説明

偏光子を有する有機電界発光素子

【課題】コントラストを向上させ、電力消費を減少させることができる偏光子を含む有機電界発光素子を提供する
【解決手段】基板10の上の面にアノード電極層40、有機物層100及びカソード電極層120が順次に形成された有機電界発光素子は、絶縁膜60及び円偏光子200を含む。絶縁膜60はアノード電極層40上に形成され、ブラック物質を含む。円偏光子200は、アノード電極層が形成される基板の上の面と反対側の表面に接着され、外部からの入射光を偏光し、染料系物質または染料系物質とヨード系物質との混合物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機電界発光素子に関するものであり、より詳しくは、消費電力を減少させることができる円偏光子を有する有機電界発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は所定電圧が印加されたとき、所定波長を持つ光を発生させる。
図1は、従来の有機電界発光素子を示す断面図である。
図1に示すように、従来の有機電界発光素子は、基板10、アノード電極層40、絶縁膜60、隔壁80、有機物層100、カソード電極層120、セルキャップ140及び円偏光子160を含む。
アノード電極層40に所定の正の電圧が印加され、カソード電極層120に所定の負の電圧が印加されたとき、有機物層100は所定波長の光を発生させる。
有機物層100から発生した光は、円偏光子160を介して外部に放射される。
このとき、円偏光子160がヨード系物質からなっているので、有機物層100から発生した光に対する円偏光子160の透過率、即ち、上記有機電界発光素子の透過率は、約45%程度に保持される。従って、赤色、緑色及び青色の波長の全領域に対して一定の透過率を持つ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この場合、赤色及び青色の波長の時に印加される電力は、緑色の波長の時に印加される電力より高い。即ち、ピクセルごとに同じ輝度を保持するために、赤色及び青色の光を発光するピクセルの電力消費は、緑色の光を発光するピクセルの電力消費より多かった。
従って、電力消費を減少させることができる有機電界発光素子が求められるようになった。
本発明の目的はコントラストを向上させ、電力消費を減少させることができる偏光子を含む有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の目的を達成するために、本発明の好ましい一実施形態に係る有機電界発光素子は、基板、アノード電極層、有機物層、カソード電極層、絶縁膜及び円偏光子を含む。上記絶縁膜は、上記アノード電極層上に形成され、ブラック物質を含む。上記円偏光子は、上記アノード電極層が形成される基板の表面の上の面とは反対側の基板の表面に接着され、外部からの入射光を偏光し、そして、染料系物質からなる。
【0005】
また、本発明の好ましい一実施形態に係る有機電界発光素子は、基板、アノード電極層、有機物層、カソード電極層、絶縁膜及び円偏光子を含む。上記絶縁膜は、上記アノード電極層上に形成され、ブラック物質を含む。上記円偏光子は、上記アノード電極層が形成される基板の上の面と反対側の表面に接着され、外部からの入射光を偏光し、そして、染料系物質とヨード系物質との混合物からなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る有機電界発光素子は、染料系物質または染料系物質とヨード系物質が混合された混合物からなる円偏光子を使用しているので、電力消費が減少する長所がある。
また、本発明に係る有機電界発光素子は、ブラック物質を含む絶縁膜を使用しているので、上記有機電界発光素子のコントラストが向上する長所がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る偏光子を持つ有機電界発光素子の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図2は、本発明の好ましい一実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面図で、図3は、図2の有機電界発光素子の透過率を示す図である。
図2に示すように、本発明の有機電界発光素子は、基板10、アノード電極層40、絶縁膜60、隔壁80、有機物層100、カソード電極層120、セルキャップ140及び円偏光子200を含む。アノード電極層40は基板10上に蒸着される。
【0008】
有機物層100は、アノード電極層40上に蒸着され、順次に形成される、正孔注入層( HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EL)、電子輸送層(ETL)及び電子注入層(EIL)を含む。
カソード電極層120は、金属、例えば、アルミニウム(Al)からなり、有機物層100上に蒸着される。
【0009】
以下、上記有機電界発光素子の発光動作を詳述する。
アノード電極層40に所定の正の電圧が印加され、カソード電極層120に所定の負の電圧が印加されたとき、アノード電極層40は正孔を上記正孔注入層に供給し、カソード電極層120は電子を上記電子注入層に供給する。
上記正孔注入層は、上記陽極から供給された正孔を上記正孔輸送層に円滑に注入し、上記電子注入層は、上記陰極から供給された電子を、上記電子輸送層に円滑に注入する。
上記正孔輸送層は、上記注入された正孔を上記発光層に輸送し、上記電子輸送層は、上記注入された電子を上記発光層に輸送する。
上記発光層に輸送された正孔及び電子が再結合して、特定波長を持つ光を発生させる。
【0010】
上記発光層から発生された光は、基板10及び円偏光子200を透過して外部に放射される。
円偏光子200は、アノード電極層40が形成される基板の上の面と反対側の基板10の表面、即ち、底面に接着されており、上記発光層から発生された光を、所定の透過率で透過させる。また、円偏光子200は、外部光を遮断して、上記有機電界発光素子のコントラストを向上させる。
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る有機電界発光素子の構成について詳述する。
まず、本発明の第1の実施形態に係る有機電界発光素子について詳述する。
第1の実施形態に係る円偏光子200は、ヨード系物質からなる従来の偏光子と違って、染料系物質からなっている。一般に、染料系物質は、ヨード系物質に比べて青色光及び赤色光を、よく吸収しない。即ち、染料系物質からなる円偏光子200は、ヨード系物質からなる従来の偏光子より、青色光及び赤色光をよく通過させる。
【0012】
従って、青色光及び赤色光を発光するピクセルに、従来の技術に比べてより少ない電力が印加される場合でも、第1の実施形態の有機電界発光素子は、青、緑及び赤の光を、同じ輝度で発光させることができる。すなわち、青色光及び赤色光を発光するピクセルの電力消費が減少されることになる。
一方、第1の実施形態に係る有機電界発光素子は、染料系物質の配合を調節して、青色光及び赤色光の透過率を調節することができる。これにより、上記ピクセルの電力消費が制御可能である。
【0013】
次に、本発明の第2の実施形態に係る有機電界発光素子について詳述する。
上記第1の実施形態に係る円偏光子200は、従来の円偏光子に比べて反射光をさらによく透過させる。これにより、円偏光子200が反射光を完全に偏光させられない場合、上記反射光は、従来の反射光に比べてより多く外部に放射される。
即ち、染料系物質からなる円偏光子200を使用することによって、第1の実施形態に係る有機電界発光素子のコントラストが低下され得る。
【0014】
従って、第2の実施形態に係る有機電界発光素子では、コントラストの低下を防止するために、絶縁膜60をブラック物質で形成する。
例えば、上記ブラック物質は、ブラックカーボン(black carbon)などが使われる。
一方、絶縁膜60は、有機物、無機物及び高分子の中の少なくともいずれか一つと、ブラック物質とを混合した物質からなるブラックマトリックス層であってもよい。
【0015】
このように、絶縁膜60は黒色であるので、外部光及びカソード電極層120から反射される反射光が絶縁膜60に入射する場合、絶縁膜60に吸収される。その結果、カソード電極層120に反射され、外部に放射される反射光の量が減り、上記有機電界発光素子のコントラストが向上する。
本発明の第2の実施形態に係る有機電界発光素子は、コントラストを維持または向上させながら、電力消費も減少させることができる。
【0016】
次に、本発明の第3の実施形態に係る有機電界発光素子について詳述する。
第3の実施形態に係る円偏光子200は、ヨード系物質からなる従来の偏光子と違って、染料系物質とヨード系物質の混合物からなる。染料系物質は、一般にヨード系物質に比べて、青色光及び赤色光をよく吸収しない。従って、上記混合物からなる円偏光子200は、ヨード系物質からなる従来の偏光子に比べて、青色光及び赤色光をよく通過させる。
【0017】
従って、青色光及び赤色光を発光するピクセルに、従来の技術に比べてより少ない電力が印加される場合でも、第3の実施形態に係る有機電界発光素子は、青、緑及び赤の光を同じ輝度で発光させることができる。即ち、青色光及び赤色光を発光するピクセルの電力消費が減少する。
また、第3の実施形態の有機電界発光素子は、上記混合物の配合を調節し、青色光及び赤色光の透過率を調節でき、これにより、上記ピクセルの電力消費を制御することができる。
【0018】
次に、本発明の第4実施形態に係る有機電界発光素子について詳述する。
上記第3の実施形態の円偏光子200は、従来の円偏光子に比べて光をさらによく透過させる。従って、円偏光子200が反射光を完全に偏光させられない場合、上記反射光が従来の反射光より、さらに多く外部に放射される。
即ち、混合物質からなる円偏光子200を使用することで、第3の実施形態の有機電界発光素子のコントラストは、低下させることが可能である。
従って、第4の実施形態に係る有機電界発光素子では、コントラストの低下を防止するために絶縁膜60をブラック物質で形成する。
例えば、上記ブラック物質はブラックカーボン(black carbon)などが使われる。
【0019】
一方、絶縁膜60は、有機物、無機物及び高分子の中の少なくともいずれか一つとブラック物質を混合した物質からなるブラックマトリックス層であってもよい。
このように、絶縁膜60は、黒色であるので、外部光及びカソード電極層120から反射される反射光が絶縁膜60に入射される場合、絶縁膜60に吸収される。その結果、カソード電極層120に反射されて外部に放射される反射光の量が減り、上記有機電界発光素子のコントラストが向上する。
本発明の第4の実施形態に係る有機電界発光素子は、コントラストを維持または向上させながら電力消費も減少させることができる。
【0020】
以下、円偏光子200について具体的に詳述する。
円偏光子200は、基板10の底面に接着されたリターダー200b、及びリターダー200bの底面に接着された直線偏光子200aを含む。
直線偏光子200aは上記混合物質からなり、反射光を偏光させる。ここで、直線偏光子200aは偏光子フィルムを延長させ、延長された偏光子フィルムに上記染料系物質または混合物質を染着けすることによって形成される。
リターダー200bは、その中心軸が直線偏光子200aの中心軸と45゜の角をなし、直線偏光子200aを通過した外部光の位相を、約λ/4(λは波長)遅らせる。
【0021】
図3に示されるように、本発明の有機電界発光素子では、青色光及び赤色光に対する円偏光子200の透過率は、約50%以上であり、緑色光に対する円偏光子200の透過率は、約45%〜50%である。ここで、青色光の中心波長は、約460nm、緑色光の中心波長は約520nm、赤色光の中心波長は約620nmである。
【0022】
図4A及び図4Bは、本発明の好ましい一実施形態に係る円偏光子を使用して、反射光を遮断する過程を示した図である。
図4aに示すように、偏光されない外部光が、直線偏光子200aに入射される。
この時、直線偏光子200aの透過軸は、垂直方向に形成される。その後、外部光の中の垂直方向の光のみが、直線偏光子200aを通過する。
直線偏光子200aを通過した外部光が、リターダー200bに入射される。その時、外部光が約λ/4遅れて、円偏光状態に変化する。これは、リターダー200bの中心軸が、直線偏光子200aの中心軸と45゜の角をなすからである。
次に、リターダー200bを通過した外部光が、カソード電極層120で反射され、反射光が再びリターダー200bを通過する。
【0023】
その結果、円偏光状態の反射光は、直線偏光状態に変化する。但し、リターダー200bを再び通過した反射光は、リターダー200bを全く通過しなかった外部光と垂直をなす。このことは、リターダー200bを一度通過すると、外部光が約λ/4遅延、即ち、二度通過したので、約λ/2が遅れたからである。
直線偏光状態の反射光は、直線偏光子200aに入射し、その後、消滅する。なぜなら、直線偏光状態の反射光と直線偏光子200aの透過軸が垂直をなすので、直線偏光状態の反射光が、全部偏光されるからである。
【0024】
図4Bに示すように、偏光されない外部光が直線偏光子200aに入射される時、直線偏光子200aの吸収軸は垂直方向に形成されているので、外部光の中の水平方向の光のみが、直線偏光子200aを通過する。
直線偏光子200aを通過した外部光が、リターダー200bを通過すると、図4Bに示されるように、円偏光状態である上記有機電界発光素子の内部に進む。
次に、上記進行された外部光は、カソード電極層120から反射され、再びリターダー200bを通過する。
そして、リターダー200bを通過した反射光が、直線偏光子200aに入射し、それらの全てが偏光され、消滅する。
【0025】
図4A及び図4Bに示されるように、外部光は、円偏光子200を二度通過することによって消滅する。従って、円偏光子200のない有機電界発光素子に比べて、本発明の有機電界発光素子のコントラストが高くなる。
【0026】
以上、説明した本発明は、例示の目的のために開示されたものであり、本発明に対して、当業者であるならば、本発明の思想と範囲内で様々な修正、変更、付加が可能である。従って、このような修正、変更及び付加は、本発明の特許請求の範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の有機電界発光素子を示す断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る有機電界発光素子を示す断面図である。
【図3】図2の有機電界発光素子の透過率を示す図である。
【図4】AおよびBは、本発明の好ましい一実施形態に係る円偏光子を使用して反射光を遮断する過程を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
10 基板
40 アノード電極層
60 絶縁膜
80 隔壁
100 有機物層
120 カソード電極層
140 セルキャップ
200 円偏光子
200a 直線偏光子
200b リターダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に、アノード電極層、有機物層及びカソード電極層が、順次に形成される有機電界発光素子において、
上記アノード電極層が形成される基板の上の面と反対側の表面に接着され、外部からの入射光を偏光し、染料系物質からなる円偏光子を含むことを特徴とする偏光子を有する有機電界発光素子。
【請求項2】
上記アノード電極層上に形成され、ブラック物質を含む絶縁膜を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光子を有する有機電界発光素子。
【請求項3】
上記円偏光子は、上記アノード電極層が形成される基板の上の面と反対側の表面に接着され、入射光の位相を遅延させるリターダー及び、
上記基板の上の面と反対側の上記リターダーの表面に接着され、上記染料系物質からなる直線偏光子を含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光子を有する有機電界発光素子。
【請求項4】
上記円偏光子は、上記有機物層から発生される光のうち、特定波長の光を選択的に、さらに、透過させることを特徴とする請求項1に記載の偏光子を有する有機電界発光素子。
【請求項5】
上記円偏光子は、上記有機物層から発生される光のうち、赤色光及び青色光を50%以上の透過率で通過させ、緑色光を45%ないし50%の透過率で通過させることを特徴とする請求項4に記載の偏光子を有する有機電界発光素子。
【請求項6】
基板に、アノード電極層、有機物層及びカソード電極層が、順次に形成される有機電界発光素子において、
上記アノード電極層が形成される基板の上の面と反対側の表面に接着され、外部からの入射光を偏光し、染料系物質とヨード系物質が混合された混合物からなる円偏光子を含むことを特徴とする偏光子を有する有機電界発光素子。
【請求項7】
上記アノード電極層上に形成され、ブラック物質を含む絶縁膜をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の偏光子を有する有機電界発光素子。
【請求項8】
上記円偏光子は、上記アノード電極層が形成される基板の上の面と反対側の表面に接着され、入射光の位相を遅延させるリターダー及び、
上記基板と反対側の上記リターダーの表面に接着され、上記混合物からなる直線偏光子を含むことを特徴とする請求項6に記載の偏光子を有する有機電界発光素子。
【請求項9】
上記円偏光子は、上記有機物層から発生される光のうち、特定波長の光を選択的に、さらに、透過させることを特徴とする請求項6に記載の偏光子を有する有機電界発光素子。
【請求項10】
上記円偏光子は、上記有機物層から発生される光のうち、赤色光及び青色光を50%以上の透過率で通過させ、緑色光を45%ないし50%の透過率で通過させることを特徴とする請求項9に記載の偏光子を有する有機電界発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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