説明

偏光子、偏光板、円偏光フィルタ、画像表示装置、及び偏光子の製造方法

【課題】 本発明は、紫外光の強い環境下で使用した際に偏光特性を示し、且つ紫外光の弱い環境下で表示発光の吸収を防止できる偏光子を提供する。
【解決手段】 本発明の偏光子2は、樹脂中にフォトクロミック色素を少なくとも1種類含有することを特徴とする。該フォトクロミック色素は、二色性色素として用いられ、樹脂中に一方向に配向している。円偏光フィルタ1は、前記偏光子2と1/4波長板である位相差板4が積層されて構成される。
かかる偏光子は、フォトクロミック色素が紫外光照射によって着色し、着色後に可視光照射または加熱によって退色する。かかるフォトクロミック特性により、偏光子は、紫外光の強い環境下で使用した際に偏光を取り出し、他方、紫外光の弱い環境下で光線を透過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトクロミック色素を含有するフォトクロミック偏光子、並びに該偏光子を備える偏光板、偏光フィルタ及び画像表示装置、及び偏光子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外等の外光の強い環境下に於いて画像表示装置を使用すると、画面に外光が反射し、画面の視認性が著しく低下する。この問題点に対しては、画面表面に防眩処理などを施す手段がある。この手段によって、画面表面に当たって反射する外光に起因する視認性の低下はある程度防ぐことができる。しかし、この手段では、画面から表示装置内部に入射した外光が、各種構成部材に当たって反射し、画面から出射することを防止できない。例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を有する画像表示装置(以下、有機EL表示装置という)の場合、装置内部に設けられた反射用金属電極によって、外光が反射し易い。このため、有機EL表示装置に於いて、特に、外光に起因する視認性の低下が問題となる。
【0003】
そこで、これらの外光反射を低減するために、円偏光フィルタを備える有機EL表示装置が提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
具体的には、この円偏光フィルタは、直線偏光を取り出す偏光子と、偏光子の吸収軸に対して遅相軸を約45度に配置した1/4波長板と、を有する。かかる円偏光フィルタは、その1/4波長板を画面側にして、画面表面に設けられる。該円偏光フィルタに当たった外光は、その一部が偏光子に吸収され、一部が直線偏光として偏光子を透過する。直線偏光は、1/4波長板によって円偏光に変換される。該円偏光は、有機EL素子内の反射用金属電極等で反射し、左右逆転した円偏光となって、再度1/4波長板へ入射する。この左右逆転した円偏光は、1/4波長板で直線偏光に変換された後、偏光子を透過できない。かかる原理で、外光反射に起因する視認性の低下を防止できる。
【0004】
しかしながら、上記円偏光フィルタを用いた方法では、偏光子が、有機EL素子などの表示装置そのものが発する光(以下、表示発光という)を吸収してしまう。このため、屋内等の外光の弱い環境下に於いて画像表示装置を使用すると、表示発光が偏光子によって約半分吸収されるので、画面表示が暗くなるという問題を生じる。
この問題は、円偏光フィルタを外すと解消されるが、そうすると、屋外等の外光の強い環境下に於いて、外光が反射し、画面の視認性が著しく低下する上記問題点が解決できない。
【特許文献1】特開平8−321381号公報
【特許文献2】特開平9−127885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、紫外光の強い環境下で使用した際に偏光特性を示し、且つ紫外光の弱い環境下で表示発光の吸収を防止できる偏光子を提供することを課題とする。
さらに、紫外光の強い環境下で使用した際に、外光の反射を防止でき、且つ紫外光の弱い環境下で使用した際に、表示発光の吸収を防止できる円偏光フィルタを提供することを課題とする。
また、本発明は、上記偏光子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、外光が強い環境下で光を吸収し、外光が弱い環境下で光を吸収しないような理想的な新規材料について鋭意検討したところ、フォトクロミック色素に着目した。フォトクロミック色素は、紫外光照射されると着色状態に変化する。一方、該色素は、紫外光照射が弱くなり、且つ可視光照射などによって退色状態に戻る。本発明者らは、フォトクロミック色素のかかる可逆性を専ら利用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
本発明は、樹脂中にフォトクロミック色素を少なくとも1種類含有する偏光子を提供する。
上記偏光子は、二色性色素として上記フォトクロミック色素を用いる。
上記何れかの偏光子は、上記フォトクロミック色素が一方向に配向しているものが好ましい態様である。
【0008】
上記何れかの偏光子は、上記フォトクロミック色素が紫外光照射によって着色し、且つ、着色後に可視光照射または加熱によって退色するフォトクロミック特性を示すものが好ましい態様である。
上記何れかの偏光子は、樹脂とフォトクロミック色素を含む樹脂組成物を製膜し、延伸することによって得られたものが好ましい態様である。
上記何れかの偏光子は、紫外光吸収剤を含有しないものが好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記何れかの偏光子の片面または両面に、保護層が積層されている偏光板を提供する。
該保護層は、紫外光吸収能を実質的に有しないものが好ましい。
【0010】
さらに、本発明は、上記何れかの偏光子または上記何れかの偏光板に、少なくとも1種類の位相差板が積層されている円偏光フィルタを提供する。
また、本発明は、上記円偏光フィルタが、その位相差板を画面側にして、画像表示面に設けられている画像表示装置を提供する。
この画像表示装置は、有機EL素子を有する有機EL表示装置が好ましい。
【0011】
さらに、本発明は、フォトクロミック色素を含有する樹脂フィルムを、延伸することによってフォトクロミック色素を一方向に配向させる偏光子の製造方法を提供する。
上記フォトクロミック色素を含有する樹脂フィルムは、少なくとも樹脂とフォトクロミック色素を溶媒に溶解させた樹脂溶液を、基板上へキャストすることによって、作製することが好ましい態様である。このフィルムの延伸は、加熱条件下で行うことが好ましい。
また、上記フォトクロミック色素を含有する樹脂フィルムは、樹脂フィルムを膨潤させ、該フィルムをフォトクロミック色素含有溶液中に浸漬することによって、作製することが好ましい態様である。このフィルムの延伸は、液中で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の偏光子は、フォトクロミック色素が含有されているので、紫外光照射によって着色状態となり、偏光特性を発現する。一方、紫外光が弱く、可視光照射が強くなるなどした際に、退色状態に戻る。従って、かかる偏光子は、紫外光が多量に含まれている外光外光下(屋外など)に於いて、偏光特性を示し、紫外光が少ない外光下(屋内など)に於いて、偏光特性を喪失する。
このような偏光子を備える円偏光フィルタは、屋外などの外光下に於いて、外光反射を防止できる。一方、該円偏光フィルタは、屋内などの外光下に於いて、装置内部からの表示発光を良好に透過させて、明るい画面表示を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態について説明する。
<偏光子>
本発明の偏光子は、樹脂中にフォトクロミック色素を含有する。本発明の偏光子は、樹脂フィルム中にフォトクロミック色素が分散し、一方向に配向されている。
樹脂フィルムとしては、無色透明なものが用いられ、好ましくは、線状ポリマーを主成分とするフィルムが好ましい。なお、線状ポリマーとは、長鎖状の主鎖を有し、該主鎖の一部に分枝鎖を有するものでもよい。
上記樹脂フィルムの樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系ポリマー;酢酸ビニル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;塩化ビニルなどのポリハロゲン化ビニル、塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;カーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ナイロンなどのアミド系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系もしくはノルボルネン構造を有するポリオレフイン、エチレン・プロピレン共重合体などのオレフイン系ポリマー;などを挙げることができる。これらポリマーは、必要に応じて架橋されたものであってもよい。
なお、無色透明な樹脂フィルムとは、フィルムの可視光(波長450nm〜650nm)に於ける光線透過率が、70%以上のものをいう。但し、この光線透過率は、フィルム厚100μmで、分光光度計(日立製作所製、製品名:U−4100型)で測定された値をいう。
【0014】
本発明で用いられるフォトクロミック色素は、紫外光照射されると着色状態に変化し、着色後、可視光照射または熱によって退色状態に戻るフォトクロミック特性を有しているものが好ましい。かかるフォトクロミック特性を有する色素であれば、特に制限なく使用できる。
該フォトクロミック色素としては、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、ジアリールエテン系化合物、フルギド系化合物、ナフトピラン系化合物などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上併用して用いることができる。
【0015】
上記スピロピラン系の色素としては、例えば、1,3,3−トリメチルインドリノ−6’−ニトロベンゾピリロスピラン、1’,3’,3’−トリメチルスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、1’,3’,3’−トリメチルスピロ−8−ニトロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、1’,3’,3’−トリメチル−6−ヒドロキシスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、1’,3’,3’−トリメチルスピロ−8−メトキシ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、5’−クロル−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、6,8−ジブロモ−1’,3’,3’−トリメチルスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、6,8−ジブロモ−1’,3’,3’−トリメチルスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、8−エトキシ−1’,3’,3’,4’,7’−ペンタメチルスピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、5’−クロル−1’,3’,3’−トリメチルスピロ−6,8−ジニトロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−インドリン)、3,3,1−ジフェニル−3H−ナフト−(2,1−13)ピラン、1,3,3−トリフェニルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)ピラン〕、1−(2,3,4,5,6−ペンタメチルベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)−ナフト(2,1−b)ピラン〕、1−(2−メトキシ−5−ニトロベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−ナフト(2,1−b)ピラン〕、1−(2−ニトロベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−ナフト(2,1−b)ピラン〕、1−(2−ナフチルメチル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−ナフト(2,1−b)ピラン〕、1,3,3−トリメチル−6’−ニトロ−スピロ〔2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール〕などが挙げられる。
【0016】
また、上記スピロオキサジン系の色素としては、例えば、1,3,3−トリメチルスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、5−メトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、5−クロル−1,3,3−トリメチルスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、4,7−ジエトキシ−1,3,3−トリメチルスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、5−クロル−1−ブチル−3,3−ジメチルスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1,3,3,5−テトラメチル−9’−エトキシスピロ〔インドリノ−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1−ベンジル−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1−(4−メトキシベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1−(2−メチルベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1−(3,5−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕、1−(4−クロロベンジル)−3,3−ジメチルスピロ〔インドリン−2,3’−(3H)ナフト(2,1−b)(1,4)オキサジン〕などが挙げられる。
【0017】
上記ジアリールエテン系の色素としては、例えば、1,2−ビス(2−フェニル−4−トリフルオロメチルチアゾール)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、,2−ビス(3−(2−メチル−6−(2−(4−メトキシフェニル)エチニル)ベンゾチエニル))−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(5−メチル−2−フェニルチアゾ−ル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ビス(2−メトキシ−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1−(5−メトキシ−1,2−ジメチル−3−インドリル)−2−(5−シアノ−2,4−ジメチル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテンなどが挙げられる。
【0018】
フルギド系の色素化合物の例としては、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2’−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン〕、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−2−(p−メトキシフェニル)−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2’−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、6,7−ジヒドロ−N−メトキシカルボニルメチル−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2’−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−(p−メチルフェニル)−N−ニトロメチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2’−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−シクロプロピル−3−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2’−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)などが挙げられる。
【0019】
上記ナフトピラン系の色素としては、例えば、3,3−ジフェニル−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、2,2−ジフェニル−2H−ナフト(1,2−b)ピラン、3−(2−フルオロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、3−(2−メチル−4−メトキシフェニル)−3−(4−エトキシフェニル)−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、3−(2−フリル)−3−(2−フルオロフェニル)−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、3−(2−チエニル)−3−(2−フルオロ−4−メトキシフェニル)−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、3−〔2−(1−メチルピロリル)〕−3−(2−メチル−4−メトキシフェニル)−3H−ナフト(2,1−b)ピラン、スピロ〔ビシクロ(3.3.1)ノナン−9,3’−3H−ナフト(2,1−b)ピラン〕、スピロ〔ビシクロ(3.3.1)ノナン−9−2’−3H−ナフト(2,1−b)ピラン〕などが挙げられる。
【0020】
フォトクロミック色素は、良好な二色性を示すために、樹脂フィルム中にほぼ均一に分散し、且つその殆どが一方向に配向していることが好ましい。
フォトクロミック色素を配向させる手段としては、特に限定されなが、フォトクロミック色素を含有する樹脂フィルムを延伸することが簡便な方法である。
【0021】
フォトクロミック色素は、分子構造上、縦横の長さが異なる長鎖構造を有するものが好ましく、更に、ベンゼン環や複素環などのπ共役が広がり、π共役で繋がる各構成骨格間に於ける立体的構造が変化しない(但し、着色又は退色時の何れかの状態に変化した際には、立体構造が変化しうる)ものがより好ましい。なぜなら、該フォトクロミック色素は、これを含む樹脂フィルムを延伸することによって、該フィルム中に於いて一方向に配向し易い(配向性に優れている)からである。
【0022】
フォトクロミック色素の含有量は、樹脂100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましく、更に、0.3〜5.0質量部がより好ましく、0.4〜2.0質量部が特に好ましい。
なお、本発明の偏光子には、必要に応じて、安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤などの各種添加剤が添加されていてもよい。もっとも、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物などの紫外光吸収剤は、添加されていないことが好ましい。なぜなら、本発明の偏光子に紫外光吸収剤が含まれていると、該偏光子に照射された紫外光が吸収されてしまい、フォトクロミック色素が着色しない虞があるからである。
なお、この紫外光吸収剤は、紫外光遮蔽剤と呼ばれているものを含む意味である。
本発明の偏光子の厚みは、特に限定されないが、通常、10〜100μm程度が好ましく、更に、50〜100μm程度がより好ましい。
【0023】
上記フォトクロミック色素は、太陽光に含まれる紫外光、紫外光ランプ、水銀ランプ、キセノンランプなどの各種ランプの紫外光を受けて、着色状態に変化する。フォトクロミック色素の着色状態への変化は、例えば、偏光子に、波長250〜400nmの紫外光が照射されることで進行する。従って、屋外などに於ける太陽光の照射によって、フォトクロミック色素が着色状態へ変化して偏光子が着色する。着色状態の偏光子は、良好な二色性を示し、直線偏光を取り出すことができる。
着色状態の偏光子の偏光特性は、単体透過率10〜50%程度であり、偏光度20〜99%である。
なお、単体透過率は、JlS Z 8701−1995に準じて測定した値である。偏光度は、下記実施例に記載の方法で測定した値である。
また、着色状態の偏光子の吸光度は、用いるフォトクロミック色素の種類によって異なるが、用いるフォトクロミック色素の最大吸収波長(λmax)に於ける吸光度が、0.3〜0.4であるものが好ましい。該吸光度は、下記実施例に記載の方法で測定した値である。
【0024】
一方、上記着色状態の偏光子に、可視光を照射又は熱を加えると、フォトクロミック色素が退色する。フォトクロミック色素の着色及び退色は、可逆的な反応である。このため、紫外光の作用が大きい場合には、フォトクロミック色素は着色し、一方、紫外光の作用よりも可視光の作用及び/又は熱作用が大きい場合には、フォトクロミック色素は退色する。従って、本発明の偏光子は、照射される紫外光が殆ど無い又は紫外光が弱く、且つ相対的に可視光の照射量が多くなると、フォトクロミック色素が退色して偏光特性が消滅する。或いは、本発明の偏光子は、照射される紫外光が殆ど無い又は紫外光が弱く、且つ室温(概ね25℃)程度の温度に於いても、フォトクロミック色素が退色して偏光特性を喪失する。
よって、本発明の偏光子は、屋内などの紫外光照射が殆ど無い又は弱い環境下に於いて、偏光特性を示さない透明なフィルムとなるのである。
なお、退色状態の偏光子の吸光度(上記最大吸収波長(λmax))は、0.05以下であり、この状態の偏光子は、可視光域に於いて殆ど吸収能を示さない。
【0025】
<偏光子の製造方法>
本発明の偏光子は、a)フォトクロミック色素を含む樹脂組成物を製膜し延伸する、b)樹脂フィルムを、フォトクロミック色素を含有する溶液に浸漬し延伸する、などの方法によって製造できる。
延伸処理を施すことにより、フォトクロミック色素を配向させることができ、更に、皺のない均一な偏光子を得ることができる。また、通常使用の環境下で、着色と退色を可逆的に繰り返す本発明の偏光子を得ることができる。
【0026】
上記a)の製造方法としては、例えば、キャスト法が挙げられる。
詳しくは、有機溶媒や水などの適当な溶媒に、樹脂とフォトクロミック色素を少なくとも溶解させた溶液を、基板上にキャストする。この膜を乾燥することによって、フォトクロミック色素が樹脂マトリクス中に分散含有した樹脂フィルムを作製できる。得られた樹脂フィルムを、一軸方向に延伸することにより、フォトクロミック色素が一方向(延伸方向)に配向し、本発明の偏光子を得ることができる。延伸前の樹脂フィルムの厚みは、得られる偏光子の厚みや延伸強度などを考慮して適宜設定されるが、通常、40〜150μm程度に作製することが好ましい。フォトクロミック色素の添加量は、樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、更に、0.3〜5.0質量部がより好ましく、0.4〜2.0質量部が特に好ましい。
延伸処理は、湿式延伸法又は乾式延伸法の何れでもよい。湿式延伸法は、液中で樹脂フィルムを延伸する方式であり、乾式延伸法は、空気中で延伸する方式である。湿式延伸法の場合、液温40〜70℃程度に加熱して行うことが好ましい。乾式延伸法の場合、50〜200℃程度の雰囲気下で行うことが好ましい。延伸倍率としては、3〜10倍程度である。
なお、上記a)の製造方法に於いて、製膜法としてキャスト法を例示したが、フォトクロミック色素を含有する樹脂フィルムは、キャスト法以外の従来公知の製膜法(例えば、溶融押出法など)で作製することもできる。
【0027】
一方、上記b)の製造方法としては、例えば、膨潤させた親水性ポリマーフィルムを、フォトクロミック色素含有溶液に浸漬して染色し、延伸する方法が挙げられる。この方法は、ヨウ素で染色したポリビニルアルコールフィルム製の偏光子の製造方法に準じて実施できる。すなわち、主として上記ヨウ素をフォトクロミック色素に代えることで実施できる。
【0028】
具体的には、下記膨潤工程、染色工程、延伸工程等を経て、本発明の偏光子を製造できる。
親水性ポリマーフィルムとしては、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール(以下、PVAという)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、変性PVA系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体系フィルム、及びこれらの部分ケン化フィルム等があげられる。中でも、PVA系ポリマーフィルムが好ましい。PVA系ポリマーを用いる場合、PVAのケン化度は、例えば、80モル%〜100モル%が好ましく、特に、90モル%〜100モル%のケン化度のものがより好ましい(JIS K 6726−1994に準拠)。また、PVAの平均重合度は、例えば1,000〜10,000が好ましく、更に、1,000〜8,000がより好ましく、特に1,500〜5,000のものがより好ましい(JIS K 6726−1994に準拠)。上記親水性ポリマーフィルムは、キャスト法や溶融押出法などの公知の製膜法で製造できる。
【0029】
この親水性ポリマーフィルムを膨潤浴に浸漬して膨潤させる(膨潤工程)。
膨潤浴の液は、通常、水が用いられるが、他の物質が添加されていてもよい。また、膨潤浴の液温は、概ね20〜50℃程度、更には30〜40℃程度に加温されていることが好ましい。膨潤浴にフィルムを浸漬する時間は、概ね1〜7分間程度である。
【0030】
膨潤させた親水性ポリマーフィルムを、染色浴に浸漬し、フォトクロミック色素をフィルム内へ含浸させる(染色工程)。
染色浴の液は、上記フォトクロミック色素を溶媒に溶解又は分散させた染色溶液が用いられる。この溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が添加されても良い。
【0031】
フォトクロミック色素の濃度は、特に限定されない。もっとも、樹脂100質量部に対し、フォトクロミック色素が0.1〜10質量部含有された上記偏光子を製造するために、染色溶液は、溶媒100質量部に対して、フォトクロミック色素を0.0001〜1質量部の割合で混合することが好ましい。
フォトクロミック色素は、1種類でも良いし、2種類以上を併用しても良い。また、フォトクロミック色素は、水溶性のものが好ましい。
さらに、フォトクロミック色素をフィルム内に効率良く含浸させるため、染色溶液に染色助剤を添加してもよい。
該染色助剤としては、尿素、ボウ硝などが挙げられる。染色助剤の量は、染色溶液の溶媒100質量部に対して、0.1〜10質量部程度が好ましい。
染色浴へのフィルムの浸漬時間は、特に限定されるものではないが、20秒〜1,800秒程度が好ましい。また、染色浴の液温は、20℃〜80℃程度が好ましく、更に、40℃〜60℃程度がより好ましい。
【0032】
染色工程でフォトクロミック色素を含有させたフィルムを、架橋浴に浸漬し、フォトクロミック色素をフィルム内にて定着させる(架橋工程)。
架橋浴の液は、ホウ酸などの架橋剤を溶媒に溶解した架橋溶液が用いられる。この溶媒としては、例えば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒が添加されていても良い。溶液における架橋剤の濃度は、溶媒100質量部に対して、架橋剤2〜15質量部の割合で混合されていることが好ましく、5〜12質量部の割合がより好ましい。
架橋浴の液温は、特に限定されないが、20〜70℃の範囲が好ましい。フィルムの浸漬時間は、特に限定されないが、60秒〜1,200秒程度が好ましく、更に、200秒〜400秒程度がより好ましい。
【0033】
上記フォトクロミック色素を含有する親水性ポリマーフィルムを、一軸方向に延伸する(延伸工程)。
延伸処理は、膨潤工程から架橋工程の間の何れかの工程に於いて、又はこれらから選ばれる2以上の工程に於いて行うことが好ましい。中でも、染色工程及び架橋工程に於いて、染色処理及び架橋処理と共に延伸処理を施すのが好ましい。
また、膨潤工程から架橋工程の間に、延伸処理を主目的とする延伸工程を別途設けてよいし、架橋工程の後、別途、延伸処理を主目的とする延伸工程を別途設けてもよい。
延伸処理は、親水性ポリマーフィルム(膨潤工程に導入前のフィルム)の元長の2倍〜7倍程度(なお、2以上の工程に於いて延伸処理が施される場合には、総延伸倍率。以下同じ)に延伸することが好ましく、更に、3倍〜6倍程度がより好ましい。
【0034】
延伸処理は、液中で行うことが好ましい。この液としては、水、エタノールなどが適宜用いられる。該延伸浴の液温は、例えば、40〜70℃程度が好ましく、50〜60℃であることがより好ましい。
延伸処理後のフィルムは、水を満たした洗浄浴に浸漬され(洗浄工程)、その後、乾燥することにより、本発明の偏光子を得ることができる。
【0035】
<偏光子を含む偏光板>
本発明の偏光子は、単独で使用することもできるが、通常、保護層などを積層した偏光板の態様で提供される。
保護層は、偏光子の片面または両面に積層される。後述するように、偏光子に位相差板を積層する場合には、偏光子の表面(位相差板の積層面とは反対面)に少なくとも保護層を設けることが好ましい。
また、保護層は、紫外光吸収能を実質的に有しないものを用いることが好ましい。なぜなら、保護層が紫外光吸収能を有すると、紫外光が保護層によって吸収されてしまい、偏光子中のフォトクロミック色素が着色しない虞があるからである。
なお、「紫外光吸収能を実質的に有しない」とは、紫外光吸収剤などの紫外光を吸収又は遮断などするものが保護層に含まれていないことを意味し、保護層を構成する樹脂材料や保護層に含まれる紫外光吸収を目的としない添加剤が、紫外光を僅かに吸収等する場合があっても、「紫外光吸収能を実質的に有しない」と解釈される。
【0036】
上記保護層は、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるフィルムが好ましい。保護層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;などのフィルムがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフイン、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフイン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;これら前記ポリマーのブレンド物;などのポリマーフィルムがあげられる。保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、紫外光硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0037】
保護層を構成するフィルムには、必要に応じて、安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤などの各種添加剤が添加されていてもよい。もっとも、紫外光吸収剤などが添加されないことが好ましいことは、上述の通りである。
保護層は、通常、粘着剤(接着剤と呼ばれているものを含む意味である)を介して、偏光子に貼着される。
【0038】
<偏光子を含む円偏光フィルタ>
本発明の偏光子及び上記偏光板は、少なくとも1種の位相差板を積層した光学フィルムの態様で使用できる。
本発明の円偏光フィルタは、上記位相差板として、直線偏光を円偏光に変換する位相差板が用いられる。
該位相差板は、1枚でも良いし、2枚以上の複層構造のものでもよい。
【0039】
直線偏光を円偏光に変換する位相差板は、代表的には、1/4波長板が用いられる。該1/4波長板の材質は特に限定されず、公知のもの、例えばポリマーフィルム、液晶フィルム、液晶材料を配向させたフィルムなどを用いることができる。
上記1/4波長板は、その遅相軸方向(面内に於いて屈折率が最大となる方向)が、偏光子のフォトクロミック色素の配向方向に対して、45度±5度、好ましくは45度±3度の角度となるように積層される。
【0040】
図1に、円偏光フィルタの好ましい例を示す。
同図に於いて、1は円偏光フィルタを、2は偏光子を、31,32は保護層を、4は位相差板を、それぞれ示す。
同図(a)は、偏光子2の両面に保護層31,32が積層された円偏光フィルタ1であり、同図(b)は、偏光子2の表面に保護層31が積層された円偏光フィルタ1である。
位相差板4は、粘着剤(図示せず)を介して、保護層32又は偏光子2に積層接着される。もっとも、位相差板4の種類によっては、保護層の表面に直接位相差板を形成することもでき、この場合、粘着剤は不要である。
【0041】
また、上記保護層31,32のうち、偏光子2の表面に積層された保護層31は、実質的に紫外光吸収能を有しない保護層を用いることが好ましい。なぜなら、後述するように、円偏光フィルタ1の実用に際して、上記保護層31が画面の最外側となるため、該保護層31に当たった紫外光が保護層31にて吸収等されることを防止するためである。
なお、画面などに貼着するため、必要に応じて、円偏光フィルタ1の裏面(位相差板4の裏面)に、粘着剤層が設けられていることが好ましい。
【0042】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、上記偏光子又は円偏光フィルタを具備する。好ましくは、本発明の画像表示装置は、画面表面に上記円偏光フィルタが設けられているものである。
図2に、円偏光フィルタの画像表示装置の適用例を示す。
同図に於いて、10は、画像表示装置の画像表示素子を示し、他の符号は、図1と同様である。
同図(a)は、図1(a)の円偏光フィルタ1を画像表示装置に適用した例で、同図(b)は、図1(b)の円偏光フィルタ1を画像表示装置に適用した例である。
何れも、円偏光フィルタ1は、位相差板側を、画像表示素子10の画面表面10aに向けて配置される。
【0043】
本発明の円偏光板フィルタは、紫外光の照射により二色性を示す偏光子と、直線偏光を円偏光に変える位相差板と、が積層されている。
かかる偏光子は、紫外光の強い照射によって、偏光特性を示す偏光子に変化する。このため、屋外などに於いて、円偏光フィルタ1の表面(つまり、偏光子)に、太陽光などの外光が当たると、該外光に含まれる強い紫外光によって、偏光子は偏光特性を発現する。該偏光子に当たった外光は、その一部が偏光子に吸収され、一部が直線偏光として透過する。透過した直線偏光は、位相差板によって円偏光に変換され、装置内部で反射した後、左右逆転した円偏光は、再度位相差板に入り、偏光子の透過軸方向と直交する直線偏光に変換される。該直線偏光は、前記偏光特性を示す偏光子を通過できない。従って、外光反射に起因する画面の視認性の低下を防止できる。
【0044】
一方、本発明の偏光子は、紫外光の作用よりも可視光の作用及び/又は熱作用が大きくなると、退色して、偏光特性を喪失する。このため、屋内などの紫外光が比較的少なく、且つ可視光の量が多い環境下に置かれると、偏光子は、偏光特性を示さないフィルムとなる。よって、該偏光子は、表示装置そのものが発する表示発光を吸収せず、表示発光を透過させる。
このため、屋内などの外光が比較的弱い環境下に於いては、画像表示装置の画面が、明るく表示される。なお、外光が比較的弱い環境下では、外光反射は殆ど生じないので、これに起因する画面の視認性は殆ど低下しない。
【0045】
画像表示装置としては、特に限定されず、例えば、有機EL表示装置、液晶表示装置、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)等の自発光型の装置などが挙げられる。
本発明の円偏光フィルタは、外光の反射を防止できることから、装置内部の反射用金属板によって外光が反射し易い有機EL表示装置などに適用することが特に効果的である。
【0046】
本発明の画像表示装置は、任意の用途に使用される。その用途は、例えば、テレビ、商業店舗用インフオメーション用モニターなどの展示機器、パソコンモニター、ノートパソコン、OA機器、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ、家庭用電気機器、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオなどの車載用機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター、医療用モニターなどに用いることができる。
特に、本発明の画像表示装置は、屋外と屋内の双方で使用される用途、例えば、テレビ、ノートパソコン、携帯電話や携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ、カーナビゲーションシステム用モニターなどの用途が好ましい。
【実施例】
【0047】
本発明について、実施例を示して更に説明する。なお、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。
本実施例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
(1)偏光子の吸光度の測定方法:
分光光度計(日立製作所製、製品名:U−4100型分光光度計)を用いて測定した。
(2)偏光子の偏光度の測定方法:
入射光線を偏光状態にした分光光度計(日立製作所製、製品名:U−4100型分光光度計)を用いて測定し、偏光度(P)は、下記式に代入して求めた。
P={(k−k)/(k+k)}×100
ただし、kは、入射光線の偏光面が偏光子の延伸方向に対して垂直な方向とした際の透過率、kは、前記偏光面が偏光子の延伸方向に対して平行とした際の透過率である。
(3)厚みの測定方法:
アンリツ製デジタルマイクロメーター「KC−351C型」を使用して測定した。
【0048】
[実施例]
フォトクロミック色素として、式(I)で示されるスピロピラン系色素(1,3,3−トリメチルインドリノ−6’−ニトロベンゾピリロスピラン、東京化成工業(株)製、商品名:T0366)と、透明樹脂としてポリビニルアルコール(重合度:1700、クラレ社製)と、をDMSO溶媒中に溶解させ、混合溶液を調整した。ただし、色素:PVA(質量比)=1:99の配合割合とし、混合溶液は、該PVAの12質量%溶液とした。
この混合溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一な厚みとなるように展開し、減圧乾燥することによりフィルム(平均厚み70μm)を製膜した。
得られたフィルムを延伸機に装着し、60℃の雰囲気下で縦一軸方向へ5倍延伸することにより偏光子を作製した。
得られた偏光子の吸光度を測定したところ、図3に示すような結果となった(符号Aで示すグラフ線)。可視光域内で、殆ど吸収を示さず、波長548nmにおける吸光度は、0.03であった。
また、この偏光子の偏光度を測定したところ、図4に示す結果となった。波長548nmに於けるk値は、95.1%で、同k値は、95.0%であり、これから求めた偏光度は、0%であった。
【0049】
次に、上記偏光子に、市販の紫外光ランプを用い、365nmの紫外光を、1.0mW/cm照射した。そして、紫外光の照射直後の偏光子の吸光度及び偏光度を測定した。その吸光度は、図3に示す通りである(符号Bで示すグラフ図)。色素の可視光域最大吸収波長(548nm)における吸光度は、0.93であり、偏光子は紫色を示した。
紫外光照射後の偏光度は、図5に示す結果となった。波長548nmに於けるk値は、27.9%で、同k値は、13.7%であり、これから求めた偏光度は、34%であった。
使用したフォトクロミック色素の紫外線照射前と照射後の分子構造変化を、下記式(I)に示す。
【0050】
【化1】

【0051】
次に、上記紫外光照射後、着色状態の偏光子を、一般の蛍光灯で照らされた室内の明所(25℃下)に放置したところ、10分以内に退色し、再び紫外光照射前の元の状態に戻った。この退色後の偏光子の吸光度及び偏光度を測定したところ、上記紫外光照射前の偏光子と同様の値を示した。
また、上記偏光子に再度紫外光の照射、放置を繰り返し行うと、着色と退色を繰り返した。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の円偏光フィルタの一実施形態を示す一部省略縦断面図。
【図2】本発明の円偏光フィルタを備えた画像表示装置を示す一部省略縦断面図。
【図3】実施例で作製した偏光子の紫外光照射前後における吸光度スペクトルのグラフ図。
【図4】同偏光子の紫外光照射前におけるk及びkスペクトルのグラフ図。
【図5】化合物Iの紫外光照射後におけるk及びkスペクトルのグラフ図。
【符号の説明】
【0053】
1…円偏光フィルタ、2…偏光子、31,32…保護層、4…位相差板、10…画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトクロミック色素を含有することを特徴とする偏光子。
【請求項2】
二色性色素として前記フォトクロミック色素を用いた請求項1に記載の偏光子。
【請求項3】
前記フォトクロミック色素が一方向に配向している請求項1または2に記載の偏光子。
【請求項4】
前記フォトクロミック色素が、紫外光照射によって着色し、且つ、着色後に可視光照射または熱によって退色するフォトクロミック特性を示す請求項1〜3のいずれかに記載の偏光子。
【請求項5】
前記フォトクロミック色素と樹脂を含む樹脂組成物を製膜し、延伸することによって得ることができる請求項1〜4のいずれかに記載の偏光子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の偏光子の片面または両面に、保護層が積層されている偏光板。
【請求項7】
前記保護層が紫外光吸収能を実質的に有しない請求項6に記載の偏光板。
【請求項8】
請求項1〜5記載の偏光子または請求項6または7に記載の偏光板に、少なくとも1種類の位相差板が積層されている円偏光フィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載の円偏光フィルタが、その位相差板を画面側にして、画像表示面に設けられている画像表示装置。
【請求項10】
有機EL素子を有する有機EL表示装置である請求項9に記載の画像表示装置。
【請求項11】
フォトクロミック色素を含有する樹脂フィルムを、延伸することによってフォトクロミック色素を一方向に配向させることを特徴とする偏光子の製造方法。
【請求項12】
少なくとも樹脂とフォトクロミック色素を溶媒に溶解させた樹脂溶液を、基板上へキャストすることによって、前記フォトクロミック色素を含有する樹脂フィルムを作製する請求項11に記載の偏光子の製造方法。
【請求項13】
加熱条件下で延伸する請求項12に記載の偏光子の製造方法。
【請求項14】
樹脂フィルムを膨潤させ、該フィルムをフォトクロミック色素含有溶液中に浸漬することによって、前記フォトクロミック色素を含有する樹脂フィルムを作製する請求項11に記載の偏光子の製造方法。
【請求項15】
液中で延伸する請求項14に記載の偏光子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−122485(P2008−122485A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303463(P2006−303463)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】