説明

偏光分離素子、偏光分離方法、及び光学装置

【課題】 耐熱性及びコントラストの両方が改善された、偏光分離素子、偏光分離方法、及び光学装置を提供する。
【解決手段】 偏光分離素子は、互いに直交する方向に偏光した光を分離すると共に無機材料からなる複数の偏光分離部を含む。偏光分離方法は、互いに直交する方向に偏光した光を分離すると共に無機材料からなる複数の偏光分離部を含む偏光分離素子を用いて、互いに直交する方向に偏光した光を分離する。光学装置は、互いに直交する方向に偏光した光を分離すると共に無機材料からなる複数の偏光分離部を含む偏光分離素子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光分離素子、偏光分離方法、及び光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偏光分離素子として、樹脂などの有機材料で作られた有機偏光板及び無機材料で作られた無機偏光板が知られている。
【0003】
有機偏光板は、一般に優れた偏光分離特性(高いコントラスト)を有するが、樹脂などの有機材料で形成されるため、耐熱性に劣る。このため、大画面TV用のプロジェクターなどの、温度変化に対しても長期の高い信頼性を要求される装置には、偏光分離素子として、有機偏光板を単独で用いることはできない。これに対して、有機偏光板に対して、優れた熱伝導性を備えたサファイアの材料を貼り付けて、有機偏光板の温度の上昇を抑制する方法がある。また、有機偏光板に対して、放熱用のファンを設けて、有機偏光板を冷却し、有機偏光板の温度の上昇を抑制する方法もある。
【0004】
しかしながら、これらの方法を用いると、偏光分離素子のコストが、増加すると共に、偏光分離素子の性能もまた十分ではないという問題がある。
【0005】
一方、無機偏光体としては、例えば、ワイヤーグリッド構造を備えた偏光板及びフォトニック結晶構造を備えた偏光板が知られている。
【0006】
図1(a)及び(b)は、ワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板を表す図であり、(a)は、ワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板の斜視図であり、(b)は、ワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板の断面図である。
【0007】
図1(a)及び(b)に示すように、ワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板10は、ベース基板11及び複数の金属ワイヤー12を有する。金属ワイヤー12は、例えば、アルミニウムで作られる。そして、複数の金属ワイヤー12は、ベース基板11上に周期的に配列され、複数の金属ワイヤーの間隔は、無機偏光板10に入射する光の波長よりも十分小さい。このように、光の波長よりも十分に小さい間隔で配列された金属ワイヤー10の長手方向に垂直な(短手方向に平行な)方向に電場の振動面を有する光は、金属ワイヤー10の間を通過することができない。また、金属ワイヤー10の長手方向に平行な(短手方向に垂直な)方向に電場の振動面を有する光は、金属ワイヤー10の間を通過することができる。このようにして、互いに直交する電場の振動面を有する光は、ワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板10によって分離される。
【0008】
また、フォトニック結晶構造を備えた無機偏光板及びその製造方法の例は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0009】
図2は、フォトニック結晶構造を備えた無機偏光板を表す図である。ここで、フォトニック結晶は、高い屈折率の層及び低い屈折率の層を規則的に配置させることにより、周期的な屈折率分布を有するナノ構造デバイスである。図2に示す無機偏光板20は、波長の1/4〜1/2のピッチで形成されたライン/スペース形状の溝を有する基板21、及び基板21の溝を埋めると共に溝の短手方向に三角波形状で溝の長手方向に直線状の凸部を備えた調整層22を有し、調整層22の上に透明な高屈折率の媒質からなる複数の高屈折率層23と透明な低屈折率の媒質からなる複数の低屈折率層24が交互に積層されている。高屈折率層23及び低屈折率層24は、調整層22の溝の短手方向に三角波形状で溝の長手方向に直線状の凸部の形状に合わせて、短手方向に三角波形状で長手方向に直線状の形状を備えた面を有する。このように、光の波長よりも十分に小さいピッチで短手方向に三角波形状で長手方向に直線状の形状を備えた面を有する高屈折率層23及び低屈折率層24の積層体に光が、入射すると、高屈折率層23及び低屈折率層24の長手方向に平行な(短手方向に垂直な)方向に電場の振動面を有する(TEモードの)光の大部分は、フォトニック結晶構造を備えた無機偏光板20を通過することができず反射されるが、高屈折率層23及び低屈折率層24の長手方向に垂直な(短手方向に平行な)方向に電場の振動面を有する(TMモードの)光の大部分は、フォトニック結晶構造を備えた無機偏光板20を通過することができる。このようにして、互いに直交する電場の振動面を有する光は、フォトニック結晶構造を備えた無機偏光板20によって分離される。
【0010】
図3(a)〜(d)は、フォトニック結晶構造を備えた無機偏光板の製造方法を説明する図である。まず、図3(a)に示すように、基板31に電子ビームリソグラフィ及びドライエッチングによりライン/スペース形状の周期的な溝を形成する。次に、図3(b)に示すように、基板と同じ材料のターゲットを用いたスパッタリングによる成膜及び逆スパッタリングによるスパッタエッチングを繰り返して、基板31のライン/スペース形状の周期的な溝を埋めると共に溝の短手方向に三角波形状で溝の長手方向に直線状の凸部を備えた調整層32を形成する。次に、図3(c)に示すように、透明な高屈折率の媒質及び透明な低屈折率の媒質のターゲットを用いて、同様に、スパッタリングによる成膜及び逆スパッタリングによるスパッタエッチングを繰り返して、高屈折率層33及び低屈折率層34を順次積層させる。続いて、図3(d)に示すように、複数の高屈折率層33及び複数の低屈折率層34を積層させて、目的とするフォトニック結晶構造を備えた無機偏光板30を製造することができる。
【0011】
ワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板10及びフォトニック結晶構造を備えた無機偏光板20、30は、ガラス及び/又は金属のような高い耐熱性を備えた無機材料で形成されるため、高い耐熱性を有し、温度変化に対しても長期の高い信頼性を要求される装置にもまた、偏光分離素子として単独で用いることは可能である。
【0012】
しかしながら、ワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板10よりも高い偏光分離性能を有し得るフォトニック結晶構造を備えた無機偏光板20、30であっても、無機偏光板20、30に対するTEモードの光の透過率が、0.1%〜0.2%程度である。このため、無機偏光板20、30に対するTMモードの光の透過率が、理想的に100%であったとしても、偏光分離特性の指標としてのコントラスト(=TMモードの光の透過率/TEモードの光の透過率)は、500〜1000程度である。従って、これらのワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板10及びフォトニック結晶構造を備えた無機偏光板20、30の偏光分離特性は、いまだ不十分である。
【0013】
このため、液晶プロジェクターのような偏光分離素子を用いる光学装置において、画像のコントラストの向上が望まれているが、従来の有機偏光板の使用及びイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板10及びフォトニック結晶構造を備えた無機偏光板20、30によっては、コントラストの向上及び耐熱性の向上の両方を達成することが可能な偏光分離素子は、得られていない。
【特許文献1】特許第3288976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、耐熱性及びコントラストの両方が改善された、偏光分離素子、偏光分離方法、及び光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の態様は、互いに直交する方向に偏光した光を分離すると共に無機材料からなる複数の偏光分離部を含むことを特徴とする偏光分離素子である。
【0016】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様である偏光分離素子を用いて、互いに直交する方向に偏光した光を分離することを特徴とする偏光分離方法である。
【0017】
本発明の第三の態様は、本発明の第一の態様である偏光分離素子を含むことを特徴とする光学装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐熱性及びコントラストの両方が改善された、偏光分離素子、偏光分離方法、及び光学装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
【0020】
本発明の第一の実施形態は、互いに直交する方向に偏光した光を分離すると共に無機材料からなる複数の偏光分離部を含む偏光分離素子である。ここで、偏光とは、光波の電気ベクトルの振動方向が規則的な波、及びその状態の総称である。一般には、光放射の進行方向に垂直な面内で互いに直角の方向に振動する二つの直線偏光の成分に分けることができる。
【0021】
すなわち、本発明の第一の実施形態である偏光分離素子は、複数の偏光分離部を含み、偏光分離部は、互いに直交する方向に偏光した光を分離すると共に無機材料からなる。ここで、互いに直交する方向に偏光した光は、互いに直交する方向に振動する電場の振動面を備えた偏光を意味する。よって、互いに直交する方向に偏光した光を分離するとは、ある方向に振動する電場の振動面を備えた偏光と、その方向に直交する方向に振動する電場の振動面を備えた偏光とを部分的に又は完全に分離することを意味する。無機材料としては、例えば、ワイヤーグリッド構造に使用されるアルミニウムなどの金属、フォトニック結晶構造の層に使用される各種ガラスなどが挙げられる。なお、無機材料からなる偏光分離部は、偏光分離素子に要求される耐熱性を満足する程度に、無機材料を含むことを意味する。よって、偏光分離素子に要求される耐熱性が満足されれば、偏光分離部は、無機材料以外の有機材料を含んでもよい。無機材料からなる偏光分離部としては、例えば、フォトニック結晶構造を備えた部分又は光学部材及びワイヤーグリッド構造を備えた部分又は光学部材が、挙げられる。なお、ワイヤーグリッド構造は、基板及び基板に設けられた基板の面の一方向に平行に且つ周期的に設けられた複数のワイヤーを有し、複数のワイヤーの間隔は、光の波長よりも短い。ワイヤーグリッド構造については、例えば、図1(a)及び(b)に示したような従来のワイヤーグリッド構造を用いることができる。また、フォトニック結晶構造は、高い屈折率の層及び低い屈折率の層を規則的に配置させることにより、周期的な屈折率分布を有するナノ構造デバイスである。フォトニック結晶構造については、例えば、図2に示したような従来のフォトニック結晶構造を用いることができる。さらに、複数の偏光分離部の少なくとも二つは、同一の偏光分離部であってもよく、異なる偏光分離部であってもよい。
【0022】
なお、無機材料からなる偏光分離部は、互いに直交する方向に偏光した光における一方の偏光の成分を透過させると共に、その一方の偏光の成分と直交する他方の偏光の成分を反射させる偏光分離部である。ここで、“透過させる”は、完全に透過させること及び実質的に透過させることの両方を含み、“反射させる”は、完全に透過させること及び実質的に透過させることの両方を含む。よって、無機材料からなる偏光分離部には、光のエネルギーが完全に又は実質的に吸収されないため、無機材料からなる偏光分離部の温度は、容易には上昇せず、無機材料からなる偏光分離部は、高い耐熱性を備える。(これに対して、有機材料からなる偏光分離部は、互いに直交する方向に偏光した光における一方の偏光の成分を透過させると共に、その一方の偏光の成分と直交する他方の偏光の成分を吸収する偏光分離部である。よって、有機材料からなる偏光分離部には、光のエネルギーが完全に又は実質的に吸収されるため、有機材料からなる偏光分離部の温度は、容易に上昇し、有機材料からなる偏光分離部の耐熱性は、一般に低い。)
本発明の第一の実施形態によれば、耐熱性及びコントラストの両方が改善された、偏光分離素子を提供することができる。すなわち、本発明の第一の実施形態である偏光分離素子は、無機材料からなる偏光分離部を含むので、偏光分離素子の耐熱性が改善され、複数の偏光分離部を含むので、偏光分離素子のコントラストを改善することができる。なお、偏光分離素子のコントラストは、偏光分離素子に対するある方向に偏光した光の透過率と偏光分離素子に対するその方向に直交する偏光した光の透過率との比である。また、本発明の第一の実施形態である偏光分離素子は、複数の偏光分離部を含むので、複数のそれぞれの偏光分離部に対する、上記のコントラストのような、互いに直交する方向に偏光した光を分離する特性(偏光分離特性)を、従来の単一の偏光分離部を含む偏光分離素子の偏子分離特性よりも緩和させることができ、従来の単一の偏光分離部を含む偏光分離素子よりも偏光分離素子の欠陥規格などのような製作上の条件を緩和させることができ、それぞれの偏光分離部を、上記の従来の偏光分離部よりも容易に製造することができると共に製作費用を低減することができる。なお、偏光分離部が、フォトニック結晶構造である場合には、従来の単一の偏光分離部としてのフォトニック結晶構造を含む偏光分離素子よりもフォトニック結晶構造の層の数を低減することができ、偏光分離部が、ワイヤーグリッド構造である場合には、従来の単一の偏光分離部としてのワイヤーグリッド構造を含む偏光分離素子よりもワイヤーの厚さを低減することもできる。
【0023】
本発明の第一の実施形態である偏光分離素子において、好ましくは、前記複数の偏光分離部の少なくとも二つは、同一の偏光分離特性を有する。なお、同一の偏光分離特性は、完全に同一な偏光分離特性及び実質的に同一とみなせる偏光分離特性の両方を含む。ここで、複数の偏光分離部の少なくとも二つが、同一の偏光分離特性を有すればよく、複数の偏光分離部の少なくとも二つが、同一の偏光分離部であっても、異なる偏光分離部であってもよい。複数の偏光分離部の少なくとも二つが、同一の偏光分離特性を有する場合には、それらの同一の偏光分離特性を備えた偏光分離部を、区別することなく配置することができ、偏光分離素子の組み立てが容易になる。
【0024】
本発明の第一の実施形態である偏光分離素子において、好ましくは、前記複数の偏光分離部の少なくとも二つは、異なる偏光分離特性を有する。なお、異なる偏光分離特性は、完全に異なる偏光分離特性及び実質的に異なるとみなせる偏光分離特性の両方を含む。複数の偏光分離部の少なくとも二つが、異なる偏光分離特性を有する場合には、それぞれの偏光分離部の偏光分離特性を調整することによって、偏光分離素子の全体の偏光分離特性を調整する(例えば、最適化する)ことができる。例えば、二つの偏光分離部を含む偏光分離素子において、一方の偏光分離部については、420nm〜470nmの波長の光のコントラストを向上させるような構成を採用し、他方の偏光分離部については、470nm〜520nmの波長の光のコントラストを向上させるような構成を採用する。このようにして、420nm〜520nmの波長の光のコントラストを向上させることができる偏光分離素子を提供することができる。
【0025】
本発明の第一の実施形態である偏光分離素子において、好ましくは、前記複数の偏光分離部の少なくとも二つは、互いに平行な偏光軸を有する。なお、互いに平行な偏光軸、完全に平行な偏光軸及び実質的に平行であるとみなせる偏光軸の両方を含む。複数の偏光分離部の少なくとも二つが、互いに平行な偏光軸を有する場合には、互いに平行な偏光軸を備えた複数の偏光分離部の少なくとも二つを透過する、偏光軸に平行な又は垂直な方向に偏光した光の透過率が、最大又は最小になり、偏光軸に平行な方向に偏光した光と偏光軸に垂直な方向に偏光した光とのコントラストが、最大になる。特に、互いに平行な偏光軸を備えた複数の偏光分離部の少なくとも二つが、同一の偏光分離特性を有する又は同一の偏光分離部である場合には、互いに平行な偏光軸を備えた複数の偏光分離部の少なくとも二つを透過する、偏光軸に平行な又は垂直な方向に偏光した光の透過率は、(単一の偏光分離部を透過する偏光軸に平行な又は垂直な方向に偏光した光の透過率)のN乗となる。ここで、Nは、互いに平行な偏光軸を備えた偏光分離部の数である。
【0026】
本発明の第一の実施形態である偏光分離素子において、好ましくは、前記複数の偏光分離部の少なくとも二つは、別個の光学部材に設けられる。光学部材の形態及び構成は、特に限定されないが、例えば、光学部材は、偏光板であってもよい。偏光分離部を備えた光学部材は、例えば、図1(a)及び(b)に示したような従来のワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板であってもよく、図2に示したような従来のフォトニック結晶構造を備えた無機偏光板であってもよい。複数の偏光分離部の少なくとも二つが、別個の光学部材に設けられる場合には、偏光分離部が設けられた別個の光学部材の配置(別個の光学部材の中心の相対的な位置及び別個の光学部材の偏光軸のなす角度など)を調整することによって、偏光分離素子の偏光分離性能を調整することができる。なお、少なくとも二つの別個の光学部材は、利用可能な接続部材によって互いに接続されていてもよく、また、互いに分離されていてもよい。すなわち、複数の偏光分離部の少なくとも二つが、別個の光学部材に設けられる場合には、偏光分離素子は、(接続された又は分離された)少なくとも二つの別個の光学部材の組み合わせを含む。
【0027】
本発明の第一の実施形態である偏光分離素子において、好ましくは、前記複数の偏光分離部の少なくとも二つは、単一の光学部材に設けられる。複数の偏光分離部の少なくとも二つが、単一の光学部材に設けられる場合には、偏光分離素子における光学部材の数を減少させることができ、偏光分離素子の大きさ及び光学部材の材料の費用を低減することができる。
【0028】
本発明の第一の実施形態である偏光分離素子において、好ましくは、前記光学部材は、フォトニック結晶構造を有する。光学部材が、フォトニック結晶構造を有する場合には、光学部材に含まれるフォトニック結晶構造の高い屈折率の層及び低い屈折率の層の構成を公知のFDTD(時間領域差分)法を用いて適切に設計することによって、偏光分離部としてのフォトニック結晶構造による光学部材の偏光分離性能を調整することができる。よって、例えば、光学部材に含まれるフォトニック結晶構造の偏光分離性能を調整して、偏光分離素子の偏光分離性能を最適化することができる。
【0029】
本発明の第一の実施形態である偏光分離素子において、好ましくは、前記光学部材の数が、複数である場合であって、前記光学部材の少なくとも二つは、前記互いに直交する方向に偏光した光が入射しない非有効部分を有すると共に該非有効部分で接合される。光学部材に含まれる非有効部分は、互いに直交する方向に偏光した光が入射しない光学部材の部分である。光学部材における非有効部分の形態及び構成は、特に限定されないが、非有効部分としては、例えば、光学部材の外周部分が挙げられる。そして、非有効部分を有する光学部材の少なくとも二つは、互いに非有効部分で接合される。この場合には光学部材が、非有効部分を有するので、光学部材の非有効部分に、無色のみならず着色した接着剤を塗布することができる。よって、非有効部分を有する光学部材の少なくとも二つを、無色のみならず着色した接着剤を用いて、接合することができる。
【0030】
より具体的には、φ10μm〜200μm程度の直径及び直径よりも長い長さのガラス棒を切断して得られるガラス材料を含む接着剤を用いて、少なくとも二つの光学部材を接合することができる。ここで、ガラス材料は、ギャップ材料として使用される。また、必要に応じて、光学部材の接合箇所に専用の凹凸構造を製作し、光学部材に専用の接合部位を設定することができる。このような凹凸構造を採用することによって、光学部剤の接合強度、よって、光学部剤の信頼性を向上させることができる。また、二つの光学部材の各々における片面の周辺部分の全体に凹凸構造を設けて、二つの光学部材を接合する場合には、二つの光学部材の凹凸部分が設けられた側の中央の面は、接合された凹凸部分によって密閉することが可能となる。よって、二つの光学部材の凹凸部分が設けられた側の中央の面は、凹凸部分によって保護され、製作初期の状態を維持することが可能となる。例えば、それらの中央の面についての耐洗浄性を向上させることができ、光学部剤の凹凸部分が設けられた側に、偏光分離部が設けられる場合には、凹凸部分によって偏光分離部の表面を保護することができる。さらには、例えば、二つの光学部材における第一面及び第四面に光学分離部を設け、第二面及び第三面に光学分離部を設けないとすれば、光学部材の第二面及び第三面の全部を互いに接合させることができる。
【0031】
本発明の第一の実施形態である偏光分離素子において、前記光学部材の少なくとも一つは、光学部品を固定する固定用部材に固定される。この場合には、光学部品の少なくとも一つを、光学部品を固定する固定用部材に機械的に容易に固定することができる。また、固定用部材が、光学部品の位置を調整する機能を有する場合には、光学部品の少なくとも一つを、光学部品を固定する固定用部材に固定する際に、偏光分離素子において、固定用部材に固定される光学部品の位置を調整することが可能となる。なお、光学部品を固定する固定用部材は、特に限定されないが、光学部品を収納すると共に固定することができる板状のセルなどの治具が挙げられる。また、複数の光学部材を、単一の固定用部材(例えば単一の固定用部材の表裏に)に固定してもよい。また、二つの光学部材を、固定用部材に固定する場合には、固定用部材の厚さを変更することによって、二つの光学部材の間隔(距離)を、変更又は調整することが可能となる。
【0032】
本発明の第二の実施形態は、本発明の第一の実施形態である偏光分離素子を用いて、互いに直交する方向に偏光した光を分離する偏光分離方法である。本発明の第二の実施形態によれば、上述した本発明の第一の実施形態である偏光分離素子を用いて、互いに直交する方向に偏光した光を分離するので、耐熱性及びコントラストの両方が改善された、偏光分離方法を提供することができる。
【0033】
本発明の第三の実施形態は、本発明の第一の実施形態である偏光分離素子を含む光学装置である。本発明の第三の実施形態によれば、光学装置が、上述した本発明の第一の実施形態である偏光分離素子を含むので、耐熱性及びコントラストの両方が改善された、光学装置を提供することができる。光学装置は、偏光分離素子を含む装置であれば、特に限定されないが、偏光分離素子を含む光学装置としては、例えば、公知の(液晶)プロジェクターなどが挙げられる。
【0034】
図4(a)及び(b)は、無機材料からなる二つの同一の偏光分離特性を備えた偏光分離部を含む偏光分離素子の例を説明する図であり、(a)は、無機材料からなる二つのフォトニック結晶構造を含む偏光分離素子の例を説明する図であり、(b)は、無機材料からなる二つのワイヤーグリッド構造を含む偏光分離素子の例を説明する図である。
【0035】
図4(a)に示すように、無機材料からなる二つのフォトニック結晶構造を含む偏光分離素子40は、二つの光学部材としての無機偏光板41を有する。二つの無機偏光板41は、それぞれ、屈折率の異なるガラス材料からなる偏光分離部分としての二つのフォトニック結晶構造42を含む。なお、二つの無機偏光板41における偏光分離部分としての二つのフォトニック結晶構造42の偏光軸は、互いに平行である。
【0036】
偏光分離素子40に、互いに直交する方向に電場の振動面を有する偏光した光の両方を同じ割合で含む光を入射させる。互いに直交する方向に電場の振動面を有する偏光した光は、それぞれ、TEモードの光及びTMモードの光と呼ばれる。なお、TEモード及びTMモードの光の電場の振動面は、それぞれ、光の進行方向に対しても直交する。偏光分離素子40の第一の無機偏光板41(光の入射側の無機偏光板)に入射したTEモード及びTMモードの光は、第一の無機偏光板41のフォトニック結晶構造42によって、分離される。すなわち、TMモードの光は、第一の無機偏光板を透過するが、TEモードの光の大部分は、第一の無機偏光板41によって反射され、TEモードの光の一部は、第一の無機偏光板41を透過する。次に、第一の無機偏光板41を透過したTEモードの光及びTMモードの光は、第二の無機偏光板41(光の射出側の無機偏光板)のフォトニック結晶構造42によって、分離される。すなわち、TMモードの光は、第二の無機偏光板を透過するが、TEモードの光の大部分は、第二の無機偏光板41によって反射され、第一の無機偏光板41を透過したTEモードの光のさらに一部のみが、第二の無機偏光板41を透過する。このようにして、偏光分離素子40を用いて、互いに直交する方向に偏光したTEモードの光及びTMモードの光を分離することができる。
【0037】
ここで、偏光分離素子40は、ガラスのような無機材料からなる偏光分離部としてのフォトニック結晶構造42を含むので、偏光分離素子40の耐熱性が改善され、二つのフォトニック結晶構造42を含む光学部材としての無機偏光板41を有するので、偏光分離素子40のコントラストを改善することができる。なお、偏光分離素子40のコントラストは、TEモードの光の透過率に対するTMモードの光の透過率の比(コントラスト=TMモードの光の透過率/TEモードの光の透過率)である。また、従来の単一のフォトニック結晶構造を含む無機偏光板からなる偏光分離素子と比較して、偏光分離素子の製造が容易である。
【0038】
なお、図4(a)においては、二つの無機偏光板のフォトニック結晶構造41は、無機偏光板41の光の入射側に設けられているが、二つの無機偏光板のフォトニック結晶構造41を、それぞれ独立に、無機偏光板41の光の射出側に設けてもよい。
【0039】
図4(b)に示すように、無機材料からなる二つのワイヤーグリッド構造を含む偏光分離素子40は、二つの光学部材としての無機偏光板41を有する。二つの無機偏光板41は、それぞれ、ガラス基板及び複数のアルミニウムのワイヤーからなる偏光分離部分としての二つのワイヤーグリッド構造43を含む。なお、二つの無機偏光板41における偏光分離部分としての二つのワイヤーグリッド構造43の偏光軸は、互いに平行である。
【0040】
偏光分離素子40に、互いに直交する方向に電場の振動面を有する偏光した光の両方を同じ割合で含む光を入射させる。互いに直交する方向に電場の振動面を有する偏光した光は、それぞれ、TEモードの光及びTMモードの光と呼ばれる。なお、TEモード及びTMモードの光の電場の振動面は、それぞれ、光の進行方向に対しても直交する。偏光分離素子40の第一の無機偏光板41(光の入射側の無機偏光板)に入射したTEモード及びTMモードの光は、第一の無機偏光板41のワイヤーグリッド構造43によって、分離される。すなわち、TMモードの光は、第一の無機偏光板を透過するが、TEモードの光の大部分は、第一の無機偏光板41によって反射され、TEモードの光の一部は、第一の無機偏光板41を透過する。次に、第一の無機偏光板41を透過したTEモードの光及びTMモードの光は、第二の無機偏光板41(光の射出側の無機偏光板)のワイヤーグリッド構造43によって、分離される。すなわち、TMモードの光は、第二の無機偏光板を透過するが、TEモードの光の大部分は、第二の無機偏光板41によって反射され、第一の無機偏光板41を透過したTEモードの光のさらに一部のみが、第二の無機偏光板41を透過する。このようにして、偏光分離素子40を用いて、互いに直交する方向に偏光したTEモードの光及びTMモードの光を分離することができる。
【0041】
ここで、偏光分離素子40は、ガラス及びアルミニウムのような無機材料からなる偏光分離部としてのワイヤーグリッド構造43を含むので、偏光分離素子40の耐熱性が改善され、二つのワイヤーグリッド構造43を含む光学部材としての無機偏光板41を有するので、偏光分離素子40のコントラストを改善することができる。なお、偏光分離素子40のコントラストは、TEモードの光の透過率に対するTMモードの光の透過率の比(コントラスト=TMモードの光の透過率/TEモードの光の透過率)である。また、従来の単一のワイヤーグリッド構造を含む無機偏光板からなる偏光分離素子と比較して、偏光分離素子の製造が容易である。
【0042】
図5(a)及び(b)は、無機材料からなる二つの異なる偏光分離特性を備えた偏光分離部を含む偏光分離素子の例を説明する図であり、(a)は、光の入射側に無機材料からなるフォトニック結晶構造及び光の射出側に無機材料からなるワイヤーグリッド構造を含む偏光分離素子の例を説明する図であり、(b)は、光の入射側に無機材料からなるワイヤーグリッド構造及び光の射出側に無機材料からなるフォトニック結晶構造を含む偏光分離素子の例を説明する図である。
【0043】
図5(a)に示すように、光の入射側に無機材料からなるフォトニック結晶構造及び光の射出側に無機材料からなるワイヤーグリッド構造を含む偏光分離素子を含む偏光分離素子50は、二つの光学部材としての無機偏光板51を有する。二つの無機偏光板51は、光の入射側に屈折率の異なるガラス材料からなる偏光分離部分としてのフォトニック結晶構造52及び光の射出側にガラス基板及び複数のアルミニウムのワイヤーからなる偏光分離部分としての二つのワイヤーグリッド構造53を含む。なお、二つの無機偏光板51における偏光分離部分としてのフォトニック結晶構造52及びワイヤーグリッド構造53の偏光軸は、互いに平行である。
【0044】
偏光分離素子50に、互いに直交する方向に電場の振動面を有する偏光した光の両方を同じ割合で含む光を入射させる。互いに直交する方向に電場の振動面を有する偏光した光は、それぞれ、TEモードの光及びTMモードの光と呼ばれる。なお、TEモード及びTMモードの光の電場の振動面は、それぞれ、光の進行方向に対しても直交する。偏光分離素子50のフォトニック結晶構造52を含む第一の無機偏光板51に入射したTEモード及びTMモードの光は、第一の無機偏光板51のフォトニック結晶構造52によって、分離される。すなわち、TMモードの光は、第一の無機偏光板51を透過するが、TEモードの光の大部分は、第一の無機偏光板51によって反射され、TEモードの光の一部は、第一の無機偏光板51を透過する。次に、第一の無機偏光板51を透過したTEモードの光及びTMモードの光は、ワイヤーグリッド構造53を含む第二の無機偏光板51のワイヤーグリッド構造53によって、分離される。すなわち、TMモードの光は、第二の無機偏光板を透過するが、TEモードの光の大部分は、第二の無機偏光板51によって反射され、第一の無機偏光板51を透過したTEモードの光のさらに一部のみが、第二の無機偏光板51を透過する。このようにして、偏光分離素子50を用いて、互いに直交する方向に偏光したTEモードの光及びTMモードの光を分離することができる。
【0045】
ここで、偏光分離素子50は、ガラスのような無機材料からなる偏光分離部としてのフォトニック結晶構造52並びにガラス及びアルミニウムのような無機材料からなる偏光分離部としてのワイヤーグリッド構造53を含むので、偏光分離素子50の耐熱性が改善され、フォトニック結晶構造52又はワイヤーグリッド構造53を含む二つの光学部材としての無機偏光板51を有するので、偏光分離素子50のコントラストを改善することができる。なお、偏光分離素子50のコントラストは、TEモードの光の透過率に対するTMモードの光の透過率の比(コントラスト=TMモードの光の透過率/TEモードの光の透過率)である。また、従来の単一のフォトニック結晶構造を含む無機偏光板からなる偏光分離素子と比較して、偏光分離素子の製造が容易である。
【0046】
図5(b)に示すように、光の入射側に無機材料からなるワイヤーグリッド構造及び光の射出側に無機材料からなるフォトニック結晶構造を含む偏光分離素子を含む偏光分離素子50は、二つの光学部材としての無機偏光板51を有する。二つの無機偏光板51は、光の入射側にガラス基板及び複数のアルミニウムのワイヤーからなる偏光分離部分としての二つのワイヤーグリッド構造53及び光の射出側に屈折率の異なるガラス材料からなる偏光分離部分としてのフォトニック結晶構造52を含む。なお、二つの無機偏光板51における偏光分離部分としてのワイヤーグリッド構造53及びフォトニック結晶構造52の偏光軸は、互いに平行である。
【0047】
偏光分離素子50に、互いに直交する方向に電場の振動面を有する偏光した光の両方を同じ割合で含む光を入射させる。互いに直交する方向に電場の振動面を有する偏光した光は、それぞれ、TEモードの光及びTMモードの光と呼ばれる。なお、TEモード及びTMモードの光の電場の振動面は、それぞれ、光の進行方向に対しても直交する。偏光分離素子50のワイヤーグリッド構造53を含む第一の無機偏光板51に入射したTEモード及びTMモードの光は、第一の無機偏光板51のワイヤーグリッド構造53によって、分離される。すなわち、TMモードの光は、第一の無機偏光板51を透過するが、TEモードの光の大部分は、第一の無機偏光板51によって反射され、TEモードの光の一部は、第一の無機偏光板51を透過する。次に、第一の無機偏光板51を透過したTEモードの光及びTMモードの光は、フォトニック結晶構造52を含む第二の無機偏光板51のフォトニック結晶構造52によって、分離される。すなわち、TMモードの光は、第二の無機偏光板を透過するが、TEモードの光の大部分は、第二の無機偏光板51によって反射され、第一の無機偏光板51を透過したTEモードの光のさらに一部のみが、第二の無機偏光板51を透過する。このようにして、偏光分離素子50を用いて、互いに直交する方向に偏光したTEモードの光及びTMモードの光を分離することができる。
【0048】
ここで、偏光分離素子50は、ガラス及びアルミニウムのような無機材料からなる偏光分離部としてのワイヤーグリッド構造53並びにガラスのような無機材料からなる偏光分離部としてのフォトニック結晶構造52を含むので、偏光分離素子50の耐熱性が改善され、ワイヤーグリッド構造53又はフォトニック結晶構造52を含む二つの光学部材としての無機偏光板51を有するので、偏光分離素子50のコントラストを改善することができる。なお、偏光分離素子50のコントラストは、TEモードの光の透過率に対するTMモードの光の透過率の比(コントラスト=TMモードの光の透過率/TEモードの光の透過率)である。また、従来の単一のフォトニック結晶構造を含む無機偏光板からなる偏光分離素子と比較して、偏光分離素子の製造が容易である。
【0049】
図6(a)及び(b)は、無機材料からなる二つの偏光分離部が、単一の光学部材に設けられている偏光分離素子の例を説明する図であり、(a)は、二つの偏光分離部としてのフォトニック結晶構造が、単一の光学部材としての無機偏光板に設けられている偏光分離素子の例を説明する図であり、(b)は、偏光分離部としてのフォトニック結晶構造及びワイヤーグリッド構造が、単一の光学部材としての無機偏光板に設けられている偏光分離素子の例を説明する図である。
【0050】
図6(a)に示すように、偏光分離素子は、単一の光学部材としての無機偏光板61であり、そのガラス基板の両側に、ガラスのような無機材料からなる二つの偏光分離部としてのフォトニック結晶構造62を有する。二つのフォトニック結晶構造62は、同一の構成を有するものであってもよく、互いに異なる構成を有するものであってもよい。図6(a)に示すような偏光分離素子を、図4(a)に示す偏光分離素子40と同様に用いることによっても、互いに直交する方向に偏光したTEモードの光及びTMモードの光を分離することができる。また、図6(a)に示す偏光分離素子は、単一の無機偏光板61のみを含むため、無機偏光板の材料の費用及び偏光分離素子の大きさを低減することができる。
【0051】
図6(b)に示すように、偏光分離素子は、単一の光学部材としての無機偏光板61であり、そのガラス基板の両側に、ガラスのような無機材料からなる偏光分離部としてのフォトニック結晶構造62及びワイヤーグリッド構造63を有する。図6(b)に示すような偏光分離素子を、図5(a)に示す偏光分離素子50と同様に用いることによっても、互いに直交する方向に偏光したTEモードの光及びTMモードの光を分離することができる。また、図6(b)に示す偏光分離素子は、単一の無機偏光板61のみを含むため、無機偏光板の材料の費用及び偏光分離素子の大きさを低減することができる。
【0052】
なお、図示しないが、二つの偏光分離部としてのワイヤーグリッド構造が、単一の光学部材としての無機偏光板に設けられている偏光分離素子も用いることができる。
【0053】
図7は、無機材料からなる偏光分離部が設けられる二つの光学部材が、非有効部分を有すると共に該非有効部分で接合される偏光分離素子の例を説明する図である。
【0054】
図7に示すように、偏光分離素子70は、ガラス材料のような無機材料からなる偏光分離部としてのフォトニック結晶構造72が設けられる二つの光学部材としての無機偏光板71を有し、二つの無機偏光板71は、それぞれ、フォトニック結晶構造72の外周に、互いに直交する方向に偏光した光が入射しない非有効部分73を有する。そして、二つの無機偏光板71は、非有効部分73に塗布した接着剤74で接合される。接着剤74は、互いに直交する方向に偏光した光が入射しない非有効部分73に塗布されるため、無色のみならず着色した接着剤を使用することができる。このように、図7に示すような偏光分離素子70を、図4(a)に示す偏光分離素子40と同様に用いることによっても、互いに直交する方向に偏光したTEモードの光及びTMモードの光を分離することができる。
【0055】
なお、図7におけるフォトニック結晶構造の一方又は両方に代えて、ワイヤーグリッド構造も用いることができる。
【0056】
図8は、無機材料からなる偏光分離部が設けられる光学部材が、光学部品を固定する固定用部材に固定される偏光分離素子の例を説明する図である。
【0057】
図8に示すように、偏光分離素子においては、ガラスのような無機材料からなる偏光分離部としてのフォトニック結晶構造が設けられる光学部材としての無機偏光板81が、無機偏光板81を固定する固定用部材に固定されている。固定用部材は、無機偏光板81の周囲(の四つの面)を囲むことになる四枚のガラス板(二枚のガラス板のみ図示する)を有するセル82及びセル82の四枚のガラス板のうち二枚のガラス板の間隔を調整するための機械的手段83を有する。より詳しくは、無機偏光板81をセル82の四枚のガラス板に囲まれる空間に位置させ、セル82の二枚のガラス板で無機偏光板81をはさむ。そして、セル82の二枚のガラス板の間隔を、機械的手段83を使用して、減少させる。このようにして、無機偏光板81は、セル82の二枚のガラス板に硬く挟みこまれ、セル82内に固定される。また、偏光分離素子に含まれる他の無機偏光板も同様の固定用部材によって所定の位置に固定される。このようにして、光学部材としての無機偏光板81を容易に固定することができる。また、図示していないが、セル82に複数のガラス板の位置を調整するために、複数の機械的手段を設ければ、偏光分離素子における無機偏光板81の位置を調整することができる。
【0058】
<実施例1>
図4(a)に示す構成において二つの異なる無機偏光板のフォトニック結晶構造を対向させた高透過率タイプの偏光光学素子を、FDTD法を用いて設計した。すなわち、ガラス材料からなるフォトニック結晶構造を備えた二つの異なる無機偏光板を含む高透過率タイプの偏光分離素子を設計した。
【0059】
設計したフォトニック結晶構造を備えた無機偏光板の一方は、石英からなる基板及び低屈折率層の材料と同じ材料からなる調整層、並びに調整層に順次積層された第一の薄膜層群〜第五の薄膜層群を含む。第一の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2の高屈折率層及び厚さλ/2の低屈折率層を交互にそれぞれ10層ずつ積層させたものである。第二の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2の高屈折率層及び厚さλ/2×0.90の低屈折率層を交互にそれぞれ10層ずつ積層させたものである。第三の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.95の高屈折率層及び厚さλ/2×0.90の低屈折率層を交互にそれぞれ10層ずつ積層させたものである。第四の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.95の高屈折率層及び厚さλ/2×0.85の低屈折率層を交互にそれぞれ8層ずつ積層させたものである。第五の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.50の高屈折率層及び厚さλ/2×0.30の低屈折率層を1層ずつ積層させたものである。
【0060】
設計したフォトニック結晶構造を備えた無機偏光板の他方は、石英からなる基板及び低屈折率層の材料と同じ材料からなる調整層、並びに調整層に順次積層された第一の薄膜層群〜第九の薄膜層群を含む。第一の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.90の高屈折率層及び厚さλ/2×0.85の低屈折率層を交互にそれぞれ8層ずつ積層させたものである。第二の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.90の高屈折率層及び厚さλ/2×0.80の低屈折率層を交互にそれぞれ6層ずつ積層させたものである。第三の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.85の高屈折率層及び厚さλ/2×0.80の低屈折率層を交互にそれぞれ6層ずつ積層させたものである。第四の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.80の高屈折率層及び厚さλ/2×0.70の低屈折率層を交互にそれぞれ4層ずつ積層させたものである。第五の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.75の高屈折率層及び厚さλ/2×0.60の低屈折率層を4層ずつ積層させたものである。第六の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.70の高屈折率層及び厚さλ/2×0.55の低屈折率層をそれぞれ1層ずつ積層させたものである。第七の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.60の高屈折率層及び厚さλ/2×0.50の低屈折率層をそれぞれ1層ずつ積層させたものである。第八の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.50の高屈折率層及び厚さλ/2×0.40の低屈折率層をそれぞれ1層ずつ積層させたものである。第九の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.50の高屈折率層及び厚さλ/2×0.30の低屈折率層をそれぞれ1層ずつ積層させたものである。
【0061】
なお、λは、偏光分離素子に入射させる光の波長であり、ここでは、470nmである。また、波長λ(470nm)における石英、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、それぞれ、1.45、2.333、1.435である。
【0062】
シミュレーションにより、この高透過率タイプの偏光分離素子に、互いに直交する方向に偏光したTEモードの光及びTMモードの光を入射させて、この高透過率タイプの偏光分離素子の透過率及びコントラストを算出した。
【0063】
光の入射側におけるフォトニック結晶構造を備えた二つの無機偏光板の各々におけるTMモードの光の透過率は、97%であり(残り3%の光は、散乱光/吸収された光である)、TEモードの光の透過率は、3%(残りの94%の光は、反射光であり、3%の光は、散乱光/吸収された光である)であった。よって、二つの無機偏光板を含む高透過率タイプの偏光分離素子の全体におけるTMモードの光の透過率は、(97%)=約94%であり、TEモードの光の透過率は、(3%)=0.09%であった。また、二つの無機偏光板を含む高透過率タイプの偏光分離素子を透過したTMモードの光とTEモードの光のコントラストは、94%/0.09%=約1044であった。
【0064】
<実施例2>
図6(a)に示す構成を有する高コントラストタイプの偏光光学素子を、FDTD法を用いて設計した。すなわち、ガラス材料からなるフォトニック結晶構造を備えた二つの無機偏光板を含む高コントラストタイプの偏光分離素子を設計した。
【0065】
設計したフォトニック結晶構造を備えた二つの無機偏光板は、石英からなる基板及び基板の両側の低屈折率層の材料と同じ材料からなる二つの調整層、並びに各々の調整層に順次積層された第一の薄膜層群〜第十四の薄膜層群を含む。第一の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2の高屈折率層及び厚さλ/2の低屈折率層を交互にそれぞれ14層ずつ積層させたものである。第二の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2の高屈折率層及び厚さλ/2×0.90の低屈折率層を交互にそれぞれ14層ずつ積層させたものである。第三の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.95の高屈折率層及び厚さλ/2×0.90の低屈折率層を交互にそれぞれ12層ずつ積層させたものである。第四の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.95の高屈折率層及び厚さλ/2×0.85の低屈折率層を交互にそれぞれ12層ずつ積層させたものである。第五の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.90の高屈折率層及び厚さλ/2×0.85の低屈折率層を交互にそれぞれ10層ずつ積層させたものである。第六の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.90の高屈折率層及び厚さλ/2×0.80の低屈折率層を交互にそれぞれ10層ずつ積層させたものである。第七の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.85の高屈折率層及び厚さλ/2×0.80の低屈折率層を交互にそれぞれ8層ずつ積層させたものである。第八の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.80の高屈折率層及び厚さλ/2×0.70の低屈折率層を交互にそれぞれ8層ずつ積層させたものである。第九の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.80の高屈折率層及び厚さλ/2×0.60の低屈折率層を交互にそれぞれ6層ずつ積層させたものである。第十の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.75の高屈折率層及び厚さλ/2×0.60の低屈折率層を交互にそれぞれ6層ずつ積層させたものである。第十一の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.70の高屈折率層及び厚さλ/2×0.55の低屈折率層を交互にそれぞれ4層ずつ積層させたものである。第十二の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.60の高屈折率層及び厚さλ/2×0.50の低屈折率層を交互にそれぞれ4層ずつ積層させたものである。第十三の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.50の高屈折率層及び厚さλ/2×0.40の低屈折率層を交互にそれぞれ2層ずつ積層させたものである。第十四の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.50の高屈折率層及び厚さλ/2×0.30の低屈折率層をそれぞれ1層ずつ積層させたものである。なお、λは、偏光分離素子に入射させる光の波長であり、ここでは、470nmである。また、波長λ(470nm)における石英、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、それぞれ、1.45、2.333、1.435である。
【0066】
シミュレーションにより、この高コントラストタイプの偏光分離素子に、互いに直交する方向に偏光したTEモードの光及びTMモードの光を入射させて、この高コントラストタイプの偏光分離素子の透過率及びコントラストを算出した。
【0067】
光の入射側におけるフォトニック結晶構造を備えた二つの無機偏光板の各々におけるTMモードの光の透過率は、95%であり(残り5%の光は、散乱光/吸収された光である)、TEモードの光の透過率は、1%(残りの94%の光は、反射光であり、5%の光は、散乱光/吸収された光である)であった。よって、二つの無機偏光板を含む高コントラストタイプの偏光分離素子の全体におけるTMモードの光の透過率は、(95%)=約90%であり、TEモードの光の透過率は、(1%)=0.01%であった。また、二つの無機偏光板を含む高透過率タイプの偏光分離素子を透過したTMモードの光とTEモードの光のコントラストは、90%/0.01%=約9000であった。
【0068】
<比較例1>
図2に示す構成を有する高透過率タイプの偏光光学素子を、FDTD法を用いて設計した。すなわち、ガラス材料からなるフォトニック結晶構造を備えた単一の無機偏光板を含む高透過率タイプの偏光分離素子を設計した。
【0069】
設計したフォトニック結晶構造を備えた単一の無機偏光板は、石英からなる基板及び低屈折率層の材料と同じ材料からなる調整層、並びに調整層に順次積層された第一の薄膜層群〜第十三の薄膜層群を含む。第一の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2の高屈折率層及び厚さλ/2の低屈折率層を交互にそれぞれ10層ずつ積層させたものである。第二の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2の高屈折率層及び厚さλ/2×0.90の低屈折率層を交互にそれぞれ10層ずつ積層させたものである。第三の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.95の高屈折率層及び厚さλ/2×0.90の低屈折率層を交互にそれぞれ10層ずつ積層させたものである。第四の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.95の高屈折率層及び厚さλ/2×0.85の低屈折率層を交互にそれぞれ8層ずつ積層させたものである。第五の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.90の高屈折率層及び厚さλ/2×0.85の低屈折率層を交互にそれぞれ8層ずつ積層させたものである。第六の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.90の高屈折率層及び厚さλ/2×0.80の低屈折率層を交互にそれぞれ6層ずつ積層させたものである。第七の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.85の高屈折率層及び厚さλ/2×0.80の低屈折率層を交互にそれぞれ6層ずつ積層させたものである。第八の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.80の高屈折率層及び厚さλ/2×0.70の低屈折率層を交互にそれぞれ4層ずつ積層させたものである。第九の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.75の高屈折率層及び厚さλ/2×0.60の低屈折率層を4層ずつ積層させたものである。第十の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.70の高屈折率層及び厚さλ/2×0.55の低屈折率層をそれぞれ1層ずつ積層させたものである。第十一の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.60の高屈折率層及び厚さλ/2×0.50の低屈折率層をそれぞれ1層ずつ積層させたものである。第十二の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.50の高屈折率層及び厚さλ/2×0.40の低屈折率層をそれぞれ1層ずつ積層させたものである。第十三の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.50の高屈折率層及び厚さλ/2×0.30の低屈折率層をそれぞれ1層ずつ積層させたものである。
【0070】
なお、λは、偏光分離素子に入射させる光の波長であり、ここでは、470nmである。また、波長λ(470nm)における石英、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、それぞれ、1.45、2.333、1.435である。
【0071】
シミュレーションにより、この高透過率タイプの偏光分離素子に、互いに直交する方向に偏光したTEモードの光及びTMモードの光を入射させて、この高透過率タイプの偏光分離素子の透過率及びコントラストを算出した。
【0072】
光の入射側におけるフォトニック結晶構造を備えた単一の無機偏光板におけるTMモードの光の透過率は、91%であり(残り9%の光は、散乱光/吸収された光である)、TEモードの光の透過率は、0.5%(残りの90.5%の光は、反射光であり、9%の光は、散乱光/吸収された光である)であった。すなわち、単一の無機偏光板を含む高透過率タイプの偏光分離素子の全体におけるTMモードの光の透過率も、91%であり、TEモードの光の透過率も0.5%であった。また、単一の無機偏光板を含む高透過率タイプの偏光分離素子を透過したTMモードの光とTEモードの光のコントラストは、91%/0.5%=182であった。
【0073】
<比較例2>
図2に示す構成を有する高コントラストタイプの偏光光学素子を、FDTD法を用いて設計した。すなわち、ガラス材料からなるフォトニック結晶構造を備えた単一の無機偏光板を含む高コントラストタイプの偏光分離素子を設計した。
【0074】
設計したフォトニック結晶構造を備えた単一の無機偏光板は、石英からなる基板及び低屈折率層の材料と同じ材料からなる調整層、並びに調整層に順次積層された第一の薄膜層群〜第十四の薄膜層群を含む。第一の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2の高屈折率層及び厚さλ/2の低屈折率層を交互にそれぞれ14層ずつ積層させたものである。第二の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2の高屈折率層及び厚さλ/2×0.90の低屈折率層を交互にそれぞれ14層ずつ積層させたものである。第三の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.95の高屈折率層及び厚さλ/2×0.90の低屈折率層を交互にそれぞれ12層ずつ積層させたものである。第四の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.95の高屈折率層及び厚さλ/2×0.85の低屈折率層を交互にそれぞれ12層ずつ積層させたものである。第五の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.90の高屈折率層及び厚さλ/2×0.85の低屈折率層を交互にそれぞれ10層ずつ積層させたものである。第六の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.90の高屈折率層及び厚さλ/2×0.80の低屈折率層を交互にそれぞれ10層ずつ積層させたものである。第七の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.85の高屈折率層及び厚さλ/2×0.80の低屈折率層を交互にそれぞれ8層ずつ積層させたものである。第八の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.80の高屈折率層及び厚さλ/2×0.70の低屈折率層を交互にそれぞれ8層ずつ積層させたものである。第九の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.80の高屈折率層及び厚さλ/2×0.60の低屈折率層を交互にそれぞれ6層ずつ積層させたものである。第十の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.75の高屈折率層及び厚さλ/2×0.60の低屈折率層を交互にそれぞれ6層ずつ積層させたものである。第十一の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.70の高屈折率層及び厚さλ/2×0.55の低屈折率層を交互にそれぞれ4層ずつ積層させたものである。第十二の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.60の高屈折率層及び厚さλ/2×0.50の低屈折率層を交互にそれぞれ4層ずつ積層させたものである。第十三の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.50の高屈折率層及び厚さλ/2×0.40の低屈折率層を交互にそれぞれ2層ずつ積層させたものである。第十四の薄膜層群は、基板側から、厚さλ/2×0.50の高屈折率層及び厚さλ/2×0.30の低屈折率層をそれぞれ1層ずつ積層させたものである。なお、λは、偏光分離素子に入射させる光の波長であり、ここでは、470nmである。また、波長λ(470nm)における石英、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、それぞれ、1.45、2.333、1.435である。
【0075】
シミュレーションにより、この高コントラストタイプの偏光分離素子に、互いに直交する方向に偏光したTEモードの光及びTMモードの光を入射させて、この高コントラストタイプの偏光分離素子の透過率及びコントラストを算出した。
【0076】
光の入射側におけるフォトニック結晶構造を備えた単一の無機偏光板におけるTMモードの光の透過率は、88%であり(残り12%の光は、散乱光/吸収された光である)、TEモードの光の透過率は、0.1%(残りの87.9%の光は、反射光であり、12%の光は、散乱光/吸収された光である)であった。すなわち、単一の無機偏光板を含む高コントラストタイプの偏光分離素子の全体におけるTMモードの光の透過率も、88%であり、TEモードの光の透過率も0.1%であった。また、単一の無機偏光板を含む高コントラストタイプの偏光分離素子を透過したTMモードの光とTEモードの光のコントラストは、88%/0.1%=880であった。
【0077】
実施例1及び比較例1の結果より、ガラス材料からなるフォトニック結晶構造を備えた二つの無機偏光板を含む高透過率タイプの偏光分離素子は、ガラス材料からなるフォトニック結晶構造を備えた単一の無機偏光板を含む高透過率タイプの偏光分離素子よりもTMモードの光の高い透過率、TEモードの光の低い透過率、及び高いコントラストを有することが確認された。
【0078】
実施例2及び比較例2の結果より、ガラス材料からなるフォトニック結晶構造を備えた二つの無機偏光板を含む高コントラストタイプの偏光分離素子は、ガラス材料からなるフォトニック結晶構造を備えた単一の無機偏光板を含む高コントラストタイプの偏光分離素子よりもTMモードの光の高い透過率、TEモードの光の低い透過率、及び高いコントラストを有することが確認された。
【0079】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、これら本発明の実施の形態及び実施例を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】(a)及び(b)は、ワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板を表す図であり、(a)は、ワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板の斜視図であり、(b)は、ワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板の断面図である。
【図2】フォトニック結晶構造を備えた無機偏光板を表す図である。
【図3】(a)〜(d)は、フォトニック結晶構造を備えた無機偏光板の製造方法を説明する図である。
【図4】(a)及び(b)は、無機材料からなる二つの同一の偏光分離特性を備えた偏光分離部を含む偏光分離素子の例を説明する図であり、(a)は、無機材料からなる二つのフォトニック結晶構造を含む偏光分離素子の例を説明する図であり、(b)は、無機材料からなる二つのワイヤーグリッド構造を含む偏光分離素子の例を説明する図である。
【図5】(a)及び(b)は、無機材料からなる二つの異なる偏光分離特性を備えた偏光分離部を含む偏光分離素子の例を説明する図であり、(a)は、光の入射側に無機材料からなるフォトニック結晶構造及び光の射出側に無機材料からなるワイヤーグリッド構造を含む偏光分離素子の例を説明する図であり、(b)は、光の入射側に無機材料からなるワイヤーグリッド構造及び光の射出側に無機材料からなるフォトニック結晶構造を含む偏光分離素子の例を説明する図である。
【図6】(a)及び(b)は、無機材料からなる二つの偏光分離部が、単一の光学部材に設けられている偏光分離素子の例を説明する図であり、(a)は、二つの偏光分離部としてのフォトニック結晶構造が、単一の光学部材としての無機偏光板に設けられている偏光分離素子の例を説明する図であり、(b)は、偏光分離部としてのフォトニック結晶構造及びワイヤーグリッド構造が、単一の光学部材としての無機偏光板に設けられている偏光分離素子の例を説明する図である。
【図7】無機材料からなる偏光分離部が設けられる二つの光学部材が、非有効部分を有すると共に該非有効部分で接合される偏光分離素子の例を説明する図である。
【図8】無機材料からなる偏光分離部が設けられる光学部材が、光学部品を固定する固定用部材に固定される偏光分離素子の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0081】
10 ワイヤーグリッド構造を備えた無機偏光板
11 ベース基板
12 金属ワイヤー
20、30 フォトニック結晶構造を備えた無機偏光板
21、31 基板
22、32 調整層
23、33 高屈折率層
24、34 低屈折率層
40、50、70 偏光分離素子
41、51、61、71、81 無機偏光板
42、52、62、72 フォトニック結晶構造
43、53、63 ワイヤーグリッド構造
73 非有効部分
74 接着剤
82 セル
83 機械的手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する方向に偏光した光を分離すると共に無機材料からなる複数の偏光分離部を含むことを特徴とする偏光分離素子。
【請求項2】
前記複数の偏光分離部の少なくとも二つは、同一の偏光分離特性を有することを特徴とする請求項1に記載の偏光分離素子。
【請求項3】
前記複数の偏光分離部の少なくとも二つは、異なる偏光分離特性を有することを特徴とする請求項1に記載の偏光分離素子。
【請求項4】
前記複数の偏光分離部の少なくとも二つは、互いに平行な偏光軸を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の偏光分離素子。
【請求項5】
前記複数の偏光分離部の少なくとも二つは、別個の光学部材に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の偏光分離素子。
【請求項6】
前記複数の偏光分離部の少なくとも二つは、単一の光学部材に設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の偏光分離素子。
【請求項7】
前記光学部材は、フォトニック結晶構造を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の偏光分離素子。
【請求項8】
前記光学部材の数が、複数である場合であって、
前記光学部材の少なくとも二つは、前記互いに直交する方向に偏光した光が入射しない非有効部分を有すると共に該非有効部分で接合されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の偏光分離素子。
【請求項9】
前記光学部材の少なくとも一つは、光学部品を固定する固定用部材に固定されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の偏光分離素子。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の偏光分離素子を用いて、互いに直交する方向に偏光した光を分離することを特徴とする偏光分離方法。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の偏光分離素子を含むことを特徴とする光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−337860(P2006−337860A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164620(P2005−164620)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000115728)リコー光学株式会社 (134)
【Fターム(参考)】