含む、請求項25に記載の光学物品。
【請求項29】
前記基材が、ディスプレイ、スクリーン、レンズ、フロントガラス、眼用物品、またはガラス板を含む、請求項25に記載の光学物品。
【請求項30】
前記基材と前記偏光光学素子の間の介在層として配置されている少なくとも1つのフィルムまたはコーティングをさらに含む、請求項25に記載の光学物品。
【請求項31】
前記介在層が位相差フィルムを含む、請求項27に記載の光学物品。
【請求項32】
前記偏光光学素子上に重ねられた少なくとも1つのフィルムおよび/または少なくとも1つのコーティングをさらに含む、請求項25に記載の光学物品。
【請求項33】
前記重ねられたフィルムまたはコーティングが、耐摩耗性コーティングを含む、請求項32に記載の光学物品。
【請求項34】
液晶ディスプレイの構成要素を含む、請求項25に記載の光学物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−540064(P2009−540064A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514528(P2009−514528)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/070594
【国際公開番号】WO2007/146736
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ インコーポレーテツド (267)
【Fターム(参考)】