説明

偏光制御膜、偏光制御素子、積層偏光制御素子、楕円偏光板、発光素子および偏光特性制御方法

【課題】本発明の目的は、良好な偏光特性を示し、偏光特性の制御安定性に優れ、かつ視覚特性に優れる偏光制御膜、偏光制御素子および偏光特性制御方法を提供することにある。
【解決手段】電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが可逆的に変化する、配向された、2色性色素を含有することを特徴とする偏光制御膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、照明装置、偏光眼鏡、プライバシーフィルムなどに用いることができる、偏光制御膜、偏光制御素子、積層偏光制御素子、楕円偏光板、発光素子および偏光特性制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光特性を有する偏光子は、ディスプレイの表示、調光、等を目的として、種種の用途に用いられており、またこれらの偏光特性を外部からのエネルギーにより変化させ、この変化を利用した、表示、調光などの機能を有する素子が知られている。
【0003】
そして、偏光子の偏光特性を変化させる方法としては、例えば液晶を用い液晶の配向を変化させる方法、もしくは色素を含有する液晶を用い、色素の配向を変化させる方法が知られている。
【0004】
さらに、クロミック材料を用いる方法が知られており、例えば配向されたフォトクロミック色素を用い、紫外線照射により着色させ、可視光などで退色させて偏光特性を変化させる方法(特許文献1参照)、所定温度以下で半透明または透明であり、所定温度以上で発色するサーモクロミック材料を用いる方法(特許文献2参照)が知られている。
【0005】
しかしながら、これらは、偏光フィルター機能を有するものの、偏光特性の切り替えを任意に行うために、一定した偏光特性が要求されるような、例えば表示装置などの用途に用いる場合には、光、温度などの環境変動に対する偏光制御の安定性が充分でない、視野角の依存性に基づく視覚特性が充分でない、といった問題があった。
【0006】
また、クロミック材料を用いた調光素子として、所謂エレクトロクロミック素子が知られており、電荷を供与することによる、光吸収波長を変化させ光量調整、色調整などを行うディスプレイの表示などに利用されている(特許文献3参照)。
【0007】
これらのエレクトロクロミック素子は、単に調光、スイッチング機能を有するのみで、偏光機能を必要とする場合には、別途偏光子を準備しなければならなかった。
【0008】
さらに、偏光特性を外部からのエネルギー供与により変化させて利用する場合の形態としては、例えば、プライバシーフィルムにおいて偏光子の一部分のみに偏光特性を持たせる、表示装置において画像を表現するなどの形態のように、偏光子の特定の部分を局所的に制御して利用する形態がある。
【0009】
このような場合においても上記のような公知の方法では、光、温度などの環境変動に対する偏光制御の安定性が充分でない、視野角の依存性に基づく視覚特性が充分でない、簡易に局所的に制御する構成を得難い、等の問題があった。
【0010】
また、偏光子を用いた機能性板として、楕円偏光板が知られている。
【0011】
楕円偏光板は、位相差板と偏光子とを有し、発光素子を用いた表示装置などの外光反射を低減させる反射防止材等として使用されている。
【0012】
楕円偏光板としては、例えば、上記のようなフォトクロミック色素含有する偏光子に位相差板が積層された円偏光フィルタ(特許文献2参照)、特定の位相差を有するフィルムと液晶性の二色性色素を含む偏光層とからなる円偏光フィルム(特許文献4参照)が知られている。
【0013】
しかしながら、これらは、偏光フィルター機能を有するものの、偏光特性の切り替えを任意に行うことが必要であり、一定した偏光特性が要求されるような、例えば表示装置などの用途に用いる場合には、光、温度などの環境変動に対する視認性の安定性が充分でない、視野角の依存性に基づく視覚特性が充分でない、といった問題があった。
【0014】
また、表示装置、照明装置などを例えば、鏡など他の目的にも使用したい場合などには、円偏光フィルムを取り外すなどの処理が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−122485号公報
【特許文献2】特表2005−538878号公報
【特許文献3】特開2007−112957号公報
【特許文献4】特開2007−025465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、良好な偏光特性を示し、偏光特性の制御安定性に優れ、かつ視覚特性に優れる偏光制御膜、偏光制御素子、積層偏光制御素子および偏光特性制御方法を提供することにある。
【0017】
また、本発明の目的は、良好な偏光特性を示し、偏光特性の制御安定性に優れ、視覚特性に優れかつ、部分的に偏光特性の制御が可能な偏光制御膜、偏光制御素子、積層偏光制御素子および偏光特性制御方法を提供することにある。
【0018】
さらに本発明の目的は、偏光特性の制御が可能であって、偏光特性の制御安定性に優れ、視覚特性に優れ、かつ多機能を有する光学素子を、簡易に与えることができる偏光制御素子、積層偏光制御素子および偏光特性制御方法、ならびにその偏光制御素子を与える楕円偏光板およびそれを用いた光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の上記課題は、下記の手段により達成される。
【0020】
1.電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが可逆的に変化する、配向された、2色性色素を含有することを特徴とする偏光制御膜。
【0021】
2.前記偏光制御膜が、偏光特性の制御が電荷の授受により行われる、電荷制御型偏光制御膜であることを特徴とする前記1に記載の偏光制御膜。
【0022】
3.前記電荷の授受が酸化還元反応であることを特徴とする前記1または2に記載の偏光制御膜。
【0023】
4.前記配向が、面内一軸配向であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の偏光制御膜。
【0024】
5.前記1から4のいずれか1項に記載の偏光制御膜および電荷供給手段を有することを特徴とする偏光制御素子。
【0025】
6.前記電荷供給手段が、電解質層および電極を有することを特徴とする前記5に記載の偏光制御素子。
【0026】
7.前記電荷供給手段が、電荷供給手段からの電荷の供給が局所的に制御可能である構成を有することを特徴とする前記5または6に記載の偏光制御素子。
【0027】
8.前記5から7のいずれか1項に記載の偏光制御素子を用いることを特徴とする偏光特性制御方法。
【0028】
9.前記5から7のいずれか1項に記載の偏光制御素子からなる層を、複数層有し、該複数層の各偏光制御素子が有する偏光制御膜が含有する2色性色素の配向方向が各々異なることを特徴とする積層偏光制御素子。
【0029】
10.前記9に記載の積層偏光制御素子を用いることを特徴とする偏光特性制御方法。
【0030】
11.位相差板と、前記5から7のいずれか1項に記載の偏光制御素子とを、有することを特徴とする楕円偏光板。
【0031】
12.位相差板と、前記9に記載の積層偏光制御素子とを、有することを特徴とする楕円偏光板。
【0032】
13.前記5から7のいずれか1項に記載の偏光制御素子を有することを特徴とする発光素子。
【0033】
14.前記9に記載の積層偏光制御素子を有することを特徴とする発光素子。
【0034】
15.前記11または12に記載の楕円偏光板を有することを特徴とする発光素子。
【0035】
16.前記13から15のいずれか1項に記載の発光素子であって、前記発光素子が、表示素子であることを特徴とする発光素子。
【0036】
17.前記13から15のいずれか1項に記載の発光素子であって、前記発光素子が、照明素子であることを特徴とする発光素子。
【0037】
18.前記発光素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする前記16または17に記載の発光素子。
【0038】
19.電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが変化する、配向された2色性色素を含有する偏光制御膜および電荷供給手段を有する偏光制御素子を用い、該電荷供給手段から該2色性色素への電荷の供給を制御して、該偏光制御膜の偏光特性を可逆的に変化させることを特徴とする偏光特性制御方法。
【0039】
20.前記2色性色素への電荷の供給を制御する方法が電圧を制御する方法であり、前記偏光制御膜が着色状態で偏光特性を有する状態と、前記偏光制御膜が無着色状態で偏光特性を有さない状態とを可逆的に変化させることを特徴とする前記19に記載の偏光特性制御方法。
【0040】
21.位相差板と、電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが可逆的に変化する、配向された、2色性色素を含有する偏光制御膜および電荷供給手段を有する偏光制御素子とを有する楕円偏光板を用い、該電荷供給手段から該2色性色素への電荷の供給を制御して、該偏光制御膜の偏光特性を可逆的に変化させ、該楕円偏光板の偏光特性を制御することを特徴とする偏光特性制御方法。
【発明の効果】
【0041】
本発明の上記手段により、良好な偏光特性を示し、偏光特性の制御安定性に優れ、かつ視覚特性に優れる偏光制御膜、偏光制御素子および偏光特性制御方法が提供できる。
【0042】
また、良好な偏光特性を示し、偏光特性の制御安定性に優れ、視覚特性に優れかつ、部分的に偏光特性の制御が可能な偏光制御膜、偏光制御素子および偏光特性制御方法が提供できる。
【0043】
さらに、偏光特性の制御が可能であって、偏光特性の制御安定性に優れ、視覚特性に優れ、かつ多機能を有する光学素子を、簡易に与えることができる偏光制御素子、積層偏光制御素子および偏光特性制御方法、ならびにその偏光制御素子を与える楕円偏光板およびそれを用いた光学素子が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】光吸収スペクトルの変化の例を示した図である。
【図2】本発明の偏光制御素子の例の概略断面図である。
【図3】電荷の供給が局所的に制御可能である構成を有する偏光制御素子の例の概略断面図である。
【図4】本発明の積層偏光制御素子を有する発光素子の例の模式断面図である。
【図5】本発明の楕円偏光板を有する発光素子の例の概略断面図である。
【図6】偏光制御素子を作製するための工程の概略図である。
【図7】本発明の偏光制御素子の他の例の概略平面図である。
【図8】本発明の偏光制御素子の他の例の概略平面図である。
【図9】本発明の偏光制御素子の他の例の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、偏光制御膜であり、電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが変化する、配向された、2色性色素を含有することを特徴とする。
【0046】
本発明においては、特に電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが変化する2色性色素を配向して含有する偏光制御膜を用いることにより、偏光特性の制御安定性に優れ、かつ視覚特性に優れる偏光制御膜、偏光制御素子が得られる。
【0047】
(偏光制御膜)
(2色性色素)
本発明に係る2色性色素は、電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが可逆的に変化する2色性色素である。
【0048】
電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが可逆的に変化するとは、色素分子が電荷を授受することで、色素が吸収する光の波長または強度が可逆的に変化することである。本発明においては、波長範囲400nm〜1800nmの範囲において、0.01V以上、1000V以下の電圧を、電解質の存在下に付加することで、光吸収スペクトルが、吸光度変化(吸光度(大)(吸光度が変化したときの特定波長における吸光度の大きな方の吸光度)/吸光度(その波長における吸光度の小さい方の吸光度))が2以上、となるように変化する電圧範囲および波長範囲を有する色素をいう。好ましくは、7以上となるように、変化するものであり、より好ましくは、10以上となるように、変化するものである。
【0049】
例えば、一例として本実施例の化合物1では、590nmにある吸収極大が、4Vの電圧の印加によって、吸光度変化が11.6であった。吸光度の変化は、例えば色素を溶解した電解質を透明な電極で挟み、これに電圧をかけ、電圧をかける前後の吸光度を測定することで得られる。
【0050】
吸光度は、光が媒質に入射した際、媒質が吸収する程度を表す尺度であり、吸収の極大値を有する波長が測定可能な分光光度計により測定した値である。
【0051】
好ましくは、吸収スペクトルの変化は、特に制限はないが、その吸収極大値の波長が、400nm〜1800nmの領域から、200nm〜1600nmへと可逆的に変化するものが好ましく用いられる。より好ましくは、400nm〜800nmの領域と200nm〜400nmの領域を可逆的に変化するものである。
【0052】
例えば、一例として本実施例の化合物では、酸化還元反応により2色性色素の電子状態が変化するため、吸収波長領域が変化し、590nmの吸収極大が、400nm以下へ吸収波長極大がシフトした。
【0053】
図1に、光吸収スペクトルの変化の例として、吸収極大を示す波長が変化する場合の吸収スペクトルの変化を模式的に示す。
【0054】
図1に、縦軸を吸光度、横軸を波長として、電圧を付加する前の吸収スペクトルAと、電圧を付加した後の吸収スペクトルBとを示した。
【0055】
本発明に係る色素としては、特に電荷の授受で、可視領域において、発色状態と、消色状態をとりうるものが好ましく、発色状態と消色状態を、電荷の授受で可逆的にとりうる色素が好ましく用いられる。
【0056】
電荷の授受の具体的態様としては、例えば電極と色素の電荷の授受による酸化還元反応が挙げられる。
【0057】
本発明における2色性色素とは、吸収異方性を有する色素、即ち透過光が色素の遷移モーメントの方向によって異なる色素であり、且つ電荷の授受により生じた光吸収スペクトルの変化により吸収異方性の大きさが変化する色素である。
【0058】
即ち、分子の遷移モーメントの方向と、遷移モーメントと直交する方向の光吸収強度が異なる波長範囲を有する色素であり、下記の2色性測定により、2色性比が3以上である領域を有するものをいう。例えば、液晶分子のような棒状骨格、板状骨格、円盤状骨格のもので誘電異方性を持つ2色性色素や、分子凝集や重合などによって、分子配向が特定方向に制限される2色性色素などが好適に用いることができる。
【0059】
2色性比(D)は、偏光フィルム測定装置VAP−7070D(日本分光株式会社製)で測定することによって得られた値である。
【0060】
本発明に係る2色性色素としては、例えば、機能性色素(講談社サイエンティフィク)p157−159に記載の色素や特許第4074105号明細書の段落(0093)〜(0101)に記載の色素などが挙げられ、これらの中でも特に、色素の遷移モーメントと色素の分子軸の角度が±10度以内または90度±10度以内である色素が好適であり、例えば、金属−有機物錯体、特に金属−ビスターピリジン錯体などを好適に用いることができる。
【0061】
好適に用いられる化合物としては、例えば下述する化合物が挙げられる。
【0062】
配位高分子であり、下記一般式(1)で表される部分構造を主鎖に有する化合物。
【0063】
【化1】

【0064】
一般式(1)中、MおよびMは金属イオンを表し、それぞれ同じであっても異なっていても良く、XおよびXは窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。Lは炭素原子を含むXとXを連結する基を表す。
【0065】
さらに、前記配位高分子が金属イオンと下記一般式(2)で表される化合物を含有する化合物が挙げられる。
【0066】
【化2】

【0067】
一般式(2)中、Jは単なる結合手または2価の連結基を表し、Z〜ZはそれぞれC=N部と共に5または6員の含窒素複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
【0068】
[前記一般式(1)で表される化合物]
前記一般式(1)において、MおよびMは金属イオンを表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。
【0069】
前記一般式(1)において、MおよびMで表される金属イオンとしては、配位高分子を形成するものであれば特に制限はないが、VIII族、Ib族、IIb族、IIIa族、IVa族、Va族、VIa族、VIIa族の金属原子から選ばれる遷移金属イオンが好ましい。具体的にはNi、Cu、Co、Mn、Zn、Fe、Ru、Ti、Pd、Ptの2価の金属イオンが挙げられ、さらに好ましくはNi、Cu、Co、Mn、Fe、Ruの2価の金属イオンが挙げられ、特に好ましくはFeの2価の金属イオンである。
【0070】
前記一般式(1)において、XおよびXは窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。XおよびXは窒素原子が好ましい。
【0071】
前記一般式(1)において、Lは炭素原子を含むXとXを連結する基を表すが、Lは、XおよびXと共に二官能性の有機配位子を形成する。二官能性の有機配位子としては、例えば、ビスターピリジン、ビスフェナントロリン、ビスビピリジン等を挙げることができる。
【0072】
[前記一般式(2)で表される化合物]
前記一般式(2)において、Jは単なる結合手または2価の連結基を表す。2価の連結基として、例えば、置換基を有してもよいアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等)、置換基を有してもよいシクロアルキレン基(例えば、シクロヘキシレン基)、置換基を有してもよいアルケニレン基(例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基等)、エチニレン基、置換基を有してもよいアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフチレン基等)、カルボニル基、酸素原子、窒素原子、硫黄原子(例えば、チオエーテル基、スルホニル基等)、あるいはこれらの連結基の組み合わせ(例えば、アラルキレン基、エステル基、アルコシカルボニル基、カルバモイル基、アミド基、スルファモイル基、スルホンアミド基、ジスルフィド基、ヒドラジノ基、アゾ基等)を挙げることができる。Jはアリーレン基が好ましく、フェニレン基がさらに好ましく、1,4−フェニレン基または1,4−フェニレン基同士の組み合わせが特に好ましい。
【0073】
前記一般式(2)において、Jで表される2価の連結基が有してもよい置換基として、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホン酸基、スルホン酸の塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、イミド基、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、複素環チオ基、チオウレイド基、カルボキシル基、カルボン酸の塩、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基等の各基が挙げられる。これらの置換基は、同様の置換基によってさらに置換されていてもよい。
【0074】
前記一般式(2)において、Z〜ZはそれぞれC=N部と共に5または6員の含窒素複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。含窒素複素環の具体例として、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール、オキサゾール環、イソオキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾイミダゾール環等の各環を挙げることができる。好ましくはピリジン環、ベンゾイミダゾール環であり、特に好ましくはピリジン環である。これらの環は置換基を有してもよく、置換基としては前記Jで表される2価の連結基が有してもよい置換基と同様の基を挙げることができ、さらに同様の置換基によって置換されていてもよい。また、Z〜Zはそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0075】
さらに、前記一般式(1)で表される部分構造を主鎖に有する化合物が好ましく用いられる。
【0076】
前記一般式(1)において、MおよびMは金属イオンを表し、それぞれ同じであっても異なっていても良く、XおよびXは窒素原子、酸素原子または硫黄原子を表し、それぞれ同じであっても異なっていても良い。Lは炭素原子を含むXとXを連結する基を表す。
【0077】
前記一般式(1)において、M、M、X、XおよびLとしては、例えば、上述で説明したものと同様のものを挙げることができ、さらに、上述で説明したものと同様のカウンターアニオンを有してもよい。
【0078】
前記一般式(1)で表される部分構造を主鎖に有する本発明の異方性色素膜用配位高分子は、直線性に優れており、吸収異方性の観点から異方性色素膜、特に偏光機能を必要とする偏光膜に有用である。さらに、配位高分子の主軸の末端基や側方置換基の種類や組み合わせを選択することで、配位高分子とそれと組み合わせる高分子材料や配位高分子同士の分子間相互作用を任意に制御することが可能である。また、本発明の配位高分子は、耐熱性にも優れていることから、耐熱性が必要とされる種々の用途の異方性色素膜に用いることができる。
【0079】
以下に、本発明に係る2色性色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、例示化合物として記載の構造式中のnは、括弧内の構造が複数個繰り返していることを意味する。
【0080】
【化3】

【0081】
【化4】

【0082】
【化5】

【0083】
【化6】

【0084】
【化7】

【0085】
【化8】

【0086】
【化9】

【0087】
上記のような色素は、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば、Synthesis2006,No.17,2873−2878、特開2007−112769号公報に記載の方法を参考にして、配位子および配位高分子を合成することができる。
【0088】
(配向)
本発明の偏光制御膜は、配向された、上述した2色性色素を含有する。
【0089】
配向された、とは色素分子(以下単に色素とも称する)が、一定の方向性を有して配置されていることであり、偏光フィルム測定装置VAP−7070D(日本分光株式会社製)で測定したときに、偏光度50以上であることをいう。
【0090】
配向された2色性色素を有する本発明の偏光制御膜は、液体状膜であってもよいし、固体状膜であってもよい。
【0091】
本発明の偏光制御膜とは、その厚さが、50nm〜500μmであり、特に100nm〜10μmであることが好ましい。
【0092】
色素を配向させる方法としては、電場、磁場、風の流れ、液体の流れ、斜め蒸着、ラビング、光配向膜、基材凹凸、濡れ性の違い、剪断などを用いた方法が挙げられる。
【0093】
液体状膜の場合、色素を配向させるには、溶媒に上記のような色素を、概ね2質量%から50質量%含有させることで得られる。用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α−またはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類を例示することができる。また、これらの溶剤の中から1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0094】
固体状膜の場合、色素を含有する色素組成物に外力を加えることで、配向できる。
【0095】
例えば、色素を水、メタノールのような溶媒に溶解し、色素を溶解した色素組成物である塗布液を、ワイヤーバーコート、グラビアコート、ダイコート、等により外力を加えつつ支持体上に塗布して乾燥する方法などが挙げられる。
【0096】
具体的には、例えば上記した色素を、約3質量%以上の濃度で、上記のような溶媒に溶解した塗布組成物をワイヤーバーなどで塗布し、乾燥することで、本発明の偏光制御膜が得られる。
【0097】
偏光制御膜としては、色素のみからなってもよいし、バインダーなどを含有する態様でもよい。
【0098】
また、樹脂と色素とを含有する色素組成物を膜状にして、この膜を延伸することで、色素が配向された偏光制御膜を得ることができる。
【0099】
また、配向材と色素とを含有する色素組成物を、電場、磁場、風の流れ、液体の流れ、斜め蒸着、ラビング、光配向膜、基材凹凸、濡れ性の違い、剪断、延伸などの処理をすることで、色素が配向された偏光制御膜を得ることができる。
【0100】
配向の態様としては、面内一軸配向であることが好ましい。
【0101】
面内一軸配向とは、膜内の色素が、光軸または吸収軸を有し、その軸が、色素溶液を塗工する基材面に対し平行であり、色素溶液または色素膜に、電場、磁場、風の流れ、液体の流れ、斜め蒸着、ラビング、光配向膜、基材凹凸、濡れ性の違い、剪断、延伸などの処理をすることにより、形成することができる。
【0102】
(偏光制御素子)
本発明の偏光制御素子は、上記偏光制御膜および電荷供給手段を有する。
【0103】
電荷供給手段は、偏光制御膜中の色素に電荷を供給する手段であり、電解質層および電極を有することが好ましい。
【0104】
色素が、電解質層を介して電荷を授受することで、偏光制御膜の偏光特性が変化する。
【0105】
本発明における偏光特性の変化は、色素の電荷の授受による色素自体の吸収係数の変化により生じるものであり、色素の配向性の変化によるものではない。
【0106】
即ち、本発明の偏光制御膜は、偏光特性の制御が電荷の授受により行われる、電荷制御型偏光制御膜であり、本発明の偏光制御素子は、偏光特性の制御が電荷の授受により行われる、電荷制御型偏光制御素子である。
【0107】
本発明では、偏光制御膜の状態を、色素が発色状態であって偏光特性を有する状態と、色素が消色状態であって偏光特性を示さない状態とを、可逆的に電荷の授受により制御する態様が好ましい態様である。
【0108】
即ち、無電圧時と電圧付加時とにおいて、色素が発色状態で偏光制御膜が偏光特性有する状態と、色素が消色状態で偏光制御膜が偏光特性を有さない状態とが可逆的に変化する態様が好ましい態様である。
【0109】
本発明の偏光制御素子において、色素は電解質層に含まれていてもよく、この場合、偏光制御膜は同時に電解質層となる。
【0110】
本発明の偏光制御素子の、典型的な構成の例を図2に示す。
【0111】
偏光制御素子110は、第一の電極101上に電解質層102を有し、電解質層102上に偏光制御膜103を有し、偏光制御膜103上に第二の電極104を有する。
【0112】
対向する第一の電極1と第二の電極4との間に電圧をかけることで、色素に電荷を供給することができる。
【0113】
(電荷の供給が局所的に制御可能である構成)
本発明においては、電荷供給手段からの電荷の供給を局所的に制御可能である構成、とすることで、画像の表示などに利用することができ、また局所的に鏡の機能を持たせるなど、多機能板としての利用に供することができる。
【0114】
電荷供給手段からの電荷の供給が局所的に制御可能である構成は、偏光制御素子が、電荷供給手段と偏光制御膜を対で有する複数の画素、を有する構成とすることで得られる。
【0115】
ここでいう画素は、電荷の供給が他の画素から独立して制御可能な電荷供給手段と偏光制御膜とを対で有するものであり、電荷供給手段が電解質層および電極を有する場合には、一対の電極間に電解質層および偏光制御膜を有し、電極に供給される電荷の制御が他の画素から独立して制御可能とする配線部材を有する。
【0116】
画素を駆動させる駆動方式としては、選択した電極に電圧をかけるスタティック駆動方式、格子状に配列された画素に対し縦方向、横方向の電極を配し、その電極を選択して電圧をかけ、縦横の電極がともに選択されて電圧がかけられるマトリックス駆動、薄膜トランジスタ(TFT)と付加容量を接続して画素を制御するアクティブ駆動などを用いることができる。
【0117】
電極の形状としては、ストライプ形状、格子形状、円形状などの形状をとることができる。
【0118】
電荷の供給が局所的に制御可能である構成を有する偏光制御素子の、典型的な構成の例の断面図を図3に示す。
【0119】
電荷の供給が局所的に制御可能である構成を有する偏光制御素子210が、基板201上に、偏光制御素子110を有する構成の例である。基板201上に、第一の電極101を有し、第一の電極101上に、電解質層102を有し、電解質層102上に偏光制御膜103を有し、偏光制御膜103上に第二の電極104を有する画素から構成されている。
【0120】
第一の電極101と電解質層102は、絶縁層206により他の画素と隔てられている。
【0121】
対向する第一の電極101と第二の電極104との間に電圧をかけることで、色素に電荷を供給することができる。
【0122】
電解質層102が、自身で形状を保持できる固体材料である場合、絶縁層206を設置しなくても良い。
【0123】
(電極)
電極としては、例えば、金、銀、クロム、銅、タングステン等の金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜などが使用でき、用途にもよるが透明電極であることが好ましい。
【0124】
前記金属酸化物としては、例えば、ITO(In−SnO)、酸化錫、酸化銀、酸化亜鉛、酸化バナジウム等が挙げられる。
【0125】
電極の膜厚は、特に制限されるものではないが、通常10〜500nm、好ましくは50〜300nmの範囲にあり、表面抵抗(抵抗率)は特に制限されるものではないが、通常500Ω/cm以下が好ましく、特に50Ω/cm以下の範囲にあることが好ましい。
【0126】
電極の形成には、公知の手段を任意に採用することができるが、電極を構成する金属および/又は金属酸化物等の種類により、採用する手段を選択するのが好ましい。
【0127】
通常は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、ゾルゲル法等が採用される。
【0128】
電極への酸化還元能の付与、導電性の向上、電気二重層容量の付与などの目的で、電極の表面には電極活性物質の層を設けることができる。
【0129】
この電極活性物質としては、例えば、銅、銀、金、白金、鉄、タングステン、チタン、リチウム等の金属、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、フタロシアニンまたはそれらの誘導体等の酸化還元能を有する有機物、活性炭、グラファイトなどの炭素材、WO、V、MnO、NiO、IRなどの金属酸化物またはこれらの混合物が使用可能である。
【0130】
電極活性物質の層を電極上に設けるに際しては、電極の透明性が過度に損なわれないようにすることが好ましい。
【0131】
従って、例えば、透明なITO層上に、活性炭素繊維、グラファイト、アクリル樹脂等からなる組成物を、細かいストライプ状またはドット状に塗布する方法、金の薄膜上に、V、アセチレンブラック、ブチルゴム等からなる組成物をメッシュ状に塗布する方法が採用される。
【0132】
図2、3に示す第一の電極および第二の電極共に、上記の電極を用いることができる。
【0133】
(電解質層)
電解質層は、対向する電極の間に位置し、両極間の電荷輸送を行う機能を有する層であり、室温で10−5〜10−1S/cmのイオン伝導性を有している層が好ましく用いられる。
【0134】
電解質層は電解質組成物からなる。
【0135】
電解質組成物は、電解質物質を含有し、さらに溶媒を含有することが好ましい。
【0136】
溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジエトキシエタン、1−エトキシ−1−メトキシエタン等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、などの非プロトン性有機溶媒の一種又は二種以上を混合して使用したものが挙げられる。
【0137】
電解質物質としては塩類、酸類、アルカリ類が使用できる。
【0138】
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用できる。
【0139】
塩類の具体例としては、LiClO、LiSCN、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiPF、LiI、NaI、NaSCN、NaClO、NaBF、NaAsF、KSCN、KCl等のアルカリ金属塩;(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(CNBr、(CNCl、(CNClO、(n−CNClO、CH(CNBF、(CH(CNBF、等の4級アンモニウム塩;(CHPBF、(CPBF、(CPBF、(CPBF等のホスホニウム塩またはこれらの混合物が好適なものとして挙げられる。
【0140】
酸類も特に限定されず、無機酸、有機酸などが、具体的には硫酸、塩酸、リン酸類、スルホン酸類、カルボン酸類などが使用できる。アルカリ類も特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがいずれも使用可能である。支持電解質は、未使用のケースを含め、その使用量は任意であるが、一般的には、電解質物質はイオン伝導層中にその上限値としては20M以下、好ましくは10M以下、さらに好ましくは5M以下の値にあり、下限値としては通常0.01M以上、好ましくは0.05M以上、さらに好ましくは0.1M以上存在していることが望ましい。
【0141】
電解質組成物の形態としては、上記電解質物質を含有する上記溶媒からなる液体の状態、下記のようなゲル状、固体状の形態がある。
【0142】
ゲル状または固体状の形態としては、例えば高分子物質または、有機物と無機物の有機−無機複合物質に、電解質物質を溶解した溶媒を含ませて形成したゲル状あるいは固体状の形態、重合性モノマー、重合開始剤および電解質物質を含有する混合物を重合して形成したゲル状あるいは固体状の形態が挙げられる。
【0143】
上記高分子物質としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体や、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリロニトリル系重合体、さらにポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、これらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体などが挙げられる。
【0144】
上記有機−無機複合物質とは、有機物と無機物が物理的に混合、または、化学的に結合により形成されている物質であり、無機物としては無機酸化物微粒子が好ましい。
【0145】
具体的には酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化鉛、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、クレー、酸化スズ、酸化タングステン、燐酸アルミニウム、などが挙げられる。
【0146】
有機物としては前記高分子物質の他に、上記無機酸化物微粒子の表面を化学結合により修飾することのできるアルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基を有するポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体が挙げられる。
【0147】
上記重合性モノマーとしては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基などの不飽和二重結合を有するモノマーが挙げられる。
【0148】
その具体例としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、N,Nジエチルアミノエチルアクリレート、N,Nジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アリルアクリレート、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレートの他、トリメチロールプロパンアルコキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールアルコキシレートトリアクリレート等の3官能モノマー、ペンタエリスリトールアルコキシレートテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンアルコキシレートテトラアクリレート等の4官能以上のモノマーが挙げられる。
【0149】
前記ゲル状の形態、固体状の形態を有する電解質組成物は、加熱で流動化し、常温で非流動化する熱可逆性、または、常温であっても、せん断力で流動化し、静置で非流動化するチキソトロピー性を有するものであることが好ましい。
【0150】
色素が、電解質層に含まれる場合には、チキソトロピー性を有する電解質組成物を用い、剪断力を用いて流動化させ塗布することで、色素を配向させる態様が好ましく用いられる。
【0151】
重合性モノマーを用いて、ゲル状、固体状の形態とする非流動化は、熱、紫外線、電子線などによって上記のモノマーを重合させることより行われる。この場合、効果的に重合を進行させるために重合開始剤を使用することが好ましい。
【0152】
重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンジル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ビアセチル、ベンゾイルパーオキザイドの他、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート等のパーオキシネオデカノエート類、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、α−クミルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシネオヘプタノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシヘプタノエート等のパーオキシネオヘプタノエート類が挙げられる。
【0153】
重合性モノマーとしては、上記の他、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド等の重縮合によって生成される高分子、ポリウレタン、ポリウレア等の重付加によって生成される高分子を生成するモノマーを使用することもできる。
【0154】
電解質層は、電解質組成物とセパレータとを含有することが好ましく、セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミドなどからなる絶縁性プラスチックで形成された多孔体あるいはシリカなどの無機微粒子などを用いることができる。
【0155】
(基板)
本発明の偏光制御素子は、基板上に形成されて基板と共に用いられることが好ましい。
【0156】
基板は、偏光制御膜、電解質層および電極を担持可能な部材でありその材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。
【0157】
例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、ポリイミド樹脂フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、トリアセチルセルロースであることがより好ましい。
【0158】
基板には、電解質層、偏光制御膜などを形成するための塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。
【0159】
表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。
【0160】
例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0161】
透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基材と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。
【0162】
屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。
【0163】
易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0164】
本発明の偏光制御素子の、利用する形態としては、表示装置、照明装置、偏光眼鏡、プライバシーフィルムなどがある。
【0165】
本発明の偏光制御方法である、配向された、電荷の授受により分子の吸収波長が変化する2色性色素を含有する偏光制御膜および電荷供給手段を有する偏光制御素子を用い、該電荷供給手段より該2色性色素に電荷を供給し、該偏光制御膜の偏光特性を変化させる偏光制御方法には、上記した、色素、偏光制御膜、電荷供給手段が用いられる。
【0166】
(積層偏光制御素子)
本発明の積層偏光制御素子は、上記本発明の偏光制御素子からなる層を、複数層有し、この複数層の各偏光制御素子が有する偏光制御膜が含有する2色性色素の配向方向が各々異なる。
【0167】
即ち、積層偏光制御素子は、本発明の偏光制御素子を、各制御素子の2色性色素の配向が各々異なるように、複数積層したものである。
【0168】
積層される各制御素子間は、絶縁状態であることが必要であり、各制御素子は絶縁層を介して積層されることが好ましい。
【0169】
絶縁層に用いられる、材料としては、前記基板に用いられる材料のものを用いることができ、これらの中でも、ポリイミド、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロースなどがより好ましく用いられる。
【0170】
絶縁層の厚さとしては、50nm〜200μmが好ましい。
【0171】
偏光制御素子および絶縁層を積層して、積層偏光制御素子とする方法としては、例えば、絶縁層の両面に接着剤を塗布し、その両面に偏光制御素子を貼付ける方法、絶縁層の両面に蒸着などで電極を形成し、その電極を用いて偏光制御素子を絶縁層上に形成する方法が挙げられる。
【0172】
積層された複数の偏光制御素子の色素の配向方向が各々異なることで、複数の偏光制御素子の偏光特性を各々制御することにより、例えば発光素子などに多機能を持たせることができる。
【0173】
例えば配向方向が90度異なる2つの偏光制御素子を、発光表示素子に適用した場合、黒色画面表示を可能とすることができると共に、黒色画面表示機能、防眩機能、3D表示機能、2D表示機能、通常表示機能、鏡機能などの機能を簡単に切り替えて利用できるようにすることができる。
【0174】
本発明の積層偏光制御素子を有する発光素子の例の模式断面図を図4に示す。
【0175】
図4の例は、2層、偏光制御素子を積層した積層偏光制御素子を有する例である。
【0176】
図4の(1)、(2)および(3)では、偏光制御素子501の上に絶縁層(図示せず)を介して、偏光制御素子501と同様のものを、偏光制御素子501と色素の配向が90度異なるようにして、偏光制御素子502として積層して、積層偏光制御素子503が形成されている。また、発光素子504と積層偏光制御素子503の間には、下述するλ/4位相差板506が積層されている。
【0177】
(1)の状態は、偏光制御素子501および502ともに電圧をかけずに、偏光特性を持たせた状態であり、外光507の入射および発光光505を遮るため、黒画面表示が可能である。
【0178】
(2)の状態は、偏光素子502のみに、電圧をかけ偏光特性を消失させた状態であり、偏光制御素子501とλ/4位相差板506とで構成される下述する楕円偏光板により、外光反射防止機能を有する状態である。
【0179】
(3)の状態は、偏光制御素子501および502ともに電圧をかけ、両者ともに偏光を消失させた状態であり、外光反射防止機能が必要でないとき、発光光の輝度を低下させることなく、表示光508として出力する通常表示することができる状態である。また発光素子504による発光をしない場合には、外光507を発光素子504が反射して、鏡として機能する状態である。
【0180】
さらに、例えば、色素の配向方向が同じである、複数のストライプ状の偏光制御素子を有する第一の偏光制御素子と、第一の偏光制御素子と色素の配向方向が90度異なるだけの第二の偏光制御素子とを、ストライプの方向を同じにして積層することで、黒画面表示、3D表示、2D表示、通常表示などの切り替えが可能な積層偏光制御素子とすることができる。
【0181】
色素の配向方向の異なる角度としては、90度であることが、上記のように機能を切り替える面から好ましい。
【0182】
また、積層偏光制御素子の、積層される偏光制御素子としては、上記のように2層であってもよいし、3層以上であってもよい。
【0183】
例えば、色素の配向方向が30度ずつ異なる6つの偏光制御素子を積層した積層偏光制御素子は、1つの積層偏光制御素子で、30度ずつ偏光軸の異なる6つの偏光光に対してスイッチング機能を果たすことがきる。
【0184】
(楕円偏光板)
本発明の楕円偏光板は、位相差板と、上記特定の偏光制御膜および電荷供給手段を有する偏光制御素子とを有する。
【0185】
楕円偏光板は、位相差板と、偏光制御素子とを、積層して構成されたものである。
【0186】
図5は、本発明の楕円偏光板を有する発光素子の例の概略断面図である。発光素子340は、楕円偏光板330と後述する発光部材320とが積層された構成を有する。
【0187】
楕円偏光板330は、位相差板315と、偏光制御素子110とを積層して構成されている。
【0188】
偏光制御素子110は、第一の電極101上に電解質層102を有し、さらに電解質層102上に偏光制御膜103を有し、さらに偏光制御膜103上に第二の電極104を有する。
【0189】
位相差板315と、偏光制御素子110とは、接着剤層(図示せず)を介して積層されている。
【0190】
対向する第一の電極101と第二の電極104との間に電圧をかけることで、色素に電荷を供給することができる。
【0191】
(位相差板)
本発明に係る位相差板は、直交する偏光成分の間に位相差を生じさせる複屈折機能を有する板状体である。
【0192】
位相差板としては、位相差π/2(90°)を生じる、(λ/4板)(よんぶんのラムダばん)または4分の一波長板と称され、直線偏光を円偏光(楕円偏光)にあるいは逆に円偏光(楕円偏光)を直線偏光に変換するために用いられるもの、位相差π(180°)を生じ(λ/2板)(にぶんのラムダばん)または半波長板と称され、直線偏光の偏光方向を変えるために用いられるものがある。
【0193】
位相差板としては、半波長板、4分の一波長板各々単独の板でもよいし、両者が積層された状態のものでもよく、基体上に位相差を発現するための液晶層等が設けられている場合のものでもよい。
【0194】
位相差板としては、下記のようなフィルムを好適に用いることができる。
【0195】
例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0196】
これらのフィルムは溶液流延法あるいは溶融流延法で製膜されたフィルムとして得ることができ、例えば、特開2008−242464号公報、特開2007−108529号公報、特開2006−284703号公報に記載の位相差板を用いることができる。
【0197】
これらのうちセルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムが好ましく、本発明においては、特に主成分としてセルロースエステルを含むセルロースエステルフィルムが、製造上、コスト面、透明性、均一性、接着性等の面から好ましく用いられる。
【0198】
位相差板の膜厚としては、その用途にもよるが、概ね20μm〜100μmが好ましい。
【0199】
位相差板と、偏光制御素子とを積層するには、位相差板を偏光制御素子の基板とし、位相差板上に偏光制御素子の電極を形成し、順次偏光制御素子を形成する方法や、偏光制御素子に接着剤、又は粘着材を介して位相差フィルムを積層するなどの方法により行うことができる。
【0200】
特に、位相差板を偏光制御素子基材として利用する前者の法が好ましい方法である。
【0201】
(発光素子)
本発明の楕円偏光板は、発光素子に好適に用いることができる。本発明の発光素子は、本発明の上記楕円偏光板と発光部材を有する発光素子であり、発光部材は発光層を有する。
【0202】
発光部材を有する本発明の発光素子としては、表示素子、照明素子がある。
【0203】
本発明の楕円偏光板を表示素子に用いた場合、表示の視覚特性および安定性に優れ、さらに、一つの装置で、表示機能を有する表示装置および例えば鏡機能を有する装置といった多機能を提供できる装置を与えることができる。
【0204】
また照明装置に用いた場合にも、照明の安定性に優れ、且つ例えば鏡機能を有する装置としても用いることができる装置を与えることができる。
【0205】
発光層としては、無機、有機の発光層が用いられるが、本発明においては、特に有機発光層を有する素子が好ましく用いられる。
【0206】
有機発光層を有する素子の態様としては、特に有機エレクトロルミネッセンス素子(以下有機EL素子と称する。)が好ましい態様である。
【0207】
本発明の発光素子を、有機EL素子を例にして説明する。
【0208】
(有機EL素子)
発光部材は、基材上に配設された第一電極、当該第一電極上に配設された有機発光層を含む有機層および当該有機層上に配設された第二電極を含む構造体である。
【0209】
図5に示す例では、発光部材320は、基材326上に(図の下方に)、第一電極325、有機発光層を含む有機層324、第二電極323を形成して発光部材320とし、さらに発光部材の上面に接着層(図示せず)を介して封止層322を積層した構成を有する。
【0210】
第一電極325および第二電極323の一部は露出して通電可能とされ(図示せず)、これを介して電流を供給することにより有機層324内の有機発光層が発光する。
【0211】
基材は、発光層を含む有機層などを担持し得る板状体(シート)である。基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等が挙げられる。
【0212】
基材の厚さとしては、10μm〜1mmが好ましく、50〜300μmがさらに好ましい。
【0213】
基材として透明樹脂フィルムを使用する場合、樹脂フィルムの表面にはガスバリア膜が必要に応じて形成されてもよい。ガスバリア膜としては無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が挙げられる。ガスバリア膜の特性としては、水蒸気透過度が0.01g/m・day・atm以下であることが好ましい。更には、酸素透過度10−3ml/m/day以下、水蒸気透過度10−5g/m/day以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0214】
第一電極325は、陽極であって、透明にする場合はインジウムチンオキサイド(ITO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、金、酸化錫、酸化亜鉛等の仕事関数が4eV以上で透過率が40%以上の導電性材料による電極であることが好ましい。
【0215】
有機発光層は、有機化合物の有機発光材料を含有する層である。
【0216】
有機発光材料としては、カルバゾール、カルボリン、ジアザカルバゾール等の芳香族複素環化合物、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等およびこれらの単独オリゴ体あるいは複合オリゴ体等があげられるが、これに限られるものではない。
【0217】
また有機発光層中には、好ましくは0.1〜20質量%程度のドーパントが有機発光材料中に含まれることが好ましい。
【0218】
ドーパントとしては、ペリレン誘導体、ピレン誘導体等公知の蛍光色素等、また、リン光発光タイプの発光層の場合、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)(アセチルアセトナート)イリジウム、ビス(2,4−ジフルオロフェニルピリジン)(ピコリナート)イリジウム、などに代表されるオルトメタル化イリジウム錯体等の錯体化合物が挙げられる。
【0219】
発光層の厚みは0.5〜500nmが好ましく、特に0.5〜200nmが好ましい。
【0220】
有機発光層は、数nm〜数μmであることが好ましい。
【0221】
第二電極323は、陰極であって、反射電極とする場合はアルミニウム、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、銀、カルシウム等の仕事関数が4eV未満で、反射率が60%以上の金属材料からなる電極であることが好ましい。
【0222】
有機EL素子は、第一電極(陽極)325、第二電極(陰極)323に外部から供給された電流により、有機発光層において電子および正孔が結合し、結合により生じた励起エネルギーを利用した発光を行う素子である。
【0223】
発光部材320の有機発光層からの発光は、第一電極325、基材326を透過し、さらに楕円偏光板を経て取り出されるが、第二電極(陰極)を、薄膜の陰極材料と透過率の高い陽極材料を積層して構成し、実質的に透明として、陰極から光を取り出す、所謂トップエミッションの構成にしてもよい。この場合には、楕円偏光板は図5の場合と逆の側に設けられる。
【0224】
また、第一電極325と有機発光層の間には、正孔輸送層、正孔注入層などを有することが好ましく、第二電極323と有機発光層の間に電子輸送層、電子注入層などを有することが好ましい。
【0225】
正孔注入・輸送層としては、フタロシアニン誘導体、ヘテロ環アゾール類、芳香族三級アミン類、ポリビニルカルバゾール、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)などに代表される導電性高分子等の高分子材料、また、発光層に用いられる、例えば、4,4′−ジカルバゾリルビフェニル、1,3−ジカルバゾリルベンゼン等のカルバゾール系発光材料、(ジ)アザカルバゾール類、1,3,5−トリピレニルベンゼンなどのピレン系発光材料に代表される低分子発光材料、ポリフェニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリビニルカルバゾール類などに代表される高分子発光材料などが挙げられる。
【0226】
電子注入・輸送層材料としては、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物もしくは以下に挙げられる含窒素五員環誘導体がある。即ち、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
【0227】
有機EL層中、各有機層の膜厚は、0.05〜0.3μm程度必要であり、好ましくは0.1〜0.2μm程度である。
【0228】
封止層は外気の影響を低減し得る層であり、樹脂などの有機物または窒化物などの無機物の膜である封止部材からなる。
【0229】
封止層に用いることができる樹脂としては、例えばエチレンテトラフルオロエチル共重合体(ETFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、延伸ナイロン(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルスチレン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。
【0230】
封止層は、複数の層からなってもよく、特にバリア層を有する構成が好ましい。
【0231】
上記有機EL素子などの発光素子は、例えば、特開2008−76241号公報、特開2008−305613号公報など公知の方法により作製することができる。
【0232】
本発明の楕円偏光板を用いた発光素子の、利用する形態としては、表示装置、照明装置、プライバシーフィルムなどがある。
【0233】
本発明の偏光特性制御方法である、位相差板と、電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが可逆的に変化する、配向された、2色性色素を含有する偏光制御膜および電荷供給手段を有する偏光制御素子とを有する楕円偏光板を用い、該電荷供給手段から該2色性色素への電荷の供給を制御して、該偏光制御膜の偏光特性を可逆的に変化させ、該楕円偏光板の偏光特性を制御する方法には、上記した、位相差板、色素、偏光制御膜、電荷供給手段が用いられる。
【実施例】
【0234】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0235】
(実施例1)
(化合物1の合成)
300mlの反応容器に、72mlの酢酸、配位子として7.20gの1,4−ビスターピリジンベンゼンを、および金属塩として2.32gの酢酸鉄を加えた。混合物を加熱し、6時間加熱還流を行った。
【0236】
反応終了後、酢酸を減圧下で濃縮し、得られた残渣を60mlのメタノールに溶解させた。この溶解液を、1Lのトルエン中に、撹拌しながらゆっくり滴下したところ、紫色の固体が析出した。その後、得られた固体を濾過し、トルエンで洗浄した後、乾燥することで例示化合物1が9.50g(収率100%)得られた。得られた化合物1の分子量をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で確認したところ(0.1質量%濃度)、数平均分子量(Mn)は2,900、重量平均分子量(Mw)は6,300であり、高分子になっていることが確認できた。
【0237】
上記で得られた化合物1を、水に溶解し(1質量%溶液)、溶解色を目視で判断したところ、青紫色(藍色)を呈した。
【0238】
【化10】

【0239】
(塗布液の調製)
塗布液1(実施例)
得られた配位高分子(化合物1)の5部を、95部の水に攪拌溶解させ、配位高分子の水溶液を得た。得られた水溶液を、1日静置し塗布液1とした。
【0240】
塗布液2(実施例)
化合物1を3部、水を97部とした以外は実施例1と同様に行い塗布液2を調整した。
【0241】
塗布液3(比較例)
特開2007−112957号公報明細書の段落(0081)に記載の溶液を調整するため、同号公報段落(0080)の実施例1で得られた化合物1の2部を1000部のメタノールに攪拌溶解させた。得られた溶液を、1日静置し塗布液3とした。
【0242】
(配向の確認)
ガラス基板上に塗布液1を滴下した後、30μmのワイヤーバー(井元製作所社製)で塗布した後、10分間自然乾燥させることにより色素層付きガラス基板を作製した。
【0243】
塗布液2,3,4も同様にして、それぞれ色素層付ガラス基板を作製した。
【0244】
これら色素層付きガラス基板の配向を確認するため、偏光フィルム測定装置VAP−7070D(日本分光株式会社)を用いて、偏光度を測定し、下記ランクで評価した。
A:偏光度50未満
B:偏光度50以上90未満
C:偏光度90以上
塗布液1:C
塗布液2:B
塗布液3:A
(偏光制御素子1〜3の作製)
ITO電極を蒸着した石英(ITO部1cm)上に、塗布液1をギャップ30μmのワイヤーバー(井元製作所社製)で塗布した後、10分間自然乾燥させることにより色素層付き石英電極を得た。この色素層付き石英電極と、もう一枚のITO電極を蒸着した石英(ITO部1cm)で100μmのPETフィルムをスペーサーとして挟んだ。アセトニトリル中に0.1Mとなるよう過塩素酸テトラブチルアンモニウムを溶解させた溶液を、PETによって出来た空隙に注入し、偏光制御素子1とした。
【0245】
塗布液2、3についても上記と同様にして、それぞれ偏光制御素子2および3を作製した。
【0246】
(偏光特性変化の測定)
偏光制御素子1の、無電圧時と、4Vの電圧印加時の偏光度を測定した。電圧の印加にはマルチファンクションジェネレーターAD−8624A(A&D社製)を用いた。また偏光度の測定には、偏光フィルム測定装置VAP−7070D(日本分光株式会社)を用いて測定した。
【0247】
得られた偏光度から、下記の式により残存偏光度の割合を求めた。
【0248】
初期偏光度に対する消色時の残存偏光度の割合(%)=
(1−(無電圧時偏光度−電圧印加時偏光度)/無電圧時偏光度)×100
初期偏光度に対する消色時の残存偏光度の割合は、いずれも、0%であった。
【0249】
尚、無電圧と、4V印加を繰り返し行ったが、着色状態と、消色状態が繰り返し得られた。
【0250】
(偏光制御素子4の作製(比較例(ゲスト−ホスト液晶)))
4′−ヘプチルオキシ−4−ビフェニルカルボニトリル(アルドリッチ社製)中に、メチルレッド(アルドリッチ社製)を1質量%添加した液晶材料を、ホモジニアス配向用途に処理された5μmギャップの液晶用ITO電極付きガラスセル(EHC社製)に注入した。この液晶セルを等方性を示す温度まで加熱した後、1℃/minの速度で25℃まで徐々に冷却し、偏光制御素子4とした。
【0251】
(偏光特性制御の安定性、視覚特性の評価)
偏光制御素子1〜4について、偏光特性制御の安定性および視覚特性を評価した。下記1〜4の条件で、偏光度の変化割合を測定し、偏光特性制御の安定性を評価した。また下記5により視覚特性を評価した。
【0252】
評価項目は、以下のとおりである。
1.紫外光(1.0mW/cm)照射による安定性
2.可視光(25000Lx)照射による安定性
3.晴天時の太陽光照射による安定性
4.温度50℃で60分間加熱による安定性
5.視覚特性評価(透過率の変化割合の測定)
(使用した測定装置)
紫外光光源は、SX−UI250HQ(ウシオ社製)を用い、評価サンプルの真上から、365nmの紫外光を1.0mW/cmとなるよう照射した。
【0253】
可視光光源は、高輝度シャウカステンPHC−4(ポニー工業)を用い、シャウカステンの熱が、直接的に評価サンプルに影響しないよう、空間をあけ、25000Lxとなるように評価サンプルを配置した。評価サンプルへの光照射時間は10分間とした。
【0254】
太陽光は晴天時に、10分間照射した。
【0255】
加熱処理には、FP82HT/84HT 顕微鏡ホットステージ(メトラー・トレド社製)を用いた。
【0256】
評価サンプルの偏光度は、上記1〜4の条件のそれぞれの処理を行った後、30秒以内に、偏光フィルム測定装置VAP−7070D(日本分光株式会社)を用いて測定した。
【0257】
(偏光特性制御の安定性の評価)
評価項目の処理を行う前の偏光度と、処理後の偏光度の変化量から、以下の式を用いて、偏光度の変化割合を求めた。
【0258】
偏光度の変化割合=(処理前偏光度−処理後偏光度)×100/処理前偏光度)
得られた偏光度の変化割合を下記のランクで評価し、偏光特性制御の安定性の指標とした。
○:0%〜10%未満、実用的な範囲
△:10%以上、50%未満、実用的には不充分な範囲
×:50%以上、極めて不安定な範囲
(視覚特性の評価)
分光光度計V−7000(日本分光株式会社)を用い、透過率を測定した。評価サンプルの角度は、サンプル面法線に対し0度と50度の角度で行い、その透過率の変化割合を以下の式を用いて求め、下記のランクで評価し、視覚特性の指標とした。尚、測定はいずれのサンプルも消色状態で行った。
【0259】
透過率の変化割合(%)={(0度の透過率−50度の透過率)/0度の透過率}×100
ランク
○:0%以上5%未満、実用的な範囲
△:5%以上、10%未満、実用的には不充分な範囲
×:10%以上、視認が困難な範囲
上記評価の結果を表1に示す。
【0260】
表1から、本発明の偏光制御素子は、良好な偏光特性を有し、偏光特性制御の安定性に優れかつ視覚特性に優れることが分かる。
【0261】
【表1】

【0262】
(実施例2)
(塗布液の調製)
塗布液21(実施例)
上記化合物1の5部を、95部の水に攪拌溶解させ、配位高分子の水溶液を得た。得られた水溶液を、1日静置し塗布液2−1とした。
【0263】
塗布液22(比較例)
特開2007−112957号公報明細書の段落(0081)に記載の溶液を調整するため、同号公報段落(0080)の実施例1で得られた化合物1の2部を1000部のメタノールに攪拌溶解させた。得られた溶液を、1日静置し塗布液2−2とした。
【0264】
(配向の確認)
ガラス基板上に塗布液2−1を滴下した後、30μmのバーコーター(井元製作所社製)で塗布した後、10分間自然乾燥させることにより色素層付きガラス基板を作製した。
【0265】
塗布液2−2も同様にして、それぞれ色素層付ガラス基板を作製した。
【0266】
これら色素層付きガラス基板の配向を確認するため、偏光フィルム測定装置VAP−7070D(日本分光株式会社)を用いて、偏光度を測定し、下記ランクで評価した。
A:偏光度50未満
B:偏光度50以上90未満
C:偏光度90以上
塗布液2−1によるものはC、塗布液2−2によるものはAであった。
【0267】
(偏光制御素子21の作製)
偏光制御素子の作製工程の概略を図6に示す。
【0268】
縦30mm、横30mmのガラス22上に、真空蒸着法により100nm厚のITO電極膜21を積層した。蒸着の際にはマスク23を用い、図7に示すように、電極21の形状を縦30mm、横aを3mm、電極間距離bを2mm、ガラス端と電極間距離cを1mmとしたガラス電極1を2枚(1−1および1−2)作製した。
【0269】
ガラス電極1−1上に、感光性絶縁層膜24としてPC403(商品名、JSR社)を厚み10μmに塗布し90℃で5分間加熱した。この後、ITO電極部以外に絶縁層を形成するためマスク25を設け、PC403に紫外光(USHIO社製 DEEP UVランプ高均一度タイプ OPM2−502M 365nm、10.5mJ/cm、30s)を照射した後、ITO電極上の不要なPC403をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を用いて除去し、水洗した後乾燥した。絶縁層26を形成したガラス電極1−1を220℃で1時間焼成した。
【0270】
ガラス電極1−2上に、塗布液2−1を滴下した後、30μmのワイヤーバー(井元製作所社製)を用いて塗工し、自然乾燥し、偏光制御膜28を形成した。
【0271】
ガラス電極1−1と1−2とを電極形状が一致するように張り合わせた。その際絶縁層によって形成された空隙には、電解質層27として過塩素酸テトラブチルアンモニウムの0.1M/Lのアセトニトリル溶液を満たし、溶液が漏れないよう接着剤で封入し、偏光制御素子21とした。
【0272】
(偏光制御素子22の作製)
縦30mm、横30mmのガラス上に、真空蒸着法により100nm厚のITO電極膜を積層した。蒸着の際にはマスクを用い、図8の電極21のような形状に作製し、ガラス電極2とした。ITO電極は縦4mm、横4mm、電極間距離は1.5mm、ガラス端部から電極までの距離は2mmとし、配線を簡単にするために図8に示すようにB方向に配列した電極をずれた構造とした。隣り合う電極のずれdは0.05mmとした。配線の幅は0.01mmとし、図8のように端部まで直線的に伸びた構造とした。A方向の電極の並びは均一で、隣り合う電極間距離は1.5mmとした。ガラス端部から電極までの距離は2mmとした。
【0273】
上記のガラス電極2とは電極パターンが反転しており、また配線の位置が異なる以外はガラス電極2と同様の方法で作製し、ガラス電極3とした。
【0274】
ガラス電極2上に、感光性絶縁膜としてPC403(商品名、JSR社)を厚み10μmに塗布し90℃で5分間加熱した。この後、ITO電極部以外に絶縁層を形成するためマスクをし、PC403に紫外光(USHIO社製 DEEP UVランプ高均一度タイプ OPM2−502M 365nm、10.5mJ/cm、30s)を照射した後、ITO電極上の不要なPC403をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を用いて除去し、水洗した後乾燥した。絶縁層を形成したガラス電極2を220℃で1時間焼成した。
【0275】
ガラス電極3上に、塗布液2−1を滴下した後、30μmのワイヤーバー(井元製作所社製)を用いて塗工し、自然乾燥した。
【0276】
ガラス電極3の絶縁層で囲まれた電極上にそれぞれ過塩素酸テトラブチルアンモニウムの0.1M/Lのアセトニトリル溶液を満たした後、ガラス電極2と3を電極形状が一致するように張り合わせ、偏光制御素子22とした。
【0277】
(偏光制御素子23の作製)
縦30mm、横30mmのガラス上に、真空蒸着法により100nm厚のITO電極膜を積層した。蒸着の際にはマスクを用い、ITO電極を図9に示すように円形に作製しガラス電極4とした。ITO電極は半径5mmの円とし、配線幅を0.01mmとしガラス端部まで直線的に形成した。
【0278】
上記のガラス電極4とは電極配置が反転しており、また配線の位置が異なる以外はガラス電極2と同様の方法で作製し、ガラス電極5とした。
【0279】
ガラス電極4上に、感光性絶縁膜としてPC403(商品名、JSR社)を厚み10μmに塗布し90℃で5分間加熱した。この後、ITO電極の円の周囲に1mm幅の絶縁層を形成するためマスクをし、PC403に紫外光(USHIO社製 DEEP UVランプ高均一度タイプ OPM2−502M 365nm、10.5mJ/cm、30s)を照射した後、ITO電極上の不要なPC403をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を用いて除去し、水洗した後乾燥した。絶縁層36を形成したガラス電極5を220℃で1時間焼成した。
【0280】
ガラス電極4上に、塗布液2−1を滴下した後、30μmのアプリケーター(井元製作所社製)を用いて塗工し、自然乾燥した。
【0281】
ガラス電極5の絶縁層36で囲まれた電極上にそれぞれ過塩素酸テトラブチルアンモニウムの0.1M/Lのアセトニトリル溶液を満たした後、ガラス電極4を電極形状が一致するように張り合わせ、偏光制御素子23とした。
【0282】
偏光制御素子21、22、23は無電圧条件では、何れも素子全面において均一な偏光性を示した。
【0283】
偏光制御素子21は、所望のストライプ電極に電圧を印加すると図7の(2)、(3)に示す形状でストライプ電極上の偏光特性が消失した。また電圧の印加を止めることで、全面が均一な偏光特性を示した。
【0284】
偏光制御素子22は、所望の電極に電圧を印加することで、図8の(5)、(6)、(7)のようなストライプ状や、多角形などを所望の位置と形状に偏光特性を消失することができ、また電圧の印加を止めることで、全面が偏光特性を示した。尚、斜線部分が、着色して偏光特性を有する領域を、斜線がない部分が、消色して偏光特性を有さない領域を示す。これによりTFT基板などを利用し、より高解像な画像の表現が可能であることが分かる。
【0285】
偏光制御素子23は、図9の(2)、(3)のように、電圧の印加のオン、オフにより円形状に、偏光特性の有無を切り替えることができた。
【0286】
(偏光制御素子24(比較例)の作製)
偏光制御素子21の作製において、塗布液2−1に換えて、塗布液2−2を用いたこと以外は偏光制御素子21の作製と同様の方法で行い、偏光制御素子24を作製した。
【0287】
(偏光制御素子25(比較例)の作製)
偏光制御素子21で使用したITO電極パターンを形成したガラス電極1−1、1−2の電極面に、AL−1254(JSR社製)をスピンコートによって積層し250℃で焼成した後、ラビング処理を行った。その際、ラビングは、ガラス電極1−1、1−2の電極面を内側となるよう配置した際、同方向となるようにし、それぞれガラス電極6、7とした。
【0288】
ガラス電極6上に、感光性絶縁膜としてPC403(商品名、JSR社)を厚み5μmに塗布し90℃で5分間加熱した。この後、ITO電極部以外に絶縁層を形成するためマスクをし、PC403に紫外光(USHIO社製 DEEP UVランプ高均一度タイプ OPM2−502M 365nm、10.5mJ/cm、30s)を照射した後、ITO電極上の不要なPC403をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を用いて除去し、水洗した後乾燥した。絶縁層を形成したガラス電極6を220℃で1時間焼成した。
【0289】
ガラス電極6と7を電極面が内側となるよう張り合わせた後、空隙に、4′−ヘプチルオキシ−4−ビフェニルカルボニトリル(アルドリッチ社製)中に、メチルレッド(アルドリッチ社製)を1質量%添加した液晶材料を注入した後、封止した。この液晶セルが等方性を示す温度まで加熱した後、1℃/minの速度で25℃まで徐々に冷却し、偏光制御素子25とした。
【0290】
(偏光特性制御の安定性、視覚特性の評価)
偏光制御素子21〜25について、偏光特性制御の安定性および視覚特性を評価した。下記1〜3の条件で、偏光度の変化割合を測定し、偏光特性制御の安定性を評価した。また下記4により視覚特性を評価した。
【0291】
評価項目は、以下のとおりである。
1.可視光(25000Lx)照射による安定性
2.晴天時の太陽光照射による安定性
3.温度50℃で60分間加熱による安定性
4.視覚特性評価(透過率の変化割合の測定)
(使用した測定装置)
可視光光源は、高輝度シャウカステンPHC−4(ポニー工業)を用い、シャウカステンの熱が、直接的に評価サンプルに影響しないよう、空間をあけ、25000Lxとなるように評価サンプルを配置した。評価サンプルへの光照射時間は10分間とした。
【0292】
太陽光は晴天時に、10分間照射した。
【0293】
加熱処理には、FP82HT/84HT 顕微鏡ホットステージ(メトラー・トレド社製)を用いた。
【0294】
評価サンプルの偏光度は、1〜3のそれぞれの処理を行った後、30秒以内に、偏光フィルム測定装置VAP−7070D(日本分光株式会社)を用いて測定した。
【0295】
(偏光特性制御の安定性の評価)
評価項目の処理を行う前の偏光度と、処理後の偏光度の変化量から、以下の式を用いて、偏光度の変化割合を求めた。
【0296】
偏光度の変化割合=(処理前偏光度−処理後偏光度)×100/処理前偏光度
得られた偏光度の変化割合を下記のランクで評価し、偏光特性制御の安定性の指標とした。
○:0%〜10%未満、実用的な範囲
△:10%以上、50%未満、実用的には不充分な範囲
×:50%以上、極めて不安定な範囲
(視覚特性の評価)
分光光度計V−7000(日本分光株式会社)を用い、透過率を測定した。評価サンプルの角度は、サンプル面法線に対し0度と50度の角度で行い、その透過率の変化割合を以下の式を用いて求め、下記のランクで評価し、視覚特性の指標とした。尚、測定はいずれのサンプルも消色状態で行った。
【0297】
透過率の変化割合(%)=((0度の透過率−50度の透過率)/0度の透過率)×100
ランク
○:0%以上5%未満、実用的な範囲
△:5%以上、10%未満、実用的には不充分な範囲
×:10%以上、視認が困難な範囲
上記評価の結果を表2に示す。
【0298】
【表2】

【0299】
表2から、本発明の偏光制御素子は、局所的に偏光の制御が可能であると共に、良好な偏光特性を有し、偏光特性制御の安定性に優れかつ視覚特性に優れることが分かる。
【0300】
(実施例3)
(発光素子301(本発明)、302〜304(比較例)の作製)
<楕円偏光板301〜304の作製>
実施例1で用いた偏光制御素子1の、電極4側のガラス基材上にWRZフィルム(λ/4波長フィルム、帝人(株)製。)を偏光軸と45度の角度で、基材レステープを介して張り付け、楕円偏光板301を得た。
【0301】
また、フォトクロミック色素として、下記式(I)で示されるスピロピラン系色素(1,3,3−トリメチルインドリノ−6′−ニトロベンゾピリロスピラン、東京化成工業(株)製、商品名:T0366)と、透明樹脂としてポリビニルアルコール(PVA)(重合度:1700、クラレ社製)と、をDMSO溶媒中に溶解させ、混合溶液を調整した。ただし、色素:PVA(質量比)=1:99の配合割合とし、混合溶液は、該PVAの12質量%溶液とした。
【0302】
この混合溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一な厚みとなるように展開し、減圧乾燥することによりフィルム(平均厚み70μm)を製膜した。
【0303】
得られたフィルムを延伸機に装着し、60℃の雰囲気下で縦一軸方向へ5倍延伸することにより延伸フィルムを得た。(これは、特開2008−122485号公報に記載の偏光子と同様のものである。)
【0304】
【化11】

【0305】
得られた延伸フィルム上にWRZフィルム(λ/4波長フィルム、帝人(株)製)を偏光軸と45度の角度で、基材レステープを介して張り付け、楕円偏光板302を得た。
【0306】
次いで、厚み38μmの二軸延伸PETフィルム(東レ(株)製、商品名:ルミラー)の表面に、バーコーティング方式にて二色性色素を含む溶液(OPTIVA社製、商品名:LCポラライザーTCF)を1μm厚で均一に塗工した後、自然乾燥させることによりコーティング膜からなる偏光子を形成した。(この偏光子は、特開2007−25465号公報に記載の偏光子と同様のものである。)
次に、この偏光子と上記WRZフィルムを偏光子の吸収軸と位相差板の遅相軸が45度となるように、基材レステープを介して積層し楕円偏光板303を得た。
【0307】
実施例1の偏光制御素子4上に、WRZフィルム(λ/4波長フィルム、帝人(株)製。)を偏光軸と45度の角度で、基材レステープを介して張り付け、楕円偏光板304を得た。
【0308】
(発光素子の作製)
上記楕円偏光板301〜304の各々と、下記に示す発光部材とを、楕円偏光板のWRZフィルム面と、発光部材の視認側のガラス面とが対面するようにして、基材レステープを介して貼合させ発光素子(表示素子)301〜304を得た。
【0309】
[発光部材]
特開2006−140444号公報に記載の作製方法と同様の方法で発光部材の作製を行った。その作製方法とは以下のとおりである。
【0310】
膜厚110nmのITOからなる陽極が形成されたガラス製の基板上に、真空度5.0×10−4Paの各成膜室内で真空蒸着法によって積層構造を成膜した。
【0311】
この際、先ず、ITO上に正孔注入層として銅フタロシアニン(CuPc)を30nmの膜厚で成膜し、次いで、正孔注入層上に正孔輸送層としてα−NPDを50nmの膜厚で成膜した。
【0312】
次に、正孔輸送層上に塗り分け用蒸着マスクを用いてR発光層の成膜領域を開口させ、Alq(ホスト材料)とピラン系化合物ドープであるDCJTB(ドーパント)とを異なる蒸着源から共蒸着することで、膜厚40nmのR発光層を成膜した。このときのDCJTB(ドーパント)濃度は6.0%であった。
【0313】
次いで、正孔輸送層上に塗り分け用蒸着マスクを用いてG発光層の成膜領域を開口させ、Alq(ホスト材料)とクマリン6(ドーパント)とを異なる蒸着源から共蒸着することで、膜厚40nmのG発光層を成膜した。
【0314】
このときのクマリン6(ドーパント)濃度は0.2%であった。
【0315】
更に、正孔輸送層上に塗り分け用蒸着マスクを用いてB発光層の成膜領域を開口させ、BH−140(ホスト材料)とBD−052(ドーパント)とを異なる蒸着源から共蒸着することで、膜厚30nmのB発光層を成膜した。このときのBD−052(ドーパント)濃度は5.0%であった。ここで、BH−140とBD−052は、共に出光興産(株)製の有機EL青色発光層材料の製品名である。
【0316】
その後、電子輸送層としてAlqを30nmの厚さに成膜し、更に電子輸送層上に電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を1nmの厚さに成膜した。そして、最後に、電子注入層上に光反射性の陰極としてアルミニウム(Al)を200nmの厚さで成膜した。このようにして、各々R発光層、G発光層、B発光層を有する自発光素子を複数有する発光部材を作製した。
【0317】
この発光部材が劣化しないように、吸湿剤として塩化カルシウムを設置したステンレス製の箱に設置し、発光表面のガラス基板のみが外部空気と接触するようにした。
【0318】
尚、外光のない状態で、視認時に所望の表示となるよう調整した画像データを発光部材に出力することでカラー画像を得た。
【0319】
(評価)
(外光環境変化に対する視認安定性)
発光部材を駆動させ、カラー画像を表示させた状態で、オフィス環境(蛍光灯600Lx)で60分静置したときの視認性と、曇天時の太陽光(約20000Lx)で60分静置したときの画像視認性を目視で確認し、双方で、明瞭に画像を認識できたもののランクを○、僅かにしか認識できなかったものがあったもののランクを△、認識できなかったものがあったもののランクを×として、評価し、制御安定性の指標の一つとした。
【0320】
尚、カラー画像の表示は、外光のない状態で、視認時に所望の表示となるよう調整した画像データを発光部材に出力することで行った。以下も同様である。
【0321】
(高温環境下における視認安定性)
発光部材を駆動させ、カラー画像を表示させた状態で、30℃環境下と80℃環境下においたときの画像視認性を目視で確認し、双方で、明瞭に画像を認識できたもののランクを○、僅かにしか認識できなかったものがあったもののランクを△、認識できなかったものがあったもののランクを×として、評価し制御安定性の指標の一つとした。
【0322】
(偏光特性消失時の表示素子の輝度変化率)
発光部材を駆動させ、白色表示させた状態で、偏光特性の消失前後での輝度変化をCS−2000(コニカミノルタ社製)によって測定し、以下の式から計算される輝度変化率を求め、下記ランクで評価し、視覚特性の指標の一つとした。
【0323】
発光素子302は偏光特性発現、消失に光源が別途必要であるため、視認側の画像表示枠外から紫外光照射装置、および可視光照射装置を設置し、楕円偏光板に光照射できるようにした。
【0324】
輝度変化率=(偏光特性消失後の輝度/偏光特性消失前の輝度)×100
測定角度は、画面法線に対し0度(正面)と50度(斜め)の角度で行った。
【0325】
○:130%以上
△:110%以上130%未満
×:110%以下
尚、発光素子302は、偏光特性発現時に必要な紫外光が人間の目に入る可能性があり、この紫外光が人体に害を与える危険性を有し、実用上問題である。
【0326】
(偏光消失時の色味評価)
発光部材を駆動させ、白色表示させた状態で、偏光消失時の正面と斜め50度の方向から色味を下記ランクで、視感評価し、視覚特性の指標の一つとした。
【0327】
《色味変化角度依存性の評価ランク》
○:正面と斜視で色味に変化は見られない
△:正面と斜視で外光反射の色味違いが僅かに見られる
×:正面と斜視で外光反射の色味違いが強く見られる
尚、発光素子303においては、偏光特性を変化させることができないため、上記の評価はできなかった。
【0328】
また、発光部材を駆動させずに、画像を表示しない状態で、外光からの反射光を観察し、鏡としての機能を下記のランクで評価した。
【0329】
A:自分の顔を認識できる
B:自分の顔を僅かに認識できる
C:自分の顔を全く認識できない
結果を表3に示す。
【0330】
【表3】

【0331】
表3から、本発明の偏光制御素子を用いた楕円偏光板を用いることで、偏光特性の制御安定性に優れ、視覚特性に優れ、かつ多機能を有する光学素子を、簡易に与えることができることが分かる。
【0332】
尚、発光素子(表示素子)301については、画像面の左半分を画像表示させ、残りの右半分を画像を表示しない状態で鏡として利用することができた。発光素子302、303は、画像面の一部を鏡とすることはできず、また発光素子304は、一部を鏡として機能させることは可能であったが、斜め(50度)における画像の視認性、鏡共に機能が不充分であった。
【0333】
また、発光素子(表示素子)301は、全画像面を発光させることで、照明素子としても使用できるものであった。
【0334】
実施例4
(積層偏光制御素子)
実施例2の偏光制御素子21の作製において、下記のようにして作製すること以外、偏光制御素子21との作製と同様な方法で偏光制御素子41を作製した。
【0335】
ストライプ状の電極幅を表示素子画素サイズと同様とし、隣り合うストライプ間の間隔を表示素子画素間のブラックマトリクスサイズと同様とした電極を形成した後、塗布液1を30μmのワイヤーバー(井元製作所社製)を用いて、ストライプ電極と平行方向に塗工した。
【0336】
塗布液をストライプ電極と直交方向に塗工した以外は偏光制御素子41と同様にして偏光制御素子42を作製した。
【0337】
偏光制御素子41と42をストライプ電極が一致するよう、基材レステープを介して貼り合せ、積層偏光制御素子を作製した。
【0338】
この積層偏光制御素子と、実施例3で用いた位相差板とを、実施例3の方法と同様にして積層して楕円偏光板を得た。
【0339】
この楕円偏光板を、上記発光部材にストライプ電極と発光素子画素が一致するように基材レステープを介して、偏光制御素子41が視認側に来るよう貼り合せ、表示素子を作製した。
【0340】
偏光制御素子41と、偏光制御素子42とに対して、各々別々に電圧印加を制御することで、黒画面表示、3D表示および2D表示、が可能であり、照明素子、鏡として利用できた。
【符号の説明】
【0341】
21 電極
22 基板
23、25 マスク
24 感光性絶縁層膜
26 絶縁層
27 電解質層
101 第一の電極
102 電解質層
103 偏光制御膜
104 第二の電極
110 偏光制御素子
201 基板
206 絶縁層
207 電極
315 位相差板
320 発光部材
330 楕円偏光板
340 発光素子
322 封止層
323 第二電極
324 有機層
325 第一電極
326 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが可逆的に変化する、配向された、2色性色素を含有することを特徴とする偏光制御膜。
【請求項2】
前記偏光制御膜が、偏光特性の制御が電荷の授受により行われる、電荷制御型偏光制御膜であることを特徴とする請求項1に記載の偏光制御膜。
【請求項3】
前記電荷の授受が酸化還元反応であることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光制御膜。
【請求項4】
前記配向が、面内一軸配向であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の偏光制御膜。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の偏光制御膜および電荷供給手段を有することを特徴とする偏光制御素子。
【請求項6】
前記電荷供給手段が、電解質層および電極を有することを特徴とする請求項5に記載の偏光制御素子。
【請求項7】
前記電荷供給手段が、電荷供給手段からの電荷の供給が局所的に制御可能である構成を有することを特徴とする請求項5または6に記載の偏光制御素子。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の偏光制御素子を用いることを特徴とする偏光特性制御方法。
【請求項9】
請求項5から7のいずれか1項に記載の偏光制御素子からなる層を、複数層有し、該複数層の各偏光制御素子が有する偏光制御膜が含有する2色性色素の配向方向が各々異なることを特徴とする積層偏光制御素子。
【請求項10】
請求項9に記載の積層偏光制御素子を用いることを特徴とする偏光特性制御方法。
【請求項11】
位相差板と、請求項5から7のいずれか1項に記載の偏光制御素子とを、有することを特徴とする楕円偏光板。
【請求項12】
位相差板と、請求項9に記載の積層偏光制御素子とを、有することを特徴とする楕円偏光板。
【請求項13】
請求項5から7のいずれか1項に記載の偏光制御素子を有することを特徴とする発光素子。
【請求項14】
請求項9に記載の積層偏光制御素子を有することを特徴とする発光素子。
【請求項15】
請求項11または12に記載の楕円偏光板を有することを特徴とする発光素子。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか1項に記載の発光素子であって、前記発光素子が、表示素子であることを特徴とする発光素子。
【請求項17】
請求項13から15のいずれか1項に記載の発光素子であって、前記発光素子が、照明素子であることを特徴とする発光素子。
【請求項18】
前記発光素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項16または17に記載の発光素子。
【請求項19】
電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが変化する、配向された2色性色素を含有する偏光制御膜および電荷供給手段を有する偏光制御素子を用い、該電荷供給手段から該2色性色素への電荷の供給を制御して、該偏光制御膜の偏光特性を可逆的に変化させることを特徴とする偏光特性制御方法。
【請求項20】
前記2色性色素への電荷の供給を制御する方法が電圧を制御する方法であり、前記偏光制御膜が着色状態で偏光特性を有する状態と、前記偏光制御膜が無着色状態で偏光特性を有さない状態とを可逆的に変化させることを特徴とする請求項19に記載の偏光特性制御方法。
【請求項21】
位相差板と、電荷の授受により分子の光吸収スペクトルが可逆的に変化する、配向された、2色性色素を含有する偏光制御膜および電荷供給手段を有する偏光制御素子とを有する楕円偏光板を用い、該電荷供給手段から該2色性色素への電荷の供給を制御して、該偏光制御膜の偏光特性を可逆的に変化させ、該楕円偏光板の偏光特性を制御することを特徴とする偏光特性制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−8210(P2011−8210A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180458(P2009−180458)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】